【艦これ】オリョール海の秘宝【ギャラリーフェイク】【後藤隊長】 (32)

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【艦これ】後藤喜一「はあ……私が提督、ですか……?」【パトレイバー】
【艦これ】後藤喜一「はあ……私が提督、ですか……?」【パトレイバー】 - SSまとめ速報
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の番外編的な作品です、が、別に読んでなくても大丈夫です

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1455698578

~オリョール海~

トレジャーハンター、ラモスは海底から引き揚げた陶磁器を物色していた。

ラモス「チッ……せっかく引き揚げたのはいいが、破損が酷すぎる……これじゃあ、フジタ
    の所に持ち込むしかしゃーあんめえな……」

58「そこのトレジャーボート、こんな所で何をしてるでちか?」

ラモス「おわっ!? な、なんだ急に海の中から現れやがって……何モンだ?」

19「それはこっちのセリフなの~、この海は民間船の航行が制限されてるはずなの~」

ラモス「何だ……? お前ら、軍のモンか?」

168「一応、怪しい物がないかどうか臨検させてもらうわね」

呂500「麻薬とかあったら即拘束します、ですって!」

ラモス「チッ……わーったよ、好きにしな」

58達は荷を検めたが、そこにあったのはボロボロに破損した陶磁器類だけだった。

58「こんなボロっちい皿を引き揚げて、どうするんでちか?」

ラモス「売るんだよ……それ以外にねーだろーが」

168「こんなに破損してるのに売れるの?」

ラモス「フツーなら二束三文で買い叩かれるだろうが……修復のプロがいるからな、そいつ
    の所に持ち込めば他よりは高く買ってくれるのさ」

19「ふ~ん、これ、いくらくらいで売れるの~?」

ラモス「ん? ああ、数だきゃああるし、まとめて100万くらいか……ったく、燃料代ぐ
    らいにしかなりゃーしねー……今回はアテが外れたぜ」

呂500「100万! ですって!!」

潜水艦達は身を寄せ合ってヒソヒソ話を始めた。

ラモス「……何だぁ?」

58「その修復のプロがいる店ってどこにあるんでちか?」

ラモス「あ、ああ、東京ベイにあるギャラリーフェイクって画廊だよ。
    そこのフジタってヤツに買い取ってもらうのさ」

~鹿屋基地、執務室~

後藤「ほいほい、んじゃ、これで礼号作戦も終了だねっと」

やる夫「すいません、隊長……大規模作戦の時だけ度々呼び出すような形になってしまって
    ……」

後藤「まあいいさ、慣れたしね~」

長門「それにしても、今回も甲作戦は見送りか……何かこう、むず痒いな」

後藤「まあ、俺達は名誉の為に戦ってる訳じゃないしね~、そういうのは、功に逸っている
   他の鎮守府の皆さんにお任せしようや、新艦娘も無事迎える事が出来たしね~」

やる夫「功に逸った他の提督が作戦海域に突撃して持ち帰った情報を精査し、自分達は安全
    に海域を攻略する……こう言っては何ですが、隊長もかなりの悪人ですおね~」

長門「フフ……それじゃ、後はいつも通りか?」

後藤「うん、リランカレベリングや演習で初月の練度を上げておいたら、後は遠征とオリョ
   -ルクルージングで資材と高速修復剤の回復に努める事にしようか」

長門「それじゃあ、隊長が再び呼び戻されるまでは通常営業に戻るという事だな、58達に
   はまた苦労をかけるが、致し方あるまい」

後藤「それにしても58達は遅いね~……いつもならとっくに帰投してる頃だけど……」

~東京ベイ~

 倉庫が立ち並ぶ東京湾岸に、ギャラリーフェイクという画廊がある。
 その名の通り、偽物や模造品だけを展示しており、若者のデートスポットとして定着し
ているが、このギャラリーには黒い噂が絶えない。
 偽作を扱っている裏で、盗品や、表に出せない美術品をブラックマーケットに横流ししているという話である。

 今日もギャラリーのオーナー、藤田玲司は、景気が回復してきて多少商売が忙しくなって
いた。

 藤田は常設展示をそうそうに切り上げ、先日ラモスから持ち込まれた明代の絵皿の修復
作業に取りかかろうとしていた。

 そこに、何やら荷物を抱えた水着姿の娘達が訪れて来たのは時刻も夕暮れ時に差し掛か
ろうとしていた頃だった。

58「……ギャラリーフェイクというのはここで間違いないでちか?」

藤田「ここは海の家じゃないぜ、水着でギャラリーに入られるのは困るな」

58「ゴーヤ達……い、いえ、私達はこれが制服でち……貴方がフジタさんでちか……?」

藤田「そうだが……」

58「ちょっと買い取って欲しい物があるんでちが……」

藤田「ほう……ここじゃなんだ、奥で話をききましょうか」

~ギャラリーフェイク、応接室~

サラ「ドウゾ、お茶です」

58「ど、どうもでち……」

サラ(この子達が持ってきたのって明代の絵皿ヨネ……破損が激しいし、まとめて50万
   ってトコだろうケド、どこで手に入れたのカシラ……?)

19「それで、いくらくらいになるの~?」

藤田「そうですな……物は真作ですが、破損が激しいので、まとめて20万円ってところで
   すな」

サラ(フジタ、素人相手にえげつないネー……)

呂500「それじゃあ安い、ですって!」

168「あ、あと、派手な物じゃないけど、こういう壺もあるんだけど……もうちょっと色
    をつけてくれないかしら?」

168が風呂敷包みから古びた壺を取り出し、机に置いた時、藤田は魂が飛び出る様な錯覚
に陥った。

 その壺は小さな耳が付いた、茶色い大きな壺で、くすんだ色で、茶色の釉薬がかかっている。

藤田(こ……これは……! ま、まさか……!!)

168「どう? 高い壺なの?」

藤田「……これは何処で見つけたのですかな?」

58「そ、それは言えないでち……! 軍機、い、いや、秘密でち!」

19「お値段はいくらくらいになるの~?」

藤田「……少々調査しなければなりません……しばらくお預かりしてもよろしいでしょう
   か?」

呂500「タダじゃダメですって!」

藤田「……それではこうしましょう、手付金として200万円払います……その代わりこの
   壺を調査させていただきたい」

58「200万!?」

サラ(!?)

168「分かったわ! それでOKよ!」

藤田「キャッシュで支払いますよ……貴女達もその方がいいでしょう?」

19「問題ないの~!」

58達が東京湾の闇の中に消えていくのを藤田とサラは見送った。

サラ「フジタ! どういう事ネ!? アノ壺、相当の値打ち物なの?」

藤田「ああ……俺の見立てが正しけりゃ、あれは歴史的な発見だ」

サラ「ホエー……それにしてもアノ娘達、この寒いのに水着なんか着て、何者なの?」

藤田「あれが恐らくTVに出ていた艦娘ってやつだな……」

サラ「カンムス? ああ、あの深海棲艦と戦っているっていう……」

藤田「そんな事より、物が物だけに俺だけの鑑定じゃ足りん。
   賀茂水仙先生に連絡せにゃなるまい」

藤田はそう言って電話をかけに戻った。

サラ(賀茂先生に話をするって事は茶道関係カナ? う~ん……)

~鹿屋基地、執務室~

長門「隊長、見直したぞ」

後藤「へ? 何の事?」

長門「間宮さんの所の食事が豪華になっていたが、あれは隊長の指示なのだろう?
   いや~、大作戦の後に部下を食事でねぎらうなんて、さすがは隊長だな。
   秋月達や雲龍達なんか食事の豪勢さに目を白黒させていたぞ」

後藤(……どういう事だ? ちょっと調べてみるか……)

~後日、ギャラリーフェイク~

賀茂「藤田さん、お邪魔しますぞ、電話では要領を得なかったが、大物が見つかったかもし
   れないとはどういう事ですかな?」

藤田「これは賀茂先生、きっと現物を見れば驚きますよ」

??「ほう、楽しみですな」

??「偽作で賀茂先生を騙そうとしたら、承知しませんよ!」

藤田「げっ! 地蔵……! 三田村さんまで……! 何故ここに!?」

サラ「ゴメンネー、フジタ、何だか大事そうだったから地蔵さんと三田村さんにも来てもら
   ったヨ」

地蔵「そういう事です、大物と聞いて、眼福にあやかりたくなりましてね」

三田村「わざわざ賀茂先生を引っ張り出すほどなんだから……余程の事なんでしょうね?」

藤田「……ハァ……分かりましたよ、とにかく現物を見てもらいましょうか」

藤田が応接室のテーブルに壺を運び込んだ時、賀茂水仙の眼がカッと開かれた。

賀茂「おお……! こ、これは……ま、まさか……!」

藤田「フフ……賀茂先生にはこの壺が何なのか分かったようですな」

三田村「? ……そうとう古い壺ね……日本の物ではなさそうだけど……」

地蔵「いかにも茶人が好みそうな、どっしりとした風格のある壺ですな……茶壺にすると茶
   室に映えそうだ」

藤田は壺を持ち、壺の底を見せた。
そこには、墨で『納屋』という文字が記されていた。

賀茂「おお! やはり!!」

地蔵「納屋……! ひょっとして『納屋助左衛門』ですか!?」

三田村「え!? そ、それじゃこれが伝説のルソンの……!」

藤田「そう、納屋助左衛門こと呂宋助左衛門が秀吉に売りつけたという、伝説のルソンの壺
   ですよ」

ルソンの壺……。

納屋助左衛門が呂宋(ルソン、現在のフィリピン)から持ち帰った壺で、茶聖千利休が好み、
太鼓判を押した、当時の茶人の垂涎の壺で、大名の一国と同様の価値があるとされた壺で
ある。
秀吉はこれを三つ買い、当時の数寄者達も競ってこれを買い求めた為、納屋助左衛門こと
ルソン助左衛門は巨万の財をなしたという、茶人にとって伝説級の茶壺である。

現存しているルソンの壺は、日本に一個しかない。

三田村「ま、待って! これが本物のルソンの壺であるという保証は!?」

藤田「私も、物が物だけに、炭素年代測定で調べてみましたよ。
   その結果、この壺も底に書かれた文字の墨も秀吉の時代とピタリと符合しました。
   十中八九、本物ですな」

三田村「そ、それが本当なら美術史に残る大発見よ!
    この壺はどこで見つかったの?」

藤田「それが……どうやら『軍』が偶然発見した物のようで……権利関係が少々ややこしい
   のです」

地蔵「ほう……軍が……」

賀茂「そ、そのような事はどうでもいい!
   ルソンの壺を使って茶を点てたいという趣味人はいくらでもいる! 私もその一人
   です! この壺を日本の茶界に残す為なら、この賀茂水仙、労は惜しみませんぞ!」

藤田「賀茂先生なら、そう仰ってくれると思ってましたよ」

サラ「フジター、電話ネー!」

藤田「何だ、この忙しい時に……誰だ?」

サラ「えっと、カノヤ基地のゴトーさんからだってー」

藤田「……?」

藤田「お電話変わりました、私が藤田ですが……」

後藤『鹿屋基地の後藤喜一中佐です、先日はウチの子達が大変迷惑をかけたようで……。
   いただいた手付金はいずれ返還します。
   陶器類はそちらで処分してくださいな』

藤田「え? あ、いえ、さすがにそれは……」

後藤『……ひょっとして、高価な陶磁器でも混ざってました?』

藤田「ま、まあそんな所です……」

後藤『いくら高価な物でも、勤務中に拾った物を金に換える事は許されません。
   私の進退問題にも関わってきます。
   ま、儲けたと思ってくださいな』

藤田「ま、待ってください! いくら評判の悪い私でも、ルソンの壺を着服する程腐っては
   いません! どうか交渉を……!」

後藤『……交渉の余地はありませんな、では、これで失礼』ブツッ ツーツー

藤田「待ってください! 貴方はルソンの壺の価値を御存知でない!! もしもし! も
   しもし!? ……クソッ!」

地蔵「どうしました、藤田さん、何やらお困りのようですが……?」

藤田「……アンタに借りを作るのはシャクだが、地蔵さん、アンタの政治力をアテにする
   事になりそうですぜ」

地蔵「ほう……」

~数日後、地蔵の料亭~

藤田「さて……鬼が出るか蛇が出るか……」

ラモス「よう、フジタ」

藤田「ラモス!? 何でお前さんがここに?」

ラモス「例の嬢ちゃんたちの件は俺がきっかけを作ったようなモンだからな。
    それに、まだ海底にお宝があるかもしれねーって事で俺にもお呼びがかかったの
    さ」

藤田「海軍も、よくこんな胡散臭い男を使うもんだ……」

サラ「フジタも、人の事あんまし言えないネー」

ラモス「日本の料亭は勝手が分からねぇ。
    フジタ、お前さんを参考にさせてもらうぜ」

藤田「なに、ここの主人は多少の事では無礼を咎めんよ、それよりここは、カニが旨いん
   だ」

~座敷~

海軍大臣「おお、君が藤田君かね? 例の壺は持ってきたかね?」

藤田「はい……海底にあったため、多少の汚れが付着していたので、風流を汚さない程度
   に洗浄し、持参しました」

藤田はそういってルソンの壺を卓の中央に置いた。

大臣「おお……これがルソンの壺……見事な風格だ……」

賀茂「大臣も数寄者でいらっしゃいますからな、是非とも私共の茶会にも持参して頂いて、
   眼福に預からせて頂きたいものですな」

大臣「これが私の物になったのなら、是非とも先生の茶室に持参いたしますとも!」

三田村「けれども、これだけの銘品ならば、権利関係は明確にさせておかなくてはなりま
    せんわ。
    後藤さんという方、どんな方ですの?」

地蔵「失礼します……後藤中佐が到着されました」

後藤「やあやあ、本日はお招きに預かり、光栄ですな。
   さっそくご相伴に預かりましょうか、ああ、いや、お気遣いなく、手酌でやります
   から」

後藤はそう言うと、大臣の前だろうと構わず、料理をつまみながら飲み始めた。

三田村「初めまして、後藤中佐、さっそくですが、このルソンの壺の権利について……」

後藤「権利も何もありませんな、任務中に拾った物の所有権を主張する訳にはまいりませ
   ん。
   私共は権利を放棄しているのだから、誰が売ろうと買おうと勝手です」

賀茂「しかし、ルソンの壺となると、取引価格は数億、いや数十億になるかもしれません
   ぞ」

後藤「知ったこっちゃありませんな」

大臣「無欲なのかね?」

後藤「いえ、欲はありますよ、ただ、私が今欲しいのは燃料、弾薬、鋼材、ボーキサイト、
   それに高速修復剤です」

大臣「……」

大臣「君さえ良ければ、燃料その他を融通してやっても良いが……無論、条件付きだが」

後藤「お断りします、それでは他の鎮守府に対して面目が付きません」

ラモス「まあ聞きなって、中佐さんよ、あの海にはまだお宝が残っている可能性がある」

後藤「……それで?」

ラモス「聞けば、アンタの所の基地は、任務達成の為にあの海域を周回しているそうじゃ
    ないか。
    そのついでにお宝を……」

後藤「お断りします」

三田村「けれど、これは日本美術史にとっても有意義で……」

後藤「お断りします」

大臣「君も頑固な男だね……だが……」

後藤「あのねぇ、皆さん」

後藤は箸を置いた。

後藤「艦娘達は国民の安全を守る為に命を賭けているんだっ!!
   自らの私利私欲の為に出撃しろなどと言える訳がないだろうがっ!!」

後藤の気迫に、座は一気に静まり返った。

後藤「そもそもオリョール海を周回しているのは任務達成の為だけではない……あそこの
   海域は民間船舶の往来している海域に近く、いつ『事故』が起こるか分からんから
   だ……私達はいつでも国民の安全を念頭に活動しているんだ、余計な話を持ち込ま
   んでもらいたい」

大臣「そ、それではルソンの壺は……」

後藤「先程も言った通り、売るなり買うなりご自由にどうぞ。
   当基地は一切関知いたしません」

大臣「それでは、君に対して面目が……」

後藤「……そうですね~、それなら、艦娘が麦飯だけ食うような事態にならないようにし
   てもらいたいですな」

大臣「わ、分かった、それではそのように取り図ろう」

後藤「話は以上ですかな? それでは私はこれで」

後藤が席を立とうとした時、藤田が声をかけた。

藤田「いまいち信用できませんな、貴方がルソンの壺を発見したら独り占めする可能性も
   ある」

サラ「フジタ……! 言い過ぎヨ!」

後藤「ふ……」

藤田「?」

後藤「何でも、呂宋助左衛門が破滅して国外脱出する羽目になったのは、ルソンの壺が現
   地人の便所の壺だと発覚したからだとか言いますな」

藤田「……そういう説もありますな」

後藤「たかが便所の壺ですよ? そんな物の為に大切な部下の命を危険に晒す訳にはいき
   ませんな」

藤田「……ごもっとも……」

後藤「それでは、後藤中佐、これにて失礼します」

サラ(こうしてこの騒動は収まったネ)

サラ(ギャラリーはタダ同然で手に入れたルソンの壺を大臣に売りつけられて大儲け)

サラ(ゴトーサンの基地の食糧事情も良くなったって風の噂で聞いたネ)

サラ(賀茂センセーも、ルソンの壺が茶人の手に渡って満足みたいネー)

サラ(これが俗に言うwin-winの関係ネー)

サラ(それはいいのだけれど……)

~東京ベイ、ギャラリーフェイク前の海岸~

藤田「またお前らかよ……」

58「今度は清代の染付絵皿でち! 高く買ってほしいでち!」

藤田「真作だが破損が激しすぎる、いいとこ20万だな」

19「フジタならそれくらい直せるはずなの~! 100万で買ってほしいの~!」

藤田「色褪せもある、40万」

168「これだけ赤が綺麗な皿は滅多に出ないよ! 80万!」

藤田「……60万、これで駄目なら余所を当たれ」

呂500「これでデザートが豪華になる、ですって!」

サラ(あれ以来、潜水艦さん達は目が肥えてきたみたいネー)

サラ(ゴトーサンも多少の小遣い稼ぎは黙認してるみたいダシ……)

サラ(マ、ギャラリーに新しい仕入れ先が出来たってコトで、イッカ!)


                            (終)

終わり、HTML化依頼出してきますね

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