【艦これ】提督「別に、清水の舞台は飛び降りなくていいんだけど……」 (352)





グラーフ「ハァ……ハァ……」ガタガタ

グラ「そ、それは本当か、アトミラール!」

提督「誠でござる」



グラ「よ……よかった……」ヘナッ

グラ「本当に……!」グスッ

提督(えぇ……)






SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1453806498




ガタンゴトン……


グラ「……」ゴホン

提督「……」

グラ「ま、まぁ……なんだ」

グラ「この国の旅行雑誌は、とても賑やかなレイアウトなのだな」

提督「うぅ~ん……そういうもんかな」

提督「むしろ、他の国が出版してる旅行雑誌のイメージがわかないな」

グラ「そうか……こちらもたしかに色々あるが」ペラッ

グラ「大雑把に言えば、もっとおとなしい」

提督「ほう」





グラ「だが……これはいいな」ペラッ

グラ「こういった食べ物の写真や案内を見ているだけで……」

グラ「現地に着く前から楽しくなる」ニコッ

提督「それはなによりで」

グラ「日本のリョカンもたのしみだ……」フフッ

提督(嬉しそうだな~)フフッ





グラ(深海棲艦との戦争が終結し、3か月の時が流れた……)

グラ(……厳密にはアトミラールと婚約を交わして1か月だな)フフン

グラ(戦後の慌ただしさはすっかり鳴りを潜め)

グラ(私達の生活にもゆとりが生まれつつあった、そんな中……)



グラ(私は婚約後すぐ、アトミラールにあるひとつのお願いをした……)


……
…………
………………




グラ「な、なぁアトミラール」

提督「……俺もう提督じゃないんだけどなぁ」

グラ「はは……スマナイ」シュン

グラ「……あの……私たち」

グラ「そろそろ……じゃないか」カァーッ

提督「……あぁ、そうだ」

グラ「それで……その……」キョロキョロ



グラ「夫婦になる前に一度……二人でこの国を旅行してみたいんだ」ボソッ

提督「おぉ!?」




提督「“はねむーん”ってやつは、式の後にやるもんじゃないの?」

グラ「うぅ……」

グラ「それは、分かってるさ」

グラ「だが……私は艦娘となってから」

グラ「あなたと一度もオデカケというものをしたことがない……」

提督「……コンビニとかよくいったじゃん」

グラ「あれは少し違う!」ポカポカ

提督「痛い!?」




グラ「そうじゃなくて、なんというか……」

グラ「この国では“セイシュン”と呼ばれるあれが……」

グラ「そう、それが足りないのだ!」

提督「あぁ……」

提督「なんとなく理解したかも」


グラ「我ながら、本当に差し出がましいお願いだ」シュン

グラ「でも……私にだって、憧れはあるんだ」

グラ「アトミラール……」

提督「……」




提督「うん、いいよ!」

グラ「ほ、本当か!」パァァ

提督「たしかに今のうちに行く方が気も楽だし」

提督「……グラーフのしたいことに気付いてあげられなかった……」

提督「本当に、ごめん……」

グラ「あ、頭を上げてくれ!」オロオロ

グラ「……そうだ!それで、行先なのだが……」


………………
…………
……


グラ(目指すは“キョウト”)

グラ(歴史と雅とブブヅケ文化の地だ)

グラ(……以前にリュウジョーがそう言っていた)

グラ(そして、この国の一度は訪れてみたかった場所でもある……)




ガタンゴトン


提督「それにしても京都かー……」

提督「小さい時に一度来たきりだなぁ」

提督「ほとんど記憶ねぇや」

グラ「そうらしいな」フフッ

提督「本当にプラン、決めて行かなくてよかったの?」

提督「旅館の予約しかしてないけど……」

グラ「あぁ、かまわない」

グラ「お互いほとんど何も知らない方が、なんだか楽しそうだ」ニコッ

提督「そうなんかなー……」




ガタンゴトン


グラ「アトミラールもこれ、食べてくれっ」

提督「おぉかたじけない」

提督(じゃがりこだ)ポリポリ

グラ「♪」ポリポリ

提督(うまそうに食うなぁ)

提督(ジャガイモのよくとれる国の子だからかな)ポリポリ


ツギノテイシャエキハー
キョウトー ツギハー キョウトー

……
…………
………………



―――京都駅―――


グラ「着いたぞ、キョウトに!」

提督「おぉ……すっごく久しぶりだぁ」

グラ「綺麗な駅だ……」

グラ「この吹き抜け、なんて広さだっ」ワクワク

提督「……京都駅って、こんなんだったっけなぁ」

提督(昔はもっとあっさりしてて、駅ビルももっと普通な感じだったけど……)



京都駅は西日本有数のターミナル駅であり、JRや私鉄等多くの路線が乗り入れる。
現在の京都駅舎は4代目であり、設計は建築家の原広司氏によるもの。
建物の外観は多角の窓を駆使した広大なコンコース、三次元的な広がりを演出する大階段と通路、
曲線を多用した駅ビルなど、総じてモダンで斬新な意匠となっている。




グラ「アトミラール、あの建物はなんだ?」

提督「あぁ、これは昔もあったな」

提督「たしか京都タワーってやつだったはず」

グラ「キョウトタワー……」

提督「登る?」

グラ「……いや、構わない」

グラ「それより私はさっそく、キヨミズノブタイを見てみたいぞっ」

提督「ははっ、りょーかい」




グラ「ふむふむ……」ペラッ

グラ「このキョウト市内の移動は、バスを利用することが常識らしい」エッヘン

提督「へぇ~……バスって……」

提督「……あれのこと?」

グラ「……あぁ」


イリグチチカクニタタナイデクダサーイ
ワイワイガヤガヤ
キヨミズゴジョウイキ リンジバスモゴリヨウクダサーイ
ドチャドチャ ガヤガヤ


提督「すっげー混んでるゾ~」


シーズンにもよるが、基本的に京都の観光地行きのバスは大変混み合う。
京都駅から清水寺へ向かう場合はタクシーを除き、他の交通機関が存在しないためである。




提督「……提案がありまーす」

グラ「ん、なんだ?」

提督「地図を見てもそんなに距離があるようには思えない」

提督「……行こう、徒歩で」

グラ「徒歩……」

グラ「そ、それは大丈夫か、アトミラールっ」

提督「大丈夫でしょ……道も簡単みたいだし」



京都市の地図を見たことのある方なら分かるかもしれないが、ここは平安京の時代に「条坊制」のもとで区画整理がなされている。
いわゆる“碁盤の目”と呼ばれる形となっており、主要な通りはほぼ全てが東西と南北にまっすぐ伸びている。
そのため、現在位置さえ把握できれば比較的容易に目的地までたどり着くことは可能である。




提督「あれで“おしくらまんじゅう”になるのは……」

提督「かえって体力を使いそうでかなわん」ゲッソリ

グラ「むぅ……」

グラ「……うん、構わない」

グラ「あなたと一緒なら、なんだってな」フフッ

提督「言うようになったなぁ君」




グラ「だったら……少しだけ、良いか?」

提督「ん、なーに?」

グラ「気になるパン屋があるんだ……」

提督「パン?……って、あれか」

提督「確かにもう昼時だけど……いいの?」

提督「もっと京都らしいお昼ご飯じゃなくて」

グラ「良いんだ」フフッ




グラ「雑誌に書いてあったんだ……」

グラ「キョウトの人々のパンの消費量はこの国で一番だとな」

提督「ほう」

グラ「私の国でもパンはよく食べられていたからな」

グラ「なんだか親近感を感じるよ」ニコッ


彼らの向かったパン屋『進々堂』は、日本ではじめてフランスパンを製造販売したといわれている。
決してドイツパンではない(無慈悲)



………………
…………
……


提督「買いすぎちゃったなぁ」

グラ「ははっ、本当だな……」

グラ(ブレッツェルは置いてなかったのか……)シュン

提督「せっかくだから、どっか眺めのいい場所で食べたいな」

提督「さて、清水寺へはどこから向かうか……」




グラ「……」ギュッ

提督「あっ……」

提督(手……)

グラ「なぜだか……こちらが良い気がするんだ」ニコッ

グラ「行こうっ」

提督「……りょーかい」

提督(あったけぇ)

提督(なんだか呆けてしまいそうだ)ホェー




A「ヨドバシー」 
B「カメーラー」

hahaha!


提督(……ヨドバシカメラに外国人が集まるという噂は本当だったのか)

提督(戦争が終わって、渡航も楽になったからなぁ)

グラ「アトミラール、そこで曲がるぞ」

提督「ん、あいよー」

グラ「ナナジョウストリート……というのか」

グラ「そこを東に行ってみるよ」





テクテク……


グラ「しかし……」

提督「んっ」

グラ「道を歩けばすぐに日本のマチヤが見える、というわけではないのだな……」シュン

提督「まぁ、それは実際しょうがないな」

提督「このあたりも前の大震災で被害は受けてるはずだし……」

グラ「大震災か……」

グラ「むしろ、それだけ大きな地震の後でも町がなにごともなかったように復興しているのは……」

グラ「やはり日本はすごい国だな」フフッ



提督「地震と言えば……グラーフも面白かったなー」アッハハ

グラ「……怒るぞ」グスッ




―――高瀬川―――


テクテク……

グラ「アトミラール、小さい川がある」

提督「お、ホントだ」


高瀬川は、木屋町通りと呼ばれる南北の通りに沿って流れる人工河川。
かつては高瀬船という船が行き来していた底の浅い川で、七条近辺の高瀬川は地元住民によって整備されている。


グラ「川の両岸のランドスケープがとてもいいフンイキだ」

グラ「植栽も見事だ……どれだけ愛情を注いでいるかがわかる」

グラ「アトミラール、ここを北上しても構わないか?」

提督「うん、いいよ」




テクテク……

グラ「この国は電線がすべて地上に出ているんだな」

提督「あぁ、そうだね」

提督「今まで疑問に思ったことはなかったけど……」

グラ「私の国では、電線はすべて地中化しているんだ」

提督「あぁー……確かに写真とか見ても、こんな風に電柱とか余りないよね」

提督「はっきりいって、邪魔だよねこの電線」

グラ「ははっ、確かにな……」

グラ「でも、これはこれで日本らしくて……私は好きだな」




―――五条大橋―――

ザァァァァァ・・・


提督「おぉ、大きい通りに出たな」

グラ「ここがゴジョウ通り……」

グラ「ではあの大きい川がカモガワだなっ」

提督「そうみたいだねぇ」

グラ「どうだろうアトミラール、川のそばにベンチがある」

グラ「そこで昼食としゃれ込もうじゃないか」フフッ

提督「賛成っ!」グゥー




提督「ウメーウメー」ガツガツ

グラ「……」ジーッ

提督「んぁ?」

グラ「……クスッ」

グラ「アトミラール、これも食べてみろっ」アーン

提督「はむっ」モグモグ

提督「……うまい」

グラ「ミルクフランスだそうだ」フフッ

提督「……じゃあ、俺のもくらえいっ」アーン

グラ「んっ……これは……」

提督「日本の大発明品、カレーパンじゃ」ヘッヘッヘ

グラ(……おいしい……)モグモグ




ザァァァァァ……


グラ「……なるほどなっ」

グラ「このゴジョウオオハシでかつて、そのウシワカマルとベンケイが戦ったのか」

提督「さよう」キリッ

グラ「日本に伝わる伝説もなかなか面白いな」フフッ

提督「なんか、これだけはめちゃくちゃ覚えてたよ」ドヤァ


実際に平安時代に五条橋があったのは現在の松原橋(一つ北側にかかる橋)の位置だと言われている。
牛若丸が戦った橋はここではないのだが、提督には知る由もなかった……。


俺は2月に京都行ったから交通は楽だったな
清水寺で八ツ橋シューを食った思い出
平等院で初めて抹茶味を克服出来たわ

今日はここまでにします

この話は長いスパンで少しずつ書いていくので、途中で違う短編を挟んだりする予定です

もし触れてほしい観光地とかあったら教えてくださいオナシャス

ここまで読んでいただき、ありがとうございました

観光地ではないし、もう昼食後だけど一本うどん

>>30
宇治にも行ったんですね
二月は本当に楽ですね、寒さだけは頂けませんが……

>>33
それたしか北野天満宮の辺りで食べられました?
がんばります

あなたの純愛グラーフシリーズだいすきだ
長くやってほしいので期待
グラーフ可愛いなあ・・可愛いなあ!

>>36
ウレシイ…ウレシイ…(歓喜)
ローカルネタすぎてあれですが、読んでいただけてるとうれしいです

個人のお店(喫茶店など)に関してはプライバシーの問題も起こりかねないので明記は避けるつもりです
この辺りはあくまで架空のお店として扱います……申し訳ありません
紹介したいお店はいっぱいあるんですけどね(白目)


夜にまた再開します



ザァァァァ……


提督「よっしゃ、そろそろ……」

グラ「あぁ……行こう」

グラ「ええと……」ペラッ



グラ「……なるほど」

グラ「このままゴジョウストリートを東に向かえばいいそうだ」

提督「なんか坂になってるように見えるなー」

グラ「運動不足の解消だな、アトミラール」 クスッ

提督「うるせーやい」




グラ「アトミラールっ」

グラ「アトミラールの使っていたチャノミがたくさんあるぞっ」

提督「……俺のと全然違うべ……」

グラ「いや、そういう意味ではないんだ」 ガクッ

グラ「この日本の独特の陶磁器のことだ……」

提督「あ、そういうことね」 テヘッ



ここ清水五条周辺は古来から、清水焼の伝承の地として全国的に知られている。
毎年8月には陶器祭りが開かれ、川端通りから東大路通りに至るまでの道中で多くの陶器や出店が並ぶ。
また、大和大路五条より北側はかつて六波羅探題が置かれた場所であり、有名な六波羅蜜寺もここ。




グラ「……なるほど、あのノボリガマで昔のトウキを焼いていたのだな」

おじいさん「あぁそうだよ」

おじいさん「今じゃもっぱら電気釜で焼いてしまうがね」

グラ「そうなのか……ふむ」

グラ「興味深い話だったよおじいさん、ありがとう」 フフッ

おじいさん「べっぴんな姉ちゃんの質問やったら何でもオーケーやで」 ヘヘッ

おじいさん「ほな、楽しんでな」



グラ「アトミラール、“べっぴん”とは……どういう意味だ?」

提督「……ちぇっ」

グラ「?」




―――五条坂―――


ワイワイガヤガヤ
ドチャドチャジャポーン 


提督「ヒエーっ!一気に人が増えたなぁ!」

グラ「では……この坂の上にキヨミズノブタイがあるのだな?」

提督「そうみたい」

グラ「アトミラール、はやく行こうっ」 ダッ

提督「あ、ちょっと!」 ガシッ

グラ「!?」


ブロロロrrrrrr…


提督「道が狭いし、バスもたくさん通ってる」

提督「急いじゃ危ないよ……」

グラ「……スマナイ」 シュン





ワイワイガヤガヤ


グラ「アトミラール!マチヤだ!」

グラ「マチヤがあるぞっ!」パァァ

提督「おぉ、そうだな」

提督(そんなに珍しいものなんかなぁ)

グラ「コウシがかかっているし、ベンガラも塗られている……」 キラキラ

グラ「まさに……まさに……」

グラ「これこそ日本の家というものだなっ!」 ハァーッハァーッ

提督「そうだけど落ち着きなさい」




―――清水寺仁王門―――


グラ「赤い門だ、ここがブタイなのか?」

提督「いや違うでしょう」

提督「ここをくぐって、もう少し登ったとこらしいよ」

グラ「そうなのか……」

提督「あ、それと」

提督「日本の建物の敷居……この下の木は踏んじゃだめだよ」

提督「敷居を踏むことは、人の頭を踏むのと同じ…………らしい」

グラ「なるほど……分かった」 ヒョイ




―――清水寺 本堂―――


1633年に再建された清水寺の最も有名な建築物。
特徴的な本堂の前面は山からせり出す形となっていて、これを多くのケヤキ柱で支えている様から「清水の舞台」と称されている。
四季によって変わるロケーションを楽しむことができる。
ちなみに、1800年代には実際に200人近い虚け者がことわざ通り、ここから飛び降りたらしい。


提督「へー、すごいおっきい…」

提督「想像以上に雄大な景色だ、これは来て良かったなぁ」

提督「なっ、グラーフもそう思っ……」





グラ「……」カタカタ

提督「あれー?」




グラ「……あ、あぁ……そうだ……な」カタカタ

グラ「素晴らしい……景色だ……」カタカタ

提督(本堂の中見て何言ってるんだろうこの人)


グラ「……じ、実に堪能したぞ……アトミラール……」 クルッ

提督「……」

グラ「……そ、そろそろ……行こうk」カタカタ

提督「肩ポンっ」

グラ「ひぐっ!!!」 ビクゥッ




グラ「あ……あぁ……」ポロ…ポロ…

提督「高いところダメだったのか……」

提督「悪かったよ……」

グラ「……」グスッ

グラ「アトミ……ラールなど……」 ズズッ

グラ「もう……しらんっ……」グスッ

提督(えらいこっちゃ!)




―――二年坂―――


グラ「第一っ、貴官は前々から……」モグモグ

グラ「いたいけなレディにっ……」ハムッ

グラ「やってはいけない事をっ」モグモグ

グラ「何度も何度も……」ムグ…

グラ「……」ズズッ

グラ「……美味い……」 ボソッ


提督(お茶と和菓子を美味しそうに頬張る君を見てると)

提督(こんな出費、屁でもないと思える)クスッ




グラ「日本のチャガシはとても繊細だ……」

グラ「作り手の遊び心がよく伝わってくる」 フフッ

グラ「あれは……どうやって作られていたのだろうか?気になる……」

提督(機嫌が治ってなによりです) ホッ


グラ「アトミラール……」

提督「ん?」

グラ「少し、坂の麓まで戻りたい……よろしいか?」

提督「うん、いいよ」

グラ「そうかっ」




―――陶器屋―――



グラ「……すまない、付き合ってもらって」

提督「ううん、俺も嬉しいよ」

グラ「“メオトチャワン”はどうしてもここで欲しかったんだ」 ニコッ






グラ「そういえば……リョカンは、大丈夫なのか?」

提督「今が16時過ぎかぁ……」

提督「祇園で19時だから……まだ時間があるんだよね」

グラ「そうか、それならあなたと一緒に周辺を歩こう」

グラ「たしかギオンといえば、祭りではないかっ」

提督「……時期が違うんだよなぁ」

グラ「……」

グラ「」シュン




―――安井金比羅宮―――

テクテク

提督「おっ、こんなところに神社だ」

グラ「ジンジャ……テラとは違うのか?」

提督「うぅーん、詳しくは無いんだけど……」

提督「神様を祀ってるか、仏様を祀るかの違いなんじゃないかな」

提督「ちなみに、日本の艦艇にも小さい神社が設けられているぞ」

グラ「そうなのか?」

提督「あぁ、艦内神社ってやつね」




提督「……で、神社にはこういう絵馬がある」カラン

グラ「エマ?」

提督「そう、絵馬」

提督「神様に願い事を叶えてもらうために、こうやって……」クルッ


「あいつの縁談が破談になりますように」

「○○子が凄惨な○を迎えますように」


提督「……」ゾォーッ

グラ「ど、どうしたっ?」



安井金比羅宮は日本三大悪霊の崇徳天皇を祀る神社で、縁切り神社として知られる。
そのため、境内の縁切り縁結び石には幾多もの憎悪が込められた、縁切りに関する願い事が散見できる。

ちなみに境内のすぐ隣にラブホがある。




テクテク…


提督(あんな文章、この子には見せられん……っ!)

グラ(何があったのだろうか?)



提督「次は神社に行こう、そうしよう」

グラ(今のはジンジャではなかったのか……?)




―――八坂神社前―――


ワイワイガヤガヤ

提督「四条に着いたぞ……」

グラ「では、ここがギオンなのか?」

提督「そうみたいだねぇ」

グラ「なるほど、キヨミズに負けず劣らない賑やかさだな」

提督「実は俺ここ、昔来たことあるんだよ」 フフン

グラ「そうか、では案内は頼んだぞ」 ニコッ

提督「……全然覚えてないけどなっ」

グラ「」ガクッ




―――八坂神社 参道―――


八坂神社……通称「祇園さん」。
スサノオノミコトとクシナダヒメノミコト、スサノオの八人の子どもたちを祭神とした神社で、全国の八坂神社の総本社である。
かの有名な祇園祭りは7月に行われ、4月には隣接する丸山公園のしだれ桜を中心とした花見スポットとも化す。




テクテク

グラ「しかし……ジンジャの中の雰囲気は独特だな」

グラ「木々のこともあるが、何か重厚な印象を受ける」

提督「まぁ実際日本の神様が祀られてるところだからね」

提督「俺は大丈夫だけど今の時間、神社の空気がだめだって人もいるしな」

グラ「ふふん、私は平気だぞっ」

提督「んっ」ナデナデ

グラ「ん……」




―――鳥居―――


提督「さっき言い忘れてたんだけど、鳥居をくぐるときは」

提督「真ん中をさけて、一礼してから入るといいよ」

グラ「そうなのか?」

提督「うん」

提督「参道の真ん中は神様の通り道だからね」

グラ「なるほど、常に敬意を忘れてはならないということだな」


ペコリ




―――本殿―――


提督「手水舎で手は清めたな?」

グラ「あぁ!」



提督「お参りをするときはまず賽銭に小銭を入れて、鈴を鳴らすんだ」

グラ「ゴエンダマを出して……」

チャリン
ガラガラガラ

グラ(ニレイ)ペコ ペコ

グラ(ニハク)パンッ パンッ

グラ(イチレイ……) ペコッ……


グラ(―――――――……)ジッ・・・



提督「よくできました」

グラ「ありがとう」フフッ


明日早出なので今日はここまでにします

(何日かかるか)これもうわかんねぇな

見てくださった方、ありがとうございました




提督「君は実に喜怒哀楽がはっきりしている」

グラ「な、なんのことだ……」 ションボリ



提督(おみくじの凶でここまで落ち込むとはなぁ)





―――祇園四条 路地―――


京都の古くからある町には“路地”が多く存在するが、この祇園界隈も例外ではない。
よく誤解されているが、家と家の間にある細い道のうち、“路地”と呼ばれるのは奥が家で行き止まりになっているもの。
先の通りまで抜けているものは正式には“辻子”と呼ばれる。



グラ「“イチゲンサンオコトワリ……?”」

提督「あぁ、いかにも繁華街の裏手って感じだなぁ」

提督「紹介制のスナックとかのことだよ」

グラ(スナック……女性にオシャクをしてもらう店のことか……?)

グラ「……アトミラールも、こういうところには行ったことがあるのか?」

提督「うん、海軍にいたころはよく行ったねー」

グラ「そうか」 シュン

提督「?」




―――祇園 よーじや―――


グラ「アトミラール、ここ……少し覗いてもいいか?」

提督「おーけい」



グラ「“アブラトリガミ”……?」

店員「はい!お顔をこれで優しくお拭き取りいただきましたら」

店員「お肌の余分な油分を取り除いてくれるんですよ」

グラ「ふむ……なるほど……」


提督「なるほど、ここは化粧品屋かぁ」




テクテク

グラ「アトミラール……よかったのか?」

提督「ん?」

グラ「アブラトリガミに化粧水にカオリセッケン……」

グラ「こんなに買ってもらってしまった……」

提督「いいのいいの」

提督「女性の化粧が大変なのは分かってるからな」

グラ「……また何かで、返す」

提督「じゃあ黄金チキンのムネ奢って」

グラ「もうすぐ旅館で夕飯だろう……」 クスッ




―――祇園 旅館―――


女将「本日は遠路遥々、当旅館にお越し下さり……」

女将「誠にありがとうございます……」ペコ

グラ「っ!」

グラ「こ、こちらこそっ」ペコッ!

提督「え」

女将「あら……」



グラ「……え」




テクテク

グラ「……」 カァー…

グラ「い、いきなりお辞儀をされたから……わ、私も……と……」 ボソッ

提督「はははっ」

仲居「うふふ……お二人はご夫婦でいらっしゃるのですか?」

提督「はい、そうです」ニコッ

グラ「……」カァー…

グラ(顔の火照りが止まらない……!どうする……!)




提督「おぉ~、見事な中庭だぁ」

グラ「素晴らしい、これがこの国のランドスケープの花形か……」 フフッ

グラ「私の祖国では見られない植物ばかりだ」パシャッ

提督「撮るねぇ~」

グラ「あぁ、一つ一つが貴重な体験だからな」

グラ「今日だけでもかなり容量を使ってしまったよ」

提督「ほう、見せて見せて」サッ

提督「よく撮れてるな……ん?」




提督「清水の舞台から撮れたんだな、写真」

グラ「写真を介してなら……私も感動を味わえると思ったんだ……」シュン

グラ「日本人が一度は行くところだと聞いたから……」

提督「ん、えらい」ナデナデ

グラ「……」

グラ(……素直に嬉しいな)ニコッ

提督(京都タワー行ったらどうなってたんだろう)




仲居「お食事をお持ちしました……」スッ

提督「よしきたっ」



グラ「おぉ、これが“ヘヤショク”……」ジーッ

仲居「こちらの茶飯は吹き零れましたら、蓋を少しずらし」

仲居「そのまま20分ほどお待ちください……」


提督(おかずで飯を食らう性分だからなぁ)

提督(ご飯を後で頂くのを少しもったいなく感じるのは俺だけでしょうか)

仲居「では、ごゆっくりどうぞ……」




グラ「おぉ……見たことのない料理ばかりだ……」

グラ「美味いっ」 ムグ

提督「このあんかけみたいなの、胡瓜なんだって……すげえ」

グラ「先ほどのチャガシもそうだが……見た目もとても楽しいな」 フフッ

グラ「これはアユ……というのか?」

提督「そうだよーウマイヨー」

グラ「……本当だ」ムグムグ

グラ「スシじゃない生の魚もある、この緑の添え物を乗せるのか……?」




グラ「っ――――――!」 バタバタ

提督「つけすぎっ!」




提督「ほれほれ、グラさんも一杯」 トクトク

グラ「おぉ、これは分かるぞ……ニホンシュだな」 フフン

グラ「何と書いてある……“タマノヒカリ”?」


京都市伏見区は月桂冠をはじめとした多くの酒蔵が存在し、中でも玉乃光酒造は純米吟醸、純米大吟醸にこだわった酒蔵として全国的に知られている。


提督「ふふ、もう潰れちゃだめだぞー」

グラ「もうチャンポンはしないと言っただろう」




グラ「意外だな、デザートはシャーベットかぁ」 シャクッ

グラ「……なるほど、ユズの香りがする」 トロン

グラ「これも好きだな……」フフッ

提督「ねー」

提督(肌が白いから顔赤くなってるのがよく分かるなぁ)

提督(良い酔い方、とでも言うのかな)




「ごちそうさまでした」



ファサッ……


グラ「おぉ……日本のリョカンは食後にフトンをひいてくれるのか」

提督「そうだよ」

提督「こういう旅館で働いてる人ってすごいよな、何から何まで」

グラ「あぁ……本当にな」

グラ「……そうだ、今の間にシャワーを浴びてこよう」スッ

仲居「ごめんなさいね……せっかく日本にいらしてるのに……」

仲居「温泉とか、ご期待もされていたでしょう?」

グラ「いや、いいんだ……ここは温泉の湧かないところなのでしょう」

グラ「温泉が無くとも、ここはとても良いところだ……」ニコッ

仲居「あら、ありがとうございます……」ニコ




バタン

提督「ふー、さっぱり」フキフキ

グラ「あ、アトミラールっ」

提督「ん?」

グラ「」ポンポン



提督「ん?」

グラ「」ポンポン



提督「ん?」

グラ「ヒザマクラ……する……」シュン


すこしはなれます



提督「……いいなぁこれ」 クテン

グラ「そうか……それはよかった」 フフッ

グラ「……」

グラ「……」 ナデ ナデ

提督「……」

提督「……いい……」




グラ「もうこんな時間か……」

グラ「そろそろ、フトンに入ろう」 ポンッ

提督「……名残惜しいけどしかたがない」ムクッ

提督「それにしても、本当に布団が一つとは」

グラ「私は……構わないぞ」

提督「……俺も」







グラ「あ……アトミラール……」ハァ ハァ

提督「……なに?」ハァ ハァ

グラ「……好き……」

提督「……俺の方がね……」

グラ「……んっ」

提督「……っ」


………………
…………
……




チュン チュン


提督「ブェックショーイ!」

グラ「アトミラール、早く服をっ」 アタフタ…

提督「……」チーンッ

提督「うぅ……暖かいお茶がありがたいなぁ」

グラ「スマナイ……」 シュン

提督「いやいや……こちらこそ……」

グラ「……」

提督「……」




女将「朝食、本当によろしかったのですか……?」

提督「はい、朝は街で食べるって決めていましたし……」

提督「あっ、夕食ごちそうさまでした。美味しかったです」

女将「そうですか……そう言っていただけると嬉しいです」ニコ

女将「では、お気をつけて……」

グラ「オカミサン、ありがとう」ニコッ





―――四条大橋―――


提督「さて、ここを渡れば京都一の繁華街かぁ」

提督「あの辺で、コーヒーでも飲み歩きましょうや」

グラ「あぁ、いいなっ」

グラ「コーヒーは大好物だぞ」 フフッ





―――四条河原町―――


ワイワイ ガヤガヤ

グラ「ここも、すごい人の数だなっ」

グラ「そして車も、かなり混み合っている……」

提督「街の規模に比べて車道が狭そうだし」

提督「ここは車で走りたくないなぁ……」

グラ「そんなことを言うんじゃないっ」メッ


四条~三条間のうち、おおよそ高倉通りを中心に烏丸通り~木屋町通りにかけて、比較的都会的空間が広がる界隈。
烏丸近辺はオフィス街となっていて、それ以東は多くの百貨店や商店、飲食店のひしめく商業空間が広がっている。
歴史観光に疲れた修学旅行生の散財先でもあり、京都の大学生の主なデート先でもあり。

そして、独自のヒエラルキーを築きあげた喫茶店激戦区でもある。


例によって早出のため、今日はここまでにします

鞍馬と嵐山……両方行くべきか悩みますね(白目)

ここまで見てくださった方、ありがとうございました

大事なシーンが足りないなぁ…足りなくない?

>>105
おう、考えといてやるよ(書くとは言っていない)

雰囲気にそぐわなかったので許して下さいまし

すごく今更ですが鉾の曳き手の方が見てくださってたんですね……
間違ったことが書けない(白目)




―――1軒目―――


カランカラン……

「いらっしゃいませ」


提督「フゥーっ」

提督「これはいい雰囲気だね」

グラ「あぁ……私の国でも馴染みのある設えだ」

グラ「この国でも楽しめるとは思わなかったぞ」 ニコ


存外に知られていないが、京都に根付いた喫茶店は多数存在する。
それは四条河原町周辺の界隈に限らず、いずれもコーヒーや軽食の味、建物のファサードやインテリアによる他店との差別化が熱心に研究されているため、レベルは高いといえる。
学生の街と呼ばれる京都の中にあって、値段をリーズナブルに抑えた店が多いのも特徴。





グラ「すまない、ブレンドコーヒーを二つと……」

提督「トーストセットをふたつくださいっ」

「かしこまりました」



提督「この辺りは電気街なのかな」

提督「大きいのも小さいのも、電気屋がいっぱいあるぞ」

グラ「キョウト駅近くにも大きな電気屋があったぞアトミラール」

提督「ヨドバシか……」

提督「こういう話もなんだけど、あんな競合店ができると大変なんだろうな……」




グラ「……」ズズッ……

グラ「ふぅ……」

グラ「とてもフルーティだな、苦みより酸味が効いている」

グラ「実に美味しいコーヒーだ」ニコッ

提督「」モグモグ

提督「ゴゾウロップニシミワタルネ」




「ありがとうございました」


グラ「なかなかのコーヒーだ……」

グラ「他の店も期待ができるな」フフッ

提督「そうだねぇ」フフン

提督「次はどうせなら……」

提督「ザ・京都なところがねらい目か……」

グラ「どういうことだ?」

提督「いや、分かんない」ポケー

グラ「まだ寝ぼけているのか、あなたは?」クスッ




―――2軒目―――


提督「本当に見つけちゃったよ……」

提督「ザ・京都」

グラ「これは……マチヤではないのか!?」

提督「町家で間違いないね」

提督「中に喫茶店があるんだ……」

グラ「なるほど……工夫が感じられるな……」

グラ「固定概念にとらわれない店のあり方だ」フフッ

グラ「アトミラール、入るぞっ」

提督「オケーイ」ニコ




グラ「……」ズズ-ッ

グラ「これはコクがあるな……」

グラ「ここはコーヒーショップも兼ねているだけに、種類が多いのだな」

グラ「うむ……飲み比べてみたいな」フフッ

提督「なるほど、この町家と離れで二つの空間を作ってるんだ」

提督「町家を改装した方を表にしてるから、話題性も十分だね」


京都には昔ながらの町家が点在するが、最近では空きのできる町家を店舗に改装する試みが盛んである。
一見風情のある町家の中にカフェやイタリアンレストラン、サイクルショップやアパレルショップなどがセンスよく置かれている。
ただ排気や上下水道などの室内設備を大幅に改装するため、既存の構造に大きく手をいれてしまう場合もあるため、思いのほか手間のかかる工事なのだ。


眠スギィ!

大変短いですが、ここで寝かせていただきます……申し訳ありません




―――1928ビル―――


提督「……『ギア3階にてロングラン公開中』……」

提督「このビルで?」

グラ「窓が星形だぞ、アトミラールっ」

グラ「なんだかかわいらしい意匠だ……」 フフッ

提督「このビルにもカフェがある」

提督「ここを最後にしよっか」


御幸町通りと三条通りの角地に立つ京都市登録有形文化財。
その名の通り、1928年に大毎新聞(現在の毎日新聞)京都支社として建設された建物だが、その独創的なデザインから耐震改修を経て今もなお現役で活用されるビルだ。
館内にはギャラリーや劇場、カフェがあり、センスに溢れた京都において常にカルチャーの中心となっている場所でもある




―――3軒目―――


提督「あれ、今度はコーヒーじゃないの?」

グラ「……あぁ」 キョトン

グラ「おかしい……か?」

提督「いやいや、そんなことない」

提督(そりゃ誰だって)

提督(ココアを飲みたいときはあるさ)ズズ…




グラ「うむ……今日はどこに行こうか」ペラッ

グラ「……そういえば、今日の宿泊先はどこなんだ?」

提督「…………」

グラ「…………」

グラ「予約していたのは昨日のリョカンだけなのだな……」

提督「」コクリ





提督「すまん……」

提督「二日で回れると踏んでいたから……」ガックシ

グラ「いやいや、いいんだっ」

グラ「プランを決めないと言った私にも責任はある」

グラ「それに……」



グラ「この先、なにがあるか分からないのが旅の醍醐味なんだろう?」 フフッ





………………
…………
……


―――三条大橋―――

ザァァァァ……


提督「堪能したなぁ……」

グラ「あぁ、実に満足だ」 フフッ

提督「……本当に良かったの?」

提督「雑誌を見た感じ、東の方に観光地がいっぱいあるんだけど……」

グラ「あぁ……いいんだ」

グラ「ヘイアンジングウやナンゼンジ、ギンカクジも見てはみたかったが」

グラ「昨日は人の多いところを歩いたしな……」




ザァァァァ……


グラ「それに京都の魅力は観光地だけじゃないんだろう?」

グラ「なら、こうやってあなたと川辺を歩く……」

グラ「日本ではこれを“オツ”というらしいじゃないか」 フフッ

提督「……グラーフ……」



提督「なんか悟った?」

グラ「人をオボウサン扱いするんじゃないっ」




―――鴨川(三条)―――


イチャイチャ

グラ「なんだこれは……」

提督「ゲェーッ、アベックが等間隔で座ってるーッ」


三条大橋の下を覗くと、このような光景が度々見られる。
理由は特に分かっていないが京都デートの定番となっていて、幸せの絶頂にある男女を見るのは微笑ましい。

……昔、鴨川のこの周囲一帯が罪人の処刑場だったことは伏せておく。





提督(俺たちも真似してしまった……)

グラ「アトミラール」

提督「ん?」

グラ「……手を……繋いでほしい」

提督「……ん」


ギュ





―――鴨川(丸太町)―――


テクテク

提督「歩いてたらちょっと喉かわいたね」

提督「一回上がって、自販機で飲み物買おう」

グラ「あぁ……賛成だ」

グラ「だが、喫茶店でたくさんコーヒーは飲んだ……二人で一本でいいだろう」

提督「オッケイ」

提督「少し暑いから冷たい炭酸が飲みたい」

グラ「私は寒いから暖かいミルクティーがいいぞ」

「…………」


ガコン


グラ「冷たいミルクティー……」 シュン

提督「誰も望まぬ結果に……」 ガクッ




テクテク

グラ「おぉ、こんなところに猫がいるぞ……」

ニャーッ

グラ「まてまてっ」 フフッ

ダダッ……



提督「ははは、猫であんなにはしゃいでら」

提督「可愛いワイフを持ったもんd……ん?」


ボチャン


提督「今川にいたあいつはなんだ?」


近年、鴨川において外来種であるヌートリア(カピバラに似たげっ歯類)が大量発生している。
見た目は可愛らしいが凶暴で、雑食のため多くの動植物を食い荒らして問題となっている。




キヤッ キャッ

グラ「子供が河原でバドミントンを楽しんでいるな」フフッ

提督「元気があってよろしいなー」

提督「そうだ、俺たちも今度バドミントンやろうよ」

グラ「あぁ、いいな」ニコッ

提督「負けた方は草を食う」

グラ「…………」キッ

提督「……冗談だから」




―――出町柳―――


ザァァァア……

グラ「立派な三角州が見えるな」

提督「てことは……」ペラッ

提督「鴨川はこの先から加茂川と高野川に分かれるのね」

グラ「では、ここらで上がろうか」

提督「そうだな」



この三角州の北側には下鴨神社という神社があるが、5月にはここと上賀茂神社に跨って「葵祭」が行われる。
祇園祭が庶民の祭りであったのに対して、葵祭は貴族の祭りであったとされ、平安時代における祭りとはこの葵祭りを指した。




―――百万遍―――


提督「あぁ……なるほど、ここが京大なのか!」

グラ「“キョウダイ”……?」

グラ「では……私の義兄さん?」チラッ

提督「……」

グラ(リュウジョーに教わったジャパニーズボケを無視だと……) ガクッ


京都大学がある場所がここ(正門はおそらくもうすこし南側)。
ここに限らず京都市内の大学は市の面積に対して多く存在し、京都が学生の町と呼ばれる所以となっている。


今日はここまでです

明日はおそらく書けません、申し訳ないです……

あと銀閣寺は正義超人の生誕の地らしいので取り上げようと思いましたがやめました。


読んでくださった方、ありがとうございます

夜の予定が潰れたんで昨日と同じぐらいの時間にまた書きます

>>141
きょうとばくじょう……?(無知)
失恋ソングならくるりの京都の大学生もおすすめです




テクテク

グラ「アトミラール……お願いがある」

グラ「ランチなんだが、私はラーメンというものを一度食べてみたいっ」

提督「ほほう」

提督「女の人って、あまりラーメンは好きじゃないと思ってたよ」

グラ「店のラーメンはそもそも食べたことがないから分からないが……」

グラ「どちらかというと、店構えが一人では入りにくいというか……」

グラ「この先はラーメンが有名だと書いてあったから、これを機にと思ったんだ」

提督「あぁ~なるほど」

提督「いいよ!」 ニコ






―――一乗寺―――

どれほどの知名度があるかは定かではないが、ここ一乗寺は関西屈指のラーメン激戦区である。
鶏ガラベースの京都ラーメンから次郎系リスペクト、豚骨醤油や横浜家系など、レベルの高いあらゆるラーメンをここで食すことができる。
こってりで有名な天下一品の本店もこの地区に存在する。


提督「今日もけっこう歩いてるからガッツリいきたいけどなー」

提督「グラやんはどんなのが食べたいん?」

グラ「うぅむ……」ペラッ

グラ「どれがオーソドックスというわけでもないようだからな……」 ペラッ

グラ「ここはアトミラールに任せて良いか?」

提督「分かった」

グラ「スマナイ」





―――天天有―――

テクテク……
ピタッ

提督「……決めた、コラーゲンたっぷりの鶏がらと行こう!」

グラ「おぉ、なんだかいい響きだぞ」 ワクワク

提督「そうだろうそうだろう」 フフン

提督「すいませーん、二人なんですけど……」 ガラッ


……
…………
………………


「ハイ、煮玉子チャーシューとライスとから揚げ、それから煮玉子ラーメンですね」

グラ「おぉ、来たなっ」

提督「唐揚げでけぇなあ」

提督「よっしゃ、食うぜ食うぜー」


「いただきますっ」





提督「ウメーウメー」ガツガツ

グラ「は……」モグ

グラ「……んっ」 アセアセ

提督(ん?どしたんだ?)


客「」ズズーッ


提督(あっ、なるほどね)

提督「ここは麺を“すすって”もいいんだよ」

グラ「なっ……そうなのか?」 ガーン

グラ「マナーに反するのではないか?」

提督「日本のラーメン屋は治外法権なんですよ」

グラ「そうだったのか……」



グラ「」ズズーッ

グラ「……いけるなぁ」 ニコ





「ごちそうさまでした」


ガラッ


提督「はい、ブレスケア」

グラ「ありがたい……これを噛めばよいのだな」ポリ

提督「」ポリ

提督「あの組み合わせなら、ビールがあっても良かったなぁ」

グラ「日本ではラーメンとビールの組み合わせがあるのか?」

提督「そうだね、合うねー」

提督「たぶん日本のビールだから合うんだろうけど」

グラ「なるほど……」

グラ「今度、試させてくれっ」

提督「また御同行させていただけば良いのですね」フフッ





―――恵文社―――


グラ(とても……洒落た店だ……)

グラ「」ジーッ

提督「……入りたい?」

グラ「あぁ……良いか?」

提督「もちろん」


恵文社は一乗寺の有名な本屋。
本屋でありながら雑貨も多数置かれており、セレクトショップのような形態も持つ。
肝心の本も専門書や画集、洋書など普通の本屋ではお目に書かれないレアものを多く取り扱う店だ。






提督(すげーなぁ、その筋の人が喜ぶ雰囲気出てるよ)

提督(これは……映画年鑑か、映画は大好きだぞ)ペラッ

提督(……)ペラッ

提督「」チラッ

グラ「……」ペラッ

提督(庭園の写真集か……)

提督(もともと、そういう仕事がしたかったのかなぁ)ペラッ






―――一乗寺駅―――


グラ「本など久しぶりに買ったな……」

提督「そうなの?意外だ」

グラ「話すならまだしも、日本語を読むのはあまり得意ではないからな……」

グラ「写真集程度の文字数なら大丈夫なんだ」

提督「あぁ、そういうことか」




グラ「ちなみに……私たちはどこへ向かっているのだ?」

提督「ふふふ……それはだな……」

提督「“温泉”だ」 ニヤリ





ガタンゴトン……


グラ「このキョウトにも、温泉はあったのか……」

提督「そうだよ~」 フフン

グラ「昨日はナカイサンにああ言ったが……」

グラ「やはり温泉に入れるとなると……すごく嬉しい」 ニコッ

提督(本当に嬉しそうだ)

提督(昨日の温泉云々の会話の後で必死でググった……とは言わないでおく)






ガタンゴトン……


グラ「この打ち放しコンクリート……なんの建物だ?」

提督「なんだろう、学校かな?」


ガタンゴトン……


グラ「だんだん山の中に入って行くな……」

提督「人里が離れていく……」


ガタンゴトン……


提督「パノラマ車っていうのかな、こういうのすごくいいね」

グラ「ア、アトミラール、日本の鹿がいるぞっ」

提督「なにっ、どこだ!?」キョロキョロ


……
…………
………………




―――鞍馬駅―――


提督「案外、あっという間に着いたなー」

グラ「なかなか楽しい列車だったぞ」フフッ


グラ「この駅もなんだか可愛らしい設えだ……ん?」

グラ「アトミラール……あれはなんだ?」

提督「あれは……天狗だね」

グラ「テング?」

提督(なんか字面が卑猥だなぁ)






―――鞍馬寺―――

かつて牛若丸……もとい源義経が天狗の下で修行したという伝説で知られる鞍馬の地。
鞍馬寺の本堂は標高410mの位置にあり、本堂を参るには相応の体力を要するものの、そこから望む景観は格別である。
かつてはケーブルカー(宗教法人では唯一の鉄道事業主であるらしい)によって上り下りが可能だったが、今はなぜか使えない。




グラ「アトミラール……ここは登らないのか?」

提督「え、だって……グラーフ高いところ苦手じゃ?」

グラ「う、確かにそうだが……」



グラ「あなたが支えてくれるなら……がんばれる」ニコ

提督「……」

提督「お任せくださいっ」キリッ






―――本堂―――


提督「ゼーハー」

グラ「うぅ……スマナイ、アトミラール」 シュン

提督「ゼーハー」

提督「いいんだ……それより……」


ギュ

グラ「あ……(手……)」

提督「こっち……見てごらんよ」





グラ「高いところの景色……」

グラ「……怖くない」

グラ「すごくきれいだ……」 ニコ



今日はここまでです。
大変遅筆で申し訳ないですが、繁忙期なので許してくださいなんでもしますから

神社の参拝についてご意見いただきましたが、先に鈴を鳴らしてから賽銭を入れるみたいですね
全く知りませんでした……お恥ずかしい限りです

読んでくださった方、ありがとうございます。

ケーブルカーは無くなってなかったんですね!やったぜ。
京都慕情聞いてみました。京都の人目線だとやはり河原町や烏丸がよく出てきますね。

少しだけ書きます。





提督(この先も義経堂というのがあるみたいだけど……もう限界にゃしい)ハァハァ

グラ(アトミラールは大変疲れているようだ)クスッ

グラ「そろそろ……降りようか」ニコ

提督「さんせい……」



提督「降りるときの方が危ないから、ゆっくりね」

グラ「う、うむ……」ソローッ

提督「そうそう」






提督「ようやく駅前まで戻ってこれたぞ……」ゼイゼイ

提督(自身の体力の無さに泣きそうDA☆)

提督「温泉行きの送迎バスがあるみたいだけどまだ来てないなぁ」

グラ「アトミラール……これはなんだ?」ヒョイ

提督(ここはお土産屋か)

提督「そりゃ紙風船だね」

グラ「カミフウセン……」

提督「膨らませて、突いて飛ばしたりして遊ぶ玩具だよ」

グラ「ふむ……」




グラ「買ってしまった……」

提督「旅行中はどうしても財布の口が緩くなるね」クスッ





ブロロロrrrr……


グラ「それにしてもすごい所だな」

グラ「見渡すばかりのミドリだ」

グラ「街からそれほど離れているわけでもないだろうに……」

グラ「なぁアトミラール……」



提督「ウップ」

グラ「!?」






―――くらま温泉峰麓湯―――


グラ「着いたぞアトミラールっ」サスサス

提督「オゥ」

グラ「バス酔いするなら、一言言ってくれれば……」サスサス

提督「昔はそうでもなかったんだけどなぁ」 ハァハァ

提督(市バスを使わなくてよかった……)




提督「うん、もう……大丈夫」

提督「ありがとう」 ニコ

グラ「ふふっ、お互い様だ」 ニコ






京の奥座敷とも呼ばれるここ鞍馬の温泉は、山間に湧く単純硫化水素泉。
この峰麓湯は日帰り可能な温泉宿で、湯は無色透明で循環加温式のため残念ながら硫黄の臭いはほとんど感じられない。
ただ、グラーフのような外国の人は硫黄の臭いがだめな人が多く、露天風呂のロケーションは文句無しに素晴らしい。
また湯温もちょうど良い温度となっていて、かえっておすすめしやすい。


提督「宿泊は部屋がいっぱいでできないらしい……」ガクッ

グラ「それは仕方ないな」フフッ

提督「……でも、タオルや浴衣がレンタルできて助かった」 ホッ

提督「じゃあ……一時間ほどしたら休憩所にいるようにするよ」

グラ「あぁ、了解だ」

提督「では、ごゆっくり……」

グラ「あなたもな」






チャプ……

グラ「ふぅ……」

グラ(あぁ、これは良いな……)

グラ(これはロテンブロというのか)

グラ(室内外の空間の繋がりを意識した、日本らしい風呂のつくりだ)フフッ

グラ(これなら長く入れるな……)ザブ



グラ(やはり、日本人と私の肌の色は……かなり違うな……)

グラ(……)

グラ(私は白すぎる……アトミラールは……)

グラ(もっと健康的な色をしている方が喜ぶのかな……)






グラ(……)チャプ

おばあさん「お嬢さん、お湯にタオルつけたらあかんで~」

グラ「えっ」

おあばさん「みんなで入るお風呂やからね、清潔にせなあかんよ」

グラ「」 シュン



おばあさん「あんた、どこから来はったん?」

グラ「わ、私はヨーロッパからだ……」 チャプ

おばあさん「ヨーロッパ!そんな遠い所から来てはんのやね~」






おばあさん「お一人で?」

グラ「いや、日本人の同行者がいるんだ」

おばあさん「旦那さん?」フフッ

グラ「厳密にはまだだが……そうだな」フフ

おばあさん「コクサイケッコンっていうんやね?素敵やわぁ」

おばあさん「あんた、美人でお肌も綺麗やし……ラッキーな旦那さんやね」ニコ

グラ「え……私の肌が……?」

おばあさん「あんた以外、おりはしませんよ」フフフ

グラ「……ありがとう」カァー……





提督「あぁ^~ぁぁぁぁぁl」ブブブブブブ

提督「うちにもマッサージ機ほしぃぃぃぃぃ」ブブブブブブ






ガラッ

グラ「上がったぞ……アトミラール」

提督「やぁやぁグラーフ氏」ゴロゴロ

提督「風呂上がりのマッサージに個室の休憩所」

提督「やめたくなりますよ~娑婆~」ゴロゴロ

グラ「何をいっているのだアトミラール」クスッ






グラ「」フーッ

グラ「できたっ」

グラ「」パンッ

グラ「フフフ……」パンッ

提督(今どきの子供も紙風船でなんか遊ばないのに) クスッ

グラ「」パンッ

提督「……」






提督「いくゾ~」

グラ「こい、アトミラールっ」

提督「次、落とした方が罰ゲームね……」ゴゴゴ

提督「語尾に“わん”を付けるッ」 クワッ

グラ「ぐ、正気かアトミラール……っ」

提督「あぁ、本気だぜ……」



ポンッ






提督「フゥ、けっこう楽しいなこれ」

提督「ねぇ……グラーフ君?」ジッ……

グラ「……そ、そうだな…………」



グラ「…………」チラッ

提督「…………」

グラ「……そうだ……わん……」 カァーッ



提督「」ニコッ



仕事いくのでとりあえずここまでで
すみません

どうしてここに赤木しげるがいるんですかね……

続き書きます




提督「風呂上りと言えばこれだよねー」

提督「グラーフはどっちがいい?」

提督「コーシーかフルーツか普通のか」

グラ「……コーヒー牛乳がいいわん」

提督「…………」 ガコン

提督「……もう語尾つけなくてもいいのに」 スッ

グラ「…………」 キュポッ





……
…………
………………


提督「よしッ!とれた!」

提督「空きのあるホテル、叡山電鉄の途中にあったよ」

グラ「おぉ、すまないな……アトミラール」

提督「いやいやー」

提督「ただ、飯は外で食べなくちゃいけないみたい」

グラ「まぁ……それは問題ないだろう」

グラ「せっかくだから、美味しい店をさがしてみよう」 フフ

提督「そうだなぁ」






ガタンゴトン……


グラ「もうすっかり日が暮れてしまったな……」

提督「そうだなぁ」

提督「そういえばこの線路の周り、紅葉シーズンの夜はライトアップされるらしいね」

グラ「コウヨウ……」

提督「あ、紅葉知らない?」

グラ「いや、分かるぞ」

グラ「私の祖国でも紅葉は見られるからな」 フフン

提督「えぇっ!そうなの!」 ガーン






―――修学院駅―――


提督「ホテルが駅からさほど遠くなくて助かったよ」

提督「チェックインは終わったし……」

提督「早速どこかで晩飯にありつくとしましょう」

グラ「あぁ……分かったわん」 ニコ




提督「ん?」






提督「……とはいったものの……」

提督「居酒屋とかはあっても」

提督「これぞ京都ってのはなかなか無いなぁ」 シュン

グラ「ここは住宅地のようだし、仕方がないだろう」 クスッ

グラ「私はその居酒屋に行ったことがない」

グラ「だから……な、アトミラール?」

提督「ん、分かった……そうしよっか」






「いらっしゃーせー!」

グラ「なんと威勢の良い接客だ……」

グラ「活気があって、良いではないか」 フフッ

提督「確かにそうかもしれない」



「お飲み物はお決まりですかー?」

提督「じゃあ俺生で……グラーフは?」

グラ「では、私も同じで」 ニコッ

「かしこまりました!」






ワイワイガヤガヤ

グラ「以前から思っていたのだが……」

グラ「日本のビールはピルスナースタイルが主流なのだな」

提督「ぴ、ぴるすな?」

グラ「ピルスナーは……たとえば、これがそうだな」トン

提督「一番搾り……」

グラ「というより、日本の一般的なビールはほとんどがそうらしい」

グラ「私の国でも飲むことはよくある、どうりで馴染みやすいわけだ……」フフッ






提督「グラーフの国では他にも種類があるってこと?」

グラ「あぁ」

グラ「たとえば、ピルスナーの他にもケルシュというものがあるが」

グラ「それはこの国でいう“軽い”飲み口で……」

グラ「デュンケルやシュバルツというビール」

グラ「これは黒くて“しっかりとした”味わいだ」

グラ「私はこちらをあまり飲むことはないがな」フフッ

提督「ほぇー」






グラ「うん、美味しい」ニコ

グラ「このホッケのように……」

グラ「日本食はうまくこのピルスナーと合うようになっていることが多いが……」

グラ「さきほど食べたラーメンとの組み合わせはまだ想像ができないな」

提督「まぁ一緒に飲むというより、飲んだ後に食べる方が美味しく感じるけどね」

提督「そりゃもうびっくらこくぞー……後でやってみる?」

グラ「それは遠慮しよう」クスッ

グラ(あなたのために、体重は維持しておきたいのだ……)






「ありがとうございましたー!」


グラ「ふぅ……満足だ」

提督「それはなによりで」



提督「……そうだ」

グラ「ん、なんだ」

提督「もう一軒どう?」

提督「……俺の奢りで」






グラ「そんな、奢りなど……」

グラ「急にどうしたのだ、アトミラール?」 オロオロ

提督「いや、深い意味はないよ」 クスッ

提督「ただ、せっかくの“オデカケ”だし……」

提督「それらしいことをしようかなって」

グラ「そういうものなのだろうか……」

グラ「……では」

グラ「有り難くご一緒させていただこう」 ニコッ


ギュ






提督「俺はスレッジハンマーを」

グラ「では私はラドラー……できるか?」

「かしこまりました」



グラ(ショットバーか……)

提督「ん?どうしたの」

グラ「いや……アトミラールがこういった所に来るイメージがなかったんだ」

提督「あはは、そのアトミラールだから来るんだよ」

提督「……てか、ぶっちゃけお酒に関してはこの手のショートカクテルが一番好きかも」






チン


提督「ふぅ……」

提督「染みるなぁ」フフッ

提督「鎮守府にいたころはウォッカなんて、飲ませてもらえなかったからなぁ」

グラ「それは、そうだろうな」クスッ

グラ「そもそもあなた自身が存外、酒のマナーに厳しい人なのだから」

提督「厳しいというか……」

提督「お酒を人様に迷惑をかけた時の言い訳にしてほしくないだけだよ」

グラ「……なるほどな」






グラ「♪」ツツッ…

提督「……君が飲んでるそのラドラーって」

提督「名前はどういう意味なの?」

グラ「ムゥ……私もよくは知らないが……」

グラ「たしか“自転車乗り”のような意味だったと思うな」

提督「自転車乗りかぁ」



提督「自転車……」


……
…………
………………






提督「ホテルに着いたー!」

提督「これが俺のフェイバリットホールド!」バッ

提督「ホテルベッドダーイブ!」ババッ

ボフッ

グラ「みっともないからやめよう、アトミラールっ」

提督「そうおっしゃらず……ほれほれ」ポフポフ

グラ「……まったく」クスッ



ポフッ



すこし離れます
すみません





提督「」スー…ピー…

グラ「アトミラール……寝てしまったか」 フフッ

グラ「……私の身体が綺麗だと言ってくれた人……」゙

グラ「……こうやって、そんなあなたの胸元に収まる度に思うよ」



グラ「……私の居場所はひとつになってしまったんだな」ギュ…




すみません、やっぱり寝ます……

申し訳ありません……明日は頑張ります



………………
…………
……


提督「ゥマイゥマイ」モグモグ

グラ「取りすぎだぞ、アトミラール」クスッ

提督「ホテルの朝食バイキングとはそういうものだヨ」モグモグ

提督「……君こそ甘いものばかり取りすぎだぞ」ビシッ

グラ「そ、それは良いんだ……」

グラ「朝は糖分を摂取せねば脳が働かないのだ……」

提督「……」

グラ「なんだっ」

提督「なんでも」





提督「まぁ食っとけ食っとけぃ」

提督「今日は存分にカロリーを消費してやるんだからな」






―――出町柳駅―――


グラ「今日は自転車を使うとは……どういうことなんだ?」

提督「うん、つまるところレンタサイクルだよ」

提督「で、この旅最後の宿は嵐山でとることにします」

グラ「アラシヤマ……」

提督「そう、嵐山」

提督「で、その嵐山までの道中は自転車で移動します」

グラ「そうか、なるほど……」

グラ「……いやまてっ」






グラ「ここから嵐山はそこそこ距離がある……」

グラ「それはまだいいが、レンタルならまた返しに来ることになるぞ」

提督「問題ないんだよなぁ」

提督「レンタサイクルには乗り捨てシステムってのがあって……」

提督「そのお店と提携してるお店にも返却ができるらしいんだ」

提督「だから、明日に向こうから一番近いお店に返しに来ればいい」

グラ「そうか……それなら安心した」 ホッ


実際のところ、自転車は京都市内の移動に最も適しているといえる。
主要な観光地は京都駅を中心とした場合、遠くても自転車利用で1時間圏内の位置にあるからだ。
その上京都は道が狭く車の移動が不便で、駐車場も狭いところが多い。
バスも基本混雑し、移動時間もさして変わらないため自転車の方が快適なことがほとんど。
ただし注意すべきは、路上駐輪の取り締まりが厳しいこと。そして、存外に駐輪場の数が少なく値段がやや高いことだ。






提督「さすがにロードバイクのレンタルはなかったか……」

提督「ママチャリってこんなに重かったんだなぁ」

グラ「それは仕方あるまい」 フフッ

グラ「せっかくなんだ……ゆっくりしよう」

提督「りょーかい」

提督「んじゃ、とりあえずこの今出川通りを真っ直ぐ西に突っ切る」

グラ「あぁ、分かった」






―――京都御苑―――


提督「なんだここ……塀がえらく長いなぁ」

グラ「見てみろアトミラール、東西だけじゃない」

グラ「南北にもずっと伸びているな……」

提督「君の美しい髪のように……」スッ…

グラ「アトミラール……」ポッ…

大学生(なんだあいつら……)


京都御苑は明治時代に首都が東京へ遷るまで、宮家や公家の邸宅が立ち並ぶ町のあった場所で、中央にはかつての皇居、京都御所がある。
京都御所の管理は現在宮内省が行っており、数回の改修工事を経て当時の姿を残している。
御苑内は広く、一周するだけでも多くの時間を必要とするが、旧家や四季折々の植物を見て回るだけでも十分に価値がある。






―――北野天満宮―――


ワイワイガヤガヤ

グラ「アトミラール、ここは今日は祭りなのか?」

グラ「露店がたくさん並んでいるぞっ」

提督「ほんとだ」

提督「でも、これは祭りというより……バザー?」

提督「俺、ちょっと覗きたいかも」

グラ「あぁ、行こうか」 フフッ

提督「サンキュー!」






北野天満宮は学問の神様といわれる菅原道真を祀る神社で、毎年多くの合格祈願を願う受験生が参拝に来る。
梅の名所としても知られるが、ここでは毎月25日に骨董市が行われることでも有名。
美術品や衣服、レトロなアイテムまでなんでも揃い、掘り出し物を探しに多くの人が朝から訪れる。



提督「なんかいい錆具合だなぁこれ」

提督「このサントリーの栓抜き……いつのなんだろう?」

おっちゃん「それは一本、400円」

提督(高いのか安いのか判別がつかーん)グギギ

提督「……買いますっ」

おっちゃん「おおきにな」 ニコッ





提督「衝動買い怖すぎィ!」ドッサリ

グラ(なんだか女の子みたいだな……) クスッ

提督「インテリアになりそうなものを買ったはいいけど」

提督「どうせ飾れないんだろうなぁ」 ズーン



提督「ちょっと早いけど、お昼行っておこうか」

グラ「立ち止まったついでだしな……」

グラ「あの町家でランチが頂けるようだっ」

提督「ちょうどいいや、うどんが食いたかったんだよねぇ」






「一本うどん、お待ちどう様~」スッ


提督「すげぇ……本当に極太の麺が一本なんだ……」

グラ「ホウショーに作ってもらったウドンとは趣が異なるな……」

モグッ

グラ「あぁ、とても美味だ」ニコッ

提督「餅に近い食感だなぁ……すごく食べ応えがあるよ」

グラ「これはとてもじゃないが、ススルことはできないな」クスッ

グラ「あむっ……ふぅっ……」アタフタ

提督「……」

グラ「んふぇ?」

提督「飲みこめる?」

グラ「ふぉお」







今日はここまでにします

今回も短くて申し訳ないですが、見ていただいた方ありがとうございます

今から再開します(迫真)

先ほど二式大艇にまつわるSSを書いてみましたので、もし興味がありましたらそちらもお読みいただけると幸いです(宣伝)

【艦これ】こんにちは、僕は菊原静男だよ




―――北野白梅町―――


グラ「これは……“アラシデン”と読むのか?」

通行人「ねーちゃんそれ、“らんでん”って読むんやで~」

グラ「なにっ、そうだったのか」シュン

グラ「お恥ずかしい話だな……ははは……」

提督「……ははは……」←読めなかった人


嵐電とは、京福電気鉄道の所有する軌道路線。
四条大宮~嵐山を結ぶが、帷子ノ辻駅から分岐した北野白梅町~嵐山の路線もある。
観光で四条界隈から嵐山へ向かうための主要路線であり、また嵐山方面の人が繁華街に向かうために利用する路線でもある。






キッ…

提督「ねぇ」

グラ「ん、なんだアトミラール?」

提督「ちょっと回り道になるんだけど……」

提督「頑張ってこの西大路通りを登ると金閣寺に行けるんだよ」

グラ「!」

グラ「金閣寺とは、あの黄金の……!」

提督「イエスイエス」コクコク

グラ「ぜひ行きたいが……いいのか?」

提督「全然オッケイすよ」グッ






―――金閣寺―――

ワイワイ ガヤガヤ

提督「この修学旅行生の数は間違いない」

提督「ここが金閣寺だねー」

グラ「?」ポカン

グラ「ははは、何を言っているアトミラール」

グラ「どこも黄金じゃないだろう?」

提督(塀まで金色じゃあ近隣住民に迷惑がかかるよ)ハァ






ワイワイ ガヤガヤ


グラ「……」カァー…

提督(意味を理解したらしい)クスッ

グラ「……」カァ-…

グラ「とても綺麗に貼られたキンパクだな……」カァー…

提督「そうだねー」ジーッ

グラ「……そういいながらこっちを見るなっ」プイッ


金閣寺の正式名称は「鹿苑寺」で、その中の舎利殿金閣が有名なために金閣寺と呼ばれている。
金閣寺に限らず、京都の著名な歴史建築及び歴史遺産は1467年から10年続いた内乱「応仁の乱」によって大半が一度は破壊され、ほとんどが江戸時代以降に再建、または復元されたものである。






修学「」キャッキャッ

提督(修学旅行生が記念メダルの機械に群がってる……)

提督(俺も昔は欲しかったんだよなあーゆうの)

提督(今となっては、なんで欲しかったんだろうってな……)



グラ「…………」ジーッ

提督「……ならないでおこう」フフッ





グラ「なんだか恥ずかしい思いをしたぞ……」

提督「外国の人だからセーフセーフ」

グラ「うぅ、とにかく……次へいこうかアトミラール」

提督「せやねぇ」

グラ「?」

提督「……俺もこっちに染まってきたかも……」



すこしはなれます




―――龍安寺東庭―――


提督「この辺はお寺が多いみたい」ペラッ

提督「全くノーマークだったなぁ……」

グラ「それは良いことだな」フフッ

グラ「やはり、プランは決めて行かなくて正解だった……」

グラ「私は知らないことならなんでも知りたい性分なんだ」ニコッ

提督「あぁ」

提督「よぉく分かってるよ」






―――龍安寺―――

龍安寺は室町時代、細川勝元が創建した臨済宗妙心寺派の寺院。
境内は丹波の石で設えた枯山水の見事な方丈庭園が有名だが、山門から方丈に至るまでの広大な鏡容池を一周するのも目に楽しい。


グラ「こ、ここは……靴を脱ぐのか……」

グラ「……」オロオロ

提督「どしたの?」

グラ「……私はブーツを履いているんだ……」

提督(なるほど……)

提督「……うわっ、やべー」

提督「俺の足の臭いすごいことになってるー」

提督「グラさん、俺の近くにいたら臭い移っちゃうかもなー」チラッ

グラ「……!」

グラ(ありがとう……)クスッ






―――龍安寺縁側―――


グラ「これは……見事な庭だ……!」

グラ「もらったパンフレットによれば……」ペラッ

グラ「これは“カレサンスイノイシニワ”というらしいな」

提督「砂と石だけで水を表現しようとしたんだな……」

提督「今の人の感性では、再現できないかもしれないね」

グラ「私はそれでいいと思う」フフッ

グラ「いつまでも人の感性が変わらなければ……」

グラ「こういった感動も今後、無くなってしまう」






提督「…………」

グラ(……人前で寄り添うのは……)

グラ(やはり恥ずかしい……な)

提督「…………」

グラ「…………」クテン






―――広沢池周辺―――


キキ-ッ

グラ「広い池に出てきたな」

提督「けっこう走ったねぇ……」フゥ

提督「ちょっと休もうか」



グラ「アトミラール、あれはなんだ?」

提督「あれはたこ焼きの屋台だなぁ」

グラ「タコヤキ……?」

提督「そっか、食べたことなかったか」

提督(別に京都の食べ物じゃないけど)

提督「……食べる?」

グラ「……コクッ」ワクワク






グラ「アトミラール」

グラ「“オマケ”……とは、なんだ?」

提督「それはだな……」

提督「“べっぴんさん”の特権だと思ってくれたらそれでいいよ」クスッ

グラ「……意味が分からないぞ?」



グラ「あふっ!あっふぇ!」ジタバタ

提督「わぁ、一口で行くから!」アタフタ






グラ「なかなか美味しかったぞ、アトミラール」ジワァ

提督(涙目になっちゃってまぁ……)

提督「さて、嵐山自体はもう近くのはずなんだけど……」

提督「ここはどちらへ行けばいいんだろうか」

グラ「まだ時間はあるのだろう?」

グラ「多少迷ったところで、あまり問題はないはずだ」

提督「そうだね、せっかくの自転車だし……」






―――大覚寺周辺―――


グラ「マチヤの並びが増えてきたぞっ」

提督「道も石畳っぽくなってきたね」

提督「ここは一度、この交差点を真っ直ぐ行ってみよう」

提督「同じパターンの道が続いてるから……こっちが正解かも」






―――嵯峨鳥居本―――


提督「違った……」ガクッ

グラ「まぁまぁ、アトミラール」

グラ「私はここもなんだか好きだ……」フフッ

グラ「マチヤの店が多くて……緑にも囲まれてる」

提督「……そうだなっ」

提督「こういう所を、日本の言葉で“穴場”って言うんだよ」ニコッ

グラ「“アナバ”……」

提督「あっちに鳥居がある」

提督「自転車置いて、行ってみよう」ニコ






二人は知らずに入ったが、嵯峨鳥居本は国の重要伝統的建造物群保存地区として選定されている。
その理由は、愛宕神社の門前町として栄えた町に町家と茅葺の家が今もなおそのまま残っていることにある。
先ほど通った町家が並ぶのは下地区で、今彼らのいる場所は茅葺の農家が並ぶ上地区だ。


グラ「ここまで見てきた町家もすごいが……」

グラ「この“テラ”のような屋根の家はそれ以前のものなのか?」

提督「それは分からないけど……」

提督「この屋根はたしか、茅葺きっていうんだよ」

グラ「カヤブキ……」ジーッ






グラ「ゴジユウニオハイリクダサイ……」

提督「行くっきゃない」グッ


ガラッ

グラ「おぉ、可愛らしい人形がたくさんあるぞっ」ワクワク

店女「あら、こんにちは」ニコ

提督「こんにちは」ペコッ

グラ「コンニチハ」ペコ

グラ「ここは……人形の店なのか?」

店女「そうですよ」

店女「ここの人形はすべて、蚕の繭でできています」

グラ「“カイコ”?」



ストーリーと関係なくて申し訳ないですが……前書いたSSを別スレで取り上げていただけてスーパー嬉しいですっ

本当の本当に、ありがとうございます!




店女「蚕というのは、日本のカイコガの幼虫の事で」

店女「この蚕の糸、天蚕糸を使って作る着物は……」

店女「この国では昔から最高級品として愛されているんですよ」ニコ

グラ「“キモノ”……」



グラ「キモノ……かぁ」






提督「すみません、お茶まで頂いてしまって……」

店女「遠くからいらしてもらったんですから、これくらい……」フフッ

グラ(これが“オモテナシ”の心……)ズズッ



グラ「フフフ……」ニコニコ

提督「この猫の人形、めちゃくちゃかわいいよー」

提督「蚕の繭でこんなこともできるんだなぁ」

店女「ここの人形は全て、うちの主人が手作りでこしらえてます」フフッ

提督「えっ、手作りなの!?」

グラ「それはすごい……!」






グラ「“仲良く寄り添う二匹の猫”……か」フフッ

提督「とても良い買い物だね」ニコ

グラ「あぁ」ニコ



一旦はなれます
すみません

等持院するー…

>>248
申し訳ないです……

はじめからストーリーの大筋は考えてしまっているので、紹介しきれない名所がいっぱいあります。
ご意見いただいた場所も同様で、可能な限りは組み込んでいく予定ですが……
何卒、ご了承ください……




―――JR嵯峨嵐山駅―――


提督「おぉ、ついに嵐山の二文字が見えたぞ」

グラ「アトミラール、あそこに飾ってあるのは……」

グラ「日本の機関車なのか?」

提督「あぁ、そうだねぇ」

提督「この建物は……なに、トロッコの駅?」

グラ「トロッコとはなんだ?」


JR嵯峨嵐山駅を出てすぐの所に嵯峨野観光線の終着駅、レンガ造りのトロッコ嵯峨駅がある。
この路線は嵯峨野観光鉄道が所有していて、ここからトロッコ嵐山駅まではJR山陰本線に乗り入れる。
トロッコはその先保津川に沿ってゆっくりと走り、山を越えてトロッコ亀岡にたどり着くのだ。






―――トロッコ嵯峨駅―――


提督「ゲッ、今日のトロッコは終了してるのか……」

提督「ちょっと、楽しみだったんだけどなぁ」シュン

グラ「明日また来ればいいじゃないか」フフ

グラ「それより……あそこ」スッ

グラ「日本の機関車がたくさん置いてあるぞ」

提督「おぉ、本当だ!」

提督「行こう行こうっ」

グラ「」ニコ






提督「すっげーなぁ……」

提督「男の子は本当、こういうの大好きなんだよなぁ」キラキラ

グラ「そのようだ」クスッ

提督「このC-62なんかでかくてロマンあふれるね!」

提督「今の電車より、機関車の方がディテール感というか、こうロマンが……」

グラ「……」ナデナデ

提督「……なんで撫でるの?」

グラ「なんとなくだ」フフ


こことは関係ないが、京都の機関車といえば京都駅西側の梅小路転車台。
ここに日本最大級の蒸気機関車博物館があったが、2016年2月現在は京都鉄道博物館へのリニューアルのため、立ち入りはできない。
新しい鉄道博物館のオープンは5月ごろ予定だ。






提督「お土産コーナーでデゴイチのポストカードも買った」

提督「実に満足だ」キリッ

グラ(まるで大きな子供だな……)クスッ

グラ「……!」

グラ「あれは……っ」

提督「ん?」



提督「へぇ~……」

提督「着物レンタル、か」

提督「気になるんだ?」

グラ「……」コク






提督「……でもたしか」

提督「結婚式でも着るよね」

グラ「……」

グラ「あ、あぁ……そうだな」シュン

グラ「キモノは……キツケに時間がかかるという……」






グラ「……すまない、私のわがままだ」フフ

グラ「……時間をとってしまうな」

グラ「では次に……」クル

ガラッ

提督「すみませーん!着物レンタルできるって書いてあったんですけどー」

グラ「!」

グラ「ア、アトミラー……っ!」カァー…






提督「少し時間がかかるらしいし……」

提督「今のうちに二台とも自転車を駐輪場に預けてくるよ」

提督「着物じゃ乗れないしね」

グラ「アトミラール……」

提督「ん」



グラ「あ……」

グラ「ありがとう」ニコッ

提督「いいの」

提督「着物姿、俺も早く見たいし」ニコ






提督(ママチャリは重いな……)ゼイゼイ

提督(ものぐさな気持ちで両手で持ったのはミスだった)

提督「……ん?」

提督(着物屋の向かいに洒落た古本屋があるな)

提督(ちょっと立ち読みしようか)



提督(『迫真脱サラ部・人生の裏技』……)ペラッ

提督(…………)ペラッ

提督(この先、俺はどんな仕事をしようかなぁ)






……
…………
………………


提督「グラーフ」

グラ「な、なんだ……」カァー…

提督「良く似合ってる」

グラ「そ、そうか……」

グラ「……嬉しい……ぞ」フイ






提督「京都らしい朱色に鶴柄……」

提督「グラーフが選んだの?」

グラ「……」コクッ

グラ「私には花柄などは似合わないし……」

グラ「それに、この色もはじめは若すぎると思って諦めたんだが……」

グラ「……でも、やっぱり着てみたかったんだ」フフッ

提督(最高です)






提督「写真まで撮ってもらっちゃったな」

グラ「あぁ」

グラ「一生大切にするよ……」

提督「あはは、まだ着物を着てるのに」

提督「……予約した旅館に行く前に、また返しに来ようね」

グラ「分かった」コク

提督(着物似合うなぁ……)

提督(隣を歩けて……俺も嬉しいや)ニコ







―――嵐山駅―――


先述した嵐電の終着駅。駅舎には嵐山らしさを演出するため、竹をモチーフにしたデザインが施されている。
構内には足湯があり、電車に乗らずとも150円で利用することができる(タオル付き)。
駅周辺は観光客向けの店で賑わい、町家やそれを模した建物も多く並ぶため、雰囲気はまさに観光地のど真ん中である。


グラ「ここは坂ではないが……まるでキヨミズのようだなっ」

グラ「通りも綺麗に整備されている……」

提督「土産屋もいっぱいあるしね」

提督「ここらでカーチャンの土産も買っとくか……ん?」






提督「なんか……嵐山って、コロッケ屋が多い気がするなぁ」

提督「さっきの着物屋の周りにも何店かあったし」

グラ「そうなのか?」

グラ「コロッケなら何度か食べたことがあるが……」

グラ「全然気づかなかったぞ」

提督「金賞コロッケか……何の金賞なんだろう」

提督「美味いのかなー」

提督「……」

グラ「……」クスッ






提督「ムマイっ」モグモグ

提督「1個200円のコロッケは伊達じゃないなぁ」

グラ(着物に落とさないようにするのは大変だ……)

グラ「しかし……」

グラ「なんだか私達、食べてばかりだな」クスッ

提督「いいんじゃないかな、運動できてるし」

提督「旅行なんだから、その所々で美味しいもの食べておかないとね」

グラ「あぁ、その通りだな」ニコ






テクテク

提督「天龍寺、行かなくてよかったの?」

グラ「あぁ」

グラ「今日は寺を二つ訪れているし……」

グラ「それに、暗くなるまでにここで通っておきたい場所もある」

提督「なんだろう」



またすこし離れます
すみません




―――竹林の道―――


提督「けっこうアップダウンがあるなぁ」ゼイゼイ

グラ「この辺りらしい、もう少しだ……」

グラ「!」

グラ「……ここだ」

提督「おぉ……これは……」


ここは天龍寺北側より、大河内山荘近くに向かって伸びる300mほどの散歩道。
青々しく伸びる健康な孟宗竹の林の中をゆく、嵐山の名所の一つ。
毎年12月には花燈籠によるライトアップが行われるが、平時においても明るい時間は竹林に差し込む木漏れ日が美しい。






グラ「なんて美しいんだ……」

提督「日も暮れかけだから……」

提督「夕焼けとのコントラストも絶妙だね」

グラ「ふふふ……」

提督(そっか、向こうには紅葉はあっても)

提督(竹は生えてないんだよな……)


ギュ


グラ「私はこうやってあなたと……」

提督「!」

グラ「日本のタケというものを眺めてみたかった」ニコ





………………
…………
……


グラ「ふふ……やはり、洋服は動きやすいな」クルッ

グラ「だが、着物は良い体験だった……」

提督(着物姿はしばらく見納めかぁ)ハァ

グラ「アトミラール、今日の食事は……どうするのだ?」

提督「あぁ、今晩は旅館で頂くことにしたよ」

提督「シーズンじゃないからかもしれないけど……」

提督「予約は問題なかったね」フフン

提督「しかも最後だから奮発して温泉旅館だ」

提督「喜べぇいっ」

グラ「また温泉に入れるのかっ」キラキラ






―――渡月橋―――

ザァァァァ…

グラ「この旅はつくづく、川との縁があるな」クスッ

提督「そうだなぁ」

提督「月の渡る橋か……センスある名前だよね」


嵐山の観光名所として真っ先に挙げられるほど有名な渡月橋。
桂川を渡るために800年代に懸けられた橋がはじまりとされ、今の渡月橋の形となったのは1934年と、実は最近の事である。
欄干は景観に合わせた木造であるが、橋桁と橋脚は鉄筋コンクリート製である。






―――旅館―――


女将「ようこそお越しくださいました……」ペコリ

提督(……あれはもうしないの?)チラッ

グラ(しない!)ムッ

女将「お夕食なのですが、直前の御予約でしたので……」

女将「お部屋ではなく、個室のお食事処でお召し上がりいただきますが……」

女将「お差支えはなかったでしょうか……?」

提督「全然、大丈夫ですよー」


……
…………
………………




ガチャッ

グラ「アトミラールっ!」

グラ「部屋の奥に、温泉が付いていたぞっ!」

提督「フフフ……驚きましたか?」ドヤァ

提督「これが日本の露天風呂付客室だよ」

グラ「なんて贅沢な……」ガタガタ

グラ「ガイジンの私ごときが……貸切など……」モジモジ

グラ「よいのか……?」ジッ…

提督(えぇ……予想の斜め上のリアクションだなぁ)クスッ






提督「しかし、時間が時間だから……先にご飯だね」

グラ「分かった……」コク

グラ「楽しみにとっておくよ」フフッ



スタスタ

グラ「アトミラール」

提督「はいな」

グラ「この旅行中に一つ思ったことが……」

グラ「キョウトでは……私が歩いていてもジロジロ見られない」

提督「あぁ~……」

提督「戦争中は外国の人が日本にいるのも珍しかったからね」

提督「それに、京都はもともと外国の人がよく来る所だし」

グラ「なるほど……」






グツグツグツ


提督「部屋食じゃなくても、内容は変わらないみたいだねぇ」モグモグ

提督「美味いっ」

グラ「そうだな……しかし」

グラ「アトミラール、これは……」

グラ「トウフなのか?」

提督「うん、これは湯豆腐だね」

提督「このポン酢につけていただくんだよ」フフッ






グラ「」モグモグ

グラ「おぉ……」

グラ「いつも頂くトウフとはまるで別物だっ」

提督「ほんとだ、滅茶苦茶美味しいなこれ……」

提督「濃厚で……豆腐自体がなんだかしっかりしてて……」

グラ「このアブラアゲも美味だ」ニコッ


嵯峨野の自然が育む水と大豆を使った嵐山の豆腐は、絶品だとして全国的に知られる。
そして嵐山の旅館で振舞われる豆腐の大半は、150年の歴史を持つ老舗「森嘉」で作られるもの。
寺の多い嵯峨・嵐山ならではの精進料理に端を発する豆腐はぜひご賞味頂きたい逸品である。



今日はここまでにします

読んでくださった方、ありがとうございました。




提督「食った食った~」

グラ「日本のリョカンの料理は品数が多いからな」

グラ「戻る前に少し、館内を散歩してみてはどうだろう」

提督「そうだなぁ」



ワイワイガヤガヤ

提督「祇園で泊まった所よりも、良い意味で賑やかなところだね」

提督「場所ごとの雰囲気に忠実というか、なんというか……」

グラ「それとなく分かるぞ」フフッ






グラ「ここには部屋のものだけじゃなく、大浴場もあるのか……」

グラ「温泉というものは、一日に何度も入って良いものなのか?」

提督「うん、いいんだよ」

提督「一日中温泉に入るためにこういうところに来る人もいるらしいし」

グラ「ふむ……」

提督(行きたいんだろうな)クスッ

提督「……じゃあ、せっかくだからここも入っておこうか」ニコ

グラ「本当かっ」

グラ「では……遠慮なくそうさせてもらうよ」ニコッ






京都随一の景勝地、嵐山で温泉が湧いたのは実は最近のこと。
ここの湯は弱アルカリ性で比較的温度が低く、やや白く濁っているのが特徴。
美肌効果はもちろん、神経痛や筋肉痛にも効能がある。



提督「ぷは~、生き返るなぁ」ザブッ

提督(この濁った感じが昨日の所より温泉って実感が湧くね)

提督(景色は……昨日の鞍馬の方が好きかなぁ)

提督(いやぁ……鎮守府にも温泉が欲しかったよ)






提督(執務室に風呂と脱衣所作ろうとしたら)

提督(グラーフが滅茶苦茶怒ったっけ)ハハハ

提督(あの子がこの国に来て、それほど経っていなかった頃だな)

提督(『このチンジュフの風紀はおかしいぞ!』だって)

提督(なんて真面目君な奴なんだって、思ってたけど……)



提督(……じきに分かった)

提督(知らないこと、分からないことだらけのこの国で……)

提督(……不安だったんだよな)






提督(なんか、放っておけなかったから)

提督(彼女の支えになれればって、はじめは思ってたけど……)

提督(今となっては、俺自身も依存してるんだよなぁ)クスッ

提督(みんな、こうやって恋をして)

提督(結婚して……父親になるのかな)




提督(……そろそろ上がるか)ザブッ






ブブブブブブブ

グラ「おぉアトミラール」

グラ「これは良いな!」キラキラ

グラ「日本の家庭にはみな、これが置いてあるのか?」

提督「マッサージチェアなんて高すぎて置けないよ」クスッ

提督「それより、あっちに卓球台があるんだけど……」



提督「……やろうや」ニタァ

グラ「…………」コクッ





……
…………
………………


コン コン
パァーンッ


提督「……わん、わん」

グラ「ふふふ……えらいなぁ忠犬アトミラールは……」ニヤニヤ

提督(こ、こんなはずでは……)

提督(あんな全米卓球チーム時代のフォレストのような動き……)

提督(見たことない……)ガクッ






グラ「では、奢っていただこうか……」

グラ「あなたが本当の犬でもなければ、それぐらいは……」

グラ「……できるよな?」

グラ「それとも……本当の犬のように……」

グラ「私に“お手”をすることがお望みか?」フフ

提督(あれ、悔しいけどなんかいいゾこれ)ゾクゾク






ガコン


提督「なんで引いちゃうのさー」

グラ「だって……」オロオロ

グラ「本当にお手をするとは思わなかったんだっ」

提督「……はい、コーシーぎゅーにゅー」

グラ「あぁ、ありがとう」


キュポン






提督「ふぅ~」

提督「和室は落ち着くネェ」

グラ「あぁ、以前はこのイグサの臭いが気になっていたが……」

グラ「今ではこの香りをすっかり気に入ってしまった」フフッ

グラ「美味しいお茶と……サービスの“コゲツ”のお菓子もまた泣かせる」

グラ「ふふふ……」



提督「卓球したらまた汗をかいてしまった……」

提督「風呂、先入っていい?」

グラ「あぁ、構わない」ニコッ

提督「そっか、サンキュー」スッ

ガチャッ
ゴン

グラ「…………」










チャプ

提督「あぁ~……やっぱ貸切風呂はいいなぁ」

提督「賑やかな大浴場もいいけど、やっぱ風呂はゆったりできてなんぼよね」

提督「い~い湯~だ~なぁ~アハハン」

提督「……こうやって、独り言もごち放題だよ」フフッ






カチャッ

グラ「……アトミラール」

提督「!」ビクッ



グラ「隣、良いか?」 カァー…

提督「う、うん」ドキドキ






チャプ…

グラ「…………」 クテン

提督「…………ゴクッ」

グラ「あなたはひどい人だな……」 クスッ

提督「……なんで?」 ドキドキ






グラ「いつもは余裕ある風にふるまうくせに」

グラ「こうやって素肌を触れ合わせるたび……」 チャプ…

グラ「あなたは私の顔を見てくれなくなる」 シュン






提督「……ごめん」

グラ「……私は」

グラ「あなたのどんな顔だって……」 ジッ…

グラ「……見てみたいんだ」 スッ

提督「……っ」



チュ



一旦ここで仕事にいきます

見てくださった方、ありがとうございました

ケータイからでURLも無しで申し訳ないですが……

扶桑「遭難ですか」山城「そうなんです」

グラーフ「ブブヅケ?……なに、これも食べていいのかっ」

グラーフ「震度3だと……この国はもうおしまいだ!」

グラーフ「もう赤身の寿司は食べられないのか……」

ヲ級「ファミチキクダサイ」

提督「時は2023年」

グラーフ「私の口元に……何かついているのか?」

雪風「えっ!山城さんがぎっくり腰?」

ル級「コウチャガノミタイネー」

こんにちは、僕は菊原静男だよ


書いたのは以上で、全部前に【艦これ】をつけています
ミスがあったらすみません



………………
…………
……


グラ「アトミラール……」

提督「……ん」

グラ「まだ起きていたか」クスッ

提督「……うん」

提督「なんか……寝られないんだよね」

グラ「私もだ」ニコ






グラ「旅行は、もうこれで終わってしまうんだな」

グラ「なんだか寂しいよ」

提督「……はは」

提督「まだ明日もあるし……」

提督「それに、ここにはまた来ればいいんだよ」

グラ「……そうだな」フフッ

提督「いつかまた、二人か……」

提督「……それとも」フフッ






提督「……グラーフ」ゴソゴソ

提督「よかったら……もっかい」ゴロ

グラ「……」スー…ピー…

提督「……クゥーン……」ガックシ



提督「次に来るとき……」

提督「俺たち、どんな暮らしをしてるのかな?」ボソッ





……
…………
………………


提督「最後の朝飯よし!」

グラ「和食で大変美味だったぞっ」

提督「最後の風呂よーし!」

グラ「朝風呂も大変気持ちがよかったぞっ」


提督「いざゆかん、トロッコと保津川下りっ」

グラ「あぁ!」



ザァァァァァァァ……


提督「よりによって最後の日が雨なんて……」シュン

グラ「しかも、なかなか強い雨だな……」シュン

提督「無慈悲すぎるぜ神様ぁ」






提督「予想はしていたが……」

提督「トロッコがかろうじて運行していて」

提督「保津川下りが欠航か……」

提督「けっこう楽しみにしてたんだけどな……」ガックシ

グラ「そう落ち込まないでくれ、アトミラール」ナデナデ

グラ「雨だから、トロッコに乗る人も少ないようだ」

グラ「だから、かえってゆっくりできるだろう」フフッ






ゴットン ゴットン……


提督「おぉ、きたきた」

グラ「なんだか……可愛らしい見た目だぞ」クスッ

提督「観光列車だしね、仕方ないね」

提督「途中、渡月橋から見た川がちょっと濁ってたからなぁ」

提督「それだけが心配かも」






ゴットン ゴットン…


提督「動きだしたっ」

グラ「とてもゆっくり進むのだな……」

グラ「これなら、窓の無い車両に乗った甲斐があるぞ」フフン

提督「本線に乗り入れるのか……すごいな」



提督「ん、もう次の駅だ」

グラ「トロッコアラシヤマエキ……」

グラ「昨日の、タケの散歩道の近くから見えた場所だなっ」






提督「今日は人がほとんど乗ってないなぁ」

グラ「これはまたも“カシキリ”だな」クスッ

提督「んじゃ、今これを空けても……」

提督「迷惑にはなんないかなぁ」プシャッ

グラ「アトミラール、こんな時間からビールを飲むのか?」

提督「へへへっ」

提督(……自転車に乗るからノンアルコールだけど)






ゴットンゴットン……
ザァァァァァァァァ……


グラ「下から見上げることはあったが……」

グラ「改めて、日本の山々の持つ風情のすごさが」

グラ「分かった気がするな……」ウットリ

提督「山がしもけてて、霧の中を進むトロッコかぁ」

提督「絵になるなぁ」フフ

グラ「雑誌には『セセラギを楽しむもの』と書いてあったが……」

グラ「ここの自然は天候が変われば、こうも姿も変えるものなんだな」

グラ「霧の中、とめどなく水が叩きつけるように流れる保津川を」

グラ「どっしり構えた深緑の山々が形作っているんだ」フフッ

提督(なんか詩的っ)






キキーッ…

提督「ん、止まった……?」


「―――――♪」

グラ「な、なんだ、車掌が歌いだしたぞっ」

提督「なんの歌なんだろうねこれ」

提督「でも……なんだか楽しいなぁ」



嵯峨野トロッコの名物車掌さん。
このトロッコに限らず、今回は取り上げない保津川下りや嵐電も同様に、ここ嵐山の観光はそれに携わる人たちがお客さんに“楽しんでもらう”ことに重点を置いている。
それこそが、観光地の多い京都にあって根強い人気を持つ嵐山の見どころといえる。



すこしはなれます
申し訳ありません



………………
…………
……


提督「楽しくて往復乗ってしまった……」

グラ「ははは、まぁ……」

グラ「帰りは普通の電車かこちらかのどちらかだったからな」

グラ「それに……行きと帰りで風景の見え方が違う……」

グラ「とても良かったぞ」ニコ






―――トロッコ嵯峨駅―――

ザァァァァァァ……

提督「いやー……勢い収まんないなぁ」

グラ「あぁ……」ゲンナリ

提督「しかし、自転車は返さないといけないから……」ペラッ

提督「……最低でも二条まで行かないといけないなぁ」

グラ「このままでは埒もあかないし……」

グラ「アトミラール、走ろう」

提督「それっきゃないよなぁ」






ザァァァアァァ……

キコキコキコ

提督「あぁぁ顔がいてえええっ」

提督「冷たぁぁぁいっ」






―――大映通り―――


提督「ほい、ホットコーヒー」

グラ「あぁ……ありがとう」ニコッ

提督「たまにこうやって、雨宿りしていかないと持たんね」ズズッ

グラ「……」ズズ…

提督「この辺りは映画会社にゆかりのある場所みたいだ」

提督「アハハ……あの建物の中、ガメラのソフビがあるよ」

提督「懐かしいなぁ」






ザァァァァァァァ……


グラ「なんだか……」

グラ「この雨にも慣れてきてしまった」フフッ

提督「え、マジでっ」

グラ「大雨でずぶ濡れになりながら……キョウトを縦断するなんて」

グラ「私のようなよそ者が、そうそうできることじゃないぞ」フフッ

提督「そりゃね……」ズズ

グラ「観光地は逃げないが、雨は降るときにしか降らない」

グラ「雨が降っても、私はあなたといっしょに居られるんだ……」

グラ「そんな日は、“雨に唄ってやろう”ではないか」 ニコッ






―――三条会商店街―――


提督「ついに自転車を返すことができた……」

グラ「おつかれさま、アトミラール」 ニコ

提督「グラーフもね」 ニコッ

グラ「それにしても……この通りは屋根があって助かるな」

提督「確かに……でかいアーケード街だなぁ」

提督「人も多いし、日本にまだこんな活気のある商店街が残ってたんだね」



三条会商店街は創立100年を超える老舗の商店街で、またその長さは千本通から堀川通の間800mにも及ぶ、西日本最大級の商店街でもある。
シャッター街の増えつつある商店街の現状において、依然として活気を維持し続ける希有な例。
中に入っているお店も、地域に根付いたお店から若い人に支持を受けるお店、変わり種のお店まで、何でも揃う。






提督「コンビニが向こうにあるけど……」

提督「どうせなら、商店街の傘屋さんで買ってみたいね」

グラ「同感だアトミラール」フフッ


ガラッ


店主「あぁこんにちは……」

提督「どうも」

グラ「コンニチハ」

店主「お兄さんら、ずぶ濡れやんか……」

提督「あはは……これには訳が……」






店主「おい、タオルを」

奥さん「はいはい」ニコ

グラ「そんな、気を使っていただかなくても」 オロオロ

店主「ええねん、お客さんもこういう日しかこーへんから」ヘヘッ

提督「ありがとうございます」ペコ

店主「……で、傘やな」

店主「お兄さんら、体おっきいからなぁ……」


……
…………
………………





店主「こんなんどーえ?」

グラ「おぉ、なんと可愛らしいんだ」ニコッ

提督「似合うよ、グラーフ」

グラ「ありがとう……」フフッ



店主「で、今度は兄さんのやな」

店主「えーと……」

提督「いや……この一本でいいんです」ニコッ

グラ「え?」

提督「すみません」ペコ

店主「……ププッ」

店主「うし、分かったっ」ヘヘヘ

店主「じゃあその一本で、えっと……いくらやったかな……」






ザァァァァァァァァ……


テクテク

グラ「……こうするためだったのか」 カァー…

提督「……」 コクリ

グラ(アイアイガサ……か) ニコッ




店主「若い頃を思い出すなぁ」

奥さん「あんたも昔は男前やったんやで」フフ

店主「……お前もな」フフッ






―――二条城―――


ザァァァァァァ……


提督(へー、すっごいおっきい…(お堀))

グラ「これが日本のシロか……」

グラ「私の祖国のシロとは、やはり趣が異なるな」

グラ「興味深い、入ろうアトミラールっ」

提督「うん、そのつもり」ニコ


二条城は、1603年に造営された徳川家ゆかりの京都の平城。
内部の庭園や二の丸御殿の襖絵など見どころも多く、また過去には城内に市内の芸大生が制作した灯篭を飾ったり、城壁に映像を投射する3Dマッピングといったイベントも多く行われており、単なる歴史遺産に留まらない場所となっていることも特徴。






―――本丸庭園―――


グラ「この国の城はとても白いが……」

グラ「素材は何が使われているのだ?」

提督「漆喰だよ」

グラ「“シックイ”……?」

提督「そう」

提督「石灰とか麻とか砂なんかを混ぜて作るんだ」

グラ「セメントのようだが……」

グラ「ふふ、素材自体の美しさは敵わないな」






―――二の丸御殿―――


提督「見事な襖絵だなぁ」ジーッ

グラ「アトミラール、この国の昔の絵は……」

グラ「なんだか人物がゆがんで見えるのだな」

提督「あぁー……西洋だと、この時代も人の絵ってリアルだよね」

提督「昔の人は写真に写ると魂を吸われると言ってたらしいから……」

提督「リアルな絵にするとおんなじようにダメなんじゃない?」

グラ「そうなのかっ」 フムフム

提督(分かんないけど)






グラ「日本のシロは今まで見られなかったからいい経験になったぞ」フフッ

提督「そりゃーよかったよ」

提督「もうそろそろ、京都駅に戻りながら移動しないとね」

グラ「あぁ、確かにそうだ」

グラ「では……」ペラッ

グラ「このままマルタマチストリートを東へ行って……」

グラ「カラスマストリートを南に降りよう」

提督「そうだね」






提督「遅めの昼ごはんになってしまったなぁ」

グラ「いいのだ、アトミラール」

グラ「こういう定食屋に一度入ってみたかった……」 モグモグ

提督「……君、お箸の使い方上手になったね」

グラ「本当か!?」パァァ

グラ「嬉しいぞ……これで」

グラ「あなたのオカアサマをがっかりさせずに済むな」ニコッ



いったんひとやすみです
今日中に終わりまで行く予定です




―――京都御苑周辺―――


提督「あれ、なんだか見覚えのある塀だね」

グラ「では……ここがカラスマストリートだな」

グラ「もう、あとはまっすぐ南に向かうだけだ」フゥ

提督「ん、分かった」






―――四条烏丸―――


テクテク

提督「ビジネス街に戻ってきたなぁ」

グラ「そうだな」

男「……」ズーン…

グラ「……なんだかすごく落ち込んでいるな」

提督「スーツ姿だし、仕事先でなんかあったみたいだね」

グラ「私もこの国に来てすぐ、満身創痍で戦地に戻ろうとして」

グラ「それを咎めようとしたあなたに罵倒されて……」

グラ「とても落ち込んだことはあったぞ」 フフッ






提督「うっ……」

提督「悪かったよ……」ペコリ

グラ「あはは、良いんだ」クスッ

グラ「あの時はお互い青かったということだよ」

グラ「周りの皆はひどいと言っていたが……」

グラ「あの時があったおかげで、今私は生きて」

グラ「こうやって幸せな気持ちでいられる」

グラ「あなたには感謝をしてもしきれない」ニコッ






―――烏丸五条―――


提督「京都タワーが見える」

提督「もう少しだね」

グラ「……アトミラール」

グラ「最後、あれに登ってみないか」

提督「えっ」






提督「高いとこダメだから敬遠してたんじゃ……」

グラ「恥ずかしながら、そうだ……」カァー…

グラ「でも、以前に地震があって怖かった時も」

グラ「一昨日の時も、あなたに支えられて体の震えがなくなったんだ」

グラ「そ、それに……」

グラ「に、日本の……カップルというのは……」

グラ「二人で……夜景を見に……」モジッ

グラ「高い所へいくのだろう……?」

グラ「私も……やってみたく……なったんだ……」シュン

提督(あーもうかわいいなぁこいつ)フッ…






―――京都タワー―――


京都駅正面にそびえる白と赤を基調としたタワー。
電波塔ではなく、はじめから展望用のタワーとして、1964年に旧京都中央郵便局の跡地に建設された。
高さは台座となっているビルを含め131m。
建設時には景観をめぐる論争が起きたが、今は京都観光の重要なファクターとして今の京都駅とともに存在する。


ゴーン

提督「グエッ」

グラ「あっ……」

グラ「す、すまない……」シュン

提督「いやいや、いいよ……」

グラ(エレベーターの開閉ボタンを間違えてしまった)カタカタ

提督(震えてる……)

提督(やっぱりまだ怖いんだろうなぁ)






―――展望台―――


提督「手は握ってて」

グラ「……あぁ」カタカタ

提督「……じゃあ、目をあけて」

パチッ





グラ「はは……」カタカタ…

グラ「なんて綺麗なんだ……」

提督「……大丈夫?」

グラ「……」コクッ

グラ「これが……キョウトの夜景……か……」



グラ「恐怖より……」

グラ「感動が勝っているよ……」 ジワ…





提督「ここからだと、俺たちがどう歩いて来たか……」

提督「実によく分かるなぁ」

グラ「四日間かけて……」スッ

グラ「ここから東と北へ、そこから北へ北へ」ピッ

グラ「北から西へ……」ツツ…

グラ「そして西からここへ……か」ツ…

グラ「今更だが、少しは移動手段に頼っても良かったのかもしれないな」クスッ

提督「あはは……まぁ、確かに」






提督「俺たち、ずぶ濡れなんだな」

グラ「あぁ、最後まで乾かなかったな……」

提督「俺たち、周りの人の目にはどう映ってるんだろう」

グラ「……そんなこと、分からないな」クスッ


グラ「私にはあなたしか見えていないんだ」


……
…………
………………




ガタンゴトン… ガタンゴトン…


提督「……」スー…

グラ「……」スピー…


……
…………
………………




―――数年後―――


ガラガラッ

男性「ただいまー」

女性「おかえりなさい、アトミラールっ」


ギュ…


男性「そろそろその呼び方やめないと」

男性「あの子が真似するよ……」

男性「ママって呼んでもらえなかったらいやでしょ?」

女性「ははは……すまない」 クスッ






男性「で、今……どうしてる?」

女性「あなたが叱りすぎるから、泣き疲れて寝てしまったが」

女性「とても反省しているよ……」

女性「私達の“メオトチャワン”を割ってしまったこと」

男性「そっか」クス






男性「俺が怒ったのは、あの子が食器棚に登った事だよ」フフッ

男性「形あるものはいつか壊れる……仕方がないよ」ニコ

グラ「……あぁ、そうだな」シュン

男性「……そうだ」

男性「……ボーナスも入った事だし」

男性「そろそろ家族サービスしないとなぁ」

女性「……カゾクサービス?」

男性「うん」





男性「今度、旅行にいこうよ」

女性「おぉっ、本当か」

男性「うん」

男性「そして、またあそこに三人の茶碗を……」



女性「……違うぞアトミラールっ」クスッ

男性「?」

女性「……」サスサス…

女性「……四人……だ」カァー…

男性「……!」






男性「そっか……」グスッ

男性「じゃあ四つだねっ」

女性「あぁ」ニコッ



女性「まだ少し先になるが……」

女性「今度は四人で、キヨミズノブタイを見下ろしに行こう」

女性「四人で、今度も楽しい旅にしよう……」



女性「……な、アトミラール?」 ニコッ

男性「あぁ……」

男性「それは……いいなぁ」 グスッ


―――――――――fin――――――――――



以上で、バカップルがキョウトを旅するお話は終わりになります。

途中で頂いた意見を反映できなかった箇所がいくつもあったこと、申し訳なく思います。
あと、とても長いお話になってしまったのと、以前の作品との繋がりを持たせたことで、多くの人にとって読みにくいSSとなったこともお詫びいたします。
ですが、ここまで読んでいただいた方……楽しく書かせていただきありがとうございました。

重ね重ねすみません

話の世界観としては、以下の作品に則ったものとなっています
作中、分かりにくい箇所がございましたら、お手数ですがこちらも参照頂けると幸いです。


【艦これ】グラーフ「ブブヅケ?……なに、これも食べていいのかっ」

【艦これ】グラーフ「震度3だと……この国はもうおしまいだ!」

【艦これ】グラーフ「もう赤身の寿司は食べられないのか……」

【艦これ】ヲ級「ファミチキクダサイ」

【艦これ】グラーフ「私の口もとに……何かついているのか?」

はい……もうグラーフで書きたいことはもうあらかた書きましたので、これで終わりにします

今後は忙しくなるので頻度は減りますが、短編なんかを書いてみるつもりです

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