【オリSS】時也「強くてニューゲーム……なんてね」 (33)

注意
オリジナルキャラのSSです。
最初は男、女、友、と書いてたのですが、味気無く思い名前を追加しました。
オリジナル要素、下手な文章などがお嫌いな方はブラウザバックを推奨します。
他、注意点などありましたら都度コメントをします。
書きためはそんなにありませんし、投下も細々とやっていきますので、御了承のほどお願い致します。
投下するつもりはそんなになかったのでちょっと意味不明な所があるかも知れませんが、適度な脳内補完をお願いします。
コメント、批判、アドバイスはいつでも歓迎しますが、ただ中傷したいだけのもの、このスレッドに直接関係のないコメントは控えていただけると幸いです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1453315291

時也「86歳、生涯恋人できず友人もただ一人。親友に見送られ……か」

智樹「先に逝ってろ。私もすぐ逝くさ」

時也「そうだなぁ……」

智樹「美優ちゃんはどうした?」

時也「さぁなぁ……どこかで……幸せに……」

智樹「……時也?」

時也「…………」

智樹「ふっ……結局、最期まで、か。私たちらしいのかもな。おやすみ、時也」

ガチャっ!

美優「……お父さん!」

智樹「遅かったね」

美優「! ……ご、ごめんなさい……お父さん……私……」

智樹「今は静かに看取ってやろう」

時也「(…………俺は、死んだのか……)」

時也「(…………ん?)」

看護婦「元気な男の子ですよ!」

父「よく、頑張ったな!」

時也「(……???)」

時也「おぎゃぁぁぁぁ!?」

享年86歳。
時也、タイムスリップする。

時は進み……時也、幼稚園入園。

時也「……はぁ……」

幼女「ときやくんどしたのー?」

時也「ん? いや、なんでもないから気にしなくて良い」

幼女「ときやくんあそぼー♪」

時也「いや、俺は良いさ。みんなで遊んでな」

幼女「えー? おままごとしよーよー」

時也「ふふ……俺は本当に良いよ。でも誘ってくれてありがとう」ナデナデ

幼女「う、うん///」

時也「(あれから、俺は幼子として一から人生をやり直している。最初の頃は喋れず歩けず何も書けずと苦労したが、元より出来ていたもの、身体を慣らせばあっという間だった)」

時也「流石に、一歳で漢字を書いたのは失敗だったが……頭の障害を疑われた時は流石に焦ったなぁ」

時也「……智樹に早く会いたい」

舞「ときやー、どうしたの?」

時也「いや、なんでもないさ」

時也「(舞……家が隣で家族付き合いのあった幼馴染みだ。高校が別になってからは疎遠になって、24くらいで結婚したんだったか)」

時也「(あまり、彼女の幸せを邪魔するものでもない。未来が変わらないように、それなりの距離を保とう)」

舞「ときやって、いつもひとりね!」

時也「そうだな。俺はいつも独りだ」

舞「あたしとあそぶ?」

時也「いや、良いよ。舞、君は友達と遊びなさい」

舞「ときやもおともだちだよ?」

時也「ふふ、俺は友達なんかじゃないさ。いつの日か、君を恨んだことも、羨んだこともあった。今でこそ君の幸せを心より望むこともできたが、君には俺と一緒にいる必要性が無い」

舞「……? なにいってるか、わかんない」

時也「それはそうだろう。舞はこれから沢山の人に好かれる人間になる。ゆっくり考えて良い」

舞「よくわかんない。あたしはときやとあそびたい!」

時也「ふふ。そうだね、俺の気持ちを一方的に押し付けるものじゃないか。分かった、遊ぼう」

時也「(そして俺は舞と鬼ごっこをすることになった。若い身体とは言え、まだまだ未成熟だ。体力は余りあるものの……舞や他の園児には捕まらない)」

時也「(やがて遊びの時間は終わる)」

舞「くやしい! ずるいよ! ときやはやいもん!」

男児「ずるすんなよー!」

時也「ハハハ。楽しめるときは、楽しまないとね」

男児「もどろうぜー……」

舞「こんどはつかまえるから!」

時也「(少し疲れたように、皆は戻っていった。ふと、視線に気付く。金髪の女の子が、こちらを見ていた)」

時也「なんだい?」

??「………………」

時也「(おや……彼女は確か……)」

時也『やぁ。元気かい?』

??『!?』

時也『確か君は、日本語が話せないんだったよね? 拙い英語ではあるけど、通じるかな?』

??『わ、わかる!』

時也『それはよかった。やっぱり馴染めないかい?』

??『みんななにいってるか、わからないから……』

時也『そうかい。確かに大問題だな。でもどうにもならない?』

??『パパとママに教えてもらっても、わかんないもん!』

時也『ハハハ、そうか、分からないなら仕方ないな。ならそうだな……日本語を勉強しようか?』

??『え?』

時也『日本に住む以上、必要不可欠だからね。おそらく親御さんもおいおい……と思っているのだろうが、残念ながら俺の記憶が確かならば君はアメリカに帰って行くはず。それもひとつの幸せの道なのだろうが、できるのなら君には日本もよく知ってもらいたい』

??『……? わたし、にほんご、ぜんぜんわからないから……』

時也『英語も話せる日本人。目の前に君の教師には適役な人間がいるね? 俺は君の力になれるし、君が望めばその通りになるよ。どうしたい?』

??『あ……にほんご、おしえてください! おねがいします!』

時也『頼まれた。……今まで孤独で、辛かったね』ナデナデ

??『ほわっ!?』

時也『すぐにはどうにもならないだろう。だが根気よくやれば必ず上手くいく。君が諦めないかぎり、俺は君以上に根気よく教え続けるよ』

??『は、はい……///』

時也『自己紹介がまだだったね。俺は大河内時也。君は確か、エリーさん? だったかな?』

エリー『わたしはエリー・スタークスです!』

時也「(こうして、俺はエリーさんの教師になった。エリーさんは物覚えの良いこで、二年ほどもすればそれなりに話せるようになった。何よりも学習意欲が凄まじかった)」

時也「(今では園内でもべったりとくっついて離れず、家にもしょっちゅう遊びに来たり、泊まったりすることもあった)」

時也「(何故か舞も一緒だったが、幸いとばかりに二人の仲を取り持った。舞は誰にでも好かれる性格なこともあり、言語の壁も俺を挟んで難なく突破してくれた)」

それから時は進み……。
時也、小学校入学。

舞「時也、帰ろ?」

エリー「帰りましょう」

時也「(子供の成長というのは、早いものだ。いつのまにか大きくなっていく)」

時也「(我が身もすくすくと育っているのが日頃から感じられて、幼少期に気づけなかった様々なことを理解するのはとても楽しい体験だった)」

時也「(それに、共に歩く二人の成長を見守るのも密かな楽しみになっていた。もちろん変な意味ではなく、保護者の感覚なのは言うまでもない)」

エリー「時也さん、遠い目してます?」

舞「今度は何を考えていたの?」

時也「ん? いや、時が経つのは早いものだな、と。エリーさんも、日本語をしっかり覚えたし、二人ともどんどん成長していく。それを見守るのが、楽しいんだよ」

舞「……ふーん」

エリー「私も! 時也さんといるの楽しいです!」ギュッ

時也「ふふ……ありがとう」

舞「あ。……私も!」ギュッ

時也「あらら。両手に華だなぁ。ハハハ」

時也「(さて……智樹は、小学校の時に出会った。どこかにいるだろうか。いや、いてほしい)」

智樹「……」スタスタ

時也「(いた。相変わらずの仏頂面だ。懐かしいものだな……)」

時也「こんにちは」

智樹「……?」

時也「俺は大河内時也。君は?」

智樹「天野智樹。で、なに?」

時也「なにと言うことも無いさ。これからよろしく」

智樹「…………誰? もしかしてどこかで知り合った?」

時也「いいや。俺が一方的に知っているだけさ。でも、それでも良いだろう? 例え俺が君のことを一方的に知り親近感を覚えていようとも、それがこの先の君と俺の関係を変えることは何一つないからね。君は違うだろうが、俺は君を友達だと思っているよ」

智樹「…………気持ち悪」

時也「だろうね。すまない。押し付けるつもりはなかったんだ。ただ、今は俺が嬉しいということだけで良いんだよ」

智樹「意味がわからない。分かるように説明してくれないか?」

時也「そのうちに。それじゃあ」

時也「(よかった。智樹もいてくれた。何故か舞とエリーが俺を睨んでいるが、それもあまり気にならない程度に俺は舞い上がっていた)」

時也「(それから智樹に毎日のように話しかけ、いずれ友達と呼べる間柄になった。智樹は相変わらず孤立していた)」

時也「(美形で頭も良いが、近づきがたい存在と認識されてしまうのだろう。それは未来でも変わることはない。思えば当たり前のことだ。俺だって最初は智樹のことを変なやつだ、として近寄らなかった)」

時也「(そんな智樹と俺が友達になったのは、ある事件がキッカケだった)」

時也「(先に友達になっていれば起こらないんじゃないか? そう思っていた事件だったが、どうにもならないものもあるらしい)」

時也「(智樹は、泣いていた。いつも澄ました顔をしてどんなこともスルーしてみせる智樹。そんな態度に腹をたてたクラスメートが、嫌がらせをしたのだ。トイレに閉じ込めて水をかけ、扉を塞いで放置する。昔はただ驚くばかりだったが、今の小学生もえげつないことをするな、と冷静な自分は考えていた)」

時也「(だが、頭に上った血は、簡単には下がってくれなかった)」

時也「……こんなことをして、君たちは満足か?」

いじめっこ「はぁ? お前には関係ねーだろ!」

時也「関係あるんだよ。智樹は俺の友達だ。君たちは友達がいじめられていたら、怒らないかね?」

いじめっこ2「友達ぃ? ……ならお前も同罪だな! こっちこいよ!」

時也「(掴みにくる手を逆に掴んで、捻りあげる)」

いじめっこ2「いでででで!」

いじめっこ「な、お前!」

時也「人には痛みを与えるくせに、自分や仲間が痛みを与えられたら逆上する。浅い、とは思わないか?」

いじめっこ3「年下の癖に生意気なこといってんじゃねーぞ!」

時也「そうか。分からないか。なら話すまでもないね。大丈夫、俺は君たちに怪我をさせるつもりはない」

時也「(適当に掴んで投げて、掴んで投げてを繰り返すだけで、いじめっこたちは泣いて逃げていった。恐らく教師には俺が悪いと言うことで報告されるのだろう。だがそんなことは些細なことだ)」

時也「大丈夫か?」

時也「(智樹は声も出さず、ただ歯を食いしばって泣いている。水で濡れているものの、どうにも変な魅力のようなものがあるものだ)」

智樹「……うるさい」

時也「気にするな。俺はここにいる」ギュッ

智樹「ッ!?」

時也「俺相手に悔しいとか情けないとか、ウザいとか面倒臭いとか、そういう感情は必要ない。ただ俺はお前の友として、唯一の理解者として、お前と共にあることを誓うよ」

智樹「…………なん、で……」

時也「性同一性障害。智樹は女の子の器に男の子の魂が宿ってしまった」

智樹「え……!?」

時也「でも俺はお前を拒絶しない。気持ち悪がらない。何故ならお前は理解者で、お前の理解者だからな」

智樹「なんで、俺のことを……!」

時也「……どうでもいいことだよ。深刻な問題だが、だろうと智樹は友だからな」

智樹「うっ……ぬ、濡れるよ……」

時也「気にするな。苦しみは分けあおう」

智樹「………………ぐすっ」

時也「大丈夫だ。大丈夫」

時也「(こうして、過去にも智樹と友人になることができた。いや、あの頃は智樹について知らなかったし、こうして慰める言葉も子供らしかったような気がするが、それでもキッカケはここだった)」

時也「(俺が時也の性同一性障害について知るのは高校の時だが、少しくらいずるをしても、構わないだろ?)」

時也「(その後、四人でよくいるようになった。遠慮がちだった智樹も遠慮なく来てくれるようになったのは、素直に喜ばしいことだった)」

時也「(やはりというか、俺は喧嘩を売った方として教師に呼ばれた)」

時也「(幸いにも懇切丁寧に説明し、状況を確認した上でしっかりと真実を伝えることができたので、無罪放免となった。子供の浅知恵で助かったというところだ)」

時也「(話は変わるが、俺は一周目よりも運動少年になっている自分に気付いた。というのも、身体が自由に動くことが、ありがたいことだと気付いた俺は自分の身体を動かすのが楽しくて仕方がなかったのだ)」

時也「(幼少期から無茶を繰り返し、それが無茶でなくなる度に楽しくて愉快だった)」

時也「(スポーツが好きになっていたのだ。昔の俺は何故身体を動かすのを嫌ったのか……と不思議で仕方がなかった)」

時也「(そんなこともあり、両親は俺に大層期待をし、小学校ではちょっとした人気者になっていた)」

時也「(でも、俺は他人との距離をそれなりに置き、周りもそれを感じてか、自然と俺から距離を離すようになった)」

以上で投下終了です

高校まではさっさと進めます

以下こんな雰囲気で進んでいくので、馴染めないと感じたのならブラウザバック推奨です

それから時は進み……。
時也、中学校入学。

時也「(俺たち四人は同じ中学になった。小学校の時にエリーさんがいる時点で、既に未来は大きく軌道修正されてしまったのだろう。そもそも中学の段階で舞ともほぼ疎遠になっていたはずだ)」

時也「(だが、俺は後悔をしないことにした)」

エリー「時也さん、おはようございます!」ニコッ

時也「(エリーさんは、こんなに笑顔なのだから。なにも間違ったことをしたとは思いたくない)」

時也「おはよう、エリーさん。舞は?」

エリー「…………」ムー

時也「おっと……ごめんごめん。エリー、舞は?」

エリー「はい! 舞さんはお寝坊でしたのでご飯を食べてます! すぐ来ると言ってました!」

時也「なるほど、そっか。じゃあ中で待ってようか」

エリー「はい!」

時也「(エリーは中学生にも関わらず、魅力的な女の子に成長していた。実際、何回か告白をされたりもしているらしい。これからもっと成長して綺麗になるだろう。悪い男に出会わないように注意しないといけないな)」

エリー「時也さん! 隣座ります!」

時也「どうぞ」

エリー「えへへ……」ギュー

時也「どうしたの?」

エリー「好きな人とギューってすると幸せ!」

時也「ふふ……そうかい。俺で良ければいつでもどうぞ」

エリー「時也さん、分かってない?」

時也「なにがかな?」

エリー「むー……」

時也「(分からないフリをしているだけだが、仕方がないことだ。俺は悪い男の最たる例であり、本来はもっとも遠ざけなければならない人間だった。好意を抱かれているのは分かってはいたが、何かを勘違いしているのだろう。俺はそう思っている)」

時也「(応える訳には、いかない)」

エリー「時也さんは、私、嫌いです?」

時也「好きだよ?」

エリー「……ふ、ふへへ」ニヘラ

時也「(精神年齢は80過ぎのじいさんではあるが、こういう可愛らしい姿には現在の年相応に反応してしまう。エリーは可愛い)」

時也「急に、どうしたんだ?」

エリー「私も時也さん、大好き! お嫁さんだね!」

時也「(直接的すぎて、困惑する。エリーの体当たりにはいつも苦笑いしか返すことができない)」

時也「ははは。エリーはいつかもっと素晴らしい男に出会えるさ。エリーがこんなにいい子なんだからね」

エリー「時也さんが良いですから! 違う人じゃないです!」

時也「……そうだね。お互い、ゆっくりと時間をかけて考えていこう」

エリー「……むー」

ピンポーン

時也「舞が来たみたいだね。行こう、エリー」

エリー「……はい……」

時也「(落ち込んでるエリーに気づかないフリをして、玄関に行くと、舞の他に智樹もそこにいた)」

時也「智樹、おはよう。遅くなってしまってすまない」

智樹「構わないさ。舞の寝坊が原因なんだしね」

舞「うっ……悪かったわね……」

エリー「お寝坊さんだね舞!」

時也「おはよう舞。機嫌が悪そうだけど、また目覚まし時計を壊したのかな?」

舞「うぐぅ……最近は順調に起きれてたのにぃ……」

智樹「思うに、夜更かしを控えれば自然に起きられると思うんだが、どうだろう?」

舞「分かってはいるんだけど、時也相手にするとついムキになっちゃって……」

時也「ふふ。今度からはもう少し早くやめようね」

舞「うん……そうね……」

エリー「二人は一緒に遊んでるんですよね。私も早くパソコン欲しいです……」

智樹「……そういえば二人はなんのゲームをしているんだい?」

時也「兵を動かして相手を罠にかけて、最終的には相手の城を攻め落とす……そういう戦国時代の戦争をシミュレーションできるゲームだね」

智樹「なるほど、友人同士で殺しあいか……」

時也「確かに事実その通りなんだけど、含みを感じるなぁ」

エリー「殺伐とした戦場……恐怖ですね!」

時也「ハハハ……エリー、そんなに良い顔で言っていると、君まで誤解を受けてしまうよ」

時也「おっと、遅れてしまうね。さぁ、行こう」

時也「(学校に着くと、生徒会の人間と思われる先輩たちが挨拶をしていた)」

時也「おはようございます」

エリー「おはようございます!」

智樹「おはようございます」

舞「おはようございます……」

時也「(しっかりと挨拶をして校門を通る。舞の元気が無いが、まぁ大丈夫だろう)」

副会長「あら……いつもの四人組ですね、おはようございます。普段より少し遅いですね、どうかしましたか?」

時也「(副会長の風香さんに、話しかけられてしまう。真面目な人だ。昔、俺はこの人のことを疎んでいたのをふと思い出す)」

時也「(当時、こういう他愛の無いことを聞かれて、俺は怪しまれてる、監視されてる、などと被害妄想逞しいことを考えていた。馬鹿な話だ)」

時也「いえ、舞が寝坊をしてしまいまして。遅刻はさせないようにするつもりではありますが、多少のことなら目を瞑ろうと」

舞「うー……べ、別に良いじゃないですか遅刻はしてないんだし……」

風香「あぁいえ、別に注意するつもりでは……」

時也「朝の挨拶だろう。そう警戒することも無いさ。こいつ、俺も知らなかったんですけど、意外と人見知りなところがあるんですよ」

時也「打ち解ければすぐにでも仲良くしてくれますが、どうにも警戒心の強い子で。幼馴染みとしてこの警戒心の強さに注意をする必要性もあまり感じていないもので。是非とも先輩には俺達と良好な関係を築けたらと切に願っています」

時也「もしなにかお困りのことがありましたら、お声かけください。智樹は頭がよく、舞は頭は少し悪いですが元気の良い子です。エリーは明るく可愛いので場が和みますよ」

時也「(と、冗談っぽく笑いながらそう言ってみる。実のところ、少しだけ危惧していることがあった。この三人は、どうにも俺以外とはあまり接触をしたがらない)」

エリー「可愛いって! えへへ……」

舞「馬鹿とは何よ馬鹿とは!」

時也「(風香さんは少し風変わり……少しばかり天然で生真面目な性格だが、人への関わりに積極的だ。こういう人と付き合うことで友人の輪を広げてもらいたい)」

智樹「…………ふむ」

時也「(あわよくば、俺がいなくても)」

風香「なるほど……君は?」

時也「俺ですか? そうですね……俺は……」

時也「(………………問われたことに対して、反応が思いつかない。スポーツ万能? 知識がある? ……それ以外に何もない。どちらも当たり前のことだ)」

時也「(ろくに動けない老後から一転、思い通りに動く肉体を手に入れた。そうなれば誰でも動き回りたくなる。こんな素晴らしいものを子供だった時には当たり前のもので大したことではないと、浪費してきたのだから)」

時也「(知識だってそうだ。学び方を知っているのだから、できて当然のこと。……何もない)」

時也「(…………)」

風香「あの……どうしました?」

智樹「時也は優しいですよ。何でも受け入れる包容力は、両親にも見たことがありません」

エリー「うん! すっごく優しくて、一緒にいると落ち着くの!」

舞「ええ。それが時也の魅力です」

時也「―――。……あ、長話をし過ぎましたね! 皆、行くぞ!」

風香「あ、あぁ。…………時也か」

風香「面白そうな子ですね……」

時也「(やれやれ……この年になってもまだ、考えることからは解放されない、か。優しさ……優しさか…)」

時也「(俺はエリーに日本語を教え、日本に来たことを良かったと思ってもらいたい、そう思った)」

時也「(舞には前と同じように、幸せになってもらいたい)」

時也「(智樹は無二の親友だ。だが、俺に縛られて欲しくはない。理解者で、被理解者。だが、それはたまたま俺だったというだけで、智樹のことを理解してくれる人間は他にもいる)」

時也「(……縛りたくないと考えながら、俺は智樹に近付いた。寂しかった。……俺は優しくなんて、無い……最低な男だ)」

時也「(…………本来の目的を忘れるな。俺は、彼女たちを幸せにする。なるべく、最終的に俺の介入を無くして)」

智樹「……時也?」

時也「ん? ……智樹……? どうかしたのかな?」

智樹「…悩みがあるなら話してくれないかな。いつもの君らしくないね、余裕を感じないよ」

時也「…………あぁ……いや……」

智樹「時也。私の親友。最初に親友と呼び喜んだのは君の方だ。なのに君は、その親友を無下にするのかい? それはあんまりな話だね」

時也「……聡明な親友よ。お前はもう、なんとなく答えにたどり着いているんじゃないかな? だが、荒唐無稽な話、俺から聞かされるまでは、と考えている」

時也「この話をしたのが答え合わせだよ、親友よ」

智樹「…………。私はある仮説を立てた。私は自分の記憶力に自信がある。と言っても幼子のものは無理だが、ある程度の記憶は持っている。その記憶のどれにも、君に繋がる物がない。にも関わらず、君は私を知っていた。親友と呼んだ。そして、私の病気について言い当てた」

智樹「私のこれは、両親すら知らない秘匿だ。二人とも、少し男の子っぽい変わった子、程度にしか認識していない。……つまり、知る機会は無いんだ。誰にも」

智樹「…………時也。君は時間旅行者だ。違うかな?」

時也「流石だ。いや、君なら当然とも言えるかも知れない。君は中学の時から、頭は良かったんだね」

智樹「…………どうして?」

時也「俺が望んだことじゃない。俺は確かに寿命を迎えたのだ。だが、次に眠りから覚めた時、俺は幼子になってしまっていた」

時也「しかも、来世などと言うものではない。時間をまきもどしたかのように、俺は同じ人生を歩むこととなった。いや、正確には一度その人生を経験した俺が人生をやり直す……というのだがね」

時也「お前に声をかけたのは、寂しさからだよ。俺はお前という親友を、また欲した。やめるべきだったのに、俺はワガママを通してしまったよ」

時也「それに、お前への嫌がらせは前回と同じ日に起こってしまった。見過ごしたくは無かったんだ」

時也「すまない、親友」

智樹「……。なんで私の病気について知ったんだい? 私はおそらく、言うつもりはないと思うんだが」

時也「高校に入って、偶然お前と女の子の逢瀬を邪魔してしまってな。その時に、聞かされたよ」

智樹「君はなんと?」

時也「そんなことはどうでもいい、と」

智樹「どうでもいい?」

時也「そう。どうでもよかったんだ、その時の俺には。なんせ、唯一の友人だ。例えどんなに変わった奴でも、俺は手放したくなかったんだよ」

時也「醜い感情だ。だが、それ以降お前が益々俺の側にいるようになって、俺は優越感に浸っていたよ。「俺はこんなにも凄い人間の唯一の友人だ」……まったく、どうしようもないクズだ。過ちに気付いた30後半にはもう取り返しもつかない」

時也「お前は笑って、「唯一の理解者たる君にどんなふうにされ、どんなふうに思われても、私は恨むことは無い。君への友情を変わらず誓うよ」と言ったね。いや、言ったんだ」

時也「すまなかった。俺は、本当にどうしようも無い人間だった。お前はもっと上に行く人間だった。もっと褒められるようになる人間だった」

時也「お前の才能の枷は俺だ」

智樹「………………」

時也「……ふふふ。結局死ぬまで言えなかったことなのに、まだその経験もしていないお前にすらすらと言えるとは……」

時也「やぁ、智樹。親友としての言葉だ。お前は俺と付き合うべきじゃない。もっと広く視野を持て」

智樹「………………」

智樹「時也。私はまだ経験してないが、君の話から察するものはある」

智樹「というよりも、私は昔からこう思っているんだ。理解者は一人で良い、と。だから、仮に逢瀬をしていた女性が理解者となったのなら、恐らく私は君とではなくその女性と人生を共にしたと思う。そうならなかった、ということは、理解者にはならなかったということなんだ」

智樹「予想するなら、そもそも遊ばれていたか、私を男ではなく女として好きになったか……後者が有力かな。そして、そのあとに完璧なる理解者が現れた」

智樹「どんな形にしろ思いにしろ、男だ女では無く智樹としての私に存在を求めた」

智樹「時也。私は運がいい。君のおかげでこんなにも早く理解者に巡り会えた。心の底から感謝する」

時也「…………お前……」

智樹「もはや逃げられないと思ってくれ、親友。私は君という理解者を逃さないためにありとあらゆることをする覚悟がある。それほどまでに餓えているんだよ」

智樹「君が私の才能の枷? 失礼なことを言わないでほしい。私は自ら進んで君と共にあったんだ」

智樹「その私の決断と、私の判断力を、馬鹿にするな」

時也「……ふっ……はは。ははははは! なるほど! いや……うん、お前らしい。ならこれはどうだ?」

時也「俺はお前の身体に欲情したことがある」

智樹「構わないさ。私が君を理解者として認識してしまったんだから、例え何をされても、共にあるよ」

時也「良いのか? 女性としてのお前の部分にばかり注目してしまっているが?」

智樹「私は私の信じた君を信じるよ」

時也「なるほど…………ありがとう、親友」

智樹「構わないよ、親友」

時也「(なんとなく、胸につかえていたものが取れた気がした。そうだ。俺はあの人生を生きて、確かに変わった。そして、過去を正す道がある。ならば、何を迷う。……俺も、皆と同様に、どんどん視野を広げよう)」

時也「せめて結婚でもして、両親に孫の顔を拝ませてやりたいな」

智樹「ふむ。結婚か……私の同棲を認めてくれる女性がはたしているものか」

時也「なんだ、同棲は決定事項なのか?」

智樹「未来の私に答えを尋ねてみたらどうだい?」

時也「いやはや……自己分析も完璧とは……過去の俺はお前の何を見ていたのかね」

時也「(智樹との友情を更に深め、より一層智樹に近づけた。とても嬉しかった)」

時也「(己の決意も新たにしたところで、また一騒動が起きたのは二ヶ月後のことだった)」

時也「(俺が気に食わない、そういう子達に嫌がらせを受けてしまったのだ。それも仕方がないのかもしれない。他の男子にとって、彼女たちは酷く魅力的だろう)」

時也「(そんな三人を俺が独り占めしている状況だ。こちらにそんな意図の有無は関係無い)」

時也「(気に食わなければ、とにかく虐める。……この調子で将来的には社会問題に発展していくのか……)」

時也「やれやれ……」

男子1「なんだよテメェ、すかしやがって! 今の状況がわかってんのかよ?」

時也「(同じ体格の男の子たち五人に囲まれている。さて、どうしたものか……あまり大事にはしないように、説得をしたい。……が、この子たちに伝えてはたして理解してもらえるのだろうか……)」

時也「(子供というのは、言ったところで聞いてくれないことが多い。自分が特別だと思い、世界は自分の都合の良いように動くもの……と考えてる子がいっぱいだ)」

時也「(困った。大人しく彼らの好きなようにさせて、この場を切り抜けよう)」

時也「(孫くらいの子らを殴るのも、何となく気が引けてしまうのはどうにもこうにも。智樹に気付かれた場合、この子たちに何をするか分かったものではないからな)」

時也「(許せ、智樹)」

投下終了

時也「あぁ、君たち。顔は止めてくれ。もし仮に怪我が露呈した時に、それは君たちにとってあまりに不利になる。欲望の赴くままに傷つけるのはまぁ仕方がないことだと思うが、俺としてもここで怪我をすることを他人に察されたく無い」

男子2「な、なにいってんだこいつ……? きもちわりぃ……」

男子1「良い度胸だな……なら顔以外のところボコボコにしてやるぜ!」

時也「あぁそれと、足も止めてくれ。動けなくなった場合はやはり不審がられる。やるなら服で隠せて且つ行動に支障を来しにくい腹部か背中がベストだ」

男子3「な、なぁ……三人に近づくなって言うだけじゃ無かったのかよ……」

男子2「お、俺だってそのつもりだったけど……」

時也「(一人を除いた男子四人がひそひそと話しているのを尻目に、目の前で怒っている子は、殴りかかってきた)」

時也「(本気で腹を殴られたのは久々の感覚で、壁に叩きつけられて倒れると、何度も咳き込んでしまう)」

時也「(子供は手加減というものを知らない。今のは、頭を打ったりしていたら最悪、死んでいる。その辺りの手加減を知らないのだろう)」

時也「(可哀想なものだ。だがこれから成長していくだろう。それに期待しよう)」

男子2「お、おい、やり過ぎじゃないか……?」

男子1「うるせぇ! こんな生意気な奴はこうしてやるのが良いんだよ!」

時也「(容赦なく腹を蹴られる。これも下手をすれば大怪我に繋がる。やはり、痛いものは痛い。これは何年生きようと同じことだった)」

時也「(若い身体で、運動をしておいて良かったというところだろう)」

時也「が、がは……げほ……!」

男子4「も、もうやめようぜ! これ以上やったらヤバイって!」

男子1「うるせぇ!!」

時也「(あぁ、完全に頭に血がのぼっている。俺のお願いを無視して頭を蹴りつけようとしている。避けなければ……)」

時也「い……っ!」

時也「(しまった……動けない。…………ヤバい)」

「何をやっているか!!!」

男子1「ひっ!?」

時也「(凛とした声が響き渡り、その場にいた全員が動きを止めた。見ると、生徒会長の遠坂 夏海がいた。他にも数人立っている)」

夏海「複数の生徒に一人が連れていかれたと聞いて見に来れば……情けないとは思わないのか!?」

男子1「逃げろ!」

夏海「逃げられんぞ! 全員きつく絞ってやるから覚悟しろ! 捕まえろ!」

時也「(逃げ出す子達を一気に追いたてていく。夏海さんだけが残った)」

夏海「大丈夫か? 何があった?」

時也「いえ……大丈夫です。ありがとうございます、助かりました」

夏海「ん……あぁ、立てるのか」

時也「幸いなことにまだ暴行を受ける前でしたので。……突き飛ばされたのは含めずに、ですが」

夏海「………………おい。そんな嘘で誤魔化されると思っているのか?」

時也「いえ、誤魔化されてくれるとはあまり思っていません。ただ誤魔化されてくれると嬉しい限りです。やられた本人がこう言ってるのですから、これ以上の追求は止めてくださいますよね?」

夏海「む……。いやだが……」

時也「俺からは、二度と彼らに同じことをさせないように教育していただくことだけをお願いします。それでは、いつもお疲れさまです、夏海会長」

夏海「待て! 話はまだ終わっていないぞ!」

時也「(そう、彼女はこういう子だ。正しい道を常に選択しようとする。自分が納得のいかないことは徹底的に真実を探ろうとする)」

時也「(何れ警察官になったと聞いたが、その性格ゆえ上司との折り合いが悪いという話があった)」

時也「(けっして悪い子ではない。むしろ好感が持てるくらいに真っ直ぐだ。だが、この場合は対処に困ってしまう)」

時也「うーん……夏海会長。俺は被害者として素直に説明をしましたよ? 被害者がそう言っているのに、これ以上の真実が必要ですかね?」

夏海「君は彼らを庇っている。私には分かる」

時也「そうですか。それがあなたの答えでしたら、そういう可能性もあるかも知れませんね。あくまで私のお答えする真実に変化はありませんが」

夏海「何故だ! 君がちゃんと説明をすれば、私たちもしっかりとこの事を問題にして彼らへの説教ができる! だが今のままでは大したことは言えないんだぞ!?」

時也「(彼女の言うことは正しい。彼らが自白しなければ、軽い注意で済んで、もし彼らに深く恨まれた場合今後の学校生活に差し支えるかもしれない。それでも、俺はこれで良いと思っている)」

時也「…お嬢さん。今後のために覚えておきなさい。この世は正しく成り立っている訳ではない。歪みを歪みで支え、時に正しい物をも組み込み、それを無理やり正しいものだと認識させ、社会は成り立っているのだ」

時也「社会に出れば、正しくない人間が正しい人間を正しくないものだと罵り、正しかった者が正しくなくなったり、いなくなったりする。そういうものなのだよ」

時也「俺個人としては、君の正しさは強い憧れでもあり、俺は君のそういう部分を評価し、好ましく思っている。だがね、それを望まない者に押し付けるのは、もう既に正しくないものになってしまうものなのだよ」

時也「今は分からなくても良い。何れ理解する日が来る。理解できなくても良い。そういうものもあるのだと、知っておいてほしい」

時也「俺は歪みの一つだ。君には理解できない、納得できない歪み。それでも、その歪みはこれで良いと考えている。自分の意思でだ」

時也「そういうものなのだよ、お嬢さん」

夏海「………………」

時也「それでは失礼する。今回の騒動は俺にも責任の一端があるからね、いや、これからは君たちの手を煩わせ無いように気を付けるよ」

夏海「ま……待ってくれ!」

時也「はい?」

夏海「君の名前を教えてくれ」

時也「俺の名前? あぁええと……大河内時也です」

時也「(なんとなくばつが悪くなり、頭を下げると脇をぬけていく)」

時也「(もっともらしい説教をしてしまったが、今のうちから彼女に真実を伝えるべきであっただろうか? これからゆっくりと知っていく社会の真実を伝える必要はなかったな。いや、恐らく今は理解できないだろうから、問題は無いか。将来、彼女のなかで俺の言葉が思い出される日が来ることを楽しもう)」

時也「(そんな風に納得した俺とは別に、確実に事態は進行しつつあったのだが、この時の俺にそれを知ることはできなかったのだった)」

時也「(時は少しだけ進み、以前の件でまた一騒動起こってしまう)」

時也「(倒れている男子、握り拳を作っている俺、半べそかいているエリー……)」

時也「(どうしてこうなってしまったんだ……)」

時也「(あの時から、智樹は無理として、少しずつ舞、エリーから距離を置いていった。大したことはしていないが、さりげなく避けたり、用事があるから昼食は無理だ、など、その程度だった)」

時也「(俺としてはその程度だったのだが……舞やエリー、それに智樹からも避難の声があがった。智樹からは何故こんなことをするのか、と訪ねられ、隠し事などできる相手でもないので素直に伝えた)」

時也「(かなり怒られたが、俺の考えなら見守る、と言ってくれた。なんとなく、智樹は今後どうなるか分かっていたんじゃないかと思ってしまう)」

時也「(今日、以前俺に難癖をつけてきたことのある子とエリーが昼食を一緒に摂っているのを見て、陰ながら応援することにした。彼女も他に友人を作れるようになったのかと)」

時也「(だが、様子がおかしいことにはすぐ気付けた。エリーが少しも楽しそうでは無い……どころか、顔が見てわかる程に暗い。隣で必死に盛り上げようとしている男子が痛々しく、見ているのも辛くなる)」

時也「(当然それを面白く思わない男子が、いきなりエリーに掴みかかると、キスを迫った)」

時也「(本気で嫌がるエリーを見て、駆け出し……)」

エリー「最低! 私、そんなつもりじゃなかったのに!」

男子「…………うるせぇ! こっちが頑張って仲良くしてやろうとしてんのに隣でため息ばっかつきやがって!」

エリー「悩みがあるなら聞いてやるって言ったのはそっちですよ!? それなのに、関係無い話ばかりしたのもそっちです!!」

時也「………………とりあえず双方共に落ち着いて。まず、君……君は自分勝手が過ぎるよ。相手の弱味につけこむ……まぁ他者と仲良くなるために形振り構わずというのも、分からなくは無いがね。かといってその気の無い相手を嘘をついて連れて行き、相手の心情を気にしない、自分の感情の押し付けで相手の反応がつまらなかったから無理やり押し通そうとするのは、彼女の言う通り最低なことだ」

時也「真に仲良くなりたかったのなら、相手の気持ちを尊重し、今はただ聞きに徹するべきだったように、俺は思うね」

男子「チッ……」

時也「いや……今まで頭に無かったのだが、むしろ君のような不器用な人間で良かったのかも知れないがね。もし言葉巧みにエリーを得ようとする、どうしようもない人間だったらと思うと、己の浅はかさに身震いする思いだよ」

時也「エリー。悲しくなる気持ちは分かるがね、そうして気落ちして、相手の言葉に耳を傾けないのはどうかと思うよ。この子だって君と仲良くなりたかったのだ、勿論下心だろうがね……ただ、どういうものであれ、相手を好きだと思った気持ちを蔑ろにするのは個人的にはどうかと思うね」

エリー「……はい」

時也「俺に言われたくはないだろうがね……あとでゆっくりと話そう、エリー」

エリー「は、はい!」

時也「君、すまないね。言われた通りに距離を置いてみればこうなってしまった、勘弁してくれよ?」

男子「クソ! 知るかよ! このクソ女!」

時也「(そう吐き捨てると、逃げるように行ってしまった)」

時也「好きな子にああやって言ってしまうのは、はたしてどうなのかね……いや、俺にも似た経験があるから、否定はできないのだが、あれかな? 好きな子ほど虐めたくなるという」

エリー「時也さん……どうしてエリーを避けるんですか?」

時也「ふむ……」

エリー「エリー、悪いことしましたか? それなら、どうにかするよ? どうにもならないことですか?」

時也「…………エリー。俺は君のためにとやったつもりだったんだ。ままならないね……。良いかいエリー? 俺たちのグループだけで完結していちゃダメなんだよ。俺はいつかね、エリーの人生を狭めてるんじゃないかと考えたんだ。考えているだけでなにもすることは無かったんだけど、最近少しあってね。エリーと舞を避けてみた結果がこれだよ。すまないねエリー」

エリー「なんでそんなことするんですか!? 迷惑ですよ!」

時也「……そうだね。自分の知らないところで自分のことを好きにされていい気分になる筈もない。まったく、人に好き勝手とよく説教ができたものだね」

エリー「私は、時也さんと仲良くしていたいです! 時也さんがいなくなって他の人と友達になるのは絶対違う! それは分かります!」

時也「………………。まったくその通りだ。俺は……君に俺以外の楽しさを知ってもらいたかったんだよ。俺がいて、舞がいて、智樹がいて……それで君の世界が終わってしまっている……それが、俺のせいなんだと思ってしまってね……」

エリー「それが間違いです! 私が今ここにいれるのは時也さんのおかげ!」

時也「……。向こうに帰っていれば、もっと幸せだった君の世界があるんじゃないかと……ずっと考えてしまうんだよ……それを俺が壊したんじゃないかってね……」ボソッ

エリー「え?」

時也「いや、なんでもない。ただ、勝手にこんなことをしてすまん。これからは君の意思を尊重する。だから、許してくれ」

エリー「……なら、時也さん、お願い聞いてください」

時也「お願い? うん、なんなりと」

智樹「おっと。そろそろ介入させてもらうかな。悪いがその話待った」

舞「エリーィィ?」

エリー「ひっ!?」

時也「二人とも、見ていたのか……」

智樹「君が殴るところからバッチリとね」

時也「あらら……カッコ悪いところを見られたようだ」

智樹「それよりも……エリー、君の気持ちは分かるが、少し狡いんじゃないかな?」

智樹「いや、皆までは言わないが……分かるよね?」

舞「……時也!!!」バチンッ

時也「あぶ」

舞「今後一切私たちに黙って勝手なことするの禁止! 良い!?」

時也「……ふふ。あぁ、そうする。叩いてくれてありがとう舞」

エリー「…………ぅ……うー!」

時也「どうしたエリー?」

エリー「邪魔するのは狡いよ智樹さん舞さん! もう少しだったのに!!」

智樹「分かってて邪魔したんだけどね」

時也「(それからは相変わらず四人でいるようになった。智樹に「私の時に独りよがりな後悔をしても仕方ないということを学ぶべきだったね」と耳の痛いことを言われ、一生智樹には勝てないな、と苦笑することになった)」

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