魔王「我が家が差し押さえられた」(96)

側近「魔王様、残念ですが先ほどお伝えしたとおりです」

魔王「……待ってマジで?」

側近「えぇ、マジっす」

魔王「……何で?」

側近「何でも」

魔王「口悪くない?っていうか、マジなの?」

側近「失礼しました。えぇ、マジですよ」

魔王「何とかならないの?」

側近「なりません」

魔王「……ウソん」

側近「ウソじゃないです。では、そんなわけで、私も国に帰ります」

魔王「え、ちょっ」

側近「私だって信じたくはないですけどね」
側近「――…お城の金がなくなって、土地も全て差押えられるなんて」

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魔王「ウソでしょ、どうにもならないの!?」

側近「なるわけないでしょうが」

魔王「どうしてそんな偉そうなの?私の業火で焼かれたいの?」

側近「申し訳ありません」

魔王「そもそも、側近がお金の管理をしてたよーな気がするんだけど」

側近「気のせいです」

魔王「…え、あれ?」

側近「気のせいです」

魔王「気のせいじゃないっすよね。ずーっと任せてたし」

側近「……気のせいだっつってんだろ!」

魔王「逆切れ!?」


 
側近「……ゴホン、失礼。ですが、本当のことをいえば"管理をしていた"といいたくないのです」

魔王「やっぱしてんじゃん!どうして、何でウソつくの!?」

側近「えぇ、だって魔王のいち側近である自分のせいで運用が出来なかったといったら恥じゃないですか……」

魔王「……あぁ、そうか。でも、なっちゃったことだし仕方ないし…、せめて理由はきちんと聞かせてくれないかな?」

側近「…」

魔王「ね、側近?」

側近「……本当に、情けない話ですよ」

魔王「ずっと戦ってきた仲間じゃない。……今更だよ。君の傷も私の傷なんだから、部下たちにも私の配慮が足りなかったってハッキリ言うから」

側近「魔王様、私の立場のために…犠牲に……?」

魔王「うん。だから、破綻した理由は?」

側近「人間界のカジノでスリました」

魔王「う、うおぉぉおいっ!!?そりゃ"管理をしていた"なんて言いたくないよねぇ!!?」」
魔王「というか、一瞬でも情けをかけようとした私がバカだったよ、何してくれてんの!!?」

 
側近「怒らないって約束でしたねぇ、魔王様……」

魔王「キリッ!とか擬音が聞こえそうな顔してんじゃないよ!バカなの!?アホなの!?」

側近「……ちっ」

魔王「舌打ち!?これ本当に側近!?ちょっと!?」

側近「……慌てても仕方ないでしょう。なっちゃったことだし仕方ないし」

魔王「それ私の言ったセリフで、君が言えた立場じゃないからね!?ビックリするよ本当!?」

側近「ってなわけで、とりあえず城内に残る者たちには実家や故郷に帰ってもらいましょうか」

魔王「こっちの話終ってないのに!?」

側近「というか、もうさっき伝えたので城内は誰もいませんよ」

魔王「何でそこだけ用意周到なの!?」

側近「私も既に準備を終えたので、消えますね」

魔王「本当に用意周到だなコノヤロー!!」

 
側近「早く王城から消えないと、もうすぐ来る借金のカタ嵌め査定員から売られますよ」

魔王「やめて、現実味増すから!」

側近「……残念!これ、現実ですからーーっ!プゥーーーッ!」

魔王「うぜぇ!!」

側近「ま、冗談はさておき早めに退散してください」
側近「借金の奴らを燃やすことは造作もないでしょうけど、そうしたら魔界の民から反感くらうでしょうし、復活の芽が無くなるので止めてくださいね」

魔王「そういうところだけ、側近らしい言葉を…。ってか、私は帰る場所ないんだけど」

側近「あ、そうでしたね。ここが家でしたねぇーーーっ、プゥーーーーッ!!」

魔王「…ッ!」

側近(あ、マジでキレてる)

魔王「……もう許さないからね、そっき」

側近「魔王様ァ!今までお慕いできたことを何より感謝致します!本当に、ワタクシめは貴方様にお仕え出来たこと、この上ない幸せでしたァー!!」

魔王「……え!?そ、そんなことまで言われるとちょっと恥ずかしいなぁ…?」テレッ…

側近「うわ、チョロッ」

魔王「え?」

側近「何でもございません。では、私はこれで」

魔王「え、だから、ちょっと。そうじゃなくて、私はどうすればいいのって」

側近「面倒くせぇなマジで」

魔王「おい」

側近「……じゃあ、どっかの家にお世話になったらどうです?魔王様の名前なら受け入れるんじゃないですか?」

魔王「さすがに知らない魔族の家に転がるのは無理でしょう」

側近「知っていても、こんな魔王様と知れば誰もが断りますか!プゥ……」

魔王「獄火炎」ピカッ
……ゴッ!!

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側近「調子に乗りすぎました」コゲッ…

魔王「まぁ許してやろう」

側近「はい…。で、ですが真面目な話、城内に残るのは無理です」

魔王「だから相談してんじゃないの」

側近「魔王様……、魔王様は魔王様ですよ。本当に住み込む宛ての一つもないんですか?」

魔王「…」

側近「……友達いないんですね」ボソッ

魔王「放っといて頂戴」

側近「しかし困りましたね。いつか復活するために、魔王様にも英気を養える場所が必要だと思うのですが」

魔王「困ったよね~……」

 
側近「私の家は家族が多くて無理ですし、他の者たちはもういませんし。…安い宿に宿泊するしかないんじゃないですか?」

魔王「うーん……」

側近「一応、側近という立場上でギリギリまで魔王様を看取りますけど、本当はすぐに出て行きたい一心なんですよ…はぁぁっ……」

魔王「私死ぬことになってるし、お前の立場上、ここにいたくない気持ちはしっかと伝わるわ」

側近「ははは」

魔王「うぜェーーッ!」

側近「失礼」

魔王「くっ、私だってこんな側近と一緒にいるのは苦しい…………って、あっ!!」

側近「…どうかなさいましたか?」

魔王「いいこと思いついた」

側近「何か宛が?」

 
魔王「なーんちゃって、うっそピョーン!」

側近「……は?」

魔王「そうそう良い案なんて思いつかないよ。どっかの漫画やアニメ、小説なんかじゃないしね」

側近「……うっざ。マジうっざ。うぜぇ」

魔王「君ほどじゃないからね」

側近「というか!本当に!何も!ないのなら!このまま路頭に迷うことになるんですよ!?」

魔王「そ、そこは心配してくれるのね」

側近「まぁ、仮にも魔王様ですからね」

魔王「仮かよ」

側近「で、どうするんですか!?早くしないと、借金屋が来てカタ嵌めに奴隷にされるか、外に追い出されて一文無し生活になりますよ!」

 
魔王「いや、だからさ…それは……」
 
……コンコンッ
???「こんにちわー、入っていいっすかーっ?」

魔王「……あ、はい?」

…ガチャッ!

借金屋「ちーっす、カタ嵌め屋っすーーー!」

魔王「…あ」

側近「…あ」

魔王「ちょっ、来ちゃったんだけど…!どうする、そっき……」

側近「……それでは魔王様、達者で!」

魔王「ちょっと!?」

借金屋「えーっと、それじゃー査定始めます。まずは残ってる魔王様から始めますねーっ!」

魔王「……ちょっとぉぉおおっ!?」

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===

※その後、魔王様は一文無しで外に叩き出されました

 
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……20分後。

魔王「こ、こんな屈辱久しぶりだ……!」
魔王「王城の外に蹴飛ばされる等、生きてきて最低の屈辱だ……!」
魔王「魔王たる私が、私の家が、差し押さえられる等と……!」
魔王「……でも、悪いのはこっちだし借金屋を火炎で焼いたら魔界民から反感買うし…」
魔王「う、うぅぅ……」
魔王「どうすればいいんだァーーっ!!家なき子魔王だよ、どうしようもないよこれ!」


側近「……ごほんっ!」


魔王「ひゃっ!?」

側近「忘れ物をしたから取りに戻ったら…。魔王様、そんな弱弱しく嘆かわしい姿を見せないでくださいよ……」

魔王「……逃げたクセに、よく私の前に戻って来た上に罵倒に近い言葉を浴びせる君の精神が欲しいよ」

側近「そんなことより、ホントに宛がないとは思いませんでしたよ」

 
魔王「さっき、何度も言ったじゃない!」

側近「いやいや、ですが…魔王様の身で本当にそんなことがあるとは……」ハァァ…

魔王「……本気でガッカリしないで。笑いがあるだけマシだったのに、そう言われたら立場ない」

側近「プゥーーーーッ!!」

魔王「うん、本当に君の精神がうらやましいよ」

側近「……で、どうします?このやり取りもいい加減飽きてきましたが」

魔王「だから、どうするか考えてたんでしょう」

側近「ふむ、では少し自分も案を出しましょうか」

魔王「うん…、そうしてもらえると嬉しいかな。っていうか君のせいなんだから、その義務はあるからね?」

側近「…ハハハッ」

魔王「笑いどころあった!?」

 
側近「いえ、失礼。それでは、バイトとかいかがでしょうか?」

魔王「バイト?」

側近「住み込みバイトとか探せばあるんじゃないですか?」

魔王「あぁーっ!確かに、それはちょっといいかもしれない!」

側近「ついでに、借金分も返せるように頑張りましょうよ」

魔王「ふむふむ、私に君の尻拭いをしろってことね。ぶっ殺すぞマジで」ニコニコ

側近「笑いながら怒らないで、本気で怖い」

魔王「誰のせいだと」

側近「そ、それより話を戻しましょう。だから、借金のために働けば良いってことですよ!」

魔王「……まぁ部下の尻拭いも上司の仕事っても言うけどさ」

側近「そうですよ!頑張って、6,000億ゴールドの借金を返しましょう!」

 
魔王「……は?」

側近「は?…って何です?」

魔王「ちょっと待って、今いくらって言ったの?」

側近「老人かよ」

魔王「獄かえ…」

側近「ごめんなさいでしたァーーーーッ!!」

魔王「"んっ"」

……ゴォッ!!ゴォォォオッ!!

側近「ほぎゃーーーーっ!!」ボォォッ!!!

 
魔王「よしっ、ちょっとスッキリしたっ」

側近「ちょっ、ちょちょちょっ、火、火ぃ消して下さい魔王様、魔王様ァァァッ!!」ボォォオッ!!!

魔王「……水魔法っ」パァッ!

…パシャアッ!…

側近「……ぜぇ、ぜぇっ…!ほ、本当にまた放つとは…!」

魔王「本気で灰にしてやろうかとも思ったくらいだよ」

側近「も、申し訳ありませんでしたぁ……!」

魔王「まぁいいよ。それで、6,000億ってマジなの?ねぇ、本気で?」

側近「お城を借金カタにされるくらいですよ…。そのくらいの金額はあるでしょう……」

魔王「うっそーん……」

 
側近「本当ですよ」

魔王「……ということは、そのくらいの額を人間界のカジノでスったっていうの?」

側近「そうですよ」

魔王「君が?」

側近「そうですよ」

魔王「本当に?」

側近「そうですよ」

魔王「6,000億ってそうそうスらないよね。聞いたことないよね。それでも君はスったの?」

側近「しつけぇぞ、オイ」

魔王「こりねぇな、オイ。いい加減、そろそろ舐めた口ばっか聞くと灰にするからね」

 
側近「はいはい、すみませんでしたーっ!」

魔王「極奥義系、呪殺魔法ぶちかますよ」

側近「それは加護を受けた勇者一行以外、本当に死ぬので簡便してください」

魔王「じゃあ舐めた口ばっか言わないこと。話進まないし」

側近「はいはい、わかりましたーっ!!」

魔王「…」
魔王「……はぁぁっ、もう良いよ…」

側近「諦められるとそれはそれで哀しいですね」

魔王「ま、今更お金が戻ってくるわけでも、お城が戻ってくるわけでもないし。私の管理能力が甘かったってことだからね」

 
側近「そッスか。それは許されたようで何より」

魔王「……で、何の話をしてたんだっけ」

側近「知恵遅れかな?」

魔王「ぶっちころっすぞ、極奥義…呪殺――……!」パァァッ!

側近「ちょっと言い方おかしいし、本気でやるのやめて、本当に、ごめんなさいでした、ごめんて、ちょっと、ごめんなさいっ!!」

魔王「…」

側近「住み込みバイトの話ですよ、魔王様、だから許して!!」

魔王「……最初からそういえばいいのにね」ハァ

側近「はいはい、ごめんなさいね……。ちっ……」

魔王「…」

 
側近「…ですがね、魔王様」

魔王「何よ」

側近「私とて、何も考えずに"バイト"と発言したわけではないのですよ?」

魔王「へぇ?」

側近「実は、住み込みバイトで割りと条件の良い場所を知ってるんです」

魔王「ふーん、それじゃ教えてくれる?」

側近「…態度が悪いですね」

魔王「君が言えることか」

側近「ほら、頼む時は……」

魔王「……お願いします、側近様!とか言ってくれっていうこと?」

側近「言っちゃった、言っちゃったよ魔王様!プゥーーーッ!!」

 
魔王「本気でこのやり取り疲れるから、勘弁して」

側近「……ツレませんねぇ」

魔王「で、そのバイト先ってどこ?私でも出来るの?私の立場上、バイトで雇うお店も覚悟が要りそうだけど」

側近「もう勝手に話を進め始めてしまった……」
側近「まぁ良いけども、立場の話なら、恐らく問題無いんじゃないですかね」

魔王「ん、どういうこと?」

側近「そのバイト先はある意味、魔王様と同じ立場というか」

魔王「ん…?だから?」

側近「つまりですね。その…"勇者"の建設した王城でのメイド的な……」

魔王「…」
魔王「…………は?」

 
側近「ほんとに耳が遠いんです?」

魔王「そ、そうじゃなくて!待って、意味わかんないんだけど」

側近「いやー、私は人間界に結構ツテがありましてねぇ。バイトをしてくれる魔族がいないかって勇者にも聞かれてたんですよ」

魔王「そこもだけど、勇者の今の情報とか、交流があるとか、全く知らないんだけど」

側近「言ってませんから」

魔王「言えよ」

側近「言ってもどうにもなりませんし…。で、どうします?」

魔王「いや、どうしますって」

側近「やるなら、連絡鳥をすぐに飛ばしますよ」

魔王「いやいやいや、ちょっと待って、ちょっと。整理がつかない」

 
側近「……あのね、魔王様と勇者が戦ったのはもう2年前ですよ?」
側近「もう勇者が王を継いだり、国民から得た支持でお金持ちになって王城を新設するくらいは出来ると……」

魔王「そこじゃねぇよ」

側近「あぁ、未だに負けたことを引きずってるんですか?」
側近「確かに勇者にボコボコにされて、あの時の傷は癒えてないと思いますが、もう和解はしたでしょう」

魔王「だからそこじゃねぇよ。いや、それもあるけど。ちょっとウソついたよ」

側近「ウソつくなよ」

魔王「え、あ…いや、ゴメン……」

側近「魔王様、どうせ勇者のもとで働きたくないっていう駄々をこねてるだけでしょう?」

魔王「私が勇者の下で働くってそもそも有り得ないでしょう。」
 
側近「今はそういう時代じゃないんです!!いい加減に気づいてください!!」

魔王「確かにね、そうじゃなかったら魔王の側近が人間界に6,000億もの金が流出させるわけないもんね」

 
側近「戦争は終わった。今は未来を見据え、魔王様も変わる時が来たのです」キリッ…

魔王「してやったりの表情しなくていいから。だから、そうじゃなかったら金は流出させるわけないし、そういう時代じゃないと重々分かってますよそれは」

側近「じゃあ、働きます?」

魔王「だからそれはちょっと違う」

側近「そういう時代じゃないと重々分かってるといったでしょう」

魔王「そりゃそうだけど、魔王たる私が人間に屈服したとなったら、支持や評判がガタ落ちですよ?」

側近「魔王城が一般競売にかかる時点で評判もクソもないっすけどね、ハハハッ!」

魔王「お前のせいだよ!!」
 
側近「……気にしないでください」

魔王「終わったことはネチネチ言いたくないけど、ネチネチ言わざるを得ない状況」

側近「……とにかく、働きましょうよ」
側近「魔王様、いい加減働いて下さい。お願いします、魔王様……」

魔王「私が働いてなかったみたいな言い方やめて!?」

 
側近「とにかく諦めて勇者王の城に行ってください。いいじゃないですか、王城メイド。待遇はいいでしょう」

魔王「そうかもしれないけどさぁー……」
 
側近「では、連絡鳥を飛ばしますよ。魔王様のことはしっかりお伝えしますので、あとは勇者王の城へ向って下さい」

魔王「ま、マジかぁぁ……」

側近「私も応援はしてますから。頑張って下さいね」

魔王「本当に応援しててよ。ほとんど君のためみたいなものなんだから!」

側近「分かってますよ。でも、腑に落ちないことがあるんですよねぇ」

魔王「また私に文句言うつもりでしょ」

側近「いえ、そうではなくて…勇者は王城をどうして急に新設することになったんでしょうね。あの一帯は比較的、お金がなかったはずなんです」

魔王「え、そうなの?」

 
側近「はい、おかしいですよね」

魔王「ふーん、そんな街でどうやって新設するほどのお金を貯めたんだろ……」
魔王「いくら勇者の支持がっても、そこまでのお金は集まらない気がするんだけどなぁ……」
 
側近「……もしかして、財政を強固たるものにする秘策があったりするのでは!?」

魔王「えっ!?」

側近「こうしちゃいられません、魔王様。財政難を切り抜ける、魔界の未来のためにも勇者にその協力を仰ぎましょう!!」

魔王「そ、そっか…。言われてみればそうだよね、そこまでの秘策があるなら聞いておいたほうがいいよね!」

側近「では、連絡鳥で魔王様が働くことを伝えておきます!魔王様、急いで勇者のところへ向って下さい!」

魔王「う、うんっ!じゃ、連絡はよろしくね!」

 
側近「はっ!承知いたしました!」

魔王「では、留守中の間…魔界はお前や幹部たちに任せた!行ってくるよ!」ダッ!

タタタタタッ……!

側近「行ってらっしゃいませ魔王様!祈っております!」

側近「…」

側近「………さて、極奥義対策の防具でも作っておくか…」

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===

※ついに人間界へ向った魔王様でしたが、
勇者王のいる街のカジノにてニュース屋より"6,000億の大儲け"という記事を知ることになりました。

続く。ペースはかなり遅くなりますが、続けていきます。

 
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―――【人間界・勇者街】


魔王「ここが、人間界…だけど――…………」


ザワザワ……

街人A「凄いよねー、6,000億の大もうけだってー!」

街人B「王城も新しくなるし、勇者様が今の王様のあとを継ぐのは凄く安心だよね!」

街人C「うんうん、魔族と和平が結ばれたって言ってもまだまだ怖いもんね……」


魔王「まさかその魔族を率いる王がこの街に、しかもその部下のせいでこうなっているとは思わないよねー……」

魔王「ま、いっか。なっちゃったもんはしょうがないし…、さっさと勇者のいる王城に急ごう……」

魔王「……って、むっ!?」ピクッ

 
…ザッ!
 
ローブ男「……おい、そこの魔族」

魔王(な、なんだこの男のオーラの強さは……!?そして、こいつ……)
魔王「どうして私の正体を知っている!?何奴だっ!)

ローブ男「……落ち着け。俺だ」

魔王「誰だ!その顔を覆うローブを脱げ!」

ローブ男「俺だ」

魔王「だから誰だ!」

ローブ男「声で分からんのか」

魔王「かつて戦った人間の誰かか!しかし、そのオーラの強さは覚えていないわけが……!」
魔王「私に復讐でも果たしにきたか!」

ローブ男「本当に分からないのか。それは少し、寂しくもなるな」

魔王「だから誰だと!」

ローブ「やれやれ、脱いでやるか……」

 
…バサッ!

男「……どうだ」

魔王「あっ!?」

勇者(男)「オーラ質も、ローブで顔を覆っているのも他人に悟られないためだよ」

魔王「ゆ、勇者っ!!!!」

勇者「おい、こらっ!」

…ガバッ!

魔王「むぐぅっ!?」

勇者「声がでかいわ!何のためにローブ羽織ってるのか聞いたばっかで!静かにしろっつーの!!」

魔王「むむぅー!」
(分かった分かった!)

勇者「……ったく」

 
魔王「ぷはっ…!いやだって、驚くでしょう普通!」

勇者「お前の側近に連絡鳥で情報を受けて、街で迷うかと思って迎えに来たんだよ」

魔王「おぉ、そういうことねっ!……だけど、私の場所がよく分かったね?」

勇者「そんなバカデケェオーラを発してて、分からないほうがバカだろう」

魔王「むぅ、相変わらず口が悪い」

勇者「ほっとけ。っていうか、お前も変装とかしてこいよ……」ジロジロ…

魔王「私のフォルムは人間型だ。別に人間と変わらないでしょう?」

勇者「そうじゃなくて、お前は人間で言うと割りと…その…、良い方だからな……?」

魔王「良い方?何が?」
 
勇者「何でもねぇよ!行くぞ!」

…グイッ!

 
魔王「あいたたっ、引っ張らないでって!いくら私でも、勇者の力に引っ張られては痛いから!」

勇者「街ん中にあまり顔出してると、バレた時に面倒くせぇんだよ」

魔王「何が面倒なのさ?」

勇者「何故なのか、人が集まってくる。もてはやされる。なんかみんなが騒ぐ」

魔王「嫌味でしょうか?」

勇者「とにかく俺はそれが苦手なんだよ!早く王城に来い!」

魔王「王城って…、建設途中じゃないの?」

勇者「使用人たちが宿泊する場所くらいは既にあるから安心しろ」

魔王「そっか、分かった」

勇者「じゃあ行くぞ」グイッ!
 
魔王「だから引っ張るなとーーっ!!」

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=

 
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―――【 王 城 】

魔王「……おぉ、ここが王城なの!?」

勇者「新築してるから時間はかかるが、元あった王城に改築を加えてる点もあって、綺麗には仕上がっている」
 
魔王「あー、だから既にある程度の部屋は出来上がってたんだ」

勇者「そういうこと。で、お前はうちに仕えるんだろ?」

魔王「私、本当にここで仕事…するの……?」

勇者「上目遣いで見んな。連絡鳥でお前が覚悟を決めて来たって言うのを聞いてるぞ?」
勇者「…あと先に言っておくが。べ、別に夜の相手とかは期待してないから、そういう覚悟はいらないからな?」

魔王「はい?」

勇者「連絡鳥に書いてたじゃないか」
勇者「何でもします。貴方の気の向くままに、いつでも、どんな時でも、身体を差し上げる覚悟でー……」

魔王「かかかか、書いてないからそんなことっ!!」
魔王「何それ、どこ情報!?どっから沸いて出たのさ!!」

 
勇者「だから連絡鳥に書いてあったって」

魔王(側近だよそれーーーーっ!!)
魔王(ほんっとに、何勝手に色々書いてくれてんの!!本当にッ!!?)

勇者「だ、だけどお前の仕事はあくまでもメイドだ。メイドだが、俺の周りで動いてもらう」

魔王「そっか、それなら安心。つまり、秘書的な感じかな?」

勇者「あぁ、秘書というより…側近……。一緒の意味かもしれないが」

魔王「うーん。側近、秘書みたいなものか…。でもさ、勇者の秘書が魔族の王っていいのかなぁ……」

勇者「和平だか平和条約結んでるし、問題ない」

魔王「確かに部下には手を出させないように言ってるけどさ」

勇者「あの戦いの時から、人間界に対して被害はほとんど出ていないのは事実」
勇者「一部に限り戦争時代から抜けられない残党や、把握しきれていない下っ端が暴れるのは仕方ないことだから目をつぶっている」

魔王「め、面目ない……」

勇者「こっちも魔族を狩るようなアホがいるからな。お互い様ってことで良い」

 
魔王「……そっかぁ。そういってもらえると嬉しいよ。ありがとう、勇者」ニコッ

勇者「…うっ!?」

魔王「う?」

勇者「な、何でもない!いいからお前は早く着替えろ!」

魔王「何に?」

勇者「メイド服」

魔王「えぇ…」

勇者「一応、王城の規律だからな。お前も働く限り、それにはしたがってもらう」

魔王「そ、そういわれては従う他はないか……」

勇者「意外とお前って素直な」

魔王「勝手に書かれてしまったこととはいえ、連絡鳥の内容が契約書のようなものだし……」
魔王「素直に従う以外はないし…、何でもするよ……」

 
勇者「……マジ?」

魔王「マジだよ」

勇者「……何でもすんの?」

魔王「まぁ、仕方ないことだから……」

勇者「マジで?」

魔王「マジで」

勇者「……服脱いで」

魔王「何で!?」

勇者「あ、いや、何でもないっす!じゃ、あっち側にメイドの控え室があるから行ってこい!」

魔王「そんな乱暴に言わなくても…。わかった、行って来るよ」

勇者(あぶねー、素を見せるところだった……)

 
================================
―――【 メイド控え室 】

ガチャッ、ギィィッ……

魔王(あったあった、ここかにゃーっと……)
魔王(うーん、いきなり過ぎて流されちゃったけど…本当に私がここで働いていいのかなぁ)
魔王(そもそも、私ってばこんな普通の仕事あまりしたことながな――…)


???「……てぇぇいっ!!!」


魔王「…えっ?」

……ゴチィンッ!

魔王「痛っ!?」

???「や、やった!?」

魔王「な…、何、何なの急に!?」

???「き、きゃああっ!い、生きてる!気絶してください~~~っ!!」

 
魔王「ちょっ、急に何!?えっ!?」

???「きゃああーーーーっ!!」

魔王「ちょっ、いい加減もう騒がないで!!」

…ガバッ!!

???「んむぐぅっ!」

魔王「お、落ち着いて!急に騒ぐ理由が分からないし、私を何かと間違ってない!?」

???「む、むぐっ!!むぐぅっ!?」
(貴方、魔王ですよね!!どうしてこんなところにいるんですかぁ!?)

魔王「私のことを知ってるの?」

???「むぐっ…。むんぐっ…、むぐーーーっ!!」
(人のこと覚えてないんですか…。私は女僧侶ですーーーっ!!)

魔王「…えっ」パッ

女僧侶「けほっ、けほけほっ……!」

 
魔王「女僧侶って、あの…女僧侶……?」

女僧侶「そ、そうですよ!貴方と戦った、女僧侶ですーーっ!!」

魔王「あやぁ…、そういうこと……」

女僧侶「どうして王城にいるんですか!スパイですか!?滅ぼしにきたんですかーーっ!!」

魔王「いや落ち着いて。私べつにスパイでも滅ぼしに来たわけでもないから」

女僧侶「じゃあ何の用ですか!!もう一度、私の聖拳を食らいますか!!」

魔王「い、いえ…。そうじゃなくて、話を聞いてくれたら嬉しいなーって……」

女僧侶「"悪魔の王"に聞く耳はもちませんっ!!」

魔王「それサタンだよ!私の部下の一人だよ!」

女僧侶「うるさい、うるさいですーーっ!!!いきますよ、魔王ーーっ!!」パァァッ!!

魔王「ちょっ、光の攻撃はまずいから!私、浄化されるからっ!!」

 
女僧侶「聖…光――…ッ!!」パァァアッ!!

魔王(まずいーーーっ!!これを止めるには魔壁しかないけど、私の魔力でこんな狭い場所でやったら建物が吹き飛んじゃうよっ!)

女僧侶「衝…撃……!!」パァァァアッ!!

魔王(そもそもこの人、僧侶なのに前衛特化攻撃型ってどういうことなのっ!?)
魔王(あの時もそれで戦うの面倒だったし、っていうかそんなことも考えている時間もないような気がするんだけどーーーっ!!)

ビュッ!
……ゴチンッ!!

女僧侶「あうっ!?」ズキンッ!

魔王「!」

女僧侶「…ぁぅっ」

…ドサッ!!

魔王「た、倒れた…?助かった……?」
魔王「…」
魔王「…………って、ちょっと」

 
勇者「ふぃーっ、ギリギリだったな…魔王」

魔王「勇者…」

勇者「俺が来たからもう大丈夫だ」

魔王「どうしてここに……」

勇者「安心しろ。人間界である以上、お前に危害がある可能性があるのは分かってるし、ずっとお前を見ていてやるよ」

魔王「いや、そうじゃないから。漫画や物語の一部でかっこよく言うセリフだけど、ここは女性専用更衣室ですよ」

勇者「監視のためだ」キリッ

魔王「……監視しなくても、別に大丈夫だけど」

勇者「早く着替えろ。衣装ならそのへんに置いてあるのを使えば良い」

魔王「いや、だからね」

勇者「早く」

魔王「聞いて」

勇者「はよ」

 
魔王「……獄火炎魔法っ」パァッ!!

…ゴォォオッ!!ボワッ!!

勇者「ほぎゃーーーーっ!!?」
勇者「な、ななな、何をするーーーっ!!!」

魔王「こっちのセリフだよそれ!!何してんの!?側近と離れて安息になったと思ったら、またこんなやり取りで疲れるよ!?」

勇者「何の話だ、っつーか燃えてる、消して、消してくれぇぇっ!!」ゴォォオッ!!

魔王「あぁ、今は加護状態の前に攻撃を受けたから消せないのね」

勇者「冷静に分析してる場合かーーっ!!」ゴォォオッ!!

魔王「仕方ないなぁー…。水魔法っ……」パァッ!

…バシャアッ!ジュワッ…!プスプス……

勇者「はぁ、はぁ……!消えた……!」

 
魔王「……全く。話を戻すけど、どうしてここにいるのさ」

勇者「だから監視だって!」

魔王「要らない」

勇者「要る!」

魔王「監視しなくても、私は何もしないから。どうせ、勇者には勝てないって分かってるし、平和なほうが嬉しいし」

勇者「そうじゃなくて、今みたいなことがあったら困るだろ…?」

魔王「……まぁそりゃちょっとは困るけど、常に誰かに見られているよりはマシだよ」

勇者「守る意味もあるし、やっぱ常に傍にいたほうが」

魔王「要らないってば。っていうか、私は人間界のルールを深くは知らないけども……」
魔王「女性専用っていうのは、人間のルールで入っちゃいけないんでしょう?」

勇者「魔王がいる時は、特別ルールが適応されるんだ」

魔王「聞いてないけど!?」

勇者「今決めた」

魔王「凄い勝手!」

 
勇者「……ごほんっ。まあ真面目な話、俺が魔王の周りにいなければならないのも一理はあるだろ?」

魔王「うーん、そう真面目に言われると…確かにそうだけど……」

勇者「というか、そうやって人のことすぐ燃やす奴を監視する意味はあるだろう」

魔王「うっ…。ごめん…、だけど勇者も話を聞かないから、側近に似ててイラっとして……」

勇者「……?」
勇者「側近がどうとかは知らないが、お前は魔族である以、そこまで人間界の男女のルールにこだわりは無いだろう?」
勇者「メスオスはあっても、お前らが人間と同じ"恥性"を持たないことは知っている」

魔王「まぁ…深くはないけど……」

勇者「それに、何でも言うこと聞くって言ったのはお前だ」

魔王「うっ、うぅ……」

勇者「魔族の王が、一度放った言葉に虚を持つのか。それでいいのか?」

魔王「だめ…です……」

 
勇者「じゃあ、俺の監視も受け入れろ」

魔王「で、でも…。私は人間界のルールに乗っ取って、衣食住…同じような生活も心がけようと……」

勇者「それは違う」

魔王「えっ?」

勇者「お前は魔王のままでいい。素のままで、魔王らしく、そのままで俺に仕えろ。お前は自分を抑えるのは似合っていないんだ」

魔王「……勇者」

勇者「確かに人間を受け入れるのもいい。だが、それは窮屈なことであると分かっている」
勇者「監視も厳しいのも理解しているが、俺はお前と平和について語りたいとも思っているし、受け入れてくれないか?」

魔王「…そこまで考えてくれてたんだね」

勇者「あぁ、そうだ」

魔王「ゴメンね…。私、話が聞かないからって燃やしたりして……」

勇者「人間らしくするのも拒否はしない。だけど、今くらいは魔王のままでいいさ。だから…」

魔王「だから…?」

 
勇者「俺の前で着替えてくれ」

魔王「…」

勇者「恥ずかしくないんだろ。監視も受け入れるといったはずだ」

魔王「そ、そう…だね…。うん、まぁ……」

勇者「はよ」

魔王「でも、魔族である私だからといっても、そこまでジロジロ見られると少し……」

勇者「はよ。約束!約束!受け入れるって言ったよ、約束!約束!」ブンブン!

魔王「う、うぅ~……?」

勇者「やっくそく!やっくそく!」

魔王「わ、分かった…。分かったよ、着替えるよ……」

勇者(うひょおおーーーっ!?)

続く

魔王(恥ずかしい…………)ぬぎぬぎ

勇者(うひょおおおおおお!!やっぱ良い体!!)

魔王「鼻息荒いぞ!?大丈夫か………血が!?」

勇者「大丈夫!!ちょっと魔力が出ちまってるだけだ!!はぁはぁ」

魔王「う、うむ……」するする

勇者「…………」b

魔王「着替えたぞ………」(胸が開いてる………)

勇者「うむ!!似合っている!!」(娼婦用のメイド服を用意して良かった!!)

>>1です。
多忙だったため離れておりましたが、
そのせいで酉も忘れてしまったので途中変更してのんびり続きを書きたいと思います。
まさかここまでageられているとは露知らず、大変失礼を致しました。
合間を見て書いていきますので、どうぞよろしくお願いします。

魔王「何か嫌だなぁ…、でも約束しちゃったし仕方ないか……」ゴソゴソ…

勇者(うっわぎ!うっわぎ!)

魔王「…」

…パサッ……

勇者(……こ、これは…!)ハッ!

魔王「勇者、そんな見ないで欲しいな……。何か、変な感じだよ……」

勇者(お、思った以上の…!)ゴクリ…

魔王「……勇者、聞いてる?」

勇者(セイント・アイを発動!聖なる力よ、俺に魔王のスリーサイズと瞬間記憶術をぉぉ!!)

魔王「勇者、ちょっと!聞いてるの?」

勇者「……い、いいから早く脱げよ!」

 
魔王「早く脱げって、それって人が女性に言っていい言葉じゃないような」

勇者「っと…、そ、そうだったな。どれ、じゃあ俺がアシストしてあげようか……」

魔王「あ、あしすと?」

勇者「人間界では、男性が女性をフォローするのが普通なんだ。レディー・ファーストっていうんだぜ」

魔王「そういえば、なんか聞いたことあるような……」

勇者「だろう!?だから、俺が脱がせるのも手伝ってやるよ!」

魔王「で、でも……」

勇者「……いや、悪かった」

魔王「え?どうして急にあやま……」

勇者「……お前を、未だに"魔王"としか見れていなかったからだ!」

ダッ……ドンッ!!
 
魔王「きゃっ!?か、壁にどんって、危ない……!」

 
勇者「いいから話を聞け。…魔王、俺はお前をまだ"魔王"としか見れていなかった」

魔王「え?というか、近い……」

勇者「一緒に働く以上、お前は仲間だ。そして、か弱き女性なんだ。だから俺にも、レディーファーストをさせてくれ……。お前を女性として優しく扱いたい!」

魔王「ゆ、勇者…?それって……」

勇者「あぁ、だから……」ソッ…

魔王「あっ!?」

…スススッ……

魔王「やっ…!わ、私ひとりで出来るからっ!っていうか下着まで脱がすのおかしいよね!?」

勇者「これが人間界の普通なんだよ…。さ、一瞬で終るから大丈夫だ。痛いようにはしない、優しくするからな……」

魔王「うぅぅっ!?」

勇者(あ、あと少し…。たわわに実る果実を美味しく――…!!)

 
……ゴチィィィンッ!!!!!

勇者「ぬごっ!!?」

…ドサッ!

勇者「」

魔王「……えっ?」
 
女僧侶「……はぁ、はぁ…」

魔王「お、女僧侶!?」

女僧侶「ふぅ、ふぅ…。全く、危ういところで気絶させられてよかったです!」

魔王「ちょっ、いま勇者を殴って気絶…っていうか、殴っちゃっていいの!?」

女僧侶「いいんです、あんなヘンタイ!次から次へとあることないこと、よくあんなエッチに騙そうと頭が回る…!っていうか、魔王も魔王です!」

魔王「え、何が!」

女僧侶「動けませんでしたけど、意識はあって話を聞いていました!」

魔王「え?」

 
女僧侶「どうして働くこととか言わないんですか!」

魔王「え、いや、それは女僧侶が話しを聞いてくれなかっ」

女僧侶「話を聞いて分かりました。とにかく、一緒に働くということですね。分かりました、勇者様からの紹介だというのなら文句はいいません」

魔王「まるで話をきく気ないよね、あなた」

女僧侶「ところで、コレをどうしますか」

…グイッ

勇者「」チーン

魔王「完全に気絶してるし、一応は様づけしてるけど、女僧侶は勇者のことを全く慕ってないよね」
魔王「というか、片腕で持ち上げ、勇者を一撃で気絶させるパワー、本当に貴方、僧侶……」

女僧侶「まぁいっか。それより、これからよろしくです」

魔王「やっぱり話を聞いてない!意思疎通くらいはとりませんか!?」

 
女僧侶「……魔王、それにしてもですね…」ジー

魔王「う?」

女僧侶「今、その下着姿で分かりましたが……」

魔王「何かな。というか、やっぱり意思疎通が出来ていないよね。話を聞いてるけど聞いていなー……」

女僧侶「私といい勝負ですね、これ」ソッ

ツンッ…、フニュンッ

魔王「ひゃっ!?」

女僧侶「全体を覆うブラではなく、溢れんばかりのもの。魔族ながら、女性として見たら敵対心抱きますよ」

魔王「な、ななな何で触るの!?」

女僧侶「同じ女でも、でかいものがあれば見てしまいます。そういうものですから」

ツンッ、フニフニフニフニ…
 
魔王「あ、あはははっ!く、くすぐったいからつつかないで!!見るのはそうだとしても、実際に触るのはおかし…!」

 
女僧侶「ま、どうでもいいですけどね。それより、メイド服に着替えるんですよね?」

魔王「はぁ、はぁ……!じ、自由すぎる…つ、疲れる……」

女僧侶「余ってる着替え入れはそこにあるので、私と一緒のサイズっぽいですし、私の予備を貸しますよ」

魔王「え?」

女僧侶「勇者様にメイド服どこにあるか聞きました?」

魔王「あ、いや…。まず服を脱げば、どうにかなるかなと……」

女僧侶「足りない子ですか貴方は。勇者様も詳細な説明をしていなかったみたいだし、多分、最初から覗いたりするつもりだったんでしょう」

魔王「ん、んん…?」

女僧侶「それより、働くなら早く着替えましょう。勇者様が気絶している間に着替えたほうがいいですからね」

魔王「わ、分かった」

 
女僧侶「あと、下着は脱がなくていいです」

魔王「……さっき、勇者は私の下着を脱がして裸にしようとしたんだけど?」

女僧侶「ヘンタイですから」
女僧侶「というか、魔王のやり取りから分かりましたが、恥じらいもあるみたいですし…人間界も魔界も、人型における考え方は一緒ですよ」

魔王「む?」

女僧侶「だから、魔族だから人間に対して恥ずかしいと思うのは不思議なことじゃないってことです」

魔王「いや、しかし。私は魔王で、人間に対する恥など……」

女僧侶「あーそうですか。なら町に出て、素っ裸になって、男たちに襲われればいいんです」

魔王「お、襲われるって…!そういうことではなく!」

女僧侶「いいから着替えて下さい」

魔王「わ、分かったよもう……」ゴソゴソ…

 
女僧侶「あと、下着は脱がなくていいです」

魔王「……さっき、勇者は私の下着を脱がして裸にしようとしたんだけど?」

女僧侶「ヘンタイですから」
女僧侶「というか、魔王のやり取りから分かりましたが、恥じらいもあるみたいですし…人間界も魔界も、人型における考え方は一緒ですよ」

魔王「む?」

女僧侶「だから、魔族だから人間に対して恥ずかしいと思うのは不思議なことじゃないってことです」

魔王「いや、しかし。私は魔王で、人間に対する恥など……」

女僧侶「あーそうですか。なら町に出て、素っ裸になって、男たちに襲われればいいんです」

魔王「お、襲われるって…!そういうことではなく!」

女僧侶「いいから着替えて下さい」

魔王「わ、分かったよもう……」ゴソゴソ…

 
女僧侶「そもそも、さっき貴方は人間界のルールに乗っ取って考えるとかいってたじゃないですか」

魔王「確かに言ったけど…ってか話意外に聞いてたんだね」

女僧侶「魔王とはいえ女性なんだから、だったら恥じらいをして下さい。勇者様の言いなりになるのは、てんで腹が立ちます」

魔王「だ、だが勇者は普通のことだと」

女僧侶「そんなわけないでしょう!あることないこといって、魔王の身体を触りまくりたいだけですよ!」

魔王「そうだったの!?」

女僧侶「そこに転がる勇者と、同じ女性である私…どっちを信頼します?」


魔王(わ、私から見たらどっちもどっちな気はするんだけど……言うわけにも……)
 

女僧侶「……よし、着替え終わりました。魔王はどうですか?」チラッ
 
魔王「ん、今着替え終わるけど……」

ゴソゴソッ…、ギュッギュッ!

 
魔王「少し、胸とおなか周りがキツイな」

女僧侶「殴ります」

魔王「何でっ!?」

女僧侶「……とにかく、恥じらいは恥じらいと覚えて下さい!そうじゃないと、他のメイドにも迷惑がかかるんです!!」

魔王「わ、私のせいで他の人間に迷惑が?」

女僧侶「私がメイドをしているのも、それが理由で…」

魔王「ん、そういえばお前がどうしてメイドを……」


……コチョッ…


魔王「…へっ」ゾワッ

 
コチョコチョコチョコチョッ!!

魔王「あっ、あぅんっー!!にゃああっ!?」

女僧侶「ま、魔王!?」

勇者「――…だっはっはっは!!気絶からの復活!!!魔王はここが弱いのか、ここがいいのか!!」

コチョコチョコチョッ!!

魔王「あにゃああっ!!や、やめ…んっ…やめっ!!あははっ!!あァっ…、あっ、あはははは!!」

勇者「わははははーーー!!」

魔王「ぐ、このぉっ!!」ブンッ!!

勇者「当たるものか!」ヒュンッ!

クルクルクル、スタッ!!

魔王「ふぅ、はぁ…はぁ……!ゆ、勇者ぁ……!」

 
勇者「はっはっは、色々と柔らかかったぞ!!」

魔王「急にくすぐるなど…、だがそれ以前に、隙を突かれるとは油断……!」

女僧侶「勇者!!そんなことばかりでは、女の敵と見なしますよ!!」

勇者「……まぁそう言うな。魔王が聞きたいこともあったみたいだし、戻ってきたんだよ。俺が説明してやるから…」

魔王「え?」

勇者「女僧侶がメイドをしている理由だ。至極単純なことではあるんだがな」

魔王「あ、そうだった。どうして女僧侶がメイドをしてるのさ?」

勇者「……見ての通り、彼女は腕が強い。その辺の人間には勝てる代物ではない」

魔王「代物て」

 
勇者「で、問題なのはメイドの存在だ。こればっかりは、俺が準備したことではないんだが……」

魔王「どういうこと?」

勇者「それはだな……」

女僧侶「……引退前の王の命令ですよ。元々、王の好みに合わせて女性を雇い、メイド服で、新しい王城の建設者や各国の人間に従うようにさせたんです」

魔王「え…」

勇者「もちろん、身体の奉仕ではない。だが、建設者や各国の首脳、冒険者が多くなる昨今、メイド服というのは男の心をそそるらしく……」

女僧侶「そういう問題が絶えなかった。だから、勇者が私をメイド長にして問題を起こす面々を抑えるようにしたんです」

魔王「し、しかしそれは引退前の王の話なんでしょう?女性をそういう待遇にするなどと、メイドなんて仕様、やめれば……」

勇者「そうもいかねーんだわ。まだまだ前の王の力は強くて、国のトップである元老院なんかも前王寄りだしな」
勇者「前の王の制定した制度に反することは中々できねーのよ」
勇者「しかも、前王やその制度があるもんだから、今も何も知らず賃金に惹かれてメイドになる面々が多いこと多いこと」
勇者「さらに言えば、定期的に人を雇わないと王の制度に反するし、無下にも出来ん」

魔王「そういうことだったんだ……」

 
女僧侶「だから、各国の権力者方が来賓する時は勇者がいますし、さすがに勇者が注意しますが……」
女僧侶「荒くれ者の冒険者なんかは、新王城の話を聞いて訪れたあと、メイドたちに悪戯するのが洒落にならなくて」
女僧侶「勇者が毎回いるわけでもなし、かといって男性が常にメイドに囲まれて守衛するのもどうかと思うし」

魔王「そこで女僧侶の出番というわけね……」

女僧侶「そういうことです」コクン

勇者「だから、お前にはメイドをやってもらう。俺の手伝いを第一にしつつ、基本は女僧侶とその腕をふるってほしいわけさ」

魔王「私の仕事はそういうことだったのか!分かった、ようやく理解したよ」

勇者「丁度、もうすぐメイドたちの集会もあったはずだ。女僧侶から新メイドとしてだけ紹介してもらえるか?」

女僧侶「はい、もちろんです」

勇者「じゃあ俺は一旦、王室に戻る。これから山積みの書類を仕分けなきゃならん」
勇者「やれやれ、王を引き継ぐ話になってから忙しすぎてな……」

魔王「た、大変なんだな…。がんばれ勇者!」

勇者「おう……」クルッ

トコトコ、ガチャッ、バタンッ!!

 
女僧侶「……ま、勇者はあれで忙しいところもあるんですよ」

魔王「あぁ、そうだな」

女僧侶「だけど、解せないことが一つ。勇者は普通に話をしてましたが、ここは女性更衣室だったんですけど」

魔王「はは……」

女僧侶「じゃ、集会場に行きますか。いい人ばかりなんで、安心してくださいね」

魔王「うむ。しかし、私を魔王として紹介をしていいものなのか」

女僧侶「その辺は上手くごまかしますから」

魔王「そっか」

女僧侶「では、行きましょうか――…って、あれ?」

魔王「ん?」

女僧侶「なんで私の、閉めたはずの着替え棚が開いて……」ハッ

魔王「……あれ、私のも」

 
女僧侶「えーと…」チラッ
女僧侶「…」
女僧侶「……あああっ!!やられましたぁっ!!」

魔王「へっ!?」ビクッ!

女僧侶「私の脱いだ上着と、代えの下着がないです!!」

魔王「……え、あっ!わ、私の服もない!あれ一枚しかないのに!?まさか!!」

女僧侶「ゆ、勇者様ぁぁぁっ!!!」

================================
勇者「いい"かほり"だ……」クンクン…
勇者「これくらいの役得がないと、ストレスで死んじまうよ……」
クンクンクンクン…ペロッ…クンクンクン……
================================

女僧侶「さ、最悪ですー…。久々に勇者様がシリアスモードでお話をしてたから、気を油断した……」

魔王「ゆ、勇者が女の敵にしか思えないんだけどなー……」

女僧侶「くぅぅ…!でも時間もないですし、集会場に行きましょう。あとで服は取り返します……」

魔王「そ、そうか……」

 
女僧侶「では、行きましょう。……はぁぁ、本当に勇者と一緒にいるとため息しか出ませんよ……」

魔王(先行き不安でしかない。大丈夫なのかなー…)

女僧侶「魔王、早くいきますよ」

魔王「あ、う…うんっ……」


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―――こうして始まった、魔王様のメイド稼業。
集会場で紹介を受けた後、四苦八苦しながらも仕事をした魔王様は一日を終えた。
また、仕事終えた夕刻には、勇者は再び女僧侶の鉄拳を喰らったのは言うまでもない。

そして、意外にも仕事が出来る女僧侶の教えもあってか、覚えの良さはさすが魔王様といったところか。
三日を過ぎる頃には、メイドとしての奉仕業、マナー、王城での受付まで、あらゆる業務を習得していた。
覚えの良さと、魔王様の人間に対する礼儀もあり、一週間も経てばみんなに好かれるメイドに。

女僧侶の考えた"マオ(魔王)"という呼び名から親しみもあって、気軽にマオと呼ばれる魔王様はちょっぴり笑顔。
普段こそなかった体験に、少しばかり楽しかったようだった。

そう、全てが万事上手くいっているのではないか、そう思った。
―――だが、しかし。

例の問題は、慣れてきた頃に足音をたててやってくるのだのだった……。
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続く。
続くシーンで噛んだけど気にしない。

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