ルパン三世 Lost Likeness-造られし女神- (243)


 ────

 
 ─PM06:22 下町の酒屋─


 ワイワイガヤガヤ…


「なぁ、そろそろ教えてくれや。シッシッシ」


「んー……まあ、特に話すこともないんだけどもな?」


 ワイワイガヤガヤ…


「ただ俺がツイてたってだけの、下らねえ話さ」


「羨ましいかぎりだねぇ、シッシッシ」


「バカ言えよおっちゃん。人間誰しも、そこそこがいいんだよ」


 ワイワイガヤガヤ…


「今から話すのは、俺がツイて、ツイて、ツキ過ぎて……──」


「──ついに女神にまで会っちまったって、そんな話」




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1452094800


注意
『ルパン三世』のオリジナルSSです。
原作、アニメ、TVスペシャルなどとの相違点あり。
パラレルワールドだと思って読んで頂けたら幸いです。

明日(正確には今日)にでも纏めて一気に書き込もうと思ってます。
今日は書き終えさせるためにケツに火を点けただけなので、
ここいらで失礼致します、それでは

遅くなりましたが、貼っていきます


 ────


見よ、わたしはあなたと共にいる。

あなたがどこに行っても、わたしはあなたを守り……

あなたに約束したことを果たすまで決して見捨てない。

        (旧約聖書『創世記』28章15節より)


 ────


 ─PM09:35 フランス パリ 国営カジノ─

「ぬふ、ぬふふふ……」

 ジャラジャラジャラジャラ…

「おい、あそこのテーブルすごいぞっ」

「げぇっ、なんだありゃ」

 ジャラジャラジャラジャラ…

「まーたまた俺らの勝ちー、のーっほほほほ!!」

「おい、そろそろやめといた方がいいんじゃねえか?」

「う、うむ……拙者、そろそろ帰らぬと睡眠時間が削られる故……」

「ガキじゃないんだからもう~、んじゃあこれが最後! 最後だからさぁ~」

 ジャラジャラジャラジャラ…

「ほ~ら。赤、黒、どっちだと思う~?」

「むぅ……」

 ──

 ─同時刻 同国 リヨン ICPO本部─

「ぬぁにぃー!? パリのカジノで大儲けしとるだと!?」

「はっ。現在も、賭けを続けているようです」

「くふ……ふっふっふ、最後の最後に運がなかったようだな……」

「よーし突撃の準備だ、警官隊を総動員しろ!」

「はっ!」

「目標は、"ルパン三世"だ!!」


 ────


 ─PM10:22 フランス パリ 国営カジノ─

警官隊「駐車場からルパン一味が乗っていたとみられる車両を確保しました」

銭形「よーっし、では正々堂々正面から突入する!」

警官隊「はっ!!」ビシッ

 ──

ルパン「だーはっはっはっは! 五右エ門ちゃんあんがとね~」

次元「本当にツイてやがったなぁ、お前」

五右エ門「くっ……付き添いとはいえ、また賭博に手を……」


ルパン「やめたってまたやんのがギャンブルってもんさ、ほれ、お前の分」ドサッ

次元「……おい、俺の分は」

ルパン「へっ、なんでぇ?」

次元「あのテーブル進めたのは俺だろうがっ」

ルパン「そーんなんで分け前があってたまるかい!」

次元「こんの、てめえルパン──」

 ジリリリリリリリー!!

ルパン「な、なんだぁ?」

銭形「ルパァーーーン!! 今夜こそ逮捕してやるーーーッ!!!!」

警官隊「発見しだい確保ー!!」

 ダダダダダーッ!

ルパン「げぇっ!? とっつぁん~、
    今日はまだ何も盗んでないってのに~!」

次元「とにかくズラかるか、話はあとだっ」

ルパン「話も何もありゃしねーよー!」ダッ

次元「あ、まてっ」

 ハッケン! コッチダー!

次元「……くっ」バンッ─

 シャンデリアガシャーン!!

警官隊「うわぁあ!」

次元「弁償代は、ルパンにでもつけとくんだな」ダッ

 ──

警官隊「いたぞーー!」

銭形「追い詰めたぞ~ルパン……!」

ルパン「あららら行き止まり……なーんつって、五右エ門!」

五右エ門「てぁーッ!」チャキン

……スパッ ゴドン─

ルパン「さっすがー、ってなとこでほいっと!」ポイポイッ

警官隊「逃がすなー! って、うわっ」

 シュゥーーーーー…モクモクモクモク

ルパン「もいっちょ~あらよっと」ポイッ

 ゲホッゲホッ ナ、ナンダ…ネムタク…

ルパン「おーやーすーみー」


次元「おい、さっさと抜け出さねえと──」

銭形「ルパーン! わしは、これしきの、ことで、は……!」

次元「ほら、もうとっつぁんが来るぞ」

ルパン「超高密度催眠ガスだっつーのに、
    とっつぁんってば相変わらずしぶといんだから~」

ルパン「ほいじゃあこんな感じで……」カキカキ

 ──

 モクモクモク…

銭形「ル、ルパァーン……!」

銭形「ムニャ……ん、なんだぁ?」カサ…

『よく寝ずにたどり着いたなーとっつぁん、これ、ご褒美だよーん byルパン三世』

銭形「札束一つ……ぬぬぬぬぬ~……!!」ピクピク

銭形「こ、コケにしおって~~! 覚えとけ~よ~りゅ~ぱ~ん……」コテン


 ──

 キコキコキコキコ…

ルパン「またな~とっつぁーーん!」

次元「大の男三人でアヒルボートとはな……」

次元「ていうか、とっつぁんに札束渡しておいて俺には一銭もなしか!」

ルパン「しーつけぇなーお前も」

五右エ門「次元、貴様の先ほどからの言動、情けないぞ」

ルパン「そーだそーだ、負けたからって俺にせがむなよなー」

次元「けっ、このケチ野郎!」

ルパン「余裕がないねー、こう負けちゃうとな~、なーはっはっはっは!」



   『ルパン三世 Lost Likeness-造られし女神-』


帰ってきてからすぐに投下してたので、ちょい時間あけます
身の回りのことしてきます;

再開します


 ────


 ─1ヶ月後 PM02:14 フランス某所 ルパンのアジト─

ルパン「じげ~んちゃ~ん、お金貸して~」

次元「またか……この前大勝ちしてたじゃねえか」

ルパン「うっ……な、なんのことでしょうね?」

次元「返ってくる保証もなさそうだしなぁ、どっかから借りてこいよ」

ルパン「んだよ~けちんぼ!」

次元「へっ、余裕がねえなルパン」ニヤニヤ

ルパン「うるへー、今日こそは勝ってくるんだからもう!」

バタンッ

次元「……ったく、ギャンブル狂いめ」


 ──

 ─PM04:14 同国 パリ とあるカジノ─

ジャラジャラジャラジャラ…カコンッ

ルパン「まけ、まけ……負け続け……」

ルパン「……だ、ダメだこりゃ」

 ──

ルパン「……」カチッ カチッ…ボッ

ルパン「……ふいー」プカー

ルパン「かんっぜんに流れがきてねえなこりゃ……」

ルパン「五右エ門の顔も次元の顔も使っちゃったしな~、もう潮時かぁ?」ハァ…

「よう。今日も負けたんかい赤ジャケの兄ちゃん、シッシッシ……」

ルパン「ん、そういうおっちゃんは……?」

おっちゃん「……シッシッシ!」ニコニコ


 ──

 ─PM06:35 同国 下町の飲み屋─

ワイワイガヤガヤ カチンッ

ルパン「あんがとな~おっちゃん、いつもいつも」

おっちゃん「なに、別に奢ってるわけじゃねえんだ、シッシッシ……。
      お前さんならいつか、なにかドでかいヤマ当てると思ってるからよ」

ルパン「どうだかね……」

おっちゃん「賭けてんだぜ俺は、シッシッシ……」

ルパン「いまの俺っちは文無しだぜ、
    賭けるもなにもないってこーと……ぶっはぁー!」

おっちゃん「そうかぁ、『Christianity money(クリスチャニティーマネー)』
      でもありゃあなぁ……」

ルパン「おぉ? 何よその、うんちゃらまにーっつうのは?」


おっちゃん「シッシッシ……ギャンブラーの間だけにある噂があってよ。
      なにも、キリスト教徒から少しずつ集めた莫大なカネが、
      裏の世界には存在するらしい。それが『Christianity money』さ」

おっちゃん「大国をいくつか傾けるくらいのカネが、
      どこかに隠されている──ってえ話だ」

ルパン「ふーん……『Christianity money』ねぇ……」

おっちゃん「まあ結局はギャンブラーのしがない夢話だがね、シッシッシ」

ルパン「…………」

ルパン「……おっちゃん、今日でしばらくカジノは行かねえことにしたわ」

おっちゃん「えぇ、そりゃどういう……?」

ルパン「もっとドでかいヤマ、当ててくるぜ~」

おっちゃん「お、おい兄ちゃん……」

ルパン「ごっつぉさんな、今日も。
    今度は俺に奢らせてくれや、ほいじゃまた」スタスタ

おっちゃん「……さみしくなるぜ、おい。シッシッシ」


 ────


「貴方って、本当に素敵な人……」

「そうかい? 僕なんて、どこも目立つところのない、
 至ってシンプルな人間だと思うがね、不二子」

不二子「そういう飾らないところがいいのよ……分かる?」

「……僕には、君みたいな魅力的な人と自分が、
 吊り合うとは思えないんだ」

不二子「試してみる? ミスターレナート……──」スッ

レナート「た、確かに僕はお金を持っているかもしれない」バッ

不二子「んもうっ」


レナート「だけどね……お金で人は変えられない、変われないんだ」

不二子「そうかしら……」ボソボソ

レナート「僕はこうして、美しい夜景と共に、
     美味しいワインを飲めることが出来れば……」

不二子「私は、数に入れてくれないの……?」

レナート「……僕の、キャパシティ不足かな」

不二子「つれないんだからっ」


 ────


 ─PM07:54 フランス 某所 ルパンのアジト─

次元「~♪ ……おっ、ルパン、珍しいじゃねえか。
   こんな時間に帰ってきてるなんて」

ルパン「おぉ~次元ちゃんおかえんなさい」カタカタ

次元「ったく、どうせまた負けてきたんだろ」

ルパン「うるへー」カタカタ

次元「飯買ってきたが、いるか?」

ルパン「いや、今はいいや」カタカタ

次元「……」

ルパン「……」カタカタ

次元「……なんだ、仕事か?」

ルパン「……~~~~っ、よーーくぞ聞いてくれましたぁ!」バッ

次元「どわっ、よせやくっつくんじゃねえ!!」


 ──

次元「『Christianity money』、聞いたことがねえな」

ルパン「それがよ、俺も聞いたことなかったのよ~。
    カジノで仲良くなったおっちゃんから聞いた話なんだけどもな?」

次元「……そりゃ、信用していい話なのか?」

ルパン「信用も何もただの噂なんだから。ただ、調べてみる価値はあると思うぜ」

ルパン「なにせ国が傾くほどのカネだ、
    それをルパン様が見逃さないわけがないっしょー!」カタカタ

次元「取り越し苦労にならなきゃいいな……さて、飯めし」

ルパン「あ、信じてねえな~次元ちゃん」

次元「信じさせるために調べてるんだろ?」

ルパン「……まあそうだけどよ?」カタカタ


 ──

 ─数時間後─

ルパン「とはいっても、さすがに簡単には出てこねぇよなぁ」カタ…

ルパン「キリスト教教団のサイトもダメとなると……」

ルパン「……あっ」

 カタカタ…カタカタカタ…

ルパン「バチカン市国なんて、どうでしょ?」

ルパン「ちょっくら、本気出しますかね……♪」スチャッ…

 ピッ キュイーーーーーン…─

ルパン「広大なネットの世界へ、ダ~イブ」カタカタ


 カタカタカタカタ…

ルパン「……」

ルパン(……流石にセキュリティは厳重だな)

ルパン「だけども、この自家製ネズミウイルスさえあれば~……」

次元「~♪ お、諦めてゲーム始めやがったか」

ルパン「仕事だよぉ黙ってろい! ……って、あ、ありゃ?」

 カタカタ…カタカタ…

ルパン(ネズミちゃん手こずってる?)

ルパン「ぬっ……ぬぬ……」カタカタ

ルパン(ぬぅ……まだあんまり目立ちたくなかったが、この際しゃあねえや)

ルパン「こうなったら……いっけえー、自家製ライオンウイルス!」ッターン!!

 カタカタカタカタカタカタカタカタ…!! ピピッ

ルパン「よっしゃ!」


ルパン(目立つぶん長居はできねぇ、さっさとそれらしいファイルを……)

 カタカタカタカタカタカタ…!!

次元「お、おい……」

ルパン「お宝の在処は目の前だぜ、っとぉ!」カチカチッ

ルパン(財源……月間支出……、あるならここらへんだ……)カタ…カタカタ…

ルパン「……っ、うぅ」

ルパン(そろそろまずい……、……っ!)カタカタカタカタ…!!

 カタッ…ピピッ

ルパン「……っふ、ふふふふ……」ピクピク


次元「る、ルパン……? まさか……?」

ルパン「バッッチコーーン!! そのまさかよ~!!」

次元「おおおっ!」

ルパン(掴まれないうちに中身を──!)

ルパン「ふむふむ、ふむむ──ってどぅわぁ!?」ボンッ

次元「ルパンッ!」

ルパン「ショートさせやがった。
    奴さん、ムチャしやがるんだからもう……いちち」

 グ、グゥーー…

ルパン「あら、ひと段落ついたら……」

次元「……まあ、なんだ。とりあえず、飯くうか?」

夜食用意してきます


 ──

 ガツガツムシャムシャ─

次元「それで、キリスト教が隠し持つ財産ってのはどこに?」

ルパン「んん、んぐぐ……ぐっ!」

次元「食ってからでいいぞ」

ルパン「……っ、ぷはぁ……イタリア、
    それもバチカンに限りなく近ーい場所だ」

次元「とすると、ローマか」

ルパン「どうやら、レナート・フロイスの屋敷に眠ってるらしい」


次元「レナート・フロイス……?」

ルパン「イタリアじゃちょっち有名な実業家でよ?
    まさかこんなところで引っ掛かるとは思わなかったぜ」

ルパン(変な噂はない野郎だった気がしたが、何者なんだ……?)

次元「よし、じゃあローマに向かおうぜ」

ルパン「五右エ門ちゃんも呼んだほうがいいよな?」

次元「とはいってもアイツ、今修行の旅だろ」


 ──

 ─1ヶ月前 フランス─

五右エ門「賭博にまた手を染めてしまったのも、拙者の心の未熟さ故……」

ルパン「まあそうだけども……ってえ!? なにすんだよ次元!」ポカッ

次元「おめえは少しは気を使え」

五右エ門「しばらく修行の旅に出る、さらば」ザッ…ザッ…

 ──

ルパン「どこにいっかも分からねえしなあ……」

ルパン「んじゃあ、二人で行くか」

次元「それしかねえだろ」

ルパン「……不二子ちゃんとか?」

次元「……ルパン」

ルパン「わーったわーったから冗談よ冗談!」

ルパン「そんなら早速準備して行きますか、イタリアローマの旅へ!」


 ────


「主は、我々に言葉を与えて下さった」


「主は、我々に天職を与えて下さった」


「主のために、我々はこの身体を捧げます」


「主は、我々をお救いになる」


「その日のために、我々は働き続けた」


「運命の日は近い」


「幾億もの教徒の賜物が、すぐそこまで……」


「ようやく我々は、真となる象(かたち)で救われる」


 ────


 キィーーーーーン─…

 ─AM09:56 イタリア ローマ フィウミチーノ空港─

ルパン「さーて、ローマについたところで、偵察がてら観光でもしますか」

次元「だな」

ルパン「カネの匂いはずぇーんずぇんしないのになー、やっぱり」クンクン

次元「お前の鼻も鈍っちまったんじゃねえか?」

ルパン「バカ言うなよ次元~、俺ァまだまだ現役よ~」


 ──

 ─AM10:32 ローマ市内 レナートの屋敷前─

次元「それで、これがその実業家のお屋敷かい」

ルパン「広いねー、なかなか」

次元「ただの一介の実業家が持ってるような家じゃねえな。
   昔の建物を買い取ったのか?」

ルパン「さーてね。まだ調べきれてないし、
    一度ホテルに戻るとしますか」

次元「おう」

 テクテク…

ルパン「……」

次元「……」

ルパン「庭にいたSP、タダ者じゃなさそうだぜ」ボソッ

次元「やっぱりなんかあるな、あの屋敷には」


 ──

次元「おい、ルパン……」

ルパン「ん、な~によ次元」

次元「ホテルに戻るぞ、おい」

ルパン「ん~」

次元「…………」

ルパン「…………」

次元「ルパン、行くぞ」

ルパン「ん~」

次元「ッ……ガキかおめえは!」ズルズル

ルパン「いいじゃねえかよ店の前にいるくらいなら!」

次元「ギャンブルはしばらくしねえんだろ!」ズルズル

ルパン「だからいるだけ~~~──……」

 ズルズル…

 ドアスイーーーー…

「あれ、あの後姿……」


 ──

 ─PM01:12 ローマ市内 ホテル部屋─

ルパン「このローマ市内の地下水路図を見る限りだと、ちょうどここ」

ルパン「レナートの屋敷と被る場所がある」

次元「進入路は地下か」

ルパン「それと、あの屋敷は建てられてもう百年以上になるらしい」カタカタ

次元「ん、この写真の女……嫁さんか? 若いな」

ルパン「うんうん超美人──ってそうじゃないでしょっ」

次元「ハハ、すまねぇ。なになに……ローマの街を彩る建造物の一つ。
   ローマ建築が意識されており──」

次元「──現在入居者であるレナート・フロイス氏は、
   屋敷の造形に魅了されて購入を決めたと話している」


次元「ほぉ、記事があるくらい有名なんだな。
   観光地扱いのわりにはSPが怖すぎるが」

ルパン「ぬふふ、ちげえねえ」

次元「……しかし、これだけの画像じゃ攻略のしようがねぇな」

ルパン「まーねー。どうしたもんでしょう──」

「屋敷の内装なら、憶えてきたわよ」

ルパン「おおっ?」

次元「そ、その声は……」

 …………。

 ……。

「……ちょっと、オートロックなんでしょここ! あけてよぉ!」


ルパン「ああ、わりぃわりぃ……」カチャッ

「はぁ~い、ルパン」

ルパン「ふ~じっこちゃ~ん!」

次元「呼んでもいねえのに現れやがって……」

不二子「あら、ご挨拶ね。
    せっかく私が持ってる情報を、教えてあげようと思ったのに」

ルパン「とすると不二子。お前も、『Christianity money』を狙ってるのか?」

不二子「えぇ、なにそれ? 私はお宝の匂いを嗅ぎつけただけよ」

次元「おめえは犬か」

ルパン「まあ、不二子のカンは当たりだったってぇことだな」

不二子「お宝はちゃんとあるのね、ビンゴぉ!」

不二子「それにしても、同じ時期に偶然ね~ルパン」

ルパン「ぬふふ~ほんとホント!」

次元「けっ、どうだか」

ルパン「これも神の思し召しってもんよ~。よし、協力していこうぜ不二子。
    さっそくお前の知ってる情報を教えてちょうだい!」

ごめんなさい、今日はここまでです、眠気が半端ないので…
明日にまたまとめて……それではまた


 ──

 ─PM03:31 ローマ市内 ホテル部屋─

ルパン「なーるほど。大体屋敷内のことは理解できたぞ」

不二子「あとは地下室があるってことくらいね。知ってるだけだけど」

次元「なら、あとは行ってみるっきゃねえな」

ルパン「おう、予告状もさっさと出しちまったしな」

次元「えっ、お前いつの間に」

ルパン「いやぁちょっくら屋敷を覗き行ったときによ?
    ペタッと、ね」

 


 ──

 ─同刻 レナートの屋敷─

メイド「お帰りなさいませ」

レナート「ああ、ただいま」

SP「お待ちしておりましたレナート様。
   数時間前、玄関前にこんなものが」

レナート「ん……なんだ、予告状?」カサッ…

『近日、貴方の莫大な貯金を頂きに参ります。ルパン三世』

レナート「ルパン三世……何かの悪戯じゃないのか?」

SP「それが、その予告状に描かれている」

レナート「……ライオン」

SP「その絵と同じグラフィックのウイルスが、
   先日バチカン市国のサーバーに侵入しています」

レナート「っ!?」


 ──

次元「抜け目のねえ野郎だぜ」

ルパン「これでとっつぁんが釣れるから、向こうも公の場では下手に動けなくなる」

ルパン「そうなったら、かき回すだけかき回そうじゃないの」

次元「悪役は俺たちだけで十分ってか、へへっ」

ルパン「んじゃあ、明日くらいにちょろっと頂きに行きますか!」

次元「じゃあ今日は前祝いだな。
   不二子、ここらでいい店はねえのか?」

不二子「やだ、わたし案内役~?」

ルパン「いーねー! 俺美味しいピッザが食べたい~!」


 ────


「……」


「……私です。ルパンからの予告状が届けられました」


「バチカンへのハッキングとは……はい、はい」


「……なるほど、確かに」


「では、こちらは引き続き計画を進めます。はい、最終調整は昨日すでに……はい……」


「それでは……神の御加護があらんことを」


「……」


「……ああ、私だ。屋敷の警戒を強める」


「侵入者には容赦するな、殺しも許可する」


「『Jesuit(ジェズイット)』の名にかけて、始末しろ」


「……ああ、地下はヤツに任せる。以上」


「……」


「ルパン、三世……」


 ────


 ─次の日 PM03:20 ローマ市内 裏路地─

ルパン「さて、それじゃあ」

次元「潜るか」

 ガコンッ カン…カン…カン…

次元「それはそうと聞いてなかったが、ルパン」

ルパン「ん、なによ次元」

次元「『Christianity money』を盗もうとした理由は、なんだ?」

ルパン「……そりゃ、ねえ?」

次元「……愚問だったぜ、ったく」ハァ…

ルパン「それじゃあ、イタリアローマ地下水道の旅をはじめっとすっかー」

次元「いまいち、乗らねぇなあ……」


 ────


 ─同刻 レナートの屋敷前─

 ガヤガヤ…

不二子「……」

不二子(ルパンの予想通りね)

 ──

レナート「お待ちしておりました、ミスターゼニガタ」

銭形「まずは、館内を案内してもらえますかな」

レナート「はい、喜んで」ニコッ

 ──

不二子「銭形に顔は割れてるし、ルパンが暴れてくれるまで待ち惚けね……」

不二子「お茶でもしてましょっ」カツカツ

 ガヤガヤ…ドンッ

不二子「あらごめんなさ……って貴方、ミスターレナートの」

SP「こちらこそ、とんだご無礼を」

不二子「いいのよ。なんだか忙しそうだから今日は失礼しておくわ。
    あの人によろしく~、じゃ」スタスタ

SP「…………」


 ────


 ─PM05:28 ローマ市内 地下水路─

 カツーン… カツーン…

ルパン「……そろそろつくぜ、屋敷の真下だ」

次元「しかしよ、ルパン。ここまできて思ったんだが」

 シーーーーーン…

ルパン「次元も思ったか」

次元「おう。下水道のくせに、やけに整備されてやがる」

ルパン「なーんか嫌な予感がするな」

 ──

 ピッ…ピッ…

次元「ここか」

ルパン「ほいじゃあ、ピンポーンとお邪魔しますかね」

次元「って、この上ってどこに出るんだ?」

ルパン「……裏庭とか?」

次元「…………」

ルパン「でてみりゃ分かるさ、行くぜ──!」ガコンッ


 ────


 ─PM05:28 ローマ市内 地下水路─

 カツーン… カツーン…

ルパン「……そろそろつくぜ、屋敷の真下だ」

次元「しかしよ、ルパン。ここまできて思ったんだが」

 シーーーーーン…

ルパン「次元も思ったか」

次元「おう。下水道のくせに、やけに整備されてやがる」

ルパン「なーんか嫌な予感がするな」

 ──

 ピッ…ピッ…

次元「ここか」

ルパン「ほいじゃあ、ピンポーンとお邪魔しますかね」

次元「って、この上ってどこに出るんだ?」

ルパン「……裏庭とか?」

次元「…………」

ルパン「でてみりゃ分かるさ、行くぜ──!」ガコンッ

あれ、二回同じの書き込んでる…気にしないでくさい(._.)


 ──

 シーーーン…

ルパン「ありゃ、ここは……?」

次元「地下室、っぽいな」

ルパン「ていうか、物置?」

次元「何にしろラッキーだったな」

 カチャカチャカチャ…ギィッ…

次元「……ありゃ、さっそく道が分かれてやがる。
   それじゃあここからは別々に行こうぜ」

ルパン「了解、ぬかるなよ~」


 ──

ルパン「しっかし随分と古臭い屋敷だこと……」

 …………。

ルパン(さーって、さっさと上に行って情報を……)

「そしてここからが地下に通じる扉になっており」

ルパン「げっ!?」

 カチッ…ガチャッ

銭形「ほう、随分と立派なお屋敷ですな」

レナート「でしょう? 地下室があるのも購入した理由の一つでして……」

 カツ…カツ…

ルパン(とっつぁんに、レナート……)

銭形「この下には何が?」

レナート「物置くらいしかありませんよ、まあ確認のため見に行きましょう」

 カツ…カツ…

 ─シュタッ

ルパン「ふぅ……」


 ──

 ─レナートの屋敷 地下通路─

次元「……、……」

次元(進んでも進んでもなんもありゃしねえな)

次元(屋敷の外にまで出てるんじゃねえかこれ。
   なら、一体どこに進んで……っ!)

 カツ…カツ…

次元「…………」

 カツ…カツ…

次元(敵さんのお出ましか……──っ)カチャッ…

次元「動くな、──っ!」

「次元、か……?」

次元「おめえは……」


 ──

 ─レナートの屋敷 一階─

ルパン「……」コソコソ

ルパン「ちぇっ、防犯カメラもなんもありゃしないでやんの……。
    盗み甲斐がないね~」

「そんなものに頼る必要がないのさ」

ルパン「っ! 誰だ?」

 シュルルル─! サクサクサク!

ルパン「のわっ! おいおい、挨拶にしちゃあ、
    ちと荒っぽすぎねえか?」

ルパン(糸……ピアノ線か……)

ルパン「いいのか、国際警察を雇ったんだろ?」

「殺しの許可は、ボスから出ている。ICPOなどいくらでも丸め込めるからな」スッ…

ルパン「お前は……屋敷を見張ってた……」

SP「ルパン三世……ここで死ねッ!!」ダッ

ルパン「と言われて死ぬやつがいるかっての!」ポイッ

SP「っ──!」

 シュー…モクモクモク…

ルパン「じゃあなー雑用さーん!」

SP「くっ……待てっ!」

SP「っ……各班に告ぐ、ルパン三世を発見。見つけ次第始末せよ」


 ──

 ジリリリリリリーーー! ザワザワザワ…

不二子「始まったわね」

警官「きゅう……」

不二子「ちょっと、胸がキツイけど……」

不二子「私も乗り込みましょ。待っててねお宝ちゃんっ」

 ──

ルパン「えっとえっとどこにーにーげーれーばー……」

 イタゾ! ニガスナー!

ルパン「げぇっ、やばいやばい!」タッ─

警官隊「追えー! こちらB班、ルパン三世を発見。銭形警部、応答を!」

 ザ…ザザザッ…

警官隊「……? 警部、応答願います!」



 ──

 カツ…カツ…

銭形「かなり下まで降りるのですなあ」

レナート「もうすぐですよ」

 ドンッ─ ダダダンッ─

銭形・レナート「っ!?」

銭形「銃声……こっちだ!」タッ─

レナート「あっ、ミスターゼニガタ! そっちは──」

銭形「危険だから貴方はその場を動かずに!」

レナート「……機敏な方だ」


 ──

 ダダダンッ─

次元「くっ……相変わらずの二丁拳銃だな、ダンテ」

ダンテ「そういうお前も、変わらずのリボルバーかぁ、次元」

 ドンッ─

次元「まさかこんなかたちで会うとはな、今はレナートの用心棒か?」

ダンテ「あの人は……あの人は俺を拾ってくれたんだぁ」

次元「拾われた……? でもお前、奥さんと娘は──」

 ダダダンッ─ ダダダダッ

次元「うぉっ!」

ダンテ「そのことは、そのことは言うなぁ!!」

 ダダダンッ

ダンテ「殺されたんだぁ! 敵マフィアの報復でなぁ!」

次元「っ! ……そうか」


 ダダダンッ─ カランカラン…

ダンテ「はっ……はっ……う、うぅ!」

ダンテ「あ、あぁ……神、神よ……我を救いたまえ」ジャラ…ゴクッ…

次元「……っ」

ダンテ「ん、んぐっ……!」

次元(ダンテ……おめぇは……)

銭形「こっちかぁーーーっ! ルパーーン!!」

次元「っち、とっつぁんまで来やがった。しかし……」

ダンテ「はぁっ……はっ……」

次元「一か八かだ──っ!」バッ

 ドンドンッ─ キュインキュイン─

ダンテ「ぐぁっ……!?」

次元「すまねえな、ダンテ!」ダッ─

ダンテ「じ、次元……! 待てっ……!」

 タッタッタッタッ─

次元(なんとか壁は超えたか、こっちに逃げ道があるかもわからねぇが……)

次元(とにかくもう進むしかねえ──!)

ちょい離脱します、また戻ってきます

再開しまし。


 ──

 ダッダッダッダッ─!

銭形「ルパーーーン! っとぉ!?」

ダンテ「っ、──っ!」ガチャッ

レナート「待て、撃つな!」

銭形「……ミスターレナート、この方は?」

レナート「私が雇っているSPです」

ダンテ「……、ルパン三世の連れを取り逃がしました」

レナート「……そうか」


銭形「連れ……銃声……次元大介がこの先にいるんだな!」ズンズンッ

レナート「引き返しましょう、ミスターゼニガタ」

銭形「な……何を言っておられるのです!」

レナート「どうせこの先には何もありません。
     一度戻って作戦を立て直した方がいい」

銭形「それなら尚の事やつらを逮捕するチャンスだ!
   ……こちら銭形、地下室に応援を……あ、ありゃ……?」

 ザザッ…ザザザッ…

銭形「……くそっ、すまない君。
   ミスターレナートを連れて上へ応援を──」

 シュッ─ サクッ

銭形「……、……んん?」


レナート「……悲しいよ、ミスターゼニガタ」

銭形「お……ミスターレナート、アンタ……」フラッ

レナート「この先には何もないと、忠告したのに」

銭形「──っ、る……ルパ……っ…………」バタッ

レナート「…………」

ダンテ「……いかがいたしますか」

レナート「流しておけ」


 ──

 マテー!!

ルパン「しつけぇなーとっつぁん製の警官はー!」

「ねぇ、こっち!」

ルパン「っ!」

 バタンッ

 ──

 マテー!! コノサキダー!

「もう、今日はほんと騒がしいわねっ」

ルパン「ふぅ……助かったけども、お前……」

ルパン(確か、この屋敷の記事に乗ってた……)

「お前、じゃないわよ。私にはエレナって名前があるの」

ルパン「わりぃエレナ。だけど君はレナートの──」

エレナ「あなた、ルパン三世よね?」


ルパン「え、ああ……泣く子も黙る大泥棒、ルパン三世様よ」

エレナ「やっぱり! 予告状が届いたって話を聞いてワクワクしてたのっ!」

エレナ「へぇ、思ってたよりもハンサムね……」

ルパン「え、しょ、しょうかな~」

ルパン(よく喋る若奥さんだぜ……)

エレナ「あなた、腕利きの大泥棒なんでしょう?」

ルパン「えっ、そりゃあもちろん! 盗むといったものは何でも盗んでみせるぜ」

エレナ「その腕を買って、頼みたいことがあるのよ」


ルパン「ふんふん……って、おいおい待ちなよ。
    そもそも俺がこの屋敷に来た理由だってあるんだぜ?」

エレナ「どーせ『Christianity money』でしょ」

ルパン「ぎくぅ……!」

ルパン(バレてるでやーんの……)

エレナ「大方(おおかた)バチカン市国でもハッキングして、
    ちょこっとページ覗いただけなんでしょう?」

ルパン「言うねえ、エレナちゃん……なは、なははは──」ギクギクッ

エレナ「ここには大金なんてないわよ?」

ルパン「ははは……へっ?」

エレナ「だから、この屋敷にお金はないんだってば」


 ──

警官隊「ルパンが近くに潜んでいる、探し出せ!」

警官隊「はっ!」

不二子「……」タタッ─

不二子(命令無視でごめんなさ~い)

 ──

 カツ…カツ…

レナート「……」

レナート「……上に逃げたか」

レナート「こちらレナート。ネズミは地下施設天井を這っているぞ、探し出せ」


 ──

ルパン「ちぇーなんでぃハズレかよ……」

エレナ「ただ、その大金を使ってこの屋敷ではある研究が進められているの」

ルパン「ふーん……」

エレナ「ちょっとちゃんと聞いてよっ」

ルパン「聞いてる聞いてる、──っ!」

 コンコンッ

エレナ「っ! ……隠れて」

ルパン「向こうの部屋に~」スタコラ

エレナ「はーい、今出るわ」


 ──

ルパン「隠れられる場所~……机の下くらいしか……」

ルパン(うまくやってくれよ~若奥様……って、
    なんだこりゃ。大層なもんがゴミ箱に……)

 ──

 ガチャッ…

SP「失礼します」

エレナ「あら、エドモンド。なんだかやけに騒がしいわねー」

エドモンド「ただいま、この屋敷に侵入者が紛れ込んでいまして」

エレナ「……そのお方は何しに来たの?」

エドモンド「レナート様の資産を頂きに来た、と。
      予告状が届けられておりました」

エレナ「あら、物好きな方もいるものね……」

エドモンド「……何か、異常はありませんでしたでしょうか?」

エレナ「え、特には何も? 
    ただ、静かに本を読んでいたかったのだけれど」


エレナ「今日はちょっと無理そうね……」

エドモンド「申し訳ありません。すぐにでも見つけ出しますので……」

ルパン「ここだよ、雑用野郎」

エドモンド「っ!? る、ルパン三世……」

エレナ「っ!」

エレナ(ルパン、なんで!)

エドモンド「エレナ様、私の後ろに──」

ルパン「おっと、その子をこっちに寄越しな」

エドモンド「なに……?」


ルパン「人質だよ。早く寄越さねえとこれでボカーン、よ?」スッ

エレナ「そ、それって……」

ルパン「……」チラッ

エレナ(……まさか)

ルパン「小型爆弾のスイッチさ、ポチッと押せば即お陀仏ちゃん」

エドモンド「っ!」

ルパン「ほら、早くこっちに来るんだ」

エレナ「……エドモンド」

エドモンド「くっ……ここは、大人しく従って下さい」

エドモンド「必ず、お救い致します……」

エレナ「……お願いね」スッ

ルパン「…………」


 ──

 ズル…ズル…

次元「くぅっ……せめぇな……」

次元「通気口とは情けねえ逃げ方だぜ……」

次元「どこに向かってるかは分からんが……おっ」

次元(ラッキー、ここからなら出られるか? ──っ!)

次元「おい……なんだ、こりゃあ」


 ──

エドモンド「……」

ルパン「ぬふふふ、こーんなかわいこちゃんを人質に出来るなんてなぁ?」

エドモンド「……要求を聞こう」

ルパン「『Christianity money』……があると思って、
    来てみたんだけどもな」

ルパン「どうやらハズレらしい、探しても探しても出てきやしねぇ」

エドモンド「……」

ルパン「ということでほい」ポチッ

エドモンド「っ!?」


 ボンッ! ボボボボボンッ!

エレナ「きゃあっ!」

エドモンド「っ! 壁に穴が……!」

ルパン「この子は頂いてくぜ。ちょーっと卑怯かもしれねえが、
    取引と行こうじゃないの」

ルパン「現存する『Christianity money』をすべて寄越してもらうぜ」

エドモンド「……」

ルパン「期限は三日だ。またここに戻ってくるからよ、
    ちゃんと用意しとけよ~」

 シュバッ─ ゴォォーーー…!


ルパン「じゃあな雑用ちゃ~ん、ボスによろしく~!」

警備隊「ルパンだ、空を飛んでいるぞ!」

レナートの部隊「っ──!」

エドモンド「撃つな!! エレナ様に当たる!!」

エドモンド「……ルパン、三世!」ギリッ

 ──

エレナ「っ……うまくやるものね!」

ルパン「このくらい朝飯前よ~」

ルパン(先にずらかるぜ次元。不二子もうまくやってくれ……──)

 ゴォォオーーー…! 

すみません、今日はここまでで…
明日またどんどん投下していきますので、宜しくお願いします
ではではまた

たいへん遅くなりました、貼ってきます

 ──

 ガサゴソ…

不二子「……っ。ここもだめ、
    『Christianity money』の情報がまるでないじゃないの」

 ザザッ…

《ルパン三世が人質を連れて屋敷から逃走。繰り返す──》

不二子「えっ……?」

不二子(ルパン? 逃走って一体……)

 スススッ─ガッ

不二子「──あ」ガクッ

不二子(いつの間に、後ろに……)

不二子「レ、ナ……」

レナート「……不二子」


 ビーッ ビーッ ビーッ

レナート「……。私だ……ルパンの要求はなんだ」

《現存する『Christianity money』……と》

レナート「…………」

レナート「至急各国から『Christianity money』を集めろ。
     エレナの救出が最優先だ」

レナート「それと、無駄な捜索はするな。向こうからアクションがあるはずだ」

レナート「それまでは、我々から動いてはいけない」

《了解しました》

レナート「……ルパン」

 カツ…カツ…

レナート「…………いや」

 ────


 ─PM07:48 ローマ 地下水道─

 ……──

 …─

 ピチャピチャ…ピチャピチャ…

次元「はぁっ……はぁっ……」

次元(こりゃあいよいよマズイぜ……)

次元(知っちゃいけねえことを知った報い、ってか)

 シュッ…シュタッ…

次元「……っ、くぅ……!」

 ドンッ! ドンッ!!

「うっ!」ボチャーン

「ぐあぁ……」ボチャッ


 ……シュタシュタシュタッ…シュッ─

次元「ぅお!? ぐぁ、っつぅ……!」

「……」

次元「っ……、うっ……!」

次元(行き止まり……)

「……」

次元(いよいよ、年貢の納め時か……!)

 シュタタタ─

次元「づぁっ──うわああああああああああーー!!!」

 ──ボチャーン!!


 ────


 ─PM08:47 ローマ市郊外─

 ブゥーーーーン──…

ルパン「次元、次元……聞こえるか?」

 ザザッ…ザッ…

ルパン「……ちくしょう、次元の野郎繋がりやしねぇ」

エレナ「捕まっちゃったのかしら……」

ルパン「そんときゃすでにお陀仏だけどもな。
    アイツはそんな簡単に死ぬタマじゃねえよ」

エレナ「……」

ルパン「まあ近くのアジトに隠れることにしましょ、
    だーいじな人質ちゃんとな」

 ブゥーーーーン──…

エレナ「……ルパン、私のこと」

ルパン「ん、なんだぁ?」

エレナ「っ……、何でもない」


 ────


 ─PM09:29 イタリア国内 某所 ルパンのアジト─

ルパン「コース料理は出せねえけども、
    俺様オススメの缶詰は絶品だぜエレナ?」

エレナ「缶詰……へえ、これが」

エレナ「あっ、キャビアはないの?」

ルパン「そんな大層なもんはありましぇんっ」

エレナ「えーっ……」

ルパン「まあまあ、今缶切りもってくるからよ?
    つまみながらゆっくり話を聴こうじゃないの」


 ──

ルパン「ゴミ箱に捨ててあった資料、ちーっとだが読ませてもらったぜ」

エレナ「……うん」

ルパン「ありゃあ、なんの計画だ?」

エレナ「……神のいる世界」

ルパン「神……?」

エレナ「それを、実現しようとしているの」

ルパン「はっ、俺ァ神様仏様なんて信じねぇタチだけどよ?
    そんなことが可能なのかい?」

エレナ「人の脳を、操るのよ」

ルパン「……なんだって?」

エレナ「あの屋敷の地下で、研究が続けられているわ」


ルパン「だがそのためには莫大な金がかかる。
    つまりは研究資金だったのか、『Christianity money』は」

エレナ「……」コクッ

ルパン「……それは、一種の集団催眠みたいなものなのか?」

エレナ「催眠とは、少し違う。神のいる世界を、上書きするのよ。
    刷り込まれた記憶は消すことは出来ないわ」

ルパン「人様の脳を弄くって、世界中の人間を信者にしようってか」

エレナ「だから、貴方にはこの計画を頓挫させてほしいのっ」

ルパン「……いいのかい、レナートを裏切ることになるぜ」

エレナ「かまわない……こんな計画、間違ってるわ」


ルパン「……そっか。
    そんならかわいこちゃんの頼み事だしなぁ、やるっきゃねえな~」

エレナ「ルパンっ!」ダキッ

ルパン「どわぁ、ちょいちょいエレナ~……」

エレナ「いいのよ、今日だけだからね♪」

ルパン「このままだと俺変身しちゃうかもよ~?」

エレナ「せめてものお礼と思ってくれれば……」

ルパン「あ、あはは……」

ルパン(物怖じしないのね……)

ルパン「……いや、見返りならあるぜ」スッ…

エレナ「えっ?」

ルパン「研究データさえ頂いちまえば、他の国に資料を売ることが出来る。
    脳科学分野の進展に貢献しちゃおうってわ~け」

エレナ「なるほど。それなら確かにいいお金になるかもしれない……」

ルパン「お前さんの身代金だってある、それだけありゃあ十分だ」

ルパン「だからお礼だとか、そういうことは気にしなくていいの。
    ほ~ら、このコンビーフなんてもう絶品!」

エレナ「……ありがとう、いただくわ」ニコッ


 ────


 ─PM10:12 地下用水路─

 ……──

 …─

 ピチャン… ピチャン…

次元「……っ」

次元「……う、うぐ……げほっげほっ!」

次元「……どこに流れ着いたかは知らねぇが、
   生きてるこたぁ確かだな……つつっ」フラッ

次元(腹の傷が浅くて助かったぜ……)

次元「さて、地上に出る場所でも……──あっ!」

次元「とっつぁん!」

 ピチャピチャッ─

次元「しっかりしろっ……くたばってんじゃねえだろうな、おい!」

銭形「……うっ、……」ピクッ

次元「……ふぅ」

次元(何があったかは知らねえが、
   同じ場所に流れ着くたあツイてたなとっつぁん)

次元(だが、どちらにしろ危ねえのには変わりねえ。
   担いで外に出るしかねえな……)

次元「俺の腹が持つかとっつぁんの息が持つか……考えてる暇はねえか──っ」

 ピチャ… ピチャッ…


 ────


エレナ「あー、美味しかった!」

ルパン「よし、じゃあおねんねしましょうかね~」

エレナ「えっ、いいの? うちについて調べなくても」

ルパン「いいのいいの。まあゆったり行こうぜ。
    ベッドは貸してあげるから、ぐっすりお休みなさいな」

エレナ「そ、そう? じゃあ、遠慮なく使わせてもらうわね。
    ふわぁ~……ホントに眠たくなっちゃった……」

ルパン「おやすみ~、ベッドはそっちよ~」

エレナ「お休みなさい~……」

 ギィー…バタン…

ルパン「……効くねぇ、不二子特製の睡眠薬」

ルパン「……さて、ここからは泥棒さんの時間だ」


 ────


 ─AM01:53 ローマ市内 レナートの屋敷─

レナート「警官隊は、はい……ICPOの対処は……お願いします」

レナート「只今、ルパンを泳がせているところです」

レナート「いずれ向こうからのアクションがあるはず。
     それまでに資金を集めて頂きたい」

レナート「ルパンも下手に手を出すことはないでしょう。
     穏便にことを済ませたいのです」

レナート「はい。……はい、承知いたしました」

レナート「神の御加護があらんことを……」

レナート「……ふぅ」

部下「レナート様! バチカンのネットにハッキング、ルパンです!」

レナート「噂をすれば、か。思ったよりも早かったな」


 ──

『ルパン、三世か?』

ルパン「……おっ、出やがったな親玉が」

レナート『紹介するまでもないようだね。エレナはどうしている』

ルパン「ぐっすりベッドで眠ってるよ。
    アンタ自身、この通話はあまり聞かせたくないだろうからな」

レナート『お心遣い感謝するよ』

ルパン「それで? 金は集まりそうなのかい?」

レナート『気が早いな。現在総力をあげて、
     世界中から金をかき集めているところだよ』

ルパン「よーし、まあこっちも平和に解決したいわけよ。
    あと三日、俺がそっち向かうまでに用意しておくんだな」

レナート『分かった。エレナのエスコートは任せるよ、ルパン』

レナート『私は私で、エスコートする女性がいるのでね』


ルパン「……なに?」

レナート『峰不二子。君の仲間じゃないのかい?』

ルパン「っ! 不二子はどうしたっ」

レナート『落ち着きたまえよ。私も君と同じさ、事は穏便に済ませたい』

ルパン「…………」

レナート『……だからね、ルパン。ヘタなことは考えないほうがいい。
     こちらとしては、エレナが無事に帰ってきてくれればそれでいいんだ』

ルパン(こいつ、俺が計画を知っていると……)

ルパン「……不二子には手を出すなよ」

レナート『そちらこそ。過保護かもしれないが、
     エレナはキャビアが大好きなんだ。君が用意してやってくれ』

ルパン「ああ……ん? おい、過保護ってどういう──」ガチャッ

ルパン「って、切れやがった……」


 ──

レナート「……解析は」

部下「ダメです。現在地不明」

レナート「大人しく待つしかないか……」チラッ

不二子「……」

レナート「……」カツ…カツ…

不二子「……、……──っぷは」

レナート「少しは楽になったかな、済まないね……こんな扱いをして」

不二子「だったらこれを外して下さらない? ミスターレナート」

レナート「それはできない。先の裏切ったのは君だ……しかし、
     私が君を自由にすることは出来る」


不二子「えっ……──っ!?」

レナート「……っ」

不二子「んっ……、……っ!」ガブッ

レナート「つっ! ……ふふ、ふはははっ」

不二子「……っ!」ギロッ

レナート「ますます気に入ったよ、不二子。君は選ばれた、
     私と共に、世界の救済を目の当たりにしようじゃないか!」

不二子(世界の、救済? レナートは何をしようとしているの……?)


 ────



 ── ─… …… ─ ─……──…


  ─  ─…  ─ …


   ─… ─



 「ねえパパ、どうして私は外に出ちゃいけないの?」


 「外にはね、怖いものがたくさんあるからだよ」


 「目に毒だからさ、エレナ」


 「そうなんだ……じゃあ、大人しくしてないとね」


 「いい子だ……私の可愛いエレナ、まるで天使のようだ」


 「えへへ……」


 「……いや、天使なんてものじゃない、君は……」




    「──まさに女神さ」




 ────


 ─AM07:24─

 チチチッ… チチッ…

エレナ「……んぅ、ん……」

エレナ「ん……あれ、ここ……」ムクッ

 …………。

 ……。

エレナ「……」ガチャ…

ルパン「よう、起きたなぁ?」

エレナ「あ、そっか……私……」

ルパン「……まだ寝ぼけてんの?」

エレナ「……ううん。おはよう、ルパン」ニコッ


ルパン「ふぁ~……エレナも手伝ってくれよ、ほら」

エレナ「これは、釣りってやつね」

ルパン「やったことねえのか?」

エレナ「あまり、外には出たことがないのよ」

ルパン「…………」

ルパン「……ほら、持ち方はこうだ」スッ

エレナ「えっ、あ……」ギュゥ…

ルパン「それから、こう」シュッ─

 ──ポチャン…

エレナ「……」


エレナ「……本当に、魚なんか釣れるの?」

ルパン「餌にツナ缶使ってっから大丈夫~」

エレナ「ツナって魚よね……」

ルパン「細かいことは気にしな──って、ほらほら!」

 ギュイィ… ググググッ…

エレナ「へ、きゃあ! な、なんかビクビクしてる!!」

ルパン「かかってんだよ、ほら引け引け!」

エレナ「へえぇ!? そ、それっ──!」

チャッ─ ピチピチッ…ピチッ…

ルパン「おおおお、大物だぜえこりゃあ!」

エレナ「……」ポー…

エレナ「あ……あははっ、やった……!」


 ──

エレナ「え、本当に予告どおり三日後に行くの?」

ルパン「正確には二日後な──あーん」パクッ

ルパン「……ふぁあ、ふぁふぇふぃはひょうひはいへほお……」モグモグ…

エレナ「飲み込んでからでいいわよ」

ルパン「ゴックン……まあ、今は金には興味ないけどよ、
    向こうには建前として用意してもらわないとな」

ルパン「多分、レナートは薄々気付いてる。
    あちらもこちらも準備期間ってこと」

エレナ「……戦うの?」

ルパン「俺は泥棒だぜ? 泥棒には泥棒のやり方があるのさ、あーん」


エレナ「……」

エレナ「……ルパン、私に何か手伝えることってある?」

ルパン「ないね」キッパリ

エレナ「そんな即答しなくても……」

ルパン「人質は人質らしく、おとなしくしてるのが一番」

エレナ「そう、ルパンが言うなら……」

ルパン「……あのさ、ひとつ訊きたいことがあるんだけどよ」

エレナ「えっ、なに?」

ルパン「……いや、やっぱりいいや」

エレナ「えー、なによ~」

ルパン「そんなことより飯くったら出掛けようぜ」

エレナ「えっ?」

ルパン「レナートに君のエスコートを頼まれたしな、
    好きなところに連れてってやるよ」

エレナ「ほんとっ!? うわぁ~嬉しい!」


────


 ─AM10:29 ローマ市内 裏路地の雑居ビル─


 な……一命を………が危険な……ことに……い


   今……りは助か………ぜ


「……っ」


 本来………キミだっ……絶対……静だよ


   そん……裕はね…もん……な


  さっさ……ルパンに連絡……ぇと


「るぅ、る……る……」


銭形「るる……ルパァァァアアン!!」ガバァッ

次元・闇医者「っ!?」

次元「いててぇ、驚いたら傷がっ……!」ズキズキ


闇医者「……信じられん、もう意識が回復しおった」

銭形「あれ、ここはぁ……?」キョロキョロ

闇医者「とりあえず水だ、ガバッと飲みなさい」

銭形「がばぁぁぁ~……ぷはぁ……」

次元「正にびっくり人間だな、とっつぁんは」

銭形「次元……わしは、一体……」

次元「何があったのかは分からねぇ。
   ただ、俺が襲われて下水道に飛び込んだ先に、
   とっつぁんが倒れてたんだ」

次元「胸に深々と、このナイフが刺さってたぜ」


銭形「……あっ! そうだ、俺は確かミスターレナートに……」

次元「しかし、とっつぁんも悪運のいいやつだな。
   胸ポケットの警察手帳、それに……」

闇医者「裏ポケットにしまってあった札束がなければ、
    命が危なかった。アンタ運がいいよ」

銭形「ルパンからもらった札束……」

次元「いいのかよ、警察があぶく銭持ってても」ジトー

銭形「ぐっ……ルパンを逮捕するための資金にしたっていいだろうが!」


 ────


 ─AM11:21 イタリア フィレンツェ─

ルパン「で、これが来たかったとこ……?」

エレナ「うんっ、綺麗だわ~」キラキラ

ルパン「ふーん……」

ルパン(大袈裟な子だぜ……)

エレナ「澄んだ空に赤レンガの街。ずっと、ずっと憧れてたの……!」

ルパン「街に下りてみるか?」

エレナ「うんっ」


 ──

エレナ「お洒落な街ね~、ほらルパン!」

ルパン「お、おい。そんなに走るなよエレナっ」

エレナ「あはははっ!」

ルパン「ったく……おい待てってばっ」

エレナ「ちゃんとエスコートしてよ、もう」

ルパン「おじさんをもう少し気遣ってほし~なぁ……」

エレナ「もう、しょうがないわね~。
    じゃあそこのお店で休憩しましょっ」

ルパン「俺の奢りでな……」


 ────


 ─AM11:34 某国 森林奥地の滝─

 ──……

 ─…

 ザーーーーーーーーッ─

五右エ門「…………」

 ……。

五右エ門「…………」

 ……。

「……──っ!」ススッ─

 キキンッ─!!

「ぐはっ……!」

 ボチャーン─

五右エ門「……何奴」


「……」スススス─

「……」ススッ─

五右エ門「てやー!たーっ!!」

 …………。

 ボチャーン─ バタッ…

五右エ門「……」

「ぅう……」

五右エ門「何者だ、貴様ら」

「か、神の……御加護が……──っ!」

五右エ門「くっ!」サッ─

五右エ門(自爆か──!)

 ドカーーーーン─!!

 ──パラパラパラパラ…

五右エ門「自らの命を捨ててまで……」

五右エ門「……、ルパン達になにかが……」


 ────


 ─PM00:56 フィレンツェ市内─

ルパン「あちこち回ってちかれた……それにしても……」

エレナ「ねえ~、ルパ~ン!」フリフリ

ルパン「元気だねぇあの子は……」フリフリ

ルパン(エレナ・フロイス……どこか掴めない子だ。
    掴めないというか、違和感がある……)

ルパン(まだ俺の知らない何かが……)

 prrrrr… prrrrr…

ルパン「っ! ……もしもし」

『どうやら、そっちは無事みてえだな』


ルパン「次元っ! 何があった?」

次元『逃げてる途中、レナートの一味にやられた。
   今はとっつぁんとローマ市内にいる』

ルパン「とっつぁん!? まさか、捕まったの……?」

次元『んなわけあるか。同じ襲われた身だよ』

ルパン「そうか……」ホッ…

次元『国際警察を敵に回すたぁ、後ろには相当な権力者がついてるぜ』

ルパン「だな、とりあえずアジトで落ち合おう。場所は──」

『──……場所はどこだ、ルパン』


ルパン「うぉおっ!? 突然入ってくんなよびっくりしちゃったもう!」

次元『へっ、とか言いながら嬉しそうな声出しやがって』

ルパン「五右エ門、どこから聞いてたの?」

五右エ門『次元の襲われた、あたりから……拙者も何者かに命を狙われた』

ルパン「あらら~、修行中だったでしょうに……」

五右エ門『いや、今こそ修行の成果を発揮する時……これよりそっちに向かう』

ルパン「よーし、ルパンファミリー全員集合ってか。
    まあ不二子ちゃんは捕まってっけど……」

次元『はぁ? ……けっ、何やってんだあいつは』

五右エ門『ルパン、まさかまた不二子のために──』

ルパン「だーっ! もういきなり解散しかけてど~すんの!」


 ──

ルパン「お~いエレナ、そろそろ行くぞー」

エレナ「えー、もう?」

ルパン「仲間と連絡がとれた。夜までにはアジトに戻るからな」

エレナ「そっか……分かったわ。じゃあねみんなー!」フリフリ

子供達「バイバーイ」フリフリ

ルパン「……すっかり仲良しだな、ずっと家にいた人間とは思えないぜ」

エレナ「そうね。私みたいな人間でも、
    他人とこうして笑い合うことができる」

エレナ「……ねぇ、もうひとつだけ寄り道、していい?」

ルパン「ああ、いいぜ」


 ────


 ─PM01:42 ローマ市内 レナートの屋敷 地下─

不二子「……」カツカツ

レナート「……」カツカツ

レナート「……ここだよ、不二子」

 シャッ─ピピッ

レナート「目先の金など無価値に等しいということを、
     君に教えてあげよう」

不二子「……──っ! なによ、この部屋……!?」

不二子(巨大な研究室に、人間の脳が、幾つも……)

レナート「ふ、ふふふ……」

レナート「我々『Jesuit』が、世界を一新するための方舟さ」
 


 ────


銭形「次元、どこに行く……?」

次元「一度ルパンのアジトに撤退だ。とっつぁんも養生しな」

銭形「わしも行くぞっ、つつっ……」

闇医者「何を言っとる、絶対安静だ!」

銭形「痛み止めがあればなんとかなるっ……!」

闇医者「君は特に傷が酷いんだ、これ以上悪化したら今度こそ死ぬぞ!」

次元「……だってよ。ゆっくりしてな、ここは多分安全だぜ」

銭形「待てッ! レナートがわしを襲った理由が、まだ分かっておらん!」


次元「……だってよ。ゆっくりしてな、ここは多分安全だぜ」

銭形「待てッ! レナートがわしを襲った理由が、まだ分かっておらん!」

次元「……とっつぁん」

銭形「国債警察を殺してまで隠したかったものがあるはず。
   となると、ICPO上層部もあまり信用出来ん」

次元「……あれは、サツがどうこう出来るようなもんじゃねえぜ」


銭形「っ! 何か見たんだな、次元!?」

次元「ああ……あそこには、何かとんでもねえもんが隠されてやがる」

銭形「……。それを聞いて、わしが大人しくしていると思うか……?」

次元「……けっ」ニヤッ

次元「じゃあ、とっつぁんとは一時休戦ってわけだな」

銭形「素直には頷けんが、よーし。
   わしらでレナートの屋敷に乗り込むぞ」

次元「……と、いうわけだおっちゃん」

闇医者「な、なんだ……?」

次元・銭形「「痛み止め、あるだけくれ」」


 ────


 サァーーー…

エレナ「……綺麗ね」

ルパン「…………」

ルパン「こんなとこで、よかったの?」

エレナ「こんなとこ、なんて言うことないわ。
    この世界は、素晴らしいもので満ち溢れてる」

ルパン「そういうもんかね……」

エレナ「そういうもんよっ」

 …………。

 ……。


エレナ「……私は昔から、人類の祖先はアダムとイヴだと教えられてきた」

エレナ「でも、本当は違う。
    目の前に広がる海から、生命が誕生したのよ」

ルパン「……」

エレナ「そういったら、あの人に頬を叩かれた。
    どうして? 教えに背いているから? 私が無駄に知識をつけたから?」

エレナ「ルパンはどう思う? 私は間違っているの……?」 

ルパン「俺は無信教だからよく分からねえが、信仰ってのはそういうもんさ」

エレナ「…………」

ルパン「……あのさ、エレナ。朝に聞きそびれたことがあんだけど」

エレナ「……なに」

ルパン「お前さん、レナートとはどういう関係なんだ?」

エレナ「……あの人は。……──」




 「私の……パパよ」




ルパン「…………」

ルパン「……だけど、お前」

エレナ「ええ、おかしいわよね。パパはまだ三十代前半、
    なのに私は成人女性にまで成長してる」

エレナ「人として、あり得ない。だって……」

ルパン「……」

ルパン(……彼女の違和感。俺の知らない、”何か”ってのは──)

エレナ「私は十年前に人口培養された、人造人間だもの」

ルパン(──これ、だったのか)


 ──

レナート「進行のほうはどうだ?」

研究員「順調でございます。
    すぐにでも計画を実行出来るようにしてあります」

レナート「よし……以前のようなヘマはするな?」

研究員「ひっ……は、はいぃ!」

不二子「……」

レナート「おっと。すまないね、なんの説明もなしに」

不二子「レナート。貴方は一体……」

レナート「奇跡は起こり得ない。だから、
     我々の科学力を用いて神のいる世界を創り出す」

不二子「神、ですって? ……ふっ、あっはは!」


レナート「何がおかしい?」

不二子「いえ、だって経済家のあなたが神だの方舟だのなんてっ……」ピクピク

レナート「信仰に立場は関係ない。
     神に認められるために、クリスチャンは勤勉に働いてきた」

レナート「聖書の言葉を信じ、盲目的に」

レナート「数百年もの間だ。我々はその一部を使って、研究を続けてきた。
     何代も何代も、後を継いでこの計画を遂行しようとした」

不二子「じゃあ、『Christianity money』って本当にあるのね」

レナート「……」ハァ…


レナート「そんなもの、計画が完遂した後では紙くず同然」

レナート「不二子、君にはその価値を捨て去ってほしい。
     君のような特段美しい女性には、
     新たな世界での天使になってもらいたいんだ」

不二子「私が……?」

レナート「そうだ。人の上に立ち、
     世界中の人間を意のままに出来る権利を与えよう」

不二子「……そんなことが、出来ると思って?」

レナート「出来る」

レナート「君が立っているこの部屋は、
     君の想像を絶するほどの科学力を有している」

レナート「インテリアの熱帯魚のように浮いている脳が、
     この計画の鍵なんだよ」


 ──

エレナ「私は、試験官の中で生まれたらしいわ。
    パパの細胞を使って」

エレナ「それから何百回という人体実験、
    治療を繰り返して、今の私は造られた」

ルパン「その、人体実験ってのは……」

エレナ「主に、頭の辺りを中心にね。
    もうルパンなら、大体の察しはついてるんでしょう?」

ルパン「……」


 ──

レナート「これらは私のコレクションさ。いや、私だけじゃない。
     私の前の世代、その前の世代のものまである」

レナート「君は、人間の脳がスーパーコンピュータよりも
     優れていることを知っているかい?」

不二子「確か、ニューロンとかいう神経細胞が働いているのよね」

レナート「十分な解答だ。現在この世界に、
     人間の脳に及ぶ力を持つコンピューターは存在していない」

レナート「……ここの施設を除いては」

不二子「っ!? まさか、これって……」

レナート「かなり優秀だよ。どこのスーパーコンピューターにだって
     打ち勝つことが出来る……しかしだ」

レナート「ネットを掌握するのもいいが、それだけでは完全じゃない。
     全人類を誰の例外もなく、完全に纏め上げるためには」

レナート「人間の脳自体を、操るしかない」


 ──


 「この計画には特殊な演算、そして」


 「全人類と同じ、脳回路が必要になる」


 「ネットを介して、
  この施設から送信した脳内のデータを、そのまま脳にロードさせる」


 「でも、普通の人間の脳では負荷に耐えられない」


 「データのロード、というよりは共有だ。
  常に全人類と繋がっていなくてはならないからな」


 「その膨大な演算能力を有し、コントロール出来るのが──」


 「──私の娘、エレナだけなのだよ」


 ──

ルパン「…………」

エレナ「…………」

エレナ「完全な計画のはずだった」

エレナ「……でも、パパは一つだけ失敗した」

ルパン「……知識を与えてしまった」

エレナ「そう。全世界へと繋がる特殊なネットに、
    一度テストで接続された」

エレナ「ほんの一瞬だったけど、その一瞬だけで十分」

エレナ「何も知らなかった私が、何もかもを知ってしまった」

ルパン(広大なネットワークを一瞬にして把握することが出来る、か。
    考えたくもない力だぜ)


エレナ「そこには人間の過ち、欲求、天災、何もかもが記されていた。
    蛮行なんて数え切れないほどあった」

ルパン「…………」

エレナ「だけど、だけどね。そこには愛もあったの」

エレナ「とても暖かくて、明るくて、優しい光……」

エレナ「世界は美しいもので溢れていて、
    まばゆい光にいつも照らされている」

エレナ「今日街に下りてみて、直接確かめたの。
    しっかりとした、確証が欲しかったから」

ルパン「……どうだった?」

エレナ「確信したわ。
    この世界を、決して壊すわけにはいかない」

エレナ「色々な考えがあって、人種がいて、言葉を話して。
    それでいいじゃない。それを矯正する権利なんてない」

ルパン「エレナ……」

エレナ「だから、私はこの計画を発動させない。絶対に」


 ──

不二子「レナート、貴方……」

レナート「く、ふっふふ……楽しみだよ、エレナが帰ってくる日が」

レナート「二日後……世界が、変わる……!」

ちょい離席します、また夜に投下していきます。

再開します


 ────


 ─PM06:18 イタリア国内 某所 ルパンのアジト─


エレナ「……」

銭形「ふむふむ……」

次元「……」

銭形「ここがルパンのアジト……」メモメモ

ルパン「もう使わねえけどな」

銭形「なっ! いい場所なのに勿体ない、何故だ!」

ルパン「とっつぁんが来たからに決まってんでしょうが!」

次元「さっさと話を進めようぜ……」


 ──

 ─PM06:57─

次元「なるほど。俺が通気口から覗いたのは、
   その研究室の一部だったってわけか」

エレナ「そう。多分ジゲンさんを襲ったのは、パパが指揮する部隊の人間」

次元「部隊?」

エレナ「影の組織『Jesuit』。あの屋敷にいる殆どの人間は、
    組織の訓練を受けているわ」

ルパン「ひょー、怖い怖い」

銭形「ミスターレナートも、訓練を受けていたのか」

エレナ「……」コクッ

エレナ「計画は数百年にわたって進められてきた。
    だから時々後継者一族がかわることもあったらしくて」

エレナ「ここ百年の間で、
    フロイス一族は再び『Jesuit』の実権を取り戻した」


銭形「再び……ちょっと待て。
   フロイス一族って、アンタまさか……」

ルパン「ルイス・フロイス」

次元「確か、イエズス会の宣教師だったか?
   日本にキリスト教を広めたっていう、あの……」

エレナ「ニッポンとは、何かと縁深いわね」

ルパン「教皇の精鋭部隊が源流か……手強いわけだぜ」

エレナ「とにかく、その時代から資金徴収と
    研究が続けられてたのは確か」

次元「その賜物が、お嬢ちゃんってわけか」

エレナ「ええ。つまり現状で鍵を握っているのはルパン、貴方よ。
    向こうは私がいなければ何も出来ない、その分有利に動けるわ」


ルパン「不二子が人質だけど、まあ先攻だわな」

ルパン「で、どうすればいい?」

エレナ「地下中枢にあるハードディスクデータを壊せば、
    計画は発動しないはず。それか」

エレナ「私が直接、研究室全体に情報分解プログラムを送れば……」

ルパン「そんなプログラムがあるのか?」

エレナ「私なら頭の中で構築出来る」フフンッ

ルパン「どっしぇー……」

次元「だったら俺たちは、暴れるだけ暴れればいいってことだな」

銭形「あまり感心せんが、今回だけはわしも限りを尽くそう」

ルパン「おいおい、取引き直前までは大人しくしててくれよ?」

エレナ「地下中枢へは、私とルパンで行くのね」

ルパン「ああ。次元、五右エ門、とっつぁんの三人は、
    合図と共に暴れてくれ」

次元「おう。ま、お侍さんはまだ来てねえけどな」


 ──

 ─同刻 イタリア行きの飛行機内─

CA「Beef or fish?」

五右エ門「う、梅干プリーズ……」

CA「uh-huh?」ニコッ

 ……。

五右エ門「ふぃ、フィッシュプリーズ……」

五右エ門「…………」ウズウズ

五右エ門(貨物室の斬鉄剣が気になって飯どころではないっ……)


 ──

エレナ「ただ、向こうも何か仕掛けてくるはずだから。
    あまり油断は出来ないわね……」

ルパン「そりゃそうさ。数百年来の念願が叶うんだからな」

次元「二日後、か。それまではゆっくり休ませてもらうぜ……」フラフラ

銭形「そうだな。わしも痛み止めが切れてきやがったいちちっ」

ルパン「もう~、ボロボロでくるから~……奥のベッド使ってくれよ」

銭形「すまねえな……」フラフラ

銭形「……アンタ、エレナ、とか言ったかな?」

エレナ「は、はいっ」


 ──

エレナ「ただ、向こうも何か仕掛けてくるはずだから。
    あまり油断は出来ないわね……」

ルパン「そりゃそうさ。数百年来の念願が叶うんだからな」

次元「二日後、か。それまではゆっくり休ませてもらうぜ……」フラフラ

銭形「そうだな。わしも痛み止めが切れてきやがったいちちっ」

ルパン「もう~、ボロボロでくるから~……奥のベッド使ってくれよ」

銭形「すまねえな……」フラフラ

銭形「……アンタ、エレナ、とか言ったかな?」

エレナ「は、はいっ」


エレナ「……優しい人なのね」

ルパン「とっつぁんか? まあ、正義の味方ってやつだからな~。
    俺の天敵、しつこいったらありゃしない」

エレナ「天敵には見えなかったけど?」

ルパン「今は協力関係だけども、
    これが終わった瞬間にとっ捕まえる気だぜ……」

エレナ「あはは、忙しないなぁ」

ルパン「……エレナ。これが終わったら、どうする気だ?」

エレナ「えっ? ……そう、ね。
    そういうことも考えないとね」


エレナ「……世界中を旅しながら、
    組織のお金を使って、人助けをしたい」

ルパン「エレナらしいな」

エレナ「その時は、ルパンも一緒だからね」

ルパン「え、俺ぇ?」

エレナ「じゃなかったら、誰が私を守ってくれるのよっ」

ルパン「とは言ったってよ~……」

エレナ「ルパンは泥棒、私は人助け。
    このままずうっと協力関係ってのはダメ?」

ルパン「こ、困ったなぁ……」

エレナ「『Christianity money』の口座を私のものにして、
    それを山分けにしてもいいわよ……?」

あ、>>149ミスっとるやんけ
本当は↓です…



銭形「君のお父さんは、悪に手を染めてしまっている。
   それに気付けただけでも十分だが」

銭形「君は家を抜け出してまで行動した。
   その気持ちは『正義』だ、誇りに思っていい」

エレナ「ありがとう、ございます」

銭形「……だから、もう十分だ、あまり気負いするな。
   あとはわしら大人に任せればいい」

ルパン「……」

エレナ「……お気持ちは嬉しいです。
    でも……これは、私の問題でもありますから」

銭形「……そうか。無理は、しないでくれよ。じゃあな」

ルパン「おやすみ~」

 バタンッ…


エレナ「私の力があれば、ちょちょいのちょいなんだから」ニヤッ

ルパン「……ちょっと、迷っちゃうな~ドゥフフフ!」

エレナ「冗談……けど、本当にどうなるんだろう、私」

ルパン「……」

ルパン「……この家、くれてやってもいいぞ」

エレナ「えっ、ここを?」

ルパン「どうせもうとっつぁんにばれたんだ。
    俺たちはもう使えねえしな~」

ルパン「この件が終わったら、ここに住めばいい。
    株でもなんでもやって稼いで、たまに人助けの旅」

ルパン「そん時は、俺たちを呼べばいいさ。
    たまにだったら付き合ってやるよ」

エレナ「ルパン……もう、ルパンルパンルパン~っ!」ダキッ

ルパン「どぅわっ!? よ、よせってよせって隣にとっつぁんが~~!!」


 ────


 ─PM10:42 ローマ市内 レナートの屋敷─


レナート「……」ブツブツ

レナート「……エレナ、もう少しだ」

レナート「君は、全世界を混沌から救う女神になる」

レナート「争いのない、完全な世界」

レナート「そのためだったら、私は……」


 ──

不二子「……ねぇ」

ダンテ「っ! な、なんだぁ?」

不二子「あなた、信心深そうな顔全然してないわね」

ダンテ「……そうかい?」

不二子「用心棒なんでしょ、ミスターレナートの」

ダンテ「……」

不二子「あなたから見て、どうなのよ。あの男は」


ダンテ「……あの人は、俺に心の拠り所を作ってくれた」

ダンテ「妻と娘を亡くした俺に、教えを説いてくれたんだぁ……うっ!」

不二子「……嫌なこと、思い出させちゃったかしら」

ダンテ「いや……昔だったら、もっと荒れてた……けど。
    キリストの教えが、レナート様がいたから、俺は……」

ダンテ「今もこうして、生き永らえている。
    もうすぐに来る、救われる日のために……だから」

不二子「……」

不二子(惨めね……)

ダンテ「お前らに計画を邪魔させたりは、しないぃ……!」


 ────


 ─AM06:32 イタリア国内 某所 ルパンのアジト─

ルパン「ぐぅ……ぐぅ……」zzz...

エレナ「ルパーーーーーン!!」

ルパン「ぎゃあああああああああ!! な、なんだぁ!?」ガバッ

エレナ「ルパン、大変よ!」

ルパン「まさか敵か!?」

エレナ「湖でジャパニーズ・サムライが釣りしてる!」

ルパン「」ズテーン


 ──

五右エ門「……」

エレナ「なんて風情のある情景なのかしら……!」キラキラ

ルパン「……五右エ門ちゃん」

五右エ門「……ルパン、この娘は?」

ルパン「詳しい話は中で。あ、俺たちの朝飯分も釣っといて。
    俺ほかの家事してくるわ……」

五右エ門「う、うむ」

エレナ「お隣にいても、構わないでしょうか?」キラキラ

五右エ門「……」チラッ

ルパン「そんな目で俺を見んなよっ」


 ──

 ─AM07:11─

銭形「ムシャムシャムシャムシャ──……」

次元「修行の旅はどうだった?」

五右エ門「うむ、心の中の邪念は消え失せた……と思う」

エレナ「和服って、かっこいいわねぇ~……。
    直接見たらもっと好きになっちゃった」

次元「……」

ルパン「あんまりおだてないの、
    煩悩かなんやらでまた修行に行っちまう……」

五右エ門「うぅ……この娘が、本当に今回の事件の鍵なのか?」

銭形「そうだ、作戦は聞いたな五右エ門。
   まあ具体的なことは暴れてからしかどうにも話せんしな、
   わしは飯食ったから寝るぞ……ふわぁ~」

エレナ「お休みなさ~い」

五右エ門「ああ……しかと休まれよ」

ルパン「……病院に置いてきた方が良かったんじゃねえの?」

次元「びっくり人間だからよ、明日には治ってるさ」


 ────


 ─PM01:21 ローマ市内 レナートの屋敷─


 カツ…カツ…


「……ルパン一味の一人、石川五右エ門を殺し損ねた。
 このミスを挽回しろ」


《目標を捕捉しました》


「健闘を祈る。神のご加護があらんことを」


「…………」


「エドモンド様。レナート様がお呼びです」


「……──」


エドモンド「ああ、すぐに行く」


 ──

 ─同刻 イタリア某所 ルパンのアジト─

ルパン「……」カチャカチャ

エレナ「面白そうなの作ってるわね」

ルパン「色々仕掛けは施しとかないと……なっ」カチャッ

ルパン「よーし、どんどん作っちゃお──……っ!」

エレナ「……どうしたの?」

ルパン「エレナ、奥に隠れてろ」

エレナ「っ! 分かったわ」


ルパン「…………」

 ガチャ…

ルパン「……出てこいよ、俺らを殺しに来たんだろ?」

 …………。

 カサッ…

「……」スッ…

「……」

「……」

ルパン「取引をしようって話だったのに、
    随分とナメたことしてくれるじゃねえか」


「……──っ!」シュッ─

ルパン「それに、お前ら数が少なすぎだぜ」

 シュバッ── ドスッ─

「がっ……!?」

「ぐえっ……」

ルパン「おはよう五右エ門ちゃん、よく眠れた?」

五右エ門「……気をつけろ、あわよくば自爆するぞ、こやつ等」

ルパン「気絶させりゃあいいんだろ?
    ま、俺と五右エ門で十分だなぁ……」

「うっ……」


 ──

 コンコンッ

レナート「入りたまえ」

エドモンド「失礼します」

レナート「エドモンド、部隊の方はどうだ」

エドモンド「はい。明日の取引に向け、最後の調整を──」

レナート「違う、君の作戦行動中の部隊だ」

エドモンド「っ!?」

レナート「不二子の髪に、これがくっ付いていた」スッ…


レナート「お前の部隊に配備されている小型発信機。
     ……余計な手出しはしなくていい」

エドモンド「っ、しかしレナート様──!」

レナート「エレナに何かがあったらどうする?
     あの子なしでは、計画は進められない」

レナート「お前がルパンを取り逃がしたミスは確かに大きい。
     しかし、だからといってリスクを冒す必要はないだろう」

エドモンド「……失礼致しました」

レナート「穏便に進めたかったが……まあいい。
     どの道、争うことになるだろうからな」

レナート「明日を、人類最後の戦いにしよう、ルパン」

エドモンド「…………」


 ────


 ─PM04:45─

次元「で、こいつらどうすんだよ」

「……ッ!」ギロッ

ルパン「どうするっつったってな~、
    取引までどこかで大人しくしてもらうしか……」

五右エ門「まだ若いな。組織のなかでも雑兵というわけか」

エレナ「……」

「エレナ様! 何故そのようなお顔をされるのです!」

「この畜生らに何もされていませんか!?」

銭形「畜生はお前らのことだろうが!
   今は三人分の手錠がないからいいものを、いいか!
   インターポールに連絡次第、即刻逮捕してやるからな!」

ルパン「かっこいい~」

銭形「お前もだぁ!」

「……エドモンド様が仰っていたことは、
 どうやら本当のようですね」


「おい、口を慎め! エレナ様相手に何を言っている!」

「貴方はレナート様を、お父様を裏切るつもりだ!」

エレナ「そ、そんなことはっ……」

「エ、エレナ様……?」

次元「大人しくさせといた方がよさそうだな。
   おい、五右エ門手伝え」

五右エ門「承知した」

「放せっ! エレナ様、違うと言ってください! エレナ様!!」

 バタンッ

ルパン「……気にするな」

エレナ「う、うん」


 ──

 ─PM08:22 湖の畔─

 ……──

 …─

エレナ「……」

ルパン「勝手に外に出ちゃ危ないだろ?」

エレナ「ごめんなさい、ちょっと一人でいたかったの」

エレナ「……ここも、とても綺麗なところよね。
    心が落ち着く」

ルパン「……ああ」


ルパン「……エレナ。さっきのやつらのことは、気にすんなよ」

エレナ「うん、分かってる……分かってるつもりだけど」

ルパン「……」

エレナ「……私ね、自分は中立的な人間だって思ってた」

エレナ「パパは間違ってる。そんなことは分かってる。
    だけど……パパの言うことも、分かるの」

エレナ「いえ……分かってあげたい」

ルパン「エレナ……」


エレナ「でも、どうして……?」

エレナ「間違っているって分かってるのに、
    私が正しいはずなのに、
    パパに叩かれた時、ものすごく悲しくなったの……」

ルパン「……」

エレナ「今は、もっと心が痛い……心が揺らぐの……。
    パパを裏切るってことを、実感できてなかった……っ」

エレナ「ルパン……私、私っ……!」ギュッ…

ルパン「……誰も見てねえから安心しろ」

ルパン(レナート……お前、もう一つ大きなミスを冒してるぜ)

エレナ「なんで、こんなに辛い目に遭わなくちゃ……っ!」

ルパン(どうして、この子を一人の人間として育てやがったんだ)

 ………───

 ……──

 …─


 ──

ルパン「……落ち着いたかな」

エレナ「うん、だいぶと……」

ルパン「……」

ルパン「なぁエレナ。昨日とっつぁんに言われたこと、憶えてるか?」

エレナ「私のしたことは『正義』だったって……」

ルパン「ああ」

ルパン「『正義』のかたちってのは色々あるもんだ。
    立場が変われば、考え方も変わる」


ルパン「とっつぁんは警官だからな、正義の味方ってやつさ。
    だから犯罪は悪だと、そういう頭なんだろうが」

ルパン「エレナにとっての『正義』だってある」

エレナ「私にとっての……」

ルパン「そう。だからさ、気負うなよ」

ルパン「お前さんの『正義』を、守り切ればいい」

ルパン「その気持ちは、きっと間違ってないからよ」


エレナ「私の、『正義』を……」

エレナ「……うんっ。ありがとう、ルパン」

ルパン「じゃあ明日のために、今日は早めに眠るとしますか~」スタスタ

エレナ「そうね。……──っ」

 チュッ─

ルパン「……え、エレナ。お前さん今……」

エレナ「おやすみなさいっ」

ルパン「え、えっと……」

ルパン「…………」ポケー


 ────


 ─AM08:52 イタリア国内 某所 ルパンのアジト─

 ……──

 …─

ルパン「さて、決戦の日ってやつだな」

次元「痛み止めは持ったし、あとは……」

ルパン「ていうか、とっつぁんはどこ行っちまったんだ?」

五右エ門「銭形なら、明朝ここを出て行った」

五右エ門「『先に行って準備をしてくる』と」

ルパン「ふーん。まあ期待しときますか」

ルパン「ほいじゃ、準備はいいか?」

エレナ「……行きましょう、ローマへ」


 ──

 ─同刻 フランス リヨン ICPO本部─

局長「ゼニガタくんがいなくなって、この局もまた静かになったのう」

局長「まったくどこをほっつき歩いてるんだか。そろそろ殉職扱いに……」

局長「……ん?」

局長「おお、朝から編隊訓練とは感心感心……」

局長「んん、そのまま装甲車へ。実に本格的な訓練だな」

局長「どこの部隊かな、褒めてやらんと」

職員「きょ、きょくちょ~~~!!」

局長「なんだ、騒がしい」

職員「ゼニガタ隊が無許可で出動しました!!」

局長「」ズデーン

局長「じゃあ、今出て行ったのは──!」


 ──

 ─同刻 ローマ市内 路地裏 公衆電話前─

警官隊『警部。装甲車の奪取に成功しました、
    ただいまよりローマに向かいます』

銭形「よーし分かった。今回はお前らの団結力と機動力が武器となる。
   銭形隊ここにありと、イエス様に知らしめてやろうぞ!」

警官隊『おーーっ!!』


 ────


不二子「……」

レナート「……」カチャッ…

レナート「さあ、不二子」

不二子「……──あっ……!」プスッ

不二子(ルパ、ン……)

研究員「……では、運び込みます」

レナート「エレナとルパン三世を出迎える準備をしよう」


 ──

エドモンド「全員、配置についたな」

エドモンド「作戦遂行のために、我々はここまで来た。
      今日この日で、それも終わる」

エドモンド「最後の仕事だ。
      神のご加護があらんことを」


 ────


 ─PM00:21 ローマ市内─

次元「……おお、どうだった」

ルパン「警備は前見た時とかわんねぇな。
    屋敷んなかにウジャウジャいんのかね~」

五右エ門「討ち入るのは、容易そうだな」

ルパン「じゃあ、手筈どおりに」

次元・五右エ門「……」コクッ

ルパン「エレナ、行くか」

エレナ「うん、真正面からね」


 ──

 ─同刻 レナートの屋敷近く─

警官隊「……」

銭形「いいかお前ら、ルパンの合図があったら突撃だ」

警官隊「はっ」

銭形「今回の作戦はインターポールには無許可である。覚悟はいいな?」

警官隊「はっ」

銭形「始末書が束になって掛かってきても、功績をあげりゃあこっちのもんだ。
   レナートの一派をとにかくひっ捕らえろ、
   やつらはわしらを殺しにくる、抜かるんじゃないぞ!」

警官隊「はっ!」


 ────


 ─PM01:00─

 ……──

 …─

 カツカツ…

庭の見張り「…………」

 カツカツ… 

ルパン「…………」

 カツ… ピタッ

エレナ「……」 

 ピンポーン…

エレナ「いちいち押さなくても黙って入ればいいのに」ヒソヒソ

ルパン「エレナ、お前は人質」

エレナ「あっ……」

 ガチャッ…

エドモンド「エレナ様、ご無事で」

ルパン「おっとぉ、お前はお呼びじゃねえんだ。
    さっさとレナートんとこに案内しな」

エドモンド「っ……ついて来い」

ルパン(殺気プンプンでやんの……)


 ──

 ─レナートの部屋─

レナート「──これはこれは、ルパン三世」

ルパン「盛大なお出迎えだな、レナート」

レナート「廊下の部下のことなら気にしないでくれ。
     それよりもまずは君に謝りたい」

ルパン「襲ってきた奴らのことか? 
    取引だってのにおったまげたぜ」

レナート「それに関してはすまなかった」

ルパン「いいのいいの、何にもなかったから。
    殺してもねえし自爆もさせてねえよ」

レナート「……そうか」

エドモンド「……」


エレナ「パパ……」

レナート「おお、無事かエレナ」

ルパン「感動の再会もいいけどよ、不二子はどうした?」

レナート「金のことは訊かないのかい?」

ルパン「茶化すな、不二子が先だ」

レナート「……エドモンド」

エドモンド「はい、……」カチッ

 ブゥォン…

不二子《…………》

ルパン「っ、不二子!」


レナート「さあ、まずはエレナを引き渡してもらおうか。
     金と不二子はそれからだ」

ルパン「不二子に何をしやがった……?」

レナート「何もしていないよ。ただ、眠ってもらっているだけだ」

レナート「君の反応次第では、どうなるかは分からないがね」

ルパン「……なーるほど、
    この小娘を大人しく引き渡せばいいってわけだな」

レナート「そうだ。早く解放してあげてくれ」

エレナ「……」

ルパン「……」スッ…

ルパン「そりゃあ……」

レナート「……?」

ルパン「こっちの台詞だぜ──!」ポイッ

 シュゥゥーーーーーーーー… モクモク…


レナート「──っ!?」

ルパン「おっ始めるかぁ!」カチッ

 ──

 ヒュルルルルルルーーーー… バンッ─!!

庭の見張り「な、花火が!?」

 バンバンッ─! シュッ─

庭の見張り「かはっ……!」

五右エ門「さて、まずは一人」

 ヒュルルーー… バーンッ─!!

次元「いっちょ、暴れるぜ──!」

 ──

警官隊「警部、花火があがりました!」

銭形「よぉし出動──!!」


 ──

 モクモクモクモク…

レナート「ごほっ、ごほっ……!」

ルパン「催眠ガスじゃねえだけ感謝しな!」
    
エドモンド「ルパン──!」

エレナ「きゃあっ」

ルパン「ほいじゃらほいっとー!」スカッ

エドモンド「ルパン! どこだ!」

ルパン(多分、あるならこの辺……──おっ)ポチッ

 ガシャ─ ウィーーン…

ルパン「大当たり~」

エレナ「何この扉!?」


レナート「っ! 隠しエレベーターだ、行かせるな!」

エドモンド「待て──っ!」

ルパン「お先に~雑用ちゃ~ん」

 シューーー… ガシャン

エドモンド「くっ……こちらエドモンド。交渉決裂だ、殺せ……!」

エドモンド「私も援護に向かうっ……!」


 ──

 ウィーーーーーン…─

エレナ「地下に向かってる……ルパン、何で知ってたのっ?」

ルパン「泥棒の勘……と言いたいとこだけど、
    こればっかりは先に情報をいただいてたのさ」

エレナ「えっ、誰から?」

ルパン「地下で眠ってる、俺の天使ちゃんからな」


 ──

 ドンッ─ ドンドンッ─

「ぐぁあっ」「がっ……!」「うっ……」

「……」シュッ─

次元「どんどん出てきやがる。
   っと、そろそろあれを……」

次元「あー……んっ、ぐぅぅ苦え……」

次元「水がほしいところだが、そんな余裕はねえな、──っ!」

 ダダダンッ─

次元「くっ、来やがったか……!」


「……へ、へへ」

ダンテ「次元、やっぱり計画を邪魔しに来たかぁ」

次元「頭を操られるなんざ、まっぴら御免だからな」

ダンテ「違う。神だ、神が手を差し伸べてくれるんだ」

次元「それよりも今は水の入ったコップを、
   差し伸べてほしいところだぜ……」

ダンテ「~~~っふ、ふざけるな──!!」ダダダンッ─


 ──

五右エ門「てぁッ! やーッ!!」

 チャキィーーーン─… バタバタバタ…

「くっ、……!」

「つ、強い……!」

五右エ門「貴様らの悪事、すべて討ち滅ぼしてくれる──!」

  シュッ─ シュルルル──

五右エ門「っ! これは、糸……」

「石川五右エ門、噂に違わぬ腕前だ」

五右エ門「貴様、名は」

エドモンド「エドモンド・カルニア。
      部下達のようにはいかないぞ、爆死などでは済まさん──!」

 シュルルル──

五右エ門「っ!」


 ────


 ─PM01:23 レナートの屋敷 地下の研究所─

 ザワザワ…

研究員「レナート様じゃない、ルパンだ!」

ルパン「俺さま大人気~、なんつってな。
    さあ、まずは不二子のいる場所を教えてもらうぜ」

研究員「ひぃっ……!」

エレナ「ルパン、多分最深部よ」

ルパン「なに?」

エレナ「フジコさんが頭につけていた機械は、
    脳の中身をロードしたり、組み替えたりできるマシーンよ。
    あれがあるのは、この研究所では中枢だけ!」

ルパン「よし、その部屋はどこにあるエレナ」

エレナ「この先よ、扉のパスワードは記憶済みっ」

ルパン「た~のもし~!」


 ──

 タッタッタッタッ─

レナート「研究所中枢に向かっているだと……?
     出来るだけ時間を稼げ、私も今向かっている」

レナート「いいか、エレナは絶対に傷つけるな!」

《りょ、了解しました!》

レナート「エレナ……ルパン三世──!!」


 ── 

銭形「でぇぇぇい! 重傷患者相手にこんなもんか!」

「……っ」ジリッ…

《南ブロック、制圧完了! 怪我人数名!》

銭形「よし。怪我人を回収した後、北側を援護だ」

《了解!》

銭形「レナート一派、貴様らの好きにはさせんぞ!」


 ──

 ドンッ─ ダダダンッ─

次元「ぐっ……!」チュイン─

ダンテ「うっ……」チュイン─

ダンテ「……相変わらず良い腕だぜぇ」

次元「へっ、お前こそ」

レナートの部下「っ──!」スッ─

ダンテ「お前らは手をだすな!! 次元は俺が始末する!!」

レナートの部下「は、はっ!」

次元「……気が合うな」

ダンテ「き、きっひひ……」

次元「俺もお前を始末しねえといけねえって、
   思ってたところだぜ──!」ドンドンッ─


 ──

エドモンド「はっ──!」シュルル─

五右エ門「……っ!!」

 キンッ─

エドモンド「流石に、なかなか捕まらないな」

五右エ門「……一つ訊きたい」

五右エ門「あの自爆を命じたのは、貴様か?」

エドモンド「そうだが、それがどうした?」

五右エ門「……」


エドモンド「私の部下は全員、喜んで命を差し出す。
      神が必ず魂をお救いになると、教えているからな」

エドモンド「宗教は利用しやすい」

五右エ門「くっ、鬼畜が……」

エドモンド「甘いんだよ、レナート様は。
      世界を掌握するんだぞ、本気で潰さなければ意味がない」

五右エ門「貴様だけは、生かしてはおけぬ──!」

 
 ────


 タッタッタッタ─

ルパン「おら~どけどけ~! エレナ様のお通りだぞ~!」

エレナ「もー、それやめてよ人を盾にして~!」

ルパン「お前さん相手ならだーれも手ぇ出せないからな~」

エレナ「そうね、次の扉を抜けたら研究所の中枢よ! そこを右!」

ルパン「はいはーいと、おっしゃーここだ!」

エレナ「パスワードは……」

 ピピッ ピピピッ ピッ─

 ガシャン─

ルパン「ご開帳~!」


 ──

 ─地下研究所 中枢─

ルパン「ほいと、お邪魔するぜ」

研究員「うっ……」

不二子「……」

ルパン「不二子っ……!」

ルパン「……不二子をその機械から降ろしてもらおうか。
    早くしないと、この子の胸にでかい穴があくことになる」

ルパン「俺は本気だ、急げ」

研究員「い、今すぐに……!」


 カチャカチャ…

エレナ「……分かっててもけっこう、怖いわね……」

ルパン「悪いな、嫌な思いさせて」

エレナ「ううん、いいよ」

ルパン「いいよってお前……」

研究員「お、降ろしました」

ルパン「お、よーっし。……不二子、不二子起きろ」

不二子「っ、うぅーん……ルパン……」

ルパン「よお、助けに来たぜ」

不二子「来てくれるって、信じてた……」

エレナ「あのー、感動のシーンを台無しにするようで悪いんだけど……」

ルパン「ああ、悪い悪い。
    あとは計画をぶっ潰すだけだな」

エレナ「私がここのパソコンからアクセスしてみるから。
    ルパンは後ろを守っててっ」

ルパン「任せとけ!」


 ──

 ダダダンッ─ ダダダンッ─

次元「くぅ……」

次元(相変わらずえげつねえ撃ち方しやがる、しかし……)

次元「……ダンテ、お前やっぱり変わってねえよ」

ダンテ「っ、何がだ!」

 ダダダンッ─

次元「お前と再会した時に、気がついたんだ」

 ダダダンッ─

次元「昔からな……──」

次元「撃つ時以外が隙だらけだぜ──!」ドンドンッ─ 

 チュインチュイーン─… ガシャンッ…

ダンテ「ぐぁっ……!」


次元「チェックメイトだ、ダンテ」

ダンテ「……何故俺が、撃たないと思った」

次元「お前の三発ずつしか撃たない癖も、変わってねえからさ」

ダンテ「……はっ、負けたよ、完敗だぁ」

次元「……」

ダンテ「神を創り出す計画は、どうなるかもう分からねえが、いいさ。
    これでやっと妻と娘のところへ行ける」

ダンテ「さあ、殺してくれ」

次元「……ダンテ。神なんてものが本当にいるかは知らねえが」

次元「お前の亡骸は嫁さん達と、
   一緒のところに埋葬しといてやるよ」

ダンテ「ああ……なあ、次元」

次元「なんだ」

ダンテ「殺される相手が、お前で良かったよ」

 ドンッ─…

次元「…………」

次元(最後に戦った相手が俺なんて、とことん救われねえ奴だったな、ダンテ)

次元「……あばよ、嫁さんと娘によろしくな」


 ──

 キンッ─ キキンッ─

五右エ門「何故、若い命を使った──!」

エドモンド「うっ、く……ただ洗脳しやすいからさ。
      それ以上の理由はない!」

五右エ門「只の道具、というわけか……」

エドモンド「そうだ。世界を掌握するために散っていった、
      実に華々しいじゃないか!」

 シュルルル─ サクサクサクッ─

五右エ門「っ……狂っている」

エドモンド「狂っているのはレナートだ!」


エドモンド「何が神だ、何が最後の審判だ!
      これは世界征服でしかない、『Jesuit』による支配だ!」

エドモンド「これからは私が指揮をとる、
      支配をより強固にするために!」

五右エ門「戯言を……そのようなこと、拙者がさせぬ──!」

五右エ門「でぁッ!」

エドモンド「くはっ……! ぐぅぅ……」

五右エ門「終わりだ」

エドモンド「くっ……ま、待てっ!」

五右エ門「おとなしく斬られよ。
     最早、貴様など救われはしない」

エドモンド「私が、私が先頭に立たなければ、『Jesuit』は──」

 ズバッ─

エドモンド「崩壊し……けい、かく……は……」

 チャキン…

五右エ門「計画は、拙者らが止める」


 ──

不二子「……まだなの、エレナちゃん」

エレナ「……おかしい、アクセスできなくなってる」

ルパン「パスワードを変えられたのか」

エレナ「うん。物量で試してるけど、
    こっちのパソコンが追い付いてない……」

ルパン「早く解除しねえと──」

「手こずっているようだね、エレナ」

エレナ「っ!」ビクッ

ルパン「お出ましか、ついに」

レナート「新しいパターンのセキュリティを作らせておいて、正解だったよ」


 ──

エレナ「パパ……」

レナート「エレナ、私は実に悲しいよ。
     何を吹き込まれたかは分からないが、こんなこと……」

エレナ「違う、わ……」

ルパン「……」

エレナ「こ、これは……」

エレナ「これは、私の意志よ」

レナート「エレナ……」


エレナ「ねえパパ。お願いだから、
    こんなことはもうやめましょう?」

エレナ「……私、パパを裏切ることがすごく怖かった。
    それでも間違ってることに、私は嘘をつけない」

エレナ「知っているから。世界中の声を、聞いてしまったから」

レナート「ただの、虚言さ。
     ネットがすべて正しいわけじゃない。
     エレナを欺こうとしているだけ──」

エレナ「違う、世界中を欺こうとしているのは私たちよ!」

レナート「っ!」


エレナ「人は、言葉を持っている、分かり合えるのよ。
    人種の違う人間同士が、手を取り合える社会は、実現出来つつある」

レナート「……ネットのすべてを見たのなら、何故闇を見ない!?
     これまで人類が起こした戦争、飢餓、謀略。
     エレナはすべてを知っているはずだ!」

エレナ「パパこそ、じゃあなんで光を見ないの?
    もう、争いの時代は過ぎ去ってる。
    人類は過ちを繰り返して、そして学んだわ」

エレナ「かつて踏み荒らされた土地に、
    今は草木がまた生い茂っている」
    
エレナ「それをわざわざ、私たちが纏め上げることなんてない」スッ…

ルパン「お、おいっ」

エレナ「止めないで、ルパン」


 スタ…スタ…

レナート「うっ……」

エレナ「小さな争いは、これからも起こると思う。
    それでも、空と大地と海がある限り、
    自由と希望が私たちを前へ歩ませてくれるわ」

エレナ「だから、もうこんなことは、やめて……お願い」

エレナ「私、パパと二人でいられたら、それだけで、いいから……」

レナート「エ、エレナ……」

ルパン「……」


 ──

レナート「今から、普通の暮らしをしろと言うのか?」

エレナ「そう。静かに、二人で暮らしましょ」

レナート「上の連中が、ただでは済まさない」

エレナ「私がパパのデータを、すべて抹消するわ」

レナート「……」

エレナ「ルパンがね、家をくれたの。ちょっと小さい家だけど、
    目の前には湖があってね。とても綺麗なところ」

エレナ「パパと一緒に、見てみたいな……」

レナート「一緒に……」


レナート「……」

レナート「……エレナ」

エレナ「なに、パパ?」

レナート「お前のことが、大好きだよ」

エレナ「うん……」

 プスッ─

エレナ「──っ、え……?」

ルパン「っ──、エレナ!!」


 ────


銭形「よーし、全員集めたな」

警官隊「負傷者12名、すでに最寄りの病院へ搬送しています」

銭形「ご苦労。残党がいる可能性を考慮して、
   このまま警戒態勢は継続、油断するな」

警官隊「了解!」

「くっ……」

銭形「がーっはっはっは! 
   わしの部隊が本気を出せばこんなもんだい、いっちち……」

警官隊「身体に障りますっ。警部も早く病院へ!」

銭形「そうもいかん。まだルパン達が帰ってきておらんからな……」

銭形(ルパン。早くケリをつけて帰って来い……)

警官隊「っ! 警部、たった今レナート部隊の無線に
    『計画が始まる』といった言葉が!」

銭形「な、なにぃっ!」


 ──

 ─レナートの屋敷 地下研究所 中枢─

エレナ「ぱ、パパ……」ガクッ

ルパン「エレナ──!!」

レナート「ルパン! 近付くなっ……」

ルパン「っ……レナート、てめえ……」

レナート「強制開始プログラムを打った。
     エレナはもう人として目覚めることはない」

不二子「なんてことを……」

レナート「おい、始めるぞ。エレナを連れて行け」

研究員「は、はいっ!」


レナート「ルパン、不二子。君らもついてきたまえ、
     これからが本番だ」

 ガチャッ…ウィィーーン…

ルパン「……おい、なんでエレナの言葉を聞き入れなかった」

レナート「あの子は、悟り切れていないからさ」

ルパン「ちげえな。お前さんは自分の宗教に、娘を殺されたんだ」

レナート「宗教が、私の娘を造らせた」

ルパン「ふざけた野郎だぜ……」

レナート「ふざけてなどいない、それを今から証明する」


 ──

 ─地下研究所 中枢 最深部─

 カチャカチャ…

不二子「……」

ルパン「……」

レナート「余計なことは考えるな。
     この機械からエレナを無理にでも引き剥がせば、
     脳が不完全処理のままになり、脳の構造が壊れる」

ルパン(どうすればいい。どうしたらエレナを──)

研究員「レナート様、準備が整いました」

レナート「よし、分かった」

ルパン「……っ」


レナート「……」

レナート「ルパン。私がこの計画に、
     どれだけの覚悟があるか証明しよう」

レナート「神は存在しない。だから、我々は神を創り出す──!」

ルパン「っ、よせっ!!」

 グサッ─ ブシュウウウーー─…

不二子「きゃああっ!」

レナート「私の死と……引き換えに、な……」ガシッ


 ブシュウウ─… ドクドク…

 タッタッタッ──

ルパン「レナート、おい! 死ぬな!」

レナート「あ……あぁ……」

ルパン「エレナを助ける方法を教えろ、おい!」

レナート「おお、エレナ……」

レナート「これで……君は、真の……女神、に…………」

ルパン「……くそっ」



  <──、─…──DNAヲ照合、クリア─……、──>



不二子「なに、何が起きてるの……!?」

ルパン「っ……!」

ルパン(まさか、レナートの血液が引き金か……!)



 <──……、─血液量、臨界値ヲ突破、クリア──……>



    <──…計画ヲ、発動シマス──………>



 ────



  <…──……計画発動マデ、残リ10分──……>



ルパン「っ……! ……!」カタカタ

次元「ルパンッ! どうなってやがる!」

五右エ門「これは一体……」

研究員「ひ、ひええ!!」ダッ─

ルパン「レナートは死んだ、エレナは……もう目を覚まさない」

次元「……おいおい」


ルパン「何か、何かあるはずだ……!
    計画を止めて、エレナを救う方法が……!」カタカタカタカタ

五右エ門「ルパン、貴様がついていながら何を……!」

不二子「五右エ門、責めないであげて。
    彼女から父親に近付いたの……」

五右エ門「……くっ」

ルパン「……──!!」カタカタ─!

ルパン(エレナ、絶対にこのまま死なせない──!)カタカタ─!!

ルパン「……っ! ……──っ!?」カタカタ─ ピピッ

次元「どうしたルパン!」

不二子「……え、これって」






 ルパン ワタシ エレナ




ルパン「っ、エレナ……?」


 ────


五右エ門「これは、一体……」

次元「パソコン側から、言語を飛ばしてるのか?」


 ケイカク ハジマッタ ト イウコト ハ 
 
 パパ シンダ ノネ 


ルパン「……」


 ノウ ホトンド ツカワレテテ ウマク ツタワラナイ

 ミエテイル カモ ワカラナイ


不二子「見えてる、見えてるわよエレナちゃん!」


 コノ ケイカク トメル ホウホウ ガ

 ミッツ アル


ルパン「っ! それだエレナ!」

次元「もう時間がねえぜ……!」


 ムリヤリ キカイ ヲ ハズス

 ケンキュウシツ ヲ ハカイ スル



 <……──計画発動マデ、残リ7分─…──>



 デモ ワタシ ハ ツギノ ホウホウ

 ニ シテホシイ


ルパン「なんだ、早く言え……!」


 ルパン

 ワタシ ヲ コロシテ


 ────


ルパン「…………」

不二子「……え」


 コロシテ ホシイ ルパン ニ


 アタマ ヲ ウチヌイテ


次元「……五右エ門いいか。俺は向こう、お前はあっちだ」

五右エ門「承知──!」

ルパン「待て、お前ら」

次元「ルパン!!」


 パパ シンジャッタ ワタシ スゴク ツライ


五右エ門「ルパン、何故止める!」

次元「そうだ、考えてる暇なんてねえだろうが!」



 <…──…計画発動マデ、残リ5分……──>




 ケイカク ヲ トメルノ ト

 ソレト パパ ノ トコロ ニ イッテアゲタイ


ルパン「エレナの言葉を、聞いてからだ」

次元「ルパン、てめぇは……!」


 キット サミシガッテル

 ワタシ パパ ト イッショガ イイ


ルパン「……」



 ソレガ ワタシ ノ セイギ



ルパン「……そうか」


ルパン(それが、お前さんの……)

ルパン「……」スッ─

次元「おいルパン!」


 ルパン ト ワタシ デ

 セカイ ヲ スクオウ

 ダカラ オネガイ 


ルパン「……」





 ワタシ ヲ コロシテ






 ────



 ── ─… …… ─ ─……──…


  ─  ─…  ─ …


   ─… ─



 「私が女神ー?」


 「そうだよ、かわいいかわいい女神様さ」


 「じゃあ、いっぱい人を救わないとね!」


 「ははは、いい子だ……それっ」


 「きゃはは、わーいわーい!」


 「でも、一番はやっぱりパパだよ!」


 「えっ?」


 「パパを、エレナがいっちばん幸せにしてあげる!」


 「エレナ……ありがとう」



 ────


 ………───

 ……── 

 …─

 ─PM02:34 フランス 某所 ルパンのアジト─

 ガチャッ…

ルパン「……あ~れ、しばらくは顔ださねえんじゃなかったの?」

次元「……おう、そうだったかな」

ルパン「コーヒー淹れるか?」

次元「いや、いい」


 ──

次元「……」

ルパン「……」

次元「……どうも、未だに納得できねえ」

次元「確かに、世界はこのとおり平和だ。
   だけどな、エレナだって救うことが出来たはずだぜ」

ルパン「五右エ門の野郎、俺まで殺そうとしてたもんなぁ」

次元「ルパン」

ルパン「ああ、すまねぇ」

次元「……お前らしくもねえ。何故、あの子を撃った」

ルパン「……エレナが、そう願ったからさ」

ルパン「あの子は自分の『正義』を、貫き通したんだ。
    俺はただ手伝っただけにすぎねえよ」ガタッ

次元「……おい、どこ行くんだ」

ルパン「ちょっとそこまで」


 ──

 ─PM03:24 同国 パリ とあるカジノ─

ルパン「……」

 ジャラジャラジャラジャラ…

ルパン(世界は、何も変わってない)

ルパン(今までどおり、カジノも経営してる)

ルパン(あれから、五右エ門は日本に帰っちまった。
    何をおもったか、東北地方から全国を行脚してるらしい)

 ジャラジャラジャラジャラ… ガコンッ

ルパン(不二子は、いつの間にかどこかに消えちまった。
    また金を持ってそうな男を引っ掛けてんだろう)

ルパン(それと、ICPOが重い腰あげて、レナートの屋敷を強制捜査。
    とっつぁんたちはお咎めなしだそうだ)

ルパン(まあ、おかげで用意してたらしい『Christianity money』
    は、回収されちまったがな)

ディーラー「お客さん、当たりだよ」

ルパン「ああ……」


 ──

 ─PM06:50 同国 下町の酒屋─

おっちゃん「じゃあ今ツイてんのも、
      まさに女神様の力ってわけだな。シッシッシ」

ルパン「ふっ、かもな」

おっちゃん「おかげでタダ酒飲めてんだから、女神様には感謝しねえと」

ルパン(……エレナは、こうなることを知っていたんだろうか)

ルパン「安い酒ばかりでわりいな、おっちゃん。
    それと、俺の話聞いてくれて」

おっちゃん「楽しいぜ、兄ちゃんの話、シッシッシ。
      まあどこまでが本当の話かは、よく分からねえが」

ルパン「なかなか思い出してくれねえが、この話のきっかけはおっちゃん、
    アンタだったんだぜ」

おっちゃん「そうだったか? 
      まあ俺の話なんざよく信じたもんだ、シッシッシ」

ルパン(どこまで、あの子は想定していたんだろうか)


 ──

 カチッ カチッ ─ボッ

ルパン「……ふぅ」

ルパン「……」

ルパン(……まあ、どうでもいいんだけどよ)

ルパン(どんな事実があったって、俺の考えは変わらない。
    そして、俺は生涯忘れない)

ルパン「……」ボッ…

ルパン「……フランスの夜景も、なかなか綺麗だぜ」

ルパン(たとえ造られた存在でも、彼女は紛れもなく──)

ルパン「──なあ、エレナ」


 ────



   原作 モンキー・パンチ『ルパン三世』



 …………────


 ………───


 ……──


 …─


 ─イタリア 某所 ルパンの元アジト 湖の畔─


「…………よし」


「ルパン、そろそろ行くぞ」


「ああ……」



   Rennert Frois  Elena Frois
     
     Rest in Peace Here 



「……またな、お二人さん」


                     ─おわり─

おしまいです! 長かったですね…
ここまで読んでくれた方に最大の感謝を…
それではまたどこかで乙

さっき書くの忘れてたけど他にもなんか書いてないの?

>>236
昔はちょくちょく書いてました(化物語とかアイマスとか)
一年ぶりでしたが楽しく書けてよかったです

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年02月12日 (金) 19:44:49   ID: cgpaLuit

おい3つ目はどうした

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