エレン「ミカサが地下にやってきた」(19)


*エレンが初めての壁外調査に行く前の話



――旧調査兵団本部――


エレン「地下で寝るってのは寒いな。また今日は一段と冷えるし眠りにくそうだ」ブルッ

エレン「でも仕方ねぇよなぁ」ハァー

ミカサ「めりーくりすます、エレン」ヌッ

エレン「ぬおぁぁぁ!!?」

ミカサ「……ああ、びっくりした」

エレン「びっくりしたのは俺だ!! 何して、いや、なんでここに!?」


ミカサ「ある人に連れてきてもらった。一人しか連れていけないと言われてアルミンが私を、と」

エレン「ある人?」

ミカサ「それはいい。それよりエレン、めりーくりすます」

エレン「めりー? くりすます? なんだそれ」

ミカサ「ハンジさんが昔の書物で見つけたらしい。今日はくりすますと言う日、正確には明日だけどもうすぐ明日だから」

エレン「なるほど、ミカサを連れてきたのはハンジさんか」

ミカサ「はっ!? バレた、何故」

エレン「いや、今名前言っただろ」

ミカサ「……まぁいい。それで、くりすますにはさんたという者が動物の内臓をぶちまけにくる日」

エレン「怖ぇよ!!」


ミカサ「? あ、間違えた。それは黒いさんた。赤いさんたはプレゼントをくれる。
    赤い方が内臓のイメージだったから、つい」

エレン「なんで間違えた! あー、それでそんな赤い服着てるのか。さっきから気になってたけど」

ミカサんた「そう。さんたはこういう格好らしい」

エレン「で、さんたってのは何だ?」

ミカサんた「悪い子には黒いさんた、お仕置きで内臓を撒き散らす。
      良い子には赤いさんたが来る。エレンは良い子なので赤」

エレン「……ガキじゃねぇよ」

ミカサんた「はっ」

エレン「何を思いついたんだ? 嫌な予感しかしねぇけど」


ミカサんた「エレン、ちょっと待ってて。黒い服に着替えてチビの所へ」

エレン「やめろ!! マジでやめろ!!! その呼び方もやめろ!! 兵長には内緒じゃないのか?」

ミカサんた「チッ、そうだった。内臓ぶちまけたいけどエレンがそう言うならやめる」

エレン「本当にやめてくれよ……」

ミカサんた「それにすごく悪い子は連れ去らないといけなかった。それはすごくすごく嫌」

エレン「そういう問題じゃねぇよ」

ミカサんた「赤いさんたはプレゼントをあげるのだけどいきなりだったし私達も訓練なんかで買いにはいけなかった」シュンッ

エレン「……いいよ、プレゼントなんて。俺もあげらんねぇし」

ミカサんた「エレンからは昔とても大きな大事なものを貰った。ので、いい」

エレン「?」


ミカサんた「エレン、あげるものが無いので私をあげる」

エレン「は?」

ミカサんた「好きなように使っていい。なんでもする」

エレン「なんでもするっつったってなぁ。
    もう夜だし、掃除手伝ってもらうのも……そもそもリヴァイ兵長には内緒だから無理だし」

ミカサんた「チビの目を盗んで来ているから夜になった……」

エレン「だから兵長をそう言うのやめろよ」

ミカサんた「…………………………善処する」

エレン「すげぇ渋々だな」

ミカサんた「エレン、何かできることはない? 朝まではここにいれるとハンジさんが言っていた」

エレン「そう言われてもな。もう寝るだけだし」


ミカサんた「こうやって忍び込めるのは今日だけかもしれない……そうしたらなかなか会えなくなる」

エレン「訓練中なんかは会える時もあるだろ」

ミカサんた「索敵の時くらいだけ」

エレン「……頻繁に会わなくてもいいだろ」

ミカサんた「……」シュンッ

エレン「……そんなに落ち込むなよ」

ミカサんた「……エレン、何かできることは?」

エレン「何か……」

ミカサんた「何もせずには帰れない。せっかく来たのに」

エレン「うーん」


ミカサんた「今困っていることはない? 眠れないなら子守唄を歌う」

エレン「だからガキじゃねぇ」

ミカサんた「それなら……ええーっと……」

エレン「あ、そうだ」

ミカサんた「何?」

エレン「今日、寒くてさ。地下だし」

ミカサんた「! わかった」

エレン「話が早いな。上の備品置き場に毛布が――」

ミカサんた「一緒に寝よう」

エレン「はぁ!?」

ミカサんた「寒いのであれば暖かくすればいい。二人で寝れば暖かい」


エレン「え、いや……」

ミカサんた「寒くて眠れない、暖かければ眠れる、違わない?」

エレン「いや、だからも」

ミカサんた「では決定」キッパリ

エレン「…………わかったよ」ハァー

ミカサんた「では、服は脱ぐ?」

エレン「なんでだよ!? 一緒に寝るだけだぞ!」

ミカサんた「遭難した時なんかは素肌で温めあったり」

エレン「お前な、それ服がずぶ濡れか、どっちかが体温低くて死にかけてる時に熱を分け与える方法だろう?
    座学で習ったぞ」

ミカサんた「……覚えてた」


エレン「馬鹿にすんな」

ミカサんた「馬鹿にしたわけではないけれど」

エレン「いい加減寝ようぜ。明日も掃除と訓練があるんだよ」

ミカサんた「わかった。エレン、ずれて」

エレン「ん」ギシッ

ミカサんた「お邪魔します」ギッ

エレン「おぉ、狭いな」

ミカサんた「一人用のベッドだから仕方ない。エレン、もっとこっちに」

エレン「ああ」

ミカサんた「ん」ギュッ

エレン「おい」

ミカサんた「くっつかないと寒い、はみ出る」


エレン「そうだけど」

ミカサんた「これはエレンが望んだこと。エレンもやって」

エレン「望んだかなぁ……?」ギュッ

ミカサんた「ふふっ」

エレン「なんだよ」

ミカサんた「こうしてると昔を思い出す。開拓地にいた頃」

エレン「あぁ……寒い日はアルミンと三人でくっついて眠ったな」

ミカサんた「うん、懐かしい。もっと昔も一緒に眠ったことがある」

エレン「お前が来てすぐくらいだな」

ミカサんた「……一人だと色々考えてしまって」

エレン「……」


ミカサんた「……あったかい」

エレン「ああ」

ミカサんた「しっかり寝ないと明日に響く。寝よう」

エレン「わかってる。おやすみ」

ミカサ「おやすみ、エレン」

エレン「……」…スゥ

ミカサ「……」ジッ

ミカサ(昔、エレンは寒がっていた私にマフラーをくれた)

ミカサ(帰る場所をくれた)

ミカサ(家族をくれた)

ミカサ(友達(アルミン)もできた)


ミカサ(たくさん色々なものをくれた)

ミカサ(だからエレンに私をあげる)

ミカサ(エレンは私の家族)

ミカサ(エレンは私が守る)

ミカサ(絶対に……どんなことをしても)

ミカサ(あなたを守りたい)

ミカサ(だからエレン)

ミカサ(……死なないで)

ミカサ(そばに……いさせて……)ウトウト

ミカサ「」スゥスゥ


エレン「……」

ミカサ「」ツゥー…

エレン(……なんで泣いてんだよ)ゴシッ

ミカサ「」スゥスゥ

エレン「……」

エレン「……」ギュッ

エレン「……あったけぇ」

ミカサ「」スゥスゥ

エレン「……」トロンッ

エレン「」スゥ…




――――――――――――


ハンジ「……寝ちゃった」

リヴァイ「何覗いてんだ」

ハンジ「おぉ、リヴァイ。いや、さすがに何か間違いがあったらまずいかなって」

リヴァイ「夜中に何事かと思えば……」

ハンジ「許してくれてありがとうね」

リヴァイ「……朝まで見張るのか?」

ハンジ「まぁ、念の為ね」

リヴァイ「チッ、なら毛布くらい持ってこい、クソメガネが」バサッ

ハンジ「おわっ!? あはは、ありがとう、リヴァイ」


リヴァイ「二時間交代だ」

ハンジ「!」

リヴァイ「いいな?」

ハンジ「……ふはは、了解だよ」

リヴァイ「……」クルッ

ハンジ「ねぇ、リヴァイ」

リヴァイ「なんだ」

ハンジ「リヴァイの所も赤いサンタだと思うよ?」

リヴァイ「……しっかり見張ってろ」

ハンジ「はいはーい。おやすみ」

リヴァイ「ああ」スタスタ


ハンジ「……」

ハンジ「明日はエレンにこれ(毛布)あげないとね」

ハンジ「二人共、良い夢を」




ミカサ「」スゥスゥ
エレン「」スゥスゥ




おしまい

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