調「お散歩に行こう切ちゃん」切歌「デスデス、デースッ!」【戦姫絶唱シンフォギア】 (67)


調「こっちにおいで」

切歌「デェス」

調「首輪、つけてね」

切歌「デース」

調「それじゃいこっか」

切歌「デスデース」

調「……切ちゃん」

切歌「デース?」

調「……ううん、なんでもないよ」

切歌「デース!」

調「そうだね、お散歩に行くんだった」

切歌「デース!デース!!」

調「ちょっと、いきなり走ったら危ないよ切ちゃん」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1450194198


調(……切ちゃんがこうなったのは魔法少女事変が終わり、やっと普通の女の子としての日常を手にした直後だった)

調(LiNKERが切ちゃんに及ぼした影響は予想以上に大きかったらしい)

調(切ちゃんは私以外の人との意思疎通もままならず、私の手伝いが無ければまともに生活も送れなくなってしまった)

調(司令の好意から今はS.O.N.G.の本部、つまり潜水艦の中の一室に住まわせて貰っている)

調(生活に必要な物は何でも用意して貰えるし艦内の設備は基本的に自由に使える、そして何よりもご飯が美味しい)

調(S.O.N.G.の皆さんには本当に頭が上がらない)

調(本当なら私だけリディアンに残るという話も有ったのだけど、私はそれを辞退して切ちゃんと居ることを選んだ)

調(もし私が居なくなったら切ちゃんの言葉を理解してあげられる人が居なくなってしまうから)

調(それに、どれだけ大変だとしても切ちゃんのお世話は私がこの手でしてあげたい)

調(だって、私は切ちゃんのことが大好きだから)


切歌「デェス……」

調「つかれたの?」

切歌「デス」

調「そっか、じゃあ部屋に戻ろう」

切歌「デスデース」

調「喉が乾いた?ちょっと待って……はい、お水」

切歌「デース!」

調「そんなに慌てて飲んだら……もう、またこぼしてる」

切歌「デ、デース」

調「じーっ」

切歌「デスデスデース……」

調「うん、次から気をつけてね」

切歌「デース」

調(しょんぼりしてる切ちゃん可愛いなぁ)


調「服も濡れちゃったしお風呂に入ろう」

切歌「デス!」

調「明日は響さん達が来てくれるから、しっかり綺麗にしなきゃね」

切歌「デース」

調(明日は誰が来てくれるんだろう)

調(皆忙しくて切ちゃんがこうなってしまってから会うのは初めてだけど、大丈夫かな……)

切歌「デース!デース!」

調「あっ、ごめんね切ちゃん。少し考えこんじゃった」

切歌「デデース!!」

調「うん、準備出来たらお風呂に行こっか」


切歌「デース!!」

調「私が洗ってあげるから、じーっとしてるんだよ?」

切歌「デス」

調「よしよし」

切歌「デース」

調(それにしても……)

ボイーン

調(切ちゃんの胸、前より確実に大きくなっている)

調(それに比べて私は……)

ペターン

調「くっ」

切歌「デス?」

調「何で切ちゃんばっかりッ!」

切歌「デーーース!?」


調「ふう……久しぶりに切ちゃんを思う存分ぷにぷにした気がする」ツヤツヤ

切歌「デェース」ピクピク

調「上せちゃった?」

切歌「デス……」

調「ごめんね切ちゃん、お詫びにぷにぷにしてあげる」

切歌「デスッ!?」

調「ふふ、冗談」

切歌「デース……」

コンコン

調「あ、ご飯かな?」

切歌「デス!」

調「はーい、今開けまーす」


エルフナイン「晩御飯持ってきました!」

調「ありがとうエルフナイン」

エルフナイン「いえいえ、それではボクは仕事が残っているので」

調「ごめんなさい、エルフナインはこんなに働いているのに私は何も……」

エルフナイン「気にしないで下さい、これはボクが好きでやっていることですから」

エルフナイン「それに、調さんは調さんにしか出来ないことをしっかりやっているじゃないですか」

調「私にしか出来ないこと?」

エルフナイン「はい、切歌さんと一緒に居るのは調さんにしか出来ないことだとボクは思います」

調「……!」

エルフナイン「では行きますね、また明日朝食を持ってきます」

調「待って」

エルフナイン「どうかしましたか?」

調「ありがとう気付かせてくれて、私は私にしか出来ないことを頑張る」

エルフナイン「はい!」


調「お待たせ切ちゃん」

切歌「デスデス」

調「それじゃあ手を合わせて」

切歌「デス!」

調「いただきます」

切歌「デデデデデス」

調「はい、あーん」

切歌「デース」

調「美味しい?」

切歌「デス!デスデス!」

調「それは良かった。たくさん食べてね」

切歌「デースデース!」

調「あ、口元に付いてるよ」

切歌「デス?」

調「取ってあげるから動かないでね」ヒョイパク

調「うん、美味しい」


調「ふぁあ……お腹いっぱい食べて眠くなってきちゃった」

切歌「デデース……」

調「切ちゃんも眠い?」

切歌「デス」

調「それならもう電気消して寝よっか」

切歌「デース」

調「切ちゃんは先にベッドに行ってて、私もすぐに行くから」

切歌「デス!」


調「部屋を片付けて電気を消して、と」

調「きーりちゃんっ」

切歌「デスッ!?」

調「切ちゃんあったかい」

切歌「デース」

調「抱きつかないでって?」

切歌「デスデスデス」

調「今日は切ちゃんとくっついてたい気分……ダメ?」

切歌「デデス」

調「ふふ、ありがとう」

切歌「デデデスデース」

調「うん、おやすみ切ちゃん」

つづく


調「ふあ……おはよう切ちゃん」

切歌「デェエス」

調「まだ眠い?」

切歌「デスデース」

調「今日は響さん達が来てくれるんだからちゃんと起きないと」

切歌「デース?」

調「寝惚けたフリしてもダメ」

切歌「デースデース」

調「さ、着替えて朝ご飯食べるよ」

切歌「デス……」


響「おっはよう!調ちゃん切歌ちゃん!」

未来「二人とも久しぶり」

調「いらっしゃい……えっと、今日は二人で?」

未来「うん、私と響だけだよ」

調「そう、ですか」

響「あれ、切歌ちゃんは?」

調「切ちゃんならそこに……って、何でそんなところに隠れているの?」

切歌「デ、デェス……」

調「切ちゃん?」


響「きーりかちゃん!」

切歌「デスッ!?」

未来「何したの響」

響「うぇっ!?私は何も……」

調「どうしたの切ちゃん、響さんだよ?」

切歌「デースデース……」

調「……それ、本当に?」

切歌「デス」

調「嘘……」

未来「調ちゃん?」

響「私何か悪いことしちゃったかな」

調「響さんは悪くありません、ただ……」

響「ただ?」

調「響さん達のこと、わからなくなってしまったみたいで」


響「……そっか」

未来「響……」

響「私はへいき、それより切歌ちゃん」

切歌「デ、デス?」

響「私のこと忘れちゃったなら、また私と友達になり直そうよ!」

切歌「デス……」

調「大丈夫だよ、切ちゃん」


切歌「デス、デスデース」

響「ありがとっ、切歌ちゃん!」

調「切ちゃんの言葉、分かるんですか?」

響「はっきり分かる訳じゃないけど、何となくかな」

切歌「デスデス」

響「じゃあ私と遊ぼう!」

切歌「デス!」

未来「大丈夫なの?」

響「うん、それじゃちょっと艦内で遊んでくるね」

切歌「デース」

調「い、行ってらっしゃい」

響「行ってきまーす!」

バタン


未来「行っちゃった」

調「響さんはやっぱり凄いですね」

未来「本当に……それより調ちゃん、大丈夫?」

調「何がですか?」

未来「切歌ちゃんのことで無理してないかなって」

調「それは……」

未来「何かあったら、私達のこと頼ってくれて良いんだよ」

調「わかりました、でも今はまだ大丈夫です」

未来「そっか、それなら良かった」


未来「それと、クリスを連れて来てあげられなくてごめんね」

調「そんなこと謝らなくても」

未来「だって調ちゃんが一番来て欲しかったのはクリスでしょう?」

調「そうですけど……」

未来「クリスもまだ自分の中で整理が付いていないみたいだから、もう少し待ってあげて」

調「わかりました」

調「でも、今日クリス先輩が来なくて良かったのかも」

未来「え?」

調「もし切ちゃんがクリス先輩のことも覚えてなかったら、きっと悲しむと思うから」

未来「……そうだね」


バタバタッ


調「何の音……?」

未来「響が艦内で暴れてるのかしら、戻ってきたらしっかり言って聞かせ」


バンッ


響「はぁっ……はぁっ……」

未来「ちょっと響!って、そんな慌ててどうしたの……?」

響「未来ッ!調ちゃんッ!」

響「切歌ちゃんが……切歌ちゃんがッ!」

調「え……?」

つづく


ガラッ


弦十郎「調君ッ!切歌君の容体は!?」

調「あ……」

響「それは私が」

弦十郎「響君、来ていたのか」

響「はい。切歌ちゃん、私と遊んでいる最中に突然倒れてしまって」

弦十郎「そうだったか……エルフナイン君は何か?」

響「いえ、エルフナインちゃんにも分からないみたいで……一先ずは絶対安静だそうです」

弦十郎「むう……俺達が居ながらこんなことになってしまって本当に済まない」

響「そんな、師匠のせいじゃあ」

弦十郎「いや、俺は大人だ。君達の身を預かっている以上この事態の責任の一旦は俺にもある」

弦十郎「本当なら付いていてやりたい所だがもう行かねばならん。もし何か有れば連絡をくれ」

響「はい、わかりましたッ!」

弦十郎「調君。俺でも響君でも未来君でも良い、辛かったら誰かを頼るんだぞ」

調「……はい」

弦十郎「翼とマリア君には俺から連絡しておくから心配は不要だ、それじゃあ俺はもう行くからお前たちも程々で休め」


バンッ


クリス「おいッ!あいつは……ッ!?」

弦十郎「む……クリス君か」

クリス「おっさん……」

弦十郎「俺はもう出る」

クリス「あ、ああ」

響「あーっはは、私も少し外に出てるね」

未来「私も出てるから、クリスはゆっくりしてね」

クリス「……」

調「クリス先輩」

クリス「あいつは……?」

調「意識を失って眠ってます」

クリス「そうか……」

調「えっと」

クリス「悪い、ちょっとあいつと二人にしてくんねえか」

調「……はい」


ガラッ


クリス「……」

クリス「なあ、起きてくれよ」

クリス「何でだよ、何でこんな」

クリス「あたしが……あたしが弱かったからか?」

クリス「もしもあたしがもっと強ければ、こんなことにはならなかったのか……?」

クリス「そうだよ、あたしのせいだ……」

クリス「ごめんな……先輩なのにッ、何もしてやれなくて……」

クリス「お前が治るなら何だってする、あたしが代わりになったっていい」

クリス「だから、目を開けてくれよ」

クリス「切歌ぁ……」


調(クリス先輩、泣いてた……)

調(当たり前だ、だって切ちゃんはもう……)

調(私、どうすれば良いのかな)

調(マム……マリア……)


ギュッ


調「え……?」

響「調ちゃんっ」

調「響さん……」

響「泣いて良いんだよ」

調「でも……ッ」

響「無理しないで」

調「私、私……!」

響「つらかったよね、ずっと一人で頑張ってきたんだもんね」

調「うっ、うぅっ……」

響「よしよし」


調(それから私達は日が暮れるまで切ちゃんに付き添っていたけど、切ちゃんが目覚めることは無かった)

調(そして夜、帰ってきた司令に呼ばれて私達は艦内の一室に集められた)


弦十郎「よし、全員集まっているな」

弦十郎「これから話すのは切歌君についてだ、と言っても俺もまだ詳しい話は聞いていない」

弦十郎「ここからはエルフナイン君、頼めるか?」

エルフナイン「はい」

エルフナイン「まず切歌さんの現在の容体ですが、検査の結果どこにも異常は見られませんでした」

クリス「異常が無かった?」

エルフナイン「そうです、最初に症状が現れた時から体に関しては健康体そのもので今もそれは変わっていません」

クリス「じゃあ何であいつは寝てやがんだよ!?」

響「く、クリスちゃん落ち着いてッ」

クリス「これが落ち着いていられるかッ!」

未来「これから説明してくれるわ、そうでしょエルフナイン」

エルフナイン「はい」

未来「ね?」

クリス「……わかった、続けてくれ」


エルフナイン「それでは説明を続けます」

エルフナイン「体に異常が見受けられなかった為、ボク達は切歌さんの症状の原因はLiNKERの副作用なのでは無いかと考えました」

エルフナイン「ですがそれは間違いでした」

エルフナイン「何故そう判断したか、その理由は二つ有ります」

エルフナイン「一つ目の理由は解毒剤が効かなかったことです」

エルフナイン「ウェル博士の残したデータを解析して得た物の中に有ったLiNKERの製法とその解毒剤の情報」

エルフナイン「切歌さんには最初に異常が見られた時からそれを元に作った薬を投与していました」

エルフナイン「ボク達はこれで症状の進行は止まり、上手く行けば回復に向かうと考えていたのですが」

未来「効果は無かった……」

エルフナイン「はい、回復どころか症状が悪化。昏睡状態になってしまいました」

エルフナイン「そしてもう一つの理由は調さんです」

調「私……?」

エルフナイン「はい、調さんは切歌さんとほとんど同じタイミングで同じ量のLiNKERを使用しています」

エルフナイン「切歌さんがここまで深刻な症状が出ているのに調さんにはその予兆が見られない」

エルフナイン「このことから切歌さんの症状はLiNKERに依るものでは無い可能性が高いと判断しました」


弦十郎「ふむ……それで、LiNKERの影響で無いとしたら一体何の影響だと言うんだ?」

エルフナイン「切歌さんは倒れる直前、再開した響さんと未来さんのことを覚えていなかったそうです」

エルフナイン「覚えていない……つまり『想い出』が失われている」

エルフナイン「この症状について、ボクには一つ心当たりが有ります」

エルフナイン「皆さんも良く知っている、錬金術士キャロルの……」

弦十郎「『想い出の焼却』だとォッ!?」

エルフナイン「焼却という訳では無くとも想い出に何らかの欠損が起きてそのショックで言葉を、そして意識を失ったという可能性は考えられます」

クリス「待てよ、その『想い出の焼却』ってのは錬金術士のお家芸ってんだろ?それが何であいつに起こるんだ」

エルフナイン「シンフォギアシステムと錬金術は確かに異なった技術体系ですがそのエネルギーの行使という点については似通った部分が有ります」

エルフナイン「例えばシンフォギアの起動に必要な聖詠」

エルフナイン「これは適合性のある人間が波動と放つ強い想いにシンフォギアシステムのコアが共振・共鳴して想いの送り主の胸に反響されるコマンドワードです」

エルフナイン「身に纏う者の感情や想いを力へと変えるシステムが逆に身に纏う者へと影響を及ぼすということは十分に考えられます」

エルフナイン「そして切歌さんの纏うギアは女神ザババが振るったとされる二刃の片割れであるイガリマ」

エルフナイン「魂を切り刻む翠の大鎌はそれを手に持つ者の魂にも負荷を与えていたのかもしれません」


調「そんな……」

弦十郎「治す方法はあるのか?」

エルフナイン「……仮に切歌さんの今の状態が想い出の欠損による物ならば一つ方法はあります」

エルフナイン「シンフォギアシステムにキャロルの用いた錬金術を組み込み、付与された想い出の供給機能で切歌さんの欠損した想い出を修復する」

クリス「それならイチイバルを使え、あたしがやるッ!」

エルフナイン「いえ、クリスさんでは駄目です」

クリス「何だと?」

エルフナイン「切歌さんの欠損した想い出がいつの物か分からない以上、切歌さんと一番長い時間を過ごしていてギアの親和性も高い調さんが適任です」

エルフナイン「その調さんでも成功の可能性は極めて低く、失敗すれば調さんの想い出が失われかねません」

弦十郎「他に方法は無いのか」

エルフナイン「考えては居るんですがまだ……」


調「……」

響「調ちゃん?」

調「もし私がやらなかったら切ちゃんはどうなるの?」

エルフナイン「他の方法が見つかるまでは……」

調「その方法を実行するとしたらいつ?」

エルフナイン「徹夜でギアの改修をして明日の朝に実行するのが一番ですけど」

調「……わかった、じゃあこのギアを」

エルフナイン「これはシュルシャガナの……待ってください調さん、本当に成功率は低くて、それにそもそも仮定が正しければの話でそれがどうかも……ッ」

調「わかってる。だけど切ちゃんを助けるにはそれを成功させるしかない」

エルフナイン「調さん……」

調「もしやらなかったら、きっと一生後悔すると思う」

調「成功する可能性は低いかもしれない、だけどそれが私にしか出来ないことなら私はやりたい」

エルフナイン「……わかりました、ボクも全力でギアの改修に臨みます」

調「ありがとう」


調(必ず成功させて見せる。だから待ってて、切ちゃん)

つづく


調(一晩、か)

調(部屋に戻ってきたけど手持ち無沙汰だ、かと言って眠る気分にもなれないし)

調(……やけに部屋が広く感じるなあ)


コンコン


調「どうぞ」


ガチャ


弦十郎「調君、少し良いか」

調「司令……」

弦十郎「こんなことになってしまって本当にすまない」

調「謝らないで下さい、自分で決めたことですから」

弦十郎「……君は強いな」

調「命懸けの戦いは、何度もしてきましたから」

弦十郎「そうだったな」

調「司令」

弦十郎「何かね?」

調「私、絶対切ちゃんを助けて見せますから」

弦十郎「……ああ」

調「少し外の空気を吸ってきます」


ガチャ


弦十郎「俺は大人だというのにただ祈ることしか出来ないのかッ」

弦十郎「頼む、生きてくれ調君……ッ」


調(久しぶりに潜水艦の外に出た気がする)

調(あのベンチに座っているのは……)


調「クリス先輩」

クリス「……ッ!」

調「隣、良いですか?」

クリス「……おう」

調「泣いてたんですか?」

クリス「バッ……泣いてなんかねえ!目にゴミが入っただけだッ!」

調「ふふ、そうですか」

クリス「ああそうだ!」

クリス「……ごめんな、何もしてやれない駄目な先輩で」

調「そんなことないッ」

調「クリス先輩はもう沢山私達を救ってくれた」

調「私は、クリス先輩が居てくれるだけで……ッ」

クリス「お前……」



ガシッ


クリス「へっ?」


ギュー


クリス「なっ、お前何してんだ!?離せッ!」

調「離さない」

クリス「なにぃ!?」

調「駄目な先輩って言ったこと、撤回するまで離さない」

クリス「うぐっ……」

クリス「……ったく、わかった。あたしが悪かったよ」

調「うん」

クリス「おい、もう良いだろ」

調「……残念」

クリス「なーにが残念だ」

調「クリス先輩、あったかかった」

クリス「ばーか、お前が冷たすぎんだよ」

調「そうかも、ふふっ」

クリス「明日、必ず生きて帰ってこいよ……調」ボソ

調「えっ、今……」

クリス「あーあー!聞こえない聞こえない!」

クリス「あたしはもう部屋で寝るからな!お前も早く休むんだぞ!じゃあな!」


ダッ


調「行っちゃった」

調「さっき小声で言ったのって……そう、だよね」


調(そろそろ自分の部屋に戻ろう)


ガチャ


調「あ」

響「おかえり調ちゃん」

未来「遅いから心配したわ」

調「二人とも来てたんですか」

響「うん、司令と入れ替わりでね」

未来「外に行ったって聞いたから待ってたの」

調「ありがとうございます、私の為に」

響「いいのいいの、それより調ちゃん思ったより元気そうだね」

未来「そうね、心配だったけれど大丈夫そうで何よりだわ」

調「さっきまでクリス先輩と話していたので」

響「そっかあ、クリスちゃんと……クリスちゃんは?」

調「寝るって言って先に戻りました」

未来「私達は艦内の部屋を貸してもらってるからきっとそこね」


響「ふあぁ……話してたら眠くなって来ちゃった」

調「遅くまで付き合って貰ってありがとうございます」

響「大丈夫大丈夫、私はへーきへっちゃら」

未来「私達もそろそろ寝ましょうか……調ちゃん、一人で寝れる?」

調「いえ……でも今晩は起きていようかと思って」

未来「駄目よ、明日に備えてしっかり眠らないと」

調「でも」

響「それじゃ三人で寝よっ!」

調「三人で?」

響「そうそう、調ちゃんが真ん中ね」

調「えっ、ちょっ……?」



調(結局私は響さんと未来さんにされるがままにベッドに連れて行かれた)

調(両隣には響さんと未来さんが寝ている)

調(二人の間はとても暖かくて、安心出来て)

調(まるで陽だまりに居るような気がした)

調(そうして私は二人の優しさに包まれたまま眠りに落ちた)


調「ん……朝……?」

響「あ、おはよう調ちゃん」

未来「よく眠れた?」

調「おかげ様で」

未来「本当?それは良かったわ」

響「それじゃ朝ご飯食べて支度したらエルフナインちゃんの所にいこっか」

調「はい」


エルフナイン「おはようございます皆さん」

響「おはようエルフナインちゃん」

未来「おはよう」

エルフナイン「調さんは……」

調「エルフナイン、準備はできてる?」

エルフナイン「はい、ボクに出来る限りを尽くしました」

調「そう……ありがとう」

エルフナイン「お礼は全てが無事終わった後に」

調「そうだね」

エルフナイン「こちらが改修したシュルシャガナになります」

調「うん」

エルフナイン「準備は良いですか?」

調「大丈夫」

弦十郎「響君と未来君はこちらに」

響「わかりましたッ」

クリス「……頼む、あいつをッ」

未来「クリス……」



エルフナイン「では始めます、まずはギアを起動して下さい」

調「ん……」

調「Various shul shagana tron……」


カッ


調「よし」

エルフナイン「ギアの装着には成功ですね」

調「ここからどうすれば?」

エルフナイン「今回は想い出の供給機能で調さんの持つ想い出を切歌さんと共有することで破損した切歌さんの想い出の修復を働きかけます」

エルフナイン「システムは自動化してギアに搭載済みなので調さんは想い出の共有が開始したら自分の想い出を失わないよう守ることに意識を集中して下さい」

調「了解、それで想い出の共有の仕方は?」

エルフナイン「粘膜接触、つまりキスをすることで想い出の授受が可能です」

調「キス……」

クリス「なっ、そんなことすんのか!?」

未来「……!」

響「何だか今背筋がブルッと来たような……?」

エルフナイン「心の準備が出来たら始めて下さい」

調「……わかった」


調(キスするんだ……)

調(……私も初めてだし、切ちゃんも許してくれるよね)


調「行きます」


調(切ちゃんの顔、こんなに近いの初めてかも……)

調(少し、ドキドキする)

調(って、そんなことしてる場合じゃない。ここは一気に……!)



チュッ



調(なに、これ……)

調(何かが混ざって……)

調(この、雑音だらけの想い出が切ちゃんの……?)

調(……ッ!)

調(駄目、飲み込まれる……)

調(意識が……薄れて……)

調(切ちゃん……ッ)



――べ

調(こえ……?)

――らべ、調!

調(この声って)

――何で来たデスか!?

調(切ちゃん)

――今すぐ止めるデス、あたしはもう

調(いやだ)

――何で分からないデスか!?このままじゃ調が!

調(分からない、だって私は切ちゃんのことが大好きだからッ)

――そんなのあたしだって同じデスッ!だけどこのままじゃ二人共……

調(二人共、助かるのッ)

――調……

調(愛してるよ、切ちゃん)

――あたしも愛してるデス、調


クリス「おいどうなってんだ、二人共動かねえぞ」

エルフナイン「ボクにもどうなっているかはわかりません、調さんにしか……」

弦十郎「待て、何か光っているぞ?」

未来「あれって……」

響「切歌ちゃんの、イガリマ」

エルフナイン「ギアが、共鳴した……ッ!?」


カッ


響「光がっ!?」

クリス「眩しくて何も見えねえッ」


調「ぷはっ」

響「調ちゃん!」

調「私、ギアが解除されて……?」

弦十郎「無事なのか調君!?」

調「無事、みたい……」

クリス「よ、良かった……」

未来「待って、切歌ちゃんは?」

切歌「ううん……皆……?」

調「……切ちゃんッ!」

切歌「うごっ!?調、重っ……」

調「良かった、良かったぁッ」

エルフナイン「成功、した……奇跡だ……」


調「うぅっ、本当に……っ」

切歌「調、泣いてるデスか?」

調「当たり前でしょっ!?」

切歌「そうデスね……」

響「でも切歌ちゃんが元に戻って本当に良かったよ」

切歌「あー、あの時は忘れちゃっててごめんなさいデス……」

響「うぇっ、覚えてるの?」

切歌「はい!調がずっと一緒に居てくれたこともクリス先輩があたしの名前を呼んでくれたことも」

未来「クリス、本当なの?」

クリス「はぁ!?ゆ、夢でも見てたんじゃっ」

調「私も名前で呼んでもらった」

クリス「お前ッ!」

響「ええええ!?!?ズルいよクリスちゃん!私まだ名前で呼んで貰ってないのにいいい!!!」

クリス「うるさいこの馬鹿!って何だ!?近づいてくんな!?」

響「私も!私も響って呼んでえ!!」

クリス「こ、断るッ!」

響「何で!?」


エルフナイン「賑やかですね」

弦十郎「いつも通り、だな」

未来「あの子達は本当に……」


ギャーギャー

ワーワー


未来「あっ、クリスがやられた……」

エルフナイン「……そう言えばマリアさんと翼さんに連絡は?」

弦十郎「ああ、あいつらなら確か今日帰れるって言ってたな。確かもうそろそろ」


ハァ゙ンッ


マリア「切歌!?切歌はまだ生きてる!?!?」

翼「暁ィ!無事かッ!!」


切歌「あ」

調「あ」

響「あ」

マリア「へっ?」

切歌「マリア!久しぶりデース!」

調「おかえりなさいマリア」

マリア「これはいったい……?」

翼「暁は意識不明だったんじゃ?」

響「さっき回復したんです!」

マリア「なっ、どうやって!?」

切歌「へへ」

調「ふふ」

調&切歌「愛、だよ(デース!)」キリッ


マリア「何故そこで愛ッ!?」




おわり

という訳でこれにて完結です
最近シンフォギアSSを見かけるようになって自分も書いてみることにしました
初SSなので拙い部分も有ったかと思いますがここまで読んでいただきありがとうございます
ギャグにするつもりが気付けばシリアスっぽくなっていたので次書く機会があればもっと明るいSSにしたい
シンフォギアは本当に好きなのでシンフォギアSSはもっと増えて欲しいデース!

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom