夾竹桃「…………」 (16)

「だめ……ですの……」

「だめじゃないくせに……ほら」

「あっ」

彼女の細くて長い、綺麗な指が胸の先端をネグリジェ越しに摘まんだ。
その感覚に思わず体を丸めてしまう。
後ろから私を抱きかかえていた彼女は、離れた私の体を引き寄せる。
首のあたりに豊満な胸が押し当てられる。

「身体はちっちゃいのにね、おっぱいはこんなにいやらしい」

「い、いやらしくなんて……んっ」

言葉で煽りながら、彼女は私の胸を弄り続けた。
相手の愛撫に反応しながら嫌がるそぶりをする。
この手の輩の支配欲を駆り立てるための振る舞いだ。
相手の欲望を満たすために弄ばれるのも、欠かすことのできない戦術の1つ。

理性ではそう理解していた。
身体もそのために問題なく機能している。
でも、ひとつだけ考えないようにしていたこと、それが頭から離れない。
今だけは忘れようと思っても、無理だった。
心がずっとキリキリと痛み続けている。
私の唯一無二の、アミカのことを思って。


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◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


相手は違法な薬物取引を行っている犯罪組織。
諜報科による捜査では全貌がつかめなかったため、CVRに依頼が回ってきた。
ターゲットは犯罪組織の女性幹部。
人身売買で手に入れた少女たちを侍らせている、という情報が得られたため、
Ⅱ種から私が派遣されることとなった。
この任務が成功すれば、薬物のみならず、人身売買のルートも芋づる式に潰す
ことができる。
何としても成功させなければならなかった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


潜入開始前日、ライカお姉さまとデートをすることにした。
デートの約束をする際に、しばらく会えなくなることを告げると
お姉さまはとても寂しそうな顔をした。
私のことでお姉さまが寂しがってくれている――
お姉さまを寂しがらせてしまうという負い目を感じながらも、お姉さまに
そこまで想われていることに対する、暗い悦びも同時に湧き出てきた。
それでもすぐに「じゃあその分たくさん楽しいことしような」と、笑ってくれた
お姉さまに、私の心は明るくなった。

デートはとても楽しかった。
2人で可愛い服を見て、おいしいランチを食べ、気持ちのいい風の吹く公園で
寄り添いながらおしゃべりをして。
できることならずっとこのまま一緒にいたいと思った。
それでも時は過ぎてゆき、お別れの時間になってしまった。

「なぁ……その……無理、すんなよ」

「大丈夫ですの、必ず無事に任務を終えて帰ってきますから」

「そうだな、そしたらまた……」

「はい! 一緒にデートしましょう」

顔を赤くして、照れくさそうに笑うお姉さま。
その様子を見ているとこみあげてくるものがあり、思わず抱き着いて
しまいそうになる。
けれど、一度抱き着いてしまったらもう離れられそうにない。
動き出しそうになる衝動をぐっとこらえて、私は笑顔で別れを告げた。
そうして私たちはそれぞれの帰路についた。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


ターゲットの女性幹部は、人身売買組織から購入する以外に、自ら少女を
誘拐することもあった。
私はターゲットがオーナーをしている店のある繁華街で、行く当てもなく
ぶらつく少女を演じ、ターゲットから声をかけられるのを待つ手はずだった。
CVRでは、初めの一瞬で対象の目を引き付けるための訓練も行われる。
思わず目を奪われてしまう、そんな存在になりきるのだ。
ターゲットに関しては、可能な限りの情報を集めており、私はそれを綿密に分析し、
彼女の好みの人物像を作り上げた。
諜報科から、ターゲットがもうすぐ店に到着するという連絡が入る。
それからすぐに、黒塗りの高級車が店の前に停車する。
私はターゲットの目に留まるよう、車と店の間を横切るようにして、通り過ぎる。
これで視界に入っていれば、向こうから声がかけられる可能性は高い。
案の定、すぐに後ろから「暇そうね」と声がかけられる。
掛かった。
心の中でガッツポーズをしながら、けだるげな動作で振り返る。

「なんですの?」

「一人? こんなところでうろついてると危ないわよ」

ダークスーツを身にまとった女が立っていた。
資料で目にしたターゲットと同一人物であることは間違いない。

「放っておいてください、別に心配いりませんの」

「そうもいかないわ、この辺は治安が悪いし、それに」

そう言って彼女は私に近寄ってくる。
私の顔を覗き込むように、少しかがんで目線を合わせてくる。

「こんなに可愛いと、悪い男に目をつけられちゃうわよ」

悪い女にもですわね、と心の中で返す。
私は少し訝しげな表情で彼女を見返した。

「ねぇ、少し私とお話ししない?」

「怪しい大人には着いて行ってはいけないといわれてますの」

「ふふ、確かに怪しいわね」

そう言いながらも、彼女の手はさりげなく私の肩に添えられる。
CVRでは、相手のしぐさから心を読む術が教えられる。
彼女の指先、その動作の1つ1つから、抑え込まれた情欲が感じられる。
背筋に寒いものが走ったのを悟られないよう、うっとおしそうなそぶりを見せる。

「そうね、すぐそこにおいしいケーキ屋さんがあるの。お姉さんと
 一緒に少しお茶でもどうかしら」

少し逡巡するように押し黙る。
すると彼女は、もう少し押せば落ちると見たのか、さらに追撃をかけてきた。

「もちろんお金はいらないし、暇つぶしに付き合ってくれるお礼も用意するから」

私は渋々、といった体で彼女に促されながら、近くのケーキ屋に入っていった。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


淡い夕日のような明かりが瞼越しに差し込んでいる。
ゆっくりと瞼を開けると、見覚えのない天井が目に映った。
頭に霞がかかったようで、思考がはっきりと定まらない。
ああ、これは睡眠薬を摂取した時の目覚め方だ、とぼんやり考える。
寝返りを打って、今まで背中側にあった柔らかな感触に顔をうずめる。
首を動かして周りを確認する。
どうやら私はベッドの上にいるようだ。
だんだんと頭がはっきりしてくる。
私はターゲットとケーキを食べている途中に睡眠薬を盛られ、そのまま
気を失ってしまったのだ。
薬が盛られたことは分かったし、こうなることも予想できていた。
口の中に仕込んでいた発信機は発見されなかったようだ。
よく見ると、手持ちの荷物もサイドテーブルに置いてある。
中身を確認すると、何も取られてはいないようだった。
最も、中身を見られて身元がばれる危険性のあるものは入れられなかったため
大して役に立たないものしか入ってはいないのだが。
今のところ、潜入捜査は順調だといえる。
潜入には成功、次はターゲットに取り入り、そして情報を集めることになる。
しばらくここで待っていれば彼女は現れるだろう。
ここからがCVRの腕の見せ所だ。
うまくいけば貴重な情報を得ることができ、大規模な薬物流通ルートを潰すことができる。
失敗した場合は……あまり考えたくはない。
敵の奥深くに潜り込めば潜り込むほど、作戦が失敗した際のリスクは大きい。
逃げ出せる確率は低く、捕まった場合待っているのは死か、死よりも残酷な
目にあわされる。
それだけに、ここから先の作戦行動には、より一層の綿密さが求められる。
失敗するわけにはいかない。
作戦を成功させ、絶対にお姉さまのもとへ帰らなければいけないのだから。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「あら、もう目が覚めたのね」

しばらくするとターゲットが姿を現した。
先ほどとは異なり、ネグリジェのみを身にまとった煽情的な装いだ。

「ここはどこですの」

「私の家よ、疲れて寝てしまっていたみたいだから連れてきたの」

「……帰ります」

「あら、もう少しゆっくりしていってもいいでしょ?」

彼女はベッドに腰掛けると、私のほうへゆっくりとすり寄ってくる。
思ったより早く“する”ことになってしまいそうだ。
そういうことになるとは思っていた。私はインターンとはいえCVRの生徒だ。
しかし、実際に直面してみると心に鋭い痛みを感じる。
分かっている。これはお姉様に対する罪悪感だ。
きっと彼女のことだ。私の今の状況を知ってしまったら泣いてしまうに違いない。
だけどここで退くわけにはいかない。私たちはそういう存在で、これはそういう任務だ。
そっと肩を抱いてくる感触に、私は今だけ、お姉様のことを忘れることにした。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「うっ、やっあっあっ!……ぁ……は……はぁ……」

今のでもう4回目だった。
想像以上のテクニックに翻弄され続けてしまった。
しかし、ターゲットはまだ満足していない。
なんとかこちらのペースに持っていこうと試みたが、彼女はまるで私のその態度を
楽しんでいるかのようだった。
私が呼吸を乱していると、急に彼女は立ち上がり、クローゼットの方へ歩いて行った。
何かを取り出しているようだ。
何か道具を使ったプレイをするつもりだろうか。
傷が残るようなものだけは、何とか回避しなければ。
そう思いながら彼女の行動を注視していると、何かを持った彼女がこちらを向いた。
その手に握られたものを見て、一瞬で身体が凍り付いた。
無針注射器だ。
彼女たちの組織が主な収入源にしているもの、今のこの状況。
考えなくてもわかることだった。

「い、いや……ですの……」

「あら、察しがいいのね」

「や、やめてください……」

「大丈夫、普通じゃ絶対味わえない快楽を味わえる、それだけよ」

そう言いながらこちらへ近づいてくる。
私はただ、ベッドの隅で身を縮めることしかできなかった。

「ほら、いい子ね」

背が高く、スレンダーな体つきの女性だ。体格差がありすぎる。
それに、下手に暴力で逃れようとしても、ここから生きては出られないだろう。
ならばここは説得するしかない。

「わ、私ならそんなものを使わなくても……」

「それにね……試してみたいのよ」

間近に迫った彼女の顔には、淫靡で狡猾な表情が浮かべられていた。

「な、にを」

「CVRで教練を受けた人間を、この薬でどこまで堕とせるかどうか」

心臓が止まったかと思った。
初めからばれていたのだ。
なんで?
どこから?
どの段階で?
様々な疑問が脳裏を駆け巡り、私はフリーズしてしまった。
その瞬間、左腕を捕まれ、二の腕にインジェクターが押し当てられる。

「あっ」

気が付いた時にはもう遅かった。
既に中の液体はすべて私の体内に注入されてしまっていた。

血の気が引く。
顔が真っ青になるのが分かる。
しかし次の瞬間、青かった顔が急に火照ってきた。
熱い。
呼吸が荒くなってくる。
自分の体の急激な変化に、思考が付いていかない。
そして、私の胸元に近づく彼女の手にも、気が付かなかった。

「っい!?」

左胸から脊髄を駆け上がり、脳を痺れさせるような衝撃を感じた。
何が起こったのかわからない。
私は座った状態のまま、体を硬直させた。

「ぅ……ぁ……」

「どう? すっごくキくでしょ」

「い、ゃ……やめて……」

「あぁ……たまんないぃ……最高に可愛いわ」

彼女は恍惚の表情を浮かべて、私のことをねっとりとした視線で舐めるように見つめる。
私は先ほどの衝撃の余韻で、いまだに指一本自由に動かせなかった。

「まずはこのいやらしいおっぱいを堪能しましょうか」

「いやぁ……」

彼女の両手が私を押し倒し、そのまま胸を揉みしだく。
先ほどとは比べ物にならない衝撃が、脳を焦がしていくのが分かる。
もう、今の自分が何なのか、何もわからなかった。

「うぁ! いやっ、ひぎっ! あぁ!!」

「今は捜査のことも何もかも忘れて、たくさん快楽を味わってね」

「いぃっ! ああああぁぁあ!!」

「たくさん味わって、全部飲み干して……難しいお話はそれからしましょう?」

彼女が何を言っているのか、理解することができない。
ただ、この狂おしい快楽をひたすら受け止め続けることしか、私にはできなかった。

ビリビリビリィ!

理子「ええぇっ!?」

夾竹桃「却下」ポイッ

理子「なんで!? 最高のシチュエーションじゃん!」

夾竹桃「女同士の友情を弄んだ末のバッドエンドなんてもってのほかよ」

理子「まだ最後までプロット読んでないでしょ!?」

夾竹桃「じゃあこのあとどうなるのか口頭で説明してもらえるかしら」

理子「任務を続行しようとする麒麟だったが、一度知ったキメセクの味を忘れられずに、
正体がばれたことを明かさないまま潜入を続ける。だんだんと女幹部に調教されていく
ことを自覚しながら、それでも学校に報告することはできないでいた。そして麒麟に
よってもたらされた情報をもとに、アサルトによる突入作戦が行われることになる。
突入班の中にはライカの姿が。この作戦が終われば麒麟とまた会うことができると思い
心躍らせるライカだったが、突入するとそこはすでにもぬけの殻。頭が真っ白になる中
拠点の捜索を続けると、一つ残されたPCが目に入る。スリープ状態になっていたPCが
起動を再開すると、映像データが再生され始めた。そこには……」

夾竹桃「もういいわ、それ以上しゃべらないで」

理子「えー……」

夾竹桃「あなた何もわかっていない。本当にイ・ウー屋のメンバーなの?」

理子「いいと思ったんだけどなー」

夾竹桃「いい? この二人を使うならこういう傾向のものにしないとダメなの」バサッ

理子「はぁ……」

アニメで夾竹桃が本格的に出てきたらにしようと思ってたけど、先走ってしまった
続きは来週末ぐらいで

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