【はがない】夜空「風邪ひいた」【百合】 (50)

短いですがどうか読んでもらえれば。



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星奈「あれ?今日夜空は居ないの?」



部室のドアを開けると、すぐに気が付いた。
この人数の少ない部活では、1人足りないだけで凄まじい違和感がある。

小鷹「あぁ、アイツは授業中にアタマが痛いと言って保健室で寝てるぞ」

星奈「へぇ、珍しいこともあるのね」

小鷹「かなり苦しそうだったぞ」

星奈「そ、それは心配ね、少し様子を見てくるわ。」

小鷹「あぁ、頼む。こういうのは星奈が行った方が良いと思う。」

部室のドアを閉め、廊下を歩く。

(普段憎まれ口ばかり叩くアイツが風邪を引いて寝込んでるなんて見ないのがもったいないわ)


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そんな事を考えている間に保健室の前に着いていた。

ドアを開けると、
並べられたベッドの中の1つに夜空が寝ているのが見えた。

ドアが開いた事に気付いたのか、保健室の先生が近づいてくる。

先生「同じ部活の生徒ですか?」

星奈「は、はいそうです」

先生「三日月さん、家の都合が悪いらしくて早退するに出来なかったのよ。」

星奈「そ、そうなんですか。」

ベッドで寝ている夜空に視線を移すと、いつものしかめっ面とはかけ離れた寝顔が見えた。

呼吸は普段通りだが、やや頬が紅潮しておりよほどの熱があるのかやや汗ばんでいる。

ずっと寝顔を見るのも失礼だなと思っていると

夜空「......ぅ...なんだ...肉か.....」

夜空が目を覚ましたようだ。

星奈「ごめん、起こしちゃって」

夜空「ん...あたまが痛い.......」

その声は、夜空とは思えないほど枯れたものだった。

星奈「アンタ、帰っても1人なんでしょう?」

夜空「あぁ......」

星奈「なら、今日はアタシの家に来なさい。
どうせ1人じゃ家に帰れないだろうしここで寝てるよりマシだわ。」



夜空「わかった......すまない.....」

普段の夜空ならこんなに素直なハズがないなと星奈は思う。
夜空が思考を放棄するほど苦しいのなら、なおさら放っておけない。

星奈「いまステラに迎えに来てもらうから、もう少し待ってて。」

そう言い放つと、ステラに電話をかけた。
事情を伝えると、すぐに来てくれると言った。

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少し経って、ステラが学校に到着したと連絡が入った。


星奈「校門の外に車を停めてるらしいから、夜空、歩ける?」

そう言うと、夜空はベッドから体を起こしたが、全ての動作が重苦しそうだ。

星奈「無理みたいね......」

星奈「こんな時に意地張らなくて良いのよ。それに、アンタを放っておくのは部員として出来ないわ。」

夜空「すまない.....肉よ...」

夜空の肩に右手を伸ばし、左手を膝の下に入れる。そのまますっと立つ。
いわゆる「お姫様抱っこ」だ。


夜空の体は想像以上に熱かった。

保健室の先生に連れて帰る主旨を伝え、
保健室を出る。

夜空を抱えたまま廊下を歩く。
重さはあまり苦では無かった。

夜空は、慣れないお姫様抱っこが恥ずかしいのか、必死に目を伏せている。

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車を見つけると、後部座席に夜空を寝かせ、
一旦保健室に戻り2人の荷物を持ち車に戻る。

すぐにステラの運転する車は発進した。

その間、夜空はずっと虚ろな目で窓の外を見つめていた。

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家の前に着くと、夜空を再び抱き抱え、
階段を上がる。

星奈(こんな形とはいえ同姓の同級生が部屋に来るなんて...)

ひとまず夜空を自分のベッドの上に寝かせると、

星奈は1階の冷蔵庫にある
熱さまシートと着替えを取りに行った。

星奈「夜空、着替えた方がいいわ」

夜空「あぁ....」

夜空「大丈夫だ...これくらい自分でする...」

そう言うと夜空は重い動作でもぞもぞと薄手のパジャマに着替えた。



星奈「夜空、ちょっと動かないでね」

夜空の顔に近づき、前髪を上げる。
小さな額に熱さまシートを貼る。

普段の睨みつけるような目はそこには無かった。

夜空「うぅ.....つめたい......」

星奈「病人は大人しく寝てなさい」

夜空「色々とすまない...」


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しばらく経つと夜空は眠りに落ちたらしく、
規則正しい寝息を立てながら布団にくるまっている。

星奈(夜空の寝顔ってキレイね.......)

(普段の夜空もこうならいいのになぁ.....)

そんな事を考えながら、夜空を起こさないように静かに部屋を出る。

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向かった先は、キッチン。
夜空に食べさせる夕食を作るため。


風邪と言えばお粥。

まずは鍋に米とお湯を入れ、かき混ぜながら火にかけていく。

米が柔らかくなった所で、
溶き卵を入れ、軽く混ぜる。

そして塩と醤油で味を整える。

溶き卵が軽く形を持った所で火を止め、鍋に蓋をし、数分間蒸らす。

蓋を開け、茶碗に盛り付ける。
一粒の梅干を乗せておいた。

あと一つ、風邪の時はすりりんごだ。

リンゴの皮を剥き、
おろし金で丁寧に擦っていく。

軽くレンジで温めたところで
ハチミツをかける。

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部屋に戻ると、夜空は起きていた。

星奈「晩ごはん、持ってきたわよ。」

夜空「あぁ....ありがとう.....」

ーーーーーー夜空の口から「ありがとう」
などという言葉が出るとは思わなかった。

これまで、「すまない」と言ってきた夜空が
初めて口にした言葉。

夜空の小さな変化が、星奈にとって
本当に嬉しかった。

(ホント..ずっと風邪引いとけばいいのに..)

星奈「せっかくだし、食べさせてあげるわ」

夜空「やめてくれ....恥ずかしい....」

星奈「夜空の風邪なんて珍しいんだからやらせてよ」

夜空(何故コイツはこんなに楽しそうなんだ.....)

溜息をつくと、星奈はそれを肯定と受け取ったのか、

スプーンでお粥をすくい、夜空の口に持っていく。

星奈「夜空、あ~んして」

夜空はもう抵抗するのも面倒だと言わんばかりの諦めの表情で、スプーンを受け入れる。

星奈「どう?美味しい?」

夜空「....懐かしい味がする........」

夜空「美味しい.....」

星奈「そっか、よかった.......」

安心するのと、同級生、それもあの夜空に自分の手料理を「美味しい」と言ってもらえたことが嬉しくて嬉しくて、星奈は嬉々として夜空に料理を食べさせた。

夜空(案外、まんざらでもない....)


夜空は自分でもそう思った事に驚いた。
私が星奈によって少なからず影響を受けていると考えると、急に恥ずかしくなった。

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夕食が終わり、しばらく時間が経つと、

星奈「ねぇ夜空、お風呂はどうするの?」

夜空「風邪の時は入らない方がいいのか?」

星奈「まぁ、そう言われてるわね。」

星奈「拭くくらいで済ませましょう」

夜空「そうだな」

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星奈は大きなタオルを水に浸し、
軽く絞ってレンジで温め、
体を拭くのに適した蒸しタオルを作る。

夜空の所に戻ると、

星奈「背中拭いてあげるね」

夜空「う........」

もう抵抗しても無駄なのは分かっていたので、
大人しくパジャマのボタンを外し、
背中を夜空に晒す。

何もかも面倒を見てもらって、今更抵抗するのも、情けない話だ。

しかしそれでも肉の前で素直な今日の自分はおかしいと思う。

星奈「じゃ、失礼します」

夜空の首筋に蒸しタオルを当て、拭いていく。
夜空の肩は小さいなと思った。

首、肩、背中を吹き終わり、

腋の下にタオルを当てると、

夜空の体がピクッと動いた。

星奈「ごめん、熱かった?」

夜空「少し///」

星奈「へ~」ニヤニヤ

ここぞとばかりに脇腹を蒸しタオルで撫で回す。

夜空「やっ.....に、にく.....くすぐったい....」

風邪を引いた夜空の紅潮した頬。
だるさと恥ずかしさが混濁した
トロンとした夜空の目。

(夜空も、こんな女の子の表情できるんだ...........)

そう思っている隙に、夜空にタオルを奪われた。

星奈「あっ」

夜空「馬鹿肉が、調子に乗りすぎだ///」

夜空「もうあとは自分で拭けるから...」

星奈(風邪の時の夜空は最高ね...........)

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体を拭き終わり、服を着ると夜空は疲れたのか電源が切れたように寝てしまった。

星奈は夜空に布団をかけてやると、
自分の食事と風呂を済ませることにした。

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夜空が目を覚ますと、窓の外はもう明るかった。
風邪のせいか、ずいぶん長い時間寝ていたようだ。

頭は痛くない。体もいつも通りだ。

辺りを見回すと、
ベッドの隣に、使用済みの熱さまシートが数枚あるのが見えた。


(肉は夜通し私の看病をしてくれていたのか..........)

(私と肉の立場が逆だったとして私はアイツに同じことをしてやれただろうか.......)

夜空が起きてしばらく経つと、
星奈が部屋に入ってきた。

星奈「あれ?起きてるの?」

夜空「ああ、お陰様で良くなったよ。」

星奈「そう、それはよかったわ、」

一晩中看病をしていたのに、その苦労を表に出さない星奈を見て、夜空は本当に申し訳なく、
何とも言えない自分が情けなくなった。

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夜空は大事を取って、この日は学校を休む事にして、
星奈を学校に送るステラの車に同乗し、自分の家まで送って貰うことになった。

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車が発進すると、まずは夜空を家に送る事になった。

しばらくして夜空が隣を見ると、
星奈が眠そうにしている。

一晩中看病していたのか.........

その姿を見て、夜空は思わず

「なぁ、星奈」

「え!?今星奈って呼んで」

星奈はいきなりの出来事に目が覚めたようだ。

夜空「せ、星奈は一晩中看病していてくれた....」

夜空「こんな私のために.....」

星奈「何よいきなり....アンタらしくない」

車は進み、夜空の家はもう目の前だ。

夜空は覚悟を決め、星奈の手を握った。
星奈は何事かと驚いている。




夜空「星奈、本当にありがとう」

確かに、言った。

星奈「~~~っ////////////////」

星奈「バカ夜空.......風邪でおかしくなっちゃったの...///////////」

車は止まり、ドアを開け外に出た夜空は、ステラに一礼し、歩いて自分の家に帰っていった。

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夜空の居なくなった車内で、

星奈は、
「バカ夜空.......本当にずっと風邪引いてればいいのに///////////////」

とひたすら悶えていた。





おわり




以上、今更のはがないでした。
また機会があれば書かせて頂きます。
ここまで読んでくださった方に感謝します。
ありがとうございました。

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