【艦これ】地獄艦娘 (41)

58「てーとく、オリョールから戻ったよ」

悪徳提督「……」

58「て、てーとく?」

悪徳提督「おいでち公。いま、ウチが受けてる任務はなんだ?」

58「ろ、ろ号作戦でち」

悪徳提督「だよなぁ。南西諸島じゃないよなぁ」

58「……」

悪徳提督「それがわかってて、なんでボスに突っ込んでんだよテメーはぁ!?」

58「ご、ごめんなさいでちーっ!」

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悪徳提督「10回以上出撃させて戦果がたったの4隻とか、いい物笑いの種だろうが!」

58「全ては羅針盤娘が…」

悪徳提督「あぁ!?」

58「な、なんでもないでち」

悪徳提督「ったく、使えねーポンコツだな。いっそバラしちまうかぁ?」

58「それはあんまりでち!」

悪徳提督「チッ、解体が嫌ならさっさと補給済ませて出撃しやがれ!時間まで無駄にすんじゃねーよ!」

58「はいでちーっ!」

ハチ「また、ひどく怒られたみたいね」

58「仕方ないよ。てーとくの期待に応えられず、資材を無駄にしたゴーヤが悪いんでち」

ハチ「資材ね……そういえばこんな噂を知ってる?あの人が私たちを酷使して、物資を密かに貯めこんでるって」

58「急に何を言い出すかと思えば。笑えない冗談でち」

ハチ「ホントに冗談だと思う?」

58「…早く出撃するでち。任務を達成して、てーとくに褒めてもらうでちよ」

ハチ「疲労回復の暇もないんだね…」



ハチ(噂だと信じたかった。あの隠し倉庫を見つけるまでは)

58「ゴーヤより鎮守府。南ルートでワ級2隻を撃破、こちらの被害は伊168が小破、伊8が大破でち」


悪徳提督『よしいいぞ。そのまま進軍だ』


58「えっ!?で、でも伊8が大破で…」


悪徳提督『どうせ3戦目は逸れるんだろ?だったら弾薬だけでも持って帰れよ』


58「そんな…」

ハチ「命令には従わなきゃ……はっちゃん、提督の指示通り進軍します」


悪徳提督『おう、その意気だ』



普段なら、確かにコースを逸れて提督に怒られるところ。


しかし何の因果か、こういう時に限って羅針盤は真東を指したのだった。

58「やばい!輪形陣を組むでち!」


悪徳提督『おい舐めてんのか?魚雷がロクに当たらなくなるだろうが!』


58「でもこのままじゃ…」


悪徳提督『爆雷持ってるのはたった1隻だろ?テメーが仕留めりゃいいんだよ!』


現場は混乱を極め、結局は満足な陣形を組めないまま戦闘に突入してしまうゴーヤたち。


58「開幕雷撃!攻撃可能な艦は軽巡ホ級を狙って!」

ろー「了解だよでっち」

19「イクの魚雷攻撃、行きますなのね!」


渾身の力を込めて発射した魚雷。


しかし連戦による疲労のためか、狙いは目標から外れてしまったのだった。

58「敵の損害は軽微、各艦は回避行動を開始!爆雷が来るでちよ!」

ハチ「……」

58「な、何やってるでちか!?早く回避を!」

ハチ「はっちゃん……疲労と大破損傷で、もうまともに動けないの……」







58「経過報告でち。南ルート最深部にてワ級2隻を撃沈、ヌ級1隻を中破、損害は…」


悪徳提督『やりゃあできんじゃねーか。次の出撃が控えてんだから、夜戦はせずに速やかに帰投しろ。以上だ』


58「損害は……伊8が……」

午後一一四五


58「…長い一日が終わったでち」


(最後にこれを……お願い、怨みを晴らして……)


58「ハチから預かった手紙。それには鎮守府の隠し倉庫の存在と、地獄艦娘とのコンタクトの取り方が書いてあったでち」


58「午前マルマルマルマル時に通信回線を開き、憎い相手の名前を告げると、地獄艦娘が怨みを晴らしてくれる…」


58「バカバカしいでち。ハチには悪いけど、てーとくを憎むだなんてゴーヤにはできないでち」


58「そもそも隠し倉庫だなんて、この鎮守府には…」


ガコンッ、ギィィィ


58「…あったでち」

午後一一五五


58「すごい量の資材でち。もう一つくらい鎮守府を賄えるほどの…」


58「さ、さすがはてーとく。これはあれでち。万が一の緊急用の分でち」


午後一一五八


58「………金塊(課金カード)まであったでち。これはもはや…」


58「てーとく、ゴーヤは……ゴーヤはどうすればいいでちか?」


午前〇〇〇〇


58「通信回線オープン……あ、悪徳……てーとく!」

58「…何も起きないでち。やっぱり地獄艦娘なんて嘘だったでち」

「来たよ…」

58「ほひゃぁっ!」


突然の声に驚いたゴーヤが振り返ると、そこには一人の駆逐艦と思われる娘が立っていた。


58「び、びっくりしたぁ。あなたは確か、駆逐艦の不知…」

「私は、閻魔ぬい」

58「閻魔……ぬい?」

不知火改め閻魔ぬい「あなたが呼んだのでしょう?」

58「まさか、地獄艦娘!?」

閻魔ぬい「受け取りなさい」

58「これは妖精さん……の、ぬいぐるみ?」

閻魔ぬい「あなたが本当に怨みを晴らしたいと思うなら、その赤いマフラーを解けばいい」

58「……」

閻魔ぬい「マフラーを解けば正式に契約を交わしたことになり、怨んだ相手は速やかに地獄へ流される」

58「地獄へ…」

閻魔ぬい「但し、怨みを晴らしたら、あなた自身にも代償を支払ってもらうわ」

58「代償?」

閻魔ぬい「人を呪わば穴二つ。契約を交わしたら、あなたも地獄に落ちる」

58「…ッ!」

閻魔ぬい「轟沈した後の話だけどね」

58「地獄に落ちたら……どうなるでちか?」

閻魔ぬい「あなたの魂は深海に捕らわれ、痛みと苦しみを味わいながら永遠に彷徨うことになる」

58「そ、そんな!」

閻魔ぬい「あとは、あなたが決めることね」


チリーン…


58「……はっ!?今のは……夢?」


しかしゴーヤの手の中には、閻魔ぬいから受け取ったぬいぐるみが残されていた。


58「こ、こんなもの必要ないでち。ゴーヤは……これからも、てーとくを信じて戦うでち!」

翌朝


58「てーとく、おはようでち!ゴーヤは今日も頑張るよ!」

悪徳提督「でち公か……残念だが、もうその必要はない」

58「えっ、どういうこと?」

悪徳提督「現時刻をもって、伊58を潜水艦隊旗艦から解任する」

58「解任って…」

悪徳提督「伊8を沈めた責任は取ってもらわんとなぁ」

58「そ、それはてーとくが進軍を命じたせいであって…」

悪徳提督「あ?味方を守れなかったどころか司令部批判か?これは軍法会議ものだなぁ」

58「てーとく…」

コンコン


軽巡A「提督、失礼します。ご指示通り伊58の部屋を捜索したところ、横領したと思われる多数の間宮券を発見しました」

軽巡B「報告します。オリョール航路付近の無人島より、伊58が隠したと思われる資材を発見しました」

58「でち!?」

悪徳提督「やれやれ、旗艦の立場を利用してそんなことまでしてやがったのか」

58「ち、違うでち!ゴーヤはそんなこと…」

悪徳提督「言い訳はいらん。伊58を連行しろ。容疑が固まり次第、銃殺刑だ」

軽巡A、B「了解!」

58「何かの間違いでち!話を聞いてほしいでち!」

悪徳提督「余計な詮索をしなければ長生きできたものを……ま、伊8共々あの世で仲良くな」

58「!!!」

てーとくは……ゴーヤが隠し倉庫を見つけたことに気付いていた?


ハチに大破進軍を命じたのも、今、ゴーヤを処罰しようとしてるのも、口封じのため…?


58「ゴーヤは……ゴーヤはてーとくが何をしていようと、信じ続けるつもりだったよ?」

悪徳提督「そうかそうか。なら、処分も甘んじて受けてくれるよなぁ」

58「ゴーヤはもう、いらない子になったでちか?」

悪徳提督「…っせーな。おい、いつまでもベラベラと喋らせるな。さっさと連れていけ」


無意識のうちに手にしていたぬいぐるみ。


58「てーとく……さよならでち」


ゴーヤが取り押さえられる前に赤いマフラーを解くと、悪徳提督の身体は瞬時にしてこの世から消え去ったのだった。

悪徳提督「ん……ここはどこだ?」

愛乳道「ぱんぱかぱーん!やってきました、お仕置きターイム」

悪徳提督「あ?お仕置き?」

愛乳道「さてさて、資材横領や横流しで有名な悪徳提督ですが、まずはその悪事の数々をご覧になってもらいましょう」

悪徳提督「え、ちょ、おま」

愛乳道「青目蓮さーん、お願いねー♪」

青目蓮「はいはーい。青目蓮、やっちゃいました。スクープですよ大スクープ!」

悪徳提督「や、やめろお前ら!勝手に中に入るな!」

青目蓮「凄い量の資材ですねー。これ、どうやって貯めたんですかー?」

悪徳提督「効率よく戦っていたら、いつの間にかだ」

愛乳道「うふっ、戦艦や空母を出したように見せかけて、実際は潜水艦を酷使してたものね~」

悪徳提督「…っ!知らん!俺は無実だ!」

愛乳道「んもぅ、白々しいんだから」

青目蓮「おや、どうしたんでしょう?資材の数値がどんどん下がっているような…」

悪徳提督「なんだと!?」


278000

259000

223000


悪徳提督「ど、どういうことだ!俺が一生懸命貯めた資材が…!?」

愛乳道「あらあら、誰かと思えば赤g…いえ、飯女さんじゃない」

飯女「はぐはぐ……これはなかなか、んぐんぐ……良質のボーキですね、あぐあぐ」

悪徳提督「おいやめろ!俺の資材を勝手に食うんじゃねえ!」

青目蓮「まあまあ。まだこんなに沢山あるんですよ?ここはパーッと、大型建造をぶん回しちゃいましょう!」

愛乳道「目指せ大和、武蔵、ビスマルク♪」

青目蓮「モニター前の提督の皆さんも、どうぞ応援しちゃってください」

悪徳提督「やめろぉぉぉぉぉ!!!」



資材横領だと?ふざけてやがんな
ちょwwボーキマジ食いしてやがるww
運営さんコイツです
はっちゃんの仇、思いしれ!
陸奥になるビーム!陸奥になるビーム!
ヒャッハー!BAN祭りだー!
おい陸奥はもったいない那珂ちゃんにしろ
↑貴様は俺を怒らせた

悪徳提督「俺の……俺の資材が……」

愛乳道「ぱんぱかぱーん!おめでとうございます!超レア艦の誕生よ♪」

青目蓮「おお~っこれは弩級戦艦【悪徳】ですね?初めて見ました」

悪徳提督「な、なんだこりゃ?俺が艤装付けて…?」

愛乳道「さあ、早速実戦テストね」

飯女「一航戦の誇りにかけて!第一次攻撃隊、発艦!」

青目蓮「主砲全門!」

愛乳道「撃てぇーいっ!」


ドドドドドドドド


悪徳提督「あああああああ!!!」

悪徳提督「うぅ、大破しちまった……撤退だ撤退」

青目蓮「おやおや、資材を目の前にして何をおっしゃいますやら」

愛乳道「そうよぉ。残りはたかだかダブルダイソンじゃない」


2D「「やぁ」」


悪徳提督「ふざけんな!轟沈したらどうするんだ!」

飯女「…あなたも艦娘たちに命じてたじゃないですか」

悪徳提督「あいつらは兵器だろうが!ぶっ壊れるまで使って何が悪い!」

青目蓮「あーあー、全く反省してませんねぇ。それじゃ大破進軍ポチーで」

悪徳提督「お前ら何が目的だ!資材か?金か?好きなだけくれてやるからもうやめろぉぉ!」

愛乳道「ですってお嬢」

閻魔ぬい「……」

悪徳提督「あ、あんたがボスか!?だったらこいつらを止めろ!」


閻魔ぬい「闇に惑いし哀れな影よ……艦娘を傷つけ貶めて……」

悪徳提督「おいやめろ!頼むから助けてくれ!」

閻魔ぬい「罪に溺れし業の魂……」

悪徳提督「ひっ、ひいいいい!!!」



閻魔ぬい「不 知 火 に 落 ち 度 で も ?」



悪徳提督「ぎゃあああああ!!!」

無数の燈籠が浮かぶ静かな水面


その中を一隻の駆逐艦がゆっくりと進む


悪徳提督が入ったドラム缶を曳航しながら…


悪徳提督「へへ…資材だぁ…俺の資材だぁ…俺が資材だぁ…」


閻魔ぬい「この怨み、地獄へ流します…」



チリーン…

あれから数週間。ゴーヤの日々は少しずつ落ち着きを取り戻してきたでち。


てーとくが消えた直後、鎮守府は上へ下への大騒ぎになり、その機能は完全に停止。


パニックに紛れてゴーヤの処分もうやむやになったでち。


そして緊急事態のコールを受けた海警隊の調査により、数々の不正行為が発覚。


事態を重く見た大本営はこれを揉み消すために、てーとくは行方不明による戦死扱い。


不正に関わった艦娘も記憶を消された上で艤装解体、放逐処分となったでち。

―鎮守府内入渠ドック―


58「これで……良かったのかな」

168「ゴーヤ、何か言った?」

58「ううん、なんでもない。ゴーヤは先にあがるね」

168「ちょっと、そのお尻のアザどうしたのよ」

58「こ、これはあれでち。少しぶつけてしまっただけでち」

168「ふーん、なんだかぷかぷか丸みたいなアザね」

58「……」


58(これはゴーヤの罪の証……いつの日かゴーヤも轟沈したとき、てーとくと同じ地獄に逝くでちよ…)





「あなたの怨み、晴らします」



地獄艦娘―完―

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