白騎士「輝きの勇者の伝説」 (136)

むかしむかし わるいまおうが せかいじゅうに わるさを していました。
ひとびとは まいにちまいにち かなしみにすごしていました。
あるとき ひとりの ゆうかんなわかものが まおうたいじのたびに でたのです。
わかもののいた くにのおうじょさまは たいそう しんぱいしましたが
ゆうかんなわかものを しんじ たびのぶじ をいのりました。
ゆうかんなわかものは さまざまなこんなんを のりこえ ついにわるいまおうを やっつけたのです。
しかし わるいまおうは ゆうかんなわかものを みちづれにし きえていきました。
へいわになったのに おうじょさまは いつまでもいつまでも かなしくて なみだをながしています。
すると きせきが おこりました。
なんと きえたわかものが ひかりかがやきながら おうじょさまのもとへ あらわれたのです。
ばんざーい ばんざーい。
わかものは かがやきのゆうしゃと よばれ おうじょさまと なかよく しあわせに くらしましたとさ―――。

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【北の霧の山脈】

ハーピィ隊「ケァーッ!ケァーッ!」

弓隊長「弓矢隊前へ!目標、敵妖術部隊!」

弓隊長「味方に当てるなよ!構えー!……ッてぇぇー!!」シュパパパ


パカラパカラパカラパカラ


兵士「てやぁー!」ズバッ

魔物「ウギャー!」


パカラパカラパカラパカラ


魔物「ぐもー!」バキャッ

兵士「うわぁー!」

少年兵「うわわ…た、助けて!」


白騎士「はぁっ!」ヒヒーン

ズババッ!

魔物「ぐぁー!!」ドサッ

少年兵「ひっ…ひっ…!」

白騎士「君。怪我はないか」

少年兵「し…白騎士様…!は、はい!大丈夫であります!」

白騎士「ではそこの負傷した者を連れ本体に戻りたまえ。今しがた私が通ってきた方向なら安全だ」

少年兵「りょ…了解しました!」ズルズル

白騎士「…むっ!邪気か!」

パカラパカラ

黒騎士「白騎士!覚悟ォー!」

白騎士「黒騎士ッ!」

キィン!

黒騎士「はぁー!」パカラパカラ

白騎士「はいやー!」パカラパカラ

キィン!

黒騎士!「ちぃっ!」ドッドッ

白騎士「黒騎士!今すぐ兵を退け!」

黒騎士「何をッ!」

白騎士「見よ!お前達の砦は陥落寸前!最早勝敗は決した!互いにいたずらに命を散らす必要もあるまい!」ドッドッ

黒騎士「それは私が決める事だ白騎士!」

魔物兵「黒騎士様ー!」タタタッ

黒騎士「!」

魔物兵「妖術鳥様率いるハーピィ隊が撤退を始めました!」

黒騎士「何だとッ!」

魔物兵「敵の弓矢隊が矢にこえなし草を塗っていたようで呪文を封じられた所を…」

黒騎士「ええい、焦ったかアホウドリめ!!」

白騎士「さぁどうする?この山脈でハーピィ達抜きではお前達に分はないぞ」

黒騎士「…全隊に告げよ!砦を放棄し撤退する!」

魔物兵「はっ!」タタタッ…

黒騎士「……」

白騎士「できれば投降して欲しいのだがな。黒騎士よ」

黒騎士「…まだ我らに光が届いたわけではない!調子に乗るな人間達よ!」パカラパカラ…

白騎士「……」パカラパカラ…


弓矢兵「隊長!魔王軍に動きが!」

弓隊長「むむっ、魔物達が退き始めたぞ。勝ったか!?」

白騎士「その通りだ弓隊長殿」パカラパカラ

弓隊長「おお!白騎士殿!では?」

白騎士「あぁ、本隊を砦の制圧に向かわせてくれ。負傷者の回収と手当ても頼む」

白騎士「よくやってくれた皆のもの!この戦!我らが王国軍の勝利だ!!」

ワァァーーーーッッ!!


――――――

【南の王国】

王様「なんとか霧の山脈を制圧出来たか」

大臣「あそこを抑えれたのは大きいですな。魔王軍の大多数はそこから通っておりましたから」

騎士団長「ならばこのまま奴らの領域に踏み込むべきかと」

王様「いやそれは良くない。勝ったとはいえこちら側も疲弊しておるしな」

騎士団長「それは彼奴等も同じであります!追撃すべきです!」

大臣「だからこそだ騎士団長。魔王軍も反撃する力がないから態勢を整える必要があるのだ」

王様「大臣の言う通りだ。お前の気持ちもわかる。だが功を焦ってはなんとやらだ。わかってくれるな?」

騎士団長「…はっ、差し出がましい真似をお許し下さい」

王様「よい、国を想ってこその言葉と受け取ろう。確か白騎士達も本日中に戻ってくるはず。そうであったな?大臣」

大臣「はい王様。英雄達の凱旋でございます」

王様「良きかな良きかな。はっはっはっ」

騎士団長「……」

近衛兵「失礼します!」ガチャッ

大臣「どうした?」

近衛兵「はっ!山賊討伐に出陣しておられた姫様が東の村よりお戻りになられました!ご報告に上がりたいとの事です!」

王様「おぉ、わかった。入るように伝えてくれ」

近衛兵「了解しました!…姫様どうぞ」

姫騎士「失礼します父様。只今山賊討伐の任を果たし戻ってまいりました」

王様「うむ、よくぞ無事に戻ってきた。討伐の任ご苦労であったな」

姫騎士「所為小物共の集まり。私の敵ではありませぬ」

王様「して…何もそうかしこまらずとも良いだろう。父と娘としては距離を感じるぞ」

姫騎士「城の兵士達に示しがつきませぬ。最後まで任を終えるまでは騎士として立ち振る舞うつもりです」

王様「むっ…そうか…(´・ω・`)」ショボン

大臣「き、騎士と言えば今日は白騎士らの大隊が戻ってきます!姫様もお迎えしては如何でしょう!?」

姫騎士「白騎士が?」

騎士団長「霧の山脈を落とした凱旋であります」

姫騎士「あの魔の山脈を…!?」

大臣「いやはや姫様と白騎士がいれば我が王国も安泰ですな!ははは、ははははは」

騎士団長「…チッ」

王様「ほれお前もすぐに着替えて…」

姫騎士「いえ、私は報告書をまとめて参りますのでそういう役目は姉様達にお願いします。では、これで」スタスタッ

バタン

王様「…はぁ~~~~、困ったやつよ…」

大臣「ますます凛々しくなられてましたな」

王様「凛々しくなっては困るわ!!…第三王女とはいえ、全く女らしさを見せん…この間も隣国の王子からの求婚を文字通り一刀両断…はぁ~」

大臣「心中お察しします…」

【城下街】

男「おーい!王国軍が帰ってきたぞー!」

武器屋「そりゃ大変だ!店やっとる場合じゃないぞ母ちゃん!」

ザッザッザッ

群衆「わーわー王国軍ばんざーい!王国軍ばんざーい!」

男「おぉ!見ろ白騎士様だ!」

女達「キャー!白騎士様ー!」

白騎士「…」ヒラヒラッ

キャー!

騎士「国中の女を手にした気分は?」パッカパッカ

白騎士「からかうなよ、そんなつもりはないさ」パッカパッカ

子供達「白騎士さまー!」

白騎士「ん?」

騎士「こらお前達!隊長はお疲れであるぞ!」

白騎士「構わん、どうしたのかな?」スタッ

男の子「これね白騎士さまに!妹と描いたの」

女の子「ヒナの実も。食べてー」

白騎士「ほぉ…!うむ、私によく似ている。城の専属画家以上だ!実も大事に頂こう」ナデナデ

女の子「うふふ」

白騎士「さぁ戻りたまえ。また怖い騎士様に怒鳴られるぞ」

騎士「隊長!」

子供達「はーい!」タタタッ

白騎士「羨ましいか?」トスッ

騎士「いいえ、全然」パッカパッカ




騎士団長「殻騎士がアイドル気取りか」

近衛兵「かっこいいッスもんねー」

騎士団長「馬鹿者!見た目だけだ」

近衛兵「中身もッスよ!」

騎士団長「だから殻騎士なのだ」

【謁見の間】

白騎士「霧の山脈より制圧任務を終え只今戻ってまいりました」

王様「うむ、よくぞ戻ってきた。貴公の勝利は国の未来を左右した物。素晴らしい働きであったぞ」

白騎士「光栄であります。共に戦ってくれた者、国に命を捧げた者達にも今のお言葉を聞かせたいものです」

王様「そうであったな。兵らも良く働いてくれた」

騎士団長「…白騎士、王の御前なるぞ。兜を外し顔を見せよ…無礼ではないか?」

大臣「! 騎士団長!言葉が過ぎるぞ!」

白騎士「恐れながら大臣殿。団長殿は礼儀の話をしてらっしゃる」カポッ


白騎士「『鎧だけの身』と、甘んじた私が悪いのです」スッ


騎士団長「顔が見えぬなぁ…ふふふ」

大臣「騎士団長!」

白騎士「…王よ、出自も分からぬ不可思議な私を拾いここまで国に仕えさせて頂いた事を感謝しております。むろん団長殿にも…無礼をお許し頂きたい」

騎士団長「……」

王様「白騎士よ、そなたに感謝をしているのは我々もだ。多少の無礼など許そう。長旅で疲れたろう、今日はゆっくり体を休めるとよい」

白騎士「はっ、ありがとうございます。ではこれにて失礼致します」スタスタッ…

王様「騎士団長、遊びが過ぎるぞ」

騎士団長「申し訳ありません。しかし彼奴だけ特別扱いする訳にはいきませんので」

王様「全く…」

【城内通路】

白騎士「…おや、これは姫様。先にお戻りになられていましたか」スタスタッ

姫騎士「大活躍だったそうですね白騎士」

白騎士「よしてください。私だけの力ではありませぬ。姫様こそ此度の武勇をお聞きしていましよ」

姫騎士「皮肉か?」

白騎士「えっ、いえ決してそのような!」アセアセ

姫騎士「父様は何故私を遠征に出させてくれぬ。いつも国付近の任ばかり…」

白騎士「それは跡継ぎでもある姫様の身を案じての事。それが親心というものです」

姫騎士「余計なお世話、とも取れよう?スカートを穿いた政は姉様達がやればいい」

姫騎士「それはそうと…その腰の袋はなんだ?」

白騎士「あぁ、ヒナの実でございます。甘い木の実で子供達から貰ったのです」

姫騎士「子供も酷な事をするものだ」

白騎士「深い意味はありません。気持ちが大事なのですよ。いくつか如何でしょう?」

姫騎士「貰おう。…うん、美味しい」

白騎士「ほぉ」

姫騎士「なんだ?」

白騎士「姫様もその様に笑みを零すのかと思いまして」

姫騎士「お前は私を鉄の女か何かと思ってるのか?」

白騎士「そうゆう噂も流れてしまうものです。では失礼します」スタスタッ

姫騎士「白騎士…か。…ん、本当に美味しい」ポリッ

【魔王城】

妖術鳥「魔王様!此度の敗戦申し訳ございません!!次こそは勝利を捧げますので…どうかお許しを!!」

魔王「……」

竜戦士「見苦しいぞ妖術鳥!霧の山脈は我らの重要な砦だったのだ!詫び一つで済むはずがなかろう!」

妖術鳥「そ、それは…」

竜戦士「術に優れても臆病なのがハーピィ族よ。どうせ一太刀受け腰が抜けたのだろう?」

牛闘士「やめろ竜戦士。あまり敗者を虐めるでない」

妖術鳥「……」ギリッ…!

竜戦士「おお…そう言えば白騎士も出ていたそうだな。だがおかしいなぁ?奴の首はまだないぞぉ?」

黒騎士「……」

牛闘士「黒騎士よ、先程から一言も発せぬが何か申す事はないのか」

黒騎士「…返す言葉がないのです。後少しの所を拠点を奪われてしまい、白騎士も討てずおめおめと戻ってきた事を情けなく感じでいたのです」

妖術鳥「! あ、あたしのせいだと言いたいのか!!」

黒騎士「…そう思うのは責任を感じているからでしょう妖術鳥殿」フッ

妖術鳥「きっさま…!」

魔王「妖術鳥…それに黒騎士よ」

二人「!!」

魔王「此度の敗戦は確かに許されるものではない…しかしお前達にはまだまだ働いて貰わねば困るのだ。よって今回は許そう」

妖術鳥「あ、ありがとうございます!ありがとうございます!!」

魔王「黒騎士。白騎士を討つのがお前の役目。期待しているぞ」

黒騎士「はっ!必ずや魔王様に彼奴の首を捧げます事を誓います!」

竜戦士「では魔王様!早速砦を奪還致しましょう!ヒドラ族一の戦士である私が率いる竜兵団ならば三日もあれば取り返せます!」

魔王「いや奪還はせぬ」

竜戦士「な、何故です!?」

魔王「我が軍の戦力の再編を行い、例の作戦を実行に移す」

牛闘士「おお!あれをついに!」

魔王「それには黒騎士…お前が必要不可欠なのだ」

黒騎士「……仰せのままに」


――――――――――

【謁見の間】

白騎士「輝きの勇者、ですか?」

王様「うむ、お前も聞いた事はあろう?」

白騎士「はい、かつて世界を闇から救った伝説の勇者。絵本にもなってますし知らぬ者はおりません」

王様「その勇者の一族が東の王国にいるのも知っておるな?」

白騎士「はい…しかし、その一族は東の王国が魔王軍の襲撃を受けた際に滅ぼされたのでは…?」

王様「最近まではな。しかし唯一の生き残りがいるとの情報を得たのだ。貴公にはその生き残りを城に連れて来て欲しい」

白騎士「なるほど、しかし何故今になってここへ?」

???「予言じゃよ」

白騎士「!!」チャッ

おババ「よしとくれ、老いぼれを脅かしても何にも得にならんよ鎧の」

王様「おぉ、大魔導士殿。来てくれたか」

白騎士「大魔導士?」

王様「そうか白騎士は初めて会うのであったな。この城下全域は聖なる力に守られ魔物が一切入れぬようになっている」

王様「その呪文をかけておられるのがこの大魔導士であるおババ様なのだ。未だ魔物が城に進撃してこないのもおババ様の魔法があってこそ」

おババ「こやつのおしめを替えたのもわしじゃ。いっひっひ」

王様「お、おババ様…!」

白騎士(一体いくつなんだ…)

白騎士「して予言とは?」

王様「そうであったそうであった。おババ様」

おババ「…この世が再び闇で覆われ死し時、光の彼方から勇者が現れその正しき愛と心にて闇を永遠に振り払わん――」

白騎士「これは…」

王様「ワシは闇とは魔王の事を指していると思う。魔王は強大じゃ、奴を倒す為には輝きの勇者の力が必要なのだ」

白騎士「その為に一族の生き残りを城に連れて来るのですね」

王様「うむ、道中険しいだろうが白騎士。貴公になら任せれよう」

白騎士「かしこまりました。この大任、必ずや成し遂げましょう!」

王様「頼んだぞ白騎士よ」




???「……聞いたぞ」

【城下街】

白騎士「」

姫騎士「どうした?早く馬車に乗れ」キリッ

白騎士「いや、おかしいでしょう」

姫騎士「何がだ?」

白騎士「姫様はこの任に就かれないはずですが」

姫騎士「やはり白騎士一人では心配だと父様から言い渡されたのだ。ちゃんと許可は貰っているぞ」

白騎士「なん…だと…?」


王様「もう父様と呼ばないはないだろ…呼ばないは…」ズーン

おババ「諦めな。運命だよ」


姫騎士「もう良いだろう?急ぎの用なのだ、早く出発しよう」ワクワク

白騎士「これは思ったより険しくなりそうだ…」

―――――――

姫騎士「いざ行かん、世界の為に」

白騎士「ではまずは東の村に向かいましょう」パッカパッカ

姫騎士「えっ、なぜ?」

白騎士「山賊討伐後の様子見です。それにどの道通り道ですし」

姫騎士「しかし早く勇者の一族を――」

白騎士「出発したばかり焦る必要はありませぬ。それに自国の民の信頼を得るのは指導者には必要な事ですよ」

姫騎士「またそれを言う…」ブツブツ

白騎士「はっはっはっ」


【東の村】

村長「これはこれは、ようこそいらっしゃいました王国騎士様。今日はどうなされました?」

白騎士「急に来て申し訳ない村長。先日の討伐以後困った事がないかを見に来たのだ」

村長「それはそれは…何ともありがたい事です。おかげさまで山賊達に怯える事なく平和に暮らせております」

村長「村人全員があなた方に感謝しております…惜しむは礼を言う暇もなく去られてしまった事ですなぁ」

白騎士「ならば今言うといい」グイッ

姫騎士「ちょっ!」

村長「おぉ、あなたはもしや姫様!まさか姫様直々にワシらを救って頂けたとは…いやぁ、ありがたやありがたや」

姫騎士「あ…お、王国騎士として当たり前の事をしたまでだ」

村長「おおい、皆ぁ!ワシらの救世主様が来られたぞぉ!」

村人女「まぁではあの方が!」

村人男「ありがたやありがたや」ガヤガヤ

姫騎士「わっわっ、おい白騎士!」

白騎士「はっはっはっ、ところで村長。見た所畑が荒れたままだが…」

村長「おやお恥ずかしい…なにぶん山賊騒ぎのせいで若いのが逃げてしまったりでなかなか…」

白騎士「そうであったか…ならば私が手伝わせて貰おう」

村長「そんな滅相もない!騎士様に畑仕事をさせるなど!」

白騎士「たまには土と戯れたいのだ。任せてくれ村長」

村長「なんと…ほんにありがたやありがたや」

姫騎士「……」ショリショリ

おばさん「すみませんねぇ、姫様に芋剥きさせてしまって」ショリショリ

姫騎士「いや…大丈夫だ」ショリショリ

姫騎士「しかしこの芋…小さかったり崩れてたりしているが食べていいのか?」

おばさん「まぁねぇ、本当ならまだまだ土の中で育てなきゃいけないはずなんですけどね」

おばさん「それでもここまでお天道様と土の中ですくすく育ったのに荒らされたからって捨てる訳にはいかないじゃない。バチが当たるってもんでさぁ」

おばさん「育ててくれてありがとう、育ってくれてありがとう。思いやりを大事にしなきゃねぇ。それは人間様でも変わりありませんよ」

姫騎士「思いやり…」



カァーカァー

村人「ふぃー、こんなもんだなぁ」

白騎士「ふむ、見違えましたな」

村人「これも白騎士様のおかげだぁ、ありがたやありがたや」

白騎士「なんのなんの、軽いもんです」

白騎士「もう夕刻か…すっかり遅くなってしまった。姫差はどうなされるかな」スタスタッ



姫騎士「どこにいる。隠れても無駄だ…私からは逃れられんぞ…」

ガタッ

姫騎士「!! そこだぁーー!!」ガッ!

少女「キャアーー!」キャッキャッ

姫騎士「あはははは、そぅら全員捕まえたぁー!」

少年「姉ちゃんすげー!」

姫騎士「そうだろうそうだろうあははははは!!」

白騎士「……」

姫騎士「」

白騎士「遅くなりました。お待たせして申し訳ありません姫様」

姫騎士「全くだ!いつまでも土と遊んでいてからにお前は」プルプル

白騎士「涙目にならないでくださいよ。かくれんぼお上手じゃないですか」

姫騎士「うるさい!!」

白騎士「では準備出来次第出発致しましょうか」

村長「お待ちください、騎士様!もう日も暮れております。夜の旅はなにかと危険です。今晩は村にお泊りください」

白騎士「しかし厄介になるつもりは――」

村長「とんでもない!恩ばかり受けてるのはこちらの方、少しでも恩返しをさせて下さい!」

少年「姉ちゃん達泊まるの?」

少女「ならうちにきてお話聞かせてー!」

白騎士「…無下に断るは礼知らず、か。では世話になる。よろしいですか姫様?」

姫騎士「まぁ…お前がそうゆうならいいだろう」

子供達「わーいわーい!」キャッキャッ

村長「ではワシの家でお部屋の用意を…」

少女「えー!うちうちー!姫様と一緒に寝るー!」

姫騎士「えっ」

少年「あー!ずるいぞ!じゃあ騎士様はおれん家ー!」

白騎士「はは、どうやら宿泊先は決まっていたようですよ」

村長「いやはや…お前達失礼のないようにな」

子供達「はーい!」


―――――


次の日の朝――

白騎士「では長居したな」

村長「お構いなく、よろしければまた来てください」

白騎士「うむ、そちらも何かあれば王国に伝えてくれ。ではさらばだ!」パッカパッカ

さようならー!ありがとうー!

姫騎士「……」

白騎士「如何でしたか?」

姫騎士「…こんな近くで一日も無駄にしてしまったぞ」

白騎士「無駄ではございませんよ。村人達の笑顔を見れたでしょう?」

白騎士「あれが姫様が守ったものです」

姫騎士「……悪い気はしないな」

白騎士「そうですとも」パッカパッカ

今日はここまでで投下中断します
続きは明日

ご期待ありがとうございます!
続き投下を再開します

【東の日陰の森】

白騎士「今日はここまでにしましょう」

姫騎士「もうか?」

白騎士「あの花をご覧ください。この森は重なり合う葉のおかげで日が差し込みませんがあの花は朝昼に咲き夜に閉じる不思議な花です」

姫騎士「花が閉じかけている…」

白騎士「外は日が沈みかけているのでしょう。なに、明日には抜けれますよ」

姫騎士「そうか…ならいいが」


ホーホー パチパチッ


白騎士「……眠れませぬか?」キュッ

姫騎士「お前こそ毎晩見張りをしていつ寝ている」

白騎士「寝ていませんよ」

姫騎士「寝ていない?」

白騎士「私は鎧だけの身、疲れも痛みもなければ眠る必要もないのです」

姫騎士「で、では今までもずっと一人で夜が明けるまでそうしてるのか?」

白騎士「そうですな…剣を磨いたり戦術を練ったり星を見て国の栄光を願ったり…」

姫騎士「…ロマンチストだな」

白騎士「心まで鉄ではありませんので」

姫騎士「むぅ…」

白騎士「……」キュッキュッ

姫騎士「一つ聞いていいか?白騎士」

白騎士「何でしょう?」

姫騎士「何故我が国に仕えようと思ったのだ?お前の実力なら戦の強い西の王国でも高い地位を得られるはずなのに」

白騎士「そうですな…お答えするならばこの国が正しいからでしょう」

姫騎士「正しい?」

白騎士「出自もわからぬ私をこの国は両手を広げ迎えてくれました。それにこの国の民は王に絶対の信頼を寄せています」

白騎士「私はその優しさと正義に溢れた所に心惹かれたのです」

白騎士「人と人とが隔てなく繋ぎあえる、素晴らしい国だ…」

姫騎士「騎士団長はお前を煙たがっている。自分の地位が奪われるのを恐れているのではないか?」

白騎士「それは違いますよ。騎士団長は悪い方ではありません。あの方も私と同じ、国に永遠の忠義を誓った者。志は同じです」

白騎士「団長の役目として私が傲慢にならぬようあえて悪役を買って出てるのですよ」

姫騎士「そうだろうか…」

白騎士「私からも一つお聞きしても?」

姫騎士「な、何だ?」

白騎士「姫様はどうなさりたいのです?」

姫騎士「どうって――」

白騎士「政もせぬ、妃もせぬ、このまま騎士道に身を捧げますか?」

姫騎士「私は…姉様達と違ってその道も才がない…女になりきれぬのだ」

白騎士「確かに政には才がいりましょう。しかし王にも必要な才がある」

姫騎士「それは?」

白騎士「慈愛です」

白騎士「…私はこの先誰が国を導こうとも、闇を振り払う剣となりましょう。ただ―――」

白騎士「そのような才を持つ下で働けるならばそれ以上に喜ばしい事はないでしょうな」

姫騎士「……私はまだ剣でいたい」

白騎士「それもまた良しです。もう夜も深い、そろそろお休みになって下さい。お肌に触りますよ」

姫騎士「余計なお世話だ!…有意義な話だった……ありがとう」バサッ

白騎士「…おやすみなさい」

その後も二人の東の王国に向けた旅は続き、道中魔物に襲われたり人助けをしながら進んだある日――

姫騎士「せいっ!」ズバッ

魔物「ギャオン!」ドサッ

姫騎士「ふぅ…」

白騎士「お見事です…むっ?」

姫騎士「どうした?」

白騎士「やられましたね。馬車の車輪が外れかけています」ガコッ

姫騎士「なんだと!動かせないのか?」

白騎士「応急処置で動かせますがこのままだといずれ脱輪しましょう。その前に修繕できる所があれば…」

姫騎士「ふむ…あそこに街らしきものが見える。とりあえずそこに行ってみよう」

白騎士「それが良さそうですな。ついでに食料等の調達も致しましょう。歩きづらいがもう少し頑張ってくれよ」ポンポン

馬「ヒヒーン」パッカパッカ

【行商の街】

ガヤガヤワイワイ

姫騎士「うわぁなんだこの人混みは」

白騎士「姫様ツイてますな。ちょうど行商人達が集っている時期だったようですね」

姫騎士「時期?いつもこうではないのか?」

白騎士「この街は南と東の中継にあたる街でしてね、たまにこうして各地の行商人達が集まってバザールを敷く事があるのです。これなら馬車の修繕屋もいるかもしれませぬ」

白騎士「―先ず馬車を預けて修繕屋を探しましょう」

姫騎士「う、うむ」

白騎士「はぐれないようお手を」

姫騎士「お前なぁ子供扱いするな!この程度に人混みなど何とでもなる!」ズンズン

白騎士「あっ!姫様!」

ワイワイガヤガヤ

安いよ安いよー姉ちゃん武器どうだ武器
鱗の盾が特価価格だよー

姫騎士「凄い活気だ…城下街も祭り以上だな」ドンッ

姫騎士「わっ、すまん…あたっ!すま…」ドンッ

白騎士「捕まえました」ガッ

姫騎士「し、白騎士!」

白騎士「お一人では危のうございます、人が集まる以上良からぬ考えを持つ者もおります」

姫騎士「それがどうした。そのような輩、私の剣で――」スカッ

姫騎士「」スカッスカッ

白騎士「」

姫騎士「―――――っなぁぁいい!!??」

???「……」タタタッ

白騎士「! そこか!姫様は入口でお待ちを!」ダッ!

姫騎士「えっ!?白騎士!?おーい、待ってくれ白騎士ー!!」

盗賊「よっ、ほっ」ピョンピョン

盗賊「秘技屋根渡りーってね。誰もおいらにゃ追いつけないよーん」

盗賊「今日の獲物は当たりだね!見るからに高そうな剣!高く売れるよぉきっと」キラン

白騎士「泥棒には目利きがいると聞くが本当だな」グイッ

盗賊「どぉわ!?なななな!!」

白騎士「なるほど子供か。どうりで素早い訳だ」

盗賊「なななんで!?ここは屋根伝いじゃないと来れないのに!?しかも鎧着てるのに!?」

白騎士「あいにくだったな。こう見えて身軽なのだよ私は」

盗賊「…ありかよそんなのぉ」

姫騎士「」

白騎士「有り金全て溶かしたようなお顔ですな」

姫騎士「!! 白騎士!私の剣は!?」フキフキ

白騎士「ここに」スッ

姫騎士「あぁ…良かった~…でそいつが?」ギロッ

盗賊「姉ちゃん顔汚ぇ」

白騎士「こら、こういう時はあえて見て見ぬ振りをするのが礼儀なのだ」ボソボソ

姫騎士「聞こえてるし誰のせいだと思ってるんだ!白騎士、早速憲兵につきだそう」

盗賊「げっ!?そりゃ勘弁してよお姉様」

姫騎士「誰がお姉様だ!」

白騎士「まぁまぁ落ち着いてくだされ姫様。剣も取り戻しましたしまだ子供ですし」

盗賊「そうそう、ハンセイシテマスユルシテクダサイ」

姫騎士「お人好しにも程があるぞ白騎士!見ろこいつのこの顔!これは反省していない顔だ!私にはわかる!私の大事な剣を盗んだ悪い奴だ!」

白騎士「そもそも姫様がお一人で行かなければ盗まれなかったのでは」

姫騎士「うぐっ…!」

姫騎士「うぅ…勇者を探す途中なのに白騎士が寄り道ばかりして…その上剣を盗まれたなんて考えたら私は…」

盗賊「勇者…?もしかしたら輝きの勇者の一族?」

白騎士「! 君、知っているのか?」

盗賊「この街にいるよ」

姫騎士「本当か!?案内してくれ!」

盗賊「…いいよ、許してくれたらね?」ニンッ

【酒場】

盗賊「ほらあれだよ」


勇者「んで、その時俺はこう言ったのさ。俺の目の黒い内はお前達に好きにはさせん!…ってなぁー!はははは!」

バニー「キャー!勇者様かっこいー!」

勇者「んなっはっはっはっ!!」


白騎士・姫騎士「」

姫騎士「白騎士、憲兵所に行こう」

白騎士「そうですな」

盗賊「ちょちょちょちょい!!何でだよ!案内したじゃん!嘘つき!大人は嘘つきだな!!」

姫騎士「お前こそホラ吹いてるだろ、あんな奴が勇者な訳あるか!」

盗賊「マジだって!本当にあれが一族の生き残りなんだって!!」

白騎士「ふむ…百聞は一見に如かず。本人に聞いてみましょう」スタスタッ

姫騎士「えぇ…」

白騎士「お楽しみの所失礼」

勇者「お?おぉ~あんたかっこいい鎧してるねぇ~。純白に青いマントか…イカすじゃん」

白騎士「ありがとうございます、なんでも勇者様であられるとか?」

勇者「おぅ、確かに俺こそがかの伝説の勇者の一族よ!…で、あんたは?」

白騎士「申し遅れました、私は南の王国に従事すると王国軍騎士団所属騎馬隊隊長の白騎士と申します。王の命により勇者様をお迎えに上がりました」サッ

勇者「…バニーちゃん悪いけど席外してくれ」

バニー「え~~あたしも聞きた~い」

勇者「許してくれよ。ここからは男の世界なのさ」

バニー「んもう、それじゃまた後でね♪」スタスタッ…

勇者「…これでいいだろ?ほらお連れさんの席も空けてやったぜ」

白騎士「三人分の空席…よく見ておいでで」

勇者「…まぁな。あぁ、話の前に一つだけ伝えとく」

白騎士「?」

勇者「俺は騎士が嫌いだ」

盗賊「すっげぇ!勇者すっげぇ!王国騎士からお迎えかよ!」

勇者「てめぇが連れてきたのかコンニャロー。大方窃盗罪免除の代わりに俺を売りやがったんだろ」ぐりぐり

盗賊「痛い痛い!違うって!」

白騎士「お二人はお知り合いで?」

盗賊「何を隠そう前においらが砂漠で砂サソリに襲われそうになったのを助けてくれたのが勇者なのさ!」エッヘン

勇者「で、勝手に付いてきてるだけだ」

白騎士「それはそれは…盗賊君にとっては命の恩人ですな」

勇者「そう、良い人だろう?だからそんな目で見るのはやめて欲しいんだけど」

姫騎士「……」ジーッ

白騎士「姫様」

勇者「まだ納得してない…ってとこか」

姫騎士「これは大事な任務なのだ。連れてきてから間違えましたではすまない」

勇者「なりゃあれをするしかない…か。皆さまご注目を」ゴトッ

姫騎士「?」

白騎士「これは…!」

勇者「一族に代々受け継がれた伝説の秘宝…『勇者の剣』」

姫騎士「勇者の剣だと…!」

勇者「あんた、抜いてみな」スッ

白騎士「私が?…では失礼して」

白騎士(なんという剣だ…鞘に収まっておきながら強いオーラを感じる…だがなんだこれは……不快感?)グッ

白騎士「…?」グッグッ

白騎士「ふん…!!ん…!」グググッ…

勇者「……」ニヤニヤ

姫騎士「し、白騎士?」

白騎士「むぅ……ん!!…はぁ…駄目だ、抜けませぬ…」

姫騎士「情けないぞ白騎士!私がやる!」バッ

姫騎士「見てろ!さっと抜いてインチキを…インチ…!!んんん!!」グググッ

勇者「なんだって?お姫様」ニヤニヤ

姫様「だま…れぇ…!!」グググッ

姫騎士「んんん~~ん~~~!!!」…ズッ

>>40 名前一部ミスったので修正投下

勇者「一族に代々受け継がれた伝説の秘宝…『勇者の剣』」

姫騎士「勇者の剣だと…!」

勇者「あんた、抜いてみな」スッ

白騎士「私が?…では失礼して」

白騎士(なんという剣だ…鞘に収まっておきながら強いオーラを感じる…だがなんだこれは……不快感?)グッ

白騎士「…?」グッグッ

白騎士「ふん…!!ん…!」グググッ…

勇者「……」ニヤニヤ

姫騎士「し、白騎士?」

白騎士「むぅ……ん!!…はぁ…駄目だ、抜けませぬ…」

姫騎士「情けないぞ白騎士!私がやる!」バッ

姫騎士「見てろ!さっと抜いてインチキを…インチ…!!んんん!!」グググッ

勇者「なんだって?お姫様」ニヤニヤ

姫騎士「だま…れぇ…!!」グググッ

姫騎士「んんん~~ん~~~!!!」…ズッ

姫騎士「っんはぁ!!…はぁ…はぁ…」

白騎士「姫様、大丈夫ですか」

姫騎士「はぁ…騙さ…れるものか…作り物に違い…はぁ…鞘とくっつけて抜けないように…はぁ…してるんだ…」

勇者「んっふっふっふ、んじゃま勇者の証明を致しますか」

勇者「さぁ、お立ち会い!」これぞ伝説の勇者の剣なり!」スラァン

姫騎士「抜けた!?」

白騎士「なんと…なんと美しい…!!」

盗賊「いつ見てもキレ~…」

勇者「そんでこの抜いた剣を持たせると…」スッ

白騎士「うおっ!!重っ…!!」ズゴッ!!

勇者「…重くて誰も持つ事が出来ない」ヒョイ

白騎士「これは…認めざるをえませんな」

姫騎士「…すまない、無礼であった」

勇者「お構いなく。じゃあ勇者って事も認めてもらえたしお話を進めますか!…っとぉ~その前に今度はそっちの番だぜ白騎士さん?」

白騎士「…失礼。これで良いかな」カポッ

盗賊「ひゃ!中身が…ない!?魔物!?」

勇者「馬鹿野郎、見た目で判断するんじゃねぇ。しっかし確かに面白いカラダしてるなあんた」

白騎士「えぇまぁ…身構えないので?」

勇者「あんたみたいな礼儀正しい魔物なんかいねぇよ。ただの念の為さ…野郎じゃないのかのな」ボソッ

白騎士「…?」

盗賊「しかしさしかしさ!南の国の王様からご指名だろ!?なんだろなーもしかしてスカウトかな!?」

勇者「ふっふん、まぁ何であれ俺がいれば全て解決!お任せあれだ、なっはっはっは!!」

白騎士「それは心強い、王は魔王討伐の為に勇者様のお力をお借りしたいそうなのです。是非来て頂けたらと」

勇者「悪いがこの話は無かった事にしてくれ」ガタッ

白騎士「えっ!?待ってください!何故、何故ですか!?」

勇者「俺には助けを求める多くの人達が待っているのだ」

白騎士「魔王討伐も十二分に人々の救いになりますぞ!!」

勇者「白騎士、貴方は人違いをしている。俺は勇者ではない」

白騎士「今更何を仰っているのですか!?あんなに高々に剣を掲げていたのに!!」

姫騎士「…何かおかしいな」

盗賊「……」そろ~…ガシッ!

姫騎士「どこへ行くんだ?」ニコッ

盗賊「」


姫騎士「魔物が怖い~!?」

勇者「…そうッス」

姫騎士「おま…勇者の一族だろう!?」

勇者「はい」

姫騎士「伝説の剣も使えるんだろう!!」

勇者「はい」

姫騎士「それで何で魔物が怖いんだ!!」

勇者「うるっせぇー!伝説の剣なんざ一族の血ぃ引いてりゃ誰でも抜けんだよ!俺は一族の落ちこぼれで逃げる時に思わず掴んじまっただけなんだよばーかばーかメスゴリラ!!」

姫騎士「なんだと貴様ー!!」

白騎士「…ちなみに君を助けた時は?」

盗賊「おいらを抱えて全速力で逃げた」

白騎士「砂サソリ相手にそれはそれで凄いな…」

姫騎士「白騎士、こいつどうする?」

勇者「」ボッコボコ

盗賊「ぅゎねぇちゃんっょぃ」

白騎士「…一族の生き残りである事は間違いありませぬ。一度城にお連れしましょう。大魔導士様なら何か知っているかもしれません」

勇者「えー!!やだやだ死にたくねぇよー!」

白騎士「どの道貴方の存在を知れば魔王軍がやって来ますよ」

勇者「早く行こう。王が俺を待っている」キリッ

姫騎士「なんだこいつ」

白騎士「では先に便りを送りましょう。その後修繕された馬車で帰国を――」

勇者「あー!待った待った!」

姫騎士「今度は何だ!」

勇者「マジで魔王討伐するんだよな…?」

白騎士「私の予想ですが恐らくは…」

勇者「うわー…じゃあ行かなきゃ駄目だよなー…うわー…」

姫騎士「ええい、イライラする!なんだと言うんだ!」

勇者「…実はこの剣、全力じゃねーんだわ」

白騎士「…封印のようなものがあると?」

勇者「そう、あんまりにも力が強すぎるからセーブされてるらしい。そんでそれを解く方法はただ一つ…」

勇者「――仙龍に会う」

【霧の山脈】

ヒュルルル スタッ

勇者「到着しちゃった」

白騎士「飛行移動呪文を使えるとは…」

勇者「一応勇者一族なんで」

白騎士「いやはや初めて体験しましたが楽しいものですな!姫様?」

姫騎士「…酔った」ウップ

白騎士「姫様…」

盗賊「初めてならあんなもんだよ」

白騎士「ここは霧の山脈ですか…だが見た事ない場所だ」

勇者「昔から勇者の一族しか入れない場所で普通では登ってはこれないとこなんだとさ。さぁちゃっちゃと仙龍に会いに行きますかぁ」ガクブル

盗賊「足!足!」

勇者「魔物めっちゃ怖い」

白騎士「安心してください勇者様、先日の戦より魔王軍がこの山脈に入った情報はありません」

勇者「お!そうか!」シャキッ

白騎士「しかし原生の魔物は出るでしょうから油断せずに行きましょう」

勇者「おぅ…そうか…」ズーン

姫騎士「気持ち悪い…」

盗賊「このパーティ不安しかない」

白騎士「てやぁー!」ズバッ

魔物「キャイン!」

姫騎士「はぁ!」ドスッ

魔物「クォーン!」

勇者「うおおー!」ヒョイ

魔物「ガウ!ヴ?」

白騎士「とぉっ!!」ズババッ

魔物「ギャウ!!」

白騎士「…片付いたようで」スチャッ

勇者「ふ…他愛もない」

姫騎士「……」ゴンッ!

勇者「いったぁ!?暴力反対!反対!」

盗賊「今のは勇者が悪いわー」

盗賊「しっかしさー、結構歩いたけどまだ山頂見えないね。なんか道も硬いし歩きづらくておいら疲れちゃったよ」

白騎士「霧のせいで先が見えない事も疲労の原因でしょう、少し休みましょう」

勇者「ふぅー、ご先祖様もけったいな奴に封印させるよなぁ」

姫騎士「少しいいか?その仙龍っていうのは勇者の一族とどういう関係だったんだ?」

勇者「さぁ?大昔の話だからなー…何でも当時の魔王を倒すきっかけを貰ったとかなんとか」

姫騎士「先祖の伝承ぐらい覚えとけ」

勇者「うっせうっせ!」

盗賊「仙龍かー…幻獣の中の神とも呼ばれる存在と繋がりがあるなんて…やっぱり輝きの勇者はかっこいいなー!」

白騎士「盗賊君は勇者様、というより輝きの勇者に憧れがあるみたいだね」

盗賊「もっちろん!おいらん家は小さい頃から貧乏だったから輝きの勇者の絵本が唯一の玩具だったんだ。ボロボロになるまで読みこんだよ」

盗賊「おいらもいつかかっこいい勇者になるんだ!!って心に誓ったなぁ~」

姫騎士「勇者になりたい…か。今時珍しいじゃないか」

白騎士「仕方ありませんよ姫様。男子たるもの一度は勇者に憧れるものです」

盗賊「えっ」

姫騎士「えっ」

勇者「えっ」

白騎士「んっ?」

姫騎士「白騎士…本気か?」

勇者「節穴とかそういう話じゃないな…」

白騎士「あの…なにか?」アセアセ

盗賊「…おいら女なんだけど」

白騎士「なんとぉーー!?……不覚ッ」ガクッ

白騎士「……」ピクッ

白騎士「勇者様」

勇者「…あぁ!」

姫騎士「? どうした?」


……ヒュルルルルルルルルル


竜戦士「その首いただきぃぃぃぃーー!!!」ルルルルル

白騎士「むんッ!」

ガキィィンッッ!!!

姫騎士「なっ!?」

盗賊「魔物だーー!!」

竜戦士「やるなぁ!白いの!」スタッ

白騎士「勇者様!お二人を連れ山頂へ!」

竜戦士「勇者だと!?」

勇者「任せろ!おら行くぞ!」グイッ

盗賊「わっわっ!」

姫騎士「白騎士!私も!」

白騎士「敵は一人ではありませぬ!姫様は勇者様をお護りください!!」

姫騎士「…!わかった!」ダッ

竜戦士「霧の中の翼竜達を知っていたか…なら遠慮はいらねぇ!翼竜共!逃げた三人を追え!殺せー!!」

翼竜達「ギャー!!」バサバサバサ

白騎士「……」

竜戦士「どした?お前は行かないのかぁ?」

白騎士「貴様を倒してからそうさせて貰う!」チャキ

竜戦士「…生意気なんだよぉ!!」バッ!

勇者「うおおおおおおおーーー!!!」ダダダダダダダダダッ

翼竜達「ギャー!ギャー!」

姫騎士「くっ!このままではいずれ追いつかれる…ならば!」タタタタッ

勇者「馬鹿野郎!空飛ぶ相手に剣で敵うかよ!」ダダダダッ

姫騎士「だが逃げてばかりでは騎士として!!」タタタタッ

勇者「幻惑呪文!!」グォォン

翼竜達「ギャッ?ギャッ?」

姫騎士「翼竜の動きが…!?」

勇者「立ち止まるな!少しでも早く逃げるんだよおォォーーーッ!!ダダダダダダダダッ」

姫騎士「…!いい加減にしろ!逃げて逃げて…何故戦わない!」

勇者「お前こそ馬鹿かよ!戦った所で翼竜らに囲まれて死ぬのがオチだ!俺はそんなのごめんだね!死ぬぐらいなら恥を捨ててでも生き延びてやる!生きるが勝ちだ!!!」

勇者「俺はそうして黒いのから生き延びたんだ!!!」ダダダダダッ

姫騎士「…!くそっ!」タタタタッ



竜戦士「灼熱の炎ぉー!」ゴォォォォ!

白騎士「……!」ダダダッ!

竜戦士「おっ!?おっ!?お構いなしかよ!」キィンキィン

白騎士「炎など恐るに足らず!」キィンキィン

竜戦士「ぐっ!ならこいつぁどうだぁー!凍える息ぃー!」ビュオオオオ!

白騎士「むっ!」バサッ

竜戦士「マントで隠れたとこをーー!!」グアッ

白騎士「寒かろうがぁーー!!」グルン ビュオ

竜戦士「サーベルを回転で受け流したぁ?!」バキィィン!

竜戦士「お、俺のサーベルがぁ!!」

白騎士「竜の戦士よ、命頂く!!」

竜戦士「ひっ!」

ガキィン

白騎士「なんと…!」ギリギリ

竜戦士「てめぇは…!」

黒騎士「……」ギリギリ

白騎士「黒騎士…!!」

竜戦士「なんのつもりだ黒騎士ぃ!」

黒騎士「馬鹿の回収だ。お前では奴には勝てん」キィン

竜戦士「ばっ…!」

白騎士「……」バッ

黒騎士「……そういう事だ白騎士」

白騎士「引き下がるか?黒騎士よ」

黒騎士「…そうはいくまいて!!」チャキ

白騎士「上手くはいかんか!!」チャキ

勇者「はぁ…はぁ…」タッタッ

姫騎士「もう…はっ…はっ」

勇者「重てぇ…!」パッ

盗賊「いてっ!山頂に着いたの?」ドサッ

姫騎士「こっちは…崖か」

翼竜達「ギャーギャー!」バサバサ

勇者「マジかよ…」

姫騎士「くっ…もう逃げ場はないぞ!今からは剣を振るわねば生き延びれん!!」ジャキン!

勇者「うぐぐ…もうヤケだ!あぁやってやらぁ!!かかってこいトカゲやろぉ!」スラァン

翼竜達「…!…!」カタカタカタカタ

姫騎士「…なんだ?」

勇者「おぅおぅ、どうしたどうしたぁ?もしかして勇者様の威圧にビビったんじゃね!?はっはぁー!なんだよやればできるじゃん俺!」ガクガクガク

盗賊「…あー、二人とも?それちょっと違うかも…後ろ見てぇぇーー!!!」

姫騎士・勇者「後ろ?」クルッ

ズォォォォォォォォ……


姫騎士「な…これは…巨大な…」ガタガタ

盗賊「龍の…顔…!」ガタガタ

勇者「…仙龍だぁぁぁーーッッ!!」

……スゥー…ブフゥーー――――

翼竜達「ギャアアアーー―――……」

勇者「ひぃぃぃ!!!マジかよ鼻息で翼竜の群れが吹っ飛んだぞ!!」ガタガタガタガタガタガタ

姫騎士「だがこれで助かったぞ!」

盗賊「助かったようで助かってないんじゃないのぉ!?」ガタガタ

仙龍「…全くよく眠れていたのに…ヒトの体の上で暴れおって…うるさくて敵わん…」

盗賊「喋ったぁぁ!!」

姫騎士「ま、待て!体の上とは…!この山が仙龍の身体だと言うのか!?」

仙龍「そうだとも…まだ暴れている不届き者がいるな…」

勇者「ぎゃああああー!!どんだけでかいんだぁーー!!!」ガタガタガタガタ

仙龍「お前達は誰だ…!!」

姫騎士「おいほら!」グイッ

勇者「ばっ!押すな!…ん、おほん!」ガタガタ

勇者「仙龍よ!俺は輝きの勇者の子孫!その一族だ!」ガタガタ

仙龍「なにぃ…?ふぅむ、確かに奴の血を引く者はここにいるようだ…何の用でここに来た…!!」

勇者「落ち着けぇ落ち着けぇ…世界が闇に包まれぬよう俺は魔王を討つ!その為にこの勇者の剣の真の力を解放して欲しい!!」ガタガタ

仙龍「……」

三人「……」ゴクリ

仙龍「良かろう…」

盗賊「…やったぁ!」

仙龍「剣を掲げよ…我の息吹は真実を解く…さぁ、目醒めよ…!」ブフゥーー――――

勇者「……!!!!」バタバタバタバタ

盗賊「ひぇぇぇ!!吹っ飛ばされそうだよー!!」バタバタバタバタ

姫騎士「…くぁぁっ!……えっ」バタバタバタバタ

ブフゥーーー―――――――……



黒騎士「ちぇぇい!!」キィン!

白騎士「なんとぉ!」キィン!

ウウウウウウウゥゥゥ――――――!!!

黒騎士「うぉ!なんだこの風は!!…うっ!」バタバタバタバタ

白騎士「なっ…!これは…ぐぅ!?」バタバタバタバタ

竜戦士「これはブレスか!!うぁぁー!!」バタバタバタバタ

仙龍「真実は解かれたぞ、勇者の一族よ…」

勇者「…終わり?もうない?」

姫騎士「……」

仙龍「勇者の一族よ…そう遠くない日にお前達に巨大な邪悪が立ちはだかろう…だが決して臆してはいかん…己を受け入れ立ち向かうのだ…」

仙龍「私はまた眠りにつく…さらばだ…」ズズズズズズ……

盗賊「…行っちゃった。ねぇ勇者、なんか変わった?」

勇者「…いや特に変わった感じはないが」

盗賊「嘘だろ!?なんかこー力が湧いてきたー!ってないの!?」

勇者「知るかよ!仙龍が解いたっつーなら解いたんだろ!」

盗賊「ちぇー、なんか肩透かしだなー。な?姉ちゃん」

姫騎士「……」

盗賊「姉ちゃん?」

姫騎士「…えっ?」

盗賊「大丈夫?ボーッとしちゃって」

姫騎士「あ…あぁ、大丈夫だ、ただ…呆気に取られてしまって」

勇者「無理もねぇよ。俺腰抜かしたもん。ところで深い話じゃねぇんだけど誰か替えの下着持ってねぇ?」

姫騎士「……」



白騎士「はぁ…はぁ…今のは一体…」ヨロッ

黒騎士「……!」グッ

白騎士「風羽(かざばね)!待て黒騎士!」

ルゥールゥールゥー―――……

白騎士「黒騎士ぃーーー!!お前はぁーーー!!私はぁーーー!!」

お昼休憩してきやす
ご飯食べたら再開する予定です

食べてきました
再開しますー

【魔王城】

ヒュルルルル スタッ

竜兵1「竜戦士様に黒騎士様だ!」

竜兵2「戻ってこられた!」

竜戦士「黒騎士ぃ…!余計な真似しやがって!てめぇが助けに来なくても奴を」

黒騎士「黙れ単細胞が!」

竜戦士「んだとぉ!…そうだ。奴らの中によぉ、勇者って呼ばれた奴がいたな。ありゃもしかしたらお前が皆殺しにしたはずの輝きの勇者の一族じゃねぇのか?」

黒騎士「……」

竜戦士「はっ!黒騎士様ともあろうお方が取り逃しかよ!この事を魔王様に知られたらどうなるかな~♪」

黒騎士「…貴様こそ人の事が言える立場か?」

竜戦士「あぁ?」

黒騎士「魔王様の命を無視して独断で兵力を動かしておいて…知らぬ存ぜぬでは通るまい」

竜戦士「うっ…」

黒騎士「先代は血の気はあっても聡明であったそうだが…貴様には血の気しかない」

竜戦士「…何が言いてぇ」

黒騎士「先代が見捨てた恥。貴様はその切り捨てられた尻尾だ」

竜戦士「…上等だ。剣を抜けやぁ!!てめぇは前から気にくわなかったんだ…人間が!!」ジャキ!

黒騎士「貴様はその力!何に使う!」チャキ!

竜戦士「俺の為だ!敵を殺し先代を殺して俺は成り上がった!!なんなら魔王を殺して魔王軍のトップにすらなるつもりさ!!」

竜戦士「全員俺にひれ伏せやぁぁーーーー!!!」ズァッ!

黒騎士「傲慢ッ!!!」ヒュン!

シュピィィ…ン

竜戦士「」ドッ

竜兵1「ひっ!竜戦士様の首が!!」

黒騎士「他に異議がある者は申し出よ!」

竜兵達「……」ザワザワ

牛闘士「貴様ら!一体何の騒ぎだ!!」

竜戦士「」ドクドク…

牛闘士「む、これは…」

黒騎士「…軍の規律を乱し魔王様の首を狙う不穏分子を排除しただけです」チンッ

牛闘士「…愚かな竜め。戦果に呪われたか」

牛闘士「黒騎士、竜兵団はお主が引き受けよ」

黒騎士「私が?」

牛闘士「彼奴等は強者に従う。竜戦士を殺したその時からお主が竜兵団の長なのだ。それで良いな貴様ら!!」

竜兵達「我らの新しい長、黒騎士様に忠義を」ザッ

黒騎士「…分かりました。我が部隊に引き受けましょう」

牛闘士「気をつけよ?竜は気性が荒い」

黒騎士「黒騎士と名乗るなら扱ってみせましょう」

牛闘士「…よろしい。魔王様にはワシから話しておこう。お主は編成を考えよ」ノッシノッシ

黒騎士「…御意」

【謁見の間】

白騎士「失礼します。白騎士、只今勇者様をお連れし戻ってまいりました」

王様「うむ、よくぞ戻ってきた!貴公なら必ず成し遂げると信じていたぞ。して、その者が…?」

勇者「お初にお目にかかります国王陛下。私が輝きの勇者の一族、勇者であります。このような場に呼んで頂き光栄にございます。隣にいるのは私の仲間である盗賊です」

盗賊「あ、あのおいらいやあたくしは、とうとう盗賊と申しますでございます!!」

王様「そう固くならずとも良い。勇者殿、ワシの呼びかけによく応じてくれた。心より感謝する」

大臣「我が国は西の王国と協力し、魔王討伐の準備にかかっている。勇者殿にも是非とも協力して欲しい」

勇者「(本当は超嫌だけどここまで来たら断れないよなぁ…)私の力で良ければ喜んでお貸し致しましょう」

王様「おぉー!そうかそうか、感謝するぞ勇者殿!!」

王様「実は城下でも年に一度の祭もかねて勇者殿の歓迎の宴の準備をしていたのだ!明日は存分に楽しんでくだされ」

勇者「それは楽しみですね。お心遣い感謝致します(逃がす気ねーじゃねーかこんちくしょー!)」

大臣「白騎士…姫様はどうされたのだ?」ヒソヒソ

白騎士「御気分が優れないらしく、先に自室に戻られております…実は帰途の間いつもと様子が違っておられまして…」ヒソヒソ

大臣「ふむ…何かあったのだろうか」ヒソヒソ

白騎士(姫様の様子が変わったのは霧の山脈以降…恐らくあそこで何かがあったのだろう。もしや…私と同じ何かを見たのか…?)

白騎士(あの風の中…一瞬よぎったあの風景…人影は一体…)

【城の別塔】

コンコン

おババ「おんや、来なすったね」

弟子1「誰か」

姫騎士《夜分遅く申し訳ない、姫だ》

おババ「開けたげな」

弟子1「どうぞ」ガチャ

姫騎士「すまない…」

おババ「よう来なすった姫様…あんた達は席を外しな」

弟子1「はい、お師匠様」

弟子2「では…」ガチャ バタン

おババ「これでいいね…あんたは小さい頃から人に弱みを見せん子だからねぇ」

姫騎士「おババ様ぁ!」ガバッ

おババ「おお、よしよし…神の龍様に会いなさったね。何か見たのかぇ」ナデナデ

姫騎士「おババ様、私は恐ろしゅうございます。あの風の中で私は知らぬ風景、知らぬ人々といました。しかし、不思議と懐かしい思いもしました。私は父様の子ではないのでしょうか」

おババ「心配せずともあんたは間違いなくあやつの娘だよ…」

姫騎士「ならばあれは幻だったのでしょうか」

おババ「そうじゃないよ、神の龍様は忘れていた記憶を思い出せてくださる…忘れていただけさ。何にも恐れる事はない」

姫騎士「…おババ様、私が誰であろうと味方であってくれますか?」

おババ「勿論、赤子の頃からあたしはあんたの味方だよ」

姫騎士「あぁ…」ギュッ

おババ「綺麗な髪になりなさった…乙女を覚えたね…」ナデナデ

【魔王城】

魔王「時は来た…いよいよ計画を実行に移す時だ」

妖術鳥「我ら魔王軍の悲願が叶うのですね」

牛闘士「我らの血と肉と魂。存分にお使いください。魔王様に全てを」

魔王「うむ…まずは聖域を消す。黒騎士はおるか?」

黒騎士「はっ、ここに!」

魔王「黒騎士よ、人間の作った聖域を消せるのは同じ人間であるお前にしか出来ん。だが闇の力に染まった今のお前では聖域はくぐり抜けれぬ」

黒騎士「では如何にして」

魔王「この魔法玉に一度お前の力を封じ込め、只の人間に戻す。さすれば聖域に入れるであろう」シュウウウウ

黒騎士「くぉ…!!おおお!!」ガクッ

魔王「魔法玉はお前に渡す。聖域を消せたら飲み込むといい。闇の力が再び体に宿ろうぞ」

男(黒騎士)「鎧が…」カランカラン

魔王「行け黒騎士よ。我らの宿願の為に」

男「はっ!この命に変えても必ずや!!」ザッ

【城下街】

男(ここが南の王国…奴の、白騎士の居場所か)

男(ここに奴がいる…だが今は魔王様の命を遂行するのが先だ)

ワイワイガヤガヤ

男「祭りか…人間共よ、一時の平和を謳歌するがいい。私には好都合だ、この人の多さは潜り込みやすい」ドンッ

盗賊「…ってぇ~~」

男「…?なんだ、子供か」

盗賊「なんだじゃねーよこんにゃろー!ウドの大木みたいに突っ立ってんじゃねーよ!!おかげで怪我しちまっただろ!慰謝料だ、慰謝料寄こしな」

姫騎士「やめんか馬鹿者」ゴンッ

盗賊「ぴぃ!!」

姫騎士「連れが失礼した。申し訳ない」

男「いや、その坊主の言う通りだ。こちらこそすまない(余計な面倒は避けておくべきだな)」

盗賊「」

姫騎士「…ぷっ」

男「…何か?」

姫騎士「いやこちらの話で…ふふふ」

盗賊「おいらそんなに男っぽいかなぁ…」

男「???」

姫騎士「この街では見かけぬ顔だが…今日は祭りで?」

男「まぁ、そんなところだ」

盗賊「兄ちゃんも初めてさんなんだな。なら一緒に回ろうぜ~」

男「は?いや私は」

姫騎士「そうだぞ盗賊、彼にも都合があるだろう」

盗賊「いいじゃんいいじゃん、姉ちゃんだってせっかくいつものガチガチな鎧じゃない可愛い服着てんだからさ、チャンスじゃないの」ヒソヒソ

姫騎士「チャンス?」

盗賊「ニブいなぁ。男を知るチャンスだって事!」ヒソヒソ

姫騎士「なっ!?ハ、ハレンチな!!」

盗賊「なぁ兄ちゃん!このお姉ちゃん綺麗だよな?」

姫騎士「ばっ!ばっ!」

男「(よくわからんが肯定しといた方がいいだろう)あぁ、美しい方だと思う」

姫騎士「!!??」

盗賊「じゃあ一緒に行こー!行こー!」グイグイ

姫騎士「お、おいって!」

男「???」

盗賊(本命は別にいるかもしれないけど、姉ちゃんはもうちょっと色恋沙汰の耐性つけなきゃねぇ。兄ちゃんには悪いけど練習台になってもらうよん)

弓引き屋「はい、ハズレ~」

盗賊「ぐぅ~、この弓の弦緩いんじゃないの?」

弓引き屋「がはははは、嬢ちゃんの力が弱いんだよ。もっと腕に力入れな」

盗賊「うぅ~~」

男(何故こうなった…ええい、こんな事をしている場合では!)

姫騎士「すまない、強引に付き合わせてしまって…」

男「あ、いや…」

姫騎士「……」

男「……」

姫騎士(どうしよう…話す事が思いつかん)

男「この祭りは勇者の歓迎もかねてと聞いたが」

姫騎士「え?あ、ああそうだが」

男「ふん、それにしてはまるで世界が平和になったかのような騒ぎだな。まさかたった一人の人間で戦争に勝利できると思っているのではないだろうな」

姫騎士「それは…確かにあのバ…勇者殿一人だけで勝利できる訳ではないが…だが多くの人々に希望をもたらす事は出来る」

男「希望?」

姫騎士「悪には剣を、弱者には手を。呆れるほどお人好しだし真面目かと思えば人をからかったり…」

姫騎士「だが誰よりも頼りになり誰よりも愛される…彼は人々の未来を照らす希望そのものだ」

男「…随分と細かい希望だな」

姫騎士「あ!いや特定の誰かという訳じゃないんだ!!」アセアセ

姫騎士「弱ったな…私は何を喋ってるんだ…何だか貴方が他人のような気がせずつい…」

男「……」

盗賊「おーい!兄ちゃーん!」

男「ん?」

盗賊「助けてくれぇ~あと矢が二本しかないのに全然当たらないんだよぉ~、あいつインチキオヤジだよぉ~」

弓引き屋「インチキとは酷いな嬢ちゃん」

男「…貸せ」

盗賊「頼んますアニキィ!!」

男「…女、確かに希望の恩恵を受ける人間は強い」キリリッ…ヒュンッ

カッ!

盗賊「うわど真ん中!」

男「しかし逆もまた然り」キリリ…

姫騎士「逆…?」

男「いざ希望を失った時、それにすがっていた人間は…」ヒュンッ

ズカッ!

男「…簡単に脆く崩れ去る」

盗賊「さ、先に当たった矢に当てた…!?」

弓引き屋「ひぇ~矢が食い込んでら。長年弓引き屋をしてるがこんな芸当初めて見たぜ。あんちゃんすげぇな!」

男「希望は所詮人の願望…期待し過ぎると痛い目を見るぞ…」ポンッ

スタスタスタッ…

姫騎士「……」



【城門】

見張り1「祭りを眺めながら門番って新しい拷問だよな。おまけに城内は歓迎パーティー…辛ぇなぁ」

見張り2「ぼやくなよ。もうすぐ交代だ。そん時行こうぜ」

見張り1「野郎二人で何が楽しいんだ…ん?」

見張り2「どうした?」

見張り1「向こうの方で何か音がした…見てくる」

見張り2「サボんなよ~」

見張り1「確かこの辺だが…むぐっ!」コキッ

男「恨むなよ。服が必要だったんだ」ガサゴソ


見張り2「おぅ、どうだった?」

男「何もなかったが、念の為中からも見てくるよ」

見張り2「すぐ戻ってこいよ~。ふわぁ~あ」

男「…奴は左遷だな」スッ

男「城には入れた。目指すは別塔か…くくく、もうすぐだ白騎士。貴様の苦悶する姿が見れる…待っているがいい!!」



白騎士「!!」ゾクッ

姫騎士「!!」ゾクッ

【別塔】

弟子2「お師匠様」

おババ「おや、何だろね…よくないのが来おったかい」


【城下街】

盗賊「なんだよ姉ちゃん!急に城に戻るなんてー!」タタタッ

姫騎士「すまない!(なんだこの胸騒ぎは…)」タタタッ


【城内パーティー会場】

勇者「私も様々な国を渡しましたが王女様達のように星のような美しさを持った女性はおられませんでしたね」

第一王女「まぁ勇者様ったらおほほ」

第二王女「他の婦人にも仰ってるのでは?」

勇者「まさかそんな。ははは」


騎士団長「どうした白騎士」

白騎士「…一瞬何かを感じました」ヒソ

騎士団長「…侵入者か?」ヒソ

白騎士「わかりませぬ」

騎士団長「お前の勘は当たる。念の為部下達に警戒に当たらせろ」

白騎士「はっ、私も向かいます」

騎士団長「任せた」

【別塔入口】

近衛兵「ん?何用だ?」

男「交代の時間だ」

近衛兵「交代?そんなのは聞いて――うぐっ!!」ドスッ

男「……」ギィッ…バタン

コツ…コツ…コツ…コツ

弟子1「お師匠様」

おババ「あんた達は逃げな」

弟子2「お傍にいます」

おババ「馬鹿だね、若い命を散らすこたないよ」

コツ…コツ…コツ…コツ

ガチャ ギィ…

男「大魔導士様で?」

おババ「お…おほっ、おほほほ!誰が来るかと思えばいっひっひっ!そうかいそうかいいっひっひっ」

男「……」

おババ「馬鹿だねぇ、良いようにされおって…それでぇ?あたしを殺すかい!?」

男「その命で」

おババ「闇に呑まれる若造に負ける程老いぼれちゃいないよ…」

男「お覚悟!」ダッ!



ガシャアア……ン

姫騎士「! おババ様の塔からだ!」タタタッ

姫騎士「入口の近衛兵が!おい、お前!大丈夫か!おい!」

姫騎士「…ッ!剣を借りるぞ!」ガチャ

タカタカタカタカタカタカタカッ!

姫騎士「おババ様!!」バンッ!

おババ「」ドクドク…

男「……」

姫騎士「――――おのれぇッッッ!!!」ダッ

キィンキィンガキィン!

バンッ

弓兵「姫様!お退きを!」キリリ

男「!!」パクッ ダッ

姫騎士「!」サッ

カッ カカッ

男「はっ!」バッ

兵士1「窓から飛び降りたぞ!」

兵士2「人間か!?すぐに警鐘を鳴らせ!」

姫騎士「おババ様!しっかいしてください!おババ様!!」ガバッ

姫騎士「――ああッ…!!…ッ!」ダッ

兵士1「姫様!」

白騎士「城壁に弓矢隊を配置しろ。他の兵士達にもすぐ出陣出来るよう準備をさせておけ」

騎士1「はっ!」

侵入者がそっちに行ったぞー!

白騎士「むっ?」


男「……」タタタタタタッ

白騎士「あれは…黒騎士か!」スラッ

白騎士「…!?黒騎士と言ったのか…?私は」

男「…!」スラッ タタタタタッ

白騎士「止まれぇッ!」ブンッ

キィン!

男「そこを退け、白騎士。今は貴様の相手はしてはおれん」ギリギリ

白騎士「やはり黒騎士か…!答えよ!お前が何故ここにいる!」ギリギリ

男「聖域を消した。この意味がわからぬ貴様ではあるまい!」

白騎士「大魔導士様を…!?」

男「ふふふ、直に更なる恐怖がお前達を襲う事にもなろう」

白騎士「…まさか!」キィン!

姫騎士「うわああああ!!」ダダダッ

男「!!」

白騎士「姫様!!」

姫騎士「死ぃねぇぇーッ!!」ブンッ

ヒュッ

姫騎士「この!このぉ!」ヒュンッヒュンッ

男「太刀筋が甘い!死ねぃ女!!」ズァッ!

ガキン! ズコッ!

姫騎士「何!!」

白騎士「……!」

男「剣と腕で受け止めるか!器用な奴め」

姫騎士「離せ白騎士!そいつは私が殺す!!」

白騎士「なりません!姫様はいずれ民を導くお方。怨念で人を殺す事は許されませぬ!!」

姫騎士「おババ様が殺されたのだ!恨みを晴らして何がいけない!!」

白騎士「ならばその恨みだけ、この無能な鎧に存分に叩きこみなされ」

姫騎士「!!」

弓兵2「いたぞ!あそこだ!」キリリ…

ヒュンヒュンッ

白騎士「姫様!危ない!」ガバッ

男「ちっ!」タタタッ…

白騎士「待て!黒騎士!」

姫騎士「黒騎士!あれが…黒騎士…」

白騎士「…ふぅ、姫様お怪我はありませんか?」

姫騎士「白騎士…おババ様が…おババ様が…私…私…」ポロポロ

白騎士「そうです…お気持ちはわかります。ですが今は耐えお鎮まりください…」ギュッ

姫騎士「うっ…うっ…」

騎士2「隊長、城より北の地平に魔物の大群が現れたとの報告が。騎士団長はこれを魔王軍と断定し迎撃用意をせよとの伝令です」

白騎士「わかった…悪いが姫様を頼む」

騎士3「はっ!」

白騎士「姫様、後はお任せください…私の馬を出せ!」

騎士2「姫様、こちらへ」

姫騎士「……」

【入口門】

門番1「早く門を閉めるんだよぉ!」

ガラガラガラガラガラガラ…

門番2「おい、あれ本当にこっちに来るんだよな?」

門番1「あれが観光に見えるか?くそったれこんなの初めてだぜ!」


門番1「地上と空が魔物で埋まって地平が見えねぇ!!」




魔王「…皆の者!今日は記念すべき日となろう!闇が光を飲み込み世界は我ら魔王軍の物となるのだ!」

魔王「さぁ、行け!我が同志達よ、大地を奴らの血で染め上げよ!!」

牛闘士「全軍ーッ!攻撃開始ぃーッ!!」

ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォッッッ!!!



弓隊長「来やがった!弓矢隊構えー!充分引きつけてから撃つんだ!!砲撃隊は何してやがる!」

弓兵3「準備中であります!」

弓隊長「砲撃隊の奴らは自殺志願者の集まりかぁよ!?……よし、放てぇー!!」シュパパパパパパパパ…

【城内パーティー会場】

王様「魔王軍だと!?」

騎士団長「はい、かなりの数です。恐らく全軍投入してきたと思われます」

大臣「大魔導士様は!聖域はどうしたのだ!」

騎士団長「…残念ながら殺害されました」

王様「なんと…」ヨロッ

大臣「王様!」

王様「…全軍を持ってきたという事はここで決着をつける気か…魔王め!」

王様「騎士団長、こちらも全力で迎撃せよ。それと城下にいる民達を城に避難させるのだ!」

騎士団長「既にいくつか動いております、私もこれより現場に赴きます」

王様「頼んだぞ」

騎士団長「では、行ってまいります」タタタッ

王様「おババ様が…そうか、おババ様が…。姫は…?姫はどうした!?ワシの娘!」

【入口門】

門番2「おーい!騎馬隊の出陣だ!門を開けろぉー!」

兵士3「閉めろと言ったり開けろと言ったり…どっちかにして欲しいよ全く!」

ガラガラガラ…

ヒュッ!

兵士3「!? 今なんか通ったぞ!?」

兵士4「気のせい…だろ!」ガラガラガラ…



牛闘士「敵の弓矢隊のせいで上手く進めてないか。アレを出せぃ!!妖術鳥、何をしておる!お主達で弓矢隊を潰さんか!」

妖術鳥「こっちの都合もあるんだ!指図するんじゃないよ!行くよお前達!」バッサバッサ

ミノタウロス「族長、あれを」

牛闘士「どうした?」

男「牛闘士殿!」タタタッ

牛闘士「黒騎士か!」

男「はぁ…はぁ…流石にあの距離は疲れるな…」

牛闘士「良くやった、大義であったぞ!魔王様もお喜びになるであろう」

男「ありがとうございます」

牛闘士「お主の馬と鎧だ。息を整えたら前線に出よ」

男「かたじけない」

牛闘士「妖術鳥は知らぬがワシはお主には期待している。成す男だとな」

男「牛闘士殿…」

ミノタウロス「族長!人間の軍隊です!」

男「…騎馬隊だ。あれは手強いぞ」

牛闘士「ほぅ、あれが風に聞く白騎士自慢の騎馬隊か。面白い、ワシとどちらが強いか比べてみるか」

男「私もすぐに駆けつけます」

牛闘士「いらぬかもしれぬぞ?斧を使うまでもない。さぁー…お手並み拝見!!」ザッザッ…!

騎馬隊「突撃ぃぃーー!!!」ワァァー!

牛闘士「うんだらぁぁーーーッッ!!!」ドドドドドドドドッッ

騎馬隊「ぐああああぁぁぁーー!!」ドカドカドカズシャアー…

牛闘士「ぬはははははは!!!突撃はいいなぁ!!ぬははははは!!」フンスーッ

【城下街】

妖術鳥「やれやれーお前達!人間達を殺すんだよ!」

ハーピィ1「爆裂呪文!」ドカン!

弓兵「ぎゃあああ!!」

ハーピィ2「火球呪文!」ゴゥッ

兵士「熱い熱いぃ!母さん母さーん!!」

白騎士「ハーピィ達がもうこんな所にまで…!」パカラパカラ

ハーピィ達「キャハハー!」

女「た、助けて…誰か助けてぇ!」

子供「うわぁぁーーん!」

白騎士「させるかぁ!」キリリ… ヒュッ!

ハーピィ3「うぎっ!」ドスッ

ハーピィ4「ぎゃ!」ドスッ

女「あ…?あ…?」

白騎士「城へ逃げよ!」パカラパカラ…

女「白騎士様!…坊や、行きましょう!」

妖術鳥「白騎士!…あいつには関わりたくないね」バッサバッサ

部隊長「大楯隊よーうい!!絶対に門を破らせるなよ!来-るぞぉーー!!」

ゴーレム「ゴォォォーー!!」ブゥンッッ

大楯隊「うわあああああ!!!」ズガァァ

バキバキ

弓兵4「大楯隊がひと蹴りで全滅した!」

弓隊長「門を壊された…こりゃあマズイぞ!」

ゴーレム「ゴォォォ…」ズン…ズン…

白騎士「タイラントゴーレム!あんなものまで持ち出すか!」パカラパカラ

白騎士「ありったけの爆裂球ならば!」

ブンッ

ゴーレム「ゴッ?」ヒュルルルル

白騎士「はじけろ!!」キリリ… ヒュッ!

ボガァァァ―――――ン!!

ゴーレム「ゴォォォー…!!」ズズゥーン…

弓兵3「あんなでかいゴーレムを!」

弓隊長「白騎士殿か!流石にやりますなぁ!ははは!」

白騎士「巨人型には砲撃と魔法で対処せよ!弓矢隊は上空の魔物に集中せぇい!ワン、ツー、スリーで休める暇を与えるな!」

白騎士「私はこれより前線に討って出る!民の救助を忘れるなよ!」パカラパカラ…

【城内】

盗賊「勇者ー!勇者ー!どこだー!?」タタタッ

勇者「……」ガサゴソ

盗賊「いた、見つけた!勇者何してんだよ!心配したじゃねーか」

勇者「何してるって見りゃわかんだろ。逃げる準備だよ」

盗賊「逃げる!?」

勇者「当たり前だろ!魔王が直々に攻めてくるなんて聞いてねぇっての!今の内に裏から逃げりゃまだ間に合うぜうひひひ」

盗賊「だ、駄目だよそんなの!白騎士や姉ちゃんや皆戦ってるのに!逃げるなんて―――」

勇者「勇者だからか!?」

盗賊「!!」ビクッ

勇者「勇者だから魔物とは戦わなきゃ駄目だってか!!勇者だから逃げるな立ち向かえってのか!!」

勇者「親父も兄貴もそう言って死んだ!それで何が残ったと思う?勇敢に立ち向かっただの英雄だっただの、ただの美談だけだ!!」

勇者「ふざけるんじゃねぇ!!命かけて誰かの話のタネになるだけなら勇者なんて辞めてやらぁ!!」

盗賊「…!!」

勇者「はっ、流石に気付いたろ?俺はお前が憧れる勇者様とは程遠い存在なんだよ。一族ってだけ…ただ血が流れてるだけのクズ野郎さ!!」

勇者「目が覚めたなら大好きな白騎士達のとこへ行けよ。あいつの方がよっぽど勇者らしいぜ…俺ぁおさらばさせて貰うからな」

盗賊「…でも…でも!あんたはおいらを助けてくれたじゃないか!!」

勇者「それがどうした!砂サソリと比べて―――」

盗賊「戦わなくていい!!」

勇者「!」

盗賊「勇者だからって戦わなくていい!逃げたっていい!でも…助けを求める人を見捨てるなんて!それだけはやっちゃ駄目なんだ!!」

盗賊「勇者は皆の憧れなんだぞ!あの時おいらを抱えてベソかきながら必死に逃げてたあんたは傍から見たら正直めちゃくちゃ情けねぇけど…本当に救世主だった!すっげぇカッコいいと思ったんだ!」ポロポロ

盗賊「あんただからここまで付いて来たんだ!一族じゃない!あんたがおいらの勇者なんだよぉ!!」

盗賊「だから逃げるなんて…落ちこぼれだなんて…言わないでくれぇ!!」グスッグスッ

勇者「……!!」ポロポロ

騎士団長「その子の言う通りだ」

勇者「騎士団長!?あ、いやこれはその…」

騎士団長「勇者殿、失礼」ガッ

勇者「へぁ?」

騎士団長「ぬぅん!!」グアッ

ゴッッ!!

勇者「んが!!?」ウワンウワン…

盗賊「うっわ、すっげー頭突き…」

騎士団長「騎士団流の気合術です。よく聞いてくだされ勇者殿」

騎士団長「勇者殿の事は全て白騎士から聞いております。魔物が怖い事も真っ先に逃げて生き延びた事も。無論、王も大臣も知っております」

勇者「いっ!?…だったら何で俺なんかを」

騎士団長「全ては民の為。闇に怯える民達には勇者殿は光を与えてくれる救世主のような存在…希望なのだ」

騎士団長「今敵の奇襲を受け兵も統率が乱れ、逃げ遅れた民も混乱して避難もままならない」

騎士団長「戦えとは言わん。しかしどうかその身を民らの前に見せ言葉を与えてくれ!それだけでも救われる者がいる」

勇者「こんな俺が…だけど」

騎士団長「…いたいけな少女にあそこまで言わせたのだぞ。貴様も男なら立ち上がらんか!!」

盗賊「勇者…」

勇者「へ…へへっ、本当に年貢の納め時かよ…あぁ、わかったよ!この勇者様が!お前らを救ってやる!!」

盗賊「それでこそおいらの勇者だよ!!」

勇者「ただぁし!団長、あんたも来てもらうからな。ぶっちゃけ魔物との戦いは俺ぁ雑魚オブ雑魚だ!しっかり守ってくれよ!」

騎士団長「ふっ、喜んで!勇者様の護衛を務めたとあれば八代先は自慢にもなりましょうぞ」

勇者「行ぃくぞー!俺に続けぇー!」ダダダダダッ

【城門前】

武器屋「一体外はどうなってるんだ!」

荒くれ「魔物の大群が来てるんだろ!」

兵士5「落ち着け!落ち着くんだ!」


町娘「お願いします!母が、母がまだ見つからないんです!」

兵士6「うるさい!今それどころじゃないんだ!」


兵士4「もうお終いだ…」

兵士3「勝てる訳ないんだ…」

ギャアギャアザワザワ


勇者「みんなぁぁー!!!」

全員「!!」

勇者「……」

「なんだぁ?」「ありゃあ勇者様だぜ」「勇者様…」ザワザワ

勇者「皆聞いてくれ!今この国は魔王軍に攻め込まれている、敵は街にまで迫っているらしい」

「なんだって!?」「そんな…」「この街は駄目なのか!?」

勇者「しかし不安になる必要はない!!何故なら俺がいるからだ!約束しよう、勇者たる俺の目の黒い内は奴等の好きなようにはさせない!!」

勇者「俺はこの…勇者の剣に誓う!!」

スラァン

「おぉ…勇者様の剣が」「なんと言う神々しさだ…」「そうだ、勇者様がいれば安心だ!」

勇者「だが皆も協力して欲しい。城下にはまだ逃げ遅れた者達がまだいる。今こそ絆を見せる時だ、城への避難を促してくれ!」

騎士団長「お前達もだ、兵達よ!それでも誇りある王国兵か!項垂れてる場合ではないぞ!」


武器屋「こうしちゃいれねぇ!他の奴らに知らせてくらぁ!」

荒くれ「俺もだ!」


兵士6「お母様は我々が責任を持って探します」

兵士5「だからあなたは城へ避難を」

町娘「ありがとうございます…ありがとうございます…」


兵士4「そうだ、まだ終わってない!」

兵士3「俺達には勇者様がついてるんだ!」

ワァァァァァァ!!!


勇者「……」

騎士団長「お見事」バンッ

勇者「いっつ…!へへ、まだバクバクいってら…」

盗賊「カッコ良かったよ勇者!」

姫騎士「おーい!」タタタッ

盗賊「姉ちゃん!」

騎士団長「姫様、どうなされたのです」

姫騎士「騎士団長も。良かった、白騎士はどこか知っているか?」

騎士団長「ここにはいません。外で戦っているはずです」

勇者「そんなの知ってどうするつもりだ?」

姫騎士「白騎士の援護に向かう」

盗賊「えぇ!?危ねぇよ!」

姫騎士「私もこの国の剣だ。一人鞘に収まっているつもりはない」

騎士団長「ならば馬をお使いください。すぐにご用意します」

姫騎士「なんだ、止めないのか」

騎士団長「以前の姫様ならお止めしていましたね」

姫騎士「ふ、そうか…」

勇者「なら俺も行くぜ」

盗賊「えっ!勇者大丈夫なの!?」

勇者「全然!」ドヤァッ

盗賊「あらら」ガクッ

勇者「だが女一人行かせるのは勇者の名が廃るってもんさ!」

姫騎士「お前…」

盗賊「勇者が行くならおいらも!」

姫騎士「ふふ、後悔するなよ。勇者様」

兵士6「馬をご用意しました!」

姫騎士「では行ってくる」トスッ

勇者「おら、後ろ乗れ」トスッ

盗賊「うりゃ!」トスッ

騎士団長「お気をつけて」

姫騎士「はいやー!」パカラパカラ




妖術鳥「勇者はっけーん!!」バッサバッサ



勇者「げっ!なんだあのでけぇハーピィ!」パカラパカラ

妖術鳥「勇者を殺せば大手柄だよ!連続氷弾呪文!!」ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュ

姫騎士「くっ!」パカラパカラ

盗賊「勇者危ねぇー!!」

勇者「うっ!わっ!ぎゃー!」パカラパカラ

妖術鳥「あぁーははははははは!!!」バッサバッサ

騎士団長「妖術鳥、浅はかな鳥女め…俺のスピアを持てぃ!」

騎士団長「王国騎士団の怒りの一撃ぃ!受け取れぇぇい!!」グググッ…ブンッ!!


ギュ――――――ン

妖術鳥「うげっ!!」ドスッ

妖術鳥「ぎぃやあああ!!腕が!あたしの腕がぁぁぁあああ!!!」ヒュー クルクルクル

勇者「うおおお!?あのハーピィこっちに向かって落ちてくるぞ!」パカラパカラ

盗賊「姉ちゃん危なーい!」

姫騎士「…!妖術鳥、民を傷つけた報い。その身で償うがいい!!」スラッ

姫騎士「チィエストォォォ!!」パカラパカラ

妖術鳥「ぐぎゅああがががが!!」

スラァァァァァァァァッッシュ

ドチャッ

盗賊「ひぇ~、縦に真っ二つ…」

勇者「あの女に喧嘩売るのもうやめよう…」パカラパカラ

【平原】

白騎士「いやー!」パカラパカラ

竜兵「ぎゃあ!」ズバッ

白騎士「でぇい!」パカラパカラ

ミノタウロス「ぐぇあ!」ズバッ

白騎士「これではキリがない…!」パカラパカラ

牛闘士「ふぬぅ!」ブンッ

白騎士「!!」バッ

馬「」ドシュッ! ズザザ

白騎士「クリア号…!!」スタッ

牛闘士「お主が白騎士だな」フンスーッ

白騎士「いかにも」

牛闘士「ワシはミノタウロス族族長、牛闘士!!いざ尋常に勝負ぅぅぅーー!!!」ドスドスドスドスッ!

白騎士「受けて立つッ!!」スッ

牛闘士「居合上等ぉぉぉ!!!」グオッ

シュピィィ…―ン

牛闘士「……ふっ」

白騎士「……」スー…キン

牛闘士「やは…り…敵わぬ…か」ドサッ

目がしっぱしぱするので一旦投下中断します
再開は夜に出来たら…

再開します

白騎士「…クリア号、今までよく戦ってくれたな。…来たか!」

黒騎士「白騎士ぃぃぃぃ!!」パカラパカラ

黒騎士「とぉ!」バッ

白騎士「!!」スチャッ

キィィィン!

黒騎士「白騎士、今すぐ兵を退け」ギリギリ

白騎士「何!?」ギリギリ

黒騎士「貴様らの城は陥落寸前!最早勝敗は決した、互いにいたずらに命を散らす必要はあるまい?」

白騎士「…答えはお前がよくわかっているだろう!」

黒騎士「そうだとも!!」キィン

黒騎士「うぉぉ!」ブンッ

白騎士「くっ!聞いてくれ黒騎士!お前もあの風の中で見たはずだ!」

黒騎士「!」

白騎士「もし私と同じものを見たのならお前は――」キィン

黒騎士「黙れッ!」グルン

白騎士「回し蹴り!」うおっ!」ドカッ

黒騎士「他に気を回している余裕があるのか?私は決着をつける気でいるぞ!」

白騎士「私は…!」

黒騎士「喋るなぁぁぁ!!」カキカキィンギィン!

白騎士「くぅ…ならば倒した後で話を聞いてもらう!」ヒュオ!

黒騎士「ぐっ!」ブシュッ

白騎士「貰った!」

黒騎士「そうは!!」バサッ

白騎士「しまっ!マントで視界が…」

黒騎士「爆裂呪文!!」

ドゴォン!!

白騎士「ぬあああ!!」ガッ ガッ ズザザ

黒騎士「白騎士ぃぃぃぃ!!」ダダダダダッ

白騎士「くっ…」ピシッ…

黒騎士「だぁぁ!!」ブンッ

白騎士「はっ!」ゴロン パシッ

黒騎士「弓だけではなぁ!」

白騎士「こうゆう使い方もある!!」ブンッ

黒騎士「ぐはっ!!」バキィ

白騎士「足技はお前だけじゃないぞ!!」ギュン

黒騎士「がっ…はっ!!」ゴスッ

白騎士「拳はおまけだ!!」ブンッ

黒騎士「ぬぐぁ!!」バキッ

パシッ

白騎士「掴ま…!」

黒騎士「…腕!頂いたぁ!!」ズバッ

白騎士「なんたるー!!」

黒騎士「爆裂呪文!」

ドゴォン!

白騎士「ぐぅぅ!!」ズザザザッ

黒騎士「耐火マントで咄嗟に防いだか。流石に二度は通用せぬわな。だが片腕は…」バキンッ

黒騎士「潰したぞッ!!」

白騎士「…それで勝ったつもりか?」ピシシッ…

黒騎士「くくく、そうだ…この程度で折れる訳がない…」

白騎士「私に勝ちたければこの心!砕いてみるがいい!!」

黒騎士「滾る!滾るぞ!!私の好敵手!!」



パカラパカラ

盗賊「いた!あそこだ!」

勇者「! あの黒いのは…!」パカラパカラ


白騎士「そらそらそらそらそらそらそらそらそらぁ!!!」キィンキィンキィンキィン

黒騎士「うらうらうらうらうらうらうらうらうらぁ!!!」キィンキィンキィンキィン


姫騎士「凄い…」スタッ

勇者「なんつー攻防だよ…素人目の俺が見てもわかるぜ。ありゃ入る隙間がねぇよ」スタッ

姫騎士「白騎士の奴、片腕しかないじゃないか!」

盗賊「でも全く遅れを取ってないけど」

勇者「体がないアドバンテージだな。痛みも疲弊もないから常に100%で戦える。時間が経てば生身側が押されるのも無理はないぜ」

姫騎士(だがそれは逆に言えば無茶をしすぎると言う事だ。それをわかっているのか?白騎士)

白騎士「黒騎士!何故魔王軍にいる!」キィン

黒騎士「魔王様に力を与えられたからだ!」キィン

白騎士「ではいつからいた!!」キィン

黒騎士「いつからだと!?」キィン

白騎士「答えれまい…!私の予想通りなら答えようがないはずだからだ!!」

黒騎士「また私を惑わす!!」

白騎士「隙あり!!」ブンッ

黒騎士「うごぉ!」ズババッ

白騎士「せりゃあ!」キィン

黒騎士「しまった!剣が!」ヒュンヒュン

ドッ


盗賊「剣を弾いた!」

勇者「チャンス!やったりゃあ白騎士ぃー!」

黒騎士「牛闘士殿!魂、お借り致す!」グッ

黒騎士「どおりゃああ!!」グォッ

白騎士「斧か!」ガィィン!

白騎士(これ以上は剣が持たない…!)

黒騎士「どうしたどうしたぁ!はははは」ブンッ ブンッ

白騎士(どうする!どうすればいい…!)ピシピシッ…

黒騎士「せいやぁ!」ブンッ

白騎士「くぉ!」ガァンッ

黒騎士「よし!」ゴロン パシッ


姫騎士「まずい、黒騎士が剣を!」


黒騎士「くらえぃ!」ブンブンブンブンッ

白騎士「投げ斧で足狙いなど見え透いてる!」ダンッ

黒騎士(今だ!)シュッ

スタッ

白騎士「!?」ガクン

白騎士(膝の隙間にナイフ!?)

黒騎士「うおおおお!!!」ガシッ!

黒騎士「取ったぞ白騎士ッ!!」

白騎士(―――ここまでか!!)


盗賊「兜を掴まれた!!」

勇者「やべぇ!」

姫騎士「白騎士ぃぃぃーー!!」


白騎士「っ!姫さ――――」

黒騎士「勝ったッッ!!!」ズバァッ!!



ピシッ…ピシピシピキ…




パキィィィィィィ――――――……ン!!


カランカランカラン…

勇者「白騎士の鎧が…」

盗賊「バラバラ…に…」

姫騎士「―――いやぁぁぁぁあああ!!!」


黒騎士「ふ…ふふ…ふははははは!!!やった!やったぞぉ!この戦場に立つ全ての者よ!」

黒騎士「この兜を見よ!白騎士はぁ!私が討ち取ったぁぁぁぁあ!!ふははははははひゃーははははははは!!!」

黒騎士「悔しいか?恨めしいか?白騎士、光など所詮闇の力の前では――ぐっ!?」

黒騎士「ぐがぁぁ!!なんだ…!?頭が…頭が割れるように痛い…」

兜「…」

黒騎士「うぐあああああ!!!」ドサッ

カッ!ゴロゴロゴロ…

姫騎士「空が暗く…!」

勇者「縁起でもねぇ、一体なんだってんだ…」

盗賊「なぁあれ!空に誰かいるぞ!」

姫騎士「あれは…!」

カッ!ゴロゴロゴロ…


魔王「……」


姫騎士「魔王!!」

勇者「ぶーーー!!!まままま魔王!?あれが魔王!!?」

姫騎士「資料でしか姿は見た事がないが…この威圧感、間違いない!」

魔王「良くぞ白騎士を討ち取った…これで封印は解かれた。今こそ宿願叶う時ぃぃぃぃ!!」バッ

姫騎士「封印…?宿願…?何を言っているんだ?」

魔王「おおー!偉大なる我らが主よ!お力は取り戻しました、御身に必要な贄は…」

魔王「私のこの命で!!」グチャア

魔王「闇の世界に繁栄あれーーーー!!」

カッ!ピシャア―――ン!!

ゴロゴロゴロ…

勇者「…今俺の見間違いでなけりゃ、魔王自害しなかったか?」

盗賊「おいらも見た。もしかして終わっちゃったんじゃない?」

勇者「え、嘘マジ?勝っちゃった系?」

姫騎士「…そううまい話でもないらしい。暗雲が集まって形をなしてるぞ!」

ゴゴゴゴゴ……

ボンッ!ボンッ!

ぐふ、ぐははははははは……

盗賊「ひっ」ビクッ

姫騎士「何だ…何なのだ…」

「生きとし生ける全ての命よ…我が声を聞け…我が姿を見よ…我が心に従えぇぇ!!」ゴゴゴゴ…


「我こそは大魔王!!万物の王だッッ!!」バサァッ


姫騎士「大…魔王……!?」

~~~~~~

「…ここは、どこだ?」

???「気が付いたか」

「貴様は…白騎士!?」

白騎士?「……」

「馬鹿な!貴様は私がバラバラにしたはずだ!!」

白騎士?「半分そうだが半分そうではない」

白騎士?「私は私であり私ではない…そして今の君も君であり君ではない」

「? 何を言っている?」

白騎士?「時間がない。奴が目覚めてしまった…」

「奴…?」

~~~~~~


【城下街】

「なんだあの怪物は…」「勝てっこねぇ…あんなの…」「神様…」

魔物達「ギャ…ギャ…」ガクガク

騎士団長「魔物共が怯えている…何なのだあれは!」


【城内】

第一王女「お父様あれは一体…」ガクガク

第二王女「恐ろしい…なんと恐ろしい姿…」ガクガク

大臣「王様…」ガクガク

王様「……この世の終わりか」

【平原】

ズズゥン

大魔王「ぐふふふ、長かった…忌まわしき封印から遂に解放されたわ」

勇者「大魔王…?大魔王だって…?なんつー巨大な化物だよ…」ガクガク

盗賊「あっ…あっ…」ガクガク

姫騎士「……っ!」ダッ

勇者「あ、おい!」

姫騎士「貴様ぁぁーー!!」

大魔王「んん?」

姫騎士「貴様は一体何者だぁー!大魔王などと言う名は聞いた事がない!!封印とは何の事だぁーー!!」

勇者「ひぃぃーー!!なに大魔王に喧嘩売ってんのあの娘ーー!!?」ガクブル

大魔王「我を知らぬだとっ!?ええい、無知とはなんと罪なものよ…良かろう、知らぬならば教えてやる!」

大魔王「我は大魔王!かつて世界を統べた闇の支配者なり!!」

勇者「大魔王…闇…思い出した!!輝きの勇者と戦った大昔の魔王の名前だ!!伝承で聞いた事がある!」

盗賊「えぇ!?でもおかしいじゃん!だって魔王は輝きの勇者が倒したんだろ!?」

大魔王「倒した…?倒したぁ??ぐはははははは!!彼奴は我を倒してなどおらぬ!!」

姫騎士「何だって!?」


~~~~~~

「倒していないだと?」

白騎士?「私は奴には敵わなかった。あらゆる加護を受け伝説の武具を持ってしても…それ程奴は強大だったのだ」

白騎士?「倒せぬと判断した私は別の手段を用いた…それが封印だ」

~~~~~~


大魔王「奴は全ての力を使い光の鎧に我を封じ込めようとしたのだ…しかし我とてただではやられん!奴の心を道連れにしてやったわ!」

盗賊「マジかよ…」

大魔王「まぁ抵抗したせいで生じた時空の穴に落ちるとは思わなかったがな。些細な事だ、ぐはははははは!」

勇者「鎧…心…」

~~~~~~

白騎士?「分割された身体と心は時空の穴の中でそれぞれの時代に落とされた。結果はどうあれ大魔王はいなくなり平和が訪れたはずだった」

白騎士?「しかし誤算だったのは奴の意志を継ぐ狂信者がいた事だ」

「魔王…」

白騎士?「そう、魔王とはいずれ大魔王が復活した際の代々続く選ばれた奴の器。今の魔王が何代目かは知らぬがな」

「いつの話になるかわからぬものを奴らは今日まで続けてきたと!?」

白騎士?「そして魔王はある日ついに片割れを見つけたのだ…君だ」

「!?」

白騎士?「魔王は闇の力を用い君の記憶を改竄した…いずれ私を倒す為に。私は私でしか倒せない。魔王はそれを分かっていたのだ」

「私はなんと…なんと破廉恥な男なのだ!全ては奴等の掌の上と知らず…くそぉ!」

白騎士?「大魔王を倒すには私も復活せねばならない。しかしそれには勇者の力が必要だ―――」

「白騎士…?」

白騎士?「もう時間がない…勇者は近くにいる…正しい愛と心を持った勇者の力を―――――」

「待て!待ってくれ!まっ――――――」

~~~~~~

大魔王「興はもう終いだ。我は復活して気分が良い。人間共よ選ばせてやろう…死か!降伏か!」

姫騎士「…ふん、迷う意味もない」

勇者・盗賊「……」コクリ

姫騎士「正義は悪に屈しはせん!!」

大魔王「ならば死ねぃ!!稲妻ぁーー!!」バリバリバリバリバリ!!

勇者・盗賊「ひゃあーー!!」

姫騎士(白騎士…!!)


???「はぁーーッ」バッ


バリバリバリバリ

姫騎士「えっ!?」

???「くっ…ぬぅええい!!」バシュゥン

大魔王「ほう、我の稲妻を弾くとは…」

???「……」ピキピキッ…

姫騎士「お、お前は…」

大魔王「そんな事が出来るのは我は一人しか知らぬ…のう?」

大魔王「輝きの勇者よ!!」


黒騎士「……」パキィィン カランカラン


盗賊「ありゃ祭りで会った兄ちゃん!兄ちゃんが…輝きの勇者ぁぁぁ!?」

勇者「……」

姫騎士「お前…いや貴方が輝きの勇者…?」

大魔王「ほれ、どうした?民衆の声に応えてみせよ?ぐふふ」

黒騎士「…記憶は戻っていない上、未だ訳が分からぬものもある…だが一つだけ応えれる言葉はある」

黒騎士「私の記憶を貪った罪!万死に値する!!」ダダダッ

大魔王「愚か者めが!!」

黒騎士「でやぁーー!!」ズバッ

大魔王「ふん…」ジュクジュク

黒騎士「なっ!」

勇者「再生した…!」

大魔王「闇に染まったその剣で闇の支配者たる我を斬れると思うたか!」ブンッ

黒騎士「ちぃっ!」バッ

ズバッ ズババッ

大魔王「ええい、ちょろちょろと!」ジュクジュク ブンッ

黒騎士「ぐはぁっ!」バキッ

勇者「駄目だありゃ!斬った側から再生してる!」

姫騎士「…白騎士の剣なら!!」ダッ

盗賊「姉ちゃん!」


黒騎士「はぁ…はぁ…」

大魔王「奮闘しておるな。輝きの。己同士の戦いで疲弊したその身体で立ち向かう精神は相変わらずよ」

黒騎士「ぐっ…!」

大魔王「だがそれも無念に終わるのだぁー!」グァッ

姫騎士「やぁーーッッ!!」ザクッ!

大魔王「むぅ!?」

姫騎士「やったか!?」

大魔王「…残念だったな。それではないわぁ!!」

勇者(それ、では?)

大魔王「だが向かってきた無謀さは褒めてやろう、褒美を受け取れ!稲妻ぁー!!」

姫騎士「あっ…」

黒騎士「くっ!」ダッ

バリバリバリバリ

黒騎士「ぐああああああああ!!!」ドサッ

姫騎士「あっ…お、おい!しっかりしろ!」ガバッ

大魔王「自己犠牲精神か…下らん、あの娘に何の価値がある」


黒騎士「かっ…はっ…」

姫騎士「馬鹿者…何故私を庇ったのだ!」

黒騎士「…知らん…たまたま動いた先に…貴様がいた…んだ…ろ…」

姫騎士「…見え透いた事を…」

黒騎士「貴様こそ…どうした…?恨み晴らす…絶好…の機会だ…ぞ」

姫騎士「……」

黒騎士「…闇に囚われていたとは…いえ…勇者の一族を…大魔導士を…白騎士を殺した…私を…許せる…はずが…ない…」

黒騎士「…殺せ…どうせ世界はもう…終わりだ…ならば…せめてお前の手で…」

姫騎士「……確かにお前の業の恨み。簡単に消える代物ではない」

姫騎士「だが…許そう」

黒騎士「な…に…?」

黒騎士「自分が…何を言ってるのか…わかっているのか…?」

姫騎士「あぁ…もし少し前の私ならお前を殺していただろう…だがそれをあの人は望まない。あの人が望む未来にそれはあってはならない…」

姫騎士「何より…こんなにも誰かの為に傷つき闘っている騎士を恨めるはずが…ない」ポロッ…

黒騎士(なんだこれは…この暖かさは…初めてなのにどこか懐かしい…これは…そうだ)

黒騎士「…慈愛」


ピチョン


大魔王「とどめだぁ輝きの!地獄の業火ーー!!」ゴォォォォォォォッッ!!

鎧の破片「…」ヒュンヒュン

勇者「白騎士の破片が…!」

ゴウッ!!

盗賊「姉ちゃーーーーーん!!!」

…キラン

パアァ―――――ッッッ!!!


勇者「うお、まぶしっ!」

大魔王「があああああ!!こ、この光はぁぁーー!!」

盗賊「光の球が空に…!!」


???「大魔王!貴様の悪行もこれまでだ!」

大魔王「ありえぬ…彼奴なはずがない!」

パァァン!!


輝きの勇者「闇を再び振り払う為に!この輝きの勇者、舞い戻ってきたぞ!!」


大魔王「輝きの勇者ァァァ!!」

勇者「あれが伝説の…本物の輝きの勇者か!」

盗賊「すっげぇ…浮いてるよ…」

輝きの「怪我はないか?今下に下そう」ギュッ

姫騎士「あ、はい…あの…黒騎士…?」

輝きの「すまない、もう彼ではない」ス――…スタッ

姫騎士「えっ?」

盗賊「おーい、姉ちゃーん!」

輝きの「彼らの所に行くんだ」

姫騎士「あの、貴方は?」

輝きの「勇者の務めを果たす」ビュオ!

姫騎士「わっ!」


輝きの「闇に染まりし我が剣よ!今こそその真の姿を現せぇ!!」ピカーッ

輝きの「勇者の剣ッッ!!」シャキン!

勇者「勇者の剣だって!?」

輝きの「……」スーッ

大魔王「ぐふ、ぐふふ…どこまでも邪魔だてするか…」

輝きの「貴様が復活したならば私が復活するのも当然の摂理」

大魔王「ほざけぇぇーー!!地獄の業火ぁ!」ゴォォォ!

輝きの「はっ!」ギュン!

大魔王「うぬらぁぁぁ!!」ゴォォォ!

輝きの「でやぁぁぁ!!!」ヒュンッ

大魔王「ぬぐあああああ!!」ズバァァ!

姫騎士「効いた!」

勇者「再生していない…あれは勇者の剣の力か!」

輝きの「うおおおお!!」

ズバズバズバッ

盗賊「か、勝てる!これなら勝てるよ!頑張れー!輝きの勇者ー!!」ピョンピョン

姫騎士「……」


大魔王「稲妻ぁー!!」バリバリバリバリ

輝きの「…!!」ギューン


姫騎士「駄目だ…」

盗賊「な、何でぇ!?あんなに強いのに!」

姫騎士「確かに輝きの勇者は強い」

勇者「だが大魔王も強い。奴の話が本当なら前の戦いとそのままって事か。だが大魔王だって同じ轍は踏まないはずだ。最悪…負けるかもな」

盗賊「そんな!でもおいら達に出来る事なんて…」

勇者「いや手はある。そうだろ?」

姫騎士「…自信はないが、やる価値はある」

勇者「はぁーやれやれ…じゃ、持ってけよ。いるんだろコレ」カチャッ

姫騎士「いいのか?」

勇者「悪ぃな、俺今足の震えが一周回って止まって見えるぐらい震えて動けねーんだ」

盗賊「どおりでさっきから微動だにしないと思ったら…」

勇者「それにこれは俺の直観だが、今の姫さんなら使えると思うぜ」

姫騎士「…感謝する。勇者殿」カチャ

盗賊「おいらも!おいらも何かやるよ!」

勇者「様…」

姫騎士「頼む」

大魔王「ぐはははは!懐かしいと思わんか輝きの!まるであの時のままよ!お前ももうわかっているのだろう?」バリバリバリバリ

輝きの「……」バシュンバシュン

大魔王「先の戦い同様、貴様は我に勝つ事は出来ない!時空を経てもわからんか!闇に勝るものなどいないのだ!!」

輝きの「確かに今の私に勝ち目はない。だが大魔王!貴様は二つ間違っている!まずは一つ!」

輝きの「正義に燃ゆる心は私一人ではない!!」


姫騎士「成せばぁーーーーッッ!!!」ダンッ

盗賊「行ったれ姉ちゃんーーッ!!」パカラパカラ


ドシュウッ!

大魔王「うぎゃああああ!!もう一本…何故勇者の剣がもう一本んんん!!!」

姫騎士「浄化をーーーーッッ!!!」グッ


パァァ――――!!


大魔王「うおおおお!逃げる…我の身体から闇が…力が逃げるぅぅーーー!!」

大魔王「この…取るに足らない小娘がぁー!やめろぉーー!!」グオオッ

姫騎士「捕まるか!」ズボッ バッ

姫騎士「輝きのぉーー!私の!私達の想いを!受け取ってくれぇーーーッッ!!」ブンッ

ヒュンヒュンヒュンヒュン

パシッ!!

輝きの「その心!!しかと受け止めたぁ!!」


輝きの「愛と!」ジャキン!

輝きの「正義と!」ジャキン!

輝きの「光の名の下にぃ!!」

大魔王「よせ…よせぇぇ!!」

輝きの「永遠に消え失せろぉぉぉーーーーッッ!!」ギュルルルルルルル!

ズブギュバァッ…!!

大魔王「が…が…闇は…決して…」

輝きの「…二つ目だ大魔王」



輝きの「正義は必ず勝つ!!」ジャキン!!



大魔王「おのぉぉれぇぇぇぇぇ!!うがぁぁぁぁぁぁぁ!!!」ピカ――――――!!

パキャァァァ……ン キラキラキラ…

姫騎士「……」ボーゼン

盗賊「………勝った」

姫騎士・盗賊「…勝ったぁぁぁぁ!!勝った勝った勝った!やったぁー!!あははは!!」ピョンピョン

勇者「おぉーい」ズルズル

盗賊「勇者!勇者ー!」タタタッ

盗賊「勝った!おいら達勝ったんだよー!!」ギュッ!

勇者「おい痛ぇ痛ぇって、後まだまともに立て…うおあ!」ドテッ

姫騎士「はははは…あっ」

輝きの「良くぞ戦った。勇気ある者達よ」スーッ

姫騎士「輝きの勇者様…」

盗賊「勇者様!輝きの勇者様ぁ!もう…もう大魔王は復活しないんですよね!?」

輝きの「あぁ…もう奴の気配はしない。大魔王は完全に消滅した」

盗賊「ぃやったやったやったぁー♪今日は大勝利記念パーティーだ!早くお城に知らせに行こうぜ!輝きの勇者様も!」

輝きの「…悪いが私は行けない」

盗賊「えっ?」

輝きの「私はもう戻らなければならない」

盗賊「戻るって…どこに!?」

勇者「おいおい、盗賊。お前ボロになるまで絵本を読み返したんだろ?最後はどうなったよ」

盗賊「どうって勇者が戻ってきて平和に…あっ!」

勇者「そう、あれは今この事を指してるんだ。つまり―――」

姫騎士「貴方はこれから私達のご先祖様になるんですね」

輝きの「その通りだ。我が子孫達よ」

勇者「面白い話だよ。時空を超えて未来で大魔王を倒したら過去に戻るってんだから。勇者の剣も二本あるのに納得いくわ」

姫騎士「そうだ、剣は――」

輝きの「一本は私が。もう一本は君達に返そう。日本の剣で時空の穴を作る」スチャッ

勇者「見送り人は俺らなわけね」スチャッ

盗賊「??? 難しすぎてわかんねぇよぉ…」

姫騎士「それにしても本当に可笑しな話…私がご先祖様をお慕い申していたのですね。ふふふ」

勇者「え、そうなの?」

盗賊「なんだ、知らなかったの?」

輝きの「…時間だ」キラキラ

盗賊「勇者様が光りだした!」

姫騎士「もう会えないんですね。まだまだ教えて欲しい事が沢山あるのに」

輝きの「なら手紙をしたため、それを龍に守らせよう。覚悟が出来たら尋ねるといい」キラキラ

姫騎士「…はい」

輝きの「最後に我が子孫達よ。君達の力は君達の物だ。だが決して己の為に使ってはならない。悪を裁き弱者を救う。正しき事の為に使うのだ。それが勇者だ」ス――ッ…

輝きの「ではさらばだ!!」


カッ!!

勇者「行っちまったな…」

姫騎士「あぁ…」

盗賊「うーんうーん…」

勇者「なんだお前?まだわかんないのか?」

盗賊「いやそうじゃなくてさ~、もう一個わかんない事があるんだ」

勇者「もう一個?」

盗賊「南の王国の姫様がなーんで東の王国にいる勇者の一族の血を引いてたのかなってさ」

姫騎士「簡単な話さ。私が妾の子だったのだろう。父様は秘密にしていたようだが」

盗賊「めか…?」

勇者「平たく言えば愛人の子って事だよ」ボソッ

姫騎士「今ならわかる。風の中で見た人々…あれは一族と私の母だったのかもしれないな」

勇者「南の王様も義理堅そうにしてる割にやるよなー。いや待てよ?王様だから許されるのか…いいなぁ王族」

姫騎士「ふふっ、父様なりのロマンスでもあったのだろう。今度聞いてみるか」

勇者「ま、あれだな!姫さんが勇者の一族ってわかったら色々納得出来たわ。剣は上手いわやたら強気だわ力はゴリラだわ―――」

姫騎士「なーんーだーとー?」

勇者「いたたたた!愛!愛はどうしたんだー!いたたたた」ぐりぐりぐりぐり

姫騎士「お前にはこれで充分だ!」ぐりぐり

盗賊「あははは!あはははは!」

あはははははは……


――――――――

【東の王国】

王女「うっうっ…勇者様…世界が平和になっても貴方がいないなら私はいっそ…」しくしく

キラキラ…

王女「…?」

「遅くなり申し訳ありません…」

王女「その声は…あぁ!忘れるはずがありません!そのお声は!」ポロポロ

パァァン

輝きの「只今貴女の勇者が彼方より戻りました…私の愛する王女様」

王女「勇者様!…勇者様ぁー!」タタタッ


ゆうしゃと おうじょさまは なかよく しあわせに くらしましたとさ

めでたし めでたし―――


おしま―――――


――――――――――

【霧の山脈】

仙龍「何用でここに来た…」

「手紙を読みに」

仙龍「…まさか本当に来るとはな。いいだろう、これを渡そう…」ボゥ…

「……」カサカサ


《南の王国の我が子孫へ》

これを読んでいるという事は大魔王が倒され世界に平和が訪れ、また覚悟を決めたのだろう。

私は元の時代に戻り無事王女と再会する事が出来た。一重に君達の…いや未来に暮らす人達のおかげだ。

平和になった世界で勇者がどう必要とされるかはわからない。

苦難の道かもしれない、何もしないでいいかもしれない。

それでもその道を選んだのなら私は祝福をしよう。

他者の為に力を使う君ならば大丈夫だと私は信じている。

最後に、これは白騎士としての言葉だ。

共に旅が出来て光栄でした。

君の歩む道に光あらんことを祈る

《――輝きの勇者より》

「…光あれ…か」

仙龍「ところで…本当にいいのか?勇者の剣をここに置いていくなど…」

「はい、今の時代には必要なさそうなので」

仙龍「北の領地には再び魔物達が集いだしているぞ…」

「新しい頭首は穏健らしいのでまず話し合いをしてみようかと思います。その上で良い関係になれたらと」

仙龍「魔物と共存するか…永遠に近い年月を生きたがお前のような人間は初めてだ…気に入った…」

「ふふ、ありがとうございます」

仙龍「だが簡単ではないぞ…?覚悟は出来ているのか…?」

「覚悟はとうに出来ています。だって今の私は―――」



女勇者「未来を切り開く剣なのだから」



―――おしまい

以上でお話を終えさせてもらいます
初投下のSSでかなり緊張しましたが期待コメしてくれた方々を含めありがとうございました
休日の内に完了させたいとガガーっと投下しちゃいましたが…なんとか今日中に終えれてホッとしました
次の機会があればゆっくりやって行きたいと思います

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