天使 『ぷー、ぽー』 ぶんぶん
女 「ラッパ吹くか、攻撃するか、どっちかにしなさい!」
天使 『ぷー、ぽー』 ぶんっ
女 「ラッパも人類虐殺も、御前七天使の仕事でしょうに」 ひょい
天使 『ぷー!』 げしっ
女 「どう見ても下っ端っぽい子が、なにやってんだか」 がっ
天使 『ぴー! ぷー!』 じたじた
女 「天使にも中二病な時分ってのがあるのかしらねえ」
天使 『ぷー、ぴー』 ぶんぶん、すかっすかっ
女 「せめて、吹くのと蹴るのと、誰かと役割分担したら?」
天使 『ぽー……』
女 「ひょっとして、一緒に人類虐殺ごっこしてくれる友達いないのかな」
天使 「……」
女 「……」
天使 『ぷー……』 めそめそ
女 「……いや、手伝わないよ」
天使 「……!」
天使 『ぴー、ぱー』
首螽斯 『ヂーーーーーーーーー』
天使 「ぽー……」
首螽斯 『ヂーーーーーーーーー』
女 「耳障りよねえ、こいつの音って」
天使 『ぷー! ぴー!』 がさがさ
首螽斯 『ヂーーーーーーーーー』
女 「ラッパ吹き鳴らしながら螽斯相手にムキになる終末天使って……」
天使 『ぷー、ぴー』 ぶんぶん
女 「ラッパ鳴らしながら蹴り入れるのは、いいかげん無理があるって」 すっ
天使 『ぷー、ぴー』 ふわっ
女 「あ。飛んだ」
天使 『ぽー、ぷー』 ぶんっぶんっ
女 「なるほど。このほうが蹴りやすいか」
天使 『ぽー♪』 ぶうん
女 「でもやっぱり当たらないんだけどね」 ひょい
天使 『ぷー!』 ぶうんっ
女 「……下着は着けてないんだ」 ちらっ
天使 『ぷぉんっ!』 ぶふぉっ
天使 『ぴー』
女 「ん? 虐殺のほうは諦めたの?」
天使 『ぷー!』
女 「ラッパの音じゃ人間死なないから」
天使 『ぽー!』
女 「……あれは漫画よ」
天使 「……!」
女 「ラッパ吹きながら、念力で輪っかを飛ばして攻撃できないの?」
天使 『ぷー……!』 はっ
女 「やったら許さないけど」
天使 『ぴー、ぽー』 にや
((⊂⊃)) 「……ぶぉんぶぉん」
女 「あ、それ、30型ならもらっとくわ。うちの蛍光灯、切れかけなのよ」
⊂⊃ 「ぴたっ」
女 「いいからよこしなさい」 ぐいっ
天使 『ぷー! ぴー! ぴー! ぴーーーーー!』 じたばた
女 「しょせん後光の記号化表現なんだから、採ってもまた生えてくるでしょ?」
天使 『ぷー!』 ふわっ
女 「あ、逃げた! そんなケチだから友達いないのよ!」
天使 『ぴー、ぷー』
女 「友達いないんなら、お母……お父……神さまにラッパ吹いてもらったら?」
天使 『……ぴー』
女 「ひょっとして頼んだけど、友達つくれって一蹴されたとか」
天使 『ぷー……』 しょんぼり
女 「図星……」
天使 『ぽー』 ちらっちらっ
女 「いや、ならないよ」
天使 『ぷー! ぴー!』 ぶんっ
女 「まさか友達いない腹いせでやってんの?」
天使 『ぴー、ぴ、ぷ、ぴー……』 よたよた
女 「器を持ったままラッパを吹くのはさすがに無理よ」
天使 『ぷー!』
女 「黙示録だって、吹くのと、器の中の厄災をぶちまけるのは別々にやってたってのに」
天使 『ぴー……ぷ、ぷ……』 ぶるぶる
女 「ま、頑張ってね……そうそう、そのドブ水、こっちにぶちまけたら殺
厄災の器 「ばっしゃあん!」
女 「……自分にぶちまけてどうするのよ」
天使 「……」
女 「よかったじゃない。これでラッパに専念できるじゃないの」
天使 『ぷー……』 しくしく
女 「終末の天使なら、ちょっと訊きたいことがあるんだけど」
天使 『ぷー、ぽー』
女 「キリスト教の終末と、仏教の末法の関係って、どうなってるの?」
天使 「……」
女 「ラッパ、止まってるよ」
天使 『……ぴー』
女 「知らないのね」
天使 『ぷー! ぽー!』 ぶうんっ
女 「都合が悪いこと言われるとすぐ暴れる」 さっ
天使 『ぴー!』 ぶんっ
女 「……だから友達いないのよ」 ひょいっ
天使 「……!」
天使 『ぴー、ぷー』
子羊 「……?」
天使 『ぴー、ぽー』
子羊 「のそのそ」
天使 「……!」
飼育員 「すいませんお客さま。羊が怯えますので、ラッパはお控えください」
天使 『ぴー!』 げしっ
飼育員 「いたっ!」
女 「……動物園の子羊じゃ、滅亡への七つの封印は解けないと思うけど」
天使 『ぷー』
女 「ひょっとして、たんに撫でたかっただけなの?」
天使 『ぴー……』 しょんぼり
女 「友達つくるの、下手な子ね……」
天使 『ぷー』
ライオン 「ガー!」
天使 『ぷぉんっ!』 びくっ
飼育員 「お客さま! 大変危険ですのでライオンを刺激なさらないようお願いします!」
天使 「……」 ばさっ
ライオン 「のそのそ」
天使 『ぽー』
ライオン 「ガー!」
飼育員 「お客さま! 上空からの刺激もおやめください!」
女 「それ、主の御座まわりにいる第一の天使じゃないからー。ただのライオンだからー」
天使 『ぽー、ぱー』 がしっがしっ
女 「さっきから執拗に人の足を踏んできてるところ、なんだけど」 がっがっ
天使 『ぷー!』 げしっ
女 「ラッパは、どうしても鳴らさなきゃ駄目なの?」 がっ
天使 『ぱー、ぽー』
女 「あと攻撃が単調すぎ。ガードされたくなかったら、もっと考えなさい」
天使 『ぴー!』 げしぃっ
天使 「……」 ごそごそ
電気 「ぱちっ」
天使 「……!」
女 「最近の終末天使は、人んちの台所に忍び込んで、お羊羹をあさるの?」
天使 『ぷー、ぱー』
女 「厄災が詰まった器は、台所じゃなく、天にあるあかしの幕屋の聖所でもらいなさ
天使 「ぱくっ」
女 「話を聞かない子ね! お羊羹の代わりにその羽根、治部煮にしてあげましょうか?」 ぐいっ
天使 『ぱー、ぷー……ぶふぉっ』
女 「食べながらラッパ吹かない!」
托鉢僧 「オ"ーーーーーーーーーー」 すたすた
天使 『ぷー、ぱー』
厄災の器 「べちゃっ」
女 「こ、こら! 厄災鉢をお坊さまにぶちまけちゃ駄目でしょ!」
托鉢僧 「……!」 さっ
女 「自分の鉢で受け止めた!」
天使 「……!」
托鉢僧 「……」 ふかぶか
天使 『……ぷー』 ふいっ
女 「ドブ水なのに。同じ鉢持ちでも、えらい器の違いねえ」
托鉢僧 「オ"ーーーーーーーーーー」 すたすた
蟻 「ぞろぞろ」
天使 『ぴー、ぷー、ぷー、ぷー』
女 「人間に勝てない可哀想な天使が、自分よりさらに弱いものを狙ってる……」
天使 『ぴー♪』
厄災の器 「ざばあ」
蟻 「……! ……!」
女 「蟻んこを水で流して、それで勝ったつもりなの?」
天使 『ぴー、ぷー、ぴー♪』 にこにこ
女 「べつにいいけどさ……どっからどう見ても、ただの可哀想な子だこの子……」
女 「いつまでたっても、ラッパばっか鳴らして、暴れてばっかで」 ひょい
天使 『ぽー! ぷー!』 ぶんっ
女 「それじゃ伝わらないし、始まらないわよ」
天使 『ぴー、ぷー』 ぶんっ
女 「……こっちはずっと待ってるんだけど」 すっ
天使 「……!」 ぴた
女 「……」 じー
天使 「……あ」 おどおど
女 「いつになったらお豆腐、売ってくれるの?」
天使 『……ぷー! ぽー!』 ぶうんっ
女 「また暴れる! お母……お父……いや神さま、どういうしつけしてるのよ」 ひょい
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