恭介「戦線名はリトルバスターズだ!」かなで「その3ね」 (1000)

リトルバスターズ!とAngel Beats!のクロスです

自己解釈、キャラ崩壊などに注意

たまに安価

両作品のネタバレ全開ですのでお気をつけ下さい

ゆっくりやっていく予定です

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1440506266

過去スレ一覧

恭介「戦線名はリトルバスターズだ!」
恭介「戦線名はリトルバスターズだ!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1436363023/)

恭介「戦線名はリトルバスターズだ!」ゆり「その2よ!」
恭介「戦線名はリトルバスターズだ!」ゆり「その2よ!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1437915426/)

ここまでの簡単なあらすじ

死語の世界にやってきた恭介、戦線名をリトルバスターズと名付けた

真人、謙吾、沙耶、来ヶ谷、クドも参戦
オペレーションや馬鹿騒ぎを通じて、絆を深めていくリトルバスターズ

そんな中、この世界の創造主、あるいは神と考えられる存在の力で恭介が操られるという事件が起きる
事件はかなでと日向の活躍により無事解決した

ゆり達がこれからの戦いに更なる決意を燃やす中、かなでは…
そして岩沢は…

自由行動開始

沙耶「前スレでも指摘されてたけど、アニメに無理やり当てはめるなら、ようやく三話に入ろうってとこなのよ!」

沙耶「正直、作者もここまで話が進まないとは思ってなかったわよ!」

沙耶「せいぜい3スレか4スレで終わると思ってたのにこの有り様よ!」

沙耶「これでも少しはギャグ削ったりしてるのよ!どんだけ文章纏める力無いのかって話よ!」

沙耶「滑稽でしょ!?滑稽じゃない!?笑いたければ笑いなさいよ!」

沙耶「あーはっはっは!」

恭介の称号一覧

「シスコン」・「ロリコン」・「筋肉ビギナー」
「Love&Spanner 」・「甦れなかった斉藤」

というわけで3スレ目です
本当にゆっくりやってる中、ここまで付き合っていただいたみなさんには心からの感謝を
引き続き楽しんでいただけると幸いです

宣言通り明日20時くらいから再開、自由行動開始です

勿論、なるべく削らないようにはしてます

ただ、シリアスな場面でギャグをあまり入れると話がブレたり
あまりギャグを入れすぎると、逆に話のテンポが悪くなる時があるので
そういう時のみ、削ってる次第です

普段は予定より、更にギャグが増えたりすることの方が多いです

トンカーン、トントントン

恭介「よし、完成だ!」

クド「わふー!すごく立派な犬小屋ですー!良かったですね、チルーシャ!」

チルーシャ「ワン!」

恭介(翌日、朝早くから集まり、俺達はチルーシャの犬小屋を作ることにした)

恭介(結構な人数が協力してくれたおかげで、予想より早く完成させることが出来た)

クド「みなさん、ありがとうございます!チルーシャもとっても喜んでます!」

ゆり「礼には及ばないわよ!新しいメンバーの為に、当然のことをしたまでだわ!」

恭介(そう、意外なことにゆりっぺまで手伝ってくれた。のだが…)

真人「あのよ、ゆりっぺ。一つ聞きたいことがある」

謙吾「奇遇だな、俺もさっきから気になっていたことがあったんだ」

恭介(真人の言葉に、謙吾が続く)

ゆり「あら、なによ?井ノ原くんに宮沢くん」

謙吾「俺と真人は裏山から材木を調達したり、のこぎりで恭介の指示通りに切ったりとかしていたんだが…」

真人「女子三人は雑用というか、恭介の手伝いをしてたよな」

沙耶「まあ、釘打ったりくらいしかしてないけどね」

椎名「細かいところは全て棗がやったからな」

来ヶ谷「まさか恭介氏が建築技能を一通りマスターしているとは、さすがに思わなかったよ」

恭介「なに、就職活動中に大工の親方と友達になってな」

恭介「その時に覚えたんだ」

真人「だから就活中になにマスターしてんだよ!っていうのはまあ置いといてでだ」

真人「ゆりっぺ、お前なんかしたか…?」

ゆり「やーね、井ノ原くん。ちゃんとしてたじゃない♪」

ゆり「現場監督」

真人「いちいち俺たちのしてる作業に、チャチャチャ入れてただけだろうが!!」

来ヶ谷「真人くん。それを言うなら『茶々を入れる』だ」

来ヶ谷「君はおもちゃのチャチャチャでひゃっほうしたいのか?」

真人「茶々入れてただけだろうが!!」

沙耶「言い直した…!?」

椎名「あさはかなり」

謙吾「そーだ、そーだ。それ以外何もしていないだろう?」

ゆり「何言ってるのよ、釘とか工具持ってきたのはあたしよ!」

来ヶ谷「ゆり君。それはつまり、作業に関しては何もしていないとゲロったようなものだぞ」

ゆり「………チルーシャのお世話を」

恭介「能美が散歩に連れてってたよな?」

クド「あ、はい。まあ…」

ゆり「………なによ?この世界の釘とか工具は貴重品なのよ!?」

ゆり「それを持ってきただけでも、あたしは充分働いたってもんだわ!」

ゆり「なんか文句あるの!?ええっ!!」

恭介(ゆりっぺが逆ギレし、勢いで丸め込もうとする)

真人「おお、あまりの開き直りっぷりに、そうかそれは悪かったと謝りたくなるぜ…」

謙吾「丸め込まれるな!しっかりしろ、真人!」

恭介(まあ俺としても一つ気になることがある。確かにこの世界で釘や工具は貴重だろう)

恭介(自分で用意するならな)

恭介(が、オールドギルドに移ってから、ギルメン達はてんてこまいの日々を送っていると聞く)

恭介(ならその釘や工具は…)

恭介「ところで、ゆりっぺ。その釘や工具はどこから盗んできたんだ?」

ゆり「決まってるでしょ?朝一で技術部に侵入してチョローっと…」

全員「「「………………」」」ジーッ

ゆり「はっ!?」

恭介(カマをかけると、あっさりひっかかった…)

恭介「やっぱりか、思いっきりNPCに迷惑かけてるな…」

沙耶「戦線のモラルが云々はどうしたのよ、ゆり…」

ゆり「あ、いやあ、その…。ジョークよ!ジョーク!イッツアメリカンジョーク…、あはは、あーはっはっは!」

謙吾「酷いな」

来ヶ谷「苦しすぎるな」

真人「俺でもわかるぜ、バレバレじゃねえか…」

恭介(続々、非難の声が上がる。そんな中)

クド「ゆりさん。チルーシャの為に朝早くから、一人で頑張ってくれたんですよね」

クド「その気持ちはとても嬉しいです!でも、勝手に借りるのは、やっぱり良くないことだと思います」

クド「だから後で謝りに行きましょう。私も一緒に行きますから!」

ゆり「………、はい、ごめんなさい」

恭介(ゆりっぺがあっさり謝っただと!?)

沙耶「うわあ!ゆりが素直に謝った!?明日は雪でも降るんじゃないの!?」

恭介「いや槍が降るな」

椎名「ゆりが謝ったんだ!そんな生温いものじゃない!」

椎名「大地は裂け、空は割れ、地球はぼーーーん!木っ端微塵だ…!」

来ヶ谷「ゆり君のせいで、世界は破滅か」

謙吾「ああ…、おしまいだぁ…」

チルーシャ「わふぅ…」

ゆり「お前ら本当にあたしをなんだと思ってるんだーーーっ!!」

恭介「まあ、能美にああ言われて逆らえるやつなんていないだろうしな」

来ヶ谷「クドリャフカ君は可愛いからな」

椎名「ああ、クドは可愛いな」

来ヶ谷「ほう、わかっているな?椎名君」

椎名「当然だ、来ヶ谷」

ガシッ

恭介(そのまま、無言でがっちり握手を交わす二人)

謙吾「また妙なコンビが生まれてしまったな…」

クド「仲良きこと美しきかな、ですよ!」

恭介「仲良くなったきっかけは能美なんだがな」

クド「はい?」

椎名「ところで、この犬小屋には色を塗らないのか?」

恭介(椎名がそう提案する)

ゆり「そうね。せっかくなら塗ったほうが良いわよね」

恭介「木目そのままってのも、独特の暖かみがあっていいもんだぞ」

来ヶ谷「なに、みんなで楽しく色を塗るというのも、また乙なものだよ」

恭介「そう言われたら否定出来ないな。ただ…」

真人「どうした?なんか用事でもあんのか?」

恭介「ああ、ちょっとな」

恭介(今日は岩沢から、新曲聞かせてもらう約束してるからな)

恭介(それと立華に、デーモン・ピクニックで助けて貰った礼をまだ言ってないんだよな)

沙耶「じゃあ、恭介くんは用事済ませてきちゃいなさいよ」

沙耶「後は色塗りだけだし、あたしたちだけでも大丈夫よ」

恭介「そうか、じゃあお言葉に甘えさせてもらうぜ」

恭介「一応、色塗りの時の注意書きをメモしといてやるよ」

来ヶ谷「うむ、了解した」

クド「なにからなにまで、本当にありがとうございます、恭介さん!」

チルーシャ「ワン!」

恭介「良いってことよ。少し時間かかるから、その間にお前たちは、何色に塗るのかとか話しといてくれ」

恭介(メモを書き始めると、みんなの雑談が聞こえてくる)

謙吾「何色にするか、か。まあ一つしかないだろう」

椎名「無論だ」

ゆり「じゃあみんなで同時に、希望の色を言ってみましょ!」

沙耶「まあ、あたしたちなら揃うに決まってるけどね」

来ヶ谷「結果は日の目を見るより明らかだな」

真人「じゃあいくぜえ!せーの!!」

真人「青!」

ゆり「赤!」

沙耶「黄色!」

謙吾「ゴールド!」

クド「白です!」

来ヶ谷「黒!」

椎名「ピンク!」

全員「「「……………」」」

ゆり「ってうおーーい!モノの見事に全員バラっバラかーーーい!!」

ゆり「しかもゴールドとか、ピンクとか聞こえたけど!?」

ゆり「どんだけ派手好きなのよ!?」

謙吾「なんだとぉ!?派手で何が悪い!ナンバーワンな素晴らしい色じゃないか!」

謙吾「金メダルの色だってゴールドなんだぞ!」

真人「当たり前だろうが、バカ」

来ヶ谷「謙吾君の肩を持つ気はないが、ゆり君の赤も大概派手だろう」

真人「じゃあ俺の青にしようぜ!」

椎名「駄目だ、青なんて可愛くない」

真人「可愛さの問題かよ!?」

椎名「他に何がある!!」

沙耶「じゃあ黄色にしましょ、黄色なら派手過ぎず可愛い色だし♪」

椎名「駄目だ、ピンクの方が可愛い。ピンク以外認めない!」

ゆり「どんだけわがままなのよ!?椎名さん!」

真人「ゆりっぺがそれ言うのかよ!」

クド「あ、あの…。みなさん落ち着いて、喧嘩は駄目ですよー!」

ワイワイ!ガヤガヤ!

恭介(まあ、喧嘩するほど仲が良いってことだよな…)

恭介「というわけで、能美これメモな」

能美「あ、恭介さん!丁度いいところに!みなさんを止めてください!」

恭介(能美が俺の裾を掴んでくる…!やべぇって、それは反則だぜ…)

恭介(このまま能美を見捨てるなんてことは…!)

恭介(だが、さすがにそろそろ行かないと…!)

恭介(どうする…!?どうする俺…!!)

来ヶ谷「お困りのようだな、恭介氏」

恭介(来ヶ谷が俺の背後に周り、耳打ちしてくる)

来ヶ谷「気にせず行ってくるといい。まあ、それほど大騒ぎにならない範囲で、ちゃんと収束させておくよ」

恭介「スマン、ありがとな。来ヶ谷…!」

恭介(小声で来ヶ谷にそう伝えておく)

恭介「………、悪いが、俺はそろそろ行かなくてはならない。能美、後は頼んだ!」

クド「ああっ!恭介さーん!カムバァーーーックなのですーーー!!」

恭介(スマン、能美。だが誓ったんだろう?)

恭介(逃げずに戦うと、それだけの強さを今のお前はすでに手にしているんだ…)

恭介(もうお前にはかなわねえよ、サヨナラダッシュだぜ…!)

恭介(………なんてな)

恭介(まあ、来ヶ谷もいるしなんとかなるだろ…)

恭介(その後の顛末が気になりながらも、俺は先を急いだ)

ー犬小屋が開放されましたー

選択安価 残り5回

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6 犬小屋←NEW!

20:28:00:00
↓1

恭介(約束通り、いつもの教室に着いた)

恭介(中を覗くとギターを抱えた岩沢がいる)

恭介(待たせちまったみたいだな。俺は教室の中に入った)

恭介「よう、岩沢」

岩沢「よう、来たか棗」

恭介「待たせて悪かったな」

岩沢「いいよ、あたしから取り付けた約束だし」

岩沢「早速で悪いんだけど、聞いてもらえるか?」

恭介(軽く挨拶を交わすと、岩沢はすぐそう提案してきた)

恭介「ああ、聞かせてくれ」

岩沢「よし」

恭介(そう言うと、岩沢はギターを抱え直して姿勢を正す)

恭介(いつも通りの岩沢の表情だ)

恭介(そして歌い始めた…)

苛立ちをどこにぶつけるか探してる間に終わる日

空は灰色をしてその先は何も見えない

常識ぶってる奴が笑ってる

次はどんな嘘を言う?

それで得られたもの

大事に飾っておけるの?

恭介(ハミングから始まった歌の歌詞はそんな感じだった)

恭介(いつものロックとは違う、アコギによる弾き語り。でも、どこか胸に染みるような歌詞だ…)

でも明日へと進まなきゃならない

だからこう歌うよ

恭介(そこで岩沢と目が合う。思い上がりじゃなければ…、まるで俺に届けるように…)

泣いてる君こそ 孤独な君こそ

正しいよ 人間らしいよ

落とした涙がこう言うよ

こんなにも美しい 嘘じゃない本当の僕らを

ありがとう

恭介「……………」

岩沢「………。どうだった棗?」

岩沢「………棗?」

岩沢「おまえ…、どうして、泣いてるんだ…?」

恭介「えっ…?」

恭介(目の下をなぞる。自分でも気づかないうちに、涙が零れていた…)

岩沢「ど、どうしたんだ!?どこか痛いのか!?もしかして具合悪いのに、無理して来てくれたのか…!?」

恭介「いや違う!そうじゃない!そうじゃなくてただ…」

恭介「ただ、感動したんだ。お前の歌に…」

岩沢「私の歌に、か?」

岩沢「私の歌で、泣くほど感動してくれたのか…?お前は?」

恭介「ああ。諭吉を投げるような余裕すら無かったぜ」

恭介「本当に良い歌だったよ」

恭介(冗談混じりに、岩沢にそう返した)

岩沢「棗、お前…」

岩沢「泣き虫なのか?」

ズゴーッ!

恭介「なんでそうなるんだ!?別に泣き虫だから、泣いたんじゃねえ!!」

岩沢「いや、そこまで感動してくれたのは嬉しいけどさ…」

岩沢「まさかお前が泣くとは、さすがに思ってなかったよ」

恭介「感受性が強いと言ってくれ。自分で言うのもなんだが、俺はそういう奴なんだよ」

岩沢「そうなのか。そんな一面もあったのか、それは知らなかった」

恭介「まあ、それでもここまで感動したのは初めてかもしれない」

恭介「本当にすげえ良い曲だったぜ!岩沢」

岩沢「そうか…。じゃあ成功ってことだな」

恭介「ああ、大成功だぜ!」

岩沢「ふっ、ありがとな。でもな棗、あたしがこの歌を書けたのはお前のおかげなんだぜ?」

恭介「俺?俺はなにもしてないだろ?」

岩沢「よく言うな、人にあんなこと言っておいて」

岩沢「さっきの歌詞思い出してみろよ」

恭介「さっきの歌詞?どの部分だ?」

岩沢「『泣いてる君こそ、孤独な君こそ正しいよ。人間らしいよ』」

岩沢「あれはあたしが『Sad Machine』というバンドから感じ取った気持ちだ」

岩沢「そして、お前があたしに言ってくれた」

岩沢「あたしの人生は何一つ間違ってない、って」

岩沢「だからあの歌詞を、そのままの気持ちで歌い上げることが出来た」

岩沢「お前のおかげで心の底から、それがあたしの人生なんだって、受け入れることが出来たんだ」

岩沢「本当にお前のおかげだよ、棗」

恭介(そうか…。俺は岩沢の力になれたのか。俺のしたことは間違ってなかったんだな…)

恭介(でも、さすがに、少し照れくさいぜ)

恭介「もし、俺の言葉で岩沢になにかしてやれたんだとしても…」

恭介「結局のところ、それはお前の背中を押したぐらいのことだ」

恭介「お前が今の歌を歌えたのは、他の誰でもない。岩沢自身が強くなったからだろ?」

恭介「少なくとも、俺はそう思うぜ」

岩沢「強くなった…か。そうだな、そうだといいな…」

岩沢「変な気持ちだ。今までただがむしゃらに、ひたすら歌うことだけ考えてきたはずなのに…」

岩沢「なんだか今は、とても満ち足りた気分だよ」

岩沢「心の奥から震えがくるみたいな、とても澄んだ気持ちだ…」

恭介「岩沢…、お前まさか…」

恭介(嫌な予感がする…。立華との会話を思い出す)

恭介(思い残すことが無くなれば、この世界から消えて、次の人生が始まる…)

恭介(じゃあ、もしかしたら、このまま岩沢は…!)

岩沢「ちょっと待った、棗。そこでストップだ!」

恭介「は?」

恭介(岩沢が手で俺を制しながら、にやにやしている)

岩沢「棗、お前が今考えてることを当ててやるよ」

岩沢「お前、あたしが満足したと思ってるんだろ?」

恭介「あ、ああ…」

岩沢「ばーか。あたしを誰だと思ってんだよ!」

岩沢「お前も良く知ってるだろ。筋金入りの音楽キチだぜ?」

岩沢「この程度で満足するわけないだろ!」

恭介「岩沢…!」

恭介(弾けるような笑顔を見せながら、岩沢は俺にそう言ってくれた)

岩沢「この曲書いててさ、今お前の前で歌ってみて、初めて音楽に触れた時の気持ちを思い出したんだよ」

岩沢「そしたらさ、なんか今まで以上に、やりたいことがどんどん浮かんできたんだ」

岩沢「だから満足なんてしない。あたしはもっともっと歌いたいからな」

恭介(すごくイキイキとした表情だ)

恭介(本当に今まで抱えていた憤りが、消えたようなそんな表情に見える)

恭介「そうか、そいつは良かった。じゃあ俺もずっとお前のファンを続けていくぜ!」

岩沢「ずっと続けてたら、そのうち飽きるかもしれないぜ?」

恭介「誰が飽きるか!!お前、俺がどんだけ本気でガルデモや岩沢に惚れ込んでると思ってんだ!!」

恭介(馬鹿にしないでほしい。いくら冗談でも許せないものがあるぜ)

岩沢「えっ…?そんなマジで怒るほどのことなのか?」

恭介「当然だ!」

恭介(漫画なら『スクレボ』、バンドなら『ガルデモ』)

恭介(俺が好きなものに対して向ける情熱舐めんなよ?)

恭介(一生好きでい続けるに決まってるぜ!………、いやもう、死んでるがな)

岩沢「じょ、冗談だよ!そんな怒るなって」

恭介「ったく…」

岩沢「悪かったって!まさか棗が、ここまで子どもっぽい奴だとは思わなかっんだよ」

恭介「フォローになってねえからな、それ…」

岩沢「えー、じゃあどうしたら機嫌直してくれんだよ…」

恭介(岩沢が少ししょぼんとしてる。さすがにマジで怒りすぎたのかもしれない…)

恭介「そうだな。じゃあお前が音楽始めたきっかけを話してくれないか?」

恭介「さっき『Sad Machine』がどうとか言ってたろ?」

岩沢「そんなこと聞きたいのか?」

恭介「そりゃあファンとしては聞いてみたい話だな」

岩沢「良いけど、少し長くなるぞ」

恭介「もちろん、構わない」

岩沢「そうか、じゃあどこから話すかな…」

岩沢「棗、お前には前話したよな?あたしは父親に殴られて、声を失ったって」

恭介「ああ…」

岩沢「まあそんな感じで、うちはあまりまともな家庭環境じゃなかったんだ」

恭介(そして、岩沢は語り始めた)

岩沢「両親はいつも喧嘩ばかりしていた」

岩沢「自分の部屋もなく、その怒鳴り声の中、隅で小さく丸まって耳を塞いでいた」

岩沢「自分の殻に閉じこもるしかなかった」

岩沢「………、どこにも休まる場所はなかった」

岩沢「そんな時に出逢ったのが『Sad Machine』というバンドだ」

岩沢「そのボーカルもあたしと同じく、恵まれない家庭環境にいて」

岩沢「精神的に辛い時期は、耳にイヤホンで蓋をして、音楽の世界に逃げ込んでいたという」

岩沢「あたしもそうしてみた」

岩沢「すべてが吹き飛んでいくようだった」

岩沢「ボーカルがあたしの代わりに叫んでくれる。訴えてくれる。この世の理不尽を」

岩沢「理不尽を叫んで、叩きつけて、破壊してくれた」

岩沢「『Sad Machine』はあたしを救い出してくれたんだ」

岩沢「雨のゴミ捨て場。そこに捨てられていた『こいつ』と出会ったのも運命だったのかな…」

恭介(岩沢が、抱えていたアコースティックギターを軽く叩いた)

岩沢「なけなしの金で弦を買って、自分のギターにした」

岩沢「古本屋に売っていたコードブックを買って、毎日練習した」

岩沢「コピーなんて一切しなかった。他人の言葉なんて歌いたくなかった」

岩沢「だから、必死に練習して、曲が作れるようになった」

岩沢「あたしも自分の想いを、歌にして誰かに伝えたいと思ったんだ」

岩沢「まあ、その先に待っていたものは、お前も知ってる通りだけどな」

恭介「……………」

恭介(きっと岩沢は歌い続けたんだろう)

恭介(音楽で食っていく為に)

恭介(窮屈だった家を抜け出して、広い世界に羽ばたく為に)

恭介(そして、岩沢の歌ならそれが出来たはずだ)

恭介(なのに、その夢は叶わなかった…)

恭介(なんて理不尽な運命なんだろう…。たった一人で孤独に想いを伝えようとしていた岩沢が)

恭介(なぜ報われることなく、命を落とさなければならなかったんだろう…)

岩沢「そしてこの世界に来た。目覚めた時は、体も自由に動くし、声も出るわで、すんげー嬉しかったのを覚えてる」

岩沢「しかも、こいつを抱き締めて目を覚ました」

岩沢「色々分からなかったけど、相棒がいて声が出るんだ。すぐに昔のように歌い始めた」

岩沢「そして、ひさ子と出会った。生前はアコギしか弾いたことなかったあたしに、あいつはエレキギターを弾かせてくれた」

岩沢「飛べる、と思った。どこまでも。それくらいの衝撃だった」

恭介(いつから岩沢はこんなに饒舌になったんだろう)

恭介(歌うように語る。声を聞いてるだけで心地良い)

恭介(俺は歌だけじゃなくて、岩沢の声も好きになっていた)

岩沢「そして、二人でバンドを始めて、暫くして入江や関根も加入して」

岩沢「あたしたちは『Girls Dead Monsters』になったってわけだ」

岩沢「っと、悪い。きっかけだけのつもりだったのに、色々喋り過ぎたな」

恭介「いや、すげえ良い話だったぜ」

恭介「岩沢は、誰かに自分の想いを届ける為に、歌い始めたんだな」

恭介(Crow SongもAlchemyもただ自分の理不尽を嘆いただけの歌じゃない)

恭介(自分が『Sad Machine』に救われたように、岩沢もきっと自分の歌で誰かを励まそうと、救おうとしていたのかもしれない)

恭介(そんな歌だからこそ、俺や高松やそして、NPC達も惹かれたんだろうな)

岩沢「そうだな。でも、少し見失ってたよ」

岩沢「なにも残せなかった人生の理不尽を呪うあまり、初めて音楽に触れた時の気持ち」

岩沢「初めてこいつを弾き始めた時の気持ちをな」

岩沢「それを棗がはっきりさせてくれたんだ。だからもう一度言うよ」

岩沢「本当に、ありがとうな。棗」

恭介「………、あんまり礼を言われても照れるだけだ」

恭介「一回、聞いただけで充分だよ」

岩沢「ほほう、棗は意外と照れ屋なとこもあるのか」

岩沢「それは良い事を聞いた。また、新しい棗の一面を知ったな」

恭介「って岩沢、お前なぁ!」

岩沢「ふふっ。いいじゃないか、あたしだって自分のことを沢山話したんだ」

岩沢「あたしももっとお前のことが知りたいんだよ」

恭介(そう言ってまた笑顔を見せてくれる)

恭介(岩沢ってこんなに笑う奴だったか…?いきなりそんな表情を次々と見せられるとなんか焦るぜ)

恭介(いや、なんで焦るのか、自分でもわからないが…)

恭介「あっ、そうだ!そのギターが岩沢が、雨のゴミ捨て場で拾ったギターなんだよな!?」

岩沢「なつめ~?露骨に話題変えて逃げたりしてないだろうな~?」

恭介(岩沢が俺の顔を覗き込んでくる。前にも言ったはずだが、近い!)

恭介(少し動けば唇が引っつくぞ!無防備すぎんだろ!?)

恭介「な、何を言ってるんだい、岩沢くん。そんな事ある訳ない訳ある事に決まってるじゃないか?」

岩沢「どっちだよ、全く。まあ、いいや。お前自身の事は今度たっぷり聞かせて貰うとして」

岩沢「こいつは間違いなく、あたしのギターだよ。自分の相棒を見間違えるわけないからな」

岩沢「でも、今更ながら不思議な世界だよな。ちゃんとあたしのギターもこうやって存在してるんだから」

恭介「……………」

岩沢「ん?どうした?棗」

恭介「いや、何でもない。そのギターから岩沢の音楽は始まったんだな」

岩沢「まあな。路上で一人歌って、バイトしてお金貯めて、レコード会社のオーディションを受けまくる日々だったよ」

岩沢「そういや、駐車場にも昔のあたしみたいに、路上ライブやってる戦線メンバーがいるんだ」

恭介「そうなのか?初耳だな」

恭介(駐車場か、路上ライブなんておもしろそうだな。時間がある時に行ってみるか)

岩沢「懐かしくて、遠くからたまに見たりしてるだけどさ」

岩沢「どうやらガルデモの曲コピーして、歌ってくれてるみたいなんだ」

恭介「へえ、熱狂的なガルデモのファンなんじゃないか?声かけてやれば喜ばれるかもしれないぜ」

岩沢「いや、それはいいよ」

恭介「なんでだ?」

岩沢「あたしに聞かれているとわかったら、そのことを意識してしまうだろ?」

岩沢「そうしたら、正しく歌おうということばかりに集中してしまって、今の自由な歌が失われる」

岩沢「今は好きな歌を好きな形で歌う。それがいいんだよ」

恭介「なるほどな」

恭介(純粋に音楽を愛する、岩沢ならではの気遣いってやつか)

岩沢「じゃあ、あたしはそろそろ行くよ」

岩沢「今日はありがとな。今度はお前の話を聞かせてくれ」

恭介「俺の話なんか聞いても、面白くないかもしれないぜ?」

岩沢「なんの冗談だそれは!!お前の話が面白くない訳ないだろ!!」

恭介(いきなり、すごい勢いで岩沢が怒鳴ってきた!)

恭介「うわっ!そ、そんな本気で怒るなよ!?」

岩沢「ふふっ。先に驚かしてくれたのはお前だろ?さっきの仕返しだよ。それじゃあな、棗」

恭介(そして岩沢はギターを背負って、出ていった)

恭介(これからは、きっと前以上にイキイキとした岩沢の歌が聞けるはずだ)

恭介(そう考えたら、俺もワクワクするぜ)

恭介(なのに…、なんだろうな、この不安は)

恭介(まだ終わってないような、そんな気がする…)

恭介(俺の思い過ごしであればいいんだが…)

ー駐車場が解放されましたー

選択安価 残り5回

行き場所を選んで下さい

1 本部
2 校内をぶらつく
3 音楽の聞こえる教室
4 図書館
5 橋の下(川)
6 犬小屋
7 駐車場←NEW!

21:05:00:00
↓1

訂正 残り4回です

恭介(適当にぶらつきながら、川にやってきた)

恭介(ここは風が気持ちいい。確かに筋トレとかするには、うってつけの場所だな)

野田「待っていたぞ…!恭介…!」

恭介「ん?野田か、どうした、お前一人か?」

恭介(上半身裸で岩の上に立ち、ハルバードを構えながらポーズを決める野田がいた)

恭介(どうやら、他の筋肉たちはいないみたいだ)

野田「はっ!この期に及んで惚けたことを言う…!」

野田「お前は、俺との戦いの約束を果たす為にここに来たんだろうっ!?」

恭介(野田が吠えた…!)

恭介「戦いの約束…!?」

野田「ふっ。やはり覚えていたか。それでこそ俺が認めた宿命のライ…」

恭介「そんな約束してたっけか?」

野田「なっ!?」

ズゴーッ

ドボーンっ!!

恭介(綺麗にずっこけると、そのまま岩から川に落っこちた…)

ダカダカダカダカ

野田「約束しただろう!?ギルド降下作戦の時にぃ!!」

恭介(すごい勢いで川から這い上がってくると、ずぶ濡れのままハルバードを俺につきつけて来た)

恭介(えーっと、ギルド降下作戦…、ギルド降下作戦…)

野田『ふん、戦闘でもそれだけ出来るなら、今度俺と手合わせしてもらおうか?恭介…!』

恭介『わるいがお断りだ。なんで仲間同士で、マジでやり合わなきゃいけないんだよ』

恭介『やるならもっと別のバトルで勝負しようぜ』

野田『む…、確かにその通りだ。だがどんな勝負でも俺が、勝つ!』

恭介「あっ!」

野田「そうだ…!やはり覚えていたか…!始まる前から、俺を動揺させる作戦だったみたいだが…!」

野田「その程度で動じるほど俺は…」

恭介「忘れてたぜ、そういやそんな約束したな」

野田「なっ!?」

ズゴーッ

野田「恭介ぇーーー!!貴様ぁーーー!!」

野田「俺がどれだけ、この日を待ち望んでいたと思ってるんだぁーーー!!」

ガクンガクン

恭介(もはやハルバードすら投げ捨てて、俺の胸ぐらを掴んでガクンガクンしてくる…)

恭介(ってか、軽く半泣きになってねえか?お前…)

恭介「悪い、悪い、悪かった!あの後色々あったからついな」

野田「全く…、貴様は俺が認めた宿命のライバルなんだぞ!もう少ししっかりしてもらわなければ困る!」

恭介(そう言いながら、腕を組んで鼻をフンと鳴らす野田)

恭介「なあ、野田…。前から聞きたかったんだが、お前にとって俺はいつ宿命のライバルとやらになったんだ…?」

恭介(なんか気づいたら野田にそう認定されていたが…)

恭介(正直野田とそんな大層な関係になるほどの、なにかがあった覚えが無い)

野田「ほう?それを俺の口から言わせたいか!?仕方あるまい!そんなに聞きたいなら教えてやろう!!」

恭介「いや、嫌なら別にいいんだが…」

野田「あれは!俺とお前が初めて会った時の事だ!」

恭介「もう、お前話したくてしょうがないんだろ?」

恭介(やたらテンション高いが、聞かせてくれるというなら聞いておくべきだろう)

野田「俺は、ゆりっぺにちょっかいをかけたという不届き者を成敗する為に、保健室に向かった」

恭介「ちょっかいかけてないからな?ただ勧誘されただけだからな?」

野田「そんな奴は万死に値する!俺はそいつを抹殺するつもりだった!」

恭介「発想が物騒だな。ってか万死なんて言葉知ってたのか」

野田「そして立ちはだかったのが、恭介。お前だった!!」

恭介『そんなにゆりっぺとイチャラブしたいのかい?太刀筋に出てるぜ?』

恭介『ってかお前らお似合いだぜ?いっそ付き合っちまえよ!』

恭介『俺を倒せたら告白してこいよ!』

野田「お前はあの時、そう言った…!」

恭介「言ってねーよ!お前が都合良く記憶を改竄してんだよ!」

野田「だが、俺は破れた…!ハルバードを装備していながら、丸腰のおまえ相手に完敗した…!」

恭介「まあ、枕とか布団の類は、バトルランキングで使い慣れてたからな」

恭介「とどめは金的だったし」

野田「そして、悟った。お前を倒さねば、俺は一生ゆりっぺに告白出来ないと…!」

恭介「ん?」

野田「その時から恭介!!お前は俺の宿命のライバルになったのだぁ!!」

恭介「なんでそうなったんだよ!?結局、お前が勝手にそう思い込んでるだけじゃねえかぁ!!」

野田「恭介、お前の強さはライバルであるこの俺も認めている」

恭介「もう何がなんでもライバルで通すのな」

野田「だが、それと同時に俺は、俺は、お前の事を…!」

野田「と、友達だと思っている!!」

恭介(やけに声を震わせ、歯を食いしばりながら野田はそう言った)

恭介「ああ。俺もお前の事を友達だと思ってるぜ」

野田「ほ、本当か!?」

恭介「当たり前だろ?今まで一緒に過ごしてきて、今更何言ってんだよ?」

野田「きょ、恭介!!」

野田「くっ、うぅ………」

恭介(野田が今度は顔を伏せ、すすり泣くような声を出している)

恭介「野田…。お前、泣いてんのか?」

野田「泣いてなどいなぁい!これは…、心の汗だぁ!!」

恭介(声がひっくり返りながら、今度は空に顔を向けて吠えた)

恭介(全く、本当に愉快なやつだぜ。お前は)

野田「だが、例え友達であろうと、ライバルであるからには!」

野田「ゆりっぺの愛を貫く為には!」

野田「お前を倒さなければならない!恭介ぇ!!」

恭介「なるほどな。いつの間にか、そんな設定になってたのか」

恭介「確かに、そりゃあ宿命のライバルと言うべき関係だな。野田!」

野田「ふっ。やっとその気になったか…!さあ、かかってこいぃ!恭介ぇーーー!!」

恭介(野田はまたも吠えながら、ハルバードをブンブン振り回している)

恭介(まあ、やる気に溢れているのは良いがな…)

恭介「野田。お前忘れてないか?俺はマジでやり合うんじゃなくて、もっと別のバトルで勝負しようって言ったんだぜ?」

野田「む?そう言えばそうだったな!だが、どんな勝負でも、俺が勝ぁつ!」

恭介(なんて素直な奴なんだ…、お前は…!)

恭介「じゃあせっかく川にいることだし、水切りで勝負するか」

野田「いいだろう!!」

恭介「三回投げて、多く飛ばした最高記録で勝負な」

野田「なら先攻は俺が貰うぞ!」

恭介「ああ、記録は俺が見ててやるよ」

野田「よぉし!行くぞぉ!」

野田「うおおおおおおっ!!」

パシッ、パシッ、パシッ、パシッ、ポチャ

恭介「5回な」

野田「な、なに!?こんなに難しいのか!だが条件は恭介も俺も同じ!」

野田「そう簡単に高記録は…!」

恭介「ほいっ」

パシッ、パパパパパパパパ…

野田「!?」

恭介「まあ、大体20回くらいか?久しぶりだとやっぱりなまってるな」

野田「恭介ぇ!!一体どうやった!?どうやったらあんなに長く続くんだぁ!!」

ガクンガクン

恭介「わかった、わかった!教えてやるからガクンガクンするのやめろ!」

野田「よし!」

恭介「いいか?まず大事なのは石のチョイスだ。なるべく平たくて、指を引っ掛けやすいのを選ぶのがコツだ」

野田「ほうほう」

恭介「こうして指を引っ掛けて、投げる時は水面より少し上」

恭介「大体10度から20度くらいの角度で投げること」

恭介「あと野田。さっき肩だけで力任せに投げてたろ?あれは良くない」

恭介「手首のスナップも効かせながら、力任せに投げるんじゃなく、より回転させることを意識するんだ」

野田「なるほど。意外と色々なコツがあるんだな」

恭介「まあな。ほれ、これなんか丁度いい石だ。これで投げてみろよ」

野田「えーっと、指はどう引っ掛けるんだ…?」

恭介「人差し指をここに引っ掛けて、他の指でしっかり掴むようにするんだ」

野田「おお!こう持つのか!それで、手首のスナップを効かせて…、何度くらいだ?」

恭介「まあ、最初のうちはとにかく水平を意識するくらいでいいさ」

恭介「力み過ぎずに、回転させるのに集中しろ」

野田「よぉし!行くぞぉ!」

野田「うおおおおお!!」

恭介「そんな叫ばなくてもいいんだぜ?野田…」

パシッ、パシッ、パパパパパ…

野田「おお!やったぞ!記録大幅更新だ!」

恭介「やるじゃねえか野田!二回目であれは中々だぜ」

野田「何回だ!何回行った!?」

恭介「数えた限りじゃ17~18ぐらいか?まあ、一投目の俺とほぼ同じだな」

野田「くそぉーー!!あと数回届かなかったか…!」

野田「次こそは…!次こそは…!!」

恭介「ほれ、野田。次はこれ使え、これも投げやすそうだぜ」

野田「すまん、恭介。ありがとう」

野田「よぉし!行くぞぉ!」

野田「うおおおおおーーーーー!!」

恭介「さっきより叫んでるな…」

パシッ、パパパパパパパパ…

恭介「おお!これは行ったな!」

野田「何回だ!何回行った!?恭介!!」

恭介「25くらいは行ったな。確実に、一投目の俺より上の記録だぜ」

野田「よっしゃあああああ!どうだ!恭介ぇーーー!!」

恭介「いや、マジですげえよ。こりゃ俺も本気出さないとな」

野田「ふっふっふ、この俺の渾身の記録を果たして超えられるかな?」

恭介「んじゃ、俺も野田の真似して…」

恭介「でりゃあああああーー!!」

パシッ、パパパパパパパパパパ…

パパパパパパパパパパパパパパ…

野田「!?」

恭介「いけね、遠くまで行き過ぎたか。ありゃ何回行ったかわからねえな」

野田「くそおおおおおっ!!俺の負けだぁーーー!!」

野田「次だ!次の勝負だぁ!恭介!!」

恭介「そうだな…、じゃあ釣りでもするか」

野田「いいだろう!どんな勝負でも、俺は勝ぁつ!」

恭介「お前、さっき負けたろ」

野田「だが、恭介。釣りをやろうにも道具が無いぞ?」

恭介「竿はそこらへんの木の枝でいいし、重りは小石で代用する」

恭介「糸とか針はあの流木に引っかかってるのを使うか」

野田「おお!キャンプの時に真人と謙吾が、どちらがより力任せに投げられるかという訳わからん勝負した時に引っかかったあれか!」

恭介「他人事みたいに言ってるが、お前と高松と松下五段も混ざってたからな」

恭介(流木から糸と針を回収して、手頃な木の枝を拾って竿にした)

野田「よぉし!準備完了だ!さあ、勝負だ、恭介ぇ!!」

恭介「待て待て、まだ餌用意してないだろ?」

野田「む?そういやそうだったな。だが餌はどうやって調達するんだ?」

恭介「そこらへんの大きな石をひっくり返してみろ」

恭介「大体は餌になりそうなやつがゴロゴロいる」

野田「おお!恭介!ミミズがいたぞ!」

恭介「上々だ、こいつを使うか」

野田「だが、恭介。ミミズはどうやって針にかけるんだ?」

恭介「こうやってハチマキの5ミリくらい下からチョンがけするんだ。ハチマキは避けるようにな」

恭介「この部分はミミズの急所だから」

野田「ほうほう。こうやって針にかけるのか」

恭介「ミミズは慣れるまで針に刺しにくいからな。お前のは俺がやっといてやるよ」

野田「スマン!ありがとう、恭介!」

野田「よぉし!今度こそ勝負だぁ!恭介ぇ!!」

恭介「元気だな、お前。それだけ叫んでよく声が枯れないな」

野田「ふっ。いつでもゆりっぺへの愛を叫べるように鍛えておいた」

恭介「努力の方向間違ってねえか?お前」

野田「そんなことは今はどうでもいい!先に3匹釣り上げた方が勝利だぁ!どうだぁ!」

恭介「遠まわしにゆりっぺをどうでもいいって言ってるように聞こえるが…」

恭介「まあいいか。オーケー、それでいこう」

野田「うおりゃあああ!!」

恭介「それっ!」

ポチャン スッ

野田「ふっ。釣りなら俺も経験がある!この勝負もらったぁ!」

恭介「おっ!かかったぜ!」

野田「!?」

恭介「ニジマスか、まあまあの大きさだな」

野田「恭介ぇーーー!!何故だ!なぜそんなに早く釣り上げられるんだぁーーー!!」

ガクンガクン

恭介「落ち着け、魚を釣るのにもポイントがあるんだよ」

野田「ポイント?」

恭介「ああ、たとえばさっき俺が投げた大石とかそうだな」

恭介「ああいう魚が身を隠せる場所は、釣りやすいポイントなんだよ」

野田「ほう、そうだったのか。それは知らなかった」

恭介「ま、そんな感じでやってみろ。それっ!」

野田「ふっ。そうとわかれば話は早い!俺も大石を狙って…」

恭介「よし!またかかったぜ!」

野田「!?」

恭介「んー、さっきよりは小振りだな」

野田「恭介ぇーーー!!どういう事だぁ!お前さっき石に向かって投げなかったろぉーーー!!」

ガクンガクン

恭介「落ち着け、ってか頼むからガクンガクンするのやめろ!」

恭介「今度投げたのは、流木だ。当然、ああいう場所も魚が身を隠せるから良いポイントなんだよ」

野田「なるほど。つくづく物知りだな、お前は」

恭介「ま、そんな感じでやってみろ。それっ!」

野田「ふっ。完全にマスターしたぞ!ようは魚が身を隠せる場所を狙えばいいんだな?」

野田「そうとわかれば、もはや俺の勝ちは決まったようなもの…!」

恭介「おし、立て続けにヒットだぜ!」

野田「!?」

恭介「ヤマメか。ここでも釣れるんだな」

野田「恭介ぇーーー!!ど・う・い・うことだぁーーー!!」

ガクンガクン

野田「お前今、魚が全然身を隠せないような場所に投げたじゃないかぁーーー!!」

恭介「だからガクンガクンすんなっつの!しまいにゃげげごぼするぞ、俺!」

野田「すまなかった!」

恭介「お前、本当素直だな…」

恭介「ま、今投げたのは、ああやって水の流れが出来てるところだ」

恭介「ああいうところには、大抵底に大きな石が沈んでてな」

恭介「それが原因で、速い流れと緩い流れの境目になるんだ」

恭介「そういう場所には、魚にとっての餌が多く集まりやすい」

恭介「よって魚も釣れやすい、ということだ」

野田「釣りも案外奥が深いんだな」

野田「いっそこれからは、『フィッシュ棗』と名乗ったらどうだ?恭介!」

恭介「いや、あくまで俺のは趣味程度の知識さ」

恭介「子どもの頃から、みんなで遊んでいるうちに自然と覚えたんだよ。水切りも釣りもな」

野田「なるほど。だが、これだけの知識を身に着けた俺に、もはや負ける要素など…!」

恭介「いや、すでに負けたからなお前。俺もう3匹釣ったし」

野田「そうだったぁーーー!!おのれ恭介ぇ!!貴様いつの間にそんなに釣り上げたぁーー!!」

ガクンガクン

恭介「お前がガクンガクンしてばっかいたから、釣れるもんも釣れなかったんだろうがぁーー!!」

野田「くそぅ…!また、負けた!次の勝負だぁ、恭介ぇ!!」

恭介「次か、じゃあ飛び込みでもするか。あっちの方は水深が深かったし、丁度いい岩もあったからな」

野田「ふっ。この俺に飛び込みで挑むとは…!俺の勝ちは決まったようなものだな!」

恭介「2連敗しといてよくそんな自信があるな」

野田「うるさぁい!さっさと行くぞぉ!恭介ぇ!」

恭介(野田と一緒に、少し奥まで移動する)

恭介(より緑に囲まれた場所だ。こういうところにくると、どうしようもなくワクワクするよな)

野田「さあ、恭介。今度はどうやって勝敗をつける…!?」

恭介「そりゃあ、より格好良く飛び込んだほうが勝ちだろ」

野田「望むところだ!!…だが、待て、恭介。どっちが格好良く飛んだなんて誰が判断するんだ?」

恭介「あ、それもそうだな」

恭介(野田からまさかの真っ当な指摘をされる)

恭介「どうすっかなー。誰か通りかからねえかなー?」

野田「お前、わりと適当だな…。そんな都合良く、誰か通りかかるわけ…」

??「なら、その役は僕が引き受けよう!」

恭介「何者だ!?」

??「とうっ!」

恭介(どこからともなく、バンダナを巻いた謎の男が、俺と野田の前に現れた…!)

??「僕の名前はスカイハイ斉藤。色々あってスカイハイを極めた男だ」

恭介「スカイハイ斉藤だと!?こいつも戦線のメンバーなのか?」

野田「こんなメンバーいたか…?」

斉藤「まあ、細かいことは気にするなよ」

斉藤「飛ぶことに関して、僕の右に出るものはいない」

斉藤「君たちの飛び込みは、この僕が審査しよう」

恭介「なんかよくわからんがラッキーだな、野田!」

野田「微妙に腑に落ちんが…、まあいい!」

恭介「んじゃ、先行は俺がもらうぜ。なんかもうさっさと飛び込みたくて、ウズウズして仕方ねえんだよ!」

斉藤「気持ちはわかる。こんな綺麗な川に飛び込むというのに、血が騒がない奴にはスカイハイ魂が無いぜ」

野田「スカイって空だろ…?いいのか、そのへんは…?」

恭介「さあ、行くぜ!いやっほぅーーー!!」

恭介(岩の上から勢い良く川に飛び込んだ)

恭介(途中ひねりを入れたり、回転したりしながら、頭から着水する)

ドボーンっ!

恭介「ひゅうっ!最っ高に気持ちいいぜ!」

斉藤「見事な飛び込みだ!飛び込むまでのパフォーマンスも大したもんだが、着水の姿勢が良かった!」

斉藤「あいつ、飛び慣れてやがるな…!」

野田「さすがは俺の宿命のライバルだ…!だが、俺はその更に先を行く!!」

野田「うおりゃあああ!!」

恭介(野田が高く高く、ジャンプした!)

恭介(体を丸めて、とにかく前宙を繰り返しまくっている…!)

野田「うおおおおお!!」

斉藤「っておい!あんた!もうすぐ水面だぞ!?」

恭介「野田!ストップだ!そのままじゃ思いっきり…」

野田「おおおおおおおっ!!」

バシーンっ!!

恭介「野田ぁーーー!?」

恭介(見間違えじゃければ、今背中から着水しなかったか…?)

恭介(しかも、なんかすげえエグい音したような…)

ぷかぁ…

野田「………………」

恭介「野田ぁーーー!しっかりしろぉ!」

斉藤「完全に意識が飛んでるな…、アホだ…」

ー野田復活後ー

斉藤「残念ながらセンスが無い。格好良く飛び込むのも大切だが、それで着水がおろそかになるのは本末転倒だ」

野田「くそおおおおお!また、負けたのかぁーーー!?」

恭介「良い子のみんなは、決して野田みたいな無茶な飛び込みは真似しないようにな」

恭介「俺たちは死なないから良いが、普通マジで死ぬからな、マジで」

野田「お前は、どこに話しかけてるんだ…?」

恭介「なんでもないさ、気にすんな」

野田「くそっ!次だ!次の勝負こそ勝ぁつ!」

恭介「次か…、さて、次はなにして遊ぶか」

野田「遊びじゃない!!真剣なる勝負だぁーーー!!」

恭介「おっと、そうだったな。悪い、悪い」

恭介(そんな話をしていた矢先…)

真人「おーい!恭介、野田ぁ!」

高松「先に来ていたんですね」

松下「今日は恭介も一緒か。随分賑やかな声が聞こえたが、何をしていたんだ?」

野田「恭介と水切りをしたり、釣りをしたり、飛び込みをしたりしていたところだ…!」

高松「なんですって!?私達抜きでそんな楽しそうなことを!?」

松下「それを聞いて黙っていられるかぁーー!!俺たちもその遊びに混ぜろぉーー!!」

野田「遊びじゃない!!真剣なる勝負だぁーーー!!」

松下「なら俺たちとも勝負すりゃいいだろうがぁーーー!!」

高松「その通りです!!同時に勝負すればみんなで楽しめるじゃないですかーーー!!」

野田「それには気付かなかったーーー!!」

恭介「…真人。お前らはいつもこんなテンションで筋トレしてんのか?」

真人「ああ、大体こんな感じだぜ。みんなで励まし合いながらやれば、筋肉にも良いからな!」

恭介(大山が倒れるわけだぜ…)

野田「恭介ぇーーー!!みんなで勝負出来るものはなにか無いのかぁーーー!!」

恭介「じゃあ息止め合戦で勝負だぁーーー!!」

真人「よっしゃあああああ!俺の筋肉の出番だなぁーーー!!」

松下「息止めに筋肉は関係ないと思うぞ、真人ぉーーー!!」

高松「筋肉に不可能はありませんよ、松下五段ーーー!!」

松下「その通りだぁーーー!!俺としたことがうっかりしていたぁーーー!!」

野田「さあ、勝負だぁーーー!!」

恭介「バトルスタートだぁーーー!!」

恭介(その後、そんなテンションで息止め合戦をしていたら)

恭介(案の定、全員無理しすぎで溺れかけ)

恭介(野田に関しては、ガチで溺れて、またも死にかけたのであった…)

恭介(みんなも川で遊ぶ時は、決して危険すぎる遊びはせず)

恭介(一人じゃなく、複数人で遊ぶようにしような!)

選択安価 残り3回

行き場所を選んで下さい

1 本部
2 校内をぶらつく
3 音楽の聞こえる教室
4 図書館
5 橋の下(川)
6 犬小屋
7 駐車場

21:53:00:00
↓1

恭介(図書館にやってきた)

恭介(せっかくだから、面白そうな漫画でも探すことにしよう)

沙耶「あら、恭介くんじゃない」

恭介(すると、ばったり沙耶と会った)

恭介「よう、沙耶。お前もなにか借りに来たのか?」

沙耶「逆よ、さっき返却してきたところなの」

沙耶「本当ならいつまでも借りてたかったんだけど、さすがに他の人にも悪いしね」

恭介「ほう。沙耶がそこまで言うってことは借りてた漫画ってのは…」

沙耶「当然!『学園革命スクレボ』よ!」

恭介(ここで少し説明すると、『学園革命スクレボ』とはスパイ漫画だ)

恭介(主人公の朱鷺戸沙耶は諜報機関に所属するスパイで、とある学校の地下に隠された秘宝を探すという任に就かされる)

恭介(地下は迷宮になっていて、各国から派遣された数多のスパイや捜査官)

恭介(更には、秘宝を守る『闇の執行部』と呼ばれる組織ともバトルを繰り広げるという)

恭介(実に面白い漫画なのだ)

恭介(ちなみに沙耶も、生前はスクレボが大好きだったらしく)

恭介(それが影響してか、俺たちの世界に迷い込んだ時に、朱鷺戸沙耶として存在するようになってしまったらしい)

恭介(本名はどうやら『あや』というようだ)

沙耶「でもさっき司書さんに聞いた話じゃ、スクレボを借りてる人は少ないみたいなのよね…」

恭介「まあ、どっちかというとマイナーな部類だからな」

恭介「それでも、知る人ぞ知る神作品というのは間違いない!」

沙耶「その通りよ!スクレボはまさに『人生』だわ!」

恭介「お前がそれ言うと、まさにそのままな意味でも通っちまうな…」

沙耶「スクレボはもっと、多くの人に知られるべき作品なのよ!」

沙耶「漫画好きならこれは読んどけ!読んで絶対に損はしない!って感じの名作なのよ!」

恭介(沙耶が興奮気味にスクレボに対する熱い想いを語る。気持ちはよくわかるぜ)

恭介「まあ、無理に押し付けるのは良くないが興味あるやつとか」

恭介「面白い漫画探してるやつとかには、オススメしときたい作品だな」

沙耶「うーん、そんな人いたかなぁ…。ゆりは漫画には興味無いみたいだし…」

沙耶「こんな話してたら、誰かそんな感じの人通りかからないかしらね?」

恭介「おいおい、それこそ漫画じゃあるまいし。そんな都合良く誰か通りかかるわけ…」

大山「あれ?恭介くんに沙耶さん!二人も図書館に用事?」

恭・沙「「キターーー!!」」

恭介(そんな話してたら、まさにそれらしき奴が現れた。おいしいやつだぜ、大山…!)

大山「うわっ!なに、どうしたの?そんな急に大声上げられたら驚くよ!」

大山「いや、そうか!二人とも僕の芸人としてのオーラに、当てられてしまったんだね!」

大山「いやー、ごめんね!僕も普段は抑えようとしてるんだけど」

大山「僕の面白さは、自分で制御出来ない領域に達しちゃってるみたいでさあ!」

恭介(大山がペラペラと喋り始める)

恭介(お前はいつから、自分の面白さにそんな自信あるキャラになっちまったんだ…?)

沙耶「大山くんって、ほんと最近キャラ変わったわよね…」

恭介「特徴が無いのが特徴とかよく言えたもんだぜ…」

大山「で、なになに?なんの話?どんな前フリにも対応してみせるよ!」

恭介「いや、別に漫才やってたわけじゃくてな。大山、お前面白い漫画とか興味無いか?」

大山「漫画?漫画なら大好きだよ!」

大山「ドラゴンボールとか、スラムダンクとか、ワンピースとか、ナルトとか沢山読んでるよ!」

沙耶「見事に誰もが知ってる、メジャーなタイトルばかりね」

恭介「そのへんのセンスは普通なんだな」

大山「っていうか、僕も今日は漫画でも借りようかなってここに来たんだよ」

恭・沙「「よしっ!」」

恭介(まさに好都合。俺と沙耶は同時にガッツポーズを作った)

大山「えっ、だからなに!?さっきから!?」

大山「その二人だけで通じ合ってる感出されると、僕そっち方面の深読みしちゃうよ!?いいの!?」

恭介「どっち方面の深読みだよ…」

沙耶「心配しなくても、あたしと恭介くんはそんな関係じゃないわよ」

大山「なんだそうなんだー。だよね!」

大山「もし二人がそういう関係なら、恭介くんがゆりっぺに殺されかねないよね!」

大山「まあ、死なないけど!死後の世界ならではのジョークなんだけど!」

沙耶「えっ、どうしてゆりがそこで出てくるの?」

大山「あれ?」

恭介(そこで大山が俺に近づいて、小声で囁き始める)

大山「ねえ、恭介くん。もしかして沙耶さんって、ゆりっぺの行き過ぎてる感のある好意に気づいてないの?」ヒソヒソ

恭介「あいつは色々訳ありで、友達とかあんまいなかったから、そこらへんの距離感が多分よくわかってないんだよ」ヒソヒソ

恭介「女子同士だと、あれくらいで普通だと思ってるっぽいんだ」ヒソヒソ

大山「へえ、そうなんだ。僕たちから見たらまさに百合の関係っぽいんだけどね」ヒソヒソ

大山「ゆりっぺだけに…ね!」

恭介(大山が渾身のボケと言わんばかりに、イケメンボイスとドヤ顔を披露する)

恭介「残念だが大山、そのネタは既に謙吾が使ってる。つまり今のはネタ被りだ」

大山「ええーーーっ!?そんなーーーっ!?」

沙耶「ちょっと!?内緒話かと思ったら、いきなり大声!?」

沙耶「図書館なんだから静かにしないと駄目よ!」

恭介(沙耶にもっともなツッコミを入れられてしまう)

大山「不覚だぁ…。まさかのネタ被りだなんて…。この異次元大山、一生の不覚だよ…」

沙耶「ほんとにその芸名で行くつもりなのね…」

大山「まあ、一生って言っても、既に人生一度終わってるんだけどね!死後の世界だけに!」

恭介「しかも、即座に次のボケ入れてくるとは…。転んでもただでは起きないやつだな…」

恭介(このままボケの才能が開花したら、まさに大物になるかもしれない)

恭介(いや、既になってる気がしないでもない…)

恭介「まあ、そんなことは置いといてだ」

恭介「大山、漫画を借りに来たなら俺と沙耶がオススメする漫画があるんだが、興味無いか?」

沙耶「タイトルは『学園革命スクレボ』よ!」

大山「へえ、聞いたことないよ。でも、二人がオススメするなら、きっとすごい面白いんだよね!」

恭介「ああ、すっげー面白いんだぜ!俺のバイブルだ!」

沙耶「あたしの人生よ!」

大山「バイブル!?人生!?そんなに!?」

大山「うわあー!それは面白そうだ!」

恭介(子どもみたいに無邪気にはしゃぐ大山、どうやら掴みはバッチリのようだ)

沙耶「はい、大山くん。これが1巻よ、読み終わったらとりあえず感想聞かせて?」

沙耶「あたしたちも、適当に本読みながら待ってるから」

恭介(沙耶が大山にスクレボの1巻を差し出す)

大山「うん、わかった!早速読んでみるよ!」

恭介(大山がスクレボを読んでる間、俺たちも読書して時間を潰すことにした)

恭介(俺は『華麗なる斉藤一族』という漫画を)

恭介(沙耶は『planetarian ~ちいさなほしのゆめ~』という、SFノベルを読むことにしたようだ)

ー大山スクレボ読破後ー

大山「すごい、すごいよ!スクレボ!」

大山「ええっ!?これ1巻だよね!?僕まだ1巻しか読んでないよね!?」

大山「1巻から明らかにラスボスっぽい、時風瞬なんて奴出てきたけどいいの!?」

恭介「フッ。ものの見事にハマってくれたようだな」

沙耶「無理もないわ、スクレボだもの!」

大山「いやー、1巻からこんな熱い展開の連続だとは思わなかったよ!」

大山「まさか最初に出てきた、明らかにかませ犬っぽい捜査官のマーキーが、あんな格好いい役回りのキャラなんて!」

恭介「ああ、あれは驚くよな。普通最初に出てくるやつってやられ役だしな」

沙耶「そうそう。なんかもう顔からして、かませ犬っぽい外見だもんね」

大山「僕なんか最初見た時、藤巻くんに似てると思っちゃったよ!」

藤巻「なんだ?俺がどうかしたか?」

三人「「「マーキー!!」」」

藤巻「うおっ!なんだよ、三人同時に!?」

藤巻「そりゃ俺は藤巻だから、そういうニックネームもありなのかもしれねえけどよ…」

恭介(俺たちの会話を聞きつけたのか、マーキーが…、いや藤巻が声をかけてきた)

恭介「ちなみに藤巻、お前は何しに図書館に来たんだ?」

藤巻「あ?暇潰しになんか面白そうな漫画でも探そうかと思って…」

恭介「藤巻」ガシッ

沙耶「ちょうど今ここに」ガシッ

大山「面白い漫画があるよ」ガシッ

藤巻「お、おお…。なんだよ、また三人同時に…」

藤巻「今日のお前ら、なんかちょっと怖いぜ…?」

沙耶「つべこべ言わずにさっさと読まんかーーーい!!」

藤巻「うわああああーーー!!」

ー藤巻スクレボ読破後ー

藤巻「すげえ、すげえぜ、スクレボ!」

藤巻「まさかこんな面白い漫画があるなんて、今まで知らなかったぜ!」

大山「まさに人生の10割損してたって感じだよね!」

藤巻「ああ、まさにそんな感じだ!」

恭介「いや、そこまで喜んでくれるのは嬉しいが、お前らの人生それでいいのか…?」

大山「やだなぁ、恭介くん。今のも死後の世界ならではのジョークだよ!」

恭介「どんだけレパートリーあるんだよ!?その死後の世界ジョークシリーズ!!」

沙耶「ふふふ、計画通り。どんどんスクレボファンが増えてくわね…!」

藤巻「つか気になったんだがよ。なんでこの漫画の主人公は、朱鷺戸沙耶って名前なんだ?」

藤巻「沙耶と同性同名じゃねえかよ?」

沙耶「ああ。あたしの今の名前は、その漫画の主人公からとったコードネームみたいなものなのよ」

恭介(沙耶がとっさにそう誤魔化す。なるほど、全く違うというわけでも無い良い誤魔化し方だ)

大山「ええーーーっ!?そうだったの!?初耳だよっ!!」

沙耶「そりゃあ今初めて言ったもの」

藤巻「そういや沙耶ってスパイだったな。いっつもなんかボケボケだから、すっかり忘れてたぜ!」

沙耶「ちょっ!?どういう意味よ、藤巻くん!」

恭介「そのままの意味だと思うぞ」

大山「まあ、TKみたいに本名わからない人もいるし、コードネームでも沙耶さんは沙耶さんだよね!」

藤巻「ああ、違いねえぜ!」

沙耶「ふ、二人とも…。あ、ありがと」

大山「何言ってるのさ。お礼なんていらないよ!」

藤巻「一緒に頑張ってきた仲間だからな、当然だぜ!」

恭介(生前やあの世界では孤独だった沙耶も、いつの間にかこの世界に来て、沢山の仲間が出来てたみたいだな)

恭介(俺も嬉しいぜ。あの世界にいる時から、ずっとそんな沙耶の姿を見たいって思ってたからな)

藤巻「さて、じゃあ俺は残りのスクレボを全巻借りていくことにするぜ!」

大山「えっ、何言ってるのさ藤巻くん。残りのスクレボを借りるのは僕だよ?」

藤巻「は?」

大山「え?」

沙耶「あ、あたしなんかオチが見えたかもしれないわ…」

恭介「奇遇だな、沙耶。俺もだぜ」

藤巻「はあああああ!?何言ってんだはこっちの台詞だぜ、大山!!」

藤巻「お前、既にスクレボ読んでたんじゃなかったのかよ!?」

大山「僕もついさっき恭介くんと、沙耶さんにスクレボを教えてもらったばっかりだよ!!」

大山「先に教えてもらったのは僕なんだから、僕が先に全巻借りるってのが筋ってもんだよねえ!?」

藤巻「そんなの納得いくかよ!俺は今すぐにでも続きが読みてえんだ!」

藤巻「大山、ここは俺とお前の友情に免じて、俺に先にスクレボ読ませてくれよ!」

大山「卑怯だよ!藤巻くん!あーあ、そんな事言う藤巻くんとの友情だなんて僕もう知ーらない!」

藤巻「おい、マジかよ!?大山!!お前、俺との友情よりスクレボを選ぶってのか!?」

大山「選ぶね!迷わず選ぶね!先にスクレボを見るためなら、藤巻くんとの友情は一度捨てるよ!」

大山「藤巻くんは、カンニングしようとしてたら、その様子をビデオカメラに取られちゃって」

大山「弱みを握られてしまった相手とでも、新しい友情を育めばいいんじゃないかなあ!?」

藤巻「なんだよそのピンポイントな出会いはよ!?そんな相手と友情育めるわけねえだろうが!!」

大山「世の中にはそんな出会いから友情育む人たちだって、いるかもしれないじゃない!」

藤巻「いねーよ、そんな奴ら!いるわけねーだろ!」

大山「じゃあ旅の途中で知り合った女の子の家に強引に上がり込んで、勝手に人の家の電話使って」

大山「ラーメンセットの出前でも取れば良いんじゃない!?そこから友情を育めばいいんじゃないかなあ!?」

藤巻「どうやったらそこから友情育めるんだよ!?人の家に勝手に上がり込んで出前頼むって頭おかしいだろ!」

大山「世の中にはそんな出会いから友情育む人たちだって、いるかもしれないじゃない!」

藤巻「いねーよ、そんな奴ら!いるわけねーだろ!」

大山「じゃあ、気づいたら全然知らない世界にいて、何がなんだかわからないまま、屋上まで駆け上がって」

大山「そこから急に屋上から突き落とされれば良いんじゃない!?そこから友情を育めばいいんじゃないかなあ!?」

藤巻「いきなり屋上から突き落とすようなやつと、どうやったら友情育めるんだよ!」

藤巻「そいつ絶対頭おかしいだろ!」

大山「世の中にはそんな出会いから友情育む人たちだって、いるかもしれないじゃない!」

藤巻「いねーよ、そんな奴ら!いるわけねーだろ!」

ゆり『くちゅん!』

日向『はっくしょん!』

ゆり『………?』

日向『………?』

恭介「おいおい、お前ら。それくらいにしておけよ」

沙耶「そうよ、ここ一応図書館なんだしNPCの迷惑になるわよ…」

大山「僕たちは、今スクレボを掛けた仁義なき戦いをしているんだ!」

藤巻「そうだぜ!邪魔すんなよ!恭介、沙耶!」

恭介「途中から完全にスクレボ関係無かったろ、お前ら…」

沙耶「馬鹿ね…」

トントン

大山「なにさ!?」

藤巻「なんだよ!?」

司書「申し訳ありませんが、他の利用していただいてる皆様の御迷惑になりますので」

司書「今すぐ図書館から、出ていっていただけないでしょうか?」ニッコリ

大・藤「「あっ、えっと…」」

司書「出ていっていただけないでしょうか?」ニッコリ

大・藤「「はい………」」

ーーーーー

ーーー

恭介(笑顔の怖い、司書さんのプレッシャーに負けて、大山と藤巻は出禁にされてしまった)

藤巻「くそぉ…、スクレボが…。スクレボがぁ…」

大山「スクレボが読めないなんて、僕の人生はおしまいだぁ…。来世はきっとミジンコに生まれ変わるんだぁ…」

恭介「大山は死後の世界ジョークが好きだなぁ、そのボケ冴えまくってるぜ」

沙耶「まあ、案の定なオチになっちゃったわね」

恭介「これに懲りたら、これからは図書館では静かにすることだな」

大山「はい…」

藤巻「肝に銘じるぜ…」

恭介「よし、じゃあ俺の図書カードでスクレボ借りてきてやるよ」

恭介(1巻だけ読んで、続きが読めないなんて生殺し状態だからな)

恭介(勧めた立場からしても、それは可哀想すぎるぜ)

大山「ええっ!?良いの、恭介くん!」

恭介「俺は別に出禁扱いになってないしな」

藤巻「すまねえ!恩に切るぜ、恭介!」

沙耶「でもそれって又貸しでしょ?やっちゃいけないんじゃないの?」

恭介「俺たちは規律を乱すものだからな。それくらいはまあいいだろ」

沙耶「まあ、それもそうね」

藤巻「大山、さっきは悪かったぜ!スクレボは順番通り、お前から呼んでくれ!」

大山「いや、僕こそ藤巻くんに酷いこと言っちゃったよ!そのお詫びと言っちゃなんだけど、藤巻くんから読んでよ!」

藤巻「いいんだよ、俺は…!その…、最初に読むとか柄じゃねえんだよ!」

大山「それを言うなら、僕だって最初に読むなんて柄じゃないよ!だからいいんだ、藤巻くんから読んでよ」

藤巻「大山…!いや、やっぱり俺なんかよりお前の方が…!」

大山「そんなことないよ!藤巻くんから読むべきだよ!」

藤巻「大山…!」

大山「藤巻くん…!」

恭介(さっきまでのケンカはなんだったのか、今度は打って変わって譲り合いが始まってしまっている…)

沙耶「なんか、また長くなりそうなんだけど…」

恭介「ああ、いい加減止めるか」

恭介「あのな、お前ら。そもそも二人ってルームメイトじゃなかったか?」

恭介「同じ部屋なんだから、そこまで待つ必要ないんだ」

恭介「仲良く読めばいいじゃねえか」

恭介(大山はもともと、日向とルームメイトだったらしいが、俺が今、日向と一緒だからな)

恭介(その日のうちに、大山は藤巻の部屋に引っ越すことにした的な話を、戦線に入った初日に聞いていた)

大・藤「「あっ…!」」

大山「なーんだ、そういえばそうだったよ!」

藤巻「俺たち二人してうっかりしてたなー!」

大山「恭介くんも早く言ってくれたら良かったのにー!」

恭介「いやー、お前ら二人のやり取りが面白くて、つい放置しちまったんだよー!」

藤巻「全く、人がわりいぜ!恭介はよー!」

恭介「悪い、悪い!あっはははは!」

大山「あははははは!」

藤巻「はははははは!」

沙耶「あーはっはっは!」

ガチャ

司書「図書館の外でも、お静かにお願いしますね」ニッコリ

四人「「「はい…」」」

恭介(またしても、司書さんに注意されながら、時間は過ぎていくのであった…)

選択安価 残り2回

行き場所を選んで下さい

1 本部
2 校内をぶらつく
3 音楽の聞こえる教室
4 図書館
5 橋の下(川)
6 犬小屋
7 駐車場

22:28:00:00
↓1

恭介(校内をぶらつく)

恭介(こうしてると、多分立華が見つかると思うんだが…)

恭介「おっ!」

恭介(見つけた。あいつは背が低いし、なんという雰囲気が独特だからすぐにわかる)

恭介「おーい、立華!」

立華「……………」

恭介(俺が駆け寄ると、無言のまま立華がふり向いた)

恭介(なんだ…?なぜか視線が冷たい気がする…?)

立華「なにか用?棗くん」

恭介(声も…。気のせいか、少し低いような…)

恭介「あ、ああ。お前にまだ、ちゃんとお礼を言ってなかったからな」

立華「お礼?」

恭介「俺がマスクで暴走してた時だよ。お前が俺を助けてくれたんだろ?」

恭介「だから、ありがとうな。助けてくれて」

立華「………………」

立華「それだけ?」

恭介「えっ?」

立華「それだけのために、あたしを呼び止めたの?」

立華「じゃあ、あたしはもう行くわ」

恭介「お、おい!?ちょっと待てよ、立華!」

恭介(立華の様子がおかしい気がする…!立ち去ろうとする立華の右手を掴んだ、直後…!)

パンっ

恭介(空いていた左手で、手をはたかれた…)

恭介「なっ…!?」

立華「棗くん。あなたは一つ勘違いしているわ」

恭介「えっ…?」

恭介(何がなんだかわからない…。立華は初めて会った時から親切で…)

恭介(笑う姿や面白い一面も見せてくれていたのに…)

恭介(今目の前にいる立華はまるで…)

立華「あたしとあなたは敵同士なのよ。あまり馴れ馴れしくしないほうがいいわ」

恭介(無表情、無感情のまま、そう言い放つと、立華は去っていった…)

恭介(あれじゃまるで…)

恭介(本当に天使じゃねえか…。このままじゃ取り付く島もない)

恭介(これ以上会話出来そうにない)

恭介(何かがあったんだ…!あの時、俺が仮面に意識を乗っ取られている時に…!)

恭介(それを詳しく話してくれそうな奴に話を聞かねえと…!)

選択安価 残り1回

行き場所を選んで下さい

1 本部
2 校内をぶらつく
3 音楽の聞こえる教室
4 図書館
5 橋の下(川)
6 犬小屋
7 駐車場

22:40:00:00
↓1

恭介(ゆりっぺを探して、犬小屋に戻ってきてしまった)

恭介(そういや随分大騒ぎしてたが、ケンカになったりしてないだろうか)

恭介(様子を見てみると、全員まだ揃ったままだった)

ゆり「あら、棗くんじゃない」

恭介(ゆりっぺが一早く俺に気づくと、みんなの視線が俺に集まる)

真人「なんだよ、結局気になって戻ってきたのか?」

恭介「まあ、そんなとこだ」

恭介「ところで、ゆりっぺ、それと沙耶も。ちょっと聞きたいことがあるんだ」

恭介「こっちに来てくれないか?」

ゆり「………。わかったわ」

恭介(俺はゆりっぺと沙耶を連れて、少し離れた場所で話を聞くことにした)

恭介(あの時の情報を聞くなら、こいつらが適任だろう)

恭介「デーモン・ピクニックの時、斉藤マスクに操られてた俺がどんな感じだったのかを詳しく教えて欲しい」

ゆり「………なるほど。あの時の棗くんは自我を失っていたものね」

ゆり「そりゃ気になるわよね」

恭介「ああ。具体的にどんな感じだったのかは、ちゃんと聞いてなかったと思ってな」

恭介(その時の俺の行動がわかれば、立華がどうして、あんなによそよそしくなったのかがわかるかもしれない…)

ゆり「そうね、一言で言うなら恐ろしいほどに強くなってたわ」

ゆり「あたしたち実行班が、全員でかかっても手も足も出ないくらいに強かった」

恭介「そんなにか!?」

沙耶「椎名さんも言ってたけど、人間としてのレベルを大幅に超えてたわ」

沙耶「まさに、神の力による異常強化っていうのが妥当だったと思う」

恭介「神の力か…。本当に迷惑かけたな…、すまない…」

ゆり「まあ、終わったことはひとまず良いのよ。それに、最終的に棗くんと戦ったのは天使一人だしね」

恭介「立華は一人で、強化された俺と戦ったのか!?」

ゆり「手の出しようが無かったのよ…。あたしたちがなにかしたところで、むしろ邪魔にしかならないのが目に見えてたし…」

ゆり「しかも最後には、全力を出していたであろう棗くん相手に、武器を破壊することで一度は勝利を収めたわ」

恭介「だが、一度はってのは…」

沙耶「不意打ちしたのよ。戦意を失ったふりをして、いきなり立華さんを蹴り飛ばしたの」

恭介「不意打ち!?俺は、そんなことしたのか!?」

恭介(しかも、立華を蹴り飛ばしたのか…。俺は…)

ゆり「まあ、普段の棗くんの性格から言って、あり得ない行動よね」

ゆり「そして、天使にとどめを刺そうとする棗くんに、日向くんがタックルかまして」

ゆり「棗くんが日向くんを殺そうとした瞬間、棗くんは意識を取り戻したの」

ゆり「日向くんの話じゃ、『やってくれ、立華』とか『すまない』とか言ってたらしいけど…」

ゆり「本当に覚えてないの?」

恭介「ああ…。全く記憶が無い」

沙耶「やっぱり、無意識下での行動だったんでしょうね」

ゆり「ええ。意識を取り戻してたなら、神の洗脳を打ち破る手がかりになりそうだったんだけど…」

ゆり「こればっかりは仕方ないわね」

恭介「……………」

ゆり「どうしたの?棗くん。なにか気になることがあった?」

恭介「いや、特には無い…。わざわざ話してくれてありがとうな」

ゆり「いいのよ、別に。でも、棗くん。これだけは約束して」

ゆり「もし、なにか気づいたことがあったなら、今度はあたしにもちゃんと相談して」

ゆり「他のみんなに伝えるかどうかは、あたしが判断するから」

ゆり「前みたいに、あなたたちだけの間での秘密にはしないで欲しいの。いいわね?」

恭介「ああ、わかった。約束する」

ゆり「沙耶ちゃんもいいわね?」

沙耶「ええ、約束するわ。ゆり」

恭介(……………)

恭介(立華はきっと、ある程度は俺のことを信頼してくれていたんだと思う…)

恭介(そんな相手から、不意打ちなんか食らって、蹴り飛ばされたりしたら…)

恭介(いくら俺が洗脳されてるとは言え、きっとショックだったはずだ…)

恭介(あいつがよそよそしくなったのは、きっとそれが理由に違いない!)

クド「あのー、もう用事の方はいいんですかー?」

恭介(話が一段落したところで、能美が声をかけてきた)

恭介「あ、ああ。まあな。で、結局犬小屋は何色になったんだよ?」

恭介(平静なふりをして、みんなにそう聞いた)

来ヶ谷「うむ、刮目してみるといい」

沙耶「きっと驚くわよ」

恭介「へえ、そんなに綺麗に塗れたのか?どれど…」

恭介「………………」

恭介「………………」

恭介「………………」

恭介「なんじゃこりゃあーーー!!」

来ヶ谷「溜めたな」

沙耶「溜めたわね」

ゆり「さすがの棗くんも空いた口が塞がらなかったみたいね…」

恭介(そりゃ驚きもする…。少し目を離した隙に、犬小屋は…)

恭介(青・赤・黄色・ゴールド・白・黒・ピンクというなんとも派手な七色に染まっていた…)

椎名「テーマは、『チルーシャにレインボー』だ♪」

恭介(随分、満足げな表情を椎名が浮かべてるが…。いや、さすがにこの展開は俺も予想外だぜ…)

恭介「あのな、お前ら…。このレインボーって本来の七色とは違うからな…」

真人「えっ!?そうだったのか…?」

恭介(真人が知らなかったと、言わんばかりのリアクションを見せる)

恭介(その反応を見て、謙吾が喋り始める)

謙吾「まあ、恭介がそう思うのも無理は無い」

謙吾「だがな恭介、来ヶ谷が言うには世の中にはそういう色の虹もあるそうだぞ」

謙吾「つまりこれは、紛うことなきレインボーカラーなのだ!」

恭介(謙吾が犬小屋を指差しながらドヤ顔でそう言う。が…)

恭介「いや、嘘だろ?」

謙吾「えっ…?嘘なのか…?」

クド「えっ!?嘘だったんですか?来ヶ谷さん?」

来ヶ谷「うむ、嘘だ」

恭介(悪びれる様子もなく、ニッコリ笑った)

真人「なにぃーー!?おい来ヶ谷!てめえ騙しやがったのかよ!!」

来ヶ谷「なに、ちょっとした小粋なジョークだよ。まさか本当に信じるとは思わなかったがな」

ゆり「全くよ。それで丸く収まりそうだったから、あたしも話に乗っかったけど」

ゆり「普通に考えて、黒とかゴールドの虹なんてあるわけないじゃない。ねー、沙耶ちゃん♪」

沙耶「えっ!?いや、その…。そ、そうよね!そんな虹あるわけ無いわよね!」

恭介(沙耶の反応がかなり怪しい…)

ゆり「沙耶ちゃん…、その反応、もしかしてあなたも…」

沙耶「な、なーに言ってるのよゆり!もちろん、信じてなかったわ!信じたら馬鹿よ!馬鹿丸出しってなもんよ!」

クド「ガーン!私、信じちゃってました…。つまり私は…」

クド「馬鹿丸出しってことですかーー!?」

沙耶「ああ、違う、違うわよ!クド!あたしも信じちゃってたから、クドだって全然馬鹿じゃないわよ!」

来ヶ谷「自白したな、沙耶君」

沙耶「しまったーーー!?」

恭介「芸術的な墓穴の掘り方だったな…」

椎名「あさはかなり」

来ヶ谷「馬鹿だな。恭介氏、やはり沙耶君はそういうボケボケなドジキャラなのか?」

恭介「ま、そんな感じだ」

沙耶「もとはといえば、来ヶ谷さんがそんな嘘つくからじゃないのよーー!!」

沙耶「来ヶ谷さんがそういう虹もあるって言ったら…」

沙耶「そっかー。来ヶ谷さんが言うなら、あるんだろうなー、って思っちゃうじゃない!!」

謙吾「そーだ、そーだー!!」

来ヶ谷「はっはっは。許せ」

沙耶「許せるかーー!!」

恭介(正直、俺にも責任があるような気がする…)

恭介(頼もしいことを言ってくれたから、つい信じちまったが)

恭介(そもそも、来ヶ谷にストッパーを任せた時点で、こんな感じになるのは目に見えてたのかもしれない…)

ゆり「いや、沙耶ちゃん…。普通は信じないわよ…、黒とかゴールドの虹なんて…」

来ヶ谷「うむ。真人君といい、謙吾君といい、クドリャフカ君といい、沙耶君といい…」

来ヶ谷「もう少しだけ人を疑うことも覚えることだよ。もちろん、それも君たちの良さではあるがな」

沙耶「ふ、ふふふ、ふふふふふ…」

クド「ど、どうしたんですか?沙耶さん!?」

真人「ああ、クー公は初めてだったか。気にすんな、こいつの一発芸みたいなもんだ」

沙耶「そーよ!来ヶ谷さんの言葉を、全然・なんにも・まったく疑って無かったわよ!」

沙耶「仮にもあたしスパイなのにねぇ!」

沙耶「こんなあからさまな嘘を、馬鹿正直に信じるスパイがどこの世界にいるっていうのよ!」

沙耶「あ、ここにいたわ!ここにいるわよ!ほら、あたしを罵りなさい!貶しなさいよ!」

沙耶「今日も馬鹿でご機嫌様!って言っちゃえばいいじゃないのよ!」

沙耶「あーはっはっは!」

恭介(いつもの自虐ネタが、今日も華麗に決まってるぜ、沙耶)

ゆり「わかった、わかったわよ…。あたしが悪かったわ、沙耶ちゃん」

沙耶「うぅ…。なんて間抜け、間抜けすぎるぅ…」グスグス

椎名「別に本来の七色と違っても、これはこれで可愛いじゃないか。なんの問題ない」

恭介「いや、それは椎名のセンスだからな…」

恭介「ぶっちゃけ、チルーシャ本人がどう思ってるかが問題だ」

恭介「で、能美。チルーシャはなんて言ってるんだ?」

チルーシャ「わ、わふぅ…」

クド「あ、はい…。えーと…」

クド「こんな感じの配色も良いような気がするし…」

クド「良くないような気もするし…」

クド「正直、ちょっと予想外で…」

クド「でもでも、みなさんが一生懸命塗ってくれた色だから、それだけで私は満足だと…」

クド「そう言ってます…」

恭介「めっちゃ気を遣わせてるじゃねえかーー!!」

ゆり「あ、やっぱり…?」

椎名「不覚!やはりピンク一色にするべきだったか…」

ゆり「いや違うわよ、そういう問題じゃないのよ椎名さん…」

椎名「!!」

来ヶ谷「ん、どうした椎名君。なにか思いついたような顔をして?」

椎名「そうだ!なにか可愛さに欠けると思っていたら、肝心な事を忘れていた!」

真人「肝心な事?なんだよ、そりゃあ?」

椎名「模様を書いていない!!」

チルーシャ「わふっ!?」

クド「模様…、ですか?」

椎名「そうだ!色の上からハートマークを沢山書こう!そうすればもっと可愛くなる!」

謙吾「それはいい!じゃあ俺は、リトルバスターズジャンパーの、このマークを描こう!」

ゆり「あ、じゃああたしは、スリーエスの部隊章を屋根にでっかく描くわ!」

沙耶「あたしは何描こうかなー」

沙耶「ちっちゃく理樹くんでも描こうかな」ボソッ

ナギっ

来ヶ谷「協力しよう、沙耶君!」

沙耶「うわあ!聞いてたの、来ヶ谷さん!?」

真人「じゃあ当然俺は筋肉を描くぜーー!」

ワイワイ!ガヤガヤ!

恭介(またも、犬小屋前は大盛り上がりとなってしまった…)

クド「あわわ、今度は本格的に収拾付きそうにないです…!」

クド「こんな時は…」

クド「こーるみー!へるぱー!」

クド「恭介さんなら、きっとみなさんを止めてくれ…」

クド「って恭介さんがいませーんーー!?」

恭介(能美の声が聞こえるが、俺は姿を隠しながら退散することにした…)

恭介(ゆりっぺや来ヶ谷まで悪ノリしてるとあっちゃ、俺でもどうしようもないぜ…)

恭介(スマン…、能美…!)

クド「恭介さーん!カムバーックなのですーー!!」

チルーシャ「アウーン!!」

恭介(能見とチルーシャの呼び止める声を背に、俺は犬小屋を後にした…)

恭介(それにしても、俺は立華になんてことをしちまったんだ…)

恭介(今はまともに話すら出来そうにないが、今度会った時こそ、ちゃんと謝らないとな…)

恭介(俺はそう固く決心した…)

今日は以上です

ここでのフラグの回収次第で、次の作戦説明やオペレーション自体にも変化があります
さて、どんな感じになるでしょうか

長くなりましたが無事、3スレ目に突入しました
これからもよろしくお願いしますm(_ _)m

こんな時間ですが夜に時間がとれないので再開します
安価は無いのでご安心ください

ゆり「本日の報告を。高松くん」

高松「今日も皆さん、元気に訓練に励みました」

ゆり「よろしい、解散!」

ゆり「とは行かないのよ、本日は」

高松「ふ…、そうでしたか」

恭介(どうやら今日は、いつも通りの定例会議とはいかないようだ)

恭介(いつもは大体、ゆりっぺと高松が話すだけですぐ解散になるからな)

野田「なんだ!?オペレーション発動か!?」

ゆり「ええ。天使エリア侵入作戦のリベンジを行うわ」

日向「ええーー!あれまたやるのかよぉーー!」

藤巻「そうだぜっ、なにも手出し出来なかった作戦じゃねーか!」

クド「天使、エリア…ですか?」

来ヶ谷「ふむ、初めて聞くな」

恭介(能美と来ヶ谷が先に反応する。元祖リトルバスターズの中で、最初に来た俺も初耳だ)

恭介(となると当然、真人、謙吾、沙耶の三人も知らないだろう)

恭介(このままじゃ置いてけぼりだし、聞いてみるか)

恭介「なあ、ゆりっぺ。その『天使エリア』ってのはなんなんだ?」

ゆり「その名の通り、天使の住むエリアよ」

恭介「天使の住むエリア…」

真人「なんだか、空にでも浮かんでそうなイメージだな」

謙吾「つまり…、ラピュタか!?」

沙耶「絶対違うわ、謙吾くん」

日向「しかしその中枢はコンピューターで制御されている…」

真人「機械仕掛けってことか?」

謙吾「つまり…、ハウルの動く城か!?」

沙耶「いや、ありえないから、謙吾くん」

恭介(中枢、コンピューターか…。立華のやつ、そんなすごい場所に住んでんのか)

来ヶ谷「手出しが出来なかった、コンピューターで制御されている」

来ヶ谷「という話から察するに、前回は大方、そのコンピューターを解析出来ずに失敗したということか?」

ゆり「ええ、その通りよ」

ゆり「神がチルーシャを使って、直接手を出して来たということは、最終決戦の時は近いとあたしは考えているわ」

大山「最終決戦…!」

日向「今まで何十年と戦ってきたが、とうとうここまで来たんだよな」

クド「ええーっ!?みなさんはそんなに長い間、神様と戦ってきたんですか?」

松下「直接神と戦ったことは無いぞ、クド」

松下「だが、神の使いである天使とは、それぐらい戦い続けてきたな」

高松「ちなみにその数十年の間に、松下五段は肉うどんの食べ過ぎで、こんなに太ってしまいました」

井ノ原「へえ、松下って昔は痩せてたのかよ?」

ゆり「ああ、そういえばそういう時期もあったわねぇ」

恭介(痩せていた頃の松下五段か、なんかすっげえレアな感じがするな)

松下「違う!違うぞぉ!俺は決して太ったのではない!」

松下「これはガッチリしていると言うのだぁ!」

松下「大体、この世界の学食の肉うどんが美味すぎるのが悪い!」

松下「あのふわっふわで、一口食べるだけで肉汁が口全体に広がる、肉の美味みを思い出してみろ!」

松下「加えて、うどん出汁の味もその肉の美味さと見事にマッチしていて」

松下「まさにパーフェクトなハーモニーを奏でているんだぞ!」

岩沢「ああっ!止めろ、松下!今すぐにでも肉うどんが食いたくなるじゃねえかよ!」

恭介(同感だぜ…、なんか想像しただけでも腹が鳴りそうだ)

遊佐「一種の飯テロですね。夕食前のわたしたちには効果抜群です」

遊佐「決して許されることではありません」

クド「うどんと言えば、マルテン堂のうどんだしで作ったうどんは最高なのです!」

高松「奈良県出身の私としては、やはり伊勢うどんを推します!」

来ヶ谷「伊勢うどんは三重じゃないのか?」

恭介「まあ、一応隣っちゃ隣だが…」

TK「Oh,I'm starving…!」

ゆり「ってこらこらー!まーた、すぐに話が逸れるんだから!」

ゆり「うどん食べたくなった気持ちはわかるけど、うどん談議は後にしなさい」

恭介(いつも通り、話が脱線しかかってる中)

恭介(ゆりっぺがなんとか軌道修正しようとする)

恭介(が…)

沙耶「話に水を刺すようで悪いけど、確かもうゆりは、うどんの食券持って無かったわよ?」

ゆり「なんですって!?」

ゆり「ちょっ!誰かうどんの食券譲りなさいよ!」

日向「えー、やだよ、そんなの!」

藤巻「もう口の中は、完全にうどんの気分になってるくらいだぜ!」

大山「うんうん!今なら何杯でも食べれるくらいだよ!僕おかわりしちゃおうかなー!」

ゆり「おかわり出来るくらいストックあるなら、一つくらい譲ってくれたっていいじゃない!?」

大山「やだ!」

謙吾「断固、拒否する!」

岩沢「諦めろゆり。相手はうどんだ、勝ち目は無い」

椎名「あさはかなり」

ゆり「この鬼ー!!悪魔ー!!人でなしー!!」

遊佐「それをゆりっぺさんがいいますか」

コンコン

藤巻「ん?誰だ!?」

??「あの、もう入ってもいいですか…?」

ゆり「ああ、ごめん。どうぞ」

??「カミモホトケモテンシモナシ」

がちゃり

恭介(解錠の音。ドアの向こうから現れたのは、一際背丈が小さい眼鏡を掛けた少年)

高松「新人…!眼鏡被り…!」

恭介(小声で高松が、そんな感じの事を言うのが聞こえた)

??「まったく、いつまで経っても呼ばれないから、忘れられてるのかと思いましたよ」

ゆり「いやー、ぶっちゃけすっかり忘れてたわ!」

??「ちょっと!?僕、初登場ですよ!こんなに扱いの悪い初登場って今までありましたか!?」

真人「で、こいつは誰なんだよ。ゆりっぺ?」

ゆり「生前、天才ハッカーの名を欲しいままにした、ハンドルネーム竹山くんよ!」

ゆり「今のままじゃ、神と戦うにしても情報が少なすぎるわ」

ゆり「だから、今回から竹山くんを幹部に格上げ」

ゆり「実行班に登用し、天使エリアから神の情報を引き出すのが、作戦の目的よ」

日向「なるほどな。確かに、今のままじゃ、神のやつにやられっぱなしになりそうだしな」

来ヶ谷「ハッカーとしての実力が本物なら、まさに適任というわけか」

恭介「ってか、ハンドルネームとか言いながら、竹山って本名じゃないのか?」

竹山「………、僕の事はクライストとお呼び下さい」

藤巻「かっこいいハンドルネームが台無しだ。さすがゆりっぺだぜ…」

野田「待てよ、ゆりっぺ。こんな青びょうたんが使い物になるってかよ?」

真人「同感だ、どう見ても筋肉が無いぜ!」

竹山「ふっ」

竹山「3.141592653589793238462643382379502884197169399375105820974…」

野・真「「う、うわああああああーーーっ!!」」

恭介(野田と真人が頭を抱えて、仲良く床に転がり回る)

松下「まさか円周率だとぅ!?」

謙吾「やめろ!真人はバカなんだぞっ!」

大山「野田くんだってアホなんだよっ!」

ゆり「そう…、あたしたちの弱点…。それはバカとアホの集まりだと言うこと!!」

恭介(顎のとこで指組んでたゆりっぺが、立ち上がり堂々と宣言する)

恭介「ぶっちゃけやがったな、ゆりっぺ…。否定出来ないが」

来ヶ谷「程度の違いはあれど、まあみんな本質的なところでは馬鹿だろうな」

ゆり「前回の作戦では我々の頭脳の至らなさを露呈させてしまった…」

椎名「あさはかなり」

ゆり「けど今回はそうはいかない!竹山くんの持つ技術で徹底的に洗ってやる!」

竹山「はい。皆さんよろしくお願いします。それと、僕のことはクライストと…」

ゆり「そのため、岩沢さん、今回の陽動はド派手にお願い」

岩沢「具体的には?」

ゆり「ふっ…、告知ライブよ」

恭介「なっ!」

高松「ゲリラライブしか行ってこなかったガルデモが!?」

恭介(ゆりの発言に、俺と高松が同時に反応する)

日向「そうだぜ。告知なんてすれば、教師にすぐに止められるだろ!」

ゆり「同時に、天使もその場に貼り付けにできる。どう?違う?」

日向「そうかもしれないが、毎度のことながらやり方が乱暴すぎるぜ!」

高松「まったくです!ガルデモを失ってもいいんですか!?」

恭介(確かに、危険な作戦だ…。今回のガルデモは完全に囮)

恭介(教師や立華たちが、ガルデモに集中することになる)

恭介(俺としては立華が天使だという推測は、ほぼ確実に間違いだと思っている)

恭介(俺が神の力で仮面によって操られたのなら、立華が俺を助けようとするはずが無いからだ)

恭介(本当に、神の使い『天使』であるならな)

恭介(当然、ゆりっぺもそれには気づいているはず)

恭介(あえて、その考えを口にしていないのは、戦線メンバーの動揺を避けるためだと思って間違い無い)

恭介(つまり、神の情報を探るというのは確かに本命の目的だろう)

恭介(だがそれと同時に、立華自身が何者なのかを探るのが、裏の目的なんだろうな)

恭介(なら立華を仲間にしたい俺としても、この作戦はチャンスだ)

恭介(それにガルデモが危険という問題点は、おそらく…)

ゆり「もちろん、その点は考えてあるわ」

ゆり「以前に何度か公の場で、派手な作戦を行った時にも天使と戦ったことがあるでしょ?」

野田「肝だめしの時のことか?」

椎名「キャンプファイヤーでも、日向たちが戦ったらしいな」

日向「ああ。まあそんなこともあったな」

謙吾「肝だめしにキャンプファイヤーだとぉ!?」

クド「とても楽しそうなのです!」

真人「なんだよ、お前らやっぱ昔から遊んでたんじゃねーか!」

ゆり「ちっがーう!戦線のメンバーを増やすために、人間とNPCを見分けるために必要な作戦だったのよ!」

ゆり「断じて遊んでなんかいなかったわ!」

恭介(机を叩きながら、軽くキレ気味になる)

沙耶「あたしたちの知らない時にも、色々あったのね」

大山「TKが来たときとかも大変だったもんね!」

日向「ああ、話が通じねえからな…」

TK「Just wild heaven!!」

日向「こんな感じで」

ゆり「で、またも話が逸れかけてるけど、そういう時も天使はあたしたちに危害を加えようとしなかったわ」

恭介「だろうな。あいつはおそらく学園の秩序を守ることを目的としてる」

恭介「学園の生徒である俺たちに直接手を下すことは、まず無いとみていいだろう」

ゆり「まあ、陰でなにしてるかは定かではないけどね…」

恭介(ゆりっぺが、小さくそう付け加える)

ゆり「だからガルデモたちも、直接的な危害を加えられたりはしないはず」

ゆり「加えて、今回は部隊を3つに分けて作戦を行うわ」

ゆり「一つは言うまでもなく陽動班であるガルデモ部隊」

ゆり「もう一つは天使エリアに侵入する実働部隊」

ゆり「そして最後に、ガルデモを護衛するバリケード部隊よ」

ゆり「バリケード部隊は可能な限り、陽動に引き寄せられた教師と天使たちを、引き付けるのが役割となるわ」

沙耶「なるほどね。ガルデモを囮にして、さらにガルデモを守る為の囮をあたしたちが引き受けるってことか」

真人「まさに俺たちの筋肉の見せ場になりそうだな!」

松下「うむ、そういうことならガルデモに対する危険は最小限になる」

藤巻「さすが考えてるな、ゆりっぺ」

ゆり「とはいえ、当然今までよりも遥かに、ガルデモに対する危険は大きいわ」

ゆり「岩沢さん。どう、やってくれる?」

岩沢「あたしはどんなステージだって歌うよ」

岩沢「それに大事な作戦なんだろ?あたしらも気合入れないとな」

藤巻「相変わらず動じないタマだぜ…」

恭介(まあ、岩沢ならそう言うだろうな。筋金入りの音楽キチのこいつなら)

恭介「なあに、岩沢もガルデモも大丈夫さ」

恭介「お前たちが心おきなく歌えるように、俺たちで守ればいいだけなんだからな」

日向「そうだな、そうするっきゃないか!」

高松「はい!岩沢さんたちはいつも通りに歌ってください!」

大山「僕たちリトルバスターズの絆の見せどころだね!」

来ヶ谷「うむ、本気になった我らに不可能などない」

クド「私も精一杯頑張ります!」

TK「Let’s do our best!!」

野田「なら俺はゆりっぺを守るぜ!」

椎名「わたしはクドとチルーシャを守ろう!」

日向「おいおい!せっかくいい感じに纏まりかけてたのにお前らな…」

岩沢「ふふっ。いいよ、すげー頼もしい」

ゆり「よーし!じゃあ二日後の一九○○に作戦実行!」

ゆり「まず実働部隊は、あたし、竹山くん、日向くん、野田くん、椎名さん、棗くん、来ヶ谷さん、能美さんとチルーシャで行くわ」

ゆり「侵入作戦である以上、足が速くて、万が一の戦闘にも即座に対応出来るメンバーを選んだつもりよ」

ゆり「それと早速だけど、これからの作戦でチルーシャが問題なく戦力になるかどうかも、あたしが見極めるわ」

ゆり「能美さん、チルーシャのことをお願いね」

クド「はい!お任せください!」

ゆり「そして残りのメンバーがバリケード部隊よ」

ゆり「沙耶ちゃんには副リーダーとして、そっちの指示を任せるわ」

沙耶「ええ、了解よ」

真人「ようは俺たちの筋肉でガルデモを守ればいいんだろ?」

真人「まさにテキパキ撤去ってやつだぜ!」

謙吾「それはもしや…、適材適所のことか?」

来ヶ谷「真人くんは掃除でもしたいのか?」

真人「…なんだよ。脳みそまで筋肉なわりに、なにも取り柄なんてありませんね」

真人「そんな筋肉は隅っこで小さく掃除でもしてるのがお似合いですねってかっっ!!」

謙吾「そう言われても仕方ない間違いだったろうがーっ!」

真人「なんだとっ!やんのかてめえっ!」

謙吾「受けて立つぞ!」

バキっべキッドカッ

オラオラぁ!

マーン!

恭介(部屋の端で、真人と謙吾がバトルをおっ始めやがった…)

遊佐「どうするんですか?この馬鹿二人は?」

ゆり「いい加減スルーしましょ…。時にはスルーすることも大切だと最近学んだわ」

恭介「賢明だな」

松下「俺としては、謙吾が真人のテキパキ撤去を、適材適所と気付けたことに驚いたが」

藤巻「ああ、なんのことだかわからなかったぜ…」

来ヶ谷「思考回路が同じなんだろう」

大山「うう…。なんて凄まじいボケだ…。真のボケマスターにはまだまだだ…!」

日向「だからお前は本当にどこ目指してんだよ…」

野田「ふっ…。ゆりっぺを俺は守り抜く。こいつでな!」

恭介(野田が高く獲物をかざす)

日向「お前もお前で目立ちすぎだぁ!侵入作戦なんだから自重しろよ!?」

竹山「なんて濃い人の集まりなんだ…。僕はこれからやっていけるんだろうか…」

ゆり「じゃあ、二日後、みんな頑張れー!はい、解散!」

岩沢「ちょっと待ってくれ」

恭介(岩沢がみんなの間を縫って、ゆりっぺの前まで歩いていく)

恭介(手にはどこに置いていたのか、アコギを持っている)

岩沢「ちょうど新曲が出来たから、聞いてもらおうと思ってたんだ」

ゆり「おお、グッドタイミングね、岩沢さん!」

ゆり「ガルデモの新曲発表なんて告知したら、より盛り上がるわ!」

ゆり「是非、聞かせて頂戴」

恭介(このタイミングで新曲ということは、俺が聞かせて貰ったあの曲しかないな)

恭介(岩沢は接客用のソファーに座り、弾き語りを始めた)

恭介(みんなが聞き入る)

恭介(やっぱり、本当に良い曲だ)

恭介(一通り歌い終えると、自然と拍手が生まれた)

恭介(みんなの心にも響いたらしい)

恭介(が…)

ゆり「…なぜ、バラード?」

恭介(その唯一の欠点をゆりっぺが突いた)

岩沢「いけない?」

ゆり「陽動の意味をなさない」

恭介(岩沢はじっと、ゆりを見つめ続けた後)

岩沢「駄目なの?」

ゆり「バラードは…、ちょとねぇ…」

ゆり「しんみり聞き入っちゃってたら、あたしたちが動き辛いじゃない」

岩沢「そ…、じゃ、没ね」

恭介(驚くほどあっさり引いた)

恭介(ギターをケースに仕舞うと、部屋を出ていく)

恭介「岩沢!!」

恭介(岩沢を追いかけようと、俺も本部を飛び出そうとする)

ゆり「ちょっ!棗くん!?どこ行くの!?」

恭介(ゆりっぺに呼び止められた)

恭介(説明してる時間も惜しいが、無視するわけにもいかない…)

恭介「行かせてくれ、ゆりっぺ!今の曲は…」

高巻「恭介くんを行かせてあげてください!!ゆりっぺさん!!」

恭介「なっ…」

ゆり「高松くん…?」

恭介(俺よりも大きな声で、高松がそうゆりっぺに進言した…!)

高松「私にはわかります。今の曲は、今までのガルデモの曲とは違う」

高松「弾き語りだったからとか、バラードだからとかいう理由でもありません!」

高松「上手くは言えませんが、きっと岩沢さんにとって、特別な曲だったんだと思うんです!!」

高松「そしてその曲の完成には、きっと恭介くんが関わっていた…」

高松「そうですよね?恭介くん」

恭介(高松が視線を俺に向け、そう問うてくる)

恭介「ああ…」

高松「だから、恭介くんを行かせてあげてください!責任も罰も、私が代わりに受けます!」

高松「だから、どうかお願いします…!!」

恭介(頭を下げ、俺の代わりにそう頼みこんでくれた…)

恭介(高松は俺がこの世界に来る前から、ガルデモのファンだった)

恭介(さっきの作戦内容を聞いた時にも、真っ先にガルデモの心配をした)

恭介(本当にガルデモへの愛にあふれたやつだ)

恭介(だから、今の曲が岩沢にとってどれだけ特別な歌なのかも、感じ取っていたんだろう)

恭介(俺だけじゃなかった)

恭介(高松も岩沢の歌を通じて、岩沢の想いを感じ取ってくれていたんだ…)

恭介(そして、こうして自分の頭を下げてまで頼みこんでくれる)

恭介(俺はそんな高松の気持ちが、心から嬉しかった)

恭介「ゆりっぺ、俺からも頼む!俺に岩沢を追わせてくれ…!」

ゆり「……………」

ゆり「ふう。とりあえず高松くんは、その下げる必要の無い頭を上げなさい」

高松「えっ…」

ゆり「別に追いかけるな、なんて言ってないじゃない」

ゆり「急に飛び出していこうとするから、つい呼び止めちゃっただけよ」

ゆり「…ってか、そもそも一回、解散って言っちゃってわね」

ゆり「これは確かに、あたしのミスだったかしらねー」

恭介「ゆりっぺ…!」

高松「ゆりっぺさん…!」

ゆり「ああ、それと。岩沢さんを追いかけるなら、棗くんには一つ伝言を頼むわ」

ゆり「さっきの歌…、陽動には向かないだろうけど、あたしも良い曲だと思ったって、そう伝えておいて」

恭介(少しだけ頬を赤く染めながら、ゆりっぺがそう言った)

沙耶「ふふっ。素直じゃないわね、ゆりは」

野田「惚れ直したぜ…、ゆりっぺ!いや、更に好きになったぁ!!」

ゆり「あーもう、うっさい!ほら、棗くん!命令よ、さっさと岩沢さんを追いかけなさい!」

恭介「ああ、行ってくるぜ!」

恭介(高松とゆりっぺに後押しされて、俺は勢い良く駆け出した…!)

来ヶ谷「やれやれ、相変わらずすごい行動力だな。恭介氏は」

能美「そうですね。でもなんだか、今まで以上のような気もします」

謙吾「まあ、そうだろうな」

真人「この世界には、理樹と鈴の奴らがいねえからな」

沙耶「えっ、それってどういう意味?」

真人「へっ、なんでもねえよ」

真人(あいつはずっと二人を守ろうと、良い兄貴であろうとし続けていた)

真人(その時、あいつが何を考えてたのかまではわからねえが)

真人(それでも決して過保護にはなり過ぎず、理樹と鈴が強くなれるよう、一歩引いた場所にいた事くらいはわかる)

真人(じゃあ、あいつらのいないこの世界では…?)

真人(守らなければならないやつが、今この場所にいないならどうなる?)

真人(きっとあいつにも、今までとは違う…)

真人(何かしらの変化が生まれて行くんだろうな)

恭介「岩沢!!」

恭介(階段を降りた入り口のところで、岩沢に追いついた)

恭介(俺の声に気づき、振り向く)

岩沢「なんだ、やっぱり来たのか、棗」

恭介「は…?」

恭介(開口一番、意外なことを言った)

恭介(岩沢は、俺が追いかけてくるのがわかってたのか?)

岩沢「本部を出て歩いてるうちに、もしかしたら、お前が追いかけてくるかもなーとか思った」

岩沢「そしたら、マジで来た。しかも、そんな走ってまで」

岩沢「物好きなやつだよな、お前。それともあたしの心でも読んだのか?」

恭介(冗談混じりに、そう聞いてくる)

恭介「んなわけ無いだろ。俺をなんだと思ってんだ、エスパーかなんかか?」

岩沢「お前なら、それくらい出来ても不思議じゃない気がする」

恭介(今度は大マジなトーンで、そう聞いてきた…)

恭介「だから、ほんとにお前の中で俺はどんなキャラになってんだぁーー!!」

岩沢「遊ぶことが大好きな、熱狂的ガルデモファン。だろ?」

恭介「…まあ、その通りだな」

岩沢「ふふっ、否定しないんだな」

恭介「事実だからな」

恭介「ああ、それとゆりっぺからの伝言だ」

恭介「陽動には向かないけど、良い曲だと思った、って言ってたぜ」

岩沢「そうか…。ゆりがそんなことを」

岩沢「あいつから、曲の感想を聞くのは初めてだな」

恭介(そう言いながら、小さく笑った)

恭介「それだけ、良い曲だったってことさ」

恭介「高松も言ってたぜ、今までの曲とは違う特別な曲だって」

恭介「お前の想いは、ちゃんと歌を通じて、みんなに届いてるんだよ」

岩沢「あたしの想い…、あたしの歌、か」

岩沢「……………」

岩沢「よし、決めた!」

恭介「ん?何を決めたんだ?」

恭介(少し黙ったかと思ったら、急にそう言い始めた)

岩沢「曲名だよ。それだけはずっと決めかねてたんだ」

岩沢「でも棗や、ゆりや、高松がそう言ってくれたなら、気持ちは固まった」

岩沢「曲名は、『My Song』だ!」

恭介「『 My Song』、わたしの歌か…。良いタイトルだな」

恭介(確かに、あの曲にはぴったりだと思うぜ)

岩沢「ああ。今のあたしの想いの全てを込めた歌だからな」

岩沢「でも、それだけじゃない」

岩沢「これからもっと、あたしの真っ直ぐな気持ちを、歌に出来るようにって」

岩沢「そういう想いも込めたタイトルだ」

岩沢「見てろよ、棗!あたしはこれからもっともっと、歌いまくってやるからな!」

恭介(拳を握って、すげえ熱意のこもった声で岩沢がそう宣言する)

恭介「ふっ…。どうやら、余計な心配しちまったみたいだな」

岩沢「なんだ、棗。お前、あたしが落ち込んだとでも思ったのか?」

岩沢「ばかだなー、あれくらいであたしが落ち込むわけ…」

岩沢「……………」

恭介「岩沢?」

岩沢「あー、やっぱ嘘。うわー、あたしすごい落ち込んだわー」

岩沢「もう立ち直れないー」

恭介「な、なんだ、急に…。どうしたんだ?」

恭介(突然、ものすごい芝居がかった棒読みが始まった…)

岩沢「誰か励ましてくれるやつ、いないかなー」

岩沢「あたしの我侭、聞いてくれるやついないかなー」

チラッチラッ

恭介(…そういうことか。ま、もともと励ますつもりで追いかけてきたんだしな)

恭介「ふっ…、わかったよ。俺に出来ることなら、なんでも聞いてやるよ」

ガシッ

岩沢「言ったな、棗?今なんでも聞くって言ったよな?」

恭介(肩を掴まれる…、なんかその勢いが怖いぜ…)

恭介「あ、ああ。俺に出来ることなら、な…」

岩沢「よし!じゃあ、棗!あたしと一緒に歌ってくれ!」

恭介「は…?歌う…?」

恭介「俺が…、岩沢とか!?」

恭介「おいおい、いきなりどうしたってんだよ!?」

恭介(さすがに予想外すぎる頼みごとだ。一体、何考えてんだ…!)

岩沢「いきなりじゃない。前にも言ったろ、お前は良い声してる」

岩沢「絶対、ロックに向いてる声だ」

岩沢「一度、一緒に歌ってみたかったんだよ」

恭介「いや、その気持ちは嬉しいんだが…。俺は素人だし、岩沢と歌うなんてさすがに…」

岩沢「なんでもするって言ったよな?」

恭介(また、ほぼ零距離まで顔近づけられる…)

恭介(だから唇当たるっつの!そんな距離で断われるわけないだろ…)

恭介「…ああ、もう好きにしてくれ!」

岩沢「よし!じゃあいつもの空き教室行くぞ!付いて来い!」

恭介「今からか!?」

岩沢「当然だ!早く歌いたくて仕方ないんだから!」

岩沢「曲は…、Crow Songでいいよな!お前も好きな曲だろ?ほら、ぼさっとするな!さっさと行くぞ!」

ズルズルズルズルーっ!

恭介「っておい!引っ張んな、引こずるなって!岩沢ぁ!」

恭介(その時、俺は思った…)

恭介(岩沢、やっぱりお前は…)

恭介(音楽キチだ…!)

恭介(その後、なんだかんだノリノリで二人でCrow Songを熱唱したり)

恭介(夕食でゆりっぺが暴走し、うどん争奪戦が勃発したりしながら)

恭介(今日も夜が更けていった)

恭介(一日経って、作戦決行当日)

恭介(俺はふらふらと校内をうろついていた)

恭介(一応、弁解するが、別に暇だからうろついてるわけじゃない)

恭介(NPCたちの今日のガルデモのライブへの興味が、どんなもんかを探るためだ)

恭介(決して暇だからじゃない)

恭介(実際、初の告知ライブということで、かなりの注目を集めていることがわかった)

恭介(このぶんなら、きっと陽動は成功するだろう)

恭介(あとは、俺たち実働部隊と、沙耶たちバリケード部隊の活躍次第だな)

恭介「さて喉渇いたな、ジュースでも買うか」

恭介(俺は自販機の前に立つと、どろり濃厚ピーチ味を買うことにした)

恭介(この学校の自販機はなかなかハイセンスで、ティラミスジュースやら、味噌かつジュースなんてものも置いてある)

恭介(俺的には、このどろり濃厚ピーチ味がお気に入りだ)

恭介(紙パックタイプでストローで吸って飲むんだが、どっちかというとゼリーに近い気がしないでもない)

恭介(喉渇いたからジュース買ったんじゃねえのかよ!ってツッコまれそうな気もするが、まあ気にするな)

恭介(そうしてると、掲示板の前でウロチョロしてるやつがいるのに気づいた)

??「よいしょ!ほいしょ!」

恭介(制服を見るに、戦線のメンバーのようだ)

恭介(幹部以外のメンバーの一人か)

恭介(小さい背丈で、あちこちにフライヤーを貼り付けている)

恭介(気になるから、声をかけることにした)

恭介「今日の告知か?」

??「うわあっ!?」

恭介「っと、悪い。驚かせたか」

??「あ、いえ、これを貼るのに夢中で気づきませんでした」

??「って、あれ?戦線の人ですか?」

恭介(制服が違うから、すぐ気づかれる)

恭介「ああ。名前は、棗 恭介だ」

??「これはどうも、あたしはユイっていいます!」

ユイ「って、あれ…?あなたの顔どこかで見たような気が…」

ユイ「名前も…、棗 恭介って確か…」

ユイ「あぁぁあああーーー!?」

恭介(なにか考えるような仕草をした後、急に大声を上げた)

恭介「どうしたんだ急に?」

ユイ「あなたは確か、デーモン・ピクニックで岩沢さんと戦った人ーー!?」

恭介「ああ、お前あの時野次馬部隊にいたのか。確かになんか見覚えあるような気がするな」

恭介(ピンクの髪に、つけているアクセサリーといい、すごい特徴的な奴だしな)

ユイ「やっぱりそうでしたか…!聞いたことありますよ!」

ユイ「最近幹部入りした棗 恭介とかいう男のせいで、他の幹部のみなさんがどんどん馬鹿になっているという話を!」

恭介(他のメンバー達の間ではそんな噂が流れてたのか…)

恭介「まあ、否定はしない」

ユイ「しないんかーい!」

恭介(ノリノリでツッコミをいれてくる。賑やかで楽しいやつだ)

ユイ「そんなことよりもですよっ!」

ユイ「あの岩沢さんに入れ歯プレイされるなんて…!」

ユイ「あなたは岩沢さんに憧れる、多くのガルデモファンを敵に回したんですよっーー!」

恭介「改めて聞くと、入れ歯プレイって斬新すぎて、なんのことかわけがわからないな…」

ユイ「いいなー!あたしも岩沢さんに入れ歯プレイされたいですよー!」

恭介「お前、そこまでガチな岩沢ファンなんだな…」

ユイ「そりゃそうですよ!陽動部隊の下っ端でしかありませんが、ガルデモに対する愛だけは誰にも負けませんっ!」

恭介(へえ、ガルデモファンか。高松以外にも、こんなところに同士がいたとはな)

恭介「何を隠そう、俺も大のガルデモファンだぜ!」

恭介(それが嬉しくて、同じように俺もガルデモファンであることを話した。すると…)

ユイ「一緒にするなや、ごらあああぁぁーー!!」

ユイ「ガルデモに対する愛は、何倍もお前より上じゃああぁぁーー!!」

ユイ「遥か上空じゃああぁぁーー!!」

恭介(いきなりキレキャラに変わりやがった…!だが、そこまで言われて黙ってはいられない…!)

恭介「そこまで言うなら、ガルデモの魅力を大いに語り合おうじゃないか!」

恭介「そうすりゃ、俺のガルデモ愛もわかるってもんだぜ!」

ユイ「ほほう?言いましたねー?にわかファンかどうかくらい、あたしにかかればすーぐにわかりますよっ!」

恭介(挑戦的な目を向けられる。これは言わば、俺のガルデモ愛を証明するバトルだぜ!)

ユイ「じゃあ手始めに聞きますが、好きな曲はなんですか?」

恭介「Crow Songだな。この世界に来てから初めて聞いたガルデモの曲だ」

ユイ「メジャーなところから来ましたねっ!あたしもCrow Songがお気に入りです!」

ユイ「サビの転調の思い切りが良くていいんですよ!」

恭介「わかるぜ!それにあの曲には岩沢の人生や、世界についての憤りが込められている」

恭介「だが、それだけじゃない!同じような境遇にある人たちの背中を押す、応援歌的な意味も込められているんだ!」

ユイ「おおっ!わかってるじゃないですかーっ!」

ユイ「Crow Songはまさに岩沢さんの人生そのもの!って感じの曲ですよねっ!」

ユイ「もうライブ中は泣けるわ、盛り上がるわで、どうしたらいいかよくわかんなくなるくらいですよっ!」

恭介「後は音楽に対する愛もやばいな!」

恭介「『漆黒の羽に攫われて消えてくれ』って叫ぶところとか最高だぜ!」

ユイ「もうあそこの盛り上がりは最高ですよーっ!思わず飛び跳ねたくなりますねっ!」

恭介「ああ、まさにそんな感じだな!」

ユイ「盛り上がるといえば、Alchemyを忘れちゃいけませんよっ!」

ユイ「リードギターのひさ子さんの、殺伐としたリフで始まるキラーチューン!」

ユイ「もう殺伐とするわ、興奮するわで、どうしたらいいかよくわからないんですよ!」

ユイ「ベースの関根さんのコードを無視したアドリブも挑戦的で、ハラハラドキドキします!」

恭介「そして更に!普段は内気で大人しい入江の、性格が豹変したかのように、派手に打つドラムが加わり…!」

ユイ「ボルテージマーックス!!」

恭介「♪歩いて~き~た道振りかえ~ると~♪」

ユイ「♪イヤなこ~とばっかりでもううんざ~りだ~よ♪」

恭介「♪触れるも~のを輝かして~ゆ~く♪」

ユイ「♪そんな道を生きてき~たか~♪」

恭・ユ「「♪あ~ったよ ♪」」

恭介「………」

ユイ「………」

ガシッ!

ユイ「失礼なことを言いましたっ!あなたのガルデモに対する愛は本物です!」

恭介「いや、お前のガルデモ愛も大したもんだぜ…!」

恭介(俺とユイはがっちりと握手を交わした)

ユイ「いやー、本当にライブの時の盛り上がりようは凄いですよねーっ!」

ユイ「なんといってもNPCをあれだけ虜にする、ボーカル&ギターの岩沢さんの存在感ですよ!」

恭介「ライブか…。俺幹部だから、ちゃんとガルデモのライブ聞いたことないんだよな…」

恭介(今回の作戦も、実働部隊だから、ライブを行う体育館からは離れることになるだろう)

恭介(もしかしたら俺は、ガルデモのライブを聞ける機会は、訪れないのかもしれない…)

恭介(それだけは無念で仕方ないぜ…!)

ユイ「ああー…、それはご愁傷様です。でもでも、きっといつか聞ける時が来ますよ!」

ユイ「その時は一緒に盛り上がりましょう!棗先輩っ!」

恭介(ユイが明るく、そう励ましてくれた。話してて思ったがこいつはとにかく元気がいい)

恭介(なんというか、妙なパワーというか、岩沢とは別の意味ですげえ存在感のあるやつだ)

恭介「ああ!サンキューな、ユイ」

恭介「そういや、今持ってるフライヤー全部貼るのか?」

恭介(手にしてるのは、やはり今日のライブを告知するフライヤーのようだ)

恭介(結構な枚数に見える)

ユイ「はい!A塔があと半分くらいと、B塔の分が少し残ってますね」

恭介「大変そうだな、手伝おうか?」

ユイ「いえいえ、気持ちだけありがたく受け取らせていただきますっ!」

ユイ「これは陽動部隊としてのあたしの仕事!」

ユイ「地味な仕事ですが、こうしてガルデモのお役に立ててると思うだけで、それはもう幸せなんですよっ!」

恭介(笑顔を見せながら、心底嬉しそうにそう言う)

恭介(確かに、好きなやつの役に立てるってのは嬉しいもんだよな)

恭介「そっか、余計なことをしたな」

ユイ「いえいえ、棗先輩も頑張ってくださいっ!」

ユイ「今回のライブは、告知したり、体育館ジャックしたり、前代未聞ですからねっ!」

ユイ「でも、そこまでしてでも人を集める必要がある作戦だと聞いていますからっ!」

恭介「ああ、そうだな。ありがとな、ユイ」

恭介「お前もがんばれよ」

ユイ「はいっ!お疲れ様でっす!先輩っ!」

恭介(元気に手を振るユイと、そこで別れた)

遊佐「定例会議の時間です。本部までお集まりください」

恭介「うおっ!遊佐、お前いつからいたんだ!」

遊佐「先ほどからいました。棗さんがわたしに気付かなかっただけです」

恭介(いつの間にか、俺の目の前には遊佐が立っていた)

恭介(どこから現れた…?ってか気配すら感じなかったぜ)

恭介(やっぱこいつもただものではないのかもしれない…)

恭介「まあ、呼びに来てくれてありがとな」

遊佐「お気になさらず。これがわたしの仕事なので」

恭介(だいぶ、仲良くなったような気がしてたんだが、やっぱちょっと素っ気ないな)

恭介(いずれもっとハジケた遊佐が見れるといいんだが…)

遊佐「なにかよからぬことを考えていませんか?棗さん」

恭介「い、いや。なんでもないぜ…!」

遊佐「そうですか。では、本部までお急ぎください」

恭介(鋭い…。やっぱただものじゃないぜ…!)

ー恭介の称号に「ガルデモ大好き」が追加されましたー

恭介(本部に集合する)

恭介(作戦の細かい確認や、ライブの下準備が完了したという報告を受けている間に)

恭介(間もなく、オペレーション開始時刻だ)

恭介(そして…)

ゆり「とうとうこの時が来たわね…」

ゆり「では岩沢さん。陽動は任せたわ」

岩沢「ああ」

ゆり「沙耶ちゃん達もお願いね。くれぐれもNPC達に危害は加えないこと」

ゆり「考えにくいとは思うけど、もし天使がハンドソニックとかを展開して」

ゆり「攻撃を仕掛けてきたら、その時だけ、武器の使用を許可するわ」

沙耶「了解よ、ゆり」

真人「戦うなってところが、ちょっと気に食わねえけどな」

松下「仕方あるまい、教師と言えどNPCだからな」

謙吾「俺たちは、まさにその身でバリケードとなるだけだ」

藤巻「仮に怪我しても、一日経てば治ってるからな」

大山「じゃあ、みんな!行ってくるよー!そっちも頑張ってね!」

TK「May the force be with you!!」

遊佐「健闘を祈ります」

恭介(岩沢とバリケード部隊、オペレーターの遊佐が、教室を出ていく)

恭介(きっと大丈夫だ。あいつらならな)

ゆり「竹山くんも、ハッキングの準備はオーケー?」

竹山「抜かりありません。そして僕のことはクライ…」

ゆり「では、オペレーション・スターーート!!」

恭介(そして、ついに『天使エリア侵入作戦』が始まった…!)

今日は以上です
ついに竹山と、そしてユイが登場しました
まさかここまでくるのに、これほど時間がかかるとは…

次回から天使エリア侵入作戦です
岩沢と、完全に敵対モードになってしまったかなでの運命や如何に

勝手ではありますが、ご意見、ご感想などがありましたらお願いします

一週間経ったので再度生存報告しておきます
明日からようやっと休みなので気合い入れて執筆します
もう少しだけお待ちくださいm(_ _)m

お待たせしました、今日の夜再開します
例のライブ終了まで一気に行くので、まとめ読みしたほうが良いかもしれません

今日の夜と言ったのに私事で出かけなければいけなくなりました
帰ってから投下しますので深夜になるかもしれません

楽しみに待って下さってる皆さんには申し訳ないですがもう少しだけお待ち下さい

恭介(闇に紛れ、行動を開始する)

恭介(辿り着いた場所は、女子寮。その門前に潜む)

恭介「にしても天使エリアってのが、普通に女子寮の立華の部屋のことだとはな…」

恭介(作戦内容を確認している間に判明した事実なんだが、さすがに俺たちもビビったぜ)

恭介(ラピュタだのハウルの動く城だの言ってた謙吾の、ショック受けた顔が忘れられないな)

恭介(ちなみにコンピューターで制御云々は、ただ単に部屋に備え付けられたパソコンの事らしい)

クド「普通に『女子寮の立華さんの部屋』って、言うんじゃダメだったんでしょうか?」

恭介(能美が、至極当然の疑問を口にする)

来ヶ谷「ではクドリャフカ君。ゆり君の真似をしながら、天使エリア侵入作戦を今の言葉に置き換えてみるといい」

クド「えっ?あ、はい、わかりました。では…」コホン

クド「これより、女子寮の立華さんの部屋侵入作戦を行う!オペレーション・スタートーーー!!」

クド「って、これじゃあ私たち変態さんみたいなのですーっ!?」

椎名「あさはかなり」

日向「変態さんみたい、じゃなくて、男子の俺たちは完全に変態だからな…」

ゆり「まあ、ぶっちゃけ犯罪だからね」

ゆり「『天使エリア』とでもしとかないと、真面目に作戦会議も出来やしないのよ」

竹山「あれ?もしかして僕たち、ものすごく馬鹿馬鹿しいことのために、こんな大がかりな作戦を立てたんでしょうか…?」

ゆり「馬鹿馬鹿しくないわよ!侵入自体はただの通過点、本命はその先にある…」

来ヶ谷「天使の下着を盗むことだな!」

ゆり「そう!きっと天使なんだから、超高級なレースとか使ってる下着に違いないわ!」

ゆり「それを奪って、内側からあたしたちの女子力アップ!って違うわーーっ!!」

ゆり「下着ドロの為に、オペレーションなんか発動するかーーっ!!」

恭介「ナイスノリツッコミだな、ゆりっぺ」

日向「ってかゆりっぺ。昔天使の水着盗んだことあるのに、よくそんなこと言えたもんだな…」

野田「ゆりっぺのためなら、たとえ変態と言われようと、犯罪行為に手を染めようと俺は構わない!」

日向「野田。内容が内容なだけに、今のお前ものすごく格好悪いぞ…」

竹山「あの、こんなに騒いでたら潜んでいる意味無くなるんじゃありませんか…?」

チルーシャ「ウゥー、ワンワンっ!」

クド「周りに人はいないから大丈夫だとは思うけど、一応気をつけて!って言ってるみたいです」

椎名「チルーシャの記念すべき初仕事は、雑談に対する注意喚起か…」

竹山「こんな調子で作戦は成功するんですか?」

ゆり「ふっ…。あたしを信じなさい、竹山くん」

ゆり「あたしは何十年とこの馬鹿たちを率いながら作戦を成功させ、ここまで戦線を大きくしたんだから」

日向「一番、騒いでたゆりっぺがそれ言うのかよ…」

ゆり「うっさい!少しはリーダー敬いなさい!」

ポカっ

日向「理不尽だぁーーー!!」

チルーシャ「ワンっ!!」

クド「日向さん、チルーシャが静かにしなさい!って…」

日向「理不尽だぁ…」

恭介「ま、いい加減そろそろ気持ち切り替えようぜ」

恭介「ゆりっぺ、そろそろガルデモのライブ開始時刻じゃないか?」

ゆり「そうね。確認してみるわ」

恭介(ゆりっぺがトランシーバーを取り出す)

ゆり「遊佐さん、こちらゆりよ。準備の方はどう?」

遊佐『はい、こちら遊佐です』

遊佐『予定通り、ガルデモ、バリケード部隊のスタンバイ完了です』

遊佐『陽動部隊の下っ端も会場に集合していますので、すぐにでもライブを始められます』

ゆり「よし。ガルデモに通達、始めさせて」

遊佐『了解しました』

恭介(下っ端っていうと、ユイも会場にいるっぽいな)

恭介(頼んだぜ…!みんな、岩沢)

恭介(俺は離れた場所にいる仲間たちに思いを馳せた)

~Iwasawa Side~

岩沢「特等席だぜ?」

岩沢(あたしは『相棒』をスタンドに立てかけると、その表面を優しく撫でた)

岩沢(My Songが陽動に使えない以上、こいつの出番は無い)

岩沢(でもせめて一番近くで、今回のライブを見届けて欲しかった)

ひさ子「珍しいね、わざわざそのギターを持ってくるなんて」

岩沢(そうしていると、ひさ子が声をかけてきた)

岩沢「ああ。今回のライブは色々と特別だろ?気合入れようと思ったんだよ」

入江「告知ライブも、体育館占拠も、前代未聞のことですからね」

関根「フフフフフ…。あたしにはわかる…。今宵のライブは今までに無いヤバイことが起こるであろう…!」

入江「不吉なこと言わないでよぉ、しおりん!」

関根「いやいや、ヤバイと言っても、良い方にヤバイ予感なのだよ…!」

ひさ子「つか関根、お前のキャラがコロコロ変わるのは今更だとして…」

ひさ子「今度は何のキャラだよ、それ…?」

関根「預言者風キャラです!ボケマスターを目指す為に、新境地を開拓してみました!」

関根「例えるならそう!ノストラザマス!!」

ひさ子「んなもん目指してる暇あったら、もっとベースの自主練しろぉーー!!」

ミシミシミシっ…

岩沢(ひさ子が関根に関節技を決め始めた)

関根「ぎやああああ…!!ひさ子先輩…、その関節はそっちの方向には曲がらな…」

ひさ子「しかもなにがノストラザマスだっ!わかりやすいボケかましてんじゃねえーーっ!!」

関根「す、すみません…!以後精進を…、あ、あ、あっあああああん!!」

入江「ああ…、全然緊張感が無い…。しかもまだボケマスターなんてネタ引きずってる…」

岩沢「まあ、良いんじゃない?変に緊張するより、その方があたしたちらしいよ」

関根「そ、そうですよー!あたしはあたしなりに、緊張をはぐらかそうとしてですね…!」

ひさ子「はぐらかす、じゃなくてほぐすだろ!狙ってわかりやすいボケ入れるなっつの」

岩沢(そうして雑談していると、舞台裾から遊佐が近づいてきた)

遊佐「みなさん、ゆりっぺさんからの指示がきました」

遊佐「始めてください」

岩沢「ああ、わかったよ」

岩沢(それだけ伝えると、すぐにまた舞台裾に戻っていく)

岩沢(あの場所からライブの様子を見て、ゆりからの更なる指示をあたしたちに飛ばすのが遊佐の役割らしい)

岩沢(いつもならそこまで念を入れるようなことはしない)

岩沢(本当に今日の作戦はそれだけ重要だってことだな)

岩沢「みんな聞いてのとおりだ」

岩沢「どんな状況だろうと、いつも違う場所だろうと…」

岩沢「あたしたちは、あたしたちの音楽をするだけだ。そうだろ?」

岩沢(三人にそう問いかける)

ひさ子「ああ!」

入江「はい!」

関根「もちろんです!」

岩沢「よし、じゃあ始めよう!」

岩沢(それぞれ、所定の位置につく。後はギターを鳴らせば、目の前の幕が開くことになっている)

岩沢(緊張はしていない。それでもこのライブは特別だ)

岩沢(だからギターを構えたまま、一度息を吐く)

岩沢(そう、特別なんだ。あたしにとっても)

岩沢(生前の未練と後悔から決別する為に)

岩沢(これからはただ純粋に、あたしの歌を、想いを、届ける為に)

岩沢(このライブで、生前から抱え続けていた憤りと決別する!)

岩沢(だから始まりはこの曲と決めていた)

岩沢(あたしがこの世界に来てから、最初に書いた曲)

岩沢(あたしに新しい道を示してくれた、あいつが好きな曲)

岩沢「Crow Songーーーーー!!」

岩沢(その叫びと同時に思いっきりギターを鳴らした)

岩沢(演奏が始まる。幕が開く。そして、歓声が聞こえる)

岩沢(さあ、ライブ・スタートだ!)

~Kyosuke Side~

遊佐『ガルデモ、ライブ開始しました』

ゆり「了解よ。またなにかあったらこちらから連絡するわ」

恭介(それだけ言うと、トランシーバーを仕舞い、俺達に向き直る)

ゆり「さあ、行くわよ」

チルーシャ「ワンワンっ!」

クド「どうやら女子寮の中には、まだ多数の生徒のみなさんがいるみたいです」

野田「チルーシャはそこまでわかるのか…!?」

恭介「犬の聴力や嗅覚は、人間よりはるかに良いと言われてるからな」

椎名「どうする、ゆり?」

ゆり「無論、予定通り侵入するわ」

ゆり「時間をかけていれば、いつライブが中断させられるかわからないもの」

日向「だな。よっし、みんな行こう!」

来ヶ谷「女子でありながら女子寮に侵入する、か。面白くなりそうだ」

竹山「こんな時に何言ってるんですか?あなたは…」

ゆり「変態!?あなた変態なのね!?好きな人がいるって話はどうしたのよ!!」

来ヶ谷「それはそれ、これはこれだ。可愛いものはなんでも好きだよ、私は」

椎名「わたしも可愛いものは好きだぞ、来ヶ谷」

来ヶ谷「うむ、君とは本当に仲良くやっていけそうだ」

ガシッ

恭介(こんな場所でまたも握手を交わしている二人)

日向「ってか、椎名の可愛いものと来ヶ谷の可愛いものは、なんか基準が違う気がするぜ…」

ゆり「まったくね、つくづくまともなのがいないわ…。リトルバスターズ…」

恭介「これが来ヶ谷の平常運転なんだ。まあ、すぐにとは言わないから慣れてくれ」

竹山(大丈夫なんでしょうか…?この戦線…)

ゆり「ともかく、気を引き締めて行くわよ」

ゆり「突入!」

恭介(その合図とともに、玄関を潜り抜ける)

恭介(ここから誰にも見つからず、立華の部屋にまで辿り着かなければならない)

恭介(だが、その矢先…!)

チルーシャ「ワンっ!」

恭介(チルーシャが小さく吠えた)

クド「前から人が来るみたいです!」

ゆり「いきなり!?戻って!ルートを変えるわよ」

椎名「駄目だ、ゆり!後ろからも来る!」

日向「挟み撃ちかよ!?」

野田「どうする!ゆりっぺ!」

恭介(早速の危機に、みんながゆりっぺの指示を待つ)

ゆり「ああっ…!幸か不幸か…!」

ゆり「みんなこの部屋に入って!」

恭介(ゆりっぺは目の前の部屋のドアを開けると、そう言い放った)

日向「いいのか!?誰か中にいるかも…」

ゆり「いないわよ!ここはあたしと沙耶ちゃんの部屋なんだから!」

野田「な、なに!?ゆりっぺの部屋………!!」

クド「の、野田さん、鼻血が出てます!しっかりしてください!」

チルーシャ「ワンっ!」

ゆり「いいからさっさと入れぇーー!!」

ドカッゲシッドンッ

恭介(全員蹴り飛ばして強引に部屋に入れられる…。そして勢い良くドアを閉められた)

竹山「なにも蹴らなくても…」

日向「諦めろ、竹山。ゆりっぺのやることだ」

野田「ゆりっぺならこれくらい当然だ」

椎名「あさはかなり」

恭介「お前ら悪い意味で毒されてないか…?」

能美「でも状況が状況だったとはいえ、勝手にお部屋にお邪魔してしまって良かったんでしょうか…?」

来ヶ谷「入れと言ったのはゆり君だ。気に病む必要もあるまい」

NPC1『あれ、仲村さん?今、男子がいなかった?』

ゆり『えっ?いっるわけないじゃーん。見間違えじゃない?』

NPC2『私はなんかすごい大きな犬が見えたような気がしたけど…』

ゆり『見間違えでしょ。女子寮に犬なんていっるわけないじゃーん!』

恭介(ゆりっぺがNPCを誤魔化そうとしているのが、ドア越しに聞こえてくる)

恭介(ってかゆりっぺの名字は仲村、っていうのか)

クド「あの~、来ヶ谷さん?何してるんですか?」

恭介(能美のそんな声が聞こえたから振り向くと、来ヶ谷が何やらゴソゴソしているのが見えた)

恭介(真っ暗だからわかりにくいが、あいつ…、まさか…)

来ヶ谷「うむ、下着漁りだ」

恭介(それがなにか?みたいなトーンでそう答える)

野田「なっ…!?」

日向「はあああああ!?ワッツ!?ホワーイ!?こんな時に何してんだよ!?」

NPC1『あれ、やっぱり今男子の声がしたような…』

ゆり『空耳じゃなーいっ!?ほら、今体育館のほうでガルデモがライブしてるみたいだしっ!!』

ドンッ!

恭介(黙ってろ!という合図だろう。ドアを叩かれる)

恭介「日向、静かにしてろ!見つかるぞ…!」ヒソヒソ

日向「ああ、わりい…」ヒソヒソ

恭介(顔を近づけて、小さな声で会話する)

恭介(が、その間も来ヶ谷は下着漁りを続行している)

野田「やめろ、来ヶ谷…!は、破廉恥だぞ…!」ヒソヒソ

来ヶ谷「とか言いながら、ハルバードを突き付けている手が震えているように見えるぞ?野田少年」

野田「なっ…!」

来ヶ谷「期待しているんだろう?お望み通り見せてやろう、これが目的のブツというやつだ」

恭介(来ヶ谷が『それ』を野田見せつける…。もしかしなくてもあれは…)

野田「そ、そ、それは………!!」

来ヶ谷「うむ、ゆり君のブラジャーだ。サイズ的に間違いないだろう」

来ヶ谷「しかし黒か。ある意味予想通り、少しアダルティな趣味の持ち主だったな、ゆり君は」

恭介(野田の目の前で、黒のブラジャーをヒラヒラさせる来ヶ谷)

野田「や、やめろ…!それは勝手に見ていいようなものじゃない…!」

恭介(あたふたしながら、両手で顔を隠そうとしている野田)

恭介(そんな野田に悪魔の声が囁く)

来ヶ谷「なにを我慢している?好きな相手の下着が気になるのは、男として自然な欲求だろう」

来ヶ谷「食い入るように見るといい。なんなら持ち帰って、その溢れ出る劣情をこのブラジャーにぶつけるといい」

来ヶ谷「はぁはぁ、マジやばいっす!ゆりっぺのブラジャーをお持ち帰りして、危ない遊びをしてみたいっす!」

来ヶ谷「と、言ってみるといい」

野田「お、俺は…、俺は…!」

恭介「やばいな、今野田の中で天使と悪魔が戦ってるぜ…!」

日向「欲求が勝つか、自分を押さえ込むか…!」

椎名「ゆりを裏切るか、裏切らないか…!」

恭介「まさにギリギリの選択だぜ…!」

竹山(この人たちはなにをしているんだろう…)

野田「俺はーーーっ!!」

恭介(野田がゆりっぺのブラジャーに、その手を伸ばす…!)

バンッ!

ゆり「うっさーーーい!!静かにしろってのがわかんないの!?この馬鹿共!!」

恭介(NPCを追い払えたのか、ゆりっぺが部屋に入ってきた)

恭介(当然その目には…)

野田「あっ…」

来ヶ谷「おや」

ゆり「は…?」

恭介(来ヶ谷から自分のブラジャーを奪おうとしている野田が映る…)

ゆり「な、な、な…!」

ゆり「なぁにやってんだお前らあああぁぁああーー!!」

バキィ!

野田「げふぅ…!!」

恭介(ゆりっぺの飛び蹴りが野田の顔面を捉える…!)

恭介(しかも次は来ヶ谷を狙おうとしている…!)

ブンっ!ブンっ!

ナギっ!ナギっ!

来ヶ谷「ふははははは!!」

ゆり「逃げんなぁーーー!!」

日向「お、落ち着け、ゆりっぺ!!」

恭介「騒ぐと見つかる!椎名、ゆりっぺを止めてくれ!」

椎名「了解だ!」

ゆり「離せ、この馬鹿共がーーー!!」

クド「ゆりさん!静かに、静かにですー!」

ゆり「うんがーーーっ!!」

竹山「なんて馬鹿な人たちなんだ…」

ーゆりっぺ暴走終了後ー

ゆり「いい、来ヶ谷さん!今度勝手な真似したら幹部から外すわよ!」

ゆり「野田くんは戦線から除名するわ!わかったか!!」

来ヶ谷「うむ、肝に命じよう」

野田「ぶばながっだ…、ゆりっべ…」

恭介(涼しい顔をしている来ヶ谷と、顔面が腫れ上がってる野田が対照的だ…)

日向「なんか元凶が無傷なのは納得いかねえな…」

恭介「まあ来ヶ谷だからな」

クド「うぅ…、ゆりさんのブラジャーのサイズ大きかったです…」

クド「やっぱり私はひんぬーわんこなのです…、なのです…」

椎名「気にするなクド。クドは今のままが可愛い!」

来ヶ谷「その通りだ。なにもゆり君のようになる必要は無い」

恭介「ってかなるな。ゆりっぺみたいになった能美とか誰得だって話だ」

日向「それは同感だ。クドは絶対ゆりっぺみたいにはなるなよ?」

ゆり「お前らいい加減あたしイジって遊ぶなーーーっ!!」

チルーシャ「ワンっ!」

椎名「ゆり、静かに!」

ゆり「くっ、屈辱だわ…。こんな屈辱リーダーになってから初めてよ…!」

野田「たとえみんながゆりっぺよりクドを選ぼうと、俺はゆりっぺのことを…!」

ゆり「ああん…?」

野田「す、すまん、なんでもないです…!!」

恭介「可哀想に、只でさえ少ない好感度が更に下がったっぽいな」

来ヶ谷「自業自得だからな。仕方あるまい」

日向「いや、原因作ったの来ヶ谷だろ。ってか完全に楽しんでたろ!」

来ヶ谷「無論、楽しんでいたがなにか?」

日向「開き直りやがったーーー!?」

ゆり「だから作戦中に何考えてんのよ!?」

来ヶ谷「女子の部屋に侵入して下着を漁らない奴などいないだろう?」

来ヶ谷「なんにしろ、やるからには楽しむべきだ」

ゆ・日「「お前もかーーー!!」」

恭介(息ぴったりのツッコミを入れられる)

恭介(お前もってのは、まあ俺や謙吾たちの事だろうな)

ゆり「はぁ…、はぁ…。ほんっとに元祖リトルバスターズの思考回路はどうかしてるわ…」

恭介「俺からしてみれば、お前らももう俺たちと大差ないけどな」

椎名「同感だ。その方が楽しいなら、私もそれで良いと思う」

ゆり「ああ…、いつの間にか椎名さんまで完全に恭介病の餌食に…」

恭介「だから人を病原菌扱いすんなっつの」

竹山「あの…、そろそろ作戦を再開するべきだと思うんですが…」

ゆり「ああ、まったくね!一番の新入りに真っ当な指摘されるってどんだけ馬鹿の集まりなのよ…!」

恭介(ゆりっぺがブツブツ愚痴を言いながら、トランシーバーを取り出す)

ゆり「こちらゆり。遊佐さん、ライブの様子はどう?」

遊佐『少ないです』

ゆり「やっぱりね…。侵入早々挟み撃ちに合うなんておかしいと思ったわ」

椎名「陽動が上手くいってないのか…」

野田「もっと派手な演奏じゃないと駄目なんじゃないか…!?」

ゆり「そうね…。遊佐さん、ガルデモたちにもっと盛り上げるように伝えて」

遊佐『了解しました』

クド「どうしましょう?このまま行動を開始しても、また見つかりそうです」

日向「かと言って、ずっと部屋に待機しててもジリ貧だな」

ゆり「おかしいわね…。あたしの予測じゃ、いつものライブくらいNPCを引きつけられたら、問題なく侵入出来る見込みだったのに」

ゆり「告知に加えて、体育館を選挙までして、なぜ人が集まらないの…?」

恭介(ゆりっぺが顎に手を当て思案する)

恭介「ああ。俺も調べてみたが、NPC達は今日のライブをみんな楽しみにしていたはずだ」

恭介「掲示板に貼られたフライヤーを、わざわざ外して持ち帰る奴も何回か見たしな」

竹山「ですが陽動は上手くいっていない。これが現実です」

恭介(その通りだ…。普通に考えたら、今日の陽動が失敗するはずが無い)

恭介(なのになぜ上手くいっていない…。あれだけNPC達の興味・関心を集めてていて何故だ…)

恭介(あまりに不自然だ…、嫌な予感がする…)

野田「どうする、ゆりっぺ?」

ゆり「……………」

恭介(ゆりっぺが無言で考える。難しい判断だ、今動いても確実に見つかる)

恭介(だが、いつライブを中断させられるかわからない以上、早急に動かなければならない)

恭介(その時、遊佐からの通信が入った)

遊佐『こちら遊佐です。ガルデモ、Alchemyの演奏を開始しました』

恭介「Alchemy!?こんな序盤でか!?」

ゆり「おそらくスコア表を無視した判断でしょうね。賢明な判断だわ」

チルーシャ「ウー、ワンワンっ!」

クド「少しずつ、女子寮から人の気配が消えているようです!」

日向「Alchemyに釣られたのか!」

椎名「タイミングが良すぎるような気もするが…」

ゆり「でも今がチャンスよ!この機を逃すわけにはいかない!」

ゆり「侵入を続行するわ!」

日向「了解だ!みんな油断するなよ!」

恭介(みんなが再度、行動を開始しようとする)

恭介(岩沢たちが気になるが、みんなを信じて、俺は俺のやるべきことを遂行しよう)

恭介(そう思った時だった…)

ズキンっ!

恭介「ぐっ…!?」

恭介(突然の激痛が頭を襲った…!)

日向「恭介?どうしたっ!?」

恭介「ぐっ、うあ…!!」

恭介(日向の声に応える余裕も無く、そのまま床に倒れ伏す…)

クド「恭介さん!?」

来ヶ谷「しっかりしろ、恭介氏!どうした、何があった!?」

恭介(なにがなんだか俺にもわからない…!だが、この感覚はまるで…)

恭介「頭の中に…、なにかが入ってくるような…!そんな…、ぐっ…!」

野田「頭の中だとっ!?」

竹山「ただの頭痛じゃない…?」

椎名「まさかまた…!」

ゆり「神による干渉…!?」

ゆり「棗くん!しっかりして!気を確かに持って!!」

チルーシャ「ワンワンっ!」

恭介(みんなの声が聞こえる…、痛みを堪えて必死に応えようとする…)

恭介(だが、俺の意識はそのまま闇へと墜ちていった…)

ーーーーー

ーーー

恭介(白い…、どこまでもただ白い世界)

恭介(そんな真っ白な空間に俺は立っている…)

恭介(ここは…、どこだ?)

恭介(俺は…、どうなった?)

恭介(辺りを見渡す…。本当に何も無い空間だ。その時…)

??『なにを選び取る?なにを諦める?』

恭介「!?」

??『決めるといい、これは君に与えられた試練だ。棗 恭介』

恭介(声が聞こえた…、まるでこの空間全てに響くようなそんな声が…)

恭介「お前は何者だ!?この世界を創った創造主か!?」

恭介「俺になにを望んでいる!?」

恭介(俺の声に対する返事は無い…。だが、こんな場所に俺を招いた以上、なにか企みがあるはずだ…!)

恭介(そう考えるのと同時に、目の前の空間になにかが映し出された)

恭介(次第に色がついていく…、あれは…)

恭介「体育館…?」

恭介(見覚えがある。あれはこの学校の体育館だ)

恭介(そこには沙耶達、バリケード部隊がいた)

恭介(ステージの上には数人の教師と思われる姿、倒れている遊佐、隣に並ぶ関根と入江)

恭介(別の場所で、なにか機械を操作するひさ子。それらが同時に見えた)

恭介(そして、ステージの端。たった一筋の光のもと、歌を歌う一人の女生徒)

恭介「岩沢…」

恭介(見間違えるはずも無い。あいつが相棒と言っていたギターを構え、孤独に歌を歌っている)

恭介(その歌が聞こえてくる。『My Song』、あいつの新曲…)

恭介(だが、俺の聞いたものとはどこか違った…)

恭介(そうだ…。あいつの歌にはいつもがむしゃらな熱意があった)

恭介(それが発するパワーに俺は惹かれていた)

恭介(今聞こえる歌にはそれが無い…。あるのは、ただ『清々しさ』だけだ…)

恭介(心臓が早鐘を打つ…。その先の結末が予想出来る…)

恭介(なのに何かに縛られたかのように、そこから動くことが出来ない…!)

恭介(声を上げることすら出来ない…!)

恭介(そして…)

岩沢『ありがとう』

恭介(最後のフレーズ…。そしてギターを弾き終えて…、岩沢は…)

恭介(消えた)

ーーーーー

ーーー

恭介「うわああああああっ!!」

ゆり「うわあっ!?」

恭介(気づいたら叫んでいた…。ここは…)

日向「恭介っ!気がついたかっ!」

恭介「俺は一体…」

ゆり「ここはあたしの部屋よ。侵入を続行しようとした矢先、いきなり頭を押さえて倒れたのよ」

恭介「そうか、俺は…」

恭介(戻ってきたのか…。夢…?いやただの夢のはずが無い…!あれは…!)

恭介「ライブはどうなった!?」

ゆり「えっ…?」

恭介「ガルデモのライブはどうなったんだ!?俺はどれくらい倒れていたんだ!?」

ゆり「落ち着きなさい、棗くん!あなたが倒れていたのは、ほんの一瞬よ」

ゆり「ライブだって、まだAlchemyを演奏してる最中のはずよ」

恭介「一瞬…?今のが…?」

ゆり「ねえ棗くん、一体なにがあったの!?今あなたが倒れていた時、なにが起こったの!?」

恭介(俺が見せられたもの、あれがこの先に待ち受ける運命なのだとしたら…!)

恭介「岩沢が危ないっ!!」

恭介(俺は急いで体育館へと駆け出した…!)

恭介(後ろからゆりっぺやみんなの声が聞こえた気がしたが、無視した)

恭介(今は説明している時間すら惜しい…!)

恭介(だから走った!女子寮を抜け、ただ体育館を、岩沢のもとへと…!)

恭介(そして辿り着いた。体育館の前まで)

恭介(驚くほど静かだ…。やはりあの時見えた様子からして、ライブは途中で教師達に止められたらしい)

恭介(今ならまだ間に合う…!だが、体育館に駆け込もうとした俺の前に、立ちはだかる姿があった…)

恭介「………立華」

立華「やっぱり来たわね、棗くん」

立華「どういうつもりのライブかは知らないけど、あなたならきっと来ると思っていたわ」

恭介(微動だにせず、あの時と同じ無感情、無表情のまま、俺と相対する立華…)

恭介(俺は、その立華に対して…)

恭介(言わなければならないことがあった)

恭介「立華」

立華「………」

恭介「俺は…、立華に謝らなければならない…」

立華「謝る?」

恭介「ああ…。あの後、ゆりっぺ達から聞いた」

恭介「俺が仮面に操られていた時、お前になにをしてしまったのかを…」

立華「………」

恭介「さんざんお前を仲間に誘っておいて…」

恭介「楽しいことを教えてやるって言っておきながら…」

恭介「俺はお前を傷つけて…、裏切って…」

恭介「本当に最低なことをした…!すまなかった、立華!!」

恭介(時間は惜しかった。だが、今ここで謝らなければ、もう二度と立華とまともに言葉を交わせなくなるような、そんな気がした…)

恭介(だから、今の俺に思いつく限りの言葉で、立華に謝って、そして頭を下げた)

立華「頭を上げて、棗くん」

恭介(その言葉に従い、頭を上げる。立華の表情に未だ変化はない)

立華「棗くん、あなたは勘違いをしているわ」

恭介「えっ…?」

立華「あたしはあなたにされた事を怒っていないし、あなたの仲間になろうとしたことも無い」

立華「あなたがリトルバスターズで、あたしが生徒会長である以上、あたしとあなたは敵同士」

立華「最初から言ってるわ」

恭介「それは…」

立華「あなたを助けたのも、生徒会長として、この学校の生徒を守る使命があるから」

立華「それだけのこと」

恭介(前と同じ、明確な拒絶…。立華は俺が立華を傷つけたことを怒ってはいない…?)

恭介(ならなぜ、立華は急に俺をこんなに拒絶するようになったんだ…)

立華「そして、あなたたちが規律を乱すなら、あたしはそれを止める」

立華「今回のライブもそう、あなたをここから先には行かせない」

恭介(そう言って、俺の前に立ちはだかる立華)

恭介(俺がライブを止めに来た教師達の、邪魔をしに来たと思ってるのか…!)

恭介「違う、そうじゃない!俺はライブを止めに来たんだ!」

立華「えっ…?」

恭介(予想が外れたからだろう。立華が初めて表情を変えた)

恭介「立華も言ってただろ!?思い残すことが無くなれば、この世界から消えて、新しい人生が始まると!」

恭介「このままライブを続けてしまったら、きっとあいつは消える!」

恭介「そんな確信が俺にはあるんだ!」

恭介「だからそこをどいてくれ!ライブを止めさせないといけないんだ!」

立華「……………」

恭介「立華…!!」

恭介(必死に立華を説得する。戦いたくはないが…、どうしてもどいてくれないなら、力ずくでも通らなければならない…!)

恭介(出来る限り、それは避けたかった)

立華「それのなにがいけないの?」

恭介「えっ…?」

恭介(だが、立華から返ってきたのは、予想外の返答だった…)

立華「思い残すことが無くなるなら、生前の未練が消えるなら、それは良いことのはずよ」

立華「なのに、なぜ止めようとするの?」

恭介(立華にそう言い返される。確かにそうだ、一度死んだ俺たちにとって、それは一つの救済だろう…)

恭介「だが…!」

立華「ずっと遊んでいるの?」

恭介「!?」

立華「この無限に続く世界でずっと」

恭介(『ずっと遊んでるのか?』)

恭介(その言葉には、覚えがある…。なぜなら、その台詞は…)

恭介『だから、ここまで来たんだろう?』

恭介『ここで立ち止まるのか?』

恭介『ずっとここで遊んでるのか?』

恭介(俺がかつて理樹に向けて言った言葉と、全く同じものだ…)

立華「ここは…、いわば夢の世界。辛い人生を送ってきた人たちが、心を安らげる場所」

立華「もう一度、生きることに希望を見出す場所」

立華「なのに遊び続けるの?」

立華「そうしていれば、永遠に棗くんたちは、この世界に留まり続けることになる」

立華「あなたはそれを望んでいるの?棗くん」

恭介(さっきまでの無感情な物言いとは一転し、立華は真摯に俺に問いかける…)

恭介「………立華、お前はやっぱりそれを理由に、生徒会長としてこの世界を守り続けてきたのか…?」

恭介「新しく訪れる死者達の魂を救えるように、わざわざ目立つ立場について、生徒達を守ろうとしていのか…?」

立華「……………」

恭介(立華は答えない…。だがその沈黙は、俺からすれば肯定と同義だった)

恭介(なぜなら俺も…、立華の気持ちが痛いほどに理解出来たからだ…)

恭介(あの世界、俺たちが創った世界…)

恭介(あの世界もまた、俺たちにとっては夢と同じものだった)

恭介(どんなに楽しい時間であろうと、いつかは必ず終わりが来る)

恭介(ずっと遊んではいられない。人はみな、子どもから大人になるからだ)

恭介(だから、理樹と鈴を強くするとこに決めた)

恭介(過酷な現実にも負けない強さを得て欲しかった。俺たちがいなくても、強く生きて欲しかった)

恭介(それが理樹と鈴のためなんだと信じて、俺はただそれだけをやり遂げることに必死だった)

恭介(そして…)

立華「……………」

恭介(立華も…、同じだ)

恭介(こいつはあの時の俺なんだ。この世界で、本当にたった一人で…)

恭介(傷ついた魂たちが、また新しい人生を生きられるように、見守り、そして送り出してきた)

恭介(それが『俺たち』にとって、正しいことなんだと、そう信じて…)

恭介「俺は…」

恭介(俺には…、その気持ちを否定出来ない)

恭介(それはかつての俺が、正しいと信じた道と同じ道だ…)

恭介(それだけを信じて、やり遂げようとした道だ)

恭介(なら、この世界が、本当に死者の魂を救済する場所だとしたら…)

恭介(新しい人生への希望を、見出す為の場所なのだとしたら…)

恭介(俺も…、そうするべきだと思う)

恭介(そう、思えてしまう)

恭介(世界の秘密を暴いたところで、この世界で抗い続けたところで…)

恭介(その先には何も無いのかもしれないのだから…)

恭介(なら立華の言う通り、新しい人生を生きようとするのが、正しい道なんだろう…)

恭介(だから…)

恭介(俺は…)

恭介(立華の言葉を…)

常識ぶってる奴が笑ってる

次はどんな嘘を言う?

それで得られたもの

大事に飾っておけるの?

恭介「!!」

恭介(歌が聞こえた…)

恭介(外に設置された、校内放送用のスピーカーを通して…)

恭介(今体育館の中で、岩沢が歌っているであろう「My Song」が…)

岩沢『この曲書いててさ、今お前の前で歌ってみて、初めて音楽に触れた時の気持ちを思い出したんだよ』

岩沢『そしたらさ、なんか今まで以上に、やりたいことがどんどん浮かんできたんだ』

岩沢『だから満足なんてしない。あたしはもっともっと歌いたいからな』

岩沢『これからもっと、あたしの真っ直ぐな気持ちを、歌に出来るようにって』

岩沢『そういう想いも込めたタイトルだ』

岩沢『見てろよ、棗!あたしはこれからもっともっと、歌いまくってやるからな!』

恭介(岩沢の声が蘇る…。岩沢が浮かべていた笑顔を思い出す)

恭介(そして気づく。その全てが、今考えていた道を否定していることに…)

恭介(「My Song」…。岩沢が生前の憤りと決別するための歌、これからも歌い続けていく希望を込めた歌)

恭介(その歌を、これだけの観客の前で歌いきれば、思い残すことは確かに無くなるのかもしれない)

恭介(そして、ここから消えたら、新しい人生が始まる)

恭介(なら、今の岩沢の想いはどうなる?)

恭介(消えるんだろう、このまま)

恭介(それはあいつにとっての救いなのか…?)

恭介(………いや、違う。それだけは、絶対に違う!)

恭介(立華のやり方は、確かにかつての俺と同じもの。俺が正しいと信じたものだ)

恭介(だが少なくとも、岩沢にとって正しいものじゃない…!)

恭介(俺にはわかる…!このまま消えることがあいつにとっての救いのわけがない…!)

恭介(俺はずっとあいつの想いを聞いてきた…、だから、それだけは確信を持って言える!)

恭介「………立華。俺にはお前の想いを否定出来ない」

恭介「みんなが新しい人生を送れるように、一人でがんばり続けてきたお前の在り方を正しいと思う」

立華「………棗くん」

恭介「でもそれは…、『岩沢』にとって正しいものだとは、どうしても思えない…!」

立華「岩沢さんにとって…?」

恭介「あいつは言ってたんだ…。もっと歌いたい、もっと自分の想いを届けたいって!」

恭介「あいつがどんな生前を生きてきたのか俺は知ってる!」

恭介「その希望を見出すまで、どれだけ悩み迷ったかもわかる!」

恭介「だってあいつは…、本当に音楽が大好きだから!」

恭介「その気持ちはあいつだけのものだ!でも生まれ変われば、それはもう岩沢の人生じゃない!」

恭介「音楽を愛しているのも、もっと歌いたいと思ってるのも、もっと自分の想いを届けたいと思ってるのも…!」

恭介「誰にも託せない…!誰にも奪えない…!」

恭介「今、ここに生きている岩沢のものなんだ!!」

立華「……………」

恭介「だから俺は岩沢を消させない!今、消えたら、あいつは自分の希望を置き去りにすることになる…!」

恭介「それだけは、絶対に正しいとは思えないんだよ!!」

恭介(ただ振り絞るように叫ぶ。次から次へと言葉が溢れてくる)

恭介(みっともない事を言っているのかもしれない)

恭介(それはかつての俺が選んだ道を、否定しているのと同じなんだから)

恭介(でも…!それでも…!)

立華「…それで、岩沢さんをこの世界に留まらせてどうするの?」

立華「棗くんの言ってることはただの我侭よ」

立華「そうして誰も消させないまま、あなたはこの世界で何をするつもりなの?」

恭介「………誰も消させない!みんな、今の自分のままで…、全員揃ったままで…」

恭介「俺が必ず、みんなを救ってみせる!!」

立華「みんなを救う…!?」

恭介「ああ、それがこの世界での俺の戦い、俺の為すべきことだ…!」

恭介「この世界の秘密を暴く…!そして必ず、みんなの魂を救う…!」

恭介「我侭だろうが、傲慢だろうが、それが俺の選ぶ道だ!!」

恭介(俺は抗う…!最後の最後まで…!)

恭介(俺だって本当は諦めたくなかった…!)

恭介(どうしようもないと知っていたから、あの世界を創ったのは俺たちだったから…)

恭介(必死に気持ちを押さえ込んで、あるがままの現実を受け入れようとした)

恭介(でも、ここはそうじゃない…!)

恭介(俺が創った世界じゃない以上、抗う余地がある)

恭介(どれだけ小さい希望だろうと、それを必ず見つけ出して、辿り着いてみせる!)

恭介「そして立華、お前もだ…」

立華「あたし…?」

恭介「お前にもこの世界に留まり続ける理由があるんだろう?」

恭介「だがお前が一人で戦い続ける必要なんてない」

恭介「俺たちみんなで、抗い、戦うんだ」

恭介「その先の道は、必ず、俺が示してみせる…!」

立華「……………」

恭介「だから、俺の手を取ってくれ。立華…!!」

立華「……………」

立華「あたしは……」

~Iwasawa Side~

岩沢(歌を歌う、想いを届ける)

岩沢(あたしの歌を、みんなが聞いてくれる)

泣いてる君こそ

孤独な君こそ

正しいよ

人間らしいよ

恭介『もう一度言うぞ、岩沢。お前の人生は…何一つ間違っていない!』

恭介『志半ばだったとしても、辛い目にあったとしても』

恭介『お前は自分の想いを貫いたんだ』

岩沢(そうだな、棗…。お前の言う通りだ)

岩沢(どうしてあたしは、こんな大事な事を見失っていたんだろう)

岩沢(これが……あたしの人生なんだ)

岩沢(こうして歌い続けていくことが、これが生まれてきた意味なんだ)

岩沢(私が救われたようにこうして誰かを救っていくんだ)

岩沢(やっと……やっと、見つけた)

岩沢(ああ、なんて幸せで、気持ちがいいんだろう…)

岩沢(この場所に、あいつがいればもっと気持ち良かったのかな…)

岩沢(今のこの歌を…あいつにも聞いて欲しかったな)

落した涙がこう言うよ

こんなにも美しい嘘じゃない

本当の僕らを

岩沢(今まであたしを支えてくれた戦線のみんなに)

岩沢(生んでくれた両親に)

岩沢(一緒に音楽をやってくれたガルデモのみんなに)

岩沢(そして、あいつに…)

ありがとう

岩沢(今の気持ちの全てを、歌に込めて、そのフレーズを口にした)

岩沢(そして、最後の間奏を弾き終える…)

岩沢(これで…、あたしは、やっと…)

恭介「岩沢ぁーーーーーっ!!!」

ガンっ、ゴトンっ

岩沢「えっ…!?」

岩沢(肩に掛けていたギターが、何故か床に落ちていた)

岩沢(ストラップが切れたのか…?いや、それよりも…)

岩沢(棗の声が聞こえた…!今、一番、聞きたかったあいつの声が…)

岩沢(ここにいないはずの、あいつの声が…!)

岩沢「棗…!?どこだ、どこに…」

岩沢「っ!!」

岩沢(急になにかに、包まれたような衝撃があった)

岩沢(あれ…、あたしは今…)

岩沢(抱きしめられて…いるのか…?)

恭介「消えるな…、岩沢…!!」

岩沢「棗…?」

岩沢(あたしはどうやら、棗に抱きしめられているらしい…)

岩沢(一体なにがどうなってるんだろう…、なんでいないはずの棗がここにいて…)

岩沢(しかも消えるなって…)

恭介「お前はまだ、この世界に必要なんだ…!」

恭介「ここに集まった観客の全員も…」

恭介「戦線のみんなも…」

恭介「ガルデモのみんなも…」

恭介「俺も…!」

恭介「みんながお前と、お前の歌を必要してるんだ!!」

岩沢「あたしが…、必要…?」

恭介「ああ、だからまだ消えないでくれ…!」

恭介「俺たちの為に、この世界に留まってくれ…!」

岩沢(より強く抱きしめられる。痛いくらいに、なのにそれが…)

岩沢(例えようもないほどに嬉しかった)

岩沢(………あたしは消えようとしていたのか)

岩沢(自分一人だけ、気持ちよくなって、みんなを置いて行こうとしてたのか)

岩沢(それは…、駄目だな)

岩沢(馬鹿だな、あたしは…。また、大切なことを見失ってたのか)

岩沢(あたしはみんなに支えられて、ここまで歌い続けてきたんだから)

岩沢(消える時は、みんなと一緒じゃないとな…)

岩沢(だからここまで来たのか、棗?)

岩沢(あたしを消させない為に、また走ってきたんだな、お前は…)

岩沢「ふふっ。やっぱりお前エスパーなんじゃないのか?」

岩沢(いつもそうだ。あたしの心を察して、来るんじゃないかとか、声が聞きたいと思ったら)

岩沢(こうして駆けつけてくれる)

恭介「んなわけねえだろ…」

岩沢「そっか。じゃあ余計嬉しいよ」

岩沢(お前はそれだけ、あたしの事を考えてくれるんだろ?)

岩沢(少しくらい自惚れてもいいよな?)

岩沢(そんな風に、誰かから想われることを実感するなんて、初めてのことかもしれないんだ)

岩沢(だから…)

岩沢「わかったよ、棗。みんなの為に、お前の為に、あたしは最後まで残るよ」

岩沢(いつか来るであろう終わり。それがいつなのか、どんな形になるかはわからないけど…)

岩沢(その時が来るまで、あたしはこの世界に留まろう)

岩沢(この閉ざされたステージから、歌を歌い続けよう)

岩沢(戦い続けるみんなの為に、お前の為に)

岩沢(希望照らす光の歌を、その歌を)

岩沢(棗の腕の中で、本当に満ち足りた気持ちで、あたしはそう決意した)

~Kanade Side~

かなで(ステージの上、岩沢さんを止めるように、抱きしめている棗くん)

かなで(岩沢さんは消えなかった)

かなで(それは、あたしがこの世界で続けていたこと反すること)

かなで(なのに、なぜだろう)

かなで(あたしも消えなくて良かったと思ってしまっている)

かなで(あたしも、岩沢さんの歌が好きだったっていうのもあるけど)

かなで(棗くんのしたことは、正しいんだって、そう思えてしまう)

かなで(誰も消させることなく、みんなを救う)

かなで(それは、本当に夢みたいな理想のはずなのに、棗くんならそれを叶えてしまいそうな気がする)

かなで(だから、あたしは…)

かなで『あたしは棗くんとは戦えないわ』

恭介『立華…』

かなで『戦線の人たちには、戦う相手が』

かなで『まだ、「天使」が必要でしょう?』

恭介『!!』

恭介『立華…、まさかお前、だから俺から距離を取ろうとしたのか…?』

かなで『……………』

恭介『バカ野郎。お前、不器用すぎんだろ…』

かなで『…知ってる』

かなで(自覚はある。でも、あたしにはこういう風にしか振る舞えない)

かなで(棗くんみたいに、真っ直ぐ人と向き合うのは、未だ上手く出来ないから…)

かなで『でも、それはあたしにしか出来ないことだから』

かなで『あなたのために、あの人たちのために』

かなで『みんなのために、あたしができること』

かなで(それで良いんだって思う)

かなで(あたしは離れた場所から、天使として、みんなのためにできることをしよう)

かなで(だから、棗くんの手は…)

ギュッ

かなで『えっ…?』

かなで(棗くんから手を握られた…)

かなで(あたしは棗くんから差し伸べられた手を、掴もうとしなかったのに…)

恭介『今はまだ、掴むことしか出来ない…』

恭介『お前の手を、引いてやることは出来ない…』

恭介『それでも、今日から俺は、お前の味方だ』

恭介『どんなに遠い距離でも、困難な道でも、お前を一人きりにはしない』

恭介『必ずお前を、リトルバスターズに引き入れるからな』

恭介『約束だ…!』

かなで(本当に不思議な人)

かなで(でも、本当に真っ直ぐな人)

かなで(棗くんとなら、出来るかもしれない)

かなで(いつかみんなで、心から笑い合える日が来るその時まで)

かなで(あたしは天使でいる)

かなで(そして、その時が来たら…)

かなで(あたしも…)

かなで(棗くん。あたしは…)

かなで(あなたを信じるわ)

今日は以上です
今週は色々と思わぬトラブルやアクシデントが多かった為、本当に遅れてしまいました

また色々と四苦八苦した回でしたが、無事岩沢さん救済成功です

そしてかなでとも和解出来ました

ネタバラシをすると岩沢救済条件は

① 天使エリア侵入作戦のオペレーション説明までに、My Songを聞く

② ゆりからデーモンピクニックで、かなでとの間に何があったのかを聞き、かなでを説得する

というものでした

ですので実はギリギリセーフでした
前回の自由行動回で、残り2回になった時はかなりドキドキしました

余談ですが、斉藤ルートを通っていると、そもそもかなでと対立しないので
岩沢の救済条件が緩くなるというネタがあったりしました

明日20時くらいから再開します
次回でEpisode.4終了
最後に例の安価の予定です

一応補足すると

誰が選ばれてもちゃん成立するように予め脚本練ってるのでその辺りは気になさらなくても大丈夫です
当然、選ばれたキャラによって色々と内容を調整します
(正直、この作業とネタを考えるのに一番時間を費やします)

ですので、好きなキャラを選んで大丈夫です

~Kyosuke Side~

ゆり「みんな。色々あったけど、天使エリア侵入作戦お疲れ様」

ゆり「当初の狙い通り、あたしたち実働部隊は天使エリアに侵入し、天使のコンピューターから情報を得ることに成功したわ」

恭介(そうか。俺のいない間に、無事立華の部屋にまで侵入したのか)

恭介(いや…、待てよ。そもそも立華が天使じゃないのはもう確定事項だ)

恭介(となると、ゆりっぺが得た情報ってのはまず間違いなく、当初の本命としてた神に関する情報じゃない)

恭介(立華本人に関する情報だとみて間違いないな)

恭介(一体、どんな情報を掴んだ?ゆりっぺは…)

沙耶「その得た情報ってのはなんなの、ゆり?」

恭介(俺と同じ思考に至ったのか、沙耶が先に質問する)

ゆり「それは…、まだ言えないわ」

藤巻「なんだよ、水くせえじゃねえか、ゆりっぺ」

ゆり「確証が無いのよ。改めて考えが纏まったら、ちゃんとみんなに話すわ」

恭介(やはり、立華に関する情報か)

恭介(頭の良いゆりっぺのことだ。立華が天使じゃないと、確証を得るなにかを掴んだのかもしれない)

恭介(だからこそ、あえてみんなに伝えず伏せているって考えるのが自然だな)

松下「そういうことなら納得するしかないな」

真人「そっちでなにがあったのかは気になるが、俺たちにわかるようなことでも無さそうだしな」

高松「筋肉に関することなら、私たちに理解出来ないことは無いのですが…!」

TK「The Oke be allowed if dance!!」

大山「それなら僕はボケ担当だね!あらゆる前フリに対応し、周りのみんなのレベルに合わせたボケを用意してみせるよ!」

日向「お前はいつの間にそんな自信家キャラになったんだよっ!」

日向「純粋な大山を返せぇ!」

大山「はははは、何言ってるのさ日向くん!これが僕の真のテンションってやつだよ!」

大山「もういつだって絶好調さ!」

ゆり「いい加減慣れなさい日向くん。大山くんは完全にあっち側の世界に行っちゃったのよ…」

日向「みたいだな…。ってか考えてみりゃ昔からわりとそんな前兆あったもんな…」

椎名「それはつまり、ボケとツッコミの境界か?」

ゆり「いえ違うわ、椎名さん。アホとまともの境界よ!」

大山「ええーーーっ!?そんな意味で言ってたのーーーっ!?」

大山「酷いよっ!そんな雑な扱い方は、野田くんと藤巻くんだけにしてよっ!」

野・藤「「どういう意味だ!!大山ぁ!?」」

クド「あの~、ずっと気になってたんですが…」

クド「恭介さんはいつの間にミイラ男になってしまったんですかーっ!?」

恭介(ずっとスルーされていたが、ようやく能美が俺の今の惨状に触れてくれた)

恭介(例えるならまさに、ミイラ男。真人と謙吾の処置で包帯でグルグル巻きにされた状態だ…)

謙吾「とうとう、それに触れるか…、能美」

来ヶ谷「あえて放置するのも面白いと思ったんだが」

竹山「いや、一人だけ異質すぎて怖いですよ…」

日向「まあ、俺たちの知らない間に、触れるのも恐ろしいなにかがあったことは想像つくが…」

ゆり「あたしは先に、遊佐さんの報告でなにがあったかは知ってるんだけどね…」

遊佐「はい。まさに惨劇としか呼べない恐ろしい事態でした」

野田「な、なにがあったんだ、恭介…!?」

関根「それはあっしから説明しましょう…!」

恭介(聞かれたのは俺なのに、横からいきなり関根がしゃしゃり出てくる)

恭介(そう。今回は作戦内容が内容だっただけに、ガルデモも作戦報告会に参加してるんだが…)

恭介「関根。解説してくれるのはいいが、お前またキャラ変わってないか?」

関根「みなさんが天使エリアに侵入している最中…」

恭介(スルーしやがった…!)

関根「ライブ会場には『デーモン』…、まさに悪魔が現れたんですよーーっ!!」

謙・大「「な、なんだってーーー!?」」

恭介(謙吾と大山が息ピッタリでそう合わせる)

真人「ノリノリだな…、お前ら」

日向「ってか現場に居合わせてたんだろ?お前ら二人…」

ゆり「ともかく、天使と戦うあたしたちの中には、まさに本物の悪魔が潜んでたってわけよ…」

クド「えっ!?悪魔って戦線のメンバーの中にいるんですか!?」

高松「はい。ゆりっぺさんが悪魔のような人なら、あれはまさに本物の悪魔でした…」

TK「Horrible devil…」

松下「俺でも足がすくむ思いだったぞ…」

沙耶「スパイであるあたしも、あんなに恐ろしいやつは見たこと無かったわ…」

竹山「だ、誰なんですか…、その悪魔って…?」

恭介(体育館に居合わせたメンバーが、こぞって恐ろしい存在だったと語る悪魔)

恭介(そして俺をミイラ男にした張本人)

恭介(その人物へと、みんなの視線が注がれる…!)

ひさ子「………………」

ひさ子「な、なあ、あたしそんなに怖かったか…?」

入江「怖かったですよーーっ!!」

関根「まるでどこぞの決戦兵器が、暴走モードに入った時の雄叫び上げてたじゃないですかーーっ!!」

ゆり「ひくわね…」

岩沢「ごめん、ひさ子。正直あたしもちょっとひいた…」

ひさ子「ええぇぇぇ…。う、嘘だろ、お前ら調子に乗って話盛ってるだけだろ…?」

遊佐「盛ってません。あの場にいた全員が証人です」

謙吾「集まっていた教師や生徒たちが、我先にと逃げ出したくらいだったからな…」

真人「俺の筋肉が震えるくらいだったぜ」

藤巻「正直、俺たちも逃げ出したかったくらいだ…」

大山「まさに生き地獄を見たかのような気分だったよ…!」

恭介「ぶっちゃけ俺も死を意識したくらいだからな…」

椎名「この世界でそれを言うのは相当だな」

恭介(ってかギルド降下作戦といい、デーモンピクニックといい…)

恭介(なんかもう、毎度毎度酷い目に合ってるような気がするぜ…)

恭介(この世界じゃなきゃマジで死んでるかもな…)

来ヶ谷「ふむ。聞いた話じゃひさ子君が暴走し、恭介氏に襲いかかったようだが…」

来ヶ谷「なぜ恭介氏は、そんなにひさ子君の怒りを買ってしまったんだ?」

恭介「あー…、それはな…」

恭介(既に体育館にいた組は知ってることだが、よけいに話がややこしくなりそうだし、正直知られたくない…)

恭介(が…)

関根「フッフッフ。ご要望とあらば再現してさしあげましょう!」

関根「さあやるぜ!みゆきちさんよぉ!」

入江「えっ…、ええっ!?やるの、しおりん!?」

恭介「っておい、まさか…!?」

恭介(関根がわざわざ一度部屋から出ていくと、走りながら再度部屋に戻ってくる)

恭介(そして…)

関根「岩沢ぁーーーーーっ!!!」

入江「な、棗…!?」

ガバッ

関根「消えるな、岩沢…」

入江「棗…、お前どうしてここに…?」

関根「お前が好きだぁーー!!お前が欲しいーー!!」

関根「俺の為に、この世界に残ってくれーー!!」

入江「棗…」

入江「はい♡」

恭介(結局ノリノリな入江と一緒に、大幅に脚色加えてあの時の再現をしやがった…!)

謙吾「えんだああああああああ!!」

大山「いやあああああああああ!!」

TK「♪will always love you!!♪」

恭介「茶番だあああああっ!!」

真人「うわぁっ!?恭介が暴走したっ!暴徒と化したっ!」

ひさ子「関根ぇ!!入江ぇーーー!!」

関根「ひえええええっ!!」

入江「きゃああああっ!!」

藤巻「ひさ子までまた暴走しやがったぜっ!」

ドカーンっバリーンっズガガシャドッカーン

ゆり「ちょっ!?本部が壊れるでしょ!?」

ゆり「やめろっ!やめなさいって!こらぁーーーっ!!」

椎名「あさはかなり」

ー恭介・ひさ子暴走終了後ー

クド「いいですか、みなさん。面白がって人の恋路をネタにしてからかっちゃいけませんよ!」

関根「はい…」

入江「すみません…」

謙吾「反省する…」

大山「調子に乗りすぎました…」

TK「I'm sorry…」

恭介(正座させられた5人が、能美の前に並んで説教を受けている)

ゆり「納得いかないわ…、なんであたしが言っても全然聞かないくせに、能美さんなら素直に聞いてるのよ…」

沙耶「まあまあ…、ゆり」

遊佐「人には向き、不向きというものがありますから」

恭介(ゆりっぺが説教しても全然収拾つかなかったのに、能美が変わったら一発でこれだ)

椎名「クドはいいお母さんになりそうだな」

ゆり「ちょっ!やめてよ、椎名さん!」

ゆり「それじゃあたしが、いいお母さんになれないみたいじゃない!」

来ヶ谷「どのみち相手がいないことには、お母さんにはなれないぞ。ゆり君」

野田「ゆりっぺがお母さんになりたいなら、俺がいつでもお父さんに…!」

ゆり「除名するわよ…?」ギロッ

野田「すまん、ゆりっぺ…!それだけはご勘弁を…!!」

真人「野田の奴も懲りねえな」

松下「かれこれ数十年アプローチし続けてあれだからな」

高松「たとえフラグの建たない恋であろうと、私たちバカルテットはいつも野田くんの味方です!」

日向「で、見込みない恋を追いかけてる野田は置いとくとして…」

野田「置いておくなぁ!!」

日向「結局、恭介と岩沢は付き合い始めたのか?」

岩沢「いや、それなんだけど…」

岩沢「あたしと棗は別に付き合ってないぞ」

全員「「「ええーーーっ!?」」」

恭介(岩沢の発言に本部が揺れる)

ゆり「えっ、嘘、違うの!?さっきみたいな感じで告白したんじゃないの!?」

恭介「関根と入江の茶番のことを言ってるなら訂正しておくが…」

恭介「そもそも俺は告白なんてしてないからな?」

関根「はあああああっ!?」

関根「冗談キツイですよ、棗先輩!!なんであの状況で告白しないんですかーー!?」

入江「映画とかドラマも真っ青なくらい、すごい絵になってたシーンだったのにぃ!」

沙耶「思いっきり岩沢さんのこと抱きしめてたじゃない!恭介くん!」

TK「Oh…!!飛んでいって抱きしめてやれ…!」

恭介「あれは…、そうしないと岩沢が消えると思ったからだよ」

岩沢「っていうより、多分一度消えかけたんだろうな」

岩沢「ストラップが切れてたわけでもないのに、肩に掛けてたギターが床に落ちたし」

遊佐「肯定します。わたしはかなり近い位置にいましたが、あの時岩沢さんは確かに消えかけていました」

真人「あれ、見間違いじゃなかったのかよ。俺もなんかあの時、岩沢が消えかけてたように見えたぜ」

大山「あっ…、僕も僕も!」

ひさ子「あたしもなんか、すげえ嫌な予感がしてたけど…」

ひさ子「マジだったのか…」

ゆり「天使に消される以外にも、この世界に留まる理由が無くなれば消える…」

ゆり「それが神の設計したこの世界の仕組みよ」

高松「岩沢さんは、光村と同じ運命を辿るところだったんですね…」

日向「高松…」

恭介(光村というのは、過去に消えた戦線のメンバーなんだろうか…?)

恭介(そういえば戦い続けていく中で、何人か消えたメンバーもいたとか言ってたな)

恭介(その中には、立華が未練を断ち切ってやったやつもいたのかもしれないな…)

関根「いやいやいや、それでもあそこまで行ったら引っつけよーー!!」

関根「めちゃくちゃ良い雰囲気だったじゃねえかよーー!!」

岩沢「あのな、関根。棗はあたしを消させない為に、抱きしめてくれたんだぞ?」

関根「でも抱きしめられても良かったってことじゃないですかーーっ!!」

関根「脈ありなんだからさっさと引っつけば良いじゃないですかーーっ!!」

恭介「それこそむちゃくちゃ言うなっつの…」

恭介(床に転がってぐるぐる回転しながら駄々をこねてやがる…)

竹山「まるで子どもですね」

藤巻「おもちゃコーナーの前で泣き叫んでる子どもだな」

遊佐「みっともないです」

真人「でも、関根のやつをフォローするわけじゃねえけどよ」

真人「あのシーン見た奴は、そういう風に勘違いするだろ」

謙吾「同感だ。やはり、恭介は恭介だったということか…」

来ヶ谷「君にはがっかりだよ、恭介氏」

沙耶「そういうことなら、祝福してあげたのに…。恭介くんときたら…」

クド「ドンマイです!恭介さん!」

恭介「なんでそんなに責められてるんだーーっ!?俺が悪いのかよ!?」

関根「お前が悪いーーっ!!お・ま・え・は・ア・ホ・かーーっ!!」

恭介(そのギャグ俺たちの世代でわかるやついるのか?)

ひさ子「関根ぇ…、てめえマジでいい加減にしろよ…?」ゴゴゴゴゴ…

関根「ひいっ!お、落ち着いて下さい!ひさ子先輩!」

関根「ほら、まだ報告会の途中ですし…、ねっ!!」

ゆり「ああ、もう話も終わったし、解散していいわよ」

ゆり「はい、解散!」

関根「ええーーーっ!?いや、ちょっと待ってくださいよ!?」

関根「今、解散されたらやばいですって…!!」

ガシッ

ひさ子「さあ関根…?二人きりで少しお話しようか…?」ゴゴゴゴゴ…

関根「あわわわわ…、みゆきち!!ヘルプ、助けてーー!!」

入江「ごめん…、しおりん。でも大丈夫、死んでも復活するから」

関根「ひどい!そんな問題じゃない!岩沢せんぱーい!?」

岩沢「反省しろ、関根」

関根「棗せんばーい!!調子に乗ってすびばぜんでしだーー!!」

関根「だから助けてぇ…!」

恭介(半泣きになりながら、助けを求められる)

恭介(確かにこのままひさ子に連行されると、ゲームならZ指定ものの暴力、出血表現が起きそうな気がするな…)

恭介(可哀想だから助けてやるか)

ゆり「あっ、棗くんは残ってね」

ゆり「ちょっと聞きたいことがあるから」

恭介(と思ったらゆりっぺから居残りの指示が出る)

恭介「ああ、あの時のことか。そういやちゃんと説明しとかないとな」

ゆり「そういうことよ。という訳で、いい加減うるさいからひさ子さん、殺るなら殺るでさっさと連行しちゃって♪」

関根「『やる』が、文字通り『殺る』になっちゃってるじゃないですかーー!!」

ひさ子「つべこべ言うな!おら、リーダーの許可も下りた、さっさと行くぞ!」

ズルズルズルズル…

関根「姉御~!!許してえええぇぇぇ…」

恭介(そのままひさ子に引きずられて、関根はどこかに旅立ってしまった…)

来ヶ谷「今の姉御とは、もしや私のことだったのか?」

謙吾「いや、ひさ子のことを姉御と呼んだだけだろう」

謙吾「ひさ子も姐さん気質だからな」

クド「なんだか関根さんを見てると、三枝さんを思い出しますね」

真人「ああ…、騒がしいとこがそっくりだぜ」

日向「んじゃ、俺たちは飯でも行くか!」

藤巻「そういえば夕食まだだったな」

松下「今日も俺は肉うどんを食うぞーーっ!!」

岩沢「あたしも当然、うどんだな!」

クド「私はゴーヤチャンプルーにします!」

真人「げっ…、ゴーヤってあの苦いのか…」

クド「井ノ原さん、好き嫌いをしていては大きくなれませんよ」

クド「いつもお肉ばかり食べていては、栄養のバランスが偏ってしまってですね…」

野田「真人にそれを言っても説得力がまるで無いな…」

沙耶「ってかゴーヤチャンプルーまであるとか、ここの学食ほんと凄いわね」

恭介(そんな感じの雑談をしながら、他のみんなは本部を出て食堂へと向かった)

恭介(残ったのは俺と、ゆりっぺの二人だけだ)

ゆり「さて、あたしが何を聞きたいか、わかってるわね?」

恭介「ああ。俺が頭痛で倒れた時のことだろ?」

恭介「何かあったらゆりっぺに話すって約束したしな」

ゆり「わかってるならいいのよ。さあ、聞かせてちょうだい」

恭介(ゆりっぺが真剣な瞳を俺に向ける)

恭介(俺はあの時のことを全て話した)

恭介(白い世界のこと、謎の声のこと、そして岩沢が消える映像のこと…)

ゆり「なるほどね…、とてもただの夢で片付けられるものじゃないわね…」

恭介(顎のところで指を汲むいつものポーズで、ゆりっぺが思案する)

ゆり「デーモン・ピクニックといい、今回といい…」

ゆり「どうやら棗くんは、完全に神の奴に目を付けられたみたいね」

ゆり「そして、その声も神のものだと思ってまず間違いないわ」

恭介「ああ。俺もそう思う」

恭介「そして気になるのは、そいつが言った『試練』という言葉だ」

ゆり「試練、ね」

ゆり「これはあたしの推測なんだけど…」

ゆり「棗くんには神が興味を持つ、なんらかの要因があった」

ゆり「だから、あなたという存在を見極める為に、試練と称して直接何かを仕掛けてきてるんだと思うわ」

恭介「だろうな。最初は俺の思考力を低下させた」

恭介「そして、俺がそれに気づき、神が俺たちに干渉出来る能力を持つと推理した後のオペレーション…」

ゆり「デーモン・ピクニックで、チルーシャと仮面を使い操った」

ゆり「けど、棗くんは無意識下で神の洗脳を打ち破った」

ゆり「そして今回は…、岩沢さんね」

恭介「俺が見せられた映像から察するに、本来の運命では、岩沢はライブの後に消えてしまうはずだったんだろう」

ゆり「事実、複数人のメンバーが、岩沢さんが消えかけているのを目撃しているものね」

ゆり「棗くんに、岩沢さんを救うことが出来るのかを試したってところかしら…?」

恭介「試しているのか、もしくは遊ばれているのかは定かじゃないが、二つほど疑問がある」

ゆり「なぜ神は棗くんを選んだのか?そしてなぜ、棗くんを試そうとしているのか?という二点ね」

恭介「ああ、そのとおりだ」

恭介(さすがにゆりっぺは頭の回転が早い。それでこそ俺たちのリーダーだぜ)

ゆり「まず、一つ目の疑問。なぜ神は棗くんに興味を持ったのか?という点だけど」

ゆり「やっぱり、推理によって神の持つ能力に気付いた、というのが関係してるんじゃないかしら」

ゆり「悔しいけど、あたしたちは数十年この世界にいても、神の情報についてはろくに得られてなかったもの」

ゆり「棗くんの頭脳に興味を持った、という可能性は大いに有り得るわ」

恭介(確かにそれもあるだろう。実際、それ以降から直接動き始めてるわけだからな)

恭介(だが、そもそものきっかけはそれじゃないと思う)

恭介(おそらく神は…)

恭介(俺たちも世界を創ったことがあることに気づいている…!)

恭介(この世界の創造主としては、それはかなり興味を惹かれる事実だったはずだ)

恭介(だから、俺に目をつけた)

恭介(あの世界を創った時の中心であった俺に)

恭介(そして俺が世界を暴くと宣言した時に、思考力を低下させ…)

恭介(後は今、ゆりっぺと話したとおりだろう)

ゆり「どうかしら、棗くん。他に思い当たる点はある?」

恭介「いや…、俺もそれがきっかけだったと思う」

恭介「それ以降、神は直接動き始めたんだからな」

恭介(約束した以上、ゆりっぺに隠しごとをするのは気が引ける)

恭介(だが、俺たちが世界を創ったことがあることをゆりっぺに話せば…)

恭介(今度はゆりっぺも神に狙われる可能性が出てくる…)

恭介(なんせ、今の俺たちのリーダーはゆりっぺだからだ)

恭介(ゆりっぺだからこそ、大勢の戦線メンバーを統率出来ている)

恭介(絶対にゆりっぺを失うわけにはいかない)

恭介(いやそれ以前に、仲間を危険に晒すような真似はしたくない…!)

恭介(神に狙われるのは俺一人で充分だ)

ゆり「じゃあ二点目、なぜ神は棗くんを試そうとしているのか?っていう点だけど…」

ゆり「正直これに関しては、ろくに見当がつかないわ」

ゆり「デーモン・ピクニックの時は、棗くんを洗脳する事によって」

ゆり「あたしたちを弄ぶのが目的かと思ったけど」

恭介「今回はわざわざ、俺に岩沢を助けさせようとしている」

ゆり「直接動いてきたのがまだ二回しか無いから何とも言えないけど…」

ゆり「この二つだけ見ると、真逆の目的にしか見えないのよね」

恭介「そうだな…。流石に俺も、神が何を狙っているのかはまだわからない」

恭介「あの世界に招かれた時、神にそれを問いかけたが、返事は無かったしな」

恭介(本当に神は何を狙っているんだ…?この世界の秘密もそうだが、謎は深まるばかりだな…)

ゆり「ふぅ…。現在の情報じゃ、ここで手詰まりみたいね…」

ゆり「まだ情報が不足しているわ」

恭介「だが、これ以降も神が何かを仕掛けてくる可能性は高いだろうな」

ゆり「そうね。その時は臨機応変に対応していくしかなさそうだけど…」

ゆり「なにはともあれ、岩沢さんを失わないで済んだのは大きいわ」

ゆり「彼女を失えば、今まで通りに陽動を行うのは困難になっていたでしょうから」

ゆり「棗くん、あなたの判断は正しかった」

ゆり「他の戦線メンバーを代表して、礼を言うわ」

恭介(この台詞だけだと、まるで陽動に支障が出るから岩沢を失わないで良かった、と言っているように聞こえるな)

恭介(だが…)

ゆり『彼はあたしたちと同じ、神に抗う信念の持ち主だった…。なのにあたしの判断ミスで、彼は天使に消されたのよ…!』

ゆり『あなたが「みんなで一緒にゴールすることに意味がある」って言ったんでしょ!!』

ゆり『ここまで来たんだから、自分の言葉くらいしっかり守りなさいよ!!』

ゆり『さっきの歌…、陽動には向かないだろうけど、あたしも良い曲だと思ったって、そう伝えておいて』

恭介(普段はあまり態度に出そうとはしないが、ゆりっぺも本当はみんなを気にかけ、とても大切に思っている)

恭介(そんなゆりっぺだからこそ、みんなが慕い、ここまで戦線は大きな組織になったんだろう)

恭介(でもだからこそ、ゆりっぺは普段から『リーダーとしてのゆりっぺ』であることを心掛けているように見える)

恭介(そんなゆりっぺの為に、俺に出来ることは無いんだろうか…?)

恭介(いつも一人で背負おうとし、涙一つ見せずに戦い続ける、俺たちのリーダーの為に…)

ゆり「ただし…。棗くん、あなたはあたしの静止を振り切り、任務を離脱し、独断で岩沢さんを助けた」

ゆり「つまり、命令違反よ」

恭介「………………」

ゆり「今回は上手く行ったかもしれない。でも、次もこうだとは限らない」

ゆり「だから…」

恭介(覚悟はしていたことだ…。ゆりっぺの言っていることは正しい)

恭介(俺にはこれから、なんらかの罰が下されるんだろう)

恭介(俺はただ静かに、その先の言葉を待った)

ゆり「次からは、短くてもいいからあたしに事情を説明すること」

ゆり「そして、あたしの命令を聞いてから行動に移すこと」

ゆり「いいわね?」

恭介「えっ…?」

恭介(てっきり罰を受けるのかと思ったらそうじゃなかった)

恭介(いや、それどころか、その言葉はまるで…)

ゆり「一応言っておくけど勘違いしないこと」

ゆり「別にあなたを特別扱いするわけでも、独断行動を許すわけでもないわ」

ゆり「でもきっと、これから神と戦う上で、あなたは切り札となり得る存在」

ゆり「あなたの思うままに行動させたほうが、結果は良くなると思うのよ」

恭介「………そこまで言ってくれるのは嬉しいが、根拠はなんだ?」

恭介「それにやっぱり周りからは、特別扱いされてるように見えるんじゃないか?」

ゆり「根拠は…、『勘』よ」

恭介「勘!?」

ゆり「ええ、あたしはそれだけを信じて何十年と戦ってきた」

ゆり「そして、これだけ戦線を大きくしてみせた」

ゆり「それだけでも、あたしの勘は鋭いってことになるわ」

ゆり「今回も自分の勘を信じて、棗くんを信じるだけよ!」

恭介(表情から察するに、どうやら冗談ではなく大マジのようだ)

恭介「………ふっふふ!あっははははは!」

ゆり「ちょっと!?なんでそこで笑うのよ、失礼ね!」

恭介「いや、悪い悪い。さすがに予想外すぎてな」

恭介(あれだけ頭が回るくせに、肝心なとこは勘任せか)

恭介(しかもそれで今までなんとかしてきて、みんなからも信頼されてるなんてな)

恭介(そうそう出来ることじゃないぜ。しかもそういうのはすげえ俺好みなやり方だ)

恭介「やっぱお前はすげえよ、安心してこの身を預けれるぜ」

ゆり「なんか馬鹿にされてるみたいで腑に落ちないわね…」

恭介「いや、本気で信頼してるぜ。お前は頼りになるリーダーだってな!」

ゆり「本当に頼りになるリーダーだといいんだけど…」

恭介(そこで姿勢を変え、背もたれに体を預けるようにして、話を続けた)

ゆり「でもね棗くん。組織っていうのは色々複雑なものなのよ」

ゆり「あなたに独断行動を許しても、幹部のみんなはまあ納得してくれるでしょうけど」

ゆり「下っ端のメンバー達もそうだとは限らない」

ゆり「棗くんが来てから、幹部のみんなが馬鹿になってる、なんて噂も流れているみたいだし」

恭介(その噂はユイからも聞いたな。ゆりっぺの耳にも届いていたのか…)

ゆり「そうしていれば、不平不満がどんどん募っていきかねない」

ゆり「そのうち、棗くんを敵視するメンバーだって現れるかもしれない」

ゆり「こういうところが、あなたの創った元のリトルバスターズとは決定的に異なる点ね…」

恭介(当然だろうな…。俺たちは年齢や性別は違えど、みんな立場の同じ友達だったんだから)

恭介(だが、リトルバスターズ戦線はそうじゃない)

恭介(戦うための組織だ。いかに俺たちが個人として仲良くなっても、そういう問題はついて回る)

恭介(俺としたことがあさはかだったな…。少し考えればわかることなのに)

恭介(もしかしたら、俺が好き勝手に動いている間に…)

恭介(ゆりっぺに守られたり、迷惑を掛けていたことがあったのかもしれない…)

ゆり「でも、そのために『あたし』がいるのよ」

恭介「えっ…?」

ゆり「棗くんが単独で動きたい事態になったとしても」

ゆり「あたしの命令で単独行動をおこなったということにすれば、体裁は保てる」

ゆり「不平不満も、棗くんではなくあたしに集まるはずよ」

恭介「ゆりっぺ…!?」

恭介(お前は…、本当に全部一人で背負うつもりなのか…?)

恭介(リーダーとしての責任だけでなく、俺たちの問題まで…)

ゆり「だから安心して、棗くん」

ゆり「なにがあっても、あなたは…」

ゆり「あたしが守るわ」

Episode:4 「希望の歌」 END

ー恭介の称号に「希望の歌」が追加されましたー

沙耶「そう、ゆりがそんなことをね…」

恭介(一夜明けて、俺はみんなに昨日の俺に何が起きたか)

恭介(そして、ゆりっぺが語ったことを話していた)

真人「けどよ、それってつまり恭介の単独行動を認めるってことだろ?」

真人「随分寛大というか、融通がきくじゃねえか」

恭介「ああ。正直、俺としても少し意外だったな」

来ヶ谷「ふむ。私の受けていたゆり君の印象とは、少し違いがあるようだな」

来ヶ谷「二人が言うほど、頭の固い人物には見えていなかったが」

クド「私もです。とても親しみやすくて、優しい人だと思ってました」

謙吾「頭が固い、というのには語弊があるな」

謙吾「だが俺も最初は、俺たちから少し距離を置いているような印象は受けたな」

恭介(ゆりっぺの雰囲気が丸くなり始めたのは、デーモン・ピクニックあたりからだからな)

恭介(後はなんといっても、沙耶の存在が大きいんだろう)

恭介「戦線はかなり大きな組織、それも戦うための組織だ」

恭介「規模がでかくなるにつれ、当然責任や重圧も増える」

恭介「実際ギルド降下作戦の時にも、俺とゆりっぺでリーダーという存在について話したことがあるくらいだ」

恭介「ゆりっぺは、戦線のリーダーを務める上で、それに相応しい仮面をつけているのかもしれないな…」

沙耶「それはあるわね…」

沙耶「あたしはルームメイトだから知ってるけど」

沙耶「普段のゆりはどこもあたしたちと変わらない、普通の女の子だもの」

沙耶「本当はすごく優しいのよ。多分、みんなが想像してる以上にね…」

クド「なんとか出来ないんでしょうか…?」

クド「本当の自分をあまり見せられずにいるというのは、とても辛くて、悲しいことだと思います…」

来ヶ谷「そうか…。クドリャフカ君も最初は、帰国子女として色々悩んだんだったな」

来ヶ谷「しかし難しい問題だ…。組織のリーダーというものは、得てして孤独なもの」

来ヶ谷「責任も重圧も、当人にしかわからない」

来ヶ谷「誰かがその立場を変わらない限りはな」

真人「でも、ゆりっぺは自分でその立場を選んでるんだろ?」

恭介「この世界で最初に抗い始めたのが、ゆりっぺらしいからな」

謙吾「そして、途中で投げ出すような奴でもないだろう」

謙吾「神への強い復讐心が、ゆりっぺを突き動かしていることぐらいは、俺にだってわかる」

沙耶「もし…、神への復讐を果たしたら…」

沙耶「ゆりは…、どうなるのかしら?楽に、なれるのかしら…?」

恭介「それは誰にもわからない。ゆりっぺの心次第だ」

恭介「だが、なんとかしてやりたいな…」

恭介(俺は、みんなのことを救ってやりたい)

恭介(立華にも、そう誓いを立てた)

恭介(だが今の俺には、ゆりっぺの為にできる明確な手立ては無い…)

恭介(かと言って、時間が解決するような問題にも思えない)

恭介(何十年と戦い続けて、未だに神への復讐心を燃やし続けているくらいなんだから…)

ゆり『だから、あたしは抗うのよ。理不尽な現実にも、そんな運命を強いた「神」にも』

ゆり『悪いことなんてなにもしてないのに、あの日までは立派なお姉ちゃんでいられた自信もあったのに』

ゆり『守りたい全てをたった30分で奪われた…!』

ゆり『そんな理不尽なんて許せないじゃない…、神様だって絶対に許せないじゃない!』

恭介(ゆりっぺ…)

沙耶「………今のあたしたちがゆりの為に、出来ることが一つだけあるわ」

クド「本当ですか!沙耶さん!?」

沙耶「ええ…。単純なことよ」

沙耶「今までどおり、みんなで楽しく過ごして、たくさんの思い出を作る」

沙耶「それがきっと…、ゆりにとっても一番の救いになると思うの」

謙吾「楽しい、思い出か」

真人「本当にそれだけでいいのかよ?」

沙耶「あたしはね、少しだけゆりの気持ちがわかるの…」

沙耶「あまりに理不尽な事故で、あたしは命を落とした」

沙耶「認めることなんてできなかった…、ただ一度の青春を駆け抜けたかった…」

沙耶「そんなあたしの心を救ってくれたのは」

沙耶「あの世界のみんなと、理樹くんがくれた思い出だったから」

恭介「沙耶…」

沙耶「まあ、それはそれで…、また別の心残りができたから、こうしてこの世界に来ちゃったんだけどねっ!」

沙耶「あはは、あーはっはっは!」

恭介(照れ隠しのように、そう笑う沙耶)

来ヶ谷「ふっ…。だが、沙耶君の言うことはもっともだろう」

来ヶ谷「時間だけでは癒せない心の傷でも、人の優しさによって癒せるかもしれない」

クド「はい…。誰かが誰かのことを大切に想う気持ち」

クド「その気持ちが奇跡を起こすことを、私たちは知っています」

恭介「ああ、そうだな」

恭介(俺たちがあの世界を創ることができたのも)

恭介(理樹がみんなの心を救ってくれたのも)

恭介(きっとそれは、人の想いの力が引き起こす小さな奇跡だったはずだ)

恭介(理樹だって、ただみんなの心を救おうと思って行動していたわけじゃない)

恭介(ただ純粋に相手を想い、助けてあげたいと願う優しさ)

恭介(それが理樹の強さだったはずだ)

恭介(出来るんだろうか?俺にも)

恭介(俺を乗り越えていった理樹と同じことが、俺にも…)

恭介(いや、成し遂げなければならないんだ)

恭介(俺が選んだのは、そういう道なんだから)

真人「ま、難しいことはよくわからねえが」

真人「俺たちは今までどおり馬鹿やり続けて、ゆりっぺのもやもやを吹き飛ばしてやればいいんだろ?」

恭介「真人が言うと、今までの話が一言でまとまっちまうな」

謙吾「馬鹿だからな、真人は」

来ヶ谷「単純ともいうな」

真人「なんだとぉ!?」

真人「あー、そうだよ。どうせ馬鹿で単純だから、良い感じの話を台無しにしちゃいましたよ!」

真人「ごめんなさいでしたーーっ!!」

沙耶「ふふふ。別にそんなムキにならなくても良いじゃない」

沙耶「今、真人くん。良いこと言ったのに」

真人「えっ、マジかよ?俺別に今、筋肉の話はしてなかったぞ?」

謙吾「お前の良い話の基準は筋肉だけかっ!?」

クド「でも、そうですよね。もっともっと戦線のみなさんと楽しい思い出を作りたいです!」

恭介「ああ!そして、それこそ、俺たちリトルバスターズの真骨頂だぜ!」

謙吾「真人一人には任せておけん!俺ももっとボケをかましてやろう!」

真人「狙ってボケてるみたいな言い方すんじゃねえよ!」

真人「てめえのボケは天然だろうが!」

謙吾「聞き捨てならんな。よもや、俺と真人が同列だとでも思っているのか…?」

来ヶ谷「そう思っていないやつがどこにいる?」

沙耶「まあ、いないわね」

恭介「いないな」

クド「えーっと、ドンマイです…」

謙吾「茶番だあああああっ!!」

真人「急に叫ぶんじゃねえよ!馬鹿謙吾!」

恭介(みんなの笑い声が響く)

恭介(そうだ。なにも俺一人で、全てを成し遂げようとする必要は無い)

恭介(俺達は一人じゃない)

恭介(こうして助け合い、支え合える仲間がいるんだから)

恭介(みんなで楽しい思い出を作っていこう)

恭介(結局、俺にできることはそれだけなんだ)

恭介(生前の不幸も、悲しみも憎しみも)

恭介(幸せな記憶と、楽しい思い出で癒やせるように)

恭介(それが…、俺の戦いだ)

ーーーーー

ーーー

恭介(話を終えて、俺は一人でぶらぶらと歩いていた)

恭介(そうしていると、誰かの話し声に気づく)

恭介(まさか…?)

恭介(俺はその声が聞こえる方向へと、足を向けた)

選択安価

恭介が聞いた声は誰のものか、二人選んで下さい

小毬・葉留佳・美魚・音無

21:30:00:00
↓1↓2 重複なら更に下

というわけで
はるちん、みおちんが復活です

ちなみに一応補足しておくと
ハイテンション・シンドロームは4.5話とされているようなので野球回の次にやります
そしてそれまでには安価勢は全員揃います

本日は以上です
ご意見、ご感想、質問などがあればお願いします

お待たせしました、明日夜再開します
今回ははるちん、みおちん加入回です
お楽しみに

葉留佳「う~ん、ここは一体どこなんだろうね。っていうかなんで私たち生きてるんだろ?」

美魚「しばらく探索してみましたが、実に不可解な世界です」

美魚「寮にはわたしたちの部屋があって、見知らぬルームメイトもいました」

美魚「おそらく…、現実世界ではないでしょうね」

葉留佳「おおーっ!さすがはみおちん!頼りになるなぁ」

美魚「わたし的には、三枝さんは頼りないですが」

葉留佳「なにーっ!いきなり容赦ない指摘きたーっ!?」

美魚「冗談ですよ、半分くらい」

葉留佳「半分本気ってことかーっ!」

美魚「はい」

葉留佳「うぅ…っ!この容赦ない扱い、まさしく本物のみおちんっ!」

葉留佳「でもますます謎は深まりますね。ほんとなにがどうなってんでしょ?」

美魚「これはわたしの推測なのですが、ここは夢の中なのではないでしょうか?」

美魚「死ぬ直前に、わたしか三枝さんが見ている夢の世界…」

葉留佳「ああーっ、なるほどね。夢ってなんだかわけわかんない設定のまま、話が進むもんね」

葉留佳「見たこと無い学校とか、知らない制服着てるのも、夢ってことなら説明つくし」

葉留佳「いや、でもまてよ…。そもそも夢の中にいて、『これは夢だー!』って自覚することなんてあるの?みおちん?」

美魚「ありますよ。名称は明晰夢というそうです」

葉留佳「めーせきむ…?」

美魚「関連する逸話としては、『胡蝶の夢』というものが有名ですね」

美魚「中国の戦国時代の宋国、現在の河南省に生まれた思想家で、道教の始祖の1人とされる人物の荘子による…」

葉留佳「あー、みおちんさぁ…。私がアホの子なのは知ってるでしょ?」

葉留佳「ややこしい説明は省いて、私にもわかるように説明してくれると助かるなー♪」

美魚「……………」

美魚「わかりました」

美魚「三枝さんにもわかるように省いて説明するなら」

美魚「明晰夢は夢と現実の区別が曖昧になる、危険な夢ということです」

美魚「そして、古来より夢に対する対処法といえば一つです」

美魚「いざ」

ギューッ

葉留佳「いたたたたっ!?みおちん、なんでいきなりほっぺつねるのさー!?」

美魚「痛いですか?おかしいですね。夢なら痛みは無いはずなのですが」

美魚「はっ…!ですが明晰夢というのは、とてもリアルな夢だと聞きます」

美魚「ということは、痛みを感じることもあるのかもしれませんね」

美魚「もう少しつねってみましょう」

ギューッ

葉留佳「だから痛いってー!みおちん完全にさっきのこと怒ってるんでしょ!?」

美魚「なんのことでしょう?」

葉留佳「うわあああん!オーマイガーーっ!!」

恭介(やたら賑やかな声が聞こえると思ったら、三枝と西園だったのか)

恭介(にしてもあいつら、対照的な性格に見えて、なぜか会話が噛み合ってるよな)

恭介「残念だがここは夢ではなく、紛れもない現実だぞ」

葉・美「「恭介さん!?」」

パシッ

葉留佳「おうふっ!」

恭介(西園が急に手を離すもんだから、三枝が反動でダメージを受ける)

葉留佳「もうーっ!みおちんってば。乙女の柔肌に傷でもついたらどうしてくれるの!」

葉留佳「なにかあったら、責任とってもらいますヨ!」

西園「責任はとりたくないので、それほど痛くつねってなかったはずですが?」

葉留佳「いや~、まあそうなんだけど」

葉留佳「こういう時は大げさに痛がるのが、礼儀というかマナーというかお約束ってやつでしょ!」

恭介「相変わらずノリが良いというか、落ち着きが無いな、三枝は」

葉留佳「ありがとーーっ!!」

恭介「褒めてはない」

美魚「褒められてません」

美魚「ですが、現実というのはどういう意味ですか?恭介さん」

恭介(西園が話を戻して、そう聞いてくる)

恭介(が…)

葉留佳「む…、待つんだ!みおちん!」

美魚「はい?」

恭介(説明しようとした矢先、三枝が横槍を入れてくる)

葉留佳「この恭介さんが、本物の恭介さんだという保証はまだ無いですヨ!」

恭介「は…?」

葉留佳「夢の中に出てきて、これは現実だぞー、と言うことによって…」

葉留佳「私たちを混乱させるイタズラをしにきた恭介さん、という可能性だって充分にありえるのだーー!!」

恭介(なんだその無茶苦茶な言い分、だが…)

美魚「ありえますね、恭介さんなら」

恭介「言われておいてなんだが、確かに俺ならやりかねない気がするぜ…」

葉留佳「フッフッフ。ですが、心配ご無用ー!」

葉留佳「本物の恭介さんか、私たちの夢の中の偽物なのかを判断する方法は…」

葉留佳「はるちんがすでに考えてあるのだーー!!」ズビシッ

恭介(ポーズを決めながら、大声で叫ぶ三枝。本当に賑やかなやつだぜ)

葉留佳「さあさ恭介さんに質問です。ババン!」

葉留佳「動物博士として有名な恭介さんですが…」

葉留佳「地球上で初めて陸に上がった両生類の最初の一言はなんだったのですか?教えてください!」

恭介「『上がってもうた…』だな」

恭介「そろそろ俺たち上がれるんじゃないかと噂になっていた頃に、ひょんな事で最初に上がってしまったやつの一言だ」

恭介「意外にすんなりいけるやん、という余裕の感情と、どうなるんやこれから一体…、という不安が入り混じった興味深い一言だ」

葉留佳「お、おお…。この私たちの夢では、とても再現出来そうにないぶっ飛んだ回答…」

美魚「まさしく本物の恭介さんですね」

恭介「わかってもらえてなによりだ」

葉留佳「あれ?っていうことは、やっぱりここは現実ってことになりますネ」

美魚「わたしたちは死ぬはずだったんではないですか?恭介さん」

恭介「ああ、死んだぞ。そして何を隠そう、ここは死後の世界なんだ!」

葉留佳「な、なんだってーーー!?」

美魚「……………」

葉留佳「あ、あれ…?」

恭介(大げさに驚く三枝と、全く動じていない西園)

恭介(リアクションまで対照的だ)

葉留佳「みおちんは驚かないの?」

美魚「いえ、驚いてますよ。ですが、隣にそれ以上に驚いている人がいると、自然と冷静になってしまうものですから」ジロッ

恭介「ああ、まあそんなもんだよな」ジロッ

葉留佳「いや、こっち見ないでくださいヨ…」

恭介「とりあえず場所を変えて説明するか」

恭介(二人を連れて中庭に移動する)

恭介(ここは俺達の学校と同じで、整備された芝生とかがある)

恭介(木陰もあることから、過ごしやすい場所としてNPCや戦線のメンバーたちもよく訪れるようだ)

恭介(俺は今までの経緯を二人に話した)

美魚「にわかには信じがたい話ですが、他のみなさんも来ているってことは本当なんでしょうね」

葉留佳「心残りを持った人たちが集まる場所かあ」

葉留佳「天国とか地獄以外にも、そんな世界があったんですネ」

恭介「俺も最初は驚いたが、ここは確かに死後の世界だ」

恭介「今までにも、光る刃物で胸をぶっ刺されたり、巨大ハンマーで吹っ飛ばされたり、怒涛の蹴り100連発を食らったり…」

恭介「落とし穴に落ちて全身を強打したり、馬ぐらいはあろうかという犬に襲われたり、まさに悪魔としか思えない奴にボコボコにされたりしたが…」

恭介「こうして何事も無かったように生きている」

葉留佳「なんてデンジャラス!?」

美魚「恭介さんらしいですね」

恭介(自分で思い返しておいてなんだが、確かに相当デンジャラスだ)

恭介(これだけ色んな目に合うとか、なんか変な補正がかかってるような気がしないでもないぜ…)

美魚「それで、他のみなさんは全員揃っているんですか?」

恭介「いや、あとは小毬がまだだな」

葉留佳「あ~、小毬ちゃんか~…」

美魚「神北さんは、鈴さんの為に最期まであの世界に残っていたんですよね」

恭介「ああ」

恭介(きっと鈴をもっとも強くしてくれたのは、理樹と小毬の二人だろう)

恭介(鈴を一番のなかよしさん、と呼んでくれた)

恭介(いつの世界でも、鈴の傍で見守ってくれていた)

恭介(ずっと友達でいると約束し、それが叶わないことだと知っていながら、いつも笑顔だった)

恭介(本当にまるで、お日様のように暖かで優しいやつが小毬だ)

葉留佳「う~ん、心配だなあ。小毬ちゃん抜けてるとこあるからなあ」

葉留佳「迷子になって、地獄とかに行ってなきゃいいんだけど…」

美魚「三枝さんが地獄に落ちてないのに、神北さんが地獄に落ちるなんてありえないです」

葉留佳「だよね~!イタズラに命を掛けてきた私でも地獄に落ちてないのに、小毬ちゃんが地獄に落ちるわけ…」

葉留佳「ってひどいですヨ!みおちん!」

恭介「まあ仮に間違って地獄に行ってても、小毬ならなんの問題も無さそうに思えるがな」

美魚「閻魔大王様と、仲良くお菓子を食べていそうな気がします」

葉留佳「まあ、小毬ちゃんだしネ~♪」

恭介(俺も大概みんなの事を言えないな)

恭介(冷静に考えると、小毬のことをとんでもないキャラだと認識しているみたいだぜ…)

恭介「とりあえず、二人にはこの世界のリトルバスターズに加入してもらいたいんだが、いいか?」

美魚「神様、あるいはこの世界の創造主とケンカする戦線と言っていましたね」

恭介「ああ。目標は、この世界の秘密を暴くことだ」

葉留佳「姉御とクド公に、真人くんと謙吾くん、それと沙耶ちゃん…、だっけ?」

葉留佳「私人見知りだからな~、仲良くなれるかな~?」

恭介(とか言いながら、嬉しそうにニコニコしている)

美魚「面白くない冗談は、冗談とは言えませんよ?」

葉留佳「みおちん、鬼ひどっ!?」

恭介(なるほど、ようやく理解したぜ)

恭介(ようはこいつらベクトルは違えど、滅茶苦茶マイペースなんだ)

恭介(だから対照的に見えて、話がまるで漫才のように噛み合うってことか)

恭介(二人が加入したら、これからますます面白くなりそうだぜ)

美魚「それで、リトルバスターズ戦線に加入するには、どうしたらいいんでしょうか?」

恭介「ま、話は俺が通すから良いとして」

恭介「ようは戦線に加入して、これから頑張っていく理由があればいい」

恭介「この世界に来たってことは、二人にも当然心残りがあるってことなんだろ?」

葉留佳「それは…」

美魚「そう、ですね…」

恭介(ここまで元気に会話していた二人だが、その言葉にはさすがに表情が曇る)

恭介(後ろめたさを感じているんだろう、気持ちは良くわかるぜ)

恭介「大丈夫さ。その点は戦線のみんなも同じなんだ」

恭介「もちろん、俺自身もそうだし、他のリトルバスターズメンバー達もそうだからな」

美魚「そろって諦めが悪いですね、わたしたちは」

葉留佳「やはは、それは心がタフだとも言い換えられますヨ!」

恭介「そのとおりだ。前向きに行こうぜ!」

恭介「たとえ一人じゃ辛いことでも、みんなでなら乗り越えられるさ」

美魚「はい」

葉留佳「アイアイサーっ!」

恭介(二人とも良い笑顔だぜ。ますますこれからが楽しみだな)

恭介「ああ、ただ幹部になるには、なにかしら能力を示さないといけないな」

葉留佳「幹部?」

美魚「能力ですか?」

恭介「幹部ってのはまあ、作戦を行う時の主要なメンバーのことだな」

恭介「そして幹部になるには実績か、戦線で活躍するために、それなりの能力を示さなければならない」

恭介「ちなみに、俺たちは全員幹部合格済だ」

葉留佳「ええーっ!?戦線で活躍出来る能力かぁ…」

葉留佳「私そんな対した特技無いんだけどなぁ…」

恭介(三枝が弱気になっている。今まで見てきた俺からしたら、三枝は頭脳とか運動神経も普通に優秀なはずだ)

恭介(だが、今までの事情が事情だっただけに、まだ少し自信が足りないのかもしれないな)

恭介(なら…)

恭介「何言ってんだ、三枝。お前には誰にも真似できない、とっておきの特技があるじゃないか」

三枝「へ?そんなのありましたっけ。恭介さん」

恭介「まあ、耳貸せ」

三枝「はいはい」

恭介(三枝に耳打ちする。どうせなら、西園や他のみんなにも知られないまま披露した方が面白そうだ)

恭介「かくかくしかじかうまうまふにふに」

葉留佳「ええーーっ!?いやいやいや、恭介さん。さすがに私でもそれは…」

葉留佳「いや、できる…かな。できそう…ですネ。いや、絶対できるっ!!」

葉留佳「どーんとはるちんに任せてくださいヨ!」

恭介(みるみる三枝が自信を取り戻す)

美魚「すごい自信ですね」

葉留佳「まあね。ふふん、みおちんも驚くぞー!絶対に驚くぞー!ぷふふっ…!」

恭介(西園や他のみんなが驚く様を想像しているのか、すでに笑いが堪えられないようだ)

恭介(案の定、『あれ』には絶対の自信があるらしい)

恭介「西園の方はどうだ?俺のアドバイスが必要か?」

西園「いえ、問題ないと思います」

恭介(対して西園は全く焦る様子が無い)

恭介(こちらも相当な自信があるようだ)

葉留佳「えー、なになに!みおちんはなに披露するの?」

美魚「秘密、です。三枝さんも披露するまで内緒にするみたいですから」

恭介(口に人差し指を当てて、そう言う西園。こいつもいつの間にか、こんな仕草をするようになってたんだな)

葉留佳「ほほう、つまり勝負ですネ」

葉留佳「実は生前、トラブル系ラブコメ漫画、『やるっきゃ内藤さん』を読破していたこのはるちんに挑むとはっ!」

恭介「お前、そんな漫画読破してたのかよ…?」

恭介(同じように読破している俺が言えたもんじゃないが、あれはあんまり女子が見るような健全な漫画じゃないぞ…)

葉留佳「いや~、ああいうの見れば、ラッキースケべされた時に、どんな対処すればいいのかわかるかと思いまして」

恭介(おそらく想定したのは理樹からのラッキースケべなんだろうが…)

恭介(野田といい、三枝といい、なぜアホの子は努力の方向を間違えるのか…)

美魚「三枝さん。前にも言いましたが、あなたの行動は甘すぎです」

美魚「あまあまハニービーです」

美魚「そんな起こるかもわからないラッキーを期待するよりも、自分からトラブルなイベントを起こそうとするべきです」

葉留佳「う、うぅ…っ!」

美魚「最近の傾向だと、小悪魔的な魅力と女の子らしい恥じらいを併せ持つ女子が人気のようです」

美魚「いわゆる、ギャップ萌えです」

美魚「たとえば来ヶ谷さんが、好きな人の前だけで、恥じらいを持つ乙女だと想像してみてください」

美魚「そのギャップはやばいです。男女問わず魅了する萌えと言えます」

葉留佳「ええ~?好きな人の前で恥じらう姉御とか、想像出来ないけどな~」

恭介(気持ちはわかるが、理樹の前だとまさにそんな感じになってたんだぜ?三枝…)

恭介(まあ、こんなことバラしたら、俺の身が危ないから黙っておくが…)

恭介「そんじゃ、まずはみんなと合流して再会を喜ぼうぜ」

三枝「そうですネ!みんな元気かな~?」

美魚「元気じゃないみなさんなんて、想像できません」

恭介「ははっ!違いねえぜ!」

恭介「よし行くぞ、二人とも!付いて来いーー!!」

葉留佳「あいよっ!ほらほらみおちん、遅れるよー!」

美魚「大丈夫です。こう見えて、やる気満々ですから」

恭介(そうしていつかあった日のように、駆け出す俺たち)

恭介(あとは小毬だけだな。いや、願わくば、理樹と鈴も含めて)

恭介(もう一度、リトルバスターズ全員で集合できるように)

恭介(これからもみんなで走り続けよう。遥か、彼方まで…)

ゆり「で、また二人来ちゃったのね」

ゆり「どんだけ多所帯だったのよ、リトルバスターズ」

恭介「前に言っただろ?野球チームだって」

恭介「これくらいは当然さ」

葉留佳「ヘイ、ボーイズ&ガールズ!よろしくねー!私は三枝葉留佳だよ!」

葉留佳「ニックネームははるちん!他にも、葉留佳ちゃん、はるちゃん、はる閣下に、はるるん、はるっぺ!」

葉留佳「もうなんでも好きに呼んでいいからねー!」

恭介(はしゃぎながら挨拶する三枝)

松下「また随分と元気のいいやつが来たな」

大山「!?」

大山「僕にはわかるよ…。彼女はきっと戦線のボケ争いに名を連ねる、そんなポテンシャルの持ち主に違いない…!」

藤巻「普通、そんな争いに名を連ねたくねーけどな…」

野田「大山の価値観がわからん…」

ゆり「まあ、元気が良いのはいいんだけど…」

ゆり「一部やばいニックネームが混じってた気がするし、それは除外願いたいわね…」

ゆり「特にはるるんとはるっぺは、なんか魂が拒否反応を起こしてる気がするわ…」

沙耶「私もよ。そのニックネームだと、なにかが物凄く紛らわしくなりそうな気がするわ…」

真人「ゆりっぺと沙耶のやつは何言ってんだ?」

謙吾「大人の事情というやつだ。気にしなくていい」

美魚「わたしは西園美魚といいます。美魚は美しい魚と書きます」

美魚「リトルバスターズのマネージャー担当でした。よろしくお願いします」

恭介(ぺこりと頭を下げる西園)

日向「対して随分真面目というか、礼儀正しいやつだな」

高松「マネージャーと言うことは、みなさんのストッパー的な役割だったんでしょうか?」

恭介「甘いぜ、高松」

高松「はい?」

美魚「ところで、戦線の幹部には随分と男子のみなさんが多いんですね」

ゆり「まあ、一応戦うための組織だからね」

遊佐「もしかすると、男子が苦手ですか?」

恭介(なぜか若干食い気味に、遊佐が西園に問いかける)

美魚「いえ、とんでもありません」

美魚「これだけ人数がいるなら、カップリングの妄想も捗るというものです」

美魚「わたしのなかの最大勢力、恭×理を超えるカップリングはあるんでしょうか…!」

美魚「今から胸が高まります…!」

ゆり「あー、一瞬とはいえ今度こそまともかも、とか思ったあたしが馬鹿だったわ…」

竹山「まさか僕たちでそんな妄想をするつもりなんでしょうか…?」

椎名「やはりリトルバスターズは一人の例外もいないな」

岩沢「棗の友達なんだ。これくらい普通だろ」

ゆり「いや、完全に毒されちゃってるわよ?岩沢さん…」

TK「Kind is called the friend!!」

ゆり「っていうかあと何人増えるのよ?あんまり増えるようだと、本部の人口密度がやばいんだけど」

来ヶ谷「それなら心配はいらんよ、ゆり君。ここにこれるメンバーであと揃っていないのは一人だけだ」

クド「はい、小毬さんなのです!」

日向「小毬…、リトルバスターズ最後の一人か…」

野田「ここまで個性の強いやつばかりなんだ。最後の一人となると、とんでもないやつなんだろうな…!」

藤巻「ああ、それこそ宇宙人とか来ても驚かないぜ!」

葉留佳「ありゃま、すごい言われようだね。小毬ちゃん」

美魚「確かに色々とすごい人ですが、さすがに期待しすぎですよ?」

ゆり「いや、もうあなた達の基準は信じないわ!」

ゆり「というわけで、あたしは暗算日本記録保持者と読むわ!」

野田「なんだそれは、ゆりっぺ!?」

ゆり「最後の一人が、自分の予想通りの人物だったら、当たった時に気持ちいいじゃない」

日向「そいつは最高に気持ちいいだろうな」

藤巻「にしても、すっげー読みだな。万馬券なんてもんじゃないぜ」

ゆり「それくらいのを当てたら、当たった時の爽快感がすごいでしょ?」

大山「うわー、その楽しみ方良いね!」

日向「ああ乗ったぜ。恭介、最後の一人は女子なんだろ?」

恭介「あ、ああ。まあそうだが…」

恭介(なんか話があらぬ方向に転がり始めてるな…)

日向「よし、じゃあ俺は絶世の美女と読むぜ!」

松下「絶世の美女だとっ!?」

日向「ああ、それこそゆりっぺが霞むくらいの絶世の美女だ!」

ゆり「どういう意味かしら…?日向くん…?」

野田「ゆりっぺ以上の美女など、この世にいるは…」

椎名「なら私は世界一かわいい女子と予想する!」

野田「なっ…!」

遊佐「すごい食いつき様ですね、椎名さん」

松下「お約束のように野田の言葉が遮られたな」

高松「たとえ野田くん以下省略」

藤巻「省略しすぎじゃね!?」

ゆり「岩沢さんと遊佐さんは?」

岩沢「あたしは音楽キチ」

高松「さすがぶれませんね、岩沢さん」

遊佐「わたしは男嫌いで」

ゆり「本当にそうだったら逆に扱い困るけど…、まあいいわ。で、他にはー?」

高松「ふっ…。では私からはメガ…」

竹山「僕からはメガネ仲間で」

高松「なっ!竹山くん!?今私が言おうとしていたんですよ!?」

竹山「こういうのは早いもの勝ちです。それと僕の名前はクライストとお呼びください」

高松「くっ…!なら筋…」

野田「俺からは筋トレ好きだ!」

高松「なっ…!野田くん、それは今私が言おうとしていたんですよ!?」

野田「早い者勝ちだ、悪いな高松…!」

高松「ぐぬぬ…!なら今度こそ!私からはガルデモ好きでいきます!!」

日向「絶対ガルデモの曲聞いたことないのにありえねえだろ…」

高松「いえ、これは読みです。この世界に来ると同時にガルデモのライブに遭遇し、その瞬間ファンになります!」

日向「どんだけピンポイントな読みだよ!?」

岩沢「でも可能性はゼロじゃないな」

日向「いやまあ、ゼロじゃないけどなあ…」

藤巻「じゃあ俺は記憶喪失だ!」

日向「なんで恭介たちの友達が記憶喪失なんだよ!?」

藤巻「いや、俺も読みだ。なぜか記憶を一時的に失っていて、恭介たちと再会するのと同時に記憶を取り戻すんだ!」

大山「すごい感動的な展開だね!藤巻くん!」

藤巻「だろ!」

日向「お前らどんどんネタに走ってないか…?」

ゆり「で、あとはTKと松下くんと大山くんじゃない?」

TK「Big bazookas!!」

藤巻「あ?バズーカってなんだよ」

恭介「ようは巨乳だって意味だな」

ゆり「うわ、TKって巨乳好きだったの?」

遊佐「軽蔑します。胸なんて飾りでしかありません」

松下「TKが巨乳を望むなら、俺は貧乳…、いやロリが来ると予想するぞーーっ!!」

ゆり「ひくなっ!?」

恭介(まさかとは思うが、松下はロリコンなんだろうか…)

大山「ふっふっふ。そして最後は僕だね…!」

高松「はっ…!まさかあえて最後まで待っていたんですか!?」

藤巻「やるな、大山…、だがこれだけ出揃ってんだ。並大抵のじゃ俺たちは驚かないぜ」

大山「それはどうかな?藤巻くん」

藤巻「なにっ!?」

大山「僕の予想は…!」

大山「暗算日本記録保持者で絶世の美女で世界一かわいくて、音楽キチで男嫌いでメガネで筋トレ好きで、さらにガルデモファンで記憶喪失なロリ巨乳だーーー!!」

日向「ありえねーだろ!?そんな属性のオンパレード!!」

ゆり「まさかの全部のせで来るとはね…」

岩沢「その為に最後まで待ってたのか」

椎名「したたかだな」

大山「どうしてありえないなんて言い切れるの!可能性はゼロじゃないんだよ!日向くん!」

日向「ゼロじゃねーけど、ほとんどゼロだろ!そんな奴がきたら俺たち全員のキャラ食っちゃいますから!」

大山「だってリトルバスターズ最後の一人だよ!」

大山「むしろこれくらいキャラ立ってるほうが普通なんじゃないかなあ!!」

クド「どんどん小毬さんのキャラが、あらぬ方向に行っているような気がします…」

沙耶「あらぬ方向どころか、単純にハードル上がりまくってるわね…」

来ヶ谷「よもや小毬君も、来る前からこれほどハードルが上がっているとは思うまい」

真人「ご愁傷さまだぜ…、小毬」

謙吾「原因は俺たちにあるような気がするが…」

葉留佳「まさに困り顔の小毬ちゃんが目に浮かびますネ!」

美魚「………、5点」

葉留佳「なんですとー!?」

美魚「ちなみに100点満点中の5点です」

恭介「えぐいな、さらに追い詰めやがったぜ…」

葉留佳「うぅ…、ひどい。せめて突っ込んでよー!」

ゆり「さてまあ、誰が当たってるのかは最後の一人が来た時のお楽しみってことで…、解散!!」

葉留佳「っておいおいおーい!」

美魚「わたしたちの加入手続きがまだなんですが?」

ゆり「い、いや、冗談よ、冗談。あなた達を試したのよ、あーはっはっは!」

日向「絶対忘れてたな」

大山「最近のゆりっぺってなんか抜けてるよね」

ゆり「うっさいわね!毎度の如く話が脱線するんだから仕方ないでしょ!?」

恭介「ちなみに、今回話を脱線させたのはゆりっぺなんだけどな」

岩沢「確かにそうだったな」

遊佐「はい、その通りです」

椎名「あさはかなり」

ゆり「ぐぬぬぬぬ…!」

藤巻「いつの間にかゆりっぺってイジられキャラになってねーか?」

野田「当然、俺はどんなゆりっぺでも…!」

松下「お前も本当にブレないな、野田」

ゆり「で!どうせ、棗くんから話は聞いてるんでしょ?」

ゆり「幹部入り希望なら、なにか能力を見せてもらうわよ!」

葉留佳「まかせてー!」

葉留佳「抱腹絶倒、空前絶後、前代未聞!はるちんのとっておきの特技を見せてしんぜよう!」

ゆり「すごい自信ね」

真人「ってかよ、恭介。三枝のやつに戦線で使える特技なんてあんのか?」

恭介「見てりゃわかるさ」

来ヶ谷「さては恭介氏が入れ知恵をしたのか」

謙吾「そういうことなら、俺たちも楽しんで見せてもらおう」

クド「三枝さーん!頑張ってください!」

葉留佳「あいよっ!さあ刮目して見よ!これがはるちんの特技だーー!!」

葉留佳「の前に、ちょっとトイレ行ってきていい?」

ズコーっ!ドンガラガッシャーン!

恭介(全員派手にずっこけた)

ゆり「あ、あなたねえ…!よくこの状況でそんなこと言えるわね…?」

葉留佳「いやー、メンゴメンゴ。いざ、披露するとなると緊張してさ」

葉留佳「すぐ戻ってくるねー!」

恭介(それだけ言い残すと、ドアを開けっ放しにしたまま、ピューっと走り去っていく)

竹山「なんてマイペースな人だ…」

沙耶「ねえ、ほんとに大丈夫なの…?」

美魚「大丈夫だと思いますよ。………多分」

沙耶「多分じゃ駄目じゃない!?」

ゆり「毎度のことながらリトルバスターズの面接は、一筋縄じゃいかないわね…」

恭介(ゆりっぺが愚痴を吐いた瞬間、開けっ放しのドアをノックするやつが現れる)

恭介(そこにいたのは…)

??「お邪魔するわよ」

真人「は…?」

謙吾「なにっ!?」

美魚「あの方は…」

来ヶ谷「どういうことだ…?」

恭介(面識のあるやつは全員唖然としている。当然の反応だろう、なぜならそいつは…)

クド「か、佳奈多さん!?」

佳奈多「なに?どこの誰かは知らないけど、馴れ馴れしく人の名前を呼び捨てにしないで欲しいわね」

クド「えっ…?」

ゆり「誰よ、あなた?勝手に本部に入ってこないで欲しいわね」

佳奈多「あら?勝手に校長室を乗っとっている問題児たちのくせに、よくそんなふざけた口が聞けるわね?」

ゆり「なっ…!」

佳奈多「とりあえず自己紹介すると、私は風紀委員長。二木佳奈多よ」

日向「風紀委員長…!?」

大山「新しいNPC…!?」

謙吾「どういうことだ…、なぜ二木がここに…!?」

恭介(二木のプレッシャーに押される戦線組と、予想外の事態に驚くリトルバスターズ)

恭介(本部はまさに軽いパニック状態だ)

来ヶ谷「なるほど、考えたな。恭介氏」

恭介「さすがは来ヶ谷、気づくのが早えな」

来ヶ谷「うむ。せっかくだから見守らせてもらおうか」

佳奈多「校長先生を追い出して、挙句校長室を本部ですって?」

佳奈多「そんな子どもじみた遊びは、周りの迷惑にならない範囲でひっそりとやってほしいものね」

野田「キサマ…!それはゆりっぺに対する侮辱発言だ!取り消して…」

佳奈多「黙りなさいっ!!」

野田「………!」

恭介(野田が二木にハルバードを向けようとする)

恭介(だが、本部全体に響く高圧的な命令とその圧倒的な存在感が)

恭介(野田を始め、ゆりっぺたち戦線メンバーたちを怯ませている)

佳奈多「そうやって自分勝手を貫いておいて、他の人から指摘されたら暴力で解決しようってわけ?」

佳奈多「最低ね、ほんとに最低…」

佳奈多「まあ今日のところは、これで退いておくけど」

佳奈多「再度注意しても、態度を改めないようなら、こちらもそれなりの手段を取るわ」

佳奈多「そのつもりでいなさい」

クド「か、佳奈多さん…?」

真人「おいこら風紀委員長!なんでてめえがここにいんだよ!?説明しろ!」

佳奈多「ふ、ふふふ…」

ゆり「な、なによ。急に笑いだして?」

佳奈多「あはははっ!あーはっはっは!」

佳奈多?「いや~、まんまと引っかかってくれましたネ!」

沙耶「えっ…?」

佳奈多?「くらえっ!はるちん、ギャラクティカレボリューション!!」

恭介(そう言うと、クルクル回りながら髪型を変え、つけていたカラコンを外す)

恭介(そして、ピタッと立ち止まると…)

葉留佳「やは、お久しぶり~。はるちんですヨ~!」

「「「ええーーっ!?」」」

大山「えっ、なに!?どうなってるの!?」

日向「まさか今の…?」

葉留佳「ご名答ー!何を隠そう、鬼をも視線で殺す氷の風紀委員長こと二木佳奈多とは…!」

葉留佳「この三枝葉留佳の変装だったのである!!」ズビシッ

椎名「すごい変装技術だな…」

クド「三枝さんすごいです…!佳奈多さんをよく知ってる私でも気づきませんでした」

葉留佳「やはは、ほめてほめて~♪」

ゆり「すごいなんてもんじゃないわよ…。完全に別人だったじゃない」

ゆり「一体どうやったの?」

葉留佳「特に特別なことはしてませんヨ」

葉留佳「髪型変えて、カラコンつけて、目を吊り上げてたくらいかな」

葉留佳「人から受ける印象って、それだけでも結構変わるもんだからね」

葉留佳「あとはまあ、はるちんの演技力ですヨ」

真人「いやマジですげえな、あんなの見分けつかねえよ…」

謙吾「同感だ。誰にも見破れるものじゃない」

沙耶「スパイ以上の変装技術ね」

恭介(全員こぞって賞賛の声を上げる)

来ヶ谷「まあ、私は気づいたがな」

葉留佳「おおーっ!さすがは姉御、私とお姉ちゃんの違いがよくわかってるぅー!」

恭介「ちなみに来ヶ谷はなんでわかったんだ?」

来ヶ谷「まあ、佳奈多君がこの世界にいるわけがないという推理も含むが」

来ヶ谷「それ以外にも二人には決定的な違いがある」

美魚「それはなんですか、来ヶ谷さん?とても見た目じゃわかりませんが」

来ヶ谷「単純だ。葉留佳君の3サイズは上から81/59/82。佳奈多君の3サイズは上から80/57/82」

来ヶ谷「胸が大きく、ウエストが太いのが葉留佳君の特徴というわけだ」

葉留佳「うわあああーー!?姉御、なんてことバラしてるんですかーー!?」

来ヶ谷「はっはっは」

恭介「普通はそんな些細な違い気づけねえけどな…」

岩沢「来ヶ谷って何者なんだ?棗」

恭介「スマン、俺にもわからん…」

ゆり「それで、三枝さん。その変装は別の人物にも化けることは出来るの?」

葉留佳「いや~、それは無理ですネ。さっきも言ったけど、今のは私のお姉ちゃんの真似なんですヨ」

葉留佳「お姉ちゃんのことをよく知ってるから変装が出来るだけで、ようはモノマネの域ですからネ」

ゆり「なるほどね」

恭介「だが、あの威圧感は使えるだろ?お前たちでもあれだけビビるくらいだ」

恭介「NPCには効果抜群だと思うぞ」

日向「確かにそうだな…」

大山「めちゃくちゃ怖かったもんね…」

葉留佳「いやいや、本物はもっと怖いんですヨ」

葉留佳「私のが氷点下零度なら、お姉ちゃんのは絶対零度ですからネ」

高松「そ、そんなにですかっ…!?」

藤巻「どんだけやばい姉ちゃんだったんだよ…」

真人「かつて筋肉旋風における、ラスボスとして立ちはだかったことがあるぜ…!」

真人「あいつは強敵だった…!」

TK「Oh, final boss…!!」

松下「筋肉旋風におけるラスボスか…。この世界におけるゆりっぺのような立ち位置だったというわけか…!」

ゆり「勝手に人を変な立ち位置にしないでくれる…?」

恭介「あながち間違ってないような気もするけどな」

ゆり「まあ三枝さんは文句無しで合格よ。これから期待してるわ」

葉留佳「いやっほぅーー!!駄目な子返上ーー!!」

恭介(飛び上がるように喜ぶ三枝。やっぱお前のこの騒がしさがないとな)

クド「おめでとうございます!三枝さん!」

来ヶ谷「よくやったな、葉留佳君」

葉留佳「ナチュラルハーイ♪」

恭介(能美と来ヶ谷から順にハイタッチを始める三枝)

恭介(当然俺とも、心地良い音のハイタッチを交わした)

遊佐「テンションの高さが、どこぞのバンドのベースに似てますね」

岩沢「ああ、関根はライバル意識激しいからな。三枝に対抗してもっと騒がしくなるかもな」

竹山「そんなことで対抗しないで欲しいです…」

ゆり「じゃあ、次は西園さんの能力を見せてほしいんだけど」

美魚「わかりました。では、いきます」

スチャ

恭介(西園がどこからともなく、巨大なサイバー兵器とランドセル型のブースターを取り出す…!)

恭介「西園…、お前それまさか…!」

ゆり「えっ、なにそれ!?どこから出したの!?」

美魚「細かいことはお気になさらず」

美魚「それと危ないので、みなさんメガバズーカランチャーの火線上から離れてください」

美魚「では、発射」

ゆり「ちょっ!えええええっ!!」

沙耶「ひいやああああああっ!!」

ビビビビビビビっ!!

恭介(えらくサイバーなSEが鳴りながら、西園はメガバズを窓の向こうに向かってぶっ放した…)

真人「あーあ。カーテンが消滅したぜ」

謙吾「相変わらずの威力だな…」

ゆり「いやいやいや、今のなに!?明らかにオーバーテクノロジーな兵器なんだけど!?」

西園「これはNYP兵器です」

ゆり「いやだからなによNYPって!?」

西園「私にもわかりません。なんだかよくわからないパワーの略称だそうです」

恭介「ちなみに俺もなんだかよくわからないなりに説明すると…」

恭介「人体にはまだ、なんだかよくわからない未知のエネルギーが眠っているらしく…」

恭介「それになんだかよくわからない物質を通して、なんだかよくわからない反応を起こし…」

日向「おい、恭介…。頼むから『なんだかよくわからない』を省いて説明してくれ…」

恭介「ようは、西園だけがこのブースターを背負うことによって使うことが出来る、なんだかよくわからないエネルギーがNYPだ!」

藤巻「結局何一つわかってねえのかよ…」

椎名「あさはかなり」

ゆり「でもすごいわ!この力さえあれば天使なんて目じゃないじゃない!!」

恭介「ってかちゃんとNYP兵器を青春の一部分としてカウントしてたんだな、西園は…」

美魚「それと非常に残念ですが、これはそれほど信頼がおけるものではありませんよ」

ゆり「どういう意味?」

美魚「NYPはその日の気分次第で、発揮出来る力が変わるんです」

美魚「メガバズーカランチャーなんかは、一日一回撃てるかどうかというくらいです」

美魚「まあ、他にもビームライフルやライトセイバー、サイバーヨーヨーに他には…」

ゴソゴソ

日向「だからどこから出してんだよ…?」

美魚「お気になさらず」

ゆり「ようは使いどころが限られる、ってわけね」

ゆり「それでも強力な兵器には違いないわ」

ゆり「西園さんにしか使えないっていう欠点もあるみたいだけど、神や天使と戦う上でこれほど頼もしい武器は無いわね」

ゆり「合格よ!西園さん!」

美魚「ありがとうございます」

葉留佳「あれれ~、おかしいぞ~…?」

葉留佳「あれだけ頑張ったはるちんの特技が、完全に忘れられてる勢いなんですけど…」

沙耶「いや、あれは相手が悪すぎるわよ…」

来ヶ谷「なに、葉留佳君はそれ以外の場でも活躍すればいいだけだろう。そう気にする必要もあるまい」

葉留佳「さすがは姉御!で、はるちんは他にどんな場面で活躍したらいいんですかネ?」

来ヶ谷「………、さて今日の日経平均株価は…」

葉留佳「露骨に話逸らさないでくださいヨ!姉御ーー!!」

竹山「そもそもこの世界に日経平均株価なんてありません」

日向「そりゃそうだろ…」

恭介「ま、なにはともあれ、これで二人とも無事合格だな!」

ゆり「まあね、どうせこの調子だと最後の一人も幹部入りしちゃうんでしょうね」

遊佐「どんどん多所帯になっていきますね」

葉留佳「まあまあ、旅は道連れ。世は情けですヨ!」

美魚「それは、自分で言うのはどうなんでしょう?」

謙吾「はっはっは。良いじゃないか、構うものか!」

クド「はい、やっぱりみなさん一緒のほうが楽しいです!」

松下「ああ、その通りだ!」

高松「どんどん優秀な人たちが幹部入りしてますからね、私たちの筋肉も負けてはいられませんよ!」

野田「フッ…!戦線の筋肉ポジションは渡さん…!」

藤巻「心配しなくてもそのポジションは誰も奪おうとしねーよ」

真人「当たり前だぜ!そのポジションは俺たちのものだからな!」

沙耶「すごい誇らしげね、真人くん」

謙吾「そんなにバカルテットに拘りがあるのか」

来ヶ谷「しかし美魚君。確かNYP兵器は、科学部にメンテナンスを頼んでいたんじゃなかったか?」

美魚「そうですね。ここの科学部の人たちに扱えるといいんですが…」

ゆり「それなら多分問題無いわ。ここの科学部すごい優秀だから」

遊佐「一日でデーモン・ピクニックに使う装置を用意した、ジェバンニの集まりです」

ゆり「部長はマッド・斉藤とか名乗ってるらしいわよ」

野田「また斉藤かよ!?」

恭介「斉藤の系譜はあちこちに引き継がれてるみたいだな」

ゆり「さて、最後に二人には確認しておくことがあるわ」

ゆり「これも棗くんから聞いてるかもしれないけど、あなたたちの覚悟をあたしにみせて欲しいの」

美魚「戦線で戦う理由ですね。神や天使を敵に回してでも戦う理由…」

美魚「では…、まずはわたしからでもよろしいでしょうか?」

ゆり「もちろんよ。聞かせてちょうだい」

美魚「はい」

恭介(西園は目を閉じた。その姿は、儚げで気高く、それでいて確かな存在感を放っている)

恭介(そして、朗読した。あの短歌を…)

白鳥は 哀しからずや 空の青

うみのあをにも 染まず

ただよふ

恭介(始まりも終わりもなく、ただそこに存在し続ける白鳥の歌)

恭介(かつて、西園がなりたいと焦がれた存在だ)

ゆり「その歌…、若山牧水?」

美魚「はい。この歌はわたしにとっての希望。いえわたし自身をも表していると感じていた歌です」

美魚「永遠の空をなす大気」

美魚「無限の海をなす水」

美魚「その透明の集合の狭間で漂う白鳥のように孤独でありたいと、ずっと思っていました」

美魚「何も失わない」

美魚「大切なことは決して、忘れない」

美魚「わたしがわたしであること」

美魚「永遠に、わたしであり続けること」

美魚「何者にも犯されず、永遠であること」

美魚「その方法は唯一、孤独であることだとそう信じていました」

美魚「わたしは、ずっと孤独になりたかったんです」

恭介(透きとおる声で、かつての自分の想いを語る)

恭介(贖罪。罪業。寂寞。呪縛。永遠。別離)

恭介(あらゆる想いが一つとなり、そして抱いていた西園にとっての希望)

恭介(それが、『孤独』だった)

美魚「なのに、ずっとそれを願っていたはずなのに、わたしに新しい希望を見せてくれた人がいました」

美魚「彼と同じ場所に行きたいという希望、わたしにとっての『あを』になってくれた…」

美魚「直枝さん。そして、美鳥が教えてくれた希望です」

恭介(自分の体をそっと抱きしめるように、言葉を紡ぐ)

恭介(西園の中には…、いや西園の隣、俺たちの周りにも美鳥はそこにいるんだろう)

恭介(その存在を覚えている限り)

恭介(なぜなら美鳥はからっぽだったから)

恭介(からっぽだった存在は満たされて、空気のように世界に溶け込んだのだから)

美魚「人は生きている限り、存在し続ける限り孤独だから」

美魚「誰か大切な人が傍にいて、初めて人は『自分』になると教えられました」

美魚「だから、わたしの戦う理由はそれだけです」

美魚「わたしをわたしにしてくれた、みなさんを守る」

美魚「わたしの居場所を守る」

美魚「そして、わたしにとっての『あを』を…」

美魚「わたしが好きな、直枝さんを取り戻す」

美魚「それが、今のわたしの願いです」

恭介(かつて孤独を願った西園の新たな願い…。それは、俺たちとともにあり続けること)

恭介(大切なことを教えてくれた、好きな人ともう一度共にいたいということ)

恭介(あまりにささやかで、当たり前で、そして叶わなくなってしまった願いだ…)

ゆり「人は生きている限り孤独。だから人と触れ合い、唯一無二の自分になる、ね…」

ゆり「当然の真理のはずなのに、それを受け入れることは難しいわよね」

美魚「はい。わたしも、随分と遠回りをしてしまったように思います」

美魚「でもだからこそ、今のわたしに迷いはありません」

美魚「こういう理由は、少し独りよがりでしょうか?」

ゆり「いえ、良いと思うわよ。自分の為の願いが、周りの人を支える願いになる」

ゆり「そういうスパイラルって、素敵じゃない?」

葉留佳「小毬ちゃんの幸せスパイラル理論ですネ!」

葉留佳「いや~、でもわかってたことだけど、みおちんもかあ」

葉留佳「ライバル多いなあ…」

大山「もしかしてその直枝って人…」

日向「噂の理樹ってやつか?」

遊佐「モテモテだったみたいですね。直枝理樹という人は…」

遊佐「爆ぜろ」

ゆり「遊佐さん!?」

真人「なあ、わりとマジでどうすんだよ?恭介」ヒソヒソ

謙吾「前にも話したが、これでは本当に理樹の取り合いになるんじゃないか?」ヒソヒソ

恭介「いや、ぶっちゃけ俺も不安一杯になってきたぜ…」ヒソヒソ

真人「ぶっちゃけやがった…!」

ゆり「さて、次は三枝さんね。どんな理由でも構わないわ」

ゆり「自分の正直な気持ちを話してくれるかしら?」

恭介(西園の理由を聞き終わり、ゆりっぺが今度は三枝に目を向けた)

葉留佳「えーっと、私の理由って、すごい個人的な理由なんだけどいいのかな?」

ゆり「もちろん構わないわよ。あたしの理由だって、すごい自分勝手な我侭みたいなもんだし」

高松「我侭だという自覚はしてたんですね…」

藤巻「あれが自然体なのかと思ってたぜ…」

松下「数十年の時を経て判明した、衝撃的事実だな…」

野田「フッ…!わかってないなお前たち!そこがいいんじゃないか…!」

竹山「ドMと一緒にしないでください」

ゆり「あんたたちいい加減にしないと、マジでキレるわよ!!」

葉留佳「やはは、仲良しなのは良いことですヨ!」

謙吾「友情のフレンドシップ!」

TK「Let's live in harmony!!」

ゆり「ま、いいけどね…。別に」

葉留佳「私はね、仲直りしたい人がいるんだ」

ゆり「仲直り?」

葉留佳「そう、さっき真似した人。二木佳奈多、私のお姉ちゃん」

葉留佳「本当はね、すごい仲の良い姉妹だったんだよ?」

葉留佳「でも家の面倒な事情のせいで、ずっと仲が悪いふりをしなくちゃいけなかったの」

葉留佳「いつかもう一度仲良しでいられる日が、その時が来るのを信じて、ずっと仲が悪いふりをし続けて…」

葉留佳「でもさ、ずっと仲が悪いふりをしてると…」

葉留佳「だんだん本当に仲が悪くなっちゃったんじゃないかって、思えてくるんだよね」

葉留佳「それで、一度そう思い始めたら駄目だよね。お姉ちゃんも、大人たちも、周りの全ても…」

葉留佳「もう世界の全てが、自分の敵みたいに思えてきてさ」

葉留佳「本当に悲しくて、辛くて、苦しくて…」

葉留佳「生まれて来なければよかった…って、本気で思ったこともあったの」

クド「三枝さん…」

来ヶ谷「葉留佳君…」

葉留佳「でもそんな私を、遊びに誘ってくれた人がいたんだ」

葉留佳「その人は私なんかに居場所をくれた」

葉留佳「本当に楽しくて、幸せな居場所を」

葉留佳「それだけで良かった。たったそれだけで、私は救われたはずだったのに…」

葉留佳「でもその人は、本当に優しい人だったからさ」

葉留佳「私の抱えてる事情にも、真っ直ぐに向き合ってくれて…」

葉留佳「私のことを、好いてくれて…」

葉留佳「おかげで私は強くなれたから」

葉留佳「誰も悪くない、誰も憎まなくていい」

葉留佳「世界に悪者なんていない。誰もが心に憎しみを抱えてるわけじゃない」

葉留佳「心からそう思えるようになったから」

葉留佳「そう思えるようになったのは…、理樹くんのおかげ…」

葉留佳「理樹くんのくれた、たった一回の、嘘みたいな優しさで…」

葉留佳「わた、しは…、満足した…から…」

葉留佳「だから…、わた、し…」

葉留佳「うぅ………」

葉留佳「理樹くんっ…!!」

恭介(三枝が崩れ落ちる…。堪えていた涙が零れ落ちる…)

恭介(仕方ないのことだと、そう受け入れようとしていた想いが)

恭介(次から次へと、溢れてきたんだろう…)

葉留佳「いやだっ…!!やっぱり…、こんなのいやだよぅ…」

葉留佳「わたし…、もっと、ずっと一緒にいたいよ…」

葉留佳「理樹くん…、お姉ちゃん…」

恭介(とまらなかった)

恭介(……なにも、とまらなかった)

クド「三枝さん…」

葉留佳「クド公…」

恭介(能美が三枝を抱きしめて、ぽんぽん、と背中を叩いた)

クド「…やっぱり、姉妹さんですねぇ」

葉留佳「…なにが?」

クド「佳奈多さんも、時々、私を抱きしめて泣いていました」

クド「お二人とも、泣き虫さんですねぇ」

葉留佳「うん…、双子だからね、私たち」

クド「そうでした、ね」

恭介(能美が小さく笑う)

葉留佳「普段は…、泣いたり、しないよ…。でも…」

クド「それが悪い、と言っているわけではありませんよ」

クド「誰かにすがりたいときは誰にだってあるものです」

クド「謝らなくてもいいんですよ」

恭介(そのとおりだと、俺は思った)

恭介(きっとこの場いる全員が、同じことを思っているだろう)

恭介(泣いている三枝を見ても、誰一人として笑いはしなかったのだから…)

恭介(そして能美は、ただ、静かに、続ける)

クド「差し伸べられた手を取ることが、弱さではないのと同じで」

クド「誰かにすがって泣くことが、弱さではないのだと思います」

ゆり「……………」

クド「…そばにいる誰か、に気がつけた時、自分のことがよりわかるのかもです」

クド「それは弱さではない、とわたしは思います」

クド「だから、ごめんなさい、はしなくていいのですよ」

葉留佳「ごめん、よりは、ありがとう、か」

クド「はいです」

クド「…リキもきっと、そう言いますよ」

葉留佳「ん、そうだろうね…、そうだったね…、ありがとう」

恭介(その気持ちは、俺もよくわかる)

恭介(俺もあの時、理樹に差し伸べられた手を取った)

恭介(助けを求めるものにとって、それがどれだけの救いになるのかを)

恭介(俺も理樹に教えてもらったんだから…)

ーーーーー

ーーー

葉留佳「まあというわけで、かいつまんでまとめると」

葉留佳「私は、まだまだ遊び足りないから、神様とケンカしようってわけだネ!」

葉留佳「以上!」

真人「っておいこら、ちょっと待て!」

真人「てめえ今さっき泣きながら、理樹がどうの、お姉ちゃんがどうの言ってただろうが!」

藤巻「そうだぜ!なんでそんな結論になるんだよ!?」

葉留佳「やはは、や~だなぁ。もしかして私の演技にまんまと騙されちゃった?」

野田「なっ…、演技…!?」

高松「まさかさっきの涙は全て…?」

葉留佳「そう、あれははるちんの108ある必殺技!」

葉留佳「はるちんギガンティックドリルスマッシャー!だったのである!」

日向「どこにドリルなんて要素があったんだよ!?」

クド「名前がすごくデンジャーです…!」

来ヶ谷「そうかそうか。これはおねーさんも一本とられたな」

美魚「はい。そういうことにしておきましょう」

葉留佳「女の涙は怖いのですヨ!」

葉留佳「ヘイ、ガーイズ!勉強になったかーい?」

大山「本当に狙ってあれだけの演技してたなら、アカデミー賞ものだよね」

TK「Oh, Academy Award actress!!」

竹山「あなたたちのテンションに付き合ってると、冗談なのか、本気なのか、判断に迷い始めますね…」

沙耶「順応性を高めて、あるがままを受け入れなさいよ。竹山くん」

遊佐「それが戦線の流儀です」

岩沢「あたしもその流儀に従って、どこだろうと歌い続けてきたからな」

恭介「お前は生前から、そんな感じだろ」

岩沢「さすがは棗。あたしのことよくわかってるじゃないか」

恭介「もう今更すぎるぜ」

謙吾「む、また二人だけで通じ合ってる感を出しているな…!」

葉留佳「え、なになに!?もしかして恭介さんにもそんな相手が…!」

美魚「浮気は駄目ですよ、恭介さん。恭介さんには直枝さんがいるじゃないですか」

日向「ええぇぇぇ…。直枝 理樹って男だろ?まさか、恭介お前…」

椎名「男色家…、平たく言うなら…」

高松「やはりホモですか!?」

岩沢「なにぃーーー!?棗、お前ホモだったのか!?」

恭介「ちげーよ!!なんでそうなるんだよ!?」

大山「ムキになって否定するところが、なお怪しいね!!」

ゆり「あれはマジね…!まさかとは思ってたけど、やっぱりホモだったのね…!」

ゆり「あたしの勘は正しかったわ!」

沙耶「いつから疑ってのよ!?ゆり!?」

恭介「お前ら調子に乗りすぎだぁ!!」

恭介「証拠も無いのに、勝手に人をホモ扱いすんじゃねえ!!」

真人「えー、でも恭介。お前、理樹のことが好きとか言ってたことあったじゃん」

謙吾「ああ、俺も覚えている。確かに、恭介は理樹のことが好きだと言っていたな」

ゆり「ほら、みなさい!幼馴染二人が証人よ!観念しなさい、棗くん!」

恭介「はっ!そんな発言は知らねえな!」

美魚「しらばっくれ始めましたね」

遊佐「往生際が悪いですね」

藤巻「ってか恭介…。冗談かと思ったらマジなのかよ…?」

松下「この流れだと可能性は限りなく高いな!」

恭介「高くねえよ!そこまで言うなら証拠を出せって言うんだ、証拠を!!」

来ヶ谷「ふっ、ところで、恭介氏。こんなところにテープレコーダーがあるんだが?」

恭介「は…?」

恭介(来ヶ谷が手持ちサイズのテープレコーダーを取り出す…)

恭介「お前…、それ、まさか…?」

来ヶ谷「スイッチオン」

カチッ

理樹『恭介の好きな人は?』

恭介『今んとこ、理樹が一番だな』

恭介『理樹、俺とやらないか』

ゆり「アウトーーーーーっ!!」

ゆり「完全にアウトじゃない!!しかもこれ、軽いやつじゃなくてガチなやつの台詞じゃない!!」

沙耶「嘘でしょ!恭介くん!?あなたそこまで変態だったのね!!」

日向「ひいいいいいーーっ!!」

大山「これは日向くんの尻がかなりピンチだよ!!」

藤巻「なんてたってルームメイトだからな!」

松下「いつ襲われても不思議じゃないぞ!」

TK「Forbidden fruit …!!」

椎名「あさはかなり」

恭介「来ヶ谷!!お前なんでそんなテープ持ってんだーー!?」

来ヶ谷「この世の疑問の全てに解を得られたら、哲学者は廃業だよ。恭介氏」

恭介「哲学的な言い回しで逃げてんじゃねーー!!」

美魚「恭介さんと…!直枝さんが…!やらないか…!」

フラフラバタン

クド「ああっ!西園さん!しっかりしてください!」

葉留佳「あちゃー、これは妄想が現実になって、頭がオーバーヒートしましたネ…」

岩沢「駄目だ、棗!!男同士だと、子どもが残せないんだぞ!」

岩沢「戻ってこい!お前、本当にそれでいいのか!?」

高松「岩沢さんが必死に説得していますね…!」

野田「恭介はどう答える…!?」

謙吾「これが修羅場というやつか!!」

恭介「てめえら、俺の話を聞けーーーっ!!」

恭介(結局、俺のホモ疑惑は最後まで晴れる事はなく…)

恭介(今日も夜が更けていくのであった…)

ー恭介の称号に「ホモ疑惑」が追加されましたー

というわけで今日は以上です

最近シリアスや推理回が続いたので、この回は書いててとても楽しかったです

ちなみに泣いているはるちんを慰めるキャラは登場してるメンバーによって変えるつもりでした

今回はすでにクドが登場していたので佳奈多ルート同様クドが慰めましたが

クドがいなければ姉御、女子メンバーがいなければ恭介と色々想定していました

それと最後に少し残念なお知らせです

シルバーウィークにまるで休みが無いのと
次回の自由行動回の選択肢を沢山用意しないといけない関係で
次回は本当に遅くなるかもしれません

失踪する気は毛頭ありませんし、生存報告も入れるつもりなので、気長にお付き合いいただけると幸いですm(_ _)m

本日もお疲れ様でした

シルバーウィーク連勤には勝てず一度目の生存報告です
誠に申し訳ありません

ただ自由行動前の小話がそこそこ長くなったので時間が取れ次第一度投下することにします
そのほうがスムーズに自由行動の選択に行けそうなので

もうしばらくお待ちください

恭介(かき鳴らすようなギターの音が響く。弾けるようなドラムの音も響く)

恭介(この上ないほどに興奮が高まり、サビに差し掛かる)

この喉から迸る血のような歌

誰かに届くように祈ってる

これから描く軌跡を

思い浮かべよう

そうすりゃ眠れない夜だって

夢が見れる

恭介(岩沢の歌詞は、本当に胸に響く)

恭介(一言でいうならまさに、魂がこもってる歌と言うべきなんだろうな)

恭介(でもなんだか最近の岩沢の歌は、今まで以上に熱意を感じる気がするぜ)

恭介(そんな事を考えながら、俺は「Million Star」の演奏に聴き入っていた…)

パチパチパチパチ!!

葉留佳「ブラボーー!!」

恭介「最高だぜ!!」

美魚「すごかったです…!」

恭介(三人で拍手を送る)

恭介(三枝がガルデモの歌を聞きたいと言うから、岩沢に頼んで生演奏を見学させてもらったんだが)

恭介(最初はあまり乗り気じゃなかった西園も、ガルデモの演奏に圧倒されたようだ)

恭介「どうだ、二人とも!!すごかったろ!?」

葉留佳「いや~、最高にハイになっちゃいましたネ!」

美魚「わたしもです。テレビで聞くのとは全然迫力が違うものなんですね」

美魚「恭介さんが夢中になるのもわかります」

恭介「だろ!ガルデモは最高だぜ!」

岩沢「ふふっ。ありがとな」

ひさ子「それだけ気に入ってもらえると、あたしたちも嬉しいね」

入江「聞いてもらった人から、直に感想を聞くのはあまり無いですからね」

入江「いつもはゲリラだから、そんな暇もないまま撤収しちゃうし」

恭介「そうなのか?まあ考えてみたら確かにそんな機会無いかもな」

恭介(ガルデモはまさにスター扱いだからな)

恭介(空き教室で練習してるのは、NPCたちにも周知の事実だが)

恭介(無闇に話しかけて練習の邪魔をしてはいけない、というのが暗黙の了解となっているくらいだ)

関根「ライブ前にガルデモだけで待機してる時は、他のメンバー達がボディガードしてくれるくらいですからね!」

関根「まさにVIP待遇ってやつですよ!」

岩沢「路上でやってた時には、そんな悩みを持つようになるなんて思ってもみなかったけどな」

ひさ子「有名になりすぎたが故の悩みってやつなのかねぇ」

ひさ子「贅沢な悩みだよ、まったく」

恭介(岩沢とひさ子がそう言いながら苦笑する)

岩沢「でもだからこそ、初心を忘れちゃいけない」

岩沢「あたしたちの音楽を聞いてくれる人のためなら、いつどこでだってやるよ」

葉留佳「おおっ…!これがプロフェッショナル仕事の流儀ってやつですネ!」

入江「あはは。それはちょっと大げさかも」

関根「ちなみにライブの時は、周りの熱気とかノリとかでもっと盛り上がりやすぜ!」

関根「その一体感を一度体験したらもうガルデモの虜!もう後戻りは出来やせんぜ!奥さん!」

ひさ子「今度はなんのキャラだよそれ…?」

恭介「小悪党キャラじゃないか?」

美魚「……………」ジーッ

関根「ちょっ…、さすがにそんな視線で見られるとビビるんですけど…」

美魚「あ、失礼しました。つい三枝さんと同じ対応をしてしまいました」

恭介「いや全然オーケーだ。関根は誰かがたしめないと、どこまでも調子に乗るタイプだからな」

葉留佳「それは困りますネ。周りの人に迷惑かけちゃいけませんヨ!」

関根「お前に言われたかないわーー!!」

関根「このトラブルメーカーがーー!!」

葉留佳「やはは、いや~、私も有名になっちゃったな~♪」

恭介(この数日の間に三枝は、廊下にビー玉ばら撒くわ、職員室のドアに黒板消し仕込むわ、やりたい放題だ)

恭介(規律を乱すのが戦線の流儀と知り、まさに本領発揮と言うべきなのかもしれない)

恭介(NPCに迷惑かけてる気もするが、軽いイタズラ程度なら問題無いとゆりっぺも許可している)

恭介(ま、すでに何回か立華に強制連行されたりしてるらしいが…)

美魚「わずか数日で、校内のトラブルメーカーの地位を確立しましたね」

恭介「これも一種の才能だな」

関根「ぐぬぬ…!棗先輩や大山先輩以外にもライバルが増えるとは…!」

入江「しおりんったらまたライバル意識燃やしてる…」

ひさ子「忙しいやつだな。なあ、岩沢?」

岩沢「………………」

ひさ子「岩沢?」

恭介(岩沢の様子がおかしい。ひさ子の声に反応せず、どこか上の空だ)

恭介「どうしたんだ?岩沢」

岩沢「あっ、わるい。ちょっと新曲のこと考えてたんだ」

ひさ子「そっか、それは悪いことしたね。『Thousand Enemys』だよな」

恭介(直訳して「千の敵」。ガルデモの絆と強さをテーマにした曲らしい)

恭介(初期案は「千の敵になって」だったらしいが、見事に没になったそうだ)

岩沢「いや『Thousand Enemys』じゃなくて、もう一つ新しいイメージが湧いてきたんだ」

ひさ子「マジかよ。『Thousand Enemys』だって完成したばっかなのに」

ひさ子「お前は本当にセンスの塊だな」

岩沢「いや、本当にイメージだけだよ」

岩沢「さっき関根がライブの一体感のこと話してただろ?」

岩沢「もっとファンのみんなと一つになれるような曲を作れないかと思ったんだ」

ひさ子「ふーん、一体感か」

恭介(ひさ子も興味津々といった感じで、顎に指を当てる)

岩沢「あたしたちは今でこそ、恵まれた音楽活動を送れてる」

岩沢「けどここまでやってこれたのは、ガルデモのみんな、戦線のみんな」

岩沢「そしてファンのみんながあたしたちを支えてくれたり、応援してくれたからだと思うんだ」

岩沢「だから、みんなが一つになれるような曲を作ってみたい」

入江「岩沢先輩…!」

関根「そんなこと言われたら…、涙腺が緩んじゃうじゃないですかぁ!ちくしょー!」

ひさ子「そうだな…。ま、色んなことがあったからね」

岩沢「ああ。特にひさ子には感謝してる」

岩沢「あの日ひさ子に出会って、ひさ子がバンドに誘ってくれたから、今のあたしがあるんだ」

岩沢「感謝しても感謝しきれないくらいだよ。ありがとう」

ひさ子「今更なに言ってるんだよ!?」

ひさ子「ってかあたしと組んでくれて、感謝しきれないのはあたしのほうだし…!」

ひさ子「だから、その…。ありがとな、岩沢」

恭介(岩沢とひさ子がハグを交わす。本当に仲の良い二人だ)

恭介(きっと俺たちが来る前には、本当に色んなことがあったんだろう)

恭介(そんな二人のやり取りに、俺は感動していた)

葉留佳「おやおや、良い雰囲気ですネ」

美魚「キマシタワーなキラキラエフェクトが見えるような気がします」

美魚「お二人は百合の関係なんでしょうか?」

入江「百合?百合ってなんのことですか?」

関根「女同士でキャッキャウフフする関係だぜ、みゆきちよ」

入江「岩沢先輩とひさ子先輩がキャッキャウフフ?」

岩沢「いや、そもそもキャッキャウフフってのはなんなんだ?」

ひさ子「えっ…!?あ、いや、それは…」

ひさ子(やばい…、岩沢に百合やらキャッキャウフフの、具体的な説明をされてしまったら…!)

ひさ子(そして、もし岩沢があたしの好意をLIKEじゃなくて、LOVEだと気づいたら…!)

ひさ子(終わる…!あたしの恋が…!ガルデモが…!)

ひさ子(なんとか…、なんとかいい感じに誤魔化した説明しないと…!)

恭介「キャッキャウフフとは、仲の良いやつ同士でするスキンシップみたいなもんだ」

恭介「今二人がやってたハグとか、俺たちの筋肉旋風もキャッキャウフフと言えるな」

岩沢「ああ、そういうことか」

美魚「まあ、間違いではないですね」

ひさ子(よくやった、棗ーー!!)

ひさ子(最近岩沢とえらく仲良く見えるのはちょっと気に入らないが、今日のところは礼を…)

ひさ子(………いや、待てよ?)

ひさ子(別に棗が誤魔化した説明してくれたわけじゃなくて…)

ひさ子(そもそもあたしが勝手にキャッキャウフフを、エロい方向に解釈して…)

ひさ子(一人で勝手に焦ってただけなんじゃ…)

ひさ子「………………」

ひさ子「あああああああーーっ!!」

岩沢「おい、ひさ子!?どうしたんだ、いきなり絶叫して?」

恭介(なぜかひさ子が頭を抱えて叫び出した)

恭介(かと思ったら…)

美魚「恭介さん、その筋肉旋風について詳しく!」

ガシッ

恭介(西園すごい勢いで肩を掴まれる…)

恭介「いや、普通に筋肉いぇい、いぇーい!しただけだぞ…?」

恭介「多分、西園が期待してるようなことは無いぞ…?」

葉留佳「うわぁ…、なんだかあちこち忙しいですネ」

入江「みんな仲良しですから。ねっ、しおりん!」

関根「………………」

入江「しおりん?」

恭介「なんだ、今度は関根か?」

恭介(岩沢に続いて、今度は関根の反応が無い)

ひさ子「ん?珍しいな、関根が大人しく考えごとか?」

関根「はい…!あたしはとんでもないことに気づいてしまいました…!」

ひさ子「おっ、もしかしてお前もなにか音楽のインスピレーションが…」

関根「つまりキャッキャウフフすれば!あたしも人気ものになれるんだーー!!」

ひさ子「ズコーっ!」

恭介(ひさ子が盛大にズッコケた…)

美魚「関根さんは人気ものになりたいんですか?」

関根「あい!なりたいです!」

美魚「でしたら、着眼点は間違ってないと思いますよ」

美魚「キャラ人気とカップリング人気は、密接な関係にありますから」

美魚「親友同士のカップリングは基本ですね」

恭介(西園がやたら饒舌に解説する)

関根「よーし!それではみゆきちよ。あたしと公衆の面前で、キャッキャウフフしようではないか!」

入江「いやいやいや。そんな人前で恥ずかしいことしたくないよ!」

関根「いいじゃないか!そうすればあたしたちも、岩沢先輩とひさ子先輩みたいに人気ものになれるのだよ!」

入江「いやいやいや。あたしは別に人気ものになりたいとか思わないし…」

関根「なんでじゃーー!?お前はいやいやいや。と言いつづけるロボットかーー!?」

入江「いやいやいや」

関根「くっ…!西園先生!他に人気が出るカップリングはあるんでしょうか!?」

美魚「ありますよ。例えば兄貴分と弟分ですね」

美魚「わたしが推す恭×理も、親友カテゴリの他にこの分類にも含まれます」

美魚「戦線メンバーで言えば、恭介×日向に並ぶ人気カップリング、恭介×大山がこれに該当しますね」

恭介「ちょっと待てぇ!?それはどこで人気になってんだよ!?」

恭介「俺と日向と大山をそんな目で見んじゃねえっ!!」

美魚「ちなみに日向×大山も人気ですよ?」

恭介「どうでもいいわ!そんな情報ーーっ!!」

関根「兄貴分と弟分。つまり姉貴分と妹分。はっ…!?ひさ子先輩とあたし…!」

関根「いや無理だ…、岩沢先輩とひさ子先輩のイメージが強すぎる…!」

関根「これを塗り替えることは難しいっ…!くそーーっ!!」

岩沢「みんなは一体なんの話をしてるんだ?」

葉留佳「いや~、世の中には知らないでいたほうが良いこともありますヨ。岩沢さん」

岩沢「?」

美魚「その他には、宿命のライバルというのも中々に人気があります」

美魚「わたしは専門外ですが、ゆり×天使の組み合わせも男子から人気があるようです」

恭介「ゆりっぺが聞いたら発狂しかねないな…」

入江「天使のことすごい敵視してますもんね…」

美魚「あとはマイナーではありますが、恭介×野田もそこそこ人気があります」

恭介「マジかよ…!?俺と野田のライバル設定ってそんなに広まってたのか?」

岩沢「それなら野田が、練習中のあたしたちに直接言いに来たよ」

岩沢「俺と恭介は宿命のライバルだー!とか、それだけ言ってすぐ帰っていったけど」

関根「校内でも叫んで回ってましたね」

恭介「どんだけ俺とのライバル設定に拘ってんだあいつはーーっ!?」

美魚「他にも恭介×藤巻というのもあります。藤巻さんのツンデレ具合が良いとか」

葉留佳「ひくほど人気ものですネ…、恭介さん…」

関根「ともかく、つまりあたしも宿命のライバルキャラを作ればいいわけですな!」

恭介「お前は、本当に口調がコロコロ変わるな」

入江「しおりんは気分でキャラが変わりますから…」

関根「そうとわかれば話は早い!やい、三枝 留葉留佳!!」

葉留佳「え、なに?」

関根「お前を今日から、あたしの宿命のライバルと認定するーーーっ!!」

ドン!!

恭介(関根が、三枝に対して大声でライバル宣言する)

葉留佳「やはは、頭わいてますね」

関根「なんでじゃーー!?」

恭介「いや、当然の反応だろ」

入江「唐突すぎるよぉ、しおりん…」

関根「頼んますぅ、はるちん様ぁ!あたしをライバルにしてくだせえ!」

関根「あたしも人気ものになりたいんですぅーー!!」

岩沢「ライバルに対して下出に頼むってのはどうなんだ?」

恭介「ライバルの定義からして危ういな」

ひさ子「関根ぇ…!そんな邪な方法で人気ものになろうとしてんじゃねえーー!!」

ミシミシミシっ…

関根「ぎゃあぁーーーっ!!腕がぁ…、体がぁ…っ!」

美魚「あれは、コブラツイストというやつでしょうか?」

恭介「ああ、完全にキマってるな」

恭介(いつの間にか復活したひさ子が、関根をシメ上げている)

ひさ子「もっとベースの練習して、真っ当に人気ものになりやがれぇーー!!」

関根「わ、わかりましたっ…、わかりましたから、ギブっ、ギブーーーっ!!」

岩沢「やれやれ、ほんとに困ったやつだな。関根は」

葉留佳「まあ、ある程度はわざとだと思いますヨ?」

入江「わざと?」

岩沢「どういう意味だ?」

葉留佳「いやぁ~、イタズラしたり騒いだりしてると、誰かがかまってくれるでしょ?」

葉留佳「私も昔、お姉ちゃんにかまって欲しくて、イタズラしてたってのもあったからさ」

葉留佳「だからようは、しおりんも私と一緒でかまってちゃんなんだと思いますヨ!」

関根「ちょっ!?」

ひさ子「えっ?そうだったのか?」

岩沢「なんだ、それならそうと言えば良かったのに」

入江「しおりんは素直じゃないなぁ」

恭介(それを聞いて、岩沢と入江がニコニコし始める)

恭介(が、一方関根は…)

関根「いやいやいや!あたし別にそういう扱い望んでませんけど!?」

恭介(必死になって否定している)

葉留佳「とか言いながら、内心嬉しくてたまらないんですヨ♪」

ひさ子「そういうことならかまってやるよ。今からマンツーマンで練習に付き合ってやる!」

関根「ええええええーー!?」

入江「良かったね、しおりん!」

岩沢「あたしが必要な時は、いつでも呼んでくれ」

恭介「さすがガルデモ、素晴らしい絆だ!」

美魚「息ぴったりですね」

関根「いやいやいや!そういうんじゃなくて、ただもっと目立ちたかったというか、出番が欲しかっただけというか…」

ひさ子「なにごちゃごちゃ言ってんだよ。ほら行くぞ」

ズルズルズルっ…

関根「うわあああん!おのれ三枝 葉留佳ーーー!!覚えてろよおぉぉぉ…」

恭介(またもひさ子に引きずられて、関根はどこかに旅立っていった)

美魚「テンプレ通りの捨て台詞でしたね」

葉留佳「私って客観的に見るとあんな感じなんだね、しおりんとは仲良くなれそうだなぁ♪」

入江「すでに仲良しにしか見えなかったよ」

恭介「新たな友情が生まれるのは素晴らしいことさ…!」

恭介(こんな風に三枝や西園たちも、どんどん他のみんなと仲良くなって欲しいな)

恭介(もっともっと、楽しさや賑やかさで日常を染められるように…)

岩沢「そうだ。棗たちはこれからどうするんだ?」

恭介「ん?そうだな、解散した後、俺は気ままにブラブラするかな」

葉留佳「意外と暇ですもんネ、戦線の幹部って」

美魚「本来は体力作りとか、銃の訓練をするんですよ?」

恭介「……………」

葉留佳「………………」

美魚「恭介さん、三枝さん。聞いていますか?」

恭介「三枝…」

葉留佳「はい、この場は…」

恭・葉「「逃げるぅーーー!!」」

恭介(俺と三枝はそのまま、別方向へと逃走することにした…!)

入江「逃げちゃった」

岩沢「相変わらず楽しいやつだな、あいつらは」

美魚「恭介さんは黙っていればカッコイイんですから、あまり奇行に走らないで欲しいです」

美魚「夢が壊れます」

恭介(三人の会話を背中越しに聞きながら、俺はこれから何をしようか考えながら廊下を駆けるのであった…)

来ヶ谷「やあ、恭介氏」

恭介(みんなと離れ一人で歩いていると、来ヶ谷が声をかけてきた)

恭介「よう、来ヶ谷。俺になんか用か?」

来ヶ谷「うむ、少し恭介氏に伝えておきたいことがあってな」

恭介「伝えておきたいこと?」

恭介(随分、神妙な雰囲気だ。これは本当に大事な話らしいな)

恭介「わかった、場所を変えるか」

来ヶ谷「話が早くて助かるよ」

恭介(二人で屋上に移動する。聞かれたくない秘密の話をする時は、この場所が都合が良い)

来ヶ谷「伝えておきたいこととは、天使エリア侵入作戦で私たちが掴んだ情報についてだ」

恭介「!!」

来ヶ谷「恭介氏はあの場にいなかっただろう。気になっていたんじゃないか?」

恭介(確かに気になっていた情報だ。もしかしたら、立華を戦線の仲間にするのに使えるかとしれない…!)

恭介「ああ。教えてくれ、来ヶ谷!」

来ヶ谷「了解した。これは私の推理も含むものだから心して聞いてくれ」

来ヶ谷「あの後、竹山君がパスワードを解析し、立華君のパソコンを立ち上げることに成功した」

来ヶ谷「そして、ゆり君が目をつけたのは『Angel Player』というソフトだった」

恭介「『Angel Player』?」

来ヶ谷「パソコンにインストールされていた、見た目はごく普通のソフトだったよ」

来ヶ谷「だが、そこにはこういった文字の羅列があった」

来ヶ谷「harmonics、distortion、handsonic、delayとな」

恭介「それは…、立華のガードスキル!」

恭介(harmonicsというのには心当たりが無いが、それは確かに立華の扱える能力の名前だ)

来ヶ谷「ああ。私は実際に立華君がそれを使う様を見たことは無いが」

来ヶ谷「ソフトに表示された特徴と、話に聞いていた特徴が一致していた」

来ヶ谷「おそらくだが、『Angel Player』とはガードスキルを開発するソフトなんだろう」

来ヶ谷「立華君は自らガードスキルを開発し、戦線に対抗していたということになるな」

恭介(立華の言っていた台詞を思い出す…)

立華『戦線の人たちには、戦う相手が』

立華『まだ、「天使」が必要でしょう?』

恭介(あいつはそのソフトを使って人智を超えた力を手にして)

恭介(生徒会長として世界を守り、天使として戦線と敵対してきたということか…)

来ヶ谷「それと気になったのは、画面の右上部分に表示されていた4桁の数字だな」

来ヶ谷「『2121』という数字だった。随分とキャッチーなフォントでな」

来ヶ谷「明らかに異質だったんだが、さすがにその数字の意味まではわからなかったよ」

恭介「4桁の数字か…、気になるな。なにかのパスワードか…?」

来ヶ谷「まあ、現段階では捨て置くしかないだろうな」

来ヶ谷「それより重要なのは、立華君が自分で能力を開発していたという事実だ」

来ヶ谷「立華君が本当に神の使い『天使』であるなら、わざわざ自分で能力を開発する必要などあるはずがない」

来ヶ谷「神に能力を与えてもらえばいいだけだ」

恭介「ああ…。そして、ガードスキルという人智を超えた能力こそが、ゆりっぺ達が立華を天使と考えていた根拠だ」

恭介「ということは少なくともゆりっぺは、すでに立華が天使じゃなく人間だと気づいているんだろうな…」

来ヶ谷「でなければ、私たちに『Angel Player』の情報を隠す必要は無いからな」

来ヶ谷「まあ、他のメンバーの表情も観察していたが、それに気づいたのは私とゆり君だけだったと思うよ」

恭介「いや、一度も立華のガードスキル見てもないのに、そこまで気づけるお前がすげえよ」

来ヶ谷「ふっ。リトルバスターズの知能担当は恭介氏だけでは無いということだよ」

来ヶ谷「さて、恭介氏。ここてクエスチョンだ」

恭介(来ヶ谷が俺に向き直る)

来ヶ谷「これで恭介氏は、立華君が天使ではなく人間だという確証を得たことになる」

来ヶ谷「これを使えば、立華君を仲間にすることも可能だろうな」

来ヶ谷「だが…」

恭介「………お前の問いたいことは分かってるぜ、来ヶ谷」

恭介「戦線のメンバーたちの中には、天使である立華を強く敵視してる奴らもいる」

恭介「特に…、ゆりっぺは」

恭介(俺たちはついこの間、ゆりっぺたちの為に楽しい思い出を作っていこう)

恭介(そうして、神への憎しみを和らげていこうと誓ったばかりだ)

恭介(だが、ずっと敵視していた立華を仲間に加えるということ)

恭介(それは逆にゆりっぺの精神を、追い詰めてしまうことになるかもしれない…)

恭介(何十年と敵対し、戦い続けてきたのは事実だ。そう簡単に割り切れるものではないだろう)

恭介(だが、必ずリトルバスターズの仲間にすると立華にも約束している…)

恭介(なら俺は、どうするべきだ…?)

恭介(このままゆりっぺにAngel Playerから得られた確証を、ぶつけてしまっていいんだろうか…?)

恭介(ゆりっぺを追い詰めるようなことを…)

恭介(それをすれば、今後俺がゆりっぺにどう思われてしまうかは想像がつく)

恭介(だが、この悲しくて不幸な対立を終わらせるには…)

恭介(ゆりっぺのためにも、立華のためにもそうするしかない…!)

恭介(そうするしかないんだ…)

ゆり『だから安心して、棗くん』

ゆり『なにがあっても、あなたは…』

ゆり『あたしが守るわ』

恭介(ぐっ、俺は…!)

恭介(俺は…)

来ヶ谷「……………」

来ヶ谷「ところで恭介氏。『二兎を追う者は一兎をも得ず』という諺を知っているか?」

恭介「…ああ、結構メジャーな諺だな」

来ヶ谷「そうだな。この諺は」

来ヶ谷「『 同時に違った二つの事を成そうとする愚か者は、結局どちらも成すことは出来ない』というたとえだ」

恭介「………」

恭介(来ヶ谷の言葉が胸に刺さる…。ここでいう愚か者とは、つまり俺のことなんだろう…)

恭介(今は敵対関係にあるゆりっぺと、立華)

恭介(その二人の為に成すべきことを、同時に追いかけようとしているんだから…)

恭介(諺通り、本当になにも成せなくなるかもしれない)

恭介(だが、それでも…!だとしても…!)

恭介(俺は諦めたくない、いや絶対に諦めない!)

恭介(どんなに困難な道だとしても、小さな希望だとしても)

恭介(俺はその道を進む、希望を掴んでみせる。それが、『抗う』ということのはずだ…!)

恭介「来ヶ谷、俺は…!」

来ヶ谷「ふっ…。それとなあまり知られていないがこの諺には、関連するもう一つの諺があるんだ」

恭介「えっ…?」

来ヶ谷「諺というよりも、あるキャッチコピーなんだがな。その言葉は」

来ヶ谷「『二兎を追う者だけが、二兎を得る』だ」

恭介「二兎を追う者だけが…、二兎を得る…」

来ヶ谷「そうだ。一つしか追わない者は、結局得られる物も一つだけ」

来ヶ谷「みんなを救う答えなど、得ることは出来ないだろうな」

恭介「…来ヶ谷!」

来ヶ谷「恐れるな、恭介氏。私たちはみんな恭介氏と同じ想いだ」

来ヶ谷「一人で二兎を追う必要は無い。みんなで二兎を追えばいい」

来ヶ谷「だが、追う意志が無ければなにも始まらない」

来ヶ谷「そうだろう?我らがリーダー殿?」

恭介(来ヶ谷はそういうと、ニコッと笑った)

恭介(出会ったばかりの頃には、決して見せてくれなかった笑顔)

恭介(とても人間らしい、綺麗な笑顔だった)

恭介「………ありがとな、来ヶ谷」

恭介「ちょっと、行ってくるぜ」

来ヶ谷「うむ、行ってくるといい。そのほうが恭介氏らしい」

恭介(そうして俺は走り出す。きっとその先に、みんなを救うための希望があると信じて…!)

来ヶ谷「……………」

来ヶ谷「ふっ。私らしくもないな、こういうのは柄じゃないんだが」

来ヶ谷「だが、君ならきっと笑わずに受け入れてくれるだろう?」

来ヶ谷「なあ、理樹君?」

来ヶ谷(私の呟きは、誰にも聞こえることもなく、風の音とともに消えていった…)

今日は以上です
予告通り、自由行動前の小話が思いの外長くなったので先に投下しました
次回は再開と同時に移動場所選択になる予定です

最近、切実に執筆が早くなる超能力が欲しいです
2nd beatもRewriteアニメも楽しみにしながらなるべく早く再開出来るよう頑張ります

長らくお待たせしました
明後日、8日の20時より再開します
いきなり移動場所の選択からスタートします

選択安価 残り6回

行き場所を選んで下さい

1 本部
2 校内をぶらつく
3 音楽の聞こえる教室
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6 犬小屋
7 駐車場
8 中庭←NEW!

20:10:00:00
↓1

恭介(中庭にやってくる)

恭介(そこにあったのは、見慣れた幼馴染の姿。一心不乱に竹刀を振り続けている)

恭介「よっ、精が出るな。謙吾」

謙吾「恭介か、まあ日課だからな」

恭介(チラッと俺に視線を向けると、すぐさま練習を再開する)

恭介(昔からそうだが、本当に真面目というか、大した集中力だ)

恭介「こっちに来てからも、ずっと続けてんのか?」

謙吾「まあな。俺はもっともっと強くならなければならない」

謙吾「剣の腕もそうだが、心の面でもな」

謙吾「そういうお前は、あまり真面目に鍛錬を積んでいないそうだな」

恭介「俺はあれだ。戦線のみんなとの交流に忙しいんだよ」

謙吾「調子の良いことを。まあ、楽しいことや遊びにおいて、お前の右に出る者はいないのも事実」

謙吾「鍛錬よりも、お前はそっちを優先するべきなのかもしれないな」

恭介「さすがは親友。俺のことわかってくれてるじゃねえか」

謙吾「ふっ。何年の付き合いだと思ってる」

恭介(最後に、一際力のこもった素振りをすると、謙吾は竹刀を置いた)

恭介「日課終了か?」

謙吾「ああ。この後特に予定も無いし、せっかくだから俺もお前に付いてまわ…」

恭介「どうした、謙吾?」

恭介(ベンチのあたりでキョロキョロしている)

謙吾「恭介。ここに置いてあった俺のちょんまげを知らないか?」

恭介(真顔でそう聞いてくる…)

恭介「知らねえよ…。いきなり大ボケかますんじゃねえよ」

恭介(謙吾のボケは唐突でわけわからんものが多いから、対応に困る)

恭介(マジで頭のネジ一本と言わず、二、三本飛んでるとしか思えないな…)

謙吾「まあ、ちょんまげは冗談だが、タオルが無くなったみたいなんだ」

恭介「タオル?いや、知らねえな。ベンチに置いてあったのか?」

謙吾「ああ。気づかないうちに風で飛ばされたのかもしれないな」

恭介「だとしたら、探すのは骨が折れそうだな。購買で新しいタオル買ってきてやろうか?」

謙吾「ダメだ!あのタオルじゃないとダメなんだ!」

恭介(カッと目を見開く謙吾)

恭介「なんでだよ…?」

謙吾「あのタオルには、リトルバスターズジャンパーと同じ猫の刺繍を入れてあったんだぞ!」

謙吾「これは大事件だ!リトルバスターズタオル失踪事件だ!」

恭介「つまり探そうってか?」

謙吾「ニャーっ!!」

恭介(『そうだ!』って意味なんだろうな…)

恭介「わかった、わかったよ。探すの手伝ってやるよ」

謙吾「さすがは恭介。これぞ絆だな」

恭介「そんな言われ方すると、ずいぶんショボい絆に思えるような気もするけどな…」

入江「あの~?」

謙吾「ん?」

恭介「なんだ、入江。どうかしたか?」

恭介(入江が話し掛けてくる)

入江「これ、もしかして宮沢さんのタオルですか?」

恭介(そう言うとタオルを差し出す。白の布地に、ジャンパーと同じ猫の刺繍がしてある)

謙吾「こ、これは…!?間違いなく俺のリトルバスターズタオル!!」

謙吾「どこにあったんだ!?」

入江「拾ったのはあたしじゃなくて、しおりんです」

入江「もしかしたら宮沢先輩のタオルかもしれないから、渡してきてあげてって頼まれまして」

謙吾「ありがとう、入江!これは大切なタオルなんだ!後で関根にも礼を言わないとな」

入江「いえいえ、無事見つかって良かったですね」

恭介(謙吾のタオルは見つかった。リトルバスターズタオル失踪事件は解決したんだ…)

恭介(だが、この嫌な予感はなんだ…。そもそもタオルは本当に風で飛ばされたのか?)

謙吾「さて、早速汗を拭くとしよう」

恭介(謙吾がタオルを顔に当てようとする…)

恭介「待て、謙吾!!」

謙吾「なんだ、きょうす…」

ベチャ

入江「え?」

謙吾「は?」

恭介「…遅かったか」

関根「ぐふふ、ふーはっはっは!作戦大成功だーーっ!!」

恭介(すぐ近くの茂みから、関根が顔を出す)

恭介(どうやら、俺たちの様子をずっと観察してたようだ)

入江「しおりん!?なにしてるの、そんなところで?」

関根「決まってるであろう、みゆきちよ!」

関根「オペレーション・瞬間接着タオルの成り行きを見守っていたのだよ!!」

謙吾「瞬間接着タオルだとぉーーっ!?」

恭介「そのまんまなオペレーション名だな」

入江「しおりん…、だからこっちの向きで渡すようにって念押ししたの?」

関根「当然だよ。じゃないとこの作戦は成立しない」

関根「そして純粋なみゆきちは、特に疑いもせず、見事任務を果たしてくれた」

関根「良い仕事するじゃないか、みゆきち♪」

入江「知らないうちにイタズラの共犯者にしないでよーー!」

恭介(ウインクする関根と、必死に抗議する入江)

恭介(この分だと、常日頃から入江は関根に振り回されてるみたいだな)

謙吾「ぐぅーっ!ぬぅーーっ!!」

謙吾「は、外れん…!」

恭介「こりゃ相当強力な接着剤使いやがったな?」

関根「そりゃあ、簡単に外れたらイタズラの意味がありませんからね!」

恭介(悪びれる様子もなく、開き直る)

謙吾「そもそもイタズラするなーーっ!!」

入江「そうだよ、どうしてこんなことしたの?しおりん!」

関根「そう責めてくれるな、お二人さん。これも全て、あたしがあいつを…」

関根「宿命のライバル!校内のトラブルメーカー!三枝 葉留佳を超えるためなのだーー!!」

ドーン!!

入江「本当に三枝さんを、ライバルってことにしたんだ…」

恭介「アホだな」

恭介(ようは三枝に対抗して、自分もイタズラしてみたってことか)

恭介「災難だったな、謙吾」

謙吾「くっ…、不覚だ。なぜ俺がまたもこんな目に…」

関根「へ、また?」

恭介「ああ。そういや前にも、三枝のイタズラトラップに引っかかったことあったっけか」

関根「な、なんだってーー!?」

恭介(あの時は確か、びしょ濡れになって、制服で登校する破目になったんだったな)

恭介(まあ、制服で登校するのが本来あるべき姿なんだが…)

関根「お、おのれぇ…。よもや先を越されていたとは…!おそるべし、三枝葉留佳…!」

入江「しおりん、そんなことより、宮沢さんに謝って!迷惑かけたんだから、ちゃんと謝らないと」

関根「うむうむ、みゆきちは良い子だねぇ。あたしはそんなみゆきちのとを愛しているよ」

恭介「誤魔化そうとしても無駄だからな、関根」

関根「ちっ…!」

入江「ちっ…!なんて言わないの!」

恭介(それにしても、癖のある凸凹コンビだな。関根と入江も)

謙吾「まあ、この際過ぎたことは水に流そう…。それより、このタオルはどうやったら外れるんだ?」

関根「あ、それなら簡単ですよ。水につければあっさり外れるはずです」

謙吾「つまり、まさに水に流さないといけないわけか…」

関根「いやー、いいじゃないですか!水も滴る良い男って言いますよ!」

恭介(そんな感じで話を続けていると…)

??「ふっふっふ。そこに私、参上ーー!!」

謙吾「何者だ!?」

恭介「いや、もう声でわかるだろ」

葉留佳「はるちん!スプラッシュバケツフォール!!」

ザバーンっ!!

謙吾「ぶはーーーっ!!」

恭介(どこからともなく現れた三枝が、謙吾の顔目掛けて、バケツで水をぶっかける)

葉留佳「ふぅ…、任務完了ですネ!」

恭介(やりきったぜ、と言わんばかりに汗を拭う仕草をしている…)

謙吾「なにが任務完了だぁ!いきなりなにをする、三枝っ!!」

葉留佳「怒らない、怒らない。私は謙吾くんが水を必要としている知って、駆けつけてあげたんですヨ?」

謙吾「顔目掛けてぶっかける必要は無いだろうがーーっ!!」

葉留佳「まあまあ、細かいことは気にしない、気にしない」

恭介(関根同様、全然悪びれていないようだ)

関根「ぐぬぬ…!まさかあたしのイタズラに被せて、更ならイタズラをしてくるとは…!」

葉留佳「やはは。まだまだだねぇ、しおりん!」

葉留佳「リトルバスターズイタズラ担当のはるちんに挑もうなど、一億光年早いのだーーっ!!」

入江「一億光年って距離なんじゃ…」

恭介「またベタな間違いだな」

謙吾「まったく、困ったやつらだ…」

恭介(謙吾が文句を言いながら、タオルで顔を拭いている)

関根「って、あれ…?」

入江「えっ…?」

謙吾「なんだ?二人して俺の顔を見つめて」

関根「……………」

入江「……………」

関・入「「どちらさまですか…?」」

恭介「ぷっ!」

葉留佳「ぷはっ!」

恭介(二人の反応に、三枝と同時に吹き出す)

謙吾「俺だ、謙吾だ!宮沢謙吾だぁーー!!」

関根「えぇーーっ!?マジですか、髪下ろすと別人ですね…」

入江「ごめんなさい。本気で誰かと思っちゃいました…」

葉留佳「気持ちはわかりますヨ。謙吾くんが髪下ろしてるのってレアだもんね」

恭介「そうなったのは、三枝が水ぶっかけたからだけどな」

関根「へぇ~、水かぶってるとイケメンですね。いっそ普段から水かぶってたらどうですか?」

謙吾「そんなことせんでも、髪を立てなければいいだけの話だ」

恭介「イケメンってのは否定しなかったな?」

謙吾「まあ、正直そう言われて悪い気はしないからな…」

恭介(照れながら、頬をかく)

葉留佳「そういえば謙吾くんって、どうして髪立ててるの?」

謙吾「まあ、トレードマークというのもあるが、気合いを入れるためだな」

謙吾「剣道をしている時だけではなく、常日頃から気を引き締めるための、勝負ヘアーというやつだ」

恭介「剣道バカだからな、お前」

葉留佳「でもその髪型でも、結構女子から人気あったよね。謙吾くん」

恭介「ああ、笹瀬川とかな」

関根「ほほう、ということは生前はモテモテだったんですね?」

恭介(興味ありげに、にやにやしている関根)

謙吾「生憎、リトルバスターズと剣道の方が大事だったんでな」

謙吾「特に浮かれた話は無かったぞ」

入江「そうなんですか。ちょっと勿体無いですね、こんなに格好いいのに」

恭介「…まさか、入江。謙吾に脈ありか?」

入江「えええぇぇーーーっ!?」

恭介(予想外のフリだったのか、珍しく大声で叫ぶ)

葉留佳「あれま、これは意外な組み合わせですネ!」

関根「そーかそーか、ついにみゆきちも恋する乙女かぁ」

入江「違います!違います!そういう意味で言ったんじゃありません!」

関根「戦線内恋愛が禁止とでも?それにさっき宮沢先輩も言っていたじゃないか」

関根「リトルバスターズの方が大事だったと!」

関根「つまり!同じリトルバスターズメンバーの恋愛ならアリだと、そう言っているんだよ!」

謙吾「俺もそういう意味で言ったんじゃないっ!!」

恭介(少しムキになって否定する二人)

葉留佳「まあでも、恋っていいものだと思うよ」

関根「はるちんの言うとおり!あたしはいつだって、みゆきちの幸せを祈っているのだよ!」

恭介「恋によって得られる幸せ。それはとっても『プライスレス』…!」

葉留佳「なんで恭介さんが言うと、こんなに胡散臭いんですかネ…」

関根「まったくだぜ…、なんか台無しじゃないですか…」

恭介「なぜだっ!?」

入江「大体、そういうしおりんはどうなの!?」

入江「好きな人とかいないの!?」

関根「あたしはこれといって、仲の良い男子はいないからなぁ」

関根「よって!ここはみゆきちの恋を応援することに徹しよ…」

謙吾「真人と仲いいじゃないか」

関根「ぶふぉっ!!」

恭介(謙吾の反撃に、関根が思いっきり吹き出した)

葉留佳「えっ!?しおりん、まさかの真人くん狙い!?」

関根「んなわけあるかぁーー!!なんでそうなるんじゃぁーー!!」

恭介「さては、デーモン・ピクニックでの戦いで愛が芽生えたか…」

入江「話もあってるみたいだし、しおりんこそお似合いだよ。あたし応援するね」

関根「や・め・ろぉーーっ!!」

関根「そりゃ嫌いじゃないですけど、あたしにだって彼氏に対する理想ってもんがですねぇ!!」

葉留佳「理想なんて関係ないって。結局、大事なのは優しさですヨ!」

恭介「さすがは恋愛経験者の言葉だ。重みが違うな」

謙吾「真人はあれで、とても気の利く優しいやつだぞ。良かったな、関根!」

関根「ちっがーーーう!!」

関根「ちがいますからぁーー!!」

恭介(みんなで仲良く、関根をイジりながら過ごした)

選択安価 残り5回

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1 本部
2 校内をぶらつく
3 音楽の聞こえる教室
4 図書館
5 橋の下(川)
6 犬小屋
7 駐車場
8 中庭

20:40:00:00
↓1

恭介(駐車場にやってくる)

恭介(前に岩沢が、駐車場でライブしてる戦線メンバーがいると言ってたからだ)

恭介(ガルデモの曲をコピーして歌ってるくらいだ。さぞ熱狂的なガルデモファンなんだろう)

恭介(一度会っておきたい)

恭介(すると、ギターの音と誰かの歌声が聞こえてくる)

恭介(この声は…)

恭介「ユイ…!?」

恭介(視線の先には、陽動部隊の下っ端、ユイがいた)

恭介(どうやら一人でギターの練習をしているようだ)

恭介(岩沢の言ってた、たまに駐車場でライブやってる戦線メンバーって、ユイのことだったのか)

ユイ「えっ?ああーーっ!!棗先輩!!」

恭介「よう、久しぶりだな。ライブしてるのってお前だった…」

ユイ「チェストぉぉおおぉぉーーっ!!」

バキッ!!

恭介「ぐはっ!!」

恭介(なぜかいきなり、飛び蹴りをくらった…。つか、パンツ見えるぞお前…)

恭介「いってえ…、いきなりなにすんだよ!」

ユイ「おまえが岩沢さんに抱きつくような真似をしたからじゃあーーーっ!!」

ユイ「岩沢さんは、あたしたちファンみんなの憧れなのにっ…!」

ユイ「なのにまさか、本当に手を出そうとするヤローが現れるとはぁーーーっ!!」

恭介(俺が岩沢に抱きついたのを怒ってんのか…)

恭介「すまん。あれはちょっとしたわけがあったんだよ…」

ユイ「どういうわけがあったら抱きついたりするんですかっ!?」

恭介(さて、どう答えたもんか…)

恭介(幹部じゃないユイに、この世界の仕組みを話していいもんなんだろうか)

恭介(あんまり迂闊なことすると、ゆりっぺに迷惑かけかねないしな…)

恭介(そんな事を考えていると…)

岩沢「……………」

恭介「ん、岩沢?」

ユイ「誤魔化そうとしても無駄ですよ!こんなところに岩沢さんがくるわ、け…」

恭介(間違いない、岩沢だ。こっちに歩み寄ってくる)

恭介(それに気づいたユイは、信じられないとでも言いたげな表情でフリーズする)

岩沢「あれ、棗も来てたのか。知り合いだったのか?」

恭介「まあ、ちょっとな」

ユイ「あわわわわ、なんで岩沢さんがあたしなんかの前に…!」

恭介(焦りながら手をバタバタさせている。憧れの岩沢の登場に軽いパニックになってるみたいだ)

岩沢「初めまして。ユイって言うんだよな?あたしは岩沢 まさみだ」

ユイ「へっ…!あっはい、ユイです!」

ユイ「あ、あの、あたしガルデモの、岩沢さんの大ファンで、それで…!」

岩沢「知ってる。いつもここでガルデモの曲弾いてくれてたよな」

ユイ「し、知っててくれたんですか…!?」

岩沢「ああ。そんなお前に、今日は頼みたいことがあって来たんだ」

ユイ「頼みたいこと…?」

恭介(なんだろうな一体。ユイに頼みたいことって)

岩沢「ふぅ…」

恭介(心を落ち着かせるように、軽く深呼吸する岩沢)

恭介(そして…)

岩沢「あたしとバンドをやってくれっ!!バンド名は、『Girls Dead Monster』だっ!!」

ユイ「えっ…?」

恭介「えっ…?」

ユイ「………………」

恭介「………………」

岩沢「………………」キリッ

ユ・恭「「ええーーーーーっ!?」」

恭介(俺とユイの叫び声は、高く広がる青空にどこまでも響いていった…)

ユイ「♪希望照らす光のう~た をーーっ♪」

ユイ「そのっう~た~をーーっ♪」

恭介(場面は変わって、ガルデモがいつも練習している教室)

恭介(他のガルデモメンバーも集合済みだ)

恭介(憧れのガルデモに見られながらの歌は、相当緊張したっぽいが)

恭介(途中からはふっ切れたように、楽しそうに歌っていた)

恭介(良い歌だと、素直にそう思った)

恭介(楽しそうで、それでいてとても元気がもらえるような、そんな歌だった)

ひさ子「へえ…、さすが岩沢が目をつけただけあるな」

岩沢「だろ?」

ひさ子「ああ、ユイって言ったか。なかなかいいじゃん、おまえ」

ユイ「ほ、ほんとですかーーっ!?」

入江「でもびっくりしましたよ。岩沢先輩がいきなり、『メンバーに加えたいやつがいる』なんて言うんですから」

関根「いやあ、思い出すねえ。あたしも岩沢先輩とひさ子先輩から」

関根「『あたしたちには関根が必要なんだーーっ!!』なんて熱烈な勧誘をされた時のことをっ!」

ひさ子「勝手に過去捏造すんじゃねえっつの。棗とユイが誤解するだろ」

恭介「大丈夫だ、全然信じてないからな」
ユイ「大丈夫です、全然信じてませんから」

関根「少しは信じろよーーっ!?」

入江「いやいやいや。だってありえないよ、しおりん…」

ひさ子「まあ、まだまだ荒削りなところも多いけどな」

ひさ子「特にユイの場合、歌に集中するとリズムがよれてる」

ひさ子「逆にギターに集中すると、歌が疎かになってる。自覚あるか?」

ユイ「うっ…、さすがはひさ子さん…。あたしの弱点を一曲で見抜くなんて…!」

岩沢「まあ、そういうのは慣れの問題もあるからな」

岩沢「何曲も歌って経験を積めば、少しずつ解消されていくよ」

ひさ子「そうだな。岩沢とユイとあたしのトリプルギターって編成も面白そうだ」

ひさ子「あたしがみっちりしごいてやるよ」

ユイ「ひさ子さんがあたしを…!?こ、光栄ですっ!ありがとうございます!!」

関根「ありゃりゃ。めちゃくちゃ緊張してるな、ユイ」

恭介「もともとあいつはガルデモのファンだからな。無理ないだろ」

恭介(俺も最初は驚いたが、この分だとユイは問題なく、ガルデモの新メンバーとして受け入れられそうだ)

恭介(が…)

岩沢「待ってくれ、ひさ子」

ひさ子「ん、どうした?岩沢」

岩沢「トリプルギターはもちろんだけど…」

岩沢「あたしはユイにボーカルをやって欲しいんだ」

ユイ「うぇっ…!?」

恭介(岩沢の提案にユイの声がひっくり返る)

ひさ子「ボーカル!?何言ってんだよ、岩沢!ガルデモのボーカルはお前だろ!」

岩沢「ああ、もちろんあたしも歌う。だから、あたしがやりたいのは…」

岩沢「あたしとユイのダブルボーカルなんだっ!」

恭介「なっ…!?」

ひさ子「はっ…!?」

入江「えっ…!?」

関根「へっ…!?」

ユイ「………………」パクパク

「「ええーーーっ!?」」

恭介(こいつはさっきより驚いたぜ…)

恭介(岩沢が前に言ってたやりたいことってのは、ユイとのダブルボーカルのことだったのか…!)

ひさ子「マジかよ、岩沢!?ハモリとかじゃなくて、ダブルボーカルか!?」

岩沢「ああ。あたしは本気だ」

ユイ「あ、あわ、あわわわわわ………」

入江「ああっ、ユイが白目になって泡吹いてる…!」

関根「気持ちはわかるけど、女子がしていい顔じゃないって…!」

恭介「おい、ユイ、帰ってこい!正気に戻れ!」ペチペチ

恭介(ユイの頬を軽く叩く)

ユイ「はっ…!?夢か…、そっか。おかしいと思ったんだよなぁ」

ユイ「岩沢さんがあたしとバンドやってくれだの、挙句ダブルボーカルだの…」

ユイ「夢にしても出来すぎてるって…」

岩沢「夢じゃないぞ」

ユイ
「でゅるわぁあああああぶるわっひゃあひゃひゃひゃひゃどぅるわっはあああああああああぎゃあああああうわああああああああ」

恭介「落ち着け、ユイ!それは人間の悲鳴じゃないぞ…!!」

恭介(駄目だ、完全にパニクってる…)

ひさ子「ほら、肝心のユイがこんな調子じゃねえか」

岩沢「だめか、ユイ?」

ユイ「いや、あの…。だめとかじゃなくてですね…」

ユイ「岩沢さんとダブルボーカルなんて恐れ多いというか、どうしてあたしなんでしょうか…?」

ひさ子「そうだ。なんでダブルボーカルなんだよ」

恭介(ユイやひさ子の疑問ももっともだ。だが、岩沢のことだ)

恭介(ちゃんとした考えがあってのことなんだろう)

岩沢「ああ。もちろん、理由はある」

岩沢「この前、棗と『Crow Song』歌った時に思ったんだよ」

岩沢「誰かと一緒に、一つの歌を歌うのって、すごい気持ちいいのことなんだなって」

入江「岩沢さんと棗さんが、『Crow Song』のデュエット…!?」

関根「あたしたちの知らない間に、二人の仲は着々と深まっていたようだな、みゆきちよ…!」

恭介「そんなんじゃねえって…」

恭介(ってか、きっかけは俺と歌った『Crow Song』だったのかよ…!)

岩沢「それで真剣に考えてみて、思い浮かんだ相手がユイだったんだ」

岩沢「ユイの歌には、あたしの歌には無い魅力がある」

岩沢「あたしの作った歌を、ユイは完全に自分の歌にしてる」

岩沢「そんなユイと一緒に歌えれば、きっとあたしも新しい刺激をたくさんもらえると思う」

ユイ「岩沢さん…」

岩沢「本当はかなり悩んだんだ…」

岩沢「ユイには誰にも染まらずに、自由に歌って、自分らしさを伸ばして欲しいって気持ちもあったから」

岩沢『あたしに聞かれているとわかったら、そのことを意識してしまうだろ?』

岩沢『そうしたら、正しく歌おうということばかりに集中してしまって、今の自由な歌が失われる』

岩沢『今は好きな歌を好きな形で歌う。それがいいんだよ』

恭介(確かにそんなこと言ってたな。ならさぞ岩沢は悩んだはずだ…)

恭介(自分に憧れて、自分の歌を自由に歌ってくれるユイ)

恭介(音楽を愛し、自分の想いを伝えるために歌い続けてきた岩沢からしたら)

恭介(ユイは本当に、特別な存在だったのかもしれないな)

岩沢「でも、どうしても気持ちを抑えられなかったんだ!」

岩沢「ユイと一緒に歌いたい!だってそれは絶対に楽しいことだと思うから!」

ひさ子「…とりあえず、岩沢の熱意は伝わったよ」

ひさ子「お前は思いつきとか冗談で、こんなこと言うやつじゃないしね」

ひさ子「でも、難しいな…。ガルデモは岩沢の歌でここまで、成長してきたようなもんだし」

ひさ子「いきなりダブルボーカルってのは、ファンが反発するかもしれない」

ひさ子「ユイもまだまだ未熟だし、合わせるのも大変だからね」

ユイ「うっ………」

岩沢「棗、お前はどう思う?ファンの視点からの意見を聞かせてくれ」

恭介(岩沢が俺に視線を向ける)

恭介「アリだ。と言いたいとこだが…、俺もいきなりは難しいと思う」

恭介「こいつがどれだけ岩沢を尊敬して、憧れてたかは俺もよく知ってる」

恭介「それが急に岩沢と同じ位置に立つってのは、相当なプレッシャーだろ?」

ユイ「は、はい…。正直、今でも夢を見てるような気分です」

ユイ「棗先輩のドッキリじゃないかと未だに疑ってるくらいです…!」

恭介「そんなひでえドッキリ仕掛けねえよ、俺は…」

入江「でも、確かに、ファンのみんなに受け入れてもらえるかは気になりますね」

入江「ガルデモは陽動部隊だし」

関根「ユイもこんなガチガチに緊張してるし、ダブルボーカルはさすがにキツイと思いますよ、岩沢先輩」

岩沢「…そうか、そうだよな」

ひさ子「岩沢…」

恭介(岩沢が目を伏せる。せっかく岩沢が挑戦したい、やってみたいと思ったことだ)

恭介(俺も岩沢を応援してやりたい)

恭介(そして、俺には頼りになる仲間がいる…!)

恭介「…こういう時は、助っ人を呼ぼう」

岩沢「助っ人?」

恭介「ああ。あいつならきっと、良いアイデアを出してくれると思うぜ」

ひさ子「あいつって誰だよ?」

恭介「フッ…。お前たちの大ファンだよ」

恭介(俺は、『あいつ』に軽く事情を説明して、教室まで連れてきた)

高松「なるほど。ユイさんをガルデモの新メンバーに、ですか」

ユイ「あれっ?あなたは確か…」

高松「ご無沙汰していますね、ユイさん」

恭介「なんだ、すでに知り合いだったのか?」

高松「はい。ガルデモの曲で路上ライブをしているメンバーがいる、という噂を聞きつけ」

高松「すでに、何度か聞かせていただきました」

ひさ子「へえ…、高城ってほんとにガチのガルデモファンなんだな」

高松「だから高城じゃなくて高松です!いい加減そのネタ引きずるのやめて下さい!」

恭介(そういや、『高城』なんて称号つけたのはひさ子だったっけか)

岩沢「なんにせよ、すでにユイの歌を聞いたことがあるなら話は早い」

岩沢「高松。あたしとユイでダブルボーカルするって言ったら、お前はどう思う?」

岩沢「ファンとしての意見を聞かせてくれ」

恭介(岩沢が今度は、高松に問いかける)

高松「そうですね。大体の事情はすでに恭介くんから聞きましたが…」

高松「結論から言えば、私もいきなりダブルボーカルというのは反対です」

岩沢「……………」

ユイ「……………」

高松「単純にメンバーが増えるということすら、私たちファンからすると、とてつもない衝撃です」

高松「それが岩沢さんのポジションと被るものだと、すぐに受け入れるというのはなかなか…」

ひさ子「まあ、そうだよな。二人で始めた時とかビューブラ時代とか含めても、ずっとボーカルは岩沢のソロだったし」

関根「それにあたし、ユイの気持ちわかるなあ」

関根「ガルデモの知名度はハンパないですから。あたしも最初は…」

関根「ファンのみんなから受け入れてもらえるかなあ、とかちょっと不安だったし…」

入江「最初は下手だったもんね、あたしたち…。岩沢さんとひさ子はすでにカリスマがすごかったし」

恭介(どうやらみんな、いきなりのダブルボーカルというのは不安があるようだ…)

岩沢「…そうだな、ゴメン。あたし自分の気持ちばかり先走って」

岩沢「みんなやユイや、ファンの気持ち考えてなかったよ…」

ユイ「いえいえ、そんなっ!謝らないで下さい!岩沢さん!」

ユイ「あたし本当は、下っ端としてガルデモの役に立てるだけでも、嬉しかったんですから…!」

ユイ「岩沢さんにああ言っていただけでも、あたしは大満足ですっ!」

岩沢「満足なんてしないでくれ!あたしはユイに消えて欲しくない!」

ユイ「き、消える…?」

恭介(ユイがポカンとしている。その話題は多分、ゆりっぺを通してからじゃないとまずい…)

高松「コホン!ですが、ダブルボーカルという案自体は、とても面白いと思いますよ」

高松「ですから、こういうのはどうでしょう?」

高松「いきなりダブルボーカルではなく、岩沢さんがボーカルを務める曲と…」

高松「ユイさんがボーカルを務める曲を、それぞれ用意するんです」

恭介(高松が機転を利かせ、さらに新しい案を提案する)

関根「岩沢先輩の曲と、ユイの曲?」

入江「それってどういう意味ですか?」

高松「そもそもお二人は声質が対照的です」

高松「クールでハスキーな声の岩沢さん。高くて可愛らしい声のユイさん」

高松「岩沢さんのCrow Songには岩沢さんの良さがあり、ユイさんのCrow Songにはユイさんの良さがあります」

高松「だからまずは、ガルデモファンのみなさんにも…」

高松「ユイさんの歌の魅力を、知ってもらうところから始めるんです」

恭介「なるほどな。いきなりダブルボーカルじゃなくて、ガルデモの演奏をバックに、ユイのソロをやるのか」

高松「その通りです。ユイさんの歌なら間違いなく、ファンがつきます」

高松「そして、今度はユイさんの曲を岩沢さんがカバーしたり、岩沢さんの曲をユイさんがカバーしたりする」

高松「さっきも言ったとおり、お二人の声は対照的ですから、同じ曲でもそれぞれ違った魅力が生まれます」

高松「そして、ユイさんがファンのみなさんから受け入れたと、判断出来る段階まできたら…」

高松「改めてダブルボーカルを披露するんです」

高松「その頃には、この二人が同時に歌ったらどうなるんだろう…!という期待も、募っているはずですからね」

ひさ子「確かに…、そうやって段階を踏んでいけば、ダブルボーカルの練習もしっかりできるな」

岩沢「ああ。良いアイデアだと思う…!」

恭介(同感だ。その方法なら、ユイも徐々に慣れていくことが出来るし、ユイ自身にもファンがつくだろう)

恭介(さすがは、高松だぜ…!)

関根「どうユイ、やれそう?」

ユイ「…あたしがボーカルやるのは、決定事項なんですね?」

ひさ子「岩沢たっての希望だから、あたしたちとしても叶えてやりたいからな。それに…」

入江「面白そうだもん!ユイが加われば、ギターもボーカルも増えるんだから」

入江「きっと今以上にすごい演奏になるよ!」

恭介「ああ、俺は今からすでに楽しみで仕方ないぜ!高松もそうだろ?」

高松「はい、もちろんです!ユイさん、自信を持ってください」

高松「あなたの歌は、すでに路上ライブでも人を集めるほど、魅力があるじゃないですか」

岩沢「そうだよ。あたしが本気で一緒にボーカルをやりたい、ってそう思った初めての相手なんだ」

岩沢「ゆっくりでもいい。だから、もう一度頼むよ」

岩沢「あたしと、あたしたちと一緒にバンドをやってくれ、ユイ!」

恭介(みんなの想いは一つだ。みんなユイに期待し、そしてこれからの新しいガルデモにワクワクしている)

恭介(あとはユイの心しだい…)

ユイ「岩沢さん…、みなさん…」

ユイ「あたし、あたし…」

ユイ「嬉しいですっ!!憧れのみなさんにそんなこと言ってもらえて…」

ユイ「断れるわけないじゃないですかぁ…!!」

恭介「ユイ…」

恭介(半泣きになっている。ずっと憧れてたガルデモと一緒に音楽ができる)

恭介(それはきっと、とても幸せなことなんだろう。それこそ、夢心地ってやつなのかもしれない)

岩沢「…ありがとう、ユイ。これからよろしくな」

ユイ「はい…、はいっ!よろしくお願いします!岩沢さん!」

恭介(微笑む岩沢と、嬉し泣きしているユイが握手を交わす)

恭介「やばいな、高松。俺は、今ものすごく感動してるぜ…!」

高松「私もです、恭介くん。私たちは新生ガルデモ結成の立会人となったのですから…!」

ひさ子「さて、となると必要なのはユイのための新曲だな!」

関根「ユイは作詞・作曲できるの?」

ユイ「いえ、やったことないです…」

ユイ「あたしギター始めたの、この世界に来て、ガルデモのファンになったのがきっかけなんで…」

ユイ「好きなバンドとかは他にもありますけど、もっぱら弾くのはガルデモの曲ばかりですね」

入江「あたしたちがきっかけでギター始めてくれたんだ!なんだかすごく嬉しいな!」

ひさ子「そこまで言われると、なんか恥ずかしいな…///」

関根「あっ、ひさ子先輩照れてますね?」ニヤニヤ

ひさ子「うっせえ!」

岩沢「あたしたちが誰かの影響で音楽を始めたように…」

岩沢「あたしたちも音楽を通じて、たくさんの人に想いを伝えていこう」

岩沢「頑張ろうな、ユイ!」

ユイ「はい!死ぬ気で頑張ります!」

岩沢「ふふっ、本当に死なれると困るけど。じゃあ、あたしからプレゼントだ」

ユイ「プレゼント?」

岩沢「ちょうど、新曲が出来たとこなんだよ。その曲をユイに歌って欲しい」

岩沢「曲名は『Thousand Enemys』だ!」

ユイ「ええーーーっ!?い、岩沢さんの曲を、あたしが…!」

高松「初耳の曲ですね。まさしく披露した事の無い新曲…!」

恭介「ガルデモの絆と強さを表した曲らしいぜ?」

岩沢「ああ。だからユイに歌って欲しい」

岩沢「これからのあたしたちに、ぴったりの曲だと思うんだ」

岩沢「あっでも、あたしの言葉を借りて歌うより、やっぱり自分の言葉で書いた曲をデビュー曲にしたいか?」

ユイ「いえ…!岩沢さんが書いた曲を、あたしの歌として歌えることのほうが、ずっとずっと嬉しいです!」

ユイ「なんかもう、さっきから手が震えるわ、体が痺れるわでやばいです!」

入江「うわぁ、ほんとに手がぷるぷるしてるね」

関根「どんだけガチな岩沢先輩ファンなんだよ、ユイは…。ちょっとジェラシー…」

ユイ「でも本当に良いんですか?せっかく岩沢さんが書いた曲なのに」

ひさ子「その岩沢が良いって言ってんだから、貰っとけよ」

ひさ子「今まで作詞・作曲したことないなら、岩沢に教えてもらえばいいし」

岩沢「ああ。役に立てるかどうかはわからないけど、精一杯アドバイスするよ」

ユイ「なにからなにまで、ありがとうございます!岩沢さん!」

ひさ子「そして、あたしからはさっき言った通りギターの面倒を見てやるよ」

ユイ「はい!一生懸命頑張ります!ひさ子さん!」

入江「あたしもあたしも!可愛い後輩だもん!なにかあったらすぐに言ってね!」

ユイ「はい!これからよろしくお願いします!入江さん!」

関根「じゃああたしは可愛い後輩をパシらせてやろう…!というわけで、ユイ、ジュース買ってこい!」

ユイ「サー!イエッサー!」

ひさ子「イエッサー!じゃねえ!関根、お前はいつもいつも…!」

グリグリグリグリっ…

恭介(ひさ子が関根の頭をグリグリしだす)

関根「にょおおおおおっ!!ジョーク、ジョークですって!ひさ子先輩…!」

関根「頭が、頭がおかしくなるーーっ!!」

恭介「もとからおかしいから問題ないだろ」

高松「ですね」

ユイ「関根さんはああいう扱いなんですね、バッチリ覚えました!」

入江「うん。しおりんなら大体の事は、笑って許してくれるから大丈夫だよ」

岩沢「ああ。あたしが許す、逆に後輩だと思ってイジってもいいよ」

ユイ「わかりましたっ!」

関根「わかっちゃらめえええーーっ!!」

恭介(こうして、ユイを加えた新しいGirls Dead Monsterが誕生した)

恭介(岩沢やユイたちのこれからの活動が楽しみで仕方ないぜ…!)

恭介(そんな事を思いながら、楽しそうに笑うみんなの姿を眺めていた)

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訂正します

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8 中庭

21:30:00:00
↓1

オススメというわけではありませんが
この選択不可は駐車場にユイがいなくなったので、起こったパターンです

さてどこに行ったんでしょうか

それと前回の内容的に行った方がいい場所があるかもしれません

恭介(来ヶ谷に背中を押され、本部の前に立つ)

恭介(これから俺はゆりっぺと交渉、いや口論することになるだろう)

恭介(戦線と立華の間で繰り広げられてきた数十年にも及ぶ、戦いを終わらせるために)

恭介(そして立華をリトルバスターズの仲間にするために)

恭介(小さく息を吐いて覚悟を固める)

恭介「カミモホトケモテンシモナシ」

恭介(本部のドアがかちゃりと音を立てて、錠が外される)

恭介(中に入る、ゆりっぺが一人でいた)

恭介(好都合だ。いつもはよく沙耶や遊佐がいるらしいが、今日はたまたま席を外しているみたいだな)

ゆり「あら、棗くん。どうしたの?」

恭介「天使エリア侵入作戦の件で聞きたいことがあってな」

ゆり「へえ、なに?」

恭介「来ヶ谷から聞いたんだが、『Angel Player』というソフトをチェックしたそうだな」

ゆり「ふーん…」

ゆり「その様子だと来ヶ谷さんと話し合った後に、ここに来たってところかしら?」

ゆり「それで、あなたたちはあれをなんだと思ってるの?」

恭介(逆に聞き返される)

恭介「天使の特殊能力、ガードスキルを開発するソフトだろうな」

恭介「ようはパソコンで、立華は自分のスキルを開発していた。違うか?」

ゆり「…さすがね、もしやと思ってたけどやっぱり来ヶ谷さんも気づいてたか」

恭介(どうやら、ゆりっぺも来ヶ谷の様子を観察していたみたいだな)

恭介「おそらくあのソフトが、この世界に干渉できる…」

ゆり「ええ。あたしもそう思うわ」

恭介「だとしたら、あいつは…」

恭介「人間、ってことになるよな」

ゆり「ふぅ…」

恭介(ゆりっぺはやりきれないような表情を作った)

ゆり「断定は出来ないけど、あのオペレーションでは、あたしもそう思ったわ」

恭介「何十年という時間をかけ、Angel Playerを駆使できるプログラマーと化したあいつが…」

恭介「人間離れした能力を次々と生み出し、神の使い、天使と呼ばれるようになった」

恭介「デーモン・ピクニックの時もそうだ」

恭介「もし立華が本当に神の使い、天使なら、神によって洗脳された俺を助けるはずがない」

恭介「それは神に対する反抗を意味するからだ」

恭介「ゆりっぺもそう考えたから、天使エリア侵入作戦を再度行うことにしたんだろう?」

恭介「神の情報を探るというのはもちろん、本命の目的ではあった」

恭介「だが、立華が本当に天使なのかどうかを確かめるという目的も兼ねて、作戦を起こしたんだ」

恭介「違うか?」

ゆり「……………」

恭介(ゆりはどう答えていいか、逡巡した)

恭介「どうなんだ?」

恭介(そうせっつく。悩んだあげく、ようやく出てきた言葉は…)

ゆり「本当に頭がキレるわね。今までのあたしの意図や考えも、完全に理解していたってことか…」

ゆり「あたしの推測は、あなたと同じよ」

恭介(よし、このゆりの発言は重要だ…!)

ゆり「でも、誰にもそのことを言わないようにね。戦線メンバーとして箝口令を敷く」

恭介「なぜだ?」

恭介(当然、なぜかは読めている。だが、このまま流れを引き寄せようとあえて問う)

ゆり「人間だとわかったら、同情しちゃうメンバーが現れるわ」

ゆり「棗くん、あなたのようにね」

恭介「…っ!」

ゆり「あなたの性格はわかってるわ。仲間想いで、不必要に誰かを傷付けることを嫌う」

ゆり「常に楽しさを追い求め、天使相手にも正々堂々と戦う」

ゆり「あなたの目には、あたしたちと天使の戦いは、さぞ醜いものに見えたんでしょうね」

ゆり「事実、その日の夕食のうちに…」

ゆり「天使に対する仕打ちを疑問視するようなことを、あたしに聞いてきたんだし」

恭介(これは…、ゆりっぺからの反撃だろう)

恭介(ゆりっぺも既に、俺がこれからどういう話に持って行きたいのか、見当が付いているということか…)

恭介(俺がゆりっぺの思考を読んでいるように、ゆりっぺも俺の思考を読んでいる…)

恭介(手強いぜ…、だがそれでこそゆりっぺだ…!)

ゆり「あなたのその性格をとやかく言うつもりは無いわ」

ゆり「けどあまり天使と親しくしてるようだと、あたしたちを裏切っていると思われても仕方ないわよね?」

恭介「…ゆりっぺは、俺がみんなを裏切っていると疑っているのか?」

ゆり「それはありえないわね」

恭介「えっ…?」

恭介(もしやと思って聞いてみたが、あっさり否定された)

ゆり「さっきも言ったでしょ。あなたの性格はわかってるつもりよ」

ゆり「いくら天使と親しくなろうと、あなたは戦線の仲間を裏切るようなことはしない」

ゆり「仮に…、天使をあたしたちの仲間にしたいんだとしても、もっと馬鹿正直な手をとるでしょうね」

ゆり「たとえば、天使が人間であるという証拠をあたしに突きつけて、人間なんだから仲間にするべきだ!」

ゆり「と、説得しにくるとかね」

恭介「!!」

恭介(牽制のつもりか、あえて先に俺がしようとしていた本題を振ってくる)

恭介(逆にゆりっぺに流れを持っていかれ始めている…。だが、怯むわけにはいかない)

恭介(この交渉は、俺に分があるんだ…!)

ゆり「でもね、棗くん。いくらあたしがあなたを理解していても、他の下っ端たちはそうじゃないわ」

ゆり「天使と親しいと思われて、他のメンバーたちに敵視されないように」

ゆり「天使のことはこれからも、宿命のライバルだと思っていなさい」

ゆり「そもそも、あなたが自分で天使のことをそう思ってるって、宣言したんだしね」

恭介(ゆりっぺが不敵に笑う、話を終わらせようとしている)

恭介(そうはいかない…!食らいつくためのカード…!)

恭介(ゆりっぺの発言の矛盾を撃ち抜くカードを切る…!)

恭介「待ってくれ、ゆりっぺ。ゆりっぺは立華が人間だと認めているんだよな?」

恭介「それでなお、立華を戦線の宿敵であって欲しいと思っている」

恭介「それは戦線のモラルに反するはずだ」

ゆり「…どうして?」

恭介「真人が加入する時にゆりっぺは言っていただろ?」

ゆり『…良いわ、構わないわよ。人間は貴重な戦力だもの』

ゆり『もとより見つけ次第積極的に保護することにしてるし、自ら入隊を志願するものを拒む理由は無いわ』

ゆり「………!」

恭介「それに少し前にも言っていたよな?」

恭介「俺は神と戦う為の切り札だ。下っ端たちの不平不満を、集めるために『あたし』がいると」

恭介「俺が下っ端のメンバー達から敵視されないように、守ってくれるんじゃないのか?」

ゆり「……………」

恭介(これは…、かなり辛い一手だ。あの時のゆりっぺの優しさを利用している…)

恭介(だが、ゆりっぺを言い負かすには必要な一手だ)

恭介(今はどう思われてもいい。そのための覚悟を決めて、俺はここに来たんだから…!)

ゆり「そうね…」

恭介(ため息混じりに、そう答えた)

ゆり「じゃあ、あなたは天使を仲間に加えろと?」

恭介「ああ。戦線のルールではそうなるだろ?」

恭介「同じ人間なんだ。俺たちの目的は神を引きずりだすこと」

恭介「天使と、立華と戦うことじゃないはずだ」

ゆり「その考えはあさはかだわ。どれだけあたしたちは天使と戦ってきたって話よ」

ゆり「あの子の信念は、あたしたちを授業に受けさせ、部活にも励ませるという模範的なもの」

ゆり「今更、戦線の仲間に入って、神を一緒に探しましょう、と言ったところで、仲間になると思う?」

恭介「なるさ。立華とはすでに話をつけてある」

ゆり「!?」

恭介「ゆりっぺ。人間であるあいつが、なぜ天使として戦線の敵で在り続けていたと思う?」

恭介「真っ当な学園生活という青春では、お前たちの未練は晴れないと考えたからだ」

恭介「だから、神を憎むお前たちの未練を少しでも晴らすため、神の使い『天使』で在り続けてたんだよ」

ゆり「……………」

恭介「戦うべき相手を、戦線はずっと間違えてたんだ、ゆりっぺ」

恭介「だから、もう終わらせよう」

恭介「俺たちの目的は、神を引きずりだすことだ。そうだろう?」

ゆり「……………」

ゆり「それでも無理ね…。戦線のメンバーは数十年以上、天使を敵だと思ってきた」

ゆり「憎んでいるメンバーだっている。そう簡単に気持ちを切り替えられるわけがない」

ゆり「それにね、棗くん。あたしたちの敵は確かに神よ」

ゆり「その存在を間近に感じるところまでは来たけど、それでもまだ手かがりが少なすぎる」

ゆり「今、天使を仲間にして、実体がはっきりしていない神のみを敵とすれば…」

ゆり「戦線の士気はガタ落ちだわ。これから戦い続けることが出来なくなる」

恭介「ああ…、その通りだな」

恭介(ゆりっぺの言っていることも、また正論だ)

恭介(天使という明確な敵が存在しているからこそ、戦線は戦ってこられたんだろう)

恭介(なら…)

恭介「だから…、今すぐにとは言わない」

恭介「いつか、神という存在が明確になり、立華が天使として振る舞う必要が無くなったら…」

恭介「その時は、立華が人間だと、みんなの前で肯定してほしい」

ゆり「…………」

恭介「頼む、ゆりっぺ…!」

恭介(頭を下げて頼み込む)

恭介(天使を憎み続けてきたゆりっぺにとって)

恭介(そもそも立華を仲間にするということ自体が、絶対に認めたくない提案のはずだ)

恭介(それがわかっているからこそ、これ以上ゆりっぺを追い込む手段はとりたくない)

恭介(だから、後はただ真摯に訴える。もうそれしか俺に出来ることは無い…!)

ゆり「………………」

恭介(今まででもっとも長い沈黙が続く…)

恭介(数分か、数十分か、あるいは数時間か。時間の感覚が麻痺するほど、それは長い沈黙に思えた)

恭介(そして…)

ゆり「はぁ…、飲むしかないわね…」

恭介「ゆりっぺ…!」

恭介(認めてくれた…!立華を人間だと肯定すると…!)

ゆり「確かに、人間をいつまでも天使とするのは戦線のモラルに反するわ」

ゆり「それを認めなければ、あなたはもっと多くのメンバーを巻き込んでいくでしょうしね」

ゆり「でも忘れないで。本当に神という存在が明確になり、天使が必要じゃなくなった時の話よ」

ゆり「今、戦線を崩壊させるのは、あなたも望むところじゃないでしょ?」

ゆり「絶対に先走ったりはしないこと。約束しなさい」

恭介「ああ、約束は守る」

恭介「だが、立華と会話するくらいはいいだろう?」

ゆり「…駄目って言ってもするんでしょ?それくらいは許容してあげるわ」

ゆり「ただし、人目は忍ぶように。いいわね?」

恭介「了解だ。本当にありがとな!ゆりっぺ!」

ゆり「礼を言われるようなことじゃないわ。あくまで、戦線のことを考えた決定よ」

ゆり「いずれ神と戦うとき、天使の力は心強いもの。ただ、それだけ…」

恭介(立華を人間と認めていながら、結局天使と呼ぶのは変わらないか…)

恭介(俺が立華から聞いたこの世界の情報を話した時と同じ)

恭介(ゆりっぺ個人が納得がいかないことでも、戦線のリーダーとして受け入れた。と考えるべきだろうな…)

ゆり「じゃ、もう用は済んだわね、行きなさい」

恭介「ああ、そうする…」

恭介(本当はもう少し話を続けたかったが、ゆりっぺから話を終わらせたんだ)

恭介(しつこく話を続けるべきでは無いと判断し、部屋を出ることに決めた)

恭介(手は汗をかき続けていた。それくらい、緊張する交渉だった)

恭介(だがいつかその時が来れば、立華を人間だと肯定すると言ってくれた)

恭介(これは大きな一歩だ)

恭介(そう考えながら、俺は本部を後にした)

~Yuri Side~

ゆり(棗くんが本部から立ち去る…)

ゆり「はぁ …」

ゆり(それを確認すると、あたしは長いため息をついた)

ゆり(結局、丸めこまれてしまった)

ゆり(たとえ天使が人間だとしても、あたしにとって『立華 かなで』は敵であることに変わりない)

ゆり(新しい人生?あたしたちの未練を晴らす?)

ゆり(そんなこと、頼んでない)

ゆり(新しい人生も、未練を晴らすことも、あたしは望んでない)

ゆり(だって、もし生まれ変わったとしても、それはもうあたしの人生じゃない)

ゆり(あたしの記憶も、思い出も、全てあたしのものだ)

ゆり(それだけは、誰にも、神にだって奪わせない…!奪われてたまるもんか…!)

ゆり(あたしはただ、許せないだけ)

ゆり(大切な弟と、妹を)

ゆり(あたしの守りたかった全てを、たった三十分で奪われた)

ゆり(そんなあまりに理不尽な人生が許せないだけなんだ)

ゆり(どうして、あの子たちが殺されなければならなかったの…?)

ゆり(どうして、そんな不幸が、あたしたちの身に起きなければならなかったの…?)

ゆり(納得いかない…!許せるわけがない…!)

ゆり(この想いだけが、今もあたしを突き動かしている)

ゆり(だから、『立華 かなで』も敵。あたしたちを生まれ変わらせるなんて、大きなお世話だ)

ゆり(かつて消えた彼だってそうだ。神に抗う理由があったのに…)

ゆり(その理由をあたしは痛いほど理解出来ていたのに…)

ゆり「なのに…」

天使『無事、この世界から去っていけたようで、なによりだわ』

ゆり「………………」

ゆり(あたしは負けない…。たとえ一人になろうとも、あの子たちのためにあたしは戦う…!)

ゆり(棗くんたちが、あたしたちと、いえあたしと異なる理由で神と戦うことを選んだのはわかってる)

ゆり(棗くんだけじゃない。井ノ原くんも、宮沢くんも、能美さんも、来ヶ谷さんも、三枝さんも、西園さんも…)

ゆり(沙耶ちゃんも…。誰一人として、神を憎んでいない…)

ゆり(いずれ、あたしと異なる道を進み始めてしまうのかもしれない)

ゆり(そして、棗くんは、きっと多くの戦線メンバーすら巻き込んでしまうだろう)

ゆり(彼のカリスマやリーダーシップは、あたしよりも遥かに上なんだから…)

恭介『この死後の世界という閉じた場所で、みんなをまとめて戦い続けてきた。それが証拠だ』

恭介『お前は仲間を思いやる大切さを知っている、同じリーダーとして保証する』

恭介『お前は、立派なリーダーだ!』

ゆり「……………」

ゆり「あなたとは、もっと別の形で出会いたかったわね…、棗くん」

ゆり(無意識に漏れた言葉は、どうしようもなく、後味が悪く感じた…)

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22:10:00:00
↓1

恭介(今頃、ガルデモメンバーは、いつもの空き教室で練習してるはずだ)

恭介(俺は様子を見に行くことにした)

恭介(いつものように、廊下から教室を覗く)

恭介(ユイを加えた新生ガルデモが練習の真っ最中だ)

恭介(素人目にも、前よりも音に厚さが増したのがわかる)

恭介(ユイも一心不乱に自分のパートを演奏している)

恭介(そして、丁度一段落したようだ)

恭介(ひさ子がユイになにか指示を出しているように見える)

恭介(入るなら、今だな)

恭介「よっ、練習お疲れさん」

岩沢「棗か、どうした見学かい?」

恭介「それもあるが、どっちかというとこっちが主だな」

恭介「ほれ、差し入れだ」

恭介(俺はさっき買ってきた、ジュースやチョコの入った袋を見せる)

関根「おおーーっ!!棗先輩気が利くぅ!!」

入江「ありがとうございます、棗さん!」

ひさ子「わざわざ悪いね。せっかくだしちょっと休憩入れるか、岩沢」

岩沢「そうだな。ほら、ユイ。休憩だぞ」

ユイ「ふあああぁぁぁ~……」

恭介(床に倒れるように脱力するユイ)

恭介「ははっ。その様子だとみっちりしごかれてるみたいだな」

ユイ「はい…。予想以上にハードです…」

ユイ「ガルデモのみなさんは、毎日こんなに練習してたんですね…」

ひさ子「ま、一人で自由にやるのと、みんなで合わせるのとは色々と違うからね」

岩沢「最初のうちは結構堪えるだろうけど、ついてこれるか、ユイ?」

ユイ「もちろんでっす!血ヘド吐いてでもついて行ってみせます!!」

恭介(岩沢の言葉に反応し、即座に立ち上がる)

ユイ「でもやっぱり…、ちょっと休憩させてください…」

恭介(今度は、壁に寄りかかるように座り込んだ。ほんとにハードな練習らしいな)

岩沢「棗、水あるか?ユイに渡したい」

恭介「もちろんあるぜ、ほれ」

岩沢「ありがとう。ユイ、水だぞ」

ユイ「うぅ…、助かりますぅ、棗先輩…」ゴクゴク

ユイ「ぷはーーーっ!!この一杯のために生きてるんですよねえっ!!」

ひさ子「おっさんか、お前は…」

関根「棗先輩、棗先輩。炭酸あります?」

恭介「あるぞ。ほら、ティラミスソーダ」

関根「どんなチョイスじゃあーーーっ!!」

恭介「冗談だよ、カルピスソーダだ」

関根「いやあ、できるファンを持つと便利なものですなあ」ゴクゴク

入江「地味に酷いこと言ってない?しおりん…」

岩沢「でもほんと助かるよ、棗。ありがとな」

恭介「気にすんなって。お前らの練習が気になったってのもあるしな」

恭介「で、どんな感じだ?」

ひさ子「まだ先は長そうだよ」

恭介(ひさ子がやれやれ、と言った様子で肩を竦める)

入江「ユイが本調子じゃないみたいなんです」

恭介「本調子じゃない?」

岩沢「あたしたちに気を使いすぎて、消極的な演奏になってるんだ」

岩沢「まずはいつものように、ノビノビやって、そこから少しずつ合わせていけば良いと思ってたんだけどな」

ユイ「すみません…、どうしても」

ユイ「『あたしは今…!!ガルデモのみなさんと一緒に演奏してる…!!』って気持ちが抜けきらなくて…」

ひさ子「気持ちはわからないでも無いけど、お前ももうガルデモメンバーなんだぞ?」

関根「そうそう!遠慮せず、自由に弾けばいいのだよ!」

関根「あたしみたいに『アドリブで観客のハートをキャッチしてやるぜ!』ぐらいの気持ちでっ!」

ひさ子「関根は少しはユイの謙虚さを見習え」

入江「あはは…」

岩沢「まあ、こういうの意識の問題なんだろうな」

ひさ子「だな。さて、どうしたもんかねえ…」

恭介(なるほど、こういう問題なら俺にも力になれそうだぜ)

恭介「そういうことなら、俺に良いアイデアがあるぜ」

岩沢「ほんとか、棗?」

恭介「ああ。ようは、ユイが他のみんなに遠慮しすぎなのが、不調の原因なんだろ?」

恭介「だったら話は簡単だ。遠慮なんてしないくらいに、絆を深めちまえばいい」

入江「そのワード、もしかして…」

関根「絆スキップのことですか?」

恭介(入江と関根がすぐに反応する。ちょっと予想外だな)

恭介「ありゃ、お前ら絆スキップ知ってんのか?」

岩沢「当然だ。あたしが広めた」

岩沢「今じゃ毎日、練習前と練習後に絆スキップしてるくらいだ」

恭介「マジかよ…!?」

ユイ「ガルデモの練習は絆スキップに始まり、絆スキップに終わるって教わりました!」

恭介(やべえ…!岩沢がそんなに絆スキップ気に入っててくれたのも嬉しいが、その光景を見てみたいぜ…!)

恭介「ってか意外だな。ひさ子って、そういうの恥ずかしがるタイプだと思ってたんだが」

ひさ子「何も言うな、棗…」

恭介(明らかにひさ子が少し沈んだ表情になる…)

恭介(まあ、岩沢に弱いひさ子のことだ。最初は反対しようとしたが、根負けしたってところだろうな…)

恭介「ってことは、すでに今日も絆スキップやったのか?」

関根「やりましたよ。でもまだ遠慮があるっぽいですね」

入江「スキップしてた時は楽しそうにしてたのにね」

ユイ「そりゃあ、絆スキップは楽しかったですけど、演奏となると…」

恭介「なるほど。まだ効果が足りてないみたいだな」

岩沢「絆スキップでも駄目となると、もう後は…」

恭介「ああ。筋肉しかないよなっ!!」

ひさ子「げっ…!まさか…!?」

恭介(そのまさかだ!困った時はあいつを呼ぶしかない!)

恭介「出ろーーーッ!!筋にーーーくッ!!」

パチンッ!

恭介(俺が指を鳴らすと、教室が霧で覆われる…)

恭介(そして、霧が晴れると…)

真人「フッ…!俺の筋肉をご所望かい?」

ユイ「出たーーーっ!?」

関根「どういう登場の仕方だーーーっ!?」

ひさ子「やっぱり出やがったな、筋肉…」

恭介「よくぞ駆けつけてくれたな、真人!」

真人「へっ、当然よ!筋肉を呼ぶ声あるところ、この俺ありだぜ!」

岩沢「ってことは、棗」

恭介「ああ、例のアレの出番というわけさ」

入江「アレ?なんのことなんですか?」

関根「ああ。やっぱり一人だけ状況を把握していない…」

関根「みゆきちには、いつまでも純粋なままでいて欲しかったんだけどなぁ…」

恭介(よよよ、と泣き真似をする関根)

恭介「関根。人はいつまでも子どものままではいられない…。入江も筋肉を知る時が来たのさ…!」

入江「きん…にく…?」

ユイ「あの~、デーモン・ピクニックの時からもしやと思ってましたけど…」

ユイ「かつて筋肉旋風を引き起こしたっていう先輩って…」

恭介「ああ、ここにいる真人だ」

ユイ「やっぱそうでしたか…。下っ端の男子からすごい人気ありますからね、井ノ原先輩…」

真人「マジかよ、俺人気あんのか!?」

ユイ「まあ、男子にはですけど…」

恭介「筋肉は男にとって、永遠の憧れみたいなもんだからな…!」

恭介(噂には聞いてたが、筋肉旋風は、戦線メンバーにも広く知れ渡ってたみたいだな)

関根「本当に筋肉旋風やる気なんですね…」

ひさ子「あたし、高松との一件で、軽く筋肉にトラウマ覚えてんだけど…」

ひさ子「ってか、筋肉なんかで絆が深まるわけないだろ!」

岩沢「いや、あたしは深まると思う」

関根「えっ…?」

ひさ子「えっ…?」

岩沢「あれはまだ、棗と井ノ原がこの世界に来たばかりの頃…」

岩沢「まだ戦線の男子メンバーとすら、微妙に距離があった頃…」

岩沢「そんな時、井ノ原が始めたのが筋肉旋風だった」

岩沢「筋肉の素晴らしさを理解し合う、それは言葉を超えた対話」

岩沢「その意味を知った時、距離は縮まり、男たちの間に絆が生まれたんだ…!」

岩沢「今のあたしはわかる!筋肉旋風をやれば、あたしたちの絆をもっと深めることができるはずだ…!」

恭介(拳を握り、熱心に筋肉旋風の素晴らしさを語る岩沢)

関根「岩沢先輩って…、たまに大真面目にものすごい馬鹿なこと言いますよね…」

恭介「ってか、岩沢は筋肉旋風、直接見てなかったんじゃなかったか?」

岩沢「実際には見てなかったけど、どんなものかは想像がつく」

岩沢「それに筋肉旋風以来、男子が一緒に朝飯食べるようになったり、仲良くなってるところは見てきたからな」

ひさ子「まあ、確かにそうだったかもしれないけど…」

ひさ子「いくら岩沢が言うことでも、そう簡単に信じるやつなんて…」

入江「筋肉ってすごいんですね!!」

ユイ「岩沢さんが信じるなら、あたしも筋肉を信じます!!」

恭介(信じるやつがここに二人いた)

ひさ子「信じるなーーっ!!お前ら単純すぎんだろーーっ!?」

関根「ひさ子先輩…。みゆきちは言うまでもなく超純粋キャラ…」

関根「さらに、ユイは熱狂的岩沢先輩のファン。まさに岩沢キチなんですよ…!」

関根「こうなったのは、むしろ必然と言えるかもしれません」

関根「ですが、安心してください!あたしはひさ子先輩の味方です」

関根「何があっても、筋肉に寝返ったりしませんよ!」

ひさ子「関根…!今、初めて、お前のことが頼もしく見えるぜ…!」

恭介「関根ー、筋肉、筋肉~したら人気者になれるぞ~」

関根「いやっほぅーーっ!!筋肉、筋肉~♪」

ズコーっ!!

ひさ子「一秒で寝返ってるじゃねえかーーっ!!」

ひさ子「少しでも、お前を信じたあたしが馬鹿だったわーーっ!!」

岩沢「ひさ子はまだわかってくれないのか…」

恭介「構うもんか。先に始めてれば、すぐにその気になるさ」

真人「ああっ!じゃあやるぜ、おまえら!」

真人「筋肉旋風だーーーっ!!」

「「「いえーい!筋肉、最高ーーっ!!」」」

真人「筋肉いぇい、いぇーい!筋肉いぇい、いぇーい!」

恭介「筋肉いぇい、いぇーい!筋肉いぇい、いぇーい!」

岩沢「筋肉いぇい、いぇーい!筋肉いぇい、いぇーい!」

ユイ「筋肉いぇい、いぇーい!筋肉いぇい、いぇーい!」

関根「筋肉いぇい、いぇーい!筋肉いぇい、いぇーい!」

入江「筋肉いぇい、いぇーい!筋肉いぇい、いぇーい!」

真人「どうだ、楽しいだろ!?」

恭介「お前たちにも、筋肉の素晴らしさが伝わったはずだぜ?」

岩沢「ああ、これが筋肉による対話…!対話の為の筋肉なんだな…!」

入江「ガルデモが変わっていくのを感じます!」

ユイ「今のあたしなら、どんなハードな練習にも余裕でついていけそうな気分ですよ!」

関根「そう…、あたしたちの絆とともに、世界そのものが変革しようとしているんですよ!」

ひさ子「んなわけあるかーーっ!!」

ひさ子「あたしは認めないからな!筋肉なんてっ!」

岩沢「ひさ子、どうして理解を拒もうとするんだ…?」ジリッ

真人「そんなに筋肉に染まっちまうのが怖いのかい?」ジリッ

恭介「誰だって最初はそうさ。だが、その一歩を踏み出した時、新たな世界が開けるんだぜ?」ジリッ

ひさ子「やめろ馬鹿っ…!正気に戻れっ…!」

ひさ子「お前ら危ない宗教の勧誘みたいになってるぞっ!!」

入江「宗教なんかじゃありませんよぉ」ジリッ

関根「はい、ただの筋肉です」ジリッ

ユイ「ひさ子さんも一緒に筋肉、筋肉~しましょうよ」ジリッ

ひさ子「うっ…、うぅ…」

ひさ子「いやだ!あたしがガルデモの最後の砦なんだ!」

ひさ子「ここで筋肉を止めてみせる!」

ひさ子「絶対筋肉なんかに負けたりしないっ!!」キリッ

ーーーーー

ーーー

ひさ子「筋肉いぇい、いぇーい!筋肉いぇい、いぇーい!」

真人「勝った…!」

恭介「即、落ちたな…」

ユイ「絵に描いたような負けフラグ建ててましたからね…」

岩沢「ひさ子…」

ひさ子「岩沢、あたしは気づかなかったよ…。長時間ギターを弾き続けるのに、必要なのは筋肉なんだ」

ひさ子「いや、気づいてたのに気づかないふりをしていたのかもな…」

ひさ子「あたしは今まで、筋肉に支えられてきたということに…!」

岩沢「ああ、ギターだけじゃない。良い歌を歌うのにも腹筋の力が必要になる」

入江「ドラムを叩き続けるのにも、腕の筋肉が必要です!」

関根「これが、筋肉の可能性というやつなんですねっ!井ノ原先輩!」

真人「ああ。わかってもらえて俺も嬉しいぜ…!」

恭介「そして、俺たちが目指すのは、この世界中を巻き込んだ真の筋肉旋風…!」

恭介「その名も、『筋肉革命』だ!」

ユイ「筋肉革命、ですか…!?」

岩沢「世界中を巻き込んだ筋肉旋風か、面白そうだな…!」

恭介「お前たちならそう言ってくれると思ってたぜ!」

真人「へっ…、お前らもすでに覚悟は決まってるみたいだな…!ならもう細かいことは気にするな!」

真人「筋肉あるのみだっ!」

恭介「いやっほぅ!筋肉、最高ーーっ!!」

真人「筋肉いぇい、いぇーい!筋肉いぇい、いぇーい!」

恭介「筋肉いぇい、いぇーい!筋肉いぇい、いぇーい!」

岩沢「筋肉いぇい、いぇーい!筋肉いぇい、いぇーい!」

ユイ「筋肉いぇい、いぇーい!筋肉いぇい、いぇーい!」

関根「筋肉いぇい、いぇーい!筋肉いぇい、いぇーい!」

入江「筋肉いぇい、いぇーい!筋肉いぇい、いぇーい!

ひさ子「筋肉いぇい、いぇーい!筋肉いぇい、いぇーい」

恭介(こうして、ついにガルデモメンバーたちも、俺たちの新たな筋肉友達になったのであった…!)

ー恭介の称号が「筋肉ビギナー」から「筋肉ミドラー」に進化しましたー

佐々美「ついに棗先輩の称号が進化しましたわね」

鈴「だから、なんで笹かま刺し身がここにいるんだ?」

佐々美「笹瀬川佐々美ですわ!いい加減にしてくださらない、棗さん!」

鈴「もう刺し身でいいだろ。ネコの好物だ、喜べ」

佐々美「べ、べつにわたくしはネコなんてどうでもいいです!」

佐々美「だからネコの好物だとしても、全然嬉しくないんですからねっ!」

理樹「お手本のようなツンデレだね」

佳奈多「茶番ね」

鈴「っていうか、本当にまた出番あったんだな」

鈴「今日はなんで呼ばれたんだ?」

佐々美「棗先輩の称号についての解説ですわ…」

鈴「なんだ、そんなことか。刺し身、早く解説しろ」

佐々美「棗さんが邪魔したんでしょーーっ!!」

鈴「なんだやる気か?後悔させてやろう…!」

佐々美「堪忍袋の緒が切れましたわ…!」

理樹「はいはい、二人とも。こんな場所で喧嘩しない」

佳奈多「相変わらずね、あなたたちは」

佳奈多「直枝、さっさと解説始めるわよ」

理樹「うん、お願いするよ」

佳奈多「以前にも説明しましたが、称号は条件を満たすと進化します」

佳奈多「そして最終進化すると、特殊なイベントが見れたりします」

佐々美「では、どうすれば称号は進化しますの?」

佳奈多「たとえば、棗先輩の称号には『シスコン』があるでしょう?」

佳奈多「同じく戦線メンバーの中で」

佳奈多「シスコンっぽい人と交流すれば、称号が進化するかもしれないわね」

理樹「じゃあ、筋肉は?あれは立華さんとのイベントで取得した称号だよね」

佳奈多「筋肉は少し特殊です。まだ筋肉の魅力を理解できていない戦線女子メンバー…」

佳奈多「彼女たちとの交流に成功すれば、筋肉称号も進化するんじゃない?」

鈴「なんでもいいが、あたしは『シスコン』だけは進化して欲しくない…」

理樹「まあ、恭介だから仕方ないよ。鈴」

佐々美「屈指のシスコンですものね、棗先輩は…」

佳奈多「大体、どうしてシスコンを毛嫌いするのよ、棗さんは」

鈴「きしょい」

佳奈多「なっ!?」

佳奈多「あなたねえ!シスコンとは言い換えれば妹想い、姉想いという意味なのよ!」

佳奈多「兄妹、姉妹の絆を表す言葉と言ってもいいわ!それをきしょいという言葉で片付けるなんて…!」

鈴「知らんわ!恭介はあたしにお兄ちゃんと呼べとか言うんだぞ!」

鈴「きしょいだろ!」

佳奈多「きしょくないわよ!妹からそう呼ばれたい気持ちは、私もわかるわ!」

佳奈多「私だって、もっと葉留佳からお姉ちゃんって呼ばれたいんだから!」

理樹「ふ、二木さん落ち着いて!」

佳奈多「落ち着いていられるものですか!」

佳奈多「葉留佳だって、私と仲直りしたいからあの世界に行っちゃったって言ってたじゃない!」

佳奈多「私だってあの子と一緒にいたいわよ!こうなったら設定崩壊させてでも、私も死後の世界に…!」

理樹「ちょっ、駄目だって二木さん!?笹瀬川さん手伝って!控え室に連れて帰るよ!」

佐々美「わかりましたわ!二木さん、大人しくしなさい!」

佳奈多「こらっ!離しなさい、あなたたち!」

ズルズルズル…

佳奈多「葉留佳ーーっ!!葉留佳ーーーーーっ!!」

鈴「……………」

鈴「なんだかよくわからんが、出番はもう終わりみたいだ」

鈴「また出番あるのかは知らんが、とりあえず達者でな、お前ら」

選択安価 残り2回

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1 本部
2 校内をぶらつく
3 音楽の聞こえる教室
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8 中庭

22:50:00:00
↓1

恭介(特に用もなく、校舎をぶらつく)

恭介(こうしてると、よく立華と遭遇したりするんだが…)

立華「……………」スタスタ

恭介「おっ、いた」

恭介(いつもより早足のような気がするな。なんか急いでんのか?)

恭介(まあ、挨拶くらいはしとくか)

恭介「よっ、立華。そんなに急ぐと、こけるぞ」

立華「…棗くん?」ピタッ

恭介(俺の声に反応して、足を止めてくれる)

立華「あたし、別に急いでないわ」

恭介「ありゃ、そうなのか?早足で歩いてたように見えたんだけどな」

立華「…あたし、早足だった?」

恭介「ああ。俺にはそう見えた」

立華「そう…。自分でも気づかなかったわ」

恭介「まあ、俺の勘違いかもしれないけどな」

立華「いえ、急ぎの用があるわけじゃないけど。忙しくはあるから」

恭介「へぇ、また三枝がイタズラでもしたのか?」

立華「…違うわ。でもちょっと困ってるわね」

立華「棗くんから注意してくれない?」

恭介「一応、言っておくが、多分効果無いぞ?」

立華「でしょうね。あんなに楽しそうにイタズラされてると、あまり怒れないから困るわ」

恭介「困るって、そういう意味の困るかよ」

立華「?」

恭介(相変わらず人が良いというか、ちょっとズレたとこのある奴だな。立華は)

恭介(でもまた前みたいに、こうやって普通に話せるようになったのは嬉しいぜ)

恭介「じゃあ何が忙しいんだ?生徒会の仕事か?」

立華「そうよ。そろそろ球技大会があるから、その運営に関して色々ね」

恭介「球技大会!?そんなのもあるのかよ!」

立華「嬉しそうね。そういう反応すると思ったわ」

恭介「そりゃ、球技大会なんて言われたら男なら燃えるもんだぜ!」

恭介「種目はなにがあるんだ?」

立華「色々あるけど、毎年一番盛り上がるのは野球ね」

恭介「キタキタキターーーっ!!」

立華「!?」

立華「そんなに嬉しいの?」

恭介「フッ…。立華、何を隠そう俺たちは、生前野球チームを作ってたくらいだ」

恭介「野球は俺たちの青春の1ページだぜ!」

立華「そう。それは良かったわ」

立華「球技大会、楽しんでね」

恭介「ああっ!…でも待てよ、ゆりっペが許可してくれるかどうかが問題だな」

立華「それなら、多分心配無いわ」

立華「戦線の人たちは、毎回ゲリラ参加するから」

立華「本当は、ちゃんと出場登録してほしいんだけど…」

恭介「まあ、規律を乱すのが戦線の在り方だからな…」

恭介「いつも迷惑かけて悪いな」

立華「気にしなくていいわ。もう慣れたし」

立華「それに勝手に参加するチームは、特別な処置で対応するつもりだから」

恭介「特別な処置?なんだそれは?」

立華「ひみつ。当日のお楽しみよ」

恭介「そうか、じゃあ楽しみにさせてもらうぜ」

恭介(あの一件以来、前より立華との会話が弾むようになった気がするな)

恭介(微笑んだり、驚いたり、結構色んな表情を見せてくれてる)

恭介(ゆりっぺが戦線のリーダーとして、それに相応しい仮面をつけているように)

恭介(今俺と話してる立華こそ、本当の立華なのかもしれない)

恭介(今はまだ、リトルバスターズに引き込むことはできないが)

恭介(やっぱ立華とも、色々一緒に遊んだりしたいもんなんだが…)

恭介「そうだ!」

立華「どうしたの?棗くん」

恭介「立華、今から時間あるか?」

立華「…少しくらいなら、大丈夫よ」

恭介「よしっ!じゃあ立華、俺とキャッチボールやろうぜ!」

立華「キャッチボール…?」

恭介「ああ。立華は運営側だから、実際に野球やったりしないんだろ?」

立華「…ええ、その予定よ」

恭介「そんなのもったいないぜ!野球はやっぱり、実際にやるのが一番楽しいからな!」

恭介「だからせめて、キャッチボールだ!いいだろ?」

立華「…あたしはいいけど。あたしとキャッチボールしてるところなんか見られたら」

立華「棗くんが困らない?」

恭介「バレないように、あまり人目の無いとこでやれば大丈夫だろ」

恭介「こんだけ広い学校なんだ。そういう場所くらいあるだろ?」

立華「…ええ。一つ、心当たりはあるわ。けど道具も無いし…」

恭介「そんなもん、今から購買で買いに行けばいいだろ!」

立華「でも…」

恭介「さあ、行こうぜ!」

立華「あ…」

恭介(立華の手を引いて、購買に向かう)

恭介(やばいな!なんかすでにめちゃくちゃワクワクしてるぜ!)

立華「……………」

立華「…馬鹿ね、あなたは」ニコッ

ーーーーー

ーーー

恭介「すげえな…」

恭介(立華に教えて貰った場所は花壇だった)

恭介(色とりどりの花が咲き乱れていて、めちゃくちゃ綺麗だ)

恭介(思わず目を奪われる)

恭介(近くにあるビニールハウスの中にも、色んな花が咲いてるのかもな)

恭介「こんな場所があったのか…」

立華「知らなかったでしょ。あまり目立たない場所にあるから」

立華「園芸部で管理してるんだけど、ほとんど人は来ないわ」

恭介「そいつは好都合だな」

恭介「けど、花を傷付けたりしたりしたくないし、気を付けてやらないとな」

立華「あっ…、盲点だったわ…」

恭介「おいおい…。まあ、あんま力入れずに軽くやろうぜ」

立華「あたし、ちゃんと投げる自信無いわ」

恭介「そこんところは任せとけ。守備職人の腕前を見せてやるよ」

立華「棗くんは職人さんだったの?」

恭介「…ああ、まあな」

立華「すごいのね」

恭介(なんで立華と話してると、ちょくちょく話がズレてくんだろうな…)

恭介「まあ、とりあえず始めようぜ」

恭介「立華、グローブはちゃんと嵌めたな?」

立華「ええ。大丈夫よ」

恭介「よし、じゃあいくぜ!」

立華「ばっちこーい」

恭介(距離葉あまり開けず、立華のグローブ目がけてボールを投げた)

パンっ

恭介(心地良い捕球音が響く)

恭介「ナイスキャッチだぜ!立華!」

立華「…結構、音が響くのね」

恭介「ああ、気持ちいいだろ!今度は立華から俺に投げるんだ」

立華「わかったわ」

恭介(立華が利き手でボールを握る)

恭介(そして…)

恭介「うおっ!?」

パンっ!

恭介(腕だけの力で投げた。ちょっと驚いたが、問題なくキャッチする)

恭介「すげえな、立華。腕だけでそんな速い弾投げれんのかよ」

立華「…おかしかった?」

恭介「いや、やりやすいように投げればいいさ」

恭介「いくぞ、それっ!」

パンっ!

立華「えいっ!」

パンっ!

恭介(交互にボールを投げては捕るのを繰り返す)

恭介(本当は、みんなと一緒に、周りの目を気にせずやれたら最高なんだけどな)

恭介(それを実現させるためにも頑張らねえと…)

恭介「あっ。でも、園芸部が管理してるとか言ってたろ?」

恭介「人が来ないっていっても、その人たちが来たら怒られるかもな」

立華「その心配は無いわ。園芸部員はあたし一人だから」

恭介「えっ、マジかよ!じゃあこの花全部、立華一人で世話してるのか?」

立華「普段はそうね。たまに手伝ってくれる子もいるんだけど…」

恭介「いつもはなにか別用があるとかか?」

立華「いいえ。その子たちはみんな、この世界から去っていったわ」

恭介「…なるほど、そういう意味か」

恭介(立華は今までずっと、俺たちのような存在を守り)

恭介(そして心残りを無くせるように手を尽くし、新たな人生を生きれるように、送り出してきた)

恭介(きっと今まで何人も、立華と仲良くなった奴もいたんだろう…)

恭介(でもそいつらは、みんなこの世界から去っていった)

恭介(心残りが消え、次の人生に希望を見出したから。他でも立華もそれを望んでいたから)

恭介(出会いと別れを繰り返して、何度もまた一人になって)

恭介(それでも、戦い続けてきたんだよな…)

恭介(そんなの、ねえよ…。立華が不憫すぎる)

恭介(やっぱり俺は、立華をもう一人でいさせたくない)

恭介(必ず、立華をリトルバスターズの仲間にしよう。俺だけは、ずっと立華の味方でいよう)

恭介(どれだけの困難が待っていようが、成し遂げてみせる…!)

立華「棗くん?」

恭介「…ん、なんだ?」

立華「何か、考え事してたみたいに見えたから」

恭介「ああ、わるい。立華はどうして、園芸部になったんだ?」

立華「…この世界には、新しい命は生まれないの」

恭介「えっ…?」

立華「一般生徒のみんなは、卒業式を迎えたら消える」

立華「そして入学式には、新しい生徒たちが増える」

立華「他の生きものは死ぬこともない」

立華「ずっと同じ姿のまま、存在し続けるの」

立華「最近、棗くんたちが飼い始めたあの犬もそう」

恭介「チルーシャのことか」

立華「ええ。あたしが来た時にはもうチルーシャはいたわ」

立華「きっと鳥や、虫も、魚も。卵を作ってもそこから命は生まれない」

立華「ここは…」

恭介「死後の世界だから、か」

立華「ええ」

立華「でも、花や植物だけは別なの」

立華「動物じゃないから、例外なのか、詳しくはわからないけど」

立華「種から、芽が出て、葉をつけて、花を咲かして、枯れて、また種を残す」

立華「そうして、命は廻っていくの」

立華「それはきっと、とても素晴らしいことだと思うから。だから…」

恭介「一人でも、これだけの花の世話をしてるんだな」

立華「ええ」

恭介(立華が微笑む。きっと相当な苦労があるはずだ)

恭介(それを全く気にせず、ひたすらに命を見守る)

恭介(俺は立華のそんな姿が、眩しく見えた…。まるで、本物の天使のように…)

立華「…そろそろ、時間だわ。行かないと」

恭介「そうか。仕事がんばってな」

立華「ええ。キャッチボール楽しかったわ。これ…」

恭介(立華が俺に、グローブを返そうとする)

恭介「それは立華にプレゼントだ。どうせ、立華のサイズじゃ俺の手には入らねえしな」

立華「…いいの?」

恭介「ああ。また、キャッチボールしようぜ立華。約束だ」

立華「…そうね、約束」

恭介(立華と指切りを交わす)

恭介「なあ、立華。お前の花のお世話、俺にも手伝わせてくれないか?」

立華「えっ?」

恭介「いつでも呼んでくれ、とはさすがに言えないが」

恭介「手が空いてる時は手伝いたい。そう思ったんだ、どうだ?」

立華「…ありがとう、棗くん」

立華「棗くんがいいなら、あたしからお願いするわ」

恭介「よし、じゃあそれも含めて指切りだ!」

恭介「キャッチボールと、花の世話の約束な」

立華「約束、破ったら怒るわよ?」

恭介「俺は約束は守る男だ。信用してくれ!」

立華「ええ、信じてるわ。棗くんのこと」

恭介「ははっ!」

立華「………」ニコッ

恭・立「「指きーった!」」

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4 図書館
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23:20:00:00
↓1

恭介(適当に暇つぶしを兼ねて、図書館にやってくる)

恭介(すると、少し珍しいやつと見慣れたやつの後ろ姿が見えた)

恭介「二人仲良く読書か?西園、遊佐」

西園「恭介さん、こんにちは」

遊佐「どうも。棗さんも図書館に来ることがあるんですね」

恭介「フッ…。こう見えて、俺は読書が趣味の文学少年なんだぜ?」

遊佐「…にわかには信じがたいですが、そういえば、最初に定例会議の通達に行った時も」

遊佐「日向さんと一緒に図書館にいましたね」

恭介「…遊佐。お前なんか微妙に、俺に大して毒舌だよな?」

遊佐「お気になさらず。誰に大してもこうですので」

恭介(すました顔でそう告げられる)

恭介「それはそれでどうなんだ…?」

美魚「まあ、恭介さんの読書はもっぱら漫画ですから」

美魚「文学少年というのは、少し語弊があるかもしれませんね」

遊佐「そんなことだろうと思いました。やっぱり棗さんは棗さんですね」ジトーっ

恭介「っておい!?他のみんなにはそんなに口悪くねえだろ!」

遊佐「気のせいです。断じて棗さんにだけ、意図的に厳しく接しているわけではありません」

恭介「すっげえ、怪しいぜ…」

恭介(まあ、淡々と事務的な会話しかされないのよりはマシだよな)

恭介(少しずつ、心を開いてくれていると思っておこう)

恭介「で、二人は本を借りに来たのか?」

美魚「はい。ここの図書館の蔵書量はすごいですね」

美魚「わたしは乱読なので、全ての本を読み終えるまで、この世界に留まってしまうかもしれません…!」

恭介「そうか、まあほどほどにな…」

恭介(普段は大人しいが、西園は好きなことになるとめちゃくちゃ流暢に話し始めるからな)

恭介(そういや、能美とルームメイトになる時も、本を置いて良いことを条件にしてたくらいだし)

恭介「遊佐も読書が好きなのか?」

恭介(俺としては、今気になるのは遊佐の方だ)

恭介(正直、遊佐が普段どうやって時間を潰してるのかを全然知らない)

恭介(よく本部でゆりっぺや沙耶と一緒にいるようだが、なにぶん色々と謎の多いやつだ)

恭介(ゆりっぺに対しては結構毒舌だから、仲良いんだってことくらいはわかるが…)

恭介(そう考えると、素の遊佐って結構黒いのか?)

遊佐「棗さん。またなにか、失礼なこと考えてませんか?」

恭介「い、いや、別になんでもないぜ…!」

遊佐「そうですか。ならいいんですが」

恭介(やっぱ鋭い…!只者じゃないのは確かだぜ)

遊佐「質問に答えると、さして読書が好きというわけではありません」

遊佐「わたしは戦線のオペレーター。ただそれだけですから」

恭介「と言っても、四六時中オペレーターとしての仕事してるわけでもないんだろ?」

遊佐「そうですね。ゆりっぺさんの命令には従いますが、それでもわたしの本分はオペレーターです」

遊佐「それ以上でも、それ以下でもありません」

恭介(本当に、それだけのために生きてるなら、機械と変わらないじゃねえか)

恭介(少なくとも、俺が今まで見てきた遊佐はそんな奴じゃなかったはずだ)

恭介(だから、少しムキになって反論してみる)

恭介「じゃあ、なんで図書館に来たんだよ。それもオペレーターとしての仕事か?」

遊佐「…西園さんに、どうしてもと言われたからついて来ただけです」

遊佐「他意はありません」

恭介「そうなのか?西園」

美魚「はい、わたしがお誘いしました。遊佐さんとは、一度お話してみたかったので」

遊佐「わたしと、ですか?」

美魚「はい。あなたとです」

美魚「遊佐さん。わたしの推測なんですが、あなたは男性に嫌悪感を抱いている部分があるんじゃないですか?」

遊佐「……………」

恭介「えっ…、そうなのか?」

美魚「はい、わたしはそう感じました。あの時…」

美魚『ところで、戦線の幹部には随分と男子のみなさんが多いんですね』

ゆり『まあ、一応戦うための組織だからね』

遊佐『もしかすると、男子が苦手ですか?』

美魚「あの時、遊佐さんからはまるで、同類を見るかのような視線を感じました」

美魚「そして、わたしがBLを語った後は、少し嫌悪感が混じった視線を向けていましたよね?」

美魚「加えて、その後で小毬さんを男性嫌いだと予想しています」

美魚「それで、ピンと来ました。遊佐さんこそが男性嫌いなのでは無いかと」

恭介(なるほど。確かに、そう言われてみると辻褄が合う)

恭介(最初に、西園に対してちょっと食い気味に反応してたのは、それが理由だったのか)

遊佐「…そんなことはありません。そもそもそれは西園さんの推測です」

遊佐「あなたが感じたという視線も、全て勘違いだったのではありませんか?」

美魚「確かにそうですね。でもわたしは生前の経験から言って、人の視線にはわりと敏感な方なんです」

美魚「影なしといわれたり、たまに興味を向けられても、悪口だったり…」

美魚「リトルバスターズのみなさんに出会うまでは、まるで路傍の石ころのような存在でしたから」

恭介「西園…」

遊佐「……………」

美魚「それにわたしは、あなたがずっと自分を責めているように思えます」

美魚「努めて戦線のオペレーターという、存在であろうとしているように見えます」

美魚「だから、わたしはあなたと話してみたいと思いました」

美魚「わたしもずっと、自分を責めて生きていた頃がありましたから」

遊佐「……………」

恭介「…遊佐、ほんとに悩みとかあるなら話してくれないか?」

恭介「お前がなにか自分を責めているようなことがあるなら、なんとかしてやりたい」

遊佐「…それで、なにを話せばいいというんですか?」

遊佐「わたしの過去ですか?」

遊佐「わたしの気持ちが、あなたたちにはわかると、そう言いたいんですか?」

恭介(言葉の端に、僅かな怒りが滲んでいるのがわかる)

恭介(誰にも、自分の気持ちなんてわかるわけがない。そういう気持ちが)

美魚「わかる、とはいいません。無理に過去を聞くつもりもありません」

遊佐「えっ…?」

美魚「これを」

恭介(そう言って、西園は一冊の本を、遊佐に差し出す)

恭介(この図書館の本なんだろう。これを渡すために、遊佐を図書館に誘ったみたいだな)

遊佐「なんですか?これは…」

美魚「見てのとおり小説です。内容は大まかに言えば、高校生の男子二人の友情を描いた本です」

美魚「一応補足すると、BLでは無いですよ」

恭介「そういうのはうすい本なんじゃないのか…?」

美魚「甘いです、恭介さん。純文学の中にも、そういった内容は多々あります」

恭介「マジかよ…」

美魚「まあ、騙されたと思ってよろしければ読んでください。とてもいいお話なので」

恭介(ようは小説の男たちの友情を感じれば、男に対する見方も変わるかもしれないってことか)

恭介(西園らしいアイデアだな)

遊佐「…認めましょう。わたしは確かに、男を嫌悪している部分があります」

遊佐「でもこんな本を読んでも、わたしの認識は変わりません」

遊佐「今でこそ、そうではありませんが…」

遊佐「この世の全ての男という存在そのものに、殺意を抱いてた時期もありました」

恭介(淡々とした口調で語る。まるで本当に、違う人物のことを話しているかのように)

遊佐「わたしは、そんな自分を深く奥底に沈めました」

遊佐「そんな自分と決別するために、戦線のオペレーターになり、そうあろうとしてきました」

遊佐「ですが、男への嫌悪感が完全に消えたというわけではありません」

遊佐「戦線の幹部のみなさんは、とても良い人たちですが…」

遊佐「それでもまだ、完全に心を許しきれてはいません」

遊佐「何十年も、共に戦い続けているといのに、未だにです…」

恭介(少しだけ、声に力が無くなっているように感じる)

恭介(男という存在全てに、殺意を感じていたほどの嫌悪)

恭介(何十年とあいつらと過ごしていながら、まだ完全に消えはしないほどの嫌悪)

恭介(それだけ男を嫌っているんだ。遊佐の過去になにがあったのかは、大体想像がつく…)

恭介(遊佐が日頃から事務的な対応に徹しているのには、そういう理由があったのか…)

遊佐「あなたたちも、わたしの本性を知れば、きっとわたしから離れていくはずです」

遊佐「だから、こんなのは不必要なお節介です」

遊佐「必要以上に、わたしに関わろうとはしないでください」

恭介(拒絶…、というより逃避なのかもしれない)

恭介(罪悪感や諦めといった感情が募るあまり、遊佐は俺たちと一線を置いている)

恭介(その距離を保ち、踏み出そうとすることを恐れている)

恭介(それが、オペレーターという立ち位置なんだろう)

美魚「はい、お節介なのはわかっていますよ。不必要かどうかは、わかりませんが」

遊佐「!?」

美魚「わたしのこの行為は、ほんの小さなきっかけにすぎません」

美魚「そこから、なにを思い、どう感じるかは遊佐さん次第です」

美魚「でも、わたしはやっぱり孤独を望むのも、自分を責め続けるのも間違っていると思いますから」

美魚「あなたにも、自分の居場所を大切に思えるようになって欲しいんです」

遊佐「………………」

美魚「わたしのお話は以上です。今日はありがとうございました、遊佐さん」

美魚「機会があれば、今度は一緒に読書でもしましょうね。では…」

恭介(そう言って、西園は立ち去ろうとする)

遊佐「待ってください…!」

美魚「……………」

遊佐「お節介だとわかっていながら、どうしてこんなことするんですか…?」

遊佐「わたしは、誰にも手を差し伸べてもらうような、そんな資格はない人間なのに…」

美魚「…わたしも、そう思っていましたから」

美魚「それでも、差し伸べられた手を取ったから、今のわたしがいるんです」

美魚「それが、理由です」

恭介(そして今度こそ、西園は立ち去った)

恭介(残されたのは俺と、西園から渡された本を持った遊佐…)

遊佐「…ですか?」

恭介「ん?」

遊佐「どうしてそう簡単に、あなた達は手を差し出すんですか?」

遊佐「そんなに簡単に、誰かに自分を差し出したり、身を預けたりできるんですか…?」

遊佐「こんな、わたしにまで…」

恭介(これはきっと、昔理樹も問われたことのある質問だ)

恭介(そして、俺の答えも最初から決まっている)

恭介「目の前で辛い思いをしてる人を助けたいって思うのは、当然の気持ちだ」

恭介「後は踏み出す勇気だけ。そして俺たちには、そうしたい時に助けてくれる仲間がいる」

恭介「みんなが一緒だから、俺たちは、強くなれるんだよ」

遊佐「仲間が、いるから…」

恭介「もちろん、その輪の中にはお前もいるんだからな。遊佐」

遊佐「わたしも…」

恭介「後は、少し一人で考えてみな。その本でも読みながらな」

恭介(そして、俺も図書館から立ち去った)

恭介(今の遊佐にはきっと、心を整理する時間が必要だと思ったから)

遊佐「わたしは…」

恭介(最後に、その言葉と一緒に、本の表紙をなぞるような、そんな音が聞こえた気がした…)

本日は以上です
仕事が多忙のため、今回は本当に遅れました
選択肢の用意は本当に大変なんですが、それでももう少し早く再開できたような気もします
以後、がんばりますm(_ _)m

次回は話の都合上、かなり短くなる予定です
最後にわりと重要な安価があるので、その安価次第で野球回の内容が変わります
長々と遅くまで、お疲れ様でした

次回パートを執筆中ですが
このままだと少しキリが悪くなりそうです
余裕を持つ為にも再開する時は次スレを建てます

感想や雑談などで少し埋めていただけるととても助かりますm(_ _)m

はい、書き溜めてますね
ただ今回選ばれなかったものがそのままお蔵入りになるわけではなく
次回の自由行動に回るストック形式です
本家ゲームも基本的にはこの形式なのでそれを採用しています

ただ今回の本部のように特殊なイベントがある場合はそちらが優先され発生します
そのため本部での通常交流イベントのストックとかは結構溜まってたりします

説明下手ですみませんm(_ _)m

確かに選択肢の用意はかなり大変ではあります

ですがゲームの雰囲気を少しでも再現したいというのと

せっかく読んで頂いているみなさんにもこのSSを作り上げるのに参加してもらえたら
楽しんでいただけるんじゃないかという発想で始めたのであまり苦ではないです

だから感想をいただけるとすごい励みになります
いつもありがとうございますm(_ _)m

斉藤ルートとかキャンプとか
チルーシャ遭遇前にクドが来てたらチルーシャに会いに行くイベントとか
はるちんを慰めるキャラの台詞の差分とか

想定してたネタは色々あるので完結後に要望が多ければいくつかは回収したいとは思っています

好きな曲多すぎるんですが選ぶならAlice MagicとMy songですね
最近はBravely YouとMillion Starをよく聞いてます

全然関係ないんですがBravely Youは有宇の名前と掛けたのかと地味に気になってます

明日、20時くらいから再開します
最後にわりと重要な安価
そのため明日の投下量はさして多くありません

恭介「戦線名はリトルバスターズだ!」岩沢「その4だ」
恭介「戦線名はリトルバスターズだ!」岩沢「その4だ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1444564027/)

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ここまでお疲れ様でしたm(_ _)m

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