弟「俺、結婚するから」 (33)

弟「俺、結婚するから」

兄「そうか…結婚式には必ず呼んでくれよ」

弟「当たり前だろ、なに言ってんだよ」

兄「あぁ、そりゃそうだな」

弟「もしかして、弟に先を越されて焦ってる?」

兄「そうかもな」

弟「おいおい、しっかりしてくれよ兄貴だろ」

兄「悪いな…ダメな兄貴で…」

弟「まったくそうだな、こっちに全然帰ってこねぇ実家にも顔ださねぇ」

兄「すまん、仕事が忙しくてな」

弟「報道関係だっけ?」

兄「あぁ」

嘘だけど

弟「こっちじゃ兄貴並に稼げるやつなんて少ないだろうな」

兄「そうかもな」

本当はもっと稼いでるけど

弟「でも、なんでだろうな」

兄「何が?」

弟「兄貴が結婚できない理由?」

兄「知るかよ」

弟「稼ぎいい、人柄だっていい、顔も悪くない」

兄「弟に褒めれても」

弟「なんだよ、俺だってこんなこと言うの恥ずかしいだから」

兄「ははは」

弟「なに笑ってんだよ」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1439579928

兄「わりーわりー」

弟「それと」

兄「ん?」

弟「結婚式やる前に一度は帰ってきてくれないか?」

兄「そうだな、そろそろ帰らねぇと俺の顔も忘れられそうだしな」

弟「アイツとも会ってほしいし」

兄「あれ?会ってなかったけ?」

弟「はぁ?俺がアイツと付き合いだしてから兄貴一度も帰ってきてねぇジャン」

兄「あぁ、そうか全然、地元帰ってなかったから最後に帰ったのもいつか忘れてたわ」

弟「仕事が忙しいのはわかるが」

弟「アイツ……兄貴と会ってねぇの気にしてから」

兄「そうか、そんなつもりはないんだが…悪い事したな…」

嘘だけど

弟「中学の同級生なんだろ?」

兄「同じクラスだった、昔から美人だったぞ今は知らんけど」

弟「今も美人だっての」

兄「えーなに?ノロケですか?話は聞くよ兄貴だから」

弟「はいはい」

兄「適当に流すなよ」

弟「とにかく、知らねえわけじゃないんだからさぁ会えば昔の話で盛り上がったりするかも出し」

兄「じゃあ、帰る日が決まったら連絡するわ」

弟「よろしくな」

兄「おう」

悪い、帰らないわ

居酒屋

兄「わりーな、呼び出しちまって」

友「気にすんるなよ、俺とお前の仲だろ」

兄「はぁ?」

友「その『なに言ってんの?』って顔やめて傷つくから」

兄「冗談、冗談、俺とお前の仲だろ」

友「かわらねぇなー」

兄「そうか?」

友「あぁ、全然かわらん」

兄「でも悪かったなこんな時間に嫁さん怒ってない?」

友「もう怒ってるから大丈夫、最近さぁ喧嘩して家に居づらかったから丁度よかったわ」

兄「大変なのね」

友「結婚なんかするもんじゃねぇよ」

兄「独身の俺にはわからんわ」

友「お前はどうなのよ」

兄「俺か?相手がいないからなー」

友「不思議だわー稼ぎいい、人柄だっていい、顔も悪くないのに」

兄「俺の弟と同じこと言うのな」

友「だってそうだろ、本当に不思議だわ」

兄「そういや、俺の弟から電話きて結婚することになったんだとよ」

友「マジか、おめでとう」

兄「俺に言われても」

友「じゃあ、女さんと?」

兄「そう」

友「姉さん女房か、なんかエロな」

兄「女さんとは同じ年だろ」

友「女さんが嫁かーあの頃から美人だったろ今どんな感じ?」

兄「知らねぇけど」

友「会ってないの?」

兄「そもそも、地元に帰ってない」

友「マジ?」

兄「ここ10年間で2回ぐらい?最後が3年前」

友「少なっ、帰れよ親と仲悪かったっけ?」

兄「普通じゃねぇの?」

友「俺なんか、今年だけで二回も帰ってんだぞ親が『孫に合わせろ』って」

兄「しゃーないわな」

友「それに嫁の実家も行くわけだから、金がいくらあっても足りねーっての」

兄「ご苦労様です」

友「まぁ、弟さんの結婚式前に一回ぐらいは帰ったほうがいいだろ」

兄「弟にも言われたわ」

帰らないけど

友「でもさぁ、弟の嫁さんが同級生ってなんか変な感じだよな」

兄「よくあることじゃねーの?」

友「そうだと思うけどさぁ、だって、ほら女さんってお前のこと好きだったじゃん」

兄「中学の頃の話だろ」

友「いやでも、あんな美人に惚れられるって良いよなーなんで付き合わなかったのよ?」

兄「なんでだろな」

友「他に好きな奴がいたとかか?」

兄「もう忘れちまったよ昔過ぎて」

嘘だけど


友「他に好きな奴がいたとかか?」

兄「もう忘れちまったよ昔過ぎて」

嘘だけど

あああああああああ、しくじったなにやってんだろ俺はぁ…

そんな忘れぐらい昔の中学校

友「よう、来たか」

兄「給食を食いにな」

友「お前ぐらい堂々と遅刻すると逆に感心するわ」

兄「そうか?」

友「そりゃそうよ、学校に飯だけ食いに来てるんだぜ」

兄「金も無い家にいても飯が無いならしょうがないだろ」

友「いやだってよ、お年頃の俺らだよ非行に走ったりとかさぁ」

兄「なんだそりゃ、田舎のヤンキーじゃあるまいし」

友「いや田舎だよ結構な」

兄「それもそうだな」

友「それとな、担任が職員室に来いって言ってたぞ」

兄「そうか」

友「行かねぇの?」

兄「行かねぇけど」

友「ヘタレの俺には理解できん」

兄「別にいかなくても死ぬわけじゃねぇんだから」

友「でもほらな、なんというかそのえっとなんだよ」

兄「知らんよ」

友「ダメだ、心が荒んでる奴の説得なんざできん」

兄「そのテレビで言ってるような若者の心の闇ってきな奴やめて」

友「だってそうじゃんかー」

兄「案外、普通だと思うがな誰もやらんだけで」

――――――
―――――――――――
――――――――――――――――

都内某所

兄「まだ、くたばってねぇのかよおっさん」

おっさん「今じゃ兄君の方がおっさんだけどね」

兄「まだ三十なんだが」

おっさん「世間じゃそれをおっさんて言うんだよ」

兄「それじゃ、おっさんは爺さんってかややこしいな」

おっさん「爺さんじゃないからね、まだ五十五だからね」

兄「いや爺さんだろ、でもメンドイからおっさんでいいや」

おっさん「変わってないね全然」

兄「それ、友にも言われたわ」

おっさん「おお、友君か懐かしいね、元気してるの?」

兄「結婚して娘もいるぞ」

おっさん「そうかー娘さんがいるのかー」

兄「順風満帆てやつ?」

おっさん「それで兄君は?そろそろ身を固めたほうがいいじゃない?」

兄「おっさんに言われたくねぇ」

おっさん「何をおっしゃる、俺でも結婚してたよ」

兄「はぁ?」

おっさん「そんなに驚かなくてもいいでしょに」

兄「嘘だろ」

おっさん「調べてみれば?」

兄「いや、いいわ興味ない」

おっさん「つれないねー、そういや弟くん結婚でしょ?」

兄 「調べたのかよ」

おっさん「違う違う、君の両親とたまたま会ったときに聞いたのよ。一応、親戚ってことになってるからね」

兄「どうだか」

おっさん「本当だよ本当」

兄 ッチ

おっさん「でもね、久しぶりに兄君と会うわけだから手土産あるけど聞く?」

兄「どうせ、勝手に喋るだろ」

おっさん「ご明察」

兄「どうせアイツの話だろうよ」

おっさん「またまた、ご明察。じゃあ、弟さんの結婚相手、ここじゃあ女さんでいいか」

兄「ご自由に」

おっさん「女さんは大学卒業後、地元の中学校で養護教諭として…あっ保健室の先生ね。働いて一年後に二歳年上の男と付き合い始めるが男のDVが原因で別れる。その後、男がストーカーになっちゃって刑事事件にまぁ、この辺は兄君も知ってるか」

兄「さぁどうでしょう?」

おっさん「白々しいね」

兄「……」

おっさん「じゃあ続きね、そんなことがあった女さんは男性不信になっちゃうわけ、ここから二年間はフリーだったけど、そこで弟さんの登場だ!!」

おっさん「中高大社とろくな男としかめぐり合わなかった女さんにとっちゃ始めてまともな男と出会うわけよ」

おっさん「でも居るんだよね、こうダメな男ばかり好きになっちゃう女ってさぁ」

兄「……」

おっさん「純真なのかねぇ」

兄「知らん」

おっさん「じゃあ、弟くんと出会ったとこから

兄「まだ続ける気かよ」

おっさん「ごめんごめん、面白くてね、一応、書面にしてあるけど要る?」

兄「いらん」

おっさん「結構、細かいところまで調べてるけど」

兄「金にもならんのにようやるわー」

おっさん「じゃあ、動画見るこっちは有料だけど」

兄「ちゃんと処分しとけよ」

おっさん「小遣い稼ぎには丁度いいのに」

兄「消せ」

おっさん「社会人35年目だよ常識と良識ぐらい持ち合わせてますから」

兄「どうだか」

おっさん「まぁ、兄君も早く大人になた方がいいじゃないかな」

兄「三十はおっさんなんだろ?」

おっさん「生きてりゃ誰でも歳はとるからね、いつまでも中学の頃を引きずっても意味無いよ」

兄「それ言いにここまで来たのか?」

おっさん「仕事のついでに寄っただけだよ」

兄「地元で受けてこっちまでくるってどんな案件だよ」

おっさん「たいした奴じゃないよ、身辺調査たぐいのね」

兄「地元じゃ仕事も少ないだろ」

おっさん「昔に比べればね、でも田舎は面白いぞ」

兄「面白いか?」

おっさん「面白い、なんでもありだからな」

兄「さっさと引退すりゃーいいのに金ならあるだろ」

おっさん「そうだな動けなくなればそれもいいな」

兄「その前に死ぬなよ」

おっさん「おおそうだな、そんで今日泊めて」

兄「嫌だ」

おっさん「一緒に暮らした仲だろ」

兄「いーやーだ」

おっさん「まぁ住んでる場所ぐらい知ってるけどね」

兄「それが?」

おっさん「鍵だってあるけどね」

兄「それで?」

おっさん「ほう、強気だね」

兄「なんのことやら」

おっさん「でも、部屋にあんなもん置いてちゃまずいだろ」

兄「はい、俺の負けでーす。すいませんでした」

おっさん「分かればよろしい」

兄 ッチ

おっさん「とりあえず飯にしよう腹減った、もちろん兄君のおごりで」

兄「へいへい」

とある昔の中学校 

担任「……」

兄「……」

担任「……」

兄「とりあえず…飯を食わしてくださいよ」

担任「食い終わったら、職員室な」

兄「……」

担任「職員室な」

兄「はい」

担任「絶対来いよ」

兄「うっす」


友「担任って飯食うの早いよな…食ったらすぐ何処かに言っちゃうし」

兄「ヤニだろ」

友「てっきり生徒に興味ないのかと」

兄「だったら、俺なんか相手にしないだろ」

友「お前みたいな生徒がいるとね、やる気なくしちゃうじゃん」

兄「あっ、俺のせいか」

友「今頃~?ってか、勝手に食うなよ」

兄「だって残してたじゃん」

友「それ好きなんだよ」

兄「子供かよ」

――――――
―――――――――――
――――――――――――――――

横浜中華街

兄「なんで、わざわざここまで来たんだよ」

おっさん「いやー会わせたい人がいてね」

兄「誰だよ」

おっさん「着いてからのお楽しみって事で……この店だよ」

兄「高そーだなおい」

おっさん「実際、高いよ」


入店


双1「あ、こっちこっち兄ちゃん♪おっひさ~♪」

双2「兄さんお久しぶりです、先に頂いてます」

兄「えっ」

双1「詳しい話は知らないけど、中学の頃の女をまだ引きづってるって?」

双2「ダメですよ、兄さんも良い大人なんだから」

兄「えええっーー!!」

双1「あっ、そうだ!!双2なんてどう?最近、男に捨てられたらしいよ」

双2「私は、純情可憐な双1の方が良いと思いますよ。なんだって未だに処

パッチーーーンッ

兄「ええええええええっーーーー!!!!」

双2「何も殴ること無いじゃないですかっ」

双1「ビンタでしょ」

おっさん「まぁまぁまぁ」

双1「ハゲは」

双1「黙ってろ」双2「黙ってください」

おっさん「ええええええええええええええええっーーーーー!!?」

回想その1 高一の夏、猛暑日の昼下がりセミの鳴き声で実際より二度ほど暑く感じるおっさん宅、玄関前

兄「おーい、帰ったぞ」

シーン

兄「なんだよ、人に頼んでおきながら…にしてもなんでこんなに暑いんだよ」

少女1「夏だからです」

兄「……」

少女2「正確に言えば、太陽の周りを公転している地球の自転軸が傾…

兄「えっ分身?」

双1「いえ」

双2「私たち」

双1&2「双子です」

兄「双子かーそうだよね双子だよね」

双1&2「はい」

兄「……」

兄「おっさーーん!!おっさーーーーーーーん!!おい、ハゲどこだよーーーーーーー!!!」ドタドタ

双1「おじさんなら」

双2「台所だですよ」

兄「あっ、どうも、これはご親切に」

台所

兄「おっさーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!」

おっさん「まってろ、学生時代に二ヶ月間ひたすら作りこんで習得した本物の炒飯を食わしてやるからな」

兄「誘拐はダメだろ誘拐はよ!!!!!!」

おっさん「はぁ?なに言ってんの?」

兄「ダメだ、無意識の内に誘拐したのか…警察に電話を…

おっさん「双子ちゃんのこと?あれは娘だから」

兄「妄言まで言い出しやがったー!!病院にも電話しねぇと」

おっさん「おいおい、落ち着けよ。双子ちゃんからも言ってあげてよ」

双1「お父さんはハゲてないよ」

双2「お父さんは髪の毛フサフサですもん」

おっさん「まぁそう言う訳だから」

兄「なに円満解決した感じ出してるの!!」

おっさん「まぁ血縁無いけど、娘みたいなもんだから」

双1「いえ、違うけど」双2「いえ、違います」

おっさん「まぁそう言う訳だから」

兄「今、少女達が完全否定したよね!!?ね!!!?」



回想その2 四人で食卓を囲む炒飯はおいしい?

おっさん「ってことで、彼女達を預かることになったんだわ」

兄「おっさんがああ言ってるけど本当?」

双1「だいたい」

双2「あってます」

おっさん「おいおい、いちいち確認せんでもいいだろうに」

兄「『娘だー』とか分けの分からん事いってる人の話だけじゃねー」

おっさん「そっちの方が色々と動きやすいだろ」

兄「おっさんがああ言ってるけどどう思う?」

双1「いや、ちょっと」

双2「遠慮したいです」

兄「ほらみろ」

おっさん「なんだよ、おっさんいじめて楽しいのか?そんなにハゲてもいないだろうよ」

兄「結構きてるぞ」

双1「きてる」

双2「コメントは差し控えさせていただきます」

兄「そんで、いつまで預かるの?」

おっさん「夏休みの間だけ」

兄「そういや、名前聞いてなかったな」

双1「双1です」双2「双2です」

兄「小五ぐらい?」

双1「はい」

双2「十歳です」

再び中華料理屋

双1「そういえば、あの時も炒飯だったよね」

双2「んー?兄さんと始めてあった時のこと?」

双1「そうそう」

双2「最初は夏休みの間だけだったはずなのに…」

双1「あれから、十五年も経つのかー」

双2「早いですよね」

兄「オイ見ろよ、おっさん今の会話の中におっさん出てきてないぞ」

おっさん「いいんだよ」

兄「炒飯までは出来てきてるのにな」

おっさん「いいんだよ」

兄「でも、さっきまで喧嘩してたと思えばもう仲直りか」

おっさん「双子ってのはよくわからんね」

双1「今、私たちの悪口言ってなかった?」

双2「そうなんですかっ?」

兄「言ってねーよな、おっさん」

おっさん「ああ、言ってない」

双1「あーー嘘言ってる」

双2「兄さんが嘘つく時の癖ぐらい知ってるんですから」

兄「マジで?この業界でやっていくのに致命傷じゃん」

双1「まったく」

双2「まぁいいじゃないですか、兄さんのおごりなんだから」

兄の自宅?

おっさん「いいとこに住んでるねー」

兄「……」

おっさん「ここから、夜景を見てセンチメンタルな気分に浸ったりしてるの?」

兄「……」

おっさん「怒るなよ、一回不法侵入しただけで」

兄「二回目だろ」

おっさん「あれ?バレてた?」

兄「気づいたの相当後だったけどな、だから引っ越したんだよこっちに」

おっさん「独り立ちして元気にやってるかなーって心配するわけよ親心からの出来心って感じ?」

兄「いらねーよ」

おっさん「これどうしたのよ?戦争でもするつもりなの?」

兄「前の仕事の時に流れてきたってか貰ってきた?」

おっさん「あぁ、貰ってきたのね」

兄「欲しいならやるけど」

おっさん「持って帰るのにはちっとでか過ぎだな」

兄「何か飲むか?」

おっさん「水でいいわ」

兄「ほい」

おっさん「ありがと」

兄「結局さぁ、なにしに来たわけよ双子といいおっさんといい」

おっさん「……」

兄「双子は今、忙しいだろ」

おっさん「知ってたか」

兄「そりゃね、この業界たださえ一人なのが当然の中で双子だぜ、いやでも耳に入ってくるよ」

おっさん「じゃあ俺の事は?ほら、伝説のとかさ?」

兄「聞いたことねぇな」

おっさん「おかしいな結構、有名だと思ったんだが…」

兄「勘違いも大概にしとけよ」

おっさん「そうですか」

兄「そうだよ」

おっさん「良い子だろ双1も双2も」

兄「食うだけ食って帰っていったけどな」

おっさん「お前のためにわざわざ来てくれたんだぞ」

兄「呼んでねぇよ」

おっさん「少しは紛らんだんじゃない?」

兄「何が?」

おっさん「わからんけど」

兄「なんだよそりゃ」

おっさん「あの女だろ」

兄「……」

おっさん「お前の心の中にずっと蔓延ってる感情の原因」

兄「……」

おっさん「過去の事は調べられるし何を考えてるのか予想もできるが、俺はお前じゃないからなその感情はわからん」

兄「……」

おっさん「いっそのこと消そうか?」

兄「……」

おっさん「他にも色々できるが何がいい?何でも出来るぞ」

兄「……」

おっさん「でも意味ないか……おまえ自身がケリをつけなければ」

兄「……」

おっさん「だからさぁ、俺らにはどうすることも出来んのよ」

兄「……」

職員室前

兄「失礼いたします。2年4組の兄ですが、○×先生に用事があり来ました。○×先生はいらっしゃいますか?」

「○×先生なら、今はいないよ」

兄「分かりました、失礼します」

タバコ室か?


教室

友「なに、左目だけで器用に泣いてんだよ」

兄「担任にビンタ喰らった時に親指が左目に直撃したんだよ」

友「そういうことね、痛い?」

兄「痛すぎて感覚がねぇよ、涙が出てるのかもわからん」

友「左目めっちゃ充血してるぞ」

兄「涙のせいで視界がぼやけるが、ほっときゃ治るだろ」

友「無駄にワイルドだよね」

兄「そうか?」

友「もっと、うまく立ち回ればいいのにさぁ」

兄「所詮、俺らはガキなんだから大人相手にそんなこと考えなくていいんだよ」

友「無駄に大人な考えだよね」

兄「そうか?」




兄「てか、あれなに?」

友「あの二人付き合ってんだよ」

兄「へぇーそうなの?」

友「この前、授業が自習になった時に、誰かが言い出して公開告白になっちゃったのよ、クラス公認のいじられカップルの
誕生ってわけ」

兄「知らんかったわ」

友「お前が、学校にこねぇからだろ」

兄「週に二日は朝から来てるって」

友「少ねぇよ」

兄「いやーにしても青春ってやつ?若いっていいよね」

友「おっさんかよ」

兄「だってさぁ、クラスで浮いてる俺みたいなのには関係ないからな」

友「そうでもないんだよねこれが」

友「公開告白の後、クラスの雰囲気が変わったのよ。異性に対して一歩踏み込むような感じ?」

兄「よくわからんが」

友「もう乗るしかないだろこのビックウェーブに」

兄「それで成果は?」

友「聞くな」

友「でも、女のほうが背が高いってどうなのかねぇ男として?」

兄「気にはするだろ」

友「俺は無理だな、そもそもデカイ女はそれだけで可愛くない」

兄「でもほら今、顔が赤くなってるじゃん ああいうのは可愛いと思うが」

友「そういうの素で言えるお前はかっこいいな、おい」

兄「お前に言われても」

友「それでお前はどうなの?」

兄「俺か?あんまり学校来てないからなーよくわかんないんだよね」

友「それはお前が悪い」

兄「そもそも、顔と名前が一致しない」

友「ひでー」

兄「男なら分かるんだけどな」

友「例えば、女さんとかは分かるだろ?」

兄「あーはいはい、美人過ぎて対象外?」

友「それ分かる、俺らには関係ない人だよな」

兄「身の丈ってもんがあるからな」

友「なんだろ、サッカー部あたりのイケメンの先輩と付き合ってる感じ?」

兄「同じ歳の男には興味ないです的な?」

友「一歳しか違わねぇっての、ははは」

兄「確かに、ははは」

北千住駅構内 某アイス自動販売機前

男「なーに食ってんですかっ」

兄「チョコミント」

男「いえ、そういう事ではなく……」

兄「嫌いだった?」

男「そういう事でもなく…もういいや」

兄「別にいいじゃんかよアイスぐらい食ったって」

男「平日の昼間から自販機の前でって…子供じゃあるまいし」

ガコン

兄「えっ?なにナチュラルにアイス買ってんの?反抗期なの?」

男「食べないとは言ってないじゃないですか」

兄「うわっ、お前サイテーだわ」

男「若さの問題ですよ兄さんならギリギリアウト」

兄「そんな事を言ってるとイジメるぞ」

男「そんなナチュラルに嫌な事を言わないでくださいよ」

兄「気分の問題よ気分の」

男「傍若無人ですよね」

兄「俺だって相手ぐらい選ぶよ」

男「仕事まわさないですよ」

兄「……」


男「今回は女性を探していただきたく」

兄「探した後は?焼く?煮る? 蒸す?」

男「いいえ、依頼者と一緒にその女性を遠くから眺めて頂ければ」

兄「へぇーそうなの…えっ何それ?はぁ?何よそれ?」

男「依頼者たってのご希望らしく、今回はそちらがメインかと」

兄「関わりたくねぇ、お前のとこでやれよそんなの」

男「それがですね、姐さんから流れてきた依頼でぜひ兄さんへと…」

兄「マジ?」

男「マジです」

兄「嘘だな、お前のところを挟む理由が無い」

男「嫌われてるんじゃないですか?」

兄「あぁ…そうか…それか…」

男「断りますか?」

兄「断れるわけないだろ姐さんやじっちゃんの御蔭で仕事してるようなもんだし」

男「そんなことないですよ、ウチの所長も兄さんのこと買ってますから」

兄「お前のところの所長に褒められてもな」

男「本当に仕事まわさないですよ」

兄「……」

兄「実際ね、神戸の双子みたいな才能もなければ、おっさんのような技能もないし俺」

男「おっさん?あぁ、あの伝説の」

兄「それ本人に会っても絶対に言うなよ調子乗るから」

男「はぁ?分かりました。それとどちらかと言えば双子を紹介していただけると……」

兄 フンッ

男「今、鼻で笑ったでしょ鼻で!!」

兄「だってなーお前でしょ」

男「これでもウチの事務所じゃ出世頭なんですよ」

兄「双子の稼ぎを超えてたら考えてやるよ」

男「は、話を戻しましょうか」

兄「そうだな」

男「女性の資料は後でお渡ししますよ、内容にご不満なら追加で調べますしなんならウチのスタッフを出させましょうか?」

兄「いい商売してるよね」

男「身辺調査は私達プロにお任せください、どのみち兄さんがウチに依頼するわけですから先にやっただけですよ」

兄「そんで、めんどくさい所は俺にまかせると」

男「ウチは全国展開してるだけのただの興信所ですから」

兄「そーですか」

男「依頼者の資料もありますよ、こちらは無料でお渡しします」

兄「どんな奴よ?」

男「メディアでも取り上げられたこともある若手実業家ですよ」

兄「胡散臭いな」

男「特に変な所とも繋がりもなさそうですし商売も上手くいっているみたいですまぁー小金持ちってとこでしょうか」

兄「小金持ちねぇ…」

男「小金持ちの割りには金払いはいいですね、手付金も相場の三倍頂きましたし」

兄「金を出してくれることに越したことはねぇけど、内容がな一緒に眺めるってなんだよそりゃ?」

男「私に言われましても」

兄「姐さんに頼むぐらいだ、女に何かあるのか?」

男「女性の方も問題ないみたいです、ただの一般人かと」

兄「はぁ…ストーカーの手伝いをする日が来るとは…」

男「まだ、ストーカーと決まったわけじゃないですし割りいい仕事なんだから」

兄「人事だよねー」

男「それと、女性の身辺調査分はもう差し引いてますからご心配なく」

兄「本当にいい商売してるよね」

男「えぇ」

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom