男「実は俺……肘に爆弾抱えてるんだ」女「え……?」 (16)

女「ほ、ほんとうなの……?」

男「あぁ……今年の夏はもう……投げられないかもしれない」

女「そんな……」

男「悪い、監督と話し合わないとな。お前は先行っといてくれ」タッタッタ

女「男……!こうしちゃいられない!」

宗介「それで俺に話をしに来たと」

女「ええ……だって、あなたそういうの得意なんでしょう?」

宗介「ああ、爆発物のプロフェッショナルだからな」


キャプテン「何ッ!男の肘に爆弾だって!?」

代打「それは本当なのか……?」

女「うん……深刻な顔してた」

左翼手「憲法9条に違反する!男は追放すべきだ!」

女「そんな……男はうちの野球部員でしょ!?」

キャプテン「マネージャーの言う通りだよ。
男はうちの大事なエースだ。見捨てるわけにはいかないさ」

左翼手「チィ!だったらどうすんだよ!」

代打「……解体しよう」

「「「!?」」」


キャプテン「しかし、危険だぞ」

女「威力も分からないし、時限式なのかブービートラップ式なのかも分からないんだよ」

代打「だが、やらなかったら男はどうなる?」

キャプテン「……」

代打「仲間に何かあればみんなでカバー。それが野球じゃないのか?」

女「……」

代打「お前らがやらなくても、俺はやる」

女「……あたしもやる!」

キャプテン「あぁ、やろう」

左翼手「じょ……冗談じゃねぇ!俺は抜けるからな!」

ガチャ、バタン

ガチャ…

男「あれ、みんな真剣な顔してどうした?
さっきすれ違った左翼手が青い顔してたけど……ケンカでもした?」

女「男……」ジリ

男「お、女……?なんか怖いぞ――うわ!キャプテン!?」

キャプテン「ベルトで後ろ手をぐるぐるに固定したよ」

代打「ナイバッチ」

男「ど、どういうことだよ!」

女「男、大丈夫。助けてあげるからね」

ザク!!!!!!!!!

男「~~~~ッッッッッ!!?」

代打「暴れんなよ…暴れんな…男。キャプテン、足も守備固めだ」

キャプテン「超特殊、緊縛」

男「や、やめろ……俺が何を……!」

女「見たところ爆弾らしきものはないね」

キャプテン「この白いスジみたいなのが導線かもしれない」

女「こんなこともあろうかと、家庭用ハサミもってきたよ」

キャプテン「でかした!」

ジョキジョキ……!!!!

男「あっ!あっあ゙!ゔぅあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!!」

女「切れないな」

ガチャ…!

左翼手「……ったくよぉ」ポリポリ

左翼手「これが必要なんだろ」

キャプテン「それはペンチ!」

代打「お前……」

左翼手「フン……!」

女「よし、待ってて男!」

男「あ、あがっ……あふっ……」ピクンピクン

女「それっ」

ブチィ!!!

男「んあ゙あ゙あ゙あ゙はあ゙あ゙ああ゙あ゙あッ!!!」ジョワ~

代打「はは、成功だな」

女「もう、漏らすことないじゃない」ペロペロ

キャプテン「ん……?(ガソリン臭い……?)」クンクン

キャプテン「ハッ!いかん!みんな部室から出ろ!
男の股関から出てるのはガソリ――」


カッ!!!

チュドォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!――

――今となっては知る者こそ少ないが、爆心地はとある投手の肘だった。
システムの中枢部などなかった。
シャットダウン出来るわけがない。
何十という球児が誘爆し、その日、人類の凡そ七割は炎の海に消えた。
『審判の日』だ。
地は裂け、海は枯れ、人類はその日……敗北したのだ。

キャプテン「そっち行ったぞ!回り込め!クロスプレーだ!」

代打「!……ボウガン打ってきたぞ!」

遊撃手「任せろ!俺が捌く!」パシ!パシ!パシ!

女「さぁ、水と食料とガソリンを置いてけ!」

左翼手「あくしろよ」

未来は確定しているのかもしれない。

あたしには分からない。

ただ、男が言おうとしていたことは分かる。

“戦い続けろ”

あたし達は諦めない。

あたしたちの夏は、始まったばかりだ。

精一杯生きようと思う。

男と白球を追い掛けた、この空の下を――

女「ヒャッハー!!」
 

 
           ―FIN―

見てくれてありがとうッ!
したらなッ!またどこかでッ!!

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