律子「大人みたいな子供」P「子供みたいな大人」 (23)


・地の文あり


りっちゃん誕生日おめでとう

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あの人は私を子ども扱いする。

昔からそうだった。私のアイドル時代から見守ってくれているプロデューサーには感謝している。

しかし少々過保護すぎる気がする。

あの人のそれは多分親か兄弟のそれなんだろう。

アイドルのときは夜遅くなったら車で送ってくれて、体調が悪くなったら凄く心配してくれた。

それは今でも変わらない。私もプロデュースする人間になったのに一切の残業をさせてくれない。

自分は無理してたくさん残業してるくせに。

私がプロデューサーになったのはあなたの負担を少しでも減らしたかったんですよ。

なのにまだ迷惑をかけてる。むしろ前より多くの負担を強いている気がする。


絶対辛いはずなのに私の前ではそんな素振りも見せない。

「私も出来ます。」というといつもな時返事が返ってくる。


「無理すんな。お前はまだ子供だろ。大人の俺に任せておけ。」


そういわれると私は何も出来なくなってしまう。

何でそんな優しい笑顔なんですか?もっと私を頼ってください。

私は悔しくて唇をかむ。しかしそれも今日が最後。

私は今日、20歳になる。もう私は子供じゃないです。

お酒も飲めるようになるし、タバコも吸えるようになる。

まあ、お酒はともかくタバコはやらないと思いますけど。


あの人は子供っぽい。

身長はあずささんと同じくらい。160代後半だろう。

男性としてはあまり高くないのを気にしているみたい。

前に貴音に頭を撫でられて本気で落ち込んでいたな。

しかし、私はもう少しだけ身長が低かったらなと思う。

私はあの人に少しでも近づきたくて背伸びする。

物理的にも、精神的にも。

せめて肩を並べようと思い、背伸びをして横に立ってみた。

私がどんなに頑張って背伸びをしてもほんの少しあの人には届かない。


そのあと身長を馬鹿にされたのかと思いあの人も背伸びをして対抗してきたな。

そのときのプロデューサーは子供っぽかった。

それを見て私は笑みがこぼれてしまった。

そうしたらさらに馬鹿にされたと勘違いして。


「ちっちゃくないぞ。だいたい170くらいあるからな。」


少しさばを読んでましたね。本当に子供みたいですよ。

それに比べて私はあの人の言葉で言うなら大人ぶっている子供。

私たち、正反対ですね。

早く本当の意味で肩を並べられるようになりたい。


そして私は、あの人に恋をした。

いつ好きになったのかは明確にはわからない。

アイドル時代、二人三脚で頑張ってきたときかな?

それともプロデューサーになってあの人の仕事の大変さを自分で感じて尊敬から恋心に変わったのかな?

それとも恋愛小説の読みすぎが原因かな?

なんて、自分のことなのに全くわからない。

趣味が分析することのはずなのにな。これにかんしては一切できていない。

これが恋なのか。改めてこの感情の強さを認識する。


恋愛小説のヒロインが彼氏のために突拍子のないことをする。

そんなの創作の中だけだと思っていた。

自分がその状況に立ってみてはじめてわかった。

恋する乙女はどんな壁だって乗り越えられる。そんなきがした。

だけど、今の今まで私は動かなかった。

いや、動けなかった。

内に熱い思いを秘めたまま生活するのはなかなか辛いものね。


今まで私があの人の告白しなかったのは二つ理由がある。

一つは、前までだったら告白しても私のことを子ども扱いしかしてくれずうやむやにされる可能性があったから。

しかしそれは誕生日を迎えることによって解決された。

もう流石に成人したら子供なんていわないだろう。

そしてもう一つの問題。

私は自分に自信が持てない。

どうしても自分より周りの人のほうが優れて見える。

そんなことないよって励ましてくれる人もいる。だけどそれはお世辞に聞こえてしまう。

だからこそ、一歩が踏み出せない。


お酒飲めばその勢いでいえるようになるかな?

いや、ダメだ。それはダメ。

やっぱり自分の言葉で伝えたいな。

よし、思い立ったらすぐ行動。それが成功への秘訣。

今頃あの人はなにしてるかな?事務所で残業しているかな?


「ケータイ取り出しポパピプペ」


自分を奮い立たせるために、緊張しないように。

私は少しおどけながらdo-daiの歌にあわせあの人に電話する。

しかし、かけてみたはいいが待っている時間が長く感じる。

30秒ぐらいだっただろうか?しかし私はそれが無限の時間であるように感じられた。

手汗も出ている。震えもあいまってしっかり握っていないと携帯電話を落としてしまいそう。


「もしもし、ぷ、プロデューサー殿?こちら律子です。」

「どうした?律子、かなり焦ってるな。」

「い、いえ。今プロデューサー殿は何をなされているのでしょうか?」

「言葉遣いがおかしいぞ。今は事務所にいるな。」

「大切な話があるのでそちらに向かっていいでしょうか?」

「いいけど、もう遅い時間だから帰って明日話し合ったほうがいいんじゃないか?」

「いえ、平気です。私はもう子供じゃありませんから。」

「そ、そうか。じゃあ待ってるぞ。」


もう逃げ場はない。さあ、事務所に向かいましょう。



「お疲れ様です。」

「お、来たか。お疲れ様です。今日は主役だったから疲れただろ。」

「いえ、嬉しかったから平気です。」

「それで話ってなんだ?」


私は息を大きく吸い込む。

ここにくるまでに覚悟はしてきたはずなのに、あの人の顔を見ると決心が揺らぐ。

そうこうしているうちに、あの人のほうから口を開く。


「まさか…。」


神妙な顔をする。何かに気づいたような顔。もしかしてわかったのかな?


「律子、移籍とかするのか?」

「へ?」


気の抜けた返事をしてしまった。

的外れもいいところである。


「しませんよ。なにいってるんですか?」

「いや、なんか言いづらそうだったからさ。」

「それは…。わかりました。言います。」

「辛そうなら無理にいなくていいんだぞ。」


いや、言います。今日こそ伝えます。私の気持ち。


「いや、言います。聞いてください。」








「私は、プロデューサーのことが好きです。」







「私にアイドルになるという魔法をかけてくれたあなたが、隣で支えてくれたあなたが、いつも私を心配してくれるあなたが、負けず嫌いなあなたが、ちょっぴり子供っぽいあなたが。」

「全部のあなたが好きなんです。」


言ってしまった。恥ずかしいけどそれよりも清々しさが勝ってる。

ああ、でも次の言葉は聞きたくない。どんな言葉が返ってきても泣いてしまいそうだから。


「律子、ありがとう。俺も律子が好きだ。」

「へ?」


また気の抜けた返事、しかし先ほどとは意味が違う。


「本当ですか?」


やっぱり涙が溢れてくる。


「ああ、本当だ。俺も前から律子のことが好きだった。」


「前からだったんですか?」


あのあと私が泣き崩れてしまったので少し落ち着いてからまた話す。


「ああ、前からだよ。律子がアイドルのときから。」

「じゃあなんで私を子ども扱いしたんですか?」

「いや、好きな人の前だとかっけつけたいじゃん。頼れる大人だってとこを見せたいじゃん。」

「なんですかその理由。本当に子供みたいじゃないですか。」

「男はいつまでたっても子供なんだよ。」

「なんですかその理由、納得できません。そのせいで私が悩んだか。」

「ごめんごめん。まあかっこつけるのとは別に大変な仕事を好きな人にやらせたくないってのもあったな。」

「私はプロデューサーと一緒に仕事したかったです。だって日中はなかなか会えないから。」

「じゃあこれからはお願いできるか?」

「はい。すぐあなたに追いついて見せます。」

「それは頼もしいな。」


「それと私のことが好きだったならなんで好きって言ってくれなかったんですか?」

「あー、タイミング探してた?」

「ヘタレ。」

「うっせ。好きだよ律子。頑張り屋さんの君が、強くあろうとする君が、背伸びしてる君が、急成長する君が大好きだ。」

「…。」

「どうした律子?」

「…知ってるくせに。面と向かって言われると、弱いって。成長したからって、強くなった部分ばかりじゃないですから。」

「知ってるよ。もちろん。そしてもっと律子のことを知りたいな。」

「わかりました。いっぱいいっぱい教えてあげます。」


そして次の日から私も残業をするようになりました。

恋人と一緒のする残業は辛いけどそれ以上に楽しいな。


「これからもよろしくね。頼りにしてる、ダーリン!」

以上で終わりです。

律子は子供で大人でかわいいです

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