【POCKET MONSTER RISING REVENGEANCE】
炎に包まれるマサラタウン。
そこに、一人の少年と老人がいた。
サトシ「俺のポケモンはもうない……あるのはただ、人斬りの刀だ」
少年は、左手に持った刀の鞘を抜く。
その刀身は赤く、稲妻が走っていた。
サトシ「だがそれならば、この刀で……遊ばせてもらおう」
筋肉質の老人――オーキド博士は、どこか嬉しそうな笑みを浮かべ、サトシを見据えていた。
オーキド「来るがいい」
サトシ「オーケー」
刀を構え、オーキド博士に対峙するサトシ。
ポケモンバトルでは見ることのない、個人と個人の闘争が始まった。
サトシ「いざ参る!」
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―3ヶ月前―
≪斬≫
サトシ「はあッ!」ザシュッ
ミュウツー「ウグゥェアッ」
< ミュウツーはまっぷたつになった!
サトシ「もらった!」ガッ
≪奪≫
サトシ「ゲットだぜ!」グシャッ
< サトシはたいりょくをかいふくした!
<CALL>ピピピ
タケシ『やあ、うまくやってるじゃないかサトシ』
サトシ「まあな」
カスミ『新しい義体にも慣れてきたみたいね』
サトシ「そりゃまあ、最初はサイボーグである自分に違和感を感じたよ。けど、それ以上に、この体なら俺のやれることに限界を感じなくなったっていうか……」
タケシ『だが、あまり無理はするなよ。ポケモンだって、人間に黙ってやられるほどヤワじゃない』
カスミ『そうよ。ミュウツーを倒したのは見事だけど、それ以上に強いポケモンはまだたくさんいるんだから』
サトシ「わかってるって! そこはもう、日頃から訓練するしかないさ」
〈あらすじ〉
ポケモンと、それを使役する人間によって、今や戦争と暴力が組織化された時代。
ポケモンと人々を脅かす悪の組織は未だ途絶えず、皆が知らないところで暗躍し続けていた。
ロケット団、マグマ団、アクア団、ギンガム団、プラズマ団、フレア団……
潰してはまた湧いて出る虫のように、人の世から害悪が消えないのもまた世の常。
しかし、組織化された暴力によって罪もない人間やポケモンが犠牲になった数は知れず、今もどこかでまた一匹、また一人と邪悪な者の手にかけられる。
そんな世の中に絶望し、故郷であるマサラタウンでくすぶっていたサトシは、ある日、とある人物から声をかけられる。
ダイゴ「僕の会社に来る気はないかい?」
デボンコーポレーションの御曹司、ホウエン地方の元チャンピオンであるダイゴからの誘いが契機となり、サトシは彼の立ち上げた民間警備会社に入社した。
また、デボンコーポレーションでは、密かに行われていた研究と実験により、ようやく実現化したサイボーグ技術が導入されていた。
ポケモンの力だけに限界を感じていたサトシは、自らを義体化、すなわちサイボーグにしてもらうようダイゴに頼んだ。
自身を強くすることで、ポケモンだけに頼らない、新しい戦い方を身につけようとしたのだ。
ダイゴ「ただし条件がある。僕の会社で、それなりに仕事をしてもらわないとね」
そう言われ、サイボーグとなったサトシは、ダイゴが経営する会社の契約兵士(コントラクター)として雇われることになる。
その中に、かつて旅を共にしたタケシ、カスミがいたのは、はたまた偶然とも言うべきか。
サトシの新たな物語は、彼がサイボーグとなって半年後から始まる。
{シンオウ地方/マサゴタウン}
サトシ「こちらサトシ。ポイントに到着した」
タケシ『予定通りだな。再度確認するが、今回の任務は何者かによってさらわれたナナカマド博士の救出だ。犯人は依然逃走中、追って博士の安全を確保しろとのことだ』
サトシ「全く、警護は何してたんだ」
タケシ『全滅だったらしい。敵のポケモンが強力だったのもあるが、一人の見慣れないトレーナーが刀で警護の連中を斬り伏せたとの報告もある』
サトシ「刀……トレーナーなのか?」
タケシ『わからん。とにかく急いでくれ。博士の身に何かあったら、それこそ一大事だ』
サトシ「わかったよ、さっさと終わらせてもらうぜ!」タタッ
{シンジ湖}
タケシ『サトシ、追え! 犯人は山間部のトンネルに逃げたようだ』
サトシ「言われなくてもわかってるぜ!」ダダダッ
< あ! やせいのエムリットがとびだしてきた!
サトシ「邪魔だ、どけ!」ザシュッ
≪斬≫
< やせいのエムリットはまっぷたつになった!
エムリット「キャウウン!」パックリ
サトシ「よっしゃ!」ガッ
≪奪≫
サトシ「ゲットだぜ!」グシャッ
< サトシはたいりょくをかいふくした!
{トンネル内/列車}
ナナカマド「な、何をする気だ……」
シルバー「そうだな……とりあえず死んでくれ」ザクッ
ナナカマド「」ドサリ
N「いいのかい? 殺しちゃって」
シルバー「聞きたいことは吐いてもらったさ。それよりシゲル、お前のお友達はまだ来ないのか?」
サトシ「待てえぇぇぇッ!!」ダダダッ
シゲル「……いや、今来たよ」
サトシ「!? シゲル、なんでお前がここに……!」
シゲル「久しぶりだな、サトシ」
サトシ「! まさかお前ら、ナナカマド博士を!」
シルバー「ああ、用済みだから殺したよ」
N「惜しかったね。あとちょっと早ければ助かったかもしれないのに」
サトシ「くそッ! なんでこんなことをする!?」
シゲル「お前が知る必要はないな」ジャキン
そう言ってシゲルは、腰に携えた刀を抜いた。
サトシ「! シゲル、お前は……」
シゲル「さあ、サトシ。バトルを始めよう」
予想だにしなかった状況に、困惑するサトシ。
しかし、そんなことも意に介さず、シゲルは目の前の少年にむかって剣を構えた。
シゲル「いざ参る!」
< ポケモントレーナーのシゲルがしょうぶをしかけてきた!
シゲル「せやぁッ!」ブンッ
< シゲルのきりさくこうげき!
サトシ「ちぃっ!」ガキンッ
< サトシはこうげきをしのいだ!
シゲル「まだまだ、こんなものじゃないだろう!」ブンッ ブンッ
サトシ「くっ……舐めるな!」ブンッ
< サトシのれんぞくぎり!
< しかし、シゲルはこうげきをしのいだ!
ガキィンッ
シゲル「なるほど、我流か。筋は悪くないな、だが……」
鍔迫り合いの間合いから、体術を繰り出したシゲルはサトシを引き離す。
サトシは不意をつかれ、そのまま後方まで突き飛ばされてしまった。
サトシ「ぐあぁっ!」ドシャ
シゲル「お前の剣には何かが足りん」
サトシ「な……何だと」
シゲル「続けよう。そうすればわかるかもしれん」ヒュンッ
シゲルの剣術の前に、圧倒されるサトシ。
攻めているつもりが逆に翻弄され、一方のシゲルは涼しい表情でサトシの攻撃を受け流す。
そうしてしばらくした後、シゲルの口からある決定的な言葉が紡ぎ出された。
シゲル「……見えた。お前の剣は快楽を恐れている」
サトシ「……!」
その言葉にサトシが動揺した一瞬、シゲルの斬撃が左目を掠めた。
サトシの左目から、白色の人工血液が滴り落ちる。
シゲル「本当は人を、ポケモンを斬りたくて仕方ない。だが理性では否定している」
サトシ「……違う! 俺の剣は活人剣だ……」
サトシの言葉に呆れた表情で、シゲルは刀を弄んでいる。
そして間を置いた後、シゲルはいよいよ決着をつけるように攻め入った。
シゲル「とぉりゃッ!!」ブンッ
サトシ「(は、速い……!?)」
< シゲルのバットウジュツ!
< サトシはひだりうでをきりおとされた!
サトシ「ぐっ……あああぁぁッ!!!」ガクン
シゲルの、一瞬のうちに詰めた間合いから繰り出された抜刀術。
サトシにとっては、まさに予想だにしていなかった攻撃だった。
シゲル「フッ……こんなものか」
サトシ「ば、バカな……」ヨロッ
左腕の断面から白い血がとめどなく流れ出て失血状態になり、サトシは意識を保つことが難しくなっていた。
目の前に倒すべきライバルがいるのに、その姿さえもはっきりと視認できない。
シゲル「わかったか? お前の活人剣とやらでは、俺には勝てん」
サトシ「な、何……」
シゲル「終わりだ、サトシ」
シゲルの手に握られた、赤い稲妻を帯びた刀が振り上げられる。
その次の瞬間、二人の乗る列車がトンネルを抜けたのと同時に、線路の向かい側の崖道を猛スピードで走る装甲車から、けたたましい銃声が鳴り響いた。
タケシ『大丈夫かサトシ!?』
サトシ「タ、タケシ……!」
タケシ『待ってろ! すぐ助けるからな!』
装甲車の銃座から身を乗り出したタケシは、重機関銃を列車上のシゲルに向かって連射する。
シゲル「……潮時か。ここはもういい、帰るぞ」
シルバー「ケッ、待たせやがって」
N「じゃあね、無力なトレーナー君」
銃弾を刀で弾きながら、シゲルは列車から飛び降りて森林の中に消えていった。
そして、シゲルに続くようにして二人の少年も姿を消した。
サトシ「……っ」ドサリ
タケシ『しっかりしろ!! こんなとこで死ぬタマじゃないだろうお前は!』
タケシの叫びが、体内のナノマシンを介してもサトシに聞こえたかどうかはわからない。
ただサトシが覚えているのは、目が覚めた時には治療室のベッドに拘束されて身動きできない状態だったということだけだった。
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