芳佳「カリブに浮かぶ地上の楽園。ようこそ、ユートピア・トロピコへ!」 (15)

ブゥゥゥン……

「あっ! あの島が『トロピコ』かな?」

ブゥゥゥン……

「わぁ、きれいな砂浜……緑もいっぱいだし、こんなとこに住んでる人ならきっと……」

ブゥゥゥン……

「ここで降りるんですか? 出迎えがいるって? 分かりました、ありがとうございました」

「よいしょ……っと。迎えに来てくれてる人って、どんな人だろ」

????「プレジデンテ!」

「あっちが街かな。なんか、あんまり活気がある感じじゃなさそうだけど」

????「お迎えに上がりましたわ、プレジデンテ!」

「お腹すいたなぁ……ここの食べ物、私に合うかな……」

????「……宮藤さん!」

「ひゃい!」

????「やっと気付きましたわね。トロピコへようこそ、宮藤芳佳さん」

芳佳「は、はじめまして。あなたが、お迎えの……?」

????「はい。このトロピコで代々プレジデンテにお仕えしていますの。ペリヌティーモと申します」

芳佳「ペリヌティーモさん」

ペリーヌ「ああ、正直申し上げてこの名前はあまり気に入っておりませんので、ペリーヌと呼んで下さいな」

芳佳「ペリーヌさんですね。よろしくお願いします」

ペリーヌ「こちらこそ。さ、向こうのリムジンへどうぞ。宮殿までご案内致しますわ」

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テーマソング
https://youtu.be/19wyUf8NLvg

-宮殿-

ペリーヌ「ここがあなたの家になりますのよ。どうぞ」

芳佳「はえ~すっごいおっきい」

ペリーヌ「この国の長が住むところですもの、これくらいは当然ですわ」

芳佳「でも、ここへ来る途中で見たスラム街ではみんな掘っ立て小屋に……」

ペリーヌ「そ、それを改善するのはあなたの仕事です。さて、こちらが食堂、こっちは寝室、ここが浴場で……」

ペリーヌ「そしてこの部屋が執務室。あなたにはここからトロピコをコントロールして頂きます」

芳佳「……あのぅ」

ペリーヌ「はい」

芳佳「雑誌の広告を見てトロピコの独裁者に応募したのは私なんですけど、一体何をすればいいのか……」

ペリーヌ「何をすれば? プレジデンテ! あなたは紛れもなくこの国のプレジデンテ《独裁者》になりましたのよ!」

ペリーヌ「何をすれば、なんて消極的なことはおっしゃらずに、『何がしたいのか』! このペリーヌに相談して下さいまし」

芳佳「何がしたいのか……うーん、いきなり言われても……」

ペリーヌ「……まあ、最初からいきなりは酷ですわね。安心して下さい、頼もしい助っ人を呼んでありますわ」

芳佳「助っ人?」

ペリーヌ「ええ。あなたと同じ独裁者のベテランが、国家運営のノウハウを教えて下さると……」

バタン!

「プレジデンテ! 私が来たからにはもう心配いらんぞ!」

芳佳「なんだこのおばさん!?」

ペリーヌ「ぷ、プレジデンテ! こちらは今お話した坂本大元帥ですわ! おばさんではありません!」

芳佳「ええっ、す、すみません!」

坂本「はっはっは! なかなかに育てがいのありそうなヤツだな? 私のアドバイスに従っていれば、少なくとも国を転覆させるようなことはあるまい」

芳佳「はい! よろしくお願いします!」

坂本「さて、プレジデンテ。私が見たところ、この国には仕事が不足しているようだ」


ペリーヌ「こちらを御覧下さい、プレジデンテ」

芳佳「なんですかこれ?」

ペリーヌ「トロピコ運営に必要な情報を余すとこなく詰め込んだ『年鑑』ですわ。これを見れば、この国の全てが把握できます」

ペリーヌ「今、この島の人口は50人ですが……」

芳佳「え、ごじゅうにん? それだけで国って成り立つんですか?」

ペリーヌ「『この国』ではなく『この島』です。トロピコはいくつもの小さな島が集まってひとつの国家なんですの。ご存じなかったのですか?」

芳佳「いやぁ、すいません」

坂本「確か2年前にWikipediaのトロピコのページが丸ごと削除されて以来、誰も直してないからな。知らないのも無理はない」

ペリーヌ「そんなことに……」

ペリーヌ「……まあとにかく、私たちが今いるこの島『サンタ・クララ』の人口は50人ですの」


芳佳「はい」

ペリーヌ「そしてその内8人が失業中。これは子供と老人を数に入れていない、現役の働き手ですわ」

坂本「たとえ本人たちにやる気があっても、働き口が無くてはな? そこで、第一に農場の建設をお勧めしよう」

芳佳「農場ですか?」

坂本「うむ。農場では食料を生産出来る。食料はなんといっても国民の活力源だし、余剰生産分は輸出して運営資金になるだろう?」

坂本「多く作っておいて損はないということだ。ペリーヌ、サンタ・クララの土地の状態は?」

ペリーヌ「こちらに」

芳佳「今度のは?」

ペリーヌ「国の優秀な地質調査隊に調べさせた情報のレポートですわ。プレジデンテ、作物の成育は温度や湿度、土壌のレベルで大きく左右されることはご存じですね?」

芳佳「もちろんです!」

ペリーヌ「それらをまとめたのがこのレポート。トウモロコシを育てるならここ、タバコはそこ、あるいはあのスペースではパパイヤが育ちやすい……などなど」

ペリーヌ「これを見ながら農場をどこに作るか指示を出して下さいまし。あ、タバコやサトウキビといった嗜好品ではなく、国民が食べられるものから始めましょう」

坂本「助言ならいつでも与えよう。だが、まずは自分で考えてみることだ」

芳佳「うーん……」

--

芳佳「じゃあ、これで」

坂本「宮殿の北にトウモロコシ畑を2つか」

ペリーヌ「悪くない選択ですわね。ちなみに、この場所にしたのは何か意味がございますの?」

芳佳「えっと……地質がまあまあ良かったのと、みんなの家に近いから食べ物を取りに行きやすいかなって……」

坂本「!」

芳佳「……あの、ダメでしたか……?」

ペリーヌ「いいえ、素晴らしい着眼点ですわ、プレジデンテ。その通り、農場がいくら栄えていても食べる人が近くにいなければ意味がありません」

ペリーヌ「農場はなるべく居住区の近くに建設するのが基本。もしくはガレージを作って移動を楽にしたり、市場で輸入品を……」

坂本「その辺りは後々でいいだろう。しかしこれではっきりしたな。やはりお前には独裁者の才能があるようだ」

芳佳「本当ですか? えへへ」

ペリーヌ「では、こちらの書類にサインを」


芳佳「はい。宮藤芳佳……と」

ペリーヌ「これでまもなく建設業者たちが働き始めますわ。建設はすぐ終わるでしょうけど、それまで少し休憩しましょうか」

今日はここまで
トロピコ4がベースです

--

坂本「農場が完成したようだな。すぐに人員が集められ生産が始まるだろう」

ペリーヌ「そういえば、ひとつ大切なことを言い忘れていましたわ。農場を作ると、その周りの土地が開墾されるのですが……」

ペリーヌ「そのとき周囲が開けていないと、耕筰可能な範囲が狭まって収穫が少なくなってしまいます」

芳佳「じゃあ、あんまり街中に作るのは良くないんですね」

ペリーヌ「そうです、プレジデンテ」

坂本「私からもひとつ。ひとつの農場でまかなえる食糧は、生育状況にもよるが、おおむね50人分程度だ」

坂本「餓死者を出したくなければ、少なくとも人口÷50+1くらいの農場を確保しておくのが賢いやり方だ。ここまではいいか?」

芳佳「はい!」

坂本「よし。では次のステップだ」

坂本「次に必要なのは、教会だな」

芳佳「教会? 神様にお祈りするあの教会ですか?」

坂本「うむ。もともと扶桑国民のプレジデンテには馴染みが薄いかも知れんが、世界の多くの人々は割りと日常的に宗教へ参加しているんだ」

坂本「トロピコも例外ではない。ここのような未開発の発展途上国では、土着の宗教が力を持っていることが多い」

ペリーヌ「もっともこの国では、大昔にコンキスタドールに侵略された頃、世界的なキリスト教に塗り替えられてしまいましたけど」

芳佳「やっぱりスペインて強いわ」

坂本「信仰の程度に差はあれど、宗教の信者の数は少なくない。となれば、教会を建てて彼らが懺悔出来るよう計らってやるのもプレジデンテの務めだ」

芳佳「よーし。ペリーヌさん、教会を建てましょう!」

ペリーヌ「……あの、プレジデンテ」

芳佳「はい?」

ペリーヌ「その、国庫にお金がありません。教会を建てるには6000ドル必要なのですわ」

芳佳「6000ドル!? ぼったくりでしょそれ! 農場4つ分ですよ!」

ペリーヌ「付け加えると、教会で説教をする聖職者も雇わなくてはなりません。聖職者になるには高卒以上でないといけませんが、あいにくこの国ではそんな利口な者はほんのひとつまみ以下ですの」

ペリーヌ「こういうとき、海外から人を呼び寄せて働かせることが出来るのですが、言うまでもなくお金がかかります。しかも、値段は呼んだ人数が多くなるほどつり上がっていきます」

芳佳「ええ……じゃあ、どうすれば……」

ペリーヌ「もう少しすれば米ソからの経済援助があるはずですから、そこでなんとか……」

坂本「なんだ、資金繰りに難航してるのか? それなら私が個人的な『贈り物』をしよう」

芳佳「贈り物?」

坂本「トロピコの国庫に10000ドル入れておいたぞ。我がパートナーへの投資といったとこだ、受け取ってくれ」

芳佳「ええっ、そんなに!」

ペリーヌ「ぷ、プレジデンテ! これなら教会を建てて、海外から聖職者を4人雇ってもお釣りが出ますわ!」

芳佳「やったー! 坂本さん、ありがとうございます!」

坂本「役に立てたようで何よりだよ。さあ、すぐに建設の手続きをした方がいい」

芳佳「はい!」

ペリーヌ「こちらも農場と同じく、近くに住民がいなければ意味がないですわ。建てる場所は考えましょうね、プレジデンテ」

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