芳佳「だーるーまーさーんがころんだ!」ルッキーニ「うじゅ!」 (143)

501基地 滑走路

芳佳「それじゃあいくよ!」

ルッキーニ「うん!」

芳佳「だーるーまーさーんがー……」

ルッキーニ「うにゃにゃにゃにゃ!!」ダダダッ

芳佳「ころんだっ!」

ルッキーニ「うじゅっ」ピタッ

芳佳「……」

ルッキーニ「……」

芳佳「だーるーまーさーんがー……」

ルッキーニ「うにゃにゃにゃ!!」ダダダッ


バルクホルン「……あの二人は何をしている?」

ミーナ「さぁ……。少なくとも訓練をしているようにはみえないわね。まぁ、宮藤さんとルッキーニさんは非番だからいいじゃない」

バルクホルン「そうだが……もう少し軍人らしくできないのか……」

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芳佳「だーるーまーさーんがころんだ!」

ルッキーニ「うじゃ!」ピタッ

芳佳「むー……」

ルッキーニ「……」

芳佳「だー……るまさんがころんだっ!」

ルッキーニ「うじゅ!」ピタッ

芳佳「ルッキーニちゃん、上手すぎるよー。本当にやったことないのー?」

ルッキーニ「……」

芳佳「……」

ルッキーニ「……」

芳佳「だーるーまーさーんがー……」

ルッキーニ「うにゃにゃにゃにゃー」ダダダダッ


リーネ「あ、芳佳ちゃんとルッキーニちゃん、滑走路にいたんだ」

ペリーヌ「また幼稚な遊びをしていますのね、全く」

リーネ「でも、楽しそうですよ?」

芳佳「だるまさんがころんだ!」

ルッキーニ「うっ!」ピタッ

芳佳「だるまさんがころー……んだっ!」

ルッキーニ「にゃ!」ピタッ

芳佳「だるま――」

ルッキーニ「タッチぃ!」

芳佳「あー、まけちゃったぁ」

ルッキーニ「やったー、よしかのまけぇ」

芳佳「ルッキーニちゃん、本当に上手だね。経験ないのが嘘みたいだよ」

ルッキーニ「こんなの簡単じゃん。芳佳がへたっぴなんだって」

芳佳「そうかなぁ……。それじゃあ、次はルッキーニちゃんが鬼ね」

ルッキーニ「わかった!」

芳佳「ちょっとまっててね!!」テテテッ


エイラ「宮藤のやつ、よく走るなぁ。滑走路の端までダッシュしてるぞ」

シャーリー「自主訓練でもしてるのか。エライなぁ」

芳佳「はぁ……はぁ……」

ルッキーニ「よしかぁー!!! もういいのー!?」

芳佳「ちょ……まって……いきを……ととのえてるから……」

ルッキーニ「えー!? なにー!? きこえにゃーい!!」

芳佳「ちょっと……だけ……まってー……!!」

ルッキーニ「もういいのー!? いっくよー!!」

芳佳「あぁぁ……」

ルッキーニ「だーるまさーんがころんだっ!」

芳佳「はぁ……はぁ……」

ルッキーニ「はい、芳佳、肩が上下してるー。だめー」

芳佳「だ、だから、ちょっと待ってっていってるのにー! 滑走路の端まで走って息があがってるんだからー!!」

ルッキーニ「もー! はやくぅー!!」

芳佳「ふぅー。やっと呼吸が整ってきた。ルッキーニちゃーん、もういいよー!!」


エーリカ「なんだあれ?」

サーニャ「あ、楽しそうなことしてる……」

ルッキーニ「だるまー……」

芳佳「でやぁー!!!」テテテテッ

ルッキーニ「さんがぁ……」

芳佳「やぁー!!!」テテテッ

ルッキーニ「ころー……」

芳佳「はぁ……はぁ……」テテッ

ルッキーニ「んー……」

芳佳「はぁ……ひぃ……」

ルッキーニ「だっ!」

芳佳「はぁ……はぁ……」

ルッキーニ「はい、肩がうごいてるー。だめー」

芳佳「ルッキーニちゃん、ずるいよー。わざとゆっくり言ってるでしょー?」

ルッキーニ「作戦じゃん」

エーリカ「みやふじー、ルッキーニー、なにしてんのー?」

芳佳「ハルトマンさん。だるまさんがころんだをルッキーニちゃんとしていたんです」

エーリカ「だるまさんがころんだ? だるまさんって誰のこと?」

芳佳「だるまさんはだるまさんです」

エーリカ「だから、それがなにかって聞いてるんだけど」

芳佳「扶桑にだるまさんっていう赤い置物があるんですよ」

エーリカ「ふぅーん」

ルッキーニ「それがころんだら止まらないといけないんだってー」

エーリカ「なんで?」

芳佳「なんでと聞かれても……扶桑の遊びですし……」

サーニャ「そうなんだ。トレーニングじゃないの? 滑走路の端まで走っていたけど」

芳佳「ああ、それはね」

ルッキーニ「最初は30メートルぐらいでやってたんだけど、それだとすぐ芳佳にタッチできちゃうからつまんなくて」

芳佳「ちがうよぉ。ルッキーニちゃんがはやすぎるんだって」

エーリカ「だから距離を伸ばしていったのか」

ルッキーニ「うん! でね、滑走路の端ぐらいがちょうどいいねっていうことになったんだよ」

芳佳「私にとっては遠すぎるぐらいなんだけど……」

サーニャ「どうしてその遊びを始めたの?」

芳佳「ルッキーニちゃんが遊ぼうっていうから、扶桑の遊びを教えてあげたの」

エーリカ「そういうことか。随分と暇をもてあそんでるんだなぁ。新人の宮藤は軍人としてウィッチとして、まだまだやるべきことはあるとおもうけどなぁ」

芳佳「そういわれると……」

エーリカ「トゥルーデに見つかると怒られるね」

芳佳「えー!? それなら今すぐやめたほうがいいですか!?」

ルッキーニ「次、芳佳が鬼ね!」

芳佳「あ、ルッキーニちゃん、待って! もうこれやめたほうがいいよー!!」

ルッキーニ「にゃはー!! いっそげー!!」ダダダッ

エーリカ「わーいっ」タタタッ

芳佳「ハルトマンさん!?」

サーニャ「あの……芳佳ちゃん……私も……一緒に……いい……?」

芳佳「え? う、うん。もちろん」

サーニャ「ありがとう」タタタッ

芳佳「……」

芳佳「だーるーまーさーんーがー……」

ルッキーニ「うにゃにゃにゃにゃにゃー!!」ダダダッ

エーリカ「いえーい」タタタッ

サーニャ「ふっ!」テテテッ

芳佳「ころんだっ!」

ルッキーニ「うじゅっ!」

エーリカ「ほっ」

サーニャ「……」テテテッ

芳佳「あ、えと……」

サーニャ「え?」

芳佳「サーニャちゃん、私が振り返ったら止まらないといけないんだけど」

サーニャ「あ……そうなんだ……。ごめんなさい、芳佳ちゃんに一番早く触れたら良いものだとおもって……」

芳佳「ごめんね! 私のほうこそちゃんとルールを説明しなかったからー!!」

サーニャ「芳佳ちゃんは悪くないわ。私の所為だから……」

芳佳「とりあえず、サーニャちゃんはこっちまできてー!!」

サーニャ「罰があるの……?」

芳佳「ないない。はい。私と手を繋いで」

サーニャ「うんっ」ギュッ

芳佳「これでサーニャちゃんは私の捕虜になったの」

サーニャ「芳佳ちゃんの?」

芳佳「そう。もう私から離れちゃダメだよ」

サーニャ「え……あの……そんなこと急に……」

芳佳「ずっとこの手を握っていて。離しちゃ、ダメだから」

サーニャ「……うんっ」ギュゥゥ

芳佳「次、いきまーす!!」

ルッキーニ「……」

エーリカ「おっけー!!」

芳佳「……ハルトマンさん、動きました。こっちにきてください」

エーリカ「えー!? なんだよそれー!? 騙したのー!?」

芳佳「私が後ろを見ている間は何があっても絶対に動いちゃいけないんです!!」

エーリカ「なんか納得できないなぁ」

芳佳「ハルトマンさんはサーニャちゃんの手を握ってくださいね」

エーリカ「いいよー」ギュッ

サーニャ「ハルトマンさんは私の捕虜になったんですか?」

エーリカ「そうなるの? まぁ、サーニャんの捕虜にならいくらでもなるけどね」

サーニャ「でも、私は今、芳佳ちゃんの捕虜ですから……ごめんなさい……」

芳佳「だーるーまー……」

ルッキーニ「うにゃー!!!」ダダダダッ

芳佳「さーんーがー……ころんー……」

ルッキーニ「にゃぁー!!!」ダダダッ

芳佳「だっ!!」

ルッキーニ「うじゅっ」ピタッ

芳佳「……」

ルッキーニ「……」

エーリカ「二人とも顔、ちかすぎない?」

ルッキーニ「ふー……ふー……」

芳佳「(ルッキーニちゃんもやっぱりここまで走るの疲れてるみたい……。必死に隠してるけど呼吸が乱れてるし……)」

ルッキーニ「ふー……ふぃー……」

芳佳「(ルッキーニちゃんの息があたる……)」

ルッキーニ「はぁ……はぁ……」

芳佳「……」

ルッキーニ「ふぅ……ふぅ……ふぅ……」

芳佳「……」

ルッキーニ「あー!!! もうだめぇ」

芳佳「ルッキーニちゃんのまけー」

ルッキーニ「芳佳、ずりゅいー! あたしが動くまでまってるんだもーん!」

芳佳「これも作戦だよ」ドヤッ

ルッキーニ「うぅー。キスしちゃえばよかった」

エーリカ「つまり動くまでずっと待っていてもいいわけだ」

芳佳「限度はありますけど、待つのも作戦のうちですね」

エーリカ「……」

芳佳・サーニャ・ルッキーニ「「……」」

エーリカ「……」ジーッ

芳佳・サーニャ・ルッキーニ「「……」」


美緒「ふむ」

バルクホルン「あんなところに……。ハルトマンめ、訓練をサボってなにをしてるんだ」

美緒「見て分からないか?」

バルクホルン「遊んでいるだけだろう」

美緒「いや。違うな」

バルクホルン「なんだと?」

美緒「全員、10分以上あの姿勢のまま微動だにしない」

バルクホルン「何故そのようなことをしている」

美緒「精神統一の一環なのだろう」

バルクホルン「バカな。あのハルトマンとルッキーニがそんなことをするわけがない」

美緒「だが現実にああしている。遊びではなさそうだぞ」

エーリカ「……」

芳佳「うぅ……」

ルッキーニ「うにゃぁ……」

サーニャ「くっ……」


美緒「集中力を養っているのだろう。立派な鍛錬だな」

バルクホルン「俄かには信じられない」

美緒「しかし、落ち着きのないルッキーニと堪えることを誰よりも嫌うハルトマンが長時間静止しているのは事実だ」

バルクホルン「少佐を疑っているわけではないが……」

美緒「宮藤もサーニャも軍人としての自覚が芽生えてきたか。頼もしい限りだな。はっはっはっは」

バルクホルン「……」

美緒「得心していないといった顔だな」

バルクホルン「いや、数分前に宮藤とルッキーニが遊んでいるのをこの目で見ている。いつものハルトマンならそれに加わっていくはずなんだが」

美緒「ハルトマンが宮藤とルッキーニ対してこう言ったのではないか? 新人の宮藤は軍人としてウィッチとして、まだまだやるべきことはある、と」

バルクホルン「あのハルトマンがそんなことを……いうわけが……」

美緒「目に見えている光景こそがなによりの証拠だ。素直に賞賛してやれ」

バルクホルン「ハルトマンのその言葉に感銘を受け、ルッキーニとサーニャも鍛錬に参加していると少佐は言いたいわけだな」

美緒「ああ。サーニャとルッキーニはウィッチとしては非常に優秀だが、足りていないものは多い。ハルトマンの言葉でそれに気が付いたのだろう」

バルクホルン「ううむ……」

美緒「声をかけるか?」

バルクホルン「……いや、よそう。少佐の言うとおりならば、四人に水を差すことになる」

美緒「同感だ。ここで眺めているのも邪魔かもしれんな」

バルクホルン「私はもういく。少佐は?」

美緒「私もここを離れる。お前こそハルトマンに用事があったのでないのか?」

バルクホルン「自主的にトレーニングをしているのなら文句はない」

美緒「はっはっはっは。そういうことか」

バルクホルン「ハルトマン……すまない……。少しでも疑った私が悪かった。今日は私が腕によりをかけて料理を作ろう」

美緒「それは楽しみだ。期待しているぞ」


エーリカ「……」

芳佳「ちょ、ちょっとハルトマンさんいつまで――」

エーリカ「はい! 宮藤のまけー!!」

食堂

シャーリー「はらへったぁ」

エイラ「だなぁ」

バルクホルン「あと十数分待て」

シャーリー「あれ? なにしてんだ?」

バルクホルン「食事を用意している」

エイラ「今日って大尉が当番だっけ?」

シャーリー「今日も宮藤とリーネが作るんじゃないのか」

バルクホルン「ただの罪滅ぼしだ。気にするな」

シャーリー「何があったんだよ」

バルクホルン「なんでもない」

美緒「二人は滑走路で宮藤、ルッキーニ、サーニャ、ハルトマンの姿は見たか?」

エイラ「お、少佐もいたのか」

シャーリー「サーニャとハルトマンは見てないけど、滑走路で猛ダッシュしてる宮藤は見ましたよ」

エイラ「非番なのになぁ。宮藤も真面目だな」

バルクホルン「そこにハルトマンはいなかったのか?」

シャーリー「いなかったな。ルッキーニと宮藤だけだった」

美緒「宮藤は最初から自主訓練に励んでいたわけか」

バルクホルン「そういうことか。これで全ての謎がとけたな」

エイラ「なにがだ?」

美緒「もしや、逆なのか?」

バルクホルン「ああ。非番でも訓練に励む宮藤の姿を見て、ハルトマンは改心したということだ」

美緒「そしてルッキーニとサーニャもそれに続いたということか」

バルクホルン「どちらにせよ驚くべき成長だ。最高の料理を振舞ってやらなければ」

シャーリー「今はハルトマンとサーニャもあれに参加しているのか」

エイラ「なんでサーニャも一緒なんだ」

シャーリー「あたしに聞かれてもな」

エイラ「ちょっと文句いってくる」

シャーリー「おい、エイラ」

バルクホルン「ふふ。もう一品、付け加えてもいいかもしれないな」

滑走路

エイラ「えーと……」


サーニャ「だーるーまーさーんーがーこーろーんー……」

芳佳「でやぁー!!!」テテテッッ

エーリカ「わーいっ」テテテッ

ルッキーニ「うにゃにゃにゃにゃにゃー」ダダダダッ

サーニャ「……」ピコンッ

芳佳「(あれ? このままだとサーニャちゃんにタッチできちゃうけど……いいのかな……?)」

サーニャ「……」

エーリカ「(サーニャん、魔法つかってるなぁ)」

ルッキーニ「うじゅっ!」ピタッ

芳佳「(よーし、このままタッチ――)」

サーニャ「だっ」

芳佳「え……!?」ビクッ

サーニャ「芳佳ちゃん、私と手を繋ぎましょう」

芳佳「サーニャちゃん、魔法を使うなんて反則だよぉ」

サーニャ「そ、そうなの? ごめんなさい。私、このゲームのこと理解できてないみたい……」

芳佳「ああ、いや、別にルール違反って意味じゃなくて、えーと、なんていうか、サーニャちゃんにしかできないことだからすごいなーって意味で……」

サーニャ「そうなんだ。良かったわ」

芳佳「負けは負けだもんね。サーニャちゃんの手を握らないと」ギュッ

サーニャ「これで芳佳ちゃんは私から離れられないのね」

芳佳「そういうことになるね」

サーニャ「うふふ」

芳佳「えへへ」

エイラ「みーやーふーじー……」

芳佳「あ、エイラさん」

エイラ「お前、何サーニャの手を気安くにぎってるんだー?」

芳佳「これはルールですから」

エイラ「なんの遊びしてんだ?」

サーニャ「エイラも一緒にやる? だるまさんがころんだ」

エイラ「結局、宮藤たちは遊んでただけのか」

芳佳「はい。そうですけど、やっぱりまずかったですか?」

エイラ「まずいっていうよりな」

エーリカ「失敬だね、エイラ」

エイラ「なに?」

エーリカ「これは遊びなんかじゃないよ。立派な訓練だ」

エイラ「そうなのか、サーニャ?」

サーニャ「ハルトマンさん、そうなんですか?」

エーリカ「このだるまさんがころんだはね、集中力を高めるための訓練なんだよ」

ルッキーニ「えー!? 芳佳、そうなの?」

芳佳「ハルトマンさん、そうなんですか!?」

エーリカ「この私が無意味な遊戯に参加すると思うの? そんな時間があるなら私は寝て、体をしっかり休めるって」

サーニャ「確かにハルトマンさんならそうするかも……」

エイラ「で、どうして集中力を高めることができるんだ?」

芳佳「私も気になります!!」

エーリカ「いい? まず『だるまさんがころんだ』と号令を出す役、これを宮藤は鬼と呼称している」

エイラ「鬼なのか」

エーリカ「鬼は私たちの行動を見ることはできない。そうだよね?」

芳佳「はい。壁とか柱に向かって掛け声を唱えますから」

エーリカ「そしてその間に鬼以外の人間は鬼へと近づいていく。鬼に触れることができれば人間の勝ち。鬼が掛け声を唱え終えたあとに動けば鬼の勝ちだ」

エイラ「ふぅん。単純なルールだな」

エーリカ「疑問に思わない?」

ルッキーニ「疑問? にゃにかある?」

サーニャ「うーん……」

エーリカ「鬼が圧倒的に不利じゃん」

エイラ「まぁ、話を聞く限り、相手の行動を見ることができないんじゃあ、サーニャとか私とか中佐の魔法でもない負けるよな」

エーリカ「その通り。でも負けっぱなしも悔しいわけだ。そこで鬼が勝つためには何が必要だと思う?」

芳佳「わかりません!」

エーリカ「気配を感じ取る集中力だ」キリッ

ルッキーニ「おぉぉー!! そっかー!!」

エイラ「鬼役になれば集中力の向上が見込めるってわけか」

エーリカ「それだけじゃない」

サーニャ「まだあるんですか?」

芳佳「教えてください!!」

エーリカ「人間側も鬼の動向を常に気にしていなければいけないだろ?」

エイラ「なるほど。そこでも集中力を切らせないようにするわけだな」

エーリカ「そういうこと。ね? 集中力を高めるための訓練なんだよ、これは」

ルッキーニ「扶桑の遊びってしゅごーい!!」

芳佳「まさかそんなに奥の深いものだったなんて……!」

サーニャ「エイラ、すごいと思わない?」

エイラ「遊びながらも訓練できるって点ではすごいな」

エーリカ「でしょ? だから、トゥルーデやミーナにはそう説明しておいてね」

エイラ「了解」

エーリカ「よしっ」

ルッキーニ「ねーねー! もう一回やろー!!」

食堂

ミーナ「あら? この匂いは……」

シャーリー「なぁ、メシまだぁ?」

バルクホルン「もう少し待てないのか、リベリアン」

シャーリー「だって、うまそうな匂いが充満してるし、腹へったんだよ」

バルクホルン「黙っていろ。もう一品追加するかどうかで悩んでいるんだ」

美緒「既に十品ほど追加されているようだが、まだ増やすつもりなのか?」

バルクホルン「ハルトマンが改心したんだ。これぐらいはしないとな」

シャーリー「おまえなぁ……。なんでもいいからメシくれって」

バルクホルン「しばらく待て」

ミーナ「今日は何かの記念日だったかしら?」

バルクホルン「ミーナ! 聞いてくれ! ハルトマンがついにカールスラント軍人としての誇りを思い出してくれたんだ!!」

ミーナ「どういうこと?」

シャーリー「ハルトマンが真面目に訓練していたのが嬉しかったらしいですよ」

ミーナ「それだけのことでここまでの料理を用意したの?」

バルクホルン「それだけのこととはなんだ! これはカールスラント史、いや、世界史にも残る大革命と言えるほどだ!」

ミーナ「そ、そうかしら?」

美緒「確かにハルトマンは素行に問題が多かったがな」

バルクホルン「あのハルトマンが後輩、それも新米ウィッチである宮藤の行動に感化され、改心した。私はそれをとても嬉しく思う」

ミーナ「その結果がこのテーブルに所狭しと並んでいる料理なの?」

バルクホルン「この食事をハルトマンのために用意したということは秘密だからな」

シャーリー「お前ってハルトマンに厳しいのか甘いのかよく分からないな」

バルクホルン「褒められることをすれば素直に褒めてやる。それだけのことだ」

ミーナ「トゥルーデがここまで感動するほどなんて……。どんな訓練をしていたの?」

美緒「ミーナは見なかったか? 滑走路で精神統一をする宮藤たちの姿を」

ミーナ「いいえ。私が見たのは楽しそうに遊んでいる宮藤さんとルッキーニさんだけだったわ。そのときトゥルーデも一緒にいたはずだけど」

バルクホルン「そういえば……」

美緒「ふむ。やはり宮藤とルッキーニはただ遊んでいて、ハルトマンが注意をしたのか」

バルクホルン「少佐。どちらでも構わないと言った筈だ。ハルトマンが軍人として成長してくれたのだからな。さて、あとニ品ぐらいはいるか」

シャーリー「おいおい。まだ作るのか? だったらハンバーガーとかも頼む」

滑走路

エイラ「だるまさんがころんだっ」

芳佳・ルッキーニ・サーニャ・エーリカ「「……」」

エイラ「……」ジーッ

芳佳「……」

エイラ「ミヤフジ! 後ろだ!」

芳佳「え!? なんですか!?」

エイラ「はい、ミヤフジしっかく」

芳佳「えー!?」

エイラ「次、いくぞー」

芳佳「待ってください、エイラさん! それはなしですよぉ!」

エイラ「そんなルール、私はきいてないんだな」

芳佳「ひどーい!!」

ペリーヌ「貴方たち、まだここで遊んでいましたの?」

リーネ「あ、人数が増えてる」

芳佳「リーネちゃん! ペリーヌさん! 訓練終わったの?」

リーネ「うんっ。今日の任務はとりあえず終了したから、あとは待機時間だよ」

芳佳「だったら、リーネちゃんも一緒に――」

ペリーヌ「宮藤さん!!」

芳佳「は、はい!」

ペリーヌ「非番の日だからと好き勝手に行動していいと誰から教わったの?」

芳佳「え? えーと……」

ペリーヌ「わたくしたちは常にネウロイの襲撃に備えていなければいけませんの。非番は休日ではありません」

芳佳「ごめんなさい……」

ペリーヌ「全く。このことは坂本少佐に報告しますわ」

芳佳「坂本さんにですか?」

ペリーヌ「当たり前でしょう。しっかり坂本少佐から叱責を受けなさいな」

芳佳「うぅ……」

エイラ「待てよ。ツンツンメガネ」

ペリーヌ「なにか? わたくしが間違っているとでもいいたそうですわね、エイラさん?」

エイラ「これは訓練だぞ。お前のメガネは節穴だな」

ペリーヌ「訓練? 訓練ですって? 何を仰るかと思えば、寝言をいうのはサーニャさんとルッキーニさんだけで十分ですわ」

サーニャ「わ、わたし……そんなに寝言を言ってるのかしら……」

エーリカ「サーニャんは寝てるとき多いもんね」

サーニャ「恥ずかしい……」モジモジ

ルッキーニ「あにゃぁ。あたしって寝言言ってるんだ」

芳佳「ルッキーニちゃんもよく寝てるもんね」

リーネ「あはは」

エイラ「一見するだけなら遊んでいるようにしか見えなくても、集中力を高める訓練なんだぞ」

ペリーヌ「はっ。何をお馬鹿なことを。掛け声こそ違いますがその遊びはガリアに存在する小さな子どもの遊びです。訓練なんかではありませんわ」

芳佳「え? これは扶桑の遊びだけど……」

リーネ「そうなの? 私はてっきりブリタニアの遊びをしているのかなって思ってたけど」

芳佳「だるまさんがころんだってブリタニアにもあるの!?」

リーネ「だるまさんって誰のこと?」

エーリカ「まぁまぁ、この訓練は万国共通ってだけじゃない?」

ペリーヌ「ですから、たまたま似たような遊戯がガリアとブリタニアと扶桑にあるだけでしょう」

エーリカ「カールスラントにはランニングというスタミナ強化のための訓練がある。知ってる?」

ペリーヌ「は?」

エーリカ「扶桑でもあるよね?」

芳佳「え? は、はい。坂本さんなんて毎朝毎晩基地の周りを走ってますよね」

リーネ「それどころかみなさんも毎日ランニングはしているような」

エーリカ「そうだよね。ランニングは万国共通の訓練なのは明白だ」

ペリーヌ「だから、なんですの?」

エーリカ「だったら、このだるまさんがころんだも万国共通の訓練であってもいいと思わない?」

ペリーヌ「ですから、万国共通の遊びであってはあっても訓練ではないと言っているのですわ!」

エーリカ「ふっ。ペリーヌもまだまだ若いね。モノの本質ってやつをわかってない」

ペリーヌ「貴女とは一つしか変わりませんが」

エーリカ「子どもがすることが全部遊びだっていうなら、私たちがネウロイと戦うのも遊びだっていうのか?」

ペリーヌ「501に子どもはいませんわ!」

ルッキーニ「そーだ! そーだ!」ピョンピョン

エーリカ「少佐やミーナ、トゥルーデやシャーリー、そして私から見ればペリーヌ含め、みんなは子どもだよ」

エイラ「中尉は私より1年早く生まれただけだろ」

エーリカ「宮藤をみれば一目瞭然じゃん。髪の毛の先から足の先まで、子どもなんだし」

芳佳「えー!? 私、もう15歳なんですけど!!」

ペリーヌ「宮藤さんは、その、特殊な例ですわ」

芳佳「そんなぁ!!」

サーニャ「芳佳ちゃんが子どもなら、年下の私は……」

ルッキーニ「あたしはもう大人だけどね」

リーネ「ハルトマンさん、あの、そういうのは見た目じゃないのような、気がするんですけど」

芳佳「リーネちゃんは完全に大人だもんね」

リーネ「な、ないない! 芳佳ちゃんのほうがしっかりしてるよ!」

エイラ「リーネ、胸に手を当てて、考えてみたほうがいいぞ」

リーネ「胸ですか?」

エーリカ「宮藤とルッキーニだって私たちに追いつこうと必死になっているんだ。ペリーヌはその邪魔をしようっていうのか?」

ペリーヌ「ですから、あのような遊戯でどんな訓練になるといいますの? わたくしが納得できる説明をお願いしますわ」

食堂

バルクホルン「――完成だ」

シャーリー「やったー!! 食っていいか!?」

バルクホルン「ダメに決まっているだろう!!」

美緒「見事だな。カールスラント料理のフルコースといったところか。扶桑やリベリオンのものも混じってはいるが」

ミーナ「どこの立食パーティーなのよ……」

バルクホルン「今日だけの特別ディナーだ」

美緒「うむ。およそ3日分の食料を使った晩飯は特別といっても過言ではないな。はっはっはっは」

ミーナ「食料だって無限じゃないし無料じゃないのよ?」

バルクホルン「気にするな」

ミーナ「あなたが気にしなさい!」

美緒「ミーナ、いいではないか。これも士気を高める一環だと考えれば、無駄なことではない」

ミーナ「そうはいうけど」

美緒「この豪華な食事がハルトマンや宮藤にとって明日への糧になるのなら、それでいいだろう」

シャーリー「ふぁっふふぁふぉーふぁ! ふぃふぃふぉふぉふぅふぁー」モグモグ

バルクホルン「なー!? お前!! 何を勝手に食べているんだ!!」

シャーリー「ふぁっふぇふぉふぁふぁふふぃふぁんふぁふぉん」

バルクホルン「腹がすいたからじゃない!! これはお前のために用意したわけじゃないんだぞ!!!」

美緒「そうだな。主役がいなければ手をつけることができんな」

ミーナ「手をつけている人が一名いるけれど」

シャーリー「これうまいな。もう一個もらお」

バルクホルン「少佐、ハルトマンが主役ということは……」ペシッ

シャーリー「いてっ」

美緒「分かっている。機密事項だろう?」

バルクホルン「助かる。もしここで私が甘い顔をすればハルトマンが元に戻ってしまうかもしれないからな」

美緒「お前の信じるハルトマンはそこまで惰弱か?」

バルクホルン「万が一のためだ。安心はできない」

美緒「お前がそうしたいというならそうしよう」

バルクホルン「ありがとう」

ミーナ「そろそろ夕食の時間でもあるし、みんなを呼びにいきましょうか」

格納庫

バルクホルン「うーむ」

シャーリー「あいつら、どこにいるんだ?」

美緒「シャーリー、バルクホルン」

シャーリー「そっちはどうでした?」

ミーナ「大浴場にもいなかったわ」

美緒「ここでもなさそうだな」

シャーリー「あと見てないのは外ぐらいだけど」

バルクホルン「まさか……全員で訓練を……」

シャーリー「全員ってリーネやペリーヌも混じってるのか。まぁ、二人の姿も見えないし、そう考えるのが自然だろうけど」

美緒「エイラもサーニャを探しにいったきり戻ってきていないな」

バルクホルン「ハルトマンの影響で皆も訓練を始めたのだろう」

美緒「この時間ならリーネとペリーヌは通常メニューをこなした直後に参加していることになる。無理はするなと普段から言ってはあるが」

バルクホルン「大目に見てやってくれ。改心したハルトマンを見れば誰だって触発される」

ミーナ「とにかく滑走路のほうへ行ってみましょう」

滑走路

シャーリー「さて、いるかな」

バルクホルン「あそこだ」

美緒「む……?」

ミーナ「あれは……」


ペリーヌ「だーるーまーさーんーがー」


エーリカ「(ヤバい。ミーナとトゥルーデがいる)」

ルッキーニ「うじゅっ!」ピタッ

芳佳「でやぁー!!」テテテッ

サーニャ「やぁーっ」テテテッ

リーネ「まって! 芳佳ちゃん!」グイッ

エイラ「サーニャ、ストップだ!」グイッ


ペリーヌ「こーろーんー……だっ!」クルッ

美緒「ペリーヌ、何をしているんだ?」

ペリーヌ「さ、さかもと、しょうさぁ!?」

美緒「何故、1人で扶桑の遊戯をしている? その遊びは五人ぐらいいなければ楽しくないだろう」

ペリーヌ「い、いえ、これは向こうの皆さんと一緒にやっていたのです!!」

美緒「向こう……?」


芳佳・リーネ・ルッキーニ・エーリカ・エイラ・サーニャ「「……」」


美緒「あそこで静止している者たちのことを言っているのか」

ペリーヌ「そ、そうですわ! 皆さんと一緒にこのお遊戯、いえ、訓練をしていまして」

美緒「いや、しかし、どう見ても離れすぎているぞ。この遊びは10~30メートルぐらいしか離れないが……」

ペリーヌ「ですから!」

バルクホルン「少佐。ペリーヌは少し休ませるべきかもしれない」

ペリーヌ「え!?」

ミーナ「あの、ペリーヌさん? 何でもいいから相談してね。私たちは家族なんですから」

ペリーヌ「中佐!? 違います! わたくしは……!!」

シャーリー「ペリーヌ、今日は皆で一緒に風呂にはいろう。な? そうしたらきっと皆とも仲良くなれるって」

ペリーヌ「シャーリーさんまでなんてことをいうんですの!?」

シャーリー「大丈夫だって。お前のことを嫌ってるやつなんていないよ」

ペリーヌ「その慰めが傷つきますわ!!」

バルクホルン「既に2時間以上が経過しているというのに、ハルトマンはまだ訓練を続けていたのか」

美緒「私でもここまで集中力はもたんな。流石は世界屈指のウィッチだ」

バルクホルン「先ほどみたときと位置が変わっているのは、休憩でも挟んだのだろうな」

美緒「そうか。休憩があれば私でも真似できるな。明日からは私も参加することにしよう」

バルクホルン「私も同じ事を考えていた」

ペリーヌ「待ってください! これは本当に皆さんと一緒になってしていたことなのですわ!!」

シャーリー「でも、ペリーヌはあいつらみたいに止まってなかったぞ」

ペリーヌ「それはわたくしが鬼役だからで……」

バルクホルン「ペリーヌ、お前は疲れているんだ。今日はもう宿舎に戻ったほうがいい」

ペリーヌ「信じてください!」

ミーナ「……ちょっと待って。ペリーヌさん、さっきなんて言ったかしら? だるまさんがどうのって……」

ペリーヌ「だるまさんがころんだといいました。その掛け声を唱えて振り返るのがルールですので」

美緒「扶桑の遊戯だ。鬼役は皆に背を向け、掛け声を唱え終わると同時に後ろを向く。他のものは鬼が見ている間、動くことは許されない」

シャーリー「リベリオンでも似たような遊びありますよ。唱えてる最中は自由に動いて良いんですよね」

美緒「そうだ。そして鬼は他の者に触れられたら負ける。他の者は鬼に動いている姿を見られたら負ける。単純明快な遊びだ」

バルクホルン「子どもが好みそうなルールではあるな」

シャーリー「私もやったことあるなぁ。私だけハンデがあったりしてたなぁ」

美緒「何故だ?」

シャーリー「ほら、私は速いですから。遠くからじゃないとゲームにならなくて」

美緒「はっはっはっは。なるほどな」

ミーナ「……」

ペリーヌ「あの、少佐?」

美緒「どうした?」

ペリーヌ「このだるまさんがころんだは、集中力を高める訓練ではないのですか?」

美緒「……?」

ペリーヌ「中尉から聞きましたわ。鬼役は皆さんの気配を感じ取るために神経を研ぎ澄ませなければならず、他の皆さんは鬼の動きに傾注しなければならない。だから……」

美緒「集中力が高められる、と? はっはっはっは。それは面白い発想だな」

ペリーヌ「えっと……」

ミーナ「合点がいきました」

バルクホルン「……」

シャーリー「なーんだ、そういうことか」

美緒「どうした、シャーリー?」

シャーリー「いや、なんでも」

ペリーヌ「あら……おかしいですわね……ハルトマン中尉は確かにそう仰ったので……。わたくしも理にかなっていると思っていたのですが……」

美緒「考えようによってはそうかもしれんな。しかし、所詮は遊戯だ。確実に効率よく向上させる訓練はいくらでもある」

ペリーヌ「確かに。わざわざこれを全員でやることもないような……」

バルクホルン「シャーリー」

シャーリー「なんだー?」

バルクホルン「食堂に置いてある料理、好きなだけ食べて良いぞ」

シャーリー「マジか!? やっほー!!」

ミーナ「ペリーヌさん、ハルトマン中尉はいつから滑走路にいたのかしら?」

ペリーヌ「へ? さぁ……。3時間ほど前からいたのではないでしょうか?」

バルクホルン「よく聞け!! お前たち!!」


芳佳・リーネ・ルッキーニ・エーリカ・エイラ・サーニャ「「……」」ビクッ


バルクホルン「鬼役を交代する!! 今から私とミーナが鬼役だ!!」

ミーナ「うふふ」

美緒「ミーナとバルクホルンも扶桑の遊戯に興味があったのか。扶桑出身者として嬉しいぞ。はっはっはっは」

ペリーヌ「そんな、大尉……鬼役はわたくしですのに……」

バルクホルン「私かミーナに触れることができたものから抜けていい!! 抜けた者は食堂へ向かえ!! そこにはご馳走が待っている!!」


ルッキーニ「うじゅっ」

芳佳「(ここで返事をしたら鬼さんの思う壺。がまん、がまん)」

サーニャ「(油断できないわ……)」

エイラ「(ここは魔法を使ってで確実に抜けるんだな)」ピコンッ

リーネ「……」

エーリカ「(さて、どうしよう、これ)」

バルクホルン「全員、集中力を高める訓練をしていたそうだな!!! 特にハルトマン!!」

エーリカ「……」

バルクホルン「お前が皆を扇動し、参加させたようだな!! お前の志の高さには感服するばかりだ!!」

エーリカ「……」

バルクホルン「同じカールスラント軍人として、ウィッチとして、私は鼻が高い!!!」

ミーナ「自分に欠けているものに気づいたからこそ、通常の訓練もせずに集中力を高めることを選んだ。そうよね?」

エーリカ「……」

芳佳「(え!? そうなんですか!?)」

サーニャ「(ハルトマンさん、かっこいいです)」

エイラ「(尊敬する)」

ルッキーニ「(おなかすいたぁ)」

リーネ「……」

バルクホルン「その努力を疑っているわけではないが訓練の成果をここで私たちに見せてくれ!!」

ミーナ「それでは、オペレーション『だるまさんがころんだ』を開始します」

美緒「ミーナ、何故不機嫌なんだ? もっと楽しそうにやれないのか」

バルクホルン「だーるーまーさーんーがーこーろーんー……」

エーリカ「シュトゥルム!!!!」ゴォォォォ!!!!!

サーニャ「きゃっ」

芳佳「ハルトマンさん!! はやーい!!」

エイラ「突風で自分を加速させるなんて本気だな」

エーリカ「ここで死んでたまるかぁー!!!」

芳佳「よぉーし!! 私もハルトマンさんを見習わなくちゃ!!」

サーニャ「行きましょう、芳佳ちゃん」

芳佳「うん!! でやぁー!!!」テテテッ

サーニャ「やぁー」テテテッ

ルッキーニ「うにゃにゃにゃにゃー!!!」ダダダダッ

エイラ「――全員!! 止まれ!!」

エーリカ「っと!!」

ミーナ「だっ! ……失敗ね」

エーリカ「(どちらが振り向くか分からないって想像以上に厄介だね)」

美緒「鬼側は圧倒的に不利だ。向こうには未来を見る事ができるエイラがいる」

エイラ「ふふーん」

バルクホルン「確かに。こちらの動きを先読みされては私とミーナの二人でも向こうにとっての脅威に成りえない」

ミーナ「ええ。まずはエイラさんをなんとしても捕虜にしないといけないわね」

ペリーヌ「あの、たかがだるまさんがころんだになにも本気にならなくても……」

ミーナ「ペリーヌさんは、少し黙っていてください」

ペリーヌ「は、はいっ!」

シャーリー「おーい! ペリーヌー、手があいてるなら手伝ってくれー!!」

ペリーヌ「シャーリーさん、何をしていますの?」

シャーリー「外で食ったほうが美味いかなって思ってさ。それにこれだけの料理を1人で食うのもつまんないしね」

ペリーヌ「分かりましたわ。ではわたくしはテーブルを並べます」

シャーリー「悪いな」

バルクホルン「エイラを捕らえるためにはどうしたらいいか……」

ルッキーニ「うじゅぅ……」

芳佳「(ルッキーニちゃんの様子がおかしい……。どうしたのかな……)」

ミーナ「……バルクホルン大尉」

バルクホルン「分かっている。行くぞ」

ミーナ「ええ」

バルクホルン・ミーナ「「だーるーまーさーんーがーこーろーんー」」

ルッキーニ「うにゃにゃにゃにゃにゃー!!!」ダダダッ

エーリカ「まった! ルッキーニ!! 全速力で走ると止まれなくなるって!!」

ルッキーニ「だっておにゃかすいたんだもーん!!」

シャーリー「こっちにいっぱいあるぞー。はやくこーい」

ルッキーニ「わーい!!」

エイラ「止まれ!! 大尉がこっちを見るぞ!!」

ルッキーニ「あにゃぁ!?」ズサァァ

バルクホルン「だっ!!!」

ルッキーニ「うじゅっ」

バルクホルン「……」

ルッキーニ「……」

~5分経過~

バルクホルン「……」

ルッキーニ「うじゅ……」

ミーナ「うふふ」

芳佳「(バルクホルンさん、いつまでこっちを見るんだろう……)」

ペリーヌ「すごく食欲をそそる匂いですわね」

シャーリー「だろ? 早く食いたいんだけどなぁ」

ルッキーニ「うにゃぁ……」

バルクホルン「どうした、ルッキーニ少尉。口から涎が出ているぞ?」

ルッキーニ「え!?」ゴシゴシ

エイラ「(あ、バカ)」

サーニャ「(ルッキーニちゃん!!)」

ミーナ「あらあら、ルッキーニさん。動いてしまったのね?」

ルッキーニ「あにゃー!!!」

バルクホルン「こちらにこい!! フランチェスカ・ルッキーニ少尉!!!」

美緒「集中力を切らしたか」

ルッキーニ「だってぇ……おにゃかすいたし……」

バルクホルン「ルッキーニ少尉、お前は我々の捕虜となった身だ。私たちに従ってもらうぞ」

ルッキーニ「うぇぇぇ……なにするのぉ……?」

ミーナ「エイラさんを撃墜するために動いてもらいます」

ルッキーニ「エイラを?」

美緒「あのエイラを撃墜などできるのか?」

バルクホルン「ルッキーニ少尉がいれば可能だ」

シャーリー「ふぁふぃふぁふぇふふぃふぁ?」

ペリーヌ「シャーリーさん、はしたないですわよ」


芳佳「(話し合いをしてるみたいだけど……どんな作戦をかんがえてるんだろう……?)」

リーネ「(芳佳ちゃん、芳佳ちゃん)」

芳佳「(なぁに?)」

リーネ「(私たちはわざと動いたほうがいいかも)」

芳佳「(え? なんで?)」

リーネ「(それは……あの……)」

エーリカ「(リーネ!! 私を見捨てないでよ!!)」

リーネ「(でも、明らかに中佐とバルクホルンさんはハルトマンさんを狙っているような……)」

エーリカ「(だからなんなの!? みんなで参加してこそのだるまさんがころんだじゃん!!)」

リーネ「(ご、ごめんなさい)」

芳佳「(そうだよ、リーネちゃん。これは訓練の成果を見せるためのものなんだから、わざと動いたりしちゃダメだよ)」

リーネ「(……うんっ。そうだね)」

バルクホルン「――では、いくぞ!!」

ミーナ・バルクホルン「「だーるーまーさーんーがーこーろーんー……」」

芳佳「でやぁー!!!!」テテテッ

サーニャ「やぁー」テテテッ

エイラ「ストーップ」

バルクホルン「だぁぁぁぁ!!!」バッ

サーニャ「きゃっ」ビクッ

ミーナ「サーニャさん、アウトです。こちらにきて」

美緒「バルクホルン。そのやり方はどうかと思うが」

バルクホルン「大声を出してはいけないというルールはないはずだ」

美緒「しかしだな」

サーニャ「いえ、私が未熟だっただけです。その証拠にハルトマンさんたちは動いてないですから」

美緒「そうか。サーニャ自身がそう考えているのなら、私から言うことは何もない。精進するようにな」

サーニャ「はいっ。がんばりますっ」

エイラ「(サーニャを驚かせるなんて卑怯だな)」

エーリカ「(未来は変えられなかったの?)」

エイラ「(幾ら先読みができたって、変えられない未来はあるんだ)」

エーリカ「(もどかしいね)」

エイラ「(ああ……)」

バルクホルン「ようやく手札が揃ったな」

ミーナ「次でエイラさんの最後ね」

美緒「ふむ。こんなにも殺伐としただるまさんがころんだは初めて見たな」

シャーリー「はむっ。はむはむ」モグモグ

バルクホルン「では、頼むぞ」

ルッキーニ「ほんとにやるの? これで一度、エイラとケンカになったことあるんだけど」

ミーナ「非常時です。やりなさい」

ルッキーニ「はいぃ!!」

ペリーヌ「一体、何が始まるというの……」

ルッキーニ「サーニャっ」

サーニャ「なぁに?」

ルッキーニ「ごめんっ!!」モミモミ

サーニャ「ぁんっ」ビクッ

ペリーヌ「ちょっと!? なにをしていますの!!」

エイラ「なにやってんだぁ!!! ルッキーニぃ!!!」ダダダッ

ルッキーニ「あにゃ!?」

エイラ「お前!! またサーニャの胸をー!!!」

ルッキーニ「ごめんにゃさぁーい!!!」

バルクホルン「……撃墜完了だ」

芳佳「(そんな! エイラさんまで!!)」

リーネ「(投降したほうが良いと思います! ルッキーニちゃんにあんなことをさせるなんて、ミーナ中佐は本気です!)」

エーリカ「(だからこそ、この戦場から生きて帰らないといけないんだよね。誰一人、死なせない。私が守ってみせる)」キリッ

芳佳「(ハルトマンさん……)」

リーネ「……」

エーリカ「(大丈夫。鬼役は必ず唱え終えないとこちらを見ることはできない。ということは、『だるまさんが』までは完全なる安全圏)」

芳佳「(『ころ』ぐらいで止まるわけですね)」

エーリカ「(そういうこと。少しずつしか進めないけど、確実にごり押しで進んでいく。こういうのを浸透強襲戦術で言うんだ)」

芳佳「(そうなんですか! わかりました!)」

リーネ「(使い方が違うような……)」

バルクホルン「残るは宮藤、リーネ、ハルトマンか」

美緒「宮藤は扶桑の魔女だ。だるまさんがころんだには慣れ親しんでいる。鬼の攻撃をかわす術は肉体どころか魂にも染み込んでいるはず。一筋縄ではいかんぞ」

バルクホルン「奴に絶望感を味合わせるためにも、宮藤とリーネは邪魔だな」

ミーナ「先に宮藤さんとリーネさんを捕虜にしましょうか」

バルクホルン「それがいいな」

エイラ「サーニャ、大丈夫か? 怪我とかしてないか?」

サーニャ「大丈夫よ。ルッキーニちゃんは優しいから」

ルッキーニ「ほらぁ、エイラが怒ったぁ。だからサーニャのは触らないようにしてたのにぃ」

シャーリー「おーい、ルッキーニー。こっちきて一緒に食べないかー?」

ルッキーニ「たべるぅー!!」

バルクホルン「宮藤とリーネを捕らえるためにはどうすべきか」

ミーナ「そうね……」

美緒「バルクホルンとミーナは何故、こうも真剣になっているんだ?」

ペリーヌ「わかりかねますわ」


エーリカ「(どう思う?)」

リーネ「(ミーナ中佐のことですから、きっとハルトマンさんを1人にさせようとするはずです)」

芳佳「(どうしてそんなことするの?)」

リーネ「(それは……えっと……)」

エーリカ「(宮藤、リーネ。気合いれないと死ぬよ)」

芳佳「(このだるまさんがころんだには何があるんですか!?)」

エーリカ「(まだ気が付いてなかったの? このゲームの真実に)」

芳佳「(真実?)」

リーネ「(それはハルトマンさんが訓練を……)」

エーリカ「(私、言ったよね。新人の宮藤は軍人としてウィッチとして、まだまだやるべきことはあるとおもうってさ)」

芳佳「(はい。言われました)」

エーリカ「(なのにだるまさんがころんだで遊んでた)」

芳佳「(そうですけど……。でも、これは集中力を高める訓練になるんですよね?)」

エーリカ「(確かにそうだよ。だけどさ、宮藤とルッキーニは遊んでいた。訓練だと思ってはいなかった。そうだよね)」

芳佳「(は、はい)」

エーリカ「(トゥルーデたちはそこに気が付いているんだよ。だから、こんな意地悪なことをしているわけだ)」

芳佳「(どういうことですか?)」

エーリカ「(訓練の成果をみるなんてのは口実で、トゥルーデとミーナは無理矢理にでも私たちを失敗させて罰を与える気なんだって)」

エーリカ「(だるまさんがころんだは訓練じゃないって自分の中で結論付けているからね)」

芳佳「(そんなぁ! 私、ハルトマンさんと一生懸命だるまさんがころんだをしたのに……)」

エーリカ「(だからさ、トゥルーデとミーナに見せ付けるんだ。私たちの集中力の高さをね)」キリッ

芳佳「(そういうことだったんですか。分かりました。私、がんばります! みんなとの特訓が無駄じゃないんだって、バルクホルンさんとミーナ中佐に分かってほしいから!)」

エーリカ「(うんうん。それでこそ、私の見込んだ宮藤だよ)」

リーネ「……」

バルクホルン「では、いくぞ!!」

ミーナ・バルクホルン「「だーるーまー……」」

エーリカ「よっしゃー!!」ダダダッ

芳佳「でやぁー!!!!」テテテッ

リーネ「芳佳ちゃん……」

芳佳「今、私にできることは特訓の成果を分かってもらうこと!! だから!!」

ミーナ・バルクホルン「「さーんー……」」

芳佳「少しずつでも!! ほんの少しでも!! 私は進む!!」テテテッ

バルクホルン「……」バッ!!

芳佳「え……!?」ビクッ

バルクホルン「安心しろ。まだ唱え終わっていない。私が振り向いたところで何の意味もないのは明白だろう」

芳佳「あ、そうですね。はぁー、びっくりしたぁ」

バルクホルン「ところで宮藤。後ろを見てみろ」

芳佳「え? 何かあるんですか?」

ミーナ「がころんだっ」

芳佳「リーネちゃんとハルトマンさんがいるだけじゃないですかー」

バルクホルン「……」

芳佳「……え?」

ミーナ「宮藤さん、動いたわね。こちらにきて」

芳佳「えぇぇー!?」

バルクホルン「お前の負けだ。宮藤」

芳佳「そんなの反則ですよぉ!!」

バルクホルン「反則だという規定はない」

美緒「異議あり!!」

ミーナ「却下します」

美緒「むぅ」

シャーリー「おいおい。それは大人気ないんじゃないか?」

芳佳「シャーリーさん!!」

バルクホルン「何か文句でもあるのか、リベリアン」

シャーリー「大アリだよ。大体、鬼役が二人もいるのはおかしいし、バルクホルンのやり方は度を越えてる。そんなので捕まらない奴のほうがおかしいだろ」

ルッキーニ「そーだっ! そーだっ!」

エイラ「もっと言ってやれ」

バルクホルン「私のミーナの考えぐらい理解できているだろう?」

シャーリー「ああ。わかるさ。それでもやりかたが陰湿だって言ってるんだ」

ミーナ「いいえ。ハルトマン中尉には私たちに証明する義務があるはずです。集中力を高める特訓だったという証明を」

シャーリー「確かにそうですけど、宮藤たちを巻き込まなくてもいいんじゃないですか」

ミーナ「集中力が本当に向上しているのなら、先ほどまでのトラップになんて絶対に引っかからないはずよ」

バルクホルン「鬼が二人いても掛け声にさえ集中していればまず引っかかることはないからな。それに引っかかるということは集中力の欠如に他ならない」

シャーリー「屁理屈にもほどがあるだろ」

バルクホルン「その言葉はそのままハルトマンにくれてやればいい」

サーニャ「どうしてハルトマンさんなんですか?」

ペリーヌ「また大尉を怒らせるようなことでもしたのではありませんの?」

バルクホルン「それにだ。ハルトマンとリーネは微動だにしていない。捕まらない奴もいるということだ」

シャーリー「もういいよ。宮藤、はらへっただろ。こっちこいよ」

芳佳「でも、リーネちゃんとハルトマンさんがまだ……」

リーネ「あ、あの、いいですか?」

バルクホルン「リーネ、その行動が意味することは理解できているのか?」

ミーナ「投降するのね?」

リーネ「はい」

エーリカ「(リーネ!! どうして!!)」

芳佳「リーネちゃん、いいの!?」

リーネ「えっと、その、お腹がすいて……」

バルクホルン「兵糧攻めに屈したか。なっていないな」

リーネ「ごめんなさい」

美緒「そんな弱点があったのか。リーネには常時、何か食い物を所持させていたほうがいいのかもしれんな」

リーネ「そ、そこまでは……」

ルッキーニ「えー!? リーネだけじゅるいー!! あたしもお菓子ほしー!!」

バルクホルン「さて、これで全員揃ったな」

ミーナ「そのようね」

バルクホルン「ミーナ、こちらは私に任せてくれ」

ミーナ「いいの?」

バルクホルン「構わない」

ミーナ「……それじゃあ、お願いね」

バルクホルン「了解」

芳佳「バルクホルンさんとミーナ中佐、意地悪ですよね」

エイラ「だなー。あんなの集中力の有無とか関係ないもんな」

ルッキーニ「おーぼーだぁー」

サーニャ「でも、勉強にはなったかも。どんなイレギュラーが起こっても、動じてはいけない。私は今日、それを強く実感したわ」

エイラ「流石、サーニャだな。小さなことから大きな発見をするんだな」

シャーリー「これ、取り皿な。好きなのを好きなだけ取って食べろよ」

芳佳「あれ? 何か罰とかあるって聞きましたけど? だよね、リーネちゃん?」

リーネ「え? ああ、それは、きっと、この大量の料理を食べきらないといけないとかじゃないかな」

バルクホルン「……」ジーッ

エーリカ「……」


芳佳「確かにこれだけの料理を食べきるのって、結構辛いかも……」

エイラ「そうかぁ? 11人で食えばなんてことないって」

サーニャ「いただきます」

ルッキーニ「いっただきまーすっ!!」

ペリーヌ「大尉の手料理ですから、味は保証されていますわね」

芳佳「ちょ、ちょっと待ってください。ハルトマンがまだ……」

美緒「そうだな。全員が卓に着くまで待ったほうがいいだろう。ハルトマンだけでも『だるまさんがころんだ』を攻略してほしいな」

シャーリー「いやぁ、それは無理じゃないですか?」

美緒「何故だ?」

ミーナ「この中にまだハルトマン中尉の置かれている状況を理解できていない人はいるかしら?」

芳佳「どういう意味ですか?」

サーニャ「ハルトマンさんが何かしたのですか?」

エイラ「今日は珍しく真面目に訓練してたぞ?」

>>68
芳佳「ちょ、ちょっと待ってください。ハルトマンがまだ……」

芳佳「ちょ、ちょっと待ってください。ハルトマンさんがまだ……」

バルクホルン「……」ジーッ

エーリカ「……」


ミーナ「ひとつだけ言わせて。だるまさんがころんだは決して訓練ではありません」

芳佳「……」

サーニャ「ミーナ隊長。どうしてそんなことを言うんですか?」

ミーナ「これは事実です」

ルッキーニ「中尉は嘘ついてたのー?」

ミーナ「そういうことになります」

エイラ「嘘なのか」

ペリーヌ「だ、騙された……。このわたくしが……」

ミーナ「残念だけど、訓練だと説明したのはハルトマン中尉が与えられた任務を放棄したからよ」

サーニャ「どうしてそうなるのですか?」

ミーナ「だからね」

美緒「宮藤たちにこれは訓練だと思い込ますことができれば、ハルトマンが任務を放棄しているとは誰も思わないから、か」

芳佳「そ、そんな……そんなこと……」

シャーリー「まぁ、ハルトマンが悪いなぁ。追求の仕方には問題あるけど」

芳佳「そんなこと……」

リーネ「芳佳ちゃん……?」

芳佳「そんなこと!! 私は信じません!!」

バルクホルン「なに……?」

エーリカ「……」

ミーナ「待って、宮藤さん。本当のことなの。坂本少佐も扶桑の遊戯にそのような効果はないと言っているわ。そうよね?」

美緒「ないだろうな。仮にあったとしてももっと効率のいい訓練がある」

芳佳「私たちが少し失敗しただけで効果がないと決め付けるのはどうかと思います。今日から始めた訓練なのにすぐに成果がでるわけないじゃないですか!!」

ミーナ「え……」

リーネ「落ち着いて、芳佳ちゃんっ」

ペリーヌ「そうですわ。あなた、中佐に口答えするつもりですの?」

芳佳「ミーナ中佐でも言って良いことと悪いことがあります!!」

ペリーヌ「な……!! なんて上官に対して失礼なことを!! あなた、501にいることができなくなりますわよ!!」

芳佳「別に構いません。それでハルトマンさんが守れるなら」

リーネ「そ、そんなこと言わないで!!」

芳佳「ごめん、リーネちゃん。リーネちゃんと別れたくなんてないけど、でも、それでも、守りたいものがあるの」

リーネ「うぅ……」

ミーナ「宮藤さん、冷静になりなさい」

芳佳「私は冷静です」

ミーナ「貴方たちからも何か言ってあげて。もう気が付いているでしょう?」

ルッキーニ「あたしも芳佳の言うとおりだとおもう!!」

サーニャ「……私もハルトマンさんを信じます」

バルクホルン「ま、待て!! お前たち!! 全てハルトマンの嘘なんだぞ!! 騙されているんだ!!」

ルッキーニ「嘘かどうかはこれから訓練していったらわかるじゃん」

サーニャ「決断はそれからでも遅くないと思います」

エイラ「だな。中尉は確かにだらしのないところもあるけど、つまんない嘘をいうようなことはないだろ。私の知ってる中尉なら堂々と訓練を放棄するはずだ」

サーニャ「ええ。私たちに嘘をついてまでそんなことはしないはずです」

芳佳「みんな! ありがとう!!」

エーリカ「……」

バルクホルン「(くっ……。どこでこんなにも信頼を得ていたんだ……エーリカのやつめ……)」

美緒「ふむ」

ペリーヌ「坂本少佐はどうお考えですか?」

美緒「そうだな。宮藤たちの言い分も一理ある」

ミーナ「美緒!!」

美緒「ハルトマンの素行に問題があるのは間違いないが、それでも後輩や新人を裏切るような真似だけは絶対にしないはず」

エイラ「戦闘中では誰よりも仲間のことを気にかけてる中尉がそんなことをするわけがないんだ」

サーニャ「うん」

リーネ「みんな……」

ペリーヌ「うーん。そうですわね。坂本少佐の言うとおりですわ。中尉がそのような行動にでること自体、不可解ですもの。リーネさんもそう思いますでしょ?」

リーネ「え? あ、はい」

ペリーヌ「中佐。ここは中尉のことを信じてみるのも良いかもしれません」

ミーナ「で、でも……」

エーリカ「……」

バルクホルン「(エーリカ……どう出るつもりだ……?)」

シャーリー「それで、宮藤たちはどうしたいんだ?」

芳佳「もちろん、これからもこのだるまさんがころんだ訓練を続けます!! そしてハルトマンさんと同じぐらい集中力を身に付けたいです!!」

ルッキーニ「がんばろー!! よっしかー!!」

芳佳「がんばろうね、ルッキーニちゃん!!」

ルッキーニ「あいっ!!」

サーニャ「私も時間があるときは参加させてね?」

芳佳「私だってサーニャちゃんと一緒にだるまさんがころんだをしたいぐらいだもん! 一緒にやろうね!」

サーニャ「嬉しい」

エイラ「私も参加するからな! いいな、宮藤!!」

芳佳「はいっ! 私もエイラさんとがいいです!!」

ペリーヌ「仕方ありませんわね。わたくしも参加いたします」

エイラ「嫌なら別にいいんだぞー」

ペリーヌ「いやとはいっていないでしょう!?」

芳佳「リーネちゃんもするよね!?」

リーネ「うんっ」

美緒「全員が同じ目標に向かい努力する。はっはっはっは。良いチームになったな」

ミーナ「トゥルーデ、どうする?」

バルクホルン「ここまで言われてはな。奴のために腕によりをかけた料理が無駄になったと腹を立てていた自分が小さく思えてきた」

ミーナ「ここで全てを否定しても無意味ね」

バルクホルン「それに、ハルトマンに少しでも良心というものがあるのなら、宮藤たちに対して罪悪感を抱くはずだ」

シャーリー「お前がこんな追い詰め方しなけりゃ、ハルトマンも苦しまなかったのにな」

バルクホルン「奴の自業自得だ」

芳佳「シャーリーさん!! このハンバーガー、食べても良いですか!?」

シャーリー「いいけど、どうするんだ?」

芳佳「動けないハルトマンさんに差し入れをしようと思って」

シャーリー「ああ。バルクホルンがずっと見てるから、ハルトマンは動けないんだよな」

芳佳「はい。だから、行ってきますね」

シャーリー「おう」

芳佳「ハルトマンさーん!! ごはんをもっていきまーす!!」テテテッ

サーニャ「はむっ。おいふぃ」モグモグ

>>76
芳佳「シャーリーさん!! このハンバーガー、食べても良いですか!?」

芳佳「シャーリーさん!! このハンバーガー、持って行っても良いですか!?」

エーリカ「宮藤……」

芳佳「しーっ。私が壁になりますから、その間に食べてください」

エーリカ「……」

芳佳「どうぞ」

エーリカ「私さ……」

ルッキーニ「ちゅーいー!!」

エーリカ「ルッキーニ……」

ルッキーニ「にゃは! これも食べていいよ!」

エーリカ「……」

ルッキーニ「絶対に大尉に負けないでね!」

芳佳「私たち応援してます!!」

ルッキーニ「でねでね、また明日だるまさんがころんだをしよー!! あたしも芳佳もがんばるから!!」

芳佳「いつかバルクホルンさんたちをびっくりさせましょう!!」

ルッキーニ「そのためには今は大尉と中佐に勝たなきゃ!! 集中力が上がるんだって認めさせないと!!」

エーリカ「……そうだな。トゥルーデとミーナにここで勝っておかないと、説得力がないもんね。見ててよ。絶対に勝つから。私を信じてくれた、みんなのために」

エーリカ「……」キリッ

バルクホルン「ハルトマン、やる気か」

ミーナ「あんなに真剣な表情のハルトマンを見るのは久しぶりね」

美緒「面白いものが見れそうだな」

シャーリー「これ、遊びだよな?」

リーネ「そうだと思うんですけど」

ペリーヌ「子どものための遊戯でも歴戦のウィッチがやれば、実戦と似た雰囲気になりますわね」

エイラ「息を飲むよな」

サーニャ「ふぁふふぉふぁんふぁん、ふぁんふぁっふぁふぇ」モグモグ

芳佳「ハルトマンさんなら絶対に勝てます!!」

ルッキーニ「やっちゃえー!!」

エーリカ「(もう遊びじゃない。これは正真正銘の戦闘だ)」

バルクホルン「こちらも本気でいくしかないな。このままハルトマンを勝たせてしまえば、宮藤たちは永遠に騙されたままだ」

ミーナ「風紀を守るためにも、勝ちにいかなくてはいけないわね」

バルクホルン「――いくぞ、ハルトマン!!」

美緒「待て、バルクホルン」

バルクホルン「止めるな、少佐。これは私とハルトマンとの真剣勝負なんだ」

ミーナ「そうよ。幾ら美緒でもこればかりは……」

美緒「お前たちのだるまさんがころんだはあまりにも本来のそれから逸脱しすぎている。折角、ハルトマンがやる気になっているのだぞ」

バルクホルン「だから、なんだというんだ」

美緒「最後ぐらい正規のだるまさんがころんだに則り、やってはくれないだろうか」

バルクホルン「なに……」

美緒「鬼役は1人。怒鳴ったり、タイミングを大幅にずらしたり、長時間睨み続けたりすることはなしだ」

バルクホルン「だが、少佐! それではハルトマンを捕まえられない!!」

シャーリー「ハルトマンが悪いのは認める。でも、お前は言ったよな。これは訓練の成果を見るためだって」

バルクホルン「む……」

シャーリー「なら、見てやればいい。お前の集中力がハルトマンより劣っているっていうなら卑怯な上に姑息な手段で勝てばいい」

バルクホルン「貴様……」

美緒「自信がないのか?」

バルクホルン「私を誰だと思っている。いいだろう。扶桑の規定でやってやる」

芳佳「これでハルトマンさんにも勝機がありますよ!!」

ルッキーニ「やっちゃえーちゅーいー!!」

エーリカ「ありがとう」

エイラ「応援してるからな。絶対に勝つんだぞ」

サーニャ「ふぁふふぉふぁんふぁん、ふぁんふぁっふぇふふぁふぁい」モグモグ

リーネ「サーニャちゃんもがんばってくださいって言ってます」

ペリーヌ「坂本少佐の手前、諸手をあげて貴女を支持することはできませんが、エーリカ・ハルトマン中尉の勇姿を見せてください」

エーリカ「分かってる。絶対に勝つ。みんなの期待を裏切ったり、できないもんね」

芳佳「流石、ハルトマンさん!!」

ルッキーニ「かっちょいー!!」

エイラ「いけるぞ。中尉なら絶対にいける」

サーニャ「ふぁい」

エーリカ「トゥルーデに勝って証明してみせるよ。午後から夕方までの時間に無駄なんて一秒たりとも無かったことをね」キリッ

芳佳「そうです!! 私たちは遊んでたわけじゃない!!」

ルッキーニ「訓練してたんだー!!」

バルクホルン「お前とは一度真剣に勝負をしてみたいと思っていたところだ」

エーリカ「奇遇だね。私もだ」

バルクホルン「お前のことは頼れる相棒であると思っている。そして良きライバルであるとも思っている」

エーリカ「それは思ったことないなぁ」

バルクホルン「心の奥底ではウルトラエースであるお前に嫉妬していた部分があったかもしれない。だからこそ、私はジェット・ストライカーという魔物にも取り付かれた」

シャーリー「あれは私の売り言葉を買っただけだろ」

エーリカ「どーでもいいけどアレはもう使わないでよ」

バルクホルン「始めるぞ、ハルトマン。私はお前よりも劣っていることはないんだ。それをここで実証してみせる」

エーリカ「いいよ。トゥルーデの本気をこの身で受けたいなぁとは常日頃から考えてたし」

バルクホルン「気が合うな」

エーリカ「ホントにね」

ミーナ「トゥルーデ、本当にいいの? 仮にもハルトマンは世界トップクラスのウィッチよ?」

バルクホルン「だからどうした。エーリカ・ハルトマンのことは私が世界で一番よく知っている。実力があろうが関係ない」

ミーナ「……そうね。貴女に託すわ。501の風紀を」

バルクホルン「見ていてくれ、ミーナ。501の未来は私が守ってみせる」

美緒「――では、これより『だるまさんがころんだ』一本勝負を執り行う!! 双方、用意はできているか!?」

バルクホルン「いつでも構わない」

エーリカ「こっちもいいよ」

美緒「うむ。両者、見合え!!」

バルクホルン「……」

エーリカ「……」

美緒「はっけよい……」

芳佳「え!?」

リーネ「扶桑ではそういう始め方なんだ」

ペリーヌ「なんとも不思議な掛け声ですわね。どういう意味が込められておりますの?」

エイラ「面白いなー」

芳佳「違います!! 私も初めて聞きました!! あれは相撲で使うんです!!」

美緒「のこった!!」

バルクホルン「だーるーまー」

エーリカ「うりゃぁぁぁああ!!!!!」ダダダダダッ

シャーリー「速いな。ああいうのを見ると体が疼く」

ルッキーニ「にゃはー、あっと言う間にタッチだー」


バルクホルン「さーんー」

エーリカ「(もらったぁぁ!!!)」

バルクホルン「がころんだっ!!!」

エーリカ「……っ」ピクッ

バルクホルン「……」

エーリカ「……」


ミーナ「動かないわね」

エイラ「中尉の能力なら余裕だな」

サーニャ「私もそう思うわ。……はむっ」モグモグ

芳佳「手に汗握る戦いだね、リーネちゃん!」

リーネ「え!? あ、うん! そうだね! ドキドキするよぉ」

美緒「よし、次!!」

バルクホルン「だるまさんが」

エーリカ「うりゃぁああああ!!!」

バルクホルン「ころ」

エーリカ「……」ピタッ

バルクホルン「んだ!!」

エーリカ「(ふっ……。トゥルーデじゃ、私には絶対に勝てないよ)」

バルクホルン「(ハルトマンめ。安全圏で止まっているな。このままジワジワと歩を進めていくつもりか。このままでは……)」


美緒「ハルトマンの才能か。やつは既にコツを掴んでいるようだな」

ペリーヌ「コツとはなんでしょうか?」

美緒「動けないという状況で一番困るのはなんだと思う?」

ペリーヌ「それはやはり不安定な体勢、でしょうか」

美緒「その通りだ。片足立ちの状態で動きを止められたら一大事だ」

ペリーヌ「そういえば中尉はバランスを保ちやすい体勢を維持してるような……」

美緒「これはバルクホルンの分が悪そうだ」

ペリーヌ「奥の深い駆け引きですわ」

ミーナ「このままいけばハルトマンの勝利は揺ぎ無いわね。まずいわ」ピコンッ

エイラ「お、中佐が大尉に手を貸すつもりみたいだぞ」

サーニャ「どうしてそんなことをするんですか?」

ルッキーニ「ひきょーだー!!」

芳佳「やめてください!! そんなことをするミーナ中佐なんて見たくありません!!」

ミーナ「道を開けなさい」

芳佳「いやです!!」

エイラ「この防衛ラインは絶対に死守するんだ」

ミーナ「退きなさい!! これは命令です!!」

サーニャ「絶対に退きませんっ」ギュゥゥ

ルッキーニ「うにゃー」ギュゥゥ

ミーナ「くっ……!! 離れなさい!! 離れて!!」

芳佳「ハルトマンさんの邪魔はさせません!!!」ギュゥゥ

ミーナ「もー!!」

リーネ「……」

バルクホルン「(考えろ……!! 考えるんだ!! このままでは宮藤たちが不憫でならない!! なんとかしてハルトマンに勝たなくては……!!)」

バルクホルン「(だが、本場のルールは鬼役が不利過ぎる。ハルトマンの進撃をどうやれば止めることができるんだ……)」

エーリカ「(もうすぐ射程距離だね。次で終わりそう)」


シャーリー「うーん……」

リーネ「シャーリーさん、少しいいですか?」

シャーリー「どうかしたか?」

リーネ「今回の一件なんですけど、ハルトマンさんが悪いんですよね?」

シャーリー「みたいだなぁ。午後からの任務を全部すっぽかしてるみたいだし」

リーネ「芳佳ちゃんを落胆させるのも嫌ですけど、ハルトマンさんが反省しないままなのもあまりよくないような……」

シャーリー「ハルトマンは反省自体殆どしないしなぁ」

リーネ「どうにかならないですか?」

シャーリー「リーネはあれか。宮藤たちには勘違いさせたまま、ハルトマンに反省してもらいたいって思ってるのか」

リーネ「それが理想ですけど、難しいですよね」

シャーリー「いや、集中力を高めるためにしているゲームってことを考えれば……」

リーネ「何か良い作戦がありますか?」

バルクホルン「だるまさんがころんだ!!!」

エーリカ「……」ピタッ


美緒「あと数ミリでハルトマンの手がバルクホルンに届くな」

ペリーヌ「決まりですわね」

美緒「うむ。あれではどんなに素早く唱えたとしても間に合わん」

芳佳「ぅわーい!! ハルトマンさんの勝ちだー!!」

ルッキーニ「やったね!! よしかぁー!!」

エイラ「まぁ、中尉が負けるわけないけどな」

サーニャ「バルクホルンさんには悪いけれど……」

ミーナ「そんな……501の風紀が……」

シャーリー「――って、作戦なら集中力が切れたって言い訳もできるし、宮藤たちも納得するだろうし、ハルトマンの面目も守れる」

リーネ「でも、ハルトマンさんはそれに引っかかりますか?」

シャーリー「大丈夫さ。あいつ、本番ではカッコイイだろ?」

リーネ「はいっ。私もハルトマンさんのこと、信頼しています」

シャーリー「私もだ。だからこそあいつなら引っかかってくれるさ」

エーリカ「(これで終わったね。チェックメイトだ)」

バルクホルン「(完敗か……。ふっ。やはりハルトマンには――)」

リーネ「大変です!! 上空にネウロイがいるとシャーリーさんが!!!」

バルクホルン「なんだと!!!」

エーリカ「どこ?」

リーネ「向こうです!!」

バルクホルン「どこにいるんだ!!」

エーリカ「肉眼で探すより出撃したほうが早いって。いくよ、トゥルーデ」タタタッ

美緒「総員、出撃準備だ!!」

芳佳「はいっ!!」

ルッキーニ「うじゃ!」

ペリーヌ「それらしき影は見当たりませんが」

エーリカ「お先っ」

バルクホルン「まて、ハルトマン!」

シャーリー「わるい、わるい。見間違えだ。ネウロイじゃなくてただの雲だったよ」

芳佳「雲ですか? はぁー、びっくりしたぁ」

リーネ「うん。ホントに」

バルクホルン「どうやったら雲とネウロイを見間違えるんだ!!!」

シャーリー「そういうこともあるだろ」

バルクホルン「あっては困る!!!」

エーリカ「なーんだ。ネウロイじゃないんだ。よかったじゃん」

バルクホルン「人騒がせな奴め」

シャーリー「で、だるまさんがころんだはどうなったんだ?」

バルクホルン「ん?」

エーリカ「え?」

シャーリー「おいおい、ハルトマン。すげー動いてるなぁ。負けか?」

エーリカ「なにいってるの? これは負けなんかにならないよー」

美緒「うむ。もう一度仕切りなお――」

ミーナ「いいえ。ハルトマン中尉の負けよ」

芳佳「えぇぇぇ!? どうしてですか!?」

ミーナ「この訓練の目的はなんだったかしら?」

芳佳「集中力を高めるためのものです」

ミーナ「そう。その集中力を切らせてしまい、動く必要のなかったときに動いてしまった。明らかにハルトマンの負けよ」

エーリカ「どうしてだー!!」

ルッキーニ「なんでそんないじわるするのー!!」

芳佳「ネウロイが本当に来ていたかもしれないじゃないですか!!」

ミーナ「それも集中し、状況を良く見ていれば判断できたこと」

芳佳「そんなのわかるわけ……」

ペリーヌ「サーニャさんがいますわ。ネウロイが近づいてきたら、真っ先にサーニャさんが反応するはず」

芳佳「あ……」

エイラ「あ……ぅ……」

サーニャ「い、一応、ネウロイなんて現れていませんって言ったの……」オロオロ

エイラ「少佐の声でサーニャの声がかき消されたんだ」

美緒「……私が悪いのか?」

サーニャ「そ、そういう意味ではないんですっ」

ミーナ「ハルトマンはネウロイが近づいてきてはいないことを知ることは十分にできたはず」

エーリカ「……」

ミーナ「にも関わらず、あなたは動いてしまった。集中力を切らせてしまったようね」

エーリカ「そうだけど」

ミーナ「よって、この訓練に集中力を高める効果はない、と判断せざるを得ません」

バルクホルン「ミーナの言うとおりだ」

芳佳「ちょ、ちょっと待ってください!! それはおかしいと思います!!」

ルッキーニ「そうだ!! そうだ!! 中尉は別に切らしてないもん!!」

エイラ「そうだ。ネウロイが来たって言われて誰よりも早く出撃しようとしたのは中尉だ。それはネウロイの襲撃に対して常に集中してるってことじゃないか」

サーニャ「私もそう思います」

ペリーヌ「む……。エイラさんの言うことも一理ありますわね……」

ミーナ「裏をかえせばネウロイという単語に過剰反応し、状況を把握しないまま行動していることにもなります。とても集中力があるとはいえないわ」

エイラ「屁理屈じゃないかー」

ミーナ「とにかくこの訓練では集中力は向上しませんっ」

ルッキーニ「うぇぇぇん!! ちゅうい、がんばったのにぃー!!」

エーリカ「みんな、ごめん。ミーナにこういわれたら、私たちは従うしかないよ」

芳佳「ダメです!! ハルトマンさんは何も間違っていないじゃないですか!!!」

ルッキーニ「てってーこうせんだぁー!!!」

エーリカ「もういいよ。宮藤、ルッキーニ。私のために怒ってくれるだけで、十分だ」

芳佳「ハルトマンさん……」

ルッキーニ「中尉はあたしたちとだるまさんがころんだ、できなくなってもいいのぉ?」

エーリカ「いつでもできるって。まぁ、これからは非番のときぐらいしかできないだろうけど」

芳佳「諦めないでください!! 私、なんとかミーナ中佐を説得します!!」

ルッキーニ「中尉はあたしたちを守るために一番早くネウロイと戦おうとしてくれただけなのに!!」

エイラ「本当にいいのか? とりあえずシャーリーに怒ったほうがよくないか?」

シャーリー「あ、わるい」

エーリカ「いいよ。みんなが戦わないで済んだだけで、私は嬉しいから」

サーニャ「ハルトマンさん……」

エイラ「こんな台詞、いってみたいなぁ」

芳佳「そんな……ハルトマンさんを守れなかったら……意味がないのに……」

ミーナ「今後、訓練の時間を利用した『だるまさんがころんだ』は禁止とします。いいですね?」

リーネ「了解っ」

芳佳「私、その命令には――」

エーリカ「みやふじっ」ギュッ

芳佳「むぐ……」

エーリカ「もういいって。ありがとう」

芳佳「でも……でも……!!」

エーリカ「また暇なときにしよう」

芳佳「……はい」

美緒「すっきりしない結末だな」

ペリーヌ「中尉が少し不憫ですわね」

バルクホルン「少佐、少し話がある。こちらにきてくれ」

美緒「ああ」

ルッキーニ「こうなったらやけぐいだー!!! はむ……はむはむ……!!!」

エイラ「ふぁふぁふぃふぉふぁふぇふぇふぁふー」モグモグ

格納庫

ミーナ「――と、いうわけなの」

美緒「……」

シャーリー「ハルトマンは午後の任務を全部飛ばして、宮藤たちと遊んでいた。これは間違いないんだろ?」

エーリカ「だから、訓練を――」

バルクホルン「ほう? まだ舌がまわるのか、ハルトマン。良い根性だな」

ミーナ「貴女は軍人なのよ。世界の空を守るために課せられた任務を放り出すなんて、何を考えているの?」

エーリカ「別にいーじゃん。ネウロイだって来そうになかったんだからー」

バルクホルン「そういう問題ではない!!! 貴様が任務を放棄しているときにネウロイの襲撃があればどうするつもりだ!!」

エーリカ「ネウロイがきたら、戦うに決まってる」

バルクホルン「そういう問題でもなぁぁい!!!」

シャーリー「ハルトマン。今回はトレーニングをサボっただけかもしれないけどさ、もしお前が監視や哨戒任務を放棄したらどうなると思うんだ」

エーリカ「その任務は真面目にやるもん」

バルクホルン「この――」

美緒「待て、バルクホルン。頭ごなしに叱ってやるな」

バルクホルン「少佐!! これは軍人として有るまじき行為なんだぞ!!! ここで叱らずしていつ叱るんだ!!」

美緒「黙れ」

バルクホルン「うっ……」

ミーナ「美緒……」

シャーリー「こわっ」

美緒「さて、ハルトマン」

エーリカ「なに?」

美緒「毎日の鍛錬もネウロイと戦うための重要な任務だ。それを何故、放棄し宮藤たちと遊んでいた?」

エーリカ「遊んでないってば」

美緒「お前の中では訓練だったのだな?」

エーリカ「そうだよ」

美緒「誰のための訓練だったんだ?」

エーリカ「みんなのための」

美緒「最初は宮藤とルッキーニの二人が滑走路で遊んでいた。そこにお前とサーニャが参加したのだったな」

エーリカ「うん」

美緒「なるほど。ハルトマンは最初から任務を放り出し、遊ぶつもりだったのか」

エーリカ「なんでそうなっちゃうのさ」

美緒「では聞こう。夜間哨戒専従班のサーニャと昼間からどうして行動を共にしている?」

ミーナ「そういえば……」

シャーリー「ホントだ」

エーリカ「……」

バルクホルン「答えろ、ハルトマン。もしや、サーニャを連れ出したのか」

エーリカ「……」プイッ

バルクホルン「おまえ!!」

美緒「落ち着け、バルクホルン。ハルトマンは訓練だと言い張っている。そこに嘘はないのだろう」

バルクホルン「少佐!! 何を言っているんだ!!!」

美緒「仲間が傷つくのを誰よりも嫌うハルトマンが、サーニャを無理矢理昼間から連れ出すとは考えにくい」

シャーリー「まぁ、寝不足で夜間哨戒になんて出したら、危ないしな」

美緒「サーニャに何か言われたのだろう?」

エーリカ「いわないっ」

滑走路

サーニャ「ハルトマンさん、遅いわ……」

芳佳「色々、言われてるのかなぁ」

エイラ「中尉は悪いことしてないのになぁ」

ルッキーニ「だよねー」

リーネ「それは……」

サーニャ「あ、もしかして……私のことかも……」

ペリーヌ「なにかありまして?」

サーニャ「実は、昨日ハルトマンさんに言ったことがあって」

芳佳「何を言ったの?」

サーニャ「お昼にみんなと遊んでみたいって」

リーネ「それでハルトマンさんはなんて?」

サーニャ「バルクホルンさんに怒られるからダメだって」

ペリーヌ「そうですの。怒られるからという理由が気になりますが、一応窘めてはくれたわけですわね」

サーニャ「そのあと、一緒に訓練をするなら怒られないかもって言ってくれたんです」

リーネ「もしかしてサーニャちゃん……」

サーニャ「うん。それでも構いませんって」

ペリーヌ「なら、今日は中尉と共に行動を?」

サーニャ「はい。それで芳佳ちゃんとルッキーニちゃんを見つけて……」

芳佳「そうなんだ!」

サーニャ「それでハルトマンさんが――」


サーニャ『あ、楽しそうなことしてる……』

エーリカ『あれは訓練の一種と見たね』

サーニャ『あれが訓練なんですか?』

エーリカ『何をしているのかは知らないけど、訓練に違いない。訓練じゃなくても訓練にしちゃえばいい。それでトゥルーデには怒られない』

サーニャ『あの、いいんですか? もし芳佳ちゃんたちがただ遊んでいるだけなら……』

エーリカ『私を信じてよ、サーニャん。あれは遊びながらでもできる訓練だから。いこっ』


サーニャ「そう言ってくれて……。途中までは遊んでいるだけだと思っていて怒られる覚悟はしていたんだけど、実際に訓練だったから驚いて……」

ルッキーニ「へー。中尉は始める前から訓練になる遊びだって気づいてたんだー。しゅごーい」

リーネ「そうか……サーニャちゃんには非番の日なんて殆どないから……ハルトマンさんは無理に……」

エイラ「サーニャからお願いしちゃったこととはいえ、昼間に連れ出したら少佐と中佐には怒られそうだな」

ペリーヌ「それにだるまさんがころんだの件も聞かれているはずですわ。坂本少佐も訓練になるとは知らなかったみたいですから」

芳佳「坂本さんも知らなかったんですか!?」

ルッキーニ「おぉぉ!! ますます中尉すごーい!!」

エイラ「だなぁ」

ペリーヌ「慧眼ではありますからね」

リーネ「いかなきゃ……」

芳佳「どうしたの、リーネちゃん?」

リーネ「私、ハルトマンさんに謝らないと!!」

芳佳「え?」

リーネ「行ってくるね!」

芳佳「待って、リーネちゃん!!」

サーニャ「エイラっ」

エイラ「よくわかんないけど私たちも行くか」

格納庫

バルクホルン「いいから答えろ!! 何が目的でサーニャと行動していたんだ!!」グニーッ

エーリカ「いふもんふぁー」

バルクホルン「言え、ハルトマン!!」

シャーリー「やめてやれよ。ハルトマンの顔が面白いことになってるだろ」

ミーナ「はぁ……」

美緒「はっはっはっは」

ミーナ「笑い事ではないのよ?」

リーネ「ハルトマンさん!!」

芳佳「失礼します!!」

エーリカ「ふぇ?」

バルクホルン「リーネ、宮藤。どうしたんだ?」

芳佳「あの、リーネちゃんがハルトマンさんに謝りたいって」

エーリカ「ふぁんふぇ?」

リーネ「ハルトマンさん! ごめんなさい!! 私、全然気が付きませんでした!!」

エーリカ「ふぇー?」

バルクホルン「何の話だ?」

リーネ「私、もう一度ハルトマンさんと訓練がしたいです!」

エーリカ「ふぇーふぇ……」

シャーリー「おいおい。それはもう訓練とは認められないんだ」

リーネ「いいえ! 訓練です!!」

美緒「ほう? 根拠はあるのか?」

リーネ「あ、ありますっ」

バルクホルン「説明してみろ」

ミーナ「(あの引っ込み思案なリーネさんが……)」

芳佳「集中力を高める訓練じゃないの?」

リーネ「それもあるけど、本当はもっと大事な訓練をしてたはずなの」

芳佳「大事な……?」

美緒「それはなんだ?」

リーネ「……みんなとの絆を深める訓練、とか、なんて……ないですか……?」

バルクホルン「それは通常の訓練で十分――」

美緒「そうか。日頃、生活の時間が真逆のサーニャは我々と会話することもあまりないからな」

リーネ「そ、そうです!」

芳佳「うん。サーニャちゃんとたくさんお喋りできるのは一緒に夜間哨戒するときぐらいだもんね」

リーネ「そうそう!」

美緒「ふむ。互いの絆はチームで戦う以上、実戦では生死を左右するからな。当たり前のことだが深ければ深いほど良い」

バルクホルン「待て。サーニャは既に我々と十二分に連携が――」

エイラ「そうだったのか」

サーニャ「ハルトマンさん……私のことをそこまで……気にかけて……」

ペリーヌ「まさか、そのような意図もあったなんて」

ルッキーニ「にゃはー、中尉、やっさしー」

ミーナ「みんな……!」

バルクホルン「私の話をだな――」

エイラ「中尉!!」

エーリカ「ごめん」

エイラ「……私に隠れて、こっそりサーニャと仲良くしてたのは面白くないけど、ありがとう」

エーリカ「あれ? 怒ってないの?」

エイラ「別に。サーニャを大事にしてくれるなら、特に文句はない」

サーニャ「ありがとう。エイラ」

エイラ「でも、サーニャは……その……私と……あれ……だかんな……」モジモジ

芳佳「ハルトマンさんばっかりずるいですよー。私だってサーニャちゃんと色々したいことあるのにー」

サーニャ「そ、そうなの? 言ってくれたら、いつでも……芳佳ちゃんとなら……」

エイラ「やめろー!! みやふじー!!」

ルッキーニ「あたしもサーニャと一緒にあそびたーい!!」ギュゥゥ

サーニャ「うれしい……」

エイラ「あぁ……サーニャ……。いや、でも、サーニャは可愛いもんなぁ。しかたないよな……」

美緒「うむ。これもハルトマンとの訓練の成果か」

バルクホルン「待ってくれ、少佐!! 元々サーニャは皆に慕われていただろう!!」

美緒「それこそが訓練の結果ということも否定はできんだろう」

バルクホルン「いや、しかし……」

ペリーヌ「坂本少佐の言うとおりですわ。サーニャさんがここまで慕われているのは絆を深める訓練を日頃から繰り返していたからでは?」

シャーリー「そうなのか?」

エーリカ「まぁ、サーニャんはちょっと苦労したよね。人見知り激しいから」

シャーリー「ふぅん」

サーニャ「いつもありがとうございます」

エーリカ「気にしなくていいよ」

ミーナ「美緒、きちんと罰を与えないと、示しがつかないわよ」

美緒「ここでハルトマンに罰を与えてもいいことはないだろう。宮藤は反発するだろうし、サーニャは自分を責める可能性がある」

ミーナ「そうかもしれないけど」

美緒「ハルトマンはハルトマンなりにチームをまとめようとしてくれている。それを咎めてどうする」

ミーナ「わかりました」

美緒「わかってくれたか。はっはっはっは」

ミーナ「もう……」

ルッキーニ「ねえねえ、サーニャとの絆を深める訓練だから、だるまさんがころんだはこれからもしていいんだよね?」

美緒「そうだな」

芳佳「いいんですか!? わーい!! わーい!!」

ルッキーニ「明日もしゅるぞー!!」

ペリーヌ「負けませんわ」

リーネ「私も参加したいな」

芳佳「一緒にやろうよ!!」

美緒「ただし!! 条件がある!!」

エイラ「条件?」

美緒「全員が参加できる時間帯のみとする」

芳佳「となると……」

サーニャ「夕方ぐらいから夜間哨戒任務が始まる間……」

エーリカ「それだと大体30分ぐらいだね」

ルッキーニ「えー? みじかーい」

美緒「これは絆を深めるための訓練なのだろう? 1人でも参加できないのであればやる必要がない」

ペリーヌ「少佐の言うとおりですわね」

芳佳「そっかぁ。でも、30分でもできるならいいよね」

リーネ「いいと思うよ」

サーニャ「毎日、やりましょう」

エイラ「だな」

芳佳「でも、毎日同じことしてたら飽きちゃうかもしれないね」

美緒「そのときは種目を変えればいいだろう」

ルッキーニ「少佐は何がしたい?」

美緒「そうだな。かくれんぼとかどうだ? 缶蹴りでもいいがな」

芳佳「缶蹴りですか。いいですね」

ペリーヌ「それはどういうルールですの?」

芳佳「えっと……」

バルクホルン「……」

シャーリー「何かいいたそうだな」

バルクホルン「何もない。全く。何が訓練だ。結局、遊んでいるだけではないか」

シャーリー「それこそが訓練だって、少佐はいいたいんだろ。全員と何かをする。それは戦闘訓練だけじゃないってことさ」

バルクホルン「ふん。馬鹿馬鹿しい」

エーリカ「トゥルーデ、どこいくのー?」

バルクホルン「宿舎に戻るんだ!!」

シャーリー「流石、頭がかたいカールスラントの軍人だな」

エーリカ「困っちゃうよね」

ミーナ「貴女も同郷でしょう」

芳佳「よーし!! 明日はみんなで缶蹴りにしましょう!!」

ペリーヌ「つまり、缶を蹴り、それを探している間に他のかたが隠れるというルールですわね」

リーネ「遠くに缶を蹴るのがポイントみたいですね」

ペリーヌ「優雅さの欠片もありませんわね」

サーニャ「明日が楽しみね」

エイラ「サーニャと一緒に缶を蹴ろう」

美緒「はっはっはっは。お前たち、どこに隠れても無駄だぞ」

芳佳「どうしてですか?」

美緒「この魔眼があるからだ」キリッ

芳佳「あ、そうですか」

ルッキーニ「思い切り蹴り飛ばして海に落ちちゃっても拾いにいかなきゃダメなの?」

芳佳「そこまで蹴るのはちょっと」

ミーナ「美緒」

美緒「分かっている」

ミーナ「お願いね」

シャーリー「おーい、おまえらー。料理残ってるから、食べてくれよー」

サーニャ「たべます」

ルッキーニ「わーいっ!! たべりゅー!!」

エーリカ「いっそげー!!」

美緒「待て、ハルトマン」グイッ

エーリカ「おぉ。なにさ?」

美緒「こっちにこい」

エーリカ「なんで?」

美緒「……いいから来い」

エーリカ「もしかして、拷問……?」

美緒「ここなら誰にも見られないだろう」

エーリカ「え、やだ……少佐、こんな人気のないところに私を……」

美緒「ふざけるな」

エーリカ「悪かったって。任務をしなかったことは謝る。でもさ」

美緒「お前には感謝している」

エーリカ「……それ、ミーナに頼まれた台詞とは違うんじゃない?」

美緒「ミーナには秘密にしてくれ」

エーリカ「にひぃ。おっけー」

美緒「とはいえ、任務を丸ごと放棄したのだ。お咎めが一切なしではな」

エーリカ「はいはい。基地の周り何周したらいい? 2周?」

美緒「いや、お前には過酷な任務を言い渡す」

エーリカ「えー?」

美緒「当然だ。軍人としてそこはちゃんとしておかないとな」

エーリカ「なにすればいいの?」

美緒「奴を説得してこい。明日までにな」

滑走路

芳佳「ふぇー!? ふぁふふふぉふんふぁんふぁふぁんふぁふぃふぁふぃんふぇふふぁ!?」モグモグ

リーネ「芳佳ちゃん、お行儀悪いよぉ」

ペリーヌ「宮藤さんも今言いましたが、大尉は参加できないのですか?」

シャーリー「できないというか、あの様子じゃしないだろ」

エイラ「それだと訓練できないんじゃないか。全員参加が必須条件なんだろ」

サーニャ「そんな……」

芳佳「ふぁふふふぉふんふぁんふぉふぇっふぉふふぃふぁふぉふ!!」

ペリーヌ「説得しましょうって、大尉がわたくしたちの説得に応じるとお思いですの?」

ルッキーニ「むりかもー」

シャーリー「中佐から命令してくれるとかはないんですか?」

ミーナ「命令して強制的に参加させることはできるけれど、それで満足なのかしら?」

芳佳「ダメです!! バルクホルンさんがイヤだっていうなら、ダメです!! でも、できれば全員で缶蹴り訓練がしたいです!!」

ミーナ「全員、揃えばいいのだけど」

サーニャ「バルクホルンさん……」

バルクホルン・エーリカの部屋

バルクホルン「……」

エーリカ「だーれだ?」ヒョコッ

バルクホルン「それをするなら私の目を手で覆え。脇下から顔を覗かせてどうする」

エーリカ「明日、みんなでする訓練、トゥルーデも参加するよね」

バルクホルン「すると思っているのか」

エーリカ「でも、1人でも欠けると訓練はしないって少佐が言ってたよ」

バルクホルン「しるか」

エーリカ「宮藤、がっかりするだろうなぁー」

バルクホルン「ふん……」

エーリカ「ルッキーニ、なきじゃくるだろうなー」

バルクホルン「……」

エーリカ「サーニャ、悲しむだろうなぁー。エーリカ、泣いちゃうだろうなぁー」

バルクホルン「ええい!! うるさい!!! 独り言を口にだすな!!!」

エーリカ「だってぇ」

滑走路

シャーリー「やるぞ」ピコンッ

ルッキーニ「いけー! シャーリー!!」

シャーリー「ぶっとべぇぇぇぇ!!!」カンッ

ルッキーニ「おぉぉぉ! もう見えなくなったー」

シャーリー「こんな感じで缶を蹴れば良いのか?」

芳佳「魔法はひかえてください!!」

ペリーヌ「少佐には申し訳ないですが、あまり行儀のいい遊戯とはいえませんわね」

リーネ「缶を蹴りますからね」

美緒「私もよく缶を蹴っていたものだ。懐かしい」

ミーナ「そうなの」

エーリカ「おーい」

美緒「様子はどうだった?」

エーリカ「無理そうだね。明日になってみないとわからないけど」

サーニャ「みんなで訓練……できたらいいな……」

翌日 夕刻 滑走路

エイラ「この缶でいいだろ?」

芳佳「はい! バッチリです!」

リーネ「あとは……」

シャーリー「バルクホルンのやつ、こないつもりだな」

美緒「ハルトマン」

エーリカ「部屋にはいなかったよ」

美緒「そうか……」

ミーナ「どうするの。全員参加が必要条件なのでしょう」

美緒「ううむ」

エイラ「大尉抜きで訓練やるか」

サーニャ「ダメよ。これは全員が参加しないと意味がないもの」

エイラ「そうだけどさ」

ルッキーニ「たいいー!!! 一緒に缶蹴りしよー!!! たいいー!!!」

エーリカ「トゥルーデー、あーそーぼー」

芳佳「バルクホルンさーん!! でてきてくださーい!!」

サーニャ「バルクホルンさーんっ」

バルクホルン「大声を出すな。見っとも無い」

ルッキーニ「にゃはー!! 大尉だー!!」

芳佳「わーい! バルクホルンさーん!」

バルクホルン「私がここに立っていれば文句はないだろう」

美緒「なるほど。観客に徹するわけか」

バルクホルン「参加していることには変わりない」

芳佳「えー? バルクホルンさん、缶蹴りしないんですか?」

ルッキーニ「たのしいのにー」

バルクホルン「このような訓練の必要性がまだ理解できなくてな」

芳佳「一緒にしましょう!!」

ルッキーニ「絶対にしたほうがいいよー」

バルクホルン「さっさと始めろ!」

エーリカ「まぁまぁ、トゥルーデがここに来てくれただけでもいいじゃん。みんなー、はっじめよー」

ペリーヌ「トネール!!!!」カンッ

美緒「各自散開!!」

芳佳「でやぁぁぁぁ!!!」テテテッ

ルッキーニ「にげろー」

シャーリー「結構飛んだなぁ。これなら幾らでも距離を稼げそうだ」

エーリカ「わーい」

エイラ「缶は向こうのほうに飛んでいったからな」

サーニャ「ええ。分かっているわ」ピコンッ

リーネ「サーニャちゃんが鬼役ってことは……」


バルクホルン「……」

ミーナ「複雑そうね」

バルクホルン「こんなことをしなくても私たちは既に深い絆で結ばれていると思うがな」

ミーナ「確かにそうね。だけど、ハルトマンはそう思わなかった」

バルクホルン「あいつはただ遊ぶ口実が欲しかっただけだろう」

ミーナ「そうかもしれないわね」

サーニャ「きゅうじゅうきゅう。ひゃーくっ」

サーニャ「……」キョロキョロ

サーニャ「そこの茂みの中に芳佳ちゃん。そこの木の上にルッキーニちゃん」

芳佳「どうしてわかったの!?」

ルッキーニ「あにゃー!!」

サーニャ「秘密。倉庫の陰にシャーリーさん。ハンガーのシャッター裏にハルトマンさん」

シャーリー「おっかしいなぁ。もしかして魔法使ったのか?」

エーリカ「サーニャん、ずるーい」

サーニャ「あとは――」

リーネ「ふっ……!!」ダダダダッ

サーニャ「リーネちゃん、見つけた」

リーネ「やっぱり遅かった……」

エイラ「サーニャぁぁ!!」ズサァァ

サーニャ「エイラ、みーつけた」ギュッ

エイラ「あー、しまったぁ。サーニャは人を見つけるのが得意だから仕方ないな」

ルッキーニ「もうみんなみつかったのー?」

シャーリー「いや、ペリーヌと少佐が残ってる」

リーネ「サーニャちゃんならもう見つけてると思いますけど」

サーニャ「……」ピコンッ

芳佳「どうして簡単に見つかったんだろう」

ルッキーニ「サーニャ、缶のところから動いてないのにね」

エイラ「不思議だよな」

サーニャ「……」

芳佳「エイラさん、サーニャちゃんは今、何をしているんですか?」

エイラ「索敵でもしてるんじゃないか?」

芳佳「もしかして、近くにネウロイが!?」

サーニャ「(ノイズが発生していて、ペリーヌさんと坂本少佐の位置が特定できないわ。どうして……)」


ペリーヌ「どうやらサーニャさんを撹乱させることには成功しているようですわ」バチッ

美緒「感謝するぞ、ペリーヌ。お前の力はやはり有能だな」

ペリーヌ「そんな、わたくしの力なんて微々たるものですから」

サーニャ「(微弱な電流が流れていて索敵しにくくなっているわ……)」

美緒「3……2……1……」

ペリーヌ「今ですわ!!」ダダダッ

芳佳「あ、ペリーヌさん」

サーニャ「しまった……!」

ペリーヌ「トネール!!!」カンッ

サーニャ「あ……」

美緒「各自散開!!!」

エーリカ「いそげー!!」

ルッキーニ「やったー!! 解放だー!!」

ペリーヌ「少佐の戦略に隙などありませんわ。このままサーニャさんは缶を拾い続けて終わりですわね。おーほほ」

サーニャ「……」ウルウル

エイラ「サーニャ?」

サーニャ「うっ……ん……」ポロポロ

ペリーヌ「え……あ……サーニャさん……ど、どうかしまして……?」

エーリカ「ペリーヌがサーニャんをなかしたー」

ルッキーニ「ペリーヌ、なにしてるのー!?」

ペリーヌ「な、何もしていませんわよ!!」

エイラ「よしよし。サーニャ、ずっと鬼役が嫌なんだよな?」ナデナデ

サーニャ「う……ぐすっ……」

ペリーヌ「それがルールなのでしょう? 負け続ける限りは仕方ありません」

リーネ「ペリーヌさん。魔法は使わないほうが」

ペリーヌ「サーニャさんだって使っているではありませんか」

芳佳「ペリーヌさんっ」

ペリーヌ「……」

サーニャ「うっ……んっ……」

ペリーヌ「わ、わかりました! 魔法は使いません! これでいいですわね!?」

サーニャ「はいっ」


ミーナ「楽しそうね。こういう時間も必要なのかもしれないわね」

バルクホルン「……」

ルッキーニ「リーネ、はっけーん。にゃはー」

シャーリー「これでゲームセットだな。もう一戦しとくか」

リーネ「はぁ……はぁ……。もうだめ……です……」

エイラ「考えてみれば任務のあとだもんなぁ。これぐらいでいいんじゃないか?」

サーニャ「私はこれから夜間哨戒」

ペリーヌ「全く。幼稚な人たちですわ」

エーリカ「ペリーヌってさぁ、トネール!!って言わないと缶蹴れないの?」

ペリーヌ「べ、別に、あれは……場を盛り上げようと、あえて……」

美緒「はっはっはっは。充実した30分間だったな」

芳佳「はい! とっても楽しかったです!!」

ルッキーニ「明日はなにしゅる?」

芳佳「何がいいかな? これから話し合おうよ!

ルッキーニ「うんうん!!」

バルクホルン「下らない。先に食堂に行く」

ミーナ「あ、トゥルーデ。……仕方ないわね」

ルッキーニ「結局、中佐と大尉は見てるだけだったね」

ミーナ「私はバルクホルンを1人にはできなかったからよ」

芳佳「残念です。みんなでやるからこそ意味があるのに」

サーニャ「うん」

エーリカ「ここに顔を出してくれただけでもマシだって」

シャーリー「そう思うしかないな」

ミーナ「バルクホルンも分かってはいるはずよ。こういった時間も必要だということは。ただそれを訓練と称してしまうから素直に参加できないのではないかしら」

ペリーヌ「とはいえ、非番のときのみでは全員が参加することはできませんし」

美緒「それ以外では訓練や他の任務で時間は詰められているからな。かといって休憩にしてしまうと30分は長い」

芳佳「このままだとバルクホルンさんだけがいつも見てるだけになっちゃいますよ」

リーネ「そうなるとミーナ中佐もまた……」

ミーナ「これだと逆に絆を深めるどころか溝が深まる可能性もあるわね」

芳佳「そんなぁ! なんとかしましょう!!」

エイラ「いい方法ってあるか?」

エーリカ「そうだなぁ。私の見立てだと、時間の問題のような気もするけど」

通路

バルクホルン「はぁ……」

芳佳「バルクホルンさんっ」

バルクホルン「宮藤か。食事はどうした。軍人にとって食事をとることも大事な任務だ」

芳佳「バルクホルンさんを探していたんですよ。先に行ったはずなのに中々こないから」

バルクホルン「私は先に摂取した。お前たちが遅かったからな」

芳佳「……」

ルッキーニ「芳佳ー!! 大尉、みつかったー!?」

芳佳「こっちこっち!!」

バルクホルン「私は先に部屋へ戻る。皆には謝っておいてくれ」

芳佳「ちょっと待ってください」ギュゥゥ

バルクホルン「離せ」

ルッキーニ「大尉、こっちきて」

バルクホルン「なにかあるのか?」

芳佳「はい! これからみんなで明日は何をするのか考えるです。バルクホルンさんも参加してください」

>>130


芳佳「はい! これからみんなで明日は何をするのか考えるです。バルクホルンさんも参加してください」

芳佳「はい! これからみんなで明日は何をするのか考えるんです。バルクホルンさんも参加してください」

食堂

シャーリー「明日は無難に『だるまさんがころんだ』でいいんじゃないか? それともリベリオンの『レッドライト・グリーンライト』にするか?」

エイラ「そんなのがあるのか。それでも面白そうだなぁ」

ペリーヌ「坂本少佐がおられるのですから、ここは扶桑のものに統一すべきではないかと」

シャーリー「それだと飽きるかもしれないだろ」

美緒「カールスラントならではのものはないのか?」

ミーナ「そうね。トップフシュラーゲンなんてものもあるけれど」

シャーリー「それ知ってます。確か、お菓子がもらえるんですよね」

ミーナ「ゲームをクリアできたらの話ね」

シャーリー「やりたいな。ルッキーニなんて喜ぶだろうし」

エーリカ「少佐。聞きたいことがあるんだけど。はっけよい、のこったってなに?」

美緒「ん? それは扶桑の格闘技、相撲に用いる掛け声でな」

エーリカ「スモウ?」

芳佳「ほら、会議は白熱してます!!」

バルクホルン「お前たちは……」

エーリカ「トゥルーデ、きたんだ。ほら、ブリーフィングにはちゃんと参加しないと。訓練の内容を決めてるんだから」

バルクホルン「あのな……」

芳佳「何をするか決まったの?」

リーネ「まだ具体的にはなにも。カールスラントのあそび……じゃなくて、訓練をしようかって意見も出たんだけど」

芳佳「わぁ、いいね! 私も興味あります!!」

バルクホルン「……」

美緒「はっはっはっは。観念しろ。こういうときは素直に受け入れたほうがいい」

バルクホルン「この際、はっきり言わせてもらう」

美緒「なんだ?」

バルクホルン「私はその訓練には反対だ。それなら自由時間と呼称してくれたほうがいい」

美緒「いいのか? 本来なら30分もの休憩はないが」

バルクホルン「構わない。いちいち訓練と言われるほうが癪に障る」

エーリカ「やったー。話がわかるー」

ルッキーニ「自由時間だー!!」

ミーナ「貴方たちは常に自由にしているような気もするけれど」

バルクホルン「以上だ。私は部屋に戻らせてもらう」

芳佳「明日からバルクホルンさんも参加してくれますよね?」

バルクホルン「見るだけだ」

芳佳「参加してください!」

ルッキーニ「参加しろー!」

エイラ「サーニャも悲しんでたぞ。大尉だけ仲間はずれになっちゃうからって」

バルクホルン「私は反対しているんだぞ」

美緒「自由時間なのだからバルクホルンの自由にさせてやれ」

芳佳「それでも1回ぐらいは!!」

バルクホルン「くどい」

ルッキーニ「もったいなーい。大尉はだるまさんがころんだ、すっごく上手だったのにー」

バルクホルン「何を言い出すんだ」

ペリーヌ「あのハルトマン中尉を追い込んでいたのですから、かなりの腕前でした。やはりウィッチとしての能力が高いと全てにおいて秀でているのでしょうか」

リーネ「きっとそうです」

バルクホルン「馬鹿馬鹿しいことをいうな!! 私は部屋に戻って寝る!!」

翌日 夕刻 滑走路

バルクホルン「リーネ、今、小指が動いたぞ。失格だ」

リーネ「え!?」

バルクホルン「私の目は誤魔化せないぞ」

ルッキーニ「うじゅ……」ピクッ

バルクホルン「ルッキーニ!! 僅かに右目を動かしたな!! 失格だ!!」

ルッキーニ「えー!? それもだめなのー!?」

バルクホルン「当たり前だ!!」

芳佳・美緒「……」

バルクホルン「流石は扶桑の者だな。石造のようだ」

エーリカ「トゥルーデが鬼役だと難易度跳ね上がるね」

ミーナ「昨日は参加しないって言っていたのに。しれっと参加してるものね」

エーリカ「トゥルーデだって息抜きしたくなったんじゃない? まぁ、今日だけだからな!!って何度も言ってたけど」

ペリーヌ「くやしいですわ……。あの宮藤さんより先に失格になるなんて……!!」

バルクホルン「だーるーまーさーんーがー……ころんだっ!!」

美緒「そろそろ時間だな」

バルクホルン「もう30分も経過したのか」

ルッキーニ「えー!? もっとあそびたーい!!」

ミーナ「息抜きは終了です。サーニャさんは夜間哨戒の準備を」

サーニャ「了解」

ミーナ「みんなも任務が残っているでしょう。持ち場に戻って」

エーリカ「やだー、えんちょーしてー」

ペリーヌ「駄々を言わないでくださいな」

シャーリー「楽しい時間ってのはあっと言う間なのさ」

リーネ「あはは。そうですね」

シャーリー「だから、延長してください!!」

美緒「ならん」

エイラ「さーて、私も夜間哨戒の準備を始めるかー」

芳佳「うぅ……。本当に短いなぁ。物足りないような……」

バルクホルン「……」

深夜 バルクホルン・ハルトマンの部屋

バルクホルン「……」カキカキ

エーリカ「ん……? トゥルーデ、こんな夜遅くになにしてるの?」

バルクホルン「起こしてしまったか。すまない」

エーリカ「だから、なにして――」

バルクホルン「ジークフリート線を越えるな」

エーリカ「だって、気になるもん」

バルクホルン「気にしなくてもいい。それに明日、分かる」

エーリカ「そうなんだ。なら、いいや」

バルクホルン「早く寝ろ。私は非番だが、お前は通常任務だろ」

エーリカ「えー? トゥルーデ、お休みなのー? なんでー。ずるーい。私もお休みするぅ」

バルクホルン「ふざけるな!!! それでもカールスラント軍人か!!!」

エーリカ「ぶー。おやすみっ!」

バルクホルン「おやすみ」

バルクホルン「(できたぞ。これで……)」

翌日 格納庫

ルッキーニ「にゃっにゃにゃー!!」

シャーリー「おーい。ルッキーニ、真面目にしないと鬼大尉に怒られるぞー」

バルクホルン「……」

シャーリー「なぁ!?」

ルッキーニ「うにゃ!? 大尉!!」

バルクホルン「……」

シャーリー「お、お前、今日は非番だろ? 自主訓練か?」

ルッキーニ「この丸いテーブル、なぁに?」

バルクホルン「ここを読めばわかる」

シャーリー「えーと……?」

『ウィッチ限定であのゲルトルート・バルクホルンとアームレスリングができる! 勝てばバルクホルンから夢のような御褒美が!』

『さぁ、君もバルクホルンに挑戦しよう!』

バルクホルン「よし。こい」グッ

シャーリー「え? あ、ああ! 望むところだ!」グッ

食堂

ルッキーニ「うぇぇぇぇん!!! うぇぇぇぇん!!!」

シャーリー「いてぇ……」

美緒「どうした?」

ルッキーニ「たいいにうでおられたぁー!!」

美緒「そうか」

シャーリー「少佐!! なんでもっと驚かないんですか!? これは一大事――」

美緒「私もお前たちと同じ目にあっているからだ」

シャーリー「しょ、少佐……」

エーリカ「みんなも、やられたんだ」

エイラ「いてぇ……右手がやられた……」

シャーリー「くそ。カールスラントの軍人は手加減を知らないのかよ」

美緒「それにしてもバルクホルンの褒美とやらが気になるな」

ペリーヌ「はい。再戦したいところですが……この傷では当分、無理ですわね……」

エーリカ「(トゥルーデ……ここまでしてもみんなと遊びたかったんだね……)」

バルクホルン「……」

芳佳「あれ? バルクホルンさん、ここで何してるんですか? それにこの丸テーブルは……?」

バルクホルン「ここを読めば分かる」

芳佳「え?」

『ウィッチ限定であのゲルトルート・バルクホルンとアームレスリングができる! 勝てばバルクホルンから夢のような御褒美が!』

『さぁ、君もバルクホルンに挑戦しよう!』

バルクホルン「よし。こい」

芳佳「え? あ、は、はい」グッ

バルクホルン「レディ……」グッ

バルクホルン「ゴォッ!」ダンッ!!!

芳佳「え……」

バルクホルン「私の勝ちだ。また来るといい。私は時々こうしている。ちなみに御褒美の内容は勝つまで秘密だ。知りたければ私に勝て」

芳佳「あ、はい。がんばります」


おしまい。

芳佳「今日こそバルクホルンさんを倒してみせる!」 - SSまとめ速報
(http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1390456857/)につづく

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年05月24日 (日) 10:03:01   ID: s-c3KaWr

話は良いんだがキャラがなぁ……
サーニャはそんな事で泣かんでしょ
最後があの腕相撲のssに繋がってるわけね。乙

2 :  SS好きの774さん   2015年05月24日 (日) 12:34:49   ID: CP7Kglz4

そうなのか?

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