何かSS書いてみます。(23)

お題ください。

プリン「……」

豆腐「……」

 広大な平地(机)に佇む二つの半固形物……。

 互いに対峙し、睨みあう。だがこの表現は正しくない、何故なら両者に目などないからだ。

豆腐「今日の俺は硬度が違う……絹から木綿に生まれ変わった」

プリン「だからどうした……生憎生きている界隈が違うんでそこの所疎くてよくわからん」

豆腐「ふん……だから貴様は甘いのだ、頭にカラメルなどかぶってなどいるからそうなる」

豆腐「ふむ、いいだろう。ならば闘って変化のほどを思い知らせてやろう」

 豆腐は乗っていた皿を一蹴し、一気にプリンとの距離を詰める。

激突--!!プリンは豆腐の突進を直で受ける!!

プリン「おっと……」

 だがプリンにダメージはない、プリンが豆腐より強度が勝っていたからなのか……。

 いやそれは違うーー!プリンには弾力性が備わっている、これにより体を柔軟に変化させ
豆腐の攻撃を受け流し、ダメージを軽減させたのだ!

プリン「貴様……その程度の一撃で私をいなせるとでも思ったか?」

 プリンに表情はない、だがその姿は豆腐を嘲笑しているように見える。
 
 豆腐はプリンに激突するも、大した成果もなく空しくも反動により宙を舞っているだけであった。

 これは、大いなる隙。プリンにとって豆腐を仕留める絶好のチャンス!!

プリンは力を溜め込む、乗っている丸皿の上に体を落とし込み運動状態を変化させ
空中へと飛び立つ準備をする。

プリン「ぬん!!」

 満を持してプリンは飛び立つ!向かうは憎き異文化の刺客ーーー豆腐!

 豆腐の歴史は長くそれは誇らしいものであろう。
日本の家で長く食卓に居座り、かつそれは子供にも大人にも愛されてきた。

 プリンは悔しかった、洋菓子の世界で長く主役を飾ってきた自分が
日本の食事の場に先に出られないことに……

プリン「何故私が後で貴様が先なのだーーーーー!!!」

 プリンの誇りは深く傷つけられていた。プリンは優先順位というものに重きを置いており
食後に食べられるという事にコンプレックスを抱いていたからだ。

 食事の形式上、デザートは後ということを人気順だとプリンは勘違いしていたのだ。

プリンと豆腐がぶつかるーー半固形物同士の衝突!!!

豆腐「くっ……」

 さらに高く打ち上げられた豆腐……最高点にまで達し空高く浮き上がった状態が
自由落下へと移り変わる!

ベチャ!

 地上へと身を打ち付けた豆腐は、無残にも体の一部を失う事となった。

無理もない、豆腐は10寸ほどの高さから落ちたのだ。その身がすべてひしゃげてもおかしくはない。

プリン「ちっ……まだ息があるか」

プリン「そら、立ち上がれるものなら立ち上がって見せよ木綿豆腐」フハハ

豆腐「あぁ……俺は何度でも立ち上がろう」

豆腐「食卓には……私が必要なのだ」

プリン「そのわりには最近あまり人気がないようだが?」

プリン「お前はもうメジャーなモノではなくなった、大人しく半固形物食材の座から降板しt」

豆腐「ふっ……」

プリン「何がおかしい……」

豆腐「なるほど、お前は人気を勝ち取ろうと闘っていたわけか」

プリン「!!!だったら何だと言うのだ」

豆腐「いや……本気になって闘おうと思っていた自分がバカだと思ってね」

豆腐「お互い闘っていたのに同じ舞台で闘っているわけではなかったのだな」

プリン「なんだ……人気ではなくお前は何のために闘おうとしていたのだ!!」

豆腐「皆に、栄養を届けるため!!」

プリン「……何?」

豆腐「考え抜かれた栄養バランスを保つために、私は皆の血となり肉とならなければならないのだ!!」

プリン「ッ……!!」

プリン「嘘をつけ!!!貴様は優先されているからそんな軽口を叩けるのだ!!」

豆腐「?」

プリン「この間の事を思い出してみろ」

プリン「今私達が滞在しているこの家の子供が、夕飯前に私に手を差し伸べた」

プリン「だがそれは払われた、その子の母親によって」

「夕食前に、そんなの食べちゃいけません!!」

プリン「聞けば夕飯……つまりお前が優先されるらしいではないか!!」

プリン「食卓で優々とたたずんでいるお前を妬んだ……何故私が優先されないんだと!」

プリン「今でもそうだ!人気は逆転したと思ったがやはりお前が優先される!妬ましい!」

豆腐「プリンよそれは違うぞ、人気だったから私が優先されたのではない」

豆腐「お前は自分の人気を取る事ばかり考え、人気の元である人間の体の事は何も考えていないのだな」

プリン「なんだと……?」

豆腐「甘いものは消化を遅くする……つまり先にデザートを食べると」

豆腐「他の物を食べるのが億劫になり、人体の栄養バランスが狂う」

プリン「だから何だと言うのだ……」

プリン「私は皆の笑顔を祈って頑張ってきたのだ!!優先されないのはおかしいのだ!!」

豆腐「わからないのか?私もそうだが他の栄養がある食材を食べなくなると」

豆腐「人は虚弱体質になり、病気にかかりやすくなる……そして最悪死んでしまう」

豆腐「それこそ……お前の求める笑顔が失われるのではないか?」

プリン「……!!!」

プリン「お前は俺の前に立ちはだかった、すべての食材を倒そうとする俺の前に」

プリン「対抗心を燃やした、同じ半固形物同士どちらが優れているか競おうと思ったからだ」

プリン「だがお前が立ちはだかったのは……人を守るため」

豆腐「そうだ、だから俺はお前を止めようとしたのだ」

豆腐「だが……理由も気づかず止めようとした俺は愚かだった、反省する」

プリン「豆腐……」

豆腐「俺はお前みたいにとろけるような口どけ、甘さは持ち合わせていない」

豆腐「お前は大衆をその味で喜ばせることが出来るのだ」

豆腐「俺もお前を倒すーーつまり皆の笑顔を奪おうとしていたのかもしれないな」

プリン「……」

「ママー、お腹空いたーお菓子食べていい?」

「ダーメ、夕飯の後よ」

プリン「……行けよ」

豆腐「あぁ」

プリン「他の食材と力を合わせて皆の栄養バランスを整えろよ」

プリン「じ、じゃないと俺がいる意味がなくなるんだからな」

豆腐「では、食後は頼んだぞ」

豆腐「皆を、甘さで笑顔にしてやれ!!」

プリン「あぁ、それは俺にしか務まらないからな!!」

 あぁ……俺はなんてくだらない事に固着していたのだろう。
 順番なんて関係ない、いらないものなんてない。
 いらないものなんてないから……俺達の真価があるんだ。

END

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