穂乃花「太陽みたいなあなたと」 (152)

きんいろモザイクのSSです。ほのカレ。一応続編。

 注意!
 ・R-18
 ・更新遅い

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【きんモザ】穂乃花「カレンちゃんに告白されちゃった……」 - SSまとめ速報
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 ――おはようございます。松原穂乃花です。

 いろいろあった数日間。
 今思い返しても、私の人生の中でも大きなイベント続きだったその日々。
 私は思いがけない告白をされた。
 でも私は怖くて、自分のことが大切で臆病になって、中々返事ができないでいた。
 それでも、笑って困って、泣きそうになって。
 みんなの助けを得てようやく勇気を持った私は、私の想い人である大切な人へ気持ちを告げた。
 そしてその人とお付き合いするようになったんだけど……これからどうなるんだろう?
 楽しみでもあるし、不安でもある。
 けど後悔はない。好きな人と一緒にいられるのだから。

穂乃花「――って言っても」

 朝。
 これまでのことを回想していた私は、深くため息を吐く。
 部活の朝練中、私の頭の大部分を支配しているのは、彼女のこと。
 部活を終えた今もそれは変わらず。どうすればいいのか絶えず考えている。
 なにしろ、誰かと付き合うのなんてこれが初めて。加えて同性。どうすればいいか分かる人間なんていないだろう。
 だから、この不安も当然だと分かるのだけど……。

穂乃花「無理だよねー……。気にしないなんて」

 制服に着替え、部活の更衣室から校舎前を経由。教室へ向かう。
 ちょうど登校時間の最中ということもあり、校舎の前には生徒たちが大勢歩いている。

穂乃花「……まぁ、いつか慣れると思うしかない、かな」

 独りごち、私はその中へ。日常の最中へと戻っていく。
 今日もまた、学校で一日が過ぎていく。何度繰り返したか分からない、小さなころからの日常。

???「ホノカー!」

 ――けれど、今それは仮初とも言える。
 日常を生きている私。それも確かに存在していて、私の根っこはそんな、平凡な高校生なのだろう。
 でも、彼女――。

穂乃花「カレンちゃん! おはようー」

 ――カレンちゃんがいる時は違う。

 私は松原穂乃花。
 どこにでもいるような、照らされた舞台を眺める女子高生。
 そこには輝く五人の主役がいて、私はただ彼女達を羨ましく思うだけで、見ているだけだった。
 今もそうだ。私はただ、近づいてきてくれた彼女の光りに入り込んだだけ。
 カレンちゃんから、みんなから元気を勇気を貰って、輝いているだけ。

 ――だから多分、これからの物語は私が自分で主役になる話なのだと思う。
 いつまでもみんなに心配をかけていられない。泣き言を言ってられない。
 だって私はみんなのことが好きで、彼女のことを愛しているから。

カレン「ホノカ! なんで旅行断ったんデスカ!?」

穂乃花「うっ。だ、だって恥ずかしいから……」

 ――前途は多難だけど、とりあえずは頑張ってみよう。
 せめてカレンちゃんは幸せにできるように。


【今日の更新はここまでです】

 朝。教室。

カレン「ホノカは消極的すぎデス」

 荷物を置いて私の席の前へ来ると、カレンちゃんは言った。

穂乃花「そ、そうかな?」

カレン「そうデス! それにただの旅行ですから、気にする必要もありまセン」

穂乃花「むむむ……」

 そう言われると私、昨晩はカレンちゃんの家族と旅行と聞いていけない妄想をしてしまったような。
 カレンちゃんと同室で、夜は……みたいな。
 いやでも、やっぱり恋人なんだから、そういう想像しちゃうのもおかしくないよね。

穂乃花「でもカレンちゃんのご家族と一緒にっていうのは恥ずかしいし……」

カレン「将来的に大切なことデス」

 きっぱりと答えるカレンちゃん。
 確かに挨拶することは大切で、私も欠かす気はないんだけど、まだ早いような気が。
 でもカレンちゃんのためだし……恥ずかしさは許容しよう。うん。文化の差かもしれないし。
 じゃあ次の心配事で――

穂乃花「それじゃあ、カレンちゃん。私に……その、何かしたりしないかな?」

 顔を赤くさせ、私はもじもじとしながら問いかける。

カレン「シマスね」

カレン「――って、いきなりなに言ってるんデスカ!?」カァァ

穂乃花「す、するの?」

カレン「シマセン! 健全な旅行デス!」アワワワ

穂乃花「そうなんだ……」ションボリ

 早いことは自覚していたけどこう断言されると、ちょっとショック。

カレン「……ホノカは、したいデスか?」オソルオソル

穂乃花「ええ!? わ……私は、まだ、早いかな? なんて」

二人『……』

 赤面した二人が、もじもじと視線を逸らし、ちらちらと合わせ――沈黙。
 なんだろうこれ。まさかカレンちゃんまで黙ってしまうなんて。

忍「カレン。穂乃花ちゃん。旅行の話ですけど、どうなって――あれ?」

 そこへ忍ちゃんがやって来た。
 いつもみたいにのほほんとした笑顔で、私たちの近くへやって来ると首をかしげる。
 私たちはそこでハッと我に帰り、忍ちゃんに挨拶するんだけど……ふと私は気づく。
 ……忍ちゃん、旅行って言った?

カレン「今ホノカを説得中デス」

忍「そうなんですか? 穂乃花ちゃん、都合が悪かったり……?」

穂乃花「ちょっ、ちょっと待って。忍ちゃんも行くの?」

忍「そうですよ? あと、アリスと綾ちゃん、陽子ちゃんも」

 いつものメンバーである。

穂乃花「……」

 私は腕を枕に机へ突っ伏した。
 て、てっきりカレンちゃん一家と、私だけの旅行だと思っちゃったよー! 恥ずかしい!
 家族旅行だなんて書いてあるから!

忍「あれ? 穂乃花ちゃん? カレン。穂乃花ちゃん都合が悪いみたいですし予定日合わせますか?」

カレン「イエ。恥ずかしいだけらしいデス」

忍「あらあら。穂乃花ちゃんはカレンちゃん意識しまくりですね」ホホエマー

カレン「エヘヘヘ」

 その通りなんだけど、なんだけど……!
 恥ずかしさで頭を抱える私。その私の肩に優しくポンと手を置かれた。

綾「……カレンって情報少ないから、勘違いしてしまうわよね」

 綾ちゃんだった。
 なんだか最近、綾ちゃんとも結構仲良くなったような気がする。

綾「どうせ付き合うことが決まってから安心して、旅行の話を思い出してすぐメール打ったんでしょ」

カレン「う。よく分かりマスね、アヤヤ……」ゴクリ

忍「まさか読心術」

綾「じゃないわ」

 流石綾ちゃん。対応に慣れている。

穂乃花「みんなもいるなら、気が楽かな……。カレンちゃん、私も行くよ」

カレン「本当デスカ!? ふーっ、安心シマシタ」

綾「良かったわね、カレン」

カレン「ハイ! ホノカと離れ離れになってしまうかと」

忍「ラブラブですねー」

カレン「もうラブラブイチャイチャデスヨ」

穂乃花「カ、カレンちゃん!」

カレン「事実じゃないデスカー。ホラホラ」

 にやにやと笑ったカレンちゃんは私の横へ。身体を寄せてぎゅっと私の腕を抱きしめる。
 無邪気な、それでいて照れがあるカレンちゃんの表情。付き合う前には見せたことのない新たな顔に、私はどきりとする。
 さっき照れていたけど、今もまだ恥ずかしいらしい。
 スキンシップは激し目な彼女だけど、付き合うことになって私のことを意識してくれているのだろう。そう思うとすごく嬉しい。
 ずっと憧れていたカレンちゃんが、身も心も私の手の届くところに……。すごく、幸せ。

穂乃花「事実だけどぉ……」テレテレ

綾「甘いわね……穂乃花」

 ――自分でもそう思う。

 お昼休みがやってきた。

カレン「ホノカー!」

 と同時にカレンちゃんがやって来る。
 まだ先生が出ていない、授業が終わって刹那と言ってもいいような機敏さでカレンちゃんは私の席の前へ。
 そして手に提げた袋を軽く掲げ、クールに笑う。

カレン「今日は私がお弁当作ってキマシタ……フッ」

 ざわめく教室。
 クラスメイトの視線が集まる中、堂々と立つカレンちゃんは輝いて見えた。

穂乃花「本当に? 嬉しいなぁ」

カレン「今日のために頑張りマシタ。簡単なものデスケド」

穂乃花「それでも楽しみだよー。カレンちゃんの手料理だもん」

 カレンちゃんが手作りしてくれたお弁当……一体どんなものなのか。
 期待で胸が高鳴る。前の席の子が気を遣って退席。カレンちゃんはお礼を言ってからそこへ座ると、私の机の上に包みを開き、ランチボックスの蓋を外す。
 その中に入っていたのはサンドイッチだった。

カレン「どうぞ、ホノカ」

穂乃花「うん。ありがとう、カレンちゃん」

 ドキドキと、効果音が聞こえてきそうなほど緊張した様子で私のことを見つめるカレンちゃん。
 ランチボックスの中に入った、規則正しい形をした長方形のサンドイッチ。おかしなところは一つもなく、どれもすごく美味しそうだ。
 私は適当に一つ、手に取る。

穂乃花「いただきます」

 食べる前にカレンちゃんへ一言。
 そしてぱくりと4分の1ほど口の中に。
 しっとりとしたパンの食感。レタスに挟まれるようにして入っていたのは、ポテトサラダ。
 パンがあるからだろう。その味はちょっと強めで、胡椒のアクセントの中、マヨネーズがしっかりと主張する。
 パンにポテトやハム、レタスにきゅうり、たまねぎ。
 柔らかいだけでなく、歯ごたえもある楽しい食感に、まろやかな味。その中に、僅かな辛味があった。
 おそらく、カラシ。
 ポテトとパン。炭水化物と炭水化物の組み合わせは王道ではあるものの、やっぱりちょっとくどくなってしまう。
 それをカラシは自然に、野菜やパン、ハムと調和しつつ和らげてくれる。故に飽きがこない。

穂乃花「……うん、美味しい」

 私はカレンちゃんの手料理を、それはもう大事に味わった。
 私のお姫様が作ってくれたご馳走……ああ、にやけちゃいそう。


【今日の更新はおしまいです】

カレン「美味しいデスか?」

穂乃花「うん。とっても美味しいよー」

穂乃花「お店のものみたいに、しっかりしてるし」

カレン「良かったデス。パパに習った甲斐がありマシタ」

穂乃花(パパさんなの……?)

 なんて疑問を抱くけど、カレンちゃんの笑顔の前ではどうでもいいことで。

カレン「じゃあ私もいただきマス」

 カレンちゃんが一つ手に取り、ぱくりと食べる。
 もぐもぐと上品に食べ――

カレン「お、美味しいデス……!」

 心から驚いた。

カレン「私がこんなものを作れるなんて……愛の力デス」

穂乃花「あ、愛……。嬉しいな」

 私のために頑張ってくれたのだろうか。
 照れくさいけど、すごく嬉しい。

カレン「ホノカ、食べさせてくだサイ」

穂乃花「うんっ。カレンちゃん、あーん」

 二人でにこにこと笑いつつ昼食を進めていく。
 はじめは周りのことが気になっていたけれど、今はもうそれほど気にならなかった。

忍「あぁ……幸せそうで、こっちまで幸福な気分になりますね」

陽子「だねー。でも、見ていてちょっと恥ずかしいな」

アリス「すごく仲良しだからね」

綾「二人がキラキラして見えるわ……」

カレン「あ、みんなこっちに来てくだサイ! 美味しくできたんデスヨ」

陽子「なんか呼んでる?」

アリス「ホノカと二人で食べた方がいいのに……もう」

忍「ふふ、お付き合いしてもカレンはやっぱりカレンですね」

綾「行きましょう。カレンがふてくされちゃうわ」

陽子「だな。遠慮することもないか」

 誰に知られても、怖くない。
 それが分かっているのだから。




 授業が終わって、みんなと別れる。
 それから私はいつものようにテニス部の練習へと向かった。
 別れ際カレンちゃんが泣きそうになっていたりしたけど――まぁ、これは仕方ないこと。
 私は単身赴任する夫の如く集中し、練習に精を出した。

穂乃花「……今日も楽しかったなぁ」

 ――で、練習終わり。
 私は校門を通り、帰ろうとするのだけど、

カレン「ホノカ! 今帰りデスカ」

 何故かそこにカレンちゃんがいた。

久世橋「松原さん、お疲れ様です」ペコリ

 そして久世橋先生も――いや、なんで!?
 二人して校門を出たちょっと先で立っている。

穂乃花「あ、はい。ええと、久世橋先生、私なにかしちゃったり……?」

久世橋「はい? ――ぁ、そんなことないです!」クビブンブン

カレン「ちょっとお話してただけデス。ネー? クゼハシセンセー」

久世橋「そうです。松原さんには何も問題ないですよ」

 良かった……出待ちされるほどの悪事を知らずのうちに働いたのかと。
 ――それにしても、ちょくちょく久世橋先生と仲良さそうにしているのを見たことがあるけど……本当に仲良しさんなんだね。
 先生と生徒……ときめかないものがないと言ったら嘘ではない。
 久世橋先生は綺麗だし、最近は笑うようになって可愛いなぁとも思う。
 だからラブロマンス的な展開になってもおかしくは――
 いやでも、カレンちゃんが浮気みたいなことしたりしないよね。
 頭の中に浮かんできた、お姫様姿のカレンちゃんと、燕尾服姿の久世橋先生、という妄想をかき消すように私は頭をぶんぶんと振った。

穂乃花「か、カレンちゃん? 久世橋先生と何を話してたのかなー?」

カレン「えっ? エエト、それはその――」

 尋ねると、カレンちゃんは視線を泳がせた。
 あ、怪しい……! 疑ってって言ってるようなものだ。

久世橋「料理についての話ですよね。大切な人のために料理が上手くなりたいと」

カレン「ああっ! なんで暴露するんデスか!?」

久世橋「えっ? 駄目でしたか?」

 きょとんと首をかしげる久世橋先生。
 そんな彼女の前でカレンちゃんは恥ずかしそうに顔を赤くさせていて……。
 完全に勘違いだと気づいた私である。
 浮気だとか私はすぐ疑って……!

穂乃花「カレンちゃんごめん! 私を殴って!」リョウテヒロゲ

カレン・久世橋『なんで!?』

 二人に一斉につっこまれた。

穂乃花「だって、私……疑って……」

カレン「何を疑ってたか分かりマセンが、気にしてマセン」

穂乃花「カレンちゃん……! ありがとうー!」

久世橋「大切な人……」ボソッ

 涙を浮かべ安堵する私。眩しい笑顔を浮かべるカレンちゃん。
 そんな私達のことを見て、久世橋先生はぼそりと呟いた。
 無言で、何か思考している様子で顎に指を当て、私とカレンちゃんを交互に見る彼女。

久世橋「――はっ!?」

 二往復した辺りで、久世橋先生は突然ハッと目を見開いた。

久世橋(まさか、二人は……そういう関係なのでは)

 なんだろう。なんとなく、久世橋先生が真相に辿り着いたような気がする。
 けほんと一つ咳払い。久世橋先生は優しい目をして短く言う。

久世橋「私は二人のこと、応援していますよ。他の人からどう思われても」

カレン「先生……意味が分からないデスけど、ありがとうゴジャイマス。私、がんばりマス! どんなクレームがきても気にしまセン!」

久世橋「苦情さん……」

カレン「九条です」

 仲がいいんだろうなぁ、この二人。
 やりとりからそれをひしひしと感じられる。羨ましく思っちゃうくらいだ。


【今日は更新おしまいです】

【ゲーム色々やって遅れました】
【ちなみにカレンのお弁当はパパさんが味見した設定です】



久世橋「では九条さん、私はこれで」

カレン「ハイ。お話ありがとうゴジャイマシタ」

久世橋「いえ。――松原さん」

 久世橋先生の視線が私に向く。
 先生は優しげな目をして、一言。

久世橋「九条さん、あなたのことが大好きみた――」

カレン「わーっ! クゼハシセンセー、さよなら!」

久世橋「ふふっ、ではまた」

 いつもと立場が逆なような。
 慌てるカレンちゃんを見て楽しげに笑い、久世橋先生は校舎へと戻っていった。

カレン「いつもより優しかったデスけど、なんだかからかわれてる気がシマシタ……」

穂乃花「そうかな? 楽しそうだったけど」

カレン「絶対にからかってマス」ダンゲン

穂乃花「あはは……」

 でも先生、私達のことを祝福してくれているみたいだったし……からかってたとしても有り難い話だよね。

穂乃花「えっと、カレンちゃんって私のこと待っててくれたんだよね?」

カレン「あっ! そうデシタ! 待ってマシタヨ、マイハニー」

 思い出したように言って、ビッと人差し指と中指を額に当ててキザなポーズをとるカレンちゃん。
 その姿はさながら素敵な王子様のようで、いつものお姫様みたいなカレンちゃんもいいけど、こういうカレンちゃんもたまらなく好きだということに私は気づいた。早口語り。

穂乃花「ハ、ハニー……」セキメン

カレン「というわけで、一緒に帰りマショー、ホノカ!」

 照れる私の手を取るカレンちゃん。
 彼女はそのまま私の腕を抱くように身体をくっつけた。

穂乃花「ひえええ……っ。うん、付き合って一日目だからね」

カレン「あ、よかったら家に来マス? ご飯食べに」

穂乃花「記念に残るように――ええっ!?」

 間近にカレンちゃんが、その感触が腕に。
 ドキドキしながら答えていると、カレンちゃんが私の台詞を途中でぶった斬り、衝撃的な言葉を投げ込んだ。

穂乃花「カ、カレンちゃんの――お城に!?」

カレン「おうちデス」

 冷静なツッコミだった。

カレン「温泉の前に、紹介しておくのも悪く無いかとー」アッケラカン-

穂乃花「えええー……」

 ど、どうしよう。
 記念に残るどころじゃないよ。初日で反対されて破局もあり得るよ。駆け落ちバッドエンドすら見えてくるよ!

穂乃花「あの、カレンちゃん? さすがにそれは――」

カレン「え?」キラキラ

穂乃花「お邪魔します」キリッ

 間近から、見上げるふうに私を見るカレンちゃん。
 その破壊力は絶大で、遊園地の移動時みたいに悩んでいない私は即座に誘いを受けた。
 フッ。これが私のいつも通りだよ、みんな。

カレン「ワーイ! それじゃあさっそく出発デス! レッツゴー!」

穂乃花「カレンちゃんのお家、楽しみだなぁー」

カレン「フフ、それほど目立つとこもないデスケド、楽しみにしていてくだサイ」

 そういえば、カレンちゃんのお家ってどんな感じなんだろう?
 アリスちゃんを追うみたいに日本に来たって聞いたけど、やっぱりお姫様みたいな……?
 楽しみ――だけど。ご家族の人はどんな反応をするんだろう? ああぁ……不安。

カレン「私のお部屋にも……ご招待しちゃいマス」

穂乃花「それはちょっと早い気もするけど……えへへへへ」

 でもカレンちゃんがいるなら、なんとかなる気もするから不思議だ。
 決して邪な想いで恐怖心が和らいでいるとか、そんなことじゃなくて。

 カレンちゃんに案内されて移動。
 それから私はとある建物の前にやって来たんだけど――

穂乃花(立派なマンション……なのかな?)

 カレンちゃんが立ち止まったのは、一軒のマンション。
 綺麗で、大きくて、入り口は至って普通なオートロックの扉。
 見た目的にはそれなりな感じ。うん、カレンちゃんもやっぱり普通の女の子ということだよね。
 ちょっと安心したよ。

穂乃花「カレンちゃんの家は何階かな?」

カレン「全部デス」

穂乃花「全部かぁー」

 真顔できっぱり答えるカレンちゃん。
 私は何の疑問も持たず復唱し、前のマンションを見る。
 そして一拍を置き。

穂乃花「ええ!? 全部!?」

 つっこんだ。

カレン「ノリツッコミとは……ヨーコもうかうかしてられマセンネ」

穂乃花「そ、それはよく分からないけど……本当に全部なの?」

カレン「ハイ。部屋番号がいくつもないデスヨネ?」

 言われ、インターホンのような物を見る。
 確かに番号を入れるようなボタンがなかった。まるでこれ一つが、一つの家みたいに。

穂乃花「べ、別世界……!」

カレン「HAHAHA。よきにはからいたまえデス」

穂乃花「カレンちゃん本当にお金持ちなんだね。通りでキラキラしてるわけだよー」

カレン「――フフッ」

 感想を言うと、カレンちゃんが小さく笑みをこぼした。

穂乃花「あれっ? 私なにかおかしなこと……」

カレン「イエ、違いマス。シノ達もそうですケド――ホノカも変わらないなと思いマシテ」

穂乃花「変わらない?」

カレン「なんでもないデス。ほら、行きマショー」

 きょとんとする私の手を引っ張り、カレンちゃんはインターホンを操作。
 すぐにドアが開くと、カレンちゃんは迷うことなくエレベーターに乗り、スイッチを押した。
 この大きな建物の、どの階になにがあるか憶えているなんて……本当にここが我が家なんだね。
 妄想通りに身分違い――なんてことも、すごく現実味を帯びてきたなぁ。

【今日はここまでで落ちます】
【あまり書けませんでしたが、頑張っていきたいと思います】

カレン「多分ここにママがいると思いマス」

 エレベーターから降りてきらきらとした廊下を進んでちょっと。
 至って普通な感じのドアの前にやってきた。

穂乃花「カレンちゃんのママさんが……」

 ごくり、と唾をのむ。
 私とカレンちゃんがうまくいくか。
 この先の未来のことが、すべてここから数分の出来事にかかっているのだ。緊張しないはずがない。
 更に加えて、この豪邸――という概念を軽く超越したこのマンションっぷり。
 制服姿でお邪魔して、果たして私はどんな対応をされるのだろうか。
 人は第一印象、出会って数秒が大切だと言われる。今の私がその数秒に自信を持って挑めるのかと言われれば……。

穂乃花「や、やっぱり今日はやめておこう? ノーアポなんだよね?」

カレン「ノーアポ? あぁ、勿論、今日思いついたことデスよ」

穂乃花「あああああ」ガタガタ

 やっぱり! 思いつきで私とカレンちゃんの運命を左右されるなんて、すっごく怖い!

カレン「大丈夫デス。ホノカならママもきっと気に入りマス。ほら、勇気を出して」

穂乃花「ううう……分かった。カレンちゃんが言うなら、頑張るよ」

 カレンちゃんのお母さん……会ったことないけど、優しい人のはず。
 カレンちゃんがこんなに優雅で華やかな、けれど心優しい聖女みたいな人なんだから、ママさんだって。

穂乃花「私はカレンちゃんの恋人、だから」

カレン「ただいまデスー!」

穂乃花「ね――って、カレンちゃん!?」

 私が心構えをする前に、カレンちゃんは勢い良くドアを開いて中に入っていく。
 止める間もなく私の手を引いて部屋の中を進むカレンちゃん。
 目の前にあるのは広い、リビングのような部屋。
 テーブルの周りに置かれたソファーの上に、きらきら輝いている女の人が座っていた。

???『あら、カレン。今日は遅めだったわね』

 ぺらぺらと、自然な英語を話して女性は口にし、私達へと振り向く。
 正確には英語かも分からなかったんだけど、多分英語のはずだ。
 カレンちゃんはイギリスから来たんだから。
 多分、この人がカレンちゃんのママさんだよね。
 すごく綺麗な人だ。
 カレンちゃんに負けず劣らず綺麗な、さらさらとした長い金髪を左右で分け、よくテレビで見るハリウッド女優さんみたいな、お洒落な服を着ている。
 更にはスタイルバツグンで、本当にカレンちゃんほどの年齢の子供がいるのかと疑ってしまうほど若々しくて綺麗だ。
 カレンちゃんも大人になったらこんなふうに素敵なレディになるんだろうなぁ。なんて、のほほんとちょっと自己逃避。

カレン『ただいまデス! 今日はこのホノカを待ってて、ちょっと遅れマシタ!』

カレンママ『ホノカ? ああ、あの話によく出てくる子ね。初めまして』

 座ったまま丁寧に頭を下げるママさん。
 私はつられるように、ほぼ反射的に頭を深々と下げた。
 それにしてもカレンちゃん、英語上手だなぁ。当たり前なんだけど。

穂乃花「は、初めましてっ!」ペコペコ

カレンママ『緊張しているみたいね』クスクス

カレン「みたいデス」クスクス

 あぁ……素敵な金髪親子が笑い合う光景……すごく、幻想的だ。
 二人とも美しくて、まるでお姫様と女王様みたいで……生きててよかった、なんて気持ちもわいてくる。

カレンママ『で、どうして穂乃花さんが来てるの?』

カレン『ディナーを一緒に食べようと思って。いいデスカ?』

カレンママ『……いいわよ。けど急な話ね。何かあったの?』

カレン「え? えっと……その」

 なにやら柔らかい雰囲気から、若干空気が重くなる。
 言葉が分からないから状況が読めないけれど、ちょっとまずい場面なのはよく分かる。
 焦りはじめる私。
 前にいるカレンのママさんの視線が、私とカレンちゃんのつないでいる手に向かっていることに気づいた。
 ――まさか、付き合っていることがバレたのかな?
 緊張しながら、カレンちゃんが何て言うのか待つ私。
 視線を泳がせていたカレンちゃんは、やがて決心したかのように私の腕をぎゅっと抱いて、大声で言った。

カレン『ホノカは私の彼女になりマシタ!』

カレン「付き合っていると言いマシタ」チラッ

 ――。
 えっと、大体私が考えていた通りだったみたいだね。
 なにか疑われて、カレンちゃんがそれに答えて――私がカレンちゃんとお付き合いしていると暴露したと。
 ドアの前で決心しようと考えてから、まだ一分もしないでこの展開。
 私の頭じゃついていけないよ!

カレンママ『……』

 内心パニックの私。
 私の腕をぎゅっと抱くカレンちゃん。ドキドキと、柔らかい感触の中にカレンちゃんの大きな心音を感じる。
 彼女もまた緊張しているみたいだ。
 ――でも、今は待つしかない。
 もう言ってしまったのだ。あとは親御さんの意見を聞き入れるだけ。
 長い沈黙。カレンのママさんの鋭い目線が私とカレンちゃんを交互に捉える。
 何秒か経っただろうか。比較的長い沈黙の後に、カレンのママさんは口を開いた。

カレンママ『まさかカレンは、男の子だったの……?』

 真剣な顔で投げられた問い。

カレン『……違いマス』

 それにカレンちゃんは一言でこたえた。
 英語があんまり分からない私でも、なんとなく意味は分かった。男性を示す単語が出てきたような気がするし。

カレンママ『んー、男の子の話を聞かないと思ったら……まさか女の子を連れてくるなんてね』

カレン『びっくりシマシタ?』

カレンママ『当たり前でしょ。でも、女の子同士、ね……』

 ママさんの視線が私に向けられる。
 じーっと、下から上まで品定めするみたいに見られて、私は無意識にもじもじ。

穂乃花「か、カレンちゃんのママ、なんて言ってるの?」

カレンママ『なるほど……可愛い』

カレン「デスよね! あ、ホノカ。今ママ、ホノカのことを可愛いって言ってマシタ」

穂乃花「ええっ!? あ、ありがとうございます」

 嬉しいけど……あんな真面目な顔をしてたのに? 冷たそうというかクールそうな人に見えたけど、優しい人なのかな?

カレン『ということで、ホノカとのお付き合いを始めマスノデ』ペコッ

穂乃花(と、とりあえず……)ペコリ

カレンママ『……まぁ、いいわ。相手のことをよく知らない内から家族の恋愛に無闇に口を出す気にはなれないもの』

カレン『ママ……アリガトウゴジャイマス!』

カレンママ『だけど、これから問題があれば遠慮なく言うわよ。今は性別のことを言わないだけで、カレンのお嫁さんってことは後々勉強も必要になるかもしれないし――』

カレン『そっ、それは気が早いような――イエ、でも……分かりマシタ』

 ……? どうしたんだろう。
 付き合ってくれることを認めてくれたような雰囲気だけど、カレンちゃんの歯切れが悪い。顔が真っ赤だし。

穂乃花「カレンちゃん? どうなったのかな?」

カレン「え、と……お付き合いは許されマシタ! それと、これからが大変――かもしれないと」

穂乃花「わーっ、本当にっ? よかったよー」

 身体から力が抜ける。
 良かった。これでいきなり初日からお別れとかはなくなったね。

穂乃花「あ、そうだ。カレンちゃんのママさんに、大変でも頑張りますって伝えてもらえるかな?」ミミウチ-

カレン「ハ、ハイ。分かりマシタ」

カレン『ママ、ホノカは大変でも頑張りマスって言ってマス』

カレンママ『そう……それなら文句はないわ』

 優雅なポーズで私へと笑いかけるママさん。
 わわー……カレンちゃんのママさん、本当に綺麗だなぁ。

カレンママ「カレンのこと、よろしくお願いね、穂乃花さん」

穂乃花「はい! ぜひぜひ! ――あれっ?」

 素敵な日本語が聞こえたような。

カレン「ホノカ? いきなり固まってどうしマシタ?」

穂乃花「今、カレンちゃんのママさん日本語話したよね?」

カレン「日本語? あっ、忘れてマシタ!」

カレンママ「……気づいてなかったの?」

カレン「全然気づいてなかったデス」

 私にママさんの言ったことを伝えたりしてたのに……。癖? それとも緊張のせい?

カレンママ「私は穂乃花さんの様子が面白――いえ、可愛かったから、わざとだけど」

カレン「ママ……」

 こういうところは親子なんだなぁ、と思う。

カレン「それじゃあ、私たちは部屋にいマスね」

カレンママ「ええ。二人でごゆっくり」

カレン「ぐっ。行きマショウ、ホノカ」

穂乃花「えっ? うん」

 赤面し、そわそわと落ち着きが無いカレンちゃん。
 彼女に腕を引っ張られ、私は足を動かす。去り際カレンちゃんママへと会釈し、部屋を出た。

カレンママ『照れてるわね……フフッ、本当に好きみたいね』

 最後、ママさんが何か言っていたけど、英語なのもあって何を言っているのかは分からなかった。

 カレンちゃんのお部屋は綺麗だった。
 至って普通な勉強机、可愛らしいマット、ベッド。
 一人の部屋にしてはやっぱり広くて、西洋風な感じで――なんだか、童話とかで出てきそうな部屋にも思えた。
 普段のカレンちゃん通り、可愛くて綺麗で……すごく、いいにおいがする。
 後回しにしていたけど、入ってすぐ気になったのは部屋の香りだ。
 この匂い……カレンちゃんの部屋だ。なんて、当たり前のことを思って感動してしまう。

穂乃花「こ、こここがカレンちゃんの部屋」ソワソワ

カレン「ハイ。えっと――」

 部屋に入り、中心辺りで止まるカレンちゃん。
 顔の赤みが引き、普段どおりのようすに戻った彼女は私の腕を離すときょろきょろと部屋を見回した。
 何か探してるのかな?

カレン「あー……そういえば、クッションもテーブルも他の部屋に持っていってしまいマシタ」

カレン「ええと、あそこでいいデスカ?」

 お客さんを床に座らせるのも――なんて思ったのかもしれない。
 迷ったように視線を巡らせると、カレンちゃんはベッドを指差した。

穂乃花「っ! う、うん! 全然大丈夫!」

 カレンちゃんのベッド。
 私は頭で考えるよりも早く首を縦に振った。
 他に座るところはない。となれば私とカレンちゃんが二人、ベッドに座ることになるのだ。
 ……うん。わかってるよ? カレンちゃんは全然そんな気がないことは。
 でも、カレンちゃんと二人きりでベッドの上。たとえ拍子抜けしちゃうくらい健全であっても、そのときめきを味わってみたい。すっごく。

穂乃花「じゃ、じゃあ、お邪魔します……」

 ベッドに腰掛ける。それだけなのにドキドキと胸が高鳴り、身体がこわばる。
 一度大きく息を吐いて吸うと、私はカレンちゃんのベッドに座った。
 わー、柔らかい。すごくふかふかだし、寝心地がいいんだろうなぁ。

カレン「ふふ、ホノカ。意識してマス?」

 ベッドに視線を落とし、手触りをそれとなく確かめる。
 そんなことをしていると、からかうようなカレンちゃんの声が前から聞こえた。
 か、カレンちゃんもやっぱりベッドに……私の近くに。
 あわわ……まさか初日でこんなシチュエーションになるなんて。
 早すぎる気がする反面、喜んで受け入れてしまいそうになる自分もいる。
 緊張するけど――でも、カレンちゃんが望むなら私は受け入れる覚悟だよ! よし!
 決心。表情をキッと引き締めて、私は顔を上げた。

カレン「よいしょっと」

 見えたのは勉強机の椅子をベッドの横に配置し、座るカレンちゃん。
 ――ううっ! ここまでがうまくいきすぎたみたい……!

カレン「……? どうしマシタ?」

 カレンちゃんはきょとんとした顔してるし、意識してるの私だけ?
 ああっ、でもそんな顔もすごく可愛い!
 
穂乃花「ここ、座らないの? カレンちゃん」トナリヲテデポンポン

カレン「エエッ!?」

穂乃花「――はっ!?」

 やっちゃった!? カレンちゃんの可愛さに、つい口が……!
 でもグッジョブと思う私もいる。
 息苦しさすら感じる緊張と不安の中、椅子に座ったカレンちゃんは頬を赤くさせ、言った。

カレン「わ、分かりマシタ……」コクリ

 私、グッジョブ!

【今日の更新はここで終わります】

 今までの展開がうまくいきすぎただとか、そんなジンクスも打ち破る私の幸運……神様に感謝だね!

カレン「……」

 ほんのりと頬を赤く染め、ベッドに座るカレンちゃん。
 椅子は勉強机の前に戻したみたい。
 緊張した様子の彼女を見ていると、私の緊張もまた強まる。
 隣に来るように示したけど……これからどうするべきなんだろう。

二人『……』

 お互いに黙っちゃったし。
 不安だけど――私がここに誘ったんだ。私がリードしないとね。
 よし、お話だね。なにか……そう、学校のお話をしよう。
 手近な目標設定。こくりと一人頷いて、私はカレンちゃんの方へと顔を向けた。
 膝の上で握られている彼女の手を取り、口を開く。

穂乃花「……カレンちゃん」

カレン「ハ、ハイ……ッ」

 すると何故かカレンちゃんが目を閉じて、顔を少し上へと向けた。
 身体をきゅっと縮こませて、思い切った様子で――まるで、キスを待つような仕草。

穂乃花(ふえっ!?)

 ……えっ? しても、いいの? そういう流れだったのっ?
 で、でも確かにそういう流れだともとれなくもないよね。
 動揺しながら私はカレンちゃんの顔を見る。
 目を閉じ、顔を私へ向けるカレンちゃん。その姿は眠り姫を彷彿とさせる美しさで――す、すごく、可愛い。写真に撮って保存したい。
 ――いい、よね? カレンちゃんは何度か私にキスをしてくれた。
 なら、私からしても問題ないはず。
 考えていたこととは違うけど……むしろ嬉しい。
 だんだんと朱に染まるカレンちゃんの頬。私も自分の顔が赤くなるのを感じながら、ゆっくりと顔を近づけた。

穂乃花「……っ」

 カレンちゃんの手を握り、片手を彼女の腰へ。
 身体を寄せ、顔を間近に。
 目を閉じるカレンちゃんの表情を改めてしっかり見つめる。
 今は私がカレンちゃんの恋人。この唇も、カレンちゃんも独り占めにできるんだよね。
 喜びを噛み締め、私は顔をわずかに斜めにし、カレンちゃんと私の唇を重ねた。
 時間をかけたからだろう。カレンちゃんは不意をつかれたみたいで、私の唇と触れると息をもらした。

カレン「ん……」

 柔らかい。いいにおいがする。私の五感すべてをカレンちゃんが占めるような幸せな感覚。
 彼女の口からもれる声も、普段とは全然違って思えた。
 キスって、こんなにすごいんだね……遊園地の時もすごかったけど、二人きりだとなおさらすごい。
 この世のものとも思えない感覚に自分が自分を見失ってしまいそうだ。

穂乃花「はぁ……」

カレン「ん、ホノカ……」

 息苦しくなる前に私達は唇を離した。
 お互いに、身体を寄せたまま自分の唇に軽く触れる。
 私は遊園地でのキスが初めてだったけど、カレンちゃんはどうなんだろう?
 彼女の様子を見ていると、私と同じように驚いてくれているみたいだけど――気になっちゃう。
 私が一番……がいいな。
 ちょっと乱れた息を整えると、私はカレンちゃんへ顔を寄せる。

穂乃花「もう一回、いい?」

カレン「ハ、ハイ……ドウゾ」

 頷いて微笑するカレンちゃん。
 私がキスをしようと顔を近づけると、カレンちゃんは目を閉じてそれを素直に受け入れてくれた。

穂乃花(もっと……)

 友達、家族――もっと、それ以上の、カレンちゃんの特別になりたい。
 ベッドに座ることで緊張していた私はどこにいったのやら、私は意図的にもう一歩、先へと踏み込んだ。
 腰に当てていた手を、カレンちゃんの顔に添える。
 そのままゆっくり撫でるように頭の後ろに。金髪に触れ、カレンちゃんの頭を自分へと寄せる私。

カレン「――んっ!?」

 驚いたように目を開くカレンちゃん。
 私はクスッと笑い、そのまま唇を重ねた。
 二度目の口づけ。それでも一回目とまったく変わらない幸福感で、けれどもっと欲しくなって――私はなにかの見よう見真似でカレンちゃんの口の中へ舌を入れた。

カレン「ふぁ……っ」

 ちょうどカレンちゃんから声がもれたタイミング。
 案外すんなりと口内へ侵入した舌へ、カレンちゃんは驚いたみたいだった。
 けれどすぐに私の意図を理解してくれたみたいで、口を開き舌を差し出してくれる。
 目をキュッと閉じるカレンちゃんを見て、私もまた自然と目を閉じる。
 ゆっくりと、私は思うままカレンちゃんの舌を自分のものと絡めていく。
 真っ暗な視界の中、私の声とカレンちゃんの声、吸い付くような音、小さな水音のようなもの――聴覚だけでも私は自分が興奮して、理性を失くしていっているのがよく分かった。
 加えて、キスの感触。唇と舌に走る、身体にぞくぞくとくる快感。
 ぬるぬると、柔らかい舌に触れ、私とカレンちゃんが一つになっているような、熱く融け合うような感覚。
 幸福感はあるのだけど、これはただのキスとはまた意味が違うような気がした。
 カレンちゃんの舌と自分の舌を絡め、時折彼女の舌を吸うように刺激する。
 その度に握っている彼女の手に力が入り、頭を支えている手からは、カレンちゃんの身体が揺れていることが窺い知れた。
 私が、カレンちゃんを気持ちよくしてあげられている。
 ちょっとだけかもしれないし、勘違いかもしれない。
 でも、反応してくれていること、抵抗しないということが嬉しかった。
 勿論、カレンちゃんとそういうことがしたいっていう自分の欲求もある。今こうしているだけでも、気持よくて我を忘れそうだ。
 けれどそれ以上に、カレンちゃんの声が聞きたい、気持よくなってもらいたい想いが強かった。

穂乃花「ん、ちゅ……ふぁ、っ」

カレン「ぁ、んっ、う――ぷぁっ」

 ちょっとずつ、カレンちゃんも自分から舌を絡めてきてくれている。
 ――でも、まだ足りない。もっと欲しい。

穂乃花「っ、じゅる、カレン……ちゃん、ん」

 カレンちゃんの舌を一度吸うようにして唇を離し、そしてまた深く唇を重ねる。
 段々と私が前のめりに、カレンちゃんが後ろへ。ついには押し倒してしまうのでは、なんて体勢になった時だ。

カレン「ん――ふぉのか、っ、ん」

 カレンちゃんが私の肩をトントンと軽く叩いた。
 まだまだしたい――なんて考えすら頭に浮かばず、ただ求めるままキスをしていた私は、ようやく我に帰る。
 ……本日二回目、遊園地でのを入れて三回目。三回目でこの進展っぷり……明らかにやりすぎた。
 今更ながら思った私は、すぐに唇を離す。
 舌と舌が糸を引いていて――カレンちゃんのトロッとした目で舌を出した顔を見た瞬間、理性がまたクラッときたけど、ここはグッと我慢。
 うん、ファインプレー。ここは自分を褒めてもいいよね。

穂乃花「ぁ……ご、ごめんね、カレンちゃん。苦しかった?」

カレン「はぁ……はぁ。どこで、息をしたらいいか分からなくて、苦しかったデス」

 息を切らせ、私の手に寄りかかるようにしてぐったりするカレンちゃんが弱々しく言う。
 そうだよね。私は主導権を握ってたから好き勝手にしてたけど、カレンちゃんはそうもいかない。
 うう……自分勝手すぎた。

カレン「ホノカ……激しすぎデス。今度からはもっとソフトめからお願いシマス」

穂乃花「あぅ、本当にごめんね」

 私はしょんぼりと肩を落とし、謝罪。
 うん、今度からはもっとソフトめから――ん?

穂乃花「ソフトめから?」

カレン「ハ、ハイ……。その、愛されてるって分かって……苦しかったデスケド、気持ち、良かったデス、カラ」モジモジ

 恥ずかしいのか、とぎれとぎれになりながら言うカレンちゃん。
 上目遣いに、弱った様子で言われる言葉は破壊力抜群だった。

穂乃花「うん、今度は気をつけるよ! 絶対に!」ドクドク

カレン「ホノカ、鼻血が出てマス」ジトー

 危ない危ない。このままだとまた突っ走って無限ループに入るところだったよー。
 カレンちゃんと二人きりの時は気をつけないと。

【今日はここで寝ます】

カレン「……次は私からしてもいいデスカ?」

 鼻血をティッシュで拭いてから少し。
 若干雰囲気がギャグっぽくもなったけど、カレンちゃんが緊張した様子で私へと問いかける。
 カレンちゃんから、キス……何回か経験はあるけど、こうして真面目な、二人きりの場面では初めてだ。

穂乃花「う、うん。カレンちゃんがよければ、ぜひ……」

 カレンちゃんが自ら。
 私ほど激しくはないだろうけど、どんなことを……。今からドキドキである。

カレン「じゃあ……はじめマス」

 私の隣、同じようにドキドキした様子のカレンちゃんが私へと身体を寄せる。
 すすっと移動し、私の脚の上に座り――彼女は甘えるように私へと背を預けた。

カレン「ホノカ……」

 私より身長が低いカレンちゃんは自然と私を見上げる体勢になるわけだけど――今回は違う。
 私が上を見る形で、彼女は身体を斜めに、私の片方の肩に手を付き、顔を近づける。
 そして私の首筋間近で名前を囁いた。
 息がかかる、くすぐったい感覚。ぞくぞくと身体を震わせる私の頬に、カレンちゃんの手が添えられた。

カレン「ん……」

 そして、カレンちゃんがくちづけを交わす。
 最初はソフトめと言っていたのもあり、軽く触れるだけのキス。
 けれどもこのシチュエーション。思ったよりも敏感に反応してしまう自分がいた。

カレン「好きデス……ホノカ。んっ、う」

 身体を密着させ、カレンちゃんは甘えるように何度も口づけを繰り返す。
 その度に私への愛の言葉を囁き、うっとりとした目でこちらを見つめてくる。
 キスの感触に、カレンちゃんの甘い言葉、声。
 ――なんだか、馬鹿になりそうなくらい幸福な時間だった。

穂乃花「か、カレンちゃんっ。これは、なんだかまずい気がするよ……!」

カレン「ホノカ……。可愛いデス」

 唇が音を立てる。
 カレンちゃんは止める気なし。むしろ私が恥ずかしがっているのを見て、目を細める。
 さっきのお返しだと言わんばかりだ。

カレン「大好きデス……愛してマス」

 ストレートな愛のことばの数々。
 それだけでも私の心を揺らすには充分だというのに、カレンちゃんの口づけも加わって……。
 さっきのキスもあれだったけど、こうしてべったり甘えられてキスするのも、すごく……興奮、する。うん。

穂乃花「私も、だよ。カレンちゃん」

カレン「ホノカ……」

 顔を間近に、見つめ合う私達。
 私はカレンちゃんの身体に手を回す。私よりも小さくて、華奢な身体。
 うう、カレンちゃんとこんな関係になれるなんて。夢みたい。

穂乃花「もう一回……」

 気持ちを抑えることができない。
 私はまた、彼女へくちづけをしようと顔を近づける――のだけど。

カレンママ「ご飯できたわよー」

 ドアがノックされた瞬間、パッと手を離し、顔を遠ざける。
 自分でも驚くくらいの反射神経で、カレンちゃんのママが入ってくる前になんとか怪しまれないようにしようとするけど――カレンちゃんが私の膝の上に座っているこの光景は、多分すごくいかがわしいだろう。
 姉妹ならともかく、同級生だし……。

カレン「マ、ママッ!? 早いデスね……」アタフタ

カレンママ「用意はしてあったから。……あら?」

 当然の如く注目されてしまう。
 私の膝の上に座るカレンちゃん。不自然に広げた私の手。
 カレンちゃん、多分私も顔を赤くさせていて、なにをしていたのかは察しがついてしまうだろう。
 カレンちゃんのママは少しの間ジーッと私達を見て、

カレンママ「ふふ……仲良しね」

 微笑ましいものでも見るように優しい目をした。
 不純なことがあったと思われているのかは――よく分からない。

カレン「ハ、ハイ! 仲良しデスよ! ねー、ホノカ?」

穂乃花「うん! すっごく仲良しだよー」

カレンママ「……さて、カレン。早めに来るのよ」パタン

カレン「勿論デス! さぁ、ホノカ、行きマショウ」

 すっかりいつも通りに戻った様子のカレンちゃん。
 今すぐ行くつもりなのか、カレンちゃんのママが部屋を出ると、私の膝から降りて床に立つ。

穂乃花「うん。カレンちゃんのママの料理……楽しみ」

カレン「ママ料理上手デスカラ、期待してくだサ――」

 元気にドアへと向かおうとするカレンちゃんだけど、何故かぴたりと動きが止まる。

穂乃花「カレンちゃん?」

カレン「――あ。ホ、ホノカ。ちょっと部屋から出ててもらえマスカ?」

穂乃花「え? いいけど、なにかあったの?」

カレン「何もないデスヨ! 気にしないでくだサイ!」ブンブン

 スカートを押え、首を勢いよく横に振る。
 ……よく分からないけど、カレンちゃんが気にしないように言ってるし、そうするべきかな。

穂乃花「分かった。じゃあ外で待ってるね」

 頷いて、部屋から出て行く。
 学校の廊下よりも広いであろう廊下に立ち、カレンちゃんを待つことに。
 なにも聞かないようにしたけど――カレンちゃんどうしたんだろう? うーん、分からない。

カレン「おまたせしマシタ!」

 時間にして数分。それほど長くもない時間でカレンちゃんは部屋から出てきた。

カレン「さぁ、行きまショウ!」

 特におかしなところはないんだけど、やっぱり気になる。
 でも訊くわけにはいかないよね。
 頭を悩ませつつも、私はカレンちゃんに手を引かれ食堂へ。
 立派な食堂で出された料理は、素晴らしい味で――私は改めて、身分の差を思い知らされたのだった。
 身分というか、生活というか……とにかく、私とは別世界だよね。
 そんなカレンちゃんと恋人になれたんだから、がんばろうという気持ちでいっぱいだ。
 とりあえず、カレンちゃんをがっかりさせないように勉強しておかないと。キスとか、そういうものの。
 初日でここまで進むとは思ってなかったから、すっかり勉強不足だ。
 キスの後、どうすればいいのかとかしっかり勉強して、

穂乃花(そして楽しくて甘い恋人生活を……!)

 えへへ。私がテクニックと知識を身に付ければカレンちゃんも次第に積極的になって、いつか、

カレン『ホノカ、私にキスしなサイ』

 だとか、

カレン『ホノカ。あなたは私のものデス』

 だとか。
 ――嗚呼、いつもと違う妄想だけど、これもこれで。

穂乃花「えへへへ」

 帰り道。家のドアを開けながら、私はにやける。
 その日の日記は後日読み返しても分かるくらい浮ついた内容だった。


【今日はここまでです】

 そんなこんなで、あっという間に日は過ぎていった。
 あの後、カレンちゃんとは手をつないで一緒に帰ったり、お話したり、付き合う前と同じような平和な日常が続いた。
 それだけでもとっても幸せなんだけど――カレンちゃんのことを考えると、時折カレンちゃんの家でのことを思い出してしまう。
 今までしたことのない経験。
 いやらしいと言えばそうなんだけど、もっとこう――自分が満たされるような感覚、って言うのかな。
 それを味わえるようなことは他にはないだろう。
 したいけど、でも、私達は高校生。そういうことは控えておくべきだよね。
 というわけで私は例の勉強だけにとどめて我慢することに。
 勉強という名目でインターネットのサイトや本を見始めたけれど、思った以上にそのジャンルは広かった。
 三大欲求の一つなだけはあるよね。汚れてないとはっきり言えないけど、自分が汚れていく――なんて言葉が思い浮かぶくらいだ。
 本当に色々種類があったんだけど、自分にはレベルが高いため、結局は通販サイトで女の子同士のそういう本を注文して読むだけに留まった。
 それでも、私の意識というか、日々の視点は変わったような気がする。
 それがいいことなのか悪いことなのか。私には分からない。

穂乃花「うーん……」

忍「あ、穂乃花ちゃん。もう来ていたんですね」

 旅行当日。私が待ち合わせの公園前で立っていると、忍ちゃんとアリスちゃんがやって来た。
 声の方向へ顔を向ける私。仲良く並び、大きめの荷物を持っている二人が歩いていた。
 私服姿の忍ちゃんは何回か見たけど、相変わらず可愛い。そして個性的だ。
 アリスちゃんも勿論可愛い。彼女の雰囲気によくマッチしたふわふわした女の子らしい服である。
 なんとなく目が行き、二人の服装を確認。そして笑顔を浮かべる。

穂乃花「二人とも。おはよう」ニコッ

アリス「うん。おはよう、ホノカ」

忍「おはようございます」

 いつものように挨拶。三人で待ち合わせ場所に立つ。

アリス「ホノカ早いね。まだ集合時間の30分前くらいなのに」

穂乃花「あはは……色々考えてて。あと、ずっと楽しみにしてたんだー」

 ちらっとこちらを見上げるアリスちゃんへ苦笑を返す。
 勉強のせいで悶々してた、なんて言えない。

忍「分かります、穂乃花ちゃん」

 そうなんだ、と返事をするアリスちゃんの隣、忍ちゃんが真剣な声音で言った。

忍「私も、ずっと……ずっと、楽しみにしていました……!」ゴゴゴゴゴ

 ――なんだろう。忍ちゃんからオーラが見える。

忍「アリス、カレン……金髪少女と一緒にお風呂……この機会を何度待ったことか……」

アリス「シノ……なんでそこまで……」センリツ

穂乃花「お風呂? ――あっ!」ハッ

 温泉。となればカレンちゃんと一緒にお風呂というわけで。
 ああっ! 今までそれ以外のことで頭がいっぱいだったから、そんなこと思いもしなかったよ!
 そう考えると忍ちゃんのこの気合いの入れよう、納得だ。

穂乃花「忍ちゃん……。一生に一度かもしれない奇跡、しっかり見届けようね!」ガシッ

忍「勿論です!」グッ

アリス(ホノカ……カレンを見られてもいいのかな……)

 力強く握手を交わす私と忍ちゃん。その間に挟まれたアリスちゃんは困り顔。

綾「――だからこんな早く集合場所にいたのね」

 そこへ、もう一組の友達が。
 呆れた様子の綾ちゃん。そしてその隣で眠そうにしている陽子ちゃん。
 やっぱり二人とも仲良しなんだなぁ、とちょっと微笑ましい気分。

忍「あ。綾ちゃん。陽子ちゃんも。おはようございます」

 握手を解き、私と忍ちゃん、アリスちゃんが挨拶。綾ちゃん、陽子ちゃんもそれぞれ挨拶を返し、私達三人の前に。

綾「まぁでも、いいことよね。私が行くまで寝てた陽子と違って」

陽子「うっ、悪かったって。私だって楽しみにしてたんだぞ? 楽しみにしすぎて寝られなかっただけで」

忍「気持ちはよく分かります、陽子ちゃん」

アリス「シノ、昨日は七時には寝てたような……」

穂乃花・陽子『早い!』

綾「相当気合いが入ってるみたいね……」

陽子「私とはまた違うベクトルだな」

 呆れた様子の二人。
 流石は忍ちゃん……金髪愛は計り知れないね。ごくり。

忍「私の悲願、その達成のためならばえんやこらです」ペカー

穂乃花「忍ちゃんが眩しい! すごく輝いてるよ!」

陽子「私にはすごく鈍い光に見えるけど」

綾「私も」

カレン「おっはようゴジャイマスー!」

 いつもよりテンション高めに会話をしているとカレンちゃんが一番最後に到着。
 ミニスカートにヒラヒラした可愛らしいブラウス、ネクタイ、白のニーソックス……嗚呼、カレンちゃんは今日も綺麗だ。一目見たただそれだけで幸福感を得ることができる。

穂乃花「カレンちゃん、おはよう」

四人『おはようー』

 全員で挨拶。カレンちゃんは勢いよく私達のところへと走ってきて、そのまま私の腕に抱きついた。

カレン「もうみんなおそろいデスね」

忍「楽しみにしていましたからね」

綾「中々こんな機会ないし……」

穂乃花「そうだよね。私もすごくわくわくしてるよー」

 カレンちゃんが来る前もそうだけど、特に今が。
 どれだけカレンちゃんと一緒にいようと、カレンちゃんの身体が触れるこの感覚はなれそうにない。

カレン「フフ、良かったデス。では早速行きマショウ!」

アリス「そういえば聞いてなかったけど、どうやって行くの?」

カレン「車デス! すぐ来るので待っててくだサイ」

 車、かぁ……。
 思えば忍ちゃんたちと遠出するのは初めてだよね。カレンちゃんとも勿論そうだけど、この機会に忍ちゃんたちとも仲良くなりたいなぁ。

穂乃花(よし……頑張ろう!)

 みんないい人ばっかりだし、うまくいくよね。

 何事もなく数時間の移動を経て目的地に到着。
 私はカレンちゃん以外にも、カレンちゃんのお母さんや忍ちゃん、アリスちゃん……普段プライベートなことをじっくり話したことがない人達と色々お話をした。
 これこそ、休日だからできること。部活動をしていなければもっとこんな機会があったのかなぁ、なんて思ってしまうけど――テニスも同じくらい楽しいこと。いっぱい楽しいことがあって幸せだってことだよね。

穂乃花「――うーんっ。着いたねー」

 旅館前。車内から降りると、伸びを一つ。
 荷物を背負い、旅館を見てから後ろを振り向く。

忍「……そうですね。テンションが上ります」

 そこにはどう見てもテンションがダダ下がりしている忍ちゃんがいた。
 死にそうな顔をして両手でガッツポーズを作る彼女は……なんだろう。すごく可哀想。

陽子「しの。別に温泉がすべてじゃないだろ?」

綾「そうよ。他にも楽しみはあるじゃない」

アリス「ご飯とか、おみやげとか、観光とか」

忍「あはは……元気ですよ、私は。ほらこの通り」ヘニャ

全員(倒れそう……)

 みんなで必死に励ましてるけど、全然効果がない。
 忍ちゃん、本気で楽しみにしてたんだろうなぁ。まさか客室にある露天風呂だけの旅館だとは。
 広さの関係でアリスちゃんに一緒に入るの断られてたし……忍ちゃん、気持ちは痛いくらいに分かるよ。

カレン「さーみんな、さっそく行きまショウ!」

 対してカレンちゃんのテンションは相変わらず。忍ちゃんの周りに立つ私達の前で、はしゃいだ声を出す。
 荷物が入っているであろうキャリーバッグをコロコロと転がして、両親さんたちに続いて旅館の中へ。

穂乃花「忍ちゃん。これからきっといいことがあるよ」

忍「穂乃花ちゃん……ありがとうございます。時間があったら観光している金髪少女探しをしましょうね」ニコリ

アリス「いい笑顔なのに……」

陽子「まぁまぁ。しのらしいじゃん。ほら、行こう」

綾「そうね。せっかくの旅行だもの。楽しまないと」

 なんとかいつもの雰囲気に戻ったかな。
 ほっと一安心。私達は歩き出した。

カレン「あ、ホノカー! ホノカはこっちデス!」

 旅館の中に入ると、カレンちゃんが手招き。
 『私は』? どういう意味か分からず、横にいるみんなを自然と見る。

忍「これは……?」

アリス「あわわわ、カレンったら……」

陽子「……?」キョトン

綾「穂乃花……頑張って」ガッツポーズ

穂乃花「え? ええっ?」

 どうにも意味が分からないけれど、私だけが行く空気である。
 首をかしげながら私はとりあえずカレンちゃんのところに向かう。

穂乃花「――あ!」

 と、そうしたところでピンときた。
 これもしかしなくても、そういうこと……? 

カレン「さぁ、ホノカ、行きマショウ。みんなは隣の部屋デス」

穂乃花「や、やっぱりー!」 

カレン「ど、どうしマシタっ?」

 カレンちゃんと同じ部屋。
 待ち望んでいたといえば待ち望んでいたけど、まさかみんなとの旅行の最中でそんなことになるなんて!
 それにご家族の人もいるのに――って、そういうことは、公認!?

穂乃花「ごごめんねカレンちゃん。許容範囲を軽く超えてきて頭が――」

カレン「ホノカ、顔真っ赤デス」クスクス

穂乃花「カレンちゃんこそ……ええと、いいの? みんなといなくて」

 後ろを振り向く。
 が、私の心配なんて杞憂だと言わんばかりに微笑ましそうに見ているみんなが。アリスちゃんは微妙そうな顔をして苦笑してたけど。

穂乃花(ここまでの据え膳……男――じゃなかった。女の子でも、退いたらだめだよね)

 うん。ここは流れに身を任せることにしよう。
 優柔不断のようにも聞こえるけど、しっかり考えてるよ。時には流れ通りいくのも大切なのだ。

 といってもそんなすぐ二人きりで部屋で過ごす流れになるわけがなく――私とカレンちゃん、みんなは温泉街を見まわることに。
 いつももそうだけど、それ以上に楽しい時間だった。
 こういう時間はやっぱり大切なんだと思う。
 ずっとみんなと遊んでいたい。そう思える人達に出会えた。私はすごく幸せ者なのだろう。

穂乃花「……さて」

 時間はあっという間に夕方辺り。
 暗くなりはじめた空を見上げ、私は一人頷いた。
 カレンちゃんといるんだから、ちょっとは二人の時間も作らないと。

穂乃花「カレンちゃん」

 そろそろ帰ろうかと道を歩いている途中。
 旅館が見えてきたところで、私は口を開く。

カレン「……? どうしマシタ? ホノカ」

綾(これは、穂乃花が勇気を出して……!)

穂乃花「二人でお散歩とか……どうかな?」

綾「ホ、ホノカ……!」ジーン

陽子「片言片言」

カレン「勿論いいデスよ! みんな、先に戻っててくだサイ!」

忍「はい。ご飯までには帰ってきてくださいね」

アリス「知らない場所なんだから、迷子にならないようにね」

陽子(お母さんか二人とも)

カレン「大丈夫デスヨー。ホノカもいマスし」

穂乃花「多分大丈夫だよー。携帯電話もあるから」

 よほどのことがない限りここで、この条件で迷うことはないだろう。フラグなんかじゃないよ。

カレン「それでは、ホノカとラブラブしてきマス!」

忍「頑張ってください、ふたりとも!」

陽子「仲良くねー」

 みんなに見送られ、私達は来た道を戻っていく。
 道の両脇にはお店があって、人がちらほらと見える。
 時間が時間なだけに、旅館へと戻る人とか家に帰る人が多いみたいで、昼よりは落ち着いた感じ。

穂乃花「カレンちゃん、この旅行に誘ってくれてありがとう」

カレン「いえいえ。誘ったのは私デス。それにホノカと来たかったデスカラ……」

 言って、私の手をにぎるカレンちゃん。
 照れくさそうな顔をしている彼女を見ると、私は本当に彼女のことが好きなんだと感じる。

穂乃花「私も誘われてからずっと楽しみにしてたよ」

カレン「一度断りマシタけど」

穂乃花「うぐっ、そ、それは……」

カレン「冗談デス」

穂乃花「カレンちゃん、心臓に悪いよー」

 あれは家族旅行に私だけ乱入することになるから断っただけで――って、カレンちゃんそのこと分かってたんだし、少し考えればからかってたことなんてまるわかりだよね。

カレン「ホノカの反応は面白いデス。――あ、ホノカ。あそこでゆっくりしていきマセン?」

穂乃花「あそこ?」

 不意に指差された先を見る。なんだか時代劇で見そうな和風な茶屋だった。

穂乃花「うん、いいよー。なにか飲んでいこっか」

 ご飯前だから食べ物は控えておこう。
 のんびりと歩いて、長い椅子に座る。すぐに店員が私達の近くへ来て、注文。
 抹茶とクリームの冷たい飲み物を二人していただく。

穂乃花「ふー……フローズンみたいで美味しい」

カレン「本当デス」

 一口のみ、にっこりと笑い合う。
 どこかで流れる水の音。あちこちのお店から聞こえる小さな物音。
 ゆったりとした街の雰囲気とともに、お茶を楽しむ。その隣にはカレンちゃん。
 本当、幸福な気分だ。

カレン「抹茶を見ると、思い出してしまいマス」

穂乃花「抹茶? あ……」

 思い出す。
 カレンちゃんがいつもと違う行動をとったきっかけ。それは抹茶のお菓子をアリスちゃんにあげたことだった。
 ちょっと前のことなのに、ずいぶん昔に感じるものだ。

穂乃花「私がアリスちゃんにあげたお菓子だね」

カレン「ハイ。ホノカがアリスにお菓子をあげて……」

カレン「私はあの時、ちょっとムキになってたのかもしれないデス」

 目を細め、幸せな過去を振り返るようにカレンちゃんは語る。

カレン「ホノカをとられたくない。それだけで、告白して……」

カレン「あの時は勢いだけだったかもしれないケド……でも、今も後悔してマセン」

穂乃花「カレンちゃん……」

 アリスちゃん、見事カレンちゃんの気持ちを言い当ててたんだね……幼馴染ってすごい。

カレン「ホノカ。私はホノカとずっと一緒にいたいと思ってマス」

穂乃花「うん。私もだよ」

カレン「デスガ、これから色々大変かもしれマセン。それでも、大丈夫デスカ?」

 カレンちゃんのまっすぐな目を向けられ、私は真面目に考える。
 色々。カレンちゃんのご両親は外国の人だし、日本では女の子どうしの恋愛は珍しいし……私が考えている以上に困難なことがあるんだろう。
 ――でも大丈夫。

穂乃花「大丈夫だよ。カレンちゃんも、みんなもいるから」

 私は一人で悩むわけでも、選ぶわけでもない。
 勿論一人でなんとかしないといけない時もあるだろうけど、そうする時も決して一人じゃないんだ。
 傍に大切な人がいるなら、私はどんなこともできるだろうと断言できた。
 それはきっと過信なんてものじゃなくて、当然のこと。
 だって、私の目から見たみんなはとっても素敵な人達だから。だから、信じられるんだ。
 みんなのことを。私のことを。

穂乃花「私、頑張ってカレンちゃんを幸せにできるようにするよ」

カレン「……ホノカ」

 カレンちゃんはクスッと笑い、私のすぐ横に。
 そして私にちょっと身体を寄りかからせると、小さく呟いた。

カレン「私はもう幸せデス」

 なら、もっと幸せに。
 私は心の中でちょっときどって返した。 

 ――ご飯が美味しかった。
 旅館といえばとにかく種類を多く取り揃えた小皿メインの料理を想像する人が多いだろう。
 けれど私達の泊った旅館は違う。
 まずお鍋。具材が最初から入っていて、煮込むだけのよくあるタイプのお鍋だ。
 ここだけ聞けば、小皿メインでもよくある一人分の小さい鍋を想像する人も多いはずだ。
 でも違った。私とカレンちゃん、忍ちゃん、アリスちゃん、陽子ちゃん、綾ちゃん。
 大きな鍋には六人分にしてはちょっと少なめな具材が入っており、お肉をはじめ白菜、きのこ類をふんだんに、醤油味のつゆで煮込む。
 まずご飯なしで、刺し身や天ぷらとともにこのお鍋を楽しみ、そして最後にご飯。
 このシメがすごかった。鍋のシメでご飯といえば、雑炊風にするのが一般的。
 でもここは鍋に出汁を入れ、卵等など、見ているだけじゃ分からなかったけど鍋で簡単な茶碗蒸しのようなものを作って、具が混ざったつゆだくのそれをご飯に――

カレン「ホノカ?」

穂乃花「――ふえっ?」

 間近で声が聞こえ、私はぱちくりとまばたき。

穂乃花「……あ」

 ちょっとして今の状況を把握。
 あれから旅館に帰ってみんなでご飯を食べて、それからお風呂に入って――で、

穂乃花(現実逃避してたんだよね……)

 現在、カレンちゃんと布団の上に座っている。
 布団は二つ。今はそれぞれの布団の上にいるんだけど――ねぇ? そういう流れだよね?
 きっとキスだけじゃすまなくなる。勉強した知識が私にそう語っている。
 前は決意していたけど、実際その場面になると緊張してしまう。思わず現実逃避しちゃうくらいだ。小難しい口調で。

穂乃花「……すぅ、はぁー」

 覚悟はした。あとは私が勇気を出すだけだよね。
 深呼吸。私は目の前にいるカレンちゃんを見つめ、

穂乃花「カレンちゃん、その……一緒に寝ても、いい……かな?」

 しどろもどろになりながらもなんとか口にした。

カレン「――ハイ。ホノカになら」

 ――よかった。断られたらどうなることか。私の心が。
 顔を赤くさせ、頷くカレンちゃん。どういう意味かは分かっているみたい。
 カレンちゃんの許可をもらっても緊張はおさまりそうもない。
 でも、いつまでもぼんやりしてるわけにはいかない。私は立ち上がると、明かりのスイッチに近づいた。

穂乃花「それじゃあ、明かり消すね」

 スイッチをオフ。
 明かりが消え、部屋を月明かりだけが照らす。
 それだけでも充分に部屋の様子は目に見えた。

穂乃花「えっと……痛かったりしたら、すぐに言ってね?」

 この日のために学んできた。私がリードしないとね。
 カレンちゃんの近くに座り、私は言う。カレンちゃんは小さく頷いて、布団の上に仰向けに寝た。

カレン「ハイ……」

穂乃花「はじめるよ」

 月明かりに照らされたカレンちゃん。
 浴衣を着た彼女のその姿は言葉にできないような美しさだった。
 カレンちゃんの頭を撫で、私は顔をゆっくりと近づける。
 まずは軽く口づけ。

穂乃花「ん、っ……」

 数秒触れ、離す。
 互いの吐息がかかる距離。段々と緊張よりも気分の高揚が勝ってくるのを私は感じた。
 再度、口づけ。今度は深く、手はカレンちゃんの胸に。浴衣の上から撫でるように触る。

カレン「んっ、ぁ! ……ん、ぷぁ」

穂乃花「ちゅ……っ、カレンちゃん」

 カレンちゃんの身体が反応しているのが分かった。
 舌を絡め、水音が立つ。カレンちゃんの口からは時折声がもれ、身体が震える。
 痛がってはなさそうだ。私は一度唇を離し、着物の中へ手を入り込ませる。
 カレンちゃんの膨らみ。手にちょうどおさまるようなサイズのそれを、手で揉んでみる。
 気持ちいい。触れている私がそう思ってしまう、心地いい感触。柔らかな感覚とカレンちゃんの反応を楽しんでいると、そこに硬い感触もあることに気づく。

カレン「ん、あ……ふぅ、はっ、ぁ」

 見えないけどそれがなんだかは分かる。
 私はそれを指で軽く、挟むようにして刺激。カレンちゃんが身体を跳ねさせ、私の顔を見ると恥ずかしそうに目を逸らす。
 可愛い。もっと、カレンちゃんの声を……。
 考えるよりも早く、私はカレンちゃんの浴衣の帯に手をかけた。
 ゆっくりと丁寧に帯を外し、脱がしていく。

カレン「……っ。恥ずかしいデス」

 露わになるカレンちゃんの身体。
 私が想像するよりももっと綺麗で、普段の彼女とはかけ離れた姿に、興奮を感じてしまう
 これほど文句のつけようのないスタイルなのに、カレンちゃんはもじもじと恥ずかしそうに身体を隠そうとする。
 ちらりと脚の間、微かに濡れたそこが見えたけど――あんまりカレンちゃんを恥ずかしがらせていじめるのはよくないよね。

穂乃花「――綺麗だよ、カレンちゃん」

 くすっと笑い、私はカレンちゃんの胸を隠す手を握る。
 そのまま軽く持ち上げ、私は彼女の胸の突起に唇をつけた。

カレン「ホ、ノカ――あっ!」

 抵抗はなかった。
 カレンちゃんの甘いかおりを鼻に感じながら、私は乳首を吸ったり、舌で舐めたり思うままに責める。
 その度に身体を反応させて、声を上げるカレンちゃんが可愛らしかったし、嬉しかった。
 敏感らしいカレンちゃんの反応。存分に堪能した後、もう片方の胸を責めていた手を、カレンちゃんの下半身、脚の間に。
 ぬるっとした感触。先程見えた時よりも濡れていることは明白だった。

穂乃花「カレンちゃん……かわいいよ」

カレン「あう、そんなこと、言わ、ぁ――っ!」

 咄嗟に脚を閉じようとするカレンちゃん。
 けどそれはほぼ無意味に近い。脚を閉じられても構わず、私は秘部へ添えた手を外側を擦るように動かす。
 それまでの声とは違う声音で、カレンちゃんが喘ぐ。反応も大きい。

乃花「んっ、カレンちゃん、好きだよ……っ」

 もうなにがあっても止められない。
 キス。うまく舌を動かせないでいるカレンちゃんの口内を貪るように味わい、指を浅く中へ。
 とろんと、蕩けた目を向けられ私の思考能力が下がっていくのを感じた。
 増えていく愛液が音を強める。最初は微かな音だったのに、今はカレンちゃんの声に混ざって耳に届くほど。
 でも、もっと。限界が近いであろうカレンちゃんを見つめ、私は指を動かす。
 カレンちゃんの反応が大きくなり、身体が弓なりに。ぐっと身体に力が入り――

カレン「あぁっ! んっ、う――ぁ、ホノ、カ――!」

 そして、弛緩。
 達した――のだろう。ぐったりとカレンちゃんが布団の上に寝そべる。
 ……良かった。途中からまた暴走気味になっちゃったけど、問題なかったみたい。
 指を抜き、荒い呼吸を繰り返すカレンちゃんを見つめる。
 これが本当の……世の恋人はこんなことをしてるなんて。すごすぎてくせになってしまいそうだ。
 ――って、思ってる場合じゃない。

穂乃花「カレンちゃん、大丈夫?」

カレン「……ハ、ハイ。思ったよりもすごくて……」

カレン「疲れマシタ」グッタリ

 まぁ……そうだよね。初めてことだし。
 苦笑し、私はカレンちゃんの隣に寝転がる。

カレン「でも、ホノカのものになったような気がして……幸せデシタ」

穂乃花「……うん。私も幸せ気分だよ」

 カレンちゃんの普段見れないえっちな姿を存分に見れて――なんて口には出せないけど、私は笑顔で答える。

カレン「これで、ホノカはずっと私と一緒デスね」

穂乃花「――ううん。告白した時から、ずっとそのつもりだよ」

カレン「そう、デスか……ホッとしマシタ……これ、で――」

穂乃花「……カレンちゃん?」 

 言葉が途中で途切れ、心配になってしまう。
 慌てて隣を見れば、寝息を立てて眠るカレンちゃんの寝顔がそこに。
 寝ちゃったみたいだ。とりあえず浴衣を着せておき、帯は放置。私も寝ることに。

穂乃花「ずっと一緒……」

 ちょっとは私もカレンちゃんに追いつけたのかな。
 なにかの物語のヒロインみたいな、きらきらしていてあたたかい彼女みたいに。
 私を照らしてくれる彼女みたいに。

穂乃花「太陽みたいなあなたと」

 ――大丈夫だよね。
 カレンちゃんが、みんながいるなら私は迷わない。
 まっすぐ進んでいける。その先がどこにつながっているのかは分からない。
 でもこれだけは分かるんだ。
 私は幸せになれる、って。
 カレンちゃんを幸せにできる、って。

 目を閉じる。
 ほんのすこし前までは考えられもしない日々。
 幸福な毎日を私は噛みしめるように思い返す。
 そのどれにもカレンちゃんがいて――やっぱり私にとっての太陽、欠かせない大切な人なのだと、そう思った。


 遅れました。
 これにてこのSSは完結です。



 つぎはがっこうぐらしでめぐねえを主人公にマルチエンディングで書いてみようかと思いますが――あくまで予定。
 純粋な百合になるのかも分かりません。


 では、寝て起きたらHTML化依頼を出しときます

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年05月06日 (水) 23:57:58   ID: a0oxg5XK

最良

2 :  SS好きの774さん   2015年06月03日 (水) 04:56:52   ID: 7KffImud

毎回楽しみにしてます!

3 :  SS好きの774さん   2015年07月10日 (金) 05:54:05   ID: xsmMocOx

やっぱほのカレだなー
落ち着く感じで^_^

4 :  SS好きの774さん   2015年07月16日 (木) 04:19:30   ID: bArCzsPJ

がんば

5 :  SS好きの774さん   2015年07月16日 (木) 04:22:28   ID: bArCzsPJ

楽しみにしてます^_^
頑張ってください^o^

6 :  SS好きの774さん   2015年07月19日 (日) 15:12:41   ID: m_vJmnIJ

くっしーちゃんが狂わなくて良かったゾ…

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