安部菜々「私はアイドルだから」 (21)

・書き溜めあり

・地の文あり

・短い

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私の夢はアイドルでした。なぜでしたと過去形を使っているかというと今アイドルになれたからです。

次の目標はトップアイドルですかね?声優アイドルもやってみたいです!

そんなことを電車に揺られながら考えていると、目的の駅に到着しました。

ここからはお仕事モードです。

私からナナに、普通の女の子からウサミン星人にメルヘンチェンジです。

もう普通の女の子って年じゃ…いやいやいや、ナナは17歳でした。


今の時代無個性アイドルじゃ生き残れません。

キャラ作りは大切だってみくちゃんも言ってました。

最近はお仕事モードと普段との差をよりつけるようになりました。

理由は簡単です。

私は恋をしてしまいました。


もちろん、アイドルに恋愛は厳禁です。そんなことは昔からわかってます。

意識なんてしてなかったはずなのに、私はプロデューサーに恋をしたのです。

だから切り替えます。アイドルのナナは絶対に恋愛などしません。強いて言うならファンが恋人です。

せっかくなれたアイドル。こんなことで終わらせたくありません。

なのに、気持ちは募っていきます。日に日に大きくなるこの思い、私はどうしたらいいのでしょうか?


そんなふわふわした気持ちで事務所に歩いていきます。

ふわふわといえば無重力体験を思い出しますね。

あの時は慣れれば楽しくなってきたのですが、今は全く楽しくありません。

辛い、辛いのに誰にも相談できない。

この気持ちを打ち明けられたらどんなに楽なものか。

ああ、また考えがまとまらないまま事務所につきました。


「おはようございます!」

元気よく挨拶。アイドルの基本です。

「おはよう、菜々。」

あの人も挨拶を返してくれます。こんなことだけで胸が高まってしまうのは少々乙女的思考が過ぎるでしょうか?

「今日も一日お仕事頑張りましょう!」

そうして今日もアイドルのナナとしての一日が始まりました。



今日は番組の収録です。秋葉の街を歩きます。

ナナもアイドルになる前はここでメイドのバイトをしていました。

「ここはいつ来ても不思議なところですよね。常に新しく変わっているようで、一方で昔からの店も多く点在していますから。」

休憩時間中にそんなことをPさんと話します。

「まるでアイドルみたいだな。」

「え?」

「常に新しい、個性的なアイドルが出てきてるけど一方で昔からの王道アイドルも愛されてるじゃないか。」

「そう考えると、ここは街自体がアイドルなんですね。面白いです。」

Pさんの考えることは面白いです。常にナナとは違う目線で物事を捉えています。

「そういえばナナのことをPさんがスカウトしたのもここですよね。」

「そうだな。」

「なんでPさんはナナをスカウトしてくれたんですか?」


「なんか菜々を見つけたときわかったんだ。この子は夢に疲れた目をしているって。」

「夢に疲れた?」

「夢を追ってきて、なかなか叶わなくて。あきらめるかその瀬戸際みたいな感じがしてさ。やりたいこと見つけるにはアイドルが一番ってことでスカウトしたんだ。」

「そしたらそのやりたいことがアイドルだったので同時に夢が叶ったんですね。」

「あの時の菜々はすごかったからな。泣きながら電話してるのを見てこの子ほど強い気持ちを持ってる子はなかなかいない。この子は大成するぞって確信したんだ。」

「えへへ、あの時はありがとうございます。」

懐かしいですね。ナナはここでPさんにスカウトされました。

Pさんの言うとおりナナは半分、アイドルになる夢をあきらめていました。

メイドも楽しかったし、色々自分に言い訳しようとしてました。

そんな時、Pさんがナナを見つけてくれました。

さながらPさんは王子様のようでした。



そうしているうちに今日もお仕事が終わりました。

「お疲れ様でした!」

帰るときも元気に挨拶。アイドルの基本です。

「菜々、ちょっといいか?」

帰ろうと思ったらPさんに呼び止められました。

「なんでしょうか?」

「いや、俺の勘違いならいいんだけど。今日なんか調子が悪そうだったからさ。」

なんで今日に限ってPさんは勘が鋭いのでしょうか?

「別に、いつも通りのナナですよ?」

「そっか。ごめんな呼び止めて。俺の思い過ごしだったみたいだ。」

なんだか嘘を言っているようで辛いです。


「ちょっと散歩に行きませんか?」

思い切って散歩に誘います。悩みを打ち明けるなら夜道を散歩。これは昔からの鉄則です。

「わかった。ちょっと待っててくれ。」

ナナは自分で自分がどうしようかまだ決まってません。

だけど今日の話し合いがひとつの区切りになる。そんな気がします。

最近暖かくなってきたとはいえ、夜はまだまだ冷えます。

冷たい風がナナの頭を冷静にさせてくれます。

いえ、もう事務所を出たのでお仕事モードはやめましょう。

私として話をします。事務所の誰も知らない。普通の女の子の私。


「ごめん。待ったか?」

出来ればデートでそんな台詞を聞きたかったですね。

「いえ、むしろお仕事がお忙しい中すみません。」

「なに言ってるんだ。アイドルのことが最優先に決まってるだろ。」

そうですよね。アイドルとしてのナナが最優先ですよね。

Pさんはいつもアイドルのことを優先してくれます。だからこそ辛くなる。

「大した事じゃないんです。ただ少しだけ悩んでいることがあって。」

「なんだ?俺に出来ることなら何でも言ってくれ。

あなたのことが好きなんです。そういえたらいいのに…。



「アイドルってなんなのかなって少し思いまして。ああいやアイドルに嫌気が差したとかそういうことではありませんよ?お仕事は楽しいですし、昔からの夢でしたから。」

「なにか嫌なことでもあったのか?」

「いえいえ、ただアイドルが幸せになってもいいのかなって思いまして。」

恋愛はしてはいけない。アイドルとしては当たり前のこと。

「いいに決まってるだろ!」

突然の大きな声に少しびっくりしました。

「みんなに笑顔を与える。夢を与える。幸せを与えるアイドルが幸せじゃないなんてそんなの悲しすぎるだろ。」

Pさんの語気が強くなります。この人は本当にアイドルが好きなんですね。


それならなおさらアイドルの鉄則は守らないとですね。

「ありがとうございます。考えがまとまりました。」

「そうか?それならいいけど。」

いまいち納得がいってなさそうな顔ですね。

今確実に自覚しました。

私はプロデューサーが好きです。

私と違う目線で物事を見るPさんが好きです。

夢を諦めかけてた私を見つけてくれたPさんが好きです。

少しの変化でもすぐに気づいてくれるPさんが好きです。

そして誰よりもアイドルを、ナナを好きでいてくれるPさんが好きです。


これから言う言葉は私の言葉で、ナナの言葉。

私にしては少し物足りないし。

ナナにしては少し高望みしすぎな気がします。

「Pさん、空を見てみてください。」

かの有名な作家が言った言葉を私風にアレンジしてみました。


「今夜はウサミン星が綺麗ですね。」

意味はいつの日か教えますのでそのときまで待ってください。

以上短いけど終わりです。

菜々さんには幸せになってもらいたいです。

シンデレラガールズにもなってもらいたいです。

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