スーパーフリゲ大戦! (377)

フリーゲームクロスオーバーです。
数作、フリーゲームの出演があります。作者さんに怒られたらやめます。
あとはがんばってみます。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1429086993

世界が軋み、崩れる。

空は落ち、海は裂け、大地は消えた。

嗚呼・・・そうか。

この世界は・・・

この物語は・・・

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

~滝の洞窟~

テレージャ「…ふぅ。大丈夫かい?ウェンドリンくん」

ウェンドリン「う、うん。まさかあんな化け物がいたなんて…」

テレージャ「あれは、おそらくだが『夜種』と呼ばれるものだろう。夜の神ミルドラの眷属…しかしなぜこんなところに…」

ウェンドリン「考えるのもいいけど、もうちょっと安全なところまで行かない?なんなら引き返しても・・・」

テレージャ「まだ入り口から大きな空間を二つ探索しただけじゃないか。まだまだこれからさ」

ウェンドリン「・・・テレージャがくまなく探しまくるからこうもりにつつかれまくったんじゃん」

テレージャ「なにをう」

ウェンドリン「ごめんごめん。さ、奥行ってみる?」

テレージャ「無論だ」

ウェンドリン「それにしても広いよね・・・こんな洞窟があるなんて知らなかったよ」スタスタ

テレージャ「あれだけ森に囲まれていれば、町に住んでいても興味がなければ近づかないさ。知らなくても無理はないだろう」ザッザッ

ウェンドリン「そうだね・・・うん?なんだか広いところに出たよ?」

テレージャ「・・・何かあるといいが」テクテク

ウェンドリン「・・・!!テレージャ危ない!」ダッ

テレージャ「!?」バッ

????「ギャギャ!!」ブン!

テレージャ「おっ・・・と。ありがとうウェンドリンくん。おかげで避けられたよ」

ウェンドリン「うん。こいつ・・・も、夜種?」

テレージャ「そのようだ。少々頑丈そうだが」

子鬼「ギャッ!!」ブンブン

ウェンドリン「うわっ!と!危ない!」ヒョイヒョイ!

テレージャ「一匹だけのようだ。相手をしてやりたいのはやまやまなのだが・・・」

ウェンドリン「?どうっ!した!の!」ガキガキガキィン!

子鬼「ギャ!ギャ!」ガン!ガン!

テレージャ「さっきから魔法でまわりを照らしてたおかげで魔翌力が切れそうなんだ」ヤレヤレ

子鬼「ギャッギャッギャ!!」ザッ!

ウェンドリン「う~…仕方ない、わたしが!」ザッ

テレージャ「はぁ。最後の呪文だ。これ以上は体力が持たないからそのつもりで」

ウェンドリン「わかった…よっ!!」ダッ!

テレージャ「結界!!」キュイイ

子鬼「ギャギャ!!」ブン!

ウェンドリン「くッ!」ヒョイ

テレージャ「さて、私の力は出し尽くした。頑張りたまえウェンドリンくん」

ウェンドリン「腑に落ちない…よっ!」ガキーン!

子鬼「ギャ!?」バッ

テレージャ「結界のおかげで鎧で受け止められるじゃないか。よかったよかった」

ウェンドリン「うぅ~うりゃッ!!」ズバ!!!

子鬼「ギャッ!!」バシュ!

テレージャ「遺跡調査はいいが、夜種なんていると骨が折れる」ヤレヤレ

ウェンドリン「テレージャはッ!魔法使うだけでしょッ!」ババッ

テレージャ「案外体力を使うものだよ。前衛後衛に分かれるのは戦闘の基本だ」

ウェンドリン「うぅ…てい!」バシュ!

子鬼「ギャギャ!」ズサァ

テレージャ「ひるんだぞウェンドリンくん」

ウェンドリン「わかってる…はあッ!!」ズバッ!

子鬼「ギャ…」ドサ

ウェンドリン「はぁ…はぁ…やった…」ドサッ

子鬼「…」ボロボロ

テレージャ「調べる価値はありそうだ。しかしまぁ今は帰ろう。こんな状態で何者かに襲われたらひとたまりもない」

ウェンドリン「ま、待ってよテレージャ!少し休憩を…!」ゼェゼェ

テレージャ「ぶっ倒れてる場合じゃないぞ。ぐずぐずしてると殺される。走った走った!」バシバシ

ウェンドリン「痛っ!わかった、わかったからお尻たたかないで!」

テレージャ「はっはっは」タッタッ

ウェンドリン「元気だよねテレージャ!…待ってよ!置いていかないでよ!」ダッ!

~酒場『ひばり亭』~

テレージャ「と、いうわけでたいしたものは見つからなかったよ」

ウェンドリン「ひどい目にあった…」

ネル「わたしを置いていくからそうなるのよ!」ババーン

パリス「騒がしいからだろ」

テレージャ「ネルくんは賑やかで退屈はしないよ」

ネル「ならなんで連れてってくれないかなぁ~」

ウェンドリン「今回は軽く探索しただけだから…奥に行くときはネルも一緒に行こうね?」

ネル「絶対だよ!?」

パリス「待て待て…奥ってことは、もうあと崖のところを降りるしか…」

ウェンドリン「あぁ、うん。ネルのおばさんのお店で丈夫そうなロープを売ってたから、それで降りてみようかなって」

テレージャ「今回の調査であそこ以外は粗方見たからね」

パリス「ふーん…そうか…」

ネル「あ、パリス怖いの?」プププッ

パリス「馬鹿、違ぇよ。…前に一度あそこを降りて行ったことがあってだな」

ネル「えぇ!?わたしたちに内緒でそんなことを!」

ウェンドリン「なにかあった?」

パリス「いや…専門的なことはオレにはわからん。なにかあったのかもしれないしなかったかもしれん…ただ…」

テレージャ「ただ…なんだい?」

パリス「…変な気配がしたんだ。ゾクッときてな…それで急いで出てきた」

ネル「なんだぁ~また怖がっただけかぁ~」

パリス「あれはそういうんじゃねぇ…なにか、あの奥には恐ろしいものが…」

ウェンドリン「…だってさテレージャ」

テレージャ「ふむ。私の心配はパリスくんがその時に貴重な遺跡を荒らさなかったかどうかってだけだ」

ウェンドリン「ってことは、テレージャももう行く気は変わらないんだね」

テレージャ「もちろん。知的好奇心に勝るものは生憎持ち合わせていないんだ」

ネル「わたしも行く!パリスの怖がりに付き合ってたら何にもできないままだよ!」

パリス「なっ、だからそういうのじゃねぇって!」

テレージャ「…ウェンドリンくん?」

ウェンドリン「ん…んん」

ネル「どうしたの?考え事?」

ウェンドリン「…んー…もとはと言えばわたしが『なんか呼ばれてる気がするー』って始めたことだからさ。あんまり危なすぎるならやめた方がいいんじゃないかなって」

テレージャ「はぁ…そんなことか」

ネル「やれやれだね」

ウェンドリン「な、なによ」

テレージャ「私はただ利害が一致したから行くだけさ。1人では骨が折れるしね」

ネル「わたしはワクワクする冒険についていければいいもん!…あと、友達が頼ってくれるなら、力になりたいし」

ウェンドリン「テレージャ…ネル…」

パリス「なっ、オ、オレだって!頼られたら断ったりはしねえ!男だしな!」

ネル「おやおやパリスくん強がらなくてもいいんだよ~?」

パリス「強がってねえよ!」

ウェンドリン「パリス…うん!ありがとうみんな!」

テレージャ「さて、友情も深まったところで今日はもう帰って寝よう。明日には崖の下に行くんだろう?」

ウェンドリン「あ、うん。そうだね!じゃあ、今日は解散!」

ネル「はーい。わたし、ロープ見繕っておくね」

ウェンドリン「ありがとう、ネル」

テレージャ「それじゃ、おやすみ」ガタッ

ウェンドリン「おやすみなさい」

ネル「おやすみー」

パリス「そんじゃーなー」

ウェンドリン(…わたしがあの洞窟に引き寄せられてる)

ウェンドリン(なにか…嫌な予感もするけど…)

ウェンドリン(みんながいてくれるなら…)

ウェンドリン(……)

フラン「お嬢様、お嬢様」ユサユサ

ウェンドリン「ふぐっ・・・ふむむ・・・んー・・・アロハ・・・」スヤスヤ

フラン「お嬢様!!」

ウェンドリン「んは!?・・・フラン?何、こんな夜中に」

フラン「起こしてしまって申し訳ありません。何やら町で異変が起きているらしいのです」

ウェンドリン「異変?」

フラン「それが、おとぎ話に出てくるような子鬼のような生き物が武器を持って町民を襲っているとかなんとか・・・」

ウェンドリン「子鬼・・・ッ!?お父様は!?」

フラン「兵士に指示を出しておられました。どんな姿でも夜盗にはちがいないと」


ウェンドリン「・・・」スヤスヤ

フラン「お嬢様、お嬢様」ユサユサ

ウェンドリン「ふぐっ・・・ふむむ・・・んー・・・アロハ・・・」スヤスヤ

フラン「お嬢様!!」

ウェンドリン「んは!?・・・フラン?何、こんな夜中に」

フラン「起こしてしまって申し訳ありません。何やら町で異変が起きているらしいのです」

ウェンドリン「異変?」

フラン「それが、おとぎ話に出てくるような子鬼のような生き物が武器を持って町民を襲っているとかなんとか・・・」

ウェンドリン「子鬼・・・ッ!?お父様は!?」

フラン「兵士に指示を出しておられました。どんな姿でも夜盗にはちがいないと」

ウェンドリン「わかった。ありがとう!わたし、ちょっと出てくるね!」ババッ

フラン「お嬢様!いけません!領主様より、お嬢様の安否確認と、安全なところにいるようにと・・・」

ウェンドリン「そんな場合じゃないの!・・・フラン、通して」

フラン「・・・」ジッ

ウェンドリン「・・・」キッ

フラン「・・・わかりました。どうか、ご無事で」スッ

ウェンドリン「ありがとう、フラン!」ダッ!

ウェンドリン(子鬼・・・洞窟で見たもの?)

ウェンドリン(だとしたら、わたしのせいで・・・?)

ウェンドリン(・・・)ダッダッ

パリス「ぜー、はー、ぜー、お、おい!ウェンドリン!」

ウェンドリン「パリス!」

パリス「でかい羽の生えた、悪魔みたいな化け物見なかったか!?妹が・・・チュナがさらわれちまった!」

ウェンドリン「チュナちゃんが!?大変、探そう!」

パリス「ひばり亭はラバンのじーさんが子鬼の相手をしてた!」

ウェンドリン「となると・・・広場だ!ネルのところ!」

パリス「おう!あいつも協力させよう!」ダッ

~広場~
パリス「はっ、はっ、ネル!」

ネル「そりゃ!」ブン

パリス「おわっ!」ヒョイ

ネル「ありゃ、パリス!それにウェンドリンも!ごめんねまた怪物かと・・・」

ネル「なんだか大変なことになってるね?なんでもあの洞窟から子鬼たちが出てきてるとかなんとか」

ウェンドリン「っ!・・・」

パリス「それより、ネル!羽の生えた悪魔みたいなヤツ見なかったか!?チュナが・・・」

????「・・・騒がしいな」バサッバサッ

ウェンドリン「?・・・みんな!空に!」

パリス「・・・!!あいつ!チュナをどうした!」

ネル「え?あいつがチュナちゃんを?」

????「チュナ・・・はて、何のことかな」

パリス「とぼけるな!連れ去った女の子だ!」

????「あぁ・・・これか?」ブン!ボト・・・

パリス「チュナ!!!」ダッ
ネル「チュナ・・・ちゃん?」

????「悪趣味だ。しかし、これがヤツのやり方か・・・」バサッ

ウェンドリン「・・・待って!逃げる気!?」

????「・・・ここからは俺の出番じゃないんでな」バサッバサッ

パリス「待て!まちやがれ!」ダッ!

ネル「パリス!別のが来たよ!」

夜種「・・・」バサッ…バサッ…

ウェンドリン(今度のは雰囲気は子鬼に似ている・・・さっきのはもっとなにか・・・違う・・・)

夜種「・・・よくぞ目覚めた、独り仔よ。我等は汝を待っていた」

パリス「な、なんだ・・・?」

夜種「遠き調べを聴くがいい。廟に臥したるすめらぎの、呼ばわる声は汝が為」

ネル「???」

夜種「遠き調べを聴くがいい。河岸をさまよう独り仔の、帰りを待ち侘ぶ地の声を」

ウェンドリン「・・・・!!」

夜種「此岸は汝の故郷にあらず。参れ奈落のこつぼへと。始祖のくびきを砕くがいい―!!」バッ

ウェンドリン「うわ!」ガキン!

ネル「ウェンドリン!!」

パリス「襲ってきやがったか!」ダッ

テレージャ「・・・騒がしいと思って来てみれば、なんだいこれは」キュウウ

ネル「テレージャ!」

テレージャ「結界!」キュイン!

パリス「うおお!」ザシュザシュ

ウェンドリン「はぁッ!」バシュ!

夜種「・・・!!」

ネル「せいやぁ!!!」ドゴォ!

夜種「ぐっ・・・!」バッ

パリス「おうっ!」ドグォ

ウェンドリン「パリス!大丈夫!?」

パリス「な、なんでもねぇ、これくらい!」

テレージャ「治癒!」キュウウ

ネル「ウェンドリン!行くよ!」バッ

ウェンドリン「ネル!はい!」バッ

告死鳥「・・・?」

ネル、ウェンドリン「「せいやぁあぁぁぁぁあぁ!!!」」ドッゴォ

告死鳥「!!!アァァアァァァァァァ!」バタッ

ネル「・・・はー。倒せた、のかな?」

テレージャ「・・・ネルくん。待ちたまえ、まだ生きているようだ」

ネル「え?」

夜種「・・・我等は、この地に呪いをかける」

パリス「呪いだと・・・?」

夜種「選ばれた子らは石と化す。畑には毒の穂が実る。家畜は異形の仔を産み、戦士は狂い互いに争う」

テレージャ「・・・」

夜種「救われたくば、参れ奈落の深みへと。汝がくびきを砕かずば、呪いもまた解けることなし・・・」

ウェンドリン「・・・!!」

パリス「ゴチャゴチャうるせえ!!」バキッ

テレージャ「告死鳥・・・」

ネル「え?」

テレージャ「いや、なんでもない。ところで、そこに倒れているのは?」

パリス「!!!チュナ!おい、さっさと目を覚ませ!怪我してるのか?」

チュナ「・・・」

パリス「・・・なぁ、おい・・・・・・早く・・・目を開けろよ・・・・」

―――――――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――
ウェンドリン「うっ・・・」

フラン「おはようございます。お嬢様」

ウェンドリン「フラン・・・」

フラン「ご無事のようで安堵しております・・・朝食の準備ができましたので、お着替えください・・・」

ウェンドリン「うん・・・ありがとう・・・」

ウェンドリン(朝食の場で聞いた話、夜明けごろには兵士たちが夜種は追い払ったらしい)

ウェンドリン(それでも被害はあって、家族を殺されたり、家を焼かれたり・・・)

ウェンドリン(・・・追われていった夜種も、決していなくなったわけじゃない)

ウェンドリン(呪い・・・あの羽の生えた夜種の言ったことが頭から離れない)

ウェンドリン(くびきを・・・砕く・・・)

ウェンドリン(・・・)

Ruina~廃都の物語~、参戦。
ウェンドリン ネス公国領ホルムの町を治める領主・カムールの娘。何かに呼ばれるように町のはずれにある洞窟へ。強く自分を呼んでいる何かを探すため、パリス、ネル達の助けを得ながら、洞窟を探索する。

フラン カムールに仕えるメイド。

テレージャ 西シーウァ王国からやってきた巫女。考古学に精通しており、ホルムへ来たのも遺跡調査のため。ネス公国と西シーウァ王国の仲は険悪だが本人は気にしていないよう。見つけた洞窟を調べようとしたときにたまたまいたウェンドリンと行動を共にする。

ネル ウェンドリンの幼馴染。ホルムの雑貨屋の娘。腕力が強いが魔術に憧れている。ウェンドリンが洞窟へ探索するときは嗅ぎつけてきて行動を共にする。曰く冒険はわくわくするから大好き。

パリス ウェンドリンの幼馴染。ホルムでチンピラをやっており、妹と2人暮らし。生活費を稼ぐために盗賊まがいのことをしている。育ての母親をカムールに処刑されており、ウェンドリンとも幼いころは仲良くなかったが和解。洞窟へは落ちてるものを拾って売り飛ばすために通う。お化けは苦手。

カードワース関連は出ますか?

というわけでこんな感じでやっていきます。
駆け足ですが、第一話でした。
次回、『かしまし3人娘珍道中』に続く…

>>26
予定しておりませんすみません・・・

基本はRPGのみ?
出てくる作品の年代はツクール2000くらいから?それとも95系も入る?

聞いてみただけなんで、そこまで気にされなくても大丈夫ですよ~
どんな懐かしい顔ぶれ達が出て来るのか楽しみだなぁ

>>29
ほぼRPGの予定です。
年代を気にして選んではいませんが、比較的新しいメジャーなものが中心となるはずです…

>>30
完結できるようがんばります
期待値低めでお願いしますね・・・

>>1です。
忘れてました
原作と必ずしもすべて同じになるとは限らないので、気になる方はご遠慮ください。

~ダンジョン~
アナンタ「ふんふんふーん」ザッザッ

ベネット「上機嫌なのはいいけど、気をつけてよアナンタ。さっきから不意なエンカウントが多いんだから」

シズナ「まぁまぁ。私たちも強くなってきたし、それに暗い気分で探検するよりもいいじゃない」

アナンタ「そうだぞべネっち!私は明るく元気にダンジョンを制覇するんだ!」

シズナ「それは素敵ね!どうせならかわいく元気に、にしましょう!」

ベネット「はいはい・・・あ、宝箱」

アナンタ「箱の中身はなんだろな~」パカッ

ベネット「減ってきたし傷薬とかだと助かるんだけど・・・」

アナンタ「べネっちは現実的だなぁ。もっと夢を持とうよ!」ゴソゴソ

シズナ「アナンタ?中は何だったの?」

アナンタ「んー?・・・なんだろ、卵?」

ベネット「ふーん?何の卵かしらね」

シズナ「ちょっと大きいわね・・・ひよことか生まれてきたらいいのに」ムムム

ベネット「このサイズのひよこは見たくないわね・・・」

アナンタ「帰って調べるとしよう!見たことない生き物が入ってるかも!」コツコツ

シズナ「割れないようにねアナンタ!」

アナンタ「がってん!」

ベネット「さ、もうそろそろ戻りましょう?結構な時間潜ってたし、これ以上行ってもまたあの竜にぶち当たるわ」

アナンタ「うーん・・・そうだね。もうちょっと万全な状態じゃないとあの竜には勝てないだろうし」

シズナ「賛成!ちょっと疲れてきたところ!」

アナンタ「シズナちゃんは体力ないな~」

シズナ「アナンタやベネットと一緒にしないでくれる!?」

ベネット「はいはい、それじゃあアナンタ。帰還の羽よろしく」

アナンタ「はーい」ゴソゴソ

シズナ「いくら帰りは羽で町までワープできるからって・・・やっぱり体力・・・大事よね・・・」

ベネット「特訓するなら付き合うわよ?地獄のメニューで草原を5時間は走り続けられるようにしてあげる」

シズナ「それ私死なない!?」

アナンタ「あはは、べネっちの特訓は厳しいから・・・あ、羽あったよ!」

ベネット「普通よ普通。アナンタも鍛えたのが懐かしいわね」

シズナ「特訓は考えさせて・・・」

アナンタ「それじゃ、羽使うよー。ほら、寄った寄った」

ベネット「ん」スタスタ

シズナ「はい」スタスタ

アナンタ「よっ!」キュイーン・・・バシュン!

~だんじょん村、宿屋~
アナンタ「うーん」

ベネット「・・・ん?」スタスタ

アナンタ「ふーむ」

ベネット「アナンタ。本なんか広げてどうしたの?」

アナンタ「あ、べネっち。いや実はね、今日拾った卵なんだけど・・・」

シズナ「なんの卵だったの?」スタスタ

アナンタ「あ、シズナちゃん」

アナンタ「いや、本物かどうかわからないんだけどさ」

シズナ「もったいぶるわねアナンタ」

アナンタ「うーん・・・これ、アジ・ダハーカの卵みたいなんだ」

ベネット「アジ・ダハーカ?・・・悪竜?」

アナンタ「うん・・・いや、孵ることはないんだって。ほら、これ見て」バサッ

シズナ「なになに・・・『何をどうやってもおそらく卵が割れることは無い。この卵はあらゆる災厄を乗り越えて現在に残っている。』・・・ふむふむ」

アナンタ「それどころか、身に着けてると呪いを吸い取っちゃうから、呪い除けにもなるんだって」

ベネット「・・・眉唾ものね。本物だとしてもそんな大層なものがダンジョンの宝箱にはいってるものかしら」

アナンタ「わからない。けど、これをもっていると私は力が湧いてくるんだ」

シズナ「装飾品として扱える・・・ってわけね!」

ベネット「ほら、どうせレプリカ品とかよ。使えるなら明日からダンジョンに持って行きましょう」

アナンタ「だといいんだけど・・・うーん」

シズナ「気にしすぎよアナンタ。さて、私、ご飯の前にお風呂入ってくるわね!」

ベネット「じゃあ私は宿屋のおばさんにご飯の時間聞いてくる」

アナンタ「んー・・・はーい」

ベネット「・・・考えすぎ」ビシッ

アナンタ「イテッ!むむう、そうかな。そうだよね!」バッ

ベネット「仮にそれが本物でも、私たちにできることなんてそんなにないんだから。気にしなくてもいい」

アナンタ「よし!アジ・ダハーカなんて生まれたとしても私がぶちのめす!」パンパン!

ベネット「そうそう、アンタはそれでいいの」

アナンタ「よぉーし、そうと決まったら!!!」

アナンタ「シズナちゃーん!お風呂一緒に入ろー!!!」ダッ

ベネット「・・・元気だな」スタスタ

卵「・・・」

卵「・・・」カタン…

????「・・・」カタン…

????「・・・」ガシッ

????「・・・」ブゥン

―――――――――――――――――
――――――――――――
――――――
アナンタ「はー食べた食べた」

ベネット「よく食べるわ・・・」

シズナ「これで明日の探索もバッチリね!」

アナンタ「さーてと、道具しまって明日の準備っと・・・?」

ベネット「・・・?どうかした?」

アナンタ「いや・・・卵、この机の上においておいたのになぁって」

シズナ「えっ?覚えてないうちにしまってたんじゃないのかしら」

ベネット「アナンタならそれもあり得るが・・・最後に見たのは私で、そのときはたしかに机の上にあったわね」

アナンタ「落ちて・・・ないなぁ。もしかして泥棒?」

シズナ「でも私たちの部屋に誰か行くなら食堂からみえるはずよ」

ベネット「部屋には鍵もかかってたし・・・おかしいな」

アナンタ「気味悪いなぁもう」

ベネット「私、部屋の鍵を誰かに貸さなかったか、いちおうおばちゃんに聞いてくるわ」スタスタ

シズナ「それじゃ、私は部屋を探してみる」

アナンタ「道具袋確認してみる・・・」ガサガサ

シズナ「妙な話よね」

アナンタ「うーん・・・不気味なものだったから、なくなるのはいいんだけど」

シズナ「泥棒だとしたら許せないわ!」

アナンタ「・・・ないなぁやっぱりない」

シズナ「部屋にもないわね」

ベネット「どうだった?」スタスタ

アナンタ「ベネっち。どこにもないみたいだ」

ベネット「おばちゃんも鍵は貸してないし、誰も出入りはしてないって」

アナンタ「うーん・・・なんなんだ?」

シズナ「なくなったのは卵だけよね?」」

アナンタ「うん。財布は持ってたし、確認したけど他の道具や装備はあったよ」

ベネット「あの卵狙い・・・?わけがわからないわ」

シズナ「薄気味悪いけど、もう寝ちゃいましょうか。仮に泥棒で、また入ってもベネットがいれば大丈夫でしょうし」

アナンタ「うん・・・あー惜しいことしたなぁあの卵、結構いい効果だったのに!」

ベネット「・・・」

シズナ「・・・ベネット?」

ベネット「ん、なんでもない。寝ようか」

アナンタ「よし!明日もがんばろー!」

シズナ「ふふっ、おやすみなさい」

アナンタ「おやすみ!」

ベネット「・・・」

ベネット(悪竜の卵・・・)

ベネット(もしそれが本物で、今それが私たちのもとから盗まれたとしたら・・・?)

ベネット(考えすぎかしら・・・)

アナンタ「ベネっち?おーやーすーみー!」

ベネット「・・・はいはい、おやすみなさい」

ベネット(考えすぎても仕方ない、か)

ベネット(・・・)

ベネット(・・・寝よ)

~翌日、ダンジョン~
アナンタ「うりゃー!!!」ズバシュ

シズナ「絶好調ねアナンタ!」

アナンタ「うん!今日はなんと10階にチャレンジしようと思ってさ!」

アナンタ「調子がいいから、今の私ならあの竜の攻撃全部受けきれる気がしてね!!」フン!

ベネット「おいおい大丈夫かよ・・・」

シズナ「私の分まで受けてくれると回復が間に合ってうれしいわね!」

アナンタ「任せてよ!っと、もう10階か」

ベネット「本当に調子よさそうね。もう着くなんて」

アナンタ「よし、行くよ!みん・・・な?」

シズナ「え!?りゅ、竜が!」

ベネット「倒されてる・・・?」

アナンタ「そ、そんな!誰か先に倒しちゃったってこと!?あんまりだ!」

ベネット「・・・にしては外傷がないみたいだ。それにちょっと様子がおかしい」

シズナ「ち、近づかないほうが・・・いいわよね?」

アナンタ「でも奥に続く階段はあの後ろだよ?」

ベネット「・・・!!みんな、避けて!」バッ

アナンタ「へ?ッ!」ダッ!

シズナ「キャッ!?」ガシッ

アナンタ「うおお!?」ガシッ!ドサッ…

赤竜「グアァァアァァァァ!!!!」ボゴォン!

ベネット「いっつつ・・・大丈夫!?アナンタ!シズナ!」ガラ…

アナンタ「シズナちゃんも抱えて退いたから大丈夫だよ!」ガラガラ…

シズナ「あ、ありがとうアナンタ・・・」ムク

ベネット「ったく・・・油断させていきなりブレスとはやってくれるわ・・・」パンパン

アナンタ「だましうちとは卑怯な!」

シズナ「でも・・・様子がおかしくない?前はもっと・・・」

赤竜「ガァウウウウウウ!!!」

ベネット「おしゃべりは後ね!来るわよ!!」

アナンタ「オオオオオオオオオっ!!!!」ググッ

シズナ「アナンタの戦闘力が・・・上がってる!?」

ベネット「前言ってたMP(マッチョパワー)溜めてるのか・・・さ、シズナ!ぼけっとしてないで加護を!」

シズナ「はい!『精霊の加護』!」ブゥン!

ベネット「九所封じ!!」ビシュビシュ!!

アナンタ「うおおおおおおお!!!アナンタドライバァァァァァァ!!!!」ガシッ!ギャラララ!

赤竜「!?ギャオオオオオオオ!」

アナンタ「おりゃあああ!!」ズガーン!

ベネット「・・・すごい威力ね」

シズナ「アナンタ!『ヒール』!」キュウン!

アナンタ「おっし、まだまだぁ!」

赤竜「ガァァッ!」ボウッ!

ベネット「!!ブレスッ!」

赤竜「ゴァァァ!!」ドゴォン!!

アナンタ「うぐっ」シュウウ

シズナ「嘘・・・受けきってる!?」

ベネット「調子がいいどころじゃないわねあれは。どうなってんのかしらッ!と」スタ

ベネット(ブレスの威力が弱い…?それに、動きも鈍い)

ベネット「どっちにしろ、殺るなら今!畳み掛けるわよアナンタ!」シュルシュル…

アナンタ「がってんベネっち!」バッ

ベネット「はァッ!」ビン!

シズナ「く、首吊り!?竜に効くの!?」

アナンタ「いや、これで腹が丸出しだ!シズナちゃん、ウェポンブレスを!」

シズナ「はい!『ウェポンブレス』!」グン

アナンタ「うおおおおおおっ!ドラゴォォォォン!アッパァァァァァァアアアア!!!」ドゴォン

赤竜「グ、ガァァァァァァアァァアアア!!」グタ…

ベネット「ふぅ・・・終わった?」

アナンタ「みたいだね。よし!あっけない!」

シズナ「アナンタ、ブレスを真正面から受けてたけど大丈夫?」

アナンタ「精霊の加護付いてたし、ファイヤーバングル付けてたから平気!」ブイ!

ベネット「頑丈だなアンタは」

赤竜「・・・冒険者よ」グラァ

アナンタ「ん!?このぉ!まだやるか!?」ババッ

赤竜「我が試練はここで終わりだ。先に進むがよい・・・」

アナンタ「そ、そっか。じゃあ通らせてもらうよ」スタスタ

シズナ「やったわねアナンタ!」スタスタ

ベネット「・・・ねぇ」スタスタ

赤竜「…なんだ」

ベネット「私たちの前に、ここを通った奴がいるでしょう」

赤竜「・・・ああ。それがどうした」

ベネット「最初のはだましうちじゃない。ダメージを負って倒れていたところに私たちが現れた。そうよね?」

赤竜「ふん・・・」

ベネット「でないと流石に直撃を食らったアナンタがあんなにピンピンしてない」

赤竜「何が言いたい?貴様らは試練を乗り越えた。先に進め」

ベネット「私たちの前に通った奴」

赤竜「・・・」

ベネット「どんなヤツだった?」

赤竜「・・・禍々しい気を纏っていた」

ベネット「・・・」

赤竜「これ以上は話すことはない。さっさと行け」

アナンタ「おーい!ベネっち!行くよー!!」ブンブン!

ベネット「・・・」

ベネット「今行く!!」タッタッ

赤竜「・・・行ったか」

赤竜「・・・」

赤竜「・・・武運を」ガクッ

アナンタ「もー、なにやってたんよベネっち」

ベネット「なんでもない。この階段が?」

シズナ「ええ!奥につながってるようよ!」

アナンタ「よぉし!行くよ!みんな!」

シズナ「おー!」

ベネット「はいはい・・・」

ザッザッザッザッ・・・
アナンタ「…なんだか長い階段だね」

シズナ「下が見えてこないし…」

ベネット「どこまで続くのかしら」

キュウウウウウウン
アナンタ「・・・!?何!?」

シズナ「階段の途中から光って・・・!?」

ベネット「あ、危ない!!」

ウウウウウウウウ…
アナンタ「この感覚・・・帰還の羽に似てる!?」

シズナ「何処かへワープするみたいよ!!」

ベネット「まずい!戻るぞ2人とも!」

アナンタ「・・・だめだ!上に続く階段も切れて・・・」

シズナ「アナンタ!!ベネット!!」

ベネット「ッ!!!!」

ウワアアアアアアアアア・・・
―――――――――――――――――
――――――――――――
――――――――
――――

~????~
ドサッ
アナンタ「あてて・・・」

シズナ「つつ・・・」

ベネット「・・・どこ?ここは・・・」

アナンタ「か、階段は!?」

ベネット「ない・・・みたいね」

シズナ「ということは、本当にワープしたってことかしら」

アナンタ「ダンジョン・・・なのかな」

ベネット「どうかしらね。雰囲気は、洞窟・・・というより、遺跡?」

シズナ「そうだ、羽は?」

アナンタ「そうか!ダンジョンなら使えるかも!」ガサゴソ

ベネット(・・・ダンジョンにしては空気が澄んでる。おそらく地上から2~3階層ってところね)

ベネット(どこかに飛ばされたと見たほうが自然か)

アナンタ「・・・だめだ、羽が反応しない!」

シズナ「じゃあ、やっぱりダンジョンじゃないどこかに・・・」

ベネット「そのようだ。幸い、不足の事態にパニックになるような面子じゃあないし、少し探索してみてもいいかもしれない」

アナンタ「そうだね。なにか手がかりもあるかもしれないし・・・」ウズウズ

シズナ「・・・アナンタ?」

アナンタ「なにかな!?シズナちゃん?」

シズナ「・・・わくわくしてない?」

ベネット「大方、知らないところを冒険できるんで好奇心が止まらないのよ」

アナンタ「うっ・・・いいじゃん!おろおろするより!」

シズナ「はぁ・・・まぁアナンタらしいからいいんですけどね」

ベネット「向こう、なんだか風が通る。上がるか下がるかわからないけど階段があるはずよ」

アナンタ「じゃあそっちに行こう!はやくはやく!」ダッ!

シズナ「もう、待ってー!走らなくてもいいじゃない!」

ベネット「はしゃぎすぎだろ・・・」スタスタ…

らんだむダンジョン、参戦!
アナンタ ファイター。物理能力は最強だが、魔法には弱い。まっすぐな性格で、悪く言えば脳筋。パーティメンバーで自分だけ魔法を使えないことをコンプレックスとしている。すごい丈夫。

ベネット トリックスター。すばやい動きで敵を翻弄し、鋭い一撃を浴びせる。パーティのまとめ役。ダンジョンに潜る前は狩りをして生計を立てていたため、野営やサバイバル知識も豊富。すごい怖い。

シズナ 自称プリースト。回復だけでなく攻撃魔法もこなす魔法のエキスパート。おっとり天然。かわいいものには目がない。貧乳。

~竜の塔・上層~
ネル「パリス~まだ~?」

パリス「おいおい待てって…この宝箱…罠が…」カチャカチャ

テレージャ「ああっ、見たまえこの遺跡!この規模で原型を留めたままだ!素晴らしい…!」

ウェンドリン「テレージャ…」

パリス「・・・・開いた!」ガチャン

ネル「おお~!中身はなんだろな~」

パリス「・・・長剣だな。あと、銅貨が少し」ジャラ

ネル「えー!それだけ?」

テレージャ「いやいやネルくん。宝箱すらも魅力的じゃあないか。これはおそらく古代アルケアの」

ウェンドリン「はいはい、テレージャのそれは話が長くなるからその辺で」ドウドウ

テレージャ「残念だ」

テレージャ「しかし、あの洞窟の奥にこんな遺跡があるとはね」

ネル「この遺跡もどこまで続くんだろうね?」

パリス「何でもいい。チュナを元に戻してやる手段がわかるまでやってやるさ」

ウェンドリン「パリス・・・」

ネル「…でも、もし私たちが洞窟を探検したせいで、元々遺跡にいた夜種たちが出てきたとしたら…わたしたちが何とかしなきゃ…」

ウェンドリン「・・・」

テレージャ「あの時現れ、兵士どもに町を追い出された夜種は、近隣の森や山に潜みたまに荷馬車なんかを襲うらしい」

ウェンドリン「うん…私たちの、せいで」

ウェンドリン「うん…私たちの、せいで」

ウェンドリン(そう。あの日から私たちの周りはおかしくなった)

ウェンドリン(あの夜種が言ってた『呪い』・・・まさにその通りに)

ウェンドリン(それでも…私はやめない)

ウェンドリン(何か、この遺跡の奥の奥から。私を呼んでいる)

ウェンドリン(その正体をつかむまで)

ウェンドリン(…ごめんなさい。みんな)

パリス「…暗いな。元気出せよ!」パン!

ウェンドリン「パリス…」

パリス「ウジウジしてたって変わるわけじゃねえ。さっさと先を急ごう」

ネル「パリスにしてはいいこと言うね!」

テレージャ「ふむ。さっさと行くと見落としがあるかもしれん。ゆっくり行こうゆっくり」

パリス「お前らなぁ・・・」

ウェンドリン「みんな…うん!よぉしじゃあどんどん行こう!」オーッ

ネル「おーっ!」

パリス「それじゃ、あそこの階段を…」

キィン!ガツン!ボォオ…

テレージャ「・・・剣戟と魔法の音だ」

ネル「誰かこの先で戦ってるんだ!」

ウェンドリン「大変!助けないと!」

パリス「待てよ。安易に近づいたらダメだ」

ネル「なんで~?」

テレージャ「もしかしたら人と人の争いかもしれない」

ウェンドリン「人と…人」

ネル「悪い冒険者と良い冒険者が、ってこと?」

パリス「それもあるし、盗賊同士が争うって可能性もあるな」

テレージャ「様子見をしてからのほうがいいな。場合によっては人との戦いになるかもしれない」

ウェンドリン「人と…ッ!そんなの!」

テレージャ「やらなければやられるだけだ」

ウェンドリン「ッ!!・・・」

パリス「…まだそうと決まったわけじゃねぇ。オレとネルで見てくるから、ここで待っててくれ」

ネル「うん!行ってくるね!」

テレージャ「わかった。何かあったら呼んでくれ」

ウェンドリン「・・・」

パリス「おう!」ザッザッ

ネル「緊張するなぁ」ザッザッ

テレージャ「…ウェンドリンくん」

ウェンドリン「わかってる」

テレージャ「…」

ウェンドリン「この遺跡が見つかって、テレージャ以外にも遺跡目当ての人が来るようになって」

ウェンドリン「それが性質の悪い人だっているのはわかってるよ…」

ウェンドリン「でも、だからって、人と戦って…」

ウェンドリン「もしそれで殺しちゃったりしたら…」

テレージャ「さっきも言った。やらなきゃやられるだけさ」

ウェンドリン「そう…かもしれないけど…」

テレージャ「そう簡単に割り切れるものでもない。そういうことは悩めるときに悩んだほうがいい」

テレージャ「そのうち、悩む暇もなくなるかもしれないんだ。そうだろ?」

ウェンドリン「!!…そう、だね」

オオーイ!!!ウェンドリン!!!!テレージャ!!

テレージャ「パリスくんだ。なにかあったようだな」

ウェンドリン「うん…行こう!」ダッ

パリス「うおお!二人とも!よく来た…なッ!!」ガガキィ

子鬼A~O「ギャギャ!!!」ウジャウジャ

アナンタ「え?その人たちがお友達?」ズバシュ!

ネル「うん!ウェンドリンとテレージャ!」バキィ

ベネット「紹介はいいからッ!相手してもらえるっ!?」ザザシュッ!

ウェンドリン「す、すごい数の夜種!」

シズナ「夜種?って言うのよね!探索してたら待ち伏せみたいに出てきて…!フレイム!」ボウッ!

テレージャ「ほう。手を貸そうか…結界!」キュイン!

アナンタ「防御力が上がった!」グン

ベネット「すごい…!全体に!」グン

シズナ「!!」グン

パリス「アンタすごいな!なんて筋力してやがる!」

アナンタ「ふふふっ!これがマッチョパワー…!」ガシガシッ

子鬼AB『ギャ!?』

アナンタ「スーパーァァァァ!ドライバーァアァァァァ!!」ギャララ!ドグォ!

シズナ「すごい!ダブルアナンタスーパードライバー!」

ネル「無情な一撃が子鬼を土くれに帰す!」

ウェンドリン「ネル…」

テレージャ「賑やかでいいね」

ベネット「騒がしいだけよ。はッ!」シュルシュル

子鬼CDE「「「ギャ?」」」

ベネット「…」キュッ

子鬼たち「「「ギャ!!ッ!!」」」

ネル「首吊り!?怖い!」

シズナ「き、決まった!ベネット必殺首吊り人形!しかも3体まとめて!」

パリス「うおおおおお!!」ザザシュ!

ネル「パリスがここぞとばかりに二刀流で切りつけた!」

アナンタ「かっこいいね!二刀流!」

ナニィツギハワタシガナンノオリャーソリャーバキバキドゴォ…

―――――――――――――――
―――――――
――――

テレージャ「…終わったようだ」フゥ

ネル「ふぃーっ、疲れたぁ」

アナンタ「いい運動になったよ!」

シズナ「はぁ…はぁ…」

ウェンドリン「だ、大丈夫ですか?」

シズナ「うん…大丈夫大丈夫」ハァハァ

パリス「ガンガン炎だしてたからそうもなるだろ」

ベネット「いや、シズナはちょっと体力がね」

テレージャ「見たことないタイプの魔法だ。特に広域の攻撃魔法なんだ。消耗するさ」

ベネット「…言うほどあなたは疲れてなさそうね」

テレージャ「体力の使い方が上手いと言ってもらおう」

アナンタ「それにしても助かったよ!ありがとね!」

ウェンドリン「あ、いえ。こちらこそ、どちらにしろ進むには通らないといけない道だったので」

テレージャ「共闘したことで随分楽だったよ」

ベネット「それはよかった。ところで、ここについてなんだが・・・」

ネル「ここ?竜の塔って言う遺跡、ってことかな」

シズナ「竜の塔…?やっぱりダンジョンじゃなさそうね…」

パリス「ダンジョン?」

アナンタ「えーっと・・・なんていったら良いのかな」

~アナンタ説明中~
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・
アナンタ「と、いうわけなんだ」

ウェンドリン「だんじょん村に、入るたびに姿を変える不思議なダンジョン…」

パリス「階段を下りようとしたら、ねぇ…」

ネル「不思議なこともあるもんだね!」

ベネット「それで、ここはどこなのか教えてほしい。単純なワープなら知ってるところかもしれないし」

テレージャ「ネス公国領ホルムの町で最近発見された遺跡、ってところかな」

シズナ「ネス公国?ホルム?」

ベネット「…ダメだ。まったく知らない」

アナンタ「うーん…あ、じゃあ逆にさ、ブロッコリー村とか、ココット村は?」

パリス「聞いたことねえな」

ネル「わたしもー」

テレージャ「同じく」

ウェンドリン「知らないです…」

アナンタ「そっかぁ…」

シズナ「どうしましょうね」

ベネット「この遺跡の外はホルムとか言う町なんでしょ?」

ウェンドリン「はい」

パリス「なんにもねえ寂れた町だけどな」

ベネット「人がいるなら聞き込みしてみてもいいかもしれない。もしかしたらだんじょん村を知ってる人がいるかもしれないし」

アナンタ「その案は良いかもしれないけど、ちょっと確認してもいいかな?」

ウェンドリン「はい。答えられることなら」

アナンタ「…今って何年何月何日?」

ウェンドリン「いま、ですか?」

テレージャ「なるほど」

ベネット「・・・そういうことも考えられる、か」

ネル「え?」

シズナ「ど、どういうこと?」

パリス「・・・異世界、ってことか?」

テレージャ「ご名答。可能性がなくもないかも、ってくらいだけどね」

ネル「ええっ!?」

ウェンドリン「今日は・・・王国暦298年、4月4日ですね」

アナンタ「王国暦かぁ」

ベネット「あんまり当てにはならないわね。国で定めた私たちの知らない暦が使われてるってことも不思議なことじゃない」

シズナ「だんじょん村とぜんぜん違うのは確かね!」

パリス「まぁ、こんなところで話してても何にもならねえ。アンタら、町に行くなら案内するがどうだ?」

ベネット「願ってもないな、ありがたい。どうする、アナンタ?」

アナンタ「うう…」

ネル「ん?どうしたの?」

シズナ「・・・!まさかアナンタ」

アナンタ「い、いやね?知らないところに来ることなんてそんなにないことだから…」

ベネット「・・・探検したいわけね?」

アナンタ「だってさ!町に出て、知ってるところだったらがっかりじゃん!このわくわく感を保ったまま、せっかくだから探検したいじゃん!」

ウェンドリン「えぇー」

テレージャ「ふむ」

ネル「わかる!わかるよその気持ち!」

ベネット「わかっちゃうのか・・・ま、うちのリーダーがこう言ってることだし、ありがたいけど少し遺跡探索してから町にはいかせてもらうわ」

パリス「そ、そうか。ベネットも大変だな」

ウェンドリン「あ、それならアナンタさん。私たちと一緒に行きませんか?」

アナンタ「え?いいの?」

テレージャ「確かに、歩き回って貴重な出土品が壊れたりしたら事だ。腕も立つようだし」

ベネット「こっちとしてもその方が安全か。そちらの皆さんがいいのなら甘えさせてもらおうかな」

ウェンドリン「はい!ぜひ一緒に!」

パリス「悪いやつらじゃなさそうだしな」

ネル「うん!アナンタさんの技を盗むぞー!」

アナンタ「お?ネルちゃんにできるかな?」

ベネット「それじゃ、改めてよろしくね?」

ウェンドリン「はい!」

パリス「さて…さっそくだが奥に進もう。アナンタ達はどこを探索してきた?」

アナンタ「向こうの扉は、鍵をベネっちが開けて調べたんだけど、銅貨と胸当てとお守りが出てきたよ。あとそれ目当てで襲ってきた人を気絶させたかな」

ベネット「もう一つ、あっちは調べようとしたら子鬼?夜種?が逃げ込んで、内側から鍵をかけられたわね。そこから階段がある方に歩き出したらさっきの状況、ってわけ」

ウェンドリン「なるほど。テレージャ、行ってみる?」

テレージャ「いや、いい。特になにもない気がする」

ベネット「なにもなかったわよ?」

ウェンドリン「あ、違うんです。テレージャは遺跡の探索が目的なので…」

ベネット「ああ、そういうこと。確かに専門的なことはわからないな」

シズナ「テレージャは、ってことはみんな目的はばらばらなのかしら?」

ウェンドリン「そ、それはですね…」

~ウェンドリン説明中~
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・
ウェンドリン「と、そういうわけでして」

アナンタ「そっか。大変なんだ。みんな…」

シズナ「パリスの妹さん、治るといいわね…」

パリス「ああ。治してみせるさ」

ベネット「にしても呪いか…最近そんな話があったような…」

アナンタ「あっ!!悪竜の卵!」

テレージャ「悪竜?」ピクッ

シズナ「そういえば呪い除けにもなるとかなんとか書いてあったわね」

ネル「そっちの国のお守りかなんか?にしては不気味な名前―」

ウェンドリン「悪竜の卵だなんて、なんだか怖いですね」

アナンタ「いやーダンジョンで拾ったは良いけど、すぐ無くなっちゃってさ」

テレージャ「なくなった?そうか…」

ベネット「…」

ウェンドリン「どうしたの?ベネットさんもテレージャも難しい顔して」

ネル「おなか痛い?」

パリス「テレージャ、何か知ってるのか?」

テレージャ「いや…アナンタくん。悪竜の名前、アジ・ダハーカじゃないかね?」

アナンタ「!!そう!そうだよ!でもなんで知って…?」

シズナ「もしかして、やっぱり異世界なんかじゃなかったんじゃ…!?」

パリス「聞いたことねえな」

ネル「わたしもー」

ウェンドリン「私も」

テレージャ「ウェンドリンくん達が知らないのも無理はない。アジ・ダハーカとは悪竜の名の通り、世界を滅ぼした竜の名だ。滅びの竜とも呼ばれる」

テレージャ「ただ…」

ベネット「ただ?」

テレージャ「…あの神話はこの世界のものではない」

アナンタ「!!」

シズナ「え!?」

パリス「どういうことだ…?」

テレージャ「言い方が悪いかな。つまり、私の知っている滅びの竜の伝承は…」






テレージャ「…完全にフィクションだと証明された話なんだ」







次回、「物語の物語」に続く…

幕間
~アナンタの!その辺で拾ったアイテム説明~

テーブル
世界を救った勇者が使ったとされる伝説の盾…?
〈スタン/防御低下無効〉装備可:アナ・ネル
〈斬撃/刺突/打撃/投擲耐性〉

ある町が勇者によって救われた。
そのとき勇敢な行動に感動した町民が勇者に贈ったとされるモノ。
耐性といい異常無効といい素晴らしいんだけど、
重すぎて私とネルちゃん以外は装備不可。
というかこんなものを持ちながら探索なんてできっこない!
これを盾として使っていた勇者はとんでもなく力持ちなんだろうな…
ベネっちやパリスくんには「邪魔だろ」と不評。
いや別に私たちも気に入ってるわけじゃ…なに膨れてるのさネルちゃん!

幕間
~アナンタの!その辺で拾ったアイテム解説~

命の薔薇(赤)
人間の生命力とリンクしている真っ赤な薔薇。
〈暗闇/毒無効〉    装備可:全員
〈HP自動回復3%〉
〈MP自動回復3%〉

芸術の異空間に迷い込んだ少女の持ち物。
作り物のように真っ赤な薔薇は、見ていると儚さと力強さを両方感じる。

花びらは所持者の心を表すらしく、
私が持つと一気に20枚くらい花びらが増えた。
ちなみにこの薔薇、水に挿しておくと失った花びらを自動的に回復してくれる。
使い方次第では便利かも…

今更ですが、原作で喋らないキャラも私の想像でバンバン喋るのでご了承ください…

アナンタ「そ、そんな!アジ・ダハーカが…」

ベネット「フィクション…」

シズナ「じゃ、じゃあこの世界は…勇者も神様もいないってこと…?」

テレージャ「…私が知っている滅びの竜の話はね」

テレージャ「悪竜、魔王、古狼、水王、九尾、地竜。この6つの魔物が描かれた石版を発掘した考古学者の作った娯楽のための文章として広く世間に浸透したものなんだ」

テレージャ「もちろん石版の出土は、過去を知る手がかりとして優秀な手がかりとなったが…」

テレージャ「石版の状態なんかを調べていくうちに発掘された遺跡との年代のズレが指摘されて、結局その考古学者がでっちあげで作り上げた石版だとされたよ」

テレージャ「その後、考古学者もそれを認めた」

テレージャ「…つまりは、物語なんだ。悪竜の伝説は」

アナンタ「…」

シズナ「…」

ベネット「そう、か…」

ウェンドリン「それじゃあ…アナンタさんたちは物語の…」

パリス「怪しいもんだな。こんなことは言いたくねえが、それが本当だとしたらアンタらはオレたちを担いでるって可能性も出てくる」

アナンタ「!そんなこと!」

ベネット「…いや、そう思われても仕方ない」

アナンタ「ベネっち!」

ベネット「でも、信じてほしい。今まで私たちが話したことは事実で、嘘なんて言っていない事を」

シズナ「…そうね。信じてもらうしかないわ」

アナンタ「…」

ネル「…わたしは信じるよ?」

パリス「ネル…」

ネル「だってその方が面白いじゃん!物語の世界の人たちなんて、素敵だよ!」

ウェンドリン「私も、信じます。アナンタさんたちが嘘をついてるようには見えませんし」

テレージャ「ふむ。ウェンドリンくんがそう言うなら私も異論はないよ」

パリス「お前ら…」

アナンタ「パリスくん。私も別に急に信じてもらえるとは思っていないよ。むしろそれが普通だ」

パリス「…」

アナンタ「だから、怪しいと思うなら私たちを無視して先に行ってほしい。元々そのつもりだったし、私たちは私たちでやっていけると思う」

ウェンドリン「そんな!」

パリス「…わかったよ」

ベネット「…」

パリス「そもそもウェンドリンがいいって言うんだ。オレたちのリーダーはウェンドリンだ。従うしかねえだろ」

シズナ「パリスくん…!」

パリス「ただし!妙な真似したら容赦しねえ。いいな!」

テレージャ「パリスくんではお三方をどうすることもできないと思うが…」ボソボソ

ネル「しっ!せっかくカッコつけてるのに失礼でしょ!」ボソボソ

パリス「聞こえてんだよ!」

アナンタ「あははは!ありがとうパリスくん。じゃあ、私たちは仲間だ!」

シズナ「よろしくね!」

ウェンドリン「よろしくお願いしますね」フフフッ

ベネット「それにしても別世界か…帰れるんだろうな」

テレージャ「どうやら行動目的がはっきりしたね」

シズナ「ええ!私たちは元の世界に帰る手段を探すわ!」

ネル「えー!」

アナンタ「えー!」

ベネット「なんの『えー』だ2人…」

アナンタ「まぁまぁベネっち。異世界を感じながらゆっくり帰る手段を探すのもオツってやつだよ」

ネル「そうだよベネっち!」

ベネット「…アナンタが増えた」ハァ

ウェンドリン「が、がんばってください」

パリス「そろそろ進むか。結構時間とっちまった」

テレージャ「そうだね。どうやらこのフロアには何もないようだ」

アナンタ「よぉーし…私がさっき鍵をかけられた部屋をぶっ壊してあげよう!」

テレージャ「やめてくれ。貴重な資料が…」

ベネット「みんな。こっちの水溜り、下に続いてるようよ」スタスタ

ネル「おう!?ベネっちいつの間に!」

ウェンドリン「そこから下に行けるのかな」

テレージャ「行こうか」

シズナ「戻ってこれるのかしら」

アナンタ「チッチッ、シズナちゃん。戻ることは戻ろうと思ったときに考えるものなのだよ」

パリス「まさに今アンタはその状況だけどな」

ベネット「先が思いやられる」ハァ

ネル「安全に降りれたりはしないかな?」ザブザブ

ベネット「ネル、急に足場が無くなるから気をつけて…」

ネル「大丈夫だいじょう、ぶっ!」ズル!ヒュー…

ウェンドリン「ネル!」

ベネット「言わんこっちゃない」

シズナ「大変!追いかけましょう!」

テレージャ「結局行くしかないんだね」

パリス「ネル…」

ウェンドリン「早く行かないとネルが!」

アナンタ「よし、行くぞぉ!」バチャン!ヒュー

ベネット「ロープとか垂らして…まぁ、いいや…」

パリス「諦めるなよ!見捨てないでやれよ!」

テレージャ「ごちゃごちゃ言ってないで、行こう」

ウェンドリン「おーっ!」

バチャ!バチャ!ヒューッ…キャァー…

――――――――――――――――――――――
―――――――――――――
―――――――
~???~
ネル「ぷはっ!」

アナンタ「ぷはっ!」

ベネット「…」スタッ

パリス「みんな、無事か?」スタッ

テレージャ「ああ」スタッ

シズナ「ええ!?」ドサッ

ウェンドリン「シズナさん大丈夫ですか!?」スタッ

ベネット「いつものことだから。で、ここは…」

???「…」バシュ

アナンタ「っ!危ない!」

シズナ「え?」

ドシュ

ウェンドリン「!!」

パリス「壁に刺さったか…矢?」

???「あなたたち、怪物?盗賊?何者?」

ウェンドリン「難しい質問だね」

テレージャ「怪物でも盗賊でもないがね」

シズナ「何者、は難しいわ」

???「ば、馬鹿にしてるの!?いいから答えて!」ギリリ

パリス「…別にアンタに危害を加える気はねえ。弓矢を下ろしてくれ」

???「む…」スッ

ベネット「物分りがよくて助かる。私たちはこの遺跡を探索している、冒険者だ。あなたは?」

???「…キレハ。失礼、どうやら探索者仲間のようね」

ウェンドリン「キレハちゃん。よろしくね」

キレハ「…ひょっとして、あなたたち上の階で穴に落ちて?」

ベネット「落ちたのは一人だけね」

ネル「ぐぬぬ」

キレハ「無様なものね。なんなら、ホルムに出るまで力を貸してあげましょうか?」

キレハ「こういうところでは助け合いが大事ですものね。」

キレハ「……別に一人で心細いわけじゃないわよ?」

アナンタ「うわぁ」

シズナ「ツンデレ!ツンデレってやつね!?」

キレハ「誰がツンデレよ!」

ネル「シズナちゃんテンション上がりすぎ…」

テレージャ「どうする?ウェンドリンくん、アナンタくん」

ウェンドリン「私は一緒に行ってもいいよ?」

アナンタ「私も!悪い人じゃなさそうだし!」

キレハ「そ、それじゃあホルムまで、よろしくね?」

パリス「ああ。よろしく頼む」

ネル「あれ?素直だねパリス」

パリス「こんなところで協力しない手はないってな」

キレハ「ありがたいわ。ここ…なんだか急に景色が変わって正直お手上げだったの」

ベネット「そうだ。ここ、なにか変じゃないか?」

ウェンドリン「…確かに、雰囲気が変わった?」

キレハ「いろいろ探索しようとしたけれど、上への階段どころか住み着いてる動物が強すぎてこの辺りから自由に動き回れないのよ」

テレージャ「…キレハくん」

キレハ「なによ」

パリス「…お前も落ちてきたんだな」

アナンタ「あー…」

ネル「あー…」

キレハ「…ッ!!なによ!落ちたんじゃなくて降りてきたの!」カッ

ウェンドリン「真っ赤…」

シズナ「か、かわいい!」

キレハ「ほっといてよ!」

テレージャ「どちらでもいいが、ここは竜の塔ではないな」

アナンタ「え?」

パリス「どういうことだ?」

テレージャ「先ほどまで見受けられた古代アルケアの特徴が消えた。さらにここはまるで城のような造りだ」

ウェンドリン「お城…?」

ネル「オハラさんからもらった遺跡についての情報が間違ってたとか?」

パリス「いやそれはねえ。あっちだって商売だから、自ら信用は落としに来ねえだろ」

ベネット「オハラさんっていうのは?」

ウェンドリン「よく行く酒場の店主さんで、お金を払うといろんなことを教えてくれるんです」

ベネット「そういうタイプの職の人間が嘘を教えるとは思えないな…」

アナンタ「と、いうことは!」

ネル「…!!もしかして!」

テレージャ「異世界、か」

パリス「まさか!」

ベネット「ありえなくはないな。私たちみたいな例がある」

キレハ「ちょ、ちょっと待って?話がわからないわ。説明して!」

テレージャ「どういえばいいかな」

ウェンドリン「うーんとね」カクカクシカジカ

キレハ「…」

アナンタ「信じられないだろうけど、そういうことなんだ」

キレハ「…『悪竜の伝承』は知ってるわ。それに、私自身もこんな目に会ってるし…」

ウェンドリン「信じてくれるかな」

キレハ「…そうね。嘘をついてるようには見えないし」

アナンタ「よかった!ありがとう、キレハちゃん」

ベネット「さて、これからどうする?」

シズナ「キレハちゃん一人で行けなかったところに行ってみましょう!」

ネル「賛成!」

テレージャ「いろいろ見て回りたいし、私もそれでいい」

アナンタ「わくわくするね!」

パリス「単純だなアナンタも…」

キレハ「それなら、あっちに行ってみましょう。ネズミがウジャウジャいてどうにもね」

????「そっちは…危ないかも」

アナンタ「!?」

ベネット「誰?」キッ

ネル「むむむ」ジャキ

????「…」チャキ

パリス「やろうってのか」ザザッ

???「こら、ルドルフ!」

テレージャ「ん?」

???「すみません、みなさん。ちょっとこの人、コミュニケーション苦手で」

キレハ「苦手、って…」

ルドルフ「ヒマリ…」

ヒマリ「人にいきなり武器向けちゃダメ!」

ルドルフ「…でもあいつらが先に」

テレージャ「いや、すまない。敵意はないんだ。見知らぬ土地でピリピリしていてね」

ルドルフ「…」スッ

ヒマリ「うんうん…あ、そういえばみなさん、知らない方ばかり。新入りですか?」

ベネット「新入り…間違ってはいない、のか?」

アナンタ「私たち、遺跡を探索していたらいつの間にか迷い込んでて!」

ネル「そうそう!水溜りの穴に落ちたと思ったらここにいて!」

シズナ「本当よ!?嘘じゃないのよ!?」

キレハ「…なんであせってるのよ」ハァ

ルドルフ「…ヒマリ。この人たち」

ヒマリ「うん。…同じ、みたいだね」

ウェンドリン「あの、同じ?って…」

ヒマリ「…すみません、もう一度あなたたちがここに来た経緯を教えてくれませんか?」

ルドルフ「…」

ウェンドリン「え、あ、はい」カクカクシカジカ

ルドルフ「…やっぱり。あいつらと同じだ」

ヒマリ「そうだね。…みなさん、とりあえずこんなところで立ち話も何ですし、一度私たちのネグラに来てください。そこでお話しましょう」

キレハ「だって。どうする?」

アナンタ「どうするもなにも…ついて行くしかないんじゃないかな?」

ネル「そうだね。手がかりも何もないし」

ウェンドリン「悪い人たちじゃなさそう」

パリス「この人数差ならなにかあっても何とかなるだろうしな」

ネル「パリスは心配性だなぁ」ヤレヤレ

ベネット「この場所の情報もほしいし、ついて行ってみましょう」

ウェンドリン「…えーっと、ヒマリさんにルドルフさん?」

ヒマリ「はい!」

ルドルフ「…」

ウェンドリン「お言葉に甘えて、よろしくお願いします!」

ヒマリ「はい!私について来てくださいね。はぐれないように…」









????「待て待て」シュタッ







シズナ「!?何!?」

????「まったく…トルバドールの奴は移動が雑すぎる。こんなにウジャウジャと面倒な」

ベネット「何者だ?」

ヒマリ「また知らない人…」

ルドルフ「今度はなんだか邪悪な雰囲気だ」

????「お初に。十二魔将が一人、風の統率者ハスタァという者だ」

アナンタ「十二魔将?」

ハスタァ「気にしないでくれ。さて、この人数は私一人では骨が折れるな…」

パリス「どうやらやる気らしいな」

テレージャ「穏やかじゃないなぁ」

ウェンドリン「でもこの人数差なら!」

ハスタァ「…ちょうどいい。試運転も兼ねてこいつの相手をしてもらおう」パチン

ブゥン…

???「ぐぎゃぁぁあぁああぁあぁぁ!!!」

アナンタ「な、なんだ!?何もないところから!」

ヒマリ「この見た目は…」

ルドルフ「?」

シズナ「竜…しかもこれは」

ベネット「…地竜!!」

テレージャ「なんと!」

キレハ「六魔伝説の…!?まさか実在するなんて!」

ハスタァ「レプリカの割には動きそうだ。ついでに夜種とねずみにもご登場いただこう」パチン

夜種「ギャ、ギャギャギャ!!!」ブゥン

ねずみ「…!!」ゾロゾロカサカサ

ヒマリ「こ、こんなにたくさん!」

ネル「夜種まで!?」

ウェンドリン「何が起きてるの…!?」

パリス「この野郎!!」ブン!

ハスタァ「おっと」ヒラリ

ルドルフ「…素早いな」

アナンタ「パリスくん武器投げちゃダメ!」

ハスタァ「…私が相手するまでもない。それでは皆様。よい夢を」ヒュン!

ベネット「…行ったか」

シズナ「ちょっと!囲まれてるわよ!?ピンチじゃない!?」

キレハ「数が多い…それに地竜が!」

地竜「ゴアアアアアアアアアア!!!」ドシン!ドシン!

ルドルフ「来るか…!」

アナンタ「仕方ない!かかって来い!」バッ

テレージャ「結界の準備を…」

シズナ「…!!来るわよ!」

夜種「ギャギャギャ!!」ブン!!

ウェンドリン「危ない!」ガキン

キレハ「この!!」ビシュ!ビシュ!

夜種「ギャ!?」ドスドス!

ベネット「やるわねキレハ!っと!」ヒュヒュン!

ねずみ「…!!?」バチンバチン!

ヒマリ「鞭!すごい!」

パリス「剣は1本になっちまったが…おりゃああああああ!!」ズバ

夜種「ギャッ!!」ボロボロ

ルドルフ「土に…?」

ヒマリ「っ!ルドルフ!」バシュ

夜種「ギャ!!」ボロッ

ルドルフ「ヒマリ!…すまない」

シズナ「『フレイム』!!」ボウッ

テレージャ「結界!と…『破魔の理力』!」キュピィーン

夜種&ねずみ「…!!!!!」ジュウウ

シズナ「やるわねテレージャ!」パン!

テレージャ「シズナくんこそ!」パン!

アナンタ「むむぅーん!!!」ググッ

地竜「グガガガアアアアアア!!」

アナンタ「おおおおおおおおおおおっ!!!」グン!ガシッ!

アナンタ「ネルちゃん!」ブンブン!

パリス「す、すげぇ!地竜を振り回して!」

ネル「よし来いアナンタ!」ググッ

ウェンドリン「ネル!?」

アナンタ「おりゃああああああ!」ブン!

キレハ「な、投げ…!」

ネル「全・力・斬・撃!」ズバ!

シズナ「自分の少し上を通過する地竜をネルちゃんが切り裂く!」

地竜「グ、グガアアアアアアアア!!」ドシン!

アナンタ「まだまだ元気だね。これからこれから!」

キレハ「ねずみと子鬼は!?」ハッハッ

ヒマリ「こっちは全部片付いたよ…!」フゥー…

ウェンドリン「シズナさんとテレージャが広範囲魔法で!」ハァハァ

パリス「こっちも終わったぜ」ゼェゼェ

ルドルフ「…ねずみは片付けた」

ベネット「なんとかね」フゥ

アナンタ「あとは地竜だけか…!!」

ルドルフ「…」ブルルッ

ヒマリ「…ルドルフ?」

テレージャ「結界!」キュウン!

シズナ「『精霊の加護』!」キュイイ

ネル「2人とも!」

テレージャ「…今ので魔力切れだ」ハァハァ

シズナ「…私も」ゼェゼェ

キレハ「すごい防御魔法…!」

アナンタ「よし!いくぞ地竜!」ダッ

地竜「グガガガガガ…」ドン!ドン!

ベネット「…なんだ?なにをして…」

ヒマリ「…!!みなさん!上を!」

パリス「上…っ!?」

ガララ…ヒュンヒュン!

ネル「岩の雨!?」

キレハ「きゃっ!?」ズドン

ウェンドリン「キレハちゃん!」ダッ

ルドルフ「ッ!」ババッ

シズナ「え、あっ!」ガガキィ

テレージャ「ル、ルドルフくん!」

ルドルフ「…無事か」ガフッ

シズナ「私たちをかばって…!!」

ヒマリ「ルドルフ…!ッ!!」ガラガラ

ヒマリ「く、次から次に降って…!」ガガキン!

ネル「う、うおお!」ガキガキィン!

パリス「クソッ!さばききれねえ!」バキ!

ベネット「これはまずい…!ッ!」ゴキッ

アナンタ「ベネっち!足が!」バッ

地竜「グガガァ…」ドシン…ドシン…

ネル「そ、そん…な…」ハァハァ

パリス「この状態で…来るってのかよ…」

テレージャ「くっ…魔法が使えれば!」

シズナ「あ、ああっ…」

ウェンドリン「キレハちゃん!キレハちゃん!」

キレハ「うぅ…」ドクドク

アナンタ「この…!!」

地竜「グガァァアアアアアアア!!」スウッ!

ベネット「この感じ…!!ブレスか!」

ヒマリ「みなさん!どうすれば…!」ハァハァ

テレージャ「万事休す…か…」

地竜「グガァッ!!」グゥン!

ベネット「来る!!」

ウェンドリン「防御を…!」ババッ







????「せいっ!!!」バッ!ビシュンビシュン!






地竜「ゴグ!?」ドサッ





シズナ「な、なに!?」

アナンタ「地竜が…?」

地竜「ググググ…」ググッ

????「なんだ、ひるませただけなの?」スタッ

????「…」スタッ

ヒマリ「!!」

パリス「なんだあいつら…ロボット?」

ウェンドリン「助けてくれた…?」

ヒマリ「カーリーさん!クォートさん!」

カーリー「ヒマリ!なんだか騒がしいから様子を見に来たら、随分とピンチだったようね!」

クォート「…」スチャ

アナンタ「助かったよ!えーっと…」

カーリー「わたしはカーリー!カーリーブレイス!こっちの無口なのがクォートね!」

パリス「自己紹介はあとでいい…!今はあの竜を!」

カーリー「オーケー!やっちゃいましょうクォート!」

クォート「…!」

アナンタ「私も一緒に戦う!」

ヒマリ「私も…!」

カーリー「いいケド…足引っ張らないでよね!!」バッ

クォート「…」ババッ

ウェンドリン「みなさん、応急処置を!」

シズナ「キレハちゃんは…?」

ウェンドリン「簡単な処置はしました。血は止まったみたいです…ベネットさん添え木を」バサッ

ベネット「つつ…助かる。悪いわね」

パリス「ははっ、なんてザマだ…」

ルドルフ「人のことは…言えないな」

テレージャ「安静にしたまえ。…さて、あの4人に運命がかかっているな」

ネル「頼むよ、みんな…」グッ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
カーリー「それっ!」バババシュ!

地竜「ゴガァァァァァアアアアア!!」ヨロ

アナンタ「連射!すごい!」バッ

カーリー「マシンガンよ!」エッヘン

クォート「…」バシュ!

ヒマリ「クォートさんは高威力のレーザー!」

カーリー「あれこそ最強の銃、シュプール!」

アナンタ「解説慣れしてる…なっと!」バキィ!

地竜「グガァァ!!」

カーリー「やるじゃない!」

ヒマリ「『インフェルノ』!」シャキン!

地竜「ガググ…」バシュ

アナンタ「外殻が硬くてあんまり効いてない!」

カーリー「何とかして内部に!」ババババババ!

地竜「ガァァァアァアアアアアアア!!」スウッ

アナンタ「!!ブレスだ!」

地竜「…!!!!」バァァァァァアアアア!!

クォート「…!!」ブワッ

カーリー「クォート…!きゃっ!」ブワッ

アナンタ「2人とも!!」スタッ

ヒマリ「直撃…!!」スタッ

カーリー「げほ、げほ、なにこれぇ!」

クォート「…」キュインキュイン

アナンタ「見た感じ毒ブレス…大丈夫!?」

カーリー「毒?それなら効かないわ!私たちロボットだもの!」

アナンタ「ロボット!?」

ヒマリ「…!!もう一回来ます!」

地竜「ググゥ」バッ

アナンタ「毒の瘴気が引いてく…?まさか、別のブレス!?」

クォート「…」ダッ!

カーリー「クォート!!」

ヒマリ「クォートさん!!」

アナンタ「目の前に飛んで…!危ない!」

地竜「グガァ!!」

クォート「…」ニヤリ

地竜「!?」

クォート「!!」バシュゥー!

地竜「ゴ、ゴグアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

カーリー「口の中に、スネーク…貫通弾を…」

アナンタ「た、倒した?」

クォート「…」スタッ

カーリー「すごい!すごいじゃないクォート!」ピョンピョン

ヒマリ「…っ!!まだ!!」

地竜「グ、ググ…」

アナンタ「な、なんてタフなんだ…」




ブゥン!

??????「…勝手に使われた挙句、この有様 ひどいことをするなー」

カーリー「!!誰か竜の上に!」

ヒマリ「え!?」

??????「今回はここまで みんな、よく休んでね どうせまた戦うだろうし」

アナンタ「女の…子?」

クォート「…」チャキ

??????「やめときなってー どうせ無駄撃ちなんだからさー」

クォート「…」

カーリー「あんただれ!?」

??????「…んー 通りすがりの 魔法少女…かな」

アナンタ「魔法少女…?」

ヒマリ「たしかにそんなような格好…」

??????「それじゃあ 地竜は回収するから またねー」ブゥン

カーリー「待ちなさい!…行っちゃった。何者だったのかしら」

アナンタ「気になるけど、とりあえずみんなと安全なところへ!」

ヒマリ「はい!ネグラに運びましょう!カーリーさん、クォートさん、手伝ってください!」

カーリー「いいわよ!」

クォート「…」コクリ

アナンタ「レッツゴー!」

魔王物語物語、参戦!

ヒマリ 島の住民。失われた物語、『魔王物語』の結末を探すことが使命。

ルドルフ 無口で無表情な少年。赤ん坊のころ捨てられ、フロドナという男に拾われる。『魔王物語』の第三章を所持。

洞窟物語、参戦!

クォート とある島で起こった大事件を解決した探索型戦闘ロボット。
     事件解決後はカーリー、かつては敵だったバルログというロボットと共に穏やかに暮らす。

カーリーブレイス クォートと共に事件を解決に導いた女性型探索戦闘ロボット。
         3人での穏やかな暮らしを満喫している。

幕間!
~アナンタの!その辺で拾ったアイテム解説~

異形の森の弓
緑髪のエレアは殺せ。
〈投擲/毒〉       装備可:ベネ・キレ・クォ・カリ
〈スキル習得〉      (固有技:異次元の手)

いきなり物騒だな!?
大いなる災厄を呼ぶとされ、
弾圧された森の民「エレア」の青年ロミアスが使った弓。
毒の追加効果もさることながら、命中した相手を自分の傍まで引き寄せる、
「異次元の手」という効果も特徴的。でも弓矢使いに必要なのかなその能力…
ロミアス自身はとてつもなく捻じ曲がった性格をしており、
初対面の相手を騙して人肉を食べさせようとしたり、
戦闘訓練として1対1でも厳しいモンスターを3体けしかけてきたりと
無茶苦茶。
あぁ、それで冒頭の台詞なのね…納得…

黄熊の木製バット
黄色の熊が使っていたとされる伝説のバット
〈打撃/即死〉         装備可:アナ・ネル・パリ・ルド
〈スキル習得〉        (固有技:ホームランダービー!)

熊がバットて…
野球というスポーツで活躍した熊が使っていたらしい。
森の仲間たちと運動するなんて、メルヘンな雰囲気とは裏腹に、
上下に揺れる魔球を投げるカンガルーや消える魔球を投げる虎などと
死闘を演じた…らしい。

ためしにネルちゃん、パリスくん、ルドルフくんと
ホームランダービーなるものをしてみたけど、
まずバットに球が当たらない。
やってみて気付いたけど、このバットただの丸太なんじゃ…うわなにをするやめ

――――――――――――――――
――――――――――――
―――――
~ネグラ、ルドルフの部屋~
ヒマリ「…なるほど。ということは、アナンタさんとウェンドリンさんはまず違う世界の住人だ、ってことですね?」

ウェンドリン「そうなる…かな」

アナンタ「私たちもまだ実感はなかったんだけど、立て続けにこんなことがおきるとね…」

テレージャ「流石に混乱してきたよ。ここまで異世界人が一同に会するとはね」

シズナ「そういえば、カーリーにクォートもこの世界の人じゃあないのよね?」

カーリー「そうね」

クォート「…」コク

ヒマリ「お2人は、つい先日、ここから南にある世の瀬っていう川に流れ着いてたんです」

カーリー「正直どうしてあんなところにいたのかは覚えてないのよ。知らないうちに、ってね、クォート?」

クォート「…」コク

ネル「その割には武器は持ってたんだね!」

カーリー「そうなのよ。だいぶ前に引退して、セーコーウドク?な生活だったのに」

ヒマリ「…謎は深まるばかり、ですね」

アナンタ「それに、あのモンスターをけしかけた奴もいるし」

テレージャ「風の統率者、ハスタァとか言ったな」

ウェンドリン「ジューニマショーとも言ってたね」

アナンタ「魔法少女も何者かわからないし…」

シズナ「魔法少女?」

ヒマリ「クォートさんが地竜に深手を負わせて、その直後に地竜を回収するって言って消えちゃいました。それ以上のことは私たちもよくわからないんですけど…」

テレージャ「そうか。それにしても魔法少女とは…」

アナンタ「六魔にジューニマショーに魔法少女…!」ゾクゾク

シズナ「アナンタ…」

ウェンドリン「わくわくが隠しきれてませんよ…」

アナンタ「え、そ、そんなことないよ!は、ははは」

アナンタ「とっ、ところで!ヒマリちゃんとルドルフくんはここの住民なの!?このネグラも、部屋が何個かあって人が他にもいるみたいだけど!」

ヒマリ「はい。でも、目的があってここにはいるんですけどね」

シズナ「目的?」

ヒマリ「はい。私は、魔王物語というお話の結末を探していて…」

テレージャ「魔王物語…!」

ネル「知っているのかテレージャ!?」

テレージャ「ネルくんは知らないのかい。最近原本が盗まれたと話題になったんだが…」

ヒマリ「原本…!?」

テレージャ「ああ。技術的に無理があるとしてオーパーツ扱いされた、最古の紙媒体の物語、『魔王物語』。厳重に保管されていたはずなのに盗難されたと騒がれていたよ」

アナンタ「え?そんなに古い本なの?」

ヒマリ「いえ…本自体はそんなに古いものでは…」

シズナ「じゃあやっぱり異世界…?」

カーリー「ちょっと待って!わけがわからなくなってきたわ!とにかく、こんなことはいくら考えてても無駄よ!」

ウェンドリン「カーリーさん…」

テレージャ「たしかに、理解の範疇を超えている。情報開示だけ済ませたら何らかの行動をしたほうが良いな」

ネル「でも、みんなの怪我が治るまでは何にもできないんじゃないかな」

ヒマリ「それなら、二手に分かれましょう。ここでの看病をする人、島を探索して手がかりを探す人」

シズナ「いいアイデアね!回復なんて待ってたら、その時間がもったいないもの」

アナンタ「よぉし、チーム分けしようか!えーっと…」

探索組:アナンタ、テレージャ、ネル、ヒマリ、カーリー、クォート

待機組:ウェンドリン、シズナ、パリス、キレハ、ルドルフ、ベネット

シズナ「綺麗に分かれたわね」

アナンタ「バランスもなかなかでしょ?」フフン

ヒマリ「…ルドルフ大丈夫かな」

ウェンドリン「あはは…」

カーリー「異論はないわ!みんなに伝えてくるわね!」タッ

ウェンドリン「あ、私も行きます!いろいろ説明しなきゃですし」タッ

ネル「あーあーあーあー」ダラーン

シズナ「ど、どうしたのネル?」

ヒマリ「ふふっ、今日はもう遅いですし、皆さん休みましょう」

ネル「そうだね。いろいろあって疲れたー」グデー

アナンタ「なんだか変な疲れだよね・・・いままで経験したことない…」

テレージャ「それはそうだろう。なかなかできる体験ではない」

アナンタ「明日かぁ~…」

アナンタ(魔王物語が盗まれた話…そして地竜の復活…)

アナンタ(アジ・ダハーカの卵がなくなったことが、こんな形で不安材料になるなんて…)

シズナ「?どうかした?アナンタ。珍しく考え込んじゃって」

アナンタ「…いや、なんでもないよ。頭の中整理しとかないとさ、パンクしちゃいそうで」

ヒマリ「お話だけでも壮絶でした。今日はゆっくりしてくださいね。雑魚寝ですけど…」

アナンタ「うん。ありがとねヒマリちゃん!」

アナンタ(考えても仕方ない、か…)

アナンタ(…)

俺も最初勘違いしてたけど十二魔将じゃなくて十二悪魔将なんだよね
細かいことだけど一応

>>149 脳内保管で…悪魔将にしといてくださいすみません

~鐫録の砂~
アナンタ「はァアアアアアアアアアアア!!!」ビャシュバシュ

ヒマリ「ォオオオオオアアアアアアアアアアア!!!」キュイイ!!

ネル「だらっしゃァアアアアアアアアアア!!!」バシュ

クォート「…!」ズガーン!ドガーン!

サソリ「…」ドサドサ

サソリ「…」バラバラ

カーリー「…思うんだけどさ」バララララ!

テレージャ「なんだい?」キュピーン!

カーリー「うるさいから見つかってるって考えはあの4人にはないワケ?」シュウウ

テレージャ「…賑やかでいいじゃないか」

カーリー「さっきの廃村みたいなとこでもやたらとサルに絡まれたじゃない!」

テレージャ「クォートくんがひたすらミサイルを撃つからだろう」ヤレヤレ

クォート「…」ズダダダダダ!

アナンタ「ネルちゃん!脇が甘いよ!」ガシッ!

ネル「くそー!アナンタドライバー、絶対習得してみせる!」グワシッ!

アナンタ「はァッ!」ギャララ!

サソリ「!!」ズガァ!

ネル「むむ…てえい!」ギャラ…

サソリ「…!」ブスッ!

ネル「痛い!刺された!」バッ

ヒマリ「大丈夫ですか!おらァ!」バチーン!

ネル「ナゼニッ」ビターン!

テレージャ「ふむ。サソリの毒が抜けたようだね」

ヒマリ「状態異常回復です!」フンス!

カーリー「すごい技ね!」

アナンタ「私にもできるかな!」ワシワシ

ネル「やめて!わたし死んじゃうよ!?」ヒリヒリ

テレージャ「しかし、ヒマリくんはおとなしそうな見た目なのになかなかアグレッシブな技を使うね」

アナンタ「叫んで攻撃力を上げて張り手で毒を治すもんね!」

ヒマリ「お、お恥ずかしいです」

ネル「叫んでみるのはありじゃない?」

アナンタ「そうだな…次からやってみるか」

カーリー「このあたりのサソリは全部倒したわね!」

クォート「…」ジャキ!

クォート「…」バシュ!

サソリ「!!」ジュッ

テレージャ「…今ので正真正銘全部のようだ」

ヒマリ「どうします?あの灯台に行ってみますか?」

アナンタ「さんせーい!わかりやすく怪しいよね!」

ネル「絶対何かあるよー!」

テレージャ「私は廃村から北へ続く道が怪しいと思ったんだが…」

アナンタ「でっかい岩で塞がれてて行けなかったよね」

ネル「アナンタは殴って壊そうとしてたじゃんか」

ヒマリ「あそこは、前から通れなくて…でも、皆さんのおかげで大量のネズミを乗り越えてここに来ることができました!」

カーリー「アレはしんどかったわね!」

ネル「ネズミがあんなに強いとはーって感じだったね!」

クォート「…!」キッ

テレージャ「…?クォートくん、どうかしたかね?」

カーリー「なに?なにか見つけたの?」

クォート「…」ジャキ

ネル「うわわっ!?またサソリ?」

ヒマリ「…いえ、人の気配がします。誰かいるのかも」

ネル「覗き見とは卑怯な!何者だー!」

??「…」ガサッ

ヒマリ「…!!ナナさん!」

テレージャ「知り合いかね?」

ナナ「…どうも、ヒマリさん。あと…お友達の方かしら」

ヒマリ「あ、えと、皆さん、こちらエルオントナナさん。ネグラの住民です」

ヒマリ「ナナさん、こちらはアナンタさん、テレージャさん、クォートくん、カーリーさん、ネルさんです。わけあってこの島の探索をしてます!」

ナナ「そうなの。よろしくお願いしますね?」

アナンタ「う、うん。こちらこそ!」

クォート「…」スッ

カーリー「それで?ナナはこんなところで何をしているの?」

ナナ「…それは…」

ネル「?言いにくいこと、なのかな…?」

ヒマリ「ナナさん…?」

????「魔王物語第一章 塔の悪魔」ヒュー…スタッ

アナンタ「!?な、なに!?空から…?」

クォート「…」スチャ

ナナ「ッ…!!」バッ

????「塔の頂上には願いを叶えてくれる精霊がいる…か なるほど」

カーリー「誰よあなた!」チャキ

??????「塔の頂上には精霊と共に それを守る悪魔がいる よくできたストーリーだな読ませるぜ」ペラペラ

ネル「出てきた割には無視なんて、どういうことだこらー!」

??????「おっと失礼 名乗りからやるべきだったかな」







??????「一つ 卑劣非情の腐れ外道!」











??????「二つ 振り切る憤怒のboiling point!」











??????「三つ 未来をこの手に掴むため!」グルグルグル

??????「四つ 宵の魔討つ我こそは!」グルグルグル











??????「五つ!」シャキーン!





??????「いつも心に愛と勇気を!」




ピーターマン「正義の使者 マスク・ザ・ピーターマン只今 見・参ッ!!」キュピーン!




テレージャ「…ふむ」

アナンタ「ひ、ヒーローだ!すげー!」

ネル「おおっ!!」

カーリー「なんて怪しいヤツ!」

クォート「…」

ヒマリ「魔王物語を…!」

ナナ「なぜそれを!」

ピーターマン「んー これはレプリカってとこかな それよりも…」

ピーターマン「さいはての外でも飛べるってことは それなりに力は働いてるみたいだな」ブツブツ

ピーターマン「でも あんまり大きな力は使えそうにないぜ 不便だぜ」ブツブツ

テレージャ「わけのわからないことを言うね。名乗りはいいから何者なのかを簡潔に答えたまえ」

ピーターマン「いやぁ それはちょっと厳しいってもんだぜ ヒーローには謎がないと」

カーリー「…なら私たちの前まで何しに来たのよわざわざ」

ピーターマン「それはな この魔王物語に出てくる 塔ってのを探してたんだけど…」

ナナ「…」

ピーターマン「どうやら塔違いだったっぽい のでこの辺でヒーロー的にはさらばするぜ」

アナンタ「願いを叶える塔?」

ネル「そんなようなこと言ってたよね確か」

ピーターマン「それじゃあまたどこかで会おう! そっちの青い髪の女!」

ナナ「え…?」

ピーターマン「…自分の物語の決着は自分でつけなよ サラバッ!」バシュ

ヒマリ「…行っちゃった。なんだったんだろう」

ナナ「決着…」

アナンタ「よくわからないこと言ってたね。ナナさん?」

ナナ「…みなさん」

テレージャ「ん?」

ナナ「少し、手伝って頂けませんか」

ネル「なになに?」

ヒマリ「ナナ…さん?」









ナナ「あの、塔に…登りたいんです。私の、決意のために…!」







幕間
~アナンタの!その辺で拾ったアイテム解説~

粉砕おにぎり
はるか昔栄えた盗賊の町で流行った食べ物 (HP 50回復)
POSSESSION[2]最大所持数2個

しっかりと握ったおにぎりを握力で粉砕したもの。
いくら流行りとはいえ、私は間違ってると思うんだ…
これを編み出した人はジョークのつもりだったに違いない。
でないとこんな悪意の塊を世に蔓延らせる理由にならないもの!

ちなみになぜかウェンドリンちゃんが気に入ってしまい、
キレハちゃんがみんなのお昼用に作った、
綺麗なおにぎりがぐちゃぐちゃに握りつぶされた。
あの修羅場は二度と忘れることができそうにないし、
ウェンドリンちゃんもそれ以降おにぎり粉砕をやめた。

ヒマリ「塔…」

ネル「でも、あの建物はどう見たって灯台だよ?」

カーリー「塔…って大きさじゃないわね」

アナンタ「…さっきピーターマンが言ってた。自分の物語の決着をつけろ、って。ナナさんは、何か考えがあるんでしょ?」

ナナ「…」

テレージャ「まぁ、言いたくないのならいいじゃないか。ちょうど私たちもあの灯台に行こうとしていたところだ」

ネル「そうだね!」

ヒマリ「…うん。一緒に行きましょう!ナナさん!」

ナナ「ありがとう、ございます」

アナンタ「…!!な、なんだ!?」

テレージャ「これは…霧?」

カーリー「次から次になんなのよ!」

ヒマリ「あ、ナナさん!」

ナナ「…」スタスタ

ネル「み、見失っちゃうよ!?」

カーリー「一緒に行くって言ったのに急になんなのよ!」

クォート「…」スタスタ

アナンタ「クォートくん!…みんな!追いかけよう!」ダッ

ヒマリ「はい!」ダッ

ネル「ほいさ!」ダッ

カーリー「あーもうっ!」ダッ

テレージャ「…」ダッ

ナナ「…みなさん」

ヒマリ「ナナさん!一人で先に行くなんて…」

ナナ「着きましたよ。これが…私たちが登る塔です」

カーリー「追いついた!」

アナンタ「こ、これは…!?」

ネル「霧が…晴れて…」

テレージャ「…なんてことだ」

クォート「…」

ヒマリ「え…」

カーリー「嘘でしょ…さっきまではこんなに高くは…」

ナナ「…行きましょう。あつかましいとは思いますが、私はどうしても、この塔に登らなくてはいけないんです。それには、ご協力が必要なんです…」

ヒマリ「…」

テレージャ「…悪くない」

カーリー「このくらい不思議じゃないと、来た価値がないってワケね!」

アナンタ「なにかありそうで、わくわくしてきたよ!」

ネル「わたしも!」

クォート「…」コクリ

ナナ「ありがとうございます…ヒマリさん?」

ヒマリ「…!」ハッ

ヒマリ「な、なんでもないです。行きましょう!」

ナナ「はい…!」

―――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――
―――――――――――
~天牢の塔~

アナンタ「結構すごい勢いで登ってるよね」

ネル「つ、疲れてきた」

カーリー「なにへばってるのよ!まだまだね!」

ネル「マシンガンで飛べるのずるいよ…」

ナナ「…」ハァ…ハァ…

ヒマリ「大丈夫ですか?」

ナナ「は、はい。平気です」

テレージャ「ナナくん。君の疲れ方、体力がないだけとは思えない。休んだほうが良い」

ナナ「そんな…こと…あっ!」ガッ

ヒマリ「ナナさん!」スッ

ナナ「…ごめんなさい。大丈夫です。ありがとうヒマリさん」スクッ

アナンタ「…今のも足をとられただけって言うの?顔色まで悪いよ!降りたほうが…」

ナナ「ダメ!」

アナンタ「っ!」

ナナ「…すみません。でも、本当に大丈夫なんです。早く、登ってしまいましょう」

ネル「…あー!疲れた!休もうよー!」

カーリー「…しょうがないわねネルは!少しだけよ少しだけ!」

ナナ「ネルさん…カーリーさん…」

テレージャ「…だそうだ。少し休もう」

ナナ「…すみません」

アナンタ「…ナナさん。やっぱり、あなたに何があってこの塔に登っているのか、教えてもらってもいいかな」

ネル「アナンタ!言いたくないことを無理やり聞いちゃダメだよ!」

ナナ「…いえ、お世話になるのにお話ししないほうが失礼でした」

ヒマリ「そんなこと…」

ナナ「話させてください。これも、決意です」

ヒマリ「…」

ナナ「…私は、大陸に住んでいました。それも、国を治める家に。

―――――幼いころ、魔王物語の1章だけを偶然手に入れたんです。

内容は、先ほどピーターマンさんが言ったように、主人公が塔の頂上に居る精霊に願いを聞いてもらうというお話でした。

そのお話をずっと読んで育ちました。
私には幼馴染のジョルという男の子がいて、その子と2人で、何度も何度も魔王物語の一章を読み返しては、この塔に憧れて色々と想像しながら談笑していました。

魔王物語を手に入れて3年後、父が病気で亡くなりました。
それでも、母と祖父、そして母の身体に身篭ったまだ見ぬ弟に囲まれ、幸せな生活を送っていました。

…しかし、ある日。祖父が病で気がおかしくなってしまいました。
父を亡くした私にとって、父のような存在の祖父でした。

ジョルは、落ち込んでいる私を見て言いました。
「魔王物語のように、塔の上には精霊がいる。一緒に願いを叶えに行こう」

…私の家の裏には、小さな物見塔が立っていました。
今思うと、元気付けようとしてくれたんでしょうね。私たちは2人でその塔を登ろうとしました。
狂ってしまった祖父を正気に戻したくて…。

結果は、失敗でした。
塔に入る前に、祖父に見つかってしまったのです。

狂った祖父は、持っていた杖でジョルをめった打ちにしてしまいました。
…あの時、私には祖父が悪魔に見えたんです。父同然に私に接してくれた、あのやさしい面影はどこにもなく。
恐ろしい形相でただただジョルを叩いて…。

…その17年後。私はもう疲れきっていました。
父が亡くなっていたので、国を治めるのは祖父でした。
でも、病で気が狂った祖父が君主としてまともであることはできません。
残虐でな暴君として君臨し続けました。

私も、
塔に登ろうとした日、侍女に弟は流産だったと聞きましたが、きっと狂った祖父が殺してしまったんだろう…
そう思ってしまうほどに、祖父を恨んで、憎んで。

そんなある日、私はジョルとたまたま再会を果たしました。
車椅子に乗ってはいましたが、元気そうにしていました。

…彼は、今、祖父に対するレジスタンスのリーダーをしていると言いました。
私を迎えに来たとも…

でも、私は行けなかった。ジョルと一緒に、行くことはできなかった。
祖父をこんなに憎んでいるのに…!

…この島には、大陸から見えるくらいの大きさの、塔があります。
私は、この塔を登って…今度こそ…祖父を…

ナナ「―――――――以上です」

ヒマリ「…」

テレージャ「そう、か」

アナンタ「…」

カーリー「ナナ…」

ネル「…」

クォート「…」

ナナ「すみません、長々と…でも、これで全部です。私の話は、全部」

アナンタ「…登ろう」

ネル「…うん。見せてもらったよ!ナナさんの決意!」

テレージャ「ああ。十分すぎるくらいに」

カーリー「ええ!」

ヒマリ「…」

クォート「…?」

ナナ「ヒマリさん?」

ヒマリ「…行きましょう。休んでる暇なんて、ありませんよ!ナナさん!」

ナナ「…!はい!」スクッ

テレージャ「顔色も戻ったようだ。心配なさそうだね」

ナナ「ええ。ご迷惑をおかけしました!さ、行きましょう!」

アナンタ「よーし!ゴーゴー!」ダッ

ネル「うおお!」ダッ

カーリー「私も、自分の足で!」ダッ

クォート「…」ダッ

ヒマリ「み、みんな!速すぎます!」ダッ

ナナ「…本当に、ありがとう、みなさん」

ヒマリ「ナナさん!置いていかれますよ!」

ナナ「はい!今行きます!」ダッ

―――――――――――――――――――――
――――――――――――
――――――
~天牢の塔、頂上~

アナンタ「はぁ…はぁ…」

ネル「つ、疲れた」

カーリー「結構…あったわね…」

テレージャ「…」ハァ…ハァ…

クォート「…」

ヒマリ「頂…上…!」

ナナ「ここが…」

?????「…!!」

アナンタ「なにかいる…!」

クォート「…」チャキ

?????「ギシャァ!!」

ナナ「!!あ、悪魔!?」

ヒマリ「これが…塔の悪魔…!!」

ネル「顔が二つある…」

双頭の悪魔「…!!」ジロ

アナンタ「ナナさんを見てる…?」

双頭の悪魔「ガガガガ…グ…シャァアアアア!」バッ

ナナ「!!」

カーリー「ナナ!危ない!」ジャキ

????「待て」

双頭の悪魔「グ、グルル…」

ヒマリ「!?動きが止まった…!」

テレージャ「やれやれ、2人もいるのか」

カーリー「骨が折れるわね…!」

????「…」バサッ

アナンタ「何者だ!」

????「我が名はナムリス。皇帝陛下に使える魔将が一人!」

テレージャ「ナムリス…?」

アナンタ「皇帝陛下…ってことは、ナナさんの…?」

ナナ「ゼルヒの手のものですか…!」ギリッ

ヒマリ(ゼルヒ…!やっぱり、ナナさんは…)

ナムリス「…我が使える陛下はただ一人、タイタス様のみ。疲弊した英雄と同視など不敬が過ぎる」

テレージャ「タイタス…!!やはりか!」

ネル「え?どうしたのテレージャ」

テレージャ「タイタスは古代アルケア帝国を治める王だよ。大昔のネス公国周辺地域を全てひっくるめたくらいは大きな帝国だった…らしい」

ネル「…ってことは、あいつはわたしたちの世界の!」

アナンタ「なんでそんなヤツがここに!?」

ナムリス「貴様、よく知っているな。ということは、この中に御子が…?」

ヒマリ「なんのことかわかりませんが、邪魔しないでください!私たちには私たちの目的があるんです!」

ナナ「ヒマリさん…」

ナムリス「…願いが叶う塔の出現と聞き偵察に来たは良いが、小五月蝿い人間共だ…」

双頭の悪魔「グルルルルル…」

カーリー「なんでもいいけど、もう我慢の限界よ!やっちゃいましょう!」ジャキ

クォート「…」ジャキ

ナムリス「…出でよ!夜種!」

夜種たち「ギィ!」ブゥン

アナンタ「うわ!出た!」

ナムリス「無関係ならば見逃してやろうとも思ったが…貴様らがその気ならば仕方あるまい」

ナムリス「…さぁ来い。その命、皇帝陛下に捧げよう」

双頭の悪魔「グルァ!!」バッ

ナナ「くっ…!」ガキン!

ヒマリ「ナナさん!」ダッ

ネル「うりゃー!!」バキ!

夜種「ギィイ!」グチャ

アナンタ「子鬼は慣れたもんだね!」バキ!

夜種「ギャー!!」ドサ

テレージャ「破魔の理力!」キュイィ

夜種「ギャアア!!」ボロボロ

アナンタ「まとめて片付けるよ!テレージャちゃん援護よろしく!」

テレージャ「任せたまえ!」

ナムリス「小癪な!」ガキン!

ネル「おっ!とと!お前の相手はわたしだ!うりゃ!」バシュ

ナムリス「…」スゥッ

ネル「あ、あれ?」

カーリー「それっ!」バババババ!

ナムリス「ふん…」スススッ

クォート「…!」ドゴォン!

ナムリス「ふははははは!!」バッ

クォート「…!?」

カーリー「そ、そんな…!」

ネル「攻撃が効かない!」

アナンタ「子鬼、楽になったなーもう終わっちゃったよ!」パンパン

ネル「アナンタ!こいつ、攻撃が…!」

アナンタ「うん。見てたよ。効いてないね…!」

テレージャ「…結界!」キュイイ

ナムリス「ほう…だが!」バキ!

クォート「!!」ゴスッ

カーリー「クォート!このぉ!」バッ!バババババババ!

ナムリス「我が身体に触れることすらままならぬ貴様らに、何ができようか!」スゥッ!

テレージャ「人の手で殺されることはない…」

ネル「え?」

テレージャ「予言だよ。まさか…」

ナムリス「よく知っている。貴様は…危険だ!」バッ!

ネル「テレージャ!」ババッ

テレージャ「!!」

ネル「…ッ!」ザク…

テレージャ「ネルくん!!」キュィイ

ナムリス「させるか!」ヒュッ

テレージャ「ぐ…ッ!」バキィ

カーリー「ネル!テレージャ!この…!!」バラララララ!

ナムリス「無駄だ…」スッ

カーリー「…ッ!『ネメシス』ッ!」ジャキ…バシュン!

ナムリス「同じこと…」スゥッ

カーリー「そ、そんな!」

ナムリス「ハァッ!!」ドゴォ

カーリー「きゃ…!?」

アナンタ「…」ガッ

カーリー「…アナンタ…?」

アナンタ「――!!」バッ

ナムリス「な…!」

アナンタ「うおおおおおおおお!!!『竜王の拳』ッ!!!!」ズッ…ドォ!

ナムリス「――――――ッが!!!」ドサッ

ネル「…アナンタの、こう、げきが…」

テレージャ「ネル…くん…!無理をするな…!」キュウウ

カーリー「攻撃が、通った!?」

クォート「…?」

ナムリス「な、なぜ…だ」

アナンタ「みんなを…よくも!!」ババッ

ナムリス「クッ…!」ガキィ

アナンタ「おおおおおおおおおおおおお!!!!」バキ!バキ!

ナムリス「この…!人間風情が…!ガフッ!」ズル…

テレージャ「アナンタくん…」

ネル「す、すごい…!」

ナムリス「我が…こんな…こんなことが…!!」ズン!ズン!

アナンタ「あの世で詫び続けろォオオオオオオオオ!!!」ドッ…ゴォォォォン

ナムリス「グアアアアアアアアアア!!!!」シュウウ…バタッ

ネル「や、やった…のかな…」

アナンタ「…」ハァ…ハァ…

ナムリス「…」スゥッ

テレージャ「…!ナムリスの身体が透けて!」

ナムリス「…我は魔将、ナムリス…陛下に…命を…捧げた、ただ一人に…過ぎん…」

カーリー「まだこんなのがいるっての!?」

ナムリス「…タイ、タス、様…も、うし…わけ…」ガフッ

ナムリス「…」シュウウ…パッ

アナンタ「消えた…」

カーリー「そういえば、ネル!大丈夫!?」

ネル「えへへ、テレージャのおかげで、なんとか…」

アナンタ「よかった!さて、ヒマリちゃんとナナさんは…?」

ナナ「…」ガタガタ

ヒマリ「ナナさん!」

双頭の悪魔「…」ハァァァ

ネル「ナナ…さんッ!」バッ

テレージャ「ネルくん!ダメだ!」

アナンタ「…そうだ。これは、ナナさんの物語なんだ」

カーリー「まだまだ手出しは無用、ってことね」

クォート「…」

ネル「でも、ナナさん、様子が…」

ナナ「はぁっ…はぁっ…」ガタガタ

ヒマリ「…ナナさん!やめてもいい!つらいなら、私たちが倒すよ!」

ナナ「やめても…」

カーリー「そうよ!ナナ、私たちがいる!」バッ

アナンタ「顔が真っ青!そんなんじゃやられちゃうよ!」

クォート「…」チャキッ

ナナ「…私は…」

テレージャ「ナナくん!」

ネル「ナナさん!」

ナナ(魔王物語、一章…)

ナナ(勇者セラが塔を登る)

ナナ(悪を倒し、願いを手に入れ…)

ナナ(…私はまだ、ハッピーエンドを…?)

ナナ(だとしたら…私は…)

ナナ「…」フルフル

ヒマリ「ナナさんッ!!!!」

ナナ「…!」

双頭の悪魔「グガァァアアアアア!!」バッ

ナナ「あ…」

双頭の悪魔「ガッ!」ドゴッ

ナナ「ぐっ!!」バキィ

ナナ(…おじいちゃん)

双頭の悪魔「な…な…」

ナナ「え…?」

双頭の悪魔「…」ユラァ

ヒマリ「この…!」バッ

双頭の悪魔「ガァァ!!」バキィ

ヒマリ「うらああああああああああああああ!!!」キュイン

ヒマリ「はぁッ!」ガッ

ナナ「ヒマリさん…」

ヒマリ「無理なら…逃げても良いんです」

ナナ「…」

ヒマリ「でも…これは、ナナさんの物語です…!」

ナナ「…!」

ヒマリ「セラでも…ジョルさんでも…おじいさんでもない…!」

ヒマリ「これは…!」








ナナ「…これは…私の…!!!」キッ!






ナナ「みなさん、もう、大丈夫です。これは、私の役目なのです」バッ

アナンタ「うん…うん!」

ナナ「力を!貸してください!」

双頭の悪魔「ギィィ…!」バッ

ヒマリ「オオオオオオオオオオオオオオオッ!」ヒュウン!

双頭の悪魔「!!」ガパッ

テレージャ「何か来る!」

ネル「くっ…!傷が…!」

カーリー「ネル!」

クォート「…」バッ…ズドン!

双頭の悪魔「グガアアアアア!」ボウッ!

アナンタ「炎だ!」

ヒマリ「クォートさんのおかげで軌道が逸れた!」

ナナ「はぁッ!!」バシュ

双頭の悪魔「ア…な…な…」ヨロッ

ヒマリ「ッ!!はっ!」ビシュ!

双頭の悪魔「…!!」ズデン!

アナンタ「ナイス足払い!」

ナナ「…おじいちゃん…」

双頭の悪魔「…ガァアアアアアア!!」ジャキン!

カーリー「剣!!」ババババ!

双頭の悪魔「!!」ブン!ガキズダン!

アナンタ「うわっ!!」

カーリー「…なんとか逸れたわね!」

アナンタ「ありがとうカーリーちゃん!」

ネル「よーーーし!!!」ダッ

テレージャ「ネルくん!まだ傷が!!」

ネル「窮地こそ!成長の糧となる!!いくぞぉ!」ガシッ

双頭の悪魔「…!!?」

ヒマリ「あ、あれは…!!」

ネル「スゥゥゥゥパァァァァァ…ネル!ドライバァアアアアアアアアア!!」ギャララララ!

アナンタ「あっ!」ナンテコッタ

双頭の悪魔「グアアアア!!」ズドォン!

ネル「へへへ…やっ…たぜ」バタッ

テレージャ「ネルくん!…気絶か。無茶をする…」キュウウ

カーリー「今のでアイツ、混乱してるわ!」

ヒマリ「ナナさん!」

ナナ「ええ!」ダッ

双頭の悪魔「アア…こ…こは…」ブゥン!ブゥン!

ナナ「…おじいちゃん」ピタッ

双頭の悪魔「…」ヨロ…ヨロ…

ナナ「…ハアアアアアアアアッ!!」スッ

双頭の悪魔「…」スッ

ナナ「『情…壊…』ッ!!!!」バシュ!

双頭の悪魔「ガ、グギャアアアアアアアアアア!!!」バタッ

ナナ「…」ハァッ…ハァッ…

アナンタ「やっ…た」

カーリー「もう、動かないわね、あの悪魔…!」

テレージャ「ああ…息絶えている」

ヒマリ「ナナさん…!!」

ナナ「…逃げ出すことしかできなかった小さな女の子の物語は、これで終わりました」スッ

ナナ「ありがとう…これで、ナナ・エルオントの物語が始められます…!」ボロボロ

カーリー「あーあ、泣いちゃって、みっともないわね!」グスグス

ネル「カーリーだって…!!」ボロボロ

テレージャ「…ん?ナナ・エルオント?」

ヒマリ「…そう、でしたか」

アナンタ「エルオントナナじゃ…」

ナナ「…お教えします。私の本当の名前は、ナナ・エルオント。大陸で暴君として名高い英雄、ゼルヒ・エルオントの孫娘です」

ヒマリ「…」

アナンタ「ゼルヒ…?」

テレージャ「聞いたことないな」

カーリー「そうね…」

ナナ「…え?」

ヒマリ「あ、そうか…えーっと…」

~ヒマリ説明中~
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
ナナ「そ、そんな!みなさん異世界から!?」

アナンタ「こっちこそそんな!だよ!」

テレージャ「島と大陸…なるほど、狂った英雄…か」

カーリー「ナナも大変ね…」

ヒマリ「そういうわけで、私もみなさんを元の世界に返すお手伝いをしようかなと…」

ナナ「そうなの…でも、ヒマリさんは魔王物語の結末を探しているのでは…?」

ヒマリ「平行して探してます!…まだなにも見つかってないですけど」

ナナ「…それなら、この一章を差し上げます」スッ

ヒマリ「え?…でも、これは…」

ナナ「いいんです。私にもやることがありますが…その前に、ヒマリさんを手伝わせてください。できれば、アナンタさんたちを元の世界にお返しする方も」

アナンタ「それは悪いよ!」

ネル「そうそう!早くジョル君のところに行ってあげなよ!」

ナナ「いいえ、もう決めました。よろしくお願いしますね?」

カーリー「私たちとしてはいいんだけど?」

ヒマリ「ナナさんがそう言うなら…お願いします」ペコリ

テレージャ「さ、塔を下りるとしよう。パリスくんたちの様子も気になる」

アナンタ「そうだね!ネグラに戻ろう!」

ナナ「まだ仲間がいたんですね?」

カーリー「あと6人だったかしら。また紹介するわね!」

クォート「…!」ジャコン!

ピーターマン「…塔の悪魔は倒された」スタッ

ナナ「え…?」

アナンタ「ピーターマン!」

ピーターマン「正義のヒーローの出番はなかったみたいだね 残念残念」

カーリー「何の用?もう私たち疲れてるから早く帰りたいの!」

ピーターマン「帰るって あの穴ぐらに? おすすめしないなぁ」

ネル「…どういうことかな」

ピーターマン「というか 戻れないよ」

テレージャ「ん?」

ヒマリ「それって、どういう…」

グラグラ…

ナナ「…!塔が!」

ピーターマン「…拠り所がなくなった物語が 崩壊しようとしてるんだ 怖いねガクガクだね」

アナンタ「そんな…!どうすれば!」

ピーターマン「このままでいいよ 落ちたらその先は 違う物語だ」

ヒマリ「違う物語…?」

バラバラ…!

テレージャ「床が抜け始めた!」

カーリー「マ、マシンガンで!」バシュシュシュシュ

クォート「…」ヒューッ…

ネル「あっ!クォートくんが落ちたよ!」

ナナ「そんな…!」

ピーターマン「ヒントをあげよう 落ちた先でマルサって組織を探すといい きっと役に立つぜ」

ヒマリ「マルサ…?」

ピーターマン「あ あと青い髪の人!」

ナナ「え…私ですか?」

ピーターマン「そうそう よくやったね これでアンタの心の枷はなくなった」

ナナ「枷…」

ピーターマン「本来ならそういう人をさいはてに入れるのはご法度なんだけど…」

ピーターマン「ま 壁を壊すにはそのくらい強力な人がいないとね」

アナンタ「ワケのわからないことを!」

ピーターマン「そろそろかな 喋りすぎた じゃあまたな!ヒーローはクールに去るぜ」ヒュン!

アナンタ「…行っちゃった」

ヒマリ「わわっ!もう、無理!落ちます!」

ネル「うわあ!」ヒューッ

テレージャ「ネルくん!」

アァー!ソンナー!アーレー!
ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…

幕間
~アナンタの!その辺で拾ったアイテム解説~

宗光
世界一の剣士“ひよこ侍”が使ったとされる打刀
〈斬撃/即死〉         装備可:アナ・ネル・パリ・ヒマ・ルド
〈スキル習得〉        (固有技:朧落とし)

ひよこ侍、テューン・フェルベル。
幼いころに家族と幼馴染を名のある剣士に殺され、自らも剣の道へと進む。
心には復讐と、最強の剣士になりたいという野望、
家族を手にかけた剣士の美技が染み付いていた。
結局、復讐を果たし世界最強とまで謳われた師匠まで殺めた
テューンは、名実共に最強の剣士となったが、
その後すぐに行方不明となった。
一説では剣を愛する故に切腹して自殺したとか、
チンピラに刺されて死んだとか、様々な噂で真相はわからないまま。
ちなみにひよこ侍というのは、殺された幼馴染が
「これを着れば何だってできる」と、
気に入っていたひよこの着ぐるみを形見として着込んだテューンの
姿から付けられた名称。
シズナちゃんが騒ぐようなかわいい理由は残念ながらないよ。

~ネグラ、ヒマリの部屋~
パリス「…行っちまったな。大丈夫なのか?あいつら」

シズナ「ヒマリちゃんがしっかりしてそうだから…大丈夫だと思うわよ…?」

キレハ「なんで疑問系なのよ」ハァ

ルドルフ「…ヒマリがついてるから平気だよ」

ウェンドリン「信頼してるんですね」フフッ

ベネット「しかし…どういうわけだ?割とひどい骨折だった気がするんだけれど…」

パリス「そうだよなあ。オレもルドルフもキレハも傷はでかい方だったぜ」

ウェンドリン「そうだね…あの泉の水、すごいなぁ」

キレハ「すごいなぁで終わらせていいことなの!?」

ルドルフ「泉の水は不思議な力がある。この島にはところどころ湧いている」

シズナ「魔力まで回復したときには驚いたわ!」

ベネット「おかげさまで、全快まで後一歩、ってところか。治り次第、アナンタたちを追いかけよう」

パリス「ああ。確か…原住民の廃都、って所から行ったことのない方へ行く、だったか」

キレハ「不安ね…ヒマリは、ルドルフがわかる、って言ってたけど…」

ルドルフ「大丈夫。道は覚えてるから」

トントン…

ウェンドリン「…ん?ノック…?ヒマリさんに用事かな…?」

シズナ「誰かしら…」

ルドルフ「僕が出る。…」ガチャ

レーラリラ「あ、すみません。…ルドルフさん?」

ルドルフ「…レーラリラ?」

レーラリラ「ヒマリさんは…」

キレハ「留守よ」

レーラリラ「そうですか…怪我人がたくさん運ばれたと聞きまして…なにかお手伝いを、と」

ウェンドリン「あっ、ありがとうございます。でも、みんなだいぶ回復してきたので…」

レーラリラ「…はじめましての方がたくさんいますね。私はレーラリラと申します。よろしくお願いしますね?」ニコッ

ウェンドリン「レーラリラさんですね。私はウェンドリンです。あっちから、シズナさん、キレハちゃん、パリス、ベネットさんです」

レーラリラ「新入りですね。お部屋が空いていないので、それはどうしようもありませんけど…何かできることがあったら是非言ってください」

ルドルフ「…」

キレハ「…ありがと」

ベネット「…」

レーラリラ「はい。ではまた」バタン

シズナ「…優しそうな人ね?」

パリス「美人だしな!」

ウェンドリン「あはは…」

ルドルフ「…あいつには気をつけた方がいい」

パリス「あ?」

キレハ「…いけ好かない匂いはしたわね」

ベネット「雰囲気も、ね。何か隠しているなあれは」

ルドルフ「…」

シズナ「…そんな風には見えなかったけれど」

パリス「うーん…人は見かけによらないってか?」

ウェンドリン「どうなんだろうね。ささ、みんなもう少し休もう?ヒマリさんも、そんなにすぐには戻らない、って言ってたし」

パリス「オレはもう動けるし、ちょっと周辺を見て回りたいんだが…」

シズナ「無理しちゃダメよ!また傷が開いたらどうするの!」

キレハ「…でも、なんだか、本当に眠く…」

ルドルフ「…」ドサッ

ベネット「ルドルフ…?」

ウェンドリン「…眠ってます。相当疲れてたんですかね?」

パリス「おお…オレもなんだか…」ドサッ

シズナ「パリスまで?仕方ないわね…」

キレハ「こ、これは…」ドサッ

ウェンドリン「キレハちゃんも!?…う、そう言う、私も…」ドサッ

シズナ「あ…なによ…こ…れ…」ドサッ

ベネット「…」ドサッ

――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――
―――――――――
?????「…」ガチャ

キレハ「…」スゥスゥ

シズナ「…」クゥクゥ

パリス「…」ゴガーゴガー

ルドルフ「…」スヤスヤ

ウェンドリン「…」グゥグゥ

ベネット「…」

?????「…」スッ

?????「…」ガサゴソ

?????「…」スッ

?????「…」スクッ

?????「…」ガt

ベネット「…待ちなさい」スラッ

?????「…!!」

ベネット「動くな。首に当ててるのはただのナイフじゃない」

?????「…」

ベネット「怪しいと思ったらこれだ。もう少し慎重に行動したほうがいい」

ベネット「…レーラリラ。手に持っているものをこちらに渡しなさい」

レーラリラ「…すごいわね。どうして気がついているのかしら」

ベネット「おしゃべりをするつもりはない。さっさと渡すことだな」

レーラリラ「…」スッ

ベネット「…」ヒョイ

ベネット「…!」カッ!

レーラリラ「…」ダッ

ベネット「く、小型閃光弾…!?逃がすかっ!」ダッ

パリス「ん…なんだぁ?」ファ~ア

シズナ「ふぐぐ…なに?」

ウェンドリン「…!!ベネットさん?」

ルドルフ「…」ダッ

キレハ「んぁ…ふぇ?…ルドルフ?どこに…!」

ウェンドリン「行きましょう!」ダッ

シズナ「もうっ!なんなのよ!」ダッ

~大穴前~

レーラリラ「…」ピタッ

ベネット「追いついたぞ…!」

ウェンドリン「こ、こんな秘密の通路が!」

パリス「それになんだこの大穴…!」

ルドルフ「…お前は、誰だ?」

キレハ「?ルドルフ、何を…」

シズナ「レーラリラさんじゃ…」

レーラリラ「フフフ…ハハハハハハハハハ!!」

シズナ「なに?なんなの!」

レーラリラ?「…ヒマリとか言う女の留守を確認したが…まさかヒマリにべったりのお前がまだネグラにいるとはな」

ウェンドリン「…雰囲気が」

パリス「ああ。人間じゃねえな!」ジャキ

ルドルフ「…アノニマス・カワード」

ベネット「…」チャキ

ルドルフ「その名前で盗みを繰り返した…レーラリラはこの間、その穴に落ちて死んだ」

キレハ「…!?」

パリス「な、ななな…!じゃあ、ゆ、幽霊?」

ウェンドリン「パリス!落ち着いて!」

レーラリラ?「…こんなところでしくじるとは。やはり注意力が足りないのだろうな」

ベネット「…何者だ。言え!」グッ

レーラリラ?「まぁ名乗っても良いだろう。ハスタァに倣おうじゃあないか」ニタァ

キレハ「ハスタァ…」

ウェンドリン「十二悪魔将…!」

レーラリラ?「我が名は十二悪魔将が一、姿なき声トルバドール。この身体は借り物だ」

パリス「幽霊じゃないのか…」ホッ

シズナ「ホッとしてる場合じゃないわ!」

ルドルフ「何の用だ?」

トルバドール「素直だなルドルフ。答えはなしだ。言える訳がなかろう!」

ベネット「自分の状況わかってるのか?囲まれてるんだ。諦めろ!」

ウェンドリン「…」チャキ

キレハ「…!」スッ

トルバドール「ハハハ!ご冗談を!名乗りまで上げて、こんなところで死ぬ訳がなかろう!」

シズナ「…まさか!」

トルバドール「おっと、捨て台詞はこれだな?憐れなレーラリラ!」











トルバドール「(レーラリラ)『だまれチンポ野郎。こんなものくらいでガタガタ抜かすな』!」









トルバドール「ハッハッハ!さらばだ!」バッ

ルドルフ「…!!」ダッ

シズナ「あ!!…ダメね、落ちちゃったみたい」

パリス「こんな、底も見えない穴じゃ、生きちゃいないんじゃないか?」

ベネット「いや…あれだけ大口を叩くんだ。何か生存の策があるはず」

ルドルフ「…追う?」

ウェンドリン「でも、私たちも安全、なんて保証はどこにも…」

ベネット「そうだ。それより、アイツは私たちから何か盗んでいった。持ち物を確認しよう」

シズナ「ええ!?…私は、とられてない…大丈夫よ」

パリス「オレも」

ルドルフ「…僕は、ヤツにとっていないはずだったんだ。大丈夫」

キレハ「私も大丈夫よ」

ベネット「私も。と、いうことは…」

ウェンドリン「…なくなってますね」

パリス「なにが盗られたんだ?」

ウェンドリン「うん、本、児童書なんだけど…」
























ウェンドリン「――――――――ふしぎの城のヘレン」

続く

パリス「…知らねえな」

キレハ「有名なの?」

ウェンドリン「ううん。ヒマリさんの部屋にあったからたまたま読んでたの。でも、なんであの本を…?」

ベネット「本…か。何か企むにしてもそれだけじゃなぁ…」

ルドルフ「僕も知らないな。どういう話なの?」

ウェンドリン「簡単に言うと、空に浮かぶ不思議な城をヘレンっていう女の子が探検するお話、かな」

キレハ「児童書らしい内容ね。でも、ますますわからない。なんでそんな物を…?」

ベネット「…ダメだ、情報が少なすぎる。ひとまず部屋に戻って…!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ…

シズナ「…?今度はなんなの!?」

ウェンドリン「地面が揺れて…?」

ヒュゥン

パリス「おい!穴からなんか出てきたぞ!」

ピタッ

キレハ「…揺れは収まったようね」

?????「はろーはろー 久しぶりだね元気だった?」

ウェンドリン「…!!魔法少女!」

シズナ「あ!あのときの!」

ベネット「…何の用だ」スッ

?????「あれ? 私がおしゃべりした人たちはいないのかー」

キレハ「…?ちょっと、あんな変な格好の知り合いいたかしら」ボソボソ

ルドルフ「僕にはいない」ボソボソ

?????「うーん そういえば地竜にやられてた軟弱者もいたしなぁ」

キレハ「なっ…!」

ルドルフ「…」チャキ

ベネット「落ち着いて2人とも。…何の用だって聞いてるんだ魔法少女」

?????「その魔法少女って言うのやめない? 私は…そうだな…」

?????「天地に蔓延る魑魅魍魎!中性子星に代わってボコボコよ!」

はるるーと「まじかる・はるるーとさん!」ジャキーン…

キレハ「…」

ルドルフ「…」

ベネット「…」

ウェンドリン「…」

パリス「…」

シズナ「…!!」キラキラ

はるるーと「なんだよつれないな 恥ずかしいじゃん」

キレハ「で?そのはるるーとさんは何の御用?」

はるるーと「うーん そうだなぁ ここから落ちない?」

ベネット「は?」

はるるーと「だからー この大穴からダイブ!」

パリス「…ふざけてんじゃねえ。殺りたいならかかってこいよ」ジャキ

ウェンドリン「敵…ってことですか?」

はるるーと「んー めんどうだなぁ 仕方ない」ブゥン

ベネット「!?な、なんだ!?」フワ

ルドルフ「身体が浮いて…?」フワフワ

パリス「なんだ!?」フワフワ

はるるーと「面倒なのは嫌いなんだよねー それ!」ヒョヒョイ!

シズナ「お、落ちるぅ!!」ヒューン!

キレハ「なんでちょっと嬉しそうなのよッ!」ヒューン

パリス「うわあああああ!!」ヒューッ

ベネット「騒いでても落ちるしかないみたいだ」ヒューッ

ウェンドリン「れ、冷静ですね…きゃああああああ!!」ヒューッ

ルドルフ「…!!」ヒューッ

はるるーと「ふ ふ ふ 無事を祈るぜボーイズアンドガールズ!」

はるるーと「…あー 疲れた 帰ろ」

―――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――
――――――――――
落ちていく感覚の中で、私は何者かの気配を感じた。

誰かが私の周りを、這いずるように何かを探している…

空中なのに、這いずるなんておかしなことなのかもしれないけど、

私にはそう感じ取れた。

〈彼〉はきっと、私を探してるんじゃないか。

ふと、そんな気になった。

〈彼〉が何なのか、私にはわからない。

でも、うすぼんやりと、〈彼〉を認識している。

私にはよくわからなかった。

そして、なぜか〈彼〉に見つかるのはすごくまずいことなんじゃないかって

そう思った。

目を合わせてもいけないんじゃないかと思い、

ギュッと目を瞑った。

自分の鼓動が早く感じる。

金縛りにあったように動けない。

逃げなきゃ。でも…

そうこうしている内に、〈彼〉が私の顔を覗き込むのを気配で感じた。

死臭のする息が顔にかかる。

目を開けてはいけない。

〈彼〉を見たら、二度と元の自分には戻れなくなる。

不意に、私の意志とは関係なく、目が開いた。

まずい。

そう思ったときにはもう遅かった。

『―――――――――――――――――――見つけた』

ドサドサドサッ!

パリス「ってて…」

シズナ「い、痛いってことは生きてるってことよね」

ウェンドリン「はい…なんとか」

キレハ「に、ににに二度と御免だわ!!」ガクガク

ベネット「でも不思議と落ちてる感じがしたのは最初のほうだけだったわね」

ウェンドリン「…」

キレハ「…ウェンドリン?」

ウェンドリン「…」

キレハ「ウェンドリン!」

ウェンドリン「は、な、なに!?キレハちゃん!」

キレハ「どうかしたの?ボーっとしちゃって」

パリス「顔色悪いぞ?」

シズナ「あんなところから落ちて顔色悪くならないわけないでしょ!」

ウェンドリン「…ははは、そうだよ。みんな強いなあ…」

パリス「そうか?」

キレハ「…ならいいけど」

ルドルフ「…ここは?」

パリス「見たところ森ってところか」

シズナ「…あんなところから落ちて来たにしては空まで見えてて不気味ね」

ルドルフ「霧が濃い。けど、木々が入り組んで通路みたいになってる」

ベネット「…まさか、また違う世界に来たんじゃないだろうな」

キレハ「えぇ!?どうするのよアナンタたちは」

パリス「あいつらならほっといても大丈夫な気がするが…」

ベネット「まずは自分たちのことを考えよう。ここがどこだか…」

??????「おい」

パリス「!?」

??????「おい、若いの。こっちだこっち」

ベネット「…木?」

シズナ「まさか!木が喋るわけ…」

樫の木おやじ「儂だ。失礼なおなごめ」

キレハ「…驚いたわ。魔法の類?それともからかってるのかしら」

樫の木おやじ「なんじゃ。道に迷わんように助言をしてやろうと思うたのに」

ルドルフ「…親切だ」

シズナ「是非!お願いします!」

樫の木おやじ「…現金な奴らめ。いいか?まずこの霧は旅人を惑わす魔法の霧。道を知らなければ先には進めん」

ウェンドリン「魔法の霧…」

樫の木おやじ「道が知りたければここを右手に行ったところにおる妖精に聞くことだ。ただし妖精は嘘つきが多い。気をつけることだな」

ベネット「…先に進むのはいいわ。でも、ここが何処かを教えてくれないかしら」

樫の木おやじ「…ここは妖精族の森。それ以上でも以下でもないわい」

パリス「妖精族の森…?」

キレハ「どこかで聞いたことあるような…」

ルドルフ「ここを出るにはどうしたらいいんだ?」

樫の木おやじ「霧がある限りは出れん。妖精王に会えれば、あるいは…」

シズナ「妖精王って、なんだか素敵な響きね」

ベネット「のんきだな…」

樫の木おやじ「さてもうよいな。儂はもう眠い」

ベネット「…ああ。ありがとう」

樫の木「…」

シズナ「…寝ちゃったのかしら」

ルドルフ「妖精王に会いに行くの?」

ベネット「それしかないだろうな。ひとまず目的は決まったわけだし、動くとしようか」

ウェンドリン「…」

パリス「ウェンドリン。やっぱなんか変だぜ?」

シズナ「お腹でも痛い?」

ウェンドリン「…いえ、大丈夫です。平気!さ、行きましょう!」ブンブン!

パリス「…無理だけはすんなよ!まったく…」

ベネット「みんな、傷の具合は大丈夫?」

パリス「そういや怪我してたんだったな、って感じだぜ」

シズナ「魔力も回復してるわよ!」

ルドルフ「大丈夫」

キレハ「私も平気よ」

ウェンドリン「がんばって看病した甲斐がありますね」

シズナ「本当よね!」

ベネット「よし、それじゃあ出発!」

~妖精族の森・1~

キレハ「(クンクン)…嫌な香り。魔法の霧って言うのは間違いじゃないわね」

シズナ「キレハちゃん…」プルプル

キレハ「なによ」

シズナ「か~わ~い~い~!!!」ダキッ

キレハ「きゃっ!?な、なんなのよ!!」

ウェンドリン「あ、良いですねそれ。えいっ」ダキッ

キレハ「ウェンドリンまで!」

キャッキャッ

ベネット「…」ハァ

パリス「いやわかるぜベネット。先が思いやられる…」ハァ

ルドルフ「…」

妖精A「あれ?人間だ!人間でしょあなたたち!」

パリス「おわっ!?よ、妖精…?光ってる…」

ルドルフ「…綺麗だな」

ベネット「ええ。人間よ。樫の木のおじさんに聞いたのだけど、あなたたち妖精王に会う道を教えてくれないかしら」

妖精B「それならお安い御用さ!あっちの道をまっすぐ、その後右さ!」

妖精C「そして右に三回曲がって!」

妖精D「その後右に三回!」

妖精A「最後に右に行くの!」

パリス「右、右、右、右、右、右、右、右だな」

ルドルフ「…」

ベネット「…そうか。ありがとう妖精さん。それで…」

妖精B「何?まだ聞きたいことがあるのかい?」

妖精D「貪欲!でもいいよ!なんでも答えちゃうよ!」

ベネット「…」ズゴゴゴゴゴゴ

パリス「…なんかベネットからすごいオーラが出てないか?」ヒソヒソ

ルドルフ「殺気だ」ヒソヒソ

妖精A「ヒィッ!?」ガクガク

妖精C「な、ななななんだ!?」

ベネット「私に向かって嘘をついてる愚か者はどの子だ…?」ゴゴゴゴゴゴ

妖精D「ひ…逃げろ!」ピューッ

妖精B「お、おうっ!」ピューッ

妖精C「ひゃーっ!!」ピューッ

妖精A「ま、待って!追いてかな…」ガシッ

ベネット「…もう一度聞くわよ?」グッ

ベネット「妖精王に会うための正しい道を教えなさい」ニコッ

妖精A「ひ、ひぃぃ!わかった!教える!教えるよっ!」

パリス「…ベネットは怒らせないようにしよう」

ルドルフ「…」コクコク

妖精A「…だよ!これでいいでしょ!?」

ベネット「よろしい。それじゃ、行きましょうか」パッ

妖精A「ううっ、覚えてろー!」ピューッ

パリス「妖精握り締めて脅迫したのなんて世の中広しと言えどベネットくらいだな」

ベネット「急いでるのに適当なこと言われてイラっとしただけだ。…シズナ!ウェンドリン!いつまでキレハとじゃれついてるの!行くわよ!」

シズナ「…ベネットって怖いでしょ?」ナデナデ

ウェンドリン「でもそこがまた魅力ですよ」ワシワシ

キレハ「…あなたたちねぇ」プルプル

~妖精族の森・2~

シズナ「小川の水が綺麗ねー」

ウェンドリン「こんな状況じゃなければ、お弁当でも持ってピクニックでもしたいですねー」

ベネット「緊張感なさすぎ…」

パリス「まぁまぁ」

妖精族の若者「あれ?やあ!ごきげんよう旅の方々!それともようこそお客人と言ったほうがいいのかな?」

キレハ「…どうも。妖精族…よね?」

ルドルフ「敵じゃなさそう」

妖精族の若者「こんな場所に立て続けに外の人間が来るのなんて珍しいこともあるもんだね!」

シズナ「立て続け?」

ベネット「私たちの他にもここに来た人が?」

妖精族の若者「ああ。話しかけたんだけど無視されちゃってね。失礼な人だったよ!」

ベネット「どんな人だった?」

妖精族の若者「うーん…外套をかぶっていたから顔はわからなかったけど…」

妖精族の若者「雰囲気は、あんまり善くは感じなかったなぁ」

キレハ「…何者かしら」

パリス「それだけじゃ何とも言えねえな」

シズナ「アナンタたち…じゃなさそうねぇ」

妖精族の若者「じゃあ、僕は失礼するよ!この先、橋を守ってる連中は堅物だから気をつけてね!」

ウェンドリン「ええ。ありがとうございました」

ルドルフ「…僕たちも先に進む?」

パリス「ああ。道はこっち…だったよな」

ベネット「…ええ。行きましょうか」

~妖精族の森・3~
ベネット「…見えた!あれが橋ね?」

パリス「ああ。結構歩いたな」

シズナ「…!様子が変よ!?」

ウェンドリン「誰か倒れてます!」ダッ

ベネット「ウェンドリン!迂闊に近づいちゃ…あーもう!」ダッ

キレハ「…死んでる」

ルドルフ「ひどいな」

妖精族A「…」

シズナ「うっ…」フラ

キレハ「シズナ!」ガシッ

シズナ「ご、ごめんなさいキレハちゃん…」ウウッ

妖精族B「…う、ぁぁ」

ウェンドリン「!生存者がいます!」

シズナ「!ヒール!」キュウン

妖精族B「あ…あ…な、んだ…貴様らは…」

ルドルフ「だめだ。傷が深すぎるよ」

ウェンドリン「そんな!」

妖精族B「さっ…きの、やつ、の、仲間…か…」

ベネット「さっきのやつ…?」

妖精族B「ここか、ら…先、は…妖、精王の、領土…通りたくば…」

妖精族B「…!?」キュィー!

妖精族B「この、者たちを、通せと…言う、のか…」ガフッ

ウェンドリン「む、無理に喋らないでください!血が…!」

妖精族B「ふ、ふふ…もう私も持たない…さっ、さと通るが、いい…」ガクッ

ベネット「…死んだわね」

シズナ「うう…そんな…」

ウェンドリン「…」スッ

パリス「…行こう」

ルドルフ「…うん」

忙しくて更新速度が落ちてます
読んでる方がいらっしゃったらのんびり見てやってください
完結は何とかがんばってみます

~妖精族の森・4~

ベネット「道は木の上に続いているようね」

ルドルフ「大きい木だね」

シズナ「け、結構…歩いたわよね…?」

ウェンドリン「坂でしたからね。大丈夫ですかシズナさん?」

シズナ「ええ…なんとか…」

パリス「まだ木の根元だぞ。上まで行くとしたらこれは…」

キレハ「根元って言っても割と高いわよ。こうして森も見渡せて…」

キレハ「見渡せる…?霧が晴れてる!」

サァー…ッ!

シズナ「…夜空が…星が綺麗ね…」

ベネット「なんだ…?霧が晴れたってことは、森から出られるってこと?」

ウェンドリン「でも、妖精王にはまだ…」

ルドルフ「とりあえず上まで行ってみよう。ここが何なのかも聞きたい」

シズナ「え…」

ウェンドリン「シズナさんには申し訳ないんですけど、私も妖精王には会いたいです」

キレハ「そ、そうよね。ここまで来たものね!」ブルッ

パリス「…なんで震えたんだ?」

キレハ「う、うるさいわね!なんでもないわよ!」

ベネット「王って言うからには、なにか今回のことについて知ってるかもしれないし…」

ベネット「会うだけ会ってみましょう。シズナはがんばれ」

シズナ「う…はぁい…」

~妖精の森・5 大木の中継地点~

ベネット「木の周りにも階段やら道が掘り込まれてるのね」

ウェンドリン「内部の建物もすごかったですよね…」

パリス「ずっと中の階段歩いてきたからなぁ」

ウェンドリン「綺麗な景色…森と、星と…」

パリス「空気も澄んでるような気がするな」

ウェンドリン「…」

ウェンドリン「…封印されてるとは思えないよね」ボソッ

ベネット「ん?…ウェンドリン、何か言った?」

ウェンドリン「…」ハッ

ウェンドリン「…え?私、何か言いましたか?」

ベネット「空耳かしら…」

パリス「お、シズナたちが来たな」

シズナ「…」ゼェ…ゼェ…

ルドルフ「大丈夫?」

キレハ「ひゃっ!?そ、外に出たぁ!?」

ウェンドリン「キレハちゃん驚きすぎだよ~」

キレハ「べ、べべべ別に怖くないわよ!?」

シズナ「か、かわいい…ん…だ、から…」ガクッ

ベネット「振り絞ったな」ハァ

ルドルフ「休憩?」

ウェンドリン「はい!ちょうど広いところに出たので」

パリス「でかい木だよな。まだ上があるぜ」

ウェンドリン「おかげで綺麗な景色!」

ルドルフ「…森の向こう」

パリス「あ?」

ルドルフ「変な感じだ」

ベネット「それは思った。まるで、森だけが切り取られているみたいだ」

シズナ「…魔力を感じるわね」スクッ

キレハ「魔力?」

シズナ「誰かがこの森だけを切り取った…そんなような雰囲気、みたいなものかしら」

キレハ「ふぅん」

シズナ「だからといって何かわかるわけでもないんだけど…」

パリス「嫌な予感がする、ってことだな」

ウェンドリン「王様に聞くことがどんどん増えてくね」

キレハ「そうね…教えてくれるといいけど」

ベネット「…!!」ギリリ…

シズナ「ベネット?急に弓を構えてどうしたの?」

ベネット「あそこ、上の方から何かが私たちを狙ってる」

パリス「ど、どこだ!?」バッ

ルドルフ「…見えない」

キレハ「あれか。確かに狩りに慣れてないと見つけにくいわね」ギリッ

ウェンドリン「…鳥?」

シズナ「ウェンドリンもよく見えるわね…私なんて何にも」

ベネット「目が光るからわかるんだけど…あれは餌を見つけたって目ね」

キレハ「…くる!」バシュ

ルク「!!」スッ

キレハ「外した!?」

ベネット「素早い!」ヒュンヒュン

ルク「ピョロロロロロロ!!」スックルン

パリス「こっち向かってくるぞ!」

ウェンドリン「大きい…!!」

ルドルフ「く…!」バッ

ウェンドリン「ルドルフくん危ない!」バッ

ルク「…!!」ガシッ

シズナ「2人とも!」ダッ

パリス「ダメだ、連れ去られるぞ!」グッ

ベネット「今撃ち落としてもあの2人諸共落ちる…!」

キレハ「う…どうすれば…!」

ルク「ピョロロロロロロロロ…」バサッバサッ…

ベネット「…おそらくあそこに巣があるな。ヒナの餌に連れてったんだろう」

シズナ「追いかけないと!」

パリス「落ち着こうぜ。あの2人がおとなしくヒナの餌になるとは考えにくい」

キレハ「どうにかして上に行く方法を考えなきゃ…」

??????「そんなときに翼があったら便利だよな」

ベネット「…!!誰だ!!」ググッ

??????「怖いってば 助けてあげるから武器を収めなよ」

パリス「オーケーオーケー、ベネット、敵じゃなさそうだ」

ベネット「…ごめん、気が張ってるんだ。何者?」

??????「さっき名乗りは上げたし 今回はフツーに…」

??????「愛と勇気のヒーロー、マスク・ザ・ピーターマン参上!」

キレハ「ピーターマン…?」

パリス「さっきのはるるーととかいう奴に雰囲気は似てるな」

ピーターマン「あー まぁそれは置いとこう なぜならヒーローに謎はツキモノだから」

パリス「それで、そのピーターマンさんが何の用だ?」

シズナ「私たち、ゆっくりお話してるような時間はないの!」

ピーターマン「だから 助けに来たんだって 君たちのお仲間のところへ連れてっちゃうよ無料で」

ベネット「あの2人のところへ…?」

ピーターマン「それもあるけど もっとたくさんいるじゃん?」

シズナ「…!アナンタたちの!?」

キレハ「それってどういう…!」

ピーターマン「はいはい質問はナシね とりあえずさっきの鳥のところまで運んであげる」

ベネット「…信用していいんだな?」

ピーターマン「してくれなくてもいいけど それ以外に頼るものがあるの?」

パリス「…いいぜ、早く頼む」

シズナ「…そうね。他に方法は…」

キレハ「…」

ベネット「…わかった。お願いピーターマン」

ピーターマン「よーし いくぜ!」ヒュゥン!

パリス「うお?!」ガシ

キレハ「きゃっ!」ハッシ

ベネット「うわ!」パシッ

シズナ「ひゃ!」ダキッ

ピーターマン「空を飛ぶ しかもこの人数を支えて!」

ピーターマン(世界が馴染んできてるな いい傾向だ)

キレハ「た、たたたた高い!!」
パリス「キレハ!手ぇ離すなよ!」

シズナ「きゃああああああああ!!」ギューッ

ベネット「シズナ!く、苦し…!」

アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア……
――――――――――――
――――――――
――――――

~妖精の森・5~
ウェンドリン「くッ!」ガキィ

ルドルフ「『光の斧』!」ブゥン

ヒナたち「ぴよぴよぴよ!」バッ

ウェンドリン「か、数が多すぎる!」グググッ

ルドルフ「親鳥はどこか行ったからよかったけど、これじゃもたない…」ズバ!

ヒナ「ぴよ!」グン!

ルドルフ「ッ!」ガッ

ウェンドリン「うりゃぁあ!」バシュ!

ウェンドリン「はぁ…はぁ…」

ルドルフ「まずいね…」ハッ…ハッ…

ヒナ「ぴよォ!」バババッ!

ウェンドリン「きゃ!」ズシャ

ルドルフ「ぐっ!」ドサ

ヒナたち「…!!…!!!」ジュルリ

ウェンドリン「う、ピンチ…」ズシッ

ルドルフ「あ…ああ…」ガタガタ

ヒナたち「キュィィィィィィイイイイ!」ガバァ

ウェンドリン「…!!」ギュッ

ルドルフ「ひ…」グタ

??????「とうっ!『ラヂオガン』!」ピピピ…バシュウ!

ヒナ「ギャ!!」ドサッ

ウェンドリン「え…?なに…?」

ルドルフ「た、助かった…?」

ピーターマン「無事のようだ! ほいほいっと」ドサドサッ

パリス「ぐえっ」

キレハ「きゃっ!」

ベネット「…」スタッ

シズナ「ひゃっ!」ドゴォ

パリス「ぎゃああああ!」ブチッ

シズナ「そ、そんなに重くないわよ!失礼ね!」

ウェンドリン「み、みんな…」スクッ

ルドルフ「…」スクッ

ピーターマン「あ はじめましてピーターマンと申します正義の味方です」

ウェンドリン「え?ど、どうも…」

ピーターマン「さて これで全部かな」

ベネット「ありがとう、ピーターマン。ついでに残りのヒナも片付けといてくれるかしら?」

ピーターマン「それは自分でやってよ ただ あのでかいのは任せな!」バッ!ヒューッ!

ルドルフ「誰?あれ」

シズナ「通りすがりのヒーローだそうよ」

キレハ「お喋りはあとね!今は目の前の敵に集中!」バシュ!

ヒナ「ぴ!?」

パリス「おらぁッ!」ズババ

ベネット「でかいのは任せろ、って、大丈夫かしら…」

ウェンドリン「さぁ…」

シズナ「『フレイム』!と、『リカバー』!」キュウウ

ヒナ「…!!」ジュウ

ルドルフ「…!動く!」キュイン

ルドルフ「キレハ…!」バッ

キレハ「?…ああ、はいはい!っと!」ダッ

キレハ「縫い止め!」バシュシュ

ヒナたち「ぴ…!?」

ルドルフ「『光の斧』!」ズダン!

ヒナたち「ぴぎゃ!」

ベネット「閃光玉!」バン!

ウェンドリン「はぁッ!」ズダッ

ベネット「落ち着いてきたわね!」ビシュビシュ

ウェンドリン「ピーターマンさんは?」

パリス「あそこで親鳥と戦ってるぜ!」ガキィ

シズナ「すごい…!ひとりで相手なんて!」

ベネット(…なんだあの力は…嫌な予感がするわね)

ピーターマン「ちょうどいい 腕試しかな」

ルク「キュイィィィ!!」スゥ

ピーターマン「出力最大、マホウチャージ…!!」キュンキュウン

ルク「キュイィィィィィィィィ!!」バサッ!

ピーターマン「…『ラヂオガン』!!!」ピピピバシュ!

ルク「!?」ジュッ

ピーターマン「ふむ 消し飛んだか 十分すぎるぜこれは」

シズナ「!?」

キレハ「なに…いまの…」

パリス「一瞬で…」

ベネット「…」

シズナ「…不思議、ね。魔力は感じないのにあんな強力な…」

ピーターマン「…」シュタッ

ベネット「…やるじゃない」

ピーターマン「正義のヒーローだからね」

ウェンドリン「…ヒナも片付きました」

シズナ「お疲れ様。『リカバー』!」キュイン

ピーターマン「元に戻る力… そっかそっか」

パリス「随分上に来たが、妖精王はどこにいるんだろうな」

キレハ「さぁ…下に戻って妖精族の人たちに聞く?」

ベネット「結構な高さ飛んできたし、戻るのにも一苦労ね」

ピーターマン「心配御無用! 妖精王ならこの上にいるぜ」

ウェンドリン「上?」

ルドルフ「これより上…」

ピーターマン「飛んで連れて行っても良いんだけど どうする?」

シズナ「そのほうが楽よね!?」

ベネット「…頼もうかしら」

ウェンドリン「でも、この人数ですよ?」

ピーターマン「今ならできるさ 力がみなぎるぜ うおー」ビュビュン!

キレハ「え?ちょっと待って心の準備が…きゃあ!」バッ

パリス「また急に…」ガシッ

ベネット「よっ」バッ

シズナ「ひゃあああ!」ダキッ

ルドルフ「これは…すごい」ババッ

ウェンドリン「満員…」ガシ

ピーターマン「う みんなつかまった? 行くぞー」ヒューン

キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…キレハチャンウルサイ!アアアアアアアアアアアアアアアア…

ピーターマン「飛んで連れて行っても良いんだけど どうする?」

シズナ「そのほうが楽よね!?」

ベネット「…頼もうかしら」

ウェンドリン「でも、この人数ですよ?」

ピーターマン「今ならできるさ 力がみなぎるぜ うおー」ビュビュン!

キレハ「え?ちょっと待って心の準備が…きゃあ!」バッ

パリス「また急に…」ガシッ

ベネット「よっ」バッ

シズナ「ひゃあああ!」ダキッ

ルドルフ「これは…すごい」ババッ

ウェンドリン「満員…」ガシ

ピーターマン「う みんなつかまった? 行くぞー」ヒューン

キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…キレハチャンウルサイ!アアアアアアアアアアアアアアアア…

ピーターマン「飛んで連れて行っても良いんだけど どうする?」

シズナ「そのほうが楽よね!?」

ベネット「…頼もうかしら」

ウェンドリン「でも、この人数ですよ?」

ピーターマン「今ならできるさ 力がみなぎるぜ うおー」ビュビュン!

キレハ「え?ちょっと待って心の準備が…きゃあ!」バッ

パリス「また急に…」ガシッ

ベネット「よっ」バッ

シズナ「ひゃあああ!」ダキッ

ルドルフ「これは…すごい」ババッ

ウェンドリン「満員…」ガシ

ピーターマン「う みんなつかまった? 行くぞー」ヒューン

キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…キレハチャンウルサイ!アアアアアアアアアアアアアアアア…

―――――――――――――――――――――
――――――――――――――――
―――――――――――
~妖精族の森・頂上~
ピーターマン「ふぅ」トサッ

キレハ「あ、あが、あがががががが…」

ウェンドリン「キレハちゃん!キャラが!キャラが違うよ!」

シズナ「そんなキレハちゃんもかわいいわぁ」ホゥ

ルドルフ「…これは」

パリス「ああ。すげぇな」

ベネット「銀色の館…この中に妖精王が?」

ピーターマン「…行ってきなよ 待っててあげるからさ」

パリス「アンタは来ないのか?」

ピーターマン「ああ 興味ないしね」

ウェンドリン「…行きましょう」

ベネット「…ウェンドリン?」

ウェンドリン「何か…ここで私が知らなきゃいけないことがある…そんな気がするんです」

キレハ「…」

シズナ「キレハちゃん、落ち着いた?」

キレハ「な、何よ!元々そんな、高いところが怖いとか、そういうんじゃないから!」

シズナ「」キュンキュン

ピーターマン「さ 早く行った行った!」

ウェンドリン「…」ジッ

ベネット「…あっちの階段から上れそうね」

パリス「ああ。行こうぜ」

ルドルフ「…」コク

ウェンドリン(ここに…何か…)

ウェンドリン(…

~妖精王の間~
キレハ「…綺麗ね」

ルドルフ「全部植物みたいだ」

ウェンドリン「…奥に誰かいるみたい」

パリス「ん…そのようだな」

???「…ようこそ。この奈落の牢獄に客人とは、実に稀なこと。歓迎しよう」

ベネット「あなたが…妖精王?」

妖精王「いかにも。我らは古き森の民の生き残り。人族との戦に敗れ、この地に封じられた囚人である」

ウェンドリン「人族との…戦…」

妖精王「かつては我らも地上にあり、山脈と海の間に広がる森を、星明りのもと逍遥したものだ」

ベネット「…一つ聞いていいかしら」

妖精王「許そう。申せ」

ベネット「あなたたちが指す『地上』っていうのは…いったいどこのこと?」

妖精王「ふむ…人の王は彼の地を『アルケア』と名づけていた」

ウェンドリン「アルケア…!古代アルケア帝国!」

パリス「オレたちの世界か!」

キレハ「こういうときにテレージャがいれば…」

ルドルフ「異世界…」

妖精王「客人よ、地上の話を聞かせておくれ。河縁に黄金樹はまだ繁っているのか。一角獣は谷間を彷徨っているのだろうか」

ウェンドリン「…いえ。私たちの生きる『地上』は、もうそんなおとぎ話のような世界ではありません」

パリス「…」

キレハ「…」

ウェンドリン「人と人が争い…いくつもの国が戦争を繰り返して…」

ウェンドリン「夜種があふれ…地は荒れ果て…人すらも…」

妖精王「…そうか。太古の星々を知る者もいなくなったか」

ウェンドリン「…」

妖精王「全ては虚しい。神々は何を思い、我らにこのさだめを与えたのか。幾千年を待ち続けたのは何のためか…」

妖精王「…」

ベネット「…でも、あなたたちには力がある。妖精族を率いて地上に出ることもできたはずよ」

ルドルフ「そもそも、ここは外じゃないのか?空も風も…ここにはある」

妖精王「…その問いに答えるには、はるか昔の出来事から物語らねばならない」

―――――――――――――全ては一人の少年から始まった

かつて、神々の影が地上にあり、私が先代の王の従者であった頃。

人族は河の泥で町を築き、互いに争う小さな種族に過ぎなかった。

そんなある時、我々の森に人族の少年が教えを請いに来た。

彼は我らの知恵を学び、同族を救いたいと言った。

彼の心は正しく、善いものだった。

…しかし、人族である彼には、魔術の奥義までは身につけることができなかった。

そもそもの種族が持つ能力の限界が来たのだ。

だが、彼は嘆きつつ森を去り、幾十年してから戻ってきた。

…大王を名乗り、軍隊を率いて。

彼は我らの術をも凌ぐ破壊の魔術で森を焼き、土地を奪った。

多くの同族が彼に殺された。

森を去ってから、彼に何があったのかは分からない。

ただ、再び出会った彼は、魔性の者と化していた。

彼は、我らを始めとして、小人族、巨人族、竜族といった太古の種族を打ち破り、

集めた捕虜を河岸に築いた都に連れ去った。

そして、力ある秘石を囚人の王たちに与え、その魔力によって束縛し、自らを守る結界の一部。

すなわち、守護者としたのだ。

この結界により、彼の都は永遠のものとなった。

太古の種族の力は世界の根と結びついている。

これを支配することで、彼は地上の王権を得たのだ。

だが、千年を越えて続いた彼の帝国は、天の望まぬものとなった。

結果として、神々の手により滅ぼされた。

神々は、地上の者の手では守護者たちの結界を破れぬと悟り、

自ら起こした大洪水と地震によって、都ごと地の底に封じたのだ。

…しかし、守護者たちが存在する限り、彼を真に滅ぼすことはできぬ。

一万年が経とうとも、彼は甦るだろう。

――――――――――――――この、守護者の秘石が我が手に存在する限り

ウェンドリン「守護者…秘石…」

妖精王「そう。私は、かの皇帝を守る守護者の一人である」

妖精王「この秘石の魔力によって魂を束縛され、逃れることも叶わぬ」

妖精王「彼を真に滅ぼさんと願うなら、我らを殺して四つの秘石を奪い、墓所への道を開かねばならぬ」

パリス「おいおい待て。その皇帝?とやらを滅ぼそうなんて、そんな話はしちゃいない」

ベネット「そうだ。私たちはここから脱出することができればそれで…」

妖精王「…脱出。どこへ行こうというのか。地上に夜種が溢れたと言うならば、それは皇帝の復活を意味している。人の子を使い、古の都を再現するつもりでもあろう…」

パリス「人の子…!?」

妖精王「これ以上伝えることはない。さあ、来るがいい。そして、私を秘石の支配から解き放て…!」

キレハ「…!嫌な空気!」ビビッ

ルドルフ「…」チャキ

妖精王「秘石の魔性に侵され続け、夜種と化したこの身を…」ウゾゾ

ウェンドリン「あ、足が…!」

シズナ「蜘蛛みたいに!」

妖精王「滅ぼすがいい!!」ビュッ

ベネット「くッ!」サッ

妖精王「ふ、ふふふ、グアアアアアアアアア!!!!」ビュビュビュッ

ウェンドリン「ッ!素早い!」ガガキィ

パリス「気をつけろ!結構鋭いぞこの足!」ババッ

シズナ「『ファイア』!」ボウッ

妖精王「無駄…!」バッ

シズナ「な、効かない!?」

キレハ「秘石の魔力に負けてるわ…!」

ルドルフ「く…『光の斧』!」ダゴォ

妖精王「グ、ゴゴゴゴゴ!」ググ

シズナ「効いてる!?」

ルドルフ「いや…!」

妖精王「ハァッ!」バシュウ

ウェンドリン「そんな…魔法が効かない!」

妖精王「そんなものか…ハハハァ…」ビュッ

シズナ「きゃっ」バッ

ベネット「シズナ!避けて!」

シズナ「言われなくても…!」ググッ

シズナ「え…?」グッグッ

妖精王「…」シュル

シズナ「つ、ツタが足を!」

妖精王「ガアアアアアアア!!」ザシュシュ

パリス「シズナ!くそッ!」ババッ

キレハ「はァッ!」ビシュ!

ウェンドリン「シズナさん!」ババッ

ベネット「く、樹が動きを…!?」

シズナ「うぅ…だいじょう、ぶ…掠っただけよ…」

ウェンドリン「応急手当を…!」

妖精王「それでは届かん…!彼の皇帝には…程遠いッ!」シュルル

パリス「おらっ!」ガキィ

キレハ「な…!矢を掴まれる…!」

パリス「剣まで…!」ググッ

ベネット「はっ!」ザザシュ

妖精王「グ!?」ボタボタ

ベネット「ぼさっとしない!」

パリス「サンキューベネット!」ダッ

妖精王「我が足を断つ者がいるとは…!」

シズナ「ありがとう…もう大丈夫…」

ウェンドリン「あ、あんまり急に動いたりは!」

シズナ「そういうわけには…行かないでしょ!」

シズナ「『リカバーⅡ』!!」

ルドルフ「く…」ガガガッ

パリス「ルドルフ!突っ込むぞ!」ババッ

ルドルフ「…」コク

ウェンドリン「2人とも!危ない!」

シズナ「『アーマーブレス』!」キュイイ

ウェンドリン「ッ…『鉄壁』!」キィン

パリス「お?」ダッ

ルドルフ「防御力が…!」ダッ

妖精王「ハァアアアア!!」ビュビュッ

パリス「おらァ!」ガギ

ルドルフ「…!」ガキィ

妖精王「な…!?」

パリス「今だ!キレハ!」バッ

キレハ「『縫い止め』ッ!」バシュ

妖精王「ガッ…うご、けぬ…!」

ルドルフ「はっ!」バキィ

パリス「これか!秘石ってのは!」バッ

妖精王「無駄…だァ!」グァァ

パリス「うわ!?」

ルドルフ「パリス!秘石は無理だよ!」

パリス「しゃーねぇ…動けねぇうちに殴っとくぞ!」

ルドルフ「…!」バシュシュ

パリス「うりゃああああ!」ザシュシュ

妖精王「グ、グアアアアアアア!」

ベネット「効いてる!…ハッ!」シュルル

妖精王「アアアアアアアア!!」ダダッ

ベネット「『首吊り人形』…!」ビィン

キレハ「撃ち放題ねッ!」バシュ

ウェンドリン「そりゃああああああ!!!」ジャンプ

妖精王「!!…ふふ…御子…か…」

ウェンドリン「…?」

妖精王「よい。これで、解放される…」

ウェンドリン「ああああああああああああッ!!」ザギギギ!

妖精王「グ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

ウェンドリン「ハァッ…ハァッ…」

ベネット「終わった…?」

妖精王「…御子よ」グラァ

シズナ「まだッ!?」

ウェンドリン「待って!」

キレハ「…ウェンドリン?」

ウェンドリン「…妖精王」

妖精王「この、秘石を取れ…」ファサ

ルドルフ「あれは…」

妖精王「…心せよ。力の誘惑に捕らわれたとき、そなたも彼の皇帝と同じものになる…」

妖精王「…嗚呼、これで…ようやく…」

妖精王「…」

ウェンドリン「…」ギュッ

キレハ「…綺麗な石ね」

ウェンドリン「うん…とても…」

妖精族の従者「…王は、お隠れになりましたか」

ベネット「…誰だ」

妖精族の従者「王の従者にございます。…我々の種族は、皇帝の呪いによってこの空間に囚われています」

ルドルフ「?」

妖精族の従者「ですが、王は我らが解放される時が来るのを信じていました」

妖精族の従者「どうか、皇帝を滅ぼし、我らの永き虜囚の日々を終わらせて下さい」ペコ

妖精族の従者「それでは…」スッ

ウェンドリン「…」

パリス「なんか、現実味がねぇな」

ベネット「ええ。…まるで、物語の中にいるような…」

キレハ「パリス。人の子を使って古都を復活させるって言うのは…」

パリス「ああ。たぶんチュナが固まったのと関係があるはずだ」

ルドルフ「それに、御子、っていうのは…」

ウェンドリン「…御子…」

ベネット「わからないことも増えちゃったわね…」

????「動くな」チャキッ

ベネット「!?」

ウェンドリン「なに!?」

????「この女がどうなってもいいのか?動くな」

シズナ「く…油断したわ…!」

ベネット「シズナ!」

????「そっちの女。秘石をこちらへ寄越せ」クイッ

ウェンドリン「え…」

????「二度は言わん。さっさとしろ」

ルドルフ「…卑怯な」

????「フン…」

ベネット「…何者だ」

????「名乗る義理もない。さっさとしろ!殺すぞ!」チャキ

シズナ「ぐッ…」

ウェンドリン「う…わかった。渡すから、そっちに…」

????「投げて寄越せ。妙な真似はするなよ」

ベネット「…ッ」

ウェンドリン「…」ヒュン

????「そうだ。それでいい」パシッ

パリス「シズナを解放しろ!」

????「ハハハハハ!面白いガキだ。返すと思うか?もう用はない。消えてもらう」ググッ

ベネット「シズナ!」

ピーターマン「そこまでにしときなよ」

????「…」ピタッ

ピーターマン「その人たちを殺されると困るんだ わかるなドクター」

ドクター?「…フン。いいだろう。石はもらって行く」ヒュン

シズナ「は、はぁっ…」クタァ

ベネット「…助かったよピーターマン」

ピーターマン「いやいや 正義の味方としては見逃せないよね」

キレハ「その割には、お友達みたいだったけど?」

ピーターマン「…やだなぁ そんなワケないでしょ」

パリス「怪しいなオイ」

ピーターマン「それより、お話は終わったんでしょ?」

ウェンドリン「それより、って、秘石は…!」

ピーターマン「あんなものはどうとでもなるよ さ 行こう」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

ルドルフ「地震?」

キレハ「こ、こんな高さで地震なんて!」

ピーターマン「…物語の中みたいだって」

パリス「あ?」

ピーターマン「いい視点だ やっぱり君たちは さいはてに必要だね」

ウェンドリン「さいはて…?」

シズナ「みんな、地面が…!」

ボロボロ…

ウェンドリン「く、崩れてる!」

ピーターマン「今の物語は… 皇帝じゃない 妖精族っていう 憐れな種族の物語…」

ベネット「なにを、わけのわからないことを!」

シズナ「あ、無理!落ちる!」ガシッ

キレハ「ちょ、シズナ!?掴まないで、おち、おち、お、落ちる!」ヒューッ

ウェンドリン「キレハちゃん!」

ルドルフ「…」ヒューッ

パリス「何も言わずにルドルフが落ちたぞ!」

ベネット「く…!」

ピーターマン「さいはてに続いてる 心配要らないよ 向こうに着いたらマルサって人たちを頼るといい」

ウェンドリン「マルサ…?」

ピーターマン「きっと 役に立つよ それじゃ」バッ

ベネット「あっ!まて!…行ったか」

ウェンドリン「も、もうそろそろ限界!」

ベネット「え?…うわ!」

ヒュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ…
ウウウウウウウウウウウ…
ウウウウ…

~?????~
ドサドサドサッ
アナンタ「む」

ヒマリ「え?」

カーリー「お?」

クォート「…」

テレージャ「ん?」

ネル「はっ?」

ナナ「へ?」

ウェンドリン「いたた…」

ベネット「よっ」スタッ

キレハ「…」グッタリ

ルドルフ「…」ポンポン

シズナ「きゃぁ!?」ダゴォ

パリス「ぐええ!!?」パタン

アナンタ「…ベネっち?シズナちゃん?」

ネル「ウェンドリン、パリス、キレハちゃん…!」

ヒマリ「ルドルフ!」

ブジダッタンダネ!ナンデココニ!ソッチコソ!アーダコーダ…

ファル彦「姉ちゃん!そ、空から人が!」

ハルナ「二回目にもなると慣れた」

アレク輔「…どういうことだこれは」

キリコ「…さいはての外から、人が…それにこんな人数…」

アレク輔「…収拾がつかん!基地に行くぞキミタチィ!」

アナンタ「アイサー!ボス!」ビシ

ベネット「なんなのよ、それ…」

ファル彦「めくるめく大冒険の予感がびんびんするぜ!うおおおおお!」ダッ

ベネット「だから、なんなのよそのノリ…」ヤレヤレ

幕間
~アナンタの!その辺で拾ったアイテム説明~

ムフウエセ
仰々しい斧。切れ味は求めていない
〈打撃/スタン〉         装備可:アナ・ネル・パリ
〈スキル習得〉         (固有技:アカシャアーツ)

割と普通の斧。斬るというよりはぶん殴ることを目的としている。
手に取ると、色々なジブンが体の内側に沸いてくる気がする。
もしかして、魔法が使えるジブンがいるのかも?と思って、
意気揚々と装備するも使える技は打撃特攻。
ネルちゃんと2人で悲しみに暮れた。
え?なに、ベネっち?今どんな気分かって?

そうだなぁ…

カレーが食べたいかな。

~ヒノモト学園秘密基地~
アレク輔「…なるほどな」

ヒマリ「皇帝、守護者、秘石を奪った謎の男…」

カーリー「姿なき声トルバドール、不思議の城のヘレン…」

ウェンドリン「すみません、ヒマリさん…本、盗られちゃって…」

ヒマリ「ううん、いいよ。私もアレ、世の瀬で拾っただけだから」

ルドルフ「ヒマリは読んだの?あの本」

ヒマリ「最後までは読んでないかな…でもなんであんな本を…?」

パリス「さぁ…」

テレージャ「それにしても妖精族、皇帝タイタス。私がそちらにいればなぁ」

ウェンドリン「タイタス?」

テレージャ「ああ。古代アルケアを治めた皇帝タイタス。大河の女神の加護を受け、古都アーガデウムを築いた人物だ。秘石、とやらも見てみたかったものだが…」

ベネット「そっちも大変だったみたいね」

キレハ「塔の悪魔に、魔将ナムリス」

パリス「そのあたりは片がついたんだろ?」

カーリー「まぁね。ナナも仲間になったことだし!」

ナナ「あ、よろしくお願いしますね、みなさん」ペコ

キレハ「悪いわね、こんなことに巻き込んでしまって…」

ナナ「いえ。いいんですよ。それに、決めましたから」

ルドルフ「決めた?」

ナナ「私は、私の物語を始めるんです。その一歩目として、みなさんのお手伝いをしていきたいんです」

ルドルフ「…」

パリス「なんでもいいけどよ、問題はアイツだろ?」

シズナ「そうよ。私たちは助けてもらったんだけど…」

ベネット「ピーターマン、か」

アレク輔「情報をまとめよう。まずは敵の勢力だが」

アレク輔「皇帝タイタス、魔将(ナムリス以外にも何人かいる?)、十二悪魔将、謎のドクター、六魔(地竜のみ確認)…そんなところか」

ベネット「はるるーととかいう魔法少女?とピーターマンの関係、あとは地竜とはるるーとの関係、ドクターとピーターマンの関係もよく分からないな」

ハルナ「!」ピクッ

キリコ「…魔法少女はるるーと?…ふむ」

アレク輔「場合によってはピーターマンすら敵対する可能性があるのか」

ヒマリ「でも、私たちもウェンドリンさんたちも、ピーターマンにマルサを頼れって言われたんですよね」

ウェンドリン「うん…さいはてには君たちが必要だ、とも」

アレク輔「ピーターマンがマルサを認知している!?ファル彦が聞いたら卒倒しそうだ」

ハルナ「…そういえばファル彦は?」

ベネット「アナンタもいないわね」

パリス「ネルもいねぇ」

カーリー「クォートもよ!」

アレク輔「アナンタさんとネルさんとファル彦はクォートくんを引っ張って探索しに行ったよ。さいはてを見てまわるそうだ」

ベネット「大事な話をしてるときにアナンタは…」ハァ

シズナ「わくわくが抑えられなかったのね…」

ウェンドリン「ネル…」

パリス「あいつはまったく…」

シズナ「いいじゃない。いままで色んなことがありすぎて、ろくにゆっくりできなかったんだから」

ベネット「ゆっくりする気がないのは誰だったかしらね」

テレージャ「異世界でゆっくり、ってのも妙な話だが」

ウェンドリン「まぁまぁ」

アレク輔「興味深い話が聞けた。こちらで調べられることは調べてみるとするよ。君たちはしばらくさいはて観光としゃれ込みたまえ」

ヒマリ「いいんですか?」

アレク輔「ああ。英気を養うのも大切だろう」

テレージャ「ふむ。それならば、お言葉に甘えるとしよう」

パリス「悪いな」

アレク輔「いやいや。こんなに楽しそう…もとい、困ってる人を放ってはおけないからな!」

ベネット「そう…」

アレク輔「それじゃあ、ハルナさん、さいはてを案内してあげてくれないか?できればキリコも」

ハルナ「えー」

キリコ「…ちょっと調べることがあるから、厳しいかなー」

カーリー「無理しなくてもいいのよ?私たちは私たちで適当にやらせてもらうし」

アレク輔「ならハルナさんだけで」

ハルナ「な」

キリコ「ちょっとは動いときなー」

アレク輔「それじゃ、また適当に時間をつぶしたらここに集まってくれ。解散!」

シズナ「アイアイサー!」

ベネット「それはやるべきなのか…?」

~さいはて町・まんなか区・住宅地・チームファル彦~
アナンタ「んー」モグモグ

ネル「んー」モグモグ

クォート「…」モグモグ

ファル彦「はー」モグモグ

アナンタ「…さてみんな、ひと通り食べたね?」

ネル「うん!ばっちり味わったよ!」

クォート「…」グッ

ファル彦「食べたぜ!」

アナンタ「よぉしじゃあいくよ…せーの!」

4人「「「これ!(…!)」」」ビシッ

アナンタ「このチョコバーイケるよ!是非ともバナナ味も出してほしいね…!」

ネル「わたしはこのお粥かな!カレー?だったっけ。食欲がとまらないよ!」

ファル彦「チョコバーも捨てがたいけど、輪廻ドーナツの素晴らしさにはもうコウベがたれまくるぜ!さくさくの後にふわっとくる食感には勝てないぜ!」モグモグ

アナンタ「クォートくんは?」

クォート「…」モグモグ

アナンタ「カップ豆腐かぁ渋いチョイスだね!」

ネル「それにしてもダガシなんて食べ物初めて食べたけど、安くておいしくていいね!」

ファル彦「ネルの世界には駄菓子がなかったのか…やっていける気がしない!」

ネル「チョコレートは高級品だったからねぇ。こんな加工したのなんて見たことなかったよ!作ったとしてもパイにするくらいかなぁ」

アナンタ「カレーも見たことないんでしょ?」

ネル「うん。食べたことないものばっかりで驚きまくりだよ!」

ファル彦「そういってもらえるとうれしいぜ!」

クォート「…」モグモグスタスタ

長月「おや…これはこれは…」

ファル彦「あっ!奇人四天王!」

長月「いかにも。大奇術師 長月と申します。以後お見知りおきを」

ネル「見るからに怪しい…」

長月「はっはっは 奇人ですからね。それよりハヤブサファル彦くん以外のお三方」

クォート「?」

長月「さいはての外からいらっしゃったのですか?」

アナンタ「そうだよ。ピーターマンっていう謎のヒーローに唆されてね…!」

ファル彦「なにぃぃぃいぃぃぃいいいいいいい!?」

長月「…」

ネル「うわっびっくりした!」

ファル彦「アナンタもネルも…他の奴らも!全員ピーターマンのシリアイか!?」

アナンタ「いや…どっちかって言うと被害者、みたいな?」

ファル彦「ピーターマンが悪さなんてしないぜ!フカシもタイガイにしろよな!」

長月「…まぁまぁファル彦くん。もしかしたら偽者かもしれないよ」

ファル彦「なるほど!ヒーローも有名になると辛いもんだぜ!」

長月「アナンタさん、ネルさん、クォートくんといいましたか」

ネル「え?うん」

長月「さいはてにようこそ。ここにいる間に、大切なものを失われないよう、祈っています」

クォート「…」モグモグ

アナンタ「よく分からないけど、ありがとう。気をつけるよ…?」

ネル「うーん?」

長月「ちなみにこの住宅地には『奇人四天王』という猛者がいましてね。『考える人 橘』、『ひきこもりマスター 桃本』、『堀の番人 佐伯』そして私。桃本さんは最近見ませんが、どうしたのでしょう…」

ファル彦「桃本さんって、いつも箱の中に閉じこもってるのにどうやって移動してるんだろうな」

アナンタ「…予想以上にこの世界、ヘンだな」

ネル「予想できないから楽しいってのもあるよ!」

クォート「…」モグモグ

アナンタ「クォートくんいつまで食べてるの!?気に入りすぎだよ!」

ファル彦「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ小遣いがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

さいはてHOSPITAL、参戦!

ハルナ 色素の薄い少女。マホウを使う。ダウナー系。

ファル彦 うるさい子ども。頭が尖っている。時には凶器に。

アレク輔 さいはて町保安特殊部隊、ひとよんで『マルサ』のリーダー。

キリコ  謎のマホウ使い。どんなときも帽子をとらない。

幕間
~アナンタの!その辺で拾ったアイテム解説~

QWOP
走るぞ!絶対走るぞ!
〈打撃耐性〉            装備可:全員
〈敏捷低下〉
〈MP・HPブースト〉

走りやすそうな服装、いかにも走り出すようなポーズの彫像。
以下、装備者の声。
「ふざけてるわね。矢が当たらなくなるくらい動きが鈍くなったわ」
「同じく。こんなもの誰が使うのよ…」
「うぅ、まるで関節金具が錆びたみたいね!」
「いくらなんでもこんなに動きにくいんじゃせっかくの新技も当たらないよ!」
「クビキれません…」
「…」ガクン
「動かなくて済むから楽かなー」
「ふむ。私たちにぴったりじゃないか」
「そうね!動きに変化がないものね!」

…それでいいのか後衛軍団。

~さいはて町・まんなか区・銀貨橋・チームハルナ~
シズナ「これ!これ飲みたいわ!」

ハルナ「ハッカソーダかーいいね」

カーリー「ちょっと!こんな質の悪い銃売ってどうするのよ!というかおもちゃじゃない!」

軍事研「いやはやそう言われましても…」

カーリー「でもこの複合装甲とかいうのはなかなかね!おいくら?」

軍事研「お客さんそれ人間が装備していいヤツじゃないっすよ…」

テレージャ「このタコヤキっていうのはなかなかいけるよ」モグモグ

ウェンドリン「ダガシも種類がいっぱいあっておいしいよ~」モグモグ

ナナ「テレージャさんタコヤキくださいな♪」

テレージャ「んむ」スッ

ハルナ「はーつかれた」

シズナ「ありがとうハルナちゃん!これ気に入ったわ!」ゴクゴク

カーリー「アレク輔にお金もらっておいてよかったわね」

ハルナ「うん…カーリーも何か食べる?」

カーリー「私はウェンドリンのダガシを少しもらうとするわ」

ウェンドリン「ふぁい、カーリーさんどうぞ」モグモグ

テレージャ「にしてもここは不思議なところだね。平和そうに見えて、武器が売っているし」

ハルナ「最近は物騒だからね。ノイズっていうのが人を襲うし」

ナナ「ノイズ…ですか」

シズナ「そんなの魔法でちょちょいのちょいよ!」

ナナ「でも先ほどアレク輔さんが言ってましたよね」

テレージャ「…さいはて町民の心身における健康のための条例、か」

ハルナ「あーなんだっけ」

ナナ「町民は自らを愛し 隣人を愛する事 さらには町を愛する事」

ナナ「町内におけるマホウの行使はS機関の管理下としそれ以外の一切を認めない」

ナナ「23時~翌1時 間の外出を例外なく禁ずる」

ナナ「…さいはて町の外に出ない事、さいはて町の外に興味を持たない事、『さいはて町』という概念を疑わない事、です」

テレージャ「覚えてないのかハルナくん」

ハルナ「しゃらくせぇー」

ウェンドリン「…」

シズナ「魔法、使っちゃいけないのね」

テレージャ「それもそうだが、最後の一つが一番気になるところだ」

カーリー「外に出るな、って?たしかによくわからないわね」

テレージャ「それに、それが禁止行為だとするならさいはて町の外から来た私たちはどうなる?」

ウェンドリン「条例違反だ…」

ハルナ「…」

テレージャ「ま、私たちにはどうすることもできない。今はこうして、のんきにするのも良いかもしれないな」

シズナ「…そうね。何もないといいけど」

カーリー「何かあるまでは充電期間、ね!」

ハルナ「ねぇ」

シズナ「ん?どうしたのハルナちゃん」

ハルナ「みんなは、それぞれ違う世界から来たんだよね」

ウェンドリン「そうだね。私とテレージャは一緒だけど」

ハルナ「…さいはてをどう思う?」

シズナ「おだやかで、いいところよ!」

ウェンドリン「うん!なんだか、時がゆっくり流れてる感じがする?かな」

テレージャ「…そうだね」

カーリー「雰囲気もいいわね!別荘でもほしいところよ!」

ナナ「…」

ハルナ「ナナ?」

ナナ「…」ハッ

ナナ「ご、ごめんなさい。さいはてについて、ですか?」

ハルナ「いや…ナナはいいよ。なんとなく言いたいことわかるし」

ナナ「え?そんな…」

ハルナ「…うん。…なに考えてるんだろうなーもー」

ナナ「…?」

カーリー「そういえば、あの子たち…なんて言ったっけ」

シズナ「?」

テレージャ「ヨウスケくんとトオルくんかい?」

カーリー「そうそう!案内押し付けちゃってよかったの?」

ハルナ「あの子たちもマルサだし、へーきでしょー」

ウェンドリン「ゆるいなぁ…」

幕間
~アナンタの!その辺で拾ったアイテム解説~

コルトパイソン
とある世界ではメジャーな回転式拳銃…らしい
〈投擲/即死〉            装備可:キレ・カリ・クォ・ベネ
〈スキル習得〉           (固有技:早撃ち!)

ある薬物暴走事件の際に活躍した10歳の男の子が持っていたとされる銃。
勉強も運動もからっきしだけど、あやとりと射撃が得意らしい。
スナイパーなのに眼鏡をかけているが、射撃の腕前はスゴイ…らしい。

…なんでその子の情報がこんなにあやふやかって?
資料自体はたくさんあるんだけど、どれもただの漫画だし、
どれを読んでも薬物ゾンビと銃撃戦をする話なんてないし…
謎が謎呼ぶこの武器は、ベネっちのお気に入りである。
高級感のある見た目と、手作業での微調整が随時必要なため、
カーリーちゃんは苦手。
曰く、「銃なんて、撃って当たればいいのよ」だそうだ。

~さいはて町・さかさま区・チームヨウスケ&トオル~
ヒマリ「ヨウスケくん」

ヨウスケ「なんだ!」

ヒマリ「私たち、どこかで会ったこととか…」

ヨウスケ「もー何回目だよそれ!ないっての!」

ヒマリ「そう…」

ヨウスケ「はっ!?これはもしかしてナンパなのか!?いやしかしダメだぜヒマリさん!オレとあなたとの間には年齢以外にも世界の壁が!」

トオル「ヨウスケうるさい」

ベネット「はぁ…またこんなのか…」

トオル「ごめんなベネットさん」

パリス「でもあのガキ、どっかで見たような…うーん」

キレハ「気のせい、とも思えないわね。ここまで既視感があると」

ヨウスケ「そんなことよりオマエラ!さかさま区について感想はないのかよ!すごいだろ!」

ヒマリ「天地逆さまに見えるんだね!すごいよ!」

ベネット「いまさら何があっても驚けるとは思えないけど…」

ルドルフ「…」モクモク

パリス「ルドルフ、なに食べてんだ?」

ルドルフ「とうふ」

トオル「でもさかさま区なんてインパクトしかないだろ?なんでここをチョイスしたんだヨウスケ」

ヨウスケ「なにィ!?まだあるぞ!さいはて町議会前のおにぎりがうまいとかな!」

パリス「おにぎりかぁ」

ベネット「それはなかなかね。お腹も減ってきたしちょっと買ってくるわ」

ヒマリ「あ、私も行きます」

ヨウスケ「おいおいお金を預かっているこのマギ ヨウスケ様を忘れてもらっちゃ困るぜ!」

トオル「はいはいいってらっしゃい。僕らは空き地にいるから」

ヨウスケ「はいよー」

パリス「…行っちまったな」

ルドルフ「…」モクモク

~さかさま区・空き地~
金に汚い天使「あっ」

トオル「ん?」

パリス「すげぇ格好の姉ちゃんだな」

キレハ「羽まで…」

金に汚い天使「どうもみなさん。宝の地図買いませんか?」

キレハ「宝の…地図?」

ルドルフ「何が見つかるの?」

金に汚い天使「それはわかりませんねぇ。一説には金銀財宝とも願いを叶える七つの玉とも」

パリス「怪しいもんだな。どれ、見せてみてくれ」

金に汚い天使「おっとそれはダメです。企業秘密です。見たけりゃ買ってください」

トオル「…」

パリス「はぁ…金がないからどっちにしろ買えん」

金に汚い天使「なんですか一文無しですか最初に言ってくださいよ紛らわしい」

ヨウスケ「おーい!おまたせ!」

ベネット「ん…そちらは?」

金に汚い天使「おやおやお仲間ですか。宝の地図いりませんか?」

ヨウスケ「買うぜ!」チャリーン

金に汚い天使「まいど!いい買い物しましたね!」

ヒマリ「へ?え?」

パリス「早!」

キレハ「迷いがないわね…」

金に汚い天使「さて在庫も捌けたしおいとましますねサラバ!」ダッ

ヨウスケ「いやーいい買い物だってよ!どんな地図かな?」シュルル

トオル「…随分とシンプルかつ大胆だね」

ベネット「ここから北のところに大きく×打ってあるだけじゃない。騙されたわね」

ヨウスケ「ぬおおおお力場坂に宝が!?」

パリス「心当たりあるのかよ」

トオル「いや…あそこには魔王城しか…」

ヒマリ「魔王城!?」

ルドルフ「ヒマリ、落ち着いて。きっと関係ないよ」

ヨウスケ「…それもそうか。クソー騙されたぜ!」

ヒマリ「トオルくん、その、魔王城っていうのは?」

トオル「今度の市議会選挙に立候補してる魔王がいるだけだよ。それだけ」

ベネット「魔王が選挙?」

キレハ「世も末ね」

ヒマリ「…気になるなぁ」

ルドルフ「…」

ヨウスケ「魔王城には…行けないぜ」シン…

トオル「…」フイ

パリス「なんでだ?」

ヨウスケ「…子どもだけじゃ危ないからさ!それより、おにぎり食べようぜ!」

ヒマリ「…そっか。うん!私これ!」ハッシ

ヨウスケ「あー!狙ってたのに!」

ベネット「…」

ベネット(今…一瞬雰囲気が…魔王城に何か?)

パリス「どうした、ベネット?」モグモグ

ベネット「…いえ、なんでも。おにぎりもらうわね」

キレハ「?」モグモグ

ルドルフ「…」モグモグ

トオル「ルドルフさん、カップ豆腐気に入ったの?」

ルドルフ「うん」

―――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――
―――――――――――――
――――――

~さいはて町・ヒノモト学園秘密基地~
ファル彦「戻ったぜ!」

アナンタ「あれ、これだけ?ほかのみんなは?」

ベネット「あんたね…」

ネル「ただいま~」

クォート「…」スタスタ

パリス「まだ外じゃねぇか?オレたちも今戻ったばっかだしよ」

ネル「みんなも散策した?すごいよねこの町!なんていうか、全部ヘン!」

ヒマリ「変わってますよね」

ファル彦「ヒマリたちはどこ行ってたんだ?」

ヒマリ「ヨウスケくんとトオルくんの案内で、さかさま区ってところに」

ファル彦「あーヨウスケは馬鹿だからメーワクかけただろ!」

ヒマリ「そ、そんなこと…ないよ?」

ファル彦「で、その2人はどこに?」

ベネット「『やることがあったの忘れてたぜ!』とか言ってどっか行っちゃったわよ」

ファル彦「やること…?」

アレク輔「みんないるかい?」ガチャ

パリス「アレク輔!金、ありがとな」

アレク輔「いやいや、かまわないさ。…あー、ちょっとかまっとこうかな」

ベネット「?」

アレク輔「出動要請来たから手伝ってもらえないかなと」

ファル彦「お!?」

ヒマリ「何するんですか?」

アレク輔「わからないんだ。科学部とコンタクトをとれってさ」

アナンタ「ふーん?」

アレク輔「あんまり人数いてもアレだしな…ハルナさんは?」

キレハ「まだ帰ってきてないわよ」

アレク輔「そっか。あんまり目立たない女の子を連れてきてほしいってことなんだけど…」

ベネット「…私たちは格好で目立つな」

アナンタ「だねー」

ヒマリ「私もですかね…」

ネル「わたしは?」

パリス「お前は騒がしくて目立つだろうが!」

キレハ「…」

アレク輔「よし、キレハさん来てくれ」

キレハ「わ、私?私も格好が…」

アレク輔「大丈夫大丈夫。小柄だし黒いから」

キレハ「えー…まぁ、いいけど…」

アレク輔「じゃああとはファル彦と…クォートも頼む」

クォート「…」コク

アレク輔「それでは、マルサ出動!」

ファル彦「アイアイサー!」ビシィ

ベネット「じゃあ私たちは留守番してるわね」

ネル「あっ!こんなところにお菓子が!」

アナンタ「ホントだ!やりぃ!」

ヒマリ「それ、食べていいんですか…」

~ヒノモト学園・科学部室~

佐々原「よく来てくれた。机の上のビーカーに茶を淹れてある。まずは遠慮せず科学部的雰囲気を味わってくれ」

キレハ「…科学部的雰囲気って」ゴクゴク

佐々原「さて、早速だが知っての通り今この学園は未曾有の危機に瀕している」

佐々原「校則改正急進派による全トイレ占拠だ」

キレハ「来るときに見た人たちはそれだったのね。何やってるのかと思ったわ」

アレク輔「要求は?」

佐々原「現生徒会メンバーの解散。建前上はね」

ファル彦「タテマエ?」

佐々原「その実長く居座って事態収拾能力の不足を生徒に示すためのようだ」

キレハ「くだらないけど考えはちゃんとしてるのね…」コクコク

佐々原「生徒会直属の隠密が動くそうだが、何しろ数が多い。正攻法じゃあ交戦中に増援が来る。あの狭いトイレ内で挟み撃ちだ」

佐々原「…というわけで俺に声がかかったんだけどどうもこういうのはちょっとね。デスクワークが主だしね」

アレク輔「でもやるんだろ?部費の会議近いし」

佐々原「いかにも」

アレク輔「…作戦を聞かせてくれ」

佐々原「ああ。まず外に見張りが各1名。中にそれぞれ3~5名。教室に近い2、3階のトイレにはもう少し居るらしいが」

佐々原「また生徒会室の発言記録によると買出し部隊なるものが存在し、食料を供給することで長時間の篭城を可能にしている」

アレク輔「トイレで飯食うのか…それはちょっとなぁ…」

キレハ「その、買出し部隊とやらを狙えばいいんじゃないかしら?」

佐々原「それは一番最初に考えた。結論から言って不可能だ」

キレハ「なぜ?」

佐々原「買出し部隊はな…パシリなんだ。連中と直接の繋がりがない。いくらでも補充が利く。しかも、接触の際連中は武装を解いて普通にパシる。誰が急進派なのか見分けがつかんのだ」

キレハ「うーん…」

佐々原「次善の策はある。手荒ではあるが…」

佐々原「この階の男子トイレ、一番奥の個室いつも閉まってるだろう?」

アレク輔「ああ…怪談にもなってるな」

佐々原「あれ、犯人俺。いちいち廊下に出てトイレ行くの面倒でね。クローゼットの裏にショートカット作った。科学部専用個室ができたという訳さ!」

アレク輔「ええッ!アンタ何やってんの!?」

キレハ「…いくらトイレの隣に部室があるからってやりすぎよ」

佐々原「この際そんな細かいことはどうでもよろしい。重要なのは、一番奥の個室だってことだ」

アレク輔「…壁を背にできるのか」

キレハ「挟み撃ちよりはマシかもしれないわね」

クォート「…」

佐々原「武装はしていても所詮は烏合の衆。君たちならできると信じているよ!」

キレハ「それで?私は何のために?」

佐々原「そう。問題はもう一つ。女子トイレだ」

佐々原「ここが癌なんだよなぁ…隠密も我々も踏み込めない聖域だ」

キレハ「大げさな…」

佐々原「そっちにいる科学部員の橘君のために女子トイレへのショートカットも作ってあるんだが…」

橘「…」ペコリ

キレハ「あ、どうも」ペコリ

アレク輔「あるのかよ!」

佐々原「そんなもの使って突入した日には生徒会長のチョンマゲにつけこませるいいネタになってしまう。部費会議の発言はおろか、出席すら危うくなるだろう」

キレハ(チョンマゲって、廊下に居たヘンな髪型の人よね…たぶん…)

佐々原「そこで!そっちの…どなただ?」

キレハ「キレハよ」

佐々原「キレハさん!いやはやてっきりハル…なんだっけ…」

アレク輔「ハルナさんか?」

佐々原「そうそう。その人が来ると思っていたんだが…」

アレク輔「生憎不在だ」

佐々原「まぁいい。その、キレハさんはなにかマホウとかサイキックパワーなんか使えたりは?」

キレハ「…簡単なものなら。というか、たいしたことないなら格闘でもいけなくはないけど…」

佐々原「すばらしい!それでは引き受けていただけるということで!あなたの勇気にこの佐々原感動の涙を禁じえません!」

キレハ「いやでもこのくらいなら私ナシで何とかできるんじゃ…第一、私たちがそんなに目立つべきじゃ…」

キレハ「…う!?」キュッ

佐々原「ふふふ…残念ながらあなたは断ることはできない」

佐々原「なぜなら!さっきあなたが飲んだものは!」

アレク輔「ちょ!アンタ何入れた!?」

佐々原「利尿を促進する濃ーいお茶だったからな!」ズバーン!

佐々原「以上だ!諸君と全生徒の膀胱の健闘を祈る!」

キレハ「な、なんてヤツ!!」

アレク輔「相変わらず科学部は奇想天外だな!」

ファル彦「変なのは科学部にかぎらんけどね。生徒会長チョンマゲだし」

キレハ「いいから、さっさと行くわよッ!」

アレク輔「おっとすまんキレハさん。それでは、行くか」

ファル彦「出動!」バッ

~男子トイレ~
アレク輔「物音立てるなよ…」ヒソヒソ

ファル彦「目の前に一人!俺の見立てだと、あと2人入り口付近に居るな」ヒソヒソ

クォート「…」ジャコン

アレク輔「よし、1、2の3で俺が目の前の奴を後ろから気絶させる!2人は入り口の方を頼む!」ヒソヒソ

クォート「…」コク

アレク輔「行くぞ…1、2の…3ッ!」バン!

アレク輔「おらッ!」ガスッ

急進派A「な!?ぐ…」バタッ

ファル彦「おとなしくしろ!マルサだ!」バッ

クォート「…!」ジャキ

急進派B「うわ!この!」ブン

ファル彦「おっと…そりゃ!」バッシュ!

急進派B「パチンコだと!?うっ!」ゴス

クォート「…」スッ

ファル彦「げっ、クォート!それは威力が…」

クォート「…!」ガツン

急進派B「ひ!?ぐあ!」バタッ

アレク輔「やるなクォート!」

ファル彦「殴るならそう言ってくれよ!ビビッたろ!」

急進派C「このぉ!」ブン

アレク輔「おっと!」ガキィ

急進派C「な、受け止め…!」

アレク輔「ハンマリング!」バキィ

急進派C「ぐ…」ヨロ

クォート「!」ガツン

急進派C「ぐえっ」バタン

アレク輔「よし!全員倒せ…」

急進派D、E「…!!」バタン

ファル彦「個室から!あぶねー!」

アレク輔「な、なにぃ!?」

急進派D、E「おりゃあ!」ブン

クォート「…!!」ヒュンヒュン…ガガッ

アレク輔「クォート!助かった!」

ファル彦「なにそれすげー!星みたいなの出た!」

急進派「「くそっ!」」

アレク輔「あきらめ…ろっ!」バキィ

ファル彦「そりゃ!」バシュ!

急進派D、E「きゅう…」バタッ

アレク輔「これで…おわりかな」

ファル彦「ナイスだぜクォート!」パチン!

クォート「…」パチン!

~トイレの外~
男子トイレ前急進派「…?騒がしいな」

女子トイレ前急進派「見て来い見て来い」

男子トイレ前急進派「うーん…」ガチャ

キレハ「…」ヒュッキュッ

女子トイレ前急進派「うわ!上から…!?ぐえ!」バタッ

キレハ「悪いわね。でもこっちもモタモタしてられないのよッ!」ガチャ

~生徒会室~
生徒「生徒会長!科学部から連絡です!『我奇襲ニ成功セリ』!」

生徒会長「状況は?」

生徒「現在1階男子トイレにて交戦中!女子トイレ、沈黙!また相手方もこの連絡を受け動揺が広がっている模様!」

生徒会長「味な真似を…!…隠密に繋げてくれ。ここで終わらせる…!」

~2階トイレ~
急進派F「これってさ」

急進派G「やばいよな」

急進派H「うん…どうする」

急進派F「どうしよう」

急進派G「どうすんの」

パリーン!

隠密「…」

急進派H「窓から!?」

急進派G「一人ならまぁやれるんじゃね」

急進派F「やるか」

急進派G「やる。で、逃げる」

ガチャ!ダダダッ

隠密B、C「「…」」スッ

急進派「「「…投降します」」」

~校庭~
急進派I「正体不明の忍者らしき存在により既に半数が投降、さらに半数が敗走…」

主犯「おのれ生徒会…こうなった以上最終手段だ」

主犯「連絡のとれる全ての同志に通達を。『革命君』による生徒会室への強制突入を行う、至急集結せよ、と」

アナンタ「…む?」スタスタ

ベネット「どうしたのよアナンタ」

アナンタ「なにやら怪しい奴らと怪しいロボ発見!」

ベネット「ええ?学校なんだし、部活動とかじゃないのかしら」

アナンタ「え?そう?じゃあ面白そうだし、ちょっとみせてもらおうよ!おーい!」ダッ

主犯「!?な、なんだ貴様ら!」

アナンタ「おもしろそうだね!少しでいいからみせてくれない?」

主犯「ええい邪魔だ!我らはこれから大切な使命があるんだ!」バキッ

アナンタ「うっ!な、何も殴ることないだろ!」

ベネット「アナンタ!」

主犯「フン!革命君、起動!」バッ

アナンタ「むむ…」

主犯「はっはっは!革命君の威力、貴様らで試してやろう!」ガチャン

ベネット「はぁ…面倒ごとに…」

アナンタ「お?なにするんだろ」ワクワク

革命君「…!」キュィィ

革命君「!!!」ギャララ

アナンタ「…体当たりかぁ」

ベネット「ノンキ構えてないで!よけるわよ!」バッ

アナンタ「うーん…大丈夫でしょ」ポリポリ

ベネット「え?」

主犯「ふはははは!諦めたか!臆したか!くらえ!」ウィィィ!

アナンタ「よーし」グルグル

革命君「!!!」ガツ…

アナンタ「ふん!」ガシ!

主犯「な、なに!?止めただと!?」

ベネット「うわ…」

アナンタ「ぬぬ…ぬぬぬ!」グググ…

革命君「…」フワ

主犯「か、革命君を持ち上げた!?」

アナンタ「おりゃあああああああああ!アナンタ!スゥゥゥゥゥパァァアアアアアアアア!」ダッ!

主犯「ひぃっ!」

アナンタ「ドライバァァァアァァァァアアアアアアアア!!!」ギャララララ

革命君「!!」ドガァバラバラ…

主犯「うわああああああ!!」ダッ

アナンタ「まて!」ガシ

主犯「ひ…!?」ガクガク

アナンタ「ごめんなさいは?」

主犯「ご…ごめんなさいぃ…」ガクン

ベネット「気絶か。…アナンタ」

アナンタ「いやーすっきりしたぁ!」

ベネット「やりすぎよ。流石にヒいたわ」ビシッ

アナンタ「えー!?そんなぁ!」

佐々原(ぐぬぬ…出番が…)

~女子トイレ~

キレハ「…これは」

キレハ(血塗れ…?中でなにが…)ブルッ

キレハ(寒い…トイレの中だけ凍えるような寒さ)ガチガチ

キレハ「ワケが分からないわよ…」

??????「お困りかなお嬢さん」

キレハ「その声…たしか…姿なき声、トルバドール!」

トルバドール「ほう。ご名答だ。しかし私が誰か、などということは至極どうでもいいことなのだ」

キレハ「く…いったいどこに!」キョロキョロ

トルバドール「さて…その血痕だが…この場は私が何とかしようじゃないか」

キレハ「…」ギリ

トルバドール「はっ!」ブゥン

キレハ「え?」パッ

トルバドール「ふふ…驚いたかね?しかしまぁ後片付けは大切だ。それでは、ごきげんよう」スゥッ

キレハ「ちょっ!待ちなさい!」

シーン

キレハ「…いなくなった?なんだったの…?」

キレハ(撒き散らかしてあった血も、倒れていた人たちも跡形もなく…)

キレハ(いったいどうやって…)

キレハ「…はっ」ブルッ

キレハ「…トイレ、使ってもいいかしら…」

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