聖杯戦争 ?学園都市編? (82)

前スレで設定をミスってもう一度立て直しました。

禁書側では第三次世界大戦後、fate側は第四次聖杯戦争。

時系列に矛盾がありますが突っ込んだら負けと思ってください。
初SSです。捏造と矛盾たっぷりです。
禁書側は原作新訳以外読破済み、fate側は原作読み進めながら書いてます。


一応スレ立てしますが投下は今夜9時?10時頃。


よろしくお願いします。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1360234163

待ってました!

一方通行さん出してくれるならあたしゃ期待するよ

ああああ1時間も遅れてしまったすいません申し訳ない。
iPhoneからの投下ですので誤字や変換ミスが起こるかもしれません。

ではでは始めます

ーーー三年前ーーー



神秘学の語るところによれば、この世界の外側には次元論の頂点に在る”力“があるという。



あらゆる出来事の発端とされる座標。それが全ての魔術師の悲願たる『根源の渦』…万物の始まりにして終焉、この世全てを創造できるという神の座である。


そんな"世界の外"へと到る試みを、およそ二千年前、実行に移した者がいた。
アインツベルン、マキリ、遠坂。始まりの御三家と呼ばれる彼らが企てたのは、幾多の伝承において語られる『聖杯』の再現である。あらゆる願望を実現させるという聖杯の召喚を期して、三家の魔術師は互いの秘術を提供しあい、ついに、万能の釜たる聖杯を現出させる。

だが、その聖杯が叶えるのはただ一人の人間の祈りのみ、という事実が明らかになるや否や、協力関係は血で血を洗う闘争へと形を変えた。
これが、『聖杯戦争』の始まりである。
以来、六十年に一度の周期で聖杯はかつて召喚された極東の地『冬木』に再来する。

だがここであるイレギュラーな事態があった。
それは、




「……なに?学園都市?」



「え、ええ。何が起こったのか分からないけど、今度の聖杯戦争はそこで行われるみたい」



「…まぁいいさ、場所はどこでも。それにしてもアインツベルンが雇った人間が僕以外にもいるとはね。まさかそいつが学園都市の超能力者とは…」



「こんな女の子を…」



「相当な戦力になるのは間違いない。実力も実績も文句のつけどころがないよ」



「でも切嗣、あなたは……」



「いいさ、何も言わないでくれ」

ふぅ、と小さく息を吐く。



「ーーー御坂美琴、か」





ーーーーーーーーーー

イギリス、時計塔。
とある一室に三人の魔術師。
傍から見れば談笑しているように見える。だが違った、空気が重い。
豪華なソファーに左から神裂、ステイル。
向かい側には遠坂時臣。
そしてその状況を、作っている人間が長い沈黙からようやく口を開く。



「ーーーということは、私達があなたをサポートすればよいと、そういうことですね?」



「そういうことだ、察しが良くて助かる。此度の聖杯戦争はやや特殊な形だが学園都市で行われる。…となるとアインツベルンや間桐の方も学園都市側から戦力となるカードを用意してくるだろう。
そうなればこちらも不本意ながら手を打たなければならない。
そこで君達に聖杯戦争におけるサポートを頼もうと思ってね、ステイル=マグヌス、神裂火織」

すいません、PCのみならずiPhoneまで調子が悪い。
なんか投下できない。エラーかもしらませんので明日に書き溜めを、投下します。




「こっちのメリットは?」

ステイルが口を開く。


「もちろんあるさ。それはーーー」










それから、二年の月日が流れた。







ーーー 一年前 ーーー


学園都市。
第七学区、とある寮にて。



「なぁインデックス。いったい何を探せっていうんだよ」



「そこじゃないかもとうま。こっち探して欲しいかも」



訝しげに尋ねる彼を横目に一目くれてやると再び探し続けた。


「これじゃない。これでもない…」



「おいインデックス。せめて何を探すかぐらい言ってくれなきゃ分からないだろ」



「もうとうま。そのぐらい察して欲しいかも」

と、インデックスは先程の真剣な顔つきはどこに行ったのやら、途端に目を輝かせて、



「カナミンに決まってるんだよ!かなみんのとれーでぃんぐかーどが亡くなったんだよ!未曾有の危機かも。探して欲しいんだよ」


さも、当然かのように言う彼女を見て彼は、



「おい!じゃあなんださっきのいかにも訳ありですみたいな顔つきしてたのは!」



「むぅ。とうま、いいからさっさと探して欲しいんだよ。次はあっち探し……て…」

言いづまる。
彼女の目の端にうつったのは、
一つの写真。




「ん?どうしたインデックス」


「……」



「…?なんだよその写真。ステイルと神裂が写ってるから昔のか?そんなのあったんだな」



何かがおかしい。ステイルと神裂とインデックス。三人は同僚であるからして三人で写ってる写真は別段驚く事ではないのだが。



「……、誰だ?もう一人の男の人、パーカー着てる人…」

左からステイル、インデックス、神裂と並んでその隣に居場所の悪そうなひきつった笑顔の人物。

「…昔じゃないんだよ、つい最近なんだよ、この写真とったの」



「じゃあ誰だよこの人」



「前にイギリスに戻った時にいたんだよ。すているから聞いたんだけど、記憶を失くす前からずっと一緒に私の事助けてくれてたんだって」



「え、でもその人の事覚えてないんだろ?」



「うん。でもその人の事、あんまり話してくれなかったんだよ。訳ありの人物だって……」



「なんだよそれ!訳ありって……!」



「でもなんかこの人と一緒にいた時懐かしい感じがしたんだよ。それに、すごく安心したかも…」



「……」



「とうまと一緒にいるときと同じなんだよ。絶対に忘れちゃいけないはずなのに」



「…あれっ!これってカナミンのカードじゃねぇか!おーいあったぞインデックス」



「そこ置いといて。汚したりしたら許さないかも」




「へいへい。あ、晩飯の用意するな、インデックス」



「はーい、…」

本当は、分かっていた。
彼女、インデックスは写真に写る”それ“が誰であるのかを。そして、今何をしようとしているのかという事も。




「……かりや…」



その呟きは、誰にも聞こえなかった。








はい。エラーかと思いきや大丈夫でした。誤字は無かったか不安ですが今日はここまで。
完結させたいと思います。
なお、この作品では上条さんの幻想殺しで聖杯の恩恵を受けたサーヴァント及び聖杯も壊れないという設定です。
その理由はまた後ほど。
一応雁夜おじさん落ちです。
ハッピーエンドではないと思います。

q

乙です
あと2千年前となってるのは2百年前の間違いじゃない?
このSSではそういう設定だったらごめんなさい

投下します。

ーーーーーーーーー



目当ての女性の面影は、すぐに見分けがついた。



「やあ、久しぶり」



「あらーー雁夜くん」



慎ましい愛想笑いに口元を綻ばせながら、彼女は読みかけの本から目をあげた。



窶れたーーーそう見て取った雁夜にはやるせない不安に囚われる。今の彼女には心痛の種があるのだろう。
原因を問いただし、力を尽くしてその”何か“を解決してやりたいが、雁夜にはできない。
遠慮のない親切を尽くせるほど彼女に近しい立場ではなかった。



「三ヶ月ぶりかしら、今度の出張は長かったのね」



「ああ…まぁ、ね」




旧友に会いにいくため、イギリスに行ったなんて言えるはずもなく、いや、旧友というのは語弊があるのだろうか。彼にとって”彼ら“の事を旧友と呼ぶには少し違う気がする。そんな言葉で説明できないややこしい関係だったのは事実だろう。



気まずい雰囲気にならないようにするため、他の会話相手を捜す。
そんな中、一人の女の子が駆け寄ってくる。
ーーー遠坂凛。まだ幼いながらも母親譲りの美貌の兆しを見せ始めていた。



「凛ちゃん」



「カリヤおじさん、おかえり!またオミヤゲ買ってきてくれたの?」



「これ、凛、お行儀の悪い…」




雁夜は、隠し持っていた二つのうち片方のプレゼントを差し出す。



「わぁ、キレイ…」



「おじさん、いつもありがとう。これ大事にするね」



「はは、気に入ってくれたのならおじさんも嬉しいよ」



そして、もう片方のプレゼントを受け取るべき相手を捜す。



「なあ、桜ちゃんはどこにいるんだい?」



途端に凛の表情が曇る。



「桜はね、もういないの」



硬く虚ろな眼差しのまま、棒読みの台詞のようにそう答えると、それ以上雁夜に何か訊かれるのを拒むかのように走り去った。




「……」



不可解な言葉に戸惑う雁夜。



「どういうことなんだ…?」



「桜はね、もう私の娘でも、凛の妹でもないの」



とても乾いた口調。



「あの子は、間桐の家にいったわ」



マ、トウーーー!!
忌まわしい程に親しみ深いその呼び名が雁夜の心を抉った。



ーーーーーーーーーー



二度と見ないと思っていた故郷の景色の中、雁夜は足早に歩を進めた。
結局、あの後の会話は全く耳に入らなかったが、それでも話の最中に彼女が見せた涙を雁夜は見逃さなかった。
その事実で十分だった。


『…それでいいのか?』



目を伏せる彼女に思わず投げかけた言葉。
これほど感情を露わにしたのは八年ぶりだった。



あの時も問うた。
年上の幼馴染に向けて彼女が遠坂の姓を得る日の前夜。


そして、


あの時も、





『それでいいのか?』


幼いながらにして十万三千冊もの魔導書を頭の中に持っている彼女。
禁書目録、インデックスに。




忘れもしない。
ステイルと神裂と共に見守ったインデックスが記憶を消す日の前夜。
だが彼女は、





『…いいんだよ、かりや。今までありがとね』



困ったように、申し訳なさそうに、それでもはにかみながら頬を紅潮させながら小さく彼女は呟いた。





そして今、再びインデックスと同じように苦しんでいる人がいる。
雁夜は思う。



「(あの時…あの時に、『それでいいのか』と問うのではなく、『それはいけない』と断じるべきだった…!)」



雁夜の胸に抱くのは悔恨の念。
二度ならず三度まで。同じ言葉を間違えた。



そして雁夜は三度の過ちを重ねた自分を罰するため、決別した過去の場所へ戻ってきた。



十年の時を経て、間桐雁夜は再び生家の門前に立った。









(もう、もどれない)



今日はここまで。
一応参考にしているSSは『とあるフラグの天使同盟』です。
有名なので(笑)
コメントしてくれてる人にひたすら感謝していますのでアドバイスなどお願いします。
ではでは

乙です
魔術の設定なんかはどっちよりなのかな?
禁書よりだと魔術回路云々は必要なくなるが

おまいら的にこの雁夜おじさんどうなの?
てかこのスレ初SSにしてはずいぶんうまいな文才あるし
まぁハッピーエンドではおわらなさそうな感じが…

>>27
>>14にハッピーエンドではないって書いとるで

これは期待

天使同盟参考にしてんのか…
あの作品地の文めちゃくちゃうまいからな期待して待ってる

どういう意味で参考にしてるのかにもよるな
作風的な意味でなのか文章・文体的な意味でなのか
どっちにしろ期待してるが

まだかな

書き溜めしてます。
天使同盟の作品については作品背景、文章的にも両方参考にしてもらっています。あのSSからは学ぶ所が多いので。
明日や明後日には投下しますので。

まってるよー

諸事情により投下できそうにないので週末には投下するようにします、どうぞよろしくお願いします。

投下します。



「その面、もう二度とワシの前に晒すでないと確かに申しつけた筈だがな」



「聞き捨てならない噂を聞いたもんでな」
「遠坂の次女を迎え入れたそうだな」



「それを詰るか?他でもない貴様が?いったい誰のせいでここまで間桐が零落したと思うておる?
おぬしが素直に家督を受け継ぎ、秘伝を継承しておればここまで事情は切迫せなんだというのに」



「茶番はやめろよ吸血鬼。新しい代の間桐が生まれなくても、あんたには何の不都合もあるまい。二百年なり千年なりとあんた自身が生き続けたらいいだろうが」



「左様、おぬしや鶴野の息子よりもワシは後々の世まで生き永らえるじゃろう。だがそれもこの日毎に腐れ落ちる身体をどう保つかが問題でな。間桐の後継ぎは必要じゃ。この手に聖杯を勝ち取るまではな」






「……結局はそれが魂胆か」



「ワシの狙いは五度目の聖杯戦争。此度は間桐から出せる駒がない」



「…なに?」



「次の聖杯戦争に出せる駒じゃよ。そのための遠坂の養子じゃ」



「あれにはなかなか望みが持てる器での」



「まぁ、養子として迎え入れるには禁書目録の小娘でも良かったのじゃがのう」



「…ッ!」



「器としては遠坂のより望みは持てるが高望みはいかんよのう」



インデックス。遠坂桜。どちらもただの幼い女の子だ。桜はともかく、インデックスは少々特殊だがそれでも雁夜からすれば普通の女の子だ。
湧き上がる怒りを飲み下し平静を装って取引を続ける。



「……そういうことなら、聖杯さえ手に入るなら桜には用は無い訳だな?」



「おぬし、何を企んでおる?」






「取引だ。俺は次の聖杯戦争で聖杯を間桐に持ち帰る。それと引き換えに桜を解放しろ」



「落伍者が、わずか一年でサーヴァントのマスターに?笑わせるでない」



「それを可能にする秘術があんたにはあるだろう、爺さん。あんたお得意の蟲使いの技が」



「ーーー俺に『刻印蟲』を植えつけろ。この身体は間桐の薄汚い血と肉でできている。他家の娘なんかよりはよほど馴染みがいいはずだ」



臓硯の面から表情が消える。



「雁夜、ーーー死ぬ気か?」



「確かにおぬしの素養であれば一年間みっちりとしごけば聖杯に選ばれるだけの使い手になるかもしれぬ。だが解せぬな。なぜそうまでして小娘一人に拘る?」



「間桐の執念は間桐の手で果たせばいい。無関係の人間を巻き込んでたまるか」



「しかし雁夜よ、巻き込まずに済ますのが目的ならばいささか遅すぎたようじゃのう」






胸に抱いていた懸念が確信へと変わる。果てしない絶望が雁夜を押し潰す。



「爺ぃ、まさか…!」



「初めの三日はそりゃあもう散々な泣きわめきようじゃったがの、四日目からは声も出さなくなったわ。今日などは明け方から蟲倉に放り込んでどれだけ保つか試しておるのだが、半日も蟲共に嬲られ続けてまだ息がある。なかなかどうして遠坂の素材も捨てたものではない」





憎しみすら通り越した殺意に肩が震えた。
だが痩せても枯れても臓硯は魔術師。力業に訴えたところで欠片ほどの勝算もない。
桜を救うものなら交渉以外の手段はない。



「さてどうする?すでに頭から爪先まで壊れかけの小娘一匹。それでもなお救いたいと申すのなら、まあ考えてやらんでもない」



「異存はない」



「まあせいぜい気張ればよい。だがな、貴様が結果を出すまでは引き続き桜の教育は続けるぞ」



「万一、貴様が聖杯を手にするようであればーーー応とも、その時は無論アレの教育は一年限りで切り上げることになろうな」



「…二言はないな?」



「雁夜よ、ワシに対して五分の口を利こうものならまずは刻印蟲の苦痛に耐えて見せよ。そうさな、まずは一週間、蟲共の苗床になってみるがよい。それで狂い死にせずにおったなら、おぬしの本気を認めてやろうではないか」



いよいよ持ち前の邪悪さを剥き出しにした人外の微笑を雁夜に向けた。



「ではさっそく準備に取りかかろうかの。処置そのものはすぐに済む。それとも考え直すなら今のうちだが?」






雁夜は無言のまま、決意を秘めた表情で頷いた。ひとたび体内に蟲を入れたならばその時点で臓硯の傀儡となる。もうそれきり老魔術師に反逆は叶わない。

それでも、聖杯戦争に参加できるだけの資格があれば十分だ。
だが雁夜はーーー命を落とす。刻印蟲の代価として。
おそらく一年。雁夜ぎ生き永らえることができる時間。



「(それでも十分だ。桜を…桜を助けることができる…!)」



もはや雁夜の頭の中にはそれしか無かった。
ーーー否、まだある。それは復讐。
桜という少女に悲劇をもたらした当事者の一人についてはこの聖杯戦争で引導を渡してやれる。






”遠坂、時臣…“




昏い復讐の情念が間桐雁夜の胸の中で静かに燃え始めていた。






(後に続くは、悲劇だけ)


今回はここまで。待たせたあげく投下量こんだけで展開進むの遅くてすみません。投下は不定期ですので…



次も期待してる

乙でした
魔術の設定が禁書寄りならワカメも魔術コンプレックスにならないんだろうか?

投下します

ーーーーー



学園都市、アインツベルン城

この二年間彼女、御坂美琴はここアインツベルン城に監禁とも呼べる状態にあった。

二年前に彼女宛てに言伝があった。それも不快感極まりないもの。統括理事長公認の第四次聖杯戦争における重要な戦力的カードとしてアインツベルンが雇う、といったものだった。
もちろん彼女の意思は全く関係無しにといった様子で。
ここに来て彼女のやることといえば魔術に関するあらゆる知識を頭に叩き込まれる教育。二年間ひたすら勉学に努めてきた。


ーーーだが、それだけだった。訳もわからず戦争に巻き込まれたというのにも関わらずすることといえば学校の授業と変わらないものだった。








「(気に食わないわね…ま、今更ってもんだけど)」



当然、彼女の超能力者としてプライドが許さなかった。
改めて問うまでもなく彼女は超能力者だ。諸人には無い才能、そしてそれに裏付けされるプライド。
そんな彼女が訳も知らされずただ戦争に巻き込まれた、となると彼女自身黙ってはいない。彼女の首を縦に振らしたものは『統括理事長公認』。この一点をおいて他にはない。



「(毎日毎日毎日魔術の勉強ばーっかり。つまんないったらありゃしないわよ)」



ガチャ。
背後の扉が開いた。


「美琴、そろそろ時間よ。祭壇に来て」



優しい微笑と共に声をかけたのはアイリスフィール。



「……、分かったすぐ行くわ」



この城で彼女と会話をするのはアイリスフィールぐらいのものだった。



「(あれ…そういえば今日だったっけ)」



そんな事を考えながら階段を降りた。


祭壇の前には一人の老魔術師が待ち構えていた。城の主たるユーブスタクハイト・フォン・アインツベルン。
八代目当主の座を継いでからは『アハト翁』の名で知られている。






「かねてよりコーンウォールで探索させていた聖遺物が今朝ようやく届けられた。この品を媒介とすれば“剣の英霊“としておよそ考え得る限り最強のサーヴァントが招来されよう。切嗣よ、これはそなたに対するアインツベルンの最大の援助と思うがよい」



「痛み入ります、当主殿」



固く無表情を装ったまま、切嗣は深々と頭を垂れた。



「アイリスフィールよ、器の状態は?」



「何の問題もありません。冬木においてもつつがなく機能するものと思われます」



淀みなく返答するアイリスフィール。



「今度ばかりは…ただの一人も残すな。六のサーヴァント総てを狩り尽くし必ずや第三魔法、『天の杯』を成就せよ」



「御意」



一連の会話を横目に美琴は疑問を覚える。



「(……?第三魔法?確か魔法は存在しないはずじゃ…)」



その通りである。魔法は魔術とは全く異なるものだ。
無の否定、並行世界の移動、時間旅行。
どれもがこの世の理から外れた現象。それを可能にするのが『魔法』。魔術の上位互換。それを使う事のできる者は現在存在していない……と頭に叩き込まれた彼女にとっては当然の疑問である。



隣にいる切嗣は彼女がそんな事を考えているとは知らず全く別の事を考えていた。



「(成就…、か。まあいい、僕には僕の目的がある。これだけ強力な駒が揃ったんだ、必ずできる)」



“……いいだろう。お望み通りあんたの一族が追い求めた聖杯はこの手で完成させてやる“



アハト翁に劣らぬ熱を込めて胸の中で呟いた。


“だがそれだけでは終わらせない。万能の釜を以って僕は僕の悲願を遂げる…“



今日はここまで。また明日投下します

乙です
ちなみに主人公は誰なん?

投下します。

ーーーーー


私室に戻った切嗣、アイリスフィール、美琴は当主に託された物に目を奪われていた。



「まさか、本当にこんなものを見つけてくるなんて……」



切嗣が見たものは、“剣の鞘“、である。



「…なんてこった。傷一つない。これが1500年前の時代の発掘品だって?」



「これ自体が一種の概念武装ですもの。物質として当たり前に風化することはないでしょうね。これは『魔法』の域にある宝物よ」



「魔法……」



自然に漏れた一言にアイリスフィールが反応する。



「え?どうしたの美琴?さっきから魔法って言葉に敏感ね」



「え、うん…まあ、ね」



「……?」



訳ありげな彼女を見たアイリスフィールだったが本題に戻る。






「…と、とにかく装備しているだけでこの鞘は伝説通りに持ち主の傷を癒し、老化を停滞させる…もちろん“本来の持ち主“からの魔翌力供給があればの話だけど」



「つまり呼び出した英霊と対にして運用すればこれ自体を“マスターの宝具“として活用できるわけだな」



その言葉に美琴は不機嫌そうに眉をしかめる。
早くも“道具“として実用的に扱う方針で思考し始めている切嗣に怒りを覚えたのだ。



「あなたらしいわね。道具はどこまでも道具、というわけ?」



「それをいうならサーヴァントにしたってそうだ。どんな名高い英雄だろうとサーヴァントとして召喚さればマスターにとっては道具も同然…そこに妙な幻想を持ち込む奴はきっとこの戦いには勝ち残れない」



あくまで“アイリスフィールとだけ会話をする“切嗣。
この男、衛宮切嗣はまるで自分の事を存在していないかのように振舞う。
三人で入っているこの部屋で会話をするのはアイリスフィールのみ。事実、この二年間彼と会話が成立した事はただの一度もない。こちらから話しかけたのは何度あったのか分からないにも関わらず。






「ーーーつまりあなたは『騎士王』との契約に不満があるのね?」



「当然だろう。騎士王なんて下らない。正面切っての決闘なんて僕の流儀じゃない。狙うとすれば寝込みか背中だ。時間も場所も選ばずにより効率よく確実に仕留められる敵を討つ……そんな戦法に高潔なる騎士王サマが付き合ってくれるとは思えないからね。まあそれはそこの超能力者サマにも言えることだが…」



明らかに自分の事を意識している発言に彼女は憤る。



「…あんたのそういうとこが気に入らないのよ…!」



ここにきて始めて会話が成立した。



「ふ、流石に二年も共にいれば気づくか。…そうさ、これが僕だ。これが僕の戦い方だ」



「“力“を持つ人間ならそれ相応のルールってものがなくちゃいけないのよ!強者のプライドってものがあんたには無いわけ!?」



声を荒げて怒りを露わにする。



「あいにくプライドなんてものとは程遠い位置にいたもんでね」



「ッ…!あたしは…あんたといっしょに足並み揃えて戦うなんて無理よ!サーヴァントだって人間よ!いっしょに戦う仲間でしょ?それを道具呼ばわりするあんたの腐った根性が気に入らないって言ってんでしょ!」



バチッと彼女の額から紫電の火花が飛び散る。



「ちょ、ちょっと美琴…、落ち着いて。あなたにも、言い分はあるでしょうけれど切嗣にも考えがあっての事なの。だか話を…」



「アイリ!!」

かつてない怒号を発する美琴。






「あたしは以前この男の経歴を見たのよ。妻であるあんだが知らない事は無いと思うけどね」

「“魔術師殺し“の衛宮といえば当時はかなりの悪名だったそうじゃない。聖堂協会まで響いてたってね。あんたがしてきた暗殺業の数々、そりゃもう目に余るものだったわ。でもね、人殺しがいけないとかそういう事を言っているんじゃないのよあたしは」


暗く、呟くように話す美琴の中にはかつての自分を守ってくれた男の面影が残っている。



「二年前のあたしならもちろん許せなかったに違いないけどね。ここで魔術の知識を叩き込まれて魔術師としてのあり方を学んだ。どうあるべきか、ってことをね。だからあんたのやってきたことについては何も言わない。…いえ、言いたいけど我慢するわ」



「……つまり何が言いたい?」



訝しげな眼で尋ねる切嗣。



「あたしが許せないのは関係の無い一般人を巻き込んで仕事を遂行してきた事よ!狙撃や毒殺は序の口…公衆の面前で爆殺、極めつけは乗り合わせた旅客機ごと撃墜!いったい何人の一般人が犠牲になったと思ってんの!?」


「あたしはあんたが気にくわない!そういう下衆な戦法を平然とやってのけるあんだが!」



嫌悪も露わにそう語る美琴。






「…やはり君は何も分かっていない」



「なんですって!」



「おそらく君は僕とせいはんたいの方法で人々を救ってきたんだろう。二年前の君でさえ正義感あふれる少女だったと聞く。だが僕だって自分のやり方で救ってきた。それについてとやかく言われる筋合いは無い」



「あんたのやり方で救われる人がいるはずないでしょ!」



「……小を切り捨て大を救う。僕はいつだって天秤の計り手たろうと志してきた。そこだけは否定されたくはない」




「なんであんたはそこまで…」



「語り聞かせるだけど無駄だったか。君には百年経っても分からないだろうな」







「待ちなさいよ、話はまだ…」



言いかけた所でアイリスフィールと目が合った。もうそれ以上は、と。
訴えかけるような哀しい眼だった。



「……」



「アイリ、僕は少し外に出てくるよ」



部屋を出た後アイリが先程の哀しい表情で詰め寄ってくる。


「……、少し切嗣の話をしましょうか」


「…」



美琴は思う。
あの男は誰よりも理想に燃え、それ故に絶望してきたのではないかと。
全ての人間が一度は胸に抱き、現実の非情さを知り諦めていく理想。
どこか歪んでいるのかもしれない。
どこか壊れているのかもしれない。
その姿はまるでかつての…






かつての、
英雄(ヒーロー)の様で。




今日はここまで。
夜分遅くにすいません。

主人公は特にありません。
アーチャー陣、セイバー陣、バーサーカー陣、キャスター陣を主に書いていきます。
自分は雁夜おじさん大好きですので雁夜おじさん落ちにしたいと思ってるんですが…

おじさんは幸せにしてやってくれ

学園都市内にアインツベルン城があるのはいいとして、二年間も監禁状態ってのはムリがないか?
それに美琴って色んな理由から学園都市上層部のことは信用してないのにそんな命令をわざわざ受けるのはおかしい気が・・・

確かに無理があるような気もするがここはスレ主の手腕に期待してる

>>63
まあ評価を出すのはもう少しあとにしようぜ

スレッドを立てるならsagaと専用ブラウザ、トリップについて調べてからにしてくれ

↑文句を言うものやめようぜ嫌なら見るな

こんな良スレがあるのに文句を言うのはやめようじゃないか











さて、続きに期待

まだかなー

今後に期待かなぁ

fate×禁書のインデックスがマスターのと比べたらちょっと落ちるけど
向こうよりはさっぱりめだし味わい違いで良いかも
あっちは濃い味過ぎる

あっちはクオリティは非常に高くて面白いんだがいかんせんダメージ描写がリアルすぎて・・・

インデックスがマスターのやつよりはドライだな。まぁZERO信者の俺にはたまらないな期待してる
___期待してる。

あれと比べたら可哀想感はある
結構色々なSS作者が手本にしてるくらいだし

ただ、クオリティ高すぎて痛々しい
肉体的にも精神的にも
だから、同じ作者のセイバーズスレがないと読めない

あんまり他スレの話するなよ

支援

おもろい禁書SSが増えてきて嬉しいわ

インデックスがマスターの方よりは劣るけどこっちはこっちでおもしろい。なによりZEROってところが良いがハッピーエンドは望めなさそうだな

支援

がんばれー

試験期間のためなかなか投下できなくてごめんなさい
単位が、単位がやばいんです…

気長に待ってます

まだかな

まだかな

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