松田「柔さん・・・・・・」(14)
松田がアメリカに行って数か月後。
オリンピック後の余韻も落ち着き、柔は平凡な日常に戻りつつあった。
とはいっても、自宅・会社での柔道練習は続いており
滋悟朗の時期オリンピックへの期待はあいかわらずだ。
次の世界選手権に向け、ライバルたちも打倒柔に向け始動をはじめるのだが、
柔本人は・・・
滋悟朗「こりゃ柔、なんぢゃ今日の試合は!! 最近たるんどる!!
やはりおまえは西海大学に入ってぢゃな・・・」
柔「はいはいその話はもう何100回と聞きました。私だって家と会社での稽古と仕事で忙しいんです。」
滋悟朗「もうすぐ世界選手権の代表を選ぶ体重別選手権があるんぢゃぞ!!
そんな柔道しとったらさやか嬢にも勝てんのぢゃぞ!!」
柔「あ、遅刻しちゃうもう行かなきゃ。」
滋悟朗「こりゃー、柔!!! 行ってしまったか・・・・。やる気がないのはあいかわらずぢゃが、
ありゃ重傷ぢゃわい。どうしたものか・・・・ 」
柔は相変わらず試合では無敗をつづけているのだが、オリンピックでの試合で見せた試合とは
程遠い調子だった。
連勝記録からのプレッシャーもあるが、やはりずっとそばにいた松田の存在が大きかったのだろう。
柔「さぁて、今日は仕事も練習も終わったし・・・
西海大学にでも寄って久しぶりに富士子さんに会ってこようかな」
オリンピック後、柔の親友花園(伊東)富士子は一度は引退を考えたものの、周りの励まし、
そして松田や滋悟朗のお願いもあり、次の世界選手権・時期オリンピックに向けて猛特訓を開始していた。
祐天寺「や、や、柔さんじゃないですか・・・。お久しぶりです。相変わらずお、お美しい・・・。
今日はうちの大学にひょっとして、出稽古ですか!!!」
柔「あ、こんにちは祐天寺監督。今日は富士子さんに会いにきました。」
祐天寺「花園なら今日は軽めのメニューなんでもう練習終わって、着替えてるんじゃないですかね。」
柔「そうですか。では待たせていただきます・・・。」
富士子「あ、猪熊さんじゃない!! 久しぶり!! 今日はどうしたの?」
柔「ちょっと久しぶりにお話とかしたくなって・・・今日予定あった?」
富士子「ううん、なんにもないわよ。よかったらアパートで久しぶりにご飯でも食べていかない?
フクちゃんと花園さんもいるけど。」
柔「じゃぁそうしようか!!帰りになんか買っていきましょう」
花園夫婦のアパートは西海大学から30分の場所にあり、
花園は結局引越しの仕事をそのまま続けていた。
花園「おぅ、猪熊ひさしぶりだな。まぁ狭いけどあがってくれ。」
柔「ごめんね花園くん、急に押しかけちゃって。」
富士子「いいのいいの、ちょうど昨日猪熊さんの話してたところなのよ。
まぁすわってて、今二人で食事の準備するから。」
花園と富士子が仲良く食事の準備をしているのを柔は羨ましく眺めていた。
フクちゃんは少し大きくなって、ハイハイは出来るようになったみたいだ。
富士子「さ、食べましょ食べましょ。」
柔「わー美味しそう、花園君も料理ができるようになって・・・・富士子さんうらやましいな」
富士子「何言ってんの猪熊さん、あなたには松田さんがいるじゃないのよ~。
tvの前で駆け落ちまでしちゃって、ねえ花園さん」
花園「そうだぞ猪熊、あのあと二人の仲を聞かれてほんと大変だったんだから。」
柔「そんな駆け落ちって・・・まぁでも二人には感謝してます///]
富士子「で、その後は?」
柔「う~ん、手紙がたまに送られてくるぐらいかな。結構忙しいみたいだし。」
富士子「もー貴方達は中学生みたいな恋愛しちゃって・・・・。
でも猪熊さん、実は会いたいんじゃないの?」
柔「え、まぁいずれはアメリカに行こうかとは思ってるけど・・・・」
富士子「も~あなたも分かりやすい子ね。試合を見ていたら分かるわよ。
ユーゴの時と同じね。」
柔「いや別にそんなんじゃ・・・・」
富士子「いいえ、私には分かります。よーく分かります。あなたには松田さんが必要なんです。
今すぐ会いに行ってらっしゃい!」
柔「え、でも急には・・・仕事もあるし・・・・」
富士子「も~あなたは旅行代理店に勤務なんだから、それぐらいちょちょいのちょいでしょうが!
いい、今週中には行ってくるのよ!!」
花園「そうだぞ猪熊、松田さんもきっと会いたがってるはずだし、二人でゆっくりすればいいじゃないか」
柔「そ、そうね・・・・今週中には無理かもしれないけど、会ってくる!!」
富士子「そうよ、その気合いよ! 松田さんにあってしっかり抱かれてきなさい!!」
柔&花園「ふ、富士子さ~ん!!」
自宅に帰った柔は、先程の話を思い出していた。
職場の休みはなんとかなるが、問題は滋悟朗。黙って行くわけにもいかず・・・・
柔「おじいちゃん、ちょっと話があるんだけど・・・・」
滋悟朗「なんぢゃ、やっと本腰入れて今度の世界選手権目指す気持ちになったか?」
柔「アメリカに旅行に行きたいんだけど・・・。1週間ぐらい」
滋悟朗「はぁ、アメリカなんぞ自分で行かんでも、今度の世界選手権はアメリカじゃから
いくらでもいけるではないか!!」
柔「今すぐ行きたいのよ!!」
滋悟朗「ま~たこのわがまま娘はこまったもんぢゃ。
まぁオリンピックも金メダルとったし、いいぢゃろ。」
柔「本当、ありがとう」
滋悟朗「ただし、一日受身・はらばい・乱取etc・・・・・」
柔「あ~分かったから。そうときまれば早速準備しなきゃ」
滋悟朗「あ~またんか、まだ練習のメニューをいっとらんぞ!! 全く!!
2週間後、無事柔がアメリカに発つときが来た。
試合に行くわけではないが、見送りにはいつものメンバーが・・・
柔「じゃ、いってくるね富士子さん。みんなにもお土産買ってくるから」
富士子「いいのよそんなもの、さっさといってさっさと松田さんに会いに行ってきなさい!!」
滋悟朗「まつだ?」
富士子「あ~なんでもないのよ先生。さ、猪熊さんもうすぐ時間よ!!」
柔「じゃあ行ってきます。」
玉緒「柔、松田さんにもよろしくね。」
柔「もぅお母さんったら。よろしく言っておきます。」
滋悟朗「ちゃんと毎日渡した練習するんぢゃぞ!!」
柔「はいはい、わかりました。」
こうして無事にアメリカに行くことができたのであった
無事アメリカに到着した柔だったが、不安と緊張でいっぱいだった。
自分が来たことで迷惑をかけてしまったのではないかとか、
実はもう私のことは忘れて新しい彼女が居るのではとか。
タクシーで、松田の職場に向かった。
やや大きめのビルの一角に日刊エブリーのアメリカ支店はあった。
慌しいオフィス内。日本とは少し違う編集部があった。
松田「柔さん・・・」
不意に後ろから声を掛けられた。
松田「やっぱり柔さんだ、本当に来ちゃったんだ!! 」
松田の変わらない笑顔とふるまいを見て、柔は安心してしまい泣いてしまった。
松田「おいおい、どうぢちゃったんだよ!! ちょ、ちょっと・・・」
柔「ごめんなさい。松田さんの顔見たら安心しちゃって・・・・」
松田「あ、そうだ、俺まだ少し仕事が残ってんだ!!すぐ済ますから
先にアパートに行ってて!!」
そういうと、松田は柔は鍵を渡してアメリカ人スタッフ達と仕事に戻った。
支店のすぐ近くに松田のアパートはあった。
中に入ると・・・・相変わらず掃除は苦手な様子だったが、
逆に柔は安心してしまった。そしてあのポスターを見つけてしまった。
柔「もう松田さんまだこのポスター持ってたんだ。まったく・・・。」
そういいながら、テキパキと部屋をかたずける柔であった
ちょうど2時間ぐらいして、松田が帰ってきた。
松田「うわぁ~、これが俺の部屋かよ~」
柔「松田さん、その台詞前にも聞きましたよww」
松田「そ、そうだったっけ。やっぱ俺は掃除は向いてないのかな~はは。
もうすぐ晩飯の時間だけど、柔さんおなか空いてる?近くのレストランでも行こうか?」
柔「松田さん何時も何食べてるんですか?」
松田「やっぱりこっちは日本食は少ないから、ファーストフードが多いかなぁ。」
柔「だめですよ。そんな事だろうと思って、日本から食材持ってきたんで今から作りますね。」
松田「本当に?さすが柔さん気が利くや!! お、富士子さんの実家のお茶もあるや。」
松田は滋悟朗の茶菓子と日本茶を飲みながら、料理を作る柔を眺めていた。
手紙のやり取りはあるとはいえ、彼女をほったらかしにしてしまってるのを申し訳なく感じていた
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