へし切長谷部「新しい刀の収集ですか」 (23)

長谷部2「へし切長谷部、と言います。主命とあらば、何でもこなしますよ」

長谷部「刀解」

長谷部3「へし切長谷部、と言います。主命とあら」

長谷部「刀解」

長谷部4「へし切長谷部、と」

長谷部「刀解」

長谷部「…何故俺が沢山いるんだ」

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清光「何で自分と同じ姿の刀が生まれるかって?」
 
長谷部「ああ」
 
清光「刀鍛冶がコツでもつかんだんじゃないのー」
 
長谷部「俺が本丸に来たのは戦場で拾われたからだ。刀鍛冶に打たれた覚えはない。それに、俺たちは付喪神だ」
 
清光「だから?」
 
長谷部「あんなに短時間で打たれた刀に神が宿るはずない」

清光「そんなこと俺に言われても知らないよ。できるもんはできるんでしょ」

長谷部「…お前は同じ姿の刀が何本も生まれるのを、疑問に思わないのか」
 
清光「思わないね」
 
長谷部「…」
 
清光「俺がいくつ出来ようと主が愛するのは最初に手にした俺だけ、他はどうでもいい」
 
長谷部「…そうか」

長谷部「俺が気にしすぎなのか…?」

長谷部5「へし切長谷部、と言います。主命と」

長谷部「刀解」

長谷部「…とはいえ自分と同じ形の物を溶かすのは慣れないな」

五虎退「あ、あの、すいません!この辺りでぼ、僕の虎、見かけませんでしたか…?」
 
長谷部「さあ、見てないな」
 
五虎退「う~ん、そうですか…、あっ、すいません!ありがとうございます!」
 
長谷部「一つ聞きたいんだが、その虎はこの辺りで拾ったのか?」
 
五虎退「い、いえ!あの、この虎たちは、なんというか、僕の、お供と言いますか…!」
 
長谷部「…お前が折れたら虎たちも消えるのか?」
 

五虎退「えっ?!それは、えっと、わ、わからないですけど、たぶん…?」

五虎退「あっ、でも、それだと虎くんたちがかわいそうだし…、僕は、そうじゃないといいなあって思います…」

長谷部「…じゃあ、虎が死んだらお前は折れるのか?」
 
五虎退「ええっ?!ぼ、僕は…あの、お、折れるんですかね?」
 
長谷部「さあ、俺も身体を得たばかりで、どうにもわからないな」
 
五虎退「こ、困りました…このまま見つからなかったら、僕、折れ…?」
 
薬研「おい、あんまり五虎退をいじめてやるなよ」
 

長谷部「…薬研藤四郎…!」
 
薬研「そういやここで会うのは初めてだな、改めてよろしく頼むぜ、長谷部さんよ」
 
長谷部「お前、焼けたんじゃなかったのか」
 
薬研「…」
 
五虎退「そうですけど、新しく鍛刀していただいたんですよ、主様に!」
 
長谷部「…それは、再刃したという解釈でいいのか…?」
 
薬研「…ま、そーいう小難しい話は酒の席でゆっくりしようや、五虎退、行くぞ」
 
五虎退「あ、は、はい!」
 
長谷部「…わけがわからない」
 

長谷部「俺は戦場で回収され、主から形を頂いた」
 
長谷部「しかし薬研は…確かに本能寺で焼けたと聞いたが焼失は逃れたのか…?」

長谷部「いや、それだと五虎退の話と辻褄が合わない」

長谷部「あの鍛錬所では一から刀を作るところしか見たことがない」

長谷部「ならばあの薬研は贋作か…そもそも五虎退の虎はなんなんだ」

長谷部「あの虎は一頭づつ自我があるようだが、全て五虎退から発現したものなのか…?」

長谷部「それとも本当は五虎退の意志とつながった一つの個体なのか…」

長谷部「うーん…」

光忠「やあ長谷部くん!何か悩み事かい!」

長谷部「うおっ」
 
光忠「あれ、驚かせちゃったかな」
 
長谷部「…なんだ」
 
光忠「いや、特に用はないんだけど、君がなんだか怖い顔をしているからさ」

長谷部「顔か…、お前は俺たちの外見が何に基づいて形作られているんだと思う」
 
光忠「ははは、なんだろうね、刀身や装飾かな…?」
 
長谷部「なるほどな。じゃあ五虎退の虎はなんだ、名称や逸話からも影響を受けるのか」

光忠「かもしれないし、そうじゃないかもしれない」

長谷部「適当だな」

光忠「これに関しては誰も断言できないだろうからね」

光忠「ただ、結局僕たちのこの肉体は主のイメージの産物なんじゃないかと思うよ」

長谷部「何故だ」

光忠「だって主が僕たちに形を与えたんだろう?主を通して映し出されたんだからそこに彼の想像が加わったっておかしくないでしょ」

光忠「五虎退くんの虎にしたって、そういうことだと思うんだけどね」

長谷部「…なるほど」

光忠「そんな難しいことより、せっかく形を持ったんだからもっと今を楽しもうよ」

光忠「僕たちはただそこにあるだけの存在から自分で動く自由を得られたんだからさ!」

長谷部「能天気なやつめ…」

石切丸「ああ、いたいた、へし切くん」

長谷部「…長谷部でお願いします」

石切丸「そうかい?じゃあ長谷部君、出陣するよ」

長谷部「場所は?」

石切丸「戦国時代の桶狭間だって。来たばかりの君からすると少々相手が手強いけれど、僕らがちゃんと援護するから心配しないで」

長谷部「桶狭間か…」

石切丸「おや、前の主が気がかりなのかな」

長谷部「まさか、主のためならば織田信長だって、切り殺しますよ」

石切丸「そう、それは心強いね、ははは」

長谷部「…ええ、当然です」

――戦国の記憶・桶狭間――

厚「いやーしかし大変だな、初陣が桶狭間って」

長谷部「なんてことない、この戦で使われたのも何百年も前の話だ」

厚「あ?あーそうじゃなくって、いきなり強えー相手で大変だ、って意味だよ」

石切丸「相手方は何でか過去に遡るほど力をつけているからね」

鯰尾「もしかしたら敵方にもルールがあるのかもね!お前は強いからここ行け!お前は弱いからついてくるな!みたいな!」

厚「俺たちと違って歩いて遡ってるんじゃねえの?歩くうちにだんだん力が溜まってくみたいな!」

蛍丸「そーんな万歩計みたいな敵、僕やだなー」

石切丸「私たちは主の力を借りられるけれど、相手方はそうもいかないからね。案外厚の考えが当たっているかもよ」

厚「だってよ」

蛍丸「ふーんだ」

鯰尾「ねえ、やっぱり初陣ってちょっと怖いよね」

長谷部「…むしろ、高翌揚するな。ずっと飾られている方がよっぽど恐ろしい」

鯰尾「なーんだ、全然しゃべらないからビビってるのかと思った」

長谷部「そんなわけないだろう」

鯰尾「敵、どんな風なのか知ってる?もうオーラがすごいから、絶対最初は怖いと思うよ」

長谷部「相手は人なのか」

鯰尾「ははは、違う違う。相手も多分、刀だよ。それも使い手は付喪神」

長谷部「どうしてわかるんだ。ただの悪人かもしれないだろう」

鯰尾「主曰く人間は過去に遡れないって、それになんかさ、見たらわかるんだよね」

鯰尾「ああ、こいつらは俺たちと同じなんだってね」

遅筆ですいません。また明日再開します。
おやすみなさい

再開します

江雪「皆さん…会話もいいですが、あちらから不穏な気配を感じます…確認を」

鯰尾「うーん、敵は6人、投石兵が何人かいるね。あの陣形は逆行陣かな?」

石切丸「なるほど、ではこちらは雁行陣で攻めようか」

江雪「…和睦の道は…」

蛍「無いよ!じゃあ俺が切り込み隊長ね!」

厚「お、どっちがはえーか競争だ!」

鯰尾「よぉーし、突撃だー!」

石切丸「こら!勝手に先走るなっ!」

長谷部「…行かないのか」

江雪「…はぁ…」

戦闘終了

蛍丸「勝った勝った!俺一番ー!」

厚「最初に三体も切るのずりーよ」

蛍丸「へへーん、いーでしょー」

鯰尾「この太刀、使えそうだね」

石切丸「同田貫正国かな?持ち帰って主に報告しよう」

江雪「また一つ、新たな刀がこの悲しみの地に降り立ってしまうのですね…」

長谷部「…俺もこのようにして拾われたのか」

鯰尾「そうだよ。あんたを拾ったのは山姥切だったっけなぁ」

長谷部「…」

厚「なあ、先の道、二手に分かれてるぞ」

江雪「そうですね…では、左の道を進みましょうか…」

蛍丸「あるー日ー森の中ー」

厚「石切丸にー出会ーった」

鯰尾「花咲くもーりーのーみーちー」

三人「石切丸にーでーあーあったー」

石切丸「やめなさい」

長谷部「敵の本陣が見当たらないな」

江雪「…どうやら、こちらの道では無かったようですね」

石切丸「行き止まりだな、一度本丸に戻ろうか」

蛍丸「俺まだ戦えるけどなー」

石切丸「やる気は良いけれど、きちんと引き際を見定めるのも大事だよ」

江雪「…それでは、戻りましょうか…敵はいないと思いますが、皆さんくれぐれも注意は怠らぬように」

――本丸――

長谷部「本丸に戻って主に尋ねると、やはりあの太刀は同田貫正国だった」

長谷部「戦っている間は気がつかなかったが…」

長谷部「俺たちの戦っているアレが同じく付喪神であるなら」

長谷部「俺が切ったのがあの同田貫だったのなら」

長谷部「戦場で拾われた俺は…」

長谷部「…」

長谷部「山姥切…あいつが俺を見つけたんだったな…」

すまん、ちょっと急用が出来たからまた明日…
明日には完結させます

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