ヘルパー「はじめまして! 私、妖精ヘルパーと申します!」 (73)

書きながら投下していきます。ぶつ切り投下、ご容赦ください
今日中に終わらせます

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あれは四年前だった
街中で不運なことに絡まれた、不機嫌そうなチンピラの2人組

ほんの少し近道をしようと思った
大通りを避けて細道を歩いていたら、どうやらたまり場になってたらしい
通りがかっただけなのに、道を挟むように立っていたそいつらに因縁をふっかけられた

追い立てられるようにして、執拗に絡まれたんだ
俺はあまりガタイもよくないし、喧嘩なんてまともにしたコトも無い
売られた喧嘩に抵抗も出来ず、突き飛ばされて……勢い余って、車道にドン。

走行していた軽車両にあてられて、左足が不自由になった
それが、いまの俺だ





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俺「クッソさみい」


時期は一月。
雪道になれば松葉杖はかえって危ない
車の運転はできるが、雪道の運転はつかれるし、自然にひきこもりがちにもなる


俺「溜まってる本でも読むか…」


友人もいるが、脚が悪くなってからはあまり付き合いの頻度も下がった
俺の身体では、相手の負担になるのはわかってる

天気のいい昼に、街に出たりするのは避けていた
夜中の、なるべく人気の少ない時間に動いていた。
行き先だって、カラオケやファミレスばかり


俺(ま、そーゆートコなら他人に気遣われて、疲れたりしないし。人混みで邪魔臭そうにされるのはゴメンだね)


改めて外出をする気になれないことを確認した俺は、本を読み始める

読んでいるのは、流行りもののライトノベル
魔王が恋におちて平和をめざすような、割と最近では良く見かけるタイプ
あまり頭を使わずに読めていい

本を読みはじめて30分程もたった頃だった


ぴんっぽんっ♪

俺「あー、はーい!」


気の抜けたベルチャイムが鳴った
壁伝いに脚を引きずり玄関へ行く


ガチャリ。


俺「はい、どちらさまで……


玄関を開けると、小柄な女の子が立っていた
胸から提げた、明らかに手作りの名刺のようなネームカードを掲げ
ニコニコしながら元気すぎる大声で、こう言った


ヘルパー「はじめまして! 私、妖精ヘルパーと申します!今日からよろしくおねがいしますっ!」


俺「女の子……だと……?」


ちなみに俺は、脚を壊してからの4年間 1度も彼女などできたことがない
だからこの部屋に女の子が尋ねてくることだって1度も無かった

俺のこのときの動揺っぷりを、わかってもらえるだろうか


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俺「よくわかんないけど、手違いじゃないかな」


缶コーヒーを一本、テーブルに置きながらそう伝えた

その女の子は「ありがとうございます」と礼をいい
にっこりと笑い、両手で缶コーヒーを握り締めた


俺「ヘルパーとか申し込みしてないしさ」

俺「ってか、介護認定みたいなのもよくわかってないし。全部自分でやってるよ?」

ヘルパー「はい! 知ってますよ!」

俺「いや、知ってるならなんできたの?」


ヘルパー「えーっと……。あのですね。 私、妖精なんです」

俺「」


ヘルパー「困っている人の中から、選ばれた人を助けにいくんです!」

俺「まず、俺 困ってないけど……ってか、妖精って言ったよね?」

ヘルパー「はいっ!」ニッコリ

俺「100%人間だよね」

ヘルパー「ぐっ」

俺「………」

ヘルパー「………妖精ですよ」フイ


どうやら困った種類の子らしい
まだ若そうだし、なにかおかしな遊びを思いついてしまったのだろうか


俺「女の子がひとりで変な遊びしてたら危ないよ。それ、飲んだら帰りなね?」

ヘルパー「ゆ、夕方には帰ります!」

俺「今、まだ午前の11時だけど?」

ヘルパー「あ、お昼御飯つくりますね」

俺「うん、帰りな?」


女の子は、まったく話を聞く気はないらしい
大きな、キルト布でできた鞄から エプロンと髪止めをとりだして身支度をはじめた


俺「え。ちょっとまって……話を」


後ろを向いて、後ろ手にエプロンの腰ひもを結う女の子
短い髪をひっつめに結び、ヘアピンで耳のまわりの毛を止めていく


ヘルパー「何かひーまひた?」モゴモゴ


二本、口にヘアピンをくわえたまま喋る
その様子が、妙に可愛らしく感じて 思わず止める気が失せてしまった


俺「えっと……なんかNPOとか福祉ボランティアとか。そういう活動をしてる学生かなんか?」

ヘルパー「あ…そんな手があっt……… いいえ! ですから私は妖精ですっ!!」

俺(頭は弱そうだな、うん。わかってた)


俺が溜め息を吐き出してあきれて見せると
その『妖精』は、憤慨した様子で台所へと逃げていった


俺(ま。特段に見られて困ることもないし。何か怪しければ見てれば気付くだろ)


昼食作りにかかる彼女の後ろ姿を
ぼんやりと観察することにした


腰ひものリボンが、すでにほどけている
リボンの輪が片方しかない

台所の脇にある小型の冷蔵庫、シンクをはさんで、コンロ……
右へ左へとペタペタあるきまわる彼女の後ろ姿

フリフリと揺れる、その垂れ下がった腰ひもは どう見ても……


俺「尻尾だ。……犬。いや、猫? むしろフェレット的な何かか」

ヘルパー「なにかいいましたー?」

俺「いや、別に」


鼻歌を歌いながら
冷蔵庫の中の食材を切ったり煮たり。料理の手際はよさそうだった


俺「………妖精さん」

ヘルパー「~♪」

俺「妖精」

ヘルパー「~~♪」

俺「……」ガタ

ヘルパー「~~♪」



俺「あのさ、呼び慣れてないような名前なら、せめて普通に呼び方くらい聞いといていいかな」ポン

ヘルパー「うひゃぉっ!?」


俺が近寄ってきたことさえ
肩を叩くまで気付かなかったらしい


俺「呼び名。どうしたらいいの」

ヘルパー「よよよ、妖精でいいです!」

慌てた様子で振り向いた彼女は、俺を居間に手を引いて連れていく
料理を作る間、座っていろと言うことらしい


俺「…ま、いいけど」

俺「じゃあ とりあえず妖精の頭文字とって、ようちゃんって呼ぶから意識しておいて」

ヘルパー「ようちゃんですね! わかりました!」

俺「鍋、吹いてるよ」

ヘルパー「ぎゃは!?」

俺「火には、もっと意識しておいてね……」ハァ


結局、俺達は一緒に昼飯を食べた


そのあと彼女は、俺が本を読む横で掃除をしはじめた


ヘルパー「割と片付いてるんですね…」

俺「脚が悪くなってからは、なるべく物を増やしてないし」

俺「床に置きっぱなしにしたりも しなくなったからね」

ヘルパー「そうでしたか…。じゃあ あんまり、役にたたないですかね。私」シュン…

俺「………」


しょんぼりとした様子で部屋を眺める彼女
どうやら本当にヘルパーとしての仕事がしたかったようだ


俺「床とかさ、拭いたり掃いたりは苦手なんだ。やってくれるなら助かるよ」

ヘルパー「……っはい!」パァッ!



彼女が何を目的にうちに来たのかわからない
それでも小柄で笑顔がかわいくて、明るい彼女の雰囲気を見ているとなんとなく、追い出す気にはなれなかった


俺「困ったな、明らかに不審者なんだけどな」

ヘルパー「どうしましたかー?」

俺「いや。俺って自分が思ってた以上に、寂しいやつだったんだなって実感した」

ヘルパー「はい?」


掃除も、あっという間におわってしまった
そわそわと落ち着きなくする彼女は、まだ役にたつことを求めているらしい


俺(なにか特殊な事情でもあるんだろうか。どんな事情があればこうなるのか、予想もつかないけど)


コーヒーをいれてもらったり、音楽をつけてもらったり。
まるで小間づかいのような事を頼んでも、嬉しそうにする彼女

妖精でないことはわかっているが
妖精のきまぐれとしか言いようが無いくらい 不思議なヒトだと思う

それにしても……


俺「ヘルパーなんだよね…?」

ヘルパー「ヘルパーですっ!」


俺(きっと、洗面所にある洗濯物とかは気づいてないんだろうな)


とりあえず彼女の正体がヘルパーじゃないと確信できただけでも良しとしよう
下着とかもあるし、洗濯物については言わないでおく


夕方にはなるまで、彼女は用事を申し付けられるのを 近くで待ち続けていた
そして夕方になると、夕飯の支度をしてくれた。
そのあとは素直に、帰り支度をはじめる

玄関先で法外な代金でも請求してくるかと思ったが
どうやらそんなこともないらしい


俺「よくわからないけど、今日はありがとう」

ヘルパー「はいっ! それでは。おやすみなさい!」

俺「おやすみ、ええと ようちゃん」

ヘルパー「はーい!」フリフリ!


夜になり、静かな部屋でベッドに潜る
あまりにも不可思議だった今日一日を思い返す


俺(ヘルパーというか… 介助犬とかじゃないかな、あの子)


どこかで介助犬の窮地を救った過去でもあっただろうかと思い返してみる
もちろん、そんな恩返しをされる覚えはなかった


俺(ま、いいか。不審者だろうとなんだろうと、そんな悪い気にならなかったし)


むしろ、なんだか癒された気がした
本当に妖精だったりするのだろうか


俺(もしくは、なんかの童話にあった“寝ている間に仕事を片付けておいてくれる妖精”がきていたりして。俺はうすぼんやりとそれを夢に見ていて……)


そんな妄想をしているうちに、気がつけば眠りに落ちていた



翌朝
洗濯物を干し終えた頃になって 気の抜けたベルチャイムがなった


ヘルパー「こんにちは! 私、妖精ヘルパーと申します!」

俺「……」


とりあえず 夢ではなかったらしい
俺はもう一度、どこかで犬を助けたりしなかったか考えはじめた



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それから、週に俺2回 彼女はうちに通ってくるようになった
彼女がうちを訪れる月曜と木曜日が楽しみになっていった

彼女は相変わらず、気の抜けたベルチャイムを一回だけおして 同じようにうちにくる

ヘルパー「こんにちは!妖精ヘルパーです!」

俺「いらっしゃい、ようちゃん」

月曜日と木曜日は仕事が休みだ

平日に二回、土日と祝日の仕事がある
そんな勤務日は、不便じゃないかとみんなに言われていた

だが、脚が悪いのだから仕方ない。選ぶ範囲が狭まるのは当然だ
希望の職種ではなかったせいもあって、それまであまり仕事熱心でもなかったけれど…


『昨日はお仕事だったんですよね? おつかれさまです!』

『明日は忙しいんですか? じゃあ、夕飯は精のつくものにしましょうか!』


なんとなく、仕事にいくのも楽しくなってきた


俺「なにもかも、悪くないな」


同僚「どうした?」

俺「あ、いえ。すいません、独り言です、あはは」

同僚「……お前、最近なんとなく明るくなったよな」

俺「そうですか?」

同僚「女でもできたか?」

俺「そんなんじゃないんですけど」

同僚「けど?」

俺「ヘルパーさんがついてくれて、すごく楽になりました」

同僚「へぇ。普通そうにしてたけど、やっぱ不自由もあったんだな」

俺「俺も、自分が何に不自由してたかなんて気づきませんでしたよ」

同僚「ははは、ヘルパーってのはすげぇな」

俺「ええ。……すごいですよね」


暖かな笑顔
気遣われて申し訳なく思ってしまう疲労感
気付かぬうちに根付いていた、自分の中にある卑屈さ


『…その足のおかげで、今の私がここにいるんですよ』


そう聞いたときは、とんだ自惚れた台詞だと思ったけど
愛しげに俺の足をマッサージしながらそう呟いた彼女には
言い表せない気持ちを抱いた


つまらないことで壊してしまった脚は
本当につまらないものにしか見えなかった

俺自身も、そんな脚と同じ、つまらないものにしか感じなくなってたから…


・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・


ヘルパー「動かしにくいからって、動かさないのはよくないんですよー」

ヘルパー「マッサージしたり、曲げ伸ばししたり」

ヘルパー「うわー。筋肉よわってるせいで、ふにふにしてる」

ヘルパー「いいなぁー…なんかきれいな脚ー。ほそーい」

ヘルパー「あ、ほら。指先まで、くにくにーって。あはは」



俺「……脚で遊んでるようにしか見えないんだけど…」

ヘルパー「りりり、立派な介護業務ですからね!!」

俺(動揺しながら言われてもなぁ…)



そうやって、彼女はいつも楽しそうに嬉しそうにしてくれていた
まるで愛しいかのようにしてもらっているうちに、俺は段々と……


俺「……ありがとな」ナデナデ

ヘルパー「…えへへ。はずかしーじゃないですか、もう!」


妖精の魔法みたいなものに、掛かってしまったらしい。





こんな、本名も正体も知らない不審者を、好きになるなんて

きっと魔法なんて、溶けてしまうんだろう
それとも手品みたいに、種明かしをしてみたらつまらないものなのかな


それでもしばらくは、魅せられていたいんだ



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2月……


ぴんっぽんっ♪

俺「………」


ぴんっぽんっ♪

俺「………」


ぴんっ…………ぽんっ♪

俺「……いる。ごめん。はいってきていいよ…」


やっとの思いでそう玄関に向かって声をかける

鍵はかかっていない。かけるような余裕はなかったはずだ


ガチャ…

控えめに、ゆっくりとドアが開いた


ヘルパー「……こんにちは?」


おずおずと声をかけられ、やはり妖精ヘルパーだったかと安心する


俺「ごめん、動けない。はいっていいよ」

ヘルパー「え?! どうしたんですか!?」

俺「靴くらい脱ごうか」

ヘルパー「あぅっ!? ごめんなさい!!」


慌ただしく靴を脱ぎ、今度は丁寧に揃えておく
そのあとマフラーを外しながら、ベッドに駆け寄ってくる


ヘルパー「寝たきり!? もしかして風邪でもひきましたか!?」

俺「いや、ごめん。重度の二日酔い…」

ヘルパー「え……」


俺「今日はもう動けそうにない…なんか本当に悪いけど、帰っちゃってもいいよ…?」

ヘルパー「……よかったぁ。」

俺「なんか予定でもあったの? 無理に来なくていいのn

ヘルパー「あんま、心配させないでください。もう!」


安心したように、彼女はその場にへたりこんだ
少し怒ったような表情を作った後で、コロリと表情をかえて微笑む


俺「………あ。その、ごめんね」

ヘルパー「ふふ。いいですよ! 飲みすぎは注意ですが、楽しく飲めましたか?」

俺「う、うん」

ヘルパー「今日のお昼は、ゆるめの白粥にしましょう。水分とらなくちゃです!」


ベッドの脇に座り込んだ彼女は
にっこりとわらったまま、そういって張り切った声を出した


俺「……あ」

ヘルパー「? どうしました」

俺「ご、ごめん。もしかしてうち、めっちゃ酒臭くない?」

ヘルパー「……言われてみれば。しかもあれですね? …吐きましたね?」

俺「ぐぁ」


激しい後悔と自己嫌悪に襲われ、布団に潜り込んだ
布団の中から、「やっぱり今すぐかえってくれ!!」と叫んでみたが……返事がない


俺「? ようちゃん?」


顔を出してみると、横にいたはずの彼女はいない
荷物だけが残されている


俺「……?」


不審に思っていると、洗面所から水の音が聞こえてきた
戻ってきた彼女の手に持つ物をみて、心臓が止まりそうになる。


俺「ま、まさか?」

ヘルパー「? 清拭しようかと思って」




神様、助けて。



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ヘルパー「身体、起こせますか?」

俺「無理! 絶対無理!」


起こしたら身体を拭かれるんだ
拭かれるっていうことは、脱がされるって言うことだ
わかってて身体を起こすはずがない


ヘルパー「仕方ないですねー」

そういうと、彼女はベッド上の俺に覆い被さってきた


俺「!?」


俺の腕をとり、自分の身体に巻き付ける


俺「ままままままま まって!? 何を……!!」


ベッドの上に膝をつき、反対の脚で身体を挟むようにして…


俺「うわぁぁぁぁぁ!?!?」


ヘルパー「よいしょっと」


テコの原理を使うようにして、俺の半身を持ち上げて座らせた


俺「………へ…?」

ヘルパー「ごめんなさい。私、身体が小さいせいで やっぱりうまく移動させるの苦手なんですよ」

ヘルパー「これ、私がアレンジした介助の為の方法なんですよー!」


彼女は得意気に、そういってのけた


俺「……っ ふ、普通に腕を引いたり肩を持ち上げたりすればいいだろ!」

ヘルパー「私の腰を痛めたり、介護者さんの身体がずれて転倒したらいけないじゃないですか?」



俺「へ…ヘルパーか!!」

ヘルパー「ヘルパーですよ!? 今さら、何いってるんですか!?」


そう文句をいいながら、俺の体から離れた彼女は
……さらに恐ろしい事を口にした


ヘルパー「はい、ばんざーい♪」

俺「するか!!」


文句を言うと、あっさりと袖口を捕まれる
服の中に手を潜り込ませ、腕を引き抜こうと……


俺「さ、させるかぁ!!」

ヘルパー「なんなんですか! 動けないなら文句を言わずに介護されてください!」

俺「そういう問題じゃない!」

ヘルパー「じゃあどういう問題なんですか!」

俺「ど、どうって……」



自分の部屋で二人きり
ベッドの上
半裸にさせられようとして、服に忍び込む小さな暖かい手
唐突に抱きつかれて動揺しまくっている心臓

それになにより、二日酔いで回りきらない馬鹿な頭と身体が………


俺(やばい… たっちゃった……)


気が付けば、最悪な状況に陥ってしまっていた
自己嫌悪に、思わず頭を抑えてしまう


ヘルパー「吐いたんですよね? それにお酒だけじゃなくてタバコの匂いもしますよ。綺麗にした方がいいですって」

俺「じ、自分でやるよ」

ヘルパー「身体も起こせない人が何いってるんですか、もう」

俺「こ、こういうのはよくないんじゃないかな!」

ヘルパー「え? ……あはは! やだ、何考えてるんです?」

俺「」

ヘルパー「襲ったりしませんから、安心してください」アハハ!


俺(逆だよ! 襲いそうだから不安がれよコンチクショウ!)


ヘルパーの技術とやらは大したものだった
わざと腕を突っ張ったり頑固に抵抗してみたりもしたけれど…


ヘルパー「秘技・X脱がし!!」

俺「なんで服脱がせるのに抱きつくの!?」

ヘルパー「効果としては、転倒防止と、暴れる腕を抑えるという立派な……」

俺「介護スキルって攻撃力高いんだね!!」

ヘルパー「そうでしょうとも! 私は有能ですからね!」

俺「『察する』スキルは0だけどな!!」

ヘルパー「つべこべいわずにほら、拭きますよー」

俺「ま……」


肩に手を添えられ、暖かなタヲルで撫でられる
撫でた側から、じんわりとした温もりがあり、続いて空気に触れてひんやりとする

ぞくりと鳥肌が立つ


俺(あかん。なんかいろいろ誘発される)


反対の腕で彼女の手を掴み、制止させた
精一杯にかっこつけて、微笑みながら 余裕ぶって声を出す


俺「……大丈夫。風呂、はいってくるよ。ありがとな」

ヘルパー「そうですか?」


彼女はきょとんとして、手を止め 周りを片付けはじめてくれた

そう、最初から堂々と断ればよかったのだ
あまりに動揺しすぎて、正攻法を忘れるなど……


俺(ふ。これで一応、危機回避。あとはどうにかして元気すぎるバカ息子を……)



ヘルパー「じゃあ、入浴介助の準備してきますから待っててくださいね♪」

俺「」



その時、俺の脳内では妙な物が思い浮かんでいた


清拭『…ふふふ…、我をたおしても…まだ、ニュウヨクカイージョ様が…』

俺『な…なんだと…貴様が真の敵ではなかったのか!』

清拭『ふふふ…愚かなやつめ、また会おう…』


俺「ま、まて!」


ヘルパー「どうしました?」

俺「はっ」

ヘルパー「入浴介助の準備できましたよ?」

俺「更なる試練が待ち受けてるとか、ヘルパーって強敵すぎる」

ヘルパー「なんですかそれ」

俺「気にしないで」ハァ


風呂場まで、手を引かれて連れて行かれる
そこで俺はもう一度、先ほどと同じように 堂々と入浴介助を断った


ヘルパー「じゃあ入浴見守り程度にしておきましょうか」


もちろん、堂々と断った


ヘルパー「ただでさえ脚が悪いに、ふらついた二日酔いの身体なんて危ないですから駄目ですね」


そして、正論で断られた



脳内で繰り広げまくって止めないままにしておいた、ヘルパー魔王vs勇者との戦い
ニュウヨクカイージョは手強かったが、無事に試練を乗り越えた


九九や素数を数えるよりよっぽど効果的だ


装備が腰巻き一枚の勇者だなんて、あまりに情けないとおもったのが決め手だったろうと思う



俺(お婿にいけない)ハァ


ともあれ、無事に?風呂を終え着替えをして部屋に戻った
疲れきってベッドに入った頃には 二日酔いも随分と醒めていた

ベッドで横になりながら、リラックスする
寝巻きとして出されたティーシャツに柔らかな綿パンは肌触りもいい


俺(…着替えめんどくさいからって、ついつい普段着で寝ることばっかだったしな・・・)


ヘルパー「はい、どうぞ」

俺「ありがと…」


出されたお茶には氷も入っていて、身体中に染み渡る


ヘルパー「遅くなっちゃいましたね、急いでお粥つくりますから」


飲みきったグラスを受け取り、台所にいく彼女

しばらくすると、くつくつと米の煮立ついい香りがする
ほんの少し、味噌の香りも…


俺(白粥じゃなくても食べられそうって判断したのかな)

俺(確かに、なんだか腹が減ってきた気も……)


カツコツと、鍋を木べらでかき混ぜる音に 眠気を誘われた


俺(意外と……ほんとに、いろいろ見てくれてんだな……)



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目が覚めたら、夜だった
テーブルに、メモ。それから一揃えの食器


『気持ち良さそうに寝れたみたいなので、明日はきっと気持ちよく起きられますね! おやすみなさい!』


暖めやすいようにか、鍋にいれられたままの粥
細かく形を揃えて刻まれた野菜に、卵がおとされていた

火にかけると、ほんのりと味噌の香りがして食欲を刺激する


もちろん、その粥は香りだけではなく 味だって美味しかった

でも…


俺「………一緒に、食べたかったな」ボソ


冷えきった部屋で、彼女が残した粥だけが暖かかった。



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ヘルパー「え? 木曜日は居ないんですか?」

俺「うん、だからその… こなくていいからね」


俺はそういう風に話を切り出した
台所で昼食の支度をしていた彼女は、火を止めてこちらへ歩み寄る


ヘルパー「どこか出掛けるなら、付き合いますよ?」

俺「いや、いいんだ。一人でいけるし」

ヘルパー「そう……ですか」

俺「………」


なんとなく、気まずい沈黙が流れる
俺は本題を切り出すために、意を決して声を出した


俺「そ、それでさ!」

ヘルパー「?」


俺「もしよかったら、来週だけ 曜日をずらして来てもらったりできないかな…」

ヘルパー「え……」


俺「もちろん都合もあるだろうし! ってか来なきゃいけないわけじゃないんだろうから、無理は言わないんだけど!」

ヘルパー「あ、その。私……」


俺「ご、ごめん! ほんと、無理なら断って!?」

ヘルパー「……えへへ」

俺「へ? なんで笑……」


ヘルパー「~~~~っ」

俺「は!? 泣いてる!? まって、どうして?? ごめん、ほんとに、嫌なら全然……っ」


ヘルパー「違……っ」

俺「へ……?」


黙ったまま、彼女は泣き続けた

どうしようもなくて、ごめんとしか言えない
それでも泣き続ける彼女を、俺も撫で続けていた


ヘルパー「来るの…」

俺「?」


ヘルパー「来るの、やっぱり迷惑がられてるのかなって思ってて」

俺「え…」

ヘルパー「さっき、キャンセルっていわれて 急に『やっぱり』って不安になっちゃって…」

俺「………」


ヘルパー「でも、キャンセルじゃなくて、別の日にして来てって言われるとか思ってなくて」

ヘルパー「無理しないでとか、逆に気まで使ってくれて……」

俺「……」


ヘルパー「い、いひひっ! なんかいきなり嬉しくなって、いきなり涙腺崩壊しちゃいましたっ!」


無理に…… 無理矢理に、
大きく笑顔をつくっておどける彼女

抱き締めたくなる衝動は抑えて、穏やかに伝える



俺「迷惑なんか思ったことないよ」

ヘルパー「……」


俺「一番最初に君が来たときも…動揺はしたけど。追い出す気もなかったし」

俺「………今は、ようちゃんが来てくれるのが一番の楽しみだ」


ヘルパー「えへへ… よかったですっ」


そういって笑う彼女の目からは、もう一度涙が流れた



話をきいた限り、嬉し涙だと思ってしまうだろう?

だから、どこか寂しげにも見えたその時の彼女の様子に
俺が気を払わなかったのも仕方ないじゃないか




:::::::::::::::::::::::::::::


木曜日の約束を土曜にずらしてもらった。

木曜日は一人で昼間から買い物にいった
狭い店では、邪魔くさそうな目でみられたけど あまり気にならなかった


俺はゆっくりと買い物を楽しんで
それで、満足感にひたりながら帰ってきたんだ


俺「はは。週末が待ち遠しいなんて、どれくらいぶりだろう」


帰ってからも、どこか俺は興奮したように落ち着かなかった

そして、待ち遠しい土曜日がやってきて………


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ぴんっぽん♪

気の抜けたドアチャイムが鳴る


俺「はーい!」

ガチャ。


ヘルパー「こんにちは! 私、妖精ヘル………っ」

俺「はい! 待ってたんだ!」


ドアを開けた瞬間に、突き出したのは小さな鉢植えだった


ヘルパー「え、これは…?」


俺「今日、何の日か知ってる? 」

ヘルパー「え…。その、もしかしてバレンタインデーのこといってますか?」

俺「正解! だからほら、プレゼント」


ヘルパー「ホワイトデーにマシュマロとかじゃなく?」

俺「バレンタインに鉢植え。駄目?」


ヘルパー「だ、だめじゃないです! でも、なんで……?」

俺「まあまあ、とにかく入って!」


部屋に入った彼女が、テーブルの前で立ち止まった
鉢植えにつけられたリボンと同じ柄のリボンがまかれた小箱に視線が注がれている


ヘルパー「あ、あの?」

俺「……プレゼント。開けてみて?」

ヘルパー「私に…?」


困惑したまま、そっとリボンを外す彼女
小さな箱から取り出される、さらに小さなネックレス


ヘルパー「こ、これは?」


俺「……俺も知らなかったんだけどさ。日本くらいなんだってさ」

ヘルパー「何がですか…?

俺「女の子が、男にチョコ渡す習慣」

ヘルパー「え…」


俺「海外では、性別を問わずに好きな人に花をわたしたりするみたい」

俺「なんか、むしろ男が女の子にー、みたいなのもあるみたいだよ」

ヘルパー「え、あの」


俺「だから、その。こじつけっていわれりゃそれまでなんだけど…」

俺「こんな機会でもなきゃ、言えそうになかったから」

ヘルパー「あの、私……!」




俺「好きだよ、ようちゃん。いつもありがとう」

俺「これからは俺のヘルパーなんかじゃなくて、彼女として…一緒にいてくれないかな」


ヘルパー「…………っ」


俺「……駄目かな」



ヘルパー「ごめ…ん、なさい……っ」

俺「っ」


ヘルパー「私…」

俺「あ…ごめん。そう、だよね。はは…なんか、勘違いしてた」



ヘルパー「私…」

俺「いいんだ! ようちゃんにしてみりゃ仕事なのに、なんか俺、ほんと何を勘違いして…はは」


ヘルパー「私、嘘ついてました!!」

俺「え?」




ヘルパー「私… 妖精なんかじゃないんです!!」

俺「それはわかってるよ」



ヘルパー「騙してました! 妖精ヘルパーだって!」

俺「いや、だからそこは騙されてねぇよ? ナメてる?」


ヘルパー「仕事なんかじゃ、ないんです」

俺「へ……  あ、ああ。あー、そっか。うん」


俺「まあ仕事じゃないにしろ、なんか事情があってやむなくこんなことを…と?」

ヘルパー「………」


俺「なんか、つい聞かずにいたけど… 教えてくれるのかな…」

ヘルパー「……………」



ヘルパー「私…の、せいなんです」

俺「?」


ヘルパー「脚。不自由になった原因……私のせいなんです」

俺「え……」


それから、ゆっくりと彼女はいろいろ教えてくれた。


::::::::::::::::::::


男「お。○○高の制服だ」

ヘルパー「え」


男「カワイー。ねぇ、ちょっと見せてよ」ニコニコ

ヘルパー「あ、あの。私急いでるので…」


男「いいじゃん、褒めてやってんだし」グイ

ヘルパー「その、やめて」

男「いいからさ。こっちおいでよ」


「何?」

「女子コーセー。よくない?」

「ばーか、変態かよ」

「あ、俺、結構すきだわ」

「だろ? どうよ」

「いいねー」


ヘルパー「あ、あのっ」


「お前興味ないなら、立ち番しててよ」

「は? ……まぁいいけど。早く終わらせろよ?」

「わーかってるって」


ヘルパー「ちょ……」


「あ、俺もパスするわ。あんま好みじゃないし」

「あいよー」


ヘルパー「あの… 私、やめっ」

男「うるせーな。殴られたい?」

ヘルパー「っ!」


男「うひゃー、スカート長め。稀少生物?」

ヘルパー「ほんとにやめ…!!!」


男「黙ってろよ 」

ヘルパー「!!」


男「叫んだらー、見られちゃうよー?」ニヤニヤ

ヘルパー「………っ」

男「だいじょぶだいじょぶ。俺、結構やさしい方だからさ」



ヘルパー(誰か、助けて…!)




<……!
<………っ
<……
<ガシャン



「あ? なんかうっせーな」

「誰か来たかー?」

「ほら。見られてさ、やるのとかもありかも。連れてこよか?」


ヘルパー「~~~~っっ!!!」




<ドガシャッ!
<キキィィィィィ!

<「キャァァァァァ!!」



「な、なんだ?」

「なんかやばくね? 事故ったみたいな音したぜ?」

「まじかよ…」


「っ、おい! 逃げるぞ」


「何したんだよおまえら…」

「知らねーよ! 邪魔そーなやつが来たから小突いたら、道路に転がってったんだ!」

「げ、まじで事故?」

「やばいって。そっちの通り、人集まってきてる」

「うっざ…」

「パト来そうだぜ。さっさと行かなきゃやべえ」

「ちっ」


タタタタタ……



ヘルパー「………え… たす、かった……?」




::::::::::::::::::


俺「……・・・」


ヘルパー「私……その時、動転しちゃってて…出ていけなくて」


ヘルパー「でも、結果として。あなたが来てくれて、絡まれて、事故にあったから…… 私が助かったんです…」

俺「そ、それで あんとき、俺は絡まれたのか…」


ヘルパー「私… どうしていいかわからなくて…」

ヘルパー「その、後からあの事故で、足を不自由にしちゃったって聞いて…」

俺「あー…」


ヘルパー「私のせいで… 脚、不自由にしちゃったのに。助かりました、ありがとうなんて言えなくて…」

俺「は、はは。そりゃまあ、確かに言いにくそうだね…」



俺「でも、俺、結構平気だったよ?」

ヘルパー「あの…」


俺「元々がインドアな人間だったし… 脚はそりゃ、不自由だけど」

俺「まあヤンキーに絡まれた時点で運のつきと思ってたし」


俺「半殺しとか、あるいはもっとひどい怪我とかもありえただろうけど。事故ってことで保険もきいたし?」

ヘルパー「あ、あの」


俺「しんどいのもあったけど、別にそこまで精神的に響かなかったしさ」

俺「……うん。俺のこの片足で、ようちゃんの事を守れてたとか」

俺「ちょっと、うれしいかも。なんてな? あはは」


ヘルパー「~~~~~~~っ」


彼女は顔をくしゃくしゃにして、泣くのを堪えているようだった
事情はだいたいわかった。俺は慰め半分、詫び半分で 彼女の頭を撫でてやる


俺「それで、謝罪のつもりで通ってくれてたんだ? …ありがとな」

ヘルパー「あ…」

俺「ごめんなー? 謝罪するつもりとかできてんのに、振らせるとか 俺ってさいてーな……」


ヘルパー「違うんです!」

俺「は?」

ヘルパー「違うんです! そうじゃないんです!」


俺「え、まだこれ以上なんかあんの…?」


ヘルパー「私… 前に、お話したことあるんです。覚えて、ないみたいですけど…」

俺「え、まじで? いつ?」


ヘルパー「あの事件から、一年くらい後。私…会いにいったんです」

俺「ごめん… 覚えてないや。俺、なんかいってた?」


ヘルパー「『脚…、不自由じゃないですか?』って、聞いたんです」

俺「ケンカうって来たのかよ……」


ヘルパー「そ、その。どう話しかけたらいいかわかんなくて!」

俺「あ、ああ。そりゃそうか…」

ヘルパー「そしたら…。『ヤンキーに絡まれて、これですんで良かった』って…笑ってました」

俺「うわー…成長してないんだな、俺」


ヘルパー「すごく…救われたんです」

俺「救われた?」


ヘルパー「きっと、あの事件のこと、恨んで根にもってると思ってたので…」

俺「なるほど。原因になった自分としては、罪悪感かんじちゃってたんだ?」

ヘルパー「はい……」

俺「…………」


俺「ばーか」

ヘルパー「えっ」



俺「ようちゃんだって、被害者じゃん」

ヘルパー「あの……」

俺「そりゃ、その。女の子としては『これだけで済んで良かった』とは思えないくらい怖いひどいことされたんだろうけど…」


俺「今、元気でいてくれて。それくらいですんで、良かっ……


ヘルパー「~~~~~~~~っ」


俺「うっわ!? まだ泣く!?」



ヘルパー「よか… 良かったです! あのとき、ほんとに怖かったんです!」

俺「………うん」


ヘルパー「怖くて…っ 脚、駄目にさせちゃったのに!! 私、おかげで助かったって思っちゃってて…っ!」

俺「うん」


ヘルパー「そんな自分、最低だっておもってたのに 笑って気にしないで、これで済んでよかったなんていってくれて…っ!」

俺「うん」


ヘルパー「私、嬉しくて… それで、ヘルパーになったんです! 誰かの為や、何かの為に犠牲になってくれた 脚や腕に恩返ししたくて!」

俺「腕?」


俺「………いや、俺。腕は無事だよ?」

ヘルパー「ほ、他にもきっといるから… そういう何かで、手足が不自由な人……」

俺「……え? もしかしてほんとにヘルパーなの?」

ヘルパー「ヘルパー歴、一年足らずの新人ヘルパーです!」

俺「わ、わお」


ヘルパー「……いつか、うちの施設に来てくれたらなって思ってました」

俺「あー… いや、そういうの使う気なかったから…」


ヘルパー「はい。来てくれたら、一生懸命やろうと思って、ここから一番近い施設を選んで働き出したのに…」

俺「ま、まじで? なんかその、気にせず自立しててごめんな…?」オロオロ

ヘルパー「い、いえ。それは素晴らしいことなんですけど」アワワ



俺「あー…コホン。 それで、直接うちに…来ることにしたの?」

ヘルパー「……はい」

俺「『妖精』名乗ってでも?」

ヘルパー「ぐっ」

俺「……」


ヘルパー「だって… 他に、やりかた思い付かなくて」

ヘルパー「私を助けてくれた、その脚に どうしても恩返ししたくて」

俺「そこは、『俺に恩返ししたい』って言ってほしかったかなー… 脚って…」ハハ

ヘルパー「はっ!?」



俺「……そういや、脚のマッサージは毎回やたらと入念だよね」

ヘルパー「う」


俺「若干、脚フェチなんじゃないかなとか思ってた」

ヘルパー「う」


俺「……あのさ。とりあえず… 聞いていいかな」

ヘルパー「は、はい」


俺「ヘルパーじゃなくて… 彼女じゃ、だめ?」

ヘルパー「え…」


俺「気にして、ないんだ。だから、恩返しとかしなくていいからさ」

俺「……恩人じゃなくて… ただの男として、告白を受け取ってくれない?」

ヘルパー「あ、あの」


俺「好きだよ。それで駄目なら、もちろん断ってくれればいい」

俺「恩人とか、気にしないで。俺のことそのまま見て…… それで、答えてほしい」

ヘルパー「私……!!!」

俺「好きだ。そばにいてほしい」



ヘルパー「――――――!」




:::::::::::::::::::::::::::


と、いうわけで
あれから数年がたち、そんなこっぱずかしい過去を思い返している俺がいる

俺の前にあるこのやたら立派な木が、その時の鉢植えだったりするわけだ


俺「………なんか、あっという間にでかくなったな」

俺「あれから、もう何回目のバレンタインかなぁ」


<ただいまー

俺「お。帰ってきた」


<もー! 今、犬のうんちふんだーーー! 

俺「……おいおい…」




<さいあくだよー! へるぷーーー!

俺「何がヘルプだっつの。どっちがヘルパーなんだか…… よいしょっと」


<あーん! まさに、ウンが悪いってやつだよー!!

俺「つまらんこと言ってんなよ…… はいよー! 今行くーー!!」


玄関先にいくと、にこにことした明るい笑顔があった
それから、元気いっぱいに響く挨拶も、昔から変わらない




「ただいま! 今かえりました!」

「おかえり。 ……それだけで済んで、よかったね」

「………えへへ。うん!」


:::::::::::::::::::::::::

おわり

バレンタインSSでした
今日中の投下が間に合ってよかったと思います

皆様に、甘い一夜がありますように

訂正です

>>1
×走行していた 軽車両にあてられて
○走行してきた 軽自動車にあてられて


…うちの地元でしたら、馬に轢かれることもあるんだよ!とミスの言い訳をしておきます

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