院長「あなたが幼女ちゃん?」幼女「むい!!」 (693)



・このSSは受付「勇者様! 英霊祭ですよ!」 幼女「♪♪♪」の続きです

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・慣れない部分もありますがそこは見なかったことに…

・基本妄想の垂れ流しです

・前作を見てなくても雰囲気だけでぶわっとわかる気がしないでもないような気がします

・書き溜めの部分もありますが、ゆっくり進行していきます


以下読んでも読まなくてもいいニートの勇者と人形の幼女のお話

勇者「魔導人形?」 幼女「ユーシャ!」
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それでは今回も最後までお付き合いしていただけたら幸いです


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暗黒魔人襲撃事件から2週間後………














カチャカチャカチャ



商人貴族「チッ、英霊祭で魔族の邪魔が入ったお陰で収益が伸び悩んでいる……軍人貴族め、これだから筋肉で思考する輩は嫌いなんですよ!」




コンコン





部下「失礼します。商人貴族様」

商人貴族「なんですか? 今私は非常に忙しい、加えて少しばかり苛立っている。できれば邪魔して欲しくないのですが?」

部下「し、しかし……」

商人貴族「……それで、なんの用です?」

部下「…………王国騎士団総司令官殿が新任の挨拶にと」


商人貴族「軍人貴族の代わりの者ですか……追い返しなさい」ヒラヒラ

部下「ですが………」

商人貴族「なんですか!? 私は忙しいのです。軍人貴族の後釜だかなんだか知りませんが私はああいう連中が心底嫌いなんですよ!」

部下「それが……『儲け話がある』とかなんとか言ってまして……」

商人貴族「…………儲け話?」

部下「は、はい……」

商人貴族「……軍人が商人を儲け話で釣りますか……普段ならなめるんじゃないと一喝してやるところですが……いいでしょう、通しなさい」

部下「かしこまりました」









参謀「失礼します」

商人貴族「これはこれは……! 王国騎士団総司令官殿、ご就任おめでとうございます」

参謀「ありがとうございます。私の器量にはいささか大きすぎる役職ではありますが王都を守るため、尽力していきたいと考えています」

商人貴族「…………聞きましたよ、軍人貴族のこと。まさか英霊祭に魔族を仕向け、国家転覆を図るとは……」

参謀「…………普段閣下は聡明で、国のことを何よりも優先して考えるお方でした。なぜあの様なことを考えてしまったのか、私にはわかりません……」

商人貴族「全くその通りです。彼ほど国のことを考えていた貴族はいなかった…………しかし、彼がやったことは大罪です」

参謀「そうです……今は民衆に知られてはいませんが、いずれこのことが明るみに出てしまうかもしれない。そうなれば王国騎士団の威信は地に落ちます」

商人貴族「それで、私にどうして欲しいのですか?」

参謀「情報規制を。各報道陣に圧力かけて欲しいのです」




商人貴族「そうですね……私にとってはまぁそこまで難しい話ではないが……」フゥ

参謀「如何されましたか?」

商人貴族「メリットがない」

商人貴族「いいですか? 私は貴族である前に商人です。商人は軍人や貴族のような綺麗事の書かれたお題目で行動するのではありません。自分の利益のためだけに動くのです。お分かりですか?」

参謀「はい、心得ています」

商人貴族「ならば見返りを……私を十分に満足させるに相応しい対価を提示していただきたい」

参謀「…………ではこれを」バサッ

商人貴族「これは……?」

参謀「我々が独自のルートで手に入れた情報です。ここには『ある生物』が隠れ住んでいます」

商人貴族「話になりませんね、私に動物園でも開けと? 金になることには間違いなさそうだが、儲けが小さすぎる」

参謀「………そのような小さい話であれば商人貴族様にお話はしません……手土産と言ってはなんですが、どうぞお受け取りください」スッ









妖精「…………ここから出せ! こんなところに閉じ込めてあたいをどうしようって言うんだい!!」キラキラ












商人貴族「こ、これは、まさか!?」

参謀「ええ、お察しのとおり、『妖精』です」

商人貴族「………なんと素晴らしい!!! まさか天然の妖精をお目にかけることができるとは!!!」

妖精「なんだよおっさん! さっさとあたいを解放しな! でないと今にとんでもない目にあわせるよ!!!」ガルルル

参謀「…………このように少々口が悪いですが、紛れもなく本物です」

商人貴族「妖精は滅多に人前に姿を現さず、元々の個体数が少ない…………それに加えて」

参謀「ええ、極めて有用な特殊能力がある」

商人貴族「そうです! その特殊能力を狙った商人共が乱獲したために妖精族が人間を見限った。それからというもの誰も妖精の姿を見た者はいないとされています」

参謀「仮に今、この妖精一匹を競売にかけた場合、10億はくだらないはずです」

商人貴族「こ、これを……私に!?」

参謀「ええ。そしてその『狩場』の情報がこの書類の中に…………どうですか? ご協力していただけませんか?」









商人貴族「…………なにが目的です?」

参謀「…………ですから軍人貴族閣下の件で情報規制を……」

商人貴族「なめないでください。私も商人。この取引に裏があることくらいわかります。もう一度聞きます。なにが目的ですか?」

参謀「………それはお話できません」

商人貴族「そんな危険な賭けに私が乗ると本気で思っているのですか?」

参謀「ええ、乗るでしょう。そして我々はいい協力関係を築けるはず……私はそう信じていますよ」フフッ

商人貴族「1つ質問を」

参謀「なんなりと」

商人貴族「あなたは何者です?」










参謀「………そうですね、商人貴族様が満足される回答ではないかもしれませんが………私は『あなたの参謀』です」
















商人貴族「ふふふ……あはっはっはっは!!!」

参謀「なにか、おかしなことでも?」

商人貴族「そうですか! あなたはそうやって軍人貴族を食ったのですね!?」ククク

参謀「…………いえ、そのようなことは断じて」

商人貴族「いいでしょう! 毒食えば皿まで! あなたに利用されてやろうじゃありませんか!」

参謀「……ありがとうございます」





商人貴族「では、そうですね。早速ではありますが、教えていただいた場所の周辺調査と土地の買い上げに着手するとしましょうか」

参謀「それでは情報規制の件、くれぐれもよろしくお願いします」

商人貴族「勿論です。『あなたもこの件に関しては探られたくないでしょう?』」

参謀「なんのことでしょう? 我が身は王国騎士団の存続のためにのみ存在しております故……」

商人貴族「いいでしょう。私もあなたの記す物語に参加させていただくとしましょう。もちろん、結末はハッピーエンドを頼みますよ?」

参謀「もちろんです」フフッ

商人貴族「よろしい。情報規制の件、商人貴族の名にかけてお約束しましょう」

参謀「では、私はそろそろ失礼させていただきます。その妖精をどうするかは、あなたにお任せします」

商人貴族「またいらしてください。軍人貴族と違って、あなたとは知的な話ができそうだ」

参謀「必ずやお伺いさせていただきます。では……」



ガチャン













商人貴族「………部下、聞いていましたね?」

部下「はい。早速調査隊を派遣します」

商人貴族「くれぐれも慎重にお願いしますよ」

部下「はっ!」

妖精「おいおっさん!! まさかあたいたちの里を襲おうって言うんじゃないだろうな!?」

商人貴族「襲うだなんてとんでもない……『搾取』させていただくんですよ、骨の髄までたっぷりと……ね?」ニヤニヤ

妖精「やめろ! そんなことしたら龍王様から天罰が下るぞ!!」






商人貴族「天罰が怖くてなにが商人ですか! いいですか、妖精…… 商人という生き物はこの世の何よりも意地汚く、自分勝手で傲慢な生き物なんですよ。ですがそれ故に尊い。目的、金のためならどんなことでもしてみせる。神を欺き、悪魔と契約をも結びましょう!! そんな己の本能のみに従う生き方……それが私の生き方なんですよ!!」







妖精「クソ……絶対お前の思い通りになんてさせないからな!!」

商人貴族「やってみなさい! 私はあなたの大切なものの全てを奪い尽くし、金に換えてみせましょう!!」






商人貴族「ふふふ……ふはははははは!!!!!」







2ヶ月後………










―――――役所―――――






山賊F「氷結魔法!!」バッ




ピキィィィィン!!





課長「エクセレント!」パチパチパチ

山賊F「………で、できた! 俺にもできましたよ! 課長!!」

課長「うんうん、氷系の魔法は君と相性がいいみたいだね。それにしてもこんな短期間でマスターするなんて私も驚きだよ」

山賊F「課長の教え方が上手だからですよ」ヘヘッ

課長「いやいや、謙遜することはない。それにこのままのペースで学んでいけば次の「魔法制御2級」試験の合格も決して夢ではないだろう」フフッ

山賊F「本当ですか!?」

課長「ああ、ただそのためにはもっともっと学んでもらわないとね?」

山賊F「お、俺! 頑張ります!!」

課長「よろしい」











山賊D「へぇ、おばあちゃん昔は巫女さんだったんっすか?」

隠居婆「そうだよぉ……。昔はこのあたりの山々は神聖な土地とされていてね……魔王が現れるまでは龍王様が山で暮らしていて、この土地を守っていたんだ」

山賊D「龍王様っすか?」

隠居婆「ああ、偉大なる龍族の王様だよ。竜王様が我々人間を守ってくださる代わりに我々はちょっとした貢物を捧げる。これが昔からの習わしだったのさ」

山賊D「でも、龍王様って死んじゃったんっすよね?」

隠居婆「ああ、嘆かわしいことに魔王との七日七晩に及ぶ戦いの末に破れてしまった。だがな、ご先祖様方は龍王様の復活を信じておった。それでいつでも龍王様がいつ帰ってきてもいいように私のような巫女が山を守っていたというわけさ」

山賊D「大変な仕事っすね……で、どの山なんっすか?」

隠居婆「ああ、もう無いよ」

山賊D「へ?」











山賊C「受付の姉貴! 資料、完成しました!」

受付「ありがとうございます。そこ、置いておいてください」ズバババババ

山賊C「へい! なにか他に手伝えることとかってありますかい?」

受付「そうですねぇ、では新しい仕事にチャレンジしてみますか?」

山賊C「はい!!」










頭領「おお! これさえあれば……!!」ワナワナ

山賊E「どうしたんですか? お頭。そんな嬉しそうな顔して」

頭領「おお、お前か。これを見てくれ!」スッ

山賊E「これは……種、ですか?」

頭領「本店さんから支給されてきたものだ。他の植物よりも生命力が強いらしい」

山賊E「これを……どうするんです?」

頭領「決まってるだろう! 蒔くんだよ、復興地に!!」

山賊E「なるほど、生命力が強い植物であるなら魔王に汚染されてしまった土壌でも芽が出るかもしれないというわけですね」

頭領「おう! もしこれが成功すれば土が蘇る! これは一大プロジェクトだぜ……!!」グッ

山賊E「そうですね……」





頭領「今はまだ研究段階らしいけどな、これが本格的に実用段階になったら俺は真っ先に復興地に行くつもりだ」

山賊E「本気ですか? 今もあそこは人を寄せ付けない土地。常人が踏み入れば死が待っていると噂されているのに……」

頭領「噂は噂でしかねぇ! それに、これは誰かがやらなきゃいけねぇ仕事だ。それなら俺みたいな奴が行ったほうがいいってもんだろ? 違うか?」

山賊E「無茶しますね……」

頭領「無茶も承知よ!」ガハハ








山賊E「………お頭」

頭領「ん?」

山賊E「………こんなこと言うのもおかしな話なんですが、最近、山賊やってた時よりも毎日楽しいんですよね」

山賊E「なんていうか、今までと全然違う生き方を求められて、たいへんなんだけどでも、それが楽しい。俺、こんな気持ちになったの初めてです」

頭領「お前………」

山賊E「俺、俺達を受け入れてくれたここの人たちに感謝してるんですよ。だって、今の俺たちってまるで真人間じゃないですか。信じられない。今俺すげー幸せです」

頭領「………」

山賊E「俺、できることならこんな毎日がずっと続けばいいなって、心の底から思うんですよ」

頭領「なーにカッコつけてんだよ! ただ単純にテメエは彼女ができたからだろ?」ガハハ

山賊E「そ、それはそうですけど……でもそういうことじゃなくて!!」

頭領「お? どうだ、可愛い子か?」ニヤニヤ

山賊E「か、可愛いですよ……俺が山賊やってたことを知った上で付いてきてくれるいい子です」

頭領「ははは!! これはいい!!」バシバシッ

山賊E「痛っ!! もう! からかわないでくださいよ!!」

山賊E「俺も仕事行ってきます。今日は早めに終わらせて彼女に会いたいんで」

頭領「へいへい、彼女によろしくな」ニヤニヤ

山賊E「まったく………」タッタッタ










頭領「そうだな、お前ら……」ハァ

頭領「………ずっとこんな毎日が続いて欲しいもんだぜ……」ボソッ









山賊F「お頭―! 見てくださいよ! 俺、ついに氷結魔法をマスターしたんですよ!!」

頭領「おっ! さっすが俺の息子だ! どれ、見せてみろ!」

山賊F「はい、早速………ってなに持ってるんですか?」







頭領「ああ、これは俺たちの『希望』だよ」ヘヘッ




といったところで今日の投下は以上です

今回からいわゆる『3部』という位置づけになる話です


明日も同じ時間位投下できたらいいなと思っています

今日もありがとうございました。明日もよろしくお願いします!

こんばんは、今日も投下していきます

よろしくお願いします

――南の岬 孤児院――




院長「あなたが、幼女ちゃん?」

幼女「むい!!」

院長「よろしくね?」スッ

幼女「よろし……く!! トー……」ニギッ

院長「私はここの院長をしているの。みんなからは先生って呼ばれてるわ。幼女ちゃんもそう呼んでくれる?」

幼女「……わかった! センセ!!」ニコッ

院長「うん、よくできました」ナデナデ

幼女「えへへ……」

院長「短い期間だけど、あの子達と仲良くしてあげてね?」

幼女「むい!!」ビシッ

院長「いい返事よ、幼女ちゃん。それじゃあ、みんなを紹介しましょうか………ってあら?」






勇者「なぁ剣士……」

剣士「なんだ勇者?」

勇者「なんで俺たちはこんなところにいるんだ?」グイグイグイ

剣士「…………社会奉仕のためだ……」ベタベタベタ

勇者「そういうの、俺は専門外なんだけど……わかるだろ?」ガシガシガシッ

助手「私は研究専門で実際の魔法はそんなに得意じゃないのよ……」アセアセ

剣士「我慢しろ……」ベタベタベタ





ワイワイガヤガヤ!!!





悪ガキ「勇者の兄ちゃん! 遊ぼーぜ!!」グイグイグイ

侍少女「剣士殿、拙者、一度剣士殿の剣技が見たいでござる! 見―たーいーでごーざーるー!!」ベタベタベタ

少年魔法使い「僕は助手さんの魔法が見てみたいです。本職の魔法使いの魔法を一度、是非!」

魔族少女「み、みんな、勇者様達、困ってるよ……?」オロオロ






勇者「だー!! 群がってくるんじゃねぇ!! このクソガキ共!!!」バッ

少年魔法使い「やばっ! 怒った!?」ダッ

侍少女「逃げるでござるよー!!」ダッ

魔族少女「ま、待って……!!」

勇者「おい待てこらクソガキ共! 俺が大人の厳しさ教えちゃる!!!」ガー

剣士「お前が言うなよ……」

助手「まったくね……」

勇者「おらぁ! 悪い子はいねぇがー!!」ガー





悪ガキ「兄ちゃん兄ちゃん!!」ツンツン

勇者「ああん!? まずはお前からか?」ギロッ

悪ガキ「おりゃ!」



キィィィィィィィィィィンン!!!




勇者「はびょあ!?」ドサッ

剣士「……勇者……」

助手「躊躇もなくあそこに蹴りを入れたわね」

剣士「あれは痛い」

勇者「…………!!!」ビクンビクン



悪ガキ「どうだ! 俺にかかれば勇者だってこのとおりだぜ!!」

侍少女「流石でござる! 悪ガキ殿!」

少年魔法使い「やるな! 悪ガキ!」

悪ガキ「へへーん!!」ドヤッ




勇者「ぬぉぉぉぉぉ……」プルプル

魔族少女「あ、あの……大丈夫ですか?」

勇者「こ、これは潰れたかも…………」プルプル

魔族少女「えぇ!? なにが潰れちゃったんですか!?」

勇者「それはおじさんの……金のた……」

剣士「子供に何を教えようとしてるんだ、お前は!」スパーン

勇者「う、うるせぇ……これは、良い子の誰もが通る……道……なんだよ……」プルプル





院長「みんな、そろそろ朝食の準備ができますよー、勇者さんたちと一緒に食べましょう!」



「「「「はーい」」」」



院長「では、みなさんも………」

助手「ああ、お気遣いどうも……」

剣士「わかった。いただくとしよう。勇者、行くぞ」

勇者「な、なんだって俺が……こんな所に……」プルプル

剣士「グチグチ言うな、これも勇者の仕事だ」

勇者「俺は勇者である前にニートなの!!」

剣士「嫌ならば帰ればいいさ。その代わり例のごとく支給金は打ち止めになるがな」フッ

勇者「働かなくていい生活のために働く……なんておかしな構造……」

剣士「世の中なんてそんなもんだろ」

勇者「大体、なんだよ。今さらこんな辺境の地に慰問なんてさ?」

剣士「それを判断するのはお前じゃない。それに……」チラッ

勇者「……ああ、俺もびっくりしたけどな。2つの意味で」

剣士「そういうことだ。わかったなら行くぞ。彼女が待っている」

勇者「へいへい、わかりましたよ」


すみません、ちょっと体調が悪いので今日の投下はここまでです………


ボリューム不足で申し訳ない……


明日はもうちょっと投下できたらなと思います……



今日もありがとうございました!

こんばんは。昨日は申し訳ありませんでした
皆様の暖かいコメントをいただき、今日はなにがなんでも投下しようと思い、復活した次第であります

それでは今回も始めていきたいと思います。しばし、自分の妄想にお付き合いくださいませ



勇者「それじゃ俺たちも行くぞ、幼女」

幼女「ユーシャ!!」ダキッ

勇者「だー!! 人前で抱きつくなって何回も言っておろーが!」

幼女「ユーシャ~」グリグリ

勇者「本当にそこだけは何回言っても直んないなお前は……」

幼女「えへへ」ムフー






「…………様、聞こえておりますか……様」


幼女「むい!?」キョロキョロ

勇者「どうした? 幼女?」


「聞こえて……したら……なにか……ばを……」


幼女「誰か……いる……の?」キョロキョロ

勇者「誰かって誰だよ?」

幼女「声が……聞こえた……の!」

勇者「声? どこから?」

幼女「あっち!!」

勇者「あっちって……森の中からか?」

幼女「…………」コクコク

勇者「幼女、それは気のせいだ。風の音と木の音が混ざって人の声のように聞こえちまうんだよ。森には誰もいません。わかったか?」

幼女「むぅ……」


勇者「いいから行くぞ。慰問なんてさっさと済ませて帰るんだから」スタスタ


「……様……どうか……お言……くだされ……」


幼女「やっぱり、聞こえ……た!! ユーシャ! 聞こえた……よ!!」

勇者「だから気のせいだって。先行ってるからな。ちゃんと中に入っておけよ?」スタスタ

幼女「聞こえた……もん!!」

勇者「はいはい……」

幼女「むぅぅぅぅ……!!」プクー



「……我らの……なので……どうか……を……」


幼女「もう! もっと……自己主張……? しなきゃダメだ……よ!?」


「…………お……ださい」


幼女「なーに?」


「お力を……お貸しください……」


幼女「助けて欲しい……の?」

「…………」

幼女「むぅぅぅ……ユーシャ、怒る……かな?」キョロキョロ


「どうか……」


幼女「むむむむ……」ウーン

「あの…………様……どう……なさい……か?」

幼女「決定……しました!!」

幼女「困ってる人は……助ける!! ……それがユーシャのお仕事……なのです!!」

幼女「声のする方へ……レッツゴー……なのです!!」タタタタタタ



――王立研究所――


魔法使い「それにしても見事じゃのう………このような現象見たことが無いわい」

「あんまりジロジロ見るんじゃねぇよ」

魔法使い「しかし不思議じゃ……あの質量をこのサイズに収めるとは……」ペタペタ

「お、おい! あんまり触るんじゃねぇ!!」

魔法使い「研究とは実際に観察し、触れることでそのものの本質を理解することなんじゃ、ゴチャゴチャ文句を言うな………なるほど、こうなっておるのか……」フムフム

「お、おい!!」

魔法使い「黙っておれ! お主の技術が明日の我が国の発展につながるかも知れないのだぞ?」ペタペタ

「人間がどうなろうと俺の知ったことかよ!」

魔法使い「この衣服、邪魔じゃの………よし、脱げ!」

「は、はぁ!? お前何考えて……」

魔法使い「ほれ、さっさと脱ぐんじゃ!」

「や、やめろ!!」



ガチャッ!


研究員A「所長、商人貴族様から所長宛に書簡が………ってなにしてるんですか!?」

魔法使い「無論、実験じゃが?」

研究員A「実験って……男の人の服をひん剥くなんてどういう実験なんです!?」

魔法使い「い、いや、これは単純な学術的好奇心での……」

研究員A「所長みたいなちびっ子が男を連れ込んでるだけでも恐ろしいのに、あまつさえその衣服を無理やり引っペがそうとしてるなんてちょっとした衝撃映像ですよ!?」

魔法使い「誰がちびっ子じゃ! 誰が!!」

研究員A「そういうのが気になるお年頃であるのは我々研究員一同心得ています。ですがいきなり自分の研究室に男連れ込んじゃだめでしょう!! 大体、誰なんですか? この男!!」

魔法使い「ああ、この姿ではわからぬか……こやつが例の火竜じゃよ」

研究員A「はぁ? この見るからにヤ○ザの鉄砲玉みたいな風貌のこれが?」

火竜「てめぇ、よくわかんねぇけど今相当馬鹿にしたよな? ああん?」


魔法使い「もう少し、龍族と幼女の関係性を知っておきたくての。研究所に来てもらうことにしたんじゃが、あのサイズでは研究室に入れん。どうしたものかと考えておったのじゃが龍族は昔人間と接する時は人型だったということを聞いての。試しになってもらったんじゃ」

火竜「まぁ、俺もあのガキについて興味がある。人間と組むのは癪に障るがここはしばらく休戦ってこった。世話になるぜ? 人間」ニタァ

研究員A「え? 本当に所長が言っていた火竜なんですか?」

火竜「なんならここら一体火の海にしてやろうか?」

研究員A「いいです、結構です!!」アタフタ

火竜「なんだよ、ノリ悪いな、お前」

研究員A「自分の一言で王都を火の海になんてできないですよ……」

魔法使い「ところで、なにか用か?」


研究員A「ああ忘れてました。商人貴族様から所長宛に書簡が届いています」スッ

魔法使い「商人貴族殿から……? どれ」カサッ

研究員A「なんて書いてあるんです?」

魔法使い「土地開発用の魔導器具の購入依頼書のようじゃな」

火竜「お前、そんなもんまで作ってんのかよ?」

魔法使い「全て我が研究命題の副産物じゃ。にしてもこれは……」

研究員A「なにか問題でもありました?」

魔法使い「商人貴族殿はなにを考えておるのじゃ? 天地創造でもするつもりかの?」

研究員A「掘削用の魔導器具に簡易爆破術式装置、その他諸々………しかもすごい量……」

魔法使い「やはり、あの噂は本当であったか……助手を向かわせておいて良かったわい」

研究員A「噂?」


魔法使い「最近、商人貴族殿が東の海沿いの土地を根こそぎ買い上げているようでの。なんでもあの辺りを国一番のリゾート地にするとか……」

研究員A「リゾート地? なんか嘘くさいですね」

魔法使い「であろう? わしも気になってその手の物に動きを調べさせたんじゃがどうやら本当の目的は別にあるらしい」

研究員A「といいますと?」

魔法使い「あの辺りに妖精の隠れ里があるとな」

火竜「妖精? 今妖精と言ったか? あいつらまだ生きてやがったのか……」

魔法使い「なんじゃ、知り合いか?」

火竜「ああ、龍族と妖精族は昔からの付き合いだ。龍族がそこに暮らす生物を守護する役割なら、妖精族はその土地や自然を守護する役割を担っている」

魔法使い「しかし、とある理由で人間は妖精族を乱獲してしまったという歴史がある。そのせいで妖精族は人々を見放し、姿を見せなくなってからと久しい。だが今回どうやら商人貴族殿は妖精の隠れ里があの一帯にあるとの情報を掴んだようじゃな」

研究員A「つまりリゾート開発計画は表向きということですか?」

魔法使い「確信は持てん。本当に妖精族の隠れ里があるのかもわからんしの」

研究員A「それで助手さんを南へ派遣したというわけですか……」


魔法使い「実際に妖精の乱獲が行われていても我々の権限では商人貴族殿を止めることはできん。しかし希少な妖精族の危機をみすみす放っておくわけにもいかん。そのためにはとにかく情報は必要だと思っての。ちょうど剣士と勇者が南へ慰問に行くというから、便乗させてもらったという次第じゃ」

研究員A「慰問、ですか?」

魔法使い「ある人が経営している孤児院にじゃ。そこの子供たちが勇者のパーティーに憧れているという話を剣士が聞いての。それならばと今回の話に至ったのじゃ」

研究員A「流石剣士様ですね、世のため人のため……うん、実に立派な方だ」

魔法使い「いや、そうでもないぞ? 剣士の場合は至極『個人的な理由』の方が大きいとわしは思う。あやつ、お堅いからの。理由が無ければあそこに行けなかったんじゃろうて」ニヤニヤ

研究員A「なんです、その理由って」

魔法使い「まぁ、長い付き合いじゃと色々あるんじゃよ……それにしても勇者が同行してくれて本当に助かったわい」

研究員A「助かった……とは?」


魔法使い「商人貴族殿がなにかしてきても全て『勇者が暴走して致し方なく』とあやつに責任をなすりつけられるじゃろ?」

研究員A「あ、なるほど………」

魔法使い「ニートのあやつならば肩書きに縛られることもなく、失うものも無い。後々問題になることもないじゃろうしの」

研究員A「所長も悪い人ですね」

魔法使い「これはある種の信頼関係じゃ。困っている人間をあやつは絶対に見捨てん。なんだかんだ文句を言いつつもあやつは必ずその誰かのために立ち上がる。そういう奴なんじゃよ」

火竜「けっ、忌々しい……」


魔法使い「それに、あそこには『あの人』もおるしの。商人貴族殿がなにを考えているのかは知らぬが、思い通りにはいかないじゃろう」

研究員A「誰です? その『あの人』っていうのは?」

魔法使い「………お主、『中抜き』という技術を知っておるか?」

研究員A「いや、聞いたことありませんね」

魔法使い「まぁ、知らぬのも無理はない。行為は褒められたものではないが、あれは一種の芸術じゃよ」

研究員A「は、はぁ……」

魔法使い「とにかく、この一件は助手と剣士たちに任せるとしよう。わしらはわしらの仕事がある。できることは早めに片付けておかねばなるまい」

研究員A「では、取り急ぎ商人貴族様からの依頼については進めてしまっていいですか?」

魔法使い「よろしく頼む」

研究員A「わかりました。少し時間はかかると思いますが準備します」

魔法使い「ああ、バレない程度にゆっくりで構わぬからな?」

研究員A「わかりましたよ。では取り掛かります」




スタスタスタ






火竜「へぇ、こっちもなかなか面白いことになってるじゃねぇか」ヘヘッ

魔法使い「どこがじゃ、世界は平和になったというのに、龍の封印は解ける、魔族は襲ってくる、おまけに今度は人間の手によって妖精族がピンチとは。なんのために戦ってきたのかわからんわい」ハァ

火竜「俺だっていきなりこんな時代に叩き起こされて迷惑してんだ。この状況を楽しむ努力をしたっていいだろうがよ」ケッ

魔法使い「………ずっと気になってたんじゃがなぜ今になって封印が解けたんじゃ?」

火竜「そんなの俺が知るかよ。ただ………」

魔法使い「ただ?」

火竜「目が覚めた時、近くにあいつ………魔王の魔力を感じた……ような気がした」

魔法使い「なに?」

火竜「まぁ、それが原因かどうかはわからねぇがな」




魔法使い「………全て偶然ということで済ませてしまっていいものなのか……」

火竜「とにかく、俺はあの金髪のガキと魔王のことについて知りてぇ。そんでもってもし魔王が生きていることがわかったら……」

魔法使い「どうする気じゃ」

火竜「殺してやる………!!」ギラッ

魔法使い「物騒な奴じゃの……」ハァ

火竜「それまでは精々利用させてもらうぜ、人間」

魔法使い「………」

火竜「全てが終わったらお前たち人間どもも灰にしてやるから覚悟しやがれ」ニタニタ

魔法使い「ならばその前に色々と実験に付き合ってもらおうかの」ニヤニヤ


ドサッ


火竜「なんだこれは?」

魔法使い「龍族の協力のもとに、できる実験をとりあえず列挙してみた。この紙束はその実験内容が記載されておる。その数実も1286!」

火竜「お、おい……まさかこれ全部?」

魔法使い「もちろんじゃ! お主の様な巨大トカゲを飼うと言うのじゃ。まさか働かずにここにいるつもりか?」

魔法使い「いやー、体内にあれほどの魔力を溜め込んでいる生物は自然界にはおらんからのう! 色々と実験がはかどりそうで良かったわい! 色々と協力してもらうぞ? 火竜よ!」ニヤニヤ

火竜「ちょ、ちょっと待て……」

魔法使い「待たん! 善は急げじゃ! 早速実験に取り掛かるとするかの!」

火竜「お、おい……」

魔法使い「たっぷりとこき使ってやるから覚悟しておけ!」ニカッ

火竜「マジかよ……」


といったところで今日の投下は以上です


なんだかんだで4作目ですが思った以上に反響があって正直驚いています

コメントをくださる方々本当にありがとうございました。スローペースではありますが、決着をつけるまでやめるつもりはありませんのでこれからも付き合っていただけたら嬉しいです

明日も同じ時間に投下していきたいと思っていますのでよろしくお願いします

最後に、体調には十分気をつけてお過ごし下さい。私も祝日を無駄にしましたwww

おまけ

「崖の上の幼女」





幼女「………」ミョンミョンミョン

勇者「どうしたんだ? 幼女?」

幼女「………むぅ……」ミョンミョンミョン

魔法使い「なにかを受信しているようじゃな」

勇者「受信?」

魔法使い「幼女には感知機能も搭載しておるのじゃ。我々では感じることのできない特別ななにかを知覚することができる。今もああやってなにかを感じ取っているのじゃよ」

勇者「へぇ、そうなのか。なにかわかったのか? 幼女」

幼女「………にょ?」

勇者「にょ?」

幼女「………」ミョンミョンミョン

勇者「よ、幼女……?」

幼女「ヨージョ! ユーシャのこと、スキー!!」

勇者「うわ! びっくりした!」

幼女「ヨージョ、人間になるー!!」

勇者「やめて! お前が言うとなんか話が暗い方向に行きそうだからやめて!!」







すみません、魔が差したんです……すみません……


さて、おふざけはそれくらいにしておいて今日も投下していきたいと思います。

よろしくお願いします!

―南の岬 孤児院―


勇者「いいですかー、みなさん。この国の支給金と呼ばれるお金は全て国民が払う税金を資金源としています」

悪ガキ「なぁ、支給金ってなんだよ、兄ちゃん?」

勇者「いい質問です悪ガキ君。先生がわかりやすく教えてあげましょう。 一般的に支給金と呼ばれるものにも色々あります。例えば仕事を辞めた時に次の職場が見つかるまでの間もらうことができる『失業支給金』」

侍少女「仕事を辞めてお金がもらえるんでござるか?」

勇者「その通り。流石に今までもらっていた全額とういうわけにはいきませんが、給料の大体50~80%程度のお金を毎月もらえます。もちろん、その人が求職活動をしているという実績を証明しなければなりませんが……」

悪ガキ「じゃあ、じゃあ仕事始めてすぐ辞めたらしばらくは働かなくても金がもらえるってことか?」

勇者「雷魔法、弱め!!」バリバリッ

悪ガキ「あんぎゃぁぁぁぁあああ!!!」ビリビリ

勇者「先生はそんな甘えた考えのクソガキは嫌いです。『失業支給金』は一年以上働いた人のみがもらえるものです。そして、働いた年数が長ければ長い分だけ支給される金額と期間が増える……そういうシステムになっています。くれぐれも勘違いしないように」

悪ガキ「は、はい………」プスプス


魔族少女「あ、あの勇者様………?」

勇者「なんだい心優しい少女ちゃん?」ニコッ

魔族少女「えっと、勇者様はなぜ私たちにそのような話をするのですか………?」オドオド

悪ガキ「そうだぜ! そんな支給金の話なんかよりもっと勇者としての武勇伝とかさ、そういうのを俺たちに話してくれよ!」

勇者「お黙りなさいクソガキ。これは皆さんにとって、そして先生にとって重要な話なのです」

悪ガキ「だから、なんでそれが重要な話なのかってことを俺達は聞いてるんだけど!」ブーブー

勇者「よろしい。少し早いですがお話しましょう。皆さんが今日、一番覚えて帰らなければならないのは………そう! 『英雄支給金』についてです!」

少年魔法使い「英雄……?」

侍少女「支給金……でござるか?」


勇者「そう! この英雄支給金とは! 偉大な功績を成し遂げたものにのみ受給資格を与えられるものです。例えば、新しい魔法を開発して人類の繁栄に貢献した偉大な魔法使いとか、紛争地に赴き自らの身を顧みず、傷ついた人々のために奔走した僧侶とか、魔王を倒し世界を救った勇者様とか!!!」ババーン


シーン


勇者「魔王を倒し、世界を救った勇者様とか!!」ババーン



侍少女「なぜ二回も言うのでござるか………」ハァ

勇者「とにかく、そういう英雄的な行為を行った人間を称え、国はその英雄に毎月、『行った英雄的行為の見返りとしてはあまりにも少ない金額』を支給する………それが英雄支給金制度です」

悪ガキ「そうか! 俺たちもそういうのがもらえるくらい偉くなれってことだな! 兄ちゃん!」



勇者「はぁ? 何言ってんだお前?」


悪ガキ「え? だってそういうことだろ?」

勇者「違いますー、そういうことじゃありませーん」

悪ガキ「じゃ、じゃあどういうことなんだよ?」

勇者「君たちは偉くなる必要も、強くなる必要もありません。ただ大人になって出来るだけ多くの税金を納めなさい」

悪ガキ「はぁ!?」

勇者「私、前回の事件の後、色々調べました。なぜ私の支給金が毎回打ち切りの危機に瀕してしまうのか………そこには色々とシビアな事情があったんです」

少年魔法使い「シビアな事情?」


勇者「そう! この国は今、慢性的な財源不足に陥っている!」

勇者「考えてみればわかるはずでした。魔王軍との戦いのせいで失ってしまった多くの働き手。復興作業でかかる費用。金はいくらあっても足りない。必要な経費はたくさんあるのに、そんな収入源はどこにもない………ならばどうするべきか!? はい、魔族少女!!」

魔族少女「………節約、ですか?」

勇者「その通り! そしてそんな時、決まって矢面に立つのが………英雄支給金なんです!!」バンッ

勇者「事実! 他の受給資格保持者はほとんどが自らその資格を返上しています! 現在支給金をもらっているのは私1人だけなのです!!」バンバンッ

勇者「このままではなし崩し的に支給金という制度が無くなってしまうかもしれない。税金が足りないという、その程度の理由で!! 魔王を倒すの滅茶苦茶大変だったのに!!」クワッ

勇者「………いいですか? このままでは私は唯一の収入源を失ってしまう。そうなったら私は働かなければならない………そんなの絶対に嫌だ。私は働きたくない………断じて働きたくない!!!」ガンッ

勇者「だから君たちは、早く社会に出て、一生懸命働いて、税金を納めて………私を養ってください………」

勇者「それが今日、あなた達が覚えて帰らなければならないことの全てです。国を救った勇者様を養うためにたくさん税金を納めましょう。よろしくお願いします」ガバッ



魔族少女「勇者様………」

少年魔法使い「………」

侍少女「勇者殿………」

悪ガキ「勇者の兄ちゃん………」



悪ガキ「ふざけんなぁぁぁぁあああああああ!!!!!」ドゲシッ

勇者「げふぅぅ!!!」

侍少女「冗談じゃないでござるよ!! なんでお主のようなクズを拙者達が養わなきゃいけないんでござるか!!!」バシッバシッ

勇者「ぼ、木刀は痛い………」

少年魔法使い「……炎魔法強火!!」

勇者「アチィィィィ!!!!」ゴォォォォ

魔族少女「み、みんな……暴力はダメだよ?」

悪ガキ「勇者って聞いてたのにガッカリだぜ!!」ガンガンッ

少年魔法使い「非常に残念です! もっとすごい人かと思ってましたよ!!」

勇者「わ、若者よ………年長者には優しくするべきじゃよ……?」

悪ガキ「うるせぇ!!!」



ギャーギャーギャー!!!


助手「うわぁ………」

剣士「あの馬鹿………」ハァ

助手「誰ですか、あの人の話が聞きたいって言い出した人……」

剣士「彼女だ………勇者の話ならどんな話でもいいからと……」

助手「ああ……」

院長「………」ニコニコ

助手「どうするんですか?」

剣士「やっぱり止めた方がいいか?」

助手「このままじゃ、未来を担う子供たちが歪んで育ちますよ?」

剣士「それはなんとしても避けたいな」

助手「なら止めましょう」

剣士「そうだな、そうしよう……」


ギャーギャーギャー




剣士「あー、君たち。そろそろ許してやってくれないか?」

侍少女「剣士殿! こいつ本当に勇者なんでござるか!?」ハァハァ

悪ガキ「嘘だよな!? ただのそっくりさんだろ!?」ゼェゼェ

剣士「………残念ながら本物だ」

少年魔法使い「この絵に書いた様な人間のクズがですか?」

剣士「魔王との戦いの後遺症でな。基本的に頭がパーだったんだが、さらにパーになってしまったんだ」

侍少女「そうでござったか。さらにパーに……」

魔族少女「パーに………」

勇者「てめぇ……剣士……好き勝手言いやがって……」ゼェゼェ

悪ガキ「お前は寝てろ!!」ゲシッ

勇者「ギャン!!」

剣士「代わりと言ってはなんだが、私が話しても構わないか?」

侍少女「もちろんでござるよ! 拙者、剣士殿の武勇伝、聞きたいでござる!!」

悪ガキ「俺も聞きたい!!」

剣士「ああ、それじゃあ席に戻ろうか」ニコッ

「「「「はーい」」」」




勇者「……剣士、すまねぇ……俺はもうダメみたいだ……幼女のことを……頼むぜ……」ヘヘッ

剣士「お前はそこで寝てろ。私が子供たちに正しい大人のあり方というものを教える。お前の様な人間にならないようにな」フンッ

勇者「そうだぜ剣士……世界に俺みたいな奴が増えたら、俺がもらう支給金が減っちまう……」プルプル

剣士「本当にお前というやつは!!」スパーン

勇者「グハッ!! 段々……気持ちよくなってきた……」ゼェゼェ

剣士「まったく……」

といったところで今日の投下は以上です

明日はもうちょっとお話を先に進められたらな、と考えています


明日の投下は21時、もしくは22時頃を予定しています。よろしくお願いします


今日もありがとうございました!!

こんばんは、遅くなりましたが今日も投下していきたいと思います。よろしくお願いします




剣士「……では改めて……私は、王国騎士団第一騎士団団長をしている剣士だ。先ほどの不甲斐ない勇者に変わって今日は私が所属している騎士団について話をさせてもらう。よろしく頼む」

侍少女「はい! よろしくお頼み申す!!」ガバッ

悪ガキ「なんかいつも以上にはしゃいでるな、あいつ」ボソッ

魔族少女「侍少女ちゃんは剣士様のこと本当に憧れてるから」フフッ

剣士「まず、王国騎士団の体系について君たちに話しておこうと思う。王国騎士団は基本的に第一騎士団から第四騎士団までの4部隊で構成されていてこの4部隊はそれぞれ受け持つ任務が違うんだ」

剣士「具体例を挙げるならば第四騎士団は騎士団全体の運営及び広報活動。第三騎士団は現場での後方支援、第二、第一騎士団は王都の護衛や紛争の直接戦闘行為などを担当している」

悪ガキ「へぇ……知らなかった。なんでそんな風に分けちゃうんだ?」

侍少女「そうでござるよ、各々が国のために一致団結し敵と立ち向かった方が良いのでは?」


剣士「………侍少女と言ったかな? 君の得意なことはなんだい?」

侍少女「無論! 剣術でござるよ! いつの日かこの剣術で剣士殿を超える剣豪になることが拙者の夢でござる!!」

少年魔法使い「その割に腰に差している剣はまだ使いこなせてないけどな」

侍少女「こ、この剣はちょっと特殊なんでござるよ!」

剣士「こらこら、喧嘩をしない。では魔族少女」

魔族少女「は、はい!」ビシッ

剣士「そんなにかしこまらなくて大丈夫だ……君は剣術が得意かな?」

魔族少女「え? 私ですか? 私はそういうのはちょっと……」

悪ガキ「お前、鈍臭いもんなー」ヘヘッ

魔族少女「うう……」


剣士「では君の得意なことは?」

魔族少女「私の得意なことは……えーっと……」

侍少女「魔族少女は珍しい回復魔法が使えるでござる!」

剣士「ほう、すごいじゃないか!」

魔族少女「あ、あれはお母さんが教えてくれただけでそんな特別なことじゃ……」アタフタ

剣士「そんなことは無い。私も回復魔法の使い手にはまだ両手で数える程度しか会ったことがない。それは十分君の得意なことだよ?」ニコッ

魔族少女「あ、ありがとうございます……」オドオド

悪ガキ「俺は足が早い!!」ムンッ

少年魔法使い「独学で魔法を少々……」

剣士「そうだ。人にはそれぞれ得意なことと苦手なことがある。戦うことが得意な者、魔術が得意な者、交渉が得意な者。それを無視して戦うことが苦手な者を戦わせ、結果死なせてしまったらそれは国にとっての大きな損害になる」

少年魔法使い「適材適所ってやつですか?」

剣士「その通り。個人個人が持っている素質を最大限に活かすこと。それが重要なんだ。だから各部隊で役割を分担している。各々が自分の最大限の力を国のために使えるようにね」

悪ガキ「へぇ……」


剣士「じゃあここで君たちに問題だ」

侍少女「なんでござるか!?」

悪ガキ「絶対俺が正解してやるぜ!」

少年魔法使い「いちいちはしゃぐなよお前ら……」

魔族少女「まぁまぁ……」

剣士「騎士団に入るために必要な資格とはなんだと思う?」


悪ガキ「はい! 強いこと!!」

剣士「ハズレ」

侍少女「はい! 最後の一兵になろうが敵を打ち倒すまで死を覚悟して戦い続ける覚悟でござる!!」

剣士「残念ながら不正解だ」

侍少女「ぬぅ……」

少年魔法使い「協調性……ですか?」

剣士「惜しいな」フフッ

悪ガキ「ええ? じゃあ一体なんなんだよ? 正解は?」


剣士「正解は『国を守りたい』という強い心………意志だ」

悪ガキ「意志ぃ?」

剣士「そうだ。国を守りたい。国のために自分の力を役立たせたいという意志こそが騎士としてもっとも重要なものとなる。そしてそれが一番辛い時に自らを助けてくれる強い武器になるんだ」

剣士「その意志を胸に我々騎士団は今日も各々の戦場に立っている。君たちがもし騎士団に入りたいと思っているのなら、そのことをどうか忘れないで欲しい。いいね?」

侍少女「はい!!」


悪ガキ「カッコイイな……あんたと違って」ジトー

勇者「おいおい……そんなこと言いなさんな、旦那ぁ~」ヘラヘラ

少年魔法使い「さすが王国騎士団の団長、だな。勇者様も見習ったらどうですか?」

勇者「え? 俺があいつを見習う? なんで?」

悪ガキ「未だにこいつが勇者だってことが信じられねぇ……」プルプル

勇者「だって、働かないでもお金が入ってくる生活を手にしたんだよ? これ以上なにが問題あるっていうの?」

悪ガキ「お前の素行が問題だらけじゃねぇか!!」

勇者「ええ!!??」ガガーン


悪ガキ「兄ちゃん……もうちょっとさ、勇者なんだからさ人に尊敬してもらえるような生き方しなよ」ポンポン

勇者「な、なぜこんなガキに説教されてるんだ、俺は……」ズーン

少年魔法使い「少なくとも今のあなたは尊敬できません」キッパリ

魔族少女「えっと、私は別にそんなことは……無いと……」フイッ

勇者「お嬢ちゃん、だったらなんで目をそらすんだい?」

魔族少女「こ、これは別に深い意味は……」フイッ

侍少女「剣士殿の方が圧倒的に実力も人間性も優っているでござるな!」フンス

魔族少女「ちょっと、侍少女ちゃん!」

勇者「く、くそう……俺、勇者なのに……剣士の方が圧倒的に支持されている……」ズーン

悪ガキ「どっちかって言うと剣士様の方が勇者っぽいよな」アハハ

勇者「く、悔しくなんかないもん!!」グスッ

少年魔法使い「そんな静かに涙目で言われても……」




剣士「まぁ、騎士団の概要についてはこれくらいにしておいて、なにか質問などはあるかな?」

勇者「はいはい! 剣士さんは月々いくらぐらいもらってるんですか!?」

剣士「勇者……」ハァ

悪ガキ「お前は黙ってろよ!」

勇者「なんだよー、気になんじゃねぇかよー、教えろよー」

剣士「………お前よりかはいい暮らしをさせてもらってる! 働いているからな!!」

勇者「みなさーん、こいつ国民の税金でVIPな毎日送ってますよー。いいんですかー! 税金の無駄遣いじゃないんですかー!?」

侍少女「先生、本当にこれが伝説の勇者なのでござるか?」

院長「そうよー、間違いないわ」

侍少女「間違いであって欲しいでござる……」




剣士「あの馬鹿は放っておいて……他に質問はないか?」

勇者「剣士さんはー、彼女とかっているんですかー?」

剣士「………貴様はさっきから私になにを言わせたいのだ……?」

勇者「それくらいのおエライさんならー、毎日女の子をー取っ替え引っ替えでー、よろしくやってるんじゃーないですかー?」

剣士「お前は子供の前でなにを言ってるんだ!?」ガンッ

院長「ふふっ、剣士さんは確かにモテそうですよね」

剣士「君まで……」

勇者「そこんとこ、どうなんすかー?」ジトー

院長「私も気になります」ジー

剣士「/// くっ……今はそういう時間は無いし、余裕も無い!」

勇者「あー! はぐらかしましたぜ、こいつ!!」

剣士「………後で覚えていろよ勇者……!! 次! 次の質問は無いか!?」



侍少女「剣士殿! 先日の英霊祭襲撃事件の時も騎士団の方達がご活躍を!?」バッ

剣士「あ、ああ。その件についてはだな……」チラッ

院長「……?」

剣士「……騎士団が一丸となって動き、事態収束に向け尽力した……」

侍少女「おお!!」



勇者「センセー、剣士様が嘘ついてまーす!!」ビシッ

剣士「なっ!? 勇者!」

院長「あら、そうなんですか? 剣士さん?」


剣士「い、いや実際に市民の避難誘導や混乱の収束、それに終わった後の後片付けなど……」

侍少女「では、王都を襲撃したという者達は一体誰が倒したんでござる?」

剣士「そ、それは……!」

勇者「確か巨人は魔法使い、襲撃者達は仮面の姫様の護衛と、陛下だっけ?」

助手「……ええ。まぁこれ以上は国家機密になってるから言えないですけど」

勇者「あれ? ということはー? 剣士様は誰と戦ったんですかー?」ニヤニヤ

剣士「勇者……!! お前……!!」

勇者「きゃー、剣士様がこっち睨んでくるよー、怖いよー」


侍少女「もしかして剣士殿はなにもしてないのでござるか……?」

剣士「い、いや……違う……!」

助手「いや、ちゃんと戦ってましたからね? 誤解しちゃダメよ?」

剣士「そ、そうだ! 私だってちゃんと戦っていただろう!」

勇者「えー? なんか『ぐっ……』とかしか言ってなかったような気がするけど?」

剣士「ぐっ………」プルプル

助手「そんなことないですって、ちゃんと戦ってましたって、ほら『あれ』と」

勇者「えー? 戦ってたかなー?」

助手「勇者様があそこに現れる前ですよ」


勇者「『あれ』ってあいつのことだろ? 確か俺が来た時もピンピンしてたはずだけど、ちゃんと戦ってたの?」

助手「えーっと……」

剣士「…………」プルプル

侍少女「………ということは剣士殿は『勇者殿に覚えてもらえていないほど地味なことしかしてなかった』ということですか?」

悪ガキ「おい、ビックリしすぎて『ござる』抜けてるぞ!」ヒソッ

魔族少女「そこはツッコまないの」ヒソッ

剣士「いや、違うんだ侍少女。なにも敵の大将とやりあうことが騎士の全てではない、まず第一に考えるのは民の命であって……」アタフタ

勇者「そうだぞ、侍少女。例え事件中でも目立った戦闘シーンも無く、いるんだかいないんだかわからない騎士団の連中だったけど、国のために色々と地味な作業を影でひっそりやってたんだ。あんまり表には出てこなかったけど」

侍少女「じゃ、じゃあ……みんなが襲撃者との死闘を演じている中、剣士殿達騎士団の方々は……」

勇者「まぁ、避難誘導してたか、逃げ回ってたかのどっちかだな!」アッハッハッハ

侍少女「そんな……」


勇者「あ、でも剣士はちゃんと『解説役』という大役をだな……」ニヤニヤ

剣士「いい加減にしろ! さっきから何がしたいんだお前は!」

勇者「うるせぇ! お前ばっかりなんか尊敬の眼差しで見られててずりぃんだよ! 剣士が勇者より目立つんじゃねぇ!!」

剣士「なにを無茶苦茶なことを……」

勇者「いいですかー、みなさん! 魔王を倒したのも王都の危機を救ったのも大半は俺の活躍のお陰なんですよー! 剣士じゃありませーん、この勇者様ですよー、もっと俺を崇め奉りなさーい」

悪ガキ「馬鹿なこと言ってんじゃねぇ!」

侍少女「そ、そうでござる! い、いくら剣士殿が役に立たなかったとしても誰が貴様の様な者など……!!」

剣士「侍少女、私だってな色々頑張ってるんだぞ………?」ズーン

魔族少女「剣士様、しっかり!!」ワタワタ


少年魔法使い「まぁ、どっちがいいかなんて言うまでもないよな」フゥ

勇者「くっ! このクソガキども……!!」ワナワナ

剣士「そんなんだから力に飲み込まれて暴走するんだよ……」

勇者「そ、それを言っちゃうのかい、お前は……!!」

剣士「お前の心が弱いから王都が壊滅に追い込まれたんだ!」

勇者「追い込んでねぇよ! 未遂だよ! いいだろ! 俺の力が無かったらお前ら今頃死んでたんだぞ!?」


剣士「どうだか? 私の目には余計な仕事が増えた様にしか見えなかったが?」

勇者「だったらてめぇがああなる前にあいつぶっ倒しておけば良かった話じゃねぇか!」ガルル

剣士「そうしようとした時にお前が勝手に現れて勝手に暴走したんだ! まったく、勇者を辞めてからも私に迷惑をかけるつもりか? お前という奴は!!」

勇者「んだとおら! やんのか!?」

剣士「いいだろう。私ももう我慢の限界だ。一度どちらが本当に強いかはっきりさせなければならないようだな!」

勇者「表出ろ! てめえなんて月までぶっ飛ばしてやんよ!!」

剣士「ぬかせ! その腐った性根、叩き直してくれる!!」


ダダダダッ







院長「あらあらあら……」





悪ガキ「………なんていうか、その……俺、ガッカリだ」

侍少女「よもや勇者殿があのような人間だったとは……」

少年魔法使い「聞いてた話と随分と違うな」

魔族少女「いや、その……私は悪い人じゃないって……思うよ?」

悪ガキ「あれ見てもか?」スッ



勇者「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!! 雷装!!!!」


ドゴォォォォォンンンン!!!


剣士「はぁぁぁぁあああああ!!!」


ズバァァァァァ!!!!


勇者「なんの! 極大雷魔法!!!」


バリバリバリバリ!!!


剣士「くらえぇぇぇぇ!!!」


バシュゥゥゥゥゥゥン!!!



勇者「負けられねぇ……俺が負けたら全国の同胞たちの生き方を否定することになっちまう……それだけはだめなんだ!!」

剣士「なにを世迷いごとを!!」

勇者「俺に力を貸してくれ! 全国のニートのみんなぁぁぁぁぁあああああ!!!」ゴゴゴゴゴゴゴ!

勇者「俺たちが働かなくていい世の中を! 作るんだァァァァ!!!!」


ドカァァァァァン!!!



院長「喧嘩もいいですけど、建物は傷つけないでくださいねー!!」





魔族少女「アハハ………」

悪ガキ「ああいう大人には絶対なりたくねぇな……」

侍少女「まったくでござるよ!」

少年魔法使い「右に同じ」



院長「終わったら声かけてくださいねー!」

悪ガキ「先生はなんでそんなに平然としてるんだよ……」

院長「まぁ、二人ともいつものことだから。お腹が空いたら仲直りするでしょう」

魔族少女「そんな子供じゃないんですから……」

院長「あら、男の子はいくつになってもそんなものですよ?」

侍少女「そうでござるか……」

院長「はい♪」



勇者・剣士「「うぉぉぉぉぉぉぉ!」」


ドガァァァァァン!!!


といったところで今日の投下は以上です


今回は説明回っていう感じで説明文が多いところもありますが、別に対して重要じゃないので流し読みでも構いません

明日も同じ時間帯に投下できればと思います

今日もありがとうございました!

あれ?
勇者って魔法使えなかったよな?
使えるようになったん?

乙ー

暴走した結果ある程度は使えるようになったんじゃないかな?

こんばんは、だいぶ早いですが今日も投下していきます


>>95 >>96
詳しくは言えませんが大体そのような感じで……

『無かったこと』が『あったこと』に変わったといったような……
ぼやっとしたニュアンスで申し訳ありません

それでは今日も少しの時間だけ、お付き合いください


助手「……剣士様もいなくなっちゃいましたね」

院長「そうですね、できれば後学のためにももう少しお話を聞かせたかったのですが……」

助手「今日のところはもう十分じゃないですか?」アハハ

院長「そうだ! 助手さんもなにかこの子たちにお話を聞かせてあげてくれませんか?」

助手「冗談はやめてくださいよ。あの2人の功績に比べたら私なんかが話しても……それにそもそもは私は魔法使いの代理で来ているんです。子供たちになにか話せるような武勇伝なんかもありませんよ」

院長「ですが……」


悪ガキ「先生、俺たちちょっと遊びに行ってもいい?」

侍少女「もうすぐ秘密基地が完成するんでござるよ!」

院長「秘密基地、ですか?」

魔族少女「侍少女ちゃん、ダメだって!」

侍少女「し、しまったでござる!!」

院長「あら……4人とも先生になにか隠し事かしら?」ゴゴゴゴゴ!!

悪ガキ「わあああ!! なんでもない! なんでもないから先生!!」アタフタ

少年魔法使い「4人って僕もですか!?」

院長「当然です。先生は皆さんに隠し事はダメなことと教えたはずです」ゴゴゴゴゴ!!!


侍少女「違うでござる先生! 我々はここに来てからずっと内緒にしてきた秘密基地を完成させて先生を驚かそうとしてる計画だなんてこれっぽっちも考えてないでござるぅぅぅ!!」

少年魔法使い「お前はこれ以上喋るな! 僕の身まで危なくなる!」

助手「まぁまぁ、院長さん。このくらいの歳の子でしたら秘密の一つや二つくらいありますから……」

院長「ですが隠し事はダメです」ゴゴゴゴゴ

魔族少女「ひ、ひぃぃぃぃ!!!」ガタガタガタ

助手「いいじゃないですか。その隠し事もどうやら誰かさんを喜ばせようとしているだけみたいですよ?」フフッ

悪ガキ「助手の姉ちゃん……」

院長「そうなのですか?」グリン!

子供たち「!!!」コクコク

院長「………ならばいいでしょう……」フッ

悪ガキ「よかった……」

魔族少女「オシオキされるかと思ったよ……」


侍少女「オシオキは嫌でござる……オシオキは嫌でござる……」ガタガタ

少年魔法使い「お前は一度されるべきだと思うがな」

侍少女「なんでそういうこと言うでござるか!?」

少年魔法使い「一度たっぷりオシオキされてその緩んだネジを締め直してもらったらどうかと言っているんだ!」

侍少女「ムッキー!! でござる!!」

少年魔法使い「そのバカみたいな口癖をやめろ、なんだ安易なキャラ作りか?」

侍少女「これは全ての武士が扱う伝統的な喋り方なんでござる!」

少年魔法使い「そんな馬鹿みたいな喋り方をしていたなら武士とやらも絶滅して当然だな!」

侍少女「なんたる屈辱……生かしておけないでござる……!!」シャキン

少年魔法使い「お前が僕に勝てると本気で思っているのか?」スッ

侍少女「望むところでござる!!」


悪ガキ「お、おい!」

魔族少女「先生の前でやめておいた方が……」

少年魔法使い「下がっていろ。俺がこのバカに現実を教えてやる」

侍少女「何人たりともこの戦いを止めることはできないでござるよ……!!」

少年魔法使い「来いよ。脳筋バカ」

侍少女「参る!!」



院長「喧嘩をしてはいけないと先生は教えたはずですが?」シュン




助手「ってあれ? 院長さん? いつの間にそんなところに?」

院長「………」ニコニコ

少年魔法使い「邪魔しないでくれ先生。こいつにはちゃんと現実っていうものを教えなくちゃいけないんだ」ゴォ

侍少女「そうでござるよ先生武士の誇りをあやつは汚したでござる。許してはおけぬ! これは真剣勝負なのでござるよ!!」チャキン

院長「ダメです。悪い子には武器なんか持たせられません。没収です」シュバッ!

少年魔法「え?」

侍少女「け、剣が!?」

院長「まったく、侍少女ちゃんはまだちゃんとこの剣を扱えていないでしょう。少年魔法使いくんもこの杖は大人用です。子供用の杖を渡しておいたはずですが?」スッ

助手「気がつかなかった……いつの間に二人の持ち物を…・・」


悪ガキ「あ、やっぱり姉ちゃんでも見えねぇんだ」

助手「でもって?」

魔族少女「先生が『あれ』をやると自分の持っているものが入れ替わったりなくなってたりするんです。今みたいに」

助手「それ本当?」

悪ガキ「大人ならわかるかなーって思ったんだけどどうも違うみたいだな。なんかの魔法の一種かな? 助手の姉ちゃん、なんか知らない?」

助手「い、いや。あんな魔法なんて聞いたことないわ……」

悪ガキ「だよなー」

助手(一体なにが起きたというの?)


侍少女「か、返すでござるよー!」

少年魔法使い「また見破れなかった…」ギリッ

院長「ではいつものように、喧嘩をしたらどうするんでしたっけ?」

侍少女「くぅ………ごめんなさい」ペコリ

少年魔法使い「……こっちも悪かった……」

院長「よろしい。では二人共、こっちへ来なさい」

少年魔法使い「い、嫌だ……」ガタガタ

侍少女「そ、それだけは……」ガタガタ

院長「しょうがないですね。では、私の方から行くとしましょう」シュン

助手「今度は消えた!?」

悪ガキ「あちゃー、あれ痛いんだよなー」

魔族少女「回復魔法の準備しておこう……」ポワァ

侍少女「に、逃げるでござるよ!!」ダッ

少年魔法使い「なにもしないでやられてたまるか!!」ダッ


院長「ダメです。逃がしません」シュタッ

院長「二人共オシオキですよ☆」ゴゴゴゴゴゴ!!!

侍少女「い、いつの間に背後に……」ガタガタ

少年魔法使い「先生、勘弁してください……それは僕が得た知識に多大なダメージを……」ガタガタ

侍少女「も、もう喧嘩なんて金輪際しないでござる!! だから、だから許してください!!」ドゲザッ

院長「ダメです☆」ニッコリ


ゴチィィィィン! ゴチィィィィン!




助手「げ、げんこつって……」

少年魔法使い(チーン)プスプス

侍少女(チーン)プスプス

院長「さて、みなさん。なにをするかはわかりませんが、危ないことはしないように! わかりましたね?」

悪ガキ「わ、わかったぜ……」ガタガタガタ

魔族少女「絶対にしません……」ガタガタガタ

悪ガキ「……じゃあ、とりあえずお前あいつ連れて行け。俺は少年魔法使いを連れて行く」

魔族少女「わかったよ……えっと立てる?」

侍少女「う、うーん……昼なのに星が見えるでござるよー」エヘヘ

悪ガキ「そ、それじゃあ行ってきます……」

魔族少女「行ってきます……」


院長「暗くなる前に帰ってくるんですよー」


院長「……すみません、せっかく遠いところからわざわざ来ていただいたのに……」

助手「いえ、でも秘密基地なんて子供ぽくて可愛いじゃないですか」

院長「ここで孤児院を開いてからずっと作り続けているみたいでして、もう私にとっては秘密でもなんでもないんけどね。あの子達が必死になって隠そうとしているので私も知らない振りをしているんですよ」

助手「アハハ……」

院長「助手さんにはお見苦しいところをお見せしてしまいました」

助手(この人を敵に回しちゃダメだわ……)

院長「なにかお茶を出しましょう。ちょっと待っていてください」トテトテ

助手「あ、お構いなく」

助手(それにしても、あの動き……只者じゃない。魔法使いからはなにも聞かされていなかったけど……この人何者?)

とりあえず今日の投下は以上です

明日も同じ時間に投下できればと思っています

今日もありがとうございました!

面白いですね(^^)

>>110 >>>111

いつもコメントありがとうございます!

面白いと言っていただけるだけでどこまでもがんばれる気がします!

こんばんは、今日も投下していきたいと思います

よろしくお願いします!





リンゴーン!


院長「あら? 八百屋さんかしら、今日は随分と早いけど……」

助手「あ、私が出ますよ」

院長「そんな、お客様に……」

助手「いいですよ。それくらい」

院長「そうですか? すいません。お願いします」



リンゴーン!!


助手「はいはい、今行きますよっと」タッタッタ

助手「はーい」ガチャ

部下「これはこれはどうもはじめまして。私、商人貴族様の使いの者で部下と申します。どうぞお見知りおきを……」ペコリ

助手「は、はぁ……」



助手(商人貴族? それって確か……)

助手「それで、その商人貴族様の使いの人が孤児院になんの御用ですか? まさか寄付活動?」

部下「まぁ慈善事業の方も近いうちに着手する予定にはなっておりますが、今日は別件で……」

院長「助手さん? どうかしました? なにかありましたか?」トテトテ

助手「いや、なんか商人貴族様の使いって……」

院長「商人貴族様というと……」

部下「ああ、これは院長様。ごきげんよう」ニコッ

院長「手紙の件でしたら何度もお断りしたはずです。お引取りください」

助手「手紙?」

院長「はい。1ヶ月ほど前からここを買い取りたいと……ですが私も子供たちもここを気に入っていますし、離れる気は無いんです。ですからお断りさせていただいたんですが……」

部下「院長さん。そんなことを仰らないでください。商人貴族様はこの辺境である南の海岸部を開拓し、王国一のリゾート施設にするおつもりなんです。」

助手「そのリゾート施設開発とここがどう関係があるっていうの?」

部下「あなたには関係ないことではありませんか?」

院長「いえ、私もそれを聞こうと思っていました。話していただけますか?」


部下「……いいでしょう。この孤児院が建っているこの場所は実に見晴らしがいい。商人貴族様はこの岬をリゾート地の目玉にしようと考えているのです。ですからここの場所をお譲りして欲しいとわざわざお願いに来ているんですよ」

院長「…………」

部下「それに子供達のことを考えるなら王都に移った方がいいのでは?」

院長「どういう意味ですか?」

部下「王都の方が人目に触れる機会が増えるではありませんか!」

助手「それがなんだっていうんです?」

部下「よく考えてみてください! 王都には子供ができなくて後継に困っている貴族というのが随分といるんです。その貴族達の多くは別の貴族の息子を養子にしたり、孤児院から引き取ったりしています」

部下「王都に移ればそういったチャンスも自ずと転がってくるのです。それにもし貴族の誰かがここの子供たちを養子にしたいというような話が出れば院長様、あなたにも少なからず謝礼金が出ると思いますよ?」ニヤリ

院長「……あの子達を金で売れと言うんですか?」


部下「そんなことは断じて言っておりません。ただそういう可能性があると言ったまでです。ですが子供たちのことを本当に考えるのならば! そういったチャンスのある場所で生活した方がいいのではないかと言っているんです」

院長「………」

部下「どうせ大人になれば皆都会である王都に行きたいと言い出します。早いか遅いかの違いでしょう?こんな何もないところで暮らしてなんのメリットがあるというのですか?」

部下「あなたが首を縦に一度振れば我々もリゾートの開発に着手でき、子供たちも都会である王都でのびのびと生活をし、上手くいけば貴族の家へ養子に行ける。いいことだらけではないですか。なにを躊躇っているのです?」

院長「別にためらってなんて……」

部下「……わかりました。責任感の強い院長様は子供たちが本当にそれで幸せになれるかどうかをご心配なさっているのでしょう。でしたら『我々が子供たちを受け入れてもいい』」

院長「!?」

助手「ちょ、ちょっと!?」

部下「商人貴族様のコネクションを使えば子供たちの受け入れ先などたくさんあります。大貴族の養子ですか? 魔術学院の特別受講生? なんでしたら王族の仲間入りっていうのもどうです?」

部下「商人貴族様はそれだけのことをしてもいいと言っております。院長様、ご決断を」

院長「………」

部下「なにを迷っているのです? 見たところあなたはまだお若い。こんな辺鄙なところで時間を浪費したりせず、全てを投げ出して自由に生きればいいじゃないですか。我々がちゃんとバックアップしますから……」

部下「どうです? 悪い話ではないと思いますが?」

院長「……」


助手「……ちょっと話が出来過ぎなような気がするのだけど」

部下「部外者は黙っていただきたい! 私は今院長様とお話をしているのです!」

助手「くっ……」

部下「どうですか? ここを売っていただけませんか?」

院長「確かに魅力的なお話ですね、部下さん」

助手「院長さん!?」

部下「そうでしょう、そうでしょう!」

院長「ここを売り払って王都に行けば私がさせてあげられない生活を送らせてあげることができるかもしれない。学びたいことを最高の環境で学び、美味しい食事に遊び道具も思いのまま……」

部下「そう、子供達の輝かしい未来のため、私共に是非……」

院長「でもあの子達はそんなこと望まないでしょう」

部下「なんですって?」

院長「だって、もうすぐあの子達の秘密基地が完成するんですもの」フフッ


部下「秘密基地ぃ?」

院長「ええ、毎日必死になって作っているみたいですよ? 毎日泥だらけになって帰ってきて……それももうすぐ完成間近だそうです。あの子達は必死に隠しているみたいですけどね。それを私の都合で王都に移動なんてしちゃったらかわいそうじゃないですか」

部下「……つまり、どういうことですか?」ワナワナ

院長「ここが私たちの家です。それが答えですよ。部下さん」ニッコリ

部下「商人貴族様がここまでしてあげてもいいと言っているのにですか?」

院長「ええ。職業柄多くの人を見てきましたがあなた方はどうも信用できません」

部下「なにを根拠に……」

院長「目です」

部下「目?」


院長「あなたは嘘をついている目をしています。そんな目をしている人を私は信用しません」

部下「そんな直感のようなものを信じると?」

院長「ええ、あなたとは『くぐってきた修羅場の数が違うので』」ニコッ

部下「………どうなっても知りませんよ……!!」

院長「なにがあってもあの子達は私が守ります。お引取りください」

部下「………がっかりですよ、院長さん。私はあなたがもっと高貴で聡明なお方だと思っていました」

院長「ええ、育ちが悪くて申し訳ありません」ウフフ

部下「……近いうちにあなたは自分の過ちに気づくでしょう」

院長「その時は馬鹿な女と笑ってください」フフッ

部下「………失礼します。ここを手放す気ができたらいつでも声をかけてください。すぐに対応させていただきます」

院長「すみません、お茶もお出しできませんでして……」

部下「いえ、結構。私も次の仕事がありますので……」

部下「それではお二人共、ごきげんよう。またの機会に……」



ザッザッザッザ












院長「……これでよかったんですよね?」

助手「もちろんです。あんなのを信用しちゃダメ。相手は商人貴族でしょ? あいつらは平気で人を騙すような男なんだから」

院長「……そうですよね、それに……」

助手「どうかしました?」

院長「……いえ、あの子達のことを考えるならこれが最善の選択だと信じることにします」

助手「商人貴族が嫌がらせしてきたらすぐに私たちに言ってください。こっちには年がら年中暇な勇者にうちのちびっ子魔法使いがいます。それに王国騎士団の団長も」フフッ

院長「それは頼もしいですね」

助手「でしょう?」ニコッ

といった感じで今日の投下は以上です


明日も同じ時間に投下したいと思います

今日もありがとうございました!

やっと追いついた
これが終わるまでは[ピーーー]ねぇなぁ

ところで山賊Aもとい紅騎士の回復魔法と回復魔法の希少性ってどうなったんですかね…

こんばんは、少し早いですが今日も投下していきたいと思います!

>>128 ……紅騎士にはまだまだやってもらわなきゃいけないことがたくさんあるので……今後に期待してもらえればいいかな……と

回復魔法が使えるのは現在紅騎士、研究員E(医療魔法使い)、魔族少女です。ただ、今後増えるとしても2人までの予定……

相変わらず設定ガバガバで申し訳ないです……

それでは今日も始めていきます。よろしくお願いします!!

――王都――


黒服達「「「………」」」ザッザッ

「………むぅ!! むぅぅぅ!!」ジタバタジタバタ

メイド「……ご苦労様です。そちらで結構ですよ」

黒服達「「「………!!!」」」ヒュン

「ぐえ!!」ベシャ

メイド「あらあら、女性はもう少し優しく扱わなければダメですよ?」

黒服達「「「………」」」ザッザッザッザッ

メイド「……どうもあの人たちは苦手ですわ」ハァ

「むぅ!!むぅむぅ!!」ジタバタ

メイド「おっと、私としたことがすっかり忘れていましたわ!」シュルシュルシュル

「ぶはぁ!!」

メイド「ご機嫌いかがですか?」


村娘「ご機嫌もへったくれもないですよ! なんなんですか? ここどこです!?」

メイド「手荒な真似をしてしまい大変申し訳ありません。ですがここへ来るまでの道のりは機密情報ですのでお見せすることができないのです。ですのであのような移動方法をとらせていただきました」

村娘「移動方法って……ほぼ拉致じゃないですか!?」

メイド「拉致だなんてそんな………的確すぎて笑えますわ」ウフフ

村娘「馬鹿にしてんですかあなたは……」

メイド「こうやってちゃんと挨拶をするのは初めてですね。私、宮廷にて主である仮面王女様の世話係兼護衛役を勤めておりますメイドと申します。お見知りおきを」ペコリ

村娘「ああ、これはご親切にどうも……西の村出身の村娘です」ペコリ


メイド「英霊祭の時はどうも……あなたも付き添ってくれたそうで……ろくにお礼もできずに申し訳ありませんでした」

村娘「い、いえ……メイドさんも元気そうでなによりです」

メイド「あれくらいの傷、姫様に仕えておりましたら日常茶飯事ですわ。怪我を治すのに一週間もいりません」

村娘「え!? 全身骨折だったんですよね!?」

メイド「はい♪ 他にも内臓損傷など色々……ですが今となってはほらこの通り」クルン

村娘「げ、元気そうですね……」

メイド「メイドという生き物は主を守るためでしたらこれぐらい……へっちゃらですわ!」

村娘「と、とにかく良かったです、元気そうで……」

メイド「ありがとうございます。………とまぁ、挨拶はこれくらいにしておいて早速本題に入るとしましょうか」

村娘「えっと、本題、ですか?」

メイド「そう、本題です」チャキッ

村娘「え?」


ヒュンヒュンヒュン!!!

村娘「ひぃ!!」カツカツカツ!!

メイド「あなたが知ってしまったことは国にとって最重要機密です。仮面王女様の正体ともなればその情報は国を揺るがしかねません。そのことに関しては十分理解していますか?」

村娘「で、でも私は知りたくて知ったわけじゃ……向こうが勝手に……」

メイド「重要なのは『知ってしまった』という事実だけですわ?」

村娘「……その前に一つ確認しておきたいんですけど」ダラダラ

メイド「なんでしょう?」

村娘「……その手に持ったナイフでどうするおつもりですか?」

メイド「あら? どうして欲しいですか?」ニコッ

村娘「で、できれば穏便な方向で……」

メイド「ではあなたに聞きましょう……『我が主のためにその身を捧げてくれますか?』」ニコッ

村娘「はい?」


メイド「ああ、わかりやすくした方がいいですね。今のあなたが辿る道は二つに一つだということです」

村娘「そ、そうなんですか?」

メイド「はい。一つは口封じのために軽く行方不明になっていただく道」

村娘「その軽く行方不明っていうのは……?」

メイド「安心してください。『死体は絶対見つからない所で処分しますので』」フフッ

村娘「あの、それは単純にここで死ぬって解釈で……?」

メイド「死ぬというより殺される、でしょうか? 主に私に」ニコニコ

村娘「な、なにをそんなにこやかに!? い、嫌ですよ! 私まだ死にたくないです!」

メイド「でしたらもう一つ選択肢ということで」

村娘「はい! ぜひお願いします!!」ガバッ

メイド「契約、といいうことでよろしいですか?」

村娘「よろしいです! よろしくお願いします!!」ブンブン


メイド「よろしい。ではこれを……」スッ



村娘「ああ、ありがとうございます……えっと、この服はなんですか?」

メイド「これはあなたがこれから一生身につけていく服です。大切にしなさい」

村娘「……あの、ちょっと話が見えないんですけど……」

メイド「ではそんなあなたのために私から一つ、重要なことを教えておきましょう」

村娘「な、なんですか?」

メイド「覚えておきなさい。メイドの基本は『奉仕』の精神です」ニコッ

村娘「は、はぁ……」

メイド「それさえ心に刻み込んでいればそれだけであなたは……」




ガチャ



ブルー「ほら、やっぱりここにいたでしょマスター!!」

蒼騎士「メイド、お前はまだ経過観測ちゅうだろ? 無理しないで大人しく自分の部屋で休んでろよ。姫様もいないことだしよ」

メイド「あら、メイドは働かなくなった途端に死ぬ生き物なんですの。蒼騎士さんは私に死ねと言うんですか?」

村娘「あああああ!!! あんたは!!」

蒼騎士「ん? お前は……」

村娘「あの時の元山賊!!」

蒼騎士「英霊祭の時の村娘!」

ブルー「やめて! マスターと一昔前のラブコメみたいな出会い方しないで!!」


蒼騎士「なんだってお前がここに?」

村娘「それは仮面の姫様の正体を……」

メイド「あー! あー!! コホン。蒼騎士さん。ご紹介しますわ。今日からここでメイドとして働くことになりました、村娘さんです」

村娘「え? ちょ、ちょっとどういうことですか?」

蒼騎士「こいつが!? 雇うのか?」

メイド「はい。姫様のご判断ですので」

村娘「えっと、メイドさん? 私、そんな話全然聞いてないんですけど……? メイド? 私が?」

メイド「ええ、これから言おうとしたんですもの」ウフフ

村娘「困りますよ! いきなり!!」

メイド「あら、でも姫様からは王都で働きたいという旨を伺ってますが?」

村娘「それは……確かに、そうですけど……」モニョモニョ

メイド「だったらいいじゃありませんか! それにあなたは姫様に逆らうことはできないはずです」キラン


蒼騎士「村娘、お前もか……」ハァ

村娘「あんたも!?」

蒼騎士「ああ、俺たちも拉致された」ハハッ

村娘「じゃ、じゃああんたたちも姫様の正体が役所の……」

ヒュンヒュンヒュン!!!

メイド「村娘さん……あんまりお口が軽いようですと、軽く行方不明になっていただくしかなくなりますけど?」

村娘「モウシワケアリマセンデシタ……」ガタガタガタ

メイド「というわけで改めて今日からここで働いてもらいます村娘さんです」

村娘「ああ、もう働くことは決定なんだ……」ガタガタ

メイド「姫様のおっしゃることは絶対なので☆」

村娘「なんでこんなことに……」


蒼騎士「諦めろ。あいつらの言うことにいちいち逆らってたら体がもたねぇぞ」

村娘「………なんで私、こんなところにいるんですかぁ……?なんでこんなことになってるんですかぁ……?」ヨヨヨヨヨ

蒼騎士「俺に聞くなよ……」

ブルー「とりあえずあんたはマスターから半径1メートルは離れること! 絶対だかんね!!」

村娘「……私っていつも大変なことに巻き込まれちゃうんだろう……」ズーン

メイド「あなたが余計なことするからじゃありませんの?」

村娘「うぅぅ………」


蒼騎士「天性の巻き込まれ体質だな。そのうち王都を災厄から守るために一人で魔王軍の大群と戦ったりするんじゃね?」

ブルー「ああ、わかる。それで唯一生き残った村娘が50年後、孫たちにそのことを語るんだね!」

蒼騎士「『おばあちゃん、勇者様達の話、してー』とかか?」

メイド「『そうねぇ、あれは私がまだ何も知らない村娘だった時のことよ……』って感じですの?」

ブルー「そうそう、そんな感じだよメイドさん!」

村娘「やめて! 私のこれからを不吉な感じにしないでぇぇぇ!!!」



といったところで今日の投下は以上です


色々と動き出してきたかに見えてまったく動いてない……そんな感じです


明日も同じ時間くらいに投下できたらと思います!


いつもコメントありがとうございます! 明日もよろしくお願いします

それでは今日もありがとうございました

こんばんは、少し早いですが今日も投下していきたいと思います

よろしくお願いします!


――秘密基地――



悪ガキ「先生には秘密だって言っただろ? 侍少女」

侍少女「面目無いでござるよ…」

悪ガキ「先生を思いっきり驚かせたいからここまで頑張ったんじゃないか」

少年魔法使い「まぁ、驚かすもなにも、先生のことだからもう知ってるだろうけどな」

悪ガキ「……マジ?」

少年魔法使い「だって先生だぞ?」

悪ガキ「すごい説得力だ……」

魔族少女「とにかく、もうちょっとで完成じゃない。早く完成させて、先生に見せようよ!」

悪ガキ「そうだな、もうひと踏ん張りだし、さっさとやっちゃうか!!」

侍少女「おー! でござる!」

少年魔法使い「そんなことより僕は勉強がしたいんだがな……」

悪ガキ「なんでそんなこと今言うかな!?」

魔族少女「まぁまぁ、少年魔法使い君も一緒にやろう?」

少年魔法使い「……しょうがないな、どのみち馬鹿共に自由にやらせたらせっかくの苦労が数秒で崩れるのが目に見えてるからな」フッ

悪ガキ「でかいたんこぶしたまま言ったってカッコ悪いだけだぞ」

少年魔法使い「う、うるさいな! 元はといえばそこの『ござる女』のせいだろ!」

侍少女「まだ言うでござるか!!」

魔族少女「もう! すぐにこれなんだから!!」



ガサゴソ ザッザッザッ



悪ガキ「……それにしても伝説の勇者が来るって言うからどんな奴かと思ったけど、期待外れだったなー」セッセッ

侍少女「まったくもってその通りでござる」

少年魔法使い「あれは大人の皮を被った子供だな」ハァ

魔族少女「そんなこと言っちゃダメだよ。わざわざ遠い所から来てくれたんだし……」

悪ガキ「憧れてたんだけどなー、勇者。まさかあんなダメな大人だったなんて……」ズーン

侍少女「あれこそが人間のクズと言うやつでござろう」

悪ガキ「もう、勇者目指すのやめようかな……」ズズーン

少年魔法使い「こうして子供の夢は儚く消えていくんだな」

魔族少女「だ、ダメだよ! そんな簡単に諦めちゃ!」


少年魔法使い「言ってやるな、あれを見たら誰だってそう思う」

魔族少女「で、でも! 悪ガキ君言ってたじゃない! 勇者は悪を打ち倒すために戦う正義のヒーローだって! だから俺は勇者になるんだって! あれは嘘だったの?」

悪ガキ「だけどよ……」

侍少女「肝心の勇者が『あれ』でござるよ?」

魔族少女「そんなの私たちを油断させるための仮の姿なんだよ! あれは私たちを試してるんだよ。だからわざとあんな態度をとってたんだって! う、うん私はそう思うな!」

悪ガキ「そうなのか?」

魔族少女「そうに決まってるよ! だって、勇者様なんだよ? 皆が憧れるすごい人なんだよ?」


魔族少女「みんなのために悪い魔王様を倒して魔族から人間を守った英雄じゃない!」

魔族少女「強くてかっこよくて、誰からにも愛されるヒーローで………世界平和のために頑張ってて……それでそれで……」ポロッ

魔族少女「そんな勇者様のことが……みんな大好きで……」グスッ

魔族少女「お父さんとお母さんも……」グスッ

悪ガキ「お、おい!?」

侍少女「大丈夫でござるか!?」

少年魔法使い「あー、二人が魔族少女を泣かしたー」


魔族少女「……ごめんね、ちょっと思い出しちゃって……」

悪ガキ「い、いや俺の方こそごめん……」

侍少女「無神経だったでござるな、この話は……」

少年魔法使い「まったく、お前たち少しは魔族少女のことも考えろよ。勇者になるってことはそういうことなんだぞ?」

悪ガキ「お、俺はそんなことしねぇって! 俺が倒すのは本当に悪いやつだけだ! な!」

侍少女「そうでござるよ! 拙者の剣は悪を滅するためにあるのでござる!」シャキン

少年魔法使い「まだ全然使いこなせてないくせに」

侍少女「う、うるさいでござる……」

魔族少女「そんな……魔族の私が悪いんだから、私のことは気にしないで……」グスッ

悪ガキ「お前がどうして悪いんだよ! お前、すげえいい奴じゃないか!」

魔族少女「でもでも、私たち魔族が暴れたからみんなのお父さんやお母さんが……」

悪ガキ「……魔族少女、それ以上言ったら流石の俺も怒るぞ?」

魔族少女「え?」


悪ガキ「父ちゃんや母ちゃんがいないのはお前も同じだろ? 俺たちとなんの違いがあるってんだよ? 種族が違うから悪いのか? そんなの、絶対間違ってる!!」

魔族少女「悪ガキ君……」

侍少女「魔族少女はとても優しい子でござる。それを悪だという者は拙者が断じて許さないでござる!!」

悪ガキ「約束する! 俺は人間だけじゃなくて、魔族にとっての勇者にもなるって!」

少年魔法使い「お前は平気で無茶苦茶言うな……」ハァ

魔族少女「……本当?」

悪ガキ「ああ、本当だ。俺は正義のために戦う勇者になるんだ! お前に二度とそんなこと言わせない!」

侍少女「拙者もこの剣を正義のために使うでござるよ!」

悪ガキ「だから泣くな、魔族少女。お前が笑って暮らせる世界を、俺が作るから!」


侍少女「拙者も! そのためにこの力を使うでござる!」

悪ガキ「お前も手伝うんだからな、少年魔法使い!」

少年魔法使い「秘密基地を作るのとは訳が違うぞ? 悪ガキ」

悪ガキ「大丈夫、俺たち4人ならなんだってできるさ!」

少年魔法使い「……お前はいつもとんでもない無茶を言う。だが、そういうのは嫌いじゃない……しょうがないから付き合ってやるよ」

悪ガキ「ありがとな!」ニカッ

侍少女「素直じゃないでござるな……」ヤレヤレ

少年魔法使い「黙れ、脳筋女」

侍少女「なっ!」

悪ガキ「だからもう泣くなよ! 魔族少女! 家族にはなれないかもしれないけど俺たちはずっと一緒だ!」

魔族少女「うん、ありがとう。3人とも!」

悪ガキ「おう! あんな勇者なんてすぐ追い越して俺がみんな笑って暮らせる世界にしてやるよ!」

魔族少女「うん! 信じてるからね!」




少年魔法使い「……む?」

侍少女「どうしたでござる?」

少年魔法使い「なにか近くにいる……」

悪ガキ「敵襲か!?」

少年魔法使い「敵って誰だよ……」

侍少女「森から狼でも出てきたのでござろうか……」

魔族少女「狼!?」

悪ガキ「よっしゃ、俺がぶっ倒して今日は狼鍋にしてやる!!」

少年魔法使い「なにを言ってるんだお前らは……来るぞ」

魔族少女「……」フルフル



ガサガサッ


悪ガキ「来い! 狼!!」チャキッ


ガサガサ!! バッ!!



幼女「……んう?」マヨッタ……


ズコッ


悪ガキ「なんだなんだ?」イテテ

幼女「むい!」ヨッ

といったところで今日の投下は以上です


今回も話の折り返し地点で別スレに移行、その際に番外編を投下する予定です

明日も同じ時間帯に投下できればと思います

今日もお付き合いくださり、ありがとうございました!

少年魔法使い「なにを言ってるんだお前らは……来るぞ」→×

少年魔法使い「なにを言ってるんだお前は……来るぞ」→○

でした。すみません


なんか改めて見返すとありえない誤字が多々見られるような……

なんとなくで楽しんでください……

幼女「カッー!」ドッゴーン!!

悪ガキ共一同謎の幼女から放たれた砲撃により散りひとつ残らず死亡…

>>162

それもいい(笑)続きはよ見たい(≧ω≦)

長編にしてもらいたいm(_ _)m小説家センスバッチシですね(o~-')b☆

幼女ちゃん、メイドさん、紅、蒼騎士、受付、勇者、剣士、魔法使い等の個別編見たい。

うわぁ……いつの間にこんなにコメントが……

嬉しすぎてPCの前で泣きそうです!!


>>162 ……そんな話になってしまう……かも(笑)

>>165 いつかやってみたいですね、メイドとか面白そうかも

今回の番外編は多分『誰やねん!』というキャラが主役になる予定です。本当に書き始めるまで自分でも『誰やねん!』って感じでしたwww

それでは今日も投下していきたいと思います!
今日も短い時間ではありますがお付き合いください!

始める前に前回の修正です

>>153 侍少女「拙者も! そのためにこの力を使うでござる!」→×

侍少女「拙者も! もちろん協力するでござる!!」→○

でした、申し訳ありません


悪ガキ「お前は……」

侍少女「確か……勇者殿と一緒にいた女の子でござる?」

魔族少女「わぁ、綺麗な髪……」

少年魔法使い「迷子か?」

幼女「…………」キョロキョロ

悪ガキ「な、なんだよ? ここは俺たちの秘密基地だぞ! 関係ない奴は入ってくんなよ!!」

魔族少女「こら! こんな小さい子にそんなこと言ったらダメだよ?」

悪ガキ「でもさ……」

魔族少女「ごめんね、確か……幼女ちゃんだったよね?」

幼女「…………」コクコク

魔族少女「私は魔族少女。よろしくね?」

幼女「よろし……く!」グッ

魔族少女「……かわいい……」

悪ガキ「お、おい……?」


侍少女「拙者は侍少女と申す。幼女殿はなぜここに?」

幼女「声が……した!」

少年魔法使い「声?」

悪ガキ「誰のだよ?」

幼女「知らない!」ドヤッ

悪ガキ「…………なぁ、こいつやべぇんじゃねーの?」ヒソッ

魔族少女「そんなこと言わないの!」スパー

悪ガキ「痛ぇ!」

魔族少女「幼女ちゃん、その声ってどこから聞こえてきたのかな?」

幼女「こっち!」バコッ

悪ガキ「あー!! せっかく苦労してみんなで作った秘密基地が!!」

魔族少女「壁の板を外しただけでしょ!」

悪ガキ「だけって……そういう問題か!?」

幼女「♪♪♪」バコッ


バキバキ!!


悪ガキ「や、やめろよ!!」


魔族少女「また作ればいいじゃない!」

悪ガキ「なんでお前はこいつの肩を持つんだ!?」

魔族少女「かわいいは正義なの!」

幼女「……!!」ダッ

悪ガキ「お、おい!!」

魔族少女「追いかけるよ!」

侍少女「!! 待つでござるよ! この先は確か森でござる」

少年魔法使い「ああ、獣が出て危ないから入るなって先生が言ってたな」

悪ガキ「だったら止めねぇと! おい! そっから先は危ないから帰ってこい!」


幼女「…………」ピタッ

少年魔法使い「その森には凶暴な獣が出る。大事になる前にこっちへ来るんだ」

幼女「だいじょう……ぶ!」

悪ガキ「なんでだよ!」

幼女「なんとな……く?」

悪ガキ「理由になってねぇ!! いいから帰ってこいよ! 俺たちが先生に怒られるだろ!」

幼女「…………」スタスタスタ

侍少女「どうやら素直に言うことを聞いてくれたようでござるな」

悪ガキ「まったく……」

幼女「……」ピタッ ジー

悪ガキ「な、なんだよ?」





幼女「……怖いの?」クスクス


悪ガキ「なっ!!」

幼女「行ってき……ます!!」ダッ

悪ガキ「…………馬鹿にしやがって……」プルプル

幼女「バイ…バイ!!」フリフリ

悪ガキ「上等だこらぁぁあ!!」ダッ

幼女「♪♪♪」




少年魔法使い「あーあ、あの馬鹿……」ハァ

侍少女「こうしてはおれないでござる! 我らも行くでござるよ!!」

魔族少女「ちょっと……待ってよー!!」



――南の孤児院付近 海岸――


地上げ屋「ここか……」

舎弟「やっと着きましたね、兄貴!」

地上げ屋「まさかここまで時間がかかるとは思わなかったがな」

舎弟「王都から馬車で3日ってどんだけ遠いんだって話ですよ! 俺、座りすぎでケツが……」

地上げ屋「俺もケツが割れるかと思ったぜ……」

舎弟「兄貴、ケツは元々割れてます!」

地上げ屋「そうだな!」


アッハッハッハッハ!!!


部下「馬鹿なこと言ってないでさっさと仕事に取りかかってください。商人貴族様は一刻も早くここの土地が欲しいと仰っておりますので」


地上げ屋「おっと先生、交渉の方はどうだった?」

部下「ダメでした。いくら金を積んでも首を縦に振ろうとしない。強情ですよ」

地上げ屋「そりゃよっぽど昨日酷い寝方したんでしょうな」

舎弟「なんでだい? 兄貴?」

地上げ屋「寝違えて首を曲げられない」

舎弟「なるほど~って馬鹿野郎!」バシッ

地上げ屋「お、今日もいいツッコミしてんじゃねぇか!」

舎弟「兄貴のボケも今日は一段とキレがありますね!」

地上げ屋「それほどでも……あるかな!」

舎弟「あるんかい!」バシッ


アッハッハッハッハ!!


部下「なんですか!? この茶番は!?」


地上げ屋「気にすんな。『これ』は俺たちの仕事を始める前の儀式みてぇなもんだ。そこら辺は目を瞑ってくれや」カカカ

舎弟「そうっすよ!」

部下「…………ターゲットはそこの岬の上の孤児院です」

地上げ屋「商人貴族の旦那はここら一帯の土地を買い占める予定だったのにこの孤児院だけが土地の売り渡しを拒否したってことで合ってるよな?」

部下「ええ、金額を出来うる限り釣り上げたにも関わらずです。ですが我々もこの件に関してはどんな手を使ってでも土地を譲ってもらわなければなりません」

部下「ここの土地を開拓して国一番のリゾート施設にしたいと商人貴族様は考えています。あそこの岬は美しい景色が臨める最高の場所です。我々は是が非でもあの場所をこのリゾートの目玉にしたい」

地上げ屋「で、金で解決できねぇから俺たちの出番ということかい?」

部下「その通りですよ。あなた方は国一番の地上げ屋と評判です。我々も何度もお世話になりました。今回もあなた方のお力を是非お貸ししていただきたい」


舎弟「任せてくださいよ! ね、兄貴!!」

地上げ屋「いつも通り強引な方法になっちまいますけど構いませんよねぇ? 先生」

部下「ええ。できれば穏便に済ませたかったのですが、強情なあちらが悪いのですから」フフッ

地上げ屋「任してくださいよ。なに、ちょっと痛めつけてやれば素直に言う通りにするってもんだろう」ヘッヘッヘ

舎弟「流石兄貴、今日も輝いてるっすね!」

地上げ屋「おう! もし輝かなくなったらこれで磨いてくれや」スッ

舎弟「兄貴、これ紙やすりじゃないっすかー!」


アッハッハッハッハ


部下「早く仕事に取りかかってもらっていいですか!?」

地上げ屋「まぁ、そんな焦るなって! こういうのは準備が肝心なんだよ」


舎弟「……兄貴。あっちの方、随分と騒がしくないですか?」キィィィン

地上げ屋「おおう? なんだあちらさんもうちらに対抗して兵隊でも呼んできたってのかい? おもしれぇじゃねぇか、俺様が裏社会の厳しさを教えてやるか!」ポキポキ

舎弟「兄貴、かっけえっす!!」

地上げ屋「それほどでもねえよ」ニタニタ

部下(心配になってきた……)

地上げ屋「安心しな、先生。俺たちに任せておけば大丈夫だ。先生はドンッと泥舟に乗ったつもりでどっしり構えててくれよ」

舎弟「泥舟じゃダメだろ!」バシッ

地上げ屋「……」ドヤッ

舎弟「……」ドヤッ


部下(……私にどうしろと……?)




―――――


勇者「雷砲!」ガウン

剣士「甘い!」ヒラッ

剣士「はぁぁぁぁあああ!!」ザンッ

勇者「おっと!!」ヒラッ

剣士「魔法は使えなくなったのではなかったのか! 勇者!!」

勇者「あの事件が終わってからちょっとな!!」ダッ

剣士(断片的に僧侶のことを思い出した影響か……だが!!)

剣士「あの頃のお前に比べて随分とお粗末だな!」


ガキィィィィン!!


勇者「うるせぇ、てめぇを倒すには十分過ぎるくらいだろ!!」

剣士「ならばやってみるがいい! 勇者!!」


勇者「さっさとくたばれよこの解説役!」

剣士「お前はいつだってそうだ! 勇者の矜持はどこに置いてきた!」ザッ

勇者「そんなの! 燃えるゴミの日に捨てたわ!! 雷魔法!!」バリバリ

剣士「お前は勇者として、皆の手本にならなければならないんだ! しばらくは仕方ないとも思ったが今日という今日は許せん!!」バシュン

勇者「俺はいつだって自由でいなきゃいけないんだよ! 国を救ったっていうのになんでその後も働かなきゃいけねぇんだ!!」ガキィィン

剣士「いい加減大人になれ! 勇者! お前は幼女の保護者だろう!? 今のお前を幼女が見て誇らしいと思うのか!?」

勇者「…………」ザッ


剣士「どうした! なんとか言ったらどうだ!」

勇者「幼女のことは関係ねぇだろぉぉがぁぁぁぁあああ!!!」

剣士「!!!」ビリビリ

勇者「極大雷魔法!!」バチバチバチ

剣士「来るか!?」

勇者「これで終わりだぜ、剣士。今さら泣いて謝ったって許してやらねぇからな!!」

剣士「冗談言うな。貴様に頭を下げるくらいなら今ここで舌を噛み切る!」

勇者「そうかよ……それじゃあ! くらいやがれぇぇぇぇ!!」

剣士「それに、あんまり私をなめるなよ? 勇者」ニヤッ



剣士「はぁぁぁぁあああ!!!」



ザンッ

勇者「なんだと!?」

剣士「まぁ、こんなものか」フフッ

勇者「雷を……斬りやがった……」

剣士「私が対策をしていないとでも思ったか?」

勇者「おもしれぇ……今日はとことんやろうじゃねぇか……剣士!!」

剣士「望むところ!!」









地上げ屋「おうおうおう!! 兄ちゃん達! お前ら一体誰の土地で喧嘩してると思ってんだ!?」ドーン

舎弟「そうっすよ!!」ドーン

勇者「なんだ……?お前ら?」

地上げ屋「ここら一帯は俺らの依頼主、商人貴族様の土地だ! 勝手になに暴れてんだコラァ!!」

剣士「すまないが後にしてくれないか……今取り込み中だ」

地上げ屋「取り込み中もクソもあるか!! ……お前たちさてはあそこの人間だな? やられる前にやろうって魂胆か!!」

勇者「なんだかよくわかんねぇけど後にしろ」

舎弟「兄貴、こいつら兄貴の怖さ何にもわかってねぇみたいですよ!!」

地上げ屋「そうみたいだな……おうお前ら!! 俺を誰だと思ってやがる!!」ババン


勇者「……」

剣士「……」

地上げ屋「俺が通れば泣く子も笑う! 常に笑顔あふれる地上げ屋稼業。狙った獲物は逃がさねぇ、どんな手を使ってでも必ずご依頼果たしてみせます! 王都に轟くこの悪名! 知らざあ言って聞かせやしょう! 誰が呼んだか『笑う赤鬼………ってぐはぁぁああああああああ!!」ヒューン

舎弟「兄貴ぃぃぃぃぃぃ!!!」

勇者「後にしろって言ってんだろうが!!」

剣士「勇者、一般人だぞ!」

勇者「どう見ても裏社会の人だろ、あれは!」

剣士「人を見た目で判断するな!」

勇者「お前は昔っから固いんだよ!!」






地上げ屋「……あいつら……なんなんだ……」ガクッ

舎弟「兄貴ぃぃぃぃ!!!」


剣士「だ、大丈夫か……?」

ガウン!!

剣士「なっ!!」シュゥゥゥゥ

勇者「おいおい、まだ戦いは終わってないぜ?」バリバリバリ

剣士「だが、一般人が……」

勇者「だから、一般人じゃねぇだろ……それに手加減はしたから大丈夫だろ」バリバリバリ

舎弟「し、心臓が止まっている!? 兄貴、兄貴ぃぃぃぃ!!」

剣士「おい!? 勇者、手加減はどうした! 手加減は!!」

勇者「あれ、おかしいな? すまん! まだちょっとこの力不安定みたいで……」アハハ

剣士「お前……」

勇者「電気ショックなら今すぐにでもできますよ?」ビリビリビリ

剣士「そういう問題ではない!!」

舎弟「兄貴ぃぃぃぃ!!!」


剣士「だ、大丈夫か……?」


ガウン!!


剣士「なっ!!」シュゥゥゥゥ

勇者「おいおい、まだ戦いは終わってないぜ?」バリバリバリ

剣士「だが、一般人が……」

勇者「だから、一般人じゃねぇだろ……それに手加減はしたから大丈夫だろ」バリバリバリ

舎弟「し、心臓が止まっている!? 兄貴、兄貴ぃぃぃぃ!!」

剣士「おい!? 勇者、手加減はどうした! 手加減は!!」

勇者「あれ、おかしいな? すまん! まだちょっとこの力不安定みたいで……」アハハ

剣士「お前……」

勇者「電気ショックなら今すぐにでもできますよ?」ビリビリビリ

剣士「そういう問題ではない!!」

舎弟「兄貴ぃぃぃぃ!!!」


地上げ屋「……あいつらに伝えてくれ……俺は地上げ屋として立派に戦った……てな……」ヘヘッ

舎弟「兄貴!」

勇者「やっぱり生きてんじゃねぇか!!」バリバリバリ

舎弟&地上げ屋「ギャー!!」ビリビリ

剣士「いい加減にしろ!!」

地上げ屋「てめぇ……今日のところはこれぐらいで勘弁しといてやる……覚えてやがれ!!」ダッ

舎弟「あ、兄貴! 待ってくれよう!!」ダッ


剣士「待ちなさい! 君たち!!」

勇者「なんだったんだ? あいつら?」

剣士(地上げ屋とはどういうことだ……?)

といったところで今日の投下は以上です

明日も同じ時間に投下していきたいと思っています


いつもコメントくださって本当にありがとうございます! 本当に嬉しいです!


今日もありがとうございました!!

そういや…火竜どうなったん?

こんばんは、今日も始めていきたいと思います


改めてみると幼女の人気っぷりにビビりますね……

>>196 王立研究所で魔法使いに実験道具(オモチャ)にされていますよwww


それでは今日も投下していきたいと思います
よろしくお願いします!

その前に今日も誤字修正です

>>170 魔族少女「そんなこと言わないの!」スパー →×

魔族少女「そんなこと言わないの!」スパーン

でした


それでは今日も少しの時間だけお付き合いください

―――――





悪ガキ「あわわわわ……」

少年魔法使い「……!!」グッ

侍少女「ござるるるるる………」

魔族少女(チーン)

幼女「むぅー……」ジー




熊「グォォォォォオオオオオ!!!」




悪ガキ「熊だぁぁぁぁぁあああああ!!!!」

侍少女「熊だよ! 食べられちゃうよぉぉぉ!!」アタフタ

少年魔法使い「これは流石にピンチだな……」

悪ガキ「おい、魔族少女しっかりしろ!!」

魔族少女「ああ……私死ぬんだ……」

悪ガキ「大変だ……なんとかしねぇと!」



幼女「…………」スタスタ

熊「グオ?」

悪ガキ「だからなんであいつはさっきからあんな感じなんだ!?」

侍少女「幼女殿! 危ないでござるよ!!」




幼女「むい!」ヨッ

熊「グオ!」ヨッ

幼女「♪♪♪」スタスタスタ

熊「グォォォオオオ♪」バイバイ




ズコッ!



悪ガキ「なんでだよ!!」ガンッ

侍少女「本当に幼女殿は何者でござるか……?」

魔族少女「なにか通じるものがあるのかな?」

少年魔法使い「俺には理解できないな」


悪ガキ「と、とにかく追いかけるぞ!」ダッ




熊「グォォォ……」ズーン



魔族少女「ひっ!!」

侍少女「大丈夫でござる。先ほどのやり取りを見ていたでござろう? 見かけによらず優しい熊なんでござるよ」アッハッハ

魔族少女「そうなのかな……?」ビクビク

悪ガキ「お前は心配性だなー、大丈夫だって!」



熊「グォォォオオオ!!!」



少年魔法使い「悪ガキ、どうやら大丈夫じゃなみたいだ」

悪ガキ「へ?」



熊「グォォォオオオ!!!」ブンッ



悪ガキ「うぉぉ!?」



バキィィ!!


魔族少女「きゃぁぁぁああ!!!」

少年魔法使い「逃げろ!!」


悪ガキ「なんで俺らはダメなんだよぉぉおお!!!」

侍少女「こっちが聞きたいでござるぅぅぅ!!!」

少年魔法使い「ちっ……氷結魔法!!」ピキーン


熊「グォ!?」ツルーン

悪ガキ「ナイス!少年魔法使い!!」

少年魔法使い「そんなことはいいからさっさと逃げるぞ!!」

魔族少女「逃げるってどっちに!?」

悪ガキ「とりあえずあの馬鹿が行った方向で!」

侍少女「こっちでござるな!」



ダダダダダ


―――――




「……様…………様…」

幼女「こっち……だよね?」

「……どうか……を……」

幼女「むい?」ピタッ

「……どうか我らを……」

幼女「湖?」

幼女「……ここから……聞こえてくる……」

「お助けください……」

幼女「君、湖の中に住んでる……の?」パシャパシャ

「……」

幼女「住んでない…の?」

「……」

幼女「むぅ……」ムムムム


ズドドドドド!!!



悪ガキ「うおおおおお!!」ダダダダダッ

侍少女「ぬぉぉぉぉぉ!!」タッタッタ

少年魔法使い「………」ゼェゼェゼェ

魔族少女「ひぃぃぃぃ!!!」タタタタタタ

熊「グォォォォォオオオオオ!!!」ズドドドドド


幼女「むい!?」

悪ガキ「いたぞ! 幼女だ!」

侍少女「見つけたのはいいけどこれからどうするんでござる?」

悪ガキ「…………えーっと」アハハ

少年魔法使い「まさか、なにも考えてないのか?」

悪ガキ「しょ、しょうがねぇだろ! 非常事態だったんだから!!」

少年魔法使い「この馬鹿!!」


魔族少女「見て! あそこ湖じゃない!?」

悪ガキ「突っ込むか!?」

少年魔法使い「熊は泳げるんだぞ!?」

侍少女「マジで!?」

少年魔法使い「お前、もうキャラが定まってないじゃないか!!」

魔族少女「今、それどころじゃないでしょ!?」

悪ガキ「…………お前たち、幼女を連れて遠くへ逃げろ」ザッ

魔族少女「悪ガキ君!?」

侍少女「どうするつもりでござる!?」

悪ガキ「俺がこいつを倒す!!」

少年魔法使い「無茶だ!」

悪ガキ「それしかないだろ! このままじゃどのみち俺たち全滅だ」

魔族少女「で、でも!!」

悪ガキ「安心しろ、俺は勇者になる男だぜ? こんな熊の1匹や2匹、どうってことないって!!」ヘヘッ

幼女「……!!」ピクッ


悪ガキ「おい! 熊! 俺が相手だ!!」


熊「グォ!?」ピタッ


悪ガキ「俺は勇者になる男! 今の勇者なんかよりずっとすごい勇者になる男だ!! そのためにはこんなところで死ぬわけにはいかないんだよ!!」

幼女「……」ピクピク

悪ガキ「俺が本物の勇者ってところをお前に見せてやる!!」チャキッ

魔族少女「悪ガキ君!!」

少年魔法使い「悪ガキ!」

侍少女「悪ガキ殿!!」

悪ガキ「今のうちに逃げるんだ!!」

熊「グォォォォォオオオオオ!!」

悪ガキ「いくぜ!!」




幼女「むぅぅぅぅぅぅぅ!!!」スゥゥゥゥゥ

幼女「めめめめめめめ!!!」シュババババ

悪ガキ「え?」

熊「グォ!?」



ズドドドドド!! ドッカーン!!!



悪ガキ「どわぁぁぁぁ!!!」

少年魔法使い「なんだ!?」

幼女「むふー……」シュゥゥゥゥ


魔族少女「幼女ちゃんがやったの?」

侍少女「魔法、でござるか?」

少年魔法使い「……あんな魔法なんて見たことが無い」

熊「グゥ……」

ズダダダダダ

侍少女「熊が逃げたでござるよ!!」

少年魔法使い「助かったのか?」

悪ガキ「……痛てて…どうなったんだ!?」

魔族少女「悪ガキ君!!」

少年魔法使い「無事か!?」

悪ガキ「ああ、それでなにが起きたんだ?」

魔族少女「幼女ちゃんが助けてくれたみたい」

悪ガキ「幼女が?」

幼女「………」ズンズンズン

悪ガキ「お前が助けてくれたのか?」

幼女「むぅぅぅぅ!!」ズイッ

悪ガキ「な、なんだよ?」

幼女「ユーシャ、お前じゃ……絶対無理!!」


悪ガキ「なぁ!? なんでだよ! あんな人間のクズ、すぐに超えてやるっつーの!!」

幼女「ユーシャを……馬鹿にしない…で!!」プンスカ

悪ガキ「俺よりあんなののどこがいいってんだよ!?」

幼女「お前の5億倍…凄い!!」ヘンッ

悪ガキ「なんだと!!」

魔族少女「まぁまぁ、それぐらいにして。私達は幼女ちゃんに助けてもらったんだよ? ちゃんとお礼しないと」

悪ガキ「なんで俺がこんなガキに……」

幼女「いいってこと……よ!」フンス

悪ガキ「野郎……!!」ピクピク



「やはりあなた様……らに!!」

幼女「……!!」ピクッ

悪ガキ「なんだなんだ?」

少年魔法使い「湖の方から声が……」

侍少女「見るでござる! 湖が!」

魔族少女「光ってる?」

幼女「君が呼んだ…の?」

「……」

悪ガキ「お、おい幼女?」

幼女「……」スタスタ


悪ガキ「なんでお前はそうやって人の話を聞かないの?」ハァ

幼女「……お前、うるさい」プイッ

悪ガキ「なぁ、いい加減殴っていいか?」

侍少女「堪えるでござるよ、相手はまだ幼子でござる」

悪ガキ「でもさ……!!」

魔族少女「本当に危ないかもしれないよ? 幼女ちゃん」

幼女「大丈夫……なのです!」ビシッ

幼女「困ってる人は……助ける!! ……それがユーシャのお仕事……ですから!!」

幼女「行かなければ……ならないのです!!」

ダダダダッ ピョン!! ボチャン!!


悪ガキ「おい!?……くそ! 俺たちも行くぞ!」

侍少女「ええ!?」

悪ガキ「このままあいつを放っておけないだろ! それに……」

魔族少女「それに?」

悪ガキ「勇者の仕事と聞いて黙ってられるか!」

少年魔法使い「……わかった。僕も行こう。この現象に興味がある」

侍少女「な、なにがあるのかわからないでござるよ!?」

悪ガキ「じゃあ、お前はあいつを放っておけって言うのか?」

侍少女「そんなことはないでござるが……」

侍少女(うう、水が怖くて泳げないなんて言えない……)


少年魔法使い「怖いのならそこで大人しく待ってろ」

侍少女「べ、別に怖くなんてないでござる!」

少年魔法使い「どうだか?」

侍少女「くっ、魔族少女はどうするでござる?」チラッ

魔族少女「私も行くよ。幼女ちゃんを放っておけないもん」

侍少女「い、いやそこはお主が『怖いよ~』的なことを言うタイミングでは……」

魔族少女「怖いよ? 怖いけど幼女ちゃんが心配だもん」

侍少女「そ、それはそうでござるがそう簡単に認められてしまうと拙者の立場が……」

少年魔法使い「そんなもん始めからないだろ」

侍少女「うぐ……」

魔族少女「私、先に行くね。幼女ちゃんが心配だから!」

ボチャン!


侍少女「ちょ、ちょっと!?」ガビーン

悪ガキ「あー! 抜け駆けずるいぞ!」

ボチャン!

侍少女「み、みんな、待つでござるよ……」

少年魔法使い「まったく……」

ボチャン!

侍少女「お主まで!?」

シーン……

侍少女「み、みんなぁ……本当に行っちゃったんでござるか……?」ビクビク

シーン……

侍少女「水……怖い……でもここにいるのも……」

侍少女「……も、もう仕方ないでござるな! 3人がどうしてもというから拙者も行くでござるよ!!……いや、別に水なんて怖くなんかないんでござるよ?」ビクビク

シーン……

侍少女「………本当に大丈夫でござるか~……」ダラダラ

シーン……

侍少女「うわぁぁぁん! 1人にしないで欲しいでござるよぉぉぉぉ!!!」ダッ


ボチャン!!

といったところで今日の投下は以上です


書き溜めが……だんだんと少なく……


明日も同じ時間に投下していきたいと思います

今日もお付き合いくださりありがとうございました!!

幼女「お前マジうざい…ユーシャを語るなシネ」

悪ガキ「…えっ!」グシャ

魔族少女「悪ガキの頭が…ひき肉みたいに…」

鰐淵「あんまりハシャいで不運と踊っちまったんだろ…」

こんばんは、今日も投下していきたいと思います

よろしくお願いします!

――王都 商人貴族の屋敷――



部下『報告は以上です。依然契約には至っておりません。ご期待に沿えず申し訳ありません』ザッ

商人貴族「……あの場所に勇者と剣士が……随分と厄介なことになりましたね」

部下『ええ、依頼した地上げ屋とひと悶着あったようでして……』

商人貴族「それで二人とやりあったと。ふむ……」

部下『どうなさいましたか?』

商人貴族「……彼らはなぜあの場所に?」

部下『どうやら慰問のようでして。あの2人に加えて王立研究所の助手の姿も確認しています』

商人貴族「では魔法使いもこの件に関与していると……聡明な彼女のことだ。私たちの目的に勘付いているかもしれませんね」

部下『……どうなさいますか?』


商人貴族「現段階であなたが彼らに干渉してもメリットはないでしょう、時期が来るまで放っておきなさい、地上げ屋の彼らにもそう伝えておくように、物事には準備が必要です。それに、切り札は最後までとっておきたい」

部下『切り札……ですか?』

商人貴族「伊達に彼らも国一番の地上げ屋を名乗っているわけではないというわけですよ」フフッ

部下(あの芸人崩れのような二人組が……?)

部下『……かしこまりました』

商人貴族「……それと、商談の際に手紙をやり取りした女性……院長といいましたか、彼女とはコンタクトはとれましたか?」

部下『はい、直接孤児院に伺った際に』

商人貴族「あなたの目から見て、彼女はどうでした?」


部下『私の主観でいいのですか?』

商人貴族「ええ、商談とは所詮、人と人とのコミュニケーションの延長線上です。事前に相手を知っておかなければいけませんからね」

部下『……ひとつだけ私が感じたことが……』

商人貴族「なんでしょう」

部下『彼女は金では動かない、ということでしょうか』

商人貴族「……一番厄介なパターンですね。損得勘定ではなく、自らの信念が行動理念。商人にとっては天敵です」フフッ

部下『それに奇妙なことが一つ……』

商人貴族「奇妙なこと?」

部下『彼女に関するデータがまったく無いんですよ』

商人貴族「データが無い?」


部下『はい。八方手を尽くして調べさせましたが何もわからず……周辺の人間に聞いても1年程前にここに移り住んできたとしか………彼女が何者なのか、ここに来るまでの間なにをしていたのかすらわからないんです。まるで何者かによって情報を抹消されているかのように』

商人貴族「そうですか……困りましたね」

部下『資料によると狩場はあの森です。妖精を独占するためにはあの土地が必要になります』

商人貴族「そのためにはやっぱり、邪魔なんですよねぇ…………あれは」

商人貴族「妖精の狩場はできる限り内密に行いたい。そのためにリゾートを建てるという名目で周辺の土地を買い占めているのです。そしてあの場所にはそれだけの価値がある」

部下『ええ、なんとしてでも手に入れたいところです』

商人貴族「……分かりました。強硬手段にでるとしましょう。私も転移魔法でそちらに向かいます」


部下『なにも商人貴族様、自ら……』

商人貴族「チャンスというものは自ら掴み取るものですよ?」

部下『ですが……』

商人貴族「それと早急に傭兵を雇っておいてください……そうですね、1000人程」

部下『1000人!?』

商人貴族「ああ、別に孤児院の前でやりあおうってことではないですよ? 我々の本気を彼女に見せつけたいのです。まぁ、その結果争うことになったとしてもやぶさかでないですが」フフッ

部下『それはつまり、武力で脅すと? 勇者相手にそれは……』

商人貴族「だからそのための1000人です。たとえ勇者と剣士といえど、たった二人で相手ができるとは思えない」

商人貴族「あとは彼女の弱みを見つけ、的確に明確に脅すだけ……違いますか?」

部下『………』

商人貴族「そうですね、孤児院の子供達を人質にとるというのもいい。なんなら彼女の目の前で孤児院ごと破壊するのもいいですね」

部下『そこまでしなくても……』

商人貴族「そこまでしなければならないほどあそこには……妖精には価値があるのです!………わかりますね?」

部下『……早急に準備します』

商人貴族「では早急に……よろしくお願いしますよ?」


ブツッ



妖精「なぁ、おっさん。いい加減あたいを解放してくれよ~。どうせおっさんの計画なんて失敗するんだしさ~」ガチャガチャ

商人貴族「……いい加減、狩場の行き方を教えてくれませんか? 大体の場所はわかっていますが最後のピースが埋まらないのです」

妖精「教えるわけないだろ!」

商人貴族「……わかりました。ではあなたにも付き合っていただくとしましょう」スチャッ

妖精「お、おい! 急に持ち上げるな!」

商人貴族「あなたはその籠の中で自分の故郷が焼かれる様をじっくりと見ればいい」

妖精「お前! 何をする気だ!」

商人貴族「あなたがいつまでも強情なら、狩場があるであろうあの森を根こそぎ焼き払います」

妖精「へへん! そんなことしたって無駄だぞ! もうすぐ龍王様がお前の悪事を裁くんだからな!」

商人貴族「龍王……?」

妖精「そうだ!長が教えてくれたんだ! 龍王様が来ればお前なんか……!!」

商人貴族「どうだと言うんです?」

妖精「お前なんかイチコロだってことだよ!」

商人貴族「……あいにく私はその手のおとぎ話は信じないんです」スクッ

妖精「出せー! あたいをここから出せー!!!」

商人貴族「それでは行くとしましょうか、ビジネスチャンスの場所に」ニヤリ



シュン!!



――???――


ヒューン!!



悪ガキ「どわぁぁぁあああああ!!!!」

魔族少女「きゃぁぁぁああああ!!!」

侍少女「やっぱりやめておけばよかったでござるぅぅぅぅ!!」


ベシャッ!!


悪ガキ「痛ててて……」

侍少女「おお……尻餅を……」イテテ

少年魔法使い「少しは落ち着いて行動できないのか?」スチャッ

悪ガキ「だってよ、湖に飛び込んだと思ったらいきなり空中だぜ?」

侍少女「これは予想してなかったでござる……」


少年魔法使い「……そういえば、幼女はどうした?」

侍少女「先に行ってるでござるか?」

魔族少女「悪ガキ君! 上!!」

悪ガキ「え?」

幼女「……」ヒューン

悪ガキ「ぐぇ!!」グニュ

幼女「むい!」スチャッ

魔族少女「ああ! 悪ガキ君!!」

幼女「むふー♪♪」ドヤッ

少年魔法使い「……完璧な着地だ」

侍少女「10点満点でござるな」


魔族少女「大丈夫!?」

幼女「伸身が描く……放物線は……栄光への……架け橋……だ!!」ビシッ

悪ガキ「てめぇ……殺す気か……」

幼女「避けないお前が……悪い!!」フンッ

悪ガキ「このっ……!!」

幼女「お前……鈍臭い」ププッ

悪ガキ「もう怒った! 幼女だろうが容赦しねぇ! 泣かす!!」

幼女「……上…等!!」キシャー



侍少女「すっかり嫌われてるでござるな……」ヒソッ

魔族少女「……さっき悪ガキ君、あの子の前で勇者様馬鹿にしちゃったから……ほらあの子、勇者様に懐いてるみたいだし……」ヒソッ


少年魔法使い「いい加減切り替えろ。この状況を分析する方が先だ」

侍少女「……それにしてもここは一体どこでござる?」

魔族少女「なんていうか……凄い場所だね……」

少年魔法使い「湖の中にこんな空間が?……いや、これは一種の転移魔法の応用か……?」

侍少女「ああ!!」

魔族少女「ど、どうしたの!?」

侍少女「……これってどうやって帰るのでござる!?」

少年魔法使い「そんなことはどうでもいいだろう……?」ハァ

侍少女「どうでもいいわけないでござる!」

少年魔法使い「帰る方法なんてここを調べていけば自ずと分かる。喚くな、ござる女」

侍少女「さっきからそうやって馬鹿にして……!!」

少年魔法使い「馬鹿に馬鹿と言って何が悪い?」フフッ

魔族少女「もう! みんなして喧嘩してる場合じゃないでしょ!?」




「……そうか……もしやと思ったが違ったか……」

幼女「……誰!?」

悪ガキ「どこに隠れてやがる!?」

「人間の子供と魔族の子供……? いや、一人はどちらでもない。とても異質だ……」

魔族少女「どこにいるの?」

少年魔法使い「魔力を感じる、どこかにいるはずだ」

侍少女「もしかして……オバケ!?」

「……そうか、君が龍王様の力を……」

幼女「リューオー?」


悪ガキ「おい、隠れてないで出てきやがれ! 俺が相手をしてやる!!」チャキッ

「ああ……これは済まなかったね、こっちだ、こっち」

悪ガキ「こっちってどっちだよ?」

魔族少女「誰もいないよ?」

侍少女「怪異でござる! ここは魑魅魍魎が蠢く巣窟……」

少年魔法使い「黙れ、アホ」

「もうちょっと目線を下げてくれるか?」

悪ガキ「目線を……」

「やっほ♪」ヨッ

悪ガキ「うわぁ!?」

幼女「小ちゃ……い!!」

少年魔法使い「これは……妖精?」

魔族少女「妖精?」

侍少女「オバケじゃないんでござる!?」

少年魔法使い「まさか、妖精は姿を消したはず……」


幼女「……君が呼んだ……の?」

「そうとも。まぁ、呼んでないのも来ちゃったみたいじゃが……」

悪ガキ「……もしかして俺たちのことか?」

幼女「お前……帰れ」プイッ

悪ガキ「なんで俺だけなんだよ!」

少年魔法使い「……それで、ここはどこだ? 俺たちがいた森とはまるで違う」

「当たり前じゃ、我らが見放した人間の土地とは生気が違う。ここの地の植物たちは皆、生き生きとしているじゃろ?」

魔族少女「はい。凄く神秘的です……」

幼女「……君は……誰?」

「ああ、自己紹介がまだだった。ワシは妖精長。この里の長をしている」

少年魔法使い「では、ここは妖精たちの住処ということか?」

妖精長「左様。ようこそ、妖精の里へ」


といったところで今日の投下は以上です

明日の投下はお休みで、明後日からまた投下していきたいと思っています

今日もお付き合いくださり、ありがとうございました!!

こんばんは、今日も投下していきたいと思います

今日で前半戦は一区切りです

それでは今日もよろしくお願いします!

――役所――


受付「ぶぇぇぇぇくしょん!! こんちくしょー!!!」ズルズル

同僚「もうちょっと女性っぽくできないの? それじゃあただのおっさんじゃない」ハァ

受付「生理現象だからしょうがないですよ」アハハ

受付「ぶぇぇぇぇくしょん!! こんにゃろー!!!………おかしいですね」ズズッ

同僚「風邪? やめてちょうだいよ? 仕事に穴あけられないんだから」

受付「いや、そんなことは無いはずですけどね……誰かが私のこと噂してるのかな?」

同僚「あー……」

受付「ちょっとなんですか?」

同僚「夜道には気をつけた方がいいわよ?」

受付「なんでですか!?」

同僚「だってあんた敵多そうだし」

受付「そんなこと……無いですよね?」

同僚「私に聞かないでよ」


受付「きっとあの子可愛いとか、そういう噂ですよ! いやーモテる女は辛い!」

同僚「さて、仕事仕事……」

受付「ちょっとは構ってくださいよ!」

同僚「私はあんたと違って仕事が遅いの。だから構ってあげる時間はありません」

受付「でもでも山賊さん達のお陰で少しは楽になったでしょう?」

同僚「ま、まぁね……最初はなに考えてんだって思ったけど、仕事覚えも早いし、真面目だし……結構頑張ってると思うわよ?」

受付「でしょう? 彼らを連れてきた私に感謝してほしいものですね!」フンス

同僚「そ・う・やっ・て! すぐ調子にのるんじゃないの!!」ギギギギ

受付「同僚ふぁん…とれちゃう……とれちゃいますぅぅ!!」ビヨーン

同僚「もう!!」パシッ

受付「痛い……」ヒリヒリ


同僚「さて、いい加減仕事しないと……」

受付「それにしてもなかなか終わらないですねー」

同僚「復興作業に関する書類が増えたからじゃない?」

受付「なにか動きがあったんですか?」

同僚「さぁ? でも書類から察するに随分と試行錯誤してるみたいよ? 今日だって試作品がうちに届いたし」

受付「試作品?」

同僚「なんでも魔王に犯された大地でも育つ植物だとか」

受付「すごいじゃないですか」

同僚「あくまでも試作品よ、実際にどうだかわからない」


受付「それで研究報告だとか会議資料だとかの書類がこんなにあると。予算なんてどこから出てるんです? 国だって財源不足でヒーヒー言ってるっていうのに」

同僚「さぁ? どっかの貴族様が出資してるって噂らしいけど?」

受付「殊勝な心がけを持った人がいるもんですね……」

同僚「あんたも見習いなさいよ」

受付「……そこらへんはノーコメントで」

同僚「なんでよ?」

受付「いいじゃないですか。そんなことより! この仕事がひと段落ついたら温泉でも行きません?」

同僚「………一段落なんて当分先の話よ?」

受付「いや、そろそろお色気回っていうのも必要だと思いませんか?」

同僚「よくそんな真っ平らでそんなこと言えるわね……」

受付「そんなことを言うのはこの胸か!!」ギュム

同僚「ひゃっ!」


受付「なんですかこの胸は? メロンですか? メロンが体内に埋め込まれているんですか!?」モミモミ

同僚「離しなさいよ!!」

受付「まったくもう! 悔しくなんか……悔しくなんかないんですからね!!」ストーン

同僚「ちょ、ちょっと! そ、そこは……///」

受付「ああん!? ここがええのんかぁ?」モミモミ




課長「あー、二人とも。ちゃんと仕事してくれないと困るよ?」

受付「課長は黙っていてください! このメロン女は全国の我が同胞を馬鹿にしたんです!!」モミモミ

同僚「なに……馬鹿なこと言って……んっ///」

受付「このメロンが! 収穫して食ってやる!!」


課長「そろそろやめなさい。受付くん」

受付「やめません! 私は悪くないもん!!」

課長「ならばしょうがないね、仕事しないものを見逃すわけにはいかない。こうなったら受付君を減給処分にするしかないようだ」

スチャ

受付「さっ、仕事するとしましょうか! あ、同僚さん、そのお仕事代わりにやっておきますよ!」

同僚「この馬鹿……」

課長「……二人ともよく覚えておくんだ。今のようなお色気シーンなど現実にはありえない!」

課長「女の子同士で胸を乳繰り合うなんてフィクションなんだよ、フィクション!! そんなこと絶対にありえないんだ! いやもう本当にありがたいことなんだけども!!」

同僚「課長もなにを言っているんですか……」

同僚「なにも泣かなくても……」


課長「おっといけない、つい心の声が漏れてしまったようだね。二人ともサボりは感心しないぞ? 私は定時だからこれで帰るけども、しっかりと業務をこなすように! いいね?」アッハッハ

受付「はい!! この受付! 誠心誠意、業務にあたります! お仕事楽しいです!!」ズバババババ

同僚「課長って時々変なこと言うのよね……」

受付「あー! お仕事楽しいですぅ!!」

同僚「そんなに減給が嫌か……」

受付「お仕事楽………ぶぇぇぇくしょい!! んにゃろおー!!」ズビッ

同僚「あんた本当に風邪ひいたんじゃないの?」

受付「本当にそんなことないはずなんですけど……随分と熱烈なファンの方がいるようですね……」


――王立騎士団総司令室――


参謀「………」

参謀「……誰だ?」

???「ありゃりゃ、気配を消したつもりだったんだがな!」ククク

参謀「馬鹿でもわかるさ」

???「そりゃ仕方ねぇな! 俺のカリスマ性はいくら押し殺しても表に出ちまうってことか、こりゃ困ったもんだ!」ハッハッハ

参謀「何の用だ? ここは王国騎士団の司令室だ。お前のような魔族が入っていい場所じゃない」

???「冗談きついぜ! 『お前が呼んだんだろ?』暗黒魔人の叔父貴を使って」

参謀「…………」

???「しっかし驚いたぜ、魔王の元を離れてフラフラしてる間に随分と世の中変わっちまったみたいじゃねぇか!」

参謀「あんたも元魔王軍なのか?」

???「魔王軍なんてそんなダセェ名前はやめてくれよ。俺はただ名前を貸してるだけだったんだ」


参謀「……それでなにが目的だ?」

???「話が早くて助かるねぇ、単純だよ……俺はデカイ喧嘩がしてぇんだ」

参謀「喧嘩?」

???「おおともよ。風の噂で聞いたぜ、あんたの喧嘩。叔父貴とひと暴れしたそうじゃねぇか。あんたのところでならデカイ喧嘩ができると思ってこうして来たってわけよ!」

参謀「ちゃんと情報統制はしているはずだが……なぜそんなことまで知っている?」

???「そんなもん、蛇の道は蛇ってな」ニシシ

参謀「…………」

???「おい、参謀とやら。俺は勇者って奴とやり合いてぇ。できるか?」

参謀「……それはできないな」

???「なんでだよ! わざわざ遠いところから来たんだぜ? 頼むよ」

参謀「まだ時期が早いんだ」

???「時期ぃ?」

参謀「勇者にはまだまだやってもらわなければならないことはある。お前の都合で舞台から降りてもらう訳にはいかない」

???「んだよ、せっかく期待して来たっていうのによ……」


参謀「勇者と戦いたいか?」

???「おおよ! あいつとなら久々に熱い戦いができるはずだ」

参謀「そんなことしてなんになる?」

???「それが俺の生き方なのさ! 強え奴とサシでやりあって勝つ! 最高に『粋』だろう?」

参謀「理解に苦しむな……」

???「今さら生き方なんて変えられるもんじゃないさ。俺もお前もな……」ニシシ

参謀「……ならば俺の元に来い」

???「なに?」

参謀「俺の配下になれば、最高の舞台を用意してやる。そこで思う存分戦えばいいさ」

???「俺の首に縄を着けようってか?」

参謀「不満か? 血塗れの道だが多くの戦場が待っている」

???「血塗れの道ね……気に入ったぜ。魔王のやり方は気に入らなかったがあんたとはどうも気が合いそうだ」


参謀「ならば時が来るまでの間、舞台作りを手伝ってもらおうか」

???「お、なんだなんだ?」

参謀「ちょうど誰かに暴れてもらおうと思っていたところだ。お前にピッタリだろう。これを見ろ」スッ

???「誰だこいつ?」

参謀「この女を殺してほしい。なんだったら辺り一面を消してもいい。後処理は俺がやろう」

???「いきなり女殺しとはまぁ……気が進まねぇな……」

参謀「だがこいつを殺せば間違いなく勇者が出てくると思うぞ?」

???「本当か!?」

参謀「ああ、本当だ。約束しよう」

???「それで何者なんだよ、こいつは?」

参謀「表向きはただの公務員だ。『表向きはな』」


???「……強えのか?」

参謀「強くはない。ただこの女は物語を『捻じ曲げる』」

???「なんだそりゃ?」

参謀「幾ら緻密に計画を練ろうともこの女がいるだけで全てを台無しにしてしまう。まるで世界がこの女の味方をするように……」

参謀「聖女が出しゃばって来たのも計算外だったが、勇者の暴走はあの魔導人形だけでは止められなかったはず。あの女がいなければ軍人貴族もボロを出すことは無かっただろう。その結果、聖女の列聖も止めることができなかった。この俺が計画を立てたも関わらず……だ」

参謀「全部捻じ曲げられたんだよ。この女によって」

???「……」

参謀「……不確定要素は早めに消しておかなければならない。手段はなんでもいい」

参謀「あんたならできるだろう? 見せつけてやればいいさ、魔族の力をな」

???「了解だ。それで勇者が出てくるっていうならお安い御用だぜ」

参謀「期待している」

???「ああ、それと……」

参謀「なんだ?」

???「邪魔する奴は皆殺しでも構わないよな?」

参謀「ああ、どんな手を使ってでも構わない……あの女を……仮面の王女を殺せ」ニヤッ



院長「あなたが幼女ちゃん?」幼女「むい!」 終わり


といったところで前半戦終了です

次回からは番外編をやりつつ後半戦を作成していこうと思っています

明日も同じ時間帯に投下できればと思っています! 
今日もお付き合いくださり、ありがとうございました!!

こんばんは、少し早いですが今日も投下していきたいと思います

今日から番外編です

ちょっと前の話と勇者が幼女に出会う前の時間軸の話です

それでは今日も少しの時間だけお付き合いください

番外編「山賊とお嬢様」










頭領「あれが今度襲う獲物か」ヘヘッ

山賊G「なんでもここいらの領主の家って話ですぜ」

山賊C「ってことは酒も食物もたんまりあるな!」

山賊D「チャチャッと終わらせて宴会でもしましょうよ」ニヤニヤ

山賊E「……」

山賊F「お前、顔色悪いぞ? 大丈夫か?」

山賊E 「あ、ああ」

頭領「どうした? 腹痛か?」

山賊E「い、いや違いますよ。お頭」

頭領「ならもうちょっとマシな顔しやがれ、これからひと暴れするんだからよ!」




山賊A「お頭ー! 偵察行ってきまし……どわぁぁぁ!!」ドンガラガッシャーン

頭領「この馬鹿! 偵察ぐらい静かにできねぇのか!?」

山賊B「いい加減この馬鹿と一緒に仕事したくないんだが……」ハァ

山賊A「そんなこと言うなよ! 兄弟!」

山賊B「お前といるとまともに仕事できねぇんだよ!」

山賊A「そ、そんにゃ……」ガーン

頭領「漫才は後にしろ。仕事の時間だ。偵察してきてわかったことを教えろ」

山賊A「えっと、目の前に見えるのがここらを治めている領主の家だ。裏手に倉庫があって食糧を一箇所に集めて保管しているらしい」

山賊B「随分と立派な屋敷だがどういうわけか警備の人間はどこにも見当たらない。俺たちは誰にも気づかれずに倉庫に忍び込んで食料を奪えばいい、簡単な仕事だ」

頭領「つまんねぇな」


山賊B「なんだって?」

頭領「つまんねぇって言ってんだよ。俺たちは山賊だぞ? 奪えるところから全部奪っちまえばいいじゃねぇか。それにこの屋敷はここらの土地を治める領主様のものなんだろう?金目のものもたんまりあるはずだ。こういう時は派手に暴れるってもんよ」ガハハ

山賊B「頭、あんたの言う通り俺たちは山賊だ。一時を凌ぐためにやる強盗や物取りじゃない。派手に動けば今後の仕事がやりづらくなる。ここは誰にも気づかれずに獲物だけ盗むべきだ」

山賊C「なんだ、お前? ビビってるのかよ?」ハハッ

山賊B「口の利き方には気をつけろよ、俺は頭と話してんだ」

山賊C「ああん!?」

山賊B「やろうってのか?」

山賊C「上等じゃねぇか!!」


頭領「やめろ」

山賊C「頭……」

山賊B「頭、狙うのは食糧だけで充分だろ? 暴れる必要なんてどこにもない。戦闘にでもなれば双方でけが人が出るかもしれない。それは得策じゃないはずだ」

頭領「………お前は今日もあの馬鹿と荷物の見張りをしてろ」

山賊B「頭!」

頭領「黙れ! 俺はお前に教えたはずだな。『力があればなんだって許される』と」

山賊B「ああ、確かに教わった。その上で違うって言ってんだ」

頭領「なんだと?」

山賊B「頭、あんたには感謝してる。なにも知らない俺たちをここまで育ててくれたんだから。でもよ、あんたのやり方は間違ってるよ、こんなことしたって結局自分の首を絞めるだけだ、違うか?」

頭領「お前、いつから親に対してそんな口聞くようになった?」

山賊B「親の間違いを正すのも息子の務めだろうが……!」


頭領「ガキが一丁前の口を利くんじゃねぇ! いいか、魔王のせいで俺たちは帰る場所を失った。魔王が死んでも俺たちの暮らしは変わらない。だが、あいつらはどうだ? 平和ってやつを随分と満喫してやがる。お前はそれを見てなんとも思わねぇってのか?」

山賊B「……それは」

頭領「いいか、俺たちは1度闇に足突っ込んじまった罪人だ。もう真人間には戻れねぇ。だったら好き放題にやったほうがいいだろう? この世界の現実を何も知らない貴族どもに『持たざる者の強さ』ってやつを見せつけてやるんだ。わかるだろ? なぁ息子よ」

山賊B「……確かに俺もあんたも罪人かもしれない。だけどよ、それで捻くれて自棄になっちまったらなんにもなんねぇだろ……!!」

頭領「そうか……」

山賊B「わかってくれよ、頭……」

頭領「……無駄な時間を過ごしちまったようだ。お前らぁ! そろそろ行くぞ!!」

山賊団「「「うぉぉぉぉおおおお!!」」」

山賊B「頭!!」

頭領「てめぇは少し頭を冷やせ。んでもって自分の置かれた立場をよーく考えてみるんだな」


ザッザッザッザッザ




山賊B「……クソッ!!」

山賊E「………」

山賊B「どうしたんだ? 早く行かねぇと置いてかれるぞ?」

山賊E「あ、ああ。すぐに追いかけるよ」

山賊B「精々頑張れよ、俺の分までな」

山賊E「そういうこと言うなって。俺だってこんなこと、あまり好きじゃない」

山賊B「そうなのか?」

山賊E「ああ。実は俺、血が苦手なんだ」

山賊B「お前、山賊向いてねぇな」

山賊E「自分でもそう思う。ただ、飯が食えなきゃ死んじまうし、できれば俺も死にたくない。だからやってる。仕方なく」

山賊B「俺だってそれは否定しねぇよ。でもよ、仕方ないって言葉で片付けたら守んなきゃいけない大切なものまで知らないうちになくしちまうだろ?」

山賊E「……お前は立派だな。俺は生きるのに必死でそんなことまで考えつかなかった」

山賊B「………」

山賊E「……いつか、もう少しマシな生活をしたいな」

山賊B「ちげぇねぇ」


山賊E「別に贅沢がしたいわけじゃないんだ。誰も傷つけなくていい、そんな生き方がしたいだけなんだよ」

山賊B「お前……」

山賊E「なぁ、お頭が言ってたみたいにさ、俺たちってもう戻れないのかな?」

山賊B「そんなことねぇさ……!!」

山賊E「でも、俺の手はきっと汚れてる……」

山賊B「悲しいこと言うんじゃねぇよ! お前がお前のことを諦めたら、誰がお前を救ってやれるんだよ!」

山賊E「……悪い、少し暗くなっちまった」

山賊B「気にするな、こんな生活続けてたら嫌でもそうなる」

山賊E「ありがとな」

山賊B「そろそろ行けよ、お頭たち見失っちまうぞ?」

山賊E「ああ」






山賊A「………」シューン

山賊B「どうした?」

山賊A「黙って付いて行こうとしたら怒鳴られた……」シューン

山賊E「あはは……」

山賊B「お前が一番向いてねぇよ……」ハァ

山賊E「じゃあ、行ってくる」

山賊B「ああ、気をつけろよ。死ぬんじゃねぇぞ?」

山賊E「そうだな、死ぬのはやっぱり避けたいな……」ハハッ


といったところで今日の投下は以上です

読み返してみたら山賊ばっかりで誰が誰だかわからない状況に……


次の投下は明後日を予定しています

投下スピードが落ちてしまい申し訳ありません


今日もお付き合いくださり、ありがとうございました!

乙です(*^_^*)
メイドじゃなくてブルーかぁ~(・_・)

こんばんは、番外編、今日も投下していきたいと思います

よろしくお願いします!

――職員寮――



チュンチュン………




山賊E「んん……」パチッ

山賊C「起きたか」

山賊E「過去編ですか!?」

山賊C「……なに言ってるんだ? お前?」

山賊E「いや、だったら俺なんかにスポット当てるよりより勇者とか受付の姉貴とか……」ボーッ

山賊C「大丈夫か!?」

山賊E「………!!」ハッ

山賊C「おい?」

山賊E「……おはよう」


山賊C「寝ぼけてんじゃねぇよ……」ハァ

山賊E「いや、急な状況変化についていけてなくて……」

山賊C「しっかりしろよ? もう俺仕事場行くから、戸締りよろしくな?」

山賊E「仕事場行くって……まだ朝の6時だぞ? こんな早く行ってどうする気だよ?」

山賊C「いや、受付の姉貴がまた新しい仕事教えてくれるって言うからよ。楽しみでいてもたってもいられなくて……先行って予習しようかと思ってんだ」

山賊E「仕事熱心だな……ちょっと異常なくらいに」

山賊C「いや、楽しみでよ!」アハハ

山賊C(なんだ、お前? ビビってるのかよ?)ハハッ

山賊E「……人って変わるもんだなぁ……」

山賊C「なんか言ったか?」

山賊E「いや、なにも。あんまり無理すんなよ?倒れたりしたた俺の仕事が増える」

山賊C「んなことしねぇよ。んじゃ、行ってくるな!!」



ガチャ


山賊E「いってらっしゃーい。」

山賊E「さて、俺も準備しないとな……」ゴソッ


―――――

山賊E(俺たち山賊団は火竜事件の後、騎士団によって捕らわれ重い処罰が下されるはずだった)

山賊E(後で聞いた話では良くて長期間の牢獄生活、悪くて死刑って話だったらしい)

山賊E(山賊団一つ闇に葬られたところで世間は誰も俺たちのことなんて気にしない。俺たちもそうなるだろう……そう思った)

山賊E(だけどどういうわけか今はこうして役所の公務員として働いている)

山賊E(どうやら受付の姉貴が手を回してくれたらしく、人手不足の役所を手伝うことで『奉仕活動』という名目で罪を償っているということにしてくれたらしい)

山賊E(奉仕活動といっても給料はちゃんと出るし、住む場所も職員寮を使わせてくれている……まぁ、時折『これって牢獄の中にいた方がマシだろ!?』というような過酷な業務もあるが……実際に俺も何回か過労で死にかけたし……)

山賊E(それでも今は『あの頃』のように血を見ることもなくなったし、山賊団のみんなも生き生きと働くようになった)

山賊E(俺は……この生活に満足している。なんだか本当に真人間になれた気がして………)

山賊E(あの日思い描いていた『普通』な日常を送れていることが、この上なく嬉しい)





山賊E「……忘れ物は無し、これで準備OKってところかな?」

山賊E「さて、今日も1日、頑張るとしますかね!」

山賊E「いってきます!」




ガチャッ



山賊E「ん?」


ギャーギャー!!


山賊E「なんだ? 寮の前で……」




地主「この女! よくもやりやがったな!」

お嬢様「私はなにも悪いことはしていません!!」

地主「うるせぇ! 俺の飼ってた奴隷を勝手に解放しやがって!! そんなことしてタダで済むと思ってんのか!?」

お嬢様「私は当然のことをしたまでです!」

地主「なんだとぉ!?」

お嬢様「あなたがやっていることは立派な犯罪ですわ。この地は奴隷の所有を条例で禁止しています。知らないわけではないでしょう?」

地主「笑わせる。そんな条例、誰が守ってるって言うんだよ?」

お嬢様「恥を知りなさい! あなたのような人がいるから奴隷制度が未だに無くならないのです!!」

地主「馬鹿馬鹿しい! そんなこと俺には関係ない! お前がやったことは窃盗だ。あの奴隷達がいくらしたと思ってるんだ! ええ!?」

お嬢様「人の命をお金で買うなんて…恥ずかしくないのですか!!」

地主「この女、好き放題言いやがって……」スチャッ

お嬢様「今度はそれで暴力に訴えようと言うのですか? そうやってあの方たちを痛めつけていたのですか!」

地主「ああ、そうさ。これは粗相をした奴隷を躾けるための道具だ。お前も躾ける必要があるらしい」クックック

お嬢様「それで私が口を噤むとでも? 何度でも言ってあげます。あなたがやっていることは犯罪です。今すぐ悔い改めなさい!!」

地主「……どうやら、本当に痛い目にあってもらわなきゃわからないみたいだな……」

お嬢様「私は暴力に屈したりしません!!」

地主「この!!」




山賊E「あー、ちょっと…」

地主「……なんだお前? 見世物じゃねぇぞ? あっち行ってろ!」

山賊E「いや、寮の目の前で騒がれるのも困るんですけど」

地主「今はそれどころじゃないんだ!! こいつはな! 俺が飼ってた奴隷を逃したんだぞ!」

山賊E「ええ、聞こえてましたよ……それはもう十分すぎるほどに」

お嬢様「あなたが悪いんでしょう! 私は正しい行いをしただけです!」

山賊E「困ったな……」

地主「とにかく俺はこいつに痛い目にあってもらわなきゃ気がすまねぇ! こいつがやったことは窃盗だ。つまりこいつは盗人なんだよ!」

お嬢様「あなたが私に罪を問うのですか? 自分のしていることを棚に上げて!」

地主「うるせぇ!!」


山賊E「あのですね、確かにこの女性が言う通りこの地域は奴隷の使役は禁止と条例で決まってるんですよ…」

地主「そんな条例、誰が守ってるんだ!? 俺たち地主はな、奴隷を労働力として雇っているんだよ、あいつらがいなくなったらこっちは商売あがったりだ!」

お嬢様「労働力が欲しければ彼女たちを正式に雇えばいいでしょう! なぜ奴隷などという扱いをするのです!」

地主「奴隷ごときに給料なんて払ってられるか! いいか、あいつらは人間のなりをしているが人間じゃないんだ。家畜に給料を払うやつがどこにいる?」

お嬢様「なんてことを……あなたの魂はどこまで腐っているのですか!?」

地主「なんでお前にそこまで言われなきゃならないんだ!」

山賊E「……うーん、どうしよう……」

お嬢様「なにを考え込んでいるのです!? 正義はあきらかにこちら側にあるというのに!!」

山賊E「い、いやそういうことじゃなくてですね……」


地主「どけ! お前じゃ話にならん!!」ドンッ

山賊E「うわっ!」ドサッ

地主「……ほう? なんだよく見ればお前も中々上玉じゃねぇか。逃げた奴隷の代わりにお前を新しく飼うっていうのもいいかもしれねぇなぁ……」ニヤニヤ

お嬢様「あなたのような考え方の人がいるから!」

地主「生意気な女を調教するのも中々乙ってもんだ……」ヘッヘッヘ

山賊E「やめましょうよ、あんまりそれ以上はよくないで……」

地主「うるせぇ! ぶっ殺すぞ!?」

山賊E「一昔前の自分もあんなんだったのかな……そうじゃないと思いたいんだけど……」ハァ

お嬢様「私はあなたなんかに屈したりしませんわ!!」

地主「先ずはそのやかましい口から調教してやるか」ブンッ

お嬢様「……!!」ギュッ

地主「オラァ!  泣いて許しを乞え! 女ぁ!!」


ガチィィン!!


といったところで今日の投下は以上です



今回の主人公は山賊Eとお嬢様です

過去の話と火竜事件のあと山賊団は一体どうしてたのか、役所はなにをしているのかなどをちょっとだけ触れつつ後半戦に繋げていきたいと思っています


明日も同じ時間帯に投下したいと思います

今日もお付き合いくださりありがとうございました

こんばんは、今日も投下していきたいと思います

よろしくお願いします!!





地主「なっ!」

山賊E「……まぁまぁ、ここは落ち着いて話し合いしましょうよ……」ポタポタ

山賊E「女性に手を上げちゃだめでしょ?」ニコッ

お嬢様「……あなた…」

地主「くっ、この!!」

山賊E「これ以上やると言うなら、こっちも容赦はしませんよ?」ギロッ

山賊E「………今日のところは勘弁してやる! いいか女、いつか必ずお前を痛い目にあわせてやるからな! 覚悟しておけよ!!」ダッ

お嬢様「おととい来やがれ、ですわ!!」シャー







山賊E「大丈夫ですか?」

お嬢様「問題ありませんわ! よくあることです」

山賊E「よくあるって……」

お嬢様「あなたの助けがなくてもあんな男、私の蹴りで一発でしたのに……!!」

山賊E「ダメじゃないですか、そんなやんちゃしちゃ」ナデナデ

お嬢様「!! …・…な、なにを……!?」バッ

山賊E「ああ、すいません。なんというかつい……ってあれ?」

お嬢様「……なにか?」

山賊E「い、いやなんでもありません……」フイッ

お嬢様「まったく、淑女に対して頭を撫でるなど失礼ですよ」フフッ

山賊E「………すみません。でもあなたもなんであんなことに?」


お嬢様「それはあの男がこちらの警告を散々無視してあの方々に酷いことをするからどうしても許せなくて……!!」

山賊E「それでも、あなたが危険な目にあっては意味がないでしょう。こういう時は役所にですね……」

お嬢様「それでもダメだったからああするしかなかったんです!」

山賊E「でしょうね……」ハァ

お嬢様「まったく! 国はなにをやってるんですか!?」

山賊E「ううっ……耳が痛い」

お嬢様「頭ではなく?」

山賊E「そっちは別に大して……」

お嬢様「……まぁ、それでも助けてくれたことは感謝しないでもないですわよ?」

山賊E「はぁ……じゃ、俺は仕事に行かなきゃいけないんで……」ボタボタ

お嬢様「あ、あなた……せめて名前を……」

山賊E「名乗るほどの者でもないですよ。ただのしがない公務員です」

お嬢様「ちょ、ちょっと!!」

山賊E「では、今後も無茶しないでくださいね?」

お嬢様「話を聞きなさい!!」

山賊E「いや、本当に仕事行かなきゃいけないんで、すみません」

お嬢様「そんな有様で行くんですの!? なんというかあなたすごいことになってますわよ!?」

山賊E「よくわからないですけど急いでるんで……」

お嬢様「待ちなさい!!」

山賊E「すみません」ダッ










お嬢様「……もう!!」

お嬢様「……それにしてもあの方はやはり………」ボソッ

お嬢様「ふふっ、遂に見つけましたの!!」


――役所――




受付「さーて、今日は君に新しい仕事を教えるんでしたね!」

山賊C「よろしくお願いします! 姉御!!」

受付「うむ、元気があってよろしい! いいですか? 私の命令は絶対です。逆らったりしたらダメですよ!」

山賊C「わかってますよ、姉御!」

受付「ノンノン……いいですか? 私のことは姉御ではなく女王様と呼びなさい」

山賊C「へい! 女王様!」

受付「よろしい」

同僚「なにがよろしいだ、馬鹿」スパーン

受付「痛っ!」


山賊C「大丈夫ですか? 女王様!!」

同僚「あなたも、この馬鹿の言うことなんて聞かなくていいから、さっさと仕事教わっちゃいなさい」

山賊C「へ、へい」

受付「なんの用ですか……? 同僚さん。さっさと仕事に戻ってくださいよ?」

同僚「いやね、『彼』がまだ来てないのよ。あなた、寮で同室だったわよね? なにか知らない?」

山賊C「いや………あいつ来てないんですか? おかしいな、俺が出てった時はピンピンしてましたぜ?」

同僚「……そう。なにかあったのかしら?」

受付「無断欠勤とは太ぇ野郎ですね! 締めますか?」

同僚「アホみたいなこと言わないの」

受付「もちろん、冗談ですよ。でも心配ですね……」


山賊C「大丈夫ですか? 女王様!!」

同僚「あなたも、この馬鹿の言うことなんて聞かなくていいから、さっさと仕事教わっちゃいなさい」

山賊C「へ、へい」

受付「なんの用ですか……? 同僚さん。さっさと仕事に戻ってくださいよ?」

同僚「いやね、『彼』がまだ来てないのよ。あなた、寮で同室だったわよね? なにか知らない?」

山賊C「いや………あいつ来てないんですか? おかしいな、俺が出てった時はピンピンしてましたぜ?」

同僚「……そう。なにかあったのかしら?」

受付「無断欠勤とは太ぇ野郎ですね! 締めますか?」

同僚「アホみたいなこと言わないの」

受付「もちろん、冗談ですよ。でも心配ですね……」








山賊E「すみませーん。遅れましたー」ハァハァ

受付「まったく、どうしたんですかー? ってぎゃぁぁぁぁあああああ!!」

同僚「あなた、どうしたの? それ!?」

山賊C「なにかあったのか!?」

山賊E「いや、ちょっと来る途中に転んじゃいまして……」

受付「転んだ!? どうやって!?」

同僚「と、とにかく医務室に!?」

山賊E「そんな、大袈裟な……大丈夫ですよ、ちょっと頭は痛いけど大したことじゃありません」ボタボタ

山賊C「い、いや……お前、それ……」


山賊E「え?」ヌルッ

山賊E「これって……血?」

山賊E「あ、俺……血、ダメで……」クラッ


ドサッ!!!


山賊C「おいぃぃぃぃ!!!」

受付「衛生兵! 衛生へぇぇぇえええいいいいい!!!」

同僚「ちょっと! しっかりしなさい!!」


といったところで今日の投下は以上です

明日一日使って思い切り書かなきゃ……

明日も同じ時間帯に投下したいと思っています

今日もお付き合いくださり、ありがとうございました!!


うわ、本当だ、死にたい………


>>302


山賊E「………今日のところは勘弁してやる! いいか女、いつか必ずお前を痛い目にあわせてやるからな! 覚悟しておけよ!!」ダッ →×

地主「………今日のところは勘弁してやる! いいか女、いつか必ずお前を痛い目にあわせてやるからな! 覚悟しておけよ!!」ダッ


でした、すみません………

こんばんは、だいぶ早いですが今日も投下していきたいと思います

よろしくお願いします!!







山賊D「お頭、この家の住民、全員縄で縛っておきました」

山賊C「金目のものは全てここに」

頭領「おお、ご苦労さん」

領主妻「ひぃ……」ガタガタ

召使い「命だけはお助けを……」ガタガタ

領主「……くっ」

頭領「まぁ、ざっとこんなもんだろ」


頭領「おう、領主様よ。こんなデカイ屋敷に住んでて警備の1人もつけないなんて随分と不用心じゃねぇか?」

領主「なにを馬鹿なことを……警備などをつける理由がどこにある? 魔王は死んだ。これ以上誰と争う必要があるというのだ!?」

頭領「へぇ、人間は皆お友達ってか? 領主様はお考えになることがご立派でございまする……そんなお花畑な脳みそだから俺たちみたいな人間に狙われるんだよ! なぁ、お前ら!!」

山賊達「うぉぉぉぉおおおお!!」

領主「……これで満足か?」

頭領「……なんだと?」

領主「このような生き方をして満足かと聞いている!」

山賊E「……!!」

領主「悪事に身を染め、自らの魂が汚れていくのを感じながら生きていくことで満足か!? その装束で闇に紛れ、顔を隠し、ろくに素顔を晒すこともできない……そんな生き方でお前たちは本当に満足かと聞いている!」

山賊C「なんだ? こいつ? 宗教家か?」ヘラヘラ


頭領「知った口を利くんじゃねぇ!!」

領主「!!!」

頭領「俺達はなぁ、どこにも行くところがねぇんだよ。生きるためにはこうするしかないんだ!!」

領主「どういうことだ?」

頭領「おい、領主様よ、俺たちの生活で満足してるかって話だったよな?」

領主「………」

頭領「……満足だよ。清く正しく死ぬよりか、意地汚く醜く生きたほうが何倍もいい!!」

領主「領主様とそのご家族様はは知らないだろう? 俺たちには帰る場所なんてない。それを理由に悪事に手を染めるどうしようもないクズさ。あんたたちみたいに生き方なんて選べるほど、俺たちの現実は甘くないんだよ!」

領主「そんな……」

頭領「魔王が死んだ!? だからどうした!? なにが変わったって言うんだ? なにも変わりはしねぇじゃねぇか!! 誰かのものを力尽くで奪って、強いものだけが生き残る! この世界はそんな世界のままじゃねぇかよ!!」

頭領「平和? いつそんなものが訪れたんだ? 俺たちにもその平和ってやつを教えてくれよ? なぁ、領主様よ!!!」ガンッ


領主「そうか………そうだったのか……」

山賊C「頭ぁ! こいつ泣いてますぜ?」

山賊D「大の大人が情けねぇな!!」

あっはっはっは!!

領主「……こんなにも………君たちは………苦しんでいたのだな……」

山賊E「……」

頭領「どうした、領主様。やっぱり自分がたんまり溜め込んだ財産が俺たちのような山賊に根こそぎ奪われるのは悔しいかい? そうだよな? 泣くほど悔しいよな!!」


あははははは!!!



領主「……ああ、悔しいさ……これ以上無いくらいに悔しい……!!」

頭領「いくら悔しがっても無駄だぜ? 金目のものと食料は全部いただく。精々自分の不運を呪うんだな!」

領主「そんなことではない……!!」

頭領「あ?」

領主「金ならまた貯めればいい。田畑はまた耕せばいい。それでもダメなら頭を下げ、助けを求めればいい。私が言っているのはそんな小さなことでは無いのだ……!!」

頭領「なんだと?」

領主「こんなにも苦しんでいる人々が目の前にいるというのに……私は何も知らず、ただのうのうと生きていたことが悔しいのだ……!!」

山賊D「こいつちょっと頭がおかしいんじゃねぇか?」

領主「無関心は罪だ。私は差し伸べる手を持っていながら君たちが苦しんでいることを気づきもしなかった。その結果君たちは望まない悪事を働いているのだろう。ならば今の君たちの罪は私にあると言っていい」

領主「………すまないことをした。このとおりだ。許してくれ」ザッ

頭領「な、なにを……」

山賊E「……!!」


頭領「う、うるせぇ! 綺麗事言ってんじゃねぇぞ! この状況で俺たちに同情だと!? ふざけるのも大概にしやがれ!! どうせ誰か、助けを呼ぶための時間稼ぎに決まってる! 騙されねぇぞ!!」

領主「……私が信用できないのであれば屋敷にあるものは全て好きにすればいい。なんなら私の書斎にある金庫の暗証番号をここで言おうか? 中にはそれなりの金額が入っているはずだ」

頭領「なめやがって……!!」

領主妻「……あなた」

領主「すまない。この事態を招いたのは全て、無知であった私の責任だ」

領主妻「いいえ。あなたはきっと正しいことをしているはずですわ」

領主「……君まで危ない目に合わせてしまってすまないな」

領主妻「いつものことでしょう?」フフッ

頭領「……やめろやめろ!! 俺が見たかったのはそんな顔じゃねぇ! そんな顔じゃねぇんだよ!!」

領主「この屋敷にあるものは全て好きにしていい。売って金にするのも、腹いせに壊すのも自由だ」

領主「その代わり、私と約束してほしい」

領主「人に絶望しないでくれ。君たちに手を差し伸べてくれる人は必ずこの世界にいるのだから」

頭領「やめろ! そんなこと言うんじゃねぇ!!」

山賊E「……頭」

頭領「もっと俺たちのことを恨めよ! 俺たちを憎めよ!! そんな顔するんじゃねぇ!」

頭領「そんなんじゃまるで……」

頭領「俺たちが間違ってるみてぇじゃねぇか……!」











山賊E「……うっ」ピクッ

山賊F「お、気がついたか。まったく、心配かけやがって」

山賊E「……俺は……?」

山賊F「ああ、自分の血見てぶっ倒れたんだよ。相変わらずだな、お前は」ハハハ

山賊E「……そうか」

山賊F「で、今度は誰のために怪我したんだ?」

山賊E「え?」

山賊F「いや、お前が血を見て倒れたって聞いてさ、昔のこと思い出したんだよ。ほら、あの領主様の家を襲撃した時のこと」

山賊E「……」


山賊F「……あの時もお前、自分の血を見てぶっ倒れたんだぜ? お頭には『転んだ』としか言わねえし」フフッ

山賊E「……丁度その時の夢を見てたんだ」

山賊F「へぇ………偶然ってのはあるもんだな。」

山賊E「……俺たちさ、あの頃に比べたら少しは変われたよな?」

山賊F「どうだろうな……俺にはわからないよ。ただ……」

山賊E「ただ?」

山賊F「あの頃より、今の方が楽しいってのは確かだ」

山賊E「……そうだな」ガバッ

山賊F「おい、おとなしくしてろって」

山賊E「いや、もう大丈夫だ。仕事しないと……今日中に終わらせなきゃいけないのがあるんだ」

山賊F「……あんまり無理はするなよ?」

山賊E「分かってる」スタスタ


山賊E「……そういえばさ」

山賊F「なんだよ?」

山賊E「あの時の領主様達ってどうなったか聞いてるか?」

山賊F「……さぁ、知らないな」

山賊E「……そうか。分かった。ありがとう」

山賊F「気分が悪くなったらすぐ言うんだぞ」

山賊E「……」ヒラヒラ

山賊F「本当にわかってるのか……?」ハァ




―――――



山賊E「戻りましたー」

同僚「あら、お帰りなさい。もういいの?」

山賊E「はい、大丈夫です。お騒がせしました」

同僚「まったく……なにがあったの?」

山賊E「……転んだんです」

同僚「随分と派手に転んだものね? 頭だけぶつけたの? なにかで殴られたみたいに?」

山賊E「……転んだんです」

同僚「話したくないならいいわ。でも、心配する人間がいることを忘れないで。分かった?」

山賊E「……ありがとうございます」








受付「ちょ、ちょっとお客様! 困りますって!!」

お嬢様「そんなこと知りませんわ! あの人はここにいるんでしょう!?」

受付「職員のことはプライバシーの都合上話せないんです!」

お嬢様「私はただ『今日頭に怪我をした男』に会いに来ただけですの! それのどこに問題があるんですの!?」

受付「だってただ事じゃない感じなんですもの!!」

お嬢様「ええ、ただ事じゃありませんわ!」ズカズカ






同僚「あー、ちょっと別室で隠れておく?」

山賊E「いえ、受付の姉貴を助けて来ます」

同僚「……悪いわね、気をつけるのよ?」

山賊E「……はい」


スタスタ



山賊E「あ、あのー」


受付「あ、ダメですよ。出てきちゃ!!」

お嬢様「やっぱりここにいたんですね!! やっと見つけましたわよ!!」


ズカズカズカ


山賊E「う、うわっ」


ドン


受付「わお……あれが噂の壁ドンですか!?」

同僚「なんかちょっと違う気がするけど……」

山賊E「あ、あの……?」

お嬢様「よくも私を無視してくれましたわね?」

山賊E「い、いや仕事があったんで……」

お嬢様「黙りなさい。もしあの後あの男が帰ってきたらどうするつもりだったんですか?」

山賊E「いや、そこまで面倒見切れませんよ」ハハッ


お嬢様「笑い事ではありません!」ドンッ

山賊E「す、すみません」

お嬢様「……怪我は大丈夫ですか?」

山賊E「ええ、とりあえず大丈夫です」

お嬢様「……そう」

山賊E「もしかしてそれだけのために?」

お嬢様「もちろん違いますわ」

山賊E「じゃ、じゃあ何の用で?」

お嬢様「一目惚れです。私と結婚しなさい」

受付「は?」

同僚「へ?」

受付・同僚「「ええええええ!!!」」」

山賊E「ごめんなさい。無理です」

受付・同僚「「えええええええ!!!」」


ええええええ!!!

と二人が言ったところで今日の投下は以上です

予定よりだいぶ早くて申し訳ないです


明日も21時頃に投下できればと思っています

今日もありがとうございました!




あれ、なんか番外編の方が文量多くならないか? これ………

誤字の報告ありがとうございます!

ありえないミスですね、ちょっと死んだほうがいいかもしれませんwww


>>321

領主「領主様とそのご家族様はは知らないだろう? 俺たちには帰る場所なんてない。それを理由に悪事に手を染めるどうしようもないクズさ。あんたたちみたいに生き方なんて選べるほど、俺たちの現実は甘くないんだよ!」→×

頭領「領主様とそのご家族様はは知らないだろう? 俺たちには帰る場所なんてない。それを理由に悪事に手を染めるどうしようもないクズさ。あんたたちみたいに生き方なんて選べるほど、俺たちの現実は甘くないんだよ!」→○

でした。申し訳ありません………

こんにちは、ちょっと色々とありまして今日はこの時間に投下させていただきます。よろしくお願いします!!





お嬢様「あら、断るんですの」

山賊E「ええ、断ります」

お嬢様「理由、聞いていいかしら?」

山賊E「こういうのってお互いの相互理解が大事だと思うんですよね、やっぱり。よく知りもしないのに結婚って……そういうのはちょっと……」

お嬢様「……そう」

山賊E「お互いの未来のビジョンっていうのを共有してからって言うか、そこまで焦る年齢でもないし、まだまだ1人の時期を楽しみたいというか、自由っていうのを……」

受付「女の子にそこまで言わせてなに考えてんですか!」スパーン

山賊E「痛っ!」

同僚「あんたみたいな草食男子がいるからねぇ! 私に春が来ないんじゃない! なによ!? 『自分の時間を大事にしたい』って! だったら最初からOKするな!!」

山賊E「ちょ、姉御……頭はちょっとやめてもらえますか……あとなんの話です?」

受付「同僚さんは半年前、付き合ってた彼氏と別れたんですよ!」

同僚「あああ!! あんたみたいなのを見てるとイライラするぅ!!!」

山賊E「姉御、顔、顔!! すごいことになってますって!!」

同僚「誰の顔が酷いって!?」グリン

山賊E「いやそういうことじゃなくてですね……」


お嬢様「……まぁ、そういうことならいいでしょう」

山賊E「え?」

お嬢様「お互いの相互理解が大事だと言うのならそれもよろしいですわ。そういう期間が重要だということは書庫の本に書いてありましたもの」

山賊E「いや、ちょっと?」



お嬢様「ならば私と恋をしましょう!!」ババーン




受付「再告白きたぁぁぁああああ!!」


山賊E「いや、だから無理ですって」ハハッ

同僚「断んな!」スパーン

山賊E「本当に叩かないでもらえますか!? 傷口開くんで!!」









山賊C「……で、こんな感じになったと」

山賊E「姉御達の押しが凄くて……」

お嬢様「………」ギュゥゥゥ

山賊E「あの、仕事の邪魔になるんで離してもらえませんかね……?」

お嬢様「嫌ですわ」キッパリ

山賊E「なぁ、俺どうしたらいいのかな?」

山賊C「死ねばいいんじゃないかな」ニッコリ

山賊E「なんで……?」


お嬢様「死なれたら困りますわ。この歳で未亡人なんてごめんです」

山賊E「いや、結婚してないんで未亡人とかにはならないですよ」

お嬢様「では結婚しましょう」

山賊E「冗談はやめてくださいよ」ハハッ

お嬢様「むぅ……」プクー

山賊C「いや、もうお前は死ね。今すぐ」

山賊E「えぇ……?」

お嬢様「ああ……!! こうして殿方の腕に抱きつくなんて、以前の私でしたら考えられない行動ですわ……恋は人を変えてしまうのですね!!」

山賊E「寝言は寝て言ってください」ハハッ

お嬢様「あなたの腕の中で眠れるなら私は本望ですわ……」ウットリ

山賊E「ちょっと誰か通訳の人呼んで!!」


お嬢様「………それにしてもあなたの腕、公務員にしては中々鍛え上げられていますわね? なにかスポーツでもなさっているのですか?」

山賊E「え? これはその……」

山賊C「ああ、こいつはちょっと前に山賊稼業を……」

山賊E「おおおい!!」ガシッ

お嬢様「サン……なんですって?」

山賊E「さ、散歩!! そう散歩が趣味でして、気がついたらこんな肉体に!!」

お嬢様「まぁ、随分と過酷な散歩ですのね!」

山賊E「はい、そりゃもう!!………おい!」

山賊C「なんだよ?」

山賊E「馬鹿、俺たちが元山賊ってことは秘密だろ!」ヒソッ

山賊C「……!! ああ、すまん。つい……」

山賊E「ただでさえ非公式だっていうのに……バレたら、ここにはいられなくなるんだぞ? 牢獄暮らししたいのか?」

山賊C「悪い、お前が憎くて……」

山賊E「憎くてって言った? ねぇ今憎くてって言った!?」


お嬢様「もう、私をのけ者にしては盛り上がらないでくださるかしら?」プンプン

山賊E「ああ、すみません」

お嬢様「あなたはお散歩が趣味なのですね」

山賊E「え、ええ。歩きながら考え事したり、景色を見たり……」

お嬢様「素敵ですわ……」

山賊C「『どうやったら効率よく人の家に侵入できるかな』とか『ああ、あの家金持ってそうだな』とか」

山賊E「お前、いい加減にしろよ!!」

山賊C「ああ、すまん。お前に殺意を覚えてつい……」

山賊E「え、なに? 俺が悪いの?」

山賊C「お前以外誰がいんの?」アアン?

山賊E「こいつ……!!」


お嬢様「2人でのんびり歩きながら初デート……うふふ……それも中々風情があって……」

山賊E「だからそんなことしないって!!」

お嬢様「なんでですの!? 男女が付き合うのならば当然デートをするものでしょう!?」

山賊E「付き合ってないんで……」

お嬢様「まだそのようなことを言うんですか? 聞き分けのない人ですね!」

山賊E「いやだから俺が悪いの?」

山賊C「あああ!! 俺の前でイチャイチャするんじゃねぇ!!! このままいったら俺、血反吐吐くぞ!!」



――終業時間――



山賊E「結局仕事にならなかった……」

お嬢様「私は楽しかったですよ? あなたのお仕事をしている姿を堪能できて満足ですわ」

山賊E「あなたのせいで全然仕事終わらなかったじゃないですか……今日中に終わらせないといけない書類があるのに……ああ、今日は徹夜かな……」ガックシ

お嬢様「二人の愛のためには犠牲はつきものですの」

山賊E「いや、犠牲を払ってるの俺だけですよね!?」

お嬢様「あら、そうでしたか?」

山賊E「……もう帰ってくださいよ……これから残業しなきゃいけないんであなたの相手をしてる暇なんて無いんです」


受付「あ、君はもう帰ってもらって大丈夫ですよ?」

山賊E「え? でもまだ仕事残ってて……」

受付「頭を怪我しているでしょう? 無茶をしてはいけません。ついでに彼女を送り届けてあげてください」

山賊E「彼女じゃないです。でもいいんですか? これ、今日中に終わらせないといけない書類のはずですよね?」

受付「大丈夫ですよ、私が代わりにやっておきますので」

山賊E「そんな、姉御にそんなこと……悪いですよ」

お嬢様「悪くないですわ! あなた、折角のご厚意ですよ!? 受け取らなければ失礼です!」

山賊E「……その『あなた』ってのやめてください。夫婦でもなんでもないのに」

お嬢様「あら、いずれなるのに?」

山賊E「ハハッ、無いですよ。そんなこと」


受付「とにかく! 今日は帰ってしっかり休むこと! いいですね!?」

山賊E「……わかりました」

受付「よしっ!」グッ

山賊E「?」

お嬢様「よくやりましたわ」スッ

受付「ありがとうございます!」ガバッ

山賊E「なに受け取ったんですか!? 姉貴!?」

受付「さぁ、なんのことでしょう?」ハテ?

山賊E「いや、そんなキョトンとしたってダメですよ!」

お嬢様「ちょっとした心付けですわ。さぁ、あなた。行きましょう?」グイッ

山賊E「いや、あのちょっと!?」

受付「行ってらっしゃいませ!!」

山賊E「姉貴、俺を売るんですか!?」

受付「はい!」

山賊E「いい返事だな! ちくしょう!」

お嬢様「ほら、行きますわよ!!」グイグイ

山賊E「ちょ、ちょっと!?」

お嬢様「お散歩デートですわ♪」

山賊E「姉貴ぃぃぃぃぃいいいいいい!!!!」ズルズルズル






同僚「行った?」

受付「行きましたよ。まったく、大義名分がないと行動できないなんて、最近の男には困ったもんです! 本当はじぶんだってその気のくせに!」フンス

同僚「あら? わかるの?」

受付「乙女の勘です!!」ビシッ

同僚「また、オカルトチックな……あながち嘘でもなさそうだけど」

受付「彼、絶対彼女に気がありますよ。これはもう絶対です。受付ちゃんアンテナがビンビンですもの!!」


同僚「まぁでも、彼の場合単純にそういうことじゃ無いんでしょうね」

受付「大方、自分には資格が無いとでも思ってるんじゃないですか?」

同僚「向こうが一目惚れって言うなら尚更ね……」


受付「まったく! 恋なんて深く考える必要なんてないんですよ! パッと来てグッです!」ヘヘン

同僚「相変わらず無茶苦茶な考え方」ハァ

受付「私ぐらいにもなれば男なんて取っ替え引っ替えですよ!!」フンス

同僚「ダウト」

受付「うぇえあ!?」

同僚「……あんた意外とわかりやすいわね」

受付「ななななななんのことですか?」

同僚「あんた、誰かと付き合ったことないでしょう?」

受付「そそそそそそんなことないですよよよ?」ガタガタ

同僚「ふぅん? 偉そうに言ってたくせにそうなんだー?」

受付「さぁ? なんのことか受付ちゃんわかんなーい」キャルン

同僚「まぁ、今回の件に関しては関係ないわね」フゥ

同僚「あとは二人に任せて、仕事に戻るわよ」





受付「……過去は過去です。いい加減、振り切らなければならきゃダメですよ? 今の君は昔の君とは違うんですから♪」

同僚「なにしてるの? 行くわよ~」

受付「はーい♪」


といったところで今日の投下は以上です


明日も投下していきたいと思っています

だいたい21時頃の予定です。

今日もお付き合いくださり、ありがとうございました!!

こんばんは、今日も番外編投下していきたいと思います

よろしくお願いします!!








山賊E「………」スタスタスタ

お嬢様「………」スタスタスタ

山賊E(みなさんこんばんは、元山賊です。今の状況を説明させていただくとどういうわけかそのなんていうかえーっと……)

お嬢様「………」

山賊E(沈黙が辛い………)ズーン

山賊E(え、ちょっと待ってこれ、どういうこと? さっきまであんなにグイグイ来てたのに今になってこの状況って……)

山賊E(俺、なんかしたっけ? 思い当たる節は……もちろんあるけども………!!)ハハッ

山賊E(いやでも俺の選択は間違っていないはずだ。だって彼女は……)ジー

お嬢様「あ、あんまり横顔をジロジロ見ないでくださる……?」

山賊E「あ、ああ! す、すみません! 嫌でしたよね!?」

お嬢様「い、嫌じゃありませんわ! 決して!!………ただ」

山賊E「ただ?」

お嬢様「は、恥ずかしいじゃありませんか///」

山賊E「うっ……」


山賊E(可愛い………じゃなかった! おいおい落ち着け、少々ヒートアップし過ぎだ俺。もっと思考をクールにするんだ。大丈夫、これは一時の気の迷いだ)ブンブン

お嬢様「???」

山賊E(いいか、俺。彼女とは絶対に付き合えない。自分がしたことを考えてみろ。俺はまだその罪を償っている最中じゃないか。今こそ彼女に誠心誠意キッパリと断るべきだ! そうすれば彼女もきっとわかってくれる!!)

お嬢様「大丈夫ですか?」

山賊E(さぁ、踏ん張れ俺! 最終的にひっぱたかれようがなにされようが……頭は勘弁して欲しいけど……ダメなものはダメなんだとしっかり伝えなければ!!)キッ

山賊E「あの………」クルッ

お嬢様「はい?」ズイッ

山賊E「どわぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!」

お嬢様「どうしました!? 傷が痛むのですか!?」

山賊E「な、なななんでそんな近くに!?」

山賊E(顔が!! 吐息が!! あああああああああ!!!)ブンブン


お嬢様「いえ、頭の傷の様子を見させてもらおうかと思いまして……」

山賊E「急に近くに来たらびっくりするじゃないですか!!」

お嬢様「私だって、急に近くで大声出されてびっくりしましたわ!!」

山賊E「それに関してはすみません……外に出てからずっと黙ったままだったので……」

お嬢様「そうでしたか……」

山賊E「なんか悪いことしました? 俺」

お嬢様「いえ、そのようなことは……」

山賊E「じゃあなんで黙ってたんです? さっきまであんなに元気だったのに」

お嬢様「……改めて二人っきりになるとどうも緊張してしまいまして……」

山賊E「そうだったんですか……」

山賊E(ああ!! かわ………違う違う!! しっかりしろ俺ぇぇぇぇぇ!!!!)グギギギ

お嬢様「あ、あんまり暴れると傷口開きますよ……?」

山賊E「いえ! お構いなく!!」

お嬢様「そうですか?」


スタスタスタ


お嬢様「………」

山賊E「………」


お嬢様「もう! こういう時はあなたが気を利かせてなにか話題を提供してくれてもいいじゃありませんか!?」

山賊E「いや、なんでですか!」

お嬢様「これが二人の初デートなのですよ!? これではただの帰宅です!」

山賊E「だから! デートじゃないってさっきから言ってるでしょう!!」

お嬢様「仕方ありません! ここは恋人らしく手を繋ぎましょう!」

山賊E「人の話聞いてる!?」

お嬢様「ほら、早く手を出してください!」

山賊E「い、嫌ですよ……」モジモジ

お嬢様「私の言うことを聞けないと言うのですか?」

山賊E「あなただって俺の話、聞かないじゃないですか」

お嬢様「あら、似た者同士ですわね、私達♪」

山賊E「いや、だからなんで話がそっち方向に行っちゃうの!?」

お嬢様「いいから! さっさと手を出しなさい!」グイッ

山賊E「ちょ、ちょっと!」グラッ


お嬢様「………考えてみれば殿方の手を自ら取るのなんて、私、初めてですわ! なんてはしたないことを……ですがこの恋心はとどまることを知りません!」

山賊E(やっぱり、か、顔が近い……///)

山賊E「……うう」

お嬢様「あなた、顔が赤いですわよ?」

山賊E「赤くありません! いいから離してくださいよ!」

お嬢様「いいじゃありませんか! 今更なにを恥ずかしがることが……あら? これは……火傷の跡……ですか?」

山賊E「……いや、あの、これはその……」

お嬢様「……やっぱり」ボソッ

山賊E「はい?」

お嬢様「……いえ、やっぱり魅力的な手だと思いまして」ワタワタ

山賊E「///もう十分でしょう。離してください」パシッ

お嬢様「ああん、いじわるです……」

山賊E「まったく……」

お嬢様「あなたは恥ずかしがり屋さんですのね」フフッ











山賊E「……なんでですか?」

お嬢様「はい?」

山賊E「なんで俺なんかを?」

お嬢様「一目惚れじゃ足りません?」

山賊E「足らないです」

お嬢様「では今朝、危ないところを助けていただいたからという理由はどうです?」

山賊E「弱いですね」

お嬢様「むぅ……困りましたわ」

山賊E「困っちゃうのかよ……」

お嬢様「ああ! 顔が好み!」

山賊E「もうちょっとマシなのを好きになってください」

お嬢様「なんでそういうことを言うんですか!」

山賊E「……いいですか。この際だからはっきりと言います。よく聞いてください」

お嬢様「それはプロポーズですか?」

山賊E「ちげぇ」

お嬢様「残念です」フゥ

山賊E「ああ!! 調子狂うな!!」



お嬢様「それで、仰りたいこととは?」

山賊E「……あなたは身分の高い人でしょう? 貴族とかそういった類の」

お嬢様「……間違いではありませんね」

山賊E「喋り方といい、身につけているものといい、俺とは住んでいる世界が違う」

山賊E「なんていうか、あなたにはもっと相応しい人がいるんじゃないですか?」

お嬢様「……あなたまでそんなこと言いますのね」

山賊E「え?」

お嬢様「私とあなた、なにが違うと言うのですか?」

二人のイチャイチャが終わったところで今日の投下は以上です

自分でも書いてて終わりの見えない番外編ではありますが、書いてる期間、次の話の内容も考えているのでなんとか次につなげられるように頑張ります

もう少しの間お付き合いください


明日も投下していきたいと思っていますのでよろしくお願いします!

それでは今日もありがとうございました

>>1です

たくさんのコメントありがとうございます!!

勇者と幼女の話なのにあいつらどこ行った?って感じですけど今回の番外編は今までのとは違い、本編に今後絡んでくる予定ですのでいつもより文量多めなんです(笑)

毎日投下することを考えると今の分量が精一杯でして……ゆっくりですけど、楽しんでいただけたらなと思っています

今日もコメントありがとうございました!!

こんばんは、少し早いですが今日も投下していきたいと思います

それでは少しの時間ではありますがお付き合いくださいませ!!


山賊E「それは……」

お嬢様「では、質問を変えます。身分とはなんですか?」

山賊E「そんなこと、考えたことも無いですよ」

お嬢様「………父は私に教えてくれました。かつて、自分はある人に頼まれたのだと」

お嬢様「その人は父にこう言ったそうです。『これ以上、自分のような人間を作らないでくれ、私の手はまともに生きていくには汚れすぎてしまった。この世界には自分のような人間がたくさんいる。あなたにその気があるなら、どうか助けてあげて欲しい。ただそれだけが自分の望みである』と」

山賊E「………」

お嬢様「父はその日からこの国の制度と戦うことを決めました。身分制度撤廃を訴え、戦争によって傷ついた人々を支援し、戦争孤児たちを受け入れる施設建設を提案しました」

山賊E「……それは随分と立派な人ですね」

お嬢様「そうでしょうか?」

山賊E「いや、立派ですよ。俺の知ってる貴族なんて酷いもんだったし……復興作業の参考に1度会ってみたいな。役所の講演とかで呼ぶのもありかも……」

お嬢様「今は会えません」

山賊E「え?」


お嬢様「……父は遠くへ行ってしまいましたから」

山賊E「……そう、ですか……残念です」

お嬢様「でも、寂しくなんかありませんわ! お父様はいつでも私を見守ってくださるはずです!」

山賊E「……本当に立派な人だったんですね」

お嬢様「父が立派なのではありません」

山賊E「どういうことですか?」

お嬢様「……私はこう思うのです。真に立派な人は父に今この世界が間違っていると気付かせたその人なのだと」

お嬢様「今まで普通だと感じていた日常を、違和感を感じていた毎日を『違う』と言ってのけたあの人こそが偉大なのです」


山賊E「……文句を言うのと実際に行動するのとでは全然違うと思うんですけど……」

お嬢様「きっかけがなければ行動は無いと思いませんか?」

山賊E「……そんなもんですか」

お嬢様「それを踏まえた上で改めてあなたに聞きます。あなたと私のなにが違うと言うのです? 身分とはなんですか? 世界が違うとはなんですか? 私とあなたは同じ人間でしょう? もちろん、奴隷と呼ばれていたあの方達だって!」

お嬢様「人が人である時点で、誰でもが平等であるべきなのです。私はこの世界はそうであるべきだと思っています。そしてそのために行動したいと思っているのです」

山賊E「それであんなことを……」

お嬢様「あの男はあの方達に酷い仕打ちをしていました。それで我慢できなくて……」

お嬢様「もっと、みんなが幸せに生きる方法があるはずですわ! こんなことしなくても皆が手を取り合って生きていける方法がきっとあるはずです!」

お嬢様「だって、この世界は未だに間違え続けたままなのだから!」

山賊E「……そんなの、綺麗事だよ」ボソッ

お嬢様「え?」


山賊E「……いえ、なんでもありません。本来ならあなたの志の高さを賞賛するべきところなんでしょうけど」

お嬢様「だったら我慢しないで私をギュッと抱きしめてくれてもいいですわよ?」

山賊E「ハハッ……」

お嬢様「なんですか! その乾いた笑いは!!」

山賊E「とにかく、俺はあなたとお付き合いすることはできませんのでいい加減諦めてください」

お嬢様「なぜですか!? 私のどこが不満だと言うのです!?」

山賊E「……自分はもうちょっとおしとやかな人がタイプなんで」

お嬢様「おしとやか? おしとやかになっていればいいのですね! わかりました!!」

山賊E「わかりましたって……」

お嬢様「……まずは話し方からかしら……それとも落ち着いた物腰?……カフェで読書というのも……」ブツブツ

山賊E「えっと……なにを勘違いしてるのかわからないんですけど……なにするつもりですか?」

お嬢様「明日まで待っていてください! すぐにあなたのお好みの女になってきますわ!!」ダッ

山賊E「ええ……?」

お嬢様「それではまた明日お会いしましょう!!」

ダダダダダ!!!


山賊E「あ、ちょっと!?」







山賊E「本当にあの人はなんなんだ……」ハァ

山賊E「でもやっぱり間違いない……彼女は……」ギリッ


といったところで今日はここまでです


なんていうか本当にスローペースで申し訳ありません………


明日も投下同じ時間に投下予定ですのでよろしくお願いします!!

今日もお付き合いくださりありがとうございました!!

こんばんは、今日も投下していきたいと思います

よろしくお願いします!


―――――





山賊E「……頭、やるべきことは果たしたはずです。もうこれ以上は……」

頭領「……いや、まだだ」

山賊E「え?」

頭領「屋敷に火を放て」

領主「……」

山賊E「頭、それはいくらなんでも……」

頭領「領主様は俺たちに仰っただろう? 屋敷のものは好きにしていいと! ……あんたたちも自分の家がなくなる苦しみを体感してみればいい。そうすりゃあんな綺麗事なんて言えなくなるはずだ」ククク

領主「……好きにしなさい」

頭領「気に食わねぇ野郎だ……!! やれ!!」

山賊D「へい、お頭!!」バチバチバチ

ゴォォォォォォ!!!


頭領「はっはっは!! 燃えろ燃えろ!! 全部、全部燃やし尽くせ!!」

領主「………」

頭領「どうだ貴族共!! 俺たちの苦しみをその身をもって思い知れ!!」アッハッハッハ


バチバチバチ!!!


頭領「それでは領主様。俺たちはここらで引き上げるとしますよ。精々これからの生活、楽しんでください」ニヤニヤ

領主「ああ。君たちのこれからに幸あらんことを」

頭領「……クソッ! 最後まで本当に胸糞悪い野郎だ。気分悪りぃぜ!! お前ら!! 引き上げだ!!」

山賊団「「「うぉぉぉぉおおおお!!」」」


ザッザッザッザッザ


山賊E「……」

バチバチバチ………

領主(人に絶望しないでくれ。君たちに手を差し伸べてくれる人は必ずこの世界にいるのだから)

山賊E(………本当にそうなんだろうか? こんな俺にも手を差し伸べてくれる人なんているんだろうか? )

山賊E(こんな薄汚れた手をとってくれる人がこの世界に……)

山賊F「おい、なにしてるんだ? あんまり長居するとまずい。そろそろ行くぞ?」

山賊E「あ、ああ」



領主「なんだと!? なぜそれを早く言わなかった!」

領主妻「今気がついたんです……!! ああ、どうすれば……」

召使い「奥様、落ち着いてください」

領主「なんということだ……!!」

山賊E「……なにかあったんですか?」

山賊F「お前……! なに話しかけてんだよ! 早く行くぞ!」

山賊E「あ、ああ」

領主妻「娘が! 娘がいないんです!」

領主「……きっとまだ屋敷に……!!」

山賊F「なんだって!?」


――役所――




山賊F「……それで、こんな状況が3日続いていると」

山賊E「うん……」

お嬢様「あなたが『料理ができる子』が好みと言っていましたので今日はお弁当を作ってきました。どうぞ食べてくださいませ」スッ

山賊E「あ、ありがとうございます……」

お嬢様「これで結婚ですか!?」

山賊E「ごめんなさい」

お嬢様「なぜですの!?」ガビーン

お嬢様「はっ!……おしとやかおしとやか……」ブツブツ

山賊F「もう結婚しちゃえよ」

山賊E「なんでそういうこと言うの!?」


山賊F「お前がこんなこと続けてるせいで他の奴ら見てみろ、ミイラみたいに干からびてんだぞ!」


「あーあ、見せつけてくれちゃって……」「あれですか、この世の春ってやつですか。俺の心はまだ真冬だっていうのに」「もういっそのこと新しい世界へ…」「ウホッ!」


山賊F「お陰で仕事の効率は悪くなる一方だ」ハァ

山賊E「なんか怪しいこと言ってる奴いなかったか?」

山賊F「とにかく、今のままじゃ仕事に支障が出る。迷惑だ、さっさとなんとかしろ」

山賊E「そんなこと言ったって……あのいい加減諦めてくれませんか?」

お嬢様「ありえません」

山賊E「ええ……?」

お嬢様「そちらこそいい加減、結婚してくれませんか?」

山賊E「ありえません」

お嬢様「ええ……?」

山賊F「俺の前でイチャイチャしないでくんねぇかな!?」ガンッ

山賊E・お嬢様「ええ……?」

山賊F「まったく!!」


お嬢様「困りましたわ……どうすればあなたと結婚できるんですか?」

山賊E「……だから俺にその気は無いんですって」

お嬢様「他に要望などは?」

山賊E「そんなもの無いですよ! 俺はあなたと結婚する気なんて無いんです。ちゃんと人の話理解してます?」

お嬢様「はい、結婚まで一歩前進ということですね?」

山賊E「はぁ!?」

お嬢様「だってあとはあなたをその気にさせるだけなんでしょう? ちょろいですわ!」フフン

山賊E「そういうことではなくて……!!」グギギギギ

お嬢様「あら? だってもうこれ以上要望が無いんでしょう? つまり今の私はあなたの理想通りの女、というわけですことでしょう? 違いますか?」フンス

山賊E「どこまで前向きなんだこの人は……」

お嬢様「後ろ向きよりかはいいと思いません?」

山賊E「それは……そうでしょうけど」

お嬢様「ふふっ、また一つ魅力的になってしまいましたわ……そうですの!」パンッ

山賊E「またろくでもないこと思いついたのか……」

お嬢様「あなたをその気にさせる秘策を思いつきました!」

山賊E「もう勘弁して……」ナミダメ


山賊F「さて、俺も魔法の勉強しないと……課長さんに見てもらおうかな」ガタッ

山賊E「1人にしないでください」パシッ

山賊F「離せ」

お嬢様「書庫の本に書いてあった『恋人同士のすれ違い』、これを実践してみましょう!」

山賊E「えっと、つまり……?」

お嬢様「文献によりますとですね、恋人というものはお互いの心の距離が離れてしまった時に初めてお互いの存在の大切さに気づくと書いてあります」

山賊E「だから恋人じゃねぇって」

お嬢様「すれ違うことで最終的に二人の距離は以前に増してグッと近づく……どうですか? 素敵だと思いません?」

山賊E「思いません」

お嬢様「そこで私たちもこれを実際にやってみようではありませんか! そうすることであなたも私の存在の大きさに気づき、再び私の前に現れた時は私を抱きしめつつ耳元でこう囁くんですの……『もうお前を離さない』と」エヘヘ

山賊E「こいつ頭おかしい」ハハッ

山賊F「お前段々ノイローゼになってないか?」


お嬢様「完璧ですわ! 善は急げ、早速、実行するとしましょう! さぁ、あなた早く!」

山賊E「い、いやどうすればいいんですか?」

お嬢様「喧嘩をするのです、なにか適当な理由で!」

山賊E「そ、そんなこと急に言われたって……えっとなにかない?」

山賊F「なんで俺が……あー、適当に悪口でも言えばいいんじゃないか?」

お嬢様「名案ですわ! さ、あなた!! 悪口を早く!!」

山賊E「そんなの悪いですよ……」

お嬢様「こういうのはやったふりでいいのです。なにを言われても本気にしませんから!」

山賊E「えっと……じゃあ、この『ストーカー女』!」

お嬢様「うっ……」グサッ

山賊E「人の仕事の邪魔ばっかりしやがって!」

お嬢様「うう……」グサッグサッ

山賊F「お、おい?」

山賊E「人の話なんて絶対聞かないし!」

お嬢様「………」

山賊E「言ってることの9割は意味不明!」

お嬢様「………」

山賊E「付き合うこっちの身にもなれってんですよ!! それにねぇ……!!」ガァァァァ

山賊F「おい! お前……」

山賊E「なんだよ、今いいところなん……」

山賊F「言いすぎだ」ハァ

山賊E「え? あ……」


お嬢様「いいのですよ……? こ、これは、わ、私が頼んだことですから……別に気に、気にしてませ……」

お嬢様「………」ジワァ

山賊E「わー! 今の無し! そんなこと、これぽっちも思ってませんから!!」

お嬢様「うう……」グシュッ

山賊F「泣かすなよ」

山賊E「全っ然迷惑なんて思ってませんから! 今の全部嘘ですから!!」

お嬢様「いいんですの……これでお互いの心の距離が離れるというものです……」

山賊E「いや、なんかこれ全然違う気がするけど!!」

お嬢様「私、行きますね……」スクッ

山賊E「いや、ここで別れるとなんかすごい後味悪くなっちゃうんですけど!」

お嬢様「……あなた、寂しいですけど二人の未来のためにしばらくお別れです。早くその気になって私を迎えに来てくださいね………」タッ

山賊E「いや、ちょっと待ちましょうよ!?」

お嬢様「………引き止めても無駄ですわ」グスッ

お嬢様「………私の意思は固いのです! それでは!」ダッ

タッタッタッタッタ

山賊E「いや、あの! 一言くらい謝らせてくださいよ!!」

お嬢様「二人の愛のためですわー!!」タッタッタッタッタ

お嬢様「私は! 全然! まったく!! これっぽっちも!! 1ミリたりとも気にしてませんからー!!」

山賊E「気にしてるでしょ!? それ!?」





山賊F「あー、なんていうか、ドンマイ」

山賊E「俺は言われた通りにやったつもりだったんだけど……」

山賊F「いや、あれは流石に言いすぎだろ」

山賊E「だよな……」

山賊F「……まぁ、そのよかったじゃないか、これでしばらくは安心ってところだろ?」

山賊E「だよな……」

山賊F「このまま、お前が迎えに行かなければあのお嬢様もいい加減諦め……るのか?」

山賊E「だよな」

山賊F「んじゃ、ひと段落したついでに飯でも食いに行くか。あ、お前はその弁当があるんだっけ?」

山賊E「だよな」

山賊F「おい?」

山賊E「だよな」

山賊F「もしもーし!!」

山賊E「………」

山賊F「炎魔法!!」ゴォォォ

山賊E「………」メラメラ

山賊F「効いてない!?」


山賊E「……だよな」ボー

山賊F「……お前、もしかして……」

山賊E「……」ボケー

山賊F「なんだよ! 相思相愛じゃねぇか!!」

山賊E「ち、違うって!」

山賊F「じゃあ、なんだ? 今の反応は!?」

山賊E「こ、これは……その……」モジモジ

山賊F「お前さ、それであのお嬢様泳がせてたのか? 最低だろ……」

山賊E「違うんだ、話を聞けって!」

山賊F「……ノロケ話か? だったらお断りだぞ?」

山賊E「そんなんじゃないんだって!!」

山賊F「だったらなんだって言うんだよ?」

山賊E「それはちょっと言えないんだけど……」

山賊F「はぁ!?」

山賊E「悪い、俺同僚の姉貴に資料作成頼まれてるからそろそろ行かないと………」スタスタスタ

山賊F「いや、ちょっと待てよ………おい! ………なんだ、あいつ? ………にしても色男はやることがちがうねぇ……ちょっとあいつらの気持ちわかるかも」



ダダダダダダダダ!!!



地主「な、なぁ!! ここは役所の窓口でいいんだよな!」

山賊F「な、なんですか?」

地主「聞いてくれ! またやられたんだ!」

山賊F「お、落ち着いてくださいよ」

地主「今日という今日はもう我慢できない! 早くあの女を捕まえてくれ!!」

山賊F「なにがあったんですか?」

地主「また俺の奴隷が盗まれたんだ!!」



―――――





受付「……えっとつまりこういうことですか? 『自分が所有していた奴隷を勝手に解放されたので取り返して欲しい』と」

地主「そうだ! 今週で2回だぞ! 2回!! 最初の時もそちらに被害届を出したはずだが対応されていない! どうなっているんだ!?」

課長「まぁまぁ、落ち着いてください……受付くん、それは本当かね?」

受付「はい、あまりにも馬鹿らしい内容だったので報告する必要も無いかと思いまして」

地主「なんだと!?」

課長「困るよ、きみぃ……そういうことは報告してくれないと」ハァ

受付「こっちは色々と手一杯なんですよ。違法所持しているものを盗まれたからなんとかしろって、そんなアホな要望に応えていられるほど私たちも、騎士団も暇じゃないでしょう?」

地主「こ、この……!!」

課長「確かに要望内容は酷いよ? 酷いけどね、とりあえず対応するふりくらいはしておいたほうがいいじゃないか。そうしたらこんな余計な仕事をしなくて済むだろう?」

地主「なっ!!」

受付「それもそうですけど……」


課長「君の判断は間違いではないが、正解でもない。これからはちゃんと報告するように。いいね?」

地主「……」プルプル

受付「……すみませんでした」シュン

課長「よろしい。ではこの話はこれまで。次の仕事に取り掛かろうか!」

受付「はい!」


スタスタスタ


受付「いやー、久々に課長に怒られちゃいましたよ」アハハ

課長「誰にでも失敗はあるさ。もちろん私にもね」

受付「じゃあ、課長が失敗した時は私が怒りますね!」

課長「ハハッ、お手柔らかに頼むよ?」


ハッハッハッハッハ!!!


地主「待て!! まだ私の話は終わっていない!!」ガンッ

受付「えー」

課長「やっぱり、ダメ、ですか?」

地主「いや、なんで今のでいけると思ったんだ!?」

課長「いや、申し訳ない。今、この子が言った通りですね、この地域では奴隷の所持は禁止されているんですよ。その前提がある以上、私たちでは対応できないんです。ご理解ください」

地主「なにをふざけたことを!! そんな条例、形だけのものだろう! あの女が逃した奴隷がいくらすると思っている!? お前らが弁償してくれるのか!?」

受付「ああ!! しつこいですね! 私があんたに奴隷の気持ちをわからせてやりましょうか!?」

地主「この……公僕が市民に逆らっていいと思っているのか!?」

受付「あんたみたいなのを手助けするためにこの場所があるわけじゃないんです!!」

地主「貴様、何様だ!」

受付「女王様ですよ!!」


課長「……受付くん、それ以上はいけないよ?」

地主「貴様達では話にならん! 責任者を出せ! 話をつける!!」

課長「……それは本気ですか?」

地主「なにがだ!? 貴様達では話にならないから責任者を出せと言っているんだ!!」

課長「公務員が第一に考えることは市民の皆様のことです。それを理解していただいた上でもう一度聞きます。今の要望は本気で言っているのですか?」

地主「ああ。ついでに貴様らの態度についてもじっくり話し合ってやる。ただでは済まさんからな、貴様ら!!」

課長「そうですか。では地下1階から繋がっていますのでご案内しましょう」

地主「さっさと案内しろ!!」

課長もう一度だけ聞きますけど本当によろしいのですか? あまり賢い選択とは思いませんが……」

地主「くっ、 どこまで私を……いいから案内しろ!!」

課長「……わかりました。お客様がそう望むのならば。行こうか、受付くん」

受付「え?」

課長「いいから、君もついてきなさい。私1人で処理するのは大変そうだ」

受付「は、はぁ………」



といったところで今日の投下は以上です!

明日も同じ時間帯に投下予定です

今日もお付き合いくださりありがとうございました!!

今読みましたー。乙ー。

誤字じゃないけど報告

地主「さっさと案内しろ!!」

課長もう一度だけ聞きますけど本当によろしいのですか? あまり賢い選択とは思いませんが……」

"「 "がないー

こんばんは、今日も投下していきたいと思います!

>>408 いつもありがとうございます!



課長もう一度だけ聞きますけど本当によろしいのですか? あまり賢い選択とは思いませんが……」→×


課長「もう一度だけ聞きますけど本当によろしいのですか? あまり賢い選択とは思いませんが……」→○



でした。すみません


それでは今日も少しの時間のだけ、お付き合いください!


――役所 地下1階廊下――




課長「こちらです。この先の突き当たりが所長室でございます」

地主「なぜこんなところに……」

課長「………私どもの案内はここまでです。ここから先はお客様1人でお願いします」

地主「貴様等はついてこないのか?」

課長「ええ、多分『必要ないでしょうから』」

地主「……なんのことだかわからないがこの先に役所のトップがいるんだな!?」

課長「はい。事実上、役所全支部の業務を取り締まっているお方です」

地主「……覚悟しておけよ。私をぞんざいに扱ったこと、必ず後悔させてやる!」

課長「いってらっしゃいませ」ペコリ

地主「フンッ!!」




ズカズカズカ






受付「へぇ~、うちの役所にこんなスペースがあったんですねぇ……知りませんでした」

課長「君がここに来た最初の日に説明したはずだよ?」

受付「そうでしたっけ?」

課長「もちろん。なにせ、命に関わることだからね」

受付「物騒ですね………そういえば私、まだ所長に会ったこと無いんですけど所長ってどんな人なんですか?」

課長「……まだ君は知らなくていいかな」アハハ

受付「え、それはどういう………?」

課長「まぁ、細かいことはいいじゃない………ああ、あとそれとね」

受付「なんです?」





課長「あまり自分の正体をバラすような発言をしてはいけないよ?」

受付「………あら、なんのことでしょう?」フフッ


課長「とぼけても無駄だ。私は君の父君に君のことを頼まれているんだからね」フフッ

仮面王女「……このことを知っている人間は?」スチャッ

課長「なにも律儀に仮面を着けなくてもいいのに」

仮面王女「………『受付』のままだと中々シリアスな空気にならないのよ」

課長「君の正体を知っているのは私と所長だけだ。あとは君がうっかり口を滑らせない限り、正体がバレる心配は無いはずだ……彼女の時のようにね」クスクス

仮面王女「村娘のことまで……あなた、何者なの?」

課長「君と同じだよ」

課長「ただのしがない子持ちの公務員さ」

課長「まぁ、実を言うと君の父君とは古い友人でね。その関係で話があったというわけさ」

仮面王女「……そう。あのお節介め……」

課長「娘が心配な気持ちはどんな親でも共通しているものだ。それが親心というものだよ。わかってあげなさい」

仮面王女「言われなくてもわかってるわよ、そんなこと……」


課長「しかし、仮面の姫様がこんな役所で働きたいなんてなにが目的だい?」

仮面王女「………ちょっとした社会見学ってところかしら」

課長「……今は教えてくれないというわけか」

仮面王女「この先永遠に教えるつもりはないわよ」

課長「君の強情なところはやはり、父親譲りのようだ」クックック

仮面王女「あら? 私はお父様よりももっと『強欲』で『狡賢く』て『性格が悪い』自信があるのだけど」

課長「そういったところもそっくりだよ」

仮面王女「そうかしら?」

課長「………さて、お互いの腹の探り合いはこれぐらいにしておいて……そろそろ準備を始めよう。そろそろお客様が帰ってくるはずだから仮面を外しておいてね?」

受付「準備……ですか?」スチャッ

課長「ああ、うちの所長は誰かが入ってくるのをすこぶる嫌がる。特に『この時間帯』はね」

受付「この時間帯って?」

課長「お昼寝の時間だ」

受付「はぁ?」


課長「さぁ、このクッションを壁沿いに設置してくれるかい?」スッ

受付「ちょっ!? どっから出したんですかこんなもの!?」

課長「近くに用具入れがあるんだよ。こういう時のために」

受付「こういう時って?」

課長「ハハッ、君の父君もよくこのクッションに突っ込んだものだよ」セッセ

受付「???」テキパキ

課長「ちゃんと設置したかい?」

受付「えっと、これで大丈夫ですか?」

課長「……十分だ。それじゃあ、ちょっと離れて」

受付「は、はい」

課長「私がいいと言うまで絶対にクッションに近づかないように。いいね?」

受付「なにが始まるんですか?」

課長「いいから……来るよ!」

受付「???」


カッ!!!

ビュォォォォオオオオオオオ!!!!


「ぬわぁぁぁぁぁあああああああああああ!!!!!」


受付「え?」ヒューン


地主「ぐえ!!」ボスッ


受付「なっ!? 人が飛んできた!?」

地主「あわわわわわわ………」

受付「だ、だいじょうぶですか!?」

課長「お客様、『お話』は終わりましたか?」

地主「なんだ!? なにが起きたんだ!?」

課長「さぁ? わたくし共もそこまでは……」

地主「だ、騙したな! おかしいと思ったんだ! あんなところに責任者がいるはずないじゃないか!!」

課長「いえ、確かにあの部屋には所長がいましたよ? ただ、あなたのタイミングが悪かった、それだけです」

地主「も、もういい!! ふざけやがって! もうお前らなんかに二度と頼らんからな!!」ダッ






受付「え? ちょ、ちょっと!?」


課長「さっ、早くこの場を離れるよ?」

受付「な、なんなんですかぁ? 今、確かに人間が飛んできましたけど!!」

課長「今日はすこぶる機嫌が悪かったみたいだね」ハッハッ

受付「い、いやなんのことだかさっぱりなんですけど? 大丈夫なんですか、あの人滅茶苦茶怒って帰っちゃいましたけど………」

課長「安心して、私は何度も彼に警告した。こちらに非はないはずだよ」

受付「いや、ですから……」

課長「さぁ、早く。次が来ないうちに!」

受付「次? 次ってなんですかぁ!?」

課長「さぁ、急いで急いで♪」タッタッタッタ

受付「もうちょっと説明が欲しいんですけどぉぉぉぉ!!」タッタッタッタ




―――――




山賊E「……これでよし。同僚の姉貴、終わりました」

同僚「その姉貴っていうのやめてもらえないかしら?」

山賊E「え? でもみんなそう呼んでますし、俺だけ変えるのもちょっと……」

同僚「……こういうのはお頭さんに言った方がいいのかしら?」

山賊E「そうかもしれないです」

同僚「お頭さんは……確か今いないのよね?」

山賊E「はい、なんか王都で会議があるってことでそれの手伝いに行ってるみたいです」

同僚「ああ、汚染大地の今後について話し合うとかなんとかってやつの……」

山賊E「そうです、出席するのは課長のはずなんですけど、あっちの会場の設営やらなんやらで人手が足りないらしくて……」

同僚「大変ね」

山賊E「でも、お頭はなんか嬉しそうでした。やっと役に立てるって」


同僚「そう……ああ、世間話なんかしちゃってごめんなさいね、今日はそろそろあがりましょう」

山賊E「え? 今日は……いませんよ?」

同僚「あなたね……もう頼めそうな仕事が無いだけよ? 私の仕事もこれで終わりだし」トントン

山賊E「あ、ああ。そうなんですか……」

同僚「不満かしら?」

山賊E「いやそんなことないです。嬉しいです!」

同僚「そうよね、こんな仕事進んでやりたがる人間いないもんね」

山賊E「いやそういうことじゃなく……!!」ワタワタ

同僚「冗談よ」フフッ

山賊E「からかわないでくださいよ」ハァ

同僚「それじゃ、帰りましょうか」

山賊E「……あ、はい!」




―――――







同僚「段々暖かくなってきたわねぇ」

山賊E「……そうですね」

同僚「夏もすぐそこってところかしら?」

山賊E「……そうですね」

山賊E(どういう状況だこれ!? どういう状況だこれ!?)

山賊E(落ち着け、状況を整理しろ! えっとどういうわけか同僚の姉貴と一緒に帰ることになって、つまり2人っきりで! なんだろう! このなんとも言えない雰囲気は!?)

山賊E(あの子のことといい、同僚の姉貴といい………あれ、もしかして今俺ってモテ期到来中?)

山賊E(ぐあああああああ!! 調子に乗るな俺!! モテ期なんて空想の産物! あんなものは二次元の話だ、そうだ、そうに決まっている!!)


同僚「ああ、早く帰ってビールでも飲みたいなぁ……」ハァ

山賊E「………なんかおっさんみたいなこと言いますね」

同僚「いいでしょー? アルコールでも摂取して日々の鬱憤を発散させないと、溜まったストレスでお肌がガサガサになっちゃうもの……」

山賊E「そんなことしなくても姉貴は大丈夫ですって」

同僚「お、嬉しいこと言ってくれるじゃない」

山賊E「アハハ……」

山賊E(実際のところ、この人本当にレベル高いんだよな……仕事もできるし、綺麗だし……)

同僚「なんだ、その乾いた笑いは!」ガシッ

山賊E「ちょ、ちょっと……なにするんですか!?」

同僚「スキンシップよ! スキンシップ! 大体ね、あんた元山賊ならもうちょっとワイルドに……」ウンタラカンタラ

山賊E(近いしなんかいい匂いするし!! それに腕に柔らかい感触が……これって姉貴のおっぱ……おっぱ……!!! ああああああああ!!! )

同僚「ちょっと聞いてるの!?」

山賊E「おぱ?」


同僚「ちょっと、なにそれ?」クスクス

山賊E「あ、いや! これは違くてですね!!」

同僚「なーに? 私に見惚れちゃった?」ニヤニヤ

山賊E「いや、そういうことではなく!!」

同僚「そうよね、私って魅力ないもんね……あー、こんながさつな女、男に逃げられて当然ね……」シュン

山賊E「いやだからその……違うんです……」ズーン

同僚「冗談よ」フフッ

山賊E「……またそうやって……」ハァ

同僚「ごめんごめん。いやー、私もまだまだ捨てたもんじゃないわね!」

山賊E「同僚の姉貴はとても魅力的な人です。そりゃ見惚れちゃいますよ。でも俺みたいなのがジロジロ見てるの嫌だろうなーって思ったから……」

同僚「あら、あなた中々お世辞がうまいじゃない。彼女にもそれを言ってあげたら? きっと喜ぶわよ?」

山賊E「……だから彼女じゃないですって」


同僚「もう、あなたも小学生じゃないんだからそんな態度、お姉さんどうかと思うけどな」

山賊E「ですけど……」

同僚「ダメならダメな理由をちゃんと彼女に伝えなさい。そうしないと彼女がかわいそうじゃない」

山賊E「……」

同僚「……なにが理由なの?」

山賊E「……言えません」

同僚「もしかしてそれってあなたが山賊の頃の話?」

山賊E「………はい」

同僚「……そっか」

山賊E「ここで働いていると忘れそうになるけど、でも忘れちゃダメなんです。自分がしてきたことは」

同僚「………」

山賊E「俺たちは自分が生きるために人を傷つけてきた罪人です。そんな俺が、彼女を幸せにすることなんてできるわけないじゃないですか」

同僚「そこまで自分を責めることないと思うんだけど……」

山賊E「俺の手はきっと汚れている。彼女の手を、こんな汚れた手で握ることなんてできるわけない……」

山賊E「彼女は、ちゃんとした明るい世界で生きなきゃダメなんです。俺みたいな暗がりの人間と一緒にいたら絶対に不幸になってしまう。そんなことはあっちゃいけないことなんですよ。だから、これでいいんです」

同僚「あなた……」

山賊E「皆さんのお陰でこんな生活は送れてはいますけど、俺はやっぱりどこまでいっても『罪人』ですから」ハハッ

同僚「そんな悲しいこと言わないで。私を含めて役所のみんなはもう、あなた達のことを本当の仲間だと思っているのよ?」

山賊E「………ありがとうございます。俺、嬉しいです」






同僚「となると、やっぱり彼女に諦めてもらうしかないわけだけど……」

山賊E「ええ、そうですけど……」

同僚「そんな簡単なことじゃないことは証明済みか」

山賊E「はい……なんで俺なんかを……」

同僚「あら? 私は中々優良物件だと思うけど?」

山賊E「冗談はよしてください」

同僚「割と本気なんだけどなぁ…………あ!」

山賊E「どうかしたんですか?」

同僚「いいこと思いついたわ!」

山賊E「あれ? なんかデジャブ……」

同僚「私達、付き合っちゃいましょうか!」

山賊E「いやどうしてそうなるんですか!?」


同僚「私たちが付き合ってるってことにすれば流石のお嬢様でも簡単に手出しはできないでしょ?」

山賊E「い、いやそれはそうかもしれないですけど……!! さっきの俺の話聞いてました?」

同僚「別に本気で付き合う必要なんてないわ、形だけ。ほら、こうしているのをあの子に見せつければ……」ギュッ

山賊E「ちょ、ちょっと!」ワタワタ

同僚「あの子も諦めると思わない?」ウワメヅカイ

山賊E「は、はいぃぃ!?」

山賊E(またしても柔らかいものが腕に! 腕にぃぃぃぃぃ!)

山賊E「そ、そんな……悪いですって姉貴……」フイッ

同僚「でもあの子と付き合う気は無いんでしょう?」

山賊E「それはそうですけど……!!」

同僚「ああ!! はっきりしないわね!! これだから草食系は!!」ガバッ

山賊E「う、うわ!」

同僚「あなたは本当はどうしたいの!?」

山賊E「え?」

同僚「過去のことなんていいわ。あなたはあの子のこと、本当はどう思っているの!?」

山賊E「それは……」

同僚「答えなさい! 今のあなたの本当の気持ちを!」




ドサッ!!



山賊E「え?」

お嬢様「………」

二人が今まさに修羅場を迎えそうな勢い……といったところで今日の投下は以上です!

今日もお付き合いくださりありがとうございました!


明日は諸事情により投下はお休みさせていただきます!

次の投下は明後日の21時頃を予定しています

今日もありがとうございました!!

乙! 市役所の所長は獣かなんかなのか!?((°△°;))

こんばんは、今日も投下していきたいと思います! よろしくお願いします!!


>>432 えっと……秘密です……ただ普通じゃないってことだけは確かですけど……



それでは今日も短い時間ではありますがお付き合いください!!


山賊E「なんで……」

同僚(あちゃー、最悪のタイミングね)

お嬢様「あ、いや、これは違うんですのよ!?」

山賊E「………」

同僚「ちょ、ちょっと? なにか言ったほうがいいんじゃないの?」ヒソッ

山賊E「………俺が迎えに来るのを待つんじゃなかったんですか?」

お嬢様「あ、あら奇遇ですわね、あなた! 私も丁度用事が終わりまして今家路に着くところだったんですわ!」

山賊E「………いつからそこに?」

お嬢様「な、なにを言ってますのやら! 今言いましたように丁度用事が終わったところでしたの! ですから私はなにも見てませんし、聞いてませんわ!」

山賊E「………」

お嬢様「あ、あの……本当ですわよ?」モジモジ

山賊E「正直に」

お嬢様「うう……あの方とあなたが腕を組んでいるところからです……」

山賊E「……そう」

お嬢様「べ、別に盗み見しようとしたわけではなく、たまたま! あくまでたまたまですからね!!」

山賊E「………そう」


お嬢様「………あの、つかぬことお伺いしますが……おふたりはご姉弟かなにかで……」

同僚(とりあえずここはそういったことにしてお茶を濁すのがベストよね……!!)

同僚「ええ、実はそう――――」

山賊E「見て分からないかな?」

お嬢様「そうですわよね。書庫にあった文献で読んだことがあります。恋愛とは勘違いの連続であると。おふたりはご姉弟でちょっとスキンシップが激しいというだけなのですね。そうです! こういった勘違いから二人の心の距離がすれ違って……なるほど、あ、あなたも口ではあんなことを言っておきながら私の作戦にノリノリだったということですね! なんだ、それならそうと最初から言っていただければ良かったのに―――――」

山賊E「違うよ。俺はこの人と付き合っているんだ」

同僚「ちょ、ちょっと!?」

お嬢様「……ま、またまたご冗談を」フフン

山賊E「冗談じゃないよ」

お嬢様「………私の作戦に付き合ってくれているだけなのでしょう?」

山賊E「誰があんなバカみたいな作戦に付き合うって言うのさ」ハァ

お嬢様「……では……真なのですか?」フルフル

山賊E「ああ、本当だよ。俺はこの人とお付き合いさせてもらってる。とってもいい人だよ」ニコッ

お嬢様「だったらどうして……!!」

山賊E「君の奇行に付き合っていたかって? まぁ、お客様だし、無碍に扱うのもどうかなーって。そういう線引きがまだできないんだよね、なにせ新人だからさ。でも俺は君に何回も言ってただろう? 結婚はできませんって」

お嬢様「で、でも……」

山賊E「まぁ、でも途中から違うことも考えるようになったんだけどね」

お嬢様「え?」

山賊E「『ああ、こいつ貴族だからキープしておけば勝手に貢いでくれるかなー』って」


同僚「あなた、どうしてそんなこと!?」

山賊E「ちょっと黙っててくれませんか?」

同僚「……!」

お嬢様「そ、そんな……」

山賊E「事実、君は俺にたくさん尽くしてくれた。美味かったよ? 君の作ったお弁当。形はグチャグチャだったけど味は最高だった」

お嬢様「………」

山賊E「でももう終わりだ。そんなことで正妻面されても困るんだよ。それにね彼女と一緒にいて気づいたんちゃったんだ。やっぱり、貴族なんかよりも身の丈にあった生活の方が幸せだってね」

お嬢様「………」

山賊E「これでわかっただろ? 俺はこの人と結婚する。だから君とは一緒になれない」

お嬢様「……!!」

山賊E「わかったら、もう二度と俺の前に現れないでください。ものっすごいウザいんで」

お嬢様「!!!」キッ


バチン!!!


山賊E「……」ビリビリビリ


お嬢様「見損ないましたわ! まさかあなたがそんな人だったなんて!!」

山賊E「そっちが勝手に俺のことを過大評価しただけでしょ……」

お嬢様「…………んで?」

山賊E「ん?」

お嬢様「そんな人だったらなんで!? なんであの時私を助けてくれたのですか!?」

山賊E「寮の前で大声で喧嘩なんかしてたら誰だって鬱陶しいと思いますよ。別にあなたを助けたわけじゃない」

お嬢様「違います! 私が言っているのはそのことでは……!!」

山賊E「とにかく! もう2度と俺の前に現れないでください! 迷惑です!」

お嬢様「ううっ………馬鹿!!」シュッ


ボスッ


山賊E「え?」パシッ

山賊E「これは……」

お嬢様「………」ダッ

同僚「あ、待って!」









山賊E「………」

同僚「普通あそこまでやる? 正直、お姉さん引いたわよ」

山賊E「これくらいしなきゃ、彼女は諦めないと思って……」

同僚「巻き込まれるこっちの身にもなりなさいよね、これじゃ完全に私が悪女みたいじゃない」

山賊E「すみません」

同僚「……頬、痛いでしょう?」

山賊E「ええ、ものすごく」ジンジンジン

同僚「覚えておきなさい、こういう時の女のビンタは特別に痛いものなの」

山賊E「首ごと持っていかれるかと思いましたよ」ハハッ

同僚「いっそ、首ごと飛んでっちゃえばよかったのにね」

山賊E「それは勘弁してください……」

同僚「冷やす? 簡単な氷結魔法なら使えるけど」

山賊E「いえ、大丈夫です」

同僚「腫れるわよ?」

山賊E「………それでも、いいです」

同僚「……そう」

山賊E「めちゃめちゃ痛いですけど……なんか……そういうの……違うかなって……」ズーン


同僚「全部受け止めたいってこと? ……カッコつけちゃって、生意気よ」

山賊E「すみません……でも俺にはそれしかできそうにないし……」

同僚「いい気味ね、としか言えないわ。あんた今全ての女性を敵に回してるんですもの」

山賊E「うう……」

同僚「あんたはそれだけのことをしたってことよ………そういえばあの子、去り際になんか投げてたけど?」

山賊E「ああ、これ、あの子が持ってたものです」

同僚「あなたへのプレゼントってとこかしら?」

山賊E「………あげますよ」

同僚「はぁ!? もらえるわけないでしょ!?」

山賊E「でも、あんなことしておいて俺が持ってるってのも……」

同僚「気持ちはわからないでもないけどね……流石にこれは……」

山賊E「じゃあ捨てます」

同僚「なんでそうなるのよ!」


山賊E「……これを見てるとなんか……死にたくなるんで……」プルプル

同僚「わかった! わかったわよ! 泣きそうな顔でこっち見ないで! これは私が預かっておくから! 気持ちに整理がついたら取りに来なさい!! いいわね!!」

山賊E「すみません……」

同僚「世話のかかる新人ね………」

山賊E「申し訳ないです……」

同僚「本当よ」ハァ

山賊E「………心にもないことを言うのって本当にきついですね」

同僚「元山賊が何を言ってるのかしら……」

山賊E「あああ!! 自己嫌悪が今になって……!!」グニニニニニ

同僚「自分の行動にはちゃんと責任を持ちなさい」

山賊E「わかってますけど……罪悪感が……!! ごめんなさい、本当にごめんなさい……!!」ヌォォォォォ

同僚「謝るくらいなら最初からそんなことするなっての……」ハァ

山賊E「俺は本当に……生きる価値のないゴミ虫です!!」ギィィィ

同僚「ああ!! あんたも鬱陶しわね!!」ゲシッ

山賊E「痛い!!」





―――――




お嬢様「……」タッタッタッタッタ

山賊E(『ああ、こいつ貴族だからキープしておけば勝手に貢いでくれるかなー』って)

お嬢様「……嘘、ですわ」ハァハァ

山賊E(わかったら、もう二度と俺の前に現れないでください。ものっすごいウザいんで)

お嬢様「あなたはそんな人じゃない……そうでしょう?」タッタッタッタ

山賊E(とにかく! もう2度と俺の前に現れないでください! 迷惑です!)

お嬢様「やっと……やっと会えたと思ったのに……!!」ギュッ

お嬢様「ううう……」ピタッ

お嬢様「こんなことなら……こんなことならあの時追いかけなければよかった……」

お嬢様「なにも知らなかったら……私は幸せでいられたのに!」

お嬢様「知りたくなかった! こんなこと知りたくなかった!!」

お嬢様「知りたくなかったです……」ギュッ





「そう言うなよ。俺は幸せだぞ?」ニタァ

お嬢様「え?」




「これでお前に存分に仕返しできるんだからなぁ!!」





――――



山賊E「屋敷の中って……」


メラメラメラ!!!



山賊E「あの中に……人が……?」

領主「君! すまないがこの縄を解いてくれないか!? 私は娘を助けに行かなければならない!」

山賊E「あ、はい!!」

山賊F「ダメだ!」

領主「!!!」

山賊E「え、なんで?」

山賊F「罠かもしれないだろ」

領主「なにを……!! 私一人が自由になったところでなにができるというのだ!?」

山賊E「そうだよ、それだったら俺たちが侵入してきた段階でどうにかしてたはずだろ?」

山賊F「いや、それでも信用できない。もしもということがある。俺たちの独断でお頭や仲間を危機にさらすわけにはいかない」


山賊E「だ、だけどもしこの人たちが言ってることが本当だったら……」

山賊F「………こいつらには俺たちが安全圏に移動するまでこのままでいてもらう。それが俺たちのためだ」

領主「頼む! 君たちに危害を加えることは誓ってしない! だから、この縄を解いてくれ!!」

領主妻「あなた達の望みはこの屋敷の金品や食料でしょう!? 娘は関係ないはずです!」

山賊E「……」

山賊F「さぁ、行くぞ。お頭たちが待ってる」

領主「頼む! お願いだ! 助けに行かせてくれ!!」

領主妻「お願いします!! どうか! どうか!!」

山賊E「………」

山賊F「おい! もう行くぞ!! こいつらのことはほっとけ!!」

山賊E「……領主さん」

領主「頼む!!」ガバッ

山賊E「……あの、ちょっといいですか?」

領主「娘だけは許してやってくれ……!! 頼む!!」

山賊F「おい! いい加減にしろ!」

山賊E「ごめん、ちょっと緊急事態なんで……あの、それでなんですけどね……」

領主「頼む!!」

山賊E「お手洗い借りてもいいですかね?」

領主・山賊F「「は?」」


山賊E「いや、ちょっと『生理現象』がね、こればっかりはどうしようも無くて……すみません、あ、こっちですかね?」アハハハ

山賊F「ちょっと待て、お前何を考えてる?」

山賊E「いや、ちょっとトイレ借りるだけだって」

山賊F「こんな時にふざけてるのか!」

山賊E「『生理現象』なんだからしょうがないだろ!!」

山賊F「お前、そんなこと言って……!!」

山賊E「………『生理現象』なんだからしょうがないじゃないか……」

山賊F「お前……」

山賊E「………頼むよ、俺、これ以上大事なものを失くすのは嫌なんだって……」

山賊F「……勝手にしろ!」

山賊E「ありがとな。んじゃ、領主様お手洗い借りますね!」ダッ

領主「あ、ああ……」


タッタッタッタッタ


山賊F「………あの馬鹿が」




――役所――



山賊E「………」ポケー

受付「おっはようございまーす!!」

山賊E「………」ポケー

受付「今日も元気にお仕事頑張っていきまっしょー!」イエイ

山賊E「………」ポケー

受付「あらあら~、先輩が挨拶をしてるのに無視とは社会人として最っ低ですね!」

山賊E「………」ポケー

受付「まぁ、昨日あなたがやったことは人間として最っ低でしたけどね!」

山賊E「………」ポケー

受付「聞いてます?」

山賊E「………」ポケー

受付「おいコラ、人の話ぐらいちゃんと聞かんかいコラ!!」ドカッ


山賊E「うわっ! お、おはようございます! 受付の姉貴!!」ビシッ

受付「おうおう、随分となめた態度とってくれるじゃねぇか、先輩が話しかけてるってのによう……?」クチャクチャ

山賊E「す、すみません……」

受付「……お前どこのもんや?」クチャクチャ

山賊E「え、えっと第四課の……」

受付「はっきり喋らんかい!!」ガンッ

山賊E「は、はいぃぃ!!」ビシッ

受付「……お前、あんまりなめた態度とってると一発『キャーン!!』って言わすぞコラ! わかってんのか!?」

山賊E「きゃ、キャーン……?」

受付「なんじゃ!? なんか文句あんのかコラ!!」

山賊E「あ、ありません!!」

受付「………とまぁ、コントはこれくらいにしておきまして……」

山賊E「コントって……」ズコッ


受付「はい、これ今日のお仕事です! 今日中にお願いしますね♪」ドサドサドサ

山賊E「…………あ、あの、受付の姉貴……?」

受付「なんですか? ゴミ虫?」

山賊E「な、なんか今日やたら量多くないですか?」

受付「そんなことないですよ~、私だったらこれくらい楽勝です」

山賊E「いや、姉貴と一緒にしないでくださいよ、俺、まだ新人だし、無理ですって!」

受付「いいからやりなさい」ギロッ

山賊E「………は、はい」

受付「ふん!」

ツカツカツカ



山賊E「これを……今日中にって……」


デーン!!



山賊E「会議報告、活動報告書……伝票の整理……しかも全支部分!?」

山賊E「……お、俺、なにかした?」





課長「あちゃー、やっぱりこうなったか……」

山賊E「課長……俺、受付の姉貴になんかしましたかね……?」ズーン

課長「心当たりはあるかい?」

山賊E「……えっとあるとしたら一つだけ……でも、これは受付の姉貴とは全然関係ないですよ?」

課長「ふむ……もしかしたら彼女はどっかの誰かさんと自分を重ねて見ていたのかもしれないね」

山賊E「どういうことですか?」

課長「身分違いの恋。そういう経験が彼女にもあったのかも知れないよ?」

山賊E「受付の姉貴も貴族を好きになったんですか?」

課長「おや? 私は相手が貴族なんて一言も言ってないんだけどなぁ……?」ニヤニヤ

山賊E「あ……」カーッ

課長「……一つ、これは年長者の意見だと思って聞いてくれるかい?」

山賊E「は、はい」

課長「君がなにをもって彼女を突き放したのかは、私にはわからない。まぁ、色々と察しはつくけどね」

山賊E「なんでそのことを……」

課長「まぁ、聞きなさい……でもね、私は理由がなんであれこう思うんだよ」


課長「『惚れた女を泣かせるなんて男として最低だ』ってね」


山賊E「……」


課長「ああ、これは男女差別とかそういうことを言いたいんじゃないよ? ただね……惚れた女性の泣き顔より、笑顔が見たい。それが男ってもんだろう?」

課長「君が最後に見た彼女の顔は笑顔だったかい?」

お嬢様(………馬鹿!!)

山賊E「……いえ」ズーン

課長「それで、本当にいいのかい?」

山賊E「……」

課長「ま、じっくり考えてみればいいさ……この仕事は私の方で再分配しておこう。君は気にしなくていい」

山賊E「ありがとうございます……」

課長「気にすることはない。若者を導くのはいつだって年長者の務めみたいなもんだからね」ハハッ




同僚「課長ー!!」

課長「こらこら、同僚くん役所内は走ってはダメだよ?」

同僚「今はそれどころじゃないですよ!!」ハァハァ

課長「どうしたんだい?」

同僚「じ、実は……」



同僚「あの子が行方不明だそうです!!」



山賊E「え……」



課長「……あの子、というと……」

同僚「はい、彼にいつもくっついていた女性のことです。昨日から家に戻っていないそうで……最近ここに通っているようだから何かわからないかと、心配した召使いの方が……」

山賊E「ゆ、行方不明って……どういうことですか!?」

同僚「それがまだ私にも詳しいことはわからなくて……」

課長「落ち着いて、とにかく話を聞こう。それでその召使いという方はどちらに?」

同僚「今、応接室で受付が対応しています」

課長「わかった。すぐに私も行こう」

山賊E「お、俺も同席していいですか?」

課長「……いいだろう。来なさい」

山賊E「はい!」





――応接室――



受付「……それで、昨日の朝、ここに来ると行ったっきり帰ってないんですね?」

召使い「……ええ。今までこんなことはありませんでした。最近、よくこちらに伺っているとの事でしたのでもしかしたらと思って……」

受付「残念ながらうちにも来ていないんですよ

召使い「ああ! お嬢様……!!」

受付「落ち着いてください。パニックになってはダメですよ」

召使い「旦那様も奥方様もいらっしゃらない時に……私はどうしたら!!」

受付「大丈夫ですから、落ち着いてください!」



ガチャ


課長「……お待たせしました」

受付「課長! ……と」

山賊E「……」ペコッ


課長「悪いけど彼も同席させてもらうよ。話を聞く限りでは恐らく彼が行方不明になる前の彼女に会った、最後の人だろうからね」

召使い「それは本当ですか!? お嬢様はどちらに!?」

山賊E「……それが、わからないんです」

召使い「そんな……」

山賊E「ただ……心当たりはあります」

召使い「心当たり!?」

山賊E「彼女は最近、ある男とひと悶着ありました。もしかすると……」

課長「というと……地主の男か」

受付「うちに来て無茶苦茶言ってたあの野郎ですね」

山賊E「はい。あの後、彼女があの男に捕まったということも考えられます。奴隷を逃したことを随分恨んでたようですし、『必ず痛い目に合わせる』といったことも言ってましたから」

課長「……だが、確証は無い」


山賊E「直接聞いてみますか?」

受付「『お宅にうちのお嬢様来てませんか』ってですか? すっとぼけるに決まってますよ」

山賊E「ですよね……」

課長「……ふむ、これは行方不明事件として騎士団に動いてもらうしかないね」

受付「ちょっと待ってください。騎士団だってすぐに来てくれるとは限りませんよ?」

課長「だったらどうするって言うんだい?」

受付「直接乗り込んで地主をとっちめましょう!」

課長「……いいかい、受付くん。もちろん理解しているとは思うが我々は公務員なんだ。与えられた権限の範囲内でしか行動できない。この件は完全に我々の権限の範囲外だ」

受付「ですけど、こうしている間に彼女にもしものことがあったら……」

召使い「ああ、お嬢様!!」

課長「それでもだ。我々は正義の味方ではない。法律やルールにのっとった行動をとらなくてはならないんだ」


受付「誰ですか! こんな面倒なルール作ったのは!?」

課長「それが国を運営する上での秩序というものなんだ、受け入れなさい」

受付「……でも!!」

課長「それに、地主の男の言動が怪しかったというそれだけでは我々も騎士団も彼を裁くことはできない。ちゃんと捜査をしなければ手出しができないんだよ」

課長「困ったことに今の段階では彼女がどうなったのか、目撃情報が無い。我々ができるのは騎士団に連絡することだけだ……そういうことですので、申し訳ないですがご理解ください」

召使い「そんな……」

山賊E「………」

課長「すぐに騎士団を要請しよう、受付くん」

受付「………わかりました」

召使い「……ああ、どうしてこんなことに……」





山賊E「………」スクッ


課長「どこに行くんだい?」

山賊E「ちょっとお手洗いに」

課長「………『君は自分の立場というものがわかっているのかね?』」

山賊E「新人の癖に話の途中で席に立っちゃってすみません、でも『生理現象なので』」

課長「分かっているのならいい。『生理現象ならば仕方のないことだ』」

山賊E「すみません」

受付「???」

課長「どうせなら目立たないようにする必要があるだろう。2階の更衣室なんて人気が少なくていい。それに『最低限のものは揃っている』君の力になってくれるはずだよ?」

山賊E「……ありがとうございます」

課長「気にしないでくれ。ああ、それと『なるべく早めに済ませてくるんだよ』?」

山賊E「ええ」ダッ




ガチャッ


受付「えっと……トイレに行くんですよね?」

課長「まぁ、生理現象だから仕方ないね。すみません、新人の教育がなっていないもので」ペコッ

召使「い、いえ……?」

課長「さぁ、受付くん。我々もできることからやっていこうじゃないか!」スクッ

受付「は、はい……」







――???――



お嬢様(……ここは……どこ……ですか……?)


メラメラメラメラ


お嬢様(ああ、そうでした……屋敷に何者かが侵入したんでした……)

お嬢様(私はみんなを助けるために自室の衣装棚に隠れて機会を伺っていたのです……)


バチバチバチ


お嬢様(部屋を探索しにきた侵入者がこの棚を開けた瞬間、掴みかかり人質にして侵入者を追い払う算段でした……)

お嬢様(ところが……侵入者はこの部屋を探索することがなく……私は極度の緊張と深夜だったということもありうっかり寝てしまったのです)

お嬢様(そしてなにか焦げ臭さを感じて私が目を覚ますと目の前は火の海でした)




お嬢様「と、扉が開かない!」ガチャガチャ

お嬢様(扉は熱で変形し、私の力では開いてくれませんでした。完全に、閉じ込められてしまったのです)

お嬢様「だ、誰か!!」

お嬢様(助けを呼んでも誰も来ません。それでも私は必死に助けを呼びました……でも)

お嬢様「……け、煙が中に……」ゲホッゴホッ

お嬢様(このまま助けが来なければ死んでしまう。でもこの状況で誰が来てくれると言うのでしょうか……? きっと私はここで死ぬのだろう……そう思いました)

お嬢様「……お父様……お母様……」

お嬢様(あれ? 私はこのまま本当に死んでしまうのでしたっけ?)









お嬢様「……うっ……」

地主「おはようございます、お嬢様。この世の地獄、あるいは天国へようこそ」ニヤッ


お嬢様「……夢、ですの……?」

地主「どうやら突然のことで混乱しているみたいだな……オラッ! しっかりしろ!」ペシペシ

お嬢様「……うう……」

地主「気分はどうだい? お嬢様?」

お嬢様「……ここは……」

地主「恐れながら俺様のお気に入りの部屋へあなた様をご招待させていただきました」ペコリ

お嬢様「なんですの……この悪趣味な部屋は……」

地主「たくさんの奴隷を飼育しているとよ、自分の立場も理解してねぇクソ生意気な奴がいるもんでね。ここはそういった奴らを改めて教育する場所だよ」ニタッ


お嬢様「この……」ガチャガチャ

地主「暴れても無駄だ。その鎖は女の力じゃ外れない」ガッ

お嬢様「くっ……その薄汚い手を話しなさい……!!」

地主「また俺の奴隷を勝手に逃がしたな」

お嬢様「私は……この地を預かる……領主の娘として……当然のことをしたまでです!!」

地主「……やっぱり貴族の娘か、どうりで世間を知らねぇわけだ。学校で習わなかったか? 物事にはやっていいことと悪いことがあるって」ギギギ

お嬢様「どの口が……言うのですか……!!」

地主「他のクズみてぇな奴隷はいい。だが『あいつ』だけはやっちゃいけなかった。お前は俺の宝まで逃がしたんだ! どういうことかお前にわかるか!!」

お嬢様「……そんなこと知ったこっちゃないですわ! 私は間違って……いません!!」

地主「なら、俺がお前に現実ってやつをここで叩き込んでやるよ」フフッ

お嬢様「私を……どうするつもりですか……?」

地主「お前も俺が飼育してやるって言ってんだよ。奴隷としてな」ヘッヘッヘ


お嬢様「なん……ですって……?」

地主「お前がこの部屋を出る頃には俺の言うことをなんでも聞く従順な奴隷になっている。今からそれを……お前の体と心に……たっぷり教えてやるっていうんだよ!!」

お嬢様「そんな……ことをしても……無駄です……うっ」

地主「体に力が入らないだろう? 特殊な薬を使わせてもらった。お前はこの部屋から出られないぞ?」

お嬢様「すぐに……私を……解放きなさい……!! あなたを騎士団に突き出します!!」

地主「おお、怖い怖い。だがその顔がそのうち絶望に変わると思うとゾクゾクするぜ!」

お嬢様「……なにを馬鹿な……ことを!! 私は……」


山賊E(もう二度と俺の前に現れないでください! 迷惑です!!)


お嬢様「……う……あ…」ギュッ

お嬢様「……間違って……いません!!」


地主「戯言は十分だ。いいか、 俺は今まで多くの奴隷を屈服させてきた。そのお陰で俺の土地はここまで潤い、俺は大金持ちになることができたんだ」

地主「どんな奴も俺に跪く。お前も、例外じゃない」

地主「いずれお前も俺の手足となって働くことに喜びを感じることになるさ」ニタニタ

お嬢様「……ありえ……ませんわ……」

地主「もっとも? お前は肉体労働より、こっちの方が……」サワッ

お嬢様「……恥を知りなさい!!」ペッ

地主「……この!!」バシン

お嬢様「きゃっ……」

地主「生意気な女だ……まぁいい、時間はたっぷりとある……おい」ニヤッ

覆面達「はい」ザッ

地主「まずは少し痛めつけてやれ。こいつに自分の立場をわからせてやるんだ」

覆面「わかりました」スチャッ

地主「それではお嬢様、私は席を外させてもらいますよ。次に来るときはもう少し素直になっておいてくださいね?」

お嬢様「誰があなたなんかに……!!」

地主「……やれ」

覆面達「………」ズラズラズラ

お嬢様「くっ……」





――更衣室――


山賊E「最低限のものは揃ってるって言ってたけど……」

ズラッ!!

山賊E「まんま俺が使ってた山賊道具じゃないか……ここに来る時に全部押収されたと思ってたのに……課長、とっといてくれてたのか……」

山賊E「山賊七つ道具の一つ目! 潜入用山賊着!!」ババン

山賊E「あ、いや別に誰に言うわけでもないんだけど」ハハッ


シュルシュルシュル


山賊E「まさかもう一度この服を着ることになるなんて思いもしなかったな……でも、これでいいんだよな」


山賊B(……仕方ないって言葉で片付けたら守んなきゃいけない大切なものまで知らないうちに失くしちまうだろ?)


山賊E「仕方ないじゃない……これを仕方ないで片付けちゃったら、俺は俺じゃいられなくなっちゃうと思うから……」


ファサッ……ギュッ


山賊E「よし! 忘れ物は無し、これで準備OKってところかな」

山賊E「みんな……ごめん。俺、もう一回だけ、山賊に戻ります。どうしてもやらなきゃいけないことがあるんで」キッ




山賊E「それじゃ、いってきます!!」ダッ

といったところで今日の投下は以上です!


伸びに伸びてる番外編、正直文量が本編を超えそうです……でもちゃんと終わらせます!!


明日も同じ時間に投下したいと思っています!

それでは今日もお付き合いくださり、ありがとうございました!!

乙ー。

そろそろ幼女の出番を…

そして課長の正体を…

>>468

こればっかりは本当に申し訳ないです……

幼女出したいんですけどいきなり出すわけにもいかず、しばらく「むい!」ってセリフも書いてないし……話をまとめるのが下手&遅筆な自分が憎い……

おはようございます、昨日のレスを見ていて思いついた話を突発的に投下します。番外編の流れをぶった斬りますがご了承ください


「幼女は賢くなりました」



――某日、役所待合室にて――





幼女「……むぅ……勉強になる……」

幼女「ヨージョはまたひとつ賢く……なりました!」テレレレテッテッテー

幼女「ムフー!」ドヤッ



勇者「幼女ー!」

幼女「ユーシャ!」ピョンピョン

勇者「ごめんな、幼女。退屈だったろ」

幼女「……お金のためには……必要なこと……でしょ? 大丈夫!」

勇者「なんだろう、物分りが良すぎて逆に罪悪感があるんだけど……」

幼女「チャーハンのためなら………へっちゃらです!」フンス


勇者「悪いなー、俺もできれば働きたいんだけど」

幼女「そんな気なんて……これっぽっちも……無いくせに」ボソッ

勇者「やっぱりなー、幼女には嘘はつけないなー」ワシャワシャ

幼女「むう……いいってことよ!」ビシッ

勇者「本当にどこでそう言う言葉を覚えてるんだよ……」ハァ

幼女「……これ」スッ

勇者「ん? これ辞書か?」

幼女「言葉を覚えたいって言ったら……助手がくれた!」

勇者(機械性なんだからもっとこう、知識をインストールとかそういうのはできないもんなのか? というか子供に辞書渡すって……)

勇者「面白いのか? それ?」

幼女「知識が増えるということは……喜び……」ムフー

勇者「俺にはわからない感情だな……」

幼女「ユーシャにも教えてあげる……ね!」

勇者「ああ、まぁ付き合ってやるか」

幼女「むい! じゃあ……今日覚えたばかりの!」

勇者「お! 聞かせてもらおうか!」

幼女「『番外編』」

勇者「ん? 番外編って物語とかでよくあるあれのことか?」


幼女「今から説明……します! ユーシャは黙って……て!」

勇者「ああ、ごめんごめん」

幼女「物語の本編から逸れた派生的な物語のこと。スピンオフ、外伝とも」

勇者(文字を読むときは途切れたりしないんだな……)

幼女「ユーシャ……知ってた?」キラキラキラ

勇者「そうだな幼女。『本編とは全然関係ない話』のことを番外編って呼ぶんだぞ? 本編に比べたらあんなもの、おまけみたいなもんだ!」

幼女「おまけ!」

勇者「そうおまけ! だから本編の方が偉いし、本編の方がすごい! 番外編は所詮、本編がないと存在できないんだよ! わかってんのか、コラァァ!!」ガー

山賊E「あ、あの勇者様……一応ここ、役所の待合室なんでもうちょっと声絞ってもらっても……」

勇者「おお、ごめんね、仕事の邪魔しちゃって『番外編』君!!」ポンポン

山賊E「あ、いやなんのことかさっぱりなんですけど……」

勇者「あんまり調子に乗んなよ?」ミシミシミシ

山賊E「痛い! 痛いですよ勇者様!!」

幼女「むい?」

勇者「ああ、ごめんな幼女。次の言葉にいこうか」

幼女「うん! ………えっとね……おお、これがいい……かも!!」

勇者「ん? なんだなんだ?」

幼女「ユーシャにぴったりな……言葉!」

山賊E(なんか嫌な予感がする……)ダラダラ

勇者「お、それじゃあ教えてくれるか?」

幼女「『主人公』」

ユーシャ「………」ピキッ

ユーシャ「………」ピキッ→×

勇者「………」ピキッ→○


でした。

では引き続き


幼女「物語のメインとなる役割を持つ人物のこと、基本的に物語はその人物を中心に描かれる。人気も一番高いことが多い」

勇者「………」ピキピキッ

幼女「ユーシャ、知ってた? ねぇ、知ってた?」キラキラキラ

勇者「ああ、幼女。それは知らなかったなー、そうか、主人公ってそんな人のこと言うのかー」アハハ

幼女「主人公……ユーシャにぴったり!」ピョンピョン

勇者「ありがとうな、幼女。俺、嬉しいよ」ナデナデ

幼女「えへへ」

勇者「そうか……」ギロッ

山賊E「あ、あの……勇者様……なぜ先程から俺のこと見て……?」

勇者「そうか……」ジー

山賊E「い、いや、あのなんか怖いんですけど!!」

勇者「いや別になんとも思ってないっすよ?」

山賊E「じゃ、じゃあなんでこっち見てるんですか!?」

勇者「いやぁ、別にー!!!」ガンッ

山賊E「態度悪いな!!」

勇者「ああ、でもなんていうかさー」

山賊E「な、なんですか……?」

勇者「一発殴らせろ」

山賊E「はいぃ!?」


「おら待てコラァ!! 俺は主人公じゃねぇのかコラァ!!」「そんなの知らないですよ!!」「コラ、ふざけてないで仕事しなさい! 勇者様もあんまり騒がないでください!」「うるせぇ! おめぇはいいよなー、平均的に出番あってよー!」「あなたの財布を握っているのは私たちだってこと理解してますか?」「………はい」



幼女「今日も……賢くなりました!」

幼女「もっと色んなこと……知りたいなぁ」


「そんなんだから出番減らされるんですよ!」「……はい」「自分の立場にあぐらをかいているから数々の変人どもに埋もれてしまうんです!」「……おっしゃるとおりです」「私のようにもっと物事に対して貪欲にいかなければなりません!」「……はい」「今を変えていかなければ未来はないんですよ!?」「……はい」「ちょっと聞いてます!?」「はい! ちゃんと聞いてます! 勉強になるっす!!」「まったく……!!」



以上です


早く続き書きやがれって話ですよね、本当に申し訳ありません。でも勇者いじりをしてみたくて……

夜の方もちゃんと通常通りに投下していきますのでよろしくお願いします!

ではありがとうございました!!

乙、あと
お嬢様「くっ……その薄汚い手を話しなさい……!!」 じゃなくて
お嬢様「くっ……その薄汚い手を離しなさい……!!」 じゃないすかね、多分
間違ってたらスマソ

こんばんは、今日も番外編投下していきます。自分でもここまで長くなるとは思わなかったので正直申し訳ないです……

あと3日ほどで完結できると思いますので……最後までお付き合いいただけたらと……すみません

それでは今日も少し早いですがよろしくお願いします!!


――王都 『復興支援大会議』会場―――


「すみませーん、会場で使う椅子の準備をお願いしまーす!」

頭領「へい!」タッタッタッタ

「この資料をそっちに運んでおいてくださーい!」

山賊D「了解っす!」ウォォォォ!!

「来賓の方にお出しするお茶菓子のセットは……」

頭領「ああ、それならもう自分が手配しておきました! もう会場に着いているころだと思いますぜ!」

「あ、ありがとうございます……」

頭領「いやー、流石王都で行う会議だぜ!! 規模が違えな!」

山賊D「も、もう忙しすぎて目が回りますよ、お頭……」

頭領「バカ野郎! そんなんで根をあげてんじゃねぇ!! 俺達は他の皆さんと違って頭の出来が悪ぃんだから体を使わねぇと!」

山賊D(ついてい行くんじゃなかった……)




ツンツン



山賊D「ん?」

緑髪の少女「やっと見つけたのです!」ビシッ

山賊D「女の子? どうしたんだいお嬢ちゃん? もしかして迷子かな?」

緑髪の少女「君達が噂の山賊なのですね!!」ババーン

山賊D「ちょ!?」バッ

「山賊?」「今誰か山賊って言ったか?」「どうせ空耳だろ」

緑髪の少女「ムー!! ムゥゥゥゥ!!!」

頭領「おい、なにしてやがる!? お前もこっち来て手伝え……って、どうしたんだ?」

山賊D「い、いやなんか迷子みたいなんですけどね……」

緑髪の少女「ムガガガガガ!!!」バシッバシッ

頭領「………離してやれよ。死にそうだぞ」

山賊D「ああ、やべ……」パッ

緑髪の少女「こ、殺す気ですか!?」ゼェゼェ


頭領「これはすまねぇな! 嬢ちゃん! こいつが失礼なことしちまってよ!」ガハハ

緑髪の少女「まったく、知能指数が低い山賊なのですよ!!」

頭領「!!!」バッ

緑髪の少女「ムー!!」ジタバタ

頭領「お、おい! なんでこの嬢ちゃん、俺たちのこと知ってんだ!?」

山賊D「わかりません! いきなり現れたんで……」

緑髪の少女「ムゥゥゥゥ……」サー

山賊D「そんなことより、お頭……この子顔色変わってきちゃってますよ?」

頭領「ああ、それはまずいな」パッ

緑髪の少女「君達……わざとやってるのですか……? だとしたら許せません……!!」ゼェゼェ


頭領「ダメだぜ嬢ちゃん、俺たちは山賊から足を洗ったんだ。こんなところで昔のことを喋られたら困るんだ」ヒソッ

緑髪の少女「こんな奴らを雇うなんて、やっぱりあの男が考えていることはまったく理解できないのですよ! この山ぞ……」ムガッ

山賊D「だから! 言わないでって!!」

緑髪の少女「ムー!!………ぷはっ!! いい加減にするのです!!」

山賊D「お嬢ちゃんが人の話を聞かないからでしょ!!」

緑髪の少女「お嬢ちゃんではありません! まったく! 礼儀知らずな輩ですね……!! これだから人間は嫌いなのです!」

頭領「ハッハッハ! おかしな嬢ちゃんだ。なんだい、ママとはぐれちまったのかい?」

緑髪の少女「なっ! よりによって今度は私を子供扱いですか!? 私はただ君達がどんな奴か様子見しにきただけなのです!」

頭領「強がるな、強がるな!」ガッハッハッハ

緑髪の少女「違うのですよー!! 人の話を聞きなさい、愚かな人間ども!!」

山賊D「じゃあ俺、誰か呼んできますよ。このまま放ったらかしじゃかわいそうですし」

緑髪の少女「だーかーらー!!」プンスカ

頭領「ああ、頼む」

山賊D「へい!」タッタッタッタ


頭領「安心しな、ママはすぐに見つかるからな」ヘヘッ

緑髪の少女「本当に単純な思考をしているのですね……」

頭領「え?」

緑髪の少女「君達は物事を短絡的にしか捉えることができない」

緑髪の少女「『あの時はこうするしかなかった』『生きるためには仕方なかった』……だから自分に罪は無くて自分は許されるべきなんだ………違いますか?」

頭領「………」

緑髪の少女「いくら君達が罪の意識に苛まれ、苦しんだ振りをしたところで君たちに奪われた物や金品、あるいは命、事実は消えてなくなったりはしません。君達の罪は君たちが死ぬその瞬間まで消えてなくなることはないのですよ」

緑髪の少女「自分から更生したと宣言したところで君達の魂は罪で汚れたまま……君達が許されることは永久にない………罪を償う? 笑わせてくれるのです。 『君達は一生罪人ですよ』」ウフフ


頭領「………痛いところ突くなぁ、嬢ちゃん」

緑髪の少女「事実を言っただけなのです」

頭領「なら、お嬢ちゃんにひとつ聞いてもいいかい?」

緑髪の少女「いいですよ」

頭領「罪人が平和を願っちゃダメかね?」

緑髪の少女「………」

頭領「俺たちがひでぇことした事実は変わんねぇさ、嬢ちゃんには刺激が強すぎて言えねぇことも色々とやってきた」

頭領「でもよ、そんな俺たちを必要だって言ってくれて、手を差し伸べてくれた人が確かにいたんだよ。こんな俺たちの力を貸してくれって言ってくれた人がいたんだ」

頭領「………初めてだったんだよ。山賊を始めてから誰かに必要とされたことなんざ今まで無かったからよ。だから思っちまったんだな、この人たちの力になりてぇ、この人たちが望む未来を作りてぇって」

頭領「そしたら段々俺たちの世界が広がってってよ、あの人たちの夢が今じゃ俺の夢になってんだ」

緑髪の少女「夢……ですか?」

頭領「ああ、でっけえ夢さ。俺たちみたいな半端もんを二度と産まない、そんな優しい世界を作るって夢。『力が全て』なんて世界じゃなくて、誰もが笑って暮らせる世界。夢物語だろうけどよ、いつかそんな世界をこの目で見てみてぇんだ」

緑髪の少女「誰もが笑って暮らせる世界……」ギュッ

頭領「そのためだったら俺はこの命、いつでも賭けてみせるぜ? あいつらもそう思ってくれているはずだしな!」ガッハッハッハッハ

緑髪の少女「……本当に……単純なのですよ」ハァ

頭領「おお、だけど悪くねぇだろ?」ガッハッハッハ

緑髪の少女「……そうですね、悪く、ないのです……」

山賊D「お頭―!!」

頭領「おお、見つかったか?」



緑髪の少女「ならばその夢……叶えてみせるのですよ……」フッ



頭領「え?………おい、嬢ちゃん?」

山賊D「とりあえず知ってそうな人に聞いてみたんですけど、とりあえず設営本部に連れてきてくれって……あれ、あの子は?」

頭領「……消えた……? なんだってんだ? 一体……」



――地主の屋敷 廊下――



山賊E「これで……よし。開いた!」

ガチャ!

山賊E「山賊七つ道具の二つ目……『鍵開けピック』!!」ババン

山賊E「……周りには誰も……いない……よね?」キョロキョロ

山賊E「どうやら大丈夫そうだ……といっても久々の仕事だから鈍ってるな、スピードも落ちたし……本当はこんな技術必要ないんだけど」ハァ

山賊E「さて、あの子はどこにいるのかな……」ソロリソロリ


ザン!!


山賊E「うわっと!!」ヒラッ

「侵入者……発見……」

山賊E「……もう見つかった……人ん家に忍び込むのとか得意だったんだけどな……」


「排除……する……」チャキッ

山賊E「……あんまり、手荒なことしたくないんだけど……って」クルッ

「覚悟は……いい……?」

山賊E「なに? その変態みたいな格好……ほとんど裸じゃないか……寒くないの?」

「これが……私の……制服……」ビキニッ

山賊E「こんな小さな女の子にこんな格好させるなんて……あの男、最低だな」

「失礼な………こう見えても18……」

山賊E「え、同い年!? 見えないな……じゃあ君は、ここの奴隷ってことでいいんだよね?」

奴隷戦士「……そう。私はここのご主人様に仕える……奴隷。侵入者は……見つけ次第……殺す……それが……命令……」

山賊E「参ったな……侵入者じゃないって言ったら信じてくれる?」

奴隷戦士「無理……」チャキッ

山賊E「一応、聞くけどその手に持ってる大斧をどうするつもりかな?」

奴隷戦士「……これであなたの……頭を……パッカーンと……割るの……」

山賊E「わぁお、思ってたよりバイオレンス……」


奴隷戦士「攻撃……開始……」ビュオッ

山賊E「ちょっ!? 速っ!!」

奴隷戦士「……パッカーン……」ブンッ


ドガァァン!!


山賊E「ぎ、ギリギリセーフ……!!」

奴隷戦士「さっさと……死んで……?」

山賊E「その前に目的を果たさないとね!」ダッ

奴隷戦士「……来るの……?」

山賊E(あの大斧、取り回しが難しいはず。ゼロ距離ならこっちにも勝算がある!!)

山賊E「距離を詰めて……!!」

奴隷戦士「……」ヒラッ

山賊E「距離を……!!」

奴隷戦士「……」ヒラッ

山賊E「詰めさせてくれよ! ちくしょう!!」ガンッ


奴隷戦士「あなたの……考えてること……チョコレートより……甘々……」

山賊E「ですよねぇ……」

奴隷戦士「茶番は……終わり……」チャキッ

山賊E「げっ……」

奴隷戦士「今度こそ……パッカーン……!!」ビュンッ

山賊E「た……タイム!!!」

奴隷戦士「……」ピタッ

山賊E「……ダメ?」

奴隷戦士「ダメ……」

山賊E「ちょ、チョコレートあるよ?」

山賊E(ああ!! 何言ってんだ俺!?)

奴隷戦士「……!!」ピクッ

山賊E(嘘、手応えあり?)

奴隷戦士「そ、そんな嘘に……私は……騙されない……」チラッチラッ

山賊E「う、嘘じゃないって……ほ、ほら!!」スッ

奴隷戦士「………おー」


山賊E「ほ、ほらどうぞ」

奴隷戦士「…………」クンクン

山賊E(すごい嗅いでる……犬みたい……)

奴隷戦士「本物……?」

山賊E「ほ、本物!」

奴隷戦士「初めて……見た……話には……聞いてたけど……」

山賊E「そ、そうなんだ……」

奴隷戦士「タイムを……許可する……」

山賊E「あ、ありがとう……」

山賊E(残業の時用にお菓子持っててよかったぁぁぁぁああああ!!!)

奴隷戦士「……♪」カサカサ

山賊E(なんか心なしか嬉しそうだ……)

奴隷戦士「………」アーン

パクッ

奴隷戦士「ふぅおおおおおお!!!」

山賊E「お、美味しい?」

奴隷戦士「……こんな美味しいもの……食べたの……初めて……」

山賊E「……そう」


奴隷戦士「……ありがとう……」

山賊E「じゃ、じゃあ一つ聞いてもいいかな?」

奴隷戦士「許可する……」

山賊E「ここに女の子が連れて来られたと思うんだけど、知らない?」

奴隷戦士「……知らない……ここにはいっぱい奴隷が来るから……」

山賊E「そう……」

奴隷戦士「……ただ……」

山賊E「ただ?」

奴隷戦士「……言うことを聞かない……奴隷は……調教室に……連れて行かれる……」

山賊E「調教室!?」

奴隷戦士「……そこで……ここでの生き方を……徹底的に……叩き込まれる……私も……」

山賊E「そんな……」

奴隷戦士「私も……?……うっ」ズキッ


山賊E「どうしたの!?」

奴隷戦士「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」ガチガチガチ

山賊「大丈夫!?」

奴隷戦士「言う通りにしますから言う通りにしますから!! 妹だけには手を出さないで!! 妹だけには!!!」ガタガタガタ

山賊E「ちょ、ちょっと!?」

奴隷戦士「いや、いやぁ!!」

奴隷戦士「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

山賊E「おい! しっかりしろ!!」

奴隷戦士「…………」

山賊E「大丈夫……か?」

奴隷戦士「…………」ギロッ

山賊E「!!!」

奴隷戦士「攻撃……再開……!!」

山賊E「……マジかよ!?」

奴隷戦士「!!!」ブォッ

山賊E「――!! 山賊七つ道具の三つ目!! 『煙玉』!!!」


バンッ!! モクモクモク………


山賊E「どうだ!………て、えええ!!??」

奴隷戦士「うぁぁぁぁああああああ!!!!!」ブンッブンッ

山賊E「危なっ!」ヒラッ


山賊E(視界を奪ったはずなのに……闇雲に大斧を振り回してるだけなのか?)


奴隷戦士「うがぁぁぁぁぁああああああああああああ!!!!」ブンブンブン


山賊E「ち、違う! あれは闇雲に振り回してるんじゃなくて……斧の回転で煙を……!!」

奴隷戦士「ふん!!」ブォッ

山賊E「煙を払っちゃったよ……この人」

奴隷戦士「……見つけた……」ギロッ

山賊E「ダメだ……これは勝てる相手じゃ無い……こういう時は……」

奴隷戦士「侵入者は……殺す…殺す……殺す殺す殺す殺す殺す殺す……」

山賊E「逃げるしかないでしょぉぉぉぉ!!」ダッ

奴隷戦士「待て!」

山賊E(あの大斧持って追いかけるんだ。逃げ切れる……はず!!)

山賊E「ああもう! 俺は勇者や騎士様じゃないんだって!!」



ダダダダダダダダダダ!!!





――調教室――


ガチャッ


地主「首尾の方はどうだ?」

覆面「一通り済みました」

地主「それで?」

覆面「依然として反抗的な目を……」

地主「まさか、手加減なんてしてねぇよな?」ギロッ

覆面「め、滅相もありません……」ガタガタガタ

地主「まぁいい、こっからが本番だしな……下がってろ」

覆面達「………」ザッ

地主「……さて、気分の方はどうだい、お嬢様よ?」

お嬢様「……気分? そんなもの身体中のあちこちが痛くて最悪ですわ……!!」ペッ


地主「女にこの仕打ちはきつかったか? だが悪いな、家畜には身分なんて関係ないんだ。俺は男だろうが女だろうが同じように扱う」ヘッヘッヘ

お嬢様「……今に見てなさい……すぐに誰かが助けに……」

地主「おいおい……助けなんか来るかよ! 仮に来たとしてもうちには優秀な警備の奴隷がいる。 俺のために喜んで命を差し出すような奴隷がな。騎士団が来たところで返り討ちだぜ?」

お嬢様「そんなことを……すれば……法律によって……あなたは罰せられ……」

地主「法律? そんなもんが機能してるところなんて見たことあるか? あいつら公務員はろくに仕事もしねぇ、そのくせ俺たちに税金を納めろと偉そうに言ってきやがる!」

地主「あいつらなんてな! 金を握らせちまえば黙る犬っころなんだよ!!」ガッハッハッハッハ

地主「誰も俺に逆らえない! 奴隷も! 公務員も! そしてお前もだ!!」

地主「たっぷりと……まだまだ時間をかけて……俺好みの奴隷にしてやるよ!!」

お嬢様「くっ……」


お嬢様(誰か……)

山賊E(俺はこの人と結婚する。君とは一緒になれない)

お嬢様「うっ……」ズキッ

お嬢様(こんな時、あの方が来てくださったら……なんて、出来過ぎですわよね……だってあの方にはもう心に決めた人が……)

山賊E(ダメじゃないですか、そんなやんちゃしちゃ)

お嬢様(手、あったかかったな……)グスッ


地主「おいおい泣いたって無駄だぞ? まだまだ地獄は続くんだ……まぁ、今すぐここで俺に忠誠を誓い、靴でも舐めてくれたら許してやらないこともないけどな?」ククク

お嬢様「誰が……そんなこと……!! 本当に……あなたの……魂は……腐ってます!!」

地主「魂が腐ってる? 面白いことを言うじゃねぇか」

お嬢様「そんなことをし続けて! あなたの良心は痛まないというんですか!」

地主「そんなもの気にしてちゃ、この世界じゃ生きてけないぜ? お嬢様よ!」ケッケッケ

お嬢様「今すぐ悔い改めなさい!! あなたは間違っています!!」

地主「……どうやらお前には厳しい現実ってやつを教えてやらなきゃならないらしいな……おい」ニヤッ

覆面達「はい……」ザッ

お嬢様「現実……?」

地主「お前の目にはこいつらがどう映るんだろうな? ほらよ!」バサッ

覆面達「………」バッ

お嬢様「なにを……?」

地主「さっきからお前を散々痛めつけていたこいつら……どこかで見た顔じゃないかい?」

お嬢様「……あなた達は!!!」

「…………」

お嬢様「私が解放した方達……どうして!!」

地主「昨日のことさ……こいつらはな、帰ってきたんだよ。自らの足でな!!」フッフッフ

地主「そしてこいつらは俺に向かってこう言った! 『なんでもするからここにいさせてくれ』ってなぁ!!」

お嬢様「そ、そんなことありえませんわ! あ、あなたが無理矢理捕まえたのでしょう!?」


地主「違うね、間違いなくこいつらは自分の意思でここに戻ってきたんだよ!!……いいか、お嬢様よ。奴隷ってのは一人じゃ生きていけねぇのさ。誰かに従い! 踏みにじられ! ゴミのように扱われる! そんな生き方しかこいつらは知らないんだよ!! だからこうして自ら地獄のような場所に戻ってきたんだ! 違うか?」

お嬢様「そ、そんな……じゃ、じゃあ今まで私は……」

地主「そうだ。お前は『助けたと思った奴らに痛めつけられてた』んだよ!」ニヤニヤ

お嬢様「!!!」

地主「なぁ、どうだ、お嬢様よ? 人に隷属することでしか生きられない。差し伸べた手を振り払うどころか、その恩を仇で返す……自分の意思を失ったこいつらの魂こそ『腐ってる』って思わないかい?」

お嬢様「そ、そんなことない……」

地主「ならこいつらの目を見てみろ!助けてくれてありがとうって目をしてるのか? 捕まって申し訳ないって目をしてるか?」

奴隷達「………」ジー

地主「『余計なことをしやがって』って目じゃないか?」ニタァ

お嬢様「……!! そ、それもこれも!! 全部あなたがあの方達を!!」

地主「あいつらをこんな風にしたのは俺だけじゃない! 歴史が! 戦争が! ルールが! そしてなによりこいつらが自分自身を奴隷にしたんだよ!!」

地主「俺はただそれを有効利用しているだけだぜ?」

お嬢様「……う……あ……」ガタガタ


地主「おい、お前ら! 黙ってないでおなんか言ってやれ! こいつのせいで自分がどんな目にあったのか!!」

奴隷「……ムチで叩かれた……」ボソッ

奴隷「逃げている最中……石を投げられた……」ボソッ

奴隷「一昨日から……なにも……食べていない……」ボソッ

お嬢様「いや……いや……」

奴隷「いっぱい……お仕置きをされた……」

奴隷「……こんなことになるくらいなら……逃げなきゃよかった……」

奴隷「……自由なんていらない……」

お嬢様「やめて……そんなつもりじゃ……」

奴隷「こんなことになったのも……全部お前のせいだ……」

お嬢様「やめて……」

奴隷「そうだ……お前のせいだ……」


「お前のせいだ」「お前のせいだ」「お前のせいだ」「お前のせいだ」「お前のせいだ」「お前のせいだ」「お前のせいだ」「お前のせいだ」


お嬢様「いや……いやぁぁあああああああああ!!!!!」


地主「いいか、よく聞け。世間知らずのお嬢様! これが奴隷どもの現実なんだ! こいつらは支配されることを望んでるんだよ! 俺は何一つ悪くない!!」

お嬢様「……それでは……私は……私はなんのために……」

地主「残念だったな! お前のやったことなんて、こいつらにしてみたらただのお節介でしかないんだよ!!!」

お嬢様「……うう……」

お嬢様(本当に……? 本当に……私のやってきたことは……)ガクンッ

地主「……チッ、少しは歯ごたえがあるかと思ったが……あっけないもんだな!! もう心が折れかかってるじゃねぇか!!」ガッ

お嬢様「……あう……!!」

地主「なぁ、もう一度言ってみろよ? 俺が間違ってるってさ。悔い改めなさいって言ってみろよ」グリグリ

お嬢様「…………」

地主「心ここにあらずってやつか……笑えるぜ」カッカッカッカ

地主(没落貴族の娘や潰れた国の姫を従える時……まずやるべきことは『心を壊すこと』……こいつの価値観を徹底的にぶっ壊してやることだ)

地主(他の奴隷は帰ってきたが結局『あいつ』は帰って来なかった……お前の罪は重い……完膚なきまでに壊し、俺の奴隷に作り変えてやるよ……女ぁ!!!)ニタニタ

地主「さぁ、こっからさらに楽しい楽しい調教の時間だぜぇ!!!」




「山賊七つ道具の四つ目! 壁壊し用簡易爆破術式符!!!」




地主「なにっ!?」


バゴォォォォォォン!!!


地主「か、壁が!!」

パラパラパラ……

山賊E「ゲホッゲホッ……久々に使うと威力の調整がうまくいかない……」

地主「……なんだ!? どうなってやがる!?」

山賊E「いやー、お騒がせしちゃってすみません……こっちもあんまり時間がないもので……って」

お嬢様「…………」

山賊E「……あのー、もしかしてこれっていきなりクライマックスってやつですか?」

地主「なにを訳の分からないことを!! お前は何者だ!?」

山賊E「聞かれて名乗れるほど立派な名前じゃないんだけど……どうも、山賊です」ペコッ

地主「山賊ぅ……!? 山賊が一体なんの用だってんだよ!?」

山賊E「それを聞きます? 山賊に対して」

地主「なんだと!?」



山賊E「山賊ならやることは一つしかねぇだろ! 奪いに来たんだよ、てめぇが持ってるもん根こそぎな!」ババンッ







地主「なんだと……? たかが山賊が人でなにができるって言うんだ!?」

山賊E「うん、勢いで言っちゃったけど流石に根こそぎ奪うのは無理ですね。あんまり時間も無いし」

地主「人の屋敷を勝手に壊しやがって……お前には死んでもらうしかないようだな」

山賊E「おっとそれは勘弁」ニヤッ

山賊E「なんで、お目当てのお宝だけ勝手にもらってっちゃいますね!」

地主「ぬかせ! 今すぐぶっ殺してやる!」

山賊E「おお怖っ……ってな訳で山賊七つ道具の3つ目『煙玉』!! 本日2発目!!」


パン! モクモクモク


地主「なんだ!? 前が……ええい山賊風情が小賢しい!!」


コソコソ……


地主「お前ら! 手探りでいいからあの男を探し出せ!!」

奴隷達「……は、はい!!」オロオロ

地主「チッ、無能共め……ならば扉だ! 扉を開けて煙を出せ! このままではなにも見えん!」


ガチャガチャガチャ……バンッ


地主「くそ! 警備の奴らはなにをやっていたんだ!!」


スゥゥゥゥ……


地主「これで少しはマシになったか……奴はどこだ!?」

山賊E「ここですよー」ヒラヒラ


地主「いつの間に!! ……しかもそいつは!?」

山賊E「よかった……普通の人相手だったらまだまだ現役……それで、こっちの様子はっと……?」チラッ

お嬢様「う……あ……」ボソッ

山賊E「おーい?」フリフリ

お嬢様「……いや……いや……いや……」

山賊E「おいあんた、この人になにをしたんだ!?」

地主「別に特別なことなんて何もしていないぜ。俺はただ、このお方に現実を教えてやっただけさ」ニヤニヤ

山賊E「こいつ……!!」

地主「簡単だったぜ? こいつの心を折るのはよ?」ケッケッケ

山賊E「この……!!」


「侵入者……発見……殺します……」ビュオッ


山賊E「げっ、もう見つかったの!?」

奴隷戦士「パッカーン……!!」ブンッ


ドガァァアアアアン!!!



山賊E「あ、危ないよ!! 女の子がそんな物騒なもの振り回しちゃダメでしょうが!!」

奴隷戦士「いい加減……死んで……?」

地主「貴様、今までなにをしていた!? 侵入者は全て殺せと命じただろうが!!」

奴隷戦士「……ご、ご主人様……!! 申し訳ありません……」

地主「命令を無視して山賊をここまで入れるとは……どうやら貴様の妹がどうなってもいいようだな……」

奴隷戦士「そんな! 妹だけは……どうか妹だけは……!!」

地主「だったらさっさと自分の仕事をしろ! それと女は殺すなよ?」

奴隷戦士「……わかりました……」

山賊E「なんかヤバそうな雰囲気……」

奴隷戦士「……お遊びは……終わり……!!」ゴゴゴゴゴッ



山賊E「やっぱり、ここも逃げるが勝ち……!! 行きますよ!」グイッ

お嬢様「……う……」シーン

山賊E「……ダメか……仕方ない、ちょっと失礼します!!」ヒョイッ

お嬢様「……!」

山賊E「それじゃ、いただくものはいただいたんで俺はこれで!」ペコッ

地主「させるか! おい! やれ!」

奴隷戦士「……はい……!!」ビュンッ

山賊E「あんなのに付き合ってられるか!」ダッ



地主「お前らもなにをしている!? ボケっと突っ立ってないでお前らも追え!!」

奴隷達「は、はいぃぃぃ!!」ダッ

地主「絶対に逃がすな! あの女は必ず俺の奴隷にする!!」





――???――




お嬢様(これは……先ほどの夢の続き……ですか……?)



お嬢様「もう……ダメ……誰か……」

お嬢様「ゲホッゴホッ……」

お嬢様(煙を吸いすぎて、体に力が入らなくなりました。部屋の中は熱く、容赦なく私の体力を奪っていきます)

お嬢様「……このままじゃ……本当に……」

お嬢様(私の頭の中で明確に『死』という文字が浮かび上がりました。恐怖で体が震え、逃げることもできず、私はただ時が過ぎることを待つしかできませんでした)

お嬢様「誰か!! 誰か!!」ゲホッゴホッ




「……えっと……なんか今声が聞こえたような……あの、もしかして誰かいらっしゃったりとかしちゃいます?」




お嬢様「!!! ここです……!! ここにいます……!!」ゼェゼェ

「声!? そこに誰かいるんですか?」

お嬢様「……衣装棚の中……です……!!

「ほ、本当にいた!? だ、大丈夫ですか!?」

お嬢様「扉が……固くて……出られないのです……」

「わかりました。ちょっと待っててください!」

お嬢様「……はい……」ゲホゲホ

「簡易爆発符は……この距離じゃ危ないよな……ええい、時間が無い!」ギュッ

「くっ……うぉぉぉぉおおおお!!!」


ギギギギギギ……


「ふんぎぎぎぎぎ!!」


ギギギギ……


「開けぇぇぇえええええ!!」


ギギギギギギ……バンッ!!



「よ、よし……な、なんとか……開いてくれた……!」ゼェゼェ

お嬢様「……ゲホッゴホッ!!」

「達成感に浸ってる場合じゃなかった……えっと大丈夫ですか!?」

お嬢様「……あ、あなたは……?」

「え?……あの、その……あれ、どうしよう……えーと……き、騎士団の特殊救助隊の者です!!」

お嬢様「そうですか……騎士団の……まるで山賊みたいな格好ですね……」

「ギクッ」

お嬢様「?」

「そ、そんなことよりなんでこんな所に!? あたり一面火の海ですよ!?」

お嬢様「ちょっと……屋敷に侵入した不逞の輩に不意打ちをかけてやろうと思いましたら……いつの間に……出られなく……」

「ダメじゃないですか、そんなやんちゃしちゃ……」ハァ

お嬢様「……大きな……お世話です……領主の……娘……ならば……これくらいの……苦境……なんとも……」

「もう大丈夫です」ナデナデ


お嬢様「……なにを……?」

「俺があなたを助け……痛っ!」

お嬢様「あなた……まさか……素手で扉を……?」

「あ、いやこんなの大したことないですよ。そんなことより、見つけるのが遅くなってすみません。怖かったでしょう?」

お嬢様「……べ、別に……こ……怖くなんて……」ジワッ

「……ごめんなさい。俺たちのせいで……やっぱり、こんなこと……間違ってますよね?」ボソッ

お嬢様「……え…?」

「安心してください。俺がちゃんと外まで連れて行きますから!」

お嬢様「ありがと……お願いしま……」フッ

「え? ちょ、ちょっと!? しっかりしてください!……大丈夫で……」



お嬢様(火の海でそう言ったその人の顔は……意識が朦朧としていたことと黒いマフラーに隠れて……よく……見え……)




――地主の屋敷の一室――


地主「まだどこかに隠れているはずだ! 探せ! 探せぇぇぇえええ!!」




山賊E「……ここならバレないよな……?」コソッ

山賊E「流石に彼女を背負ったままあの斧から逃げ続けるのは無理があるし……回復するまで様子見するしか無いよね……それにしても」ハァ

山賊E(い、勢いで出てきちゃったけどこの後どうしよう……? とりあえずここに来ればなんとかなるって思ってたからあんんまり深く考えてなかったんだよな……)チラッ

お嬢様「………」

山賊E(なんか、錯乱してたっぽいし、俺の正体が昔家を襲撃した山賊だって知ったらもっと混乱するよな……というか昨日あんなことがあっただけに、公務員として会うのは気まず過ぎるし……)グヌヌ

山賊E(いいや、とりあえず別人ってことにしておこう。顔隠しちゃえば誰かわからないだろうし! あ、でも声で……)


お嬢様「……うっ……」

山賊E「あ、目、覚めました?」

お嬢様「……あな……た?」

山賊E「あ、いや……私はその……違いますよ(裏声)」

お嬢様「?」

山賊E「私は……その……えっと……役所から派遣された捜査官です!!(裏声)」


お嬢様「……そう、ですか……」シュン

山賊E「はいぃ、そうなんです(裏声)」

お嬢様「捜査官さんはまるで山賊のような格好をされていますのね?」フフッ

山賊E「ギクッ……ええ、潜入捜査なのでこのような格好を……(裏声)」

お嬢様「……なぜかしら、前にもこんな会話をしたことがあるような気がします……」

山賊E「………きっと気のせいですよ(裏声)」フイッ

お嬢様「……そうですか……うっ」


(お前のせいだ)(お前のせいだ)(お前のせいだ)(お前のせいだ)(お前のせいだ)


お嬢様「あ……ああ……いや……いやぁぁぁ……」ガタガタガタ

山賊E「どうしました!?」


(お前のやってることはただのお節介だったんだよ!)


お嬢様「ああ、ごめんなさい、ごめんなさい、私が……私が余計なことを……こんなことなら……こんなことなら!!!」


(もう二度と俺の前に現れないでください!)


お嬢様「いや、いやぁぁぁぁぁああああ!!!」

山賊E「しっかりしてください!」ガッ


お嬢様「……!! ……あ……すみません、取り乱してしまいまして……」

山賊E「……なにがあったんですか?」

お嬢様「……あなたに尋ねてもいいでしょうか……?」

山賊E「ええ」

お嬢様「……私のしてきたことは……無意味だったのですか……?」

山賊E「はい?」

お嬢様「私は正しい行いをしていると自負していました。でも……それは間違っていたのでしょうか……?」

山賊E「……それは」

お嬢様「違うと言ってくれるのですか!? ではあなたに聞きます! なぜあの方々は自らこの場所へ帰ってきたのです!? なぜ自ら奴隷として生きようとするのですか!?」

山賊E「………」

お嬢様「私にはわからない……あの方達を救う方法が……単純に奴隷としての鎖を解き、自由にすることで救えると思ってた……だけどそれは違ってて……!! 私がやったことはただのお節介で……あの人達にとっては迷惑でしかなくて……!!」

山賊E「………」

山賊E(自分の目の前で辛そうに泣く彼女は……以前のような凛とした彼女では無くて……)

お嬢様「……こんな勘違い女、あの人に見向きもされなくて当然ですわね……私はなにを思い上がっていたのでしょう……本当に自分のことしか考えていない……自己満足の塊、まるで勝手に踊り狂う道化ではありませんか」フフッ

山賊E(今にも自ら崩れ落ちてしまいそうなほどとても、とても小さく見えた)


すみません訂正です


山賊E(今にも自ら崩れ落ちてしまいそうなほどとても、とても小さく見えた)→×

山賊E(今にも消えてなくなってしまいそうなほどとても、とても小さく見えた)→○


それでは続けていきます





お嬢様「……もう、どうでもいいですわ……フフッ、いっそのことあの男に屈服して奴隷として生きるのもいいかもしれません」

山賊E「なにを……!!」

お嬢様「わざわざ助けてくれたのに申し訳ないのですけども、もう私のことは放っておいて早く逃げてください。どうせ私はあなたの足手まといになります。私のお節介にあなたが付き合う必要なんてないのですから」

山賊E「……なんでそんなこと言うんですか……」ギリッ

お嬢様「もう疲れました。これ以上、なにも考えたくないのですよ……こんな世間を知らない箱入り娘、いつ死んだって世界にはなんの影響もないはずですし、もう放っておいてください」フフッ

山賊E「そんなことない!!」

お嬢様「だったらなぜあの人は私を騙していたのですか!? だったらなぜあの方たちは私を責めるのですか!? 私は……私はただ正しいことを……したかっただけなのに!! あの人に伝えたいことがあっただけなのに!!」

山賊E「!!!」

お嬢様「だから……もういいのです……私を置いて1人で逃げてください……」フフッ

山賊E(そう言う彼女の目は絶望に染まっていて、このまま消えてしまうんじゃないかと思った)

お嬢様「ああ、良心や世間体が気になると言うのなら家族にこう伝えてください。『私は望んでここにいる』のだと……」ウフフ

山賊E(俺は彼女がこのまま消えてしまいたくないと思ったのか)

山賊E「………」スッ

お嬢様「……なんですか………あ……!!」ヒシッ

山賊E(気が付けば俺は彼女のことを抱きしめていた)





お嬢様「な、なにを……するのです……?」

山賊E「救うなんて、あなたは何様のつもりですか……?」

お嬢様「………」

山賊E「奴隷全てを救うなんて1人でできるわけないじゃないですか」

お嬢様「そうですわよね……私なんかが……」

山賊E「あなたが言ってることは現実を知らない箱入り娘の綺麗事です。この世界のルールを変えることは並大抵のことじゃない。1人でははっきり言って無理です」

お嬢様「……だからもう放っておいてくださいと何度も……!!」

山賊E「でも!!」

お嬢様「!!!」ビクッ

山賊E「でも、俺がいます」

お嬢様「え?」

山賊E「1人ではできなくても、二人ならできるかもしれない。それがダメなら三人で。そうやって少しずつやっていけばいい。すぐにはできないかもしれないけど、それでも俺はあなたに付き合いますよ」

お嬢様「それは……どういう……」

山賊E「『あなたは間違ってない』」

お嬢様「!!!」

山賊E「大丈夫、誰になんと言われたって俺が何度だってあなたに言ってやりますよ、あなたは間違ってないって!」

お嬢様「ううう……」グスッ

山賊E「だって、この世界は未だに間違え続けたままなのだから!」

お嬢様「!!!」

山賊E「でしょう?」

お嬢様「うあ……」グスッ

山賊E「だからもう、そんなこと言わないでください。お願いします」

お嬢様「うわぁぁぁぁああああ!!!」

山賊E(彼女は大声を上げて泣いていた。俺はそれを聞きながら彼女を抱きしめることしかできなかった)



山賊E(えーっと……敵にバレたらどうしよう……)ドキドキ






お嬢様「グスッ、グスッ………」

山賊E「落ち着きましたか?」

お嬢様「はい……ありがとうございました……」

山賊E「………」

お嬢様「………」

山賊E(き、気まずい……!!)

山賊E(あああ!! 俺としたことがやっちまったぁぁぁ!! いきなり抱きしめちゃうなんて! しかも昨日思いっきり自分の都合で振った女の子を勢いで抱きしめるなんて!! 俺はなんてことぉぉぉぉ!!! バレた? 絶対バレたよな、だって今の会話自分で正体喋っちゃったみたいなもんじゃん!!)

お嬢様「あの……」

山賊E「はいぃぃ!!」

お嬢様「そろそろ……離してもらっても……」

山賊E「あ、はいそうですね! すみませんでしたなんか!!」


お嬢様「そういえば捜査官さん、声が若干……」

山賊E「ええ? なんのことですか? 捜査官はわかりませーん(裏声)」

お嬢様「そうですか、知っている人に似ていたので……」

山賊E「あははは……そんなわけないじゃないですかー(裏声)」アタフタ

お嬢様「そうですわよね、あの人のわけないですものね」

山賊E「そうですそうです! 捜査官、嘘つかなーい!!(裏声)」アタフタ

お嬢様「面白い方ですね」フフッ

山賊E(ああ、本当に可愛いなちくしょう!!)グヌヌヌヌ

お嬢様「あの……大丈夫ですか?」

山賊E「大丈夫、大丈夫!! 捜査官、いつだって元気!! ほら、こんなところで逆立ちだってできちゃう!!」ヒョイッ

お嬢様「あまり無理はなさらない方が……」

山賊E「大丈夫大丈夫!!」


ガチャン!


山賊E「え?」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!


山賊E「どわぁ!!」


お嬢様「捜査官様!!………これは隠し扉ですか!?」

山賊E「痛てて……どうなってるんだ? 一体?」


「イチャイチャタイムは終わったね」

お嬢様「誰ですの!?」

「あんまり大声出さないで欲しいな、耳に響くの」

山賊E「君は……」

「もう、待ちくたびれたの、具体的に言うと8年2ヶ月と4日と7時間34分56秒も待ったの」

山賊E「なんだって?」

「はじめまして、お兄ちゃん。いや、私たちを救ってくれる人」

といったところで今日の投下は以上です


明日の投下も同じ時間帯を予定しています!!

なんとしてでも自らが定めた期限内に終わらせるため、今から書き溜め作業に戻ります

今日もお付き合いくださり、ありがとうございました!!

>>484
ご指摘ありがとうございます!


>>461


お嬢様「くっ……その薄汚い手を話しなさい……!!」→×

お嬢様「くっ……その薄汚い手を離しなさい……!!」→○

でした、すみません

こんばんは、今日も投下していきます! 


とにかく頑張ります!!

それでは今日もお付き合いください!!





山賊E「檻の中に……女の子?」

お嬢様「あなたもここの奴隷……なのですか?」

「うーん、奴隷って言葉、大っ嫌いだけど、間違いじゃないの。私のことは占い師って呼んでほしいの!」

お嬢様「占い師さん……ですか」

占い師「そう! 占い師さんなの!」ニコッ

お嬢様「はぁ……」

山賊E「それで、君はなんで閉じ込められてるんだ?」

占い師「私ってちょっと特殊な能力の持ち主でね、色んなことが見えるの。それに目をつけたあの男は私の力を独占するためにこの檻で私を閉じ込めてるということなの」

お嬢様「そんなことを……」

占い師「あの男の趣味なの。特殊な力を持った奴隷を集めて自らの利益とする。だから特殊な奴隷は特に重宝されてこんな専用の部屋で監禁されているってわけ。貴族のお姉ちゃんはあいつの一番のお気に入りを逃がしちゃったからあんな目にあったんだよ?」

お嬢様「そうでしたか……」

山賊E「そんなに大切なら逃げられるなよ……」

お嬢様「しかし、このような狭い檻に人間を閉じ込めておくなど許せませんね……!!」

占い師「うーん、倫理観とかを無視するなら間違った方法じゃないと思うけどね、技術や特殊技能を独占できればそれだけ他のライバルより優位に立てるってもんだし。あいつはやり過ぎだけど」

山賊E「それはそうと、色んなことが見えるってどういうことだい?」


占い師「説明するの難しいんだけど、例えばお兄さんの過去とかこれから起こる未来のこととかね……断片的にだけど断片的にだけどぼやぼやーっと見えるの……つまりは一種の予言とか透視とかそういった類?」

山賊E「随分とアバウトなんだね……」

占い師「結局、未来なんて移ろいやすいものだから。当たるも八卦、当たらぬも八卦ってね。だから私は占い師なの!」

お嬢様「それでも素晴らしい力ですわ」

山賊E「ええ? 自分から胡散臭いって言ってるのに信じるんですか?」

占い師「うーん、私は私の力を明確に証明する術を持ってないから無理もないの。でもちょっとは信じて欲しいな……『山賊さん』?」

山賊E「うわぁぁぁぁああああ!!!」

お嬢様「え?」

山賊E「なななななな……なんで?」ヒソッ

占い師「だからさっきから見えてるって言ってるのぼやぼやーっとだけどね」

山賊E「仮にそうだとしても……だったらこっちの事情も知ってるでしょう? バレたりしたらどうするんですか?」ヒソッ

占い師「大丈夫大丈夫、あのお嬢様は主人公体質だからどうせ聞こえないの」

山賊E「はぁ!?」

お嬢様「あの……先程からなんの話を?」

占い師「ね? 聞こえてないでしょ?」

山賊E「なんか納得いかねぇ……!!」


占い師「まぁ、茶番はこれくらいにしてあんまり時間無いから本題に移りたいんだけどいいかな?」

お嬢様「え、ええ。そうでしたわね」

占い師「私がお兄ちゃんに頼みたいことはひとつだけなの」

山賊E「なにかな?」


占い師「私とお姉ちゃんを自由にしてほしいの」


山賊E「えっと……この檻から出してほしいってこと?」

占い師「それも含めて、かな? 私たちを人間にしてほしいってことなの」

お嬢様「つまり奴隷身分からの解放……ということですね!」

占い師「うん! お願いできるかな?」

お嬢様「ええ、ええ!! もちろんですわ!!」

占い師「貴族のお姉ちゃんならそう言ってくれると思ってたの!!」


お嬢様「それでお姉さんはどちらに?」

山賊E「別の部屋に捕まってるのか?」

占い師「あれ? お兄ちゃんはここに来てから何度も合ってると思うけど?」

山賊E「……まさか」タラー

占い師「うん、そのまさかなの」

山賊E「いや、無理でしょ」アハハ

占い師「でも、そうしないと私もお兄ちゃん達もここから出られないんじゃない?」

山賊E「確かにそうだけど……あれと戦うのは……」

占い師「ちなみに私を無視して脱出しようとした場合のお兄ちゃんたちの悲惨な未来、聞きたい?」

山賊E「え」


お嬢様「一応、聞いておきましょうか」

占い師「まず、お兄ちゃんは逃げているところをお姉ちゃんにパッカーンされるの! まさに瞬殺って感じだね!」

山賊E「ええ……?」

占い師「このチャンスを逃せばもちろん私はこの部屋から一生出られないし、貴族のお姉ちゃんは……あ」

お嬢様「な、なんですか!?」

占い師「今の無しなの……世の中には知らないこともあるの!」

お嬢様「そう言われると気になるでしょう!? ちゃんと教えてください!!」

占い師「あくまでも占いだからね? 気分を悪くしないで欲しいの」

お嬢様「そこまで前置きされたら余計気になるではないですか!」

占い師「えーっと……その……グチャグチャ……なの」

お嬢様「グチャグチャ……?」ゾッ

山賊E「そのグチャグチャっていうのは精神的な意味で……? それとも……」

占い師「いやどっちもなの」

山賊E「どっちも!?」

お嬢様「なんとしてでもお姉さんを助けましょう!」

山賊E「なんかこの子に脅されてるだけな気がするんだけど……」

占い師「占い師は嘘をつかないの! ただ言ったことがたまに外れちゃうだけなの!」

山賊E「それじゃダメだろ!!」


占い師「お願いお兄ちゃん! 私にとってこれが最後のチャンスなの! お姉ちゃんを助けて!!」

山賊E「……そんなこと言われちゃったら断れないじゃないか」ハァ

占い師「うふふ、ありがと! お兄ちゃん!」

山賊E「なんでこんな目に……」

占い師「もうちょっとでお姉ちゃんが来ると思うから頑張ってね?」

お嬢様「それも透視の力というものですか?」

占い師「まぁ、そんなところなの!」フンス

山賊E「………は? え、もう!?……あのちょっと待って……」

占い師「グッドラック!!」グッ

山賊E「いや、檻の中からそんないい顔で親指立てられましても!!」

お嬢様「どうやら私たちはやるしかないみたいですわよ?」フフフ

山賊E「まぁ、頭をパッカーンは勘弁してもらいたいところですからね……」

お嬢様「それに、助けを求めている人を無視するなんて私にはできませんわ」

山賊E「でしょうね」

お嬢様「私はやっぱり納得なんて出来ません。あの男がやっていることはとても酷いこと。人が人を支配する世界なんておかしいと思うのです……これがこの世界の現実だと言うのなら、私はその現実と徹底的に戦います………私の考えは間違っているでしょうか?」

山賊E「………その質問は卑怯ですよ」

お嬢様「いいではありませんか。これは信頼関係の表れです。私は間違っていますか? あ・な・た?」フフッ




山賊E「………」

山賊E「………」

山賊E「………え?」


お嬢様「どうしました? あなた?」クスッ

山賊E「…………あの………いつから気づいていたんですか」ダラダラダラ

お嬢様「バレてないと思ってたんですの? 嫁入り前の娘をあんなに力強く抱きしめておいて」ジトー

山賊E「いや、あれはその流れでつい……」

お嬢様「それで、顔を隠しておけばなんとかなると?」

山賊E「……いつものパターンならいけるかなと……本当にすみません……」シュルシュル

お嬢様「私をなめないでください! 顔なんて見えなくても、あなただってことくらいわかります!」シャー

山賊E「その、なんていうか……昨日はすみませんでした……」

お嬢様「詳しいことは今は聞きません。でもこれだけは言わせてください」

山賊E「はい?」

お嬢様「………助けに来てくれて本当に嬉しかったです」

山賊E「………はい」

お嬢様「さぁ、あなた。もう一度改めて聞きます! 『私は間違っていますか?』」

山賊E「間違ってない!」

お嬢様「よろしい。ならば共にお姉さんを開放しましょう!! あの男にぎゃふんと言わせてやります!!」

山賊E「ぎゃふんって……そういえばこれから戦闘とかになると思うんですけど大丈夫なんですか?」

お嬢様「昔、うちの家庭教師に少しだけ剣術を教えてもらったことがあります!」フンス

山賊E「無いんですね……」ハァ

お嬢様「でも筋はいいと褒められましたわよ!?」

山賊E「そうですか……」

占い師「もう! 長々とイチャイチャしている場合じゃないよ!! もうそこまで来てるの! ちゃんと避けないと体が真っ二つになっちゃうから気をつけてね!」


ダダダダダダダダッ


山賊E「物騒なこと言わないでくださいよ!!」チャキッ



「はああああああ!!!」ブォッ


ドガァァァン!!!


といったところでごめんなさい、今日はここまでです……


なんとか、なんとか早急に終わらせるべく頑張りますのでよろしくお願いします!!


明日も同じ時間帯に投下します

今日もありがとうございました!!

こんばんは、少し遅くなりましたが今日も投下していきたいと思います


投下の前に本編の後編は番外編がどうなろうと来週月曜日から新スレにて投下しますのでよろしくお願いします!

お待たせしてしまい申し訳ありませんでした

その間に番外編を終わらせるべく頑張っているのですが明日で終わりそうに無く……
できる限り急いで書いてますので最後までお付き合いしていただけたらなと……

自分で設定した締切じゃあまりにも考えが甘くって……情けない


それでは今日もよろしくお願いします!!


奴隷戦士「……妹……今助けるから……!!」ユラァ

占い師「お姉ちゃん!!」

山賊E「クソ、相変わらずデタラメな威力だな!!」

奴隷戦士「死んで……!!」ブンッ

山賊E「し、死ぬ!!」ヒラッ

占い師「お姉ちゃん! ダメ!!」

奴隷戦士「……すぐに……お姉ちゃんが……助けてあげるからね……!!」ブンッブンッ

山賊E「このままじゃ本当に頭パッカーンになっちゃうぅぅ……!!」ヒラッ

お嬢様「あなた!」ダッ

山賊E「来ちゃダメです!! 死にますよ!!」

お嬢様「ですが……!!」

占い師「お姉ちゃん、私は大丈夫なの!! だから話を聞いてよ!!」

奴隷戦士「……妹は……私が……守る!!」グワァ

山賊E「や、やばい!!」

占い師「お姉ちゃん!!」



奴隷戦士「『壊転』!!!」



ブンッブンッブンッブンブンブンブン……


山賊E「人間扇風機かよ!?」



ザンッ!!


山賊E「うわぁぁぁぁぁああああ!!」


お嬢様「あなた!!!」

奴隷戦士「侵入者は……全て……殺す……!!」ブンブンブンブン

山賊E「し、死ぬ……これは本当に死ぬぅぅぅ!!!」



ガキィィィン!!


奴隷戦士「!!!」

お嬢様「斧が壁に!!」

山賊E「止まった!」

奴隷戦士「………!!」グイグイ

山賊E「今がチャンス!! 七つ道具5つ目! 拘束用粘着ネット!!」バサッ

奴隷戦士「!?」ジタバタ

山賊E「どうだ! これで身動き取れないはず!! おとなしく投降しろ!!」

奴隷戦士「……ベトベト……いや……!!」ジタバタ

お嬢様「あの……どこでそんなものを売ってるんですか……?」

山賊E「俺、血が苦手ですから……こういう戦い方しかできなくって……」アハハ

占い師「二人とも! まだ終わりじゃないの!!」


山賊E「何言ってるんだよ。刃物で切らない限りあの網は……」

奴隷戦士「ベトベト……いや……!!」ガチャン

山賊E「斧の柄が……外れた……!?」

お嬢様「中から剣が!?」

奴隷戦士「……スッパーン……」


シュパパパパパ!! パサッ


奴隷戦士「……食べたことあるからわかる……」

奴隷戦士「……やっぱり……君は……チョコレートより甘々……」

山賊E「ひ、卑怯だよそれは!!」





占い師「お姉ちゃん、違うの! この人達は私たちを助けてくれる人なんだよ!!」

奴隷戦士「……待っててね……すぐにお姉ちゃんが助けてあげるから……」チャキッ

占い師「話を聞いて、お姉ちゃん!!」


カツカツカツ………


「おいおい……こんなところにいたのか……お前ら」ニヤリ

山賊E「ああもう!! 次から次に面倒だな!!」ハァ

地主「……まさかここの隠し部屋をみつけるとはな……道理で中々見つからねぇ訳だ。占い師、お前が呼んだのか?」

占い師「私は運命に身を任せただけなの」

地主「ご自慢の透視能力か、能力で見たものは全て俺に伝えろと命令したはずだが?」

占い師「教えるわけないの。なんも知らないあんたが破滅するところを見たかったんだもん」

地主「破滅!? この俺が? おいおい随分と物騒な未来を占ってくれるじゃねぇか!」ケッケッケ

占い師「……いい加減、お姉ちゃんを奴隷身分から解放して。あんたには私の力で十分すぎるくらい儲けさせてやったはずでしょ」

地主「奴隷ごときがこの俺に意見か? いつからそんなに偉くなったんだ? お前は? ええ?」

お嬢様「……占い師さんはあなたと同じ人間……そこに優劣などありませんわ!!」ザッ

山賊E「ちょっと! 前に出たら危ないですって!」

地主「おお? これはこれはお嬢様、ちょっと見ない間に随分とお元気になりましたね? さっきまでは心が折れかかっていたのに」

お嬢様「ええ、なにせ私はもう1人ではありませんから。私には一緒に歩いてくれる人がいるのです!! 例え箱入り娘のお節介だったとしても、私は私の信念で世界の過ちをを正します!!」

山賊E「ってなわけですよ。この人はあんたの奴隷に堕ちるような人じゃない。残念でしたね」

地主「お前、この女になにか吹き込んだのか?」

山賊E「いいえ、俺はただ、『事実』を教えてあげただけですよ」ニヤッ


地主「チッ、余計なことを……また調教のし直しかよ、めんどくせえ……こりゃお嬢様も占い師も共々調教してやらなきゃな!!」

奴隷戦士「!!! やめてください……!! 話が違います……!! 妹のオシオキは全て私が……!!!」

地主「うるせぇ!!」バシン

奴隷戦士「うっ……」

占い師「お姉ちゃん!!」

地主「俺は! お前らの!! なんだ!?」

奴隷戦士「ごめんなさいごめんなさい……」

地主「何年も俺に飼われていて! まだ主人に対する礼儀がなって! ねぇのか!?」バシンバシン

奴隷戦士「許してください許してください……」

地主「余計な仕事を増やしやがって!! こうなったのも元はと言えばお前が! この男の侵入を許したせいだろうが!」バシンバシン

奴隷戦士「許してください許してください許してください」

占い師「やめるの!! お姉ちゃんはなにも悪くないの!!」

地主「いいや、やめてやらねぇよ! これはこいつとの約束だからな。やめるわけにはいかねぇ!!」

奴隷戦士「妹……お姉ちゃんは……大丈夫……だから……気にしないで……ね?」

占い師「お姉ちゃん……」

地主「お前には見えてるよなぁ……俺がこいつとどんな約束をしたのかをよ?」

山賊E「約束って……?」

占い師「私の分のお仕置きは全部お姉ちゃんが肩代わりするってやつでしょ」

お嬢様「それではあの方は……」

占い師「うん。私に何もしない代わりにこいつはお姉ちゃんをいっぱい虐めてるんだよ。私が協力しなかったらお姉ちゃんがもっと虐められる……だから私はこいつの言う通りに力を使うしかなかったの」


地主「お前の透視の力のお陰で、俺は随分といい思いをさせてもらったぜ? 商人貴族様もこの農場の成功を喜んでくださった!」

お嬢様「商人貴族……!? あの方も絡んでいると言うのですか!?」

地主「ああ、もちろんそうさ。あのお方は奴隷を使ったビジネスが得意でね。その手腕でここの奴隷農場はもちろんのこと東のコロシアムに奴隷市場も大盛況ってやつだ!」

地主「まったく奴隷商売ってのはボロい商売だな! 各国でかき集められた魔王軍によって親を殺されたガキや亡国の人間どもを集めて奴隷として再教育し、他の国の奴らに売ったり、見世物にしたりする! うまく躾ければ主人の言うことはなんでも聞くし、飼うにしたって水とクソみてえな残飯やってればいいから安上がりってもんだ! 」

地主「まさにこの世界は奴隷をうまく扱える俺みたいな支配者によって支えられている! お前らが今までに口にしてきたものも全て! 奴隷達が汗水たらして作ったものかもしれないぜ?」

山賊E「随分と大きい話になっちゃったな……」

占い師「あんたやっぱり最低だよ。反吐が出るの」

地主「ほう、姉との件をを理解した上でまだ歯向かうってのか? お姉ちゃんがどうなってもいいのかよ?」ケケケ

奴隷戦士「……許してください許してください……」ブツブツブツ

占い師「これ以上お姉ちゃんを傷つけることは許さないの。このゲス野郎」

地主「……どうやら占い師さんはお仲間を得て随分と強気になっているらしい……おい、わかってるな?」

奴隷戦士「はい……」

地主「男は確実に殺せ。それとあの女も腕の一本くらいは構わない。言う通りにすれば俺に何度も無礼を働いたお前の妹を特別に許してやる。特別にな」

奴隷戦士「……それは……本当……ですか……?」

地主「ああ、一切危害は加えない。俺は優しい主人だろう?」

奴隷戦士「……ありがとうございます……」



山賊E「なぁ、占い師」

占い師「なーに? 今私、腸煮えくり返りそうなんだけど?」

山賊E「ちょっと確認しておきたくてですね」

占い師「どうせ透視でお姉ちゃんの動きを教えて欲しいとかそういう類の話でしょ?」

山賊E「そう………できる?」

占い師「できないの」

山賊E「え? でも未来が見えるんでしょ?」

占い師「いくら未来が見えてもそれは断片的なものでしかないの。私が見えているのは、『あなたがお姉ちゃんを助ける可能性』と『あなたの頭がパッカーンしている可能性』という結果の二つだけ。お姉ちゃんの動きを逐一読み取るのは無理だよ」

山賊E「じゃ、じゃあどうすればいいのさ!?」

占い師「力なんかに頼ってちゃ人間ダメになるよ?」

山賊E「もしかして自力で勝てってこと?」

占い師「うん!!」ニコッ

山賊E「いい笑顔だな畜生!」ガンッ

お嬢様「仕方ありませんね、ここは私が……!!」

山賊E・占い師「下がっててください」「下がってるの」


お嬢様「はい……」シュン

山賊E「いや、でも……」

山賊E(本当にどうしよう……)ズーン




地主「さぁ、さっさとあの目障りな奴らに現実ってやつを思い知らせてやれ! 奴隷戦士!」

奴隷戦士「………悪く……思わないで……!!」ビュンッ

山賊E「ええい、やるっきゃない!!」

山賊E「七つ道具の六つ目!! 『戦闘用・脅迫用の剣』!!」チャキッ

お嬢様「脅迫用!?」

山賊E「あ、いや……致し方ない場合だけですよ?」

占い師「アホみたいなことやってる場合じゃないの! 来るよ!!」

山賊E「うおっと!!」ザッ


ガキィィン!!


奴隷戦士「……そんななまくらで勝てると思ってる……?」ギリギリギリ

山賊E「思ってない……けどさ!!……君が俺ら側についてくれれば……この場を乗り切れる……と思うんだけど……どうかな?」

奴隷戦士「……それは……無理……」

お嬢様「なぜですか!? 占い師さんは私たちに自由になりたいと訴えてくれました! あなたもそうでしょう!?」

奴隷戦士「……妹はなにも知らないから……そんなことは絵空事だって……!!」ブンッ

山賊E「んぎぎぎぎ……!!」ギリギリギリ

山賊E(こんな小さな体のどこに……そんな力があるんだよ!!)

奴隷戦士「……自由になったところで……私達が奴隷とわかったら……お前たち人間は直ぐに手のひらを返す……!!」


お嬢様「そんなことありません!!」

奴隷戦士「嘘だ!!」グンッ

山賊E「うお!?」

山賊E(さらに力が強く……!!)

奴隷戦士「希望なんて持ったってなんの意味もない! どうせ裏切られるくらいなら最初から諦めてた方が……傷つかなくて済む!!」

お嬢様「……!!!」

奴隷戦士「私は……妹が無事なら……それでいいの……私はどうなってもいい!! 私のことは放っておいて!!」

占い師「放っておけないの! お姉ちゃんも一緒に自由になるの!」

奴隷戦士「……自由になって……どこへ行くって言うの……? また捕まって……別の人の奴隷になるの……?」

占い師「お姉ちゃん……」

奴隷戦士「わかってよ……妹……私の力じゃ……これが精一杯なんだよ……次のご主人様のところでは……あなたを守れないかもしれない……そうなってしまったら……私の……私の今まではなんだったっていうの……?」ギリギリギリ

山賊E「くっ……!!! あ、あのそろそろ厳しいんですけど……!!」プルプルプル

お嬢様「もうちょっと……もうちょっとだけ彼女と話を……お願いします」

山賊E「……りょーかい……」プルプルプル

お嬢様「お姉さん……剣を納めてください。私たちには戦う理由など無いはずです!!」

奴隷戦士「……理由? ……理由ならある……お前たちのせいで妹が傷つくかもしれない……私にはそれが耐えられない!!」

地主「そうだ、奴隷戦士。お前が俺の言うとおりにしなければお前の妹を痛めつけてやる……生まれてきたことを後悔させてやるくらいにな!!」ニタァ

奴隷戦士「だから私は戦う……それ以上……理由なんて必要ない……!!」ギギギギギッ

山賊E「くぅ……」

お嬢様「お願いです! お姉さん! 止まってください! 妹さんもそれを望んでいます! もちろん私だって!!」

奴隷戦士「黙れ!! 貴族のあなたに……私たちのなにがわかるっていうの……? 知ったような口聞かないで!!」

地主「いつまでもごちゃごちゃと……耳を貸すなよ、奴隷戦士。早く奴らを黙らせろ!!」

奴隷戦士「……はい」ギギギ

山賊E「流石に……もう……限界……」プルプル


奴隷戦士「私たち奴隷はこうするしかないの! 誰かに従って虐められて……それでも仕方ないって諦めるしかないの! それが奴隷なの! この世界に奴隷の居場所なんてないんだ!!!」

山賊E「……『仕方ないって諦めてたらいつの間にか大事なもんまで失くしちまう』……」ギリギリギリ

奴隷戦士「……え?」

山賊E「……仲間が俺に言ってくれた言葉……なんだ……」

山賊E「俺もさ、人には言えないことばっかりやってきた……生きるために仕方ないって……この世界に俺みたいな奴の居場所なんてないって……でも!!」

山賊E「仕方ないって言葉で片付けちゃういけないもんだってあるんだよ!!」グググッ

奴隷戦士「……そんなの……綺麗事……!!」

山賊E「ああ……綺麗事だよ。綺麗事だけど……あの人はそんな綺麗事を現実にしたいって本気で思ってる!」

お嬢様「……この世界にあなたの居場所がないのなら……私がなります……! だからもう全てを諦めたりしないで……私と、共に歩いてくれませんか!? この世界を変えるために!!」

奴隷戦士「!!!」


地主「なにをしている奴隷戦士!! さっさとやれ!!」

奴隷戦士「……あなたが……私の居場所……?」スッ

奴隷戦士「……本当……?」

地主「おい! どうした!?」

お嬢様「あら? この私を疑うって言うんですの? 私は宣言したことはちゃんと守りますわ! 私自身の誇りにかけて!」フフン

山賊E「この人はとてもしつこいよ? 身を以て体験した俺が言うんだ……間違いない」

奴隷戦士「…………」

地主「どうした! 早く殺せ! 妹がどうなってもいいのか!?」

奴隷戦士「……あ、あう……」ウツムキ

占い師「お姉ちゃん、この人たちなら大丈夫だよ……? 信じてあげて?」

奴隷戦士「……妹……」

占い師「お姉ちゃんがこれ以上傷つくの、私見てられないの……」

奴隷戦士「妹……」

地主「早く殺せ! お前は俺の奴隷だろう!! ええ!?」

奴隷戦士「そう……私は……ご主人様の……奴隷……」

地主「そうだ! お前は一生! 俺の奴隷なんだよ!!」


お嬢様「違いますわ!! あなたは人間です!! 私たちと何一つ変わらない人間なんです!!」

奴隷戦士「………うう」

地主「黙れ!!」

お嬢様「黙りません!! 私は何度だって言います!! あなたは奴隷なんかじゃない!! 『あなたは人間なんです』!!」

奴隷戦士「うう……うああああああああああああああああああ!!!」

お嬢様「世界に絶望なんてしないで! 諦めたりなんかしないで!! お願いです!!」

地主「もういい! 殺せ! うるさいあの女の口を塞ぐんだ!!」

奴隷戦士「………」

地主「どうした? なにをしている?」

奴隷戦士「………で……でき……ません……」

地主「なんだと?」

奴隷戦士「私には……できません……」カランカラン

奴隷戦士「私には……この人達を……殺すことは……できません……」

地主「貴様……!!」




お嬢様「信じてくれて……ありがとうございます」

奴隷戦士「ううう……ごめんなさい……ごめんなさい」シクシク

地主「くっ……この……女ぁぁぁあああ!!」

奴隷戦士「ごめんなさい……ごめんなさい……」



―――――




占い師「……これで第一段階はクリアなの」

占い師「……私が見た未来が正しければ……ほら……この檻も開いてるの」ガチャン

占い師「……流石お姉ちゃん、さっきのひと暴れの衝撃で檻の鍵もいかれちゃったんだね……」フフッ

占い師「大丈夫……覚悟はできてるの……これが……私の選んだ未来」

占い師「今までごめんね、お姉ちゃん。だけどもう大丈夫なの……私がお姉ちゃんを自由にしてあげるの」

占い師「お姉ちゃんが自由になること。それが私の……救いだから」

占い師「悲しまないでお姉ちゃん……涙なんてすぐに乾くから……ね?」

占い師「お姉ちゃんには……笑っててほしいなぁ……」


―――――



お嬢様「さぁ! 諦めて私たちを解放しなさい! もちろんこの2人もです!!」

地主「ああん?」ギロッ

奴隷戦士「ごめんなさい……ごめんなさい……」ブルブル

山賊E「あなたには誘拐の疑いと奴隷不法所持という条例違反の疑いがある。覚悟はいいな?」

山賊E(まぁ、俺も不法侵入だけど……)

地主「どいつもこいつも……使えねぇな……!!」ガンッ

奴隷戦士「ひっ!」

お嬢様「やめなさい! あなたもこれで分かったでしょう! この世界に奴隷など必要ないのだと!」

地主「一々うるせえ女だな! 綺麗事ばっか並べやがって! 虫酸が走る!!」

山賊E「お前を騎士団に身柄を引き渡す。誘拐は立派な犯罪だ。腰の重い騎士団でも無視はできない。占い師の言った通り、お前は破滅だよ」

地主「俺が……破滅ぅ?」ケッケッケッケ

お嬢様「なにがおかしいと言うのですか!?」

地主「お前ら、なんか勘違いしちゃいねぇか? 誰が『警備はこいつ1人』だって言った?」

山賊E「……勢いでなんとかなると思ったけど……やっぱりそこまで上手くはいかないよな」ハァ


地主「お前ら殺しちまえばあとはどうとにでもできるんだよ!」

お嬢様「……あなたは……どこまで腐っているのですか!!」

地主「もうすぐこいつ以上の力を持った奴隷達が騒ぎを聞きつけて集まってくるはずだ。お前らなんて一分も持たないだろうな!」カッカッカ

山賊E「流石にあの子以上ってなると厳しいな……」

地主「いくら頑張ってもお前らはここから出られないんだよ! 楽しみだぜ! お前らが血祭りにされるところを見るのはよ!!」カッカッカッカ

山賊E「この下衆が……」ギリッ

お嬢様「改めて最低のクズ野郎ですわ…・…!!」

地主「おっとそういえば忘れてたことがひとつあったんだった!!」

山賊E「忘れていたこと?」

地主「喜べ! ここでお前らにクイズだ!!」

お嬢様「こんな時に……なにを考えているのです?」

地主「まぁまぁ、付き合えよ。どうせお前らは死ぬんだ。ちょっとした余興じゃねぇか!」カッカッカ

地主「問題です。『価値の無くなった奴隷はどうなるでしょうか?』」

奴隷戦士「…!!」ビクッ


山賊E「なんだって?」

地主「わからねぇか? わからねぇよな?」

お嬢様「なにを考えて……」

地主「奴隷を飼うのも維持費って奴がかかる。もっとも、飯代だけ出してりゃいいから人間雇うよりよっぽど安上がりだがそれでも出費は出費だ」チャキッ

奴隷戦士「……や、やめて……」

地主「そういう時はどっかに売っ払うか買い手が見つからない時は……」ギランッ

山賊E「ま、まさか……!!」

お嬢様「やめなさい!!」

地主「こうやって……処分しちまうのさ!!」ブンッ

山賊E「やめろ!!!」

奴隷戦士「………」ギュッ


ザンッ!!




と……とりあえず今日の投下は以上です!!


明日も同じ時間帯に……


それではちょっと書きに戻ります



今日もお付き合いくださりありがとうございました!!

こんばんは、今日も投下していきたいと思います

よろしくお願いします!!





占い師「…………」


ポタ………ポタ……


奴隷戦士「え?」

山賊E「占い師!!」

お嬢様「占い師さん!!」

山賊E「い、妹……?」

占い師「お姉ちゃん……今まで……ごめんね……?」



ドサッ



奴隷戦士「いやぁぁぁぁああああああ!!!!」





地主「占い師!? 貴様……!!」

占い師「……へへ……これ以上……お姉ちゃんをいじめさせないの……!!」ポタポタ

奴隷戦士「……なんで……? ……なんで!!」

占い師「お姉ちゃん……今までごめんなさい……でももうこれで大丈夫なの……私……お姉ちゃんには……自分の未来を……生きてほしいって思うから……」

奴隷戦士「そんな……そんなこと言わないでよ……私……私あなたがいないと……そんな……いや……いや……!!」

山賊E「しっかりしろ! 占い師!!」

お嬢様「こ、これで血を!!」ビリッ

奴隷戦士「う、うん!」

山賊E「血……」クラッ

お嬢様「あなた!?」

占い師(お願い! これが私にとって最後のチャンスなの!)

山賊E「ダメだ!! こんな時にぶっ倒れてる場合じゃない!!」

占い師「……さすがお兄ちゃん……そこらへんは……わかってるの……」ゼェゼェ

山賊E「黙ってろ!! 占い師……最後ってそういうことだったのか?」

占い師「……そうだよ……お兄ちゃん……ありがとうなの……私の頼みを……聞いてくれて……」

山賊E「なに言ってるんだよ……!! 『私とお姉ちゃんを自由にして』じゃなかったのか!?」

占い師「……ううん、これでいいの。これが私が見た運命……えへへ……黙ってて……ごめんね?」


奴隷戦士「血が……止まらない……!! 止まって……お願い止まって!!」

占い師「……お姉ちゃん……もう無理だよ……私占い師だよ……? 自分の未来くらい……わかるの……」

奴隷戦士「黙って! 『占い師は嘘は言わない! 言ったことが外れるだけ』あなたがそうやって言ったんでじゃない!」

占い師「………お姉ちゃん……私……お姉ちゃんの妹で……本当に……」

奴隷戦士「や……待って…ダメ……ダメぇぇぇ!!」

占い師「……よかっ……」ガクッ

奴隷戦士「………妹……? ねぇ……返事をしてよ……ねぇ!! ねぇ!!!」

お嬢様「そんなことって……」

山賊E「……落ち着いて! まだ諦めちゃダメだ! 多分出血のせいで気を失っているだけ……このまま止血を続けてください!!」

奴隷戦士「う、うん!!」

お嬢様「でもこのままじゃ……」

山賊E「……クソッ!」





地主「ちっ、他の奴隷とはちっと毛色が違うから可愛がってやってのによ!! やっぱり奴隷ってのは使えねぇんだな!! 主人の邪魔ばっかりしやがって! 死んで当然だ! こんなクソ奴隷!!」ケッケッケ

山賊E「……まだ……この子は死んでないだろ……!!」ギロッ

地主「ああ、そうだったな、でもそう長くないだろ? といってもそれはお前らもだけどな? ……さぁ、誰が先にあの世へ行くことになるのかな?」カッカッカ

お嬢様「あなたはどこまで……人の命をなんだと思っているのです!?」

地主「家畜と俺様を一緒にするんじゃねぇ!! 本当に一々むかつく女だぜ!!」

奴隷戦士「妹……妹……」ギュッ


ドドドドドドドドド!!!!


地主「そんなことより聞こえるか? お前らの死刑執行を告げる足音だ……随分と待たせてくれたじゃねぇか……後であいつらにもお仕置きしなければならないか?」ヘッヘッヘ


山賊E「悔しいけど打つ手無し……かな、これは流石に」

お嬢様「落ち着いている場合じゃありません! なにか、なにか方法はないのですか!?」

山賊E「無茶言わないでくださいよ、足音聞く限り、俺一人じゃ太刀打ちできない数です……今更だけど降参したら許してくれる?」

地主「そんなわけねぇだろうが!!」

山賊E「……だよね」アハハ

お嬢様「あなたはこんな時になにを!! あんな奴に降伏など! 言語道断です!!」バシッ

山賊E「いや、俺はダメかもしれないけど、ここで降参すれば君達だけは生き残れるかと思って一応ね……」

お嬢様「私はあなたがいない世界なんかで生きてもちっとも嬉しくありません!!」

山賊E「そ、そういうことを今ここで言います?」カァァ

地主「お前ら……こんな状況でいちゃついてんじゃねぇぞ!?」ガンッ

お嬢様「そうだ! あなたの持っている七つ道具……ですか? それでなにか……」

山賊E「ええ? 潜入着、鍵開けピック、煙玉、爆破術式符、粘着ネット、剣……どれも使えそうにないですよ?」

お嬢様「そうですね……あ、でも! まだ六つしか出てません! まだ最後の一つが残ってるじゃありませんか!」

山賊E「えっと……」

お嬢様「どうしたんですか?」

山賊E「あのー、ご期待に添えずすごく申し訳ないんですけど……」

お嬢様「なんです!? はっきり言いなさい!」

山賊E「えっと……無いんですよ」アハハ


お嬢様「それは……なにが無いのですか?」

山賊E「七つ道具はまだ六つしかないんですよ……」

お嬢様「………ではなぜ七つ道具などと?」

山賊E「い、いずれ七つにするつもりだったので……」

お嬢様「………これは絶体絶命ですね」

山賊E「ええ、絶体絶命です」

地主「ははっ!! どうやら万策尽きたらしいな!!」

地主「俺の邪魔する奴はこの世界にはいらねぇ!! お前らまとめてここで死ね!!!」

地主「フハハハハハハハハハハ!!!!」



ドドドドドドドドド!!!


地主「来い!! 奴隷ども!! あいつらを血祭りにあげろ!!!」

山賊E「あああ!! こうなったらダメで元々! 最後まで抗ってやるよ!!」チャキッ

地主「無駄だ! お前らは所詮、この世界を牛耳る力には到底及ばないんだよ! これが俺の力だ!! 俺に歯向かったこと! あの世で後悔しろ!!」アッハッハッハ


ドドドドドドドドドド!!!!







奴隷兵士A「た、助けてくれー!!!」ダッ

奴隷兵士B「悪魔だ!! 悪魔が!!」ブルブル

奴隷兵士C「悪魔に殺されるー!!」


山賊E「ん?」

お嬢様「あれは……どういうことですか?」

地主「お前ら! なにをしている! 侵入者だ! さっさと殺せ!!」ビッ

奴隷兵士A「そうです、ご主人様!! 侵入者なんです!!」

奴隷兵士B「それがもうめちゃくちゃな強さで!! 警備隊が壊滅状態に……」

奴隷兵士C「我々だけでは手に負えないです!!」

地主「なんの話だ! 侵入者はこいつらだろう!?」

奴隷兵士A「そうじゃないんです……!!」


パリィィィィィン!!!



「ぎゃああああああああああああああ!!!」ドサッ ガクッ

山賊E「ひ、人が飛んできた!?」

お嬢様「なんですか? 外で一体なにが起きてるというのです?」

奴隷兵士A「き、来た……」

奴隷兵士B「悪魔だ……悪魔が来たんだ……!!」

奴隷兵士C「もう……ダメだ……ハハハ……」ヘタ

地主「おい! 奴隷ども!! さっさと侵入者を殺せと言ってるだろうが!!」





蒼騎士「おいおい……人を悪魔呼ばわりなんて随分失礼な話じゃねぇか」


紅騎士「まぁ、兄弟の顔は悪魔というより鬼みたいだったけどな」ニシシ

メイド「二人共、無駄口を叩くのはそれくらいにしなさい。これは姫様直々の指令なのですよ?」

蒼騎士「んなこと言ったってな……あんたの方こそあんなに暴れておいて怪我の方は大丈夫なのか? 別に王都で休んでてもよかったんだぜ?」

メイド「なにを言ってるのですか? まだ本調子ではありませんが、姫様の頼みごとをあなた方だけに任せるわけないでしょう? 頭わいてんじゃないですか?」

蒼騎士「本当にあんたは口が悪いな! それだから毎回姫様に逃げられるんだよ!!」

メイド「大きなお世話ですの!!」

ブルー「ああ! メイドさんまたマスターとラブコメしてる! ずるいよ!!」

蒼騎士・メイド「「誰がこんな奴と!!」」

レッド「………二人のシンクロ率95%を記録……息ピッタリです」

紅騎士「まぁまぁ、喧嘩しない喧嘩しない。あんまり時間も無いんだからさ」

メイド「む、そうですわね。あなたの無駄話に付き合っていたら時間がいくらあっても足りませんの」

蒼騎士「よく言うぜ……」ケッ


山賊E「お、お前は……もしかして……」

蒼騎士「久しぶりだな……ちょっと見ない間に女に囲まれて……お前モテ期ってやつか?」

ブルー「あ、ダメだよ、マスター! ほかの女の子に目移りしちゃ! マスターは私だけ見てればいいの!!」

蒼騎士「いや、お前は敵の方を見てくれないか……」ハァ

山賊E「やっぱりそうか! 二人とも急に消えたから心配してたんだぞ?」

お嬢様「あの……そちらの方はお知り合いですか?」

蒼騎士「ああ、こいつとは元、山賊仲間で……」

お嬢様「山賊、ですか?」

山賊E「ああああ!! そんなことよりお前ら、今までどこにいたんだよ!?」

蒼騎士「あれ? おかしいな、紅がお頭に手紙送ってたはずだが?」

山賊E「あ……なんかここ最近忙しくて……」アハハ






奴隷戦士「……血……止まって……お願い……!!」ギュウ

紅騎士「ほいほい、お嬢ちゃん、ちょっと失礼しますよ?」

奴隷戦士「あなた……誰……?」

紅騎士「その話は後で……回復魔法!!」ポワァ

奴隷戦士「傷が……!!」

占い師「……う」

奴隷戦士「妹!!」

紅騎士「ああ! そのまま安静にしといて! これでとりあえずは大丈夫だから……あ、でも後でちゃんと専門機関で診察を……」

奴隷戦士「あ……ありがとう!!」ガバッ

紅騎士「わわっ!! ちょ、ちょっと!! 控えめなお胸が当たって……ちょっと夢心地……!!」

レッド「マスター、セクハラです」ムッ

メイド「……二人とも、あまり時間が無いことは分かっていますか?」ハァ

紅騎士「わ、わかってるよー!!」

蒼騎士「ああ、そうだったな」




地主「なんなんだお前等!! いきなり現れて俺の敷地で勝手なことしやがって!! なんのつもりだ!!」



メイド「あら、聞かれたのなら名乗らなければなりませんわね……紅騎士さん、蒼騎士さん?」

紅騎士「わかってるって! 『あれ』だね、姉ちゃん!!」

お嬢様「『あれ』?」

蒼騎士「お、おい……本気で『あれ』をやるのか? 冗談だろ?」

メイド「あら、なにか問題でも? こういう時のためにちゃんと練習したでしょう?」

蒼騎士「お、俺は嫌だからな、あんな恥ずかしいこと!!」

紅騎士「ええ? そんなこと思ってたのか!? 兄弟!!」

蒼騎士「当たり前だろ!!」

メイド「ダメです。姫様の命令は絶対ですから☆」

ブルー「マスター、こういう時は思いっきりやらないと中途半端に恥ずかしいよ?」

紅騎士・メイド「「そうだそうだー」」

蒼騎士「く……」

紅騎士「んじゃ、俺から行くぜ!」

蒼騎士「ま、待ってくれ……まだ心の準備が……」

メイド「いいえ! 待ちません!! 行きますわよ!!」








紅騎士「巷に蔓延る悪の華!」ダンッ

蒼騎士「…くそ……全て除くは我らの定め……///」プルプル

ブルー「不条理な世界を正すべく!!」ババン

レッド「主人のために今日も戦う」

メイド「姫様が目指すその世界のために!!」ダンッ

紅騎士「我ら仮面王女私設部隊!!」ダダン

蒼騎士「か……仮面王女の…な……名の下に……///」プルプル

メイド「あなたの悪事! サクッと裁かせていただきますわ!!」バーン


シーン……


メイド「バッチし決まりましたの☆」

地主「……」

山賊E(だ、だせぇ……)

蒼騎士「……や、やめろ……そんな目で見るな……これは俺の趣味じゃない……あのじゃじゃ馬姫が……///」プルプル

お嬢様「カッコイイですわ!!」

山賊E「ええ……?」

といったところで今日の投下は以上です!!


ダメだ、もうちょっとなのに終わらない……


明日も同じ時間帯に投下していきます!! よろしくお願いします!!

というわけで、今日もお付き合いくださり、ありがとうございました!!

訂正です

>>565

山賊E「あなたには誘拐の疑いと奴隷不法所持という条例違反の疑いがある。覚悟はいいな?」→×

山賊E「お前には誘拐の疑いと奴隷不法所持という条例違反の疑いがある。覚悟はいいな?」→○

でした、すみません

もう一個訂正です

>>538


占い師「説明するの難しいんだけど、例えばお兄さんの過去とかこれから起こる未来のこととかね……断片的にだけど断片的にだけどぼやぼやーっと見えるの……つまりは一種の予言とか透視とかそういった類?」→×

占い師「説明するの難しいんだけど、例えばお兄さんの過去とかこれから起こる未来のこととかね……断片的にだけどぼやぼやーっと見えるの……つまりは一種の予言とか透視とかそういった類?」 →○


でした、ありえないミスですね……すみませんでした



こんばんは、今日も投下していきます

よろしくお願いします!




地主「仮面の王女の……私設部隊……だと!?」

メイド「姫様の依頼により、あなたの身柄を拘束させていただきます……覚悟はよろしいですね?」

地主「なぜこんなところにお前たちのような奴らが来るんだ!? おかしいじゃねぇか!!」

紅騎士「そんなこと聞かれてもなぁ……俺だって姫様が何考えてるのかわからないし……」

蒼騎士「ま、あんたはやり過ぎたってことだろ? そういうの、うちの姫様は放っておけない質なんでな」チャキッ

メイド「さぁ! 観念して大人しく捕まっといた方が身のためですわよ?」

地主「けっ! 俺を騙そうったってそうはいかねぇ!! どうせハッタリだろ! おい! お前ら!!」

奴隷兵士A「は、はい!!」

地主「こいつらもまとめて殺せ!」

蒼騎士「ほう、俺らとやろうってのか?」ニヤッ

ブルー「マスター、顔! 顔!!」

奴隷兵士B「ひぃ!! む、無理ですよ……こいつら無茶苦茶強いんです!!」

地主「今の言葉は奴隷が主人の命令に逆らったらどうなるか……理解した上での発言か……?」

奴隷兵士C「あ、ああ……」ガタガタ

地主「もう一度調教し直すか? どうだ?」

奴隷兵士A「い、嫌だ……嫌だ!!」

奴隷兵士B「それだけは! それだけは!!」

奴隷兵士C「ああああああ!!!」

メイド「姫様から話は聞いてましたが……胸糞悪いですわ」

紅騎士「ああ、こんなこと許せねぇよ!!」

地主「それが嫌ならさっさと殺せ!! 俺の手を煩わせるな!!」

奴隷兵士「「「うわああああああああああああああああああ!!!」」」ダッ


山賊E「来るぞ!! どうするんだ?」

蒼騎士「ああ、大丈夫だ。すぐに終わる」

山賊E「すぐに終わるって言ったって……」

紅騎士「じゃあとりあえず、俺右の人で!」

レッド「ターゲットロック、戦闘モードへ移行します」

メイド「では私は左を……」

蒼騎士「俺が真ん中か……ブルー」

ブルー「OK、マスター! ド派手にやっちゃうよ!!」








奴隷兵士A「うぉぉぉぉ!!!」

紅騎士「まずは俺からっと!!」ザッ

奴隷兵士A「死ねぇえええ!!」ブンブンブン

レッド「回避行動推奨……どうしますか?」

紅騎士「お前に任せる!!」

レッド「了解、回避パターン算出……完了。回避行動を開始します」ギュィィィン

紅騎士「ほっ! よっ! それっと!!」ヒラッヒラッヒラッ

奴隷兵士A「あ、当たらねぇ……!! なんでだよ!!」ブンブンブン

紅騎士「お前の動きは全て見切った!!……俺の相棒が!!」ドヤッ

レッド「仕様の範囲内です」

奴隷兵士A「クッソォォォォ!!!!」ダッ

紅騎士「それじゃいっちょど派手にいきますか!! レッド!!」

レッド「最大出力……いけます」ギュォォォォ!

紅騎士「いっけぇぇぇぇぇぇ!!!」


ズバァァアア!!!


奴隷兵士A「ぐああああああ!!!」ヒューン


レッド「ターゲットの戦闘不能を確認」

紅騎士「へへ、いっちょ上がり!!」ニカッ






奴隷兵士C「…・…クソッ……やるしかねぇ!! やるしかねぇんだ!!」

メイド「あらあら、目が血走ってますわよ?」

奴隷兵士C「うるせぇ! 女だからって容赦しねぇ!! お前を殺す!!」ムキムキ

メイド「随分と立派なお体をしてますのね」ニッコリ

奴隷兵士C「俺はこの鍛え上げられた肉体で戦場を渡り歩いてきた!! お前らとは潜ってきた修羅場が違う!!」ムキムキ

メイド「その割に、さっき私たちから逃げてましたの」

奴隷兵士C「黙れ!! 俺の拳でお前をミンチにしてやる!!!」

メイド「ええ……できるものならば」ウフフ

奴隷兵士C「うぉぉぉぉおおおお!!!」ブォッ


ガチィィィン!!


メイド「………」ニコッ

奴隷兵士C「ぎゃぁぁぁあああああ!! 手が!! 手がぁぁ!!!」

メイド「あら、どうなさいました?」

奴隷兵士C「ど、どうなってやがる!! この女!!」

メイド「私はただのメイド、主に仕えるメイドです」

奴隷兵士C「ひ、ひぃぃぃ!!」

メイド「ところで……あなたは派手なことは好きですか?」ニコッ

奴隷兵士C「な……なにを……」ガタガタ

メイド「では少しばかり派手めに……!!!」ゴゴゴゴゴ

奴隷兵士C「拳が……光っ……!?」

メイド「いかせてもらいますの!!!」バァァァァァン

奴隷兵士C「ガッ……!!」ガクッ

メイド「あら? もう終わりですの? 物足りないですわね」フフッ







蒼騎士「あーあ、あのバカ共……殺してねぇだろうな?」ハァ

奴隷戦士B「あ……あ……」ガタガタ

蒼騎士「なんだ? 逃げるなら俺は追わないぞ?」ニタァ

ブルー「マスター、顔がそう言ってないよ……」

奴隷戦士B「うわぁぁぁぁぁああああ!!」ダッ

蒼騎士「よっと!!」シュンッ

奴隷戦士B「き、消えた!?」

蒼騎士「向かってくるなら話は別だ……一気に決めさせてもらう!!!」ゴゴゴゴゴッ

奴隷戦士B「いつの間に……!?」

ブルー「やっちゃえマスター!!」

蒼騎士「はぁぁああああ!!!」


ザンッ


警備A「ぐはっ!!」ガクンッ

蒼騎士「安心しな、命までは取らねえよ、峰打ってやつだ」

ブルー「やっぱりマスターは最っ高だね!!」

蒼騎士「お前は少し静かにしてくれ……」







警備達「「「………」」」ピクピク

山賊E「す、すごい……」

蒼騎士「姫様守ろうっていうんだ。これくらいできて当然だろ?」ヘヘッ

山賊E「確かにそうだけど……」

山賊E(じゃあ俺の頑張りはなんだったんだ……)ズーン

紅騎士「へへっ! もう役立たずなんて呼ばせないぜ!!」

山賊E「お、おう……」

地主「そんな、あいつらを一瞬で……お、おい!! 他の奴らはどうしたんだ!? 早くこいつらをなんとかしろ!! お、おい!!」

蒼騎士「………いくら呼んでも無駄だぜ?」

地主「なんだと!? なんでそんなことがお前に言える!?」

蒼騎士「そいつらなら全員外でのびてる」

地主「なにぃ!? 誰がそんなこと……!!」

紅騎士「誰がやったかっていうと主に……」ジー

メイド「少々……はしゃぎすぎましたの」エヘヘ

ブルー「すごかったよね……メイドさん」

紅騎士「うん。1人で50人くらい相手してたもんな……」

地主「く、クソ……誰か!! 誰か!!!」





メイド「さぁ、二人共、騎士団の方が来る前にあの男を拘束しますわよ?」

山賊E「なんだ? なにかまずいことでもあるのか?」

蒼騎士「ああ……えっと」

メイド「私たち非公式部隊ですので、あまりおおっぴらに動けないんですの。今回は姫様の個人的なご依頼ですし……」

蒼騎士「ちょっとここに来るまでに派手に暴れすぎた。騒ぎを聞きつけて支部の連中が乗り込んでくるかもしれない。そうなると説明が面倒だ。あいつは俺たちが直接第一騎士団の団長に引き渡す」

山賊E「ちょっといいか? ずっと気になってたんだけど、なんで王都の仮面の姫様が俺たちを助けに来てくれるんだ? そもそも、なんでこの騒動のことを仮面の姫様が知ってるんだよ?」

メイド「フフッ……それは姫様が困っている民の味方だからです。あなた達の救いを求める声は王都まで届いているのですよ?」

山賊E「………」

メイド「フフッ……」ドヤッ

山賊E「いや、そんなんで誤魔化されませんよ!?」

メイド「あ、あら?」ズルッ

紅騎士「じゃあ、案外お前の近くにいたとか?」

蒼騎士「そうだな、あの姫さん急に現れて急に消えるし、普段なにやってるかわかんねぇもんな……」

山賊E「なにそれ……」

紅騎士「今もどうせニコニコしながらエグいこと考えてんじゃない?」アハハ






受付「へぇぇえええくしょん!! んにゃろー!!!」


課長「相変わらず元気なくしゃみだね……」ハァ

受付「あはは、誰か噂でもしてるんですかね」チーン

課長「……今、とある場所で大暴れしている3人組がいるという通報が入ったんだけど……」

受付「おお、この非常事態って時に物騒ですね!」

課長「……君の仕業だね?」ハァ

受付「さぁ、な、なんのことでしょう~?」ピューピュピュー♪

課長「こんなこと君しかできないだろう……」ハァ

受付「いや、課長が『僕らもできることをやろう(キリッ)』とか言うから……・えっと……ダメでした?」アハハ

課長「君、自重しないとそのうち正体バレるよ?」

受付「いや、でも先に言ったのは課長の方じゃないですか!」

課長「それはそうなんだけども……」

受付「私の判断は間違っていません!!」ドヤッ

課長「そんな自信満々で言い切られたらこっちもなにも言えないじゃないか……」ハァ



―――――




メイド「それではさっさと終わらせましょうか」

紅騎士「はーい」

蒼騎士「おい、そういえばあの男どこに行ったんだ?」

山賊E「そういえば……」

ブルー「!! マスター避けて!!」


地主「火炎魔法!!」ゴォォォォ


蒼騎士「おっと!!」ヒラッ

紅騎士「なんだなんだ?」

ブルー「あそこ!!」

地主「お前ら、動くんじゃねぇ!!」チャキッ

お嬢様「あなた……申し訳ありません……」

山賊E「!!!」

地主「最後の最後に油断したなぁ? 騎士様達はどうやら詰めが甘いと見える……」クックック

メイド「……私としたことがやっちまいましたの……」

紅騎士「卑怯だぞ!!」

山賊E「彼女を離せ!!」

地主「おっと、それ以上動くなよ? 動いたらお前の大事な貴族様の首が胴体とさよならすることになるぜ?」

山賊E「……クッ」

メイド「ここまで王道の悪役も昨今珍しいですの」ハァ


蒼騎士「……馬鹿なこと言ってる場合か……どうする?」

メイド「とりあえずはあの男を刺激しないようにしましょう……」

紅騎士「言うことを聞けっていうのか!?」

メイド「今はあの男が隙をみせるまで、大人しくするしかありません」

山賊E「………」

地主「お前ら全員持ってる武器を捨てろ!!」

山賊E「……」ポイッ

紅騎士「あ、ああ!! もう!! これでいいんだろ!!」ポイッ

メイド「また戻すの面倒ですけど……仕方無ありませんわね」ジャララララ

蒼騎士「どんだけ仕込んでんだよ……」ポイッ

地主「そうだ……それでいい!!」







奴隷戦士「………!!」チャキッ

地主「おっと、奴隷戦士。お前も大人しくしな!」

奴隷戦士「………くっ……」

地主「動くなよぉ? いつ俺の手が滑るかわからねぇぞ?」ニタァ

蒼騎士「お望み通り武器は捨てたぞ!! 彼女解放しろ!」


地主「ケッケッケ、嫌なこった。こいつは俺の安全が確保されるまで人質になってもらう!」

お嬢様「……ここまでくると呆れてものが言えませんわ」ハァ

地主「なにぃ?」

お嬢様「往生際が悪いですわよ? こんなことして逃げ切れると思っているんですか?」

地主「うるせえ! 死にたいのか?」

お嬢様「殺したければそうしなさい!! それであの方達が救われるのならば私は本望です!」

地主「この!!」バシンッ

お嬢様「………!!」

山賊E「!!!」

お嬢様「暴力でしか訴えることができない……悲しいですわね、あなたは……」

地主「こ、こいつ……もっと痛めつけてやろうか!!」チャキッ




山賊E「………だ」ボソッ

蒼騎士「なんだって?」

山賊E「……もう限界だ……!!」ユラァ

蒼騎士「お、おい!! なにをするつもりだ」

メイド「彼を刺激してはいけません!」

山賊E「無理だよ……もうこれ以上……我慢なんてできない!!!」



地主「おい! なにしている!! 動くな! それ以上近づけばこの女を殺す!!」チャキッ

山賊E「殺す……?」ゴゴゴゴゴ

地主「来るな!!」

山賊E「そんな覚悟も無いくせに……!! 好き勝手言ってんじゃねぇぞ……!!!」

地主「か、火炎魔法!!」ゴォォォォォ

山賊E「……お前は殺せない……」ユラァ

山賊E「今ここで彼女を殺したりなんかしたら、今度こそお前は自分の身一つでこの状況を乗り越えなきゃいけない……そんなこと……お前にはできやしない!!」スタスタ

お嬢様「あなた!! 避けて!!!」

山賊E「常に安全圏で人の命を弄んでたお前に……彼女は殺せない!!」パキィィン

お嬢様「ほ、炎が!!」

蒼騎士「消えた!?」

メイド「あれは……」

地主「ど、どうして……」

山賊E「………覚悟はいいか!!」グッ

地主「く、来るな! 火炎魔法!! 火炎魔法!!」ゴォォォォォォ

山賊E「この人は……こんなところで死んでいい人じゃねぇんだよ……お前なんかに弄ばされていい人じゃねぇんだ!!」パキィィィン

地主「ひ、ひぃぃぃ!! なぜだ!? なぜ効かない!!」

山賊E「そんなの知るか!! 俺はただお前をぶっ飛ばしたい!! それだけだ!!」ゴゴゴゴゴ

地主「そ、そそそれ以上近づいたら、こ、この女を殺す! 本当だぞ!!」

山賊E「その時はお前も死ぬだけだ……」

地主「ひぃぃぃぃ!! やめろ! やめてくれぇぇぇ!!!」





地主「……なんてな!!」ニヤリ



ブスッ




山賊E「……!!」

お嬢様「あなた!!」

地主「ハッハァ!! 山賊風情が、油断したな!! 」

山賊E「ゴフッ!!」

地主「ちょっと有利になったからって調子に乗ったか? 残念だったな! 最後に勝つのはやはりこの俺なんだよ!!」

お嬢様「そんな……」

地主「醜い内蔵をさらけ出しながらさっさとくたばれ! このゴミが!!」ケッケッケ





山賊E「甘ぇよ……お前はチョコレートより甘々だ……」チャキッ

お嬢様「あなた!?」

地主「腹に刺さったナイフを掴んでなにをする気だ!? は、離せ!!」

山賊E「そんなんじゃ人は殺せない……もっと、もっと深く刺さないと……!!」ズブズブズブ

お嬢様「なにをしてるのです!? そんなことしたら……!!」

地主「あ……あ……あああ!!!」パッ

山賊E「剣を離しても……もう……遅いぜ?」ガシッ

山賊E「……捕まえ……た!!」

地主「は、離せ!!お、俺を誰だと思っている!? 俺に楯突くということは商人貴族様に楯突くという……」

山賊E「そんなの知らねえよ……こちとら明日をも知れぬ、山賊稼業!!……お前が誰であろうが関係無い!!」グッ

地主「な、なにをする気だ……」

山賊E「二度と……」ギリッ

地主「よせ……話せばわかる……な……何が欲しい? 金か? 女か? お前の気に入りそうな女ならたくさんいるぞ?」ヘヘヘッ

紅騎士「マジ!?」

レッド「マスター、空気読んでください」

山賊E「俺の女に……」グググッ

地主「ここまで登りつめるのに俺がどれだけ苦労したと思っている!? それをお前のような山賊風情に……こんなこと……認められるか……認められるもんかぁぁぁぁぁl!!!」


山賊E「手を……出すな!!!」


バキィィィ!!!


地主「ぐへぇ!!!」

ドサッ

ブルー「強烈な右フックが鮮やかに男の頬を捉えたぁぁぁあああああ!!!」




地主「………」チーン

山賊E「へへ……ざまぁみろ……」ゼェゼェ





お嬢様「あなた!!」

山賊E「ああ……やりましたよ……これで……とりあえずは……終わりです」ニコッ

お嬢様「この大馬鹿者!!」スパーン

山賊E「痛っ!」

お嬢様「なにをヘラヘラしてるのです!! なぜあの様な馬鹿な真似をしたのですか!!」バシッバシッ

山賊E「いや、占い師のこととか、奴隷戦士のこととかでこっちも我慢の限界でして……」

お嬢様「だからってなにもあそこまでする必要は無いでしょう!!」

山賊E「ああするしか無かったんですよ。半端なことしても、あいつはどうせまた同じことを繰り返すと思って……それにどうしてもあいつを一発殴らないと気が済まなかったんです」

お嬢様「なんですか!? 発言如何によっては私はさらにあなたを怒らなければなりません!!」



山賊E「あなたを傷つけたあの男がどうしても許せなかったから」



お嬢様「なっ///」カァー

山賊E「すみません、助けるのが遅くなって……大変でしたよね?」


お嬢様「あ、あなたという人は……こういう時にどうしてそのようなことを……///」プルプル

山賊E「あの……顔真っ赤ですけど……大丈夫ですか?」

お嬢様「あなたは本当に!! 本当に!!」バシッバシッ

山賊E「い、痛いですって!!」

お嬢様「あなたは大馬鹿者です! なにを今更になってそんなセリフを!! 私が言い寄っても見向きもしなかったくせに!!」バシッバシッ

山賊E「それはなんていうか、本当にごめんなさい」

お嬢様「それを!! それを!!」バシッバシッ

山賊E「本当に痛いですから! もうやめて!!」

お嬢様「大馬鹿者……」トンッ

山賊E「え?」

お嬢様「死んでしまったらどうするんです……?」

山賊E「………」

お嬢様「あなたが死んでしまったら……私は……」グスッ

山賊E「……すみませんでした」

お嬢様「……ちょっと胸を貸しなさい……」

山賊E「……汚れますよ?」

お嬢様「あなたのどこが汚れていると言うのですか! 適当なこと言って私をけむに巻こうとしても無駄です! そんなことを言うならば私はあなたに対してさらに怒らなければなりません!!」

山賊E「………!! しょうがないな……早めに返してくださいよ?」

お嬢様「……もう頼まれたって返すつもりなんかありません……ここは私の場所です……!」スッ

山賊E「それは……困ったな」アハハ

お嬢様「そこで勝手に困ってなさい!」

山賊E「………ありがとう」ボソッ

お嬢様「なにか言いましたか?」

山賊E「いえ、なにも」フフッ






ブルー「マスター……」

蒼騎士「……なんだよ」

ブルー「あたし、バグが発生したみたい……どうしよう……」

蒼騎士「それは一大事だな……」

ブルー「あたし、電子妖精なのに……なんか口の中がめちゃくちゃ甘いんだよね……」

蒼騎士「……俺は背中がかゆくてたまらない……」

メイド「私は海に向かって思いっきり叫びたい気分です……」

蒼騎士「このモヤモヤを俺たちはどこに向かって発散すればいいんだ……」

メイド「どこかでもうひと暴れしますか……?」

ブルー「それもいいね……」

蒼騎士「メイドもたまにはいいこと言うじゃねぇか……付き合うぜ……」

メイド「今なら私、無傷で暗黒魔人を倒せそうです……」ウフフ

蒼騎士「俺は火竜を瞬殺できそうだ……」ヘヘヘ

ブルー「二人ともすごーい……」





紅騎士「いやいや、姉ちゃん達! そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!!」


メイド「あら? 紅騎士さんはあの空間に割って入っていく度胸があるんですか?」

蒼騎士「ここは空気読んで2人きりにしてやれよ……」

ブルー「そしたらいつの間にか3人になってたりしちゃったり……」ウフフ

メイド「ブルーさん、はしたないですよ……?」

ブルー「いいじゃん、これくらい……ああ、なんかもうどうでよくなっちったー。リア充爆発しろー」ダラー




紅騎士「あいつの怪我の治療!! あいつ刺されてたでしょ!!」

蒼騎士「あ」

ブルー「あ」

メイド「あ」

レッド「対象の生命反応減衰を確認。すぐに治療をおすすめします」


山賊E「あれー? なんかお花畑が見えるぞー?」アハハハハ


紅騎士「あ、じゃないでしょうが!! 待ってろ、すぐ回復魔法かけてやるからな!!」

蒼騎士「ちょっと待て、あいつって確か……」

お嬢様「あなた! 大丈夫ですか!!」

山賊E「……ごめん、ひと仕事終わって冷静になってみたら急に……」プルプル

紅騎士「どうした? 気分でも悪いのか!?」

山賊E「………やっぱり血はダメ……」クラァ


ドサッ



蒼騎士「おいぃぃぃ!!!!」

紅騎士「衛生兵!! 衛生へぇぇええええいい!! あ、俺だ!」アタフタ

お嬢様「あなた! しっかりしてください! あなた!!」

メイド「なにを馬鹿なことをやってるんですか! 早く回復魔法を!!」

紅騎士「わかってるってってうわぁぁぁ!!」ドンガラガッシャーン

蒼騎士「なにやってんだお前は!!」



ギャーギャー






占い師「……うっ……」パチッ

奴隷戦士「妹!?」

占い師「えへへ……おはようなの。お姉ちゃん」

奴隷戦士「よかった……」

占い師「まさか自分が生き残るなんて思ってなかったの……私もまだまだ未熟だね」

奴隷戦士「未熟でいい……今はあなたが生きているだけで……お姉ちゃん嬉しい……」ダキッ

占い師「お姉ちゃん……」

奴隷戦士「よかった……よかったよ……」グスッ

占い師「参ったなぁ……お姉ちゃんを助けるためなら死んでもいいって思ってたんだけど……お姉ちゃんのそんな顔見ちゃったら……やっぱり生きててよかったなって思っちゃったの」

奴隷戦士「もう……勝手な行動は……やめて……」

占い師「……善処するの」

奴隷戦士「……言うことを聞かないと……お姉ちゃん……パッカーンするよ……?」

占い師「そ、それは勘弁して欲しいな……」アハハ




「戻ってこい!!」「あなた!! 死んではだめですよ!!」「もっとうまくできないのですか!?」「やってるって!!」





といったところで今日の投下は以上です


あとは後処理だけ……頑張ります……



明日も同じ時間帯に投下できればと思います! 

今日もお付き合いくださりありがとうございました!!

さっそく訂正です……


>>611

地主「腹に刺さったナイフを掴んでなにをする気だ!? は、離せ!!」→×

地主「腹に刺さった刃を掴んでなにをする気だ!? は、離せ!!」→○


でした。すみません

乙ー。

奴隷戦士B「いつの間に……!?」
ブルー「やっちゃえマスター!!」
蒼騎士「はぁぁああああ!!!」
ザンッ
警備A「ぐはっ!!」ガクンッ
警備達「「「………」」」ピクピク

どこから沸いてきた警備達ww

>>619ご指摘ありがとうございます!

うわ……ボツ案のまま直し忘れてる……

>>602

警備A「ぐはっ!!」ガクンッ→×

奴隷兵士B「ぐはっ!!」ガクンッ→○



>>603

警備達「「「………」」」ピクピク →×

奴隷兵士達「「「………」」」ピクピク→○


あと、奴隷兵士が奴隷戦士になってるところもありますが気にせず読んじゃってください……

死ぬほど恥ずかしい……

乙ですー
ちょっと早く来すぎたかなー。
たしか、Eさんって、氷魔法訓練してましたよね。
怒りで氷暴走中? 炎凍らせちゃうほどってすごいなー

文章に夢中で誤字気がつかなかったっす。

すみません、遅くなりました!! 今日も投下していきます!!

>>625 魔法を訓練しているのはFです。誰が誰だかわかりませんね、私もわかりませんwww


山賊Eのあれは……まだちょっと言えません……


それでは今日もよろしくお願いします!!



三日後




――王都 『復興支援会議』会場―――




頭領「お前らぁぁ!!!」

山賊達「うっす!」ザッ

頭領「これが最後の仕事だ……覚悟はいいか!?」

山賊達「うっす!!」

山賊D「……」ゴクッ

頭領「上等だ! お前らにはこれから重要な任務にあたってもらう……」

山賊達「うぉぉぉぉぉ!!!」

頭領「間も無く復興会議の終了の時間になる! 参加された先生方はこの通路を通って帰られる手筈になっている!! そこで!!!」



頭領「受付の姉貴が思いつきで書いた『役所くん』が一つ一つ描かれたこの『役所くん饅頭』の試食会をここで執り行う!!!」



山賊達「うぉぉぉぉぉ!!!」


頭領「俺たちの宣伝如何で『役所くん』の今後、そして我らが西支部の来期の予算がが決まるといっても過言ではない!! くれぐれも失礼のないように配れ!!」

山賊達「「「ガッテンだ!! お頭ぁ!!」」」

頭領「馬鹿野郎!! 『かしこまりました』と言えって何度も言ってるだろうが!!」

山賊達「「「かしこまりました!!」」」



ガヤガヤガヤガヤ……



頭領「来るぞ! お前ら! 準備はいいか!!」

山賊達「へい! お頭ぁ!!」


バタン!!


頭領「かかれぇぇぇええええええ!!!」ビッ

山賊達「うぉぉぉぉおおおお!!!」


「!!!」「な、なんだ!?」「どうした!?」




頭領「先生方! お疲れ様です! 西支部の新商品『役所くん饅頭』でございます!」ザッ

「あ、ああ……ありがとう」

山賊D「中身はですねこのように……」

「美味しいね、これ!」

「あら、かわいいじゃない」

山賊G「ありがとうございます。役所くんはうちの職員が……」

商人貴族「……親しみやすい絵を前面に出して商品展開ですか……これは金になるかもしれませんね……」

山賊H「その際には是非我が西支部にご連絡を。商人貴族様に損はさせませんよ?」キランッ

商人貴族「フフッ……あなたとはいいお話ができそうだ」

山賊H「ありがたきお言葉……」キランッ





山賊D「随分と好評みたいですね、お頭!」

頭領「ああ! この結果を聞けば受付の姉貴も喜んでくれると思うぜ!!」

山賊D(国の税金でなにやってんだって話ですけどね……)


「おお、これは美味しい!」


山賊D「あ、ありがとうございます!」

頭領「―――!!!」


「娘にも食べさせてやりたいな。お土産に何個か購入したいんだが……」

山賊D「へい!ご 購入でしたらあちらに……」

「ありがとう。久々に家に帰るのでね、娘も喜んでくれるだろう」

山賊D「久々にっていうと……今までどこか遠くに?」

「私は妻と一緒に家を空けることが多くてね……今回の会議のためにしばらく復興地に行っていたんだよ」

山賊D「へぇ……それは大変でしたでしょう?」

「なに、私の苦労など大したものでは無いさ……今もなお、この世界に苦しんでいる人は多くいる。そんな人たちの力になりたいと私は思っているんだよ」

山賊D「ご立派なお考えで……」

「そうだ! 君にも見せてあげねばならないな。これを見てくれ!」ゴソゴソ

山賊D「これは……種ですかい?」

「そうだ……つい先ほど会議でも発表させてもらったばっかりで、まだまだ試作段階なんだけどね、これはとても生命力が強い植物なんだよ」

山賊D「これをどうするんです?」

「決まっている! この種を復興地で撒くんだよ!」

山賊D「ああ!! これが芽を出せば……!!」

「そう! 草の芽一つ生えることが無かったあの大地をどうにかすることができるかもしれない!!」

頭領「―――――!!!」

山賊D「すごい!! それはすごいですね!!」

「………まぁ、まだまだ問題は山積みだが……この発見は我々の大きな一歩だと私は思っている!!」

山賊D「ひゃー! すごい人がいたもんだ……」


「なに、私の力だけでは到底発見することはできなかった。研究する環境とそれを支えてくれた人がいたからこそだよ」

山賊D「いや、いいもの見させてもらいましたよ、復興事業、成功するといいですね!」

「うむ。君たちも是非力を貸して欲しい」

山賊D「ええ、ご入り用であればすぐにでも!! 西支部の人間はすぐにでも駆けつけますよ!! ね、お頭!!」

頭領「お、おう……」

「……残念ながら魔王を倒した代償として、我々は多くの犠牲を払った。それは変え用の無い事実だ。だが私はこうも思うんだよ。『過去は変えることはできないが、未来ならばいくらでも変えることはできる』……君もそう思わないかい?」ニコッ

頭領「……そうですね」

「おっと、長話をしてしまったね。すまないな」

山賊D「いえいえ、お構いなく!」

「それでは……『君たちの行く末に幸あらんことを』」

頭領「………」

山賊D「ありがとうございましたー!!」




山賊D「いやー、すごいっすね! いいもん見れた!!」

頭領「………」


山賊D「あれ? お頭? どうしたんです?」

頭領「クソッ……相変わらず胸糞悪りぃ野郎だ……」

山賊D「???」

頭領「これじゃあ完全に俺が悪いみてぇじゃねぇか……いや、間違いなく俺が悪かったんだろうな……」

山賊D「お頭?」

頭領「……今まで悪かったな、お前ら。こんな道に巻き込んじまってよ」

山賊D「今さらなに言ってんです、俺らはお頭と一心同体! お頭の行くところならどこへだってついていきますって!」

頭領「そうか……ありがとうよ、俺は幸せもんだ!!」

山賊D「なんです? 急に改まって……」

頭領「あー!! 完全に俺の負けだよ、ちくしょう!!!」ガッハッハッハッハ

山賊D「お頭、なんか今日変ですよ?」

頭領「おい! お前ら! もっと気合入れねぇか!! そんなんじゃ受付の姉貴にどやされちまうぜ!!」

山賊達「「「うっす!!」」」






―――――




「………やれやれ思ったより買ってしまったな」ドッサリ

「娘は喜んでくれるだろうか……」

課長「少し持とうか?」

「んん? ……おお! 誰かと思えば……お前は『魔導師』じゃないか!!」

課長「やめてくれ、その名は捨てたんだ。今はただのしがない公務員さ。もっとも、君も『騎士』ではなく、今は領主だったかな?」

領主「ああ、といってもほとんど自分の領地にいないがな」アッハッハ

課長「……こうして会うのもあの時以来か」

領主「そうだな……」

課長「体の具合はどうだい?」

領主「もう、剣を握れなくなって随分になる。情けない話だが、今の私はそこらへんの兵士にも太刀打ちできないぞ?」

課長「やはりあの時の後遺症がまだ……」

領主「やめてくれ、私は望んでああしたんだ。それを後悔するつもりは無い」

課長「それもそうだね」フフッ


領主「お前こそ今までなにしてたんだ?」

課長「……色々あったがとりあえず今は役所で中間管理職をしているよ」

領主「というと……彼女の下で?」

課長「ああ……しかもお守役だ」

領主「それは傑作だな」

課長「笑い事では無いよ……この間もひと暴れしてたし……止めるの大変なんだよ?」

領主「人間どうなるかわからないもんだな……」

課長「今は娘もいるし、そこそこ幸せだよ」

領主「娘!? お前がか?」

課長「……ああ、血は繋がって無いけどね。今年で13になる」

領主「時間が経つのは早いものだな……」

課長「そうだね……私たちも年をとった。君も色々と大変だったと風の噂で聞いているよ」


領主「まぁ、確かに色々あったが……そのお陰で今の私があるんだ、むしろ良かったと思っている」

課長「前向きだね」

領主「あの頃の私は……魔王が死ねばそれで終わりだと本気で信じていた。だがそれは違った。魔王が死んでも世界は続いていて、悲劇は今もまだ続いたままだったんだ」

課長「そうだね……しかし、なぜ急にそんなことを考えるようになったんだ?」

領主「ある青年に脅迫させられたんだよ、娘を人質にされてな」クックック

課長「それは随分と過激な話だね!?」

領主「ああ、でも今思えばあの時、彼はそうするしか無かったんだろうな……」











バチバチバチ ゴォォォォォォ!!!!!




召使い「屋敷が……崩れていく……」

領主「……もう我慢できん!!」ゴゴゴゴゴ

領主「はぁぁぁあああああ!!! ……グッ!!」シュゥゥゥゥゥ

領主妻「あなた! 無理をしてはダメです!! あなたの体はもう戦える体ではないのですよ!!」

領主「知ったことか!! 娘の危機に動けないでなにが父親だ!! 私の身などどうなってもいい!!」

領主妻「あなた!!」

領主「止めてくれるな!! こんな縄など……!!」ゴゴゴゴゴゴ


ブチブチブチ!!


領主「!!! ぬぅ……」ガクッ

領主妻「あなた!!」

領主「今……行くぞ……娘よ!!」フラフラ




山賊E「あのー、盛り上がってるところ悪いんですけど……」スタスタスタスタ


領主「き、君は……」

領主妻「先ほどの山賊さん!?」

山賊E「トイレありがとうございましたー、すごい豪華でびっくりしちゃいました」ボロボロ

領主「そ、その怪我は……」

山賊E「ああ、歩いてたら転んじゃっただけです。それとですね、お屋敷歩いてたら迷子の人がいたんで、ついでに連れてきました」

「………」

山賊E「なんか途中で気絶しちゃったみたいですけど、多分、大丈夫です」

領主妻「あ……ああ!!」

領主「娘を……君が助けてくれたのか?」

山賊E「あ、やっぱり娘さんだったんですね」

領主妻「よかった……よかった!!」

領主「よくぞ無事で……」



山賊E「おっと、そこまでです。動かないでください」チャキッ




領主「な、なに!?」

山賊E「山賊七つ道具6つ目 『戦闘用・脅迫用の剣』……」

領主「……なんのつもりだ? さすがの私もそれだけは見逃すわけにはいかないぞ」ゴゴゴゴゴ

山賊E「それ以上近づけばこの剣でこの人を殺します」

領主「くっ……」

領主妻「そんな……」

領主「なにが目的だ?」

山賊E「簡単ですよ。俺の頼みを一つ、聞いてくれるだけでいい」

領主「頼み?」


山賊E「あなたは貴族様なんでしょう? だったらできるはずだ」

領主「なんだ!? 私になにをさせようと言うんだ?」


山賊E「ちょっとこの世界を変えてくれませんかね?」


領主「世界を……変える?」

山賊E「俺のことはもういいんです。俺の手はもう血やらなんやらで散々汚れてしまいましたから。今更真人間に戻れるなんて思ってません」

山賊E「でも、やっぱりこんな生き方は絶対に間違ってて……それがわかってるのにこんなことしなきゃいけないのはすごく辛いことで……」ギュッ

山賊E「やっぱり、こんな世界おかしいって思うんですよ。誰かを傷つけなきゃ生きていけないなんておかしいんです」

領主「!!!」

山賊E「これ以上、俺みたいな存在が生まれてきちゃいけないんです……そんな世界、絶対に間違ってると思うから」

山賊E「だから……お願いします。あなたの力で……世界を変えてくれませんか?」バッ

山賊E「それが……俺のお願いです」

山賊E「よろしく……お願いします」







領主「……随分と無理難題をふっかけてくれるのだな……君は」

山賊E「無理なら……この人の命をもらいます」チャキッ

領主「……私に世界と戦えと? これまでの歴史やルールと戦えと言うのか?」

山賊E「あなたは……こんな俺たちのために泣いてくれた。こんなクズみたいな俺たちを助けたいと言ってくれた。そんなあなただからこそ……俺は頼むんです」

山賊E「俺は……どうせ近いうちに死ぬでしょう。捕まって殺されるか、それともどこかで野垂れ死ぬか……どっちにしろ山賊なんて生き方、いつまでも続けられるはずもない」

領主「………」

山賊E「だから、あなたにお願いするんです」ニコッ





領主「……わかった。約束しよう」

山賊E「本当ですか!?」

領主「ああ、二言は無い。そのような面構えをする男の頼みを断れば、私は貴族としての誇りを失う」

山賊E「……ありがとうございます」

領主「領主の名においてここに誓う。君の望む世界を、必ずや実現してみせよう!!」





課長「そんなことがあったのか……」

領主「彼は戦場で居場所を失った私に新たな戦場を示し、そこで戦えと言い放った……あの時から私の戦いは続いている」

課長「……戦いか。そうかもしれないね。この世界の不条理を僕らの世代で断ち切る。うん、これは立派な戦いだ」

領主「まだまだ約束には程遠いがな」フフッ

課長「少しずつ近づいていけばいいさ」

領主「ああ、もちろんそのつもりだ、彼の願いは私が必ず叶えてみせる」

課長「そんな世界が来るのを楽しみにしているよ」

領主「お前も少しは力を貸せ」

課長「まぁ、ほどほどに力を貸してあげないわけでもないかな?」

領主「相変わらずだな、お前は……」ハァ

課長「こればっかりは性分だからね、簡単には変えられないよ」フフッ


久々に野郎だらけ……といったところで今日の投下は以上です!! 


次回番外編最終回&予告編です!!


すみません、まさかここまで伸びるとは思いませんでした……お陰でネタのストックが山のように……

後半は予定通り開始する予定ですのでどうぞよろしくお願いします!!

それでは今日もお付き合いくださり、ありがとうございました!!

こんばんは、たくさんのコメントありがとうございます!!

番外編、最後までお楽しみいただけたら幸いです!!

それでは今日もよろしくお願いします!!


――役所 図書室――




山賊F「おーい、そろそろ休憩時間終わるぞーって……」

山賊E「……」パラッ パラッ

山賊F「またこいつは……おーい!!」

山賊E「………これは……」パラッ

山賊F「おいってば!!」

山賊E「……うわ、エグいな……なんだこの魔法? こんなの誰が使うんだよ……?」ブツブツ

山賊F「よっと!」ヒョイッ

山賊E「あ」

山賊F「なになに……『煉獄火葬』? 対象をこの呪文で焼き尽くすことでその能力を
身に宿すことができるが使用者には多大な代償を要求する禁術……? なんだこれ?」

山賊E「いや、これは……」


山賊F「お前、禁術なんて調べてどうする気だよ? まさか使う気か?」

山賊E「そんなことないけどさ……」

山賊F「アホ、やめておけ。こういった類の魔法はな、使用者に高度な魔力制御を求めてくるもんなんだよ。ちゃんと基本から勉強したって使えるやつなんてひと握りって話だぜ?」

山賊E「そうだよな……あーやっぱり無理か、俺も一から魔法勉強してみようかな……」

山賊F「どうしたんだよいきなり?」

山賊E「うーん……ほら、最近色々あっただろ?」

山賊F「あー、あったな。主にお前とお嬢様に」

山賊E「あいつらが助けに来なかったら二人共死んでたと思うだよね、あの時」

山賊F「聞いたよ、随分と出世したみたいじゃないか、あの二人は」

山賊E「うん。すごく強くなってた。でも、あの時助けにくれたのは本当に運がよかっただけで……だからさ、次こういう時があった時のためにちょっと強くなっておきたいなって」

山賊F「彼女のために?」

山賊E「いや、彼女のためとかそういうんじゃないけどさ……なんもできないのって悔しいだろ?」

山賊F「……だから禁術の本なんか読んでたのか」

山賊E「これで手っ取り早く強くなれないかなーって」アハハ

山賊F「ふざけんな」ゲシッ

山賊E「すみませんでした」


山賊F「……なんだったら俺で教えられる範囲でなら教えてやってもいいぞ、魔法」

山賊E「本当か?」

山賊F「俺もまだまだ勉強中だけど資格勉強の復習にもなるし」

山賊E「助かるよ!!」

山賊F「じゃあ早速やってみるか?」

受付「………」ニコニコ

山賊E「ああ、よろしく頼む」

山賊F「まずは基本の魔力放出からかな」


受付「………」ニコニコ


山賊E「魔力放出?」

山賊F「体内の魔力を外に放出するって感じだな。こんな風に」ポワァ

山賊E「おお……これが……」

山賊F「それで次が……あ」


受付「………」ゴゴゴゴゴ

山賊E「ん? 次はなんだよ? ………あ」


受付「どうしました? 早く次を見せてくださいよ? 休憩時間はとっくに終わってますけど」フフフッ

山賊F「受付の姉貴……」

山賊E「あ、あの、これは違うんです……」

受付「さっさと仕事しなさい!!!」

山賊E・F「「は、はいぃぃいいい!!」」ビシッ


受付「まったく……ああ、それとあなたはこっちに来てください。私はあなたを探していたので」

山賊E「俺、ですか?」

受付「色々と報告しておこうかと思いまして」

山賊E「は、はぁ……」

受付「では行きましょうか」

山賊E「は、はい」




――役所 第四課――



受付「とまぁ、色々とありましたが地主は領主様の娘を誘拐した罪で身柄を騎士団に引き渡しました。今は騎士団の監視下にあるそうです」

山賊E「え? 誘拐の罪だけですか?」グイグイ

受付「はい、奴隷所有に関しては明確な証拠が無いということで上層部から突っぱねられました」

山賊E「あれだけの人数がいたのに!?」ツンツン

受付「どうやらどこからか圧力がかけられてるんでしょうね……全く、困った話です」

地主(お、俺を誰だと思っている!? 俺に楯突くということは商人貴族様に楯突くという……)

山賊E「………」

受付「あの農場も、今は閉鎖中ですが……今後どうなるかわかりません」

山賊E「そうですか……」ペシペシ

受付「これ以上のことは私たちだけでは手出しできないでしょうね……」

山賊E「あの……あそこにいた奴隷の人達ってどうなったんですかね?」

受付「……すみません、それもわからないんです。一部の方を除いて、騎士団が現場に到着した時にはもぬけの殻でしたから……あそこにいた奴隷の捜索も早々に打ち切られてしまいまして……」

山賊E「……それじゃあ結局、事件を解決しても結局何も変わらなかったってことですね……」

受付「残念ながらそうですね」

山賊E「やり切れないな……」


受付「世界と戦うということはそういうことなんですよ、悔しいですけどね」

山賊E「やっぱり世界を変えるって簡単にはいきませんね」

受付「それでも私たちは世界を変えるためにここで働いている……違いますか?」

山賊E「………はい!」

受付「フフッ、中々いい顔をするようになったじゃないですか」

山賊E「え……?」ペシペシ

受付「前のあなたはどこか表情が暗いところがありましたが、今のあなたはなにか吹っ切れたような表情をしていますよ」

山賊E「あ、ありがとうございます……?」グイグイ

受付「それでは! そんなあなたに早速仕事を与えます!」

山賊E「な、なんですか?」ギュムッ

受付「至って簡単です!!」



受付「その三人を早くなんとかしてください!!」ダンッ



お嬢様「お久しぶりですわあなた! 私、あなたとまたお会いできる日を一日千秋の思いで待ってました!!」ギュムッ

奴隷戦士「……チョコレート……欲しい……」ツンツン

占い師「お兄ちゃん、仕事なんてしてないで私と遊んで欲しいの!!」ペシペシ

お嬢様「さぁ、あなた!! こうしてはおれません! 早速デートをしましょう! そうしましょう!!」グイグイ






山賊E「あー………すみません」

受付「あなたのせいで見てみなさい! 四課の人が干からびていますよ!!」


「へへっ、今日は女の子3倍でやんの……」「なんであいつばっかり……」「そうか、ああいう奴がいるから俺のところには女の子がいないのか……」「俺は人間をやめるぞー!!!」「もういっそ殺せよぉぉぉぉ!!!」


山賊E「いや、俺だって好きでこうなってるわけじゃな……」


バゴン!!


受付「なめたこと言ってんじゃねぇぞ?」ギロッ

山賊E「ひぃ!!」


受付「……おっといけません。この壁随分ともろいんですね」フフッ

山賊E「き、君達すぐに離れてくれる!? このままじゃ俺、この人に殺されるから!! 」

お嬢様「嫌です!!」

占い師「遊んで!」

奴隷戦士「チョコレート!!」

山賊E「聞いて!!」

受付「いやだな、私が可愛い後輩にそんなひどいことするわけないじゃないですかぁ……でもあんまり騒いでると……ね?」

山賊E(今の『ね?』には色々な意味が含まれてるんだろうな、絶対……)

同僚「こら、受付! 壁壊してんじゃないわよ!!」バシーン

受付「痛っ!! あーん、同僚さん!! この色恋ゴミ虫がいじめるんですよーう!!」ダキッ

同僚「くっつくなって!! 暑苦しいわね!!」

山賊E「い、色恋ゴミ虫……」ズーン

受付「えへへ……傷ついた心にこの柔らか枕は堪りませんなぁ……」モミモミ

同僚「………」スパーン

受付「あの、無言で叩くのやめてくれません? 割と傷つくんですよ……」

同僚「どの口が言ってんのよ……」ハァ




お嬢様「あなたは………」

同僚「あら、久しぶりね。『あの日』以来かしら」

お嬢様「え、ええ」オドオド

同僚「怪我は? もう大丈夫なの?」

お嬢様「ええ、おかげさまで……傷も残りませんでしたし……」

同僚「そう。それはよかったわ……私も心配してたのよ?」

お嬢様「申し訳ありませんでした……」モジモジ

同僚「ん? どうかした?」

お嬢様「べ、別に……なんともありませんわ」フイッ

同僚「ちょっと……」ヒソッ

山賊E「は、はい!? なんでしょう!?」

同僚「もしかしてだけど……まさか彼女に『あの日』のこと説明していないとか言うんじゃないでしょうね……!!」ヒソッ

山賊E「あ、そういえば……」

お嬢様「?」

同僚「呆れた……なんでちゃんと言っておかないの!」

山賊E「いや、なんていうか今日までなんだかんだバタバタしてて言う機会が無かったって言うかなんていうかその……」アハハハ

同僚「あなた! 私が言うまで預かってたプレゼントも取りに来なかったじゃない!」ヒソッ

山賊E「しょうがないでしょ、後処理でバタバタしてたんですから!」ヒソッ

同僚「中身……なんだった?」

山賊E「開けた瞬間、あの時の俺を全力で殺したくなりました」アハハ

同僚「ちょっと、なによそれ、気になるじゃない」

山賊E「これだけは秘密です」

同僚「ケチね……じゃあ何? この子はずっと今まで私たちことを誤解したままだって言うの!?」


山賊E「いや、大体空気読んで察してくれてるんじゃないですかね?」

同僚「そんなわけないでしょう!? これだから草食系は……!!!」

お嬢様「あの!!」ザッ

同僚「………なにかしら?」

お嬢様「私、負けませんから!」

同僚「え?」

お嬢様「例えあなたがこの人の婚約者であろうと! 私はこの人が好きです! 好きで好きで堪らないのです!! だから私はこの人のことを諦めたりなんかできません!」

占い師「うわーお! 貴族のお姉ちゃん大胆なの!!」

奴隷戦士「……チョコレートより……あまーい……」

山賊E「ちょ、ちょっと!? ///」

「鬱だ、死のう」「課長―、役所の壁ってどれくらい壊していいんでしたっけ?」「男同士なら俺にだってチャンスあるかな……?」

受付「ちょっと皆さん!?」


同僚「………あなた幸せ者ね。ここまで言ってくれる人なんて中々いないわよ?」

山賊E「いや、こんなところでなにを言ってるのかっていうか彼女は一体何をのたまわってるのか俺にはさっぱりというかなんていうかいやしかしだけどもあばばば……///」カァァァ

同僚「安心して、彼とはあなたが思っている関係じゃ無いわ」

お嬢様「え? ではなぜあの時あのようなことを……?」

同僚「私もびっくりしたわよ、あなたに向かって急に私のことを『婚約者だ!』なんて言い出すんですもの」フフッ

山賊E「………」ソローリソローリ

お嬢様「………あなた……」

山賊E「………はい」

お嬢様「これはどういうことか……説明してもらえますか?」ピキピキ

山賊E「………あれくらい言えばさすがのあなたでも諦めてくれるかなーなんて………」アハハ

お嬢様「ほう? それであなたはあのようなことを……?」

山賊E「いやー、嘘とは言え口に出すのは良心が痛みましたねー、流石に」

お嬢様「嘘? ……あれが全部嘘だと言うのですか?……私、若干トラウマになりかけたのですよ……?」ゴゴゴゴゴゴ

山賊E「それについては本当に申し訳なかったと思っています、ごめんなさい」ペコッ

お嬢様「この愚か者!!」バシーン

山賊E「んぎゃぁぁぁ!!」

お嬢様「今日という今日は……許しませんわ!! お説教です! 覚悟しなさい!!」ビシッ

山賊E「ええ!? まだ仕事残ってるんで勘弁してくださいよ!」

お嬢様「なりません!! あなたは人の気持ちというものを本当にわかっているのですか! 私がどれだけ傷ついたか!! そこに直りなさい!!」

山賊E「そんなの!! 付き合ってられるか!!」ダッ

お嬢様「あ、こら!! 待ちなさい!!」ダッ

山賊E「待てません!!」


ダダダダダダダダダ!!!




受付「同僚さん……」

同僚「……なにかしら?」

受付「私今、口の中がものすごく甘いんですけど、なんとかなりませんかね?」

同僚「奇遇ね、私もよ……」

奴隷戦士「……口の中……甘々……幸せなこと……」

占い師「二人共アツアツなの!」

受付「仕事、戻りましょっか?」

同僚「そうね、もうこのことは忘れましょう」

奴隷戦士「……私たちもそろそろ帰る……奥様の……お手伝いをしなきゃいけないから……」

占い師「貴族のお姉ちゃんのことはお兄ちゃんに任せることにするの!」

同僚「ええ、今度はちゃんと送って帰るようにキツく言っておくわ」

受付「確か二人共今はお嬢様の家に身を寄せているんでしたよね?」

奴隷戦士「……うん……毎日、楽しい……幸せ……」

同僚「それだけで彼が頑張った成果はあったってことかしら?」

奴隷戦士「……彼らには……感謝している……彼らは……私たちを人間にしてくれた……居場所をくれた……」

受付「そうですね……」

奴隷戦士「……行くよ? 妹……」


占い師「………」キィィィィィィン



奴隷戦士「……妹?」

同僚「どうかしたの?」

占い師「!!! あ、ごめん。お姉ちゃん。ちょっとぼーっとしちゃって……」アハハハ

奴隷戦士「気にしてない……行くよ?」

占い師「う、うん……わかったの」

受付「もしなにか困ったことがあったら私たちのところに是非相談に来てください。力になれると思います!」フンスッ

奴隷戦士「……ありがとう……」

同僚「用がなくてもいつでも遊びに来ていいからね?」

占い師「うん! 時々お兄ちゃんが浮気してないかチェックに来てやるの!!」ムフフ

同僚「そう。それはいいわね。待ってるわ」フフッ


―――――




占い師「いい人達だったね! お姉ちゃん!」

奴隷戦士「うん……いい人……」

占い師「これは身体張ってお姉ちゃんを庇った甲斐があったってもんなの!」

奴隷戦士「……もう二度とあんなことしないで……」

占い師「わ、わかってるの!!」






占い師「………」




ゴォォォォォ!!!



山賊E「君は……俺が……」ガクッ



ゴォォォォォォォォ!!!!





占い師「!!!」ブンブンブン

奴隷戦士「妹? ……どうかした?」

占い師「なんでもないよ! お姉ちゃん!! ささ、早く帰ろ?」

奴隷戦士「? ……わかった……」


占い師(そんなこと……あるわけないの。私もまだまだ未熟なの!)

占い師(そう……だよね? お兄ちゃん……)



――――


山賊E「酷い目にあった……仕事も終わらなかったし……」ハァ

お嬢様「あなた」トテトテトテ

山賊E「あれ? 待っててくれたんですか? あの2人は?」

お嬢様「2人は仕事があるので帰りました。私はそんなことしなくてもいいと言ったのですが、彼女たちがどうしてもというので……」

山賊E「そうですか」

お嬢様「1人で帰るとまたあの時と同じような目に遭うかもしれないのでここで待っていたというわけです」ジトー

山賊E「だから、すいませんでしたって……」

お嬢様「……あなたに嫌われたと思って、すごく悲しかったのですよ?」グスッ

山賊E「反省してます……はい……」

お嬢様「腕を貸しなさい。それで許してあげます」

山賊E「えっと、まだ役所の中なんですけど……」

お嬢様「私は構いません。さぁ!」

山賊E「うう……はい」スッ

お嬢様「ふふっ、よろしい」ギュムッ

山賊E(は、恥ずかしい……!!)

お嬢様「では……少し歩きましょうか……」

山賊E「は、はい……」




――――




山賊E「………」スタスタ

お嬢様「………」スタスタ

山賊E「怪我の方は大丈夫ですか?」

お嬢様「え、ええ。昼間に話した通り、傷も目立たなくなってきましたわ」

山賊E「そうですか……」

お嬢様「え、ええ……」





山賊E「………あの」お嬢様「………あの」



山賊E「なんですか?」

お嬢様「聞いて欲しいことがあるのです」

山賊E「俺も、あなたに話さなければならないことがあります」


お嬢様「………そうですか」

山賊E「はい……」

お嬢様「………」

山賊E「………じゃあ俺の話を先に聞いてくれませんか?」

お嬢様「……わかりました」

山賊E「俺、あなたにずっと隠していたことがあったんです。しかも、絶対言わないつもりだった」

お嬢様「………なんでしょう?」



山賊E「………俺、山賊だったんです」



お嬢様「………」

山賊E「少し前まで、人の家に忍び込んで物を盗んだり、誰かを脅して強引に奪ったりして毎日食いつないでいました。たくさんの人を傷つけたと思うし、色々な人に迷惑をかけてきた……」ギュッ

山賊E「あの部屋で俺のこと『汚れていない』ってあなたが怒ってくれた時、本当に嬉しかった。こんな汚れた手を取ってくれる人がいたんだってわかって………嬉しかったです」


山賊E「でもそれは、『公務員の俺』であって山賊だった頃の俺じゃない。どんなに過去を隠したってやっぱり俺の罪は消えない。今もまだ、俺の手はやってきた罪や血の色で汚れているんです……」

山賊E「こんな俺があなたの恋人になる資格なんて無い」

山賊E「……だって俺は……どこまで行っても、罪人だから……!!」ギュッ

山賊E「だから……俺は、やっぱりあなたとは……一緒にいることはできません……」

山賊E「すみません……」






お嬢様「………言いたいことはそれだけですか?」

山賊E「え?」

お嬢様「言いたいことはそれだけかと聞いているんです」

山賊E「え、ええ……」

お嬢様「そう……でしたら今度は私の番ですね」

山賊E「え!? いや、話聞いてました!? 俺、山賊だったんですよ!?」

お嬢様「わ・た・しの番ですね!」

山賊E「は、はい……」

お嬢様「まったく……あなただって人の話を聞いてないじゃないですか」

山賊E「す、すみません……」

お嬢様「私は……ずっとあなたに伝えなければならないことがあったんです」

山賊E「……伝えなければならないこと……ですか?」

お嬢様「はい。最初に私が役所に訪れた時、あなたに『一目惚れをした』と言いましたよね?」

山賊E「はい……それがどうかしたんですか?」

お嬢様「すみません。あれは嘘です」

山賊E「……嘘?」

お嬢様「私は……ずっとあなたを探していました。あなたに伝えたいことがあったから……」

山賊E「そ、それってどういう……」




お嬢様「燃え盛る屋敷の中から、私を助けてくれてありがとうございました」

お嬢様「あなたのお陰で、私は今日もここで生きています」








山賊E「!!! そ、そんな……気づいて……」

お嬢様「あら、あの時も言ったでしょう?『顔なんて見えなくてもあなただってことくらいわかります』」

山賊E「そ、それはそうかもしてないですけど……でも!!」

お嬢様「……ずっと、ずっと伝えたかったんです。でもあなたは自分が山賊であることを隠しているようでしたし……なかなか言い出せなくて今日まで……」フフフッ

山賊E「ま、待ってください……じゃ、じゃあ、あなたは最初から俺のことを知ってて……」

お嬢様「はい。これでやっとあなたに伝えることができました」

山賊E「……そんな……だって俺は……」

お嬢様「私の家を襲撃した山賊、ですか?」

山賊E「そうです! 俺達はあなたの家の人達に迷惑を……」

お嬢様「でもあなたは死にそうだった私を助けてくれた」

山賊E「そ、それは……」

お嬢様「地主の男から私を守ってくれた時、嬉しかった」

山賊E「!!!」

お嬢様「私がくじけてしまいそうになった時、力一杯抱きしめてくれた」

山賊E「………」

お嬢様「人質にとられてしまった時も、身体を張って助けてくれたじゃないですか!」


パシッ


山賊E「あ……」ギュッ


お嬢様「あなたは私に……たくさんのものをくれました」

お嬢様「そんな人の手が……汚れているわけないでしょう!?」

山賊E「!!!」

お嬢様「ほら、私の目には普通の……綺麗な手に見えますよ?」



山賊E「……でも」


お嬢様「ああ!! もう面倒くさいですわね!!! あなたという人は!!」

お嬢様「貴方が何者かだったなんて! もうどうでもいいことです!! 私は! あなたが大好きなんです!!」

山賊E「えーっと……」

お嬢様「私の行く道にずっと付き合うと先に言ったのはあなたです! 男なら自分の言ったことには責任を持ちなさい!!」

お嬢様「これ以上、グジグジ言うようなら、私があなたのその曲がった根性叩き直してやりますわ!!」バーン







山賊E「………プッ、アハハハハ!!!!」

お嬢様「な、なにがおかしいんです!?」

山賊E「あなたには本当に叶わないな!! 職業柄、色んな人を見てきたけどここまで強引な人、初めてですよ!」

お嬢様「当然です! 私は世界に喧嘩を売ろうっていう女です! 一緒にしないでください! あなたが山賊だろうとなんだろうと私はあなたの過去ごとまるっと愛してみせますわ!!」

山賊E「……俺と一緒にいると、幸せになれないかもしれないですよ?」

お嬢様「なにを言ってるのです? 私はあなたが側にいるだけで幸せですよ?」

山賊E「……わかりました」

お嬢様「で、では?」

山賊E「あなたには負けましたよ……不束者ではありますが、どうぞよろしくお願いします」ペコッ

お嬢様「こ、こちらこそよろしくお願いしますわ!!」

山賊E(嬉しそうな顔しちゃって……クソッ!! 本当に可愛いなおい!!)


お嬢様「それでは早速結婚式の予定なのですけども……」

山賊E「はい?」

お嬢様「できれば早めに執り行いたいと思うのですが……あいやでもお父様の予定も聞かなければならないし……」ムムム

山賊E「ちょ、ちょっと!」

お嬢様「なんですか?」

山賊E「結婚はまだしませんよ?」

お嬢様「そうなんですか!?」ガビーン

山賊E「いや、いくらなんでも気が早すぎますよ……」

お嬢様「そ、そういうものなのですね……まぁ今日のところはよしとしましょう!!」




山賊E「………」ジー

お嬢様「あなた? どうしました?」

山賊E「………」ズイッ

お嬢様「な、なんです? 突然近づいたりなんかして……」

山賊E「……あなたの顔をよく見ておこうと思いまして」アハハ


お嬢様「……どういう意味です……?」

山賊E「今思えばちゃんと正面でしっかり見たこと無かったなって。ほら、いつもあなた、俺の横にいるじゃないですか。なんか横顔の印象が強くてですね……」

お嬢様「……それはわかりましたけど……それにしても近くありませんか……?///」

山賊E「いや、ちゃんと見ておかないとと思いまして」ニヤッ

お嬢様「……わ、わかりましたから……もうちょっと距離を……///」

山賊E「ダメです」

お嬢様「ううう……///」

山賊E「あ!」

お嬢様「なんですか……///」シュゥゥゥ

山賊E「俺も……あなたのことが……好きですよ」

お嬢様「はうあ!!」ボンッ

山賊E「………面と向かって言うのってやっぱり恥ずかしいですね///」

お嬢様「!!! あなたという人は……!!!」

山賊E「これだけはちゃんと伝えておこうと思いまして」アハハ

お嬢様「も、もう!!」プンスカ


山賊E「………」ズイッ

お嬢様「さ、さらに近く……!! も、もう十分じゃありませんか!?」

山賊E「どうでしょう?」

お嬢様「どどどどどうでしょうって!?」アタフタ

お嬢様「だ、男女がこ、この距離まで近づくというのはですねつまりはそういうことを意味していましてあのですからですね!!」モニョモニョ

山賊E「………」

お嬢様「む、無言は怖いのですけど!!」アタフタ

山賊E(真っ赤になる彼女がとても愛おしかったので)

山賊E「嫌なら……今すぐ引っぱたいてください」

お嬢様「そんなことできないって知ってるくせに……卑怯です!!」


山賊E(俺は彼女にこの気持ちを伝えてみた)





番外編「山賊とお嬢様」    終わり




予告編





妖精長「……この里はかつてないほどの危機にさらされている、またしても人間どもの手によって」

商人貴族「あなたに拒否権はない………それでは商談と参りましょうか」

舎弟「兄貴はこんな俺を拾ってくれたんすよ。だから俺は兄貴に恩返ししなくちゃいけないんす! 見せてやりますよ! 『怒れる青鬼』の力を!!」

剣士「よく見ておくんだ。肩書きというものは名乗るものではないということを」

侍少女「やあやあ! 我こそは侍少女!! 貴様をこれから拙者の剣のサビに……痛いでござるよ!?」

少年魔法使い「これが僕の……とっておきだ!!」

魔族少女「……私は諦めません! だってみんなと約束したから!」

幼女「おいおい! 俺を誰だと思ってやがる!! 素敵で愉快なお兄さんだぞ?」

悪ガキ「………俺も、なれるかな?」

院長「あまり子供たちの前でこの力を使いたくないのですが……仕方ないですね」

勇者「悪いな! ガキども。生憎、こっからは大人の時間だぜ?」




続く!!


といったところで番外編&予告編終了です

感想等書き込んでいただけたら嬉しいです


告知通り、後編は月曜日から別スレにてゆるゆると始めていきたいと思います。幼女は活躍させます

長い番外編ではありましたが本編の補足ということで、ご勘弁ください

本編と分けて別スレでやればよかったと今更ながら後悔しています……こんなことになるとは思ってなかった……



それでは引き続き3部後編の方もお付き合いいただけたらと思っています!

長い間お付き合いくださりありがとうございました!!


おはようございます、早速ですが訂正です

山賊E「あなたには本当に叶わないな!! 職業柄、色んな人を見てきたけどここまで強引な人、初めてですよ!」→×

山賊E「あなたには本当に敵わないな! 職業柄、色んな人を見てきたけどここまで強引な人、初めてですよ!」→○

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