ほむら「エスト瓶よ」(467)

ほむら「ここはどこかしら…?」

ほむら「また失敗して、巻き戻して…」

目の前に広がるのは中世の町並み。

私の描いていた、イメージそのもの。

でも…

行き交う人々の目に光を感じない。

どこか後ろ暗い…そんな空気。

女性「あの…」

ほむら「!…何かしら?」

女性「導師様でいらっしゃいますか?」

ほむら「?」

男性「呪われた娘の為に、祈っては頂けないでしょうか?」

二人は夫婦だろうか…誰かに似ている気がする…

麻布を染料で薄く染めただけの服を見る限り、二人の身分は高いものでは無いのだろう。

ほむら「…呪われた?」

女性「はい、不死の呪いです」

ほむら「…」キョロキョロ

男性「どう、されました?」

ほむら「いえ…その娘は?」

二人は顔を見合わせる。

まずい事を言ったのだろうか?

女性「導師様は修験の身で?」

ほむら「え、えぇ…ここの者では無いの…」

男性「それは、失礼いたしました…ここヴァンハイムでは不死人となれば、はるか失われた地へ投獄されるのです」

ほむら「ちょっと待って…」

私の心に不安が生まれた。

そうだ…

二人の姿が記憶の人物と重なる。

ほむら「その娘の名前って…」

私がここに来たことは意味がある…私は、私の願いを思い出す。

この世界にも彼女がいて…だから、私は呼ばれた。

私の願いを叶えるために…

ならば…

向かわなければ…私の願いの為に、彼女との約束の為に…



ほむら「…ロードランへ」

■dark souls■





※火継ぎの祭祀場※

篝火が燃えている。

ほむら「火にかざすと、液体が溜まるのね…不思議…」

ほむら「エスト瓶…と言っていたかしら?」

この地へ向かうと知って、あの夫婦が持たせてくれたものだ。

ほむら「不死人ではないけれど、私にも効果はあるみたいね…」

飲むとソウルジェムの穢れが、微量だが消えている。

ほむら「ずっとここに居れば魔女化する事も無いかしら…」

心折れた戦士(以下ニート)「何だってんだ…最近は客がよく来るな…」ポリポリ

ほむら「…他にも訪問者が?」

ニート「ん?…あぁ、最近だと、牢獄から赤い髪の女が来てたな…」

ほむら「!…その娘はどこに行ったの?」

ニート「知るかよ、使命を果たすってんなら、どこぞ上の方で亡者にでもなってるだろうよ…」

ほむら「上?…ありがとう…行ってみるわ」

ニート「ついでに、鐘も鳴らしてきてくれよ?」ハハハ

ほむら「…ここは不思議な場所ね」

この地へ踏み入るや否や、私はこの祭祀場に立っていた。

ニートが言うには、ここが誰もが降り立つ最初の場所との事だ。

ほむら「上と言っても、壁を登り続けるのは無理そうだし…」スタスタ

少し上に向かうと水場があった。

ほむら「川も無いのに…湧水かしら?澄んでいて綺麗な水…」

ほむら「?」チャプ

その周り、水場の少し奥に私は不思議な物を見た。

崩れた女神像がぼんやりと光っている。

近づいて触れてみると、その光はゆっくりと消えてしまった。

ほむら「?…見間違いかしら?」ペタペタ

ペトルス「おや?」

ほむら「…?」チラ

ペトルス「ふむ、随分と珍しい装束ですな…装飾も凝っている…これは…」ブツブツ

ほむら「…」

ペトルス「おっと、これは失礼しました。私はペトルス…見た所、身分のある方とお見受けしますが、なぜこのような地に?」

ほむら「探し人よ…」

ペトルス「ご足労な事ですね。では、目的が終われば故郷に?」

ほむら「そうね…そう…なりますね」

ペトルス「そうですか」ウンウン

ペトルスと名乗った男は、深く頷くと何やら考えを巡らせる。

ペトルス「そうです!…探し人がどういった方かお聞かせいただけますか?…これも何かの縁、見かけたらここに引き留めておきますよ?」

ほむら「ありがとう…助かります…特長は…」

ペトルス「ふむふむ…今の所、見てはいませんね…」

ほむら「行きそうな場所に心当たりは?」

ペトルス「牢獄から来た者なら、恐らく使命から、鐘を鳴らしに行ったのでは?」

ほむら「…使命」

ここに来る途中にも人々から聞く機会があった。

この地、ロードランに眠る王を識る巡礼。

その先にあるものは皆、わからない。

様々な憶測が飛び交い誰も答えを持たなかったが、何かしらの救いを求めて不死人はこの地の巡礼を行うそうだ。

ほむら「真面目な娘だから…きっとそうでしょうね…」

ペトルス「この先は、亡者が蠢いております。何とぞお気をつけて…」ペコリ

ほむら「ありがとう…」

ほむら「前回のワルプル戦で武器の殆どを消費したのよね…ここで銃弾の補充は難しそうだし…」スタスタ

ほむら「慎重に行かないと…」

※info※

■ほむら
武器:砂時計の盾(無限箱効果有り)
装備:魔法少女一式
魔法:時間停止
★盾内にハンドガン+爆弾(共に小数)

※info※

何その名前欄

>>12

確かに、痛く見えるな…
今誰の一人称かって表示で書き手の事では無いです。
一人称変えるかも知れないので…

※城下不死街※

ほむら「これで、終わり!」ガスッ

ほむら「…」キョロキョロ

ほむら「もういない…わよね?安全?」

ほむら「…見た目が心臓に悪すぎるのよ…」フゥ

襲われた。

物凄い襲われた。

走って撒こうとするも、しつこく付いてきて、水路を抜けた頃にはとんでもない数を相手する事になってしまった。

ほむら「爆弾一つ使っちゃったじゃない…あら?」

ほむら「この剣、錆びてないわね…こんな状態の良い物があるなんて…」ヒョイ

ほむら「貰って行きましょう、投げ飛ばすより幾分ましだわ…」

ほむら「…まさか、私が剣を使うことになるなんて、ね」

戦いの中で、気付いた事があった。

時間停止が乱用できないのだ…エスト瓶でソウルジェムを輝かせても使えない。

使用時間に極端な制限が出ている様だった。

ほむら「しかも砂時計も…動いていない…」

ほむら「壊れた?」フリフリ

ほむら「このままだと、本気で永住する羽目になるわね…」

ほむら「…」ゾク

ほむら「駄目駄目…考えないようにしましょう…いずれ戻るわよ…うん」



どこもかしこも、亡者。

どこまで行っても、亡者。

亡者、亡者、亡者亡者亡者もじゃもじゃモジャモジャモジャ…

ほむら「と、飛び道具が欲しいわ…このペースで銃を使うわけにもいかないし…」ハァ…ハァ…

障害物を叩き壊し、近くの建物に潜む。

亡者は目標を見失い、徘徊している。

ほむら「マシンガンで凪ぎ払いたいわね」

男商人「なんでぇ、騒がしいと思ったら亡者じゃねぇのが暴れてたのか…」

ほむら「また!」クルッ

男商人「ひひひ…待て待て、おりゃ正常だ、見てわかんだろ?…商売やってんだよ」

ほむら「わからないわよ、思いっきり亡者フェイスじゃない…」

男商人「んな事より、何か買わねぇかい?…安くしとくぜ?」

ほむら「あまりお金は持ってないわ」

男商人「ひひひ、金なんざ要らんよ…支払って貰うのはソウルさ…」

ほむら「ソウル?」

男商人「…」

ほむら「何?」

男商人「不死人じゃねぇのか?」

ほむら「違うわ」

男商人「んだよ…死んじまえ糞が」チッ

ほむら「へっ?」

男商人「逝っちまえっつったんだよ。耳だけ亡者かよ屑が…」ペッ

ほむら「…」ベチャ

ほむら「…」ゴシゴシ

ほむら「…」

ほむら「…」スチャ

ダンダンダンッ



男商人「あ、ありがとうごぜぇました…」ブルブル

ほむら「ボウガンが500円(ワンコイン)で手に入ったわ」ホムホム

ほむら「これでようやく、補充可能な飛び道具を手に入ったわ」スタスタ

男商人「…」ブルブル

少し先に見つけた、篝火でエスト瓶をみたす。

ほむら「?…この感じ…やっぱり!…時間停止も使えるようになってる…」

少し期待したが、やはり砂時計は動かないままだ…この地の歪みの影響だろうか?

ほむら「時間停止さえ慎重に使うことになるなんて…篝火は命綱ね…」



ほむら「もうやだ…」ハアハア

燃え盛る樽が転がってきた。

ほむら「何なのよ!…あいつら、知能があるんだか、無いんだか…あら?下にも道があるのね…」

下り階段を降りてみる。

大きな甲冑が背を向けて立っている…

ほむら「…誰かしら?鎧の騎士?」コソコソ

ほむら「ピクリとも動かないわね…」

ほむら「敵?…でも動く気配も無いなんて…」ニジリニジリ

黒騎士「…」クルッ

ほむら「あ」

黒騎士「…」ガッシャガッシャ

ほむら「ちょっ急に!?…何よこいつ!」バシュ

黒騎士「…」カキン

ほむら「…」

ボウガンを放つものの、歩みを止める事すら叶わない。

黒騎士「…」ブンッ

ほむら「はやっ!?」

カチッ

ほむら「…っ」

時間を止めたとき、すでに敵の刃は喉元まで来ていた。

嫌な汗が額を濡らす…

ほむら「…こんなのばかり出てきたら、流石に打ち止めになるわよ」スチャ

ダンッ…ダンッ…

カチッ

黒騎士「!?」ドスドスッ…グラッ

ほむら「これでっ!」ズッ

よろめく瞬間を逃さず、鎧の隙間に剣をねじ込む。

敵は力が抜けたようにダラリと倒れこんだ…そして…

黒騎士「…」シュウウ…

ほむら「なっ?…溶けて消えた?」

ほむら「?」バッ

ほむら「…酸の類いでは無いみたいね」

ほむら「何かしら…これ?石?」

消えた跡に鉱石の塊が残されていた。

鉛とも違う…不思議な鉄塊だ…使い道はわからないが、盾にしまっておく。

ほむら「何か重要な物かも知れないしね」

ほむら「それにしても、まだまだ上ね…本当に…会えるのかしら…」



ほむら「ぎゃーっ!」

ほむら「でっかい!でっかい!」ダダダ

牛頭「まーー!」ズシンズシン

ほむら「…何なのよ!唯でさえ足場が狭いのに!」

カチッ

物見塔を抜けた所で、巨大な牛に襲われた。

あまり残っていなかったが、時間停止を使い高台に登る。

ほむら「…邪魔!」ケリッ

高台に陣取る亡者を蹴りおとし、時間停止を解く。

牛頭「ま?ま?」キョロキョロ

ほむら「探してる、探してる…」フフン

ほむら「どうしようかしら…下に落とすのが一番楽よね…よし!」

私を見失った牛は、辺りを警戒しながらも、私に背中を向け歩き出した。

すかさず、右足に矢を当てる。

牛頭「ま!?」グラッ

ほむら「今っ!」カチッ

時間を止め、一気に近付く。

片足を浮かせたままの牛は、あっさりと重心を崖側にずらす事が出来た。

ほむら「これでよし」カチッ

牛頭「まーーーーー… …クチャ

ほむら「倒せたけど…時間停止を使い切っちゃったわね…」

ほむら「…」

ほむら「急に不安になってきた…篝火!篝火はどこ?…一旦戻って…でも…うーん」チラ

下の方に元来た道の篝火が見える。

結構遠い…

ほむら「先に進みましょう…」



ほむら「…」コソコソ

また、見渡しの良い高台に出た。

今度は足場も広いが、遠目にも亡者が大量に見て取れる。

ほむら「この辺りに篝火があったり…しないわよね…」キョロキョロ

とりあえず、辺りを散策する。

近くに扉を一つ見つけたが、まったく開かない…下に降りる為のものだろうか?

ソラール「…」

なにかいる…

甲冑を着てるため顔は解らない…

ほむら「…敵?」ジリ

ソラール「ん?…おお!珍しいな!」

ほむら「亡者…では無いのね?」

ソラール「貴公もだろう?…こんな場所で人に会えるとはな!」ウワッハッハ

ほむら「貴方も、巡礼?」

ソラール「いや、ひどく個人的な探し物だな!」

ほむら「あの…一つ聞きたいのだけど…」

ソラール「何だ?」

ほむら「…この辺に篝火は無いかしら?」

ソラール「篝火か?…おぉ!あるぞ!この大橋の真反対だが、すぐの場所だ!」

ほむら「って事は、あの亡者達を抜けないと駄目なのね…」ハァ

ソラール「…」

ソラール「…おぉ!そうだ!そうだった!俺も篝火に行く所だったのだ!…よし!共に行こうではないか?」

ほむら「…」

ほむら「…ふふっ」

ソラール「どうした?」

ほむら「貴方は好い人かしらね…ありがとう…私はほむらよ」

ソラール「俺はソラールだ!よろしくな、ほむら!」ウワッハッハ



※城下不死教区※

篝火が燃えている。

ほむら「助かったわ…ソラールはかなり腕が立つのね…」

ソラール「…」

ほむら「どうしたの?」

ソラール「いや、役目を終えた亡者にな…」

ほむら「?」

ソラール「花が…添えてあるんだ」

ほむら「珍しい花か何か?」

ソラール「いや、この辺りに群生している花だが…俺が驚いているのは…」

ほむら「?」

ソラール「ソウルは奪われずに残ったまま…手向けの為だけに花を添えるなんぞ…」

ほむら「…」

ソラール「ふぅ…ここに眠る亡者は、俺の同志…共に太陽を信仰してきた連中だ…」

ソラール「少し報われた気がしてな…」

私の頭に彼女がよぎる…

ほむら「最近、供えられた物かしら?」

ソラール「そのようだな」

ほむら「…」

ソラール「心当たりが?」

ほむら「私の…探し人かも、知れない」

ソラール「ほう、そうなのか?…だったらその辺で会えるかもな」

ほむら「そうね、先を急ぐわ…付き添ってくれてありがとう、ソラール」

ソラール「いや、良い。そいつにあったらよろしく言っといてくれ」

そう言うと、ソラールは来た道を戻って行った。

ソラール「あ、そうだ。ほむら、もし助けが必要なら…輝く俺のサインを探すと良い。…いつでも力になるぞ!」ウワッハッハ

ほむら「?」

ソラールの言葉の意味が良くわからないままだったが、とりあえず、私は道の先に進む事にした。



ほむら「凄い教会ね…」

棄てられる前は、とても綺麗だったのだろう。

壊れた机や動かない鎧の亡者が転がっているのが、物悲しい。

ほむら「…」

その最奥…

一際大きな鎧が道を阻むように倒れていた。

鎧の向こうには小さな祭壇があり、死体が安置されている。

不死人達に慕われていたのだろうか?

ほむら「花は添えられてないわね…こっちには来てないのかしら?」キョロキョロ

?「わわ、急に…きゃ…」

教会に声が響き渡った。

ほむら「!…二階から?…それに…あの声!」

走って二階に向かう。

そこには大量の亡者に襲われる、少女の姿があった。

ほむら「ちっ…こいつら!」カチッ

ザクザク…ブスブスブス…ポイポーイ…ケリッ…ケリッ

カチッ

停止解除と共に倒れる亡者、その真ん中に現れる私…

決まった。

ほむら「危なかったわね…怪我は無い?」ファサッ

やっぱり…

?「あ…ありがとう、ございます」

やっぱりだ…例えどんな世界でも…

ほむら「まどか」ボソ

まどか「ひゃっ?…えっと…名前、どうして?」

ほむら「え!?…あ、あぁ勘ぐらないで!…ヴァンハイムで貴女のご両親に聞いただけよ?」

声に出してしまっていたらしい…無意識は怖い。

まどか「パパと…ママ?」

ほむら「えぇ、とても心配してたわ」

まどか「そっか、まだ元気なんだ…良かった…」

まどか「改めて、ありがとうございます」フカブカ

ほむら「礼を言う必要は無いわ…こちらも目的のついでだったから」

まどか「…助けられた事には代わりありません」

ほむら「あの…そんなに畏まらないで欲しいのだけれど?」

まどか「?…ですが貴族の…」

ほむら「違うわ…私は貴族じゃ無いのよ…だから、ね」

まどか「…はい」

ほむら「私はほむらよ。よろしくまどか」

私は手を差し出す。

まどかは、少し戸惑ってからゆっくりと手を包み込んでくれた。

まどか「よろしく…ね」ニコ



篝火が燃えている。

カツーン…カツーン…

ほむら「こんな所にも篝火があったのね…」

まどか「ほむらさ…ちゃんは…不死街から来たんだから、ここは解らないよね…」ティヒヒ

ほむら「えぇ…?…よく知ってるわね」

まどか「へっ?…えっと、皆そうだもん…解るよ…」

一度体勢を立て直すため近くの篝火に来ていた。

カツーン…カツーン…

ほむら「ところで、この…」

カツーン…カツーン…

ほむら「うるさい音は何かしら?」

まどか「これ?…下の階に鍛冶屋さんがあるんだけど、その音だよ?」

ほむら「鍛冶屋?」

まどか「てぃひひ、行ってみる?」

まどかに連れられ下に降りた…

カツーン…カツーン…

大柄の男が一心不乱に鉄を打っている…

まどか「アンドレイさん!」

アンドレイ「ん?…おお、嬢ちゃんか…まだウロウロしてたのか?」

ほむら「凄い…本当に鍛冶屋だわ」

アンドレイ「誰だい?」

まどか「ほむらちゃんだよ!」

ほむら「…」ペコリ

アンドレイ「宜しくな、嬢ちゃん。武器を鍛え直すなら、いつでも寄ってくれ…格安で鍛えてやるぞ」

ほむら「やっぱりお金…じゃないわよね?」

アンドレイ「不死人に金なんぞ無意味さ…貰うのはソウルだな」

ほむら「また…ソウル…」

この大陸、この地において全ての対価はソウルで支払うもののようだ。

こっちはソウルが何かも解ってないと言うのに…

まどか「どうしたの?ほむらちゃん?」

アンドレイ「ん?…」

何やら不思議そうに、こちらを見ている。

アンドレイ「…嬢ちゃんは不死人じゃねぇのか!?」

ほむら「?…わかるの?」

まどか「え?…えっ?本当に?」

アンドレイ「雰囲気がちょっとな…そりゃソウルも、見えないわなぁ」

ほむら「…」

まどか「え…でも…でも何で…わざわざこの地に…」

まどかが酷く動揺している。

流石に、貴女を守るためとは言えない…

ほむら「これを動くようにしたいのよ…」

アンドレイに盾を見せる。

ほむら「直せないかしら?」

アンドレイ「こりゃ、えらい複雑な装飾の盾だな…この砂が動けばいいのか?」

アンドレイ「…」

アンドレイ「?」

アンドレイ「…」

アンドレイ「…無理だな。こりゃ、魔力の細工が施してある…俺が下手に触らん方が良い…」

ほむら「そう…」

アンドレイ「不死人でも無いのに、ここに来るくらいだから大事なモンなんだろうが…すまんな」

まどか「ほむらちゃん…」

ほむら「気にしないで…二人共ありがとう。いつか、動き出すわよ…」

まどか「…ごめんなさい」

ほむら「?…まどかが謝る事じゃ無いわ」

まどか「うん」ティヒヒ

アンドレイ「ふぅ、嬢ちゃんの武器を見せな…修理してやる」

ほむら「え?…でもソウル…」

アンドレイ「持たん奴に要求はせんよ…珍しいモン見せてくれた礼だ」

まどか「…良かったね、ほむらちゃん!」

ほむら「ありがたいけど、何だか悪いわね…」

何か払える物があればいいが、お金の類いは意味が無いようだし…

そういえば、謎の鉱石があったはずだ。

ほむら「あのアンドレイ?…これ知ってる?…珍しい物ならあげるわ、お礼になるか解らないけど…」ゴトッ

アンドレイ「!…こりゃ、楔石の塊じゃねぇか!」

まどか「初めて見た…凄い…凄いよ!ほむらちゃん!」

ほむら「えっ?…珍しい物なの?」

アンドレイ「あぁ…珍しいモンだ。…どうやってこれを?」

ほむら「変な鎧が持ってたのよ」

まどか「?」

アンドレイ「…なるほど変な鎧ね…ガッハッハ!…王の近衛を変な鎧か!?…ガッハッハ気に入ったぞ嬢ちゃん!ほら、早く武器を寄越せ!」

アンドレイの笑いが気になったが喜んでくれたようだ…

まどかも修理を頼んだようで、一緒に預ける事にした。

アンドレイ「少しかかるから、上で待ってな…」

カツーン…カツーン…

鉄を打つ音が鳴り響く…

二人で篝火に戻った。

まどか「ねぇ、ほむらちゃん…」

ほむら「何かしら?」

まどか「さっきの話…本当なの?…その、不死人じゃないって」

ほむら「そうね、違うわ」

人でも無いけどね…

まどか「…そう…なんだ…」

…?

まどかはショックを受けている様子だ…

ほむら「どうしたの?」

まどか「ううん…その盾、とても大事な物なんだね…」

ほむら「そうね」

なんだろう…

空気が重い…

ほむら「えっと…ま、まどかは?…やっぱり使命ってのを全うするの?」

まどか「うん。…鐘を鳴らして…その先どうなるかは解らないけど…」

ほむら「…私も付いていって良いかしら?」

まどか「え?…でも、ほむらちゃんにはほむらちゃんの目的が…」

ほむら「あまりにも手掛かりが無いから、色々な場所を巡りたいの…迷惑かしら?」

まどか「そんな事ないよ!…本当に一緒に来てくれるの…かな?」

それが私の目的だから…

ほむら「ふふっ、私が頼んでるのに…可笑しなまどか…」

まどか「てぃひひ…そうかな?…じゃあ、盾を修理出来るまで…宜しくね?」

ほむら「宜しく」

良かった…笑ってくれた…

アンドレイ「…待たせたな」

ほむら「あら?」

いつの間にか下からアンドレイがやって来ていた。

アンドレイ「ほれ、出来たぞ」

武器を渡してくれる。

ほむら「!…これは…」

アンドレイ「ガッハッハ、鍛え上げておいたぞ?…使いやすくなったろ?」

ほむら「…良いの?」

アンドレイ「かまわん、塊とじゃまだまだ釣りがくる」

まどか「わ!?…私のまで強化されてる!」

ほむら「ありがとう、アンドレイ。…また何かお土産持ってくるわね?」

アンドレイ「そうか?そいつは良いな!楽しみにしとるぞ!」

笑いながら下に降りていった。

しばらくすると、また金槌の音が響きはじめる…

カツーン…カツーン…

まどか「私まで得しちゃった!…ありがとね?ほむらちゃん!」

ほむら「ふふっ、じゃあそろそろ行きましょうか?」

まどか「そうだね!じゃあ、さっきの教会へ!」

まどか「…あの教会の上に一つ目の鐘があるんだよ!」



ほむら「凄い高さ…目が眩みそうね…」

梯子を昇りきると、屋根の上に出た。

風が気持ちいい…

まどか「あれだよ!…あの物見塔の上の鐘を鳴らすんだよ!」タッタッ

更に高い位置、まどかが指差す場所に確かに鐘が見える。

ほむら「まどか、こんな場所で走ったら危ないわよ」

パキパキ…

ほむら「ん?」

ピキピキ…バキン…パラパラ…

まどか「何か降ってきた…砂?」ヒョイ

上を見上げるまどかに合わせるように目線を上げた。

ほむら「なっ!?」

ガーゴイル「ギュルルル!」パキバキ

石像が動いてる…

ほむら「まどか!…一旦こっちへ!」

ガーゴイル「ギュアアア!」ブォン

ほむら「くっ…間に合わない!」カチッ

時を止め、まどかを引き寄せる。

カチッ

ガーゴイル「ギュルルル!」ドガァ

まどか「きゃっ…え?…あれ?」キョロキョロ

ガーゴイル「ギュル?…!…ギュアア!」クルッ

ほむら「まどか…来るわよ!」

まどか「へ?…う、うん」ギュ…キリキリ

低空飛行で槍を振り回し距離を詰めてくる…

速い!

ほむら「まどかは後退!」

すかさず石像の背後に回り込む…

ガーゴイル「ギュア?」ヴォン

石像は私を狙い反転した。

ほむら「まどか!」

まどか「えぃっ!」キリキリ…ヒュン

…ザクッ

ガーゴイル「ギュアア!?」

まどかの矢は見事に石像の後頭部に突き刺さる。

目標をまどかに変え、石像が背を向けた。

ほむら「愚かね」パスパスパス

ガーゴイル「ギュルルル!」ブォン

挟み撃ちにされ、石像は尻尾と槍を振り回し暴れている。

上手く撹乱出来ているようだ…

必死に避けながらも攻撃を繰り返す…

ほむら「時間はかかるけどこれなら行けそうね…」パスパス

パキバキ…

ほむら「パキバキ?」

まどかが大きくジェスチャーしてる…

上?

ほむら「なにかしr…」

ガーゴイル2「ギュラララ!」パキーン

ほむら「…」

あ、駄目だこれ…



まどか「まだうろうろしてるよ…」チラ

とりあえず、教会内に避難した。

ほむら「あと2つの石像も動き出すんじゃないでしょうね…」コソコソ

まどか「あんなに凄いのが居るなんて…」

まどか「一旦、出直そうか?」

ほむら「…?」

まどか「ほむらちゃん?」

ほむら「あれ何かしら?」

ぼんやりと床が光っている…

よく読めないが、文字が浮かび上がっている様だ…

ほむら「まどかは何だか解る?」ペタ

…ペカー

触れたら光りだした…

ほむら「なっ!?…トラップ!?」バッ

ペカー

ほむら「…」ゴクリ

まどか「あ!」

ソラール「…\[t]/…」パァァ

ほむら「…」

ほむら「…」

ほむら「何?」

まどか「これは…ファントムだよ!」

ほむら「ファントム?」

ソラール「ふぅ…ん?」シュウウ

なんか透明感溢れるソラールが現れた…

ソラール「おぉ!ほむら!貴公が呼んだのか!」

ほむら「脅かさないでよ…」

まどか「知り合い?」

ほむら「えぇ…少し前に…」

ソラール「まてまて、ファントム化の時間は限られてる!…先ずは目的を終わらせるぞ!…世間話だけしてハイサヨナラとはなりたくないからな!」ウワッハッハ

ほむら「目的?…だったら、この先で石像が暴れてるのだけど…手伝って貰える?」

ソラール「ウワッハッハ…お安いご用だ!」



ソラール「よしっ」ズルッ

ガーゴイルの死体から剣を引き抜いている…

まどか「す、凄いね…ソラールさん…」

ほむら「本当にね…」

殆どソラール一人で倒していた。

今も息切れ一つしていない…

ほむら「助かったわ…ほぼ任せてしまって、ごめんなさい」

ソラール「気にするな!…見たところ探し人には会えたようだな」ウワッハッハ

ほむら「えぇ…紹介するわ。…まどかよ」

まどか「初めまして、ソラールさん」ニコッ

ソラール「いやはや良い眼だ、なるほど…貴公とは改めて話をしたいものだな…」シュウウ…

ソラールの体が消えてゆく…

ソラール「では、今度は生身でな…あ!そうだ…受け取れほむら!」シュウウ…

何かを投げて寄越した。

ほむら「?…メダル?…ソラールこれって」

シュワワー…

ほむら「…」

ほむら「…」チラ

まどか「…知らないよ?」フルフル

ほむら「…」

ほむら「…今度聞けば良いわよね」ゴソゴソ

まどか「じゃあ私、鐘を鳴らしに行ってくるね!…ほむらちゃんは下で待ってて!」

ほむら「え?…あ、うん」

カンカンカンカン

ほむら「行っちゃった…この世界のまどかは元気ね…」

オズワルド「おや?番兵が倒れている…変わった先客が居るようですね…」

ほむら「誰?」サッ

オズワルド「おぉ、いけない…誰にも敵意を向けるのはいけません…争いは罪を増やすだけですよ?」

ほむら「…」

オズワルド「私はオズワルド。しかし不思議な方ですね…」

ほむら「何がかしら?」

オズワルド「不死人で無いが、人でも無い…」

ほむら「!?」

オズワルド「アヒ…それに魂…」

ほむら「…」

ソウルジェムを手で覆う。

オズワルド「貴女の魂には…アヒャ…罪が罪を呼んで…灌ぎきれない程に呪いが染み付いている…アヒャ、アヒャヒャ!」

ほむら「それが何…」

オズワルド「まぁ、気にする事はありませんよ?…真に罪なき者などおりませんから…ただ、貴女は私の力では免罪出来ぬ罪ばかりですがね…アーヒャヒャヒャッヒャヒャヒャ」

嫌な笑い声だ…

ほむら「…別に貴方に…

ギンゴーン…ギゴーン…ゴーン…ゴーン…

オズワルド「おや?鐘が…連れ合いがおりましたか…巡礼とはご苦労な事で…」ペコリ

ほむら「…」

オズワルド「貴方に一つ忠告を…」

オズワルド「この地に深く関わらず、貴方の世界に戻りなさい?」

ほむら「…目的を果たしたらそうするわ」

オズワルド「アヒャ…失礼。貴方の魂はこの世界を知るのに、些か脆すぎる…ただ罪だけを残して消えるおつもりですか?」

ほむら「…私は…死なないわ」

オズワルド「死なずとも、逃げてしまえば同じ事ですよ?…お連れの方も…

シュルルル…カン…

まどか「ただいま、ほむらちゃん!…あれ?どちら様?」

オズワルド「!」

ほむら「気にしなくて良いわ…先に進みましょ…」スタスタ

ほむら「私は罪を許してもらおうなんて思わないわ…」ボソ

オズワルド「…そう、ですか」

まどか「?…あっ、待ってほむらちゃん!」タッタッタ

オズワルド「…」

まどか「…」クルッ…ペコリ…タッタッタ

逃げる事も同じ…

砂時計を動かしても、その世界が救われた訳じゃない…

ほむら「わかってるのよ…そんな事」スタスタ

鐘の音は耳を抜け、小さく消えていく…

※info※

■ほむら
武器:ショートソード+5/ライトクロスボウ+5
  :砂時計の盾
装備:魔法少女一式
魔法:時間停止
■まどか
武器:ロングボウ+5/魔術師の杖
  :レザーシールド+1
装備:薄汚れた一式/老魔女の指輪
魔法:音送り/治癒

※info※



梯子を下りた。

ほむら「あの昇降機は、祭祀場につながってるの?」スタスタ

まどか「そうだよ?…仕掛けは動かしたからいつでも戻れるけど…」スタスタ

?「ほぅ…鐘を鳴らしたのは貴公達か…」

ほむら「今度は誰よ…」

ロートレク「ロートレクだ…」

全身が金の鎧で覆われた男が立っている。

ほむら「…」ジリ

ロートレク「そう、警戒するな…少しへまをしてな…牢から抜けるのに随分時間を喰ってしまった…」

まどか「捕まってたんですか?」

ロートレク「あぁ、この先でな…誠、気に食わん亡者共だ…なぁ?」

ほむら「…そうね」

特に何が…と言うわけでは無いが…

嫌な感じを纏った不死人だ。

聞けば、彼は祭祀場に向かうそうで、昇降機まで同行する事になった。

ロートレク「貴公達は戻らんのか?」

まどか「私達は、このまま大橋から最下層を目指すんです」ティヒヒ

ロートレク「巡礼か…」

ロートレク「おっと、ここか…ではな、貴公達。また会う事もあるだろう」カチャ

ほむら「そうかもね…」

ロートレク「もっとも、どの様な再開かは解らんがな…」クックック

カラカラカラカラ…カシャン



篝火が燃えている。

ソラールに案内してもらった祭壇だ。

ほむら「さっき、最下層…と言ってたかしら?」

まどか「うん、もう一つの鐘がその先にあるんだよ!…この大橋の扉から下に行けるの!」

ほむら「この先の扉?…たしか、開いて無かった様な…」

まどか「じゃーん!」

ほむら「…鍵ね」

まどか「鍵だよ!」

ほむら「…あぁ、そう言う事ね…じゃ、行きましょう」スタスタ

まどか「あれ?ほむらちゃんのテンションが上がらない…」トテトテ



※不死街下層※

ほむら「…」コソコソ

まどか「…」コソコソ

ほむら「グロい犬がいるわ」

まどか「うん、いっぱいいるね…」

あまり相手にしたくない…

…ハッハッハッ…ウロウロ

ほむら「できるだけ、ばれない様に進むわよ…」コソコソ

まどか「そうだね」コソコソ

?「誰だ?人か?…誰かいるのか!?」

ほむら「!」ビクッ

建物の中から声が聞こえてきた。

?「助けてくれー!ここから出してくれ!」ガタガタ

まどか「わわ、わ」アタフタ

ほむら「ちょっと!誰だか知らないけど少し静かに…はっ!?」

ほむら「…」チラ

グルル…グルルルル…



カチャ

グリッグス「た、助かった!」

ほむら「…」

まどか「…大丈夫でした?」

グリッグス「いや、一時はどうなる事かと…そちらの方はどうされました?」

ほむら「…」

まどか「まぁまぁ…結果何事も無かったんだし、ね」ドウドウ

ほむら「…そうね」

何かあってからでは遅いのだけれど…

まどか「そ、それにしても、ほむらちゃんの魔法凄いよね!時間停止なんて初めて見たよ!」

まどかは話題のそらし方が下手だ…

まぁ、乗っかるけど。

ほむら「そうかしら?ありがとう」フフッ

まどか「私も魔術を使うけどダメダメで…」

グリッグス「何と!…君たちは魔術の心得があるのか?…だったら良かった、恩を返せそうだ…」

ほむら「?」

グリッグス「申し遅れました、私はヴァンハイムのグリッグス。魔術の師を追って、この地を訪れた者です」

まどか「ヴァンハイムって事は同郷ですね」

グリッグス「そうでしたか!…ならばビックハットローガンはご存知でしょう?彼こそ我が師、近代魔術の始祖です!」

言葉に熱がこもってる…随分と誇らしげだが…

ほむら「知ってる?」

まどか「…」フルフル

グリッグス「えっ!?…ヴァンハイムで魔術に携わりながら知らないのですか?」

まどか「ヴァンハイムはまだオリジナルの魔術研究が始まったばかりだし…ウーラシールとかなら有名な魔術師も多いけど…」

グリッグス「始まったばかり?」

まどか「?」

グリッグス「第一、ウーラシールは遥か昔に滅びたでは無いですか?」

まどか「へ!?…ウーラシール無くなっちゃったんですか?」

グリッグス「私が生まれた時にはすでに滅びていたはずですが?」

まどか「?」

グリッグス「?」

どうも話が噛み合ってないようだ。

そして、私はおいてけぼりだ…

グリッグス「…ふむ、なるほど興味深い」

まどか「?」

グリッグス「この地は、時の概念すら不安定だと聞いておりました。…我々は別の時代に生きていた者かも知れませんね…」

まどか「え?…でも…」

ほむら「そうなると変ね…私はまどかの後を追って、すぐに出会えてるわけだし…運?」

グリッグス「ですかね…私だけが過去に来た可能性もありますし。はぁ…師と無事に会えれば良いのですが…」

まどか「そっか…そうなんだ…」

グリッグス「とりあえず、私は一度祭祀場に戻ります。その時にでも魔術をお教え致しますよ…」

まどか「あ、はい…ありがとうございます」ペコリ

グリッグス「いえいえ、では」スタスタ

何故か私達が向かう方向に歩いていった。

ほむら「この先から祭祀場に着くのかしら?」

まどか「知らないよ?」

タッタッタ…ダダダ…

グリッグス「ぅわー!」ダダダ…

…戻ってきた。

グリッグス「助けてください!私を捕らえたデーモンが!」ハァ…ハァ…

まどか「へ?」

ほむら「デーモン?」

ドシンドシンドシンドシン…

大きな足音が迫って来る。

山羊頭のデーモン(以下、山羊頭)「グゥゥゥ…」ドシンドシン

ほむら「…」

巨大な鉈をもった山羊の化け物がこちらに走ってきている…

ほむら「貴方トラブルメーカーだわ…はぁ…手伝ってもらうわよ?」

まどか「わ、わわわ」

グリッグス「私も!?」

ほむら「当たり前よ…行くわよ」ダッ

建物の影から飛び出し、手近な屋根に飛びうつる…

力に制約を受けているとはいえ、このくらいの跳躍は可能の様だ。

山羊頭「グゥ?」

案の定、こちらに注意が向く。

基本的に、この世界の化物達は思考が単純だ…

人型にしても、行動原理は動物のそれに近い。

ほむら「飛び道具は無さそうね」パスパス

山羊頭「グゥゥ!?」

ほむら「この位置からなら一方的に…って」

山羊頭「グァア!」バッ

!?

山羊の化け物が飛び上がり、何と屋根まで刃を届かせた。

ほむら「ちっ、あのサイズで何て動きよ…」ババッ

先ほどまで、立っていた場所は鉈に押し潰され瓦礫と化している…

山羊頭「グゥゥ…」ドシン…ドシン…

キリキリ…ヒュン

山羊頭「グア!?」ユラ

化け物の足に矢が突き刺さる。

ほむら「まどか!」

まどか?「ほむらちゃん!むらちゃん!らちゃん!ちゃん!ゃん!」

ほむら「え?…何この音?」

矢とは別の方向からまどかの声が響く。

山羊頭「グ?グゥ?」キョロキョロ

まどか?「ほむらちゃん!むらちゃん!らちゃん!ちゃん!ゃん!」

まどか?「ほむらちゃん!むらちゃん!らちゃん!ちゃん!ゃん!」

至るところからまどかの声が鳴り響く。

…なんだこれ?

山羊頭「?…グゥゥゥ?」

ほむら「何だかよくわからないけど混乱してるみたいね…」チャキ

私が剣を構えると、見計らった様に矢と青い光が化け物の両手に炸裂した。

山羊頭「グァアア!?」ガラン…ガラン…

鉈が化け物の手から離れる。

グリッグス「今です!」

ほむら「なによ…」

ほむら「…戦えるんじゃないの」タッ



ほむら「なるほど、目が退化してたのね…」

グリッグス「えぇ…まどかさんが音送りを使えたのは幸いでした」

まどか「てぃひひ!鍵だよ、鍵を見つけたよ!」

まどかが道の突き当たりから鍵を見つけたようだ…

ほむら「…」

ほむら「そういえば、貴方が捕まってた家も普通に開けてたわ…」

グリッグス「お好きなんですかね?…鍵」

ほむら「…さあ?」

見つけた鍵を鍵束に納めている…

まどか「てぃひひ、鍵ー♪」

嬉しそうだ…

ほむら「行きましょう、まどか」

まどか「うん!」



グリッグス「では、こちらから祭祀場に向かえますので、私はこれで…本当にありがとうございました」

まどか「気を付けてくださいね」

ほむら「本当にね」

グリッグス「ははははは」

ほむら「…」

グリッグス「はは…すいません」

グリッグスはそそくさと去っていった。

まどか「じゃ、行こっか?」

鍵を使い、小さな扉を開く…

腐敗した匂いが流れてくる…

ほむら「体に悪そうね」

まどか「住んでる人もいるみたいだよ?」

ほむら「そぅ…なら大丈夫かしら」



※最下層※

暗い、臭い、汚い…

ほむら「まどか?」

まどか「何かな?」

ほむら「暗いし臭いし汚いわ」

まどか「…私も、ここまでとは思ってなかったよ…」

大きなテーブル、たくさんの椅子、油断しきった亡者…そして…

ターン…ターン…

亡者コック「…」

ほむら「亡者食堂、かしらね」コソコソ

まどか「何の肉かは考えたくないや…」コソコソ



ザクッ…ブシュ…

ほむら「あと、コックだけね…」

まどか「料理?に夢中で気付いてないよ?」

ターン…ターン…

ほむら「敵意はあるのかしら?」

まどか「たぶん…」

ほむら「意外とフランクに接したら見逃してくれるかも…」

まどか「例えば?」

ほむら「…」

まどか「…」



ほむら「…」スタスタ

コック「!」

ほむら「大将、今日のおすすめは何かしら?」ニコ

まどか「こんにちは、まだやってますか?」ニコ

コック「…」



大将のまかないにされかけた。

ほむら「駄目だったわね…」

まどか「き、聞き方の問題かな?」

ほむら「…違うと思うわ」

まどか「綺麗にしてれば、立派な厨房なのに…」キョロキョロ

ほむら「そうね、使われてない火種もあるし…」

それにしても立派な火種だ…

ズルッ…ウェヒー…

アンドレイが喜ぶかもしれない…

ほむら「持って帰りましょう…」イソイソ

ほむら「それにしても…ウップ…近くで見ても何の肉か解らないわね…ねぇ?」

ほむら「あれ?」キョロキョロ

ほむら「ま、まどか!まどか!?」

ホムラチャーン

ほむら「まどか!…え!?落ちたの?」

ティヒヒ

ほむら「大丈夫?今行くわ!」

ワー…マッテマッテ!

ほむら「?…どうしたの?」

カナリタカイシ…オッキナ ネズミサンガイル…

人の身である私を気遣ってくれてる様だ。

とりあえず、まどかは安全な場所に居るらしい…

ほむら「わかったわ、回り込んでみるからそこを動かないでね?」

ウン…ムチャシナイデネ?…

ほむら「…」スック

ほむら「急ぎましょう!」



ジャブジャブ

ほむら「t字路?…ほむ…」

ほむら「左かしら?」タッタッタ

樽だらけの部屋についた。

ほむら「行き止まりじゃない…」

?「おっし!助かった!…嬢ちゃん、この樽を…

ほむら「右だったのね」スタスタ

?「うぉぉぃ!?…まじか?まじか嬢ちゃん?…助けてくれよ!」

ほむら「五月蝿いわね…急いでるのに…」メキメキ…バキバキ

ラレンティウス(以下ラレン)「いや、まさかあの距離で見捨てられそうになるとは…」コキッコキッ

ほむら「じゃ」タッタッタ

ラレン「ありがとな…っておオーィ

…!…!

何か遠くの方でごちゃごちゃ五月蝿い…

ほむら「まどかの落ちた位置からすれば…」

足下に水が流れている…

入り組んだ水路のようだ…

ほむら「えーと、あそこを曲がって、こう来たから…」

ボチャ

ほむら「ここを下に行けば…」

ボチャ…ボチャボチャ…

ほむら「何よ?今度はボチャボチャ五月蝿いわ…ね…」

ほむら「ふぅ、もうそろそろだと思うんだけど…」

鼠を操っていた魔法使いから剣を引き抜く。

ほむら「まどかぁー!」

マドカァー…ドカァー…カァー…カァー…カァー…

…ホムラチャン!

ほむら「!…こっちだわ」ジャブジャブ

声を頼りにまどかを探す。

ほむら「危ないわね…排水口かしら…?」ヒョイ

人が入れるほどの穴が空いている。

底は見えない…

ほむら「落ちないようにしないと…」

穴を飛び越えると広い水路に出た。

馬鹿みたいにデカイ鼠が隅でこっちを見てる…

まどか「ほむらちゃん!」

ほむら「まどか!」

まどか「あ、じゃあ飛び降りるね…」ヒョイ

ほむら「あ、危ない」ガシッ

とっさにまどかを受け止めた。

まどか「あ…」

軽い…

あと、可愛い。

まどか「あっと…てぃひひ、下ろしてくれるかな?」///

ほむら「ご、ごめんなさい!」ソッ

ほむら「…」

ほむら「こほん、あの鼠は襲って来ないのね」

まどか「さっきまで暴れてから、少しお仕置きしたの…」

大ねずみ「…」プルプル

ほむら「…凄いわね」

まどか「ありがと、ほむらちゃん」

折角の再会なのに、滝の音と悪臭で集中できない…

ほむら「匂い取れなかったらどうしよう…」スンスン

まどか「だねー」ティヒヒ

まどか「そういえば、先に進めそうな場所はあった?」

ほむら「少し戻った所に開かない扉はあったけど…」

まどか「さっき拾った鍵で開くかな?」

いつの間に…?

ほむら「じゃあ、戻りましょう」

まどか「てぃひひ、こっちだね」ジャブジャブ

ほむら「あ!まどか!…その先に穴が…

ズルッ…ウェヒー…

ほむら「…」

ほむら「まじ?」

ほむら「まどか!…まどか!?」

返事は無い。

ほむら「行くしか…無いわね…」

ほむら「…無いわよね?」

大ねずみ「…」コクコク

ほむら「…」

ほむら「えぃっ!」ピョン

穴は臭く暗く臭く深い…

どこまでも落ちていく気がした。

※info※

■ほむら
武器:ショートソード+5/ライトクロスボウ+5
  :砂時計の盾
装備:魔法少女一式
魔法:時間停止
■まどか
武器:ロングボウ+5/魔術師の杖
  :レザーシールド+1
装備:薄汚れた一式/老魔女の指輪
魔法:音送り/治癒

※info※

読んでくれてる人ありがとう。

寝ます、また明日の夜にお邪魔します。

おやすみなさい。



ほむら「…」ベチャ

ほむら「ぷはっ!」プルプル

髪の毛が重たい…

巴マミが聞いたら卒倒しそうな環境だ…

まどか「うぅ…ごめんなさい…」

ほむら「まどかはもう少し慎重に歩くことね…」

まどか「…うん」シュン

ほむら「それにしても、大分落ちたわね…」

まどか「そうだね…」

この状況はストレスが溜まる一方だ…

ほむら「とりあえず、道を探しましょう…」ジャブジャブ

まどか「うん…」ジャブジャブ

ほむら「こんな所に鐘があるの?」

まどか「鐘はまだ下だよ?」

ほむら「凄いわ…お遍路とは訳が違うわね…」

まどか「オヘンロ?」

ほむら「私の故郷の巡礼みたいなモノよ?」

まどか「へぇー、てぃひひ…変な名前だね」

ほむら「そうかし…どうしたの?まどか?」

まどか「…」キョロキョロ

まどかが立ち止まった。

何かを警戒している。

まどか「この感じ…ファントムだ…」

ほむら「ソラールかしら?」

まどか「ううん、これは違うよ…私達を狙って侵入してきてる…」

ほむら「侵入?…とりあえず敵って事?」

ザバザバ…

遠くから水音が近付いてくる。

まどか「…」コクン

ほむら「わかったわ、まどかは少し下がってて…」

ザバザバザバ…

まどか「…」ギュ

ほむら「…」ゴクリ

まどか「来た!」

バシャッ…



さやか「おりゃー!刺々の騎士さやかちゃんだぞー!…人間性を寄越すのだー!」ザバザバ

ほむら「…」

まどか「あれがファントムだよ!気を付けて!」

ほむら「…」

さやか「おや?二人もいる…こりゃラッキーですなぁー!」ザバザバ

ほむら「…」

まどか「ほむらちゃん!油断しないでね?…ほむらちゃん?」

ほむら「…」

まどか「どうしたの?ほむらちゃん?…目が死んでるよ?」ユサユサ

ほむら「まどか?」

まどか「な、何かな?」

ソラールの件で、まどかからファントムの事を少し教わっていた。

ファントムは意識を共有できる分身の様なモノらしい…

ほむら「あれ、ファントムって事は…何やっても本体は死なないのよね?」

まどか「そうだよ…?」

まどか「…たぶん」

さやか「何をごちゃごちゃ言ってるのかなぁー?…ははーん、私に恐れをなして逃げる算段だなぁー?…逃がさんぞー!」ザバザバ

ほむら「…」

ほむら「まどかは下がってて…何もしなくて良いから…」ゴソゴソ

まどか「でも!」

そういえば、前回はさやかに邪魔されて色々ご破算になった…

ほむら「大丈夫…あれは大丈夫、大丈夫な類いの奴だから」ジャコン

思い出せば思い出す程に…

さやか「何だね?…その黒い塊は?…そんなもので、このさやk

ダンッ

まどか「ひゃっ!?」ビクッ

さやか「…」

さやか「な、なんぞ?」

ほむら「…ちっ」

頬をかすめただけだった…

ほむら「鈍ってるわね…」ジャコン

さやか「ちょ!ちょまー!?一旦落ちt…

ダンダンッダンッ…

さやか「…しどい」ガクリ…シュウウ…

よし当たった。

ファントムが消えてゆく…

ちょっとだけスッキリした…

ほむら「ふぅ」

まどか「…」

ほむら「さぁ行きましょう、まどか…まどか?」

まどか「…今の…ほむらちゃんの魔法?」

ほむら「違うわ…武器よ」

まどか「凄い威力だね…」

ほむら「そうね…あまり使えないけど…」

まどか「うん、その方が良いよ…」

まどか「てぃひひ、持ち主がほむらちゃんで良かった…」

ほむら「どういう事?」

まどか「優しい人だから…相手が死なないと分かったから使ったんだよね?」

ほむら「…」

ほむら「私は、別に…」

まどか「てぃひひ、行こっか?」ザブザブ

ほむら「まd…

まどか「どうしたの…行こ?」ザバザバ

ほむら「…」

私は、優しくなんて無いのに…

まどか「ほむらちゃん!行こっ?」

ほむら「…えぇ」ジャブジャブ



ほむら「この先?」

まどか「鍵が閉まってるね…」グイグイ

?「やぁ、こんな所に珍しいね」

ほむら「…あなたもね」

まどか「こんにちは」ペコリ

ドーナル「僕はドーナル。珍品を扱ってるんだけど、見てくかい?」

ほむら「ここの鍵はあるかしら?」

ドーナル「無いね」

ほむら「なら、結構よ」

ドーナル「それは残念だ…因みにそこの鍵は下の水路にあったはずだけど?」

まどか「そうなんですか!?」ガバッ

ほむら「!」ビクッ

ドーナル「僕も下に取りには行ったんだけど、この最下層の主が住み着いていてね…」

ほむら「主?」

まどか「ほむらちゃん、行こう!…鍵の為だよ!」

ほむら「えぇ、でも主って…」

まどか「てぃひひ、膳は急げだよ!」ガシッ

ほむら「まっ…まってまどか、主の情報を…」ズルズル

ドーナル「竜は手強いけどがんばってね」

ほむら「今、変なワードが聞こえたわ!聞こえたのよ!…まどか?まどか!?」ズルズル



お食事

ドドドドドドドドド…

まどか「この先みたいだね」

ほむら「凄い水音ね…あら?」

床が光っている…

この文字は見覚えがある。

ほむら「これは、まさか…」ピト

まどか「どうしたの?」

ペカー

ソラール「…\[t]/…」パァァ

ほむら「やはり…」

まどか「あ、ソラールさん」

ソラール「…おお!ほむら達か!」

ソラールが辺りを見回す。

ソラール「最下層…しかし、よくもまぁこんな辺境のサインを見つけたもんだ…ある程度理解はしてたが、貴公等もとんだ変態だな!ウワッハッハ!」

まどか「この先に、ここの主が居るらしいんですけど、ご存知ですか?」

ソラール「あぁ、知ってる。…主と言っても、流れ落ちてきた何もかもを喰い続けて肥大化した竜の成れの果てだがな…叩くのか?」

ほむら「そこに必要な物があるみたいなの」

ソラール「なるほど解った…加勢しよう」

ドドドドドドドドド…

まどか「わー、広い!」

ほむら「主とやらは居ないわね…鍵を探しましょう!」

ソラール「鍵か…うーん」キョロキョロ

まどか「こっちかな?鍵の匂いがする…」テッテッ

ソラール「匂い?」クンクン

ほむら「匂い?」スンスン

ソラール+ほむら「「?」」

まどか「あっ!」

ほむら「どうしt…あれは…」

人より少し大きい位の蜥蜴が滝壺から顔を覗かせている。

…ヒョコ

ほむら「あら、可愛い」

キョロキョロ…

ソラール「可愛いか?」

メキメキメキメキメキメキメキメキ…

まどか「か、可愛い?」

メキメキメキメキメキメキメキメキメキメキメキメキ…

小さいのは頭だけだった…

滝壺から全身を現したそれは、とてつもなく巨大な竜。

ほむら「撤回するわ」

貪食ドラゴン(以下、貪食)「ギュアアアァァ!!」バキバキ

ソラール「随分でかくなったなぁ」ガハハ

ほむら「何よそれ…親戚の叔父さん?」

ソラール「違うぞ?」

ほむら「…」

まどか「あわわ」タッタッ

ほむら「まどか!鍵はあった?」

まどか「まだ見つからないよ!」

ほむら「やるしか、無いわね…」カシャン

貪食「ギュアアオオ!」ドシン…ドシン…

竜はこちらを見据えると、脇目も振らず突っ込んできた。

ほむら「柱も瓦礫も構わず巻き込んでるわね…」タタタ

まどか「サイドに回り込めば…」タッタッ

ほむら「まぁ、避けるのは簡単…ってソラール?貴方何して…」

直進する竜に向かって正面から突進するソラールが見える…

ソラール「ウワッハッハ、任せておけ!」

貪食「ギュルルルゥ!!」ドシン

ソラール「ふんっ」ガッ

ほむら「ソラール!」

ほむら「…」

まどか「竜が…」

ほむら「止まった…嘘でしょ?」

貪食「ギュアアゥォ?」グググ

ソラール「ヌォォオオオ…」グググ

ソラールが竜の頭を押さえつけて離さない…

ほむら「…はっ!何かあれだけど、今のうちにやるわよ!まどか!」ザクザクッ

まどか「う、うん!」キリキリ…ヒュン

貪食「ギュアアアアア!」ビタンビタン

ほむら「くっ、尻尾が邪魔だわ」

ほむら「大人しく…」

ほむら「落ちなさい!」ズバッ

貪食「ギュアゥォオオ!?」バッサァ

尻尾を落とした衝撃で、竜が飛び上がった。

ソラール「おぉ、あれじゃ押さえられん…」

ほむら「…」

ほむら「逃げたわね…」

竜はそのまま、滝壺に消えていった…

ソラール「逃げたな」ガハハ

まどか「あったよー!」ブンブン

遠くでまどかが叫んでいる。

ほむら「何がかしら?」

ソラール「鍵じゃないか?」

ほむら「あぁ、なるほど」

ソラール「この広さでよくも見付けられるものだな!非常識な才能だ!」シュウウ…

ほむら「貴方が常識をって…あら?」

ソラール「時間のようだ…ほれ!」シュウウ…

パシッ

ほむら「またこのメダル?…これって一体…」

シュウウ…

ほむら「…」

まどか「あぁー、ちゃんとお礼言えなかった…」タッタッ

ほむら「…」

ほむら「生身で会った時にきちんとお礼を言いましょう?」

そしてメダルの意味を聞きましょう…

まどか「うん!そうだね!」ティヒヒ



ドーナル「いやぁ、凄いね…」

ほむら「ありがとう」

ドーナル「じゃあ、僕もそろそろ移動するよ…」

まどか「またね、ドーナルさん」

ドーナル「うん、またね」

まどか「じゃあ、開けるよほむらちゃん」

ほむら「えぇ」

ガチャン…ギギギ…

乾いた空気が流れてくる…

しかしこの匂い…

ほむら「今度はカビとの戦いなのね…」

まどか「体は大丈夫そう?」

ほむら「問題ないわ」ファス…

髪が傷んでる…ファサッてならない…

まどか「良かった…この先は病み村って言うの…」

ほむら「村?」

まどか「そう…行き場を無くした人達の村」

まどか「呪いに耐性の無い人はね、人としての形を保てなくなる…」

まどか「ここはそんな人達の最後の居場所だから…」

ほむら「…まどか」

まどか「出来るだけ、静かに通りたいよね?」ティヒヒ



※病み村※

まどかは優しい。

この世界でもそれは変わらない。

ただ、なんだろう…

ほむら「次に行く?」

まどか「うん、ごめんね?付き合わせちゃって…」

ほむら「気にしないで」ニコ

動かなくなった亡者に、異形の者に、まどかは祈りを捧げる。

村の住人はただ静かにそれを眺めている…

彼等が襲ってくる事はなかった。

ほむら「…」

ほむら「貴方は立派だわ…」

まどか「そんな事無いよ」ティヒヒ

悲しそうに笑う…

それ以上何も聞けなくなる…

ほむら「いいえ、立派だわ」

私も亡者に手を合わせる。

まどか「…」

まどか「ありがと、ほむらちゃん」ティヒヒ



広い場所に出た。

ほむら「これは…」

ほむら「ここ地下…よね?」

まどか「そのはずだよ?」

明らかに体に悪そうな沼が足元に広がっている。

ほむら「広すぎないかしら?」

まどか「私も驚いてるよ…」

まどか「ここの何処かに鐘があるはずなんだけど…」

ほむら「そう…」

骨が折れそうだ…

ほむら「まぁ、とりあえず降りましょう」ズブ

まどか「うひぃ、躊躇なく行くねほむらちゃん…」ズブ

ほむら「とりあえず、空気の流れを追うわ」

まどか「そうだね…少しでも浄化された場所に行きたい」



篝火が燃えている。

まどかはじっと座ったままだ…

私は篝火の先に見つけた吸気口の前で涼んでいた。

ほむら「カビ臭いけど腐敗臭より、いくらかましだわ…」フゥ

深く呼吸をする。

早く外に出たい。

まどか「ほむらちゃん?大丈夫?」

ほむら「あら?来てたの…えぇ大丈夫よ」

まどか「そろそろ…」

ほむら「そうね、行きましょう」

まどか「てぃへへ…うん」

まどか「…?」キョロキョロ

ほむら「?…どうしたの?」

まどか「この感じ…また侵入だ…」

ほむら「さやかかしら?」

まどか「…わかんない」

辺りを警戒する…

ほむら「ここで待機しましょう。足場がしっかりしている方が良いわ」

まどか「そ、そうだね」

吸気口の前で、様子を伺う。

来た…

来たけど…

まどか「す、凄い格好だね」///

ほむら「かろうじて股と胸は隠れてるけど…」

ユッサユッサ

遠目にわかるほど揺れている…

ほむら「…あのサイズ」チッ

顔はずた袋を被っていてよく見えない…

見えないが…

ほむら「…」

ほむら「貴女…マミ?」

まどか「?」

マミ「あら?…私も有名になったものね…そうよ私はマミ…混沌に生きる者soul eaterマミよ」キリッ

あぁなんだろう、この感じ…

まどか「ほむらちゃん、知り合い多いね…」

ほむら「そうかもね…」

マミ「私を知ってるなら、抵抗が無意味である事は理解しているわね?」

ほむら「まどか…何も言わず話を合わせて」ヒソ

まどか「へ?」

マミ「さ、観念してソウルと人間性を寄越しなさい!」

ほむら「ふふ…」スッ

ほむら「…久しぶりの再会にそれは無いんじゃない?」

マミ「…?…何処かで会ったかしら?」

ほむら「貴女なら、と思っていたけど残念ね…記憶を無くしてるなんて…」

マミ「…記憶を?…私が?」

ほむら「私はほむら。何か思い出さない?」

マミ「…」

マミ「…確かに聞き覚えがあるような…」

ほむら「流石マミだわ…でも当然かしら?前の世界では共に戦った仲間だもの、ね?」

マミ「…」ピク

まどか「?…??」

マミ「…」

マミ「…」フルフル

色々葛藤があるようだ…

ほむら「まだ思い出さない?…貴女と過ごした日々を話して聞かせましょうか?」

マミ「聞かせて…貰える?」キリッ



三人で篝火を囲んだ…

一部、誇張を交えつつマミとの過去を話す。

マミ「ケーキ…良いわよね。この地に来て食べることも無くなったけど…」ホゥ

ほむら「信じてもらえた?」

マミ「素晴らしいわ、私は貴女の師匠だったのね!…確かに、アケミさんを見た時懐かしい感じがしたのよ!」

それは何より。

マミ「まさか…まどかさんも?」

ほむら「えぇ、ただマミと違って…まどかは完全に記憶が消えてるのだけど…」

マミ「貴女も奴に記憶を消されたのね…」

まどか「うぇひー、はい、まぁ」

奴?

そんな話したっけ?

ほむら「でも、この世界でマミに出会えたのは幸運としか言えないわ!」

マミ「もぅ、大袈裟よ?ねぇ?まどかさん?」///

まどか「うぇひー」

マミ「あら?」シュウウ…

マミ「残念ね…時間みたい…今度は生身で会いましょう?…」シュウウ…

マミ「私のサインを見つけたら遠慮なく呼んでね?…いつでも構わないから!…本当、私の都合とか考えなくて良いかr…シュウウ…

シュウウ…

まどか「…」

ほむら「行ったわね」

まどか「良かったのかな?」

ほむら「敵対するよりマシだわ…」

まどか「…」

まどか「確かにそうだね」ティヒヒ

このままだと、あと一人も現れそうだ…

こういった世界では一番厄介であろう彼女が…

ほむら「ま、その時はその時よね…」

まどか「…」

ほむら「まどか?」

まどか「ひゃ!?…ごめん、考え事しちゃってた!」ティヒヒ

ほむら「そう?…行きましょう?」

まどか「うん!行こっ!」

※info※

■ほむら
武器:ショートソード+5/ライトクロスボウ+5
  :砂時計の盾
装備:魔法少女一式
魔法:時間停止
■まどか
武器:ロングボウ+5/魔術師の杖
  :レザーシールド+1
装備:薄汚れた一式/老魔女の指輪
魔法:音送り/治癒

※info※

寝ます。

読んでくれてる方居るようで嬉しいです、ありがとうございます。

では明晩に、おやすみなさい。



※クラーグの住処※

ほむら「…」

ほむら「場所が判りづらいわ…まどか」

まどか「私に言われても…」

やっとそれらしい場所に着いた。

散々、沼を歩いた結果、沼関係無い所に入り口があった…

ほむら「不思議な場所ね…」

まるで巣だ…この壁はなんだろう…

まどか「凄い、地面が温かい…」

ほむら「ここの鐘を鳴らしたらおしまい?」

まどか「ううん」フルフル

まどか「グウィン王の歩みを辿る筈だけど…詳しい事はよく…ごめんね?」

ほむら「そう…」

まどか「?」

ほむら「あれ、何かしら?」

目の前には背中の肥大した人間が複数。

背中は不気味に脈打っている…

まどか「ここに住んでる人?」

近付いて見るが反応はない…

ほむら「まるで私達は眼中に無いのね…」

まどか「この先に何かあるのかな?」

誰も彼も一様にこの道の先を向いて伏している。

まどか「あっ…少し先に広間があるみたい」スタスタ

ほむら「油断しないでね…」スタスタ

ほむら「?…このサイン…」

見たことないサインだ…

ソラールのものでは無い…

まどか「どうしたの?」

ほむら「いえ、このサインが…」ペタ

ペカー…

まどか「わ」

ほむら「なるほど」

マミ「ふっ、私を喚ぶ者よ汝のnって、あら!…あらあら!…アケミさんじゃない!?早速呼んでくれたのね!」キャー

まどか「こんにちわ、マミさん」ニコ

マミ「こんにちわ、まどかさん」ニコ

ほむら「この奥って何があるの?」

マミ「ここはクラーグと言う魔物の住処よ?運が悪いと出逢う事もあるけど、そうそう…」

メキメキ…

マミ「出逢わない…」

ザクッ…ザクッ…

マミ「はず…」

?「!」ニコ

マミ「…」

女性がこちらを見据えている。

下半身は巨大な蜘蛛だが…

ほむら「あれがクラーグ?」

マミ「運が悪いことに、ね…」

まどか「…」

まどか「あれ?…この人…」

マミ「どうやら目を付けられたわね」キリッ

ほむら「好戦的なの?」

マミ「周りを見たらわかるでしょ?」

ほむら「?」

ああ…

ようやく気が付いた。

この壁は亡者だ…

絡め取られた夥しい亡者達によって造られたモノなんだ。

クラーグ「…」カチカチ

ゴウッ…

クラーグから火炎液が振り撒かれる。

ほむら「まどか!」バッ

まどか「へっ?あ!…うん」サッ

範囲は広いが狙いが甘い…

あっさりと避けられた。

マミ「不味いわ…」

ほむら「何がよ?」

マミ「退路を塞がれたわよ…」

ほむら「っ!」

しまった…

そもそも狙いが違ったのか…

クラーグ「…」ニコ

ほむら「やるしか無いのね」

まどか「さっきの声は…空耳かな?」キョロキョロ

ほむら「まどか?」

マミ「来るわよ!」

火を振り撒きクラーグが迫ってくる…

ほむら「まどか!逆側に回り込んで!」バッ

まどか「うん!」タッ

クラーグ「!」

まどか「え?」ピタッ

マミ「まどかさん!?」

ほむら「まどか!?」

カチッ

クラーグ「…」ブンッ

クラーグの持つ剣がまどかのいた場所を凪ぎ払う…

クラーグ「?」キョロキョロ

まどか「あ!」

ほむら「どうしたの?まどか?」

まどか「あ…ごめん…ほむらちゃん」

まどかが動揺している…

どうしたんだろう?

マミ「ワープした?…やるわねアケミさん!」ザクッ

クラーグ「!」

ほむら「まどかは下がってて…今の貴女では危険だわ」パスパス

クラーグ「!?」ヨロ

まどか「やっぱり…!」

ところ構わず火炎液を撒き散らすのが厄介だ…

ほむら「くっ、足場が…」ババッ

ほむら「…」

ほむら「なんでマミは火の中で平気なのよ?」

クラーグ「…」ブンッ

マミ「はっ!」キィン

ギリギリ

よく見ると、マミが尋常じゃない量の汗をかいてる事に気付いた。

ほむら「ただでさえ、裸同然なのに色々問題のある絵面だわ」

マミ「甘いわっ!」ガキンッ

マミがクラーグの剣を弾き飛ばした。

ほむら「よくやったわ、マミ!」パスパス

クラーグ「!」ザクザクッ

クラーグ「…」グラッ

マミ「怯んだわね!ナイスよアケミさん!…これで!」

クラーグ「!」

まどか「駄目っっ!…マミさん!ほむらちゃん!駄目だよっ!」ダッ

マミとクラーグの間にまどかが飛び出した。

マミ「ちょっ!」

クラーグ「!」バンッ

隙を逃さず、クラーグは飛び上がり、距離を取る。

剣も拾ってしまった…

マミ「どうしたの!…絶好のチャンスだったのに…」

まどか「駄目なんです!…私が、私が話してみますから!」

ほむら「交渉出来る手合いなの?」

まどか「わからないけど…やらなきゃ…」グッ

マミ+ほむら「「?」」

まどかが真正面から近付いて行く。

まどか「クラーグさん!私達、鐘を鳴らしたいだけなんです!」

クラーグ「…」ブンッ

ほむら「ちっ」カチッ

クラーグ「?」グルン

ほむら「…」スタッ

まどか「あ…ほむらちゃん」

ほむら「交渉、するんでしょ?」

まどか「あ、うん!…聞いてください!貴女の大事なモノを奪ったりしないから!」

クラーグ「!」カチカチ

ゴウッ

火炎液が振り撒かれる。

まどか「お願い!お願いだから!」



クラーグが攻撃する度、私が時間停止でまどかを運ぶ…

まどかの言葉は届かない。

マミ「アケミさん?…その魔術も無限では無いのよね?」

ほむら「もうあと一、二回使えるかどうかよ…」ハァハァ

まどか「う…」

マミ「次の言葉が聞き入れられなければ、攻撃するわよ?」

まどか「…っ…はい」

ほむら「まどか…」

まどか「クラーグさん!お願い!」

クラーグ「?」

まどか「違う!違うよ!そんな事しても…」

クラーグ「!」ブンッ

ほむら「…」カチッ

まどか「ほむら…ちゃん」スタッ

ほむら「もう、止められないわ…」

マミ「残念ね」チャキッ

ほむら「まどかは下がりなさい」スチャ

クラーグ「!」ドシン…ドシン…

まどか「駄目だよ、ごめん…クラーグさんを攻撃しないで…」

まどかが行く手を阻む。

クラーグに背を向けたまま、動かない。

ほむら「何やってるの!貴女は!」

クラーグ「!」ブンッ

ほむら「まど…」

メリッ

視界が暗転する。

何かが私と衝突した。

マミ「二人共っ!?」

私の足元には…まどか…

ほむら「う…まど、か?」

ほむら「まどか?」ユサユサ

揺する…

まどか「ほ、むら…ちゃ…」

弱々しく笑う…

ほむら「…」

ほむら「…殺すわ」ジャコッ

クラーグ「!」ドシン…ドシン…

ガシッ

ほむら「なっ…まどか!?」

まどか「…駄目、だよ…」

クラーグ「…」

まどか「ごめんね…わがままばかり…」グッ

クラーグ「…」

マミ「まどかさん…」

マミ「!?」

マミ「周りの火が、消えた?」

クラーグ「…」ズシン…ズシン…

マミ「行っちゃったわ…交渉成功?」

まどか「…よ…かっ…」

ほむら「まどか!まどか!?…まどかのエスト瓶はどこよ!?」

マミ「…」シュウウ…

マミ「…これを使いなさい」シュウウ…

ほむら「これは?」

マミ「女神の祝福よ?素敵な名前でしょう?傷なんてあっと言う間にn…シュウウ…

ほむら「まどか!」キュポッ

シュウウ…

パァァ…

まどか「…あ…ほむらちゃん」

ほむら「あぁ、良かった!良かった…」ギュッ

まどか「私、不死なんだから…大げさだよ…」ティヒヒ

ほむら「な…!」

ほむら「ふざけないで!不死だから何!?…貴女が死ぬのを何度も見ろって言うの!?」

ほむら「…私に、そんな光景を見続けろとでも言うの!?…冗談じゃないわ!」

ほむら「…私は…」ポロポロ

まどか「…」

ほむら「…そんなの…私には…」ポロポロ

まどか「ごめん…ごめんね…」ギュッ

まどか「…ごめんなさい、そうだよね…大事な人が傷付くのを考えれば簡単に理解できる事なのに…」

まどか「…ごめんね…守ってくれて、ありがとう」ポロ



ギンゴーン…ギゴーン…ゴーン…ゴーン…

まどか「これで…」

ほむら「何か変わった様子は無いわ」

まどか「うーん」

ほむら「どうでもいいけど、まどか?…クラーグが来てるわよ?」

クラーグ「!」

まどか「え?…そうなの?」

クラーグの元に歩いてゆく…

既にクラーグに敵意は無いようだ…

まどか「ほむらちゃん!下に降りてみよう?」

ほむら「えぇ、でもまどか?…貴方はクラーグの言葉がわかるのよね?」

まどか「ほむらちゃん達には聞こえないんだっけ?…うーん、なんでだろ?」

ほむら「才能かしら?」

まどか「てぃひひ…それは無いよ…」

クラーグ「!」

まどか「…ありがとう、ほむらちゃんはここで待ってて?」スタスタ

まどかは一人で奥に進んでゆく。

ほむら「…」

クラーグ「…」

ほむら「…」チラ

クラーグ「?」

ほむら「…」ペコリ

クラーグ「…」ペコリ

…気まずい。

まどか…早く、早く!

ほむら「…」

ズルッ…ズルッ…

ほむら「?」

卵背負い(以下、エンジー)「おぉクラーグ様…ここにおられましたか…」

入り口に居た者と同じ姿の男が這い出てきた…

エンジー「さっきの娘の連れか?」

ほむら「?…えぇそうよ」

エンジー「…卵も背負わぬ半端者共が…クラーグ様に許されたからと調子づきおってからに…」ブツブツ

ほむら「…」

エンジー「儂なんか、遥かに昔からお二人にお仕えしとるわい…」フフン

ほむら「…」

ほむら「り、立派ね」

エンジー「ほぅじゃろ、ほぅじゃろ」

エンジー「お主もお二人の言葉が解るのか?」

ほむら「…」フルフル

エンジー「そうか、あの娘だけか…まぁ、言葉なぞ無くとも、出来る事は多分にある…羨ましく無いわい…」

ほむら「そうね…たとえ理解されなくても守る事は出来るから…私はそれで十分だわ」

エンジー「おぉ…お主、ええ事言ったな!…卵を負わぬのが勿体無いのぅ!」

ちょっと近付いてきた…

若干気に入られたっぽい。

クラーグ「…」



ほむら「そう…クラーグ達に救われたのね…」

エンジー「そうじゃ、なのに儂は何もしてやれん…こうしてお側に…ん?」

ほむら「まどか!」

まどか「…」

ほむら「まどか?」

まどか「…うん、ただいま…てぃひひ」

何かあったのだろうか…

ほむら「まど…」

まどか「ねぇ、ほむらちゃん」

ほむら「…何かしら?」

まどか「私は…どうしたら良いのかな…このまま巡礼を続けても…」

ほむら「続けても?」

まどか「…ううん」フルフル

まどか「諦めちゃ駄目だよね!」ニコ

ほむら「…?」

ほむら「…?」

まどか「よーし!ほむらちゃん、一旦祭祀場に戻ろう?」

ほむら「え、えぇ」

何を知ったの?

何を聞いたの?

この世界のまどかには、そんな簡単な質問さえ躊躇わせる空気がある…

この世界のまどかは強くて…優しくて…

私はたじろぐばかり…



カチャカチャ…ガチャリ

不思議な空気の場所に出た。

ほむら「…ここは?」

まどか「えーと、祭祀場の下だから小ロンド遺跡だね」

ほむら「祭祀場の下なの?…そんな風に繋がってたのね…」

まどか「うん、こっちだよ」ティヒヒ

まどかに手を引かれる。

ほむら「ここの亡者は大人しいのね…」

まどか「…」

まどか「ここや、牢獄の亡者は人間性を失って、まだ日が浅いから…」

ほむら「そう…」

頭を抱える亡者。

動かない者に話しかける亡者。

ほむら「まだ人で在ろうとしてるのね…」

まどか「…うん」

まどか「…」スタスタ

まどか「あ、ここだよ。この昇降機…」ガチャ

カラカラカラカラ…ガシャン



カラカラカラカラ…ガシャン

※火継ぎの祭祀城※

ほむら「いい風だわ…生き返る」ホムー

まどか「ここを上っちゃえば…篝火があるんだよ!」スタスタ

ほむら「最初の場所ね」スタスタ

まどか「これでようやく…あっ!」

ほむら「?…何か」チラ

ほむら「!?」

まどかの視線の先、朽ちた石牢の中から細い腕が覗いている。

まどか「…!」ダッ

駆け寄るまどかを追って、私も石牢に近付いた…

まどか「酷い…」

ほむら「っ…確かに…非道いわね…」

石牢の中で若い女性が死んでいる。

格子に固定された状態で何度も刺された後があった…

更に昔に付けられたであろう、夥しい量の傷痕が惨状をより凄惨なモノにしていた。

まどか「何で、何でこんな目に…」ポロポロ

ほむら「抵抗できないのを良いことに…許せないわね…」

まどか「…」ギュッ

女性の手を取り、まどかは弔う…

ほむら「…」

ほむら「…」コツン

足元に何か落ちている…

まどかは気付いてない様だ。

ほむら「?」

何だろう…この黒い玉は?

犯人の手がかりだろうか?

ほむら「他に何か落ちてないかしら?」ボソ

辺りを探す事にした。

更に階段を上ると、初めの篝火の場所に出た。

ほむら「ここに出るのね…」

何故か篝火から火が消えている。

ニート「何だ、生きてたか…」

ほむら「あら、久しぶり」

ニート「探し人は見つかったかい?」

ほむら「えぇ、下に居るわ」

ニート「すげぇな。鐘鳴らしたのもあんただろ?」

ほむら「そうね、私たちだわ。よく知ってるのね」

ニート「はは…今時、真面目に巡礼しようなんて輩は限られてるんでな…この調子で頼むわ…」

ほむら「ねぇ、一つ聞いてもいい?」

ニート「?」

黒い玉を見せる。

ほむら「これ何かしら?」

ニート「宝珠だな…」

ほむら「オーブ?」

ニート「あぁ、ファントムは知ってるか?」

ほむら「…」コクリ

ニート「それは、復讐の為のファントムを生み出す道具だ…復讐対象の痕跡を見つければそいつが反応するんだよ」

ニート「あとは、その辺りで宝珠を設置しておけば、対象が現れた時に復讐霊として召喚される訳だ…」

ほむら「自分がファントムになる道具って事ね…」

あの場所に落ちていたと言う事は、おそらく彼女が生んだ物だろう…

そうなると、復讐対象はおそらく犯人だ…

もし不死人が犯人なら…

ほむら「まどかには言わない方が良いわね…ありがとう」ゴソゴソ

ニート「?…あぁ…」

ほむら「あと、何で火が消えてるの?」

ニート「そりゃ、火防女が死んだら消えるだろ…」

ほむら「?」

ニート「下の死体、見てないのか?」

ほむら「え?彼女?」

ほむら「?…彼女が燃やしてたの?」

ニート「燃やしてたってか、篝火が彼女そのものなんだが…」

ほむら「?」

ニート「めんどくせぇな…とにかく、あの女が篝火で、それが死んだから火が消えたんだ。そんだけだ…」

ほむら「そう…なのね…」

いまいち、理解できない…

ニート「んで、そういう篝火と共に在る連中を火防女と呼んでんのさ」

ほむら「火防女…」

まどか「あ、ここに居たんだ…」

まどかが上に上がってきていた。

ほむら「もういいの?…いつもより感情的だったから…」

まどか「うん…ありがとう。もう大丈夫だよ…」

ニート「そいつが連れか?」

まどか「えっと、初めまして…」ペコ

ニート「はは…」

ほむら「ニートよ、こっちはまどか」

まどか「ニートさん?」

ニート「あぁ?」

まどか「あの、何か変わったこと起きませんでしたか?」

ニート「あー…篝火が消えたのと…そうだ」

頭を抱え、ため息をついた。

ニート「鐘が響いた直後なんだが…」

ニート「とんでもなく臭い野郎がこの先に現れたぞ?」

※info※

■ほむら
武器:ショートソード+5/ライトクロスボウ+5
  :砂時計の盾
装備:魔法少女一式
魔法:時間停止
■まどか
武器:ロングボウ+5/魔術師の杖
  :レザーシールド+1
装備:薄汚れた一式/老魔女の指輪
魔法:音送り/治癒

※info※



まどか「ほんとだ臭い」

ほむら「臭いわね」

ほむら「…もう、遠目にも見えてるけど、あれ何?蛇?」

水場があった辺りから巨大な何かが顔を出している。

?「はぁ…臭ぇし、騒がしぃし…諦めて移動するか…」ムクリ

ほむら「?」

?「ん?…あ!あん時の嬢ちゃん!」

草むらで腰を下ろしている男が話しかけてきた。

ほむら「私?…?」

まどか「ほむらちゃんは知り合いが多いね」

ラレン「ほら、最下層で!樽の!」

ほむら「あぁ!」

ほむら「…」

ほむら「?」

ラレン「おいおい、記憶力皆無か?」

ほむら「覚えてるわ、ちょっとした冗談よ?」

ラレン「どーだか…」

まどか「うーん、じゃあほむらちゃんはここで待ってて?…私あの大きい人と喋ってくるから…」

…人?

ほむら「大丈夫よ?私も行くわ」

まどか「てぃひひ…いいから、いいから」スタスタ

気を使われてしまった…

ラレン「紹介しとくな、俺はラレンティウスだ」

ほむら「…ほむらよ」

ラレン「しっかし、あの時は助かった。礼をしなければとここで待ってたんだが…」

ほむら「結構よ」

ラレン「まぁ、そう言うな…あんたは呪術に興味は無いか?」

ほむら「呪術?」

ラレン「なんだ、知らんのか?」

ほむら「知らないわ」

ラレン「…」

ラレン「て事は、偏見も無いよな…」フンフン

ほむら「?」

ラレン「…なぁあんた、呪術を学んで見ないか?」

ほむら「遠慮するわ」

ラレン「即答かよ!?」

ほむら「そもそも、不死人で無い者も使いこなせるの?」

ラレン「いや、そいつは問題ないが…ん?…不死人じゃないのか?」

ほむら「…」コクリ

ラレン「!?」

随分驚いてる…

この不死人の件も飽きてきた…

ラレン「はぁ、物好きが居たもんだ…」

ほむら「そうかもね」

ラレン「とりあえず、呪術を学ぶにしろ学ばんにしろ、火を分けるから礼として受け取ってくれ…」ボウッ

ラレンティウスの右手が燃え上がる。

ほむら「凄いわね…?…どうやって受け取るの?」

ラレン「ん?…俺の手をとりな」

ほむら「熱くないの?」

ラレンティウスの右手に触れると、炎が私の左手に伝わってきた…

不思議な事に熱は感じない…

ゆっくりと炎が左手を包み込んで行く…

まどか「お待たせ、ほむらちゃん!」

ほむら「!」ビクッ

まどかが戻ってきていた。

ラレン「よぅ」

まどか「てぃひひ…ほむらちゃん、それ呪術の火?」

ほむら「えぇ、そうらしいわ」

ラレン「あんたも呪術を?」

まどか「ごめんなさい、私は魔術を…」

ラレン「まぁ、そうだよな…」

ほむら「すごい…私の手が赤く透き通ってる…」

ほむら「…あら?」

ほむら「…?…火が消えたわ」

ただの手に戻った…

ラレン「?」

まどか「あれ?」

ラレン「なんでだ?…破滅的に才能が無いのか?」

ほむら「…」

人間で無いからだろうか…

ほむら「まぁ、いいわ…それよりまどか?何か分かった?」

ラレン「良いのかよ…」

まどか「へっ?あ、うん。えっとね次にいく場所が分かったよ?」

ほむら「そう…とりあえず、匂いがきついから、下で話しましょう?」

まどか「てぃひひ、そうだね」

グリッグス「おぉ!やはり!聞いた声だったのでもしやと思いましたが!覚えておいでですか?…グリッグスです」

ほむら「あぁ、次から次に…」フイ

まどか「もぅほむらちゃん!…お久しぶりですグリッグスさん…と、あと…?」ペコ

ペトルス「これはこれは、ほむら殿」ペコ

ほむら「あら、ペトルスさんだったかしら?…お久しぶりです」

グリッグス「ペトルス殿もお知り合いでしたか!」

まどか「良かったです。無事に祭祀場についた見たいで…」

グリッグス「そうです!…お礼をしなければなりませんでした!ヴァンハイムの近代魔術をお見せしますよ!」

まどか「わ、ほんとですか!?」

まどか「…」ウズウズ…チラ

ほむら「行ってきていいわよ?篝火の所で待ってるから」フフ

まどか「ありがとう!すぐ戻るね!」

ペトルス「…」

ペトルス「ご友人には会えた様ですね」

ほむら「えぇ、ありがとうございます」

ペトルス「では、もう戻られるのですかな?」

ほむら「いえ…」フルフル

ペトルス「っ!?」

ほむら「彼女の巡礼に同行する事にしました…」

ペトルス「…」

ペトルス「そうですか…では…」スタスタ

ほむら「?」



暫くしてまどかが戻ってきた…

ほむら「センの古城…?」

まどか「そうだよ!そこからアノール・ロンドに向かうの!」

ニート「…」

ほむら「何?」

ニート「いや…」

ニート「随分、頑張るもんだと思ってな…」

まどか「目的があるんです…だから…」

ニート「目的ねぇ」

ほむら「…」

ニート「まぁ頑張れよ…俺にも目的が無い訳じゃ無かったしな…」ハハ

まどか「だったら…」

ニート「心が折れるまでは、な…」

まどか「…」シュン

ニート「…」

ニート「だが…鐘、鳴らしたんだよなぁ…」

まどか「はい!」

ニート「…」ハァ

まどか「…と言っても私はほむらちゃんに助けられてばかりですけど…」

まどか「てぃひひ…」

ニート「…はぁ…もう少しだけ抗ってみるか…」

まどか「!」

まどか「あの!でしたら!」

ニート「?」

まどか「私達と行きませんか?」

ほむら「?」

ニート「俺が?」

ほむら「これが?」

ニート「失礼な奴だな…」

まどか「あの…駄目ですか?」

ニート「一緒に…ねぇ」チラ

こちらを見る…

ほむら「私は構わないわよ?協力者は多いに越した事は無いし…」

ニート「…」

ニート「はぁ…センの古城までなら…アノール・ロンドには同行しない。それで良いなら、な?」

まどか「ありがとうございます!てぃひひ、やった!ほむらちゃん!」

ほむら「そうね…ココロヅヨイワ」

ニート「心込もってねぇなぁ…」

まどか「ほむらちゃんは素直じゃ無いから」ティヒヒ

ほむら「なっ」///

ニート「じゃあ、まぁ、よろしくな…」

まどか「お願いします」ペコ

ほむら「よろしく」



※城下不死教区※

カツーン…カツーン…

篝火が燃えている…

まどか「アンドレイさん喜んでたね!」

ほむら「えぇ、良かったわ」

まどか「でも、どこで火種なんて見つけたの?」

ほむら「ほら、亡者食堂で見つけた物よ…まどかが落ちた時に」

まどか「うぇひー」

ニート「で?この先がセンの古城だが…もう、行くか?」

ほむら「ニートは準備できてるの?」

ニート「あぁ、ここまでの亡者共で多少肩慣らし出来たしな…」

確かに、亡者相手の立ち回りは見事だった…

火継ぎの祭祀場に引きこもっていたとは言え、そこはやはり不死者の戦士なんだろう…

ほむら「まどかは?」

まどか「うん。行こっ?」

ニート「じゃ、行くか…」コキッ…コキッ…



※センの古城※

まどか「…」ウェヒー…ウェヒー…

ニート「…」ゼェ…ゼェ…

ほむら「…」ハァ…ハァ…

ほむら「何なのよ…ここは…」

まどか「罠だらけだね…」

ニート「蛇だらけの間違いだろ…」フゥ

道幅が狭い上、振り子刃が至るところに仕掛けられている…

矢も変なところから飛んでくるし…

何故か蛇も罠の犠牲になってたけど。

ほむら「何目的で誰がこんなの作ったのよ…」

ニート「蛇野郎じゃ無いのだけは確かだな…」

まどか「…」チラ

まどか「道の先に蛇さんがいるけど…」

ほむら「…」

その間には、振り子刃と細い道…

ほむら「仕方ないわね…」カチッ

スタスタ…ケリッ…カチッ

アーッ…

ニート「…」

ほむら「二人ともこっちよ」

まどか「はーい!」

ニート「お前の魔法反則だろ…」

ほむら「床が変に浮いている所は気を付けてね、まどか。罠の可能性が高いから」

まどか「へっ?」ガコン

ほむら「あ」

ヒュン

ニート「あぶねっ」キン…カキン…カキン

カチカチカチ…ガチャン

また壁から矢が飛んできた…

ニート「盾が見る見るボロボロになってくな…」

まどか「ご、ごめんなさい」

ほむら「形ある物いつかは壊れるから、気にしないで?…ほら、あの先外じゃないかしら!」スタスタ

ニート「…」



ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ…

ほむら「…」ビュン

ほむら「今、鼻先を巨大な石球が掠めたように感じたわ…夢?」

まどか「たぶん、現実だよ…」

ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ…

…ギャー

目の前で蛇が巻き込まれた…

ほむら「ちょっと…これどうするの?」

ニート「間をぬって、上に…」

ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ…

…ギェー

ニート「下に行ってみるか」

ほむら「ま、安全な方から確認よね…」

ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ…

まどか「今だよ!」スタター

ほむら「ちょっ!まどか!」タッタッ

ニート「ったく、他のトラップがあったらどうすんだよ…」タッタッ

ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ…

まどか「うぇひひ、間に合ったよ!」

ほむら「蛇の死体だらけだわ…」

ニート「こいつらここに住んでんだよな?」

しかし…

ほむら「…」キョロキョロ

先に進む道は無さそうだ…

まどか「上に行くしか無さそうだね…」

ほむら「…」

ニート「どうした?」

ほむら「…玉葱が寝てる」

まどか「タマネギ?」

ニート「?」

行き止まりの所、崖の横…

玉葱型の鎧が寝息を立てている。

まどか「寝てるね…」

?「むぅ…むぅ…」zzz

ニート「この鎧…確かどっかの…」

ニート「…」

ニート「あぁ、カタリナだ…」

まどか「風邪引かないかな?あの…起きてください」ユサユサ

ほむら「そう言う問題では無いわ…」

そもそも不死人は風邪引くのかしら?

まどか「…」ユサユサ

まどか「起きない」ユサユサ

まどかにゆさゆさで起こしてもらっておいて…

ほむら「この玉葱が!」ガツン

?「おお?…むぅ!?」

ほむら「起きたわ」

ニート「お前、ひでぇな」

?「な、何だ貴公等!?儂の精神統一を妨げるとは!」

ほむら「寝てただけじゃない…」

?「失敬な!あのゴロゴロをどうにかせねばと策を練っておったのだ!」

ニート「んで、何も出なかったと」

?「むぅ」

?「この上にゴロゴロ射出装置が有るようなのだが、儂の体格ではな…」

ほむら「どれくらいの距離かわかるかしら?」

?「ほれ、彼処だ」

上を指差す。

確かに岩の射出口が見える。

ほむら「分かったわ」

ジークマイヤー(以下、マイヤー)「おお!貴公が行ってくれるのか!?…いや、しかし幼き者を単身向かわせたとあっては、このジークマイヤー騎士の名折れ…」ブツブツ

ほむら「でも間に合わないのでしょう?」

マイヤー「むぅ…」

ほむら「安心して、スピードには自信あるから…」

まどか「気を付けてね?」

マイヤー「しかしなぁ…危険な目に…」ブツブツ

ニート「まだ余裕はあんのか?」

ほむら「えぇ、じゃあ行ってくるわ」カチッ



カンカンカン…ゴトン

ほむら「ふう」

ほむら「外に向けとけば何も無さそうだし大丈夫よね?」

ゴロゴロ…グシャ

ギェー

ほむら「蛇があんな所にも…」

結局どこに向けても、蛇は巻き込まれる様だ…

ほむら「恨まないでね」ナムナム

高台に出ると、下の方にまどか達が見えた。

ほむら「まどかぁー!」ブンブン

ホムラチャン!

まどかが手を振ってる…

ほむら「可愛い…」

両手で○のジェスチャーを送る…

ぱたぱたと走ってくる二人と玉葱…

玉葱…遅っ!

あ、まどか転けた…

ほむら「だ、大丈夫かしら!?」ハラハラ

起き上がって、手を降ってる…

大丈夫なようだ…良かった…

ほむら「時間停止も使いきったし…慎重に行きたいわ」



マイヤー「ガハハハ!このジークマイヤー恐れ入った!貴公には助けられたな!」

ほむら「気にしないで」ファサッ

マイヤー「対した事も出来んが、こいつは礼だ」

ほむら「これ何かしら?」

マイヤー「奇跡の物語の一編を記した物だ。儂はこの奇跡を放つフォースと呼んでおる!」

ほむら「奇跡?」

まどか「神職の人が使う魔術みたいなモノだよ」ヒソヒソ

ほむら「あぁ、白魔法ね…」

マイヤー「では、儂はこれで失礼する。また会うこともあるだろうな!ガハハハ!」

一人何処かに消えていった…

ほむら「マイペースに忙しない人だったわ…」

まどか「ジークマイヤーさん…だったっけ?」

ニート「確かな…まともに名乗っちゃいなかったが…」

ほむら「で?これからどう進むの?」

まどか「?」

ニート「…」キョロキョロ

ニート「ジークマイヤーが行った道を除けば、二方向だな…」

まどか「あれ?あの場所に道なんてあったけ?」

ほむら「あぁ…あれね…その、装置を弄った時にちょっと…壁を、ね」

ニート「おいおい…崩れたらどうすんだよ…」

ほむら「…」プイ

まどか「でも道が続いてるみたいだよ?」

ニート「案外、隠し部屋だったりしてな…」



ほむら「何も無いわね…」

あるのは無数の牢屋ばかり…

?「おぅい、お主ら…」

ニート「何だ?このじいさん…」

ローガン「儂はローガン。すまんが、解放してもらえんか?」

牢屋の中に不死人が囚われている…

ほむら「鍵がかかってるわね」ガチャガチャ

まどか「よーし!」ジャラッ

まどかが鍵束を取り出す。

ニート「多っ」

まどか「全部試すよ!」



まどか「全部駄目だったよ…」シュン

ほむら「…」ナデナデ

まどか「…」///

ほむら「えっと、ローガンさんで良いのよね?鍵を探してまた来るわ…」

ローガン「待っとるよ」ホッホッ

ニート「危機感のねぇじいさんだな…」

ほむら「とりあえずもう一方の道に行きましょう…」スタスタ

まどか「そうだね…近くに鍵の気配は無いし…」

ほむら「あら残念ね」

ニート「意味が分からん…」



ニート「まず、言っておけよ…」ボロ

ほむら「ごめんなさい、時間停止は使いきったわ…」

ニート「あぁ、だからもう少し前に言ってくれたらな…」

ニート「俺が蛇にタコ殴りにされる事もな…」

ニート「無かったと思うんだよ…」

ほむら「それは無いわね」

ほむら「どうせ急時にしか、使うつもりは無いから」ファサッ

ニート「…ほむらこのやろう」

まどか「あの…二人共…」

ほむら「何かしら?」

ニート「なんだ?」

まどか「あれ、何かな…」

壁際で外の様子を伺う。

ほむら「…」チラ

ニート「巨人だな」

ほむら「こっち見てるわね…」

少し先の尖塔の上に巨人がいた…

まどか「あの担いでる岩なんだけどね…」

ビュン

まどか「わわ、避けて!避けて!」

ほむら「?…この位置なら当たらな…」

ドゴーーーーーーーン!!

ニート「げほっ…んだ?これ?」

ほむら「爆発した…」

まどか「そう!爆発するんだよ!」

ニート「何で、ちょっと興奮してんだよ…」

ほむら「これ不味いわよ?時間停止も使えないのに…」

ニート「バラで動いて撹乱するが一番だな…」

ニート「問題は誰が始めに…って何だよ、その突き上げた拳は…」

ほむら「じゃんけんよ!」



ニート「…負けた」

まどか「…勝っちゃった」

ほむら「じゃあ、まずまどかが弓であいつの注意を引くから、ニートは全力で走りなさい…奴の意識がニートに向いたら私、私に向いたらまどか…」

まどか「おー!」

ほむら「とりあえずあの尖塔を目指すわ。何度も言うけど時間停止は使えないから、危険ならすぐ反れてね?…」

ニート「わかってるさ…」

まどか「じゃあ、始めるよ!」

キリキリ…ヒュン

ニート「よし…じゃあな」タッ

ドゴーーーーン!!

ほむら「じゃあ、まどかも気を付けて!」タッ

爆発が道の先で起こる。

ニートは脇道に逃れた様だ…

ほむら「あの、石橋から向かえば注意をひけるわね…」

巨人は私に標的を替えた…

しかし…

ほむら「私の方が速い!」ダッ

ドガーーーーン

背後で爆発音。

ほむら「悠々間に合ったわね…」チラ

ほむら「!」

煙が散ると、反対側の塔にまどかの姿があった。

どうやら、私と同じルートを進んでたらしい…

ほむら「ふぅ…無事で何よりだわ…」

道の先には尖塔内部…

ほむら「ちゃっちゃと倒して、二人を迎えに行きましょう…」



モクモク…

ほむら「…」ガラッ…パラパラ…

ほむら「けほっ…ぶふっ…」ボフボフ

ほむら「…死ぬかと思った…」ケホッ

上に登ると、岩がたくさんあった…

すぐ終わらせようと巨人が抱えてた岩の一つを射ってみた…

…全部爆発した。

ほむら「我ながら浅はかだったわ…」

ほむら「物見台ごと吹っ飛ぶなんてね…」

随分見晴らしが良くなったなぁ…

ほむら「さて、まずはまどかを回収しましょう」スタスタ



ほむら「こっち側だったはずなんだけど…」

鎧商人「なんだ…また変な格好の奴が来たな…」

ほむら「こんな所にも人が居るのね…」

鎧商人「ここなら死ぬ事も無いしな…」

ほむら「何か似たようなセリフを誰かから聞いたわ…あ、それよりこっちに桃色の髪の可愛い女の子が来なかったかしら?」

鎧商人「?…あのガキか?…それなら鍵の匂いがどうとかっつって下に降りてったぞ?」

ほむら「あー、そう…ありがとう」スタスタ

鎧商人「足掻くねぇ…どいつもこいつも」ハァ

ほむら「随分、深いわね…」スタスタ

まどか「あ!ほむらちゃん!」

丁度まどかが登って来ていた。

ほむら「無事かしら?鍵はあった?」

まどか「てぃひひひひ」

自慢げに鍵を掲げてる…

まどか「これでローガンさんを助けられるよ!」

あぁ…そんな人居たわね…

ほむら「じゃあ、戻りましょ?…ニートと合流しないと…」



ニート「…」ハハ

ニート「どうだい、俺もやるもんだろ?」

鎧を纏った大型の亡者が倒れている…

どこかで見たような…?

まどか「バーニス騎士…」

ほむら「知ってるの?」

まどか「うん…戒律が厳しくて有名な騎士団だったから…」

ニート「ま、大方ここの守りを任されたまま亡者になったんだろうな…糞真面目な連中らしい最後だな…」

まどか「うん、そうだね…」ギュッ

手を組み、まどかが祈る…

まどか「お疲れ様」

見ず知らずの者だ、私はまどかの様な顔は出来ない。

まどかの祈る姿に慣れてしまった自分が嫌になる…

ほむら「ニート、この先は?」

ニート「ん?行き止まりだが?」

ほむら「じゃあ、尖塔に戻りましょう…幾つか道を見つけたから…」



まどか「…」ジー

まどか「動くに一票」

ニート「動くに一票」

ほむら「満場一致ね…」

道の先に巨大な鉛の像が立っている…

動く気満々の形だ…

この世界のルール…動きそうなモノは動く。

間違いなく動く。

…そして襲ってくる。

ほむら「先にもう一方の道に行きましょう」スタスタ

ニート「だな」

まどか「できれば行きたくないよね…」ティヒヒ

ほむら「さて、こっちは…あら?行き止まりじゃない…」

まどか「じゃあ、やっぱり…」

ニート「あっちに行かないとな…」

ほむら「嫌になるわね…あ」

床に隠すように書かれたサインを見つけた。

私が見たどのタイプでも無い…

ほむら「…」ペタ

シュウウ…

まどか「わ、またファントム?誰かな?」

ほむら「さぁ?」

シュウウ…

?「…」

全身を鎧で固めた騎士が現れた。

ナカザワ「我、ナカザワ」

ほむら「中沢くん?」

ナカザワ「我、剛力を以て汝を助く」

ほむら「全然顔が見えないけども、声は中沢君ね…」

何かしら、この変な喋り…

まどか「てぃひひ、またほむらちゃんの知り合いだ!」

ニート「お前、重くねぇの?」

ナカザワ「否!」

ほむら「とりあえず手伝ってくれるのよね?」

ナカザワ「ナカザワ此処に有り!」

まどか「大丈夫かな?」

ほむら「さぁ?」



ほむら「さて、気合い入れないとね…」

まどか「ナカザワさん、こっち!こっちだよ!」

ガッチャガッチャ…

ナカザワ「はぁ…貴公等…はぁはぁ…電雷の如し…はぁ…はぁ」ガッチャ

ニート「いや、遅すぎるだろ…」

ほむら「あの短距離で息切れとか…ナカザワ君、見学してる?」

ナカザワ「否!」ガチャチャ

ナカザワ「む!?貴奴が討ち取るべき兵(つわもの)か!」

まどか「そうだけd…

ナカザワ「いざ行かん!我に続け!」ガッチャ

ほむら「ちょっと…」

一人で走って行ってしまった…

アイアンゴーレム「…」ゴゴゴ…

ニート「やっぱり動いたな…」

ほむら「わかってた事でしょ?…ほら行くわよ」タッ

ナカザワ「我、疲労」ハァ…ハァ…

アイアンゴーレム「…」ギギギ

ブンッ

巨像は力任せに斧を降り下ろす。

ナカザワ「我、うわっ…我!」ガキン

ほむら「凄い…耐えたわよ…」

ニート「崖っぷちだけどな…」

アイアンゴーレム「…」ギギギ

ナカザワ「我、間合いを得たり」

ほむら「まあ、あの距離なら…」パスパス

ガイン…ガイン…

ボウガンが効いてる様子は無い…

ブンッ

巨像がまたも斧を降り下ろす。

距離を取ったナカザワ君には当たらない…

筈だった。

ニート「衝撃波かよ!?」

ナカザワ「我…」ガキン…ズルッ

ナカザワ「我、窮鼠…ちょっ…まっ…これ洒落にナラn…

アーーーーー…

ほむら「…」

ほむら「…落ちた」

ニート「おらっ」ザクッ

アイアンゴーレム「?」

ほむら「ナイスよ」ザシュッ

アイアンゴーレム「?」

ニート「ただ…あんま効いてねぇな…」

ほむら「確かにね…」

撹乱しつつ剣撃を加えるが、致命打は望めそうに無い…

ヒュッ…パァン

アイアンゴーレム「!?」グラ

ほむら「よろめいた?」

巨像の頭を閃光が走る。

まどか「やっと当たった…よーし!バンバン射つよ!」シュルル

ほむら「なるほど、グレッグスが使っていた魔術ね…」

ほむら「ニート、私達は撹乱に徹するわよ」

ニート「お、おぅ」

まどかから光の矢が次々と放たれる…

出会った時のまどかを思い出した。



ニート「どうだぃ…俺だってやりゃあできんだよ…」ゼェゼェ

ほむら「…最後はニートの一撃だったわね」

まどか「てぃひひ、やったね」

ほむら「素晴らしい働きだったわ、まどか」

ニート「そうだな、ありゃあ凄げぇ」

まどか「うぇひひ、二人が注意を引いてくれたからだよ!」

ほむら「ふぅ、これで何にせよ先に進めるわ…ね…?」

道は無い…

まどか「このソウル…さっきの巨人さんのかな?」

ニート「だろうな」

あるのは壁と奈落だけだ…

ニート「このソウル貰っていいのか!?」

まどか「うん、差し上げます。あとこの輪っか何でしょうね?」ツンツン

ほむら「倒し損?」

バッサバッサ…

ニート「お、おい!」

まどか「はぇ?」ガシッ

ほむら「あんな巨像が配備されててハズレなんて…ねぇまどか?」クルッ

ほむら「先に進め無いけど…あれ?ニートだけ?まどかは?」

ニート「…」クイ

空を指差す…

謎の生物と連れ去られるまどか。

バッサ…ウェヒー…バッサバッサ…

ほむら「…」

ほむら「ま…まどかぁーーーー!?」

今度は空へ…

遥か遥か高みへ…

寝ます

読んでくれた方、ありがとうございます

次は土曜の夜の予定です、おやすみなさい



まどかがどっか行った。

ほむら「ちょっと!?何があったのよ!?」

ニート「落ち着けって…この輪っか弄ってたら、あの変な連中が飛んできたんだよ」ポンポン

ほむら「何かスイッチが…?」ペシペシ

…ペシペシ…ガンガンガスガス…ガツンガツン

ニート「あんま、乱暴に扱ったら…」

バッサバッサ…

ニート「おいおい…また来たぞ…」

ほむら「まどk…まどか居ないじゃない!どこに捨ててきたの!?」

ガシッ

ニート「俺かよっ?」ブラン

バッサバッサ…

ほむら「逃がさないわ!」ガシッ

ニート「おまっ!?いてててて…千切れる!足千切れる!」グラグラ

ほむら「ちょっ!暴れないで!」

バッサバッサ…ホムラチャーン…

ほむら「!?…まどかの声が背中から!…くっ、ニート反転しなさい」

ニート「出来るか」

バッサバッサ…



※アノール・ロンド※

ニート「なるほどな…あのリングが移動スイッチって訳だ…」キョロキョロ

ほむら「まどかぁー!」ギュ

まどか「わ、わわ…」///

ほむら「貴方達も一言言って運びなさい、攻撃出来る状況だったらどうするのよ…」

バッサバッサ…

ほむら「バサバサバサバサ…その口は飾りなの?」

まどか「…だと思うよ」

ニート「あー、アノール・ロンドまで来ちまったか…」ポリポリ

ほむら「そういえば、センの古城までの約束だったわね…」

まどか「このまま、一緒に来ては頂けませんか?」

ニート「…悪いな」フルフル

ニート「考えはそれぞれだし、古の王の信仰もわかっちゃあいるが…俺には、どうも信用できん…」

まどか「…」

ニート「下手な事言って、怒りを買うかも知れんしな…ここで降りるよ」ハハハ

まどか「そうですか…」

ほむら「怒りっぽいのかしら?」

…怒りを買うかも知れないのは私もなんだけど…

まどか「分かりました、戻っても無理はしないで下さいね…」

ニート「するかよ…俺を誰だと思ってんだ?」ハハハ

ほむら「じゃあ、また…祭祀場で会いましょう?」

ニート「あぁ…」

まどか「あ!そうだ!」

ニート「?」

まどか「ニートさん、これ、お願いします!」

ほむら「鍵?…あぁ思い出したわ…」

ニート「…そういや、じぃさん捕まってたな…わかった。ついでに拾ってくわ…」

まどか「ありがとうございます!」

ニート「ははは…じゃあな」

まどか「無いとは思いますけど…」

ニート「?」

まどか「鍵は無くさないでくださいね?…後で回収しますから」ティヒヒ

ニート「…」

ニート「…おぅ」

ほむら「…」

まどかの目は笑ってない…



篝火が燃えている。

女騎士「ふふ…それにしても、こんな所までよく来たものだな…」

ニートと別れ、先に進むと篝火を見つけた。

ほむら「…って事は、貴女も火防女なの?」

女騎士「そうだ」

ほむら「…?…火防女が居る篝火と、居ない篝火があるかしら?」

他の篝火にも、見えない所に潜んでいたのだろうか?

女騎士「居ない篝火もある…火防女が見ている火は、どれも若いモノばかりだ」

ほむら「若い?」

女騎士「ふふ…まぁ簡単に言ってしまうと、時間が経てば火防女無しでも火は保たれるのさ」

ほむら「…そぅ」

時間の概念が不安定なこの土地では、なにぶん理解し辛い話だ…

まどか「ま、まぁ考えても仕方ないよ…先に進も?」

ほむら「…そうね、ありがとう。元気で…」スタスタ

女騎士「ふふふ、貴公もな…」

まどか「…」ペコリ

女騎士「…」ペコ



ほむら「ふぅ」チャキ

ガーゴイルに襲われた。

一匹だけだったので苦戦はしなかったが…

ほむら「まさか、またこいつが居るなんてね」

まどか「懐かしいね」

ほむら「そんなに昔では無いわよ?」

まどか「てぃひひ、そうだっけ?」

ほむら「しかし…」キョロキョロ

辺りを見回す…

ほむら「この先に道は無いわよ、まどか?」

まどか「うーん、そうだね…」

まどか「…他に進めそうな道も無かったし…」

ほむら「壁や屋根づたいに進むしか無さそうね…」

まどか「この高さで?」

ほむら「この高さで、よ」

まどか「…」

まどか「うぅー」



まどか「わー!わー!手を離したら駄目だよ!?」ギュー

ほむら「大丈夫よ、ほら…ゆっくり進みましょう…」

まどか「うぅー、ほむらちゃんは度胸が座りすぎだよ…」

ほむら「そんな事無いわよ…あら?」

まどか「何ぃ?」

ほむら「行き止まりだわ…戻りましょう、まどか?」

まどか「うぇひー!?」



まどか「やっと…やっと床がある…」

まどか「二度とやりたく無いや…」グスン

ほむら「この建物から、先に行ければいいけど…」パリン

窓を割って侵入する。

随分と中は広い…

ほむら「下までかなりあるわね…」

遥か下に建物のエントランスらしき場所が見える…

まどか「確かに高いね…階段はあるかな?」キョロキョロ

ほむら「…」キョロキョロ

梯子が一つ…それも梁に伸びた物だけだ…

ほむら「まどか?」

まどか「もっと他に方法があるはずだよ!」

ほむら「梁をつたって、進むわよ…」

まどか「ひーっ!?」



梁の上で白装束が襲いかかってきた。

よせば良いのに、私の攻撃をバク転で避けて…

落ちた。

ヒューーー……クチャ

その光景をみた、まどかがピクリとも動かなくなった。

ほむら「今まで平気だったじゃない?最初の鐘とか…」ナデナデ

まどか「掴む場所があったんだよ…片側は壁だったし…」

まどか「何より道だったよね…」

なるほど…

ほむら「病み村でもスタスタ歩いてたし、高いところは平気なのよね?」ナデナデ

まどか「限度はあるよね…」

確かに…

まどか「うぅ…センの古城みたいに、下が近ければ良いのに…」ソロソロ

ほむら「偉いわまどか…ゆっくりで良いからね…」

まどか「ごめんね…ありがとう、ほむらちゃん」ソロソロ

ほむら「構わないわ」ニコ



まどか「やっと…抜けた…」フゥ

ほむら「よく頑張ったわね」ナデナデ

まどか「てぃひひ…?」

まどか「…ほむらちゃん?…あれ何かな?」

まどかが指差す場所を見ると、謎の仕掛けレバーがある…

この建物の構造を思い出す。

ほむら「なるほど、ここが中心の仕掛けなのね…」

まどか「中心?」

ほむら「ほら、不自然に道が切れてる場所が幾つもあったでしょ?…このレバーを回すと…」グググ

ガコン…ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

床が動きだしゆっくりと降下を始める…

ほむら「行き止まりだった場所に道を繋げられるのよ…」

まどか「凄いよ、ほむらちゃん!…あれ?って事は私達、この装置の周りをぐるぐる上ってたって事かな?」

ほむら「…そうね」

まどか「なんか…ちょっと、ね?」

ほむら「まぁ言いたい事は解るわ…」



まどか「凄い…」

装置を使い、開けた道の先…

長い階段の上に巨大な神殿が覗く。

ほむら「ここ、かしら?」

まどか「うん…たぶんだけど…」

ここがまどかの、巡礼の目的の地なのだろうか…

ほむら「とりあえず、門の前の巨人をなんとかしないとね…」

まどか「センの古城の巨人見て来たから、あまり大きく感じないよね…私だけ?」

確かに…



ほむら「…」グッグッ

ほむら「…」グググ…

ほむら「ふぎぎぎ…」グググググ…

ほむら「…」ハァ…ハァ…

ほむら「開かないわ」ファサッ

正門(?)は開く気配が無い。

まどか「うぅ、また回り込むのか…」

ほむら「ここで待ってる?」

まどか「大丈夫だよ!一緒に行こ?…足手
纏いかも知れないけど…」

ほむら「そんな事ないわ、行きましょう?」ニコ

まどか「…」

まどか「てぃひひ」



案の定、屋根と壁づたいを歩く羽目になった。

まどか「弓持った、騎士さんがこっちを見てるけど…」

ビュン

まどか「わわ!」サッ

ガスッ

ほむら「これは不味いわね…」

今のまどかのスピードだと鴨撃ちにされる…

ほむら「よし」

まどか「?」

カチッ

カチッ

ズルッ…アーーーー…

ほむら「何故か騎士達がよろめいて落ちていくわ!まどか、今のうちよ!」

まどか「…」



ついに建物の内部に来た。

左右に幾つもの扉がある。

まどか「中は普通だね…」ガチャ

ほむら「と、扉は慎重に開けましょう?ね?」

ほむら「…」ソー

小部屋を開けると篝火が見えた…

ほむら「篝火だわ…」ガチャ

そして、篝火の脇に…

ソラール「ん?おお!…ほむらか?久しいな!」

ほむら「ソラール!」ホッ

ソラール「元気そうで何よりだな!ウワッハッハ!」

まどか「は…初めまして…」ペコ

ソラール「そうか、貴公とは生身で会うのは初めてだったか…ソラールだ」スッ

まどか「あ…まどか、です」ギュ

ソラール「ウワッハッハ!貴公とはいつか話を、と思っていた。俺の同志に花を手向けてくれた事、礼を言う…ありがとう」

まどか「あ…」

ソラール「…?」

まただ…

また、一瞬だけまどかの顔が歪んだ…

まどか「ソラールさん…あの…」

まどか「あの…しm…」

まどか「…」チラ

私を見る…

ほむら「まどか?」

まどか「…てぃひひ…一緒に行きませんか?」

ソラール「?」

まどか「駄目ですか?」

ソラール「うむ…しかし…」

ほむら「…私からもお願いするわ…貴方が居れば心強いし」

ソラール「そう、か…ウワッハッハ!良いだろう、ならばアノール・ロンドの探索は貴公等に同行するさ!」

まどか「ありがとうございます!」

まどか「…ほむらちゃん、ありがとね」

ほむら「本心を言っただけだわ」



ガキン…バシッ…ザクザクッ

ソラール「ふんっ」ズシャ

銀鎧の騎士が次々に倒れる…

ほむら「相変わらず、出鱈目なパワーね…」

ソラール「ウワッハッハ!ほむらもな!俺の死角の敵を優先する辺り優しいじゃないか!」

ほむら「なっ…気のせいよ!」

まどか「そっか、それでいつもと動きが…」

ほむら「まどかまで変な事、言わないでよ」

ソラール「ウワッハッハ!戦いやすかったのは事実だ!共闘も悪くないな!」

ほむら「…」ホム

まどか「照れてる?」

ほむら「…」///

ソラール「しかし、登り下りがこうも多いと、地形を描きにくいな…」ガチャ

まどか「あ」

ほむら「見たことあるオブジェだわ」

マイヤー「むぅ…むぅ…」zz

まどか「また寝てる」

ソラール「器用な奴だな。知り合いか?」

ほむら「えぇ、ジークマイヤーもこっちに来てたのね…」

まどか「私達が道を繋げたのに、なんで皆先回りしてるんだろ…」

ほむら「…」

屋根壁の攻防があったからだと思うけど…

ソラール「俺は壁づたいに来たからな、道なりよりも早かったんじゃないか?」

まどか「…私達も屋根づたいに来たんです」

ソラール「そ、そうか」

ほむら「こんなに話してるのに、起きる気は無さそうね…朝よ!」ゴチン

まどか「うわ」

マイヤー「んおぉ!?すまんなリン、眠ってs…ん?…んん?夢か?…おや?貴公等何処かで…」

まどか「また会いましたね、ジークマイヤーさん」ティヒヒ

マイヤー「おお!やはり、センの古城の二人か!」

ほむら「ここで何やってるの?」

マイヤー「いやはや、帰るところだったんだがなぁ…」

扉の向こうを指差す。

カチャ…ソー

狭い部屋に数体の騎士が屯している。

ほむら「なるほど…」

マイヤー「それで、まぁ一人で蹴散らす術を模索していたのだが…」

ソラール「そうか、ならば加勢しよう…カタリナの騎士よ」

マイヤー「おお!そう呼ばれたのはいつ以来であろうな…」

ソラール「依然、世話になった事がある。カタリナの鎧に相応しい屈強な騎士だった」

マイヤー「ガハハハ!そうか!ならばこのジークマイヤーも騎士の力を見せる時だな!加勢されよ、名も知らぬ騎士殿!」

ソラール「ウオオォォオ!」ドタドタ

マイヤー「ガハハハ!」バタバタ

ほむら「…」

ドカバキ…ギッコン…バッタン…

ほむら「二人で盛り上がって、勝手に走ってったわ…」

ほむら「男…ってやつかしら?」

まどか「さぁ」



ほむら「で?」

ほむら「なんでジークマイヤーも付いてきてるのよ?」

マイヤー「ガハハハ!聞けば、神殿の奥に向かうとか…貴公等には借りもあるしな!」

ソラール「多いに越した事は無いだろうしな!ウワッハッハ!」

マイヤー「ガハハハ!」

まどか「凄い賑やかだね!」

ほむら「まどかが嬉しそうで何よりだわ…」

マイヤー「ほれ、この先だ」

大広間に出た。

ほむら「また、でかい扉があるわね…ん?」

なんだろう…不思議な感覚に襲われる。

マイヤー「あの先に、どうも不穏な気配を感じてな!ここで踵を反したのだ!」

ほむら「…」キョロキョロ

ソラール「ほむら?大丈夫か?」

ほむら「…」ゴソゴソ

まどか「ほむらちゃん?」

ほむら「!…ごめんなさい、大丈夫よ」

ソラール「ジークマイヤー殿が扉の先に、何か居ると仰っている。気合いを入れてくぞ!」

ほむら「えぇ」

当てになるのかしら…

ゴゥン…ギギギギ…

またも続く広間…

その先に3m程の太った騎士が佇む。

ほむら「でかいハンマーね…彼が番人?」

ソラール「もう一人だ…」

ソラールが視線を上に向ける…

淡く輝く槍をもつ鎧騎士は、ゆっくりと降りてくる。

マイヤー「あの鎧…武器…」

ソラール「竜狩りのオーンスタイン」

オーンスタイン「…」スタ

まどか「…生きてたんだ…」

ほむら「…」キリッ

誰?

この世界では有名っぽいけど…

誰よ!?聞くに聞けない空気だし…

あと、下に居た太った騎士にも少しくらい興味を示してあげれば良いのに…

スモウ「…」←下の騎士

まどか「あの!」

オーンスタイン「…」

まどか「フラムトさんに言われて参りました…グウィネヴィア様にお会いしろと…」

オーンスタイン「…」ブォン

二人の騎士はそれぞれに武器を構える…

マイヤー「語るに及ばずだな…」

ほむら「?」

ソラール「力を示せ、と言うことらしい」

ほむら「あぁ、そういう事…」

まどか「あの…」

ソラール「わかってるさ…だか加減出来る手合いかどうか…」

ほむら「来る!」

緩慢な太った騎士とは対照的にオーンスタインが凄まじい速度で間合いを詰めてくる。

マイヤー「むぅぅ!」ガキィン

ソラール「ジークマイヤー殿!」ブンッ

スカッ

正面からジークマイヤーが迎え撃ち、足止めしている所をソラールが断つ…

しかし、すぐさまオーンスタインは身を翻し、ソラールの剣を受け流した。

ほむら「とった…」ブン

更に、その動きを先読みした私が死角から切りつける…

…が、振り向きもせず私の剣は槍の柄に弾かれる…

更にはまどかが撃ったであろう矢がオーンスタインの手に握られていた。

ほむら「!…なにこいつ…」

ソラール「流石は竜狩り…」

スモウ「…」ズシン…ズシン…

マイヤー「むぅ、きおったか!」

マイヤー「こっちは足止めしておこう!…頼んだぞ!」ダッ

ソラール「感謝する、行くぞ!」バチバチ

ソラールの手に光の束が集約している。

オーンスタイン「…」バチバチ

オーンスタインの槍にも似たような反応が起きている。

ソラール「ウオオォォオォォ!」

オーンスタイン「!」

バチバチバチバチ…カッ

互いの放った光は相殺され、閃光が走る。

ほむら「!」カチッ

その一瞬、オーンスタインが作った僅な隙を私は見逃さない…

ほむら「…このまま首を」

ほむら「…」

ほむら「脇腹ね…」ズブ

カチッ…ザシュ…

オーンスタイン「!?」

突然の傷に怯むオーンスタイン。

シュルル…バンッ

まどかが放った光の矢で体勢を大きく崩す…

目の前にはソラール。

ソラール「そりゃ」ガシッ

オーンスタインの手を取り、ソラールが突き飛ばすが…

ソラール「なんと!?」ガキッ

飛ばされる瞬間にソラールを槍で凪ぎ払う…

互いに反対側に弾かれる。

ほむら「…凄いわね」

ガラッ…

ソラール「ウワッハッハ!」バチバチ

オーンスタイン「…」バチバチ

カッ

ほむら「まどか!」サッ

まどか「うん!」ガシッ

カチッ

まどかと私…

取り囲むように矢を巡らせる。

ほむら「ありったけよ、食らいなさい…」カチッ

オーンスタイン「!?」カチャン

咄嗟に構えを替えた!?

一秒も無い僅かな時間だ…

なのに…

まどか「殆ど弾いた…」

ほむら「流石ね…でも…」

ソラール「ウワッハッハ!…流石だなほむら!」ガシッ

オーンスタインの背後にはソラール。

オーンスタイン「!?」グルン

振り向いた時にはもう遅い。

ソラール「うおぉおおぉぉお!」ブオン

ゴキャ

ほむら「背負い投げ…頭からいったわね…」

マイヤー「む、む!くうっ!?」ガインガイン

ほむら「あ、ジークマイヤー!大丈夫?」パスパス

スモウ「!」ザクザクッ

マイヤー「むぅ…ハンマー直撃は堪える…」ガイン

ソラール「あとは、貴公だけだな!」ガハハ

スモウ「!?」バッ

ほむら「まだよ…」

オーンスタイン「…」グググ

ふらつきながらも距離をとるオーンスタイン。

スモウも下がり合流した。

ソラール「竜狩り、まだ立つか…」

オーンスタイン「…」フラ

ほむら「オーンスタインは限界ね…注視すべきはあのでかいのだ…け…」

オーンスタインの背後、太った騎士がハンマーを振り上げる。

反応する間もなく、降り下ろされるハンマー…潰れる音。

まどか「ひっ」

降り下ろされたそこは、満身創痍のオーンスタインが居た場所だった…

バチバチバチバチ…

ほむら「オーンスタインの力を…吸ってる?」

ソラール「らしいな…体も更に膨れ上がった…」

マイヤー「むぅ…帯電というのは不味いかもな…」

奴の力に彼の技と速度が加わるのは…

ほむら「まずいわね…」

スモウ「…」ガチャ

まどか「なんで…」

ほむら「まどか!来るわよ!」

ガッチャ…ガッチャ…ガッチャ…

ほむら「…」

ほむら「スピードは変わらないのね…」

ソラール「みたいだな…」

ほむら「…」



スモウ「…」バタリ

的がでかくなっただけだった。

マイヤー「ガハハ!まぁ、鈍足なのは致命的だな!」

ほむら「貴方がそれを言うのね…」

ソラール「しかし、4騎士の生き残りがこんな最後とは…なぁ?」

視線の先に、潰れた鎧と祈るまどかの姿…

ほむら「こんなものでしょ…」

ほむら「戦いに身を置いた者の最後なんて…」

ソラール「…」

ソラール「確かにな…」



エレベーターを進むと篝火があった。

まどか「この先…だね…」

ソラール「らしいな…」

まどか「あの…ソラールさん…」

ソラール「なんだ?はやく行くぞ?」

まどか「あ…ありがとうございます」ティヒヒ

ほむら「まどか?」

まどか「何かな?」

ほむら「私はここで待ってて良いかしら?」

ほむら「ニートもああ言ってたし、私も余計な事言っちゃいそうだから…」

マイヤー「ガハハハ!ではほむらよ!ワシの武勇でも聞きながら待とうでは無いか!」

まどか「あ、うん!じゃあソラールさんと行ってくるね」

まどかが安堵の表情を浮かべる…

この世界のまどかの癖の様なものが、少しずつ解ってきた。

私に知られたくない事があるという事も…

ほむら「いつか、話してくれるかしら…」ボソ



マイヤー「行ったな…」

ほむら「武勇伝は聞かないわよ?」

マイヤー「分かっておるわ。で?何をする気だ?」

ほむら「気付いてたの?」

マイヤー「ガハハ!伊達に長生きしとらん!」

ほむら「さっき、反応があったのよ…これに…」

暗い瞳のオーブを見せる。

マイヤー「なるほど、復讐霊のオーブか…まだ反応しているなら近くにいるぞ?使うのか?」

ほむら「えぇ、こういう輩は潰しておくわ」

まどかに被害が及ぶ前に…

マイヤー「…行くと良い」

ほむら「ありがとう、この事は…」

マイヤー「解っている。皆まで言うな」ガハハ

不死人達には何らかの強い覚悟がある…

だから、他人の覚悟も理解してくれるのだろう…

私の隠し事なんて、お見通しなのかも知れない…

ほむら「…」スッ

グニャア…



グニャア…

ほむら「…」パチ

ほむら「これが、ファントム…変な感じね…」

どうやら、前室の広間に出たようだ。

そして入り口の大扉が開いた…

ゴゴゴゴゴゴ…

ほむら「そう…貴方だったのね…」

教会で出会った、金の鎧の男…

たしか、名前はロートレク…

ロートレク「ほう、愚かな野盗の類いかと思えば…貴公であったか」ククク

ほむら「なぜ?火防女を殺したの?」

ロートレク「人間性を溜め込んだ者は狙われるさ…他に何がある…」

ほむら「そうね…それがこの世界では当たり前の事…」

ロートレク「いかにも」ククク

ほむら「だから私も…貴方から人間性を奪う事にするわ…」チャキ

ほむら「根刮ぎ、ね」

ロートレク「貴公は冷静だと買っていたが…残念だ…」クイ

後ろから彼の仲間が現れる。

ロートレク「これほど愚かとはな」

ほむら「愚か者がどちらかは直ぐに解るわ…」

ほむら「私は篝火に触れた直後なのよ?」クス



グニャア…

ほむら「…」パチ

マイヤー「戻ったか、早いな…流石と言うべきか…」

ほむら「…失敗したとは思わないの?」フフ

マイヤー「…思わんよ、このジークマイヤーが認める戦士だ」

マイヤー「ん?」

ほむら「どうしたの?」

マイヤー「オーブを託したのは火防女だったか…」ヒョイ

ほむら「?」

マイヤー「そうか…見えんのだったな…これは火防女の魂と呼ばれる物だ」

ほむら「ソウルとか人間性と同系統の物なのね…」

ほむら「オーブは火防女の死体の傍にあった物よ…祭祀場のね」

マイヤー「では、ワシが返しておこう」

ほむら「良いの?」

マイヤー「貴公が持っておれば、あの娘が勘ぐるぞ?」

ほむら「…あ、ありがとう」///

マイヤー「ガハハ!気にするな!」



タッタッタ

走る音が近くなる…

まどか「ただいま!ほむらちゃん!」

ほむら「あら、何か進展があったみたいね…」

まどかの表情は明るい。

まどか「うん!いったんフラムトさんの所に戻ろう?」

ほむら「フラムト?」

まどか「あ、教えてなかったね…祭祀場に居たでっかい蛇さんの名前だよ!」

ほむら「あぁ、あの…」

やはり、あれは蛇なのか…

ソラール「…」

ソラール「行くぞ」

ほむら「え?ソラールも一緒に来てくれるの?」

ソラール「あぁ、しばらく共に動く事にした…」

ほむら「…あなたの目的は良いの?」

ソラール「ウワッハッハ!心配するな!俺の時間は多分にある!」

ソラール「…それにな」

ソラール「見つかりそうなんだ…貴公等と歩む方が、な…」

ほむら「そう」

ソラールの声は穏やかだ。

それが喜びか悲壮によるモノかはわからなかったけど…

ほむら「じゃあ、改めて…よろしく」ニコ

寝ます。

今夜もありがとうございました。

また明日の夜よろしくお願いします、おやすみなさい。



※火継ぎの祭祀場※

ほむら「え?じゃあ何?ただのメダルなの?」

ソラール「太陽が描かれた、ありがたいメダルだな」ウワッハッハ

ほむら「何か特殊な力は…」

ソラール「無い」

ほむら「…」

ほむら「そう、ありがとう」ゴソゴソ

ほむら「…しかし、賑やか過ぎない?」

周りを見渡す…

篝火周辺。

まどか「うん…だから…こう?」

ローガン「そう…そうじゃ…どっかのバカ弟子より飲み込みが良いの…」ホッホ

グリッグス「…」

まどか「そ、そんな事は…」

グリッグス「良いんですよ…本当の事ですし…」グスン

ローガン「…自覚しとるなら、努力せぇ」

グリッグス「…」

フラムト周辺。

フラムト「?…玉葱が歩いとる…夢?」

マイヤー「うーむ、貴公は臭いなぁ…ガハハハハハハ!」

フラムト「…玉葱が喋っとる…」

マイヤー「むーん…」

フラムト「…」

ラレン「すげぇな、こんな呪術始めて見た…」

マミ「あら、そうなのね?ならば教えてあげるわ!地の底で生まれた呪術の真髄を!」

ほむら「あれ?マミがいる…」

ソラール「知り合いか?」

マミ「あら!待っていたのよアケミさん!」

ほむら「ここに来てたのね…」

マミ「少し前に着いたのだけど、貴女達を探してると話したら、下にいるニートさんが待ってろって言うから」

ほむら「あの…あの時はありがとう」

マミ「何かあったかしら?…まぁ私が覚えて無いのだから気にする事は無いわよ」フフフ

ほむら「…」

ほむら「相変わらずね…」クス

ほむら「そう言えば、ニートに挨拶して無いわね…」

マミ「あ、案内するわ」スタスタ

ほむら「いや、どうせ篝火でしょ?」スタスタ

マミ「まぁまぁ、良いじゃない」

ソラール「ん?貴公は来んのか?」

ラレン「行かねぇな…」



ニート「はぁ、無事だったか…」

ほむら「あら、心配してくれたの?」

ニート「一応な…で、どうだったんだ?」

ほむら「進展はあったみたいよ?詳しくは聞いてみないとだけど」

ソラール「俺には聞かんのだな」

ほむら「必要なら言ってくれるでしょ?」

ソラール「確かにそうだ…」ウワッハッハ

ソラール「信頼されるのは嬉しいが、少しこそばゆいな…」

マミ「…アケミさん?まさかこの人達にも前世の因果が!?」

ニート「何言ってんだこいつ?」

ほむら「そう言えば、ペトルス…昇降機の側に居た僧兵さんはどこ行ったの?」

ニート「ん?あぁ、何ぞ向かえが来たとかで墓地に向かって行ったが…」

ほむら「そう…」

ニート「それよりも、だ」グイ

ニートが顔を寄せてくる。

ニート「篝火が灯ったって事は上手く相手を見つけたみたいだな…」ヒソ

ほむら「えぇ、彼女は無事?」

ニート「多分な、心配なら見てくりゃいい」



ほむら「ソラールは付いて来るのね…」

ソラール「駄目か?」

ほむら「そんな事は無いわ」フフ

火防女アナスタシア(以下アナ)「…」

ほむら「よかった…無事で…」

アナ「ジークマイヤー様からお話は…救って頂きありがとうございます」

アナ「祈りを絶やすわけにはいきませんでしたから…」

アナ「汚れた声を聴かせてしまい、申し訳ありません…ただ礼を…言わねばと…」

アナ「…」ペコリ

ほむら「…え、えぇ…」ペコリ

ソラール「…」

ソラール「そこから出るつもりは無いのか?」

アナ「…」フルフル

ソラール「そうか…邪魔したな…」スタスタ

ほむら「ソラール?…あ、では行きます。お元気で…」

アナ「…」



篝火に、話を終えたまどか達が居た。

まどか「ほむらちゃん!…てぃひひ、凄い人数だね…」

ほむら「そうね…」

まどか「私、ロードランでこんなに人が集まってるの初めてだよ!」

…?

ほむら「そう…なんだ…」

まどか「しかも、全部ほむらちゃんの知り合い…」

ほむら「もう、貴女の知り合いでもあるわ…」

まどか「てぃひひ、うん…そうかな…」

ほむら「そうよ」

まどか「そう、だよね…」

ソラール「話すのか?」

まどか「はい!みなさん聞いてください!」



マミ「4つの王のsoul…それを集めるの?」

ほむら「何やら面倒ね…」

まどか「…かな?」

ソラール「場所は解ってるし、そうでもないさ…」

マイヤー「ガハハハハ!このジークマイヤーの騎士たる力!見せるときが来たようだな!」

ニート「なんでおっさんが居るんだよ…」

ほむら「で?どう集めるかよね…」

マミ「バラで動いて、持ち寄れば良いわ!皆、腕に覚えは在るようだし…」

ニート「ねぇよ」

まどか「無いです…ごめんなさい」

ソラール「…」

ソラール「俺は行きたい場所がある…」

ほむら「?」

訝しげに腕をくみ、ソラールは空を見上げる。

ソラール「イザリスだ…そこに俺の探している物があると聞いてな」

マミ「探し物?」

ソラールが笑う。

ソラール「太陽、俺の傍らで輝き続ける…俺だけの…太陽…」

ソラール「…見つけたいんだ」

ほむら「…」

ローガン「儂は書庫に向かうぞ…恩は十二分に返したしな…」

まどか「ありがとうございました」ペコリ

グリッグス「私は、師にお供します」

ほむら「…貴方達二人は心配ね…」

ローガン「まぁ、それは大丈夫じゃろ?のぅ?」

ニート「?」

ニート「俺?」

ほむら「頼んだわよ…ニート」

ニート「おい、まじかよ!?」

マミ「まぁまぁ私も付き添ってあげるから…」ペシペシ

ニート「…めんどくせぇな」

ほむら「…だったら私とまどかはソラールに着いていく、それでいい?」

まどか「うん!」

マイヤー「ならば、決まりだな!」ガシッ

ソラール「では、行こう!ガハハハ!」ガシッ

ジークマイヤーは私達について来るようだ…

まどか「…」ニコニコ

まどかは楽しそうにその場を見ている…

だったら良いか…

ほむら「じゃあ…マミ、ニート…頼んだわよ?」

ローガン「…手厳しいのぅ」

ほむら「冗談よ…ローガンも宜しくね」

グリッグス「手厳しいですね…」

ほむら「…」

グリッグス「…実に手厳しい」



マミ達は行ってしまった…

ほむら「さて…もう一頑張り…」

ほむら「だと良いけど…」

相変わらず砂時計は動かないままだ…

ラレン「おぅ…お疲れ」

ほむら「貴方はここに残るのね?」

ラレン「あの女から教わった呪術をモノにしたくてな…」

ラレン「どっか行ってる場合じゃねぇんだよな、これが」

ほむら「だったらお願いしていい?」

ラレン「?」

ほむら「もう、火防女が襲われないように少し気にしてあげてくれない?」ヒソヒソ

ラレン「…」

ほむら「何?駄目?」

ラレン「…あんたにゃ借りがあるし、構わねぇよ?…しかし、あんた…優しすぎねぇか?」

ほむら「これでも、前居た所では冷血呼ばわりされてたんだけど…」

ラレン「そりゃお気の毒…ろくな奴に会わなかったな」ハッハッハ

ラレン「もう一人もだ…折れた花を集めて何してんのか見たら、その辺の亡者に手向けてやがった…」

ほむら「そう…」

ラレン「得はねぇよ?」

ほむら「…」フフ

ほむら「貴方だって、私の頼みを断らないじゃない?」

ラレン「口だけかもしれんだろ…」

ほむら「そんな事無いわ…絶対に」

ラレン「…じゃあ…そう思ってな」ハッハッハ

ほむら「頼んだわよ」ニコ

ラレン「…」

ラレン「とっとと行けよ…おっさんが待ってるぞ?」

ソラール「…」

ほむら「!…居たのね」

ソラール「…あぁ」

ほむら「…」

ソラール「なぁ、ほむら?…貴公は何者だ?」

ほむら「どういう意味?」

ソラールの口調は弱く、穏やかだ…

私を心配してくれているのが解る。

でも…

信じて貰えるだろうか…

ほむら「ただ…この盾を直すためにここに来た…ただの…」

人…?

違う…私は…

ソラール「…」

ソラール「…あの娘がそれを直せるのか?」

ほむら「まどかの事よね?」

ソラール「…」コクリ

ほむら「わからないわ…」フルフル

まどかを救えば、私の祈りは再び動き出す…

そう信じてはいるけれど…

ソラール「貴公等はこの世界には、些か不釣り合いな存在だな…」

ほむら「まどかは、私とは違うわ…私の様に弱くない…」

ソラール「俺から見れば変わらんさ…まるで…」

ソラール「…」

ほむら「まるで?」

マイヤー「おーい!待ちくたびれたぞ!」ガッシャガッシャ

ソラール「ウワッハッハ!…おぉ、そうだ!行くぞほむら!」

ほむら「…」

ほむら「えぇ」

…もう少し。

…もう少しで、まどかの望みは叶う。

それだけを信じよう…



※デーモン遺跡※

篝火が燃えている。

ほむら「…」グビグビ

喉が渇く…

篝火に当たり、エスト瓶を満たす。

ソラール「ここを越えればイザリスだな!」

ほむら「…」ジリジリ

至るところでマグマの噴流が起きている。

まどか「ほむらちゃん大丈夫?」

マイヤー「ふぅ…貴公が一番涼しげではあるがな!ガハハ、ハ…」

一同「「暑い…」」

ハモる事で一段と暑さが増した気がする…

ソラール「…」

ソラール「行くか…」

マイヤー「しかし、この暑さは異常だな…以前はもっと、こう…」

マイヤー「…」

ほむら「どうしたの?」

ジークマイヤーの目線の先、溶岩の海に燃え盛る巨人が居る…

ソラール「体から溶岩が流れ出ているな…」

まどか「彼が原因かな?」

ほむら「随分ナンセンスな話だけど…そうでしょうね…」

マイヤー「ウワッハッハ!ならばあの者をどうにかすれば、以前の気候に戻るやも知れぬ!と言う事だな!」

だだ漏れのマグマは収まるだろうが…

噴流は起きているのだから気温はあまり変わらない気がするのだけど…



ほむら「でっかい…」

ソラール「でかいな…」

最下層のドラゴンよりも、さらに大きい…

爛れ続ける者「…」

マイヤー「気付かれては無いな…」

ガラッ

ソラール「!?」

まどか「わ、わわ!」ズルッ

ほむら「まどか!」ガシッ

足場が脆かった様だ…

慌ててまどかの腕を掴む。

まどか「はぁはぁ…ありがと、ほむらちゃん」

ほむら「えぇ…」チラ

爛れ続ける者「…」ジー

ばれた。

マイヤー「ばれたな…」

爛れ続ける者「ォオオォオォォオ!」メキメキメキメキ…

ソラール「来るぞ!一旦下がれ!」

まどか「は、はい!」タタッ

ほむら「あのサイズ…」

銃は愚か、爆弾も効かないだろうし…

爛れ続ける者「!」グググ

ほむら「ちょっ…何かするつもりよ!」タッタッ

ソラール「!?」

爛れ続ける者「ォオオ!?」バンッ

ジャンプした!?

マイヤー「跳んだ!?」

ほむら「まz…

爛れ続ける者「オ?」ズルッ

ヒューーーー…グワガラグワガシャーン

ほむら「…」

ソラール「…」

まどか「…」

マイヤー「…」

マイヤー「落ちたな」

ほむら「落ちたわね…」

ソラール「まぁ、あのサイズで跳べばなぁ…」

足場は崩れる、か…

まどか「マグマに沈んじゃった…」

ほむら「…」

マイヤー「行くか…」

ソラール「…だな」



まどか「わわー!見たことあるシルエットが!」ヒュン

山羊頭「…」ズシンズシン

この場所はデーモン遺跡と言うらしい。

ほむら「ソラール!そっち一匹行ったわよ!」

牛頭「…」ドスンドスン

そして、名の通り大量のデーモンが襲いかかってきた…

ソラール「多いな…ジークマイヤー殿!」

マイヤー「ガハハハ!任された!」ガキンッ

流石に4人いる状態でも油断出来ない…

ほむら「…」キョロキョロ

牛頭「…」ドス…バタリ

ほむら「片付いたかしら?」

ソラール「中々の手合いだったな…」ウワッハッハ

まどか「!…ほむらちゃん!」

ほむら「まだ!?」

まどかに視線を移す。

少し困った様な表情。

ほむら「?」

マイヤー「おや?この感じ…むぅ…」

まどか「違うの…ファントムが…」

ほむら「敵は敵じゃない…どうしたの?」

まどか「う、うん…でもこの感じ…こないだの…」

ソラール「こないだの?」

タッタッタ

まどか「あ、やっぱりほら」

さやか「わっはっはー!リッベーンジィィーー!!」タッタッタ

ほむら「さやか…」

刺々の馬鹿が来た…

さやか「おらー!今度こそ人間性をーっ!?…って多っ!?多いなー!」

ソラール「運が無かったな」チャキッ

さやか「ストーップ!多勢は卑怯だよ?さやかちゃん泣いちゃうぞ!?…1対1だ!1対1を所望する!」

ほむら「じゃあ私がやるわ…知り合いだし…」

まどか「ソラールさん、ほむらちゃんに任せて大丈夫だから…」ティヒヒ

マイヤー「なんじゃ知り合いか…ガハハ」

ソラール「ほむらの知り合いは、変わった連中が多いな!」ウワッハッハ

アッハッハッハ…

さやか「…」

さやか「なんだ…このフワフワした空気は…」ギリギリ

ほむら「はいはい、さっさとやるわよ…」ゴソゴソ

さやか「あっ!駄目ーっ!」

ほむら「?」

さやか「黒いのだろ!黒いのは禁止!」

ほむら「…構わないけど」

ソラール「凄い奴だな…正直と言うか…」

さやか「本当だな?聞いたからな?」

ほむら「えぇ…使わないわよ?だから、さっさとやりましょ?」

さやか「わははー!愚か者めー、そんな状態でさやかちゃんに…

カチッ…カチッ

さやか「…あ?あれ?愚か者は?」キョロキョロ

ほむら「隣よ?あと愚か者じゃ無くて私はほむら…」ニコ

さやか「ぴゃー!?」

ほむら「…」ケリッ

さやか「ああぁァァー…

火口に落ちていく…

ほむら「他愛も無いわね…あれ?さやかの剣が落ちてる…」ヒョイ

ソラール「色々と酷かったな…」

まどか「悪い人じゃ無さそうなんだけど…」

マイヤー「ガハハハ!まぁ良い!行くぞ!」



デーモンを倒しつつ下に下に降りて行く…

ほむら「暑いわ…」ジリジリ

ほむら「…あと」

ソラール「?」

ほむら「最下層ってあったわよね?」

ほむら「…はるか上に」

まどか「そうだね…」

ほむら「何をもって最下層なのか、名付けた奴に小一時間聞きたくなるわね…」

マイヤー「まぁそうイライラするな!」ガハハ

ソラール「ほら、建物に入れそうだぞ」

ほむら「ほっ、熱風が防げるだけでも助かるわ…」



ブォオオオ…

デーモンの炎司祭(以下、炎司祭)「オォァオオ!!」

熱風が吹き荒れる…

ほむら「こんな事だと思ったわ…」ダラダラ

マイヤー「大丈夫だ!こやつを叩けば涼しくなるぞ!」

ほむら「もう騙されないわよ」

ほむら「まぁ、倒すけど…」

ソラール「しかし、燃えてて近付けんぞ?俺の雷も残弾は少ないしな…」

ほむら「よし、まどか!手を!」ギュッ

まどか「へ?」

カチッ

まどか「…」

まどか「!?…あれ?オーンスタインさんの時の?」

ほむら「暑くて敵わないから、ありったけの魔法をあいつに当ててくれない?」

まどか「あっ、うん」シュルル

ほむら「…」パスパスパスパスパスパス…

キュウゥン…シュルル…シュルル…シュルル…シュルル…

パスパスパスパスパスパスパスパスパスパス…

ほむら「…もう良いわよ」

まどか「…これは」

カチッ

炎司祭「!?」

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…

ソラール「!?」

マイヤー「!?」

デーモンはピクリとも動かなくなった。

まどか「ほむらちゃん…その魔法凄すぎるよ…」

ほむら「そう?」

ソラール「何度見ても慣れんな…仕組みも解らんし…」



ソラール「なるほど…ほむらしか使えんのは救いだな…」

マイヤー「触れていれば、魔法の影響を受けないのか…いややや?受けるのか?」ムーン

ほむら「受ける、が正しいわね…あら?」

道が上下に別れている。

ほむら「ほむ…」スタスタ

まどか「ほむらちゃん…上が正解なの?」

ほむら「涼しいからよ…」スタスタ

ソラール「…」

まどか「…」

マイヤー「ガハハハ!儂も涼しいほうが良いな!」スタスタ



ほむら「…」

クラーグ「…」

ほむら「…」ペコリ

クラーグ「…」ペコリ

ほむら「それっぽい台座だから、当たりだと思ったのに…」

まどか「まさか、クラーグさんの住処に出るエレベーターなんて…」

エンジー「またお主らか…そこはイザリスとここを繋ぐ、クラーグ様達の抜け道じゃ」

マイヤー「ならば初めからここを使えば良かったな!ガハハハ!」

ほむら「言っちゃった…」

エンジー「お主らイザリスに向かうのか?」

まどか「はい、そうです」

エンジー「なら、もう一つ抜け道があるから、そこを使ったらえぇ」

エンジー「あ…じゃが塞がれとったかの?」

ほむら「じゃあ駄目じゃない…」

エンジー「とりあえず、行ってみぃ…場所は…」

クラーグ「?」ジー

マイヤー「?」

まどか「玉葱じゃ無いですよ?」

クラーグ「…」

マイヤー「…食うなよ?」



ほむら「言ってたのは、この先よね?」

エンジーに言われた場所に向かうことにした。

まどか「確かに空気は流れてくるね…」

涼しい…

ほむら「あら?誰かしら?」

通路の縁に人が座っている。

ソラール「この先に誰か居るのか?」

マイヤー「暗くてなんも見えん…」

ほむら「あ、いやそこの縁に…」

まどか「…?」ジー

ほむら「え?そんな目を凝らす様な距離じゃ…」

?「ほぅ私が見えるのか?」

ほむら「!?」

頭に直接響くような声…

静かな、優しい声だ…

まどか「ほむらちゃん?」

ほむら「少し待ってて、ね?」スタスタ

ソラール「?」

ほむら「貴女は、どちら様?」

クラーナ「私はクラーナ…」

クラーナ「お前たちを何度か見たよ…」

ほむら「?」

クラーナ「姉を殺さずに居てくれてありがとう…」

ほむら「姉?」

クラーナ「クラーグだ…向こうの娘には妹も世話になっているみたいだが…」フフ

ほむら「クラーグの…」

ほむら「貴女は…人間なのね…」

クラーナ「姿はな…お陰で酷く不安定な存在になってしまった…」

クラーナ「皆を見捨てて逃げた罰…だろうな」

ほむら「…」

クラーナ「お前に見えた事は幸いだな…孤独を感じなくて済む…しかし、何故だろうな…遥か昔にも一人居たが…」

ほむら「さぁ…」

ほむら「…似たような罪があるから、かしらね…」

クラーナ「おもしろい事を言うな…お前は」フフ

クラーナ「クラーグの命の礼もある…この先を開放してやろう…」

ほむら「あら、ありがとう」

まどか「誰か居るの?」ヒョコ

まどかが様子を見に来た。

ほむら「えぇ…クラーグの姉妹のクラーナよ?」

手で座っている場所を示す。

まどか「見えなくてごめんなさい。初めましてクラーナさん」ペコリ

ほむら「信じるのね…見えないのに…」

まどか「ほむらちゃんが嘘言わない顔だったから…」ティヒヒ

クラーナ「…」

クラーナ「ふふふ…お前は、この世界に似つかわしく無いな…」

ほむら「よく言われるわ…」クス

ほむら「まどか、この先に案内してくれるそうよ?ソラールに伝えてもらえる?」

まどか「やった!教えて来るね!」

クラーナ「ふふ…おもしろい連中だ…」



道の先は行き止まりだ…

ほむら「本当にここ?」

クラーナ「あぁ」ピト

ゴゴゴゴ…

まどか「壁が…」

マイヤー「ガハハハ!凄いものだな!」

壁が動き、道が拓けた…

クラーナ「まっすぐ向かえば、イザリスの中心に着く…そこにイザリスの末路がある」

クラーナ「私が終わらせねばならぬ相手だった…」

クラーナ「…すまない」

ほむら「…」

まどか「なんか、たくさん虫がいるね…」

たしかに、30cmくらいの虫がピョンピョンと跳び跳ねている…

クラーナ「あぁ、太陽虫か」

ほむら「太陽虫…と言うらしいわよ?」

ソラール「なんだと!?」ガシッ

ほむら「ソラール!?」

凄い力で肩を掴まれた…

痛い…

ソラール「こいつらが!?こんな…こんな奴らがそうなのか!?」グググ

ほむら「ク、クラーナが言うには…そうらしいわ…」

ソラール「こんな…」ペタン

床にへたり込んでしまった。

ソラール「こんなモノが…太陽…」

ソラール「俺の太陽…太陽よぅ…」

まどか「ソラールさん…太陽虫を探していたんですか?」

ソラール「…」

ソラール「ロードランが最後の希望だった」

ソラール「太陽の名を冠した…光輝く生物がいると…」ザクッ

太陽虫の一匹を仕留める…

それはぼんやりと光り、消えた。

ソラール「こんな道一つ、照らせない脆弱な光とは…な…」

マイヤー「…」

ほむら「ソラール…」

ソラール「…大丈夫だ…だが、少し…一人にしてくれないか?」

ほむら「…」

ほむら「じゃあ、先に行ってるわね…」

クラーナ「この男は私が見ていよう…どうせこの先に私は踏み入れん」

ほむら「そう…助かるわ」

クラーナ「何、ついでだ…知った者に何かあっては寝覚めが悪くなるしな…」

ほむら「ありがとう…クラーナも気を付けて…」ボソ

まどか「待ってますから…ソラールさん…」

ソラール「…」



※混沌の廃都イザリス※

ほむら「…」ヌラ

まどか「…その亡者は…知り合い?」

マイヤー「貴公か言うから、手は出さずにいたが…何なのだ?」

ほむら「たぶん…クラーグ達の姉妹…」

まどか「あ…」

クラーナと同じ装束の亡者に教われた…

もしかすると、クラーナの体だったのかも知れない…

今はそれを確認する術は無いけれど…

ほむら「…彼女達は助かっただけ、他の姉妹よりもマシだと考えたのかしら…」

まどか「でも、それは…」

マイヤー「む!?」チャキッ

まどか「…っ!ファントム!」

まどか「…あれ?またこの感じ?」

ほむら「?」

まどか「ほら!」

振り向くと、さやかがソロソロと近付いてきていた。

スタスタスタ…

さやか「…」キョロキョロ

なにか様子がおかしい…

ほむら「さやか?」

さやか「…ほむら…だっけ?」

ほむら「えぇそうよ」

さやか「私の剣、知らない?」

ほむら「…」ゴソゴソ

ほむら「これ?」ヒョイ

さやか「やっぱり!あの後、崖ん所で必死に探したんだからな!」

さやか「返せ!返せよ!それはさやかちゃんの物だぞ!」ムキー

ほむら「どおぞ」ポイ

さやか「…」

さやか「あり?」

ほむら「何よ?」

さやか「いや、返してくれないと思ってたから…」

ほむら「要らないわよ、そんな小汚い剣…」

さやか「ムキーッ!言い方があるだろ!」

まどか「まぁまぁ」

さやか「あんた誰さ」

まどか「まどかです。よろしくお願いします」ペコリ

さやか「これはこれは、ほむらとは大違いだね」ハッハッハ

ほむら「…」イラッ

まどか「そんな事ないです!その剣を使うつもり無いのに拾った理由を考えてみて下さい!」

さやか「…」

さやか「おや?」

さやか「ままま、まさか…さやかちゃんに返すため?」

まどか「きっとそうです!」ティヒヒ

違う…

断じて違う…

さやか「なんだー…ほむらはツンデレちゃんだったのかー!」

ほむら「違うわよ?消し飛ばすわよ?」

さやか「照れるなってー!さやかちゃんの嫁になるが良いぞ?」ハッハッハ

まどか「…」ムッ

ほむら「…」ゴソゴソ

さやか「本当ありがとね!この剣、思い出の品だったからさー!お礼に情熱的なベーゼを…」

ほむら「…」バンッ

さやか「いやはやツンデレすなぁ…シュウウ…

マイヤー「…」

マイヤー「今度は盾を落としてったぞ…」

ほむら「…」

まどか「拾わないの?」

マイヤー「拾わんのか?」

ほむら「…」ハァ

ほむら「…」イソイソ…ゴソゴソ

まどか「…」ウェヒヒ

マイヤー「さて、と…この先だな…」

ほむら「随分、急な下りね…まるで滑り台だわ…」

まどか「何事も無く、ソウルが回収出来れば良いけど…」

ガシャ…ガシャ…

マイヤー「なぁに…」チラ

マイヤー「この4人なら大抵の事は切り抜けられるわ!ガハハハ!」

ほむら「そうね…頼らせて貰うわ」

まどか「あ…えと…そ、そうだね!」チラ

ソラール「ウワッハッハ!まぁ任せてくれ!」

ほむら「当たり前よ…大部分は貴方に任せるわ」

ソラール「まじか…」

ほむら「遅れて来た罰よ」

まどか「てぃひひ…行こう!」

マイヤー「ガハハハ!」



シューーー…ズザッ

坂を下る…

パキ…パキパキパキ…

目の前に現れたのは巨大な樹木…

ほむら「これが王?」

まどか「そう、だね…」

パキ…パキパキパキ…ズザザザザ…

まどか「根本に安置された遺体がこの樹を動かしてるんだって…」ヒョイ

ソラール「クラーグ達から聞いたのか?」

まどか「うん…」

パキパキ…パキパキパキ…ズザ…

マイヤー「しかし、ヘンテコなキラキラが邪魔をして入れんなぁ…」ガキン

動きが単調だから避けるのは難しく無いけど…

ほむら「どうやって、根本にたどり着くかよね…」

パキ…パキパキ…ズザッ

ソラール「このサイドの根は叩き切れれな…」ザクッ

パキパキ…ズザザザザ…

ほむら「この端の根だけはバリアが無いのね…」スパスパ

ソラール「なんじゃこれ?」バキッ

ぼんやり光る幹がある…

ほむら「怪しさが溢れてるわね…」パキン

幹をへし折ると光が弾けて消えた。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

マイヤー「な、なんと…床が!?」

まどか「床が落ちてく?わわ、わ!」ガシッ

ソラール「ウワッハッハ!しかし、主幹の防壁は無くなったようだな!」ガシッ

マイヤー「ガハハハ!ならば根を這い上がり、遺体に向かうのだな!」ガシッ…ヨジヨジ

ほむら「…なるほどね」ワシッ…バッ

こうなれば、私の身軽さが役に立つ…

ヒュイ…ピョーン…ガシッ…ピョーン…

マイヤー「ガハハハ!やるなぁ、猿のようだ!」ヨジヨジ

ソラール「ふむ、鎧に手を掛けておけ」ヨジヨジ

まどか「ご、ごめんなさい…ソラールさん」ガシッ…ヨジヨジ

足場のしっかりした場所につく…

下の方から、嬉しくもないマイヤーの猿コールが響いてくる。

ほむら「どこよ…遺体は…」バキッ…ベキン

ほむら「あ…」パキ…バキベキ…

ほむら「…これかしら?」

上等な服を着た遺体がある…

腹部には丸々と太った太陽虫…

ほむら「…」

ほむら「酷いものね…」ザクッ

太陽虫もろとも遺体に剣を突き立てる…

あっさりと樹木は静寂に還って行く…

こんなにも脆い遺体が、呪いを吐き、クラーグ達を生んだのかと思うと…

…少し、怖くなった。

寝ます

読んでくれてる方、ありがとうございます

おやすみなさい、また明日



※火継ぎの祭祀場※

マミ「あら、遅かったわね?」

ほむら「貴女達が早いのよ…」

祭祀場に戻ると、書庫に向かったマミ達がくつろいでいた。

マミ「皆無事のようね!さすがアケミさん!」

ほむら「?…ローガンとグレッグスは?」

ニート「あぁ…あいつらか…」

マミ「…」

ほむら「まさか…死んだの?」

ローガン「勝手に殺さんでくれ…」

岩影から二人が出てきた。

ほむら「おどかさないでよ…」

マミ「驚いたのは、私達だわ…」

ニート「まったくだ…あの岩影を覗いてみな…」ハァ

ほむら「?」スタスタ…ヒョイ

ほむら「ぶっ!?」

グリッグス「あ、ご無事でしたか」ペコリ

目の前に広がる、グリッグスと大量の本、本、本…

ほむら「な、何よこれ?」

マミ「帰りにね、ローガンさんが戻りたくないって駄々こねだして…説得も聞いてくれないし…」

ニート「めんどくせぇから、置いて行こうって話してたんだが…」

マミ「祭祀場で落ち着いて本を読みたい派のグリッグスが帰り際に幾つか持ち出したの…」

ほむら「いや、グリッグス…そこは師匠と残りなさいよ…」

グリッグス「いえいえ!私は師を居場所を確認に来ただけで、心中に来た訳ではありませんから」

ローガン「…」

グリッグス「私は、安全な場所で知識を深めたいのです」ウンウン

マミ「まぁ、その本の中にローガンさんのお目当ての物もあってね…」

まどか「揉めたんだね…」ティヒヒ

マミ「言葉だと一言だけど揉めに揉めたのよ」

ニート「ドン引きするほどな…」

マミ「最終的に読みたい蔵書を全て持って帰る方向で話がついたのだけど…」

ソラール「それがこれ、か」

ニート「運んだのは俺達だしな…」

マミ「そうなのよ!そこなのよ!」プンプン

マイヤー「なるほどなぁ…」ガハハ

ニート「笑えねぇよ…」



まどかはまたローガン達と話し込んでいる。

ほむら「とにかく、あと二つよね…」

ソラール「だな…」

ほむら「貴方は平気なの?…その…」

ソラール「探し物の話か?」

ほむら「…えぇ」

ソラール「ウワッハッハ!気にするな!」

ソラール「正直な…ショックではあったが、すぐに喪失感は無くなったんだ…」

ソラール「むしろ、その事に驚いてな…俺の太陽への執着はこの程度の物なのか?とな…」

ほむら「…答えは出たの?」

ソラール「さてな…」ウワッハッハ

タッタッタッ…ガサッ…

ペトルス「…ここでしたか…」

ほむら「ペトルス…さん?」

ほむら「墓地の方に向かったと聞きましたけど…?」

ペトルス「そうです…そうだったのですが…」

ソラール「?」

ペトルス「仲間とはぐれてしまいまして…祭祀場に戻っては居ないかと…」

ほむら「…」チラ

ソラール「…」フルフル

ほむら「見てないわ」

ペトルス「あぁ…何と言うことだ…調子づいて巨人墓地まで踏み込んだばかりに…」

ペトルス「戻ってないとすれば、もはや手遅れでしょう…嘆かわしい事だ…」

ほむら「私達も今から墓地に向かうつもりですが…居なくなったのは何人です?」

ペトルス「!?…今から向かわれるのですか?」

ほむら「えぇ…何か?」

ソラール「…」

ペトルス「はぐれたのは3人、です」

ほむら「探してみます、それとも一緒に行きますか?」

ペトルス「い、いえ…私は…」

目を伏せる…

恐怖?

何があるのだろう…

ほむら「では、私達で探しますので…」ニコ

ペトルス「…お願い…致します」

ソラール「…」



まどか「あと二つ、深淵と墓地だよ」

ニート「あの馬鹿二人は本に齧りついてるぜ?」

ほむら「あれ?ジークマイヤーは?」

マミ「あぁ…言ってなかったわね…書庫に行った時にね?…娘さんに会ったの」

ほむら「娘?」

ほむら「娘!?…娘なんていたの?」

ニート「あぁいたんだとよ…で、フラムトん所で何やら話してる…」

まどか「ジークリンデさんだって!ほむらちゃんも後で挨拶に行こう?」

ほむら「そう、ね…」

じゃあ、ジークマイヤーも待機かしら…

ほむら「とりあえず、墓地に行きたいの…はぐれた人が居るみたいだし」

まどか「そうだね…でもそうなると深淵は後回しかな?」

ニート「いや、俺がいく…」

ほむら「ニートが?」

ニート「俺は小ロンドに向かうまでは、順調に各地を歩いてたんでな…」

ニート「やる気ついでに、色々取り戻すさ…」

マミ「たしかに墓地は足場が狭いから多勢で向かうのもどうかと思うわ…」

ソラール「だったら、俺も深淵に向かおう…アルトリウスの足跡を辿るのも悪くない」

ほむら「じゃあ、墓地は私とまどか…?」

マミ「と、私ね!」ニコニコ

ほむら「ソラールはそれで良い?」

ソラール「構わんぞ?」

ラレン「何なら俺が行こうか?」

ほむら「あら、助けてくれるの?」

ラレン「呪術の調整も終わったしな、後は実践ってな…深淵歩き…付き合うぜ?」

マミ「ふふ…決まりね!」



フラムト「あり得ん…」ムムム

マイヤー「…」

ジークリンデ(以下リンデ)「…」

フラムト「玉葱が分裂した…」

マイヤー「…」ガチャガチャ

リンデ「…」ガチャガチャ

フラムト「たっ!玉葱が!震動しとる!」

ほむら「…」

フラムトの前で鎧を揺らしてる…

まどか「うぇひー」

ほむら「何してるのよ…貴方達…」

マイヤー「おおっ!?」ガチャ

リンデ「!…」///

マイヤー「なんだ貴公か!紹介しよう!娘のリンだ!…どうした?話していたほむらだぞ?」

リンデ「…ジークリンデと申します。申し訳ありません、父が随分とご迷惑をかけたようで…」ペコリ

ほむら「これはこれは御丁寧に…」ペコリ

まどか「ジークマイヤーさんには沢山助けて頂きましたよ?」

リンデ「あら?そうでしたか?」

マイヤー「言ったではないか!このジークマイヤーの剣技、リンにも見せたかったものだ!」

リン「もう、父さん?社交辞令を真面目に受け取るものでは無いのよ?…すぐ調子に乗るんだから…」

マイヤー「むぅ…」

ほむら「残りのソウルを見つけてくるわ…二人はこれからどうするの?」

リンデ「私は父に従います」

マイヤー「まだ決めてはおらんなぁ…」ガハハ

ほむら「だったら…

まどか「でしたら、私達が戻るまで…ここに居てもらえませんか?」

ほむら「?」

マイヤー「むーん…むぅ…」

ほむら「ひ、火防女の事もあるし私からもお願いしたいのだけど…」

マイヤー「おぉ、なるほどそうか!…あいわかった!篝火の番でもしておくとしよう!」

ほむら「ありがとう、助かるわ。ジークリンデさんも宜しくね?」

まどか「…」ホッ

ほむら「…」



マミ「こっちよ!」フンフーン

フラムトの場所から墓地に抜ける…

この先から地下に入れるようだ…

ほむら「地下だらけよね?この大陸…」

まどか「そうだね」

マミ「…」フンフフーン

まどか「マミさん機嫌良いね」

ほむら「確かに…」

ドタタタタタ…

マミ「誰!?」

走る音が近付いてくる…

さやか「見ーつーけーたーぞーっ!」ドタタァ

さやかだ…

兜で顔がよく見えないが、涙声なのは何故だろう?

ほむら「久しぶりね」ゴソゴソ

さやか「ストーップ!生身!今生身だから!」

ほむら「知ってるわ、冗談よ?」

まどか「どうしたんですか?」

さやか「…」グスッ

さやか「盾…返して…」

ほむら「はい」ポイッ

さやか「やたー!ありがとーほむらー!」

マミ「アケミさん?もしかして彼女…」

ほむら「…前世組よ」

マミ「あらやだ」キャー

さやか「いやー、いつもの調子で防御したらさー、盾ないじゃん?」

まどか「うぇひー」

さやか「…ようやく行く先々で、亡者にボッコスコにされる日々とはおさらばだー!」

さやか「しっかし、襲い掛かる私をねじ伏せたのに、何も奪わないなんてね!そんなやつぁ初めてですよ!」

ほむら「まぁ、貴女は驚異でも無かったし…」

さやか「そう言うほむらも胸囲は無さそうですなぁ」ハッハッハ

ほむら「…」イラッ

まどか「…」ショボーン

マミ「…」ボイーン

さやか「はっ!?」

マミ「…」ボインゴ

さやか「なんだあの化物は…」ガクガク

ほむら「コントは済んだ?…じゃあもう行くわね…」スタスタ

さやか「マジ!?ちょっ、ちょっと話くらいしようよー!」スタスタ

まどか「…仲良いですね…」

マミ「確かにね…前世では親友かしらね?」

まどか「むー…」

ほむら「えっ!?付いてくるの?」

さやか「オマケみたいに言うなー!私は強いんだぞ!」

心が安らぐ…

…穏やかな日々を思い出す。

今日は失礼します。

明日休みなので、少し早くからボチボチ書く予定です。

読んでくれてる方、ありがとうございます。

早いですがおやすみなさい。



※地下墓地※

ほむら「…」スタスタ

ゴチン

さやか「イタッ!」グラ…ワシッ

マミ「誰よ!変なとこ触らないの!」

まどか「落ち着いて…落ち着いてくださいね?真横崖だよ?」ソロソロ

ほむら「…」

さやか「…」

まどか「…」

マミ「…」

ほむら「暗いのよ!」

マミ「!?」ビクッ

ほむら「若干見えるけど、動きやすい環境では無いわ…」

さやか「確かにね…こりゃランタン使った方が良いかも…」

まどか「あれば使うんだけど…」ウェヒヒ

さやか「?…さやかちゃんが持ってるよ?」

マミ「…」

ほむら「…」



ペッカー

さやか「何も殴らなくても良くない?」ヒリヒリ

ほむら「っと…貴女との掛け合いは常に実力行使だったわ」ズババッ

マミ「前世から変わらないやり取りなのね!素晴らしいわ!」

さやか「前世?…ねぇまどか…あの、マミさん?だっけ?…ちょいちょい挟んでくるけど何なの?」ヒソヒソ

まどか「うぇひー」

さやか「やっぱ、胸でかいと頭に栄養が行かないのかね…」

マミ「貴女に言われたくはありません!」

さやか「やべ聞こえてた!?まどかガード!」

まどか「ひゃっ!?」

キャイキャイ…

ほむら「…」ザシュ…ケリッ

最後のスケルトンを崖に落とす…

ほむら「…手伝いなさいよ」



外と中の出入りを繰り返す為、一向に暗闇に慣れない…

ほむら「下り階段かしら…?」

ほむら「暗くなってるから、足下に気を付けてね?」

マミ「えぇ」

まどか「はーい!」

ほむら「…」

ほむら「暗いわよ?さやかが先頭に…さやかは?」

マミ「あら?」キョロキョロ

まどか「いないね」

ほむら「…」

ランタンが居なくなった…

ほむら「とりあえず、ゆっくり下に向かうわよ…」

マミ「さやかさーん!」

ヤカサー…カサー…サー…サー…

道は真っ暗だ…

まどか「さやかちゃーん!」

ヤカチャー…カチャー…チャー…チャー…

タースケチクリーー…

まどか「居た!い、今声が!」

ほむら「今の聞こえかただと何処に居るか特定できないわ、まどか…とりあえず落ち着いて…

まどか「いったい何処から声g…ズルッ

マミ「まどかさん!?」

ウェヒー…ドサッ

ほむら「だから言ったのにーっ!」

ッタノニー…タノニー…ノニー…ニー…ニー…ニー…

ほむら「…」ゴクリ

ほむら「ま、まどかー?」

ホムラチャ…ズルッ…ウェヒー…

ほむら「…」

マミ「さらに落ちたわね」

マミ「…行くの?」

ほむら「行くわよ…もう慣れたわ…」

底は暗く見えない…

私は慣れた…私は慣れた…私は慣れた…

ほむら「えいっ」ピョン

マミ「死にませんように…」ピョン



カツーン…カツーン…カツーン…

バモス「ほれ」

大柄な骸骨から打ち直した武器を受け取る。

落ちていくまどかを追って飛び込んだ先に鍛冶屋を見つけた…

ただの鍛冶屋なら安心するところだが、もろ骸骨フェイスのバモスに迎えられ…

…大騒ぎした。

まどか「バモスさん、五月蝿くしてすみませんでした…」

ほむら「骸骨感が有りすぎなのよ…」

マミ「もう、アケミさん!」

ほむら「一番騒いだのはマミ、貴女よ?」

マミ「…」///

バモス「何でもえぇから、はよどっか行け」

バモス「気が散るワイ」カツーン…カツーン…

まどか「失礼しました」

ほむら「バモスー、出口は何処かしら?見当たらないけど?」キョロキョロ

マミ「この壁脆そうだけど、ぶち抜いて良いの?」

まどか「ちょっと、二人とも!」

バモス「五月蝿いやっちゃ…」フゥ

バモス「その辺の壁を崩して出ていけ」

まどか「あ、それで良いんだ」

バモス「お前も出ていけ…」

まどか「はい!ありがとうございました」ペコリ

バモス「何もしとらん」カツーン…カツーン…



壁を壊して外に出た…

目の前に大きめの空洞が広がる。

そして…

カンカンカンカンカンカンカンカンカン…

車輪をつけた骸骨が壁に向かって突進を続けていた…

さやか「ややっ!ほーむらー!マミさーん!助けてー!」ブンブン

マミ「高台にさやかさんが…」

ほむら「なるほど、骸骨の狙いはさやかか…」

まどか「早く助けないと!」キリキリ

ほむら「貴女、今までそれで、よく生きてたわね…」パスパス

さやか「へへへ」///

マミ「誉めてないのよ?」



横たわる夥しい骸骨…

ほむら「ふぅ、終わったわ…降りてきなさい?」

さやか「…」

マミ「どうしたの?」

さやか「あ、いやー…ここにサイン見つけまして…」

まどか「召喚サイン?」

さやか「そだよ?」

じゃあ、それに助けて貰いなさいよ…

ほむら「なるほど、さやかを生かしてきたのは運ね…」

マミ「確かに…」

私の知ってるさやかより、格段に運が良さそうだ…

まどか「不死人になった時点で、幸運でない気はするけど…」

前言撤回…

明るく振る舞う事で、状況に潰されないよう生きてきたのかも知れない…

ほむら「なんだかんだ、心も安定してるしね…」

この世界のマミやさやかだったら…

まどか「?」

ペカー…

ほむら「!?…ちょっと何してるのよ?」

さやか「いやー、折角だから呼びだしてみようかと…」

マミ「この先に何か居るのかしら?」

さやか「そこも教えてもらいましょう!」

シュウウ…

ほむら「…!」

この世界が覚悟を強めるなら…

彼女はどちらに転んだのか…

ほむら「…杏子」

キョウコ「ん?…今、あたしの名前呼んだか?」シュウウ…

さやかと共に降りてくる。

キョウコ「どっかで会ったっけ?」

ほむら「いえ、初めまして…名前を当てるのが得意なの」

キョウコ「はっはっは、そりゃ役に立たねぇ特技だね」ニコ

キョウコ「しっかし、4人か…」

マミ「えっと、キョウコさんで良いの?」

まどか「宜しくお願いします」ペコリ

キョウコ「畏まらなくて良いよ…あたしはキョウコだ。宜しく」

さやか「私、さやか!宜しくねキョウコ!」

キョウコ「まぁ、取り合えず目的を果たそうぜ?あたしの時間は限られてるし…」ニコ

ほむら「…」

ほむら「そうね…行きましょ?」



マミ「この先?」

キョウコ「あぁ、厄介な奴が住んでんだが…少し前に不死人を取り逃がしたとかでぶちギレてんだよね…」

さやか「不死人捕まえて何すんのさ?」

キョウコ「実験だってさ…切ったり貼ったり…」ペラペラ

さやか「…聞かなきゃ良かった」

まどか「これだけ居れば大丈夫だよね?」

キョウコ「ま、楽勝っしょ?」ニコ

ほむら「先に行くわね」タッ

マミ「気合い入れなきゃ」タッ



薄暗い部屋の奥にぼこぼこと蠢く塊がある…

塊はゆっくりと体を反転させ、三つの顔を覗かせた。

三人羽織「キョキョキョキョキョキョ!」

さやか「うげ、変なのがいる」

ほむら「とっとと殺るわよ」パスパス

ブスブス…

三人羽織「!?」パァァ…

矢が刺さったとたん、塊が消えた…

ほむら「どこに…」キョロキョロ

マミ「さやかさん!後ろよ!」

さやか「ほぁっ!?」ガキン

まどか「ほむらちゃん!隣に現れたよ!」

ほむら「なっ?」バッ

キョウコ「分身してんなぁ…おらっ」ブン

杏子の振りかぶる一撃が幾つかの塊を霧散させる。

キョウコ「ま、殴ってきゃいずれ本物に当たるってね?」

さやか「なーる!」ズバッ

三人羽織「!?」ブシュ

さやか「本物だー!これ!これ本物ー!」ザックー

ほむら「五月蝿いわね…」パスパス

まどか「てぃひひ」シュルル…バァン…

マミ「なるほど…良くも悪くも引きが強いわ…」

キョウコ「あたし要らねーなぁ、楽に稼げるってな良いねぇ」ハッハッハ



マミ「凄い…注ぎ火と呪いに関してここまで研究してるなんて…」

まどか「そうですね…やっぱり、そう…なんだ…」

まどか「でも…」

まどか「…それだけ犠牲になった人達も…」ギュ

キョウコ「…じゃ、あたしは行くよ?」ニコ

シュウウ…

ほむら「…」

ほむら「…助かったわ、ありがとう」ニコ

キョウコ「あたしも、ここに来たばっかで心細いしな…また、どっかで会おうなぁ」

シュウウ…

さやか「行っちゃった。良い奴だったね」ハハハ

ほむら「…」

マミ「この先が巨人墓場よ?」

ほむら「ペトルスの言ってた場所ね…」

全員無事だと良いけれど…

横目には祈りを捧げるまどか…

さやか「まどかって魔術師だよね?グウィンの信仰って訳じゃ無さそうだし…」

マミ「まどかさんの祈りは白教のモノでも無いのよね…」

ほむら「?…どういう意味?」

マミ「…いえ、彼女は何に祈りを捧げてるのかと、ね?」

ほむら「死者を弔うのに、祈る相手なんて考えてないわよ…まどかの祈りはそういう類いのモノでは無いわ」

マミ「そう…そんな考え方もあるのね」



※巨人墓場※

地下墓地よりも遥かに暗い…

何も見えない…

ほむら「さやかしか見えないわ…」

さやか「うっひょー!殺し文句ですなぁ…」

突っ込む気も起きない。

マミ「み、皆居る?」

まどか「いますよ?」

マミ「本物よね?実は声だけ聞こえてて実物は…なんて事無い?」

ほむら「怖い事言わないでよ」

さやか「光輝く私についてくるのだー!」

さやか「…おや?」

ほむら「何?」

さやか「道が無いけど、どーすんのさ?」

確かに柱の様な物が倒れてるだけで崖になってる…

ほむら「柱は根本があるからここに倒れてるのよね?」

さやか「まじ?」

ほむら「私から行くわ…大丈夫なら合図を送るから…」ズッ…

まどか「ほむらちゃんって全然躊躇わないよね…」

マミ「不死人で無いのを忘れそうになるわ…」

さやか「え!?ほむら呪われてないの!?」

余計な事を…

ズッ…ズッ…ズザザ

ほむら「ふぅ、大丈夫よ。そんなに高さも無いわ」

まどか「良かった…」ズザザ

さやか「ねぇ?あんたは何でここに来たのさ?」ズザァ

ほむら「ロードランにって事?」

さやか「ん」コク

ほむら「何で知りたいのよ?」

さやか「いいじゃーん!教えなよー!」ペシペシ

ほら、うざい。

ほむら「盾の仕掛けを元に戻したいのよ…」

さやか「ふーん」

まどか「…」



明かりが見える…

さやか「敵かな?こそこそ進む?」

ほむら「いや、こっちも明かりがあるんだから互いにバレてるわよ…」

マミ「ランタンを貸してくれない?一人で近づいてみるわ…何かあったら合図するから」

まぁ、見た目的には一番の威圧感だし…

ほむら「頼んだわ」

岩影に隠れる。

明かりが接触した。

アラアラ…コンナトコロデ…ヒトニ アウダナンテ…キグウネェ

マミは不自然に大きな声で喋っている…

ほむら「バレるわよ、馬鹿マミ」

まどか「あれ?い、移動してるよ?」

さやか「何してんだろ?」

ドンッ…キャーー

明かりが一つ消えた。

カチッ…カチッ

スキンヘッドの男が立ってる。

パッチ「へっへっへ、あんたも間抜けだな!精々亡者になって俺の生活の足しになんなよ!?」

ほむら「…」

パッチ「さてと、動かなくなるまでは…」クル

ほむら「こんにちわ」

パッチ「ひ!ひぃぃ!?」ザザッ

よほど驚いたのか、思ったより大きなリアクションをして…

ズルッ…アーッ

落ちた。

テメェ…ナンテコトシヤガ…ア…イエ…ゴブジデシタカ…

ほむら「…」

イダッ…イヤアレハ ジコデ…イダダダダ…

さやか「先行くなよー」スタスタ

まどか「マミさんは?」

ゴメンナサイゴメンナサイ…スンマセ…オンギャア!…

ほむら「元気みたいね…」

タスケッ…ギャー…オレタ!オレタカラ!…イヤホントニ…ギェピー…



マミ「酷い目にあったわ!」プンプン

パッチ「…ずんまぜん」ピクピク

さやか「あったあった、あれ?ランタン二つに増えてる?」

ほむら「それにしても…」チラ

この禿げに落とされたのはマミだけでは無かったようだ…

まどか「すみません、連れのお二人は…」

レア「そうでしたか…いえ、彼らを止めていただいて感謝しております…」

助かったのは一人だけ…

ほむら「…」ジロ

パッチ「な、何だよ…俺だって生きるのに必死なんだよ…わかるだろ?な?」

ほむら「わかるわ…だから私も生きる為に危険な相手は排除すべきだと考えてるの…」ガシッ

崖の淵まで引きずる…

ほむら「理解してくれるわよね?」

パッチ「止めてくれよ…は、反省してる…あんたらには手ぇ出さないって…」

パッチ「悪かった!死にたくねぇんだ!」

ほむら「…」グググ

パッチ「い、嫌だ!もうしねぇよ!もう誰も騙さねぇ!ほ、本当だ!本当なんだ!」

ほむら「…」チラ

まどか「…」フルフル

パッチ「頼む…頼むよぉ…」

まどか「本当に…約束できます?」

パッチ「へ?…あ、あぁ!勿論だ!」

まどか「誰も騙らない、殺さない…」

パッチ「約束するよぉ!いや、話のわかる奴がいて助かった…」

こいつ…

パッチ「俺はパッチだ…この礼は必ずするぜ?」ヘヘヘ

マミ「良いの?」

まどか「レアさんも同じ考えだったから…」

まどか「マミさんもそれで良い?」

マミ「私は構わないけど…」

まどか「良かった」ティヒヒ

ほむら「…」

さやか「いやはや、ここ色々落ちてたよ…あれ?何か変な空気…」

さやか「…」

さやか「空気に敏感なさやかちゃんは、レアさんの所に居るよ」ソソクサ

まどか「ほむらちゃん、ごめんね?」

ほむら「何でまどかが謝るのよ…」

まどか「ほむらちゃんの気持ちを、解ってたのに…あんな事させちゃったから…」

ほむら「考えすぎよ…私は本当に落とすつもりだったわ」

貴女は優しすぎる…

私は悲しみたくないだけなのに…



篝火が燃えている。

パッチに案内された場所で休息をとる。

さやか「どーすんの?多くない?」

マミ「…」

マミ「私が二人を祭祀場に連れていくわ」

ほむら「それが一番、かしらね…」

マミ「アケミさん、後宜しくね?」

ほむら「まどかもさやかも居るし、なんとでもなるでしょ?」

さやか「ハッハッハ!まどか共々信頼されてますなー!」

まどか「てぃひひ」

まどか「これでペトルスさんも安心だね…」

レア「ペトルスは…無事でしたか」

ほむら「えぇ、貴女とはぐれた後、祭祀場に戻ったみたいよ?」

パッチ「はぐれた?」

ほむら「?」

パッチ「ペトルスってな、デブの僧兵だよな?」

ほむら「まぁ、たぶんそれね」

パッチ「は、はぐれた!はぐれたんだってよ!?聞いたかい聖女さん!」

レア「…」

パッチ「流石だぜ、彼奴はもろに聖職者って面だったからなぁ!」

ほむら「黙りなさい、どういう事?」

レア「いえ、気になさらず…私が力量を見誤り、ここまで踏み込んだ事が問題で、彼に責任はありません」

パッチ「そもそもは彼奴が、付き人の一人を落としたのさ…聖女様に大事な話があったみたいでな!」

パッチ「それで、もう一人とも…あの傷がなけりゃあ、あの二人は生きてたかもなぁ?」

レア「っ…」

マミ「追い討ちをかけたのは貴方でしょ?」

パッチ「いや、まぁ…へへへ」

パッチ「で、でもよぉ?俺が来たから、あのデブは逃げたんだぜ?…言ってみりゃ聖女様の救世主って奴だ、な?」

さやか「んで、その後レアさんを突き落とした、と」

パッチ「…蒸し返すなよ」

ほむら「…」

ほむら「マミ、二人を頼んだわね?」

マミ「任せなさい、あの父娘も居るしね」



マミ達と別れ、先へ進む…

さやかからランタンを一つ貰った。

分裂したそうだ…

まどか「絶対、分裂じゃ無いと思うよ?」

さやか「細かいことは気にしないー♪」

ほむら「ま、明かりがあるのは良い事だわ」

さやか「そゆことそゆこと」ウンウン

道幅が狭い…

ほむら「この人数で正解ね…」

巨体の骸骨を倒しつつ進む…

カシャン…

ほむら「?」

ガッシャ…ガッシャ…

さやか「何か来た!」

ガッシャガッシャガッシャガッシャ…

ほむら「この音…確か…」

さやか「黒騎士だー!」

まどか「へっ?」

ほむら「まずい!」カチッ

咄嗟に時間を止める…

やはり、はじめの頃に対峙した騎士だ。

ほむら「…こいつは駄目だわ」ゴソゴソ

ジャコン…ダン!…ダン!…

カチッ

ドスドスッ

黒騎士「!?」グラ

さやか「あり?体勢が…今ださやかちゃんアターック!」パリィ

ドンッ…アー…

バランスを崩した騎士はさやかの盾に弾かれて落ちていった…

さやか「へっへーん、黒騎士も大したことないね!」

まどか「凄いよ!さやかちゃん!」

ほむら「やるじゃない…」

さやか「もっと誉めたまえよ」ナッハッハ



さやか「おー、ここは明るいねぇ」

ほむら「他に比べればだけどね…」

大きな空洞に出た…

壁際の細い道をゆっくりと進む…

まどか「あ!」

ほむら「どうしたの?」

さやか「…侵入者だ」

まどか「あれ?…でもこの感じ…」

ほむら「?」

現れるファントムの影…

ほむら「…杏子」

キョウコ「…なんだお前らか」ニコ

さやか「脅かすなー!」

キョウコ「悪ぃ、悪ぃ」スタスタ

ほむら「…」

キョウコ「いやぁ墓荒しが多くてね…」

まどか「そうなんですか?」

キョウコ「墓守り気取ってるって訳さ」ニコ

キョウコ「あれ?ほむらはもしかして…」

意地の悪い笑顔を作る。

キョウコ「襲われるなんて思っちゃったか、なっ!!」ブンッ

…バコォン!

キョウコ「!?」

私の目の前で杏子が振り上げた武器は、まったく検討違いの壁に降り下ろされた…

キョウコ「…へぇ、凄ぇな」

キョウコ「あんたの顔に当てたはずだけど?…どうやって移動した?」

ほむら「貴女を移動させただけだけどね?」

キョウコ「おっかしいねぇ…比較的信用してもらえたと思ったんだが…」ポリポリ

まどか「キョウコちゃん…」

ほむら「私、貴女に一つ嘘をついたわ」

ほむら「…本当は貴女の事良く知ってるの…」

キョウコ「なるほど、信用されない訳だ」ハッハッハ

さやか「ほむら凄ぇー!」

ほむら「逆よ、信用していたの…貴女の行動を…共に戦った事もあるしね…」

キョウコ「あたしは誰とつるんだ記憶も無いけど?不死人にゃなったばっかだしね…」

ほむら「そう…でもどうする?」

カチッ…カチッ

後ろに回り込む…

ほむら「続ける?…この状況で貴女に勝ち目は無いわよ?」

キョウコ「だね…やめだやめだ…こうも手の内を知られてるとあっちゃね…」

キョウコ「で?…あたしをどうすんだい?」

ほむら「別にどうもしないわ…言ったでしょ?戦友だって…貴女が覚えて無くてもね?」

キョウコ「…だったら」

ほむら「こう言う言い回しが嫌いなのも知ってるわ…それに、利害の一致があれば共闘出来る事も…」

キョウコ「ハッハッハ!面白いじゃ無いか…交渉しようってんだ?」

さやか「あれ?…って事は…」

さやか「時間止めて、キョウコをいそいそ運んだのか…なんかシューr…

ほむら「…」クワッ

さやか「…すいません」

ほむら「…オホン」

ほむら「今はファントムでしょう?…話を聞く気なら祭祀場に来なさい。仲間は多い方が良いわ…よね?」チラ

まどか「へ?…う、うん」

キョウコ「考えとくよ…」シュウウ…

ほむら「行ったわね…」フゥ

まどか「ほむらちゃん、あの…なんで…」

ほむら「まどかは分かりやすいのよ…ジークマイヤーにしろ、ソラールにしろ…対応を見ていれば何か考えてる事くらい解るわ」

まどか「ご、ごめんなさい」

ほむら「話せる時が来たら聞かせてね?」

まどか「…」

まどか「うん」ティヒヒ

さやか「…」

さやか「私の時と対応が違いすぎない?」

ほむら「さやかはさやか、杏子は杏子よ?」

さやか「納得できねぇー!」



うず高く積まれた骨の上でさやかが騒いでる…

さやか「ふははー!勝利のポーズ!私、調子に乗ってんねー!」

ほむら「確かに…冷静に見てたけど、さやかも腕は立つのよね…」

さやか「もっと言って!もっと言って!」フフン

まどか「ほむらちゃん、ソウル回収したよ?」

ほむら「しかし、最初の死者が動き回るって矛盾だわ…」

さやか「なんで?」

ほむら「独り言よ…この世界の死の概念は一生理解出来ないだろうし…」

まどか「これで、ソラールさん達が戻って来てれば…」

ほむら「今度こそ終わり?」

まどか「うん!」

その時…

砂時計はまた動き出すだろうか?

この世界のまどかを救う事が出来たなら…

きっと、きっと…

※info※

■ほむら
武器:ショートソード+5/ライトクロスボウ+10
  :砂時計の盾/頭蓋ランタン
装備:魔法少女一式
魔法:時間停止
■まどか
武器:ロングボウ+5/魔術師の杖
  :レザーシールド+5
装備:薄汚れた一式+5/老魔女の指輪
魔法:ソウルの槍/ソウルの結晶槍
  :追尾するソウルの塊/強い魔法の盾
■さやか
武器:棘の直剣+5/頭蓋ランタン
  :棘の盾+5
装備:棘一式/毒噛みの指輪
魔法:無し

※info※

今日は終わりです

読んでくれた方ありがとうございます

次は土曜の夜、予定です

おやすみなさい

マミ、ミルドレッド
さやか、カーク
杏子、リロイ
中沢、タルカス
仁美、ベアトリス
qb、ジュレマイア…的なね



※火継ぎの祭祀場※

フラムト「おぉぉ!遂に!遂に!グウィンを継ぐ事が出来るのか!」

フラムト「おぉーん!おぉーん!」

まどか「…」

ほむら「…これ泣いてるのよね?」

さやか「…だろうね」

フラムト「おぉーん!おぉーん!」

まどか「…」

ほむら「嬉しそうで、何よりだわ」



ほむら「また増えてる…」

さやか「あぁー!嘘!?ヒトミ!?」

ヒトミ「あらさやかさん?」

魔女魔女しい格好をした仁美がいる。

ソラール「いやはや、彼女に色々助けられてな…」ウワッハッハ

マイヤー「結局最後まで共に、と言うわけだ!」ガハハ

ニート「まぁ、ソラールが大分無理言ったんだがなぁ…」

まどか「そうなんだ…」

ほむら「あっちの赤いお爺さんも?」

真っ赤なローブの老人がなに食わぬ顔で立っている。

ニート「いや、あっちは戦力外。勝手に祭祀場に来ただけだ」

ソラール「おいおい、俺が誘ったんだぞ?」

そう言えばマミが居ない…

ほむら「…」キョロキョロ

さやか「結局、ヒトミも呪われたんだ…」

ヒトミ「申し訳ありません、彼を託されたと言うのに…」

さやか「いいって、いいって、こればっかりはしゃーないよ…」

ほむら「!…居たわ…」スタスタ

パッチ「…?」

ほむら「貴方だけ?」キョロキョロ

パッチ「あの女共なら、俺にここに居ろっつって脅したあと…教会区に向かったぜ?」

ほむら「あの二人に何かしてたら、脊椎を引きずり出すからね…」スタスタ

パッチ「怖っ!?」



ほむら「まどか?」

まどか「あっ、ほむらちゃん!これで全員かな?」

ほむら「マミ達を呼んでくるから、少し待ってて…」

まどか「うん!」

ほむら「…」キョロキョロ

居ないのはマミ、レア…それと…

ソラール「俺達が戻った時には既に居なかったぞ?」

ほむら「?」ビクッ

ほむら「…えっと」

ソラール「ペトルス殿だろう?レア殿達も探していた…」

ほむら「逃げた…のかしら?」

ソラール「さぁな」



カラカラカラカラ…カシャン…

※城下不死教区※

祭壇の前でレアは手を合わせている。

マミ「あら、アケミさん?…無事だったのね!」

レア「貴女方には、なんとお礼を言って良いか…」フカブカ

ほむら「気にしないで…まどかが今いる不死人に話したい事があるらしいから祭祀場に来てもらえる?…良ければレアさんも…」

ほむら「…強制はしないけどね?」

マミ「じゃあ、行きましょ?」

レア「あと少し、祈りを捧げたら向かいます…先に降りていて貰えますか?」

マミ「あら、だったら…

ほむら「そうね、先に降りてましょ」

マミ「え?…えぇ、じゃあ待ってるわね?」

レア「ありがとう…」

スタスタ…カチャン…

カチッ…カチッ

カチャ…カラカラカラカラカラカラカラ…

レア「…」

レア「貴方にも詫びなければなりません」

ペトルス「わざわざ一人になってまで…律儀なものですね…」スッ

柱の影からペトルスが現れる。

レア「巨人墓場へ踏みいった判断も貴方を御しきれなかった事も全て私の…責任です」

ペトルス「責任ね…では、どうやって償って頂けますかな?」

レア「あの二人を巻き込んでしまった事は償いきれぬ罪です…貴方に憎悪を与えてしまった事に関しては…」

レア「…」

レア「お好きな様に…私を殺す事で気がすむのなら…」

ペトルス「ははは…」

ペトルス「憎悪ですか…それだけではありませんが…まぁ良いでしょう」ニヤ

ペトルス「では、死んで貰います…少し楽しませて貰ってからね…」ガシッ

レア「貴方を導けなかった事も私の罪…ですが神に捧げた身…」

レア「汚そうと言うのなら自ら命を絶ちます…」

ペトルス「構いませんよ?…私は聖女などと呼ばれ、図に乗ったお前を辱しめる事さえ出来るなr…

カチッ

ここには、あの騎士が捕まっていた場所があった事を思い出す…

探せばすぐに見つかるものだ…

カチッ

ペトルス「らば…!?…貴女は…むぐっ!?」

ほむら「こんにちは」

ペトルス「っ!?…!?」ググ

ほむら「…貴方は亡者として生きる方が似合いそうね?」

ペトルス「ーーっ!?」ジタバタ

ほむら「大丈夫よ…」

ほむら「辱しめたりはしないわ」



カラカラカラカラカラカラ…カシャン…

※火継ぎの祭祀場※

ほむら「…」スタスタ

まどか「あっ!ほむらちゃんが最後だよ!」

さやか「おっそいぞー!」

キョウコ「おっせえぞー!」

ほむら「…」

ほむら「…」ジー

キョウコ「何だよ?あんたが来いっつったんだろ?…おいしい話があるからって」

そんな事は言ってないけど…

レア「…」チラ

ほむら「…」

レア「…」ペコリ

ま、気付かれるか…

ソラール「さて、と」

まどか「あ、あの…皆さんに聞いて欲しい事があります!」



マイヤー「火を継ぐのか?グウィン王から?」

まどか「そ、そうです」

マミ「全員で?」

ソラール「そうだ」

ニート「んな事出来るのか?」

ソラール「知らん、だが試す」

まどか「私、考えたんです…」

まどか「火を継がなければ、世界から火が消えて闇に覆われる…また寒い世界に戻れば今の世界は生きられない…」

まどか「でも、火を継げば…確かに闇に支配される事は無いけれど…」

まどか「継いだ者の力が強ければ強いほど、火が作り出す影も濃いものになる…」

まどか「耐性の無い者が不死人に…不死人ならまだしも、体に変化が起きれば最下層に追われる人々がまた産まれてしまう…」

マミ「まどかさん…」

まどか「私は…最下層で消える事の無い呪いを一身に受け止めている方に会いました」

まどか「…」

キョウコ「…」

まどか「私は…呪いを絶ちたいんです…」

ラレン「あー、なるほどな…火の力をそれぞれに分散出来ないかと考えた訳だ…」

まどか「はい、それで呪いの力が弱まるなんて保証は無いです。火を継いだ皆さんにどんな変調が起こるかも…」

マミ「火が強大になるような事は無いかしら、グウィン王もそれを考えて仲間を募ったのよね?」

まどか「イザリスの火や地下墓地の実験を考えればそれは無いと思います…本物の火では無いのであれですけど…」

ほむら「…」

やっと少し解った。

まどかの行動の意味…

恐らく、考え始めたのはクラーグの住処を訪れた時だ。

そして、世界の仕組みを知ったのがフラムトに会った時。

それから、まどかはずっと…

ずっと悩んでいた…

ほむら「…」

まどか「それでも…試してほしいんです」

ソラール「結局は、個人の判断に委ねる…やれる奴だけ同行してくれ」



まどか「フラムトさんも渋々だけど認めてくれたよ!…失敗だけは勘弁してくれって」

ほむら「そう…なら安心ね…」

まどか「てぃひひ、ごめんね?今まで黙ってて…」

ほむら「良いのよ、気にしてないわ…」

ほむら「だから、皆をここに留めようとしてたのね」

まどか「…」

まどか「うん」

まどか「無責任かな…」

まどか「火を継げば、炉から動けなくなるかも知れないのに…」

ほむら「だから強制はしなかったんでしょ?」

ほむら「大丈夫よ、上手くいくわ…」



ソラール「さてと…少し時間を作ったが、何人が賛同するか…」

レア「私は同行いたします…」

ほむら「ありがとう」

レア「貴女方に救われた命ですから…」

ローガン「おぉまだ居ったか…良かった良かった」ホッホ

ソラール「ローガン殿も来られるか?」

ローガン「火を継ぐなど、求道者としては見逃せんイベントじゃからな…」

グリッグズ「その…私も…」

まどか「嬉しいです、グリッグズさん」

ほむら「心中はしないとか何とか…」

グリッグズ「ははは…」

マミ「私たちも手伝うわ…戦友だものね?」

さやか「感謝するが良いぞ?」

キョウコ「ま、そういう賭けは嫌いじゃないしね…不死人じゃどうせまともな未来は無いからさ…」

ヒトミ「…私は素晴らしい考えだと思いますわ」

ほむら「ふふ…助かるわ」

マイヤー「ガハハハ!貴公等の意思確かに届いたぞ!なぁに呪いなぞ儂一人でも払い除けてやるわ!」

リンデ「父さん…あ、私も手伝いますね?」

次々に集まる…

言葉はないが、ニートもいつの間にか横に座っている…

ここに居た者、全て…

それぞれの意思で集まってくる…

ほむら「あら?貴方も来るの?」

パッチ「はっ、わりぃかよ?貰えるもんは貰う主義でね」



王のソウルを捧げる…

私には見えないけれど…

器から押し出される火が、その存在を感じさせてくれた。

※最初の火の炉※

ほむら「広い…」

耳が痛くなるほどの静寂…

さやか「広っ!?やっほほー!」

マイヤー「なんと、足元は全て灰か…歩き辛いものだなぁ」ガハハ

…でも無くなった。

皆で進む。

そして…



大きな扉が開かれた。

その先は見えない。

ソラール「この先がグウィン王の間か?」

まどか「そうみたい」

ソラール「本当に、来たい者だけで良いぞ?」

ラレン「はぁ?とっとと行くぞ?」

ニート「戻るのも面倒だしな…」

皆が進んで行く…

ソラール「何が起きるか解らん。火を継げん者は来るなよ?」

マミ「じゃあ、行ってくるわね?アケミさん」

ほむら「え、えぇ…」

さやか「そっか、ほむらは不死人じゃ無いんだっけ…」

キョウコ「え!?…まじ?」

ほむら「そうよ…だから火とやらは継げないわ」

そうだ…

私は不死人ですらない…

結局、私は部外者なんだ…



ニート「…また後でな、ほむら」スタスタ

残りは三人。

ソラール「じゃあ、行ってくる。待っていてくれよ?」

ほむら「信じてるわ」

まどか「必ず、必ず成功しますから…」

ソラール「ウワッハッハ!…ではな、ほむら…」

ほむら「えぇ」

私はここで皆の無事を…



ソラール「…まどかも、な」



まどか「はい…お願いします…」

…え?


え?

…扉が閉まる。

私とまどかを残して…

ほむら「ま、どか?」

まどか「ほむらちゃん…」

火を継がない?

違う…まどかはそんな選択をしない…

だったら…継げない…

まどか「私ね、ほむらちゃんに出会えて良かった」

まどか「私だけだったら、何も出来なかったから…」ティヒヒ

ほむら「…」

まどか「本当に幸運だったの…まるで魔法みたいに…ほむらちゃんが突然現れた…」

まどか「…」

まどか「ねぇ、聞いてくれる?」

不意に思い出したのは…

たくさんの違和感。

まどか「今さらだけど、聞いてほしいんだ…」ティヒヒ

悲しいまどかの笑顔。

この世界のルール。

私は気付いてた…ただ…

…考えないようにしてただけだ。

寝ます

読んでくれた方ありがとうございます、明日終わる予定です

おやすみなさい

……


※昔、祭祀場に篝火さえ無かった頃※

まどか「ここが…ロードラン…」

まどか「パパ…ママ…」グス

まどか「…」

まどか「ダメダメ…強くなるって決めたんだから!」フルフル

まどか「そうだ!」

この近くにサインを書いて…



まどか「出来た!」

まどか「これで私を知ってる人が来たら、反応するはず…」

まどか「誰かが触れてくれます様に…」

それで二人でいれば寂しくないよね…



まどか「バーニス騎士団の方でしたか…ありがとうございます!」

まどか「うぇひひ…私、ドジだから…」

まどか「…え?」

まどか「一緒に…?」

彼は無口で、無愛想で、優しくて…



まどか「ごめんなさい…ここからは一人で…」

まどか「もう、私は巡礼を続けられない…」

まどか「ここの亡者達の救いに…」

まどか「ごめんなさい…ごめんね…」

これ以上、貴方の傷を見たくない…



まどか「痛い…痛いなぁ…」ティヒヒ

まどか「もう、顔も面影無いよね…」

まどか「…?…誰?」

まどか「あ…どうして?」

まどか「…また…守って、くれるの?」

どうしよう…嬉しいや…



まどか「相変わらず喋らないね…」

まどか「ん?」

まどか「わわ!…フード取らないで!私…」

…ワシャワシャ

まどか「…」

まどか「…てぃひひ」

ありがとう…ありがとう…



まどか「…」

ねぇ…

まどか「…」

聞こえてる?

まどか「…」

もう、守らなくて良いよ?

もう、私は…

……


『?…見間違いかしら?』

……


※最初の火の炉※

私は役目を終えていた。

終えていたと思っていた。

まどか「私が不死人だった頃、同行者が欲しくて祭祀場にサインを書いたの…」

私を知っている人が現れたら、いつだって協力して…

まどか「でもね、誰も現れなかった」

何年も、何年も…

まどか「その内、この世界を歩いて…私の力では巡礼を終えることが出来ないと解ったの…」

まどか「だからね?私は不死人を辞めた…」

少しでも呪われた人々の救いになれたら…

ほむら「まどかは、火防女…だったのね…」

まどか「ねぇほむらちゃん、人間性って何だか知ってる?」

ほむら「見えないものは…理解なんて…」

まどか「人間性はね、具現化した精霊…人間性一つ一つが生きてるの…」

まどか「でも、皆深く考えずに使っちゃう」ティヒヒ

まどか「使われた後…姿を失った精霊が死ぬことは無いんだ…」

まどか「精霊は消えずにさ迷うの…そして、近くの火防女に宿る…」

まどか「人間性として形作る為に、火防女の心と体を食い潰す…」

まどか「そして、群がる精霊の尽くが人間性に変わった頃…生きる術を無くした火防女は役目を終えて、その思念は消えることの無い篝火になる」

ほむら「そんな…」

まどか「私はね?ほむらちゃんがロードランを訪れた時、既に役目を終えていたんだ…」

骨と皮だけが祭壇に祀られて…

それで良いと思ってた。

まどか「でもね?…ほむらちゃんがサインに触れた…」

幸運だったのは、最後まで私に同行してくれた彼が居たこと。

意思を失ってなお、私の魂を守り抜いてくれた。

まどか「本来はソウル体で召喚されるはずの体。でも肉体を失って魂だけの私には奇妙な現象が起きたの…」

ほむら「その姿…?」

まどか「うん、生きていた頃の体…」

ほむら「じゃあ…まどかは…」

まどか「てぃひひ、何故か召喚されたのは自分の遺体の前だったけど…」

それから、ほむらちゃんを待って…

まどか「すぐにわかったよ。あ、この人だって…それにほむらちゃん、私の名前呼ぶんだもん」ティヒヒ

びっくりしちゃった…

まさか知らない人だと思わないから。

まどか「マミさんに話した異世界の話しも…冗談混じりだったけど、私も嘘だと思わなかった…」

ほむら「…」

まどか「ねぇ、ほむらちゃん」

まどか「異世界の私は…どんなだったの?」

ほむら「…」ポロ

まどか「…」

まどか「そっか…ごめんね…きっと私と同じで沢山迷惑をかけたんだね…」

ほむら「そんな事…ない…」ポロポロ

それから…

クラーグさんの姉妹にあって…

まどか「クラーグさんの妹は、耐性が無くて姿すら保てない不死人の呪いを肩代わりしていたの…」

それなのに…

クラーグさんは妹の為に人間性を貪欲に求めて…

彼女はそんな姉への罪悪感に押し潰されていた…

悲しい、連鎖だった。

ほむら「…何で…」ポロポロ

まどか「フラムトさんに私では火は継げないと教えられて…当然だよね…」ティヒヒ

ソラールさんに、アノール・ロンドで話して…

火を継いでもらう為に。

ほむらちゃんには、言わないでって…

だって、ほら…

泣いちゃうんだもん…

ほむら「ごめ…なさ…」ポロポロ

てぃひひ、優しいなぁほむらちゃんは…

ほむら「じゃあ…」

ほむら「じゃあ、貴女はどう…なるの…」

まどか「成功したら、役目を果たしたら…私は眠るの…今度こそ、本当に…」

ほむら「そんな…これから、平和に…これから…」

まどか「そうだよ、だからもう良いの…」ティヒヒ

ほむら「…まどかが望んだ世界になるんじゃないの?…まだ皆とだって…ヒック…」

ほむら「…」

ほむら「どうして…なんで…」

まどか「もう、良いんだ…私は本当は何も出来なかった…何も出来ずに死んでいったの」

火防女になっても…

私が救えたのは一握り…

まどか「でもね?…ほむらちゃんがチャンスをくれたの…だからこれは存在しない時間…」

ほむら「…ヒック…グス…」ポロポロ

泣かないで欲しいなぁ…

私まで泣いちゃいそうだよ…

まどか「ねぇほむらちゃん、お願い聞いてくれる?」

ほむら「…え?」グス

まどか「最後はほむらちゃんの笑顔…見ておきたいんだ」ニコ

ほむらちゃん…ソラールさん…そして彼も…きっと偶然じゃ無いんだよね?

こんなにも人の意思に溢れた奇跡なら…

成功しない理由なんて、きっと無いから…

ほむら「…ヒック…」

もうすぐ私は役目を終えるはずだから…

まどか「駄目、かな?」

ほむら「グス…ヒック…」グシグシ

必死に笑顔を作るほむらちゃん…

てぃひひ。

本当に私には勿体ない友達…

ほむら「…」スー…ハァ

ほむら「…この世界は…救われるの?」

まどか「きっとね」

ほむら「貴女は、幸せ…だった?」

まどか「うん、最後まで幸せだった…」

まどか「…ほむらちゃんのお陰だよ?」

ほむら「そぅ…」

ほむら「…」

ほむら「ありがとう…楽しかったわ…」

やった…


いつものほむらちゃんだ…

ほむら「大好きよ、まどか」ニコ



うん…うん…

ほむら「あら、まどかったら…」フフ



私も…大好きだよ…

ほむら「貴女が泣いたら、意味無いじゃない…」

…シュウウ



まどか「てぃひひ…」ポロ




バイバイ…




シュウウゥゥ…

ほむら「…バイバイ、まどか」

カチッ…

サラ…サラサラサラ…

………
……




※火継ぎの祭祀場※

ソラール「行くのか?」

ほむら「えぇ、砂時計も動いたし…」

ソラール「しかし、本当に異界から来たとはな…」

ほむら「そうよ…幾つもの世界を犠牲にしてきた…」

ソラール「それでも、まだ求めるのだろう?」

ほむら「貴方は旅を続けるの?」

ソラール「あぁ、弱まったとは言え、呪いの影響を調べんとな…」

ほむら「あら、探し物はもう良いの?」

ソラール「見つけたさ、俺の…俺だけの太陽…」

ソラール「形は無いがな…確かに今、俺の中にある」

ほむら「ふふ、あの娘も喜ぶわ…」

ソラール「ウワッハッハ!もう俺は迷わん!」

ソラール「ほむら!忘れるな!…困ったときは俺のサインを探すといい!」

ソラール「光輝く太陽のサインだ!」

ほむら「えぇ…」

ほむら「貴方の事、忘れないわ」ニコ

ほむら「…ありがとう、ソラール」

カチッ…

キュルルル…



ソラール「ありがとう、か…」

ソラール「礼を言うべきは俺だがな……お前たち二人に…俺の太陽にな…」

ソラール「いや?…ほむらは月明かりの方が似合いそうだ…ふむ」

ソラール「…まぁ月も讃えればすむことか!ウワッハッハッハ!」

………
……




キーンコーンカーンコーン…

まどか「えっと、暁美さん?…お弁当、一緒に食べない?」

ほむら「…」チラ

さやか「…やっほー」フリフリ

ほむら「お邪魔しても良いのかしら?」

まどか「勿論だよ!」ティヒヒ

仁美「あら、暁美さんはパンですのね?」

さやか「栄養偏るぞー」ヒヒヒ

ほむら「ほむらで良いわ…パンも良いものよ?」ガサガサ…チャリン

ほむら「あ」

コロコロ…ヒョイ

まどか「はい、落としたよ?…ほ、ほむら…ちゃん…」///

ほむら「ありがとう、鹿目さん」

まどか「それは外国のお金?」

ほむら「違うわ。大切な御守りなの」

仁美「初めて見ますわね…」

まどか「てぃひひ、綺麗なコインだね!…あ、あと…その…私もまどかで良いよ?」

ほむら「解ったわ。ありがとう、まどか」ニコ

まどか「うぇひひ」///

さやか「あーヤバイ、何かほむらにまどか取られそうだわ…」

まどか「うぇぇ!?何言ってるのさやかちゃん!」

仁美「ふふふ…あら?…変わった水筒ですのね?」

まどか「わ、本当だ…綺麗な色」

さやか「へぇー…硝子とは違うみたいだね…」



ほむら「えぇ…これはね…」








終わり

終わりです

最後まで読んでくれた、方ありがとうございました

おやすみなさい

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