オモッチャマ「ガンちゃん、いい加減起きるでコロン!!」 (87)






・平成です。
・ある意味でクロスオーバー作品ですのでそういった作風がお嫌いな方は「戻る」ボタンをポチッとな!
・それでは楽しんでいってちょ~だいな。……下さい。






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ガン「Zzzzz……Zzzzz……!」



オモッチャマ「昨日も徹夜していると思ったら案の定でコロン…」

オモッチャマ「今日はアイちゃんとのデートの約束でコロン!そろそろ起きないと遅刻するでコロン!!アイちゃん、カンカンになっちゃうでコロンよ!?」ワーッ



ガン「……グガー……グワー……むにゃむにゃ」



オモッチャマ「…ダメでコロン。ボッチはもう知~らないでコロン」

オモッチャマ「でもまあ、ドロンボー一味との戦いも一段落して平和な毎日が続いているでコロン」

オモッチャマ「出来るなら…」








―――こんな平和が、ず~っと続けばいいでコロンね…。



ガン「ぐー…ぐー…………んが?」



まどろみの中で、少年…"高田ガン"は夢を見た。

それは、何処か見た事も無い家でベッドに腰掛ける"一人の女性"と。
その手に抱かれる、生まれたばかりの小さな赤子。

言葉も解さぬ時期でありながらも、女性は赤子に微笑みながら。



―――幸せにおなりなさい。
―――私の天使。



そう、呟きかけていた。



ガン「……………(むにゃ…誰…だ?)」



自分の記憶には無い、初対面のヒトだった。

美しい、金髪の。



ガン「……………、」



朗らかに笑う女性を見ていて、何故だろうか。
似ても似つかない雰囲気なのに。







どうしてか、自分が幾度となく戦い続けた"あの三人組"を彷彿とさせ―――。



―――。
―――………。
――――――……………。




ガン「…グー…ガー……んが……」


―――ヒュウゥゥゥゥゥ……。


ガン「むぐ、むにゃ……ぐぅ……」


―――ヒュウゥゥゥゥゥゥゥ……。


ガン「ふぐ……う、うぅんん……!」


―――ヒュウゥゥゥゥゥゥゥ……!


ガン「―――だああああああああっ!!何だよ、もう寒い寒すぎ―――!!……あ?」



吹きさらしになっている感覚を覚え、寒さに思わず飛び起きたが…。



ガン「…なんだよ、これ…」



間取りやインテリアから察するに自分の部屋なのは間違いない。
間違いない筈なのだが。
どうにもこうにも。



―――ボロっとしていた。

寝る前のとっちらかっていた部屋とは比べ物にならないくらいにボロく。
窓はひび割れ、埃は溜まり、ベッドは黴臭い。
異臭で思わず顔をしかめてしまう程に。



ガン「ゲホッ!ゲホッ!!ど、どうなってんだ???」

ガン「うっ、寒っ…!!」



窓から吹きすさぶ寒風が、容赦なく体温を奪う。
ほぼボロ切れと化していた毛布に、これを防げるワケもなく。
更に間の悪いことにいつも着ている青ツナギはクリーニングに出しており、今は薄着の黒インナー一着のみだった。



ガン「か、風邪引いちまう…兎に角こっから出ないと…」



靴(これまたボロい)を取り、ほうほうの体で玄関から出ると。
そこには―――…。



ガン「……………………、」



蔦らしきモノに覆われ、見るも無残になった自分の家。



ガン「じ、地震でも…あった、のか?」



いや違う。
コレはそんな壊れ方じゃあない。


まるで、長い間使われなかった"廃墟"のような―――。





ガン「―――っ!そ、そうだ…アイちゃん…!!!」


家に戻り。


―――アイちゃああああああああああああああん!!!!


部屋を開け。


―――オモッチャマあああああああああああああ!!!!


台所をひっくり返し。


―――ヤッターワあああああああああああああン!!!!


格納庫に至るまで。


探した。

探して叫んで、それでもやっぱりボロくて。

誰も、居なかった。

その内。


―――グウゥゥゥゥゥゥ!





ガン「………………、」

ガン「…………………腹、減った」




朝から何も食べていない事も、思い出してしまった。




ガン「た、食べられる物。食べられる物…!」ゴソゴソ

ガン「何が何やら解らねえけど、腹ごなししないと知恵も浮かばねえし…もしかしたら飢え死に…いや!そんなわけあるか!」



ひっくり返した台所を再び漁る、が。



ガン「おおおおおおおお、カンヅメ見っけ!!!!」パカッ!

ガン「―――!!!!ぐううえええええええ!酸っぱ!匂い酸っぱ!!!いつのだよコレ!?食えるか却下!」



保存食がダメなので、必然的に他も酷い有様であり。



ガン「………………だ、ダメかぁ……………」グゥ~



ダメと解ると、益々腹が減るのが人間である。
最早空腹は限界近くまで膨れ上がっており、このままでは…。



ガン「ほ、本当に飢え死にしちまう…!」

ガン「こ、こうなったら…!」



家の中から寒さ防止のボロ切れだけ持って外に出る。



ガン「人を探して…食べ物を分けて貰おう…!」



このままこの廃墟にいても何も進展は無い。
ならばと一縷の望みを賭けて外に向かい、引きずるように歩を進める。

人に会えれば何がどうなってるかも聞く事が出来るかもしれない。





ガン「(アイちゃんやオモッチャマの事だって…)―――痛っ!」



考え事をしていた所為か、道にあった看板らしき残骸にぶつかってしまった。



ガン「~~~~~っ!!!こんな所に看板なんか立てるなよなっ!!」ガツン!!



空腹からのイライラで、つい八つ当たり気味に看板を蹴飛ばす。



ガン「やべ、腹減ってるのに余計な体力使っちまった…」ブツブツ



蹴りで看板が揺らめくが、気にする余裕も無いガンはさっさとそこを後にした。


その数秒後に、支えが折れた看板は崩れ。
落下の衝撃で、看板を覆っていた錆の一部が剥がれ落ち。

そこには…。







―――おいでませ、デッカイドー!
―――地上の楽園、ヤッターキングダム!!








……と、書かれていた。


―――。
―――………。
――――――……………。



道なき道を只管歩き続け、やがて。






ガン「………い」

ガン「……………………い」

ガン「―――家だああああああああああああああっ!!!」







小さな集落へとたどり着いた。
しかし、人が住んでいるにしては少々造りが貧相、というか。

木造平屋どころか木造の掘っ立て小屋とでも言えばしっくり来るだろうか?





ガン「あのー!!すいませーん!!あのおおおおおおおおおおお!!!」ドンドンドン!!!



しかしそんな事を気にする余裕は今のガンには無い。
寒さによる疲労も頂点に達しており、空腹と合わさって目が落ち窪み始めてもいた。
ここが駄目なら本格的に生命の危機だった。

最早なりふり構わず全ての底力を振り絞って叫び、木造のドアをドンドンと叩く。

やがて。



男「―――なんじゃい!人が気持ちよう寝てたとに―――」ガラッ


ガン「メシイィィィイイイイイイイイイイイイイイッ!!」ガバッ!!


男「ぎゃあああああああああああああああああああああっ!!!???」





―――な、なんだテメエ泥棒か!!

―――ドロンボーじゃねえやい!それは兎も角として行き倒れ寸前なんで何か食べ物下さい!!

―――は、はあああああああああん!?

―――メシ、メシ、メシィィィィィィィィィィィ!!!!!!


等と言う滅裂なやり取りが、秋空の下暫く繰り広げられた…。

前半ここまででがんす。夜勤なので続きはその後に…。


それではこれにて。

続きです。遅くなってすみません。




男「―――っ、たく…。いきなり来て"メシ寄越せ"だあ?こちとらもんなに余裕無えってのによ…」ブツブツ…


ガン「(…そりゃまあ、確かに…)」



当座の空腹が凌げると解った途端、心に多少の余裕が出て来た。
改めて男の住処らしき内装をぐるりと見渡せば…。



ガン「(……ボロいな……)」



打ちっぱなしの木材がそこかしこに存在しており、しかも腐っているのか黒々とした染みも出来ている。
おまけに隅には蜘蛛の巣のオマケつき。

これでは同じボロでもコンクリ部分がある分我が家(廃墟)の方がマシでは無いだろうか?



ガン「(それになんつーか…)」



焦っていた為に気がつかなんだが、家主らしき男もまた随分と饐えた服装とでも言うか。
穴空きのシャツに穴空きのジーンズ、トドメにレンズが欠けた眼鏡と…。穴空き三兄弟だ。

住居といい服装といい、どう考えてもロクな生活を送れてなさそうだ。
それどころか、マトモな飯が出てくるかさえ怪しい。





ガン「(いや、いやいやいやいやいや!疑ってどうすんだっつーの失礼だぞ高田ガン、もしかしたら自然特有の、そういった生活を送ってらっしゃる方かもしれねーじゃん?)」

ガン「(ぶつくさ言っててもメシくれるって言ってるしそれはあれだ、山とか森とかで採れた新鮮な―――)」


男「…おら、こんなもんしかねえが…」


ガン「うわあ、すんませんどうも!いっただき……」

ガン「ま―――………す?」

ガン「……………………、」



欠けた皿におてんこ盛りに乗せられた"それ"をまじまじと見やる。

―――薄い。



手に取って、すんすんと匂いを嗅ぐ。

―――枯れた葉っぱの匂いがする。…いや。



葉っぱの匂いというか…なんというか…。

ご年配の方々にはとても馴染み深くそれでいてノルスタジィなんかを感じさせる、この時期(秋口)に山の中で多く自生している観葉植物の一種というか…。












ガン「ってこれ、  紅   葉   じゃん!!!!!!」









空腹にも関わらず思いっきり叫んだ。
何かの間違いかブラックジョークの類か。
それとも刺身のツマ的な何かかと思い木の箸で皿中を漁るが。
出てくるのは独特の子葉を持つ真っ赤な葉脈が見えるだけ。





ガン「(~~~~~~~~~~~~~~っ!!!!!)」



こんなもん食えるか!とぶちまけたろうと思ったが。



男「……シャク……シャク……」


ガン「((って食ってるし!?)」



男はガンと同じ皿に盛られたそれを神妙な顔で齧り続けていた。



ガン「(く、食えるのかコレ…!?)」ゴクリ



そういえば、以前テレビで"紅葉を使った天ぷら"があるとか無いとかっていう話を見たような…。
(※食用専用の紅葉のみです、良い子の皆は決して群生してる紅葉を使ってマネしないで下さいね。)




ガン「(でもコレ、どう見ても生…いや待てよこうやって食べるのがこの地方のマナーとか…)」

ガン「……………、」ジ~

ガン「―――――、」チラッ




男「……シャク……シャク……」モクモク


ガン「(うぅぅぅ…駄目だぁ、表情からじゃ美味いのか不味いのか判断つかねえ…)」



でも文句一つなくパクついてるし、意外と珍味なのかも…。


―――グウゥゥ~!


ガン「(だぁあ!腹減り過ぎてもう限界だ!ええい、ままよ!!!!)」



―――パクッ!シャクッ、シャクシャク…!



ガン「…………………………………、」ムニュムニュ




………。

前言撤回。


葉っぱはやっぱり、葉っぱだった。




ガン「………マジイ」


男「応、こんなもん美味くなくて当たり前だっつーの」モクモク


ガン「ほ、他の食い物―――」


男「―――ギロリ」


ガン「…は、ある訳無いっすよね。はい…」




ガン「……………、」ムニュムニュ
男「………………、」モクモク



―――シャクシャク。
―――パリパリ。




ボロいテーブルで、ボロを纏った男二人が。
ボロい食器で山盛りの紅葉を只管齧り続ける絵面。



ガン「(何のおしおきだよこれは…)」

ガン「(待てよ、それよりも…)」



貧しくても葉っぱでも食事は食事。
"食べる"という行為により大分心が回復してきたガンは、意を決して男に尋ねる。





ガン「なあオッサン。ここって何処なんだ?」


男「………?"何処"って、そりゃいったいどういう意味だ?」



ガン「お、俺…実は森の中で"迷子"になっちまったみたいでさ…」(※そういうことにしておく)

ガン「迷いに迷っちゃったもんで、ここが何処だか全然解らなくて」

ガン「仲間ともはぐれちまって、正直途方に暮れてたっていうか…だからその…」



男「………………………………………、」



ガン「"テレビ"とか"電話"とかあったら、その…貸してもらえると有難えなー!なんて…」



男「…………………おめえ」





―――まさか。
―――"外"から来たのか?





ガン「………………………………は?"そと"??」

男「……………………!!!!」




―――ヒョイッ!

―――ポイッ!

―――バダン!!!!





ガン「…………………え?えええ???」



"外"という単語が何を表していたのかは知らないが、ナニかが男の琴線に触れてしまったらしく。
首根っこを引っ掴まれ、外におっぽりだされてしまった。



ガン「ちょ、ちょっと!オッサン!!何だよ、電話貸してくれって言っただけじゃんか!!」ドンドンドン!!



再び扉を打ち据えるが、今度は石のように固く閉ざされ開く気配が全くない。






男「――――――け…」

ガン「はあ?」






男「うるせえ!!でてけって言ってんだこのスットコドッコイ!!!!」

ガン「はあああああああ!?いやいやいや、意味分かんねーよ!!っていうかまだ紅葉食い切って無いし!!!」ドンドンドン!!


男「"外"から来た野郎って解ってたら仏心なんか出さんかったわ!」

ガン「さっきっから"外、そと"って…そもそも外って何なんだよ!ここ日本じゃあねーの!?」ドンドンドン!!


男「ここは"デッカイドー"だ!そんなことも知らんかったのかこのスカポンタン!!」

ガン「…………………へ?"デッカイドー"??」ピタッ



"ホッカイドー"なら良く耳にしているが、"デッカイドー"なんて聞いた事もない地名だった。



ガン「あ、あのさオッサン。"デッカイドー"って…」

男「うるせえ!!とっとと出てけ!余所モンを匿ってるなんて"奴等"に知られたら俺も終わりになっちまうんだ!!」

ガン「…………"奴等"?」





男「―――ああ!」





詳しい事を聞き出そうとしたガンの耳に飛び込んできたのは…。
彼にとって。



決して聞き捨てならない。



"ある言葉"。















男「 ヤ ッ タ ー マ ン の ク ソ ッ タ レ 共 に だ よ ! ! ! ! ! 」
















ガン「――――――――――――――………へ?」




今、この男は何と言ったのか。
自分の聞き間違いかと思い。



ガン「お、オッサン。今、"ヤッターマン"って……」

男「ああ!言ったがそれがどうした!!」

ガン「ヤッターマン…ヤッターマンを知ってるのか…オッサン!」

男「ああ、よぉく知ってらぁ!!」





―――俺等がこんなオンボロ小屋に住んでるのも!

―――葉っぱ臭い食事しか出来ないのも!

―――余所モンを拒む事になってんのも!










―――みぃんなヤッターマンの所為なんだよ!!!!








ガン「……………………なっ、んだよ……それ……」



余りの事に絶句し、それ以上の追求が出来なかった。




貧相な家。
貧相な服。
貧相な食事。




それらが全て。





―――"自分"(ヤッターマン)達の所為だと。





全く、身に覚えのない事だった。






ガン「俺は…―――俺たちは!そんなことやっちゃいねえぞ、オッサン!!!」ドンドンドン!!

男「はああ!?訳の解らねえ事…」

ガン「解らねえのはそっちだ!!ヤッターマンが…ヤッターマンがそんな事する訳ねえだろうが!!」

男「…余所モンが!聞いた風な口聞くんじゃねえ!!そんなに知りたけりゃ―――」






―――向こうに見える"塔"にでも行くんだな!!
―――そうしたらイヤっって程解るだろうよ…。
―――"ヤッターキングダム"の恐ろしさがな!!!!!!







ガン「……"ヤッター……キングダム"……?」



口の中で反芻しても、これまたとんと聞いた事がない。
ニュアンスからして、ヤッターマンが統治する王国とでも言うか。



男「―――もう俺は何も話さねえ!!出でけ…頼むから出てってくれ!!!!」

ガン「…………………、」



そこで、徐に後ろを振り返れば。



村人1「………………、」
村人2「………………、」
村人3「………………、」



この騒ぎを聞きつけたのか、他の家々からこちらを覗き見る数人の姿。
しかし。



ガン「あ、あの―――」



(ヒッ!)―――バタン!
―――ガタッ!
―――ヒュパッ!



ガンと目が合った瞬間、皆一様に扉を閉ざした。
それ程までに他者との関わり合いを避けたいというのであろうか。
いや、本当に避けたいのは…。







ガン「………………………、」





―――みぃんな、ヤッターマンの所為なんだよ!!
―――ヤッターマンの…!!






ガン「……なんなんだよ……」








―――なんなんだよ、これはよぉ―――!!









声高らかに叫んでも、彼―――高田ガン(ヤッターマン)―――に返答する者は、誰も居なかった……。



―――。
―――………。
―――……………。





ガン「…ちくしょう…」



再び当てのない道を歩き続ける。
いや、当てなら一応はある。



ガン「"ヤッターマンが人々を苦しめてる"だってえ?…そんな訳あるかよ…!」



仮にそうだとしても、ならばここに居る自分(高田ガン)は一体誰だと言うのだ。



ガン「偽物だ!パチモンだ!!そうに決まってらあ!!!もしくは―――…」



瞬間、脳裏に"あのお騒がせ三人組"の姿が過ぎる。



ガン「……ドロンボーだな!またあの連中が悪さをしやがってるんだ!!」



―――ヤッターマンの所為だ!!



ガン「……………。きっとそうだ、そうに決まってる。間違い、ない………」




それとも。

"そうであって欲しい"と願っているのか―――?





ガン「――――――ハッ!!」

ガン「(ブルブルブルブルブルブルブルブル!!)い、いけねえいけねえ!何考えてんだ俺…らしくもねえや」

ガン「偽物ヤッターマンめ!!今直ぐ本物が成敗しに行って……!!!」



―――グウゥ~ゥ!!



ガン「……の、前にもう一回腹に何か入れねえと……」



ここに来てからこっち、待ともに食えたのが紅葉数枚しか無い。
先程からの衝撃情報と怒りによってカロリーは早くも底を尽きそうだった。



ガン「う~ん…ここいらだと紅葉も無さそうだしなあ…」



時期が悪いのか辺りを見回しても丸坊主になった木々があるだけで食べられそうな葉っぱは見つからない。
地面には落ちてるが、流石にソレを食うほど落ちたくは(葉っぱだけに)…。



ガン「…ん?地面?落ち葉??」



ピンと閃いて。
早速ガンは地面に突っ伏し、木の根元周辺を漁るように探った。


―――それからど~した。





ガン「………………本当に見つかるとは思わなかったけどよ」



数刻後、その手に握られているのは胞子を飛ばす傘と地面にくっつく一本軸が特徴的であり。
胞子を以て繁殖し、秋~冬にかけて食される代表的な食物。


…所謂ところの―――"キノコ"。


である。


しかし。



ガン「…………………マツタ……いや、しいた……いや」



キノコを持ったまま、ぶつぶつと呟く。
それもその筈、見つけたキノコは彼の誇る知識の中のどれにも該当せず。


外見の特徴からして、何処か…"豚の鼻"を彷彿とさせるような傘の模様。


どう見ても一般的に流通している類のモノではない。





ガン「………………」


キノコ(?)「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!」



錦糸類と睨み合いを続ける事数秒。
意を決し。



ガン「うぉりゃあっ!!」



ガブリと。
ちょっとだけ齧り付いて組織片を舌先に乗せようとして。












キノコ(?)「ブウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッッ!!!!」

ガン「うおああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!??」









思い切り。
傘より発射された胞子塊を顔に浴びせられた。






ガン「―――ぶわっくしょん!!ふあっくし!!グシュン!!!!」


キノコ(?)「シオシオシオシオシオシオ…」



どうやら外部からの刺激により胞子を飛ばすタイプだったようで。
最終的には余り食いでが無さそうに萎んでしまった。


幸いにして舌先に刺激は無く、毒は無いようで。
(※昔の毒キノコ判別方法です、現代では絶対マネしないでねん)

数本同じように萎んだソレを口にいれ。



ガン「うぅぅ…ジャリジャリしてて味わかんねえ…」モッシャモッシャ



だが。
とにもかくにも、腹は満たされた。





ガン「―――!」



キリ、と顔を上げ大手を振るって森を歩く。



ガン「―――待ってろよ…」




これ以上、自分達を騙って人々を苦しめているであろうモノの存在を野放しにしておく事は出来ない。




ガン「ヤッターマンがいる限り、この世に悪は栄えない…!」



幾度となく放った台詞を、鼓舞するように呟く。




ガン「―――只今本物が向かってやるからな、偽物ヤッターマン!!!」




天高く拳を突き上げ、駆け足で突き進む。
目指すは前方、森を突き破るようにして存在している"白い塔"。
あそこに行きさえすれば、今のこの状況が少しでも解る。
そんな気がする。

いや。




―――そうであって、欲しかった。


ここまでです、中々進まず申し訳ありんせん。

08年ガンちゃんって無気力だけど決めるトコは決めるし芯は通すし責任感はあるし悪にも優しいし。
昭和の容赦のなさに比べてほんと好きなんですわ。(昭和は昭和で大好きですけど)

…だから、ねえ。その、ねえ。(ゲス顔

次回、「対決」。


それではこれにて。

遅くなってスミマセン。続きです。

―――。
―――………。
――――――………。






ガン「…着いた。ここが…」



窮屈な獣道が開けると、広大な敷地が出現した。



ガン「しっかし、何なんだこりゃあ…」



見た目、埠頭等に良く見られる…所謂"灯台"みたいなフォルムだが。
というか灯りがぐるぐる回転してるし、どう見ても灯台だろう。

ただ。



ガン「灯台にしちゃあ、"海が見えねえ"しなあ…」



先には一帯を阻むようにして建っている"巨大な壁"が広がるばかり。
壁にしたって、何か…巨大な眼球のようなオブジェが飾られており正直気味が悪い。


これも、"ヤッターマン"が造ったというのか?



ガン「どっちみち俺の趣味なんかじゃあねえ、偽物決定だな!」



それはそうとだ。
勢いに乗ってここまで来たはいいのだが、はてさてここからどうするか。
今は自分一人であり、偵察に使えそうなヤッターメカも、オモッチャマも居ないのだ。
まさか正面からバカ正直に乗り込む訳にもいかないだろうし。

せめて、もう一人。

そう。




…ヤッターマン2号…"アイちゃん"だけでも居てくれたら…。







―――ガサリ…!



ガン「………!!」バッ!



その時だった。
後方の茂みがガサガサと揺らめいたのだ。
咄嗟に音のした方を振り向き、拳を構える。



―――ガサ…ガサガサ…!



聞き間違いではない。
音はどんどんと強くなり、そして…。



―――バサッ!



枝葉をかき分け、中から出てきた"人物"を見て。



ガン「――――――!!!」



ガンの表情が、厳しい物からパアッと明るく染まった。

自分の前に佇む"人物"の服装は。





―――赤い帽子。
―――ピンクの服。
―――黒いマスクに風に靡く布。

―――そして。



―――燦々と輝くヤッターマーク!!





自分達が着ていた物と"全く同じ"だった。

間違いない、この子は―――!








ガン「あ…」

ガン「ア…ア…」








ガン「―――アイちゃああああああああああああああああああああん!!!!!!」ギュウッ!!





脱兎の如く駆け寄り、己の永遠の相方―――ヤッターマン2号―――を抱き締める。



ガン「アイちゃん、アイちゃんなんだな!」



漸くに見知った人間に出会えて思わず感極まる。



ガン「アイちゃんもあの偽物達の話を聞き付けてここまで来たんだよな!よっしそうと決まればこっちの―――…」

ガン「………………、」

ガン「(あれ?)」



ふとした違和感に気づき、言葉が止まる。



ガン「―――…アイ、ちゃん?」



アイ(?)「……………………………………………………。」



おかしい。
いつものアイちゃんなら、ここで。




アイ『ガンちゃん!100パー会いたかったあ!!』




とでも言ってくれるのに、先程から一言も喋らず無言のまま、いや。

それよりも。

何よりも。




ガン「…………アイちゃん、何か……身体の感触が…ヤケに…」





―――"鉄のように"硬い気が―――



思考できたのは、そこまで。



ガン「―――ガッッッ!!??」



瞬間、"ズム!"という衝撃が腹部にかけて広がり。
激痛にその場で蹲る。



ガン「………!!ア、イ…ちゃ……!!」


アイ「……………………。」ギョロリ


ガン「(な――――――!?)」



そして彼は見た。
服装や、背丈や、髪の色に至るまで何から何まで自分の知るヤッターマン2号…のモノだったが。

その顔だけが、違った。




アイ(?)「……………………………。」ギラリ




鼻も無い、口も無ければ耳も無いのっぺらぼう。

ただその中で、無造作に取り付けられたであろう瞳だけが。

妖しく黄色の光を有していた。





だが、違うのはそこだけでは無かった。



アイ(?)「――――――!」バッ!!



2号は身を翻して跳躍。
未だ蹲るガンを見下ろす形で灯台のヘリに立つ。


その傍らには、もう一人。



ガン「……………!!!」



苦痛の呻きが、驚愕の表情へと変わる。



―――黒い帽子と。
―――それに対比する白い服に。


―――風になびく赤いマスク。


そして。


―――やはり、額に輝くヤッター……。




2号(?)と共に降り立った影は、ガンに向けて高らかに宣言した。

















ヤッターマン1号(?)「―――"ヤッターマン"が居る限り…」
ヤッターマン2号(?)「―――この世に悪は栄えない!!!」








―――ビシッ!!!!!!
















ガン「……………………………あ………」





魂が口から漏れ出たような錯覚に因われた。
自分の目の前で行われた事が信じられなかった。


服装やら、口上からポーズの位置。
何から何まで自分達のソレと全く同じ。


鏡に映したかの如き虚像は、しかし。




―――ヤッターマンが居る限り!



ガン「……………ふ………」

ガン「…ふ………ふ………!!」



―――この世に悪は栄えない!!




彼(ガン)にとって、到底認められるモノで無く。








ガン「―――っざけん……なあああああああああああああああああああああああっっっ!!!!!!」






一瞬で沸騰した怒りに痛みを忘れ。
眼前の虚像を追い打つかのようにして、飛ぶ。

だが。



ヤッターマン1号(?)「―――!」パシッ!!


ガン「―――なっ!?」



怒りのままに突き入れた拳は。
まるでスローモーションとでも言うかのように打ち払われ。



ガン「が……っ!!??」



代わりにカウンター気味に拳を入れられた。
拳も鉄並の硬度であり、速度を伴って放たれた衝撃に目の前に火花が飛び散った。


何とか激痛を堪え、着地し。



ガン「…………………!!!」



両腕を交差させる。
そして。








―――ヤッタアアアアアアアアアアアーーーーーーーーッ!!!








周辺に響き渡る大音声で叫ぶ。
己こそ"本物"であるという事を知らしめるかのように。


だが。


しかし。






ヤッターマン1号(?)「………………………。」
ヤッターマン2号(?)「………………………。」



ガン「………………………。」






―――シ~ン……!









ガン「あ、あれ………?」



ヤッターマン1号(?)「……………???」
ヤッターマン2号(?)「……………???」



この時彼は怒りの余り失念していた。
自分の服装がいつもの"青いツナギ"ではなく、黒インナー一着のみであったという事を…。



ガン「しまっ―――!」



よって、スーツに着替える事は叶わず。
そして。



ヤッターマン1号(?)「―――!!」シュンッ!
ヤッターマン2号(?)「―――!!」ヒュバッ!



その隙を見逃す程、敵も甘くはなかった。






―――バキッ!!


ガン「ガッ……!?」


腹部に再び拳。




―――ドッ!!!


ガン「グヘッ……!!」


下がった頭部に回し蹴り。




―――ビシッ!!!!!


ガン「―――っあ………!」


トドメとばかりに首筋に手刀。





―――ドカッ!!
―――バチッ!!
―――ベキッ!!




―――!―――!!―――!!!



―――……。
―――…………。
――――――………。





ガン「…………………………。」ボロッ



ヤッターマン1号(?)「…………。」
ヤッターマン2号(?)「…………。」




勝負は付いた。
辛うじて抵抗を続けていたガンも、やがて限界が来たのか倒れ付しピクリとも動かなくなる。
と、同時に。



―――どうした?



"何者か"の声が辺りに響いた。





ヤッターマン1号(?)「―――侵入者です」
ヤッターマン2号(?)「―――たった今無力化致しました」



―――ふうむ…?



ガン「………………。(誰……だ?)」



腫れぼったくなった瞳だけで見ようとするも、ボヤけた視界ではそれもままならない。
ボロボロになったガンを尻目に話は続く。



―――この男……。



ヤッターマン1号(?)「ご存知で?」



―――………。いや、知らぬ顔だ。



ヤッターマン2号(?)「如何致しましょう?」



―――。
―――その傷では収容所送りにしたとて持つまい。










―――海に捨てておけ。










ヤッターマン1号(?)「―――ヤッターマン!」ビシッ!
ヤッターマン2号(?)「―――ヤッターマン!」ビシッ!



ガン「………………………。」






……………。



…チ、ク………ショ……ウ………。



……………………………………………。






そこから先は良く覚えていない。

ただ。


担がれて揺られる視界の最中に。


風に揺らめく赤と黒の布が入り…。




ガン「(………か……え……せ……)」

ガン「(…そ…れ………を………)」




思わず手を伸ばしかけて。




―――  ド  ボ  ン !!!!!





―――ぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶく……!


―――ぶくぶくぶくぶくぶくぶく…!


―――ぶくぶく……





―――ぶくん―――!






そして、意識に黒い帳がかかる。


―――……。
―――…………。
――――――………。








???「―――ママ…。見ててね、必ずヤッターマンにおしおきしてやるんだから…!」



―――……!

―――ぶひっ!ぶひぶひっ!!



???「…?"オダさま"、どうしたの…?」


オダさま「ぶひっ…ぶひぶひぶひ!!」ピョンピョン!


???「…え?"こっちこっち!"って…」


オダさま「ぶひ―――っ!!」ツンツンツン!





ガン「…………………………………。」





???「………!!!大変……!?」


???「―――"ヴォルトカッツェ!"―――"エレパントゥス!!"人が………!!!」






そして。
"彼ら"は"再び"邂逅する。

今回は以上です。ガンちゃんボロボロです。
流れ着いた先で、果たして…。


それではこれにて。

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