黒騎士「勇者の邪魔をしろ、か・・・」(62)

~始まりの村~

黒騎士「・・・ここに、勇者が居るそうだな」

黒騎士「魔王城から一ヶ月、歩きに歩いてようやくたどり着いたが・・・」

黒騎士「・・・何もいないな」

黒騎士「ついでに誰もいない」

黒騎士「日が暮れて数刻たったばかりなんだが・・・」

黒騎士「・・・・・・」

黒騎士「勇者の出立は、確か明日だったはずだ」

黒騎士「勇者と言われるからには、やはり相当な実力を持っているのだろうな」

黒騎士「私も休んで、明日に備えておくか・・・」

―翌朝―

村長「・・・では頼んだぞ、勇者よ」

勇者「はっ、はいっ!頑張ってまいります!!」ビシッ

少年「おねーちゃん、頑張ってね!」

勇者「ありがとね!少年よっ、早く大きくなって立派になるんだぞ?」ナデナデ

少年「うんっ!」

勇者「ええと、携帯食よし、魔導書よし、その他諸々・・・よし!」

勇者「それじゃあ行ってきます!」

村長「体に気をつけなされよ・・・」

少年「頑張ってね!おねーちゃん!」



勇者「今なら何でもできそうな気がするなー」

勇者「・・・待ってて、みんな、絶対成し遂げて来るから!」

勇者「次の町までささっといってみよお!」



黒騎士「・・・いくら何でも朝早すぎはしないか」

黒騎士「ついでにすこぶる元気そうでもある」

黒騎士「やはり勇者、体力は並ではないようだ」

黒騎士「後は実力・・・だ」

黒騎士「あちらへ行けば次の町だが、私が通って来た時には魔物がちらほらいた」

黒騎士「下等な魔物だが・・・まぁ、実力を見定める分には十分か」

黒騎士「まずは様子見だ」

勇者「フレイム!」

ボウッ

ゴブリン「ジャギャアァァ」パタッ

勇者「こんな魔物見たの初めて・・・」

勇者「どうしよう、村大丈夫なのかな」

勇者「・・・ううん、根源さえ絶てば大丈夫だって村長は言ってたから」

勇者「私が早く済ませれば大丈夫だよね!」



黒騎士「・・・ほう、下等種族を倒していくから、召喚してみたのだが」

黒騎士「一撃か、なるほど・・・」

黒騎士「法撃はかなりの威力のはずだ、とすると、他の技能だって相当なものだろう」

黒騎士「これは・・・楽しみだな」

黒騎士「よし、今度は私直々に邪魔を加えてやろう・・・」ザッ

つ④

勇者「そういえば、冒険には仲間が必要だって言われてたんだっけ・・・」

勇者「町で見つけてみよっかな」ガサッ

勇者「ひゃっ?!」

黒騎士「・・・そこのお前」

勇者「はっ、はいいい?!」

勇者(全身真っ黒の・・・騎士みたいな人が・・・)

黒騎士「お前が勇者か?」

勇者「そっそっ、そうですけど・・・」

勇者「! なんで知ってるんですか?!」

勇者(あっ、もしかして・・・)

黒騎士「理由などはどうでもいい」

勇者(話を聞いて、仲間になりにきてくれた人かな!)

黒騎士「一つ、私と手合わs」

勇者「やった!」

黒騎士「ん?」

勇者「あっ、あのっ、私勇者っていいます!」

黒騎士「それは知っているが・・・」

勇者「あなたみたいな人が仲間になってくださると心強いです!」

黒騎士「・・・んん?!」

黒騎士「待て、私はお前と手合わせしに!」

勇者「手合わせ?はいっ!」ギュッ

勇者「握手すると、なんだか実感がわきますねー、へへっ」

黒騎士「違うんだが・・・」

勇者「違う?なにがですか?」

黒騎士「私はお前と手合わせ・・・言うなれば決闘をしに来たんだ」

黒騎士「お前の技量を見定めるために、な・・・」

勇者「決闘!?」

黒騎士「そうだ、なぜなら私は・・・むっ」

勇者「・・・?」

黒騎士(・・・そういえば、魔王様の部下だとばらしてはいけなかったな)

勇者「あの、技量を見定めるなら、決闘じゃなくてもできると思うんです」

黒騎士(・・・スルーしてくれたか、危なかったな・・・)

黒騎士「どういうことだ?」

勇者「日々の成長を見守るとか・・・?」

勇者「それでも、その、垣間見えると思いますから」

勇者「だから、仲間内で決闘とかは無しで、穏便にいきましょう!」

黒騎士「あ、あぁ」

勇者「そうと決まれば次の町へ!」

黒騎士「そうだな・・・うん?」

黒騎士(何かがおかしい・・・というか、当初の予定と違う・・・)

勇者「早く行きましょう!」

期待してる

~次の町~

黒騎士(予定では、行き着く先々に現れて何かと手を煩わせる予定だったのだが・・・)

勇者「えっ!いないんですか!?」

主人「そうなんだ、すまないね」

黒騎士(・・・これでは無理か)

黒騎士(しかし、内側から邪魔を入れることもできないわけではないか)

主人「しかし、よかったな。強そうじゃないかそこのお方」

黒騎士「ん、私か?」

主人「今までいろんな傭兵を見てきたが、お前さんほどの人は初めてだ」

黒騎士「そうか、それはどうも」

勇者「騎士さん、ごめん。みんな冒険に出てて雇えないんだって」

黒騎士「・・・私は構わないが」

黒騎士(むしろ、二人でいる方が好都合だな)

黒騎士「そうとわかれば今日はもう休むか」

勇者「へっ?まだお昼ですけど・・・」

黒騎士「長旅で疲れているんだ、休ませているんだ」

勇者「そうですかぁ、それじゃあしょうがないですね」

黒騎士(・・・本来の目的は時間稼ぎだ)

黒騎士(魔王様にどういう意図があるのかは知らないが、できるだけ引き延ばしておくに限るな)

黒騎士「では先に宿屋に行っておく」

勇者「あ!待ってください、私も行きます!」

黒騎士「お前は別段疲れてる風には見えないが?」

勇者「その、相部屋にするなら私も居ないといけないと思うんですけど・・・」

黒騎士「・・・はぁ?」

あれ、誤字・・・

黒騎士「長旅で疲れているんだ、休ませてくれ」

に修正

~宿屋~

勇者「よいしょっと、ぃよいしょ」ゴトゴトッ

黒騎士「・・・バッグの中身を出してなにをやっている」

勇者「整理整頓です!」ガサッ

勇者「歩いてたら中身バラバラになってて・・・」

黒騎士「・・・ところで」

勇者「はい?」ベチャッ

勇者「わひゃあ!?」

黒騎士「お前は武器と呼べそうな武器を持っていないみたいだが・・・」

勇者「うぇぇ、スライムのかけらだ・・・」

勇者「すみません!少し洗ってきます!」パタタ

黒騎士「・・・・・・」

勇者「剣?持ってないですよ」

勇者「あ、でも、ナイフならありますよ?ほら!」

黒騎士「・・・・・・」

勇者「・・・あれ?どうしました?」

黒騎士「・・・いや、何でもない」

勇者「そうですか」

勇者「私、剣持ってても振り回せないですし、持ってる意味ないですから」

勇者「だから、私の相棒は昔からこれです!どんっ!」

黒騎士「・・・本?」

勇者「魔導書です!わが家に代々伝わる魔導書!」

勇者「これには退魔の呪文だって載ってるんです」

黒騎士「なるほど、それを扱えるのはお前だけなのか?」

勇者「そうなんです、だから私が旅に出ることになったんです」

勇者「でも私、まだ未熟で、不安だったんですけど」

勇者「騎士さんが来てくれて、ホッとしてるんです」

勇者「見た感じ、騎士さんは剣が使えるみたいですし・・・」

黒騎士「・・・そうだ、私は剣が使える」

勇者「やっぱりですか!」

勇者「私魔法しか使えないので、剣とか持てる人欲しいなって思ってて・・・」

勇者「・・・頼りないかもしれないんですけど、後方からの支援、頑張ります!」

黒騎士「ああ、こちらもできるだけ頑張ってみる」

黒騎士(・・・ということは、魔王様の生み出した魔物を倒すことになるのか・・・)

黒騎士(・・・いつも通り、だな)

―所変わって魔王城―

側近「あわわわわ・・・」

魔王「ふっ!んはぁあっ!」バシャバシャ

側近「どどっ、どうしよ・・・」

バシャアアッ キラキラ・・・

魔王「いい・・・実にいい気もちだ・・・」キラキラ・・・

魔王「どうかな、側近ちゃん!水晶で勇者見えてる??」

側近「ひゃいっ?!」ビックン

魔王「ん、どれどれ・・・」ポタポタ

側近「わわわわ・・・」

水晶『・・・・・・』

魔王「じーっ」

魔王「実にいい寝顔だ!最っ高だね!!」

側近「ほっ・・・」

なんという俺好みのスレ

これは期待せざるを得ない

魔王「勇者が到着するまであと一ヶ月ちょっと・・・」

魔王「それまでにはもっと弛んだ体を引き締めておかねば!!」

魔王「黒騎士には時間稼ぎを頼んだが、あいつなら大丈夫だろう」

魔王「さて、勇者も寝たし、俺様も寝るか!」

魔王「明日はエアロビをするからな!側近ちゃん、また明日!」

側近「お、おやすみです・・・」



側近「よかった、さっきは勇者さんしか映ってなくて・・・」

側近「黒騎士さんと勇者さんが一緒だって知ったら・・・」

側近「・・・こっ、こわいぃ・・・」ブルブル

側近「ぜっ、絶対ばれませんように・・・」

~翌日~

勇者「んーっ!すがすがしー!」

黒騎士「・・・・・・」

勇者「どうしました?一晩じゃ疲れ取れませんでした?」

黒騎士「・・・いや、私が朝に弱いだけだ」

黒騎士(日の出とともに起床か・・・ついていけない・・・)

勇者「そうなんですか、こればかりは慣れてもらうしかないです」

黒騎士「ああ、努力する・・・」

勇者「じゃあ今日は、この町をでて、その次の町をノルマに」

勇者「行けそうだったら、その近くの村までいってみましょう!」

黒騎士「そんなにか」

勇者「そんなにです!昨日行けなかったぶんも進まないと・・・」

―草原―

勇者「うっすら次の町が見えるけど、遠いなー・・・」

黒騎士「おい、魔物がいる」

勇者「えっ?!ふっ、フレイム!」ボッ

ゴウッ

黒騎士「・・・・・・」プスプス

勇者「あっ、ごめんなさい・・・」

ヌルッ

勇者「ひっ!?」

スライム「・・・」ヌルヌル

勇者「足についたああああ!!」ブンブンッ

黒騎士「・・・・・・」プスプス

勇者「はぁ、冒険って大変・・・」

黒騎士「・・・そうか?」

勇者「そうか?って、そりゃあ今まで旅なんてしたこと無いですし・・・」

勇者「そういう騎士さんはやったことあるんですか?」

黒騎士「・・・つい最近までやっていた」

勇者「えっ!そうだったの?!」

勇者「・・・そうだったんですか?」

黒騎士「・・・わざわざ素を隠す必要はない」

勇者「あ・・・うん、わかった」

黒騎士「私は今まで、魔王が生み出してきた魔物をひたすら倒すためだけに旅をしてきた」

勇者「うんうん」

黒騎士「・・・・・・」

勇者「・・・ん?」

黒騎士「・・・悪いが、それだけだ」

勇者「もっと詳しく!」

黒騎士「詳しく、か・・・」

黒騎士「倒すのが仕事だったからな、倒しすぎて一体一体の事など覚えちゃいない」

勇者「そうなんだー、確かにハンターの人達もそう言うけど」

勇者「一番きつかった敵の話とか話してるの見たことあるよ」

黒騎士「一番きつかった敵か・・・それなら思い当たらなくもない」

勇者「えっ、ほんと?」

黒騎士「話すつもりは毛頭ない・・・がな」

勇者「えーっ」

勇者「じゃあ、騎士さんが言ってくれるまで待っとこうかな」

勇者「いつか絶対聞かせてよね!」

黒騎士「・・・考えておく」

勇者「騎士さんの秘密かー」

勇者「強い人の秘密なんだから、やっぱりすごいんだろうなー・・・」

勇者「なんだか、今日は騎士さんとの距離が縮んだような気がする」

勇者「騎士さんもそう思う?」

黒騎士「さあな」

勇者「む・・・返しがいい加減過ぎる・・・」

<その次の町>

勇者「ついたーっ!」

黒騎士「もう夕刻か。宿るぞ」スタスタ

勇者「えっ!近くの村まではそんなに遠くないのにー・・・」

黒騎士「私が疲れた」

勇者「むー・・・じゃあ仕方ないのかな・・・」

黒騎士(お人よしなのが助かるな)

クイクイッ

黒騎士「ん?勇者、私を引っ張ったか?」

勇者「違うよ。どうしたの?キミ」

少女「・・・・・・」

少女「うぅ・・・」グスッ

勇者「泥だらけ・・・何かあったの?」

少女「お、お父さんが・・・」

勇者「うんうん」

少女「おっ、お父さん、がっ・・・まものに、襲われてるのっ・・・」グズグズ

勇者「魔物に・・・?」

黒騎士「何っ・・・!」

少女「おっ・・・おっきくて・・・洞窟にいるの・・・」

勇者「そうなんだ、それじゃあ・・・」

黒騎士「勇者、向かうぞ」

勇者「えっ?うん」

黒騎士「さっさと行くぞ!」グイッ

勇者「わっ!そんなに慌ててどうしたの!」タッ

黒騎士(魔物が人を襲ってるだと・・・?)タタタタッ

黒騎士(ここの奴らはなにをやっている・・・!)タタタタッ

―洞窟―

ギャアアァアオッ ウワアアアッ

勇者「いる!まだ中にいるみたい!」

黒騎士(違う、あの声は・・・!)

勇者「うわ、魔物の死骸がいっぱい・・・」

勇者「物凄く臭うよ・・・」

黒騎士(ここまでやられるとは・・・)

剣士「・・・・・・」フラッフラッ

勇者「うわっ!大丈夫ですか!?」

剣士「俺達には、無理だ・・・頼んだぞ・・・」フラッ

黒騎士「・・・わかった」

勇者「あなたが少女のお父さんですか?」

剣士「・・・・・・」ユラユラ・・・

勇者「あっ、行っちゃった・・・」

黒騎士「奥だ、奥へ行くぞ」

ドラゴン「ギャアアァアオッ!」

勇者「こっ、これっ・・・」

勇者「傷だらけだけど、ドラゴンっていう魔物だ・・・」

黒騎士(ざっと見て50人は死んでいる・・・)

勇者「魔物もいっぱい死んでるけど、これ、全部ドラゴンがやったみたい・・・」

勇者「同じ魔物なのに、ケンカでもしたのかな・・・?」

黒騎士「・・・後方支援はやってくれるのだろう?」

勇者「任せて!」

黒騎士(闇雲に切り付けたのは剣士の落ち度・・・)

黒騎士「氷魔法だ、できるだけ動きを止めろ」

黒騎士(部下を死なせすぎだ・・・)

勇者「わかった・・・騎士さん、死なないでね・・・?」

黒騎士「お前次第だ・・・!」

―――――――――――
――――――――
――――


勇者「大丈夫!?ねえ!大丈夫だよね!?」

黒騎士「・・・ああ、ドラゴンはもう動かないはずだ」チリチリ

ドラゴン「 」

勇者「そうじゃなくて騎士さんだよ!大丈夫なの・・・?」スッ

黒騎士「おい」

勇者「あつっ・・・」ビクッ

黒騎士「・・・安心しろ、一度炎に焼かれた程度では死なない」

勇者「たっ、たしかに平気そうだけど、鎧とても熱くなってる・・・」

黒騎士「私は呪文に対してもだが、とりわけ炎には強くできている」

黒騎士「・・・この鎧のおかげでな」

黒騎士(元から強いと言えば怪しまれるだろうな・・・)

支援

勇者「でも他にもどこか怪我してたりっ・・・」

黒騎士「私の心配よりアレの心配をしたらどうだ?」

勇者「あれ・・・?」

男「・・・・・・」

勇者「! 人だよ!」

黒騎士「そんなことは知っている。運んでやれ」

勇者「私が運ぶの?!」

黒騎士「・・・運んでやりたいのは山々だ」

黒騎士「だが、せっかく助けた人間が、私の背の上で焼肉になるぞ?」

勇者「それはダメ!」

黒騎士「ならば・・・運んでやれ」

勇者「わかった、頑張る」

<町>

ザワザワ・・・

町人1「あの子の親父が魔物に襲われたってさ・・・」

町人2「たまに聞くんだよな、そういうの。運がなかったんだな」

町人3「お嬢ちゃん、お父さんも助けに行った人も、きっと戻ってくるからね」

少女「・・・うん」

町人3「これでも食べて、元気をお出し?」

少女「・・・ありがとう」



勇者「・・・もう無理」ユサユサ

黒騎士「・・・後もう少しの辛抱だ」

勇者「むっ、無理いぃぃ・・・」ユサユサ

勇者「まだ、鎧冷えて、ない・・・?」ユサユサ

黒騎士「もう冷えているな」

勇者「お願い・・・代わって・・・」

町人3「・・・ん?あの方々かい?お嬢ちゃん」

少女「・・・!」

勇者「あーもう、とびきり疲れちゃった・・・」

黒騎士「脱力した者の重みは並ではないからな」

少女「お姉ちゃん!」

勇者「・・・あ、女の子、この人があなたのお父さん?」

少女「うんっ!うんっ!」

黒騎士「こいつは意識を失っている。お前達で後はどうにかしろ」

町人3「! ほら、そこの男衆!」

町人1「ぅえっ?!俺?!」

町人2「衆ということは俺もか」

町人3「この子の親父さんを、医者んとこまで運んでおやり!」

町人1・2「「はいぃぃっ!!」」

<宿>

黒騎士「はぁ・・・久々にあれだけ動いた。明日は動けないかもしれないな」

勇者「えっ、やっぱりどこか怪我しt」

黒騎士「それはない」

黒騎士「今日あれだけ動いただろう?明日はゆっくりしても構わないと思うが」

黒騎士(・・・我ながらひどい無茶振りだ)

勇者「平気なら進もうよ、その・・・少しは心配だけど・・・」

黒騎士(やはりダメか・・・)

黒騎士「心配は要らない、だが明日は少し遅めに起こせ」

勇者「・・・しょうがないなぁ」

黒騎士(ささやかながら時間稼ぎ・・・成功)

<町の外・某所>

???「ほら、これで大丈夫かな?」

剣士「・・・すまない」

???「いいよいいよ、キミが死ななくてなにより」

???「魔物はどうなってる?」

剣士「黒騎士が向かったから、恐らくは大丈夫だ」

???「そっか、でも今回の事でここの管轄はキミ一人になっちゃったわけだ」

剣士「・・・・・・」

???「ああ、いやっ、咎めるってわけじゃなくて、これ」ピラッ

剣士「・・・なんだ?これは」

???「助けが必要な時は、これでボクを呼んで?10枚もあるよ!!」

???「部下を補充するまでの繋ぎなんだけど、その間にキミに死んでもらうと困っちゃうからさ、だから・・・」

???「頑張ってね?魔剣士さん」

魔剣士「・・・ああ、今度こそ任せておけ」

―翌日―

黒騎士「・・・・・・」ボケーッ

勇者「ほら、何ぼーっとしてんの!顔洗って支度して!」

黒騎士「・・・ああ」

黒騎士(・・・全然少し遅めではないな・・・)

黒騎士「・・・少し外に出てくる」フラッ

勇者「えっ、なんで?別に構わないけど・・・」

黒騎士「そうか、それでは支度を頼んだぞ」スタスタ

勇者「はぁーい」

勇者「・・・あれ」

勇者「うまい具合に支度押し付けられちゃった・・・」

バタン

黒騎士「・・・ふぅ」

黒騎士(朝の澄んだ空気か・・・早起きした甲斐はあったな・・・)

少女「・・・あのっ」

黒騎士「ん?・・・お前は昨日の娘か」

黒騎士「あの男は大丈夫なのか?」

少女「・・・うん、大丈夫、お医者さんが死んでないって言ってたの」

黒騎士「そうか。ならばこんなとこにおらずに、あの男の近くに居てやれ」

少女「うん・・・ありがとう」

少女「・・・これ、お礼」パッ

少女「お守りだから、守ってくれるの。だから私は大丈夫だったの」

少女「だから、それ、あげる!」

黒騎士「だったらお前が持っていたほうがよくはないか?」

少女「ううん、私はもう大丈夫だから、あげる」

黒騎士「・・・よくわからないがありがとう、貰っておく」

ぱんつ脱いだ

はよ

すまんageてもうた

<山道>

黒騎士「・・・・・・」ユッサユッサ

勇者「この辺は魔物少なくて平和だねー」

黒騎士「・・・おい」ユッサユッサ

勇者「ん?どうしたの?」

黒騎士「朝手伝わなかったからといって荷物を全部持たせるのはやはり不公平だ」ユッサユッサ

黒騎士「一度承諾はしたが分担を要求する」ユッサユッサ

勇者「しょうがないなぁ」

黒騎士「しょうがない、か・・・先日労いの言葉をかけてくれたお前は何処へ行ったのやら」

勇者「そ、そんなこといわれると弱い・・・」

勇者「うん、私の荷物はやっぱり私が持つね」

黒騎士「じゃあ私の分を持て」ホイッ

勇者「わとと」トサッ

黒騎士「お前の荷物だけで半分は超えているからな」

勇者「あ、ありがと・・・」

勇者「そういえば、この先の村、どんな所か騎士さん知ってる?」

黒騎士「知らない」

黒騎士(私にとって勇者の故郷へ行く通り道でしかなかったからな)

勇者「そっか。この先の村はガラス細工で有名なんだー」

黒騎士「・・・ほう」

勇者「独特な色彩だったり細かくて綺麗な模様だったりで」

勇者「私の故郷の村の教会にガラスの女神像があるんだけど」

勇者「すごく綺麗で、村の皆もとても大切にしてるよ」

黒騎士「楽しみか?」

勇者「?」

黒騎士「ガラス細工で有名な村に行くのが楽しみか?」

勇者「う、うん・・・そうだけど・・・」

勇者「えーと・・・」

黒騎士「見物したかったりするのか?」

勇者「わわわばれちゃった・・・」

黒騎士「お前は困ると顔に出るからな」

黒騎士「そしてそういう時のお前の魔法の命中率は最悪だ」

勇者「あ、あの時はごめんなさい!」

黒騎士「それは構わないが、落ち着かないお前は戦力になり得ない」

黒騎士「現に先程の魔物にも苦戦していただろう?」

勇者「うぅ・・・」

黒騎士「恐らく時間が勿体ないか何かで躊躇していたのだろうが」

黒騎士「精神面での調整は重要だ。得にお前はな」

黒騎士「よって見物に行く、それで構わないな?」

勇者「ありがとうごめんなさい・・・」

<村>

黒騎士「よし、着いたか」

勇者「やった!早速行ってみよお!」

黒騎士(先程とは打って変わってハイテンションだな・・・)

黒騎士「見物は明日だ。今日は疲れたからもう宿ろう」

勇者「は、はやっ!?まだお昼少し過ぎたくらいなのに!」

勇者「ひょっとして昨日あんまり眠れなかった・・・?」

黒騎士「そうだな」

勇者「そうだったんだ、でもちょっと早過ぎるよ・・・」



???「ん!!!」ビクッ

???「ふんふん・・・ふん・・・?」クンクン

???「うお・・・びっくりした!これはなんとも濃厚なセンパイ臭・・・」

???「なんでここにきたかわかりませんけど、挨拶しといた方がいいですよね!!」

???「こっちか!ふんふん・・・」クンクン

勇者「少し我慢して見に行ってみようよ!」

黒騎士「お前の少しは少しでは済まないだろう」

勇者「そんなこt」

???「あっ!居た!!」

???「セ~ンパ~イ!!」タタタ

勇者「? 騎士さん、あの人知り合い?」

黒騎士「・・・誰だあれは」

???「初めましてー!よろしくお願いしま・・・」チャキッ

???「っすあああぁあ!!」ブンッ

黒騎士「っ!?」ガキンッ

勇者「わっ!?」

???「んふふふふ~♪」
???「~♪」

???「あっ・・・」

黒騎士「・・・・・・」

ゴチンッ

???「いたた・・・すみませんごめんなさい、若気の至りだったんです・・・」

???「つい気分が高まっちゃって・・・」

黒騎士「紛らわしい事を言うな」

勇者「この人騎士さんの後輩?」

???「そうなんですよ!正にそれです!」

黒騎士(後輩・・・?後輩ということは・・・)

黒騎士「悪い、少しコイツに話がある、ちょっと待っていろ」

勇者「ん、わかった」

???「にゃんとぉ・・・説教タイムでしょうか・・・」

黒騎士「いいから早く来い」グイッ

???「引きずっちゃやぁよぉー・・・」ズルズル

勇者「後輩かぁ、騎士さん出会う前は何やってたのかな・・・」

黒騎士「魔刀士と言うのか。何時ここに来た」

魔刀士「ついこの前です!センパイ!」

黒騎士「この前ではわからない。具体的にどのくらい前だ?」

魔刀士「一週間前です!センパイ!」

黒騎士「ということは丁度私がここを通り抜けた日か・・・」

魔刀士「私はその日センパイを見ましたよ!センパイ!」

黒騎士「その先輩を連呼するのはどうにかならないのか?」

魔刀士「クセになってしまいました!センパ・・・んぐっ」

黒騎士「はぁ、アイツも変わったヤツを寄越したものだ・・・」

黒騎士「もういい、持ち場に戻れ」

魔刀士「えっ、さいですか」

黒騎士「何か不満があったか?」

支援

黒騎士ってレオコーンじゃないの?

魔刀士「そっ、そうですよぉ!不満炸裂なんですよ!」

黒騎士「まだ炸裂していないだろう、無闇に騒ぐな」

魔刀士「今から炸裂させますーだ!」

魔刀士「センパイ!ここに来るまでに魔物見ました?」

黒騎士「スライム系二匹に幼い怪鳥だ、それがどうした?」

魔刀士「すくなっ!!そして雑魚い!!」

魔刀士「物足りなくなくなくないと思いません!?」

黒騎士「お前はわざわざ討ち漏らしの報告をしてくれに来たのか」

魔刀士「ちっ、違いますよ!」

魔刀士「私はもっとこう、ド派手にピャーッとやってみたくてですねぇ・・・」

黒騎士「運が悪ければいづれそんなことができる日が来るだろうな」

黒騎士「お前は生まれてからまだ間もない。知らないのも無理はないが」

黒騎士「そういうことは余り私の前で言うな。気分が悪くなる」

魔刀士「あ、はい・・・」

黒騎士「私達が来た方向の町を知っているか?」

魔刀士「ああ、はいはい、魔剣士さんの領分ですよね」

魔刀士「風の頼りにデカブツが湧いたって聞きましたねぇ」

黒騎士「そうだ。そしてそのデカブツを討伐するのに50数人が向かったが」

黒騎士「帰って来たのは魔剣士だけ、後は全滅だ」

黒騎士「そしてそれでも未討伐だった」

魔刀士「あよよ・・・運が悪かったですね」

黒騎士「そう、運が悪かったんだ」

黒騎士「そしてこの辺りはお前一人が管轄しているようだが」

黒騎士「運が悪ければ・・・な」

魔刀士「や、やだぁ~もう、怖がらせないでくださいよぅ」

魔刀士「こんな平和な所に出るわけないじゃないですかぁ」

黒騎士「無いわけではない、絶対にだ」

魔刀士「うぉう・・・マジですか」

魔刀士「ヤバ・・・なんだか昼間なのに怖くなってきた」

黒騎士「そういうことだ。気を抜くなよ」スッ

魔刀士「まっ、ままま待ってくださいよぅ!!」

黒騎士「・・・まだ何かあるのか」

魔刀士「こんな危険な所に置いてかないでください!!」

黒騎士「危険もなにも、どこもかしこも危険たりうるのだが・・・」

魔刀士「じゃあ一人にしないで連れてってください!!センパイじゃなくてシショーって呼びますから!!」

黒騎士「呼び方の問題ではない。白い奴にここの守護を命じられたのだろう?」

魔刀士「そ、そうですけど・・・」

黒騎士「代わりでも来ない限りは無理だ」

魔刀士「そんな・・・あんまりです・・・」

黒騎士「たとえデカブツが来ないにしても、成長し、多少凶暴になった魔物もいる

黒騎士「これらの討伐は急務であると同時に私達の存在意義でもある」

黒騎士「だからおいそれと使命を打ち捨てるな」

魔刀士「そんなぁ・・・」

勇者「あ、おかえり」

魔刀士「シショーのいけず・・・」

黒騎士「よし、宿に向かうぞ」

勇者「だからまだ早いってば」

勇者「そういえばキミ、名前は何て言うの?」

魔刀士「魔刀士です・・・」

勇者「魔刀士・・・聞いたこと無い名前・・・」

魔刀士「そりゃそうでしょう、私生まれは魔k」

ペシッ

黒騎士「・・・・・・」

魔刀士「シショー、も少し手加減してくださいよぉ・・・」

勇者「な、仲悪いのかな・・・?」



勇者「あれっ、そういえば呼び方変わってるけど」

魔刀士「はい!先程シショーと呼ぶようにしました!」

勇者「あ、じゃあ魔刀士ついて来てくれるんだ!」

魔刀士「へ?」

黒騎士「おい」

勇者「ん、どうしたの?」

黒騎士「コイツを連れていく気h」

魔刀士「行きましょう!!行かせてください!!お願いしますししょおおおお!!」ガシッ

黒騎士「馬鹿な・・・お前には役目が・・・」

勇者「ほら、こんなに慕ってくれてるんだし、ね?」

魔刀士「勇者さんもこう言ってくれてますよ?ほら!!この・・・えーと、誰かさんが」

黒騎士「そいつは勇者だ。はぁ・・・」

魔刀士「へへへ、よろしくお願いしますよぉ」ベタベタ

勇者「う、うん、よろしく」

黒騎士「はぁ・・・融通しなくてはいけないな・・・」

勇者「どうしたの?ため息なんかついちゃって」

黒騎士「お前のせいで気苦労が増えたからだ・・・」

勇者「わ、私なにかしちゃった?」

黒騎士「もういい、先に宿に行っている」

勇者「うん・・・あ、騎士さん」

黒騎士「何だ?」

勇者「私少し村見てくるけど、いい?」

魔刀士「私もお供します!!」

黒騎士「好きにしろ」

勇者「ありがと、いってきまーす」

魔刀士「私が案内して差し上げましょうかねぇ」

<宿屋裏手>

黒騎士「遂にこれを使うときが来たか・・・」ピラッ

黒騎士「召喚符、そら」

ボンッ モワワ・・・

シーン

黒騎士「ん?なぜ出てこない?」

シュンッ

???「ごめん!ちょっとトイレ行ってたんだよね!」

黒騎士「・・・・・・」

???「ん?機嫌悪いね、どうしたんだい?」

???「仲間の、ないし相棒の悩み事は、この白騎士におまかせあれってね!」

黒騎士「ここに新しく人を送れ。それだけだ」

白騎士「あれっ」

白騎士「魔刀士子ちゃん?だっけ」

黒騎士「魔刀士だ」

白騎士「そうそう、その娘ここに配置してなかったっけ」

黒騎士「同行することになった。だから代わりを送れ」

白騎士「んー・・・あの娘割と強そうだからここ一人で任せてたのに・・・」

白騎士「どーしよっかなぁ」

黒騎士「任せたぞ」スタスタ

白騎士「あーちょって待って」

白騎士「勇者と一緒に行動してる件について、魔王様にどう言うつもりなの?」

黒騎士「・・・・・・」

白騎士「側近さんオロオロしてて可哀相なくらいだったよ」

白騎士「だから魔王様丸め込んじゃった、テヘッ☆」

黒騎士「気持ち悪いぞ」

白騎士「承知しておりまする」

白騎士「ということで、相棒、キミはただ今『勇者ちゃんの護衛☆』ってなってるよ」

黒騎士「ふざけているのか?」

白騎士「ボクが提案したんだよね」

黒騎士「・・・・・・」

白騎士「ごめんなさい・・・これでホントに通っちゃったんだよ・・・」

白騎士「そして、二人旅だとまだ危険そうだって事で、魔王様が一人派遣してくれたみたいだよ」

黒騎士「もう増員は要らない」

白騎士「と言っても明日くるらしいしさ、よろしくね!」

黒騎士「・・・・・・」

白騎士「じ、じゃあボク、他から呼び出されるかもしれないから戻るね!バイバイ!!」

シュボンッ

黒騎士「・・・はぁ」

~夕刻~

勇者「よし、明日行きたいとこは決まった」

魔刀士「ガラス細工ですかぁ。私はてっきり酒場にでも乗り込むのかと思ってたんですけど」

勇者「そんな、行けないよあんなとこ・・・」

魔刀士「一人じゃ行きづらくても、今日は私が金魚のフンよろしくついていきますですぜ?」

勇者「雰囲気が苦手なんだ・・・。みんなでワイワイやるのは嫌いじゃないけど」

魔刀士「はぁ、損な性格してますね、いや全く」

魔刀士「ま、寄らないなら寄らないで早く宿へ行きましょう!」

魔刀士「歩き回ったせいで空腹ですよぉ」

勇者「うん、騎士さん待ってるかもしれないしね!」

<宿屋>

魔刀士「しかしシショーは既に寝ておったそうな」

勇者「ちゃんと食べてはいるみたいだし、疲れてるみたいだからそっとしとこ」

魔刀士「うす!さてさて、いただきますよぉ」

勇者「野菜もしっかり摂らないとね」

魔刀士「小生肉食につき、ベジタブルなぞお構いなしでごわす」

勇者「ダメダメ、しっかり食べないと!!」

魔刀士「勘弁してください!食べたらじんましん出ます!」

勇者「ホントに?」

魔刀士「ホントじゃなくなくなくなくなくなくないです」

勇者「あれ?ホントじゃなくてそうでもなくて・・・」ブツブツ

魔刀士「隙ありぃ!!」ガタッ

勇者「あっ!ちょっと!」

白騎士、黒騎士ときたら
りゅうkゴホンゴホン

魔刀士うざし
さようなら。

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