男「妖怪とは不便よな、おれのように不死ではないのだから」
妖怪「仕方なかろ、そのかわり何度も産まれるのよ」くつくつ
妖怪「わしにはお前が不便に思うよ、死なぬということは面倒が多いだろうに」
男「なに、不便も永い時の中では娯楽、悦楽というものよ」けらけら
妖怪「なあ、お前、わしはお前の名前を呼んだことがない」
男「それはおれも同じよ、おれたちは互いの名を知らぬではないか」
妖怪「それもそうだ、長いこと一緒におったのになあ」くつくつ
男「ふぅむ、今更も今更、なぜ今おれの名を知ろうとする?」
妖怪「わしがもうじきに死ぬからよぉ……
長らくの相方の名前も知らぬとは寂しいのよ」
男「そうか、死ぬのか、お前が
ならば教える、おれは男というのだ」
妖怪「それは、いい名前だな、わしは妖怪というのだ
ふむ……嗚呼、おかしな縁だったなぁ……ふう、さらば男、わしの友」
男「さらば妖怪、おれの友」
そういうと妖怪は目を閉じた。
その齢実に千と四百といくらか、永い間おれの友だった。
おれはこいつの生まれ出てくるところに出くわしたのだ。
そして今死んだ。
永い時の中、一番の友だった。
生まれた頃から死ぬまで姿の変わらなかったこいつ。
おれも姿が変わることがなかったものだから仲良くなった。
まあ、死んでしまったものは仕方なかろ。
おれは退屈になってしまった。
妖怪、妖怪。
またお前のような友に会えるのか?
返事は、ない。
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