P「メダルがばらついてるのはアイドルプロデュースやアイドルチャレンジの分を省いてるからですね。
　 表情差分なので。それらを除いた合計の月別平均が約14.67、つまりひと月にそれくらいSRが出てるんですね」

ちひろ「順位点や完走報酬SRが載ってないのはどうしてですか？」

P「必要なのがメダルまでのデータだったので……」ｶﾀｶﾀ

ちひろ「必要？」

P「こっちも見てください」

ちひろ「これは…？」

P「上段はCDデビュー済みの人数……第7弾までで35人ですね」

P「下段は今回の……」

ちひろ「ボイス争奪選挙、ですよね」

P「ハイ……そのweb投票で【メジャーのアイドル】以上まで昇格することの出来た人数が50人」

ちひろ「合計で85人……もしかしてプロデューサーさん」

P「この数字見たとき閃いちゃったんですよね………










　 一月15枚弱のSR、この85人だけでローテーションしたらどうなるかな、って」

ちひろ「な、何を考えてるんですかプロデューサーさん！」

P「まぁまぁ、落ち着いて一回だけ聞いてくださいよ。
　 このワークシートの①ってとこ分かります？」

ちひろ「『周期』って書いてありますけど……」

P「そう、これは一月平均14.67枚のSRを85人でローテした場合、一巡するのにかかる期間です。
答えは見ての通り約5.8か月、ほぼ半年で一周ですね」

ちひろ「こっ、これは……」

P「ちなみに、デビュー済みの子だけでガチャSRを回した場合ちょうど5か月、
声なし50人で上位とメダルを回したら約6.5か月で一周します」





P「ね、どうにかなりそうというか現状と大差ないでしょ？」

ちひろ「うーーーーん………」

P「ついでにすぐ下の②も見てください」

ちひろ「『1年』……というのは？」

P「①の5.8か月周期で1年に何枚SRが回って来るか、ってことですよ。
　 そして答えは2.07枚……」



P「わかりますか？2回ですよ！？
この人数で回しても1年のうちたった2回本気を出せばいいんです！」

ちひろ「……………」

P「半年コツコツ働いて、いい感じに貯まってきたところに担当アイドル追加！
タイミング的にも完璧じゃないですか！」

ちひろ「あの、プロデューサーさん……言いにくいんですけど」

P「どうかしましたか？」

」




ちひろ「他の子たちはどうなるんですか………？」

P「…………」

ちひろ「他の子たちはどうなるんですか………？」

P「…………」

ちひろ「プロデューサーさんは完璧と仰いますけど、ウチにはあと100人以上のアイドルがいるんですよ？
　　　　その子たちの出番はどうなるんですか？」

P「……もちろん考えてますよ」

ちひろ「本当ですか！」ﾊﾟｧｧ

ちひろ「それで、具体的にはどんな？」

P「またまた、分かってるくせに」

ちひろ「えっ」

P「ちひろさんさっき自分で言ってたじゃないですか」

ちひろ「私が……？
……！ま、まさか……」

P「そう、順位点報酬やレベル達成報酬……いわゆる『完走SR』ですよ。
　 この85人以外のアイドルはコッチに回します」

ちひろ「そんな…………」

P「あと出るレアリティはSRだけじゃないですよね。
　 Rは全部こっちに回しましょうか。これで数だけは確保できそうですね」

ちひろ「……………」

P「……何か言いたそうですね」




ちひろ「………それは、あまりにもムゴいんじゃ……」

P「………」

ちひろ「Rや完走SRは確かにお手頃ですけど、
　　　　その代わり、その……」

P「実戦的な性能ではない」

ちひろ「………そういうことです」

P「まあ、その気になれば課金しなくても取れますからね。
　 性能が一枚落ちるのは仕方がないでしょう」

ちひろ「………」

P「それに、強いカードをフロントに並べるだけが楽しみじゃない。
　 担当アイドルでロワイヤル艦隊を組んでみるのも一興じゃないですか？」

ちひろ「ですが、アイドルの強いカードが欲しいと思うのも自然な考え方だと思います！
　　　　そのチャンスすら与えられないのはちょっと……」



P「だれもチャンスがないとは言ってませんよ」

ちひろ「！」

P「鬼や悪魔じゃなし、挽回する機会はちゃんとようしてあげないと」

ちひろ「そ、そうですよね！」

P「そうです、簡単なことですよ。
　 次にトップ50に入ればいいんです」

ちひろ「…………次？」

P「そうです。





　 次の総選挙ですよ」

ちひろ「」

P「こっちも商売ですからねえ。

　 確信とまでは言いませんが、多少の指標が欲しいんですよ。
　 『金になるかどうか』、その指標がね」

P「そういう意味じゃあ、この総選挙のシステムは非常に分かりやすいと思いませんか？」

ちひろ「……次の選挙まで待て、と？」

P「ただ待ってても意味がない。

　 ちゃんとお金を貯めながら待ってないと。
　 大事な大事な『選挙資金』をね」

ちひろ「いいかげんにしてください！！」

P「………」

ちひろ「何ですか、二言目にはお金お金って……！！」

ちひろ「そんなに売り上げが大事ですか！」

ちひろ「それならどうして次から次にスカウトしてくるんですか！？」

P「………」

ちひろ「あなたがアイドルをスカウトしたのは『可能性』を感じたからでしょう？」

ちひろ「それなら最後まで責任をもってその可能性を信じてあげるのが筋なんじゃないですか！？」




P「何甘いこと言ってるんですか」

ちひろ「！」

P「いいですか？これまで総選挙が三回、デビューしてない子に限れば今回のボイス選挙も含めて4回。
………これだけのチャンスがすでに与えられてるんですよ？」

ちひろ「それは………」

P「便宜上「次の選挙」なんて言い方はしましたけどね、逆に現時点までで結果が出せてないことが全てなんですよ」

P「そしてその結果を展開に反映させて何がいけないんです？」

P「どこかのバカが給料一か月ぶんじゃどうにもならないとか言ってたみたいですが、
　 一か月で駄目なら半年分でも一年分でも突っ込めばよかったんだ」

ちひろ「そんな言い方………！」

P「そもそもです」

ちひろ「！」

P「個人でどうにもならないのなんて当たり前でしょう？
　 これは『総選挙』。有権者は何万人もいるんですからね」

ちひろ「それは……」

P「個人の頑張りでもひっくり返せない、
束になってかかっても上位アイドルにはかなわない。
………それはもう決定的な差ではないんですか？」

ちひろ「うぐっ……！」

P「そこまでの差を見てもなお、下位層に配慮しなきゃいけない理由がどこにあるんです？」

P「商品を売り出さなきゃいけない我々が、
購買力の高い層に目線を向けるのは立派な戦略なんじゃないですかね……？」

ちひろ「ぷ、プロデューサーさんの言ってることは戦略なんかじゃありません！
　　　　ただファンを切り捨ててるだけです！！」

ちひろ「それはあなたの大好きな顧客を逃がすこととおんなじなんじゃないですか！？」

P「肝心な時に金も出せねえ奴は客じゃねえっつってんだよ」

ちひろ「！？」

P「確かに、このシンデレラガールズってコンテンツは『基本無料』をサービスの肝として謳っています。
………だが、悲しいことにこの『基本』の意味をはき違えて居る奴が非常に多い」

ちひろ「一体どういう……」

P「分かりませんか？
　 課金システムがある以上、課金してるユーザーが有利になるもしくはより多くのコンテンツを楽しめるのは当然じゃないですか」

ちひろ「……！」

P「無料ユーザーが課金ユーザーと同じチャンスがあると思ってる方が間違いなんですよ。
　 平等にチャンスがあるとしたらそっちの方が不公平だ」

ちひろ「それはあくまでガチャの話で……」

P「商品展開でも同じですよ。
　 ビールメーカーが未成年をターゲットにしたお酒なんて作りますか？」

ちひろ「！」

P「無課金ユーザーと課金ユーザーはそれくらい層が違うんですよ。
同じ目線で考えるべきじゃない。




　 俺が言ってるのはそういう住み分けが、線引きが必要だってだけのハナシなんですよ」

ちひろ「………」

P「……まあ、ちょっとキツイ言い方だったことは否定しませんがね。
これからは建設的な話をしましょうか？
未デビューアイドルのファンをライブに呼ぶ方法とか」




P「案外コロッと声付きに乗り換えるかもしれませんよ！
　 そしたら今よりもっとお金使ってくれますね！！」ｱﾊﾊﾊｯ




ちひろ（事務所やめよう）


おわり