コナン「俺は……歩美を幸せに……」 灰原「……重症ね」(34)

ova「10年後の異邦人」のパラレルワールド的な感じです。
観たことがないと理解できない箇所がちらほらあるかもしれません。



 ──10年も待ったんだもん、もう10年待っても良いよね。

コナン「あれ……」

 見慣れた一室。多少記憶と違う箇所もあるが、コナンとなってから居候として間借りしている毛利家の一室に違いなかった。

コナン「そっか、俺……」

 自分の姿を確認する。俺の知っているコナンのものではない。
 灰原の作ったアポトキシン4869によって何故か10年後の世界にタイムリープしてしまった俺は、蘭が新出先生と結婚するという話を聞き、必死になって止める事に成功したのだが……。

コナン「結局、夢なんかじゃなかったってことだな……」

 頬を軽くつねってみる。痛い。ふっ、と苦笑ともつかない溜息が漏れた。

蘭「コナンくーん、もう起きないと遅刻しちゃうよー」

コナン「あ、うん! 今いくよー!」


 さっと朝食を済ませて俺と蘭は一緒に玄関のドアをくぐる。欄は今、地元の商事でolをしているらしい。

蘭「……コナン君、昨日はありがとうね」

コナン「え? あ、う、ううん」

蘭「恥ずかしいところ見られちゃったけど……。もう! 新一の奴、帰ったら絶対とっちめてやるんだから!」

蘭「……ほんとに」

蘭「どこで何やってるんだろうね……。もう2年も連絡ないんだから。……私のこと、ちゃんと覚えてるかな」

コナン(蘭……)


 キーンコーンカーンコーン


コナン「灰原、ちょっといいか?」

灰原「どうしたの、江戸川くん」

元太「なんだなんだ、また二人で内緒話かー?」

光彦「ずるいですよー、僕たちも混ぜてくださいよー」

コナン「あはは、わりーな、ちょっと二人だけではなしてーんだ」

歩美「……」



 校舎裏


灰原「……で、話って?」

コナン「いや……」

灰原「ま、聞くまでもないわね。昨日のお話の続きってとこかしら」

コナン「ああ。俺はおめーの作ったアポトキシhン4869を飲んで工藤新一の姿に戻った」

コナン「んで帝丹高校に来てみたはいいが、どうやら俺の周りじゃ10年って月日が経過したことになってるみたいなんだ」

コナン「24時間経てばもしかしたら元に戻るのかも……とも思ったんだが、どうやらそれも無かったみたいでさ」

灰原「……つまり、私の作ったアポトキシン4869でタイムスリップでもしたって言いたいの」

コナン「それ以外にこの状況を説明できるものがねーんだよ」

灰原「話にならないわ。アポトキシン4869にタイムスリップの効能があるなんて。そんなことありえない」

コナン「実際しちまってるんだから認めるしかねーだろ」

コナン「この10年の間に蘭は結婚するとか言ってるしよ……」

コナン「昨日なんとかそれだけは止めることができたんだけどな」

灰原「……止めた?」


コナン「え? ああ」

灰原「……なんで止めたの」

コナン「なんでって……」

コナン「そりゃ、そんなことになってたら止めちまうだろ」

灰原「あなた、もしかして、覚えてないの?」

コナン「へ? 何をだ?」

灰原「あなたと歩美ちゃんが付き合ってることをよ」

コナン「はぁ?!」

灰原「はぁ……、頭が痛いわ」

コナン「ど、どういうことなんだよ、それは!」

灰原「そうね、私もちょっと混乱してたみたい」

灰原「あなたに記憶がないってことは当然歩美ちゃんのことも抜け落ちてると考えるのが自然だものね」

コナン「ちゃんと説明してくれ、灰原」

灰原「あなたは中学のころに歩美ちゃんに告白されたの」


灰原「一度は角が立たないように断っていたのだけれど」

灰原「2年前……、そう、蘭さんが新出先生にプロポーズされた頃、あなたから歩美ちゃんに告白し返したのよ」

灰原「そうして晴れて二人はお付き合いすることになった」

灰原「周りにいる私達から見ても羨ましくなるほど幸せそうなカップルだったわよ」

コナン「なん……でそんなことになってんだよ……、嘘だろ……」

灰原「あなたが言い出したのよ。このままじゃいけないって」

灰原「2年前、あなたは本当に辛そうだった。でも、決心したのね」

灰原「8年も待たせてしまった蘭さんを自由にしてあげようって」

灰原「だから、時折取っていた蘭さんとの連絡も絶って、あなた自身も過去を断ち切るために……、歩美ちゃんと付き合うことした」

灰原「私は当初、そんな不純な動機で歩美ちゃんと付き合うことに不快感を覚えたわ。私も……あの子のことは親友だと思っているもの」

灰原「でも、それからのあなたたちの幸せそうな顔を見ていたら、いつしかこれで良かったと思えるようになっていた」

コナン「そんな……。灰原! 10年前に、元に戻る方法は無いのか?!」

灰原「……何度も言わせないで。私にとってここは10年後の未来じゃなくて、今なの」

灰原「……10年前に戻る薬なんて、そんなもの出来るなら世界がひっくり返るわよ」


コナン「……」

灰原「それに、私の見解は違うわ」

コナン「え?」

灰原「あなたはタイムスリップしたんじゃない」





灰原「記憶を失ったのよ」





コナン「……」

灰原「私はこの10年のあなたとずっと過ごしてきた記憶があるもの」

灰原「一昨日まで普通だった江戸川くんが、次の日には10年前からタイムスリップしてきたなんて言っている」

灰原「あなたが嘘をついているのではないとしたら、この世界でそんな現象を説明できる事象なんて、記憶喪失以外に私には思いつかないわ」


コナン「黒の組織……」

灰原「?」

コナン「黒の組織さえ捕まえれば……」

灰原「昨日も少し話したけれど、黒の組織はもう5年も前に雲隠れしてしまったわ」

灰原「それから組織に関する情報が上がってくることはなかった。ニュースにもそれらしいものは上がってこない」

灰原「……多分、組織事態が無くなってしまったんじゃないかしら」

灰原「それに、黒の組織を捕まえたところで研究していたのはタイムスリップの薬なんかじゃないわ。今のあなたにとっての解決策にはなり得ない」

コナン「くそっ……」

灰原「……あなたも混乱してるんですものね」

灰原「いいわ。また何か困ったら私に相談してきなさい。でも、今日みたいなあからさまなのはよしてね」

コナン「……?」

灰原「あの子を泣かしたら許さないってことよ」

コナン「あ……」

灰原「私は先に戻るわね」

灰原「……こっちの生活も結構楽しいものよ。私はこれで、満足しているわ……。それじゃ」



 放課後


コナン「探偵クラブ……ってとこに行ったほうがいいのかな、とりあえずは。もっと今の状況も知らなきゃなんねーし」

歩美「あ、コナンくん」

コナン「っ……! 歩美」

歩美「一緒にいこ!」

コナン「あ、ああ……」


コナン「(やべ、付き合ってるなんて聞いたせいか、妙にドギマギしちまう……。今の歩美は心も身体も俺と同じ16歳なんだもんな……。付き合ってたとしても何もおかしいところなんてないんだ)」

歩美「……ね、コナンくん、昼休み哀ちゃんと何話してたの?」

コナン「あっ、うん、あー、あれね」

コナン(どうする……! どうすれば乗り切れるんだこの状況……!)

歩美「コナンくん、昔から哀ちゃんと仲良いもんね……」

コナン「ち、ちがうって、さっきのはほんとになんでもない……、ほら、ただの連絡事項で……!」アセッ

歩美「じゃ、証拠見せて」スッ



コナン(?! 目を瞑って、少し顎を上げて……って、これって……!)

コナン(ええええええ! 嘘だろ?! で、でも、もう後には引けない……)


 ちゅっ


歩美「えへへ」

コナン(ドキドキドキ)

歩美「なんてね。ちょっと困らせてみたかっただけ」

コナン「えっ」

歩美「ふふ、ほんとに拗ねてると思った? 心配しないで。わたし、コナンくんのこと信じてるから」ニコ

歩美「でもあんなに慌ててくれるなんて思わなかったなー」フフ

歩美「わたし、思ったより愛されてる?」

コナン「バ、バーロー!//」


光彦「遅いですよー二人とも」

歩美「うひゃ」

コナン(あぶねー……ギリギリじゃねーか)

元太「ま、全部見てたんだけどな」

光彦「ちょ、ちょっと元太くん!」

歩美「////」

灰原「さっそく大胆な手を打つじゃない江戸川君。私はこの場合……お礼を言わなきゃいけないのかしら」

コナン「」

光彦「灰原さん、お礼ってなんのことです?」

元太「ふっふっふ、わかったぜー!」

光彦「え、何がですか? 元太くん」

元太「探偵クラブ部長の俺様にかかればこんな推理朝締め前よ!」

灰原「それを言うなら朝飯前、ね」

元太「つまぁぁり、コナンは俺達に内緒でこっそり灰原に恋愛相談をしてたってわけよ!」

歩美「え」


光彦「そ、そうなんですか? 灰原さん!」

灰原「ええ……。ま、そんなとこね」

灰原「でもまさかいきなり部室前で堂々とキスしてるなんて思わなかったけれど。私は優しくしてあげてって言っただけだから」

コナン「」

歩美「そうだったんだ……。ありがとう、哀ちゃん!」

灰原「私は当たり前のことを言っただけよ」

歩美「コナンくんも、そ、そ、その、ありがとう。わたしのことそんなに真剣に考えてくれて……、う、うれしいよ」

元太「ひゅーひゅー!」

光彦「あーあーやってられませんねー。こんなの見せ付けられたんじゃ部活のテンションがだだ下がりですよ!」

コナン「お、おめーら! くそっ、早く部室入ろうぜ!」スタスタ

元太「うひひ、顔真っ赤にしちまって。コナンのあんなとこ見れるのは珍しいなー」ニヤニヤ

歩美「ふふ」

灰原「そうね……。……こんな幸せな日常がずっと続いたらいいのに」

歩美「? 何か言った? 灰原さん」


灰原「いいえ、何も。行きましょうか」

歩美「うん!」


 博士の家


灰原「あら、また来たの」

コナン「ああ……。なんだかあそこは落ち着かなくてな」

灰原「毛利探偵事務所」

コナン「ああ」キョロキョロ

コナン「……博士が居ないとなんか変な感じだな」

コナン「ほんとに居なくなっちまったなんて、なんだか信じらんねーよ」

灰原「3年前に……ね。そうして、養子になっていた私がこの家と研究室を相続した……」

コナン「いっそのこと、俺もここに住めねーかな。部屋、余ってんだろ?」

灰原「だめよ。また歩美ちゃんに心配かけたいの」

コナン「そっか、そうだよな……」

灰原「あなたが『タイムスリップ』してから1週間が経ったけど、どう? 馴染めそう?」


コナン「そんな簡単にいくわきゃねーだろ」

コナン「色んなことが変わりすぎてさ……。どうしたらいいのかさっぱりわかんねーよ」

灰原「そうかしら」

灰原「最近は毎日歩美ちゃんの手を握りながら登校してくるじゃない」

灰原「二人の関係はどこまで進んだのかしら?」

コナン「っそそそんなんじゃねーよ! 歩美の奴がどうしてもっていうかr」

灰原「でもあなたもまんざらじゃない」

コナン「」

灰原「別にからかって言っているんじゃないわ。今日はそのことできたんでしょう?」

灰原「突然できた恋人の歩美ちゃん。それに戸惑いを感じているはずが、同時に居心地のよさも感じてしまっている」

灰原「あなたの中では小学1年生の女の子だったはずの歩美ちゃんに……ね」クス

コナン「自分でもよくわかんねーんだ……」


灰原「何もおかしくなんかないわ」

コナン「え?」

灰原「言ったでしょう? 『記憶喪失』になる前のあなたにとってはそれが当たり前のことだったのよ」

灰原「頭が混乱していても、身体がそれを覚えているのだとしたら何もおかしなことなんてないわ」

コナン「……やっぱり俺は記憶喪失なのかな」

灰原「私はその線を押させてもらうけどね」

コナン「そっか……」

灰原「でも、あなたの顔が晴れないのはそれだけじゃないみたいね」

灰原「……蘭さんのことでしょう?」

コナン「……ああ」

コナン「あれから蘭のやつ、生き生きとしちゃってさ」

コナン「それが本物なのか作り物なのかはわからねーけど、蘭の中で俺のことを待つって意思が固まったのは確実だ」

コナン「そう──」

灰原「──二度と戻ってこない高校生探偵、工藤新一」


コナン「ああ……」

コナン「戻れない……んだろうな」

コナン「黒の組織はもうねーし、仮に元に戻る薬が出来たとしても、戻った俺は26歳だ」

灰原「……」

コナン「はは、いったい『工藤新一』って人間は10年もの間どこで何をしてたんだろうな」

コナン「……俺は、26歳の工藤新一に戻れる自信がない」

コナン「いや、そんなこと、どうしたって無理なんだ……」

灰原「……漸く頭の整理がついたみたいね。以前のあなたからも同じような台詞を聞いたことがあるわ」

コナン「……」

灰原「で、蘭さんの件、どうするの?」

コナン「……」

コナン「やっぱり、諦めてもらうしかねーんだろうな……」

灰原「でも、あなた自身がその機会を台無しにした」

コナン「……ああ」


コナン「ほんとに馬鹿なことしちまったよ。いったいどうしたら蘭を幸せにできるのか、わかんねーんだ……」

灰原「……幸せの形は人それぞれよ。帰ってこないあなたを待ち続けるのが彼女にとって幸せなことかもしれない」

コナン「……あの涙見た後でそんなこと言えっかよ」

コナン「蘭の中じゃまだ俺は帰ってくるかもしれない存在だ。でも、俺は俺が帰ってこないことを知ってる」

コナン「bad end確定の未来なんかに黙って蘭を送り出すことなんてできっこねーよ……」

灰原「……あなたはそれで良いのね」

コナン「……それしかないんだ」

灰原「なら話は簡単よ」

コナン「え?」

灰原「あなたが『工藤新一』として最後の電話を掛けるの。彼女のことを振って、諦めさせてあげるのよ」

コナン「振るっつっても、俺と蘭は付き合ってたわけじゃ……」

灰原「あなたに恋人ができて……今は楽しくやってる。彼女よりも新しい恋人を選んだ」

灰原「そう告げればいいのよ」


コナン「そんな言い方……」

灰原「……また逃げるの?」

コナン「……え?」

灰原「あなたは2年前、連絡を絶つという方法を取った」

灰原「何故はっきりと別れを告げなかったのかしら」

灰原「それは彼女の心からあなたが消えていくのが怖かったからよ」

灰原「だから、いるのかいないのか分からない、連絡を絶つという曖昧な方法を選択した」

灰原「時間が全てを解決してくれることに任せた。結果、彼女の心は2年の間揺れに揺れることになった」

灰原「一体どんな気分なのかしらね。淡い期待と、ゆっくりと、真綿に締め付けられるように狭い来る絶望との狭間に立たされた彼女の気分は」

灰原「……出来ることなら自分では一生味わいたくないものだわ」

コナン「………」


灰原「江戸川君……、あなたは逃げたのよ」

灰原「彼女を楽にしてあげて」

灰原「あなたは蘭さんじゃなく、歩美ちゃんを選んだ。そう言ってあげるのが」

コナン「俺が最後にあいつにしてやれる、たった一つの優しさ……か」

灰原「もう同情はしないわよ」

灰原「……あなたは自分の足で歩かなければいけないから」

コナン「……わりいな、灰原。知らない間に随分迷惑掛けちまったみたいだ」

灰原「構わないわ。あなたがこうなったのは私のせいでもあるもの。それに」

灰原「こんな話、できるのはこの世界にあなたと私の二人だけだもの」ニコ

コナン「借りはいつか返すよ。ありがとな」スタスタ





灰原「……頑張ってね」




 その電話のコール音は、この世界で一番長く感じられた。
 周りの音は消え、静寂が全てを包みこむ。
 暗がりの中、一人佇んだ青年。
 一面の書籍に囲まれた部屋。
 一週間前、彼女が涙を零したこの部屋で。
 元・高校生探偵、工藤新一は、生涯最後の電話を掛けていた。



蘭「………」

新一「よう」

蘭「……今、どこにいるの」

新一「遠いとこ……かな」

蘭「ふざけないでよ……」

新一「ふざけちゃいないさ……。言えないんだ、どうしても」

蘭「二年間も、何してたの」

新一「楽しくやってたんだ」


蘭「え……?」

新一「俺、結婚してさ……。今度子供も産まれるんだ」

蘭「嘘」

新一「嘘じゃない」

蘭「名前、考えてあるの?」

新一「え、ああ、新っていうんだ」

蘭「あらた? 新一の新から取ったの?」

新一「あ、ああ」

蘭「奥さんの名前は?」

新一「……洋子」

蘭「……新一、嘘下手すぎ」

新一「嘘じゃないって」

蘭「私に諦めさせるために嘘言ってるんでしょ」

新一「違う」

蘭「……ねえ、何で帰ってこれないの。事件に巻き込まれてるって、一体何があったの。新一、お願いだから、教えてよ……。お願い……」


新一「……」

蘭「何で黙って、る……っ、の……。おし、えてよ……。わた、し、10年も待った、んだよ……。理由も、おし、えてもらえないような、関係だった、の……っ。新一……」

新一「………」

新一「………好きな人が、できたんだ」

蘭「嘘」

新一「………今度は嘘じゃない」

蘭「嘘」

新一「………俺はその女の子を生涯幸せにしたいと思ってる」

蘭「嘘、嘘」

新一「だから」

蘭「……」

新一「蘭のことは幸せにできない」


蘭「……っっっ!! やだ、やだよ、新一、好きなの……! っうぇ……、やっど、やっど言えだのに……、なんでぇ……!!!」

新一「ごめん」

蘭「ごれで終わりなんて、いや……、いやだよぅ………!」

新一「ごめん」

蘭「やだ……! 好き、ずきなのじんいちぃ……!!」

新一「……」

蘭「うええええぇぇぇん」

*
新一「………」

蘭「………」

新一「……落ち着いた?」

蘭「うん……」

新一「ごめんな」

蘭「……いいよ、仕方のないことだし。でも、乙女を10年も待たせた挙句この仕打ちなんて、新一は史上最悪のクソ野朗だよ」

新一「ああ、俺、最低だ」

蘭「でも、いいよ。今日連絡くれたから、許してあげる」

新一「蘭……」

蘭「20台のうちでよかったよ。30になってたら私、新一のこと刺してたかも。……私、もう10年待つつもりだったんだから」

新一「はは……」

蘭「………」

新一「………」

蘭「……小さい頃から、新一と色んなところにいって、色んなことして遊んで、楽しかった」

新一「俺もだよ」


蘭「思い出って、なんでこんなに楽しいことばっかりなんだろうね」

新一「……楽しいことばっかりだったからだろ」

蘭「……そうだね」

新一「……ああ」

蘭「これで最後、なんだよね」

新一「……ああ」

蘭「そっか、わかった」

新一「……うん」

蘭「ねえ、新一」

新一「……うん?」

蘭「新一が泣いてるの、私が気づいてないと思った?」

新一「……っ!」

蘭「……へへ、私のために泣いてくれてありがとう。……嬉しかった」

新一「蘭」

蘭「新一の大切な人、幸せにしてあげてね」





*
その後、新出先生のプロポーズを断ってしまっていた蘭は暫く恋愛から遠ざかっていたようだが、
めげない新出先生から再度プロポーズを受け、その約半年後に結婚式が執り行われた。
幸せそうな笑顔の蘭がそこにいた。
一方、俺達と言えば……。


歩美「やったー! これで大学もコナンくんと一緒だね!」

元太「ずりーぞ歩美―! コナンと灰原は当然として、判定ギリギリだったお前まで合格しちまうとか!」

光彦「僕らは悪夢の浪人生活の始まりですからねー……」

灰原「でも来年受けなおすんでしょ、亭丹大学」

光彦「勿論です! 灰原さんたちと一緒に大学に通いたいですから!」

元太「お前らと一緒じゃなきゃ面白くねーからなー」

灰原「ふふ、先輩として待っててあげるわ。でも2年は流石に待ちきれないから簡便してね」

元太「お、おいおい、今からそりゃねーぜー!」

光彦「頑張ります……はぁ」

歩美「あはは」

コナン「歩美」

歩美「? 何? コナンくん」

コナン「おめーが亭丹大学受かったら、言おうと思ってたんだ」

歩美「うん?」


コナン「歩美は俺が絶対幸せにする。約束だ。だから……、一生俺に着いてきてくれ」

元太「!!!」

光彦「な、ななな」

灰原「あらあら」

コナン「い、いやか?」

歩美「う、ううん!!! ぜ、ぜひおねがいしますっっ!!!!」

コナン「歩美!」ギュッ

歩美「あわ、あわわわわわ」

光彦「なんなんですかこれはー!」

灰原「春にはまだ早すぎるわねぇ……」

元太「コナンの頭の中だけ春が来ちまったみたいだなぁ……」




 二つの道があったとして。
 どちらが正解で、どちらが間違いか。
 二つの道があったのなら、きっと四つの道が開かれている。
 どの道に進んだとしても、前を向いて進んでいけばいい。
 前に進もう。この道を歩く、親友達と共に。

         
                      happyy end



*コナン「………」

灰原「あら」

コナン「……う」

灰原「お目覚め?」

コナン「え……」

灰原「あなた、随分うなされてたわよ。……最後の方はニヤニヤしっぱなしだったけれど」

灰原「3時間20分……。いつもより20時間以上短いわね。高熱が関係してるのかしら」

コナン「え……、ここは……? 歩美は……、歩美は……どこだ……?」

灰原「歩美ちゃん? この時間なら家でアニメでも見てるんじゃないかしら」

コナン「え、俺と歩美は付き合ってるんだよな……?」

灰原「………」

コナン「……」

灰原「あなたにそういう趣味があったとは知らなかったけれど。そういう夢を見てたわけ? そういう夢を見てニヤニヤしてたってわけかしら」

コナン「ゆ……め……?」

灰原「ええ。アポトキシン4869を飲んで元の姿に戻ったはいいけれど、トイレから出てこないから見に行ったらあなた気絶してたのよ」


灰原「それでそこに運んで寝かせたまま、観察させてもらったわ」

コナン「そんな……夢……だって……?」

コナン「歩美……、俺は……歩美を幸せに……」

灰原「……重症ね」

灰原「ちょっと歩美ちゃんに聞かせてあげたいけれど。彼女、喜ぶかしら」

コナン「灰原……、おめーなんてもん作ってくれんだよ……」

灰原「人のせいにしないでくれる? あなたの体調が悪かったのが原因なんだから」

コナン「はぁ……。俺、夢の中で1年半過ごしたんだぜ」

コナン「……夢の中のおめーが尤もらしーこと言うからすっかり騙されちまったじゃねーか」

灰原「あら、私も出てきたのね。それは嬉しいわ。夢の中の私はどうだった?」

コナン「何もかわらねーよ。相変わらず頭は回るし、色々相談に乗ってもらったりな」


灰原「それだけ私があなたの深層心理に深く刻み込まれてるってことかしら……。喜んでいいところかしら?」

コナン「バーロー」

コナン「つーかその夢の内容ってのが10年後の未来の話でさ。おめーも歩美も元太も光彦も、皆亭丹高校の2年生になってんだよ」

灰原「……」

灰原「このまま元に戻ることなく16歳になるってことかしら」

灰原「それはそれで楽しそうだから、私は構わないけれど」

コナン「夢の中のおめーと同じこというんじゃねーよ」

コナン「その中で俺と歩美がその……付き合ってるって内容でよ」

灰原「随分都合の良い夢ですこと」

灰原「ま、でも、本当にこのまま10年経ったらそういうこともあるのかもしれないわね」

灰原「16歳の歩美ちゃんは、それはそれは美しい女性なのでしょうね?」

コナン「……ああ///」

灰原「……重症ね」


                            bad end

すげぇ良かったお疲れ
あの話は俺も好きだから余計面白かった

自分もあの話が大好きで。
大好きが故にあの設定でもっと色々な話が見たかったなあって。
折角面白いのに15分しかないのは寂しいですよね。
初めて書いたので進行中は上げていいことを知らなくて、殆ど見て貰えなかったみたいなのが残念だったけれど、
見てくれた人がいて良かった。ありがとう。
また何かあったら書いてみます。それでは。

見た事無いけど凄い面白かったよ

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