勇者「もうだめだ、死のう…」(46)

 ーとある絶壁ー

勇者「もはや夢も希望すらもなくなったわけだが」

勇者「どうしてこうなったんだろうな…」

勇者「俺は普通に勇者として頑張ってただけなのに…」

勇者「くやしいのぅ…くやしいのぅ…」ポロポロ

 ~回想はじまり~


勇者として選ばれた俺はすぐさま旅に出るつもりで準備していると、

賢者「勇者に選ばれた?ついてくわ」

密かに好きだった幼馴染の賢者がそう言ってついてきた。

なんでついてくるんだと言ったところ…

賢者「そ、そんなの察しなさいよね、バカ」

と、言われた。

どう見てもツンデレですありがとうございます。

と、いうわけで二人旅になった。

彼女と二人で始めた旅は楽しかった。

まだこの時は死のうだなんて考えられなかった。

何かが壊れだしたのは二人旅がきつくなってきた頃からだった。

進めば進むほど敵は強くなり

二人ではどうしても対処できなくなってきていた。

相談した結果、新たに仲間を入れる事になった。

戦士「はっはっは、俺様にまかせてくれよ」

一人目は戦士。

商人「よろしくお願いします」

二人目は商人。

これでもう少し楽に旅が出来る。

それに二人の時より楽しくなりそうだ。

…ふたりきりの時間は減ってしまったけど。

待っていろ魔王。

お前を倒して必ず世界を平和にしてやるからな!!

でも、そこからだ。

俺に訪れた絶望は…。

夜も遅くなり宿屋に泊まった俺達。

二部屋に分けていたのだが

同じ部屋のはずの戦士がいなくなっていた。

酒場にでも行ったのかと思っていたが

…隣から声が聞こえる。

『いいじゃないかよぉ、へへっ』

『ちょ、やめてよ』

『絶対俺のほうがいいって』

『そりゃ強くてかっこいいとは思うけど』



戦士と…賢者の声だった。

え、どういうこと?

なにこれ?



『優しくしてやるからよ…』

『んっ…』



隣で物音がしている。

なんだよ…おい…

やめてくれよ…

気がつけば俺は部屋を飛び出した。

あいつらは何を…していたんだ…

そんなの分かりきっている。

認めたくない、何かの間違いだ。

彼女は確かに俺を…

頭の中がグルグル回っている。

正常な判断が出来ない。

しばらく外を歩いていると、


商人「勇者?なにしてるんだい?」


後ろから商人の声。

なんかえらい大金をつかんでいる。

それは?と聞く。


商人「あぁ、いらないもの売ってきたんだよ」


さらっと答える商人。


商人「いやぁ思った以上に大金になったよ」


とてもうれしそうに語る。

俺はそれに相づちを打つのが精一杯だった。

しばらく外を散歩して部屋に戻ってくると


戦士「どこいってたんだよ」


いつの間にか戦士は戻ってきていた。

なにやらご機嫌のようだ。

ふと、見た俺の荷物。

…やけに少なくなっている。

それどころか装備品のすべてがなくなっている。

あれ?

戦士「俺戻って来たの今さっきだぞ?」


戦士に聞くとそう答えた。

きっとそれは間違いないのだろう。

酒の量がほとんど減ってない。

つまり飲み始めたところだったからだ。

それに…いや、やめておこう…

なら誰が俺の装備品を持ち出したのだろうか?



商人『あぁ、いらないもの売ってきたんだ』



ふとさっきの言葉が浮かんだ。

まさか…

しかし仲間を信用してないわけではない。

ただなんとなく嫌な予感がした。

俺は町の武器防具屋に行った。

店員「えぇ、確かにさっき商人さんから買い取りましたが…」


売ったものを見せてもらうと

間違いなく俺が使っていた装備品だった。

何で俺の装備品売られてんの?

買い替えとかそんなの?

…そんなはずがない。

新調するなら売値より高くつく。

どう考えても意図的に俺の装備品は売られたのだ。

買い替えとかなら普通に俺に言ってからするだろう。

無断で勝手に拝借して売り飛ばしたりするはずがない。

俺は…もうわけが分からない。

いっそ叫びたかった。

あいつらに殴りかかりたかった。

俺が何したんだ!!

何か悪いことしたか!!

でも、俺はそんなことする事はできやしなかった。

優しさなんて無駄に持ってるもんじゃないよな…

仲間だと思ったやつらに裏切られた…。

幼馴染にすら…。

もう…俺に…何かする気力は残っていない…。

次の日。

戦士「はぁ!?パーティ解散!?」

商人「あら」

賢者「え?」


みんなにここで解散すると告げた。

もう自分の好きなようにしてくれてかまわないと言う。

商人「えっと、荷物とかはどうなさいますか?」


勝手にもって行けばいいと言う。

もうどうだっていい。


戦士「まぁかまわねーけどな、なっ?」


戦士はそういって賢者の肩を抱こうとして避けられる。


賢者「勇者、何が…」


賢者が何か言おうとしたがそれを遮るかのように立ち上がる。

もう言うことなんてない。

みんなに「お元気で」とだけ言って外に出る。

 ~回想終わり~


勇者「俺ってなんだったんだろうな」ポロポロ

勇者「ただ魔王討伐できなかったのは悪いと思うけど」ポロポロ

勇者「もうこれ以上生きてると心が壊れそうなんだ」ザッ

勇者「ここから飛び降りれば楽になれるだろう」テクテク

勇者「さようなら」タッ




グシャ

 ー某城ー


王様「おぉ勇者よ死んでしまうとは情けない」

勇者「…」

勇者(忘れていた)

勇者(自殺でも蘇らされるのか…クソッ)

勇者(死ぬのはダメとなると…)

勇者(とことん堕ちてやるよ…)

勇者(もう勇者なんかしらねーよ)

 -某町-


勇者(まずは手始めに金品強奪でも)

タッタッタ

勇者(あの男から奪うか)

勇者「おい、その持ってる物よこしな」

男「あ?」ズサー

勇者「聞こえなかったか?」

勇者「痛い目見たくなければそいつをよこせ」ジリ

男「お前…これが盗品だって分かってんのか…」ジリ

勇者「は?」ピタ

町人「見つけた!それを返してください!!」タッタッタ

勇者「」

勇者「なぜか奪おうとしたのに」

勇者「男ぶっ飛ばしたらお礼と言って野菜もらってしまった」

勇者「くそ、まだまだ!!」

勇者「史上最低のやつに君臨してやるからな!!」

 ー夕刻 町外れー


勇者「なぜだ」チーン

勇者「脅して巻き上げようとしたらカツアゲ中の奴だったり」

勇者「幼女誘拐しようと連れ出したらすぐ家が火事にになったり」

勇者「商品奪って逃げたらそれが爆弾(爆破寸前)だったり」

勇者「どうやってもいい事になってしまうんだが…」

勇者「いや途中で分かっていたさ…」

勇者「勇者ってのは悪いこと出来ないもんなんだ」

勇者「死ぬことも出来ない悪いことも出来ない」

勇者「本格的に絶望じゃないか・・・」グゥ~

勇者「腹減ったな」

勇者「何か買ってくるか」テクテク

勇者「今夜寝る所どうしよう」

勇者「宿屋いってあいつらと鉢合わせはヤだしな」

???「あれが例の?」

????「そうみたいですね」

??「…」

勇者「野宿~ひゃっはー」

勇者「はぁ…」

勇者「やることやったし」

勇者「当初どおり魔王倒しに行くか」

勇者「別に誰かに褒めてもらいたくてやるわけじゃない」

勇者「地位も名誉もいら…ない…」ポロ

勇者「ただ…楽しい日常…」ポロポロ

勇者「楽しい日々が過ごせたら…」ポロポロ

勇者「よかった…んだ…」ポロポロ

勇者「勇者として始めた頃は楽しかったのに…」ボタボタ

勇者「なんで…」ボタボタ



「だったら始めた頃に戻るってのはどうかな」



勇者「え…」

賢者「色々やってて遅くなったごめん」

勇者「けん…じゃ…」グジュグジュ

賢者「うわ、ものすごい顔してるし」

賢者「やめてよねそんな顔するの」

賢者「…と、言っても原因の一端は私にもあるから文句言えないか」ポリポリ

勇者「なんでここに…」

賢者「そりゃ『当初に戻った』から」

勇者「え、でも…戦士と…」

賢者「やめてよねあんなクソの名前言うの」

勇者「え?」

賢者「はいはい説明するから顔を洗ってくるっ」

勇者「う、うん…」

賢者「どこから言えばいい?」

勇者「全部かな」

賢者「ダルいわね」

勇者「でも説明してくれないと」

賢者「はいはいごめんなさいね」

賢者「まず最初に…」

賢者「あのクソの話から」

勇者「あまり女の子がクソクソ言うのは…」

賢者「だまらっしゃい!!」

勇者「はい…」

賢者「夜、勝手に部屋きて迫ってきた」

勇者「…」

賢者「『勇者より俺にしないか?』とかいって」

賢者「キモい顔して擦り寄ってくるもんだから」

賢者「幻惑呪文かけておいた」

勇者「はっ?」

賢者「そしたら勝手にベラベラしゃべりながら怪しい踊り踊ってたわ」

勇者「ブフッ」

賢者「なによ?」

勇者「あの体で踊ってるの想像したら…」

賢者「…言いたいことは分かるわ」

賢者「で、あいつ言ってたんだわ」

賢者「『勇者なんかお前に似合わないだろ』」

勇者「…」

賢者「とりあえずアソコ二桁ほど蹴り上げて倉庫に放り込んでおいたわ」

勇者「!?」サッ

賢者「はいはいあんたにはしないから」



おもしろい

がんばれ

賢者「今日また何もなかったように迫ってきたから」

賢者「幻惑呪文多重にかけて逃げてきたわ」

賢者「知ってる?多重にかけたら夢と現実がぐちゃぐちゃになるんだって」

勇者「じゃあ戦士は…」

賢者「うん廃人」

勇者「」

賢者「寝取ろうとしたあのクソにはこれでいいの」

賢者「死ななかっただけありがたいと思ってほしいわ」

勇者「じゃああの夜…賢者はその…」

賢者「なんともないよ」

勇者「」バタリ

賢者「なんで倒れるの!?」

勇者「安心しすぎて…」

賢者「バカね」

賢者「あんたを裏切るわけないでしょ」

賢者「わ、私はあんた一筋なんだから///」

勇者「」バタリ

賢者「いいかげんにしなさい!!」

勇者「俺も信じられなくてごめん」

賢者「こっちも気づくのが遅かったし」

賢者「おあいこだよ」ニコ

勇者「そっか」ニコ

賢者「で」

勇者「?」

賢者「あんたら出てきたら?」

ゴソゴソ

武闘家「なんかいいふんいきだったから」

魔法使い「ちゅーするまで観察してようかと…」

勇者「誰?」

賢者「新しいメンバー」

賢者「安心して、信用できる子達だから」

武闘家「賢者ちゃんの親友の武闘家でーす」

魔法使い「あの…魔法使いです」

魔法使い「さっき…人助けしてましたよね…さすが勇者ですね」

武闘家「そうそう、かっくいーなー」

勇者「え、いや…あれは…」

勇者「それよりこの子達大丈夫?」

賢者「故郷から呼び寄せた友達」

勇者「そうなのか」

勇者「それなら絶対信用できるわ」

賢者「あーついでにこの子らアレだから」

勇者「アレ?」

武闘家「魔法使いちゃんよく自己紹介できたねー」チュー

魔法使い「あ、武闘家ちゃん///」チュー

勇者「」

賢者「バリッバリの百合だから心配なし」

勇者「べ、別に心配してなかったよっ」

勇者「普通心配するのはそっちじゃないか?」

賢者「…そういえばもうひとつ言うことあった」

勇者「誤魔化したなおい」

賢者「はいこれ」

勇者「これ…武器と防具?」

勇者「しかも今までのより上質の装備だ」

賢者「あの商人にも天罰あたえておいたから」

勇者「え?」

賢者「装備品売り飛ばされたんでしょ?」

勇者「なんでそれ知ってるんだ」

賢者「あんたいなくなったあとすぐに自分で言ってた」

賢者「『あの人って弱いくせにいい装備持ってたのよねー』」

賢者「『生意気だから全部残さず売ってやったわ』」

賢者「『おかげでこっちはガッポガッポ儲けちゃったわー』」

賢者「と、言ってたから」

賢者「商人名義で超高級な装備とか買いまくってやったわ」

武闘家「こっちも初っ端からいいもん装備できてウハウハであります!!」

魔法使い「…必要ないものまで買ってたよね?」

賢者「hahaha!!全部他の店に転売してこっちがガッポガッポだってーの!!」

勇者「これはひどい」

勇者「これはひどい」

賢者「と、いうわけで今頃商人は」

賢者「身売りしても簡単に払えないほどの借金を抱えて泣いてるところよ」

勇者「いくらなんでもやりすぎでは…」

賢者「言ったでしょ?」

賢者「あんたは裏切らないって」

賢者「私は勇者の味方」

賢者「勇者にひどいことする相手は」

賢者「私にとっては敵なの」

勇者「賢者…」

勇者「ありがとう」

賢者「た、ただ私はあんたの汚い顔見たくなかっただけよっ///」プイッ

武闘家「ツンデレはいりまーすっ!!」

魔法使い「…賢者ちゃんはいい子だよ」

勇者「うん、そうだね」

賢者「ちょ、みんななによぉ」



みんな「あっはっはっはっは」

勇者「さて、明日からまた『旅の始まり』か」

賢者「そうよ」

武闘家「わくわくしてとまらない!!」

魔法使い「…私たちはこれが初めてだもんね」

勇者「みんなこれから苦しい時もあるし辛い時もある」

勇者「でも、力を合わせて頑張っていこう!!」

賢者「かっこいいこと言っちゃって」

勇者「い、いいじゃないかよ」

武闘家「おや、賢者ちゃん濡れた?」

賢者「あんた何を言ってるんだ」

魔法使い「…相変わらず素直じゃないね」

賢者「ちょっと、魔法使いまでなによ」

魔法使い「私達みたいに隠さなくていいのに」

勇者「ちょっとみんな聞いてくれよ」

賢者「あんたらこっちくんな!!」ジリジリ

武闘家「元々賢者ちゃんだってこっち寄りだったでしょー?」ワキワキ

魔法使い「…素直になったらいいだけだよ、ね?」

俺は死ななくてよかったと今なら思える

生きていればこんないい仲間に恵まれる

毎日を楽しく過ごすことも出来る

大切な人と一緒に過ごす事も出来る

でも今は…

勇者「みんな聞いてくれない…」

賢者「勇者助けて!!」

武闘家「捕まえたっ!!そーれ」

魔法使い「…うりうり」

賢者「いやーっ!?」

勇者「もうだめだ、死のう…」



 happy end?

おつ

初ssということで頑張ったらひどいことになった。
もうちょっと話し盛れば良かったかな?

ものすごく短かったけど見てくれた人、支援してくれた人ありがとう

今度スレ立てる時は長い話にする。

予定タイトル↓

まおう「よくきたな、ゆうしゃっ」勇者「なにこれかわいい」

ええのぅ

勇者物はやはりよきかな・・・

初ssでntrを匂わすとはなかなかや
今回はハッピーエンドだったけど

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