エテボース「ポケモン戦記」(402)


人間がポケモン世界から姿を消して幾年。文明は衰退した。

残されたポケモン達は人間たちの遺した文明を受け継ぎ、復興と繁栄を遂げた。

彼らはポケモン共和国という国を立ち上げ、協調と共和のもと、永遠の平和を互いに誓い合った。

だが、ポケモン達はタイプごとに分かれ共和国内部に独自の国を立ち上げた。彼らは『法』や『技術』など、人間をほとんど模倣することに成功したのだ。文明レベルは、兵器が存在しないことを除き、人間のいなくなる1世紀前のレベルまで戻った。

そして、それが引き金となり、ポケモン共和国は最後の『平和宣言』も空しく、崩壊の一途をたどることとなっていった…


―――某国某所―――

?「いやはや、皆様のおかげで真の平和は目前ですヨ。もうポケモン共和国は持ちまセン。強力なリーダーは必要不可欠なのでス」

ウインディ「がははは!それも貴様の功労だな!」

カメックス「この炎、水、電気という大国同士の連合とは…改めてみても大胆ですね」

エレキブル「ふん。協調など必要ないが、水の国と炎帝国が結べば我が国にも損害が出るだけだからな。仕方がない」


?「まあまあエレキブル王…これも平和のためなのですヨ」

?「でハ…明日にも大連合発足のニュースを流すとしましょうカ。各国にリーダーの存在を知らしめるのでス」

ウインディ「がははは!ならば今日のところは解散だ!また会おう諸君!」


―――翌日 ノーマル・飛行国 大統領邸―――

tv『本日未明、重大な発表がなされました!』

tv『なんと、炎帝国、水の国、電気王国が同盟を結び、『北部大連合』が発足したということです!』

tv『この発表により、ポケモン共和国全土には不安と衝撃が走っています!』

tv『ポケモン共和国元老院主席のペルシアン氏は格闘国本部より…』

エテボース「プ、プクリン大統領、これは…」

プクリン「まずいことになったな。あの北部三大国が同盟とは…予想していなかった」

エテボース「あの三国が結べば確かに『三すくみの関係』を打破できます」

エテボース「しかし、電気王国と水の国は犬猿の仲だと聞いていましたが…」

プクリン「ウインディ皇帝だろう」

プクリン「彼としては電気王国と水の国の不仲は不利益だ。ここでその二国を抱き込んでおけば、後々の脅威は無くなる」


プクリン「これは侵略開始の宣言と同意だ。我が国は炎帝国と国境を接している…」

プクリン「エテボース第一議長!すぐに国境へノーマル軍を派遣せよ!」

エテボース「はっ」

エテボースは尻尾早に大統領邸を立ち去った。


ノーマル・飛行国は簡単な大統領制である。

大統領は国民投票で選ばれるが、任期は原則無制限である。

大臣職はほとんどを大統領が兼任し、その下に第一議会と第二議会を置く。

第一議会は大統領の弾劾権をもつなど、第二議会よりも権限が強く、人数も極めて少ない。

そして、その第一議長は議会内での拒否権を持ち、権限としては実質大統領に次ぐ国のno.2となっている。


エテボース「はぁ、ついに来たか…」

エテボース「そう簡単には攻めてこないといいんだけどな…」

エテボース「とにかく、軍の司令部に電報を送らないと」


―――数日後 ノーマル・飛行国首都 中央広場―――

オタチ「…戦争だって??」

ラッタ「ああ、噂だとこの国も狙われてるらしい」

コラッタ「うそでしょ!?ヤバいじゃん!!」

ジグザグマ「エテボース議長が国境に軍を派遣させたそうじゃぞ…」

ポッポ「これは間違いないね。あーあ、平和な時代も終わりかぁ」

ドードー「まじポケモン共和国なにしとんwww」



―――草・毒の国首都―――

ブースター「我が国及び大連合は貴国との友好を望んでいます」

ブースター「だから、この条約を結んでいただきたいのです。一度お目通しを」

リーフィア「パラパラ…き、貴様!なんだこの不平等な内容は!?」

ブースター「何を仰いますか。ただの友好条約です。結んでいただければ貴国に武力措置は致しません」

ロゼリア「外相、力の差は歴然だ。やむをえん」

リーフィア「ロゼリア元帥…ぐ、仕方ない…」

リーフィア「調印しよう…」

ブースター「フフ…末永い友好を」


―――数日後 ノーマル・飛行国 大統領邸―――

エテボース「草・毒の国、鋼の国、岩・地面の国さらに虫の国が大連合と不平等条約を?」

プクリン「ああ、国境を交える小国が次々とだ。エスパー国は使者を処刑して抵抗しているそうだがな」

エテボース「いつ我が国に白羽の矢が立つかわかりませんね」

プクリン「うむ。時間の問題だろう。だが、わが国には空軍と産業がある。そう簡単に不平等条約を結ぶつもりはない」

エテボース「そうですね」

エテボース「これはある方からの助言なのですが…今のうちに氷の国と同盟すべきだと思います」

プクリン「ん? あの国は国境を接してはいないぞ…」

エテボース「空軍は役に立ちます。しかし、氷の国に敵対されては挟み撃ちの上タイプ的にも不利です。」

エテボース「格闘国は仮にも、平和宣言を出したポケモン共和国の本部ですからまず攻めては来ないでしょう」

プクリン「うむ。近いうちに使者を派遣しよう。国境での動きはまだないか?」

エテボース「はい。今のところは」

プクリン「軍を出動させる機会がなければいいのだがな」

エテボース「はい。仰る通りです…」

プクリン「我が国には自国防衛の最低限の戦力しかない」

プクリン「とてもあの大国の勢いを止めるのは無理だろう…」

エテボース「仕方ありませんよ。それが大統領の政権意向だったのですから」

エテボース「それよりも活発な経済と平和をささえることが第一です」

プクリン「そうだな…」

―――後 氷の国 王宮―――

オニスズメ「お初にお目にかかりますユキメノコ女帝陛下。ノーマル・飛行国より使者として参りました」

ユキメノコ「寒い中ご苦労様ね。で、話とは何かしら?」

オニスズメ「はい。先日、北部大連合が発足したのをご存知だと思います」

オニスズメ「彼らはその軍事力を持って近隣諸国を征服しようとしております」

オニスズメ「我がノーマル・飛行国もその強権に曝されているのです」

ユキメノコ「知っているわ。続けなさい」

オニスズメ「我が国は、伝統と産業を守るため、その蛮行を断固として受け入れないつもりです」

オニスズメ「そこで、貴国との同盟を提案したいのです」


ユキメノコ(そう来ましたか…)

ユキメノコ(ノーマル・飛行国は産業の栄えた国と聞いている。炎帝国に支配されれば我が国への侵略拠点となりかねない…)

ユキメノコ(ここは、条件でも付けて受諾しましょうか…)

ユキメノコ「いいでしょう。ただし、ノーマル・飛行国の技マシン産業を我が国と共有すること。これが条件です」

オニスズメ「ありがとうございます。その件については、我が国で審議させていただきます」

ユキメノコ(これでひとまず大丈夫かしら…)


―――炎帝国―――

ウインディ「がはは!ノーマル国と氷の国が同盟か!これは好機だな!」

ガーディ「と仰いますと陛下…?」

ウインディ「がはは!奴らはほのおタイプを弱点にしている!それを利用してやるのだ!」

ウインディ「適当に戦争でもして、どさくさに紛れてノーマル・飛行国を占領してしまえばいいわ!」

ガーディ「次の狙いはやはりノーマル・飛行国ですか」

ウインディ「がははは!当然だ!奴らの技マシン産業を抑えてしまえば我が軍はさらに軍事力を高められよう!」

ガーディ「どうして不平等条約ではないのですか?」

ウインディ「がははは!よい質問だ!奴らの技マシン産業は同盟国の氷の国にも近隣諸国にも流れている!それでは意味がないだろう!」

ガーディ「つまり、独占でなければ意味がないと?」

ウインディ「当然だ!」

ウインディ「それに、草の国も岩・地面の国もいずれは併合するのだ!特に変わるものではないわ!」

ウインディ「がはは!このご時世、力こそ全てなのだ!」

ガーディ「全くです陛下」

ウインディ「いづれはこのポケモン共和国内諸国全てを我が手中に収めるのだ!」

ガーディ「そのようなことは陛下にしか実現できません」


ウインディ「…ところで、エスパー国はどうなったのだ?使者を殺したと聞いたが」

ガーディ「はい。条約締結には応じないつもりでしょう。いかがいたしますか?」

ウインディ「がははは!腕白小僧め!その勇気に免じてもう一度だけ機会をやろうではないか!」

ガーディ「もう一度使者を送りますか?」

ウインディ「がはは!今すぐにでも送れ!とびっきりの愛国者をな!」

ガーディ「御意」


―――…

ガーディ「ということだ」

ブースター「そうか…ならば適任を遣るとしよう」

ガーディ「ん?今回は自分で行かないのか?」

ブースター「ははは。僕も随分と功績をため込んできた」

ブースター「ここで死にたくはないのでね」


ガーディ「ふん。賢い奴だな」

ブースター「君は何故私がこんな外交職を始めたか知っているか?」

ガーディ「知らないね」

ブースター「もうすぐのはずなんだよ…」

ブースター「僕の夢がかなうのはな」

ガーディ「いいだろ。じゃあ使者の件はお前に任せるぞ」

ブースター「あいよ」


―――エスパー国―――

ヒトカゲ「では、条約に応じる意思はないということでよろしいのですか?」

ヤドキング「うるさい!お前たちなどに従うものか!こいつを処刑しろ!」

ヤドキングの合図とともに、数匹のエスパーポケモンが使者を取り囲んだ。

ヒトカゲ「結構です。自分で行きますよ。私は皇帝陛下に命を捧げた身、死など恐れはしません」

ヤドキング「くっ…バケモノめ!」


ヒトカゲ「それは貴方ですよ閣下?閣下は自国民を危険に曝すのです」

ヒトカゲ「それこそ本当の悪なのですよ」

ヤドキング「つれていけっ!」

ヒトカゲ「では、御武運を祈ります」


使者は自らの足でその場を去った。そして、すぐに刑は執行された。

数日後、彼の言葉通り、エスパー国は窮地に立たされることとなったのである。


―――ノーマル・飛行国―――

tv『ついに戦争が勃発しました。ポケモン共和国内国際法に基づき、大連合はエスパー国に宣戦』

tv『その強大な兵力により、エスパー国は圧倒されているということです』

tv『それを受けて、エスパー国の隣国、悪国もエスパー国への侵攻を始めた模様です』

tv『我が国が氷の国と同盟を結んだ直後の戦禍に、各国は同様の動きを見せています』


プリン「戦争だってやっべええええええ」

ゴニョニョ「大連合に勝てるとでも思ったのかよwww」

エネコ「物騒ですわ」

ヨーテリー「決着なんてあっという間につくでしょwwwww」

マッスグマ「ま、オレたちにゃ氷の国が味方に付いてるから余裕だなwww」



エスパー国がそれから間もなく敗戦したということは言うまでもない。

エスパー国は炎、水を中心とした部隊と悪国に分断占領され、主権、領土含めて完全に消滅した。そして、植民地では激しい差別政策などが敷かれた。

元首ヤドキングは逃亡。共和国全土で指名手配となった。







だが、この戦争はまだ序章に過ぎなかった…





―――大統領邸―――

プクリン「ついに始まったか…」

エテボース「はい…平和は、もう維持できないのでしょうか…」

プクリン「残念だが…これは仕方のないことなのかもしれん」

プクリン「人間もこうやって滅びていったのだろう」

エテボース「我らも辿るは滅びの道ですか」

プクリン「もちろん、黙ってみているつもりはない。共和国元老院時代に最後の平和宣言を出したのは私なのだからな」


エテボース「承知しております。私はその『貴方』に憧れて政治家となったのですからね」

プクリン「はは。そう言ってもらえて嬉しいよ」

プクリンは一つ微笑んだ。それは大統領などという肩書きのもとではない。

エテボース「私は今でも大統領と話ができるだけも舞い上がる思いです」

エテボース「どうかこの国に戦禍がもたらされないことを祈ります」

プクリン「私も同感だよ。我が国に永遠の平和を」


その後しばらくは特に各国での動きはなかった。

突然の戦争勃発により、各国は慎重に動かざるを得なかったのだ。



―――数か月後 氷の国 王宮―――

ユキメノコ「まさか…あなたが直接出向いてくるなんてねウインディ」

ウインディ「がははは!今回の提案は極秘としておきたいことだからな!」

ユキメノコ「提案…?」

ウインディ「がはは!その通り!」

ウインディ「我の次の標的はほかでもない、ノーマル・飛行国だ!」

ウインディ「奴らの産業!空軍!そして地理!世界平定には有利なものがすべて揃っている!」

ウインディ「手に入れないなどという手はないだろう!」


ユキメノコ「世界平定とは呆れたものね…」

ユキメノコ「貴方、元老院時代に平和宣言を提唱したじゃないの」

ウインディ「がはは。あの頃の我は若かったのだ…そして、無知だった」

ウインディ「がははは!我は気付いたのだ!世界平和など無意味だとな!」

ウインディ「いづれは解れ、まやかしの平和など終わりを迎えるのだ!このポケモン共和国のように!」

ユキメノコ「でも、我が国はノーマル・飛行国の同盟国。そんなことは…」

ウインディ「がはは!頭のよいお前ならもうわかっているだろう!」


ユキメノコ「う…ノーマル・飛行国を犠牲にしろというの?」

ウインディ「がははは!ご名答だ!」

ウインディ「炎帝国は氷の国との平等条約締結と引き換えに、ノーマル・飛行国との同盟破棄を要求する!」

ユキメノコ「我が国は今、ノーマル・飛行国よりもたらされた技マシン産業により、潤っているわ」

ユキメノコ「世論が同盟存続に傾くことは必至よ…」

ウインディ「がははは!そこも考えてある!」

ウインディ「最近…我の周りで我の命を狙う者が現れたのだ」

ウインディ「そやつらの粛清をついでに、氷の国との交戦理由をつくるのだ!」


ユキメノコ「氷の国民によるテロにでも見せかけると言うのね…」

ウインディ「その通り!そしてノーマル・飛行国を戦争に引きずり出すのだ!」

ウインディ「あとは機を計って同盟を破棄してしまえばよい!戦時のごたごたで多少の融通は利く!」

ユキメノコ「貴方の大胆さはやっぱり消えてないのね」

ウインディ「どうする!提案を受け入れるか?」

ユキメノコ「はじめからそのつもりしかないのでしょうに。タイプ相性を考えればすぐわかるわ…」

ユキメノコ「…約束しましょう」

ウインディ「がはは!お互いの繁栄を望もうではないか!」

ウインディ(束の間の、な…)

ユキメノコ(束の間の、ね…)


―――炎帝国 皇居―――

ガーディ皇子兄「キャハハハ!暗殺計画の方はどうだ参謀長?漏れていないだろうな!」

バシャーモ「はっ。もちろんです閣下」

ガーディ皇子兄「父上め…よりによって弟を正統後継者に選抜するとは…許せない!」

バシャーモ「お気持ちはよくわかります閣下」


ガーディ皇子兄「キャハハ!でももうすぐ終わりさ!この国は僕のものになるんだ!」

ガーディ皇子兄「キャハハ!弟も父上もみんな死んじゃえばいいんだ!」

バシャーモ「…」

バシャーモ「それはどうでしょうか」

ガーディ皇子兄「キャハハ!なんだなんだ参謀長?怖気づいたか?」

バシャーモ「いえ、そうではありません」


ガーディ皇子兄「ん?お前も父上に恨みがあるんじゃないのか?」

バシャーモ「はい。あります。初めのうちは私も閣下に賛同していました」

バシャーモ「ですが、それはただ皇位継承に異議を立てる程度のもの」

バシャーモ「このようなばかげた考えではなかったはずです」

ガーディ皇子兄「きっきさまっ!」

ガーディ皇子兄「僕に逆らうつもりか!?」

バシャーモ「はい。罰は受けるつもりです。ただし…」


バシャーモ「お前も一緒にだこのドラ息子め!」ガシッ

ガーディ皇子兄「ま、まさか、今までのことは全て…」


コロコロ

ビリリダマ「びりびりのびり」

カッ

ドッガァァァァ…




―――ノーマル・飛行国 大統領邸―――

プクリン「なんということだ…最悪の事態が起きてしまった…」

プクリン「炎帝国が氷の国に宣戦とは…同盟国の戦争とあっては我が国も参戦せざるをえなくなる…」

プクリン「他タイプの国民が、あの差別風潮の厳しい炎帝国に入り込めるはずがない」

プクリン「…やはり炎帝国の狙いは…?」

そこに、ドタドタと足音を立ててエテボースが駆け込んできた。


エテボース「だ、大統領!国内に動揺の声が広がっています!」

プクリン「わかってる。だが、どうしようもない」

プクリン「すぐにでも参戦要求がくるだろう」

エテボース「し、しかし!ここで戦争となれば世論は…」

エテボース「大統領不信任になりかねません…」

プクリン「私のことなどかまうな。それよりも我が国のこと考えるべきだろう」

エテボース「…わ、わかりました…」

エテボース「近日第一議会にて審議を行います…宣戦権は憲法により第一議会にありますから…」

プクリン「私も出席しよう」


―――後日 第一議会―――

エテボース「…では本日最後の議題に入ります。」

エテボース「先日の炎帝国皇居の爆破事件は、氷の国民によるテロだと断定されたのはご存じに思います」

エテボース「事件により、炎帝国の皇子や軍参謀長など多数の死傷者をだしました。これは甚大な被害です」

エテボース「そこで、炎帝国は氷の国に宣戦。氷の国は我が国に参戦および軍の駐留を要求しております」


エテボース「私としては、もちろん戦争など避けるべきものであるという意見です」

エテボース「ですが…近隣情勢を考慮するともう戦争は不可避…」

プクリン「炎帝国…そして大連合は後々草・毒の国ら諸国を併合するつもりだろう」

プクリン「ここで意地を張ってももう彼らと同じ道をたどるだけだ」

プクリン「私はすぐにでも宣戦権を行使することを第一議会に要求する」

エテボース「…では、本日の欠席は0。宣戦権の行使の是非を9人全員に問います」



―――…

賛成…4
反対…4
棄権…1



エテボース「このような結果となりました。」

エテボース「憲法により、第一議会同票の場合は議長である私の投票結果により決議されます」

エテボース「私の投票は…」

エテボース「賛成です」

エテボース「宣戦権は行使されました。すぐにでも帝国にこの旨を通達致します」

エテボース「それでは、本日の第一議会を閉会します…」


―――中央広場―――

ピジョン「おい…第一議会が宣戦布告を議決したって本当なのかよ…」

オニドリル「何が平和宣言だよあのへっぽこ大統領め!」

ピッピ「信頼してたのに…」

ドーブル「ど、どうすんだよ。あんな大国にかてるわけないだろう」

ペラップ「俺たちも終わりか」

ホーホー「おい!そろそろ演説が始まるぞ!」


プクリン『…ノーマル・飛行国民の皆様。大統領のプクリンです』

プクリン『我が国は第一議会の宣戦権行使により、炎帝国に宣戦を布告します』

プクリン『私のことを平和宣言提唱者として大統領へと推した方が大勢いらっしゃることは存じ上げております』

プクリン『ですが、近隣諸国の情勢悪化及び同盟国の参戦要求により、私は平和存続を不可能だと判断しました』



ざわざわ・・・


プクリン『大国はいづれ我が国に目を付けるでしょう。しかし、黙って搾取されるのを見ていることはできません』

プクリン『我が国には優秀な軍と産業があります』

プクリン『決して敗北などありえません!』

プクリン『決して…』



こうして長い演説は続いた。それでも、世論は動きを見せず、大統領への反感は全土へと広がることとなっていった。


―――ノーマル・飛行国 ノースエリア基地―――

ムクホーク「諸君!司令のムクホークだ!これより我らは国境に行く」

ムクホーク「我らの目的はあくまで駐留氷軍の応援だ!『てだすけ』などの補助技を主に使い、攻撃技は上官の許可によってのみ使用せよ!」

ムクホーク「自発的な交戦は可能な限り避けよ!自衛に徹するのだ!」

ムクホーク「では祖国に勝利と平和を!」

「ワァァァァァ!!!」

「ノーマル・飛行国万歳!!!」



―――…


氷、ノーマル・飛行連合軍と帝国軍の戦況は膠着した。

氷軍は相性の悪さから苦戦を強いられたが、水氷部隊やノーマル・飛行軍の援助によりそれを脱却した。

戦線は移動することもなく、ノーマル・飛行国の国境でとどまり続けた。



ただ、氷軍がノーマル・飛行国の戦火のない部分へ進駐していったことへ、誰一人として疑問を抱くことはなかった。




―――数か月後 ノーマル・飛行国 ノースエリア基地周辺氷軍駐留陣地―――

フリージオ「ツンベアー師団長!本国総司令部より臨時作戦コードです!」

ツンベアー「何!?ついに来たか!」

フリージオ「その通りです!作戦コード『シロガネヤマ クダレ』…ノーマル・飛行国軍への攻撃、撤退命令です!」

ツンベアー「直ちに陣地全員に知らせろ!戦争は終わるぞ!」

フリージオ「はっ!」


―――首都 軍司令部―――

ムクホーク「ノースエリア基地が攻撃を?」

エイパム「はい!それだけではありません!」

エイパム「国内各地の基地が氷軍によって攻撃されているのです!」

ムクホーク「は?そんな馬鹿な」

エイパム「氷軍の声明では、ノーマル・飛行国軍の工作を受けて国境の部隊が全滅したと…」

ムクホーク「ありえない!攻撃技はあれだけ規制していたんだ!」



ムクホーク「これは奴らの裏ぎり…」


ナッ!オマエハッ!

ドガァァァ


ギャァァァ!!

バタン


ムクホーク「ん?貴様は!?」

オニゴーリ「れいとうビーム!」ビッ

ムクホーク「ぐわあああああ」カチーン

エイパム「司令!?」

オニゴーリ「任務完了」

エイパム「ま、まてっ」


エイパムはあわてて部屋を飛び出したが、既に敵の姿はなかった。


エイパム「今のは氷軍の…?」

エイパム「司令!大丈夫ですか!?」

ムクホーク「」コオリー

エイパム「あぁぁ…司令がやられた…でもどうして氷軍が…」


―――…


氷軍が寝返った後、戦況は一変した。

国境付近で抵抗していたノーマル・飛行軍は敗走を余儀なくされ、南退していった。

ノーマル・飛行国軍のみで炎帝国にかなうはずなどなく、炎帝国軍はあっというまに首都市街地まで迫った。


―――ノーマル・飛行国首都―――

ニャース「もうこの国も終わりかニャ…」

カクレオン「そうですね…はぁ…あの時私たちの反対が伝わっていれば…」

カクレオン「第一議会の議決も変わっていたのに…」

ニャース「言ってもしょうがないニャ。今は生きることのみを考えるんだニャ」



バタン


ワカシャモ「第一議員二名発見!」

ニャース「な、なんだニャ!?」

ワカシャモ「かえんほうしゃ!」

ニャース「ぐわぁっ」

カクレオン「ニャース!くっ…は、話せばわかる!」

ワカシャモ「問答無用!」ゴォッ

グワッ



―――ノーマル・飛行国 第一議会―――

数人の姿が消えた第一会議で、エテボースが絶望的な口どりで話し始めた。

エテボース「し、首都はもう陥落寸前です…」

エテボース「無条件降伏するしかありません…」


ザングース「どうして奴らが寝返ったのだ!!!?」

ザングース「やはり完全に彼らの思うつぼだったということではないのか!?」

ザングース「大統領!議長!あなた方は我が国を売るつもりだったのか!!?」

プクリン「…」

エテボース「い、今そのようなことを話している場合では…」

ザングース「だから俺は反対したのだ!」


エテボース「で、ですが…今となってはもうどうしようも…」

ザングース「もうこりごりだ!もう俺は議会なんかやめてやる!」

エテボース「はい…すぐに炎帝国に無条件降伏します…」

プクリン「すまない…」


――――――
ノーマル・飛行国 炎帝国に無条件降伏。 

粛清により第一議会9名中5名 第二議会90名中72名が死亡。 

軍司令部も氷軍の暗殺命令により約半数が死亡。

炎帝国はすぐに氷の国と平和条約を締結。

いつぞやのテロの容疑者はノーマル・飛行国民へと化けていた…
――――――

とりあえず今日はここまでにします。

初スレ立てなので何かあったら指摘していただけると幸いです。

今丁度やってるから>>57がff零式にしか見えない


―――数日後―――

中央広場の高台に、炎帝国の使者団とノーマル・飛行国の首脳、そして多くの炎帝国民が集った。



ブースター「炎帝国はこの戦争終結に当たり、ノーマル・飛行国へと要求する」

ブースター「ノーマル・飛行国は直ちに軍を解体すること」

ブースター「ノーマル・飛行国は憲法を改正すること」


ブースター「ノーマル・飛行国は北部領土を炎帝国へ割譲すること」

ブースター「ノーマル・飛行国は主要産業を炎帝国へ譲渡すること」

ブースター「ノーマル・飛行国はひこうタイプの国民を炎帝国へ全て移住させ、逆に帝国民の移住を受け入れること。その際、帝国民の権利を侵害しないこと」


ブースター「ノーマル・飛行国は炎帝国の選出した大統領を元首とすること」

ブースター「ノーマル・飛行国は直ちに国名を『炎帝国領ノーマル共和国』へ改称すること」

ブースター「ノーマル・飛行国は現政権の大統領、軍司令部、そして、第二議長を戦犯として炎帝国に引き渡すこと」

エテボース「なっ!?だ、第一議長も戦犯なのでは」

ブースター「皇帝の詔だ。間違いはない。口を慎め」

エテボース「大統領だけが戦犯で第一議長がそうでないはずが…」


異論を唱えるエテボースに、プクリンはぽんと肩をたたいた。

プクリン「…もういい。君は生き残るのだ。私の後に平和な世を築いてくれ…」

エテボース「大統領…」

エテボースはがくりと肩を落とした。


ブースター「…これで以上だ。そして、炎帝国は炎帝国領ノーマル共和国の新大統領にこの私を選出した!」

ブースター「大統領として、ここに新たな独立を宣言する!」

「ワァァァァァァァァ!!!」

「炎帝国に栄光あれ!!」

「炎帝国に栄光あれ!!」




――――――
――――
――


―――某所死刑執行所―――

ピジョット「大統領…第二議長ピジョット、お先に失礼いたします…」

ブースター「撃て!」

「かえんほうしゃ!」ゴオオオオオオ

整列したほのおポケモン達が一斉に射撃した。


ピジョット「うぐああああああ!!!!ぐっ…ノーマル…飛行国…万…歳…」ドサッ

ブースター「さあ…お前が最後だ」

ブースター「最後に何か遺言はないか?


…戦犯は裁判の余地もなく死刑を宣告された。

そして戦犯の処刑は後日、炎帝国皇帝とノーマル共和国新大統領の付き添いの下に秘所にて行われることになった。

この不安定な国際情勢の中、敗戦国民の感情を逆なでしないためである。

処刑は淡々と進み、国務大臣、軍総司令、参謀長、第二議長と、次々にノーマル・飛行国のために尽くした者が消えて行った。


プクリン「…ウインディ。君はこれで本当にいいのか」

ウインディ「がはは!久しぶりなのは認めよう」

プクリン「平和宣言はどうなったんだ!」

プクリン「あれの草案は私と君が共に考えたものじゃないか!」


ウインディ「がはは!あの頃は若かったのだよ!」

ウインディ「我はもうあの頃の我ではないのだ…」

ウインディ「そもそも協調など不可能なのだよ!」


プクリン「そんなことはない!証拠に、いままでポケモン共和国は続いている!」

ブースター「貴様っ!生意気な口をっ!」

ウインディ「黙っていろブースター」

ブースター「申し訳ありません…」


ウインディ「ふん。そこまで言うなら平和な世を築いてみるがよいわ」

ウインディ「お前はもう生きてはいられないが、意志は生き続けるのだろう?」

ウインディ「がはは!そのための『彼』だ!」


ウインディ「楽しませてもらおうではないか」

ウインディ「もちろん、全力で叩き潰すがな!」

プクリン「…」

プクリン「相変わらず大胆だな君は…」ボソッ


プクリン「…ブースター大統領」

プクリン「元ノーマル・飛行国民に伝えてほしい」

プクリン「私は国民全員を裏切った。史上最悪の政治家だ」

プクリン「謝罪などし切れはしない」


プクリン「だが、ノーマル・飛行国民は決して屈することはない!」

プクリン「なぜなら、力は決して強くはないというのに、ここまで栄えることができたからだ!」

プクリン「希望は消えてはいない。必ず…平和は訪れる」

プクリン「それまで、しばしの我慢は必要のようだ」

プクリン「大統領職を全うしたことを光栄に思う」


プクリン「以上だ」

ブースター「では、もういいか…?」

ブースターは確認をしながら、是のサインを示していた。


ブースター「撃て!」

ゴォォォ…



―――…


―――数日後 ノーマル共和国大統領邸―――

ブースター「あははは…ついにここまで来た…」

ブースター「道のりは長かった…ノーマル・飛行国から進化によって炎帝国に渡り早数年…」


ブースター「地味な外交職に就いて功績を上げ続けてきた…」

ブースター「すべてはこのため…ノーマル国元首となり炎帝国にも劣らない大国を作るという夢のためだった!」

ブースター「あははは…王手だ…レールはついに僕の前に敷かれたのだ…」

ブースター「かつて僕を無能だと蔑んだ奴らめ、思い知るがいいさ!!」


タタッ

エテボース「大統領。お呼びですか?」

ブースター「ああ。君に伝えたいことがあってね」


ブースター「僕は君に協力したいと思っている」

エテボース「!?いきなりどうされたんですか」

ブースター「もちろんこれは極秘だ。ただの感情だからな」


ブースター「僕はこの国を独立させてあげたいんだ」

ブースター「だが、このまま炎帝国に従っていては不可能」

ブースター「君には彼らの強権を打破してほしいのだ.。そのカリスマ性とリーダーシップを使ってな」

ブースター「僕は目立った動きはできないが、裏では少しでも協力を講じよう」


エテボース「それは誠ですか?」

ブースター「わざわざ警備員も大臣もいないこの時に一般市民を大統領邸に呼んだのだ。理解を願う」

エテボース「分かりました…」

エテボース(唐突すぎる…いったい何を考えて…)

エテボース(しかし…今はそんなことを考える暇はない…か)



―――数か月後 炎帝国領ノーマル共和国―――

ジグザグマ「あーあどうしよ…差別のせいでもう就活100連敗だよ…」

ピィ「大丈夫…?まだチャンスはあるよ」

マッスグマ「まだ残った議員たちがギリギリノーマルタイプの権利を守ってくれてるからな」


ミミロル「それに比べてあの元大統領は…私たちを炎帝国に売ったんだわ!」

ニャルマー「まあまあ…あの後のメッセージでブースター大統領が言ってたじゃない。謝罪してたって」

チラーミィ「そんなの関係ないだろ!もう俺たちは終わりだっ」

ダダッ


リザード「おい貴様ら!何を喚いている!」

ピィ「わぁっ帝国軍だ!逃げろ!」

リザード「ひのこ!」ゴォッ

ピィ「うわあああああ!!」

ジグザグマ「やめてくれえええええ!!」

リザード「ははは!お前らを攻撃したって何も罪にはならないんだよ!」

タタタッ


エテボース「すまない…ノーマルタイプをあまり虐めないで頂きたい…」

リザード「ああん!?」

エテボース「新憲法に基ずく法により確かに炎タイプによるノーマルタイプへの攻撃は罪にならない…」

エテボース「でも、それは相手に非がある場合だけなんだ」

リザード「そんなものでっちあげて…貴様、元第一議長の…!?」

リザード「ちっ面倒な奴だ…」タタタ…


エテボース「はぁ…」

エテボース「もうこのような風景は日常茶飯事になってしまった…」

エテボース「まだ賠償金を産業で支払っただけ、経済へのダメージはそう大きくはなかったけど…」

エテボース「新憲法の差別項目は難題になりそうだ…」


エテボース「もう大統領がほとんどの権限を握っている…」

エテボース「…でも、まだ道はある」

エテボース「次の国民選挙だ…」

エテボース「現在のノーマル共和国の人口はまだ70%がノーマルタイプ…」


エテボース「議会を取り戻せば…」

エテボース「憲法も改正できる…」

エテボース「だけど…最大の問題は拒否権の発動…」

エテボース「ブースター大統領はまだ信用しきれない…」

エテボース「ああ…プクリン大統領…僕は、貴方のようになれるでしょうか…」


―――…

エテボース「というわけなんだ。協力してほしい」

ザングース「俺だってそんなことは分かっている」

ザングース「だが、こうなった原因は誰にあると思っているんだ?」

エテボース「う…」


ザングース「まあいい。協力しよう。また第二議会からのスタートだ」

エテボース「ありがとう。ノーマル・飛行国のために」

エテボースは、こうして協力者をかき集めることに徹した。


現第二議会の定員90のうちノーマルタイプは僅か5。第二議会の推薦によって選ばれる第一議会に至っては定員9中0である。

立案成立に必要な、過半数までの道ははるか遠くに見られた。だが、エテボースの必死な呼び込みは続いた。


―――…

―――電気王国 王城―――

エレキブル「ほう…なかなか面白いことをはじめたようだな…?」


ライボルト「はい。ノーマル共和国内ではにわかに反帝国の世論が上がってきています」

ライボルト「それもすべてエテボース元第一議長の影響でしょう」

エレキブル「他の元ノーマル・飛行国上層部が全て処刑されているというのに生き残っている奴だろう?」


エレキブル「ますます興味がわいてきた。ライボルト、炎帝国軍からなるべくノーマル共和国内の情報を手に入れろ」

ライボルト「かしこまりました」タタッ

エレキブル「さて…ウインディもエテボースもどう対峙するかな?私は黙って見物でもさせてもらおうか」




――――――
――――
――




―――4年後 ノーマル共和国第一議会―――

エンブオー「大統領、今月の失業率は17%になりました」

エンブオー「そのほとんどがノーマルタイプのようです」

ブースター「うーむ。何か対策はないか?」


キュウコン「まあ仕方ないですわ。所詮ノーマルタイプは脆弱…」

キュウコン「炎帝国移民が優先されるのは当然よ」

ゴウカザル「未だにノーマルタイプの雇用先になってるシルフ社がたんこぶだけどな」

エンブオー「それでも社員の34%はもうほのおタイプだ」

エンブオー「それらが幹部まで昇ってしまえばこっちのものだろ」

ブースター「そうか…」


キュウコン「大統領…?顔色があまりよろしくないようですね?」

ブースター「ん?ああちょっと考え事をしていてな」

ブースター「それより、最近はインフレが進んでいるようだが」


キュウコン「はい。本国への友好金の支払いが滞りはじめまして…」

キュウコン「ポケを増刷して対応しているのですが…」

ゴウカザル「そんなことしたらそりゃあインフレにもなるだろうな」

エンブオー「まったく、皇帝陛下もやることが賢しいもんだ」


キュウコン「口を慎みなさい」ゴォッ

エンブオー「まあまあいいじゃねーか。聞こえちゃいねーんだしよ」

エンブオー「それにここは『俺達の国』だ。何をやっても文句は言われねーよ」

ブースター「キュウコン。ここは会議場だぞ。やるなら外でやれ」

キュウコン「失礼」シュン


ブースター(『俺達の国』、ね。よく言うよ)

ブースター(いつまでそんなことが言えるかも知らずに…)

ブースター(さて、そろそろ『彼』も動き出すかな?)


―――その頃 ノーマル共和国首都某所―――

エテボース「祖国を取り戻すために!私をリーダー、ザングースを副リーダーとして反帝国組織を設立する!」

エテボース「財的な問題は元技マシン産業の中心核、シルフ社の会長により解決された!」

エテボース「我々はあくまで平和的に祖国を取り戻すのだ!」

エテボース「まずは第一、二議会議席の確保を目標とする!」



―――…

ザングース「反帝国組織の設立おめでとう。素直に賞賛させてもらうよ」

エテボース「ありがとう!」

エテボース「こんなに協力者が集うなんて思ってもいなかったよ!」

ザングース「本当だな」


ザングース「これで議席はそれなりに確保できるだろうが…」

ザングース「最後の問題は迫る選挙本番だ」

エテボース「弾圧によって思うように票が集まらない可能性はあるね」


ザングース「ああ。ここまで動いたからには奴らも黙ってはいないだろうしな」

ザングース「まあ戦略は練ってみるさ」

エテボース「うむむ…十分用心しなきゃ…」


―――炎帝国―――

ウインディ「がははは!ついに動いたかあの小僧!」

ガーディ「はっ。反帝国組織の設立はノーマル共和国内で大々的に報道されました」

ガーディ「これによってノーマルタイプ達の支持と反帝国思想が湧き上がっています」

ガーディ「いかがいたしますか?」


ウインディ「がはは!見逃すわけにはいかんな!」

ウインディ「まずは奴らの後ろ盾から崩す!」

ガーディ「それはまたどうしてですか?」

ウインディ「このご時世、下手に武力で抑えつけ、各国に悪い印象を与えてはまずいからな」


ガーディ「なるほど…さすがは陛下ですね」

ウインディ「これほど考えられなくてなにが帝だというのだ」

ウインディ「はやく行けガーディ」

ガーディ「御意」

―――…

―――数日後 ノーマル共和国 反帝国組織本部―――

tv『ただ今!現場と中継が繋がっております!』

tv『本日未明、ウェストエリア工業地帯のきずぐすり工場にて出火した火は、瞬く間に工業地帯の50%に拡大!』


tv『ビーダル消防隊の消火活動も空しく、火は今現在も燃え上っています!』

tv『これにより、シルフ社の負債総額は約120億ポケに上ると見られています!』

tv『さらに、当時シルフ社の取締役は工業地帯内におり、会長を含め、全員生死は不明となっています!』


エテボース「ついに炎帝国も動き出したか…」

ザングース「ああ。工業地帯から逃げ出した者の多くが、同時に複数の工場から火が出たのを目撃している」

ザングース「帝国軍の工作とみて間違いない」

エテボース「後ろ盾から崩し始めたとは…」

エテボース「厳しい戦いになりそうだね…」


ザングース「とびっきり不利だな。この火事のせいで財的後ろ盾を失った」

エテボース「財力でのごりおしが利かなくなった…」

ザングース「選挙活動も滞りそうだな」

エテボース「だけど、選挙はもう再来月に迫っている!」


エテボース「そろそろ一斉に開始しよう」

ザングース「ああ。全体指揮は俺に任せて宣伝に専念しろよ」

エテボース「そうさせてもらうよ…」


反帝国組織の面々は二か月の間一生懸命選挙活動をした。

彼らは炎帝国移住民が少ない地域や軍の支配のあまり及んでいない地域を中心に宣伝を行った。

だがそれでも、イーストエリアを中心に、選挙活動中の者やそれに集まった者が軍の襲撃を受け、死亡することが度々起こった。

もちろんそれも全て無罪放免である。


結果、第二議会議席32議席を獲得。つられて第一議会も2議席を獲得し、エテボース、ザングースが就任した。

これは両議会とも約30%を占めるという大躍進である。

これにより、ノーマル共和国内ではよりいっそう反帝国の世論が強まっていった。


―――反帝国組織本部―――

エテボース「やったぞ!これで一気に前進だ!」

ザングース「そうだな。予想以上だ」

エテボース「これもザングースの選挙戦略のおかげさ!」

ザングース「いや、それだけじゃないさ」

ザングース「ノーマル国民も4年に渡る圧政に耐えかねたんだろう」


ザングース「俺たちが政界に再参入したことで希望が見えたんだ」

エテボース「是非ともその希望にこたえなくちゃ…」

ザングース「ああ。今回は得票数俺達二匹に集中しちまったようだが、次はそうは行かない」

ザングース「得票数トップ9を占めて第一議員を取り返す勢いじゃないとな」


―――数日後 大統領邸―――

ブースター「おめでとう!第一、第二議員再就任を心から祝福する!」

エテボース「議会の時は真っ赤な顔をして文句を言っていらしたのに、随分な変わりようですね」

ブースター「まあな。元から顔は赤いが…作り表情だけは得意なのだよ」


エテボース「以前は炎帝国の外務大臣に仕えていたんでしたっけ」

ブースター「ああその通りだ。そして、ノーマル国のことをよく知る僕が大統領に選ばれた」

エテボース「やはり元はノーマル国に…?」


ブースター「当たり前だ。進化前はノーマルタイプだったからな」

ブースター「イーブイ族の場合は進化がそのまま国籍の変更になってしまうのだ」

エテボース「随分苦労されますね」

ブースター「いいさ。結局はそれも大統領就任ためになったのだからな」

エテボース「そうですか…」


反帝国派の議員はその後ノーマル・ほのお共同社会法と特定企業保護法案を提出。

もちろん両法とも否決されたが、反帝国の世論は無視しきれず、修正共同社会法と特定企業保護法が成立した。

これにより、差別は緩和されシルフ社の惨事をきっかけに衰弱したノーマル共和国産業を建て直すことに成功したのである。


―――炎帝国―――

ウインディ「むむ…なかなか手ごわいな」

ガーディ「はい。結局彼らは経費を最大限に縮小して選挙活動を行ったそうです。軍の妨害にも屈しなかったと…」

ウインディ「ちぃ。少し侮りすぎたか」


ガーディ「どう致しますか?」

ウインディ「反帝国の動きが強まった以上…大規模な工作はし辛くなった…」

ウインディ「的確に、かつダメージの大きい砦を崩さねばな!」

ガーディ「と、仰いますと?」


ウインディ「がははは!ガーディ、反帝国組織のリーダーは知っているだろう?」

ガーディ「もちろんです。元第一議長エテボース、亡きプクリン元大統領の後継者ですね」

ウインディ「がはは!その通りだ!だが、奴一匹であの選挙の大勝はありえない」

ウインディ「奴は判断力や戦略術に今一つ欠けるところがあるのだ」


ウインディ「そして、今それを補っている者がいる」

ウインディ「先日の選挙でほのおタイプ議員、エテボースまでも抜き去り、ダントツ1位の得票数を得たザングースだ!」

ガーディ「元及び現第一議員のですか」

ウインディ「うむ。ザングースは最後まで戦争に反対していたそうだ」


ウインディ「もしかしたら我らのことまでも読んでいたのかもしれんな」

ガーディ「それは厄介ですね」

ウインディ「まあ、そんな秀才でも犯罪に手を染めてしまえば元も子もないのだよ…がははは!」


―――…

―――数週間後 ノーマル共和国 反帝国組織イーストエリア支部―――

ザングース「よし、次の選挙戦略は…こーして…こーして…こうだ!」

ザングース「前回はイーストエリアからの票が少なかった。それを利用するのさ」

ザングース「だがくれぐれも軍の妨害には気を付けるように。危険だと思ったら逃げろ


ラッキー「おおおおおお!」

オドシシ「これはいけるっ!過半数なんて余裕じゃないか!」

ドゴーム「自慢の大声で宣伝しまくるぜ!」

ザングース「みんな、頑張ってくれ」

バタンッ


ザングース「なんだ!?」セントウタイセーイ

バオップ「チーっス。帝国軍少尉のバオップっス。ザングース、アンタに逮捕状っス」

ザングース「な、俺が何かしたとでもいうのか?」

バオップ「そーっス。まあともかく来て欲しいっス。詳しいことはまたそちらでよろろろろろろろっス」


ザングース「ちっ…すぐ戻る」テクテク

オドシシ「あ、はい!」

ドゴーム「まってますよ!」

バタン


そのまま、彼が戻ってくることはなかった。


―――数日後 反帝国組織本部―――

エテボース「なんだって!?ザングースが逮捕!?」

ドゴーム「はい!突然帝国軍に拘束されて…そのままです」

オドシシ「我々はどうしたら…」

ドタドタ


ラッキー「リーダー!大変です!ザングースさんが裁判にかけられるそうです!」

ラッキー「戦時における帝国軍殺害容疑による刑事裁判だと…」

エテボース「今更そんな…!?」

ラッキー「どうしましょう…」

エテボース「大丈夫だ!絶対に無罪だ!君らはザングースに言われた通り次期選挙に集中してくれ!」

「はいっ!」

エテボース(まさか有罪になんてなるはずが…)ギリッ


―――1年後 反帝国組織本部―――

tv『戦時中における炎帝国軍殺害などの容疑に問われたザングース被告ですが、裁判の末、有罪が確定しました』

tv『ザングース被告はすぐに炎帝国へと送検される見通しでしたが、有罪確定直後に逃走。現在指名手配となっています』

tv『これを受けて、大統領は現第一議員のザングース被告を罷免。反帝国組織への支持は落ち込みを見せています』


エテボース「そんな馬鹿な!どうして有罪に…」

オドシシ「噂では帝国による圧力がかかったと…」

エテボース「く…やられたか…裁判を長引かせたのも反帝国派の支持を削ぐため…」

オドシシ「しかしリーダー!彼はこのくらいでは諦めません!」

ドゴーム「それはリーダーが一番わかっていることでしょう!」

ラッキー「逃走したのだって何かわけがあるはず…」


エテボース「ザングース逮捕からのこの1年…少しづつ反帝国組織への弾圧が強まってきた…」

エテボース「すまない…これ以上は君たちの安全が保証できないんだ」

エテボース「潮時かもしれない」

ドゴーム「何を言うのですか!ザングースさんのおかげで私たちは先日の選挙で当選しました!」

ラッキー「ようやく第二議会議席も過半数を超え、第一議会も時間の問題です」


オドシシ「危険などとうに承知です!ザングースさんの意志を無駄にはできません!」

エテボース「みんな…」

エテボース「わかった」

エテボース「ノーマル・飛行国の再興に王手をかけよう」

エテボース「第一議会を過半数超えさせ、憲法改正にのりだす!もう少しの辛抱だ!」

オオー!!


―――炎帝国―――

ウインディ「がはは!まだあきらめんか」

ガーディ「そのようです。第一議会が過半数を超えるのも時間の問題です」

ガーディ「憲法改正もそう遠くないと思われます」

ウインディ「…」


ウインディ「…がはは!そろそろ終わりにせねばならぬな」

ガーディ「と、仰いますと?」

ウインディ「がはは!氷の国との平和条約から5年。国内紛争を除けば…戦争は全く起こっていない!」


ウインディ「近隣諸国の情勢も大分回復してきた!」

ウインディ「反比例し、ポケモン共和国の権力はほぼ消え失せたのだ」

ウインディ「多少の国際法違反は問題にはならないだろう?」ニヤ

ガーディ「まさか…陛下…?」


ウインディ「気が変わった!完全なる戦意の喪失は諦めざるをえない!」

ウインディ「ブースター大統領に伝えろ。決着をつける」

ウインディ「少し強引ではあるが…な」



ガーディ「はっ…しかし…」

ウインディ「いつまでもノーマル共和国にてこずっているわけにはいかん」

ウインディ「我はもう長くないだろう…」

ウインディ「我はその前に世界を平定せねばならんのだ」

ウインディ「さらばだプクリン…」


―――…


こういうのって需要ないのかな…

最後まではちゃんと書きます

楽しみに見てます


―――数日後 ノーマル共和国 大統領邸―――

エテボース「お呼びですか大統領?」

ブースター「ああ。まずはじめに第一議会の過半数獲得、おめでとう。よくここまでやったな」

エテボース「いえ…私だけの力ではありませんよ…」


ブースター「…まあそれはいい。本題はここからだ」

エテボース「随分と深刻そうな顔ですね」

ブースター「はは。君らにとっては最悪だよ」

ブースター「本国が、とある命令を送ってきてね」

エテボース「はあ…命令ですか?」



ブースター「反帝国組織メンバーの完全粛清だ」


エテボース「そ、そんな…虐殺!?」

ブースター「悪く言えばそうだ」

エテボース「そんなの…国際法で認められるはずが…」


ブースター「だが、ポケモン共和国はもうほとんど権力を失ってしまった」

ブースター「ここは仮にも炎帝国の属国…多少の偽装は簡単だ」

ブースター「さらに周辺諸国は戦争が起きないお陰で国際法などほとんど気にしていない」

ブースター「もう虐殺なんかが起きても、どうとでも言い訳すればそう各国の非難が集まることはないだろう」


ブースター「皇帝も焦っているようだな…」

エテボース「ですが…」

ブースター「まあ安心しろ。僕は本国の命令など聞くつもりはない。それを逆手に取る」

ブースター「君には僕の言うことに賛同してほしいんだ」

エテボース「…?」


ブースター「次の第一議会で、全権委任法と憲法の改正を決議してくれ」

ブースター「憲法の改正と同時に、ノーマル共和国に駐留している帝国軍に、皇帝の息のかかった議員を粛清させるんだ」

ブースター「そして、軍には撤退命令をだす」

ブースター「その後直ちにこの国を帝政に移行し、『ノーマル・飛行連合帝国』として新たに独立させるんだ」


ブースター「ああ、君には皇帝になってもらう」

エテボース「私が皇帝に!?」

ブースター「ああ。ノーマルタイプの長はやはりノーマルタイプでないといけないからね」


ブースター「僕は差し詰め参謀と言ったところだよ」

ブースター「その方がいろいろと便利でもある」ニヤリ


エテボース「…再軍備は行うんですか?」

ブースター「もちろんだ。もう自衛のためなどではない。大国になるには必要不可欠だろう?」

エテボース「しかし…私は平和を目指す身です。自ら戦争をしかけるなど…」

ブースターの表情が凍った。


ブースター「その考えのせいで一体どれだけの国民が犠牲になったか…」

ブースター「いや、まだこれからもなろうとしているのかわかっているのか!?」

ブースター「平和とは戦争の果てにあるものなんだよ!」


ブースター「いい加減自覚したらどうだ?こんな薄っぺらい平和とノーマル国民の幸福を両立するなど不可能だ」

ブースター「大国はその権力をもって再びこの国を脅かすだろう」

ブースター「それを防ぐには…この国も強くならなければならないのだ」


エテボース「…」

エテボース「プクリン大統領も気づいていたのかもしれませんね」

エテボース「戦争なしで平和を求めることが不可能であることはうすうすわかっていました」


エテボース「しかし、私達は自分のプライドのために国民を危険に曝してしまった…」

エテボース「もう限界ですね…平和のためなら戦争も厭いません」

ブースター「それでいいんだよ。帝政に移行したら第二議会は廃止するが、第一議会は残し、再構成するつもりだ。反帝国組織の面々から選んでやれ」

エテボース「はい。ですが…まだもう一つ…」


ブースター「なんだ?」

エテボース「独立するのはいいのですがそのあとはどうするんです?」

エテボース「炎帝国が黙っているとは思えません」

ブースター「フフ…そこも考えてある」

ブースター「そのうち勝手に黙ってくれるようになるさ」

ブースター「外相直属時代の僕の情報網を舐めてもらっちゃ困るよ…」


―――数日後 炎帝国皇居―――

ウインディ「がはは!まだ動かないのかブースターは?」

ガーディ「はい。まだ機ではないと粛清を延期し続けています」

ウインディ「急がせろ!さすがに理由なき占領併合は同盟国の反対を招くからな…避けたいところだ」

ササッ


ロコン「陛下、オレンの実をお持ちしました。水の国の最高級品です」

ウインディ「ん、御苦労」ヒョイッ パク モグモグ

ウインディ「ん?苦みが強いな?」


ロコン「…いえ、水の国でとれた最高級品はほろ苦い風味が特徴なのです」

ウインディ「ふむ…」ゴクン

ウインディ「お前も一つどうだ?」

ロコン「!?…」


ウインディ「なんだ我が食えというのが気に食わんのか」

ロコン「…いえ…大変恐縮でありまして…頂きます」ヒョイパク モグモグゴックン 

ウインディ「がはは!そう硬くなるでない!」ヒョイパク モグモグゴックン

ウインディ「美味かったぞ。下がれ」

ロコン「はい…」テクテク


ウインディ「まあそれでノーマル共和国のなのだが…」

ガーディ「陛下?どうされました?顔色が優れないようですが」

ウインディ「ああ、最近体調が優れなくてな…」

ウインディ「ノーマル共和国出身のハピナス医師団は優秀で助かるのだが…ゲホッ」ビシャッ


ガーディ「陛下!?」

ウインディ「うぐ…苦しい…早く…医師団を…」ゼェゼェ

テクテク

?「無駄ですよ父上」

ウインディ「お前は…」ゼェゼェ


ガーディ皇子弟「兄の件、忘れたとは言わせません。父上は同じ運命をたどるのですよ」

ガーディ皇子弟「父上がこの国を共和制にしようとしている、という噂も聞いてしまいましたしね」

ガーディ皇子弟「そうなれば、私の正統後継者の位が意味を成さなくなってしまいますから」


ウインディ「き…さま…」ゼェゼェ

ウインディ「ガーディ…こいつを…始末しろ…」ゼェゼェ

ガーディ「それはできません」

ウインディ「な…」


ガーディ皇子弟「ロコンを失うとは予想外だったが…仕方がない」

ガーディ皇子弟「帝位をお譲りください父上」ニヤリ

ウインディ「この…ドラ…息子…め…」ゼェゼェ


ウインディ「ああ…我…の…国…我の…世界…」ゼェゼェ

ウインディ「消え…て…ゆ……く………」ガクッ


ガーディ皇子弟「アハハハハ!これでこの国はボクのものだ!」

ガーディ皇子弟「さて葬式の準備を…」

ガーディ「そう簡単にはいきませんね」


ガーディ皇子弟「なんだと!?」

ガーディ「私は今皇帝陛下暗殺の現場を目撃しました」

ガーディ「もしこれを公にすれば貴方は失脚です」

ガーディ皇子弟「貴様!?ボクを脅すつもりか!?」


ガーディ「はい。私は帝位をシャンデラ左大臣にお譲りしていただくことを要求します」

ガーディ皇子弟「貴様…左大臣派の者だったか!?」

ガーディ「はい。内部の対立はもう限界です。皇帝陛下が逝去された今、決裂は決定的となるでしょう」


ガーディ「すべては貴方が陛下を暗殺したおかげですよ…宣戦布告です!」ザザザッ

ガーディ皇子弟「くそっ、あいつを始末しろ!」


その後、玉座は大乱闘となった。

結局、側近のガーディは逃走に成功。ウインディ皇太子の悪行は公に広められることとなった。

左大臣派と皇太子派はくっきりと分かれ、炎帝国も真っ二つに割れて紛争を繰り広げることとなっていった。

訂正:ウインディ皇太子→ガーディ皇太子


―――その頃 ノーマル共和国 第一議会―――

リザードン「さて、今回第二議会を通過した全権委任法と憲法改正立案だが…」

リザードン「欠席は0。これより9名による投票で決議を行う」

リザードン「なお、両立案は第一議会議席の2分の1の賛成によって成立する」

エテボース「…」


ゴウカザル(おい…やばいんじゃねえのか…)

エンブオー(こんなもん通ったら炎帝国の支配が消え失せるぞ…)

ゴウカザル(第一議会ももうノーマルタイプが5議席を取っちまった…)


キュウコン(第一議長も新憲法では拒否権がないわ…)

ゴウカザル(ま、まあ大丈夫だろ…ブースター大統領の拒否権があるし…)

キュウコン(そう…無駄な努力だってことね…)

エンブオー(ノーマルがほのおに勝てるわけねぇっつの…)


―――…

リザードン「では開票を行う」


賛成・・・6
反対・・・3
棄権・・・0


リザードン「賛成が2分の1を超え、立案は成立した…」


ゴウカザル(ち…ま、まあここまでは予想通り…)

エンブオー(さあ大統領…拒否権を…)チラッ

ブースター「…」ニヤッ


キュウコン(…?おかしいわね…)

ブースター「さて…立案は成立した」

ブースター「現憲法に基づき、君たちには御退場を願おう」

ゴウカザル「な!?拒否権は!?」


ブースター「何のことかな?」

キュウコン「裏切ったのですか!」

エンブオー「貴様ぁ!」

エンブオー「エテボース!!キサマが指示したのか!」

エテボース「いえ。あなた方とやることは変わりませんよ」


ブースター「たった今、ほのおタイプの優位は崩れ去った」

ブースター「皇帝陛下の命により、ほのおタイプ議員の粛清を命じる」

ブースター「かかれ!」


突然、会議場の扉が押し破られ、多数の炎帝国軍が押し入った。

ノーマルタイプ議員、大統領、第一議長はすぐさまその場から退避。

ほのおタイプ第一議員3名は再三抵抗するも死亡した。


数分後、第二議会でも粛清が起こり、第二議長を含めほのおタイプ第二議員43名は全滅。

その後、すぐさま帝国軍は撤退。ノーマル共和国への炎帝国移住民は、飛行タイプ送還の人質とされた。

各国は炎帝国の惨事にばかり目が行き、ほとんどこの小国の動きを見ていることはなかった。


―――数週間後 ノーマル共和国 演説台―――

ブースター『ノーマル共和国第一議会は全権委任法および憲法の改正を決議した!』

ブースター『私はこの演説をもって大統領職を辞する!』

ブースター『ここにおいて、ノーマル共和国はエテボースを皇帝とし、【ノーマル・飛行連合帝国】として新たに独立する!』


ブースター『帝国は直ちに第二議会を解散し、憲法を改正する!ほのおタイプとノーマルタイプは平等となるのだ!』

ブースター『そして、先日の炎帝国皇帝暗殺事件により、炎帝国内は混乱に陥っている!』

ブースター『それを利用し、私はひこうタイプの送還、そして草・毒の国の編入を約束した!』


ブースター『炎帝国に奪われた産業もすぐに復興するだろう!』

ブースター『ここに再軍備を宣言する!』

ブースター『我らも、大国としての一歩を踏み出す時が来たのだ!』

「ワアアアアアア!!」

「ノーマル帝国万歳!!」

「ノーマル帝国万歳!!」


―――反帝国組織本部―――

エテボース「みんな今までありがとう」

エテボース「ノーマル・飛行国はついに復活した」


エテボース「戦争のない国にはならないけど…それでももう炎タイプに弾圧されることもないんだ!」

エテボース「ここに、反帝国組織の解散を宣言する」

エテボース「そして、私の推薦により、旧第一議会…新帝国議会の議員を決定する」


エテボース「皇帝の君主主義のみでは国は繁栄しないというブースターの助言だ」

エテボース「皆で大国を、平和な世界を築こう!」

「皇帝陛下万歳!!!」

「ノーマル・飛行連合帝国万歳!!」


―――…

ノーマル共和国、『ノーマル・飛行連合帝国』として再び独立。

炎帝国の影響は完全に排斥された。

ブースターは首相となり、軍の司令官も兼任することとなった。
 
連合帝国は予算の大部分を軍事費と産業支援にあて、着実に国力を増大していった。

炎帝国は内部紛争により元エスパー国領、ノーマル・飛行国北部領土の領有を放棄。後に連合帝国により併合された。



同時に、周辺各国は連合帝国に警戒の目を向け始めることとなった。



戦争は、着実にその影を世界に落としつつあったのだ…


ポケモン戦記 前編 end


やっと半分です…

このまままだまだ続きます。

待ってるよ



―――…
水の国と電気王国対立の要因はその経済体制にあった。

電気王国は国王を強力な主君とする独裁国家。そこまでは炎帝国と何ら変わりがない。

だが、電気王国では計画経済や企業の国営化といったシステムが発達していた。

一方、水の国は自由経済が主となっており、炎帝国はその中間にある体制であった。

当然その二つの経済システムは対立を招いたのである。

その対立は建国直後から長く長く続いているのだった。


―――数日後 電気王国―――

エレキブル「結局はウインディの負けか?はは、野望に身を堕としすぎたようだな」

エレキブル「エテボースもやるではないか…素直に賞賛させてもらおう」

ルクシオ「水の国はノーマル・飛行連合帝国の警戒と、炎帝国との同盟破棄を要求しています」


エレキブル「ふん。言われなくてもするつもりだあの馬鹿め」

エレキブル「ウインディ亡き今、奴と結んでいる意味は無くなった」

エレキブル「大連合も終わりだな」

ルクシオ「では…水の国との同盟も破棄を?」


エレキブル「ふん。ほっておいてもあっちから勝手に破棄してくれるだろうしな」

エレキブル「電気王国はこれより炎帝国の紛争に介入する」

エレキブル「そして、最終的には併合するのだ」

エレキブル「まあウインディのように下手な差別政策を敷いたりはせんよ」


ルクシオ「何か策案があるのですか?」

エレキブル「炎帝国も衰えはしたが…あまり刺激して攻撃されれば損害は計りしれんからな。とでも言っておこう」

ルクシオ「?」


―――数週間後 大連合首脳会議―――

カメックス「な…貴様!そんなことを許すとでも思っているのか!?」

エレキブル「思っているわけないだろうが」

エレキブル「我が国は、貴様らの要求通り炎帝国との同盟を破棄する」

エレキブル「そして、水の国との同盟も同じく破棄する」

エレキブル「大連合もここまでだ」


カメックス「ぐ…平和が遠のくだけだぞ」

エレキブル「炎帝国の今までの侵略行為」

エレキブル「あれは平和のためなどではない…」

エレキブル「連合によって我が国と水の国を抑えただけにすぎないのだ」


エレキブル「吾輩もウインディの口車に乗って連合に参加したが…」

エレキブル「やはり平和など実現はできやしないのだ」

カメックス「次会うときは…また敵だな」

エレキブル「一向に構わぬ」


―――…

電気王国は水の国及び炎帝国との同盟を破棄。

水の国も炎帝国との同盟を破棄し、ここに大連合は消滅した。

電気王国は炎帝国の内乱に介入、各地を占領していった。

同時に鋼の国、岩・地面の国、虫の国も併合し、さらなる大国へと成長していった…


―――…

?「ケケケケ…大連合が消滅しましたカ…うまくいきましたネェ…」

?「ユキメノコさんもシャンデラさんもいい働きですヨ…」

?「あとは邪魔なあの国を消すだけでス…」

?「世界のシハイシャは我らゴーストタイプにありでス…」

?「さテ…同盟を結びましょうカ…」

?「もうすぐでス…もうすグ…」



―――大連合消滅から5年後 悪国 アジト―――

マニューラ「はぁ…同盟ね」

ゴース「キキ…そうです…リーダー殿…」

マニューラ「アタシらにゃデメリットはないし、いいんじゃない?」

マニューラ「あんまり面倒ごとに巻き込まれるのもヤダしねぇ…」


マニューラ「それより…アンタ不気味すぎ。もうちょっとシュっとしなさいよシュっと」

ゴース「キキ…そういうもんなんです…」

マニューラ「ケッ。裏切ったりしたら承知しないよ」

マニューラ「アンタんとこのなんとか長ってのに伝えときな」


ゴース「もちろんです…悪国は眠れるマニューラと呼ばれる大国ですから…『局長』にお伝えします…」

マニューラ「聞いたことないよそんなの!」

ゴース「キキ…では…」ドロン

マニューラ「相変わらず気味悪いねぇ」

マニューラ「コソコソと大連合の肩を持ったりして…あのなんとか長ってのは何を考えてんだかね」


―――1か月後 ノーマル・飛行連合帝国首都 元大統領邸―――

エテボース「それで…何の御用です?」

カメール「はっ。皇帝陛下直々の御面談、ありがたき幸せに存じます」

カメール「ここ5年間での、電気王国の炎帝国、岩・地面、虫、鋼の国併合。ゴースト国の悪、氷両国との同盟」

カメール「水の国カメックス大統領はそれらを侵略行為とみなし、批判しています」


エテボース「それには同意するよ」

カメール「はっ。つきましては、わが国は連合帝国との同盟を要求いたします」

エテボース(電気王国と対立したと思ったらこっちに転がり込んできたか…)


エテボース「よし、同盟を承諾します」

エテボース「近く友好条約を結びましょう」

カメール「はっ。善い御返事を…では、私はこれにて…」


―――…

ブースター「5年連続の高度経済成長に軍事力の増大…」

ブースター「随分と調子がいいな」

エテボース「うん。復興は着実に進んでるね」

ブースター「信じられない…ノーマル・飛行国民は計り知れないのか…もう戦争の準備も万端じゃないか」


エテボース「戦争はなるべく避けたいところだが…」

エテボース「各国の対立はもう限界にきてる。そううかうかしてはいられないだろう」

ブースター「ああ。まさにビリリダマ状態だな」

エテボース「…」


ブースター「…まあ要注意はゴースト国だ」

ブースター「あの国はなにを考えているのかわからない」

ブースター「さらに、氷の国も格闘国との国境が騒がしいらしい」

エテボース「十分様子を見ないといけないね…」


―――竜の国 居城―――

フライゴン「戦争は確実だな」

フライゴン「我らは誇り高きドラゴンタイプ!そのような争いに耳を貸す必要はない」

ボーマンダ「竜の国領土もこのシロガネ山のみ!」

ボーマンダ「侵略をはねのけるなど容易いわ!」

「「双王は永世中立国を宣言する」」


―――ノーマル・飛行連合帝国―――

エテボース「竜の国は中立を宣言か」

ブースター「まあ当然だろう。あいつらは誇り高いからな」

ブースター「開戦を予告してのことだろう」


エテボース「うーむ…」

エテボース「ブースター、勝算は」

ブースター「十分だ」

ブースター「おそらく戦争の中心となるのは格闘国だ」


ブースター「ポケモン共和国元老院も衰退した」

ブースター「『奴ら』が狙うなら今だ」

ブースター「悪国は後詰の水の国がなんとかしてくれるだろう」

エテボース「電気王国は参戦してくるかな…?」

ブースター「それはないだろう。今は炎帝国の内乱鎮静に手いっぱいだ」


エテボース「ふぅ。この国の産業は岩・地面の国の資源が必要不可欠だからね…敵に回すわけにはいかないな」

ブースター「ああ。だが戦争はもう時間の問題だ」

エテボース「格闘国国境に軍を向かわせよう」

エテボース「氷の国には貸しがあるからね…」

ブースター「あれだけ戦争嫌いだった君がよく言うよ」


エテボース「今だって嫌いさ。でも、教えたのはブースターだろう?私は今でもプクリン元大統領を私淑しているよ…」

エテボース「もし他国を占領したって、平等に治めるつもりさ。草・毒の国のようにね」

ブースター「平等統治は電気王国に先を越されたようだが…?」


エテボース「あれは私たちの先例をもっての教訓だろう」

エテボース「実際、独立の風潮は強まっているし…下手に押さえつければ革命が起きかねない」

エテボース「実際地面タイプとは相当慎重に接しているらしいしね…」

ブースター「そうだな。まあその独立の風潮とやらが、次の戦争の火ぶたを切ってくれそうだよ」


―――格闘国 元老院本部―――

ペルシアン「ええい!何をしてるザマス!」

ペルシアン「平和宣言を無視しすぎザマスよ!」

ペルシアン「エビワラー!なんとかなさいザマス!」

エビワラー「そう仰られましても主席…」


エビワラー「我が格闘国も財政は逼迫…限界なのです」

ペルシアン「ぐぬぬ…」

ペルシアン「エルレイド!今すぐにでも共和国軍を動かして戦争を止めさせるザマス!」

エルレイド「…」

ペルシアン「エルレイド!?」

エルレイド「…」ニヤ




エルレイド「その必要はありませんよ主席」

ペルシアン「なんですって!?」

エルレイド「次の戦場は…ここですから」ガタッ


テレポート!

パシュッ

ペルシアン「な、なんザマスか!?」

ヤドキング「ポケモン共和国元老院はこれより我らが占拠する!抵抗は無意味だ」

ヤドキング「格闘国各地でも我が同胞が、独立のためののろしを上げている」


ヤドキング「祖国を再建するため…この国には消えてもらう!」

ヤドキング「祖国の恨み!今こそ晴らす時よ!」

ペルシアン「エルレイド!裏切ったザマスね!?」

エルレイド「貴方を殺しはしません。直ちに元老院を追放します」

エルレイド「ポケモン共和国は今日をもって長い歴史にピリオドを打つのです」

ペルシアン「そんな…」


―――…

元老院は突如現れた無数のエスパータイプポケモンにより占拠された。

格闘国各地でも紛争は繰り広げられ、エスパータイプポケモンによって次々と占領された。

元老院は格闘国から追放され、ここにポケモン共和国は国際法のみを遺し、名実ともに消え失せたのであった…

その後、ノーマル・飛行連合帝国及び氷の国が侵攻。ここに第一次戦争が勃発した。


―――ノーマル・飛行連合帝国―――

プリン「ついに始まったわね…ゴクリ」

ハヤシガメ「まあ余裕っしょwww」

キマワリ「ここ数年でこの国も変わりましたものね」

トゲピー「チョゲプリィィィィィ」

ケンタロス「さすがエテボース帝だな!」

ブルー「占領国以前からこの国を支えてくれた真のリーダーだぜ」


―――…

エテボース「戦況はどう?」

ブースター「今のところは飛行隊の活躍で圧倒だ」

ブースター「対氷タイプ用にヤチェの実を草・毒州から大量に輸入した」

ブースター「奇襲攻撃で敵軍の司令系統を破壊する戦術はかなり効果を上げているよ」


ブースター「ひこうタイプの『速さ』には氷軍も対応できないだろう」

ブースター「先日の悪国の参戦も今は抑え込んでいる」

ブースター「後詰が来れば余裕だ」


エテボース「よーし。このまま押し切るんだ。氷の国さえ追っぱらってしまえばこっちのもの…」

ブースター「さらにエスパータイプ達を味方につけるとはいい考えだったな」

エテボース「独立と引き換えにね。草・毒州のように保護すればいいのさ」

ブースター「そうだな」


エテボース「ゴースト国の動きはまだないの?」

ブースター「無い。ありえないくらいない」

エテボース「…警戒は怠らないようにね」

エテボース「この戦争さえ終われば平和な世界が待っているといいな…」

ブースター「さすがにまだ大国が黙っているとは思えんが」

エテボース「はぁ」

プクリンのギルド出ないの?


―――数か月後 格闘国⇔氷の国国境 氷軍第一師団戦略本部―――

フリージオ「ノーマル・飛行連合帝国軍により103高原、105、106ブロック陥落!」

フリージオ「第二、第四師団は壊滅!第三師団、第五師団も撤退しました!」

フリージオ「第二師団長バイバニラ司令官、第四師団長マンムー中将、及び第五師団長グレイシア中将が既に戦死!」

フリージオ「残るは我ら第一師団のみ!もはや勝機はありません!撤退しましょう!」


ツンベアー「ぐぬぬ…やむなしか…」

ツンベアー「フリージオ副長、全軍に撤退命令を出せ」

ツンベアー「殿は任せろ。先に行け」


フリージオ「分かりました」

フリージオ「またお会いしましょう…」

ツンベアー「ああ。また」

ガァァン

バァン

ビュワッ


「敵国飛行隊の強襲!!」

「警備隊応戦せよ!応戦せよ!」

ツンベアー「な、なんだ!?」

フリージオ「まさか…この戦略本部の場所がばれたと…!?」

ツンベアー「そんなはずがない!空からでも覗かない限りは…」


バサッ

「敵陣営本部確認!」

「一斉に射撃せよ!」

「「「はかいこうせん!!!」」」

ドガァァァァァ・・・…


―――…

送還されたひこうタイプポケモンによる『航空隊』を駆使し、あっという間にノーマル軍は氷軍を敗走させ、新エスパー国を建国させた。

それは各国の反対を招いたが、連合帝国はそれを一切無視。

悪国戦線も押し返し、戦争はこのまま終戦を迎える…はずだった。

訂正 『航空隊』→『飛行隊』


―――電気王国 王城―――

エレキブル「そろそろだな」

?「ええそうでス」

エレキブル「氷の国を占領し…」

エレキブル「お前の国を通って悪国を潰せばいいんだろう?」


?「まずはそこですネ…」

?「疲弊した氷の国はあっさりいくでしょうガ、悪国はちと厄介でス」

エレキブル「連合帝国はほっといていいのか?どうも最近力をつけているようだぞ」

?「まあまア、格闘国なんてどーでもいいんですヨ」


?「差し詰め新しく建てたエスパー国、あれをネタにすればいいんでス」

?「さらにあの国は電気王国の資源がないとシマイですかラ…」

エレキブル「なるほど。水の国も相性的には余裕だな」

?「手筈は整ったのでス」

?「もう少しで世界は我らのものですヨ…」


エレキブル「ふん。よく言うわ」

エレキブル「世を治めてまた『新生ポケモン共和国』を建てる。それがお前の提案だろう」

?「ああそうでしたネ…つい表現を誤ったようでス…」

エレキブル「余計なことを考えるなよ?」

エレキブル「ムウマージ局長」

ムウマージ「ヒヒ…もちろんでス…」


―――ノーマル・飛行連合帝国―――

tv『我らが連合帝国は格闘国での戦争に勝利しました!!!』

tv『これにより、エスパー国が独立!また一つ平和への道が開かれたのです!!』

tv『エテボース帝は…ガサゴソ』


tv『ここで臨時ニュースが入りました』

tv『電気王国が氷の国と悪国に宣戦』

tv『現在、氷の国は大部分を占領され、降伏間際まで迫っています』

ざわざわ…

ナンダッテ…

アノコオリノクニガアットイウマニ…

デンキオウコクヤバイゾ…


―――…

ブースター「動いたな」

エテボース「電気王国と悪国は国境を接していない…」

エテボース「ゴースト国を通る気なのか?」


ブースター「ああ。もう王国軍がゴースト国に入ったらしい」

ブースター「ゴースト国はタイプ的にも悪国に不利だ」

エテボース「都合がよすぎるね」

エテボース「裏で結んでいたか…」


ブースター「だろうな…そうとなったらまずいぞ」

ブースター「電気王国とゴースト国が結んだとなれば…」

ブースター「こちらの水、ノーマル陣営は限りなく不利になる」

エテボース「悪国と講和条約を結ぼう!今すぐにだ!」


―――電気王国が悪国に宣戦して数日後 悪国 アジト―――

マニューラ「てめぇ!裏切ったね!?」

ムウマージ「さあなんのことやラ…」

カモネギ「あの…講和…」

マニューラ「黙ってな!」


マニューラ「くっそ!!こうなったら意地でも追い返してやる!」

ムウマージ「頑張ってくださイ…」

マニューラ「アンタの国もでてきなさいよ!」

ムウマージ「それはちょっト…」

マニューラ「ムキー!」


マニューラ「ふざけんじゃないよ!同盟なんて破棄だ!言葉通りぶっ潰してやる!」

ムウマージ「そうですカ…ならば私は去りますヨ…」ポヨン

マニューラ「ムキー!!!!帰るなぁ!!!」


カモネギ「あの…」

マニューラ「うっさい!鍋にして食っちまうよ!!」

カモネギ「トホホ…」


悪国は直ちにゴースト国との同盟を破棄。連合帝国の講和案も無視した。

結果ゴースト国への宣戦を待たずして電気王国が侵攻を開始。

じわじわと要所が占領され、数か月後には悪国はすっぽり電気王国となった。


―――数か月後 悪国辺境

悪国はアジトが陥落し、マニューラ他幹部は逃亡を余儀なくされた。

再三の電気王国軍の包囲をかいくぐり、生き残ったのはもう2、30匹であった…


マニューラ「はぁ…なんでこんなことになっちまったんだい…」

マニューラ「アタシともあろう者がこんなところまで逃げる羽目になるとは」

マニューラ「情けないねぇ」


グラエナ「マニューラ様!まだ我々は負けておりませぬ!」

グラエナ「この川さえ渡れば王国軍も追っては来ないでしょう!」

グラエナ「この先の土地はまだ味方がおります故、再び悪国を建て直すには充分です!」

グラエナ「どうか早く川をお渡りください」


マニューラ「はは。お天道さんがアタシを見捨てて滅ぼそうとしているのに、どうしてこの川を渡るんだい。いや、渡らないね」

マニューラ「もう仲間もこんな少しになっちまった…」


マニューラ「もしこの先の味方が同情してまたアタシをリーダーに立ててくれたとしても、アタシは一体どのツラさげて接すれば良いんだい」

マニューラ「もしこの先の味方が何も言わなくたってさ、アタシが自分を恥じないことがあると思うかい?いや、ないね」


マニューラ「アンタは十分アタシに尽くしてくれた。アンタだけでも行きな!」

グラエナ「いえ。私はマニューラ様のお付きとして使命を全うする次第であります」

マニューラ「そうかい…」


マニューラ「この場に生き残った全員に告ぐ!!」

マニューラ「アタシ達はここで王国軍と接近する!逃亡は許さないよ!!」

マニューラ「最期の意地を見せてやろうじゃないか!」

オー!!


しばらくして、王国軍はこの地に到達。

マニューラ一行はそれに最後まで抵抗した。

マニューラが倒した王国軍はすでに数百。しかし、マニューラもまた多くの傷を負っていた。


マニューラ「はぁはぁ…」ポタポタ

ミカルゲ「最期の意地などにひるむなー!!全員討て!!」ハッ

マニューラ「お前は!?元幹部のミカルゲじゃないのか!」

咄嗟に目を逸らすミカルゲ。


ミカルゲ「くっ…おいライチュウ!あれがリーダーのマニューラだ!」

マニューラ「ははは」

マニューラ「アタシは電気王国がアタシの首に大金と広大な領土をかけて求めていると聞いた!」

マニューラ「アンタに是非ともくれてやろうじゃないか」ニヤ


首に鋭い爪を宛がい、目を閉じる。

マニューラ(ブラッキー。アンタに合わせる顔がないよ…)

マニューラ「後は頼んだ」グッ

ズバッ

ブシュッ


―――…

こうして2年に及ぶ第一次戦争は終結した。

氷、悪国は電気王国が支配する傀儡国家に成り果ててしまった。
―――…


―――4年後 ノーマル・飛行連合帝国―――

ブースター「くそっ!ついに資源の輸入を禁止しやがった」

エテボース「本格的につぶしに来たか…」

ブースター「水の国からも宣戦要求が来ている」


ブースター「限界だ」

エテボース「く…」

エテボース「ゴースト国に行く」

ブースター「!何を!?」

エテボース「戦争をしない要求さ」

エテボース「死にはしないよ」


ブースター「知らんぞ僕は」

エテボース「もしそうなっても君がこの国を引っ張ればいいんだよ」

ブースター「そう簡単に言うな」


ブースター「この国は想像以上に成長した…それも君のおかげだ」

ブースター「僕がこんな国を作り上げられるはずがなかったんだよ…」

ブースター「十分夢は見たさ」

エテボース「じゃあいってくるよ…」


―――ゴースト国 某所―――

ムウマージ「できませんねェ…」

エテボース「どうしてです!?もう戦争は避けるべきなんです!」

エテボース「これ以上同胞が死んでいくのを見てどうするんですか!」


エテボース「人間がいたころは…タイプも種族も関係なく平和な時代が続いていたそうじゃないですか」

エテボース「どうしてそれを理想としないんですか!」

ムウマージ「知っていますヨ…それゆえニ…でス」

エテボース「?」


ムウマージ「まあこれ以上の会話は無駄でス」

ムウマージ「お帰りなさイ」

エテボース「…」トボトボ 

ドロン


ゴースト「よかったんですか…?いま殺しておいた方が…」

ムウマージ「ちっ嫉妬を抱きますヨあんなの…」

ムウマージ「ああいうのは最後まで絶望を与えるべきなんですヨ…」

ゴースト「おお、おそろし おそろし」

ムウマージ「元老院時代の皆さんにそっくりですネ…」

ムウマージ「もうほとんど残っていませんけド…」


2か月後、ノーマル・飛行連合帝国及び水の国はゴースト、電気王国両国に宣戦。

第二次戦争となった。

戦争は意外にも連合帝国側の好調。

悪国、氷の国での戦闘に勝利し、解放した。


―――水の国群島 水中首都―――

カメックス「国境線が突破されただと!?」

カメール「はい!このままではまずいです…」

ゼニガメ「電気王国軍は火の勢いで水の国群島を占領しています!」

カメール「既に7割がやられたと…」

カメックス「もはやここまでか…」


水の国無条件降伏。

戦争が始まってから1年後のことだった。

元首は自殺。上層部は処刑となり電気王国によって支配された。


―――ノーマル・飛行連合帝国―――

エテボース「孤立したか…」

ブースター「ちぃ。だがまだ勝機はある」

エテボース「氷の国も奪還されたし、草の国もエスパー国も陥落か…」

ブースター「また奪い返せばいいさ」

エテボース「そうだな…最後まであきらめはしない!!」


ノーマル・飛行連合帝国は、水の国の敗北を境に勢いを失くしていった。

国内の資源は底を尽いた。

だが、それでも諦めることはなかった。国内の士気だけは高くあり続けたのだ。

連合帝国は再三の降伏勧告を無視し、がむしゃらに悪国戦線にとどまり続けた。

だが…


―――2年後 ゴースト国 政治・軍事局―――

ムウマージ「ええイ…しつこいですネ…」

ムウマージ「もうこれ以上の被害は出すわけにはいきませン…」

ムウマージ「エテボース…貴方の言う通りニ」


ムウマージ「戦争を永遠に終わらせましょウ」

ムウマージ「ゴースト科学局長!」

ドロン

ゴースト「はっ」


ムウマージ「アレを使いなさイ…」

ゴースト「はっ!?『人間の遺産』のことですか!?」

ムウマージ「今使うしかありませン」

ゴースト「いいんですか…?まだ実用化できるとは…」

ムウマージ「構いませン。やりなさイ」

ゴースト「…わかりました」


―――数日後 悪国戦線にて―――

ルリリ「おかしいよ?敵が基地の中から出てくる」

ミルホッグ「帰りたいなぁ…」

ミネズミ「ここで戦死すれば名誉なんだぞ!」

ブニャット「そうだよなぁ…!?」

カッ


ピンプク「うわぁぁぁっ!まぶしい!!!」

ミネズミ「なんだありゃあ!?」

グランブル「目がぁっ!目がぁっ!…ぐわぁぁぁぁ!!!」

ゴォォォォォ…


―――電気王国―――

エレキブル「貴様…あれは一体何のつもりなのだ…」

エレキブル「悪国領土の半分を一瞬で焼け野原にするなど、ポケモンの力では不可能だろうに」

ムウマージ「そうですネ。伝説のポケモンでも呼び出さない限りハ」


エレキブル「そんな馬鹿な!伝説のポケモンなど神話の中の存在にすぎないはずだろう!」

ムウマージ「はイ。そうでス」

ムウマージ「確かに伝説のポケモンなどは存在しませン」

ムウマージ「ですガ…かつてそれと同等の力を手にした種族がいタ…」

ムウマージ「私たちは、その力の再生に成功したのでス」


ムウマージ「ヒヒヒ…これですべての国は我がゴースト国の前にひれ伏すのでス!」

エレキブル「野望のために初めから皆を欺いていたというのか…」

エレキブル「今までの…平和のための多くの犠牲はすべて無駄だったというのか!!」ビリビリッ


ムウマージ「そんなものですヨ…まあ平和にも色々な平和のカタチがあるのでス…」

ムウマージ「かつての『人間』による支配もまた一つ平和だったのですヨ」

ムウマージ「では私は去りまス…次は是非頭を垂れて頂きますからネ…ヒヒヒ」

ドロン

エレキブル「ふん…吾輩も結局は愚公か…」ビリッ

エレキブル「ウインディに顔向けができんな…ははは」ガクッ


―――ゴースト国 政治・軍事局―――

ムウマージ「大成功ですネ」

ムウマージ「これで戦争も終わりますヨ…」

ゴースト「そうですね…」


ムウマージ「どうしたんですカ?」

ゴースト「いえ、何でもないですよ。ただ私もポケモンですから…後ろめたいことはあります」

ムウマージ「まあまア…それは全て私が背負いまス…貴方は悪くありませんヨ…」ニコッ

ゴースト「局長…」


ピカッ

ゴォォォォォォ…


―――ノーマル・飛行連合帝国 元大統領邸ベランダ―――

ブースター「正体不明の爆発?一体何をしたんだ…?」

ブースター「だがどうして自国まで…」

ブースター「終わり…か」フッ


ブースター「いつから僕はこんな夢を見ていたのだろう」

ブースター「はは。長い長い夢だった…」

ブースター「もうレールも途切れてしまったか」

ブースター「いや、目的地にたどり着いた…と言った方が正しいのかもしれないな」


ブースター「エテボースを利用したつもりが、ただ乗せて行ってもらうだけになってしまうとはな…」

ブースター「皮肉な話だよ」

ブースター「氷の国のグレイシア、悪国のブラッキー、草・毒の国のリーフィア、エスパー国のエーフィ、水の国のシャワーズ」

ブースター「僕を蔑んだ者は皆戦争で死んでしまった…」


ブースター「残っているのはいじめられっこだった僕とサンダースだけなんてね」

ブースター「僕ももう終わりなのかな」

トコトコ


エテボース「どうしたんだ?」

ブースター「いや、なんでもないさ」

エテボース「もう降伏は受け入れた。戦争は終わったんだよ…」

ブースター「ああ。これで平和が戻るだろう」


ブースター「もう役目は終わった」ゴォ

ブースターは紅蓮の炎を口に含んだ。

エテボース「何をっ!?」ザッ

ブースター「ここで君を殺し、僕は新たな大国を築くんだよ…!」


ブースター「なんてな、冗談さ」シュン

ブースター「はは。大国を作るという夢。もう存分に叶えさせてもらった」

ブースター「楽しかったよ」ニヤッ

シュタッ


エテボース「なっ!ブースター!!」

すぐにベランダから身を乗り出したが、見えたのはブースターの無残な姿だけだった。


エテボース「そんな…」

エテボース「ようやく平和が時代が来るっていうのに…」

エテボース「どうしてだよブースター!!」

エテボース「どうして…」グスッ

エテボース「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



――――――
―――――
――――



ノーマル・飛行連合帝国は、謎の兵器により悪国戦線の多くの兵を失った。

それにより、降伏を受諾することとなった。

だが、謎の兵器はゴースト国をも焼き払ってしまった。



ノーマル・飛行連合帝国は、14年続いた帝政を破棄、共和国となる。

直ちに憲法改正及び軍の解散を行い、エテボースは戦犯として国の主権保護と引き換えに処刑された。


だが、電気王国も戦争の疲弊により大国を支える支配力はなかった

電気王国も戦後王政と当時の経済体制を撤廃し、電気国となった。

電気国支配圏の各国は悪国、ゴースト国を除き、主権を持って独立することとなった。



のちに元老院長にペルシアンが立ち、新生ポケモン共和国が建国される。

そして、戦争の反省を生かして、平和連合理事会を立ち上げた。電気国 氷の国 竜の国 炎の国 が常任理事国であった。

ノーマル国と近隣諸国は復興をつづけるも、謎の兵器の毒性が発覚し、悪国、ゴースト国は立ち入り禁止区域となる。

それをはじめとした紛争は長く長く続いた。真の平和が訪れることはなかったのである。


ノーマル・飛行国発展に尽くしたエテボースは悪人として伝えられることとなった。
 

ノーマル・飛行国は現在、電気国に次ぐ大国として栄えている。


エテボース(ポケ歴902~945 在位931~945)

ノーマル・飛行国第一議長及びノーマル・飛行連合帝国皇帝。

ノーマル・飛行国敗戦後、反帝国組織を設立。
後にブースターと共にクーデタを起こし、皇帝となった。

連合帝国は、第一次戦争には勝利するも、第二次戦争に敗北。 
その間、恐怖政治によって無理矢理経済成長を成し遂げたと言われる。

敗北後に電気王国へ移送され、非公開に処刑される。


なお、その後突如炎の国に現れ、一大復興と繁栄を成し遂げたエテボース大統領との関連性が疑われているが、それは偽であることが証明されている。





end1 「平和」


とりあえずend1まで終了ですが

まだまだ完結しません


―――終戦後 電気王国 牢獄―――

エテボース「これで…よかったんだよね…」

エテボース「プクリン大統領…ブースター…ザングース…もうすぐ会えますね…」

スタスタ

エレキブル「ははは。元気か?」

エテボース「貴方は!?国王陛下がこんなところで何をしているのです?」

エレキブル「ふん。野暮用だ野暮用」

エレキブル「…」

エテボース「…」



エレキブル「…吾輩は王位を降りるつもりだ」

エテボース「え」

エレキブル「ふん。王位なんぞ争いのもとになるだけだからな」

エレキブル「…この国を見てみろ。もう戦争でボロボロだ」

エレキブル「経済体制ももう破綻寸前…」

エレキブル「もう大国としての威厳などない」

エレキブル「すべてはゴースト国に騙されていただけだったようだ」


エテボース「そうだったんですか…」

エレキブル「正直に賞賛させてもらう」

エレキブル「あの短い時間での発展…占領国からの脱出…君主の見本なり」

エレキブルは膝をつき、エテボースに頭を下げた。

エテボース「な、おやめください!罪人に礼など…」


エレキブル「吾輩は愚公だ。平和こそ成し遂げたものの…実質何もしていないではないか!」ドンッ

エレキブル「最後まで侵略ばかりだ。ウインディと何も変わりはしなかった」

エレキブル「吾輩に貴公を殺すことなど到底出来ぬ…」

エテボース「何を仰るのですか…」

エレキブルは立ち上がり、わざとらしく言った。


エレキブル「あーあー。ゴホン。明日、お前を絞首刑に処すー」

エレキブル「吾輩はその『大きな尻尾』が邪魔だと何度もいったのだがなー」

エレキブル「側近どもは許してくれなくてなー」

エレキブル「非公開にはしたがー絶対にその尻尾で縄をつかんで助かろうなどと思うなよー」

エレキブル「そうなっても、我が国の法では『死亡扱い』になってしまうからなー」

エレキブル「はははー。まさか先代も受刑者が生き残ることなんぞ考えていなかっただろー」


エテボース「エレキブル王…」

エレキブル「さらばだー」テクテク

エレキブルはテクテクと来た方向へと戻っていく。

ピタッ


エレキブル「まさか法の穴がこのようなところで役に立つとはな…」

エレキブル「貴公には炎の国の復興をお願いしたい」

エレキブル「まあ、生きるか死ぬかを強制はせん」スタスタ

エテボース「あ…」



―――次の日 死刑台―――

エテボースは死刑台の階段を一歩一歩上っていった。

サンダース「さぁ…縄を」

キュッ

エテボース「どっちみち『私』は死ぬんですね…」

サンダース「はい…しかし、まだ死ぬべきではありません…」


エテボース「…」

エテボース「『悪者』として、私は死を受け入れるつもりですよ」

エレキブル「…やれ」

パカッ

ギィィィ…


―――…

ロトム「本国が消えてもゴーストタイプは滅びないのじゃー」

ロトム「さっさと王に入れ替わって…」

サンダース「聞かせていただきました」

ロトム「お前は国王顧問官の!?」

サンダース「貴方を逮捕します」ザザッ

ロトム「ムウマージ様ぁ~…」


後、シャンデラやユキメノコなど、ゴースト国に関わっていた者たちが次々と逮捕。その野望が暴露された。

だがそれは全く知らされることはなく、戦争はただエテボース帝の悪行であるという常識が定着していった――


―――…数か月後 炎の国

サンダース「いよいよですね。この宣言によって新首都と元首が国民に知らしめられるのです」

「そうだね。最初のうちは反発もあるだろうけど…いつかは理解してくれるだろう」

「電気王国…今は電気国だね。そのお陰でシャンデラは逮捕されたし、ガーディ皇太子も戦死して内戦は落ち着いたからね」


サンダース「貴方の政治力ならばきっと大丈夫ですよ」

サンダース「それにしても、僕を首相に選ぶなんてそちらの方が驚きです」

「ん?いやあそれは…」


「君も元はノーマル・飛行国出身なんだろう?」

サンダース「はい。そうですね」

「そこから国王顧問官まで出世したなら大したものだからね」

サンダース「いえ…あの役職、実は歴代でも就任して五か月間も生きていた者がいない貧乏くじだったんですよ…」


サンダース「無能な役人の処理場みたいなものだったんです」ハハ

「でも君は生きているじゃないか。つまり君は無能じゃないってことじゃないのかい?」

サンダース「いえ、たまたま運よく任期と王政破棄がかぶっただけです…」

「そう謙遜するなよ。君は十分な器を持っているさ」

「それと、君は私の死んだ友人に似ている気がするからかな」


サンダース「僕が友人に…ですか?」

「ああ。君と同じイーブイ族のね」

「彼のお陰で今の私があるんだ」

「一度他国へ渡り、功績をため、自分の信念のために祖国へ戻り繁栄させた英雄だよ」

サンダース「そうなんですか…」

「まあ君よりももっと図々しかったけどね」


サンダース「あ、そろそろ時間ですね」

「おっと、雑談している間にあっという間に時間が過ぎてしまったみたいだ」

サンダース「行きましょう」

「ああ。私の最後の大仕事だ」


―――…

その後、炎の国は突如現れた『英雄』により大復興を遂げた。

彼は安保理を提案し、さらなる平和を約束した。

彼は善政を敷き、内戦を完全に平定した。

彼はノーマル国と強い提携を結び、産業を発展させた。

彼はノーマルタイプとして、差別を完全になくした。

彼は死後も語られる偉ポケモンとなった。

だが、とある悪者との関連は皆無と証明された。

悪者は確かに『死んだ』からである。

本当のことを知るのは一部の者に過ぎない。

ただほっそりとその本当の英雄伝は伝えられていくのであろう…

end2「英雄と悪者」


―――…

「はぁっ…はぁっ…」タッタッタッタッ

「ここまでくれば…」タッタッタッタッ

「ぐっ…」バタッ

「もう三日は走りっぱなしだ…限界か…」ハァハァ

ガサガサ


「!?」


「まさかこんな森の中に炎帝国軍が…?」

「ちっ…もうダメか…」ギュッ

エイパム「あ、あなたは!?」


エイパム「ザングースさんじゃないですか!」

ザングース「あ、お、お前は…?」

エイパム「大丈夫ですか?今すぐ仲間のところに…!」

ザングース「すまない…」


―――数週間後 ノーマル共和国 サウスエリア郊外―――

ムクホーク「まさかお前が転がり込んでくるなんてなぁ」

ザングース「ああ。ノコノコと殺されに行くわけにもいかなかったんだよ」

ザングース「それよりお前が生きているのも不思議だろうに」

ザングース「先の戦争で死んだんじゃなかったのか?」


ムクホーク「エイパムが助けてくれたのさ。私が襲撃された後、必死で氷を溶かして連れ出してくれたんだ」

ムクホーク「まあ『鳥の4将』は私だけになっちまったみたいだが…」

ザングース「なるほどな…それで、こっそり残党を捕まえていたと」

ムクホーク「そうだ。いざという時のためにとな」


ザングース「…だがもうそれも必要なさそうだな」

ムクホーク「うむ。先日の革命で炎帝国の勢力は排斥された」

ムクホーク「有志によって、ほとんどの者は新帝国の軍に帰化させるつもりだよ」

ザングース「お前はどうするんだ?」

ムクホーク「私か?私は残る」

ムクホーク「こんな翼じゃもう飛べもせん…」バサッ

彼の翼はボロボロになっていた。恐らく先の襲撃でやられてしまったのだろう。


ザングース「そうか…」

ザングース「ならば、俺の話に乗らないか?」

ムクホーク「ん?なんだ?」

ザングース「俺が第一議員をしているときに妙な噂を聞いたんだ」

ザングース「とある国に『人間の遺産』が実在している。そしてそれは恐ろしいものであると…」


ムクホーク「人間の遺産?」

ザングース「ああ。だが俺もそれが何かが正確にわかっているわけじゃない」

ザングース「だから、死ぬ前にここまで逃げてきて突き止めようと思ったのさ」

ムクホーク「なるほど…タダでは死なんということだな…」

ザングース「ああ。ぜひ協力してほしい」


ムクホーク「いいだろう…こんな老体でよければ喜んで力を貸そう!」

ザングース「十分だよ。ありがとう」


ムクホーク「ならば今からは?」

ザングース「俺が噂を聞いたのは悪国の商人だ」

ザングース「落ち着いたら悪国へ向かおうと思う」

中途半端ですがここで止めます

明日にでも書き溜め全部上げて完結させます

     乙乙乙乙
        乙   
       乙  
      乙   
     乙    

    乙       乙 
     乙乙乙乙乙乙



―――悪国―――

悪国は国とはいえど、その実態はマニューラをリーダーとした組織体である。

憲法や明確な法などは定められておらず、ただ暗黙のルールに従って動く怪しい場所であった。

だが、経済は活発で、各国の商人がここで市をよく行っていた。

それもあり、他タイプの者が悪国内を歩き回ることに特に問題はなかったのである。


ムクホーク「ふむ…初めて来たが、意外と明るいんだな」

ザングース「ああ。」

ムクホーク「あてはあるのか?」

ザングース「ない」

ムクホーク「」


ザングース「冗談だよ…まずは噂の発信源を辿る」

ザングース「うまくいけば幹部にも立ち会えるかもしれない…」

ムクホーク「なぜだ?」

ザングース「簡単なことだ」

ザングース「普通ならそんな噂誰も信用しないだろう?」

ザングース「だが、その商人は俺を引き留めてまでその噂を俺に教えたんだ」


ムクホーク「そんなのそいつが信じやすい性格だったんじゃないのか?」

ザングース「いや、そんなことはない。言ってなかったがそのとき俺は2万ポケを渡されたんだ」

ザングース「狡猾な彼らが、証明料などと言って置いていったんだぞ?おかしいと思わないか?」

ムクホーク「なんと…」

ザングース「つまり、その噂は相当信用できるところから来ている…」

ムクホーク「だから幹部とのつながりが濃厚というわけだな」

ザングース「そうだ。しばらく聞き込みをしよう」

ザングース「怪しまれない程度にな」


―――数週間後 悪国 末席幹部の館―――

アブソル「ブラッキー様。最近この辺りで『人間の遺産』について触れ回る輩がいるそうです」

アブソル「どう致しますか?」

ブラッキー「おお。ついに現れたか。商人共は一体誰に目星をつけたのかしら?」

アブソル「どうやらノーマルタイプの者らしいです」


アブソル「ザングースとムクホークという種族の者だと…」

ブラッキー「いいでしょう」

ブラッキー「そいつらを呼び寄せなさい」

ブラッキー「これでたっぷりお礼が出るわ…ムフフ」

アブソル「御意」


―――数日後 館前―――

アブソル「ここが主人の館です。どうぞ」

ザングース「ああ。ありがとう」

ムクホーク「まさか本当に幹部つながりだとは…」

ザングース「はは。『遺産相続』も捗りそうだな」


―――末席幹部の部屋―――

ブラッキー「わざわざ悪国までようこそ」

ザングース「一応隣国だからな」

ブラッキー「そうでしたわね…フフ」

ブラッキー「それで、あなた方はあの噂を聞いていらっしゃったんでしょう?」

ムクホーク「うむ。ということはあの噂は貴方が流したということですな」


ブラッキー「いかにも。と言っても、ワタクシもある方に依頼されたんですけどね」

ザングース「!?さらに後ろがいるということか」

ブラッキー「そうですわ。実際にここまで来たのはあなた方が初めてですけど…このことを教えるのも依頼の一部です」

ブラッキー「しばらくは泊まっていってください」

ブラッキー「次にまた戦争が始まるまでは泊めておけというのも依頼の一つです」

ムクホーク「そうですか…ではお言葉に甘えて」

ザングース「そうだな。当てがなくて困っていたしちょうどいい」


――…

それから俺たちは束の間の平和を楽しんだ。

館は豪華そのものだった。

使用人にはノーマルタイプの者もいたので、すぐになじむこともできた。

だが、どうしても心が晴れることはなかったのだ。

『人間の遺産』とは何なのか…考えるまま夜は眠れない。


そんな時には祖国の繁栄を知って歓喜するのだ。

エテボースは表の舞台で賢帝を演じ、俺は裏でぬくぬくと平和を楽しむ。

こんな生活も悪くないと思った。


そんな時だった――


―――5年後―――

アブソル「開戦です!ノーマル・飛行連合帝国軍と氷軍が格闘国で衝突!」

アブソル「悪国もすぐさま連合帝国に宣戦したと…」

ブラッキー「ついに始まりましたか」

ブラッキー「まあ悪国に被害はないでしょう。これは儲かりますわ…ムフフ」

アブソル「しかし…あの二匹はどうします?」

ブラッキー「そうですね。依頼の続きをお願いしましょう」


―――…

ザングース「で…依頼の続きというのは?」

ブラッキー「はい。ワタクシへの依頼主のことです」

ムクホーク「ふむ。一体誰なんだ?」

ブラッキー「ほとんど身の上は隠されていたのですが…」

ブラッキー「ゴースト国民のゴーストです」


ザングース「ゴースト国か…やはりあの国怪しいと思ったら…」

ムクホーク「政治体制もいまだに謎の隠密国家…下手に手出しはできませんな」

ブラッキー「ええ。しかし、戦争が始まった。ゴースト国はさらに何かしらの動きを見せると思われます」

ブラッキー「その隙をついて潜入を…」

ザングース「あそこの国境は厳しいんじゃなかったのか?」


ブラッキー「はい。真向に行けばまず毒殺です」

ブラッキー「しかし、参戦すれば話は別…国境の警備は手薄になる」

ブラッキー「ゴーストも何かしら手を入れているでしょうし…大丈夫でしょう」

ムクホーク「また無茶苦茶ですな」

ザングース「構わないさ。どうせ俺はもう死んでるはずなんだからな」

ブラッキー「あら。どいうことなのですか?」


ザングース「俺は元ノーマル・飛行国第一議員のザングースだ」

ムクホーク「おっとならば私も…元軍司令のムクホークです。以後お見知りおきを」

ブラッキー「!あらあら。商人もえらく大きな穴を選んだようですね」

ブラッキー「ムフフ…これはお礼をはずんでもらわないと…」ボソッ

ザングース「ん?何か?」

ブラッキー「いえいえ。何でもありません」

ブラッキー「まあそういうことです。まあもうしばらくはゆっくりしていってください」

ムクホーク「ここまでしていただいて申し訳ない」

ザングース(お礼…?)


―――数か月後―――

ザングース「長い間世話になったな」

ムクホーク「また会う機会があれば!」

ブラッキー「はい。ではまた…」

二匹は西の方へと旅立っていった。


―――…

ブラッキー「さて…お礼をもらいましょうかゴースト」

ゴースト「お久しぶりですね…」

ゴースト「本当にありがとうございます」

ブラッキー「お礼のポケはずんでもらいますからね。何せノーマル・飛行国の元上層部を送ったのですから」エッヘン


ゴースト「残念ですがポケでは渡せません」

ブラッキー「なんですって!?」

ゴースト「私が貴方にだすお礼は『情報』です」

ブラッキー「な、そんな話通用すると思っているの!?」

ゴースト「はい。しばらくすれば貴方も納得しますよ」


ブラッキー「そんな根拠のないことを…」

ゴースト「まあまあ…よく聞いておいてください」

ブラッキー「ちっ。いいでしょう。くだらなかったらあなたを斬り捨てますからね」チラッ

アブソル「…」ザッ


ゴースト「…はい。もうすぐ電気王国がこの悪国に宣戦します」

ブラッキー「は!?あんなポケモン共和国の正反対側にある国がどうやって…」

ゴースト「先日始まった氷の国への侵略」

ゴースト「あれはこの国を狙ってのものだったのです」

ブラッキー「な…なんということなの…リ、リーダーに知らせなくては…」


ゴースト「無駄ですよ。もう数日で電気王国は氷の国を占領しきり、ゴースト国を貫通してこの国に侵攻します」

ゴースト「あなたが逃亡の準備をする間にはもう侵攻は始まるのです」

ゴースト「しかも、貴方はあまりマニューラに好かれてもいない末席幹部…」

ゴースト「まず信じるような方はいないでしょう」

ブラッキー「く…そんな所まで図っていたとは…」ペタン

ゴースト「今すぐにでも逃げることをおススメします」

ゴースト「ではこれにて」ドロン


ブラッキー「…」

アブソル「…ブラッキー様…」

ブラッキー「…できるだけのことはするわ」

ブラッキー「まずはマニューラ様に助言して、悪国辺境にて様子をうかがうことにしましょう」

ブラッキー「万が一敗けたとしても、そこからまたやり直せるようにね…」

アブソル「御意」


ゴーストの言葉通り、数日後に悪国と電気王国との戦争は始まった。

ブラッキーは悪国消滅後、悪国幹部の中で唯一生き残った。

そして終戦後には、祖国復活のため内戦を率いてゆくこととなるのだ…


―――数か月後 ゴースト国北部―――

ムクホーク「結局ノーマル・飛行国からの回り道になっちまったな」

ザングース「仕方ないだろう。ゴースト国と悪国は戦時中だ。国境なんてガチガチだろう」

ザングース「それに…もうあの国は『ノーマル・飛行連合帝国』に生まれ変わったんだぞ」

ムクホーク「おおそうだったな。つい懐かしくなってしまうようだよ」

ザングース「まあいいじゃないか。新しい国もエテボースがうまく引っ張っているようだしな…」

ドロン


ゴースト「いやはや初めまして」

ザングース「敵か!?」

ムクホーク「つばさで…」ザッ

ゴースト「お待ちください。私が貴方がたの依頼主、ゴーストです」

ゴースト「隠れ家は用意してあります。ひとまずはそこへ…」


ゴースト国のポケ口密度はかなり低く、町へ行っても何もいないことはよくあった。

経済体制は電気王国と大体同じ。だが、あまり裕福とは言えない、独裁国家であった。


―――…

ゴースト「いやはや…さすが元幹部様ですね。この国に難なく侵入するとは…」

ムクホーク「難なくではなかったがな」

ザングース「ああ。一度見つかりかけた」

ゴースト「おおお。もし見つかっていたら私の命も飛んでいましたよ…危ない危ない…」

ムクホーク「?」


ザングース「ところでお前は一体どういう身分なんだ?今の言い方からしてただの国民じゃあないだろう」

ゴースト「はい。私は…ゴースト国の科学局局長を務めています…」

ザングース「科学局?」

ムクホーク「そんなところは初めて聞いたな」

ゴースト「当然ですよ。極秘ですからね。ゴースト国にはいくつかの局があってですね…」

ゴースト「独裁の中心地は政治局と呼ばれる場所なんです」


ゴースト「現在はムウマージ政治局局長がこの国の君主なのです」

ムクホーク「そんな極秘のことを軽々と…大丈夫なのか?」

ゴースト「はい。私科学局局長はムウマージ局長第一の部下…いわば最高幹部なのです」

ゴースト「権力で多少はどうにかできます。まさか局長も最高幹部が裏切るなんて予想もできないでしょうから…」

ザングース「で、この依頼の趣旨を教えてもらおう。『人間の遺産』とはいったいなんなんだ?」

ゴースト「はい…」


ゴースト「貴方がたはどうして人間が滅んだか知っていますか?」

ムクホーク「知らないな…」

ザングース「考えたこともない」

ゴースト「…私たちはその原因を知っているのです…建国以前から…」

ザングース「そんな前から…もう何百年も前の話じゃないか」


ゴースト「はい。そしてその原因とは…」

ゴースト「戦争ですよ…何百万というポケモンたちと人間たちが互いに争い合ったのです」

ゴースト「しかし、それでも決着はつかなかった」

ゴースト「人間は、最後にその知恵を使い、ある兵器を使ったのです」

ムクホーク「ヘイキ?」

ゴースト「はい…簡単に多くの命を奪える恐ろしいものですよ」


ゴースト「マルマインの爆発原理を解明し爆発力を極限まで高め、さらにわれらゴースト族の強力な毒を混ぜた爆弾です…その爆発力は元のマルマインの約2千万倍で…うんぬんかんぬん」

ゴースト「とまあこれが『人間の遺産』の正体なのです」

ムクホーク「」

ザングース「」


ゴースト「とりあえず…マルマインのように爆発し、国一つを焼きつくし、さらに毒を盛った危ないものだということです」

ザングース「な、なるほど…そんなものがここに実在しているということか」

ムクホーク「使われればポケモン共和国もろとも吹き飛ぶな…」

ゴースト「いえ…さすがにそこまでは…せいぜいゴースト国がまるごと吹き飛ぶ程度ですよ」

ザングース(それでもすごいような…?)


ゴースト「私達科学局はその遺産を発掘し、また使えるように修復していたのです」

ゴースト「現在3つが修復に成功しました…」

ザングース「そんなもの国際法以前にあってはならないものだろ…」

ゴースト「はい…私もそれを修復する間に恐ろしくなったんです」

ゴースト「ムウマージ局長は次の戦争にでも使うつもりでしょう…」


ムクホーク「今はゴースト国は参戦していないんだよな」

ゴースト「はい。しかし、ゴースト電気、ノーマル水両陣営はこの戦争のあとも対立を続けるでしょう」

ゴースト「第二次戦争は避けられるものではありません…」

ゴースト「もし使われることになったら…安全な起爆方法を教えますから、この国のなかで爆発させてください」

ゴースト「もうこの国は滅ぶべきなのです」


ムクホーク「なぜそこまで…」

ザングース「祖国を粗末に考えてどうする!」

ゴースト「貴方がたが知らないのも無理はありません」

ゴースト「この第一次戦争の…いやもっと前、ノーマル・飛行国を滅ぼした元凶はこのゴースト国なのです」

ザングース「なんだと!?」


ゴースト「事の発端はあの『北部大連合』までさかのぼります…」

ゴースト「あの大連合発足を影で結びつけたのがムウマージ局長なのです」

ゴースト「さらに氷の国女帝のユキメノコ、炎帝国左大臣のシャンデラらもムウマージ局長の手下であり…」

ゴースト「彼らはこっそりと戦争が始まるよう動いていたのですよ…」


ムクホーク「なんということだ…」

ザングース「すべてはこの国に踊らされていただけだったのかっ…」ギリ

ゴースト「はい。だからもうこのようなことを繰り返さないためにも…」

ゴースト「協力をお願いしたいのです…」



――――――
―――――
――――


―――7年後 第二次戦争終戦間近 ゴースト国 科学局―――

「シンニューシャダー」

「ニンゲンノイサンマデタドリツカセルナー」

「ソッチニイッタゾー」

ザングース「はあはあ。もうすぐだ…」

ムクホーク「私たちの戦いもついに終章だな」

ザングース「ああ。いままでありがとう」


――― 1時間後 最深部 ―――

シュン

ザングース「ここだ…」

目の前には、ザングースと同じくらいの大きさの球体が厳重に安置されていた。

遊び心なのか、無機的な色にマルマインの模様があしらわれている。


ムクホーク「おいまて!2つしかないぞ!」

ザングース「しまった!もう運び出されたか…」

ザングース「仕方ない。この二つだけでも起爆させよう」

ムクホーク「思いっきり技をぶつければいいんだよな」

ザングース「ああ。ゴーストの言ってることは何一つ理解できなかったさ」


ムクホーク「そうだな。生き残ったってどうしようもない」

ザングース「俺は誰も知らない英雄にでもなるさ。エテボースだって一緒だろう」

ムクホーク「はは。オオスバメ、オニドリル、ケンホロウ…そしてムクホーク」

ムクホーク「『鳥の4将』最後の一匹にふさわしい死にざまよ!」

「アイツラッ」

「マズイッキバクサレタラウゴカセンゾ」

「タイヒ!タイヒ!」ドロンドロン


ザングース「あいつらも見物していけばいいのにな」

ムクホーク「そうだな…さーて」

ザングース「遺言もない。やるぞ。俺は右、お前は左だ」

「せーの!」

「「はかいこうせん!!!」」

ドォォッ

ガイブカラノコウゲキヲカンチ

キバクシマスキバクシマス…


ザングース「またあの世で会おうじゃないか…」ドサッ

ムクホーク「それこそゴーストになって、だな…」ドサッ


カッ


―――数分前 政治・軍事局―――

ムウマージ「大成功ですネ」

ムウマージ「これで戦争も終わりますヨ…」

ゴースト「そうですね…」

ムウマージ「どうしたんですカ?」


ゴースト「いえ、何でもないですよ。ただ私もポケモンですから…後ろめたいことはあります」

ムウマージ「まあまア…それは全て私が背負いまス…貴方は悪くありませんヨ…」ニコッ

ゴースト「局長…」

ゴースト「申し訳ありません。最後に貴方を裏切ってしまうこととなるとは…」


ムウマージ「?」

ゴースト「今、科学局にある残りの爆弾を起爆させようと、ある方々が向かっています」

ゴースト「もう爆弾までたどり着いているかもしれません」

ゴースト「この国も野望も終わりですよ」


ゴースト「…しかし…私に貴方を殺すことは…できない…」

ムウマージ「そうですカ…まあこうなることは分かっていましタ…」

ゴースト「え?」

ムウマージ「実はあの爆弾…連合帝国内を直接爆破するつもりだったんでス…」

ゴースト「な…」


ムウマージ「それがどういう訳か悪国ニ…」

ムウマージ「貴方だけではないのですヨ…賢い者はネ…」

ゴースト「局長っ!」

ゴースト「どうか地下に…緊急用のシェルターにお行きください!」


ムウマージ「えエ…まだ私は諦めてはいませン」

ムウマージ「またどこかの時代で機会を狙うとしましょウ…」

ムウマージ「貴方は来ますカ?」

ゴースト「いえ。行けません」

ゴースト「私は何十万という命を奪ったのです」


ムウマージ「それが賢い判断でス…」

ムウマージ「またお会いしましょウ」

ムウマージ「それこそゴーストになって、ネ…」

ポヨン


ゴースト「はあ…私は…」

ゴースト「ふふ…それもまた面白いかもしれませんね」

ゴースト「さて、古の花を特等席で見させてもらいましょうか…」

窓から外を見れば、目と鼻の先に科学局が見えた。

職員たちが次々と逃げ出している。もうすぐこの戦争も…


カッ

ゴォォォォォォォ…


―――…

その後、ゴースト国は立ち入り禁止区域となり、事実は封印された。

ザングースのことも、ムクホークのことも、何1つ記録されることはなかった。
ただ元悪国幹部の話を除いて。


噂では、その立ち入り禁止区域のゴースト国で姿影が目撃されたとか。
時を超えて、再び世界が脅威に曝されるという話は、また別の物語である。

ここにおいて、裏の戦争も終わりを告げる。
知られていることが本当の歴史とは限らない。もしかしたら、誰も知らない英雄が存在していたのかもしれない。



end3「誰も知らない」


及び、エテボース「ポケモン戦記」 完


ということで終わりです!支援ありがとうございました。

また別スレで続きやらスピンオフ書くかもしれません。
そのときはまたよろしくお願いします。

ではみさんおやすみなさい!

     乙乙乙乙
        乙   
       乙  
      乙   
     乙    

    乙       乙 
     乙乙乙乙乙乙


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