勇者 「俺の血肉となるがいい、人間」(6)

この世界の地底にある場所・魔物たちはここを魔界と呼ぶ

"魔"王様 「来て、くれたのだな」

?? 「我らの指導者、魔王様のご命令とあらば」

"魔"王様 「もっとも人に近い姿を持ち、力も私に匹敵する悪魔…」

"魔"王様 「そして我らにとっての救い、勇者と呼ぼうか」

"魔"王様 「君には、業を背負わせることになる」

"魔"王様 「拒否しても、いいのだぞ?」

勇者 「大丈夫です、かつての我らの生活を取り戻すためとあらば」

"魔"王様 「すまない、すべては私のかつての遅れのせいだと言うのに…」

勇者 「ご心配なく、後は自分が引き受けますから」

勇者 「魔界を抜けた先は、見た限りでは草原らしい」

勇者 「地図を見てみるか、今いる場所を把握するためにも」ガサゴソ

勇者 「目標は王国、しかしここからだと距離がある」

勇者 「しかも今向かったところで返り討ちに遭うことは目に見えている」

勇者 「それに、距離もある」

勇者 「まずは、力をつけるべきか…」

勇者 「まて、遠くに居るのは人間か…?」

子ども達 「とりゃー!」カキン!カキン!

勇者 「丁度いい」

勇者 「幸い、他に人間はいない」

勇者 「おい」

子ども達 「…誰?」



勇者 「俺の血肉となるがいい、人間」

―――グサ、ブチッ

子どもa 「……」

子どもb 「……」

子どもc 「……」

勇者 「人間を殺せば力を得ると言うのは本当らしい」

勇者 「人間もまた、魔物を殺せば力を得ると言うが…」

勇者 「それを考える必要はないな、今はこの要領で狩りをするとしよう」

勇者 「死体はどうするかな、他の人間をおびき寄せる餌にでもするか?」

勇者 「まあそれはいい」

勇者 「ともかく、人間の欲によってかつて地底に追いやられた魔物たちの恨みは」

勇者 「この俺が代わりに晴らす」


勇者「そして、遙か昔の平穏を取り戻すために」

恨むべきは、世界をそんな風に作った奴だな。

勇者 「人が来るとまずいな、どこかに隠れたいところだが…!」

勇者 (この気配は、魔物か?)

勇者 (だが、今はもう、魔物は魔界にしかいないはずでは…)

勇者 (…見捨てるわけにはいかない、か) タッタッタ

勇者 (ここは…、洞穴、か?)

勇者 (! 声…?)


賊 「へっへっへっ、言い伝えに魔物を殺せば力を得られる」 グサ

賊 「それに魔物は敵と習った、殺しても別に誰にも咎められやしない」

スライム 「!?!?」

勇者 (なるほど、スライムか)

勇者 (あのスライムの背後にいる小さなスライムは、あのスライムの子どもか?)

勇者 (親らしいあのスライムは、もう限界か)

勇者 (なら、せめて………)

勇者 「おい」

賊 「ああ? なんだお前?」




勇者 「俺の血肉となるがいい、人間」


―――ブチッ

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