青年「来世で会いましょう」姫「ええ、必ず」(68)

ワーワー

姫「革命の時が来たのですね……」

メイド「姫様、早く逃げましょう!反乱軍が直にここへ来ます!」バタンッ

姫「わたしは残ります。あなただけで逃げなさい」

メイド「そ――そんな!?何をおっしゃって……」

姫「わたしには父上を止められず、国民を苦しめた罰が必要なのです」

メイド「やめてください…姫様は何もしなかったわけじゃないのに!」

姫「……過程より、結果なのですよ」

メイド「意地でも連れていきます!」グイッ

姫「おやめなさい」パシンッ

メイド「姫様……!」

姫「父上と運命を共にします。そうすれば忌まわしい血も絶えますから」

メイド「なら、あたしも残ります。姫様と死にましょう」

姫「いいえ。あなたは生きなくてはいけない存在です」

メイド「だったら姫様も!」

姫「……分かってください。この首飾りをあげます」スッ

メイド「こんな……受け取れません」

姫「死ぬ人間には必要ありません。それを売ればしばらく生きていけるでしょう」

メイド「う……うう……」

姫「わたしの覚悟を汚したくないなら、早くお逃げなさい!」

メイド「いやっ…!」

姫「命令です!」

メイド「ぐ……さよなら……っ、姫さまぁ!」ダッ
バタン

姫「……」

姫「……これで」

姫「これで……いいのです」

ワーワー

姫「……」

コッチダ ドッチダ

姫「……」

姫「……」ピク

ガチャッ

青年「やはり、あなただったんですか」

姫「…ふふ。騙されたかしら」

青年「騙されました。町娘だとばかり、おもってましたから」

姫「あの時はごめんなさいね。初めてのお忍びだったから、あなたを振り回してしまって」

青年「楽しかったから気にしていません」

姫「優しいのですね」

青年「……」

姫「……」

青年「王は、死にました」

姫「自決?」

青年「よくお分かりで」

姫「自分の父だもの」

青年「……」

姫「……」

青年「どうして逃げなかったんですか?」

姫「なんででしょう。あなたに会いたかったから…とか」

青年「……」

姫「偽りの身分でわたしはあなたに愛している、といいましたね」

青年「はい」

姫「それは本物です」

青年「本物…」

姫「…あなたはどうなのでしょう。敵を…愛せますか?」

青年「敵であろうが姫君であろうが、僕が好きなのは“あなた”です」

姫「ありがとう」

青年「こちらこそ」

姫「さあ…時間がもうないみたいですね」

青年「……」

姫「殺して」

青年「っ」

姫「ここで生きていたら、この後は…分かりますね?」

青年「…はい」

姫「どうか、ここで死なせて」

青年「でもっ……」

姫「大丈夫、わたしはあなたを恨みません」

青年「……」

姫「ごめんなさい、こんなひどい役をやらせてしまって」

青年「ひとつだけ」グッ

姫「?」

青年「キスしてください。あの時みたいに」

姫「……ふふ。いいですよ」スッ

チュ

青年「…じゃあ」グッ

姫「ええ」

青年「願わくば、来世で会いましょう」

姫「ええ」ニコ

ザシュッ




――それから数百年後――

 
 
.

男「なあ……笑わないで聞いてくれ」

友「ん?」

男「この前さ、変な婆さんに前世を占われて」

友「うん」

男「俺……お姫さまだったんだって」

友「……」

男「……」

友「ブッシャッシャッシャ!」

男「笑うなよ!!」

友「ヒャッヒャッヒャ、マジないわー」

男「俺もだよ!俺もマジでないと思ったんだよ!」

友「こんなゴツい顔のお姫様とかぶふっ」

男「じゃあお前も前世占ってこいクソッタレ!」

友「いいぜ…ま、オレはもてもてな金持ちだろうけどな」

男「そうと決まったら放課後に婆さん探そう」

そしてほうかご

男「さぁーてと、婆さんはどこかな?」キョロキョロ

友「あれじゃね?あの怪しいお婆さん」

男「お、意外と早く見つかった。あの人だな」

友「金は払ったのか?」

男「いや、前を歩いていたら声をかけられた」

友「ふぅん。じゃあいっちょ試しに歩いてくるわ」

男「いってら」

友「おう」スタスタ

友「」スタスタ

婆「……む、お主……」

友(キタコレ!)

婆「お主……前世が知りたいか……?」

友「え、前世っスか?知りたいことは知りたいですけど」

婆「ならば……聞け……お前の前世は……」

友「」ゴクリ

婆「あのものに使えていたメイドじゃ」ビシッ

友「」

男「え、俺がなんだって?」

友「うわあぁぁあああぁぁぁぁぁぁ!!」バンバン

男「落ち着けって」

友「お前に仕えていたメイドだぞ!?メイド!!」

男「ま、まあタニシとかじゃなくて良かったじゃねぇか」

友「むしろそっちのほうがまだ良いわ!!」

男「なにが気に入らないんだよ……」

友「お前の身辺の整理をしていたと思うと、もう……!!」

男「別に今の俺が姫な訳じゃなくだな…」

友「いらっしゃいませご主人様ーとかしていたのかなオレ」シクシク

男「ちょっと違うと思う」

こんな感じのギャグです

婆「今……過去の約束……果たすとき……」

男「は?」

婆「どのような……困難があろうとも……強くあれ……」

男「は、はぁ」

友「せめてオレらの過去に何があったか教えろよバーさん」

婆「直に……思い出すだろう……」

男「思い出す?前世を?」

婆「続きは金を払ってからじゃ」スッ

男「行こうぜ」

友「ああ」

男「しっかし前世ってなんだ?」

友「お前が姫ってことは王子もいるんじゃねぇの?」

男「そうだよなぁ……多分」

友「……!」ピィン

男「なんだよどうした」

友「オレたち、前世で女だったけど現世で男だよな!」

男「そうだな」

友「だったら……!!王子は、女子……ッ!」

男「それは素敵だが、姫はともかくメイドとの接点とかないだろ」

友「分かんないぞ?禁断の恋とかしていたりして」

男「幸せだな」

ドンッ

男「あっ」

イケメン「すいません」

男(進学校の制服だ)

イケメン「……」ジッ

男「……え、なに」

友「おいおいガンつけか?」

イケメン「…ま、まさかあなたは……」

男「なんか嫌な予感がしてきた」

イケメン「会いたかったです姫ェェェェェェ!!」ギュウッ

男「ギャアアア―――――――――――!!!!!!!」

友「と、トイレはあっちだからな」

男「貴様ァ!俺をどんな道に引き込もうとしてるんだよ!」

友「まあ…アッーなこと?」

男「そんなのやだぁっ!」

イケメン「姫!僕は……数百年待ち続けました!」スーハースーハー

男「匂いを嗅ぐんじゃねぇ!!」

イケメン「やはりあの花のような匂いはありませんか……」

男「常識的に考えろ!俺はガチガチの男だ!」

友「ガチガチって下ネタかよ」

男「断じて違う!」

イケメン「姫…僕を覚えていますか?」

男「まったく」

イケメン「隣国の王子ですよ。そしてあなたは僕の許嫁でした」

男「王子!?」

友「読みが外れた」ホジホジ

男「おいちくしょったれ!」

友「そもそもなんで都合良く前世の記憶を持ってるんだよ。ドッキリ?」

イケメン「違いますよ、メイドさん」

友「ブッ」

イケメン「とあるお婆さんに前世の名前を言われ――そして思い出したのです」

男「あのババアァァァァ!!」

イケメン「しかし…不思議なことがあります」

男「?」

イケメン「何故姫と僕は結婚しなかったのか…思い出せません」

男「結婚しなかった?」

イケメン「どうしてか、思い出せないのです」

友「じゃあ現世で結婚しちゃえばいいじゃん」ホジホジ

男「ざけんなてめぇ」

イケメン「……」

男「……」

イケメン「オランダに行きましょう」

男「なんでだよ!?前世に振り回されすぎだろ!」

しばらくして

男「メルアド交換させられた……」

友「ドンマイ」

男「最悪だ…『性別なんて問題ありません好きです』とか言われたし」

友「さらりとコクられたな」

男「どうしよう、俺が姫である証拠もなければ姫でない証拠もないんだけど」

友「つまり……アレか、その前世を調べる必要があるな」

男「それしかない」

男「前世に起こったことを調べて、イケメン野郎の正誤を確かめるんだ」

友「…合ってたら?」

男「へ?」

友「イケメン野郎との話が合ってたらどうする?」

男「」

友「オランダ行きじゃね?」

男「」

友「こっちで否定したところであの態度だし…」

男「」

友「男!?ちょ、気絶しちゃった!?」

――――

―――

――

姫(町娘)「今日であなたと会うのも最後でしょう」

青年「なぜ、ですか。町娘さん…」

姫「直に分かります」

青年「遠くに行ってしまうのですか?」

姫「…そうなるでしょう。しかし、心はあなたの側にあり続けます」

青年「…町娘さん、何を隠しているんですか」

姫「言えばあなたを苦しめるでしょう。せめて、その時までは秘密にしておきます」クルッ

青年「あ――」

姫「」タタタ

兄「追いかけるのはやめるんだ、青年」

青年「兄さん!でも……」

兄「女は追いかければ追いかけるほど遠退いてしまうんだよ」

青年「さすが過去二桁女性に逃げられた男……」

兄「あ?」

青年「いや、なんでもないです」

兄「しかし不思議な子だ。あのような上品な娘、見たことないよ」

青年「……」

兄「落ち込んだのかい?」

青年「…まあ、うん」

兄「あれは完全に振ったわけではないよ。――いずれまた会える日がくるさ」

青年「そうなのかな。僕は…振られたんだとばかり」

兄「青年になにかを知られたくなかったんだろう」

青年「そ…か」

兄「さ、家に帰ろう。今日はシチューを作ったんだ」

青年「ありがとう、兄さん」

兄「む」

青年「あれ、僕たちの家の前に兵士がいるね」

兄「……」

青年「兄さん?」

兄「お前は先にご飯食べてていいぞ」

青年「え、なんで」

兄「ちょっとこっちに話があるんだろうな。長めの話がさ」

青年「何かやったの、兄さん?」

兄「いいや。――まだ、だな」

青年「まだって……」

兄「そんなわけだ。家にはいってろ」

青年「う、うん。早めに帰ってきてよ」

兄「…努力する」

青年「……」

――

青年「……」

――

青年「……」

――

青年「……」

戦士「坊主。こんなところに突っ立ってると風邪引くぞ」

青年「あ、ああ…そうですね」

戦士「あの中に知り合いでもいたのか」

青年「――僕の、唯一の肉親がいたんですよ」

戦士「そうか」

青年「はい」

戦士「国王は気が狂いはじめたな。どいつもこいつも反乱者だとして処刑する」

青年「兄は……何もしていないのに、首を切られました」

戦士「悔しいか」

青年「――もちろんですよ。どうして僕の兄がって思います」

戦士「じゃあ、よ」

青年「?」

戦士「革命を起こさないか?」

青年「革命?」

戦士「この国を変えるんだ。土台からひっくり返す勢いで」

青年「……」

戦士「ただ、下手をすると死ぬ。捕まれば拷問だってされるだろう」

青年「構いません。もう僕に大切なものはなくなりました」

青年「参加させてください。国の未来のために命を捨てましょう」

戦士「…くく、そうだな。なかなか度胸がある」

――

―――

―――――

妹「お兄ちゃん起きろー!!」

男「」キーン

妹「もう、遅刻しちゃうよ!わたしご飯食べてるから!」

男「ゆ、夢か……」

男「やけに体が華奢になってた気がする…」

過去はシリアス
現代はギャグ

かもしれません今日は以上

男「ふわぁ……」スタスタ

妹「お兄ちゃん遅い」

男「なんだよ、結局待っていたのか」ガタッ

妹「一人でご飯は寂しいじゃん」

男「ちっちゃい時から一人で飯食うの嫌いだよな」

妹「なんでだろうね」モグモグ

男(待てよ……)

男(イケメン野郎はともかく、友は俺に近い人間だった)

男(俺の家族内でも俺の前世に関わった人間がいるんじゃないか?)

妹「…なに、人の顔をじっとみたりして」

男「あのさ、聞きたいんだけど」

妹「? うん」

男「前世の記憶ってある?」

妹「寝ぼけてるの?それともまだ夢見てるの?」

男「い、いやなんでもない」

男(覚醒していないだけか、それともまったく関係ないのか……)

男(まあいきなり同時にポコポコ覚醒するほうが変だよな)ジー

妹「なんなのよ…」

男「あのさ」

妹「うん」

男「笑うなよ」

妹「う、うん。まあ話の内容によるけど」

男「もし俺が前世ではお姫様だって聞いたら……どうする?」

妹「……」

男「……」

妹「きゃはははは!」

男「笑うなよ!!」

とうこうちゅう

男「クソッ、妹め」

男「あいつの部屋にフローラルな香りがする消臭剤置いて『いいにおーい』と言わせてやる」

友「よう、何朝からブツブツいってんだ姫様?」

男「別になんでもないぞメイド」

友「姫とメイド、どっちがいいんだろうな…」

男「どう考えてもメイドだろ。だって――」

イケメン「ああ我が愛しの姫!おはようございます!」

男「こいつ追っかけてこないし」

友「だなぁ…」

イケメン「偶然会いましたね!一緒に学校行きませんか!」

友「やかましい」

男「どう見ても学校一緒じゃないだろ。そもそも制服から違うし」

イケメン「……」

イケメン「学校変えてきます」

男「待て!!俺の心労をこれ以上増やすな!!」

イケメン「あなたの新郎は僕ですよ!!」

男「じゃあかしいわ!!」

友「なんか二人に向けた熱っぽい視線を感じるぞー。こう、薄い本が出来そうな」

男「誤解だ!みなさん誤解です!」

イケメン「くっ……名残惜しいですが今朝はここでお別れです」

男「今年はお別れの間違いだよな」

イケメン「もしご所望ならば毎朝姫のお迎えにあがります」

男「執事だよ!もはや王子のやることじゃないよ!」

イケメン「構いません!僕たちは現世で自由に会えるのです!それを利用しない手はありません!」

男「現世乱用しすぎだボケ!」

友「おい、あまり罵倒すんな。特殊な趣味に目覚めさせたらどうする」

男「お前はどっちの味方なんだよ!」

友「面白ければどちらの味方にもなるさ」ドヤァ

男「あとで一発殴らせろ」

イケメン「姫とメイドさんは日頃から仲が良いですね」

男「……それは、いつの話だ?前世か?現世か?」

イケメン「前世の話でもありますし、今の話でもあります」

男「ふぅん……」

イケメン「そうだ、放課後にお会いしませんか?オランダ旅行のプランが――」

男「チューリップと風車しか知らないかなっ!それじゃあまたいつか!」ダッ

友「おい待てよ」ダッ

イケメン「ちゃんと調べておきますからねー!」

テンポは悪いが続く

がっこう

男「ったく……」

新聞部「突撃インタビュー!」ドンッ

男「ぎゃあ!?」

友「マジで突撃しおった」

新聞部「地元で有名なイケメンくんを首輪で繋いで散歩してたってホント!?」

男「真っ赤な嘘だ」

友「誰が流したんだよそんな噂…」

新聞部「イケメンくんが」

男「」ピポハポパ

イケメン『なんですか姫!ラブコールで』

男「ふざけてんじゃねーぞ貴様ァァァァァ!!」

イケメン『ずいぶん元気のいいラブコールですね』

男「たった一日でド変態な噂を流してるんじゃねぇよしね!」

イケメン『まずは既成事実からと思いまして』

男「ホップステップスカイダイビング並に過程すっ飛ばしてるぞ!」

友「そのツッコミはちょっといまいちだな」

新聞部「で、実際はどうなのよ」

友「このようにラブラブでございます」

男「うるせぇ誰と誰がラブラブだ!」

イケメン『そりゃ僕と姫が』

男「黙ってろ!つかそっちの学校でも噂撒くなよいいな絶対だぞ!」

イケメン『……チッ』

男「なんだその舌打ちはまさかマジで喋る5秒前だったのか」

イケメン『……君のような勘のいい姫は大好きだよ』

男「そこは嫌いにしてくれ!!」

新聞部「ふむふむ」サラサラ

男「何書いてるんだ!消せ!それか千切れ!」

友「大変だなぁ、三人同時にツッコミ」

男「元はと言えばあのババアが悪いと思いますっ!」

図書「……」ガラッ

新聞部「あ、図書ちゃん」

図書「……うるさい、です」

男「ごめんなさい」

友「反省してます」

新聞部「調子乗りすぎたわ」

図書「……もう少しでホームルーム始まる、です」

男「ああもうそんな時間か……」

イケメン『姫と話しているとあっというまに時間 ブチ

男「今日宿題なんだっけ」

友「さあ?」

――――

―――

――

カランカラン

戦士「おい、兄!兄はいるか!」

兄「こっちだよ」

戦士「何そんなところでゆっくりしてるんだ!」

兄「もう少し声を抑えてくれ。ここは静かに酒を飲む場だ」

酒場主人「今日は客もいない。存分に話してくれて結構だ」

兄「ありがとう」

戦士「さっき…お前が出した、嘆願書の、写しを見た…」

兄「へぇ」

戦士「馬鹿か――!あんなの、王の逆鱗に触れるだけだろうが!」

兄「それでいいんだよ」

戦士「良くねぇ!良くて終身軟禁、悪くて首が跳ねられるぞ!」

兄「首が跳ねる方だろうね、間違いなく」

戦士「じゃあ暢気に酒を飲んでる場合じゃないだろ!」

兄「…別に自分も、なにも考えてないわけじゃないよ」

戦士「あ?」

兄「いくら現状に苦しんでても、農民や町民には国と戦う士気が欠けている」

兄「それは君からみても分かるんじゃないのか、戦士」

戦士「……確かにそうだが。何が言いたい」

兄「極端な話、反乱を起こすためには生け贄が必要なんだよ」

戦士「生け贄だと?…士気を上げるための?」

兄「うん。この場合、おれと共謀の数人がそうなるだろう」

戦士「!? まさか、そのためだけにあんな文書を書いたのか!」

兄「その通り。それ以外に理由があるとでも?」

戦士「~~~~!!」バシッ

兄「!」

酒場主人「…いきなり殴るな」

戦士「だってよぉ…バッカじゃねぇの!?」

兄「……」

戦士「国の未来を見ずに死ぬのか」

兄「そうなるね。未来を作るための土台となるよ」

戦士「じゃあよ、お前の弟はどうなるんだ」

兄「……」

戦士「あいつにはお前以外家族がいないんだろ!?一人にさせる気か!」

兄「もう彼は一人で生きていける。そこらへんは大丈夫だ」

戦士「そういう問題じゃあねえんだよ!」

兄「おれだって散々悩んださ!」

戦士「」ビクッ

兄「父親は謀反の罪を吹っ掛けられて死んだ!母親はそれのショックで自殺した!」

戦士「っ……」

酒場主人「……」

兄「そしておれが断頭台で死んだら!弟は――壊れるかもしれないって考えたさ!」

戦士「…出した答えは?」

兄「嘆願書の時点で分かるだろ。おれは、国の未来を、優先する」

戦士「……」

兄「青年には…悪いと思ってるさ。身勝手にも程がある行為だから」

戦士「……」

兄「嘆願書はだいたい一週間は放置される。しかし、読まれたら最後だ」

戦士「…だな」

兄「おれたちは連行される。まあ、その後はあまり考えたくもないが」

戦士「兄…」

兄「頼みがあるんだ」

戦士「なんだよ」

兄「おれの知り合いであることは言わないで、弟を支えてくれないか」

戦士「まあいいけど…知り合いの件はどうして?」

兄「なんで止めなかったと君を責める光景がありありと見えるのでね」

兄「流石に――君に嫌な思いはさせたくない」

戦士「もう嫌な思いしてる」ムス

兄「ははは、悪い悪い」

戦士「謝るぐらいなら最初からするなよ」

兄「誰かが動かないと駄目なんだよ。とくにこう言うのは」

兄「おじさん、この人にもお願いします」

酒場主人「はいよ」トクトク コトン

戦士「久しぶりの本物の酒だ」

兄「軍で出回るのは密造かい?」

戦士「それしかない。でも嗜好品そのものが禁止されてるから我が侭言えない」

兄「……嗜好品止めたぐらいで国は良くならないのにの」

戦士「だな。この話は一旦忘れて、酒呑もう」

兄「乾杯。国の明日に」

戦士「乾杯。俺の友人に」

――

―――

―――――

きょうしつ

担任「転校生来ないかな。めっちゃ時間ループしてる子とか」

生徒「せんせー夢見すぎ」

男(朝からかなり疲労が溜まったな…堪ったもんじゃない)

男(姫、メイド、王子……あと他にもいるのか?)

男「……」

男(いそうだな、一癖も二癖もありそうな連中が)

続く。落差が激しいといいなと思う
あとホモホモしいな

担任「はい、じゃあホームルームここまで」

ワイワイガヤガヤ

担任「あ、最近変なこといいながら学生に迫るお婆さんいるみたいだから気を付けてね」ガラッ

男「なんか…すごく知ってる気がする」ボソ

友「あのバーさんだろうな、十中八九」ボソ

新聞部「なになに?なんか知ってるわけ?」

男「知ってるというか…振り回されたというか」

友「関わらないほうがいいランキングナンバーワンだな、今のところ」

新聞部「へ、へー」

男「ろくな目に合わないからな。そのババアとエンカウントすると」

新聞部「一体何が……」

男「あんなことやこんなことだよウフフフ」

新聞部「うわぁ目が死んでる」

友「バーさんのおかげでこいつオランダに行くはめになってる」

新聞部「えっ」

図書「……なんでまた、オランダになんか行くんです、か」

男「…………………………………」

新聞部「あ、頭抱えた」

男「本当なにがあったんだろうな…つい数日前は楽しい学校ライフを送ってたのに」

友「その厳つい顔のせいでほとんどの女子が近寄らない悲しいライフだけどな」

男「ちゃんとそこの二人は話しかけてきてるじゃねーか」

新聞部「席が近いし、なにより話してやっと面白い人だって分かった感じだよ」

図書「……遠目から見ていると、とても話しかけづらい、です」

男「そ、そんなことが…」ガクゼン

友「むしろ今更か」

男「今更って?」

友「一つ睨めばヤンキーをお漏らしさせるほどの威圧感」

新聞部「後ろから聞こえたら人生終わったと思える低音の声」

図書「……体育会系ですら感心するガタイの、よさ」

友「まあこんな感じだ」

男「そんなことはないと思う」

友「現に道で喧嘩していたチンピラがお前見た瞬間なんか勘違いして逃げてるし」

男「え、なにそれあれって俺が原因だったの?」

新聞部「鏡見たことある?」

男「あるよ失礼だな!」

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