咲「燃えよテルテル」 (148)

・燃えよドラゴンとの設定クロス(咲だけ知っていれば大丈夫)
・書き溜めなし

それでは




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1416132472

ナレーター『ここは中国河南省登封市嵩山白糸台寺。かの達磨大師も修行を積んだ名刹にして、麻雀の聖地である。今日も少女たちが一流の雀士を目指し、修行に励んでいる』

照「ツモ、8000オール」

誠子「あぁ、また私の最下位終了ですか」

薫「それでも振り込む回数は減っているぞ、亦野。成長したな」

健夜「おお、やってるねー、皆」

照「これは老師、おはようございます」

尭深「老師、お茶淹れますね」

淡「ろーしー、ろーしー」

薫「こらっ、淡。老師に失礼だろうが。申し訳ありません、老師」

健夜「ねえ、絶対わざとだよね、君達!
そうだ、照ちゃん。君にお客さんが来てるよ」

照「私に?こんな朝早くから、何の用でしょうか」

健夜「さあ、とりあえず応接間に行ってみて。赤阪郁乃っていう刑事さんで、私の古い知り合いだよ」

照「わかりました」

健夜「じゃあ、次は私が入ろうか。誠子ちゃん、牌譜とって」

誠子「了解しました」

淡「ふっふーん、今度は負けませんよー。リーチ!」

健夜「それロン、24000」

淡「うぎゃー」

応接間にて

照「失礼します」コンコン、ガチャ

郁乃「ああ、君が健夜ちゃんの言うてた宮永照さんやねー。初めまして、ICPOの赤阪郁乃といいます。よろしくな」

照「……、初めまして」

郁乃「早速本題に入らせてもらいたいんやけど、照ちゃん、天江衣って、知ってる?」

照「ええ、一昨年の東洋ジュニア麻雀大会に出場した……」

郁乃「それそれ、その圧倒的な強さのみならず、彼女の卓では謎の病人、怪我人が続出し、出場停止になった子よ」

照「確か彼女は、大会後消息を絶ったと聞きましたが」

郁乃「うん、でな、最近天江衣が、龍門渕グループのところにおるってのが分かったんよー」



照「龍門渕グループ?あの、香港の大企業ですか」

郁乃「表向きはそうなんやけど、裏ではなかなか悪どいこともしてるみたいでね。総帥の龍門渕透華ってのが、その天江衣を使って、何か良からぬことを企んどるみたいなんよー」

照「具体的には?」

郁乃「そっそれはまあ、良からぬことやから、世界征服とか、そないなことよー」アセアセ

照「なるほど、それは止めなければ」キリッ

郁乃「それでな、今度龍門渕グループ主催の麻雀大会があるんやけど、照ちゃんに出場してもらって、相手の企みを探って欲しいんよー」ホッ

照「なぜ私にそのような依頼を?」

郁乃「うーん、話しにくいことなんやけどな。照ちゃん、妹さん、おるやろ?」





照「……はい、昔生き別れた、咲という妹が」

郁乃「うん、その咲ちゃんな。最近、あるドロボウネコ締め上げて吐かせた話によるとな……」


忘れてた。麻雀は初心者なので、闘牌シーンは適当です。

龍門渕グループ経営のカジノ兼雀荘にて

咲「カン、カン、ツモ。6000,12000。はい、私の勝ち。一人頭50万香港ドルずつ頂くね」

モブA「ちぇっ、今日はもうやめある。」

モブB「この姉ちゃん、強すぎあるよ」

モブC「親分、親分~」

純「おいどうした、客に巻き上げられっぱなしじゃねえか。情けねえ、俺が入るよ」

咲「へえ、ここの支配人さん?じゃ、半荘一回500万で、どう?」

純「上等だ、やってやるよ!」

終わってみれば……

咲「はい、全員トビ終了で私の勝ち。何だ、龍門渕四天王の一人って聞いたから期待してたのに、この程度かぁ」

純「……」

咲「とんだ名前負けだね。ま、小遣い稼ぎになったから、いいか」

純「イカサマだ!和了りが全部嶺上開花だなんて、あり得るか!てめえ、イカサマしやがっただろう!」

咲「負け惜しみはやめた方がいいよ、じゃーね」

純「クソッ、お前ら、やっちまえ!」

咲「えっ、何?ギャーッ」グサリ



郁乃「……と、いうことなんよ」

照「そんな、咲が……」

郁乃「どう、協力してくれる?」

照「わかりました、やらせて下さい。」

郁乃「おおきに。じゃ、さっき話に出てきた龍門渕四天王について説明するな。
龍門渕四天王っていうのは、井上純、沢村智紀、国広一、南浦数絵の、四人のことや。この四人だけやのうて、総帥の龍門渕透華もなかなか強いらしいで。
次に、麻雀大会についてやけど、会場は龍門渕グループが私有している無人島。トーナメント形式で、開催は1ヶ月後。この島には、うちの部下がスタッフとして潜り込んどる。島には電子機器のたぐいは持ち込めんから、何か情報を掴んだら、彼女と協力して敵の無線を奪って連絡してな。
はい、これその子の写真。」

照「わかりました。必ず、咲の敵をとって、龍門渕の悪巧みを阻止してみせます」ゴゴゴゴ

郁乃「うん、頑張って~」



1ヶ月後

淡「テルー、いよいよ大会だね、頑張って」
尭深「先輩、水筒です」

誠子「バスの時刻表です。14番か16番に乗るんですよ」

菫「いいか、照。知らない人にはついて行くなよ。落ちているお菓子を拾うなよ。道に迷ったらお巡りさんに聞くんだぞ」

照「大丈夫。菫は心配しすぎ」

健夜「行ってらっしゃい、照ちゃんならきっと勝てるよ」

照「皆……行ってきます!」




『所変わってここはアメリカ合衆国ネバダ州ラスベガスキヨスミゴルフ場。一人でグリーンをまわる少女のもとに、三人のイタリア系とおぼしき黒服が近付いてきた』

久「よしっ、バーディ!あれ、あなたたちは……」

黒服A「ウィークデーの昼間からゴルフとは優雅なご身分だな、竹井久」

黒服B「そんなに余裕があるなら、きっとすぐにでも返してもらえるんだろう」

黒服C「ドン・コルレオーネに借りた100万ドル」

久「ああ、もうちょい待って貰えるかしら。来月には必ず返すから」

黒服A「ふざけるな!もう三ヶ月も待ったんだ」

黒服B「今日という今日はもう限界だ。返せないと言うんなら、全身バラして売りさばいて金にするからな」

黒服C「さあ、一緒に来るんだ」グイッ

久「分かったわ、こうなったら麻雀で勝負よ」

黒服A「何が分かったんだ?」

久「麻雀よ、麻雀。私が勝ったらもう一ヶ月待って。負けたら私を好きにしていいわ」

黒服A「それって俺達に何の得が……」

黒服B「面白え、やってやろうじゃねえか」

黒服A「おい、お前」

黒服C「おうよ、男が麻雀の勝負申し込まれて引き下がれるか!」

久「じゃあ、東風戦、25000点持ちね。行くわよ……」

終わってみれば……

黒服A「……」グッタリ

黒服B「……」グッタリ

黒服C「……」グッタリ

久「やれやれ、マフィアなんて馬鹿ばっかりね。助かった。
それにしても、どうしようかしら、100万ドル。全部カジノでスッちゃったし……、あら、黒服Cのポケットからチラシがはみ出ているわ。
何々?龍門渕グループ主催麻雀大会のご案内。トーナメント戦を勝ち抜き、龍門渕透華及び天江衣に勝利した者には賞金100万ドル!?
日程は……、一週間後じゃない、急いで香港に飛ばなくっちゃ!」


ここでナレーター、読者にくるりと向き直る。

『こんばんは、ナカタです。お察しの方も多いとは思いますが、この作者、SSなど書くのは初めてのこと。本来であれば、文章のなかにさりげなく入れ込まなくてはならない伏線を、これ見よがしにさらしております。
そこで、おそらくここまでお読みになったほとんどの方には、本SSのミステリー部分の真相、及びオチに至るまで、はっきりと分かっていらっしゃることでございましょう。
そのように聡明な方は、きっと良識も兼ね備えられていることを信じ、何とぞネタバレ等は、お控えいただきますよう、お願い申し上げます。
なお、万が一まだ真相にたどり着いていないという方のために、ここで1つヒントを差し上げます。
天江衣が出場した大会は、総当たり形式。中国有数の大企業がスポンサーとなっており、選手には至れり尽くせりのサービスであったということです。
それでは本編に戻ります』

ナレーター、再び向きを変える。

あれ、おかしいな。書き込みが表示されない。

またやってしまった。
酉変えた方が良いのでしょうか。

『こちらは同じく合衆国でも、東海岸ニューヨーク市センリヤマ区。真夜中の裏路地を、いくつかの影が走り抜けてゆく』

警官A「こら、待てー、銀行強盗!」

警官B「待たんと撃つぞ!」パンパン

怜「何や、こないに狭い所で撃ちおって、跳弾になるやないか、ボケナス!」

警官C「おとなしく投降しろ、逃げ場はないぞ!」

怜「へっ、このセンリヤマはうちの庭やで。お前らみたいなドアホウに捕まるわけがないやろ。
おっと、ここに隠れよっと」

辺りを駆け回る警官たち。

警官B「おい、そっちにはいたか?」

警官A「いない。この辺りには隠れられる場所なんか無いのにな」

警官C「もしかしたら逃げられてしまったのかもしれん、外に出て応援を呼ぼう」

走り去っていく警官たち。

マンホールの蓋を開け、顔を出す怜。

怜「こんなときのために、あちこちに偽のマンホールを用意してあるんや。よっこらせっと。
さて、フナQの住んどる部屋はここやったな」コンコン

背伸びをして、窓を叩く怜。

浩子「誰や、こんな夜遅くに非常識な、って先輩やないですか」

怜「入れてくれ、フナQ、サツに追われとるんや」

窓を開けて、怜を招き入れる浩子。

浩子「遂に強盗しくじりましたか? もういい加減真面目に働いたらどうです、竜華さんも喜びますよ」

怜「そんな悠長なこと言ってる場合とちゃうねん。パスポートとビザの偽造、急いで頼むわ。香港行きな。金は、ほらこれ」

浩子「仕方ないな、でも何で香港なんですか?」

怜「龍門渕グループ主催の麻雀大会があるんや。優勝賞金100万やで。
それだけ入ったら、竜華にも楽させてやれるやろ?」





浩子「でもそれ、めっちゃ強い人ばっかり出るんでしょ」

怜「ふん、うちが前にタッタリアの連中にハチの巣にされて生死の境をさ迷ったことがあったやろ? そのときからな、視えるんや」

浩子「何が?」

怜「麻雀の一巡先よ。うちは一巡先を視る者、園城寺怜。絶対に勝ってみせるで!」ゴゴゴゴ

『南アメリカ大陸アマゾン川流域アチガ低地、土着民が小さな村をつくって暮らしている』

晴絵「穏乃、いる?」

穏乃「どうしたの、酋長、それに皆」

憧「今日はシズの誕生日でしょ」

玄「だから、はい、プレゼント」

宥「おめでとう、穏乃ちゃん」

灼「ほら、開けてみて」

穏乃「うわっ、すごい! 香港の麻雀大会ツアー券だ! どうやって手に入れたの?」

晴絵「知り合いに貰ったんだ。せっかくだし、楽しんでおいで」

穏乃「うん、ありがとう! いっぱい遊んで来るよ」

『バルカン半島オリュンポス山エイスイ神殿、紀元前から伝わる由緒ある神殿であり、現在でも多くの巫女が存在する』

初美「姫様~、姫様にお手紙ですよ~」

小蒔「あら、どなたからでしょう? ええと、龍門渕透華さんという方ですね。内容は、私を麻雀大会に招待したい、とのことです。どうしましょう?」

巴「行ってみてはどうですか? 最近祭礼が続いてましたから、気分転換にちょうどいいでしょう」

春「私も、そう思います」

霞「絹と陶磁器の国ね。ここは私たちが留守番しているから、ゆっくり楽しんでらっしゃい、小蒔ちゃん」

小蒔「それじゃあ、お言葉に甘えようかしら」

初美「お土産よろしくなのですよ~」

『日本、冬木市』

和父「和、こちらへ来なさい」

和「はい、何でしょうか」

和父「お前は、麻雀が趣味だったな? しかし、この近くには麻雀部のある学校がないから、インターネット麻雀ばかりやっているだろう」

和「……ええ」

和父「そこでだ、お前にこれをあげよう。香港の麻雀大会のツアー券だ」

和「……良いのですか?!」

和父「ああ、母さんが亡くなってから気付いたんだ。お前が心底愉悦できることをさせてやるのが一番だとな」

金髪の青年「インターネットでも麻雀はできる。しかし、生身の人間と正面から勝負しなければ、真の愉悦は味わえぬ」

和「私のためにそこまで……、ありがとうございます、行ってきます」

中国特別行政区香港市龍門渕グループ本社ビル

トシ「はい、これが頼まれていたデータだよ」

一「いつもありがとうございます、熊倉さん」

トシ「龍門渕さんにはお世話になっているからねえ、これぐらい何でもないよ。
それより、私が最近ロシアで発掘した姉帯豊音っていう娘。今度の大会にエントリーさせといたんだ。
期待しといておくれ」

一「それは、楽しみです。衣も喜ぶでしょう」

トシ「じゃ、透華さんと衣ちゃんによろしくね」

一「お気をつけて」ペコリ

一、資料を持って部屋に向かう

一「皆、揃ってる?」

純「よう、遅かったな」

智紀「それは、熊倉さんから?」

一「うん、宮永照の非公式戦の牌譜とか」

数絵「さすがですね。私たちでも手に入れられなかったのに」

純「本当、あの婆さんの情報網はどうなってんだか。
ところで智紀、トーナメント表は出来てるか?」

智紀「これ」

純「おお、これぞ百鬼夜行」



数絵「まあ、当面は宮永照のことだけ考えていれば良いのですから」

一「そうだね、でも良かったよ。彼女が出場してくれて」

純「そりゃ、妹が殺されたんだ。普通出てくるだろ」

智紀「でも、勝てる?」

数絵「四天王では、多分無理でしょう」

純「多分どころか、ほぼ確実に」






数絵「まあ、当面は宮永照のことだけ考えていれば良いのですから」

一「そうだね、でも良かったよ。彼女が出場してくれて」

純「そりゃ、妹が殺されたんだ。普通出てくるだろ」

智紀「でも、勝てる?」

数絵「四天王では、多分無理でしょう」

純「多分どころか、ほぼ確実」

一「まあ、そこは透華に何か考えがあるみたいだから」

智紀「でも、衣と透華なら」

純「衣は……、宮永咲に負けてただろ?」

数絵「衣さんの支配は王牌には及びませんから、宮永咲とは相性が悪いとも言えます。宮永照となら、五分の勝負ができるのでは?」

一「透華は、いつもの状態なら厳しいけど、あれがあるからね」





数絵「しかし、結局のところ、宮永照が出場を決めた時点から、結果は2つしかあり得ません。
私たちが勝つか…………」











一「宮永照が負けるか、だね」

これにてプロローグ終了です。
色々酷いのですが、何よりも、手がかりが全て揃う前に読者への挑戦をやってしまいました。本来であれば、この場所に入れるべきでした。
本当に申し訳ありません。死にたい。でも死ねないのでもう寝ます。
明日からはペースアップします。

『さて、ここがSSの便利なところだが、舞台はあっという間に会場へ向かうクルーザーの上に移る』

久「いやー、さすが龍門渕グループ。大きな船ね。いくらぐらいするのかしら」

怜「あれ、あんたも金持ちと違うの? けっこう良いナリしとるやん」

久「全部マフィアからの借金で買った服よ。だから賞金目当てでここに来たの。あ、私竹井久、久でいいわ」

怜「うちは園城寺怜、怜でええよ。なるほど、訳ありなんやな。うちはニューヨークで強盗やって逃げて来たんよ。でも、ツレに金を送ってやりたくてな」

久「お互いに色々あるのね。そうだ、必ずしも賞金が手に入るとは限らないでしょう? だから、協力して、こうしない?」ゴニョゴニョ

怜「名案や、それでやってみよ。ところで、同じ訳ありでも、うちらみたいに金目当てじゃないのもおるようやで」






照(咲、必ずお姉ちゃんが敵を討ってあげるからね……)ゴゴゴゴ

やえ「そこの赤毛の人、さっきから邪魔だ。どいて」

照(そして、龍門渕の悪巧みも阻止してみせる……)ゴゴゴゴ

やえ「どけって言ってるのが聞こえない?」

照「ご、ごめんなさい」ゴゴゴゴ

やえ「なんだ、その謝り方は。これだからニワカは。
そうだ、私と麻雀で勝負しろ。格の違いを教えてやる」

照「で、でも、今から大会なのに、それはちょっと」ゴゴゴゴ

やえ「少しも反省していないらしいな、まったく」

照「わ、分かった、ここだと迷惑がかかるかもしれないから、ボートを下ろして、その上で対局しましょう」ゴゴゴゴ









やえ「分かった、じゃあ、私が先に行くぞ」ヒョイ

照「……」ゴゴゴゴ

やえ「どうした、早く来い」

照(高くて怖い……)ゴゴゴゴ

やえ「まさかお前、最初から私だけボートの上に置き去りにするつもりだったな、狡猾なやつめ! 覚えていろ!」



怜「な、あの気迫は尋常やないで。おまけに頭も良いみたいや」

久「確かに、本当にヤバそうなやつね」

豊音「何だかあっちの方が、ちょー賑やかだよー」

和「どうかしたのでしょうか?」

穏乃「きっと、遊ぶのが待ちきれなくて、誰かがはしゃいでるんだよ! 私もそうだもん!」

小蒔「何だか緊張してきました、勝てるかしら……」

島に到着

久「いよいよ着いたわね。お、執事のお出迎えかしら?」

ハギヨシ「初めまして。このたび、皆様のお世話をさせていただきます、龍門渕家使用人、萩原と申します」

京太郎「同じく、須賀と申します」

一太「同じく、内木と申します」

ハギヨシ「どうぞ宜しくお願い申し上げます。
それでは、お部屋の方へご案内致します。15時より開会式、その後、トーナメント1回戦が予定されておりますので、それまでには会場にお出でください」

玉子「うむ」

開会式

透華「…………、それではこれより、第一回龍門渕杯麻雀大会を開会します!」


怜「あれが龍門渕グループの総帥か、けっこう若いんやなあ」


照(絶対に、倒す!)ゴゴゴゴ

一回戦

怜「じゃあ、先にうちの対局や。予定通りに頼むで、久」

久「りょーかい、任せときなさい。
誰が良いかしらね……、あ、あの人! ねえ、お兄さん」

カモA「どうかしたか?」

久「あそこの卓で、ひとつ賭けない?」

カモA「いいね。俺は、あの佐々野ってやつに張る。下馬評じゃ、優勝候補なんだ」

久「あら、取られちゃった。じゃあ私は、園城寺って娘にするわ。まずは、5000香港ドルからね」

カモA(へっ、扱い易そうなやつが来たな)


いちご「ロン、5200じゃ!」

怜「……はい」


カモA「おい、あんたが選んだやつ、早速直撃くらってるぜ」

久「まだ始まったばかりよ、もう5000乗せるわ」

カモA「はいはい」


いちご「ツモ、2000、4000じゃ!」


カモA「また和了った」

久「ま、まだまだ。1万追加!」

カモA「意地になるなよ、ギャンブルの基本だ」

いちご「ロン、8000!」

怜「……はい」


カモA「こりゃ、決まりかな」

久「ええい、さらに1万よ。どうする、オりる?」

カモA「そんな訳ねえだろ。ほい、1万」

久(怜、そろそろよ)メクバセ


怜「ロン、12000」

怜「ツモ、3900オール」

怜「ロン、9600」

怜「ロン、……」


久「やったあ、大逆転勝利ね! それじゃ、3万香港ドル、ありがたく頂くわ」

カモA「そ、そんな……」


怜「上手くいったな、久」

久「最高ね。はい、分け前の1万5000」

怜「サンキュ、次もこの調子でいくで」

美幸「おーい、こっちに凄い人がいるよー」


久「何かしら?」

怜「とりあえず行ってみよ。
おい、凄い人って誰や?」

美幸「あの宮永照って人だよ。東2局から6連続和了で全員ハコにしちゃったんだよ」

久「どれどれ、あの船の人じゃない!」

怜「思い出した、あれ白糸台寺の制服や。これは、ホンマもんの化け物が出てきたで……」

『1回戦が終わり、出場選手は自室に戻って寛いでいる。ちなみに、今まで名前が出ているキャラはちゃちゃのんを除き全員勝ち抜けたとのこと』

ハギヨシ「竹井様、ルームサービスでございます」コンコン

久「入っていいわよ」

ハギヨシ「お部屋でのお世話を致します者を連れて参りました。お選びください」

久「行き届いているのね。まずは……、この娘。次に……、この娘。2人お願いして良いかしら?」

ハギヨシ「よろしゅうございます。それでは、ごゆっくりお楽しみください。失礼いたしました」ガチャ

久「よろしくね、2人とも。今夜は楽しみましょ」

彩乃「はい、よろしくお願いします」

菜月「お願いします」


京太郎「……、お選びください」

怜「ふーん、じゃあ、うちはこの娘で」

歩「は、はい」

一太「……、それではごゆっくり」ガチャ


美穂子「あの、宮永照さんですか?」

照「そうだけど、あなたは?」

美穂子「申し遅れました。私、ICPO捜査員、福路美穂子ですっ!」ケイレイ

照「……はあ」

美穂子「ほ、ほら、ここに潜入しているんです。赤阪さんから聞いてますよね?」

照「そう言われてみれば、いつか貰った写真の人にそっくり」

美穂子「同一人物です。ところで、大会の規定は覚えていますか?」

照「いや、知らない」

美穂子「それでは、ここで改めて確認しましょう」

主な大会規定

・本大会の麻雀のルールは、咲本編とほぼ同一。ただし、半荘1回、25000点持ち。

・本大会はトーナメント形式である。

・トーナメントを勝ち抜いた選手は、天江衣、龍門渕透華と対戦、勝利すれば賞金100万ドル。

・その日の対局が全て終了すると、選手は自室に戻り、休息すること。夜間の外出は厳禁とする。

・なお、選手、観客共に、島の中に電子機器(パソコン、携帯電話等)を持ち込んではならない。

美穂子「他にも細則は色々とありますが、これだけ押さえていれば大丈夫です」

照「なるほど」

美穂子「それでは、宮永さんに依頼した任務についてですが」

照「確か、地下にある無線装置を奪って、外部に連絡をとることだったはず」

美穂子「ええ、そこで今夜地下に忍び込んで、取ってきてください。
実は、この島には、龍門渕グループに刃向かったり、使い捨てられたりして、監禁されている人が大勢いるんです。彼女たちを早く解放してあげないと」

照「分かった。地下の無線を奪えばいいの?」

美穂子「はい、通信は私に任せてください。
これは、地下室の地図です。秘密の入り口は、中庭の像の下にあります」

照「よし、行ってくる」

美穂子「お気をつけて」

中庭の像の下にて

照「あった、これが秘密の入り口。
よし、龍門渕め、お前たちの悪事を暴いてやる」

入り口から、地下へと降りていく照

一方その頃……

彩乃「ああっ、ああっ!」ビクンビクン

菜月「死ぬ、死ぬう!」ビクンビクン

久「……ふう、なかなか良い味だったわ」



歩「あ、あの……、私の膝枕じゃ、お気に召しませんでした?」

怜「いや、そんな気にならんだけや。ちょっと散歩に行ってくるわ」

歩「駄目ですよ、夜間は外出禁止なんです。私が怒られます」

怜「うっとおしいのお、少しだけや」

窓から外に出て、辺りを歩き回る怜。

怜(やっぱりうちは竜華やないと、いかんわ。待っとってな、すぐに会えるからな。
うん、中庭にいるのは誰や? あら、消えてしもうた。何かヤバそうな気配や、部屋に戻ろうかな)


『ここですぐに部屋に戻っていれば、園城寺怜の身には何事も起きなかっただろう。
しかし、また先程の女の顔を見るのは物憂く、少し回り道をして帰ってしまったのである。これが、彼女の運命に、決定的な影響を与えることになる……』

同時刻、使用人室にて


一太「須賀君、もう遅いよ。寝た方がいい」

京太郎「いえ、あと少しで終わりですから。それに、今日の仕事を明日に残したくないですし」

一太「真面目だなあ、君は。
ところで、あの噂は本当なのかな? ほら、警察のイヌがこの島に入り込んでいるってのは」

京太郎「さあ……、俺は信じてないですけど。本当だとしても、俺たち下っぱには関係ありませんし」

一太「そうだよね……、おや、こんな時間に誰かが外を歩いているぞ」

京太郎「あれは……、出場選手の園城寺とかいう人ですね」

一太「何てこった、萩原さんに報告してくるよ」

京太郎「お願いします、先輩」

『さて、こちらは地下に忍び込んだ宮永照。道はかなり複雑なのだが、ご丁寧にも曲がり角に来るたびに、〔無線室はこちら〕と書かれたばかでかいシールが貼ってあったため、迷子になることもなく、早くもたどり着く』


照「これが無線機……。よし、ひとつ持って帰ろう」


純「そこまでだ!」


照「誰?」クルリ

一「まず相手の名を問うとは無礼なやつめ、」

智紀「だが我らの心は広大無辺、」

数絵「問われて名乗るもおこがましいが、」

純「井上純!」

一「国広一!」

智紀「沢村智紀!」

数絵「南浦数絵!」

純「四人合わせて、」

四人「龍門渕四天王だ!」

照「お前たちは……、よくも咲を」ゴゴゴゴ

純「ハギヨシから報告が来たんですぐ駆けつけたんだ」

一「まさか初日から動いてくるとは思わなかったよ」

智紀「念のために職員を帰しておいてよかった」

数絵「それでは、宮永照。私たちと勝負してもらいます」

照「勝負? いいだろう」ゴゴゴゴ

純「胆が据わってるな、麻雀卓、用意!」


子分A~Gの運んできた卓が、照を四方から取り囲むように配置される。


一「この対局は変則ルール。4つの卓で同時に打ってもらうよ。
まず、これらの卓に僕たち四天王が1人ずつ、君の対面に入る」

智紀「そして余った上家と下家には、子分A~Gが、それぞれ配置される」

数絵「それ以外のルールは、以下のようになります」

同時四面打ち特別ルール

・点数は、宮永照は50000点持ち。それぞれの卓で、宮永照以外の3人は点数を共有し、龍門渕側は卓1台につき、75000点。

・宮永照以外のプレイヤーがツモ和了りした場合、宮永照の責任払いとなる。

・龍門渕側が龍門渕側からロン和了りしても、点数に変動はない。例えば、井上純が子分Aからロン和了りした場合。

・点数移動はない。つまり、誰かが和了っても和了られた側の点数が削られるだけで、和了った側の点数が増えることはない。

・宮永照の勝利条件は、4台の卓全てで、龍門渕側の点数、総計300000点を0点にすること。

・龍門渕側の勝利条件は、宮永照の点数、50000点を0点にすること。

・全ての卓で宮永照の起家スタート。

・この対局は東南戦、ただし半荘の数に制限はない。

照「なるほど、理解した」

純「じゃあ行くぜ、対局開始!」

東一局

智紀(牌譜を見る限り、宮永照は1局目は様子見に徹する)

数絵(しかし、2局目以降は怒涛の連続和了。おまけに、和了るたびに点数が上昇する)

一(だから、この東一局、稼げるだけ稼ぐ!)


純「よしっ、ツモ、8000!」

子分D「ツモ、5200ある!」

一「ツモ、12000!」

智紀「ツモ、7700」


宮永照 17100点
東卓(井上純) 83000点
南卓(南浦数絵) 80200点
西卓(国広一) 92000点
北卓(沢村智紀) 82700点

純「どうする、宮永照」

一「君の連続和了をもってしても、ここから300000点奪うことができるかい?」


照「…………、誰が、……」


智紀「聞こえない、何を言っている?」






照「私の武器が連続和了だけだなんて、誰が決めた?」









ギ、ギ、ギ、…………

ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!!!!!!!!!(描写不能)

大会1日目、カン!

自分で決めたルールを早速間違えるとか、本当に救いようがないな、すみません。

点数は龍門渕側変動なしに修正します。
あと、ギギギーッて知名度低いのでしょうか?
阿知賀編は漫画読んでないので、ひょっとしたらアニメオリジナルかな?

翌朝


照「た、ただいま……」ヨロヨロ

美穂子「宮永さん、無事でよかったです。随分遅かったから、何かあったのではないかと」

照「ちょっと、四天王を全員倒して来たから……」

美穂子「そうなんですか? さすが宮永さん、すごいです!」キラキラ

照(帰りに道に迷ったなんて言えない……)
「はい、これ無線機。私じゃ使えないから、よろしく。」

美穂子「どうもありがとうございます。これで、外部と連絡がとれます」

照「それじゃあ、私は大会に出てくる」

美穂子「ちょっと待ってください。はい、朝ごはんのサンドイッチです。何か食べないと、力が出ませんよ」

照「ありがとう、行ってくる」

美穂子「では私は、今から通信しますね。宮永さんも頑張ってください!」

照「うん」

会場にて


久「おっはよー、怜。いい天気ね」

怜「久か。朝っぱらから元気やなあ」

久「ふっふーん、昨晩ちょっとエネルギーもらったからね、お肌ツヤツヤよ」

怜「へえ、うちは行きずりの女に手を出すことないからなあ……」

久「あら、恋人大事にしてるんだ、可愛い。
でも、そんな固い子を落とすのもいいのよね……」

怜「やめえ、うちの方で願い下げや。
それより、今日の対局は久が先やったよな?」

久「ええ、ちゃんとカモ見つけといてね。じゃ、行ってくるわ」

怜「お前こそ、負けるんやないでー。」

怜「さてと、どいつにしようかな……」

ハギヨシ「園城寺さま、園城寺さま」

怜「誰や、お前? ああ、ここの執事さんか。うちに何か用?」

ハギヨシ「わが主、龍門渕透華が園城寺さまに用件があるとのことです。こちらにお出でください」

怜「今忙しいんや。後にしてくれるか?」

ハギヨシ「申し訳ございません。しかし、火急のことであるのから、すぐにお越しいただくよう、仰せ付かっておりますので……」

怜「しゃあないなあ、どこに行けばええの?」

ハギヨシ「ご案内致します……」




久「さてと、2回戦開始ね。
あら、怜は来ていないじゃない、しょうがないわね。どこで寄り道してるのかしら?」

屋敷内、総帥執務室


ハギヨシ「お連れしました、透華さま」ガチャ

透華「ご苦労、ハギヨシ。園城寺さんをこちらに」

ハギヨシ「はい、園城寺さま、室内にどうぞ。私はこれで失礼致します」ガチャリ

透華「おはよう、園城寺怜さん。改めまして、龍門渕透華ですわ。
早速だけれど、私があなたに何の用があるか、お分かり?」

怜「心当たりないな。知り合いの対局見たいんや、はよ帰してくれ」

透華「あらそう……、あくまでもしらを切るおつもりですのね? 昨夜、あなた、外に出ましたわよね?」

怜「ちょっと散歩にな。そう言えば、夜間の外出は禁止やったな。そのことか」

透華「あらあら、軽くおっしゃいますのね。
ならば、地下に忍び込んだのもあなたかしら?」

怜「地下に? それは違う。うちはただそこら辺歩いてただけや」

透華「往生際が悪いですわね。あなたのせいで、私の大事な部下たちが未だに目を覚ましていないのですよ」

怜「濡れ衣や! 昨日の晩にはうちの他にも、外を歩いてた。中庭で消えたやつが真犯人や!」

透華「中庭の入り口のことまでご存知とは、いよいよ間違いありませんわね。
2人とも、入りなさい。大人しく認めれば」

透華「あらあら、軽くおっしゃいますのね。
ならば、地下に忍び込んだのもあなたかしら?」

怜「地下に? それは違う。うちはただそこら辺歩いてただけや」

透華「往生際が悪いですわね。あなたのせいで、私の大事な部下たちが未だに目を覚ましていないのですよ」

怜「濡れ衣や! 昨日の晩にはうちの他にも、外を歩いてた。中庭で消えたやつが真犯人や!」

透華「中庭の入り口のことまでご存知とは、いよいよ間違いありませんわね。
2人とも、入りなさい。大人しく認めればよかったものを……」


「…………」

「…………」


怜「おい、ちょっと待て! 何をするんや、やめろ、ギャーーーーッ!」

同じ頃……、


照(おかしい、この人おかしい)
照魔鏡で見てみたけれど、この原村さんという人、まるで機械みたい。
こんな人、寺には1人もいなかった)


和「ツモ、2000オールです」


照(これが小鍛治老師の言う、世界レベルの化け物なの……?
いや、落ち着け私。いつも通りにやれば勝てるはず)


和「ロン、2400です」


照(駄目、お腹が減って力が出ない。それに、寝不足で頭がクラクラする。
そうだ、もらっておいたサンドイッチ……)

照(よし、南入。気を取り直して……)モグモグ


照「ツモ、300、500」

照「ロン、2900」

照「ツモ、2000、4000」

和「ロン、8000です」


照(負けない……!)


対局終了後
宮永照 48000(+23000)
原村和 34900(+9900)
椿野美幸 10800(-14200)
宇津木玉子 6300(-18700)

美幸「うう、焼き鳥だよ、もー」

玉子「駄目じゃったか……」


照(集中したらわりと簡単だったけど、こういう打ち方の人もいるんだ……)

和「あの、宮永照さん、でしたか?」

照「ええ、そうだけど……」

和「私、あなたのような人と打てて、とても楽しかったです。
今までずっと、ネット麻雀ばかりやってきたので、凄く新鮮でした!」

照「それは……、良かった」

和「またいつか、私と対局してもらえますか?」

照「うん、機会があれば。ありがとうございました」

和「ありがとうございました」


照(……ネット麻雀って、何?)

一方、同じく2回戦を突破した竹井久は……


久「何ですって、怜が棄権した!?」

京太郎「はい、私はそのように聞いております。先ほど、急用ができたとのことで、船に乗って本土にお戻りになった、と」

久「バカなこと言わないで、あの子がこの大会を途中でやめるはずがないじゃない!
あなたたち、何か隠してるでしょ?」

京太郎「私には、そのような事情は分かりかねます」

久「いいわよ、じゃあ龍門渕透華に会わせなさい。あの人なら、何か知っているはずよ」

京太郎「総帥は多忙でございます。お伝え致しますが、お会いできるかどうかは……」

久「余計なことは言わなくていいの。
私は部屋にいるから、龍門渕透華がイエスと言ったら呼びに来て」

京太郎「か、かしこまりました」

照(お腹がいっぱいになると、さらに眠くなってきた……。3回戦は午後だし、部屋で少し仮眠しよう)


ドッカーン!!


照(今の爆発音、部屋の方から聞こえてきた! 何かあったの?)

照「大丈夫? 福路さん」

美穂子「み、宮永さん。どうしましょう、通信しようとしたら、無線機がブルブル震えて、パチパチ言って、爆発しちゃって……」オロオロ

照「…………」

美穂子「私のせいなんです、ごめんなさい。せっかく宮永さんが危ない目にあってまで、取ってきてくれたのに、」

照「福路さん」

美穂子「は、はい」

照「福路さんのせいじゃない。
そもそも、ただの無線機が爆発なんてするわけがない。これはきっと、はじめから爆発するように、罠が仕掛けられていたの」

美穂子「そうなんでしょうか?
でも、これで外部からの応援が期待できなくなりました。ど、どうすれば」

照「大丈夫。もう2回戦も突破した。今日の3回戦と、明日の決勝に勝てば、天江衣と龍門渕透華の2人と直接対決になる
応援がなくても、私が倒してみせる」

美穂子「でも、天江衣は対局相手に呪いをかけるんですよ。
ジュニア大会で、彼女と戦った人は、皆原因不明の病気になったって、赤阪部長が……」

照「私のことなら心配しないで。
それより、福路さんはよくやってくれた。あなたのサンドイッチは、とても美味しかった。たからあまり自分を責めない方がいい」

美穂子「宮永さん……、どうもありがとうございます」

照「それじゃあ、私は少し眠る。時間になったら起こして」

美穂子「はい!」


美穂子(宮永さん。私、職場でずっと役立たずだったんです。
正直、何度も辞めようと思っていました。けど……、こんな私でも、誰かの役に立てるなら……、もう少し、頑張ってみます。
本当に、ありがとうございます)

その頃、久の部屋では……


久「遅いわねえ……」イライラ

彩乃「あのう、私たちに何かできることはあるでしょうか?」

久「いいわよ」


久「あなたたち2人とも、今日は帰って。
どうせ今夜は、1人で寝るつもりだもの」

菜月「分かりました、それでは、失礼します」ガチャリ


久「まだかしら。もういっそのこと、こっちから押しかけてやろうかしら」

ハギヨシ「竹井さま、いらっしゃいますか?」コンコン

久「いるわよ」

ハギヨシ「主より、ただいまお会いするとのことでございます。
恐れ入りますが、執務室までお越しください」

久「オーケイ、今いくわ」

執務室にて


久「それじゃあ、あなたも、園城寺怜が棄権したって言うのね?」

透華「はい、しかしまだ分かっていないことも多くて……」

久「どういう意味よ、それは」

透華「竹井さんの3回戦の対局相手、姉帯豊音さんでしたわね?
それでは、あなたが3回戦を突破する頃には、お教えできる情報もあるかも知れませんわ」

久「つまり、私が次に勝てば、教えてくれるってこと?」

透華「あら、理解が早くて助かりますわ。お友達のためにも頑張ってくださいね」

久「上等じゃない、やってやるわよ!」

会場にて


久(待ってなさい、怜。必ず勝ってみせるわ)

豊音「ここが3回戦の卓だね、よろしく」

那岐「よろしくお願いします」

成香「お願いします」



東一局
東家 新免那岐
南家 竹井久
西家 姉帯豊音
北家 本内成香

久(よし、相手のことは気になるけど、早速いかせてもらうわよ)「リーチ!」パチッ

豊音「とおらば、リーチ、ロン、3200」バラバラッ

久(追っかけリーチからの一発……、これは偶然かしら?)

東2局
東家 竹井久 20800
南家 姉帯豊音 29200
西家 本内成香 25000
北家 新免那岐 25000


那岐「リーチ」

豊音「とおらば、リーチ、ロン、7700」


久(いや、偶然じゃないと見た方が良さそうね。ならば……)

東三局
東家 姉帯豊音 37900
南家 本内成香 25000
西家 新免那岐 16300
北家 竹井久 20800


久「ツモ、2000、4000!」パッチーン

豊音(ダマテンで地獄単騎かー、面白そうな人だよー)

成香(マナー悪い……)


久(これなら、追っかけられることはない!)

東四局
東家 本内成香 23000
南家 新免那岐 14300
西家 竹井久 28800
北家 姉帯豊音 33900


豊音(じゃあ、これならどうかなー)「ポン!」カチッ

久(攻めかたを変えてきた。さっきの和了りで警戒したのかしら?)パチッ

豊音「ポン!」カチッ

豊音「ポン!」カチッ

豊音「もうひとつおまけに、ポン!」カチッ


久(これで四副露、裸単騎。まさか……)


豊音「お友達が来たよー。ツモ、1500、2900」


久(やはり、追っかけだけではないのね……)

南一局
東家 新免那岐 12800
南家 竹井久 27300
北家 姉帯豊音 38800
西家 本内成香 20100


豊音「ポン、ポン、ポン、ツモ、3000、6000」バラバラッ


久(いよいよ不味いわね、早く何とかしないと……)



南二局
東家 竹井久 24300
南家 姉帯豊音 50800
西家 本内成香 17100
北家 新免那岐 6800


久「ロン、1500」バラバラッ


豊音(今度は6面待ちかー、さっきの地獄単騎は偶然かな?)

南二局 一本場
東家 竹井久 25800
南家 姉帯豊音 49300
西家 本内成香 17100
北家 新免那岐 6800


久「テンパイ」

豊音「テンパイだよー」

成香「ノーテン」

那岐「テンパイです」


豊音(今度も単騎待ちじゃない。何だ、普通の人かー)

南三局
東家 姉帯豊音 50300
南家 本内成香 14100
西家 新免那岐 7800
北家 竹井久 26800


成香「ツモ、1000、2000」バラバラッ


豊音(さて、このまま逃げ切るかなー)


久(…………)

南四局 オーラス
東家 本内成香 18100
南家 新免那岐 6800
西家 竹井久 25800
北家 姉帯豊音 48300


久「…………リーチ」パチッ

豊音(へえ、じゃあ、最後も貰っちゃおうかなー)「とおらば、リーチ」パチッ

久「それ、ロンよ。12000」バラバラッ

豊音「うわー、地獄単騎だ。でもこれ、一発付かなかったら満貫で、逆転できてなかったよ。
最初から私の追っかけで和了るつもりだったってこと? ちょー凄いよー」

久「私、ここぞというときには、確率の悪い待ちを選ぶことにしているの。ありがとうございました」

豊音「うん、ありがとうございました。決勝も頑張ってねー」

那岐「ありがとうございました」

成香「ありがとうございました」


対局終了
竹井久 38800
姉帯豊音 35300
本内成香 18100
新免那岐 6800

竹井久、決勝進出!

他の卓では……


やえ「むう、勝てなかったか……」

照「でも、あなたからは一度も直撃を奪えなかった。打ち筋も意外と丁寧で、良かったと思う」

やえ「何を言う、今日は調子が悪かっただけで、次は必ず私が勝つ。
だが、今は素直に応援しよう。決勝だけではなく、その後も勝てよ、好敵手」

照「ありがとう」


宮永照、決勝進出!

小蒔「あら、また眠っている間に勝負がついてしまったわ」


穏乃「よーし、勝った! 次も楽しむぞ!」


神代小蒔、高鴨穏乃、決勝進出!

その夜、再び執務室にて


久「さあ、約束通り、怜のことを教えて貰うわよ」

透華「まさか、本当にあの姉帯豊音に勝つとは……、やはり面白い方ですわね。
良いでしょう、こちらにお出でなさい。」

久「これは……、こんな所に地下への入口が?」

透華「それでは、お教え致しましょう。この麻雀大会の真の目的、我が龍門渕グループの復讐の物語を…………」

大会2日目、カン!

怜の一人称は私でした、今さらですがすみません。
それから明日は法事なので、更新は滞ると思います。

翌朝


美穂子「……てください、起きてください、宮永さん」

照「……まだ、決勝まで時間がある。もう少し寝かせて」

美穂子「駄目ですよ、お客さんなんです。宮永さんに」

久「あの、宮永照さん。大事な話があるの。悪いけれど、外に出てもらえるかしら」

照「あなたは……、決勝で当たる、竹井さん?
分かった、今行く」モゾモゾ




照「それで、私に何の用?」

久「友達が、殺された」

照「え?」

久「園城寺怜。あなたは知っている? よく私と一緒にいた、ニューヨーク弁の。
昨日、龍門渕透華が私に、怜の死体を見せて、こう言ったのよ」



透華「この麻雀大会の真の目的。それは、世界中から強い雀士を集め、我が龍門渕グループ世界征服のための、手駒とすることですわ。
残念ながら、その邪魔をした園城寺さんには死んで頂きました。けれど、貴女にはみどころがある。
私の、部下になってはもらえませんか?」



照「…………」

久「酷い話でしょ? もちろん断ったわ。
あいつが世界をどうしようが、私の知ったことじゃない。けれど、怜を殺したことだけは絶対に許さない。
あの子は、私のように完全に駄目になってはいなかった。好きな人のために一生懸命お金を稼ごうとしてた。
そんな怜を、あいつは虫けらみたいに殺して、そして私に仲間になれ、ですって?
ふざけんじゃないわよ!」

照「何故、私にその話を?」

久「怜がね、言ってたの。あんたは私たちみたいに金儲けが目当てじゃない、他の目的で大会に参加してるんだって。
だから、賭けてみたの。
教えてくれない? 100万ドルの賞金よりも重要な、あなたの目的を」

照「私は……、龍門渕に、妹を殺された。
その仇を討つために、今ここにいる」

久「やはりそうなの……。ねえ、1つお願いがある。
今からの決勝戦、私は勝つつもりよ。勝って、龍門渕透華を倒したい。
だけど、もし私が勝てない場合には、あなたが必ず勝って。そして、龍門渕透華を倒して、妹さんだけじゃなく、怜の仇も討ってあげて。」

照「分かった。でも、そんなことを頼まれなくても、私は負けるつもりは無い」

久「それで良いわ。じゃあ、また決勝で」

総帥執務室にて


透華「いよいよ決勝ですわね。どう、ハギヨシ? その他の首尾は」

ハギヨシ「もうじき掴めそうです。やはり、四天王がいないことで、あれも動きやすいと感じているのでしょう」

純「全く、災難だったぜ」

一「本当だよ、おかげでずっと退屈してたもの」

智紀「私は、パソコンがあれば大丈夫だったけれど」

数絵「意識不明の重体ですからね」

透華「まあ、終わり良ければ全て良し。それでは、クライマックスと参りましょうか……」

決勝戦


照「…………お願いします」ゴゴゴゴ

小蒔(眠い……)「よろしくお願いします」

久「よろしく」

穏乃「うー、楽しみ。お願いします!」

東一局
東家 宮永照 25000
南家 神代小蒔 25000
西家 竹井久 25000
北家 高鴨穏乃 25000

穏乃(…………)

照(…………)パチッ

小蒔(これ、かしら?)パチッ

久「リーチ、一発ツモ、2000、4000!」パッチーン


小蒔(あら、ダイナミック)

穏乃(…………)


照(……照魔鏡!)ズズズズ

照(なるほど、竹井さんは悪待ちと、それによる相手の撹乱を得意とする)

照(次に、高鴨穏乃。中盤以降の、山を支配する能力。これは厄介。早目にケリをつけなくては)

照(最後に、神代小蒔。この人は1番分からない。普通の頑張り屋さんに見えるけど……、空っぽ? )

東二局
東家 神代小蒔 23000
南家 竹井久 33000
西家 高鴨穏乃 23000
北家 宮永照 21000


照「ツモ、700、1300」バラバラッ



東三局
東家 竹井久 32300
南家 高鴨穏乃 22300
西家 宮永照 23700
北家 神代小蒔 21700


久(親番。ここは早和了りで……)「ポン、チー」

久(よし、テンパった)


小蒔「……」パチッ

照「ロン、6400」バラバラッ

小蒔「は、はい」


久(駄目だったか……)

穏乃(…………)

東四局
東家 高鴨穏乃 22300
南家 宮永照 30100
西家 神代小蒔 15300
北家 竹井久 32300


照「ツモ、3000、6000」ギュルルル


久(あっちゃー、やられた)

小蒔(もう……、駄目、限……界です)ガクッ

穏乃(そろそろ、かな?)

南一局
東家 宮永照 42100
南家 神代小蒔 12300
西家 竹井久 29300
北家 高鴨穏乃 16300


照(おかしい、ここまでは思い通りに打ててたのに、急に手が進まなくなった)パチッ

穏乃(…………)パチッ

照(まさか、もう支配が始まってる?)パチッ

穏乃「それ、ロンですよ。16000」バラバラッ

照(まずい、親が流されて、おまけに逆転された……)


小蒔「…………」

その頃、エイスイ神殿では


霞「そう言えば、今日は小蒔ちゃんの大会の決勝ね」

巴「今日は確か……、ゼウスの降りる日だったはず」

初美「と言うか、招待状に、決勝の日にゼウスが降りるよう調整してくれって、書いてたんですよねー」

春「姫様にゼウスが降りると、天和を和了り、和了った相手の異能を破壊する」ポリポリ

霞「相手が皆一般人であればいいけれど、まあ、無いでしょうね」

初美「後遺症が残らなければ、いいんですけどねー」

南二局
東家 神代小蒔 12300
南家 竹井久 29300
西家 高鴨穏乃 32300
北家 宮永照 26100


ゴゴゴゴゴゴ…………


小蒔「ツモ、天和、16000オール」バラバラッ


3人「!!!」

久(ウソ、天和ですって?)


照(何、この……)

穏乃(大事な物が、壊されてしまったような感じは……)


小蒔「ハッ、ごめんなさい。眠ってしまいました。これからは、頑張ります!」シュウウウ

南二局 一本場
東家 神代小蒔 60300
南家 竹井久 13300
西家 高鴨穏乃 16300
北家 宮永照 10100


照(山の支配は消えているのに、牌が見えない、手も相変わらず進まない。
多分、さっき何かされた……)

穏乃(山と、私のつながりが切れちゃってる。どういうこと?)


久(この2人、さっきから死んだような顔色してるわね。役満和了られたのが、そんなにショックなのかしら?)

久「リーチ!」パチッ

小蒔(白は場に2枚出ているから、多分安牌……)パチッ

久「ロン、裏ドラ乗って、12000」バラバラッ

小蒔(う、白の地獄単騎ですか……)

東三局
東家 竹井久 25300
南家 高鴨穏乃 16300
西家 宮永照 10100
北家 神代小蒔 48300


久「ツモ、3200オール」バラバラッ


照(もう、負けてもいいかな? 竹井さんに勝ってもらえれば、咲の分の仇も討ってくれるだろうし、能力の消えた私なんて、どうせ龍門渕透華にも天江衣にも勝てないし……)

穏乃(う、うう……)


久「ねえ、さっきから何辛気臭い面してんのよ?」

照「え……?」

久「まさか、まだ勝てると思ってるのは私だけ?
この程度の点差で何を悲観してるのか知らないけどさ、あなた、勝ちたいんでしょ? 勝たなきゃいけないんでしょ?
だったら勝ちなさいよ。最後まで自分の力で戦い抜きなさいよ、私なんかあてにしないで」


照(そ、そうだった。ごめんね、咲。お姉ちゃん、勝つからね)ゴゴゴゴ

穏乃(よし、最後まで遊び尽くすぞ!)ゴゴゴゴ


久(ふう、何とか持ち直したみたいね)


小蒔(何の話でしょうか?)

南三局 一本場
東家 竹井久 34900
南家 高鴨穏乃 13100
西家 宮永照 6900
北家 神代小蒔 45100


久「よし、リーチ」パチッ

穏乃「ロン、8000です」バラバラッ


久(あらまあ、散々啖呵切った後に、これは少し恥ずかしいわね
てか、宮永は何してるのよ?)

南四局 オーラス
東家 高鴨穏乃 22100
南家 宮永照 6900
西家 神代小蒔 45100
北家 竹井久 25900


照(もうオーラス。連続和了も、打点上昇も、最後の切り札も封じられた。
それなら……)

照「カン!」パチッ

照(力を貸して、咲!)


穏乃(よし、ドラ5。これを神代さんに直撃で逆転だ!)


照「カン!」パチッ


小蒔(加樌ですか、とにかく、振り込まないように……)


照「もう一度、カン!」パチッ


久(これは……)

照「ツモ。ホンイツ、トイトイ、サンカンツ、ダブナン、ドラ3、嶺上開花……」


小蒔(…………)

久(…………)

穏乃(…………)


照「8000、16000!」




対局終了
宮永照 38900
神代小蒔 37100
竹井久 17900
高鴨穏乃 6100

照「か、勝った……。咲、ありがとう」

久「やれやれ、一時はどうなることかと思ったわ」

小蒔「惜しかった……、残念です」

穏乃「悔しいけど、楽しかったからいいや! 皆強かったね。
ありがとうございました」

小蒔「ありがとうございました」

久「ありがとうございました。って、いつまでボーッとしてるのよ」ポンポン

照「あ、ありがとうございました」



アナウンス「お知らせします。決勝戦1位の方は、邸内大広間まで、お越しください」



久「ほら、呼ばれてるわよ。行ってらっしゃい。気をつけてね」

照「うん。私、必ず勝つ。咲の分も、園城寺さんの分も!」タッタッタ


久「道に迷わないようにねー!
さてと、ここからは私の番。皆、聞いて! 実は、この大会は…………」

大広間にて


照「やっとここまでたどり着いた……。
お前が、ジュニア大会で対局相手をことごとく呪った天江衣だな?」

衣「何やら珍妙な形容詞がついているようだが、衣は衣だ」

照「そして龍門渕透華、今日こそお前たちを倒す!」

透華「あら、威勢のよろしいことですわね」

照「そう言えば、ここには3人しかいない。最後は三麻をするの?」

透華「まさか……、そろそろお出でなさい。真打ち登場ですわ」





コツ、コツ、コツ、




咲「…………お姉ちゃん」


照「咲?」

照「ど、どうして? 生きてるの?」



バタン、ドカドカドカ



照「た、竹井さん。それに他の皆も……」



久「良いわね、皆。さっき言った通り、声を会わせて…………」







全員で「ドッキリ、大成功!!!!」





照「ど、ど、どっきり?」


怜「いやー、ここまで見事にはまるとは思わんかったわ。私も協力した甲斐があったなあ」

照「園城寺さん、死んだんじゃなかったの?」


透華「やれやれ、鈍いお方ですわね。まだ状況が理解できませんの?」

咲「私がね、お姉ちゃんに会いたかったから、龍門渕さんに頼んで、死んだふりをしてこの大会に来てもらったの」

照「嘘……」


美穂子「待ってください、宮永さん。これはおかしいです!」

照「福路さん?」

美穂子「だって、天江衣がジュニア大会で呪った対局者たち。あれはどう説明するのですか?」


透華「ああ、その事でしたら…………」












衣「集団食中毒だ」


郁乃「そうそうそ、全てはそこから始まったんよ~」


美穂子「赤阪局長、どうしてこちらに?」

郁乃「あら、皆も一緒に来とるで~」


竜華「久しぶりやな、怜」


憧「シズ、元気にしてたー?」


初美「姫様に異能を破壊された方は後でどうぞ。戻してあげますよー」


トシ「やあ、賑やかだねえ」


淡「テルー、良かったね、妹さんと会えて」


健夜「本当、本当」


照「どうやって、ここに?」

金髪の青年「ふん、我が世界中を飛び回って拾って来たのだ。やはり、ハッピーエンドとは、皆で祝うものであろう」ゼエハア


照・美穂子「「??」」


透華「まだ混乱している方もいらっしゃるようですし、最初から説明致しましょうか。
この一連の出来事の発端となった、あの集団食中毒事件から…………」


透華「一昨年、うちの衣が出場した東洋ジュニア大会は、ある大企業がスポンサーになっていましたの」

透華「選手は全員その企業の系列のホテルで、至れり尽くせりのサービスを受けることができましたわ」

透華「しかし、そのホテルの料理に、腐った食材が混入していましたの」

透華「その料理を食べた者、すなわち選手たちは食中毒を発症」

透華「ところが、スポンサーの企業には政府とのコネクションがあり、事件は揉み消されてしまいました……」


照「ちょっと待って。それがどうして天江衣の呪いという噂になったの?」

透華「実は、衣の発症だけが、他の選手よりも遅れたのですわ」


衣「衣は何度も蒲原と一緒に修羅場をくぐってきたからな。他の有象無象よりも耐性があったのだろう」


透華「そこで、突然の病気と、衣の異常な強さとを、誰かが故意に結び付けたのですわ」

透華「私は復讐を誓いました。同じ大会に出場していた選手のなかで、最も強かった者を集め、龍門渕四天王も結成しました」

透華「しかし、いくら龍門渕グループとは言え、出来ることには限界があります」


郁乃「そこで、いくのんの出番というわけなんよ~」

郁乃「透華ちゃんから相談されたんや。あの企業のやったことを暴いて欲しいってな」

郁乃「前から胡散臭いと思ってた事件やったし、ICPOなら中国政府にもあんまり気兼ねせんですむ。
そこで、こんなアイデアを出したんや」

郁乃「龍門渕グループが麻雀大会を開き、天江衣を出場させる。
そこに、警察が天江衣の呪いを調べるために潜入した、という噂を流したんよ~」

郁乃「そうすれば、きっとその企業は真相を確かめようとするやろ。下手したら、自分たちのやったことがバレるかも分からんのやからな~」

郁乃「そして、尻尾を出したところを、捕まえようというわけや」


透華「実際に、そのようになりましたわ。ハギヨシ、そいつを連れて来なさい」

一太「くそっ、放せ! 嵌めやがったな、この野郎」

ハギヨシ「あなたにそのような言い方をされる筋合いはありませんね。
それでは、赤阪さま。後はよろしくお願いいたします」

郁乃「やっぱり、あっちもネズミを忍び込ませとったんやな~。
兄ちゃん、後で知ってること、全部吐いてもらうかな、覚悟するんやで~」


透華「そして、この計画をしている頃、宮永咲さんが訪ねて来たのです」

透華「彼女は、家庭の事情で別れたお姉さんに、どうしても再会したいと仰いました」

透華「どうせならば、1つの行動で幾つもの目的を達成できる方が良いだろうと考え、宮永照さんが潜入するよう、仕組んだのですわ」


純「ま、あの作り話はちょっとやり過ぎだったけどな。大体、いつも衣と打っている俺が、連続嶺山開花ぐらいで、イカサマ扱いするわけ無いだろう」

一「悪巧みが世界征服ってのも、ねえ」


照「……」

美穂子「じ、じゃあ、地下室に閉じ込められている雀士たちのことは……」

京太郎「ああ、地下ではカピバラを飼っているんですよ。普段は外で放してあるんですが、今回人がたくさん来て、イタズラされるといけないから」

美穂子「そんな……、結局私のやったことは、全部無駄だったの?」


郁乃「いやいや、そんなこと無いで~。
だって美穂子ちゃん、仕事辞めるつもりやったやろ?
やから、今回自信をつけてもらおうと思って、わざと事情を話さずに、派遣したのよ。どうやった?」

美穂子「確かに、もう少し頑張ろうと思っています……」

郁乃「せやろ? それなら万事O.K.やん」

透華「つまり、これは、様々な人々の利害が一致して協力した結果ですわ。
私は、衣をあんな目にあわせた者たちが許せなかった」

郁乃「ICPOとしても、放っとくわけにはいかん事件やったな。
ついでに、可愛い部下のメンタルケアもできた」

衣「衣は、強い雀士と打ちたかったのだ!」

咲「私は、お姉ちゃんに会いたかった……」


透華「まあ、実際やってみると、宮永さん姉妹のイベントに一番力が入りましたわね。
途中からは、園城寺さんや竹井さんにも協力してもらいましたし」

怜「だって、強盗のこと、揉み消してくれるって言ってくれたからな」

久「私は、借金を肩替わりしてもらったわ。
怜がいなくなったときは、少し心配だったけどね」


照「……ないで」


透華「何でしょうか、宮永さん?」





照「ふざけないで!」

照「咲が死んだって聞いて、私がどれだけ悲しんだと思っているの? どれだけ悔やんだと思っているの?
人の気持ちを弄んでおいて、何がドッキリよ! 何が利害の一致よ!
私、もう帰る。こんな茶番劇、付き合いたくない」


菫「おい、照……」


咲「待って、お姉ちゃん!」

照「うるさい」

咲「私、お姉ちゃんの牌譜を見たの」

照「…………」

咲「強いと思った。私の知ってるお姉ちゃんよりも、ずっと強くなってた。
でもどうして? どうして1度も嶺上開花を使わないの?」

咲「お姉ちゃんが私に教えてくれたんだよ。嶺に咲く花のような綺麗な役だって。
私にすごく似合ってるって、言ってくれた」

咲「だから、不安になったの。お姉ちゃん、私のことが嫌いになっちゃったんじゃないかって。
こうでもしないと、お姉ちゃんに会う勇気が出なかったの。ごめんなさい」

霞「それで小蒔ちゃんに、決勝に合わせてゼウスを降ろすように、頼んだのですね」

咲「はい。お姉ちゃんのいつもの技が使えなくなったら、嶺上開花で和了ってくれるんじゃないかと思って……」


照「……咲のことを、忘れるわけがない。今まで使わなかったのは、あれはもう、咲の物だと思っていたから使いたくなかっただけ」

咲「そうだったんだ……。それじゃあ、私、酷いことを……」

照「もういい、私も悪かった。会えて嬉しいよ、咲」

咲「うん、ありがとう」

透華「やれやれ、最後まで手間のかかるお馬鹿さんたちですわね」

衣「話は終わったか? それじゃあ、早く打つぞー! サキ、テル、トーカ」

透華「少しお待ちなさい、それは本日最後のイベントですわよ。
ここにお集まりになった皆様、私龍門渕透華が最高のおもてなしをさせて頂きますわ。
少々人数は多いけれど、ハギヨシ、問題ありませんわね?」

ハギヨシ「もちろんでございます。それでは」パチッ


『執事がパチリと指を鳴らせばあら不思議、たちまち大広間はパーティー会場に早変わり』


玄「すごい、美味しそうなお料理が一杯です!」


透華「グラスは行き渡ったかしら? それでは、乾杯致しましょう」

郁乃「事件の解決に、大きな一歩を踏み出したことと」

久・怜「本来であれば生まれなかったであろう、ここにいる全ての人々との友情と」

照・咲「私たち姉妹の再会と」

透華「それらを可能にするこの素晴らしい場所を祝って、乾杯!」

全員「乾杯!!!!」


一同、グラスを干す




カン!

最後少し駆け足になりましたが、これにて完結です。一応、伏線は全て回収したと思います。

後日談やら何やらは、どうか好きに妄想してください。>>1は精神的にも眠気的にもそろそろ限界です。

月並みではありますが、ここまで読んで下さった方、本当にありがとうございました。おやすみなさい。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom