男「観測史上最強だって」 幼馴染「マジで?」(66)

男「全然そんな感じ違うけどなぁ」

幼「風、たいした事無いよね?」

男「雨は結構降ってるけどな」

幼「この台風情報、ホントかな?」

男「ホントだろ。デマ流してどうなる」

幼「でもねぇ」

男「お!予測最大瞬間風速、80メートルだって」

幼「マジで?」

幼「それ、人が空飛べるくらいの強さじゃない?」

男「まぁ、50メートルくらいで軽自動車くらいならひっくり返るもんな」

男「人が飛んでもおかしくないよな」

幼「絶対停電するよね」

男「しちゃうだろうなぁ」

幼「家が飛んだりして?」

男「さすがに家は飛ばないと思うけどな」

男「そんな訳でさ、今日は泊まって行きなよ?」

男「こんな暴風雨の中、幼を外に出したりしないぞ?」

幼「う、うん。最初から泊まるつもりだったし」

幼「きっと停電はするだろうねー」

男「停電はするだろうなー」

幼「…するだろうなー」

男「あ、停電する前に、お風呂入って来なよ」

幼「あ、うん。そ、そうさせてもらうね」

幼「まだ停電しそうにない?」

男「まだ大丈夫だと思うけど」

幼「ふ、ふーん。でもお風呂は早く入った方が良いよね?」

男「そうだな。幼の次、俺が入るからさ」

男「長風呂しないでくれよ?」

男「それに、風呂から上がったらさ」

男「二人で誕生会、するんだから、な?」

幼「そ、そうだよねー」

幼「この様子だと台風は深夜に直撃みたいだしねー」

男「見事に直撃だなー」

男「気象台のおっさんが『厳重に警戒を』なんて」

男「俺、初めて聞いたよ」

幼「そうだよね。こんなに念を押すなんて珍しいよね」

男「ウチも警戒しないとなー」

男「だから幼、今日は早めに寝るぞ」

幼「う、うん」

男「だからお風呂先にどうぞ?」

幼「あ、あの…」

男「俺、晩飯の用意しておくからさ」

幼「う、うん…お先に行ってきます…」

幼(一緒にお風呂って言うのは…ダメかー)

男(しまった!今のって、一緒に入る?くらい言えたんじゃぁ…)

男・幼(…)

幼「…男、入って来ないかな?」

幼「今日は特別な日なのになー」

幼「忘れてるって事は無いだろうけど…」

幼「でも男はうっかり屋だからなー」

幼「…覚悟完了!なのになー」

幼「…」



男「幼、遅いな…」

男「もう1時間は経ってる」

男「お風呂場で気絶してるとか?」

男「いやいやいや。そんな馬鹿な」

男「でも、遅いな…」

男「ちょっと様子見に行くか…」

コンコン
男「おーい、幼?まだかー?」

幼「…」

コンコン
男「おーい?」

幼「あれっ?男の声がする…」

幼「あ、お風呂の中だった」

幼「私、寝てた?」

幼「…」

ドンドン
男「幼っ!返事しろよ!大丈夫か?」

幼「!」

幼「ご、ごめん、男!大丈夫だから!」

男「本当に大丈夫か?」

幼「ホント、大丈夫だから!」

男「…なら良いんだけどさ」

幼「す、すぐに上がるから!」
ザバッ

男「お、おう…」

幼(しまった…そのまま返事しなければ)

幼(男が入って来てくれたかも…)

男(しまった…介抱って名目で、中に入っちまえば良かった…)

男・幼(しくじった…)

幼「お、お先にお風呂、頂きましたー」

男「お、おう。長風呂だから、心配したぜ」

幼「ちょっと考え事してたよ、あはは」

男「ははは、溺れてるのかと思ったぜ」

幼「そんな、漫画じゃあるまいし」

男・幼「…」

男「そ、それじゃあ、俺も入ってくるかな」

男「麦茶でも飲んで待っててくれよ」

男「晩飯の用意、だいたい出来てるからさ」

幼「う、うん。行ってらっしゃい」


幼「い、今の内に…」



男「はぁ…幼が一時間も浸かってたお湯…」

男「飲むか?」

男「いやいやいや。変態か!」

男「でもちょっとくらいなら…」

男「ってしませんけどね!」

男「…」

男「……」

男「………」


コクッ

男「ふぃー。良い湯だったー」

幼「お、お帰り、男」

男「ん?幼、ちょっと髪が濡れてる?」

幼「え?そ、そう?ちゃんとドライヤーで乾かしたけどなー」

男「拭いてやるよ、そこの椅子に座りなよ」

幼「い、いいよ」

男「いいからいいから」
ストッ

ゴシゴシ

男「お客さん、かゆい所はありますか?」

ゴシゴシ
幼「とーくーにーなーいー」

男「ははは、へーんーなーこーえー」
ゴシゴシ

幼「ちょっと!人の頭で遊ばないでよー」

男「幼の髪ってサラサラだなー」

幼「へへー。普段から気を使ってますからねー」

男・幼「…」

男(しまった!何か、急に恥ずかしくなってきた!)

幼(よ、良く考えたら、髪拭かれるって恥ずかしいかも!)

男・幼「…」

男「さ、そろそろ乾いただろう」

幼「う、うん。ありがとね、男」

男「それじゃ、そろそろ晩御飯にするか」

幼「うん!お腹空いたよー」

男「今日のは自信作だぞー。何せ幼の誕生日だからなー」

幼「ありがと、男」

男「まぁ、半分くらいは昨日の夜、母ちゃんが用意してたんだけど」

幼「あはは。それでもありがとね。嬉しいよ」

男「それじゃ、いただきます!」

幼「いただきまーす!」

幼「全部私が好きな物だー」

男「食後にはケーキもあるんだぜー」

男「しかもケーキは完全に手作りだ」

幼「男が作ったの?」

男「そう!初挑戦にしては、上手く行ったと思うぜ」

幼「楽しみ!」



幼「美味しい!」

男「マジで?」

幼「男、もう将来パティシエになれば?」

男「それは言い過ぎだろ」

幼「いやいやー。もう、私専属のパティシエになってよ!」

男「ははは、専属って…専属?」

幼「あ…い、今の無し!」

男「べ、別にパティシエにならなくても」

男「ケーキくらい、いつでも焼くよ」

幼「そ、そう?わーい。う、嬉しいなぁ」

男・幼(…)

男「さ、次はプレゼントだ!」

幼「お、おー!」

男「二つあるぞ!」

幼「え?何で二つ?一つで良いよ」

男「まぁまぁ。もう買っちゃったから、受け取ってよ」

男「はい、まずはこれ」

幼「…開けても良い?」

男「もちろん」

ガサガサ

幼「あ!私が欲しいって言った財布だ!」

男「通販で買いました!」

幼「雑誌見ながら、呟いただけなのに、よく覚えてたね」

幼「ありがとうー!凄く嬉しいよ!」

男「プレゼントした側としても、喜んで貰えて嬉しいですよ」

幼「一生大事にするね!」

男「うん。大事にしてください」

幼「…」

男「…あー、あと一つのプレゼントなんだけどさー」

幼「…ここでクイズです!」

男「え?何、突然」

幼「この革の財布ももちろん嬉しいけど」

幼「私が今、一番欲しい物、なーんだ?」

男「んん?」

幼「ヒント!それは物ではありません!」

幼「さぁ!シンキングターイム!」

男・幼「…」

男「あの…それについてはさ」

男「1つ心当たりがあるんだけど」

幼「それは何?言ってみ?」

男「正解だったら、目を閉じて欲しい」

男「不正解なら、俺のほっぺにビンタしてくれ」

幼「わ、解った」

男「十八歳になった、幼に、言いたい事がある」

男「幼稚園の時の誓いを、今、果たさせて下さい!」

男「陳腐な言葉で申し訳ないけど」

男「幼さん、俺と結婚を前提にお付き合いして下さい」

男「ずっと俺の傍に居て下さい」

男「お願いします!」

男「…」

幼「…」

幼「男!目を瞑って、歯を食いしばって!」

男「お、おう…」

男(は、外れたか…)

幼「…」



ちゅっ

男「!」

幼「せ、正解者に…ご褒美!」

男「ま、マジで?」

幼「ずっとその言葉を待ってた!」

幼「幼稚園の時の約束、覚えててくれて、嬉しいよ」

男「俺も…俺も嬉しいよ」

男「外れたかと思って、泣きそうだった」

男「…俺、歯食いしばる必要あったか?」

幼「男の彼女としての、最初のサプライズです!」

幼「私が目を瞑ってたら、男からしてたんでしょ?」

男「ぉ、ぉぅ」

幼「そうはいきません!」

えんだー

男「…ふふっ」

幼「えへへ」

男「俺、幼の事大好きなんだな」

男「今、幼の顔見てると、心底そう思う」

幼「私、男の事、超好き!」

幼「騙し討ちで、ちゅーしたくなる位、大好き!」



男「もう夜も遅いな」

幼「11時過ぎたね」

男「ど、どうするかな」

幼「どうしようね?」

男「台風情報見てみようか」
ピッ

男「んー。相変わらず勢力強いって書いてあるなぁ」

男「飛行機は全便欠航だし…明日は様子見て運航か…」

幼「お父さんたち、どうなるのかな?」

男「んー。午前中は飛行機飛ばないんじゃない?」

男「空港も大混雑だろうし」

幼「そっかー」

男「外、別に風強くないよね?」

幼「全然。雨はちょっと強いけど」

男「…」

幼「…ね、ねえ男」

男「うん?」

幼「そ、そろそろ、寝る?」

幼「今から風強くなって、停電するかもだし」

男「そうだなー」

男「先月の教訓を活かして、ロウソクと懐中電灯用意したけど」

男「寝ちゃうかー」

幼「私、男の部屋で寝て良いんだよね?」

男「おう。あ…」

幼「…良いんだよね?」

男「お、おう…」

幼「停電したら…と思ってたよ」

男「お、おぅ…」

幼「まだ、『今日』だよ?」

男「お、おぅ…」

男「じゃあ、俺の部屋で、ね、寝るか」

幼「う、うん…」



男「あれ?ベッドにバスタオルが敷かれて…」

幼「言うな!」
バシッ

男「痛っ!何?幼がやったの?」

幼「…」

男「何だよ…バスタオ…ル…」

男・幼「…」

幼「そ、そういう覚悟、出来てるって事!」

男「このタオル、幼のタオルだよな?」

幼「さっき家に行って取って来た!」

男「こらっ!」
ポカッ

幼「な、何で叩いたの?」

男「台風で危ないから、家に泊まるのに…」

男「外に出たら、意味ないだろ?」

幼「ぶっちゃけ、雨は強かったけど、風は全然だよ」

男「観測史上最大なのになぁ…」

男「でも!とにかく!台風の時は外に出ちゃ駄目!」

幼「心配してくれてありがとう…」

男「い、いや。無事だから良いけど…」

男・幼「…」

幼「そ、それじゃ、ね、寝る?」

男「お、おう…」

幼「は、恥ずかしいから、電気は消して、ね?」

男「お、おう」
カチッ

男「真っ暗だな」

幼「そうだね」

男「電気消すなら、停電関係無かったんじゃないか?」

幼「そうだけど!切っ掛けが欲しかったと言うか…」

男「まぁ、俺もそうだけどさ」

幼「えへへ。真っ暗でも、男の顔がうっすら見えるよ」

男「幼の顔も、見えてるよ」

男・幼「…」


ちゅっ


男「愛してるぞ、幼」

幼「私も、愛してるよ、男」




?a「ウチに居なかったって事は、こっちに居るって事だろ?」

?b「まぁそうだろうさ」

?c「アンタ達は一階で待機!」

?d「私たちが見てくるから!」

?b「娘の裸くらい別に見ても良いだろ?」

?d「絶対駄目です!」

?c「黙って、土産の温泉饅頭でも食べてなさい!」

カチャッ

?c「…やっぱり」

?d「…だね」

?c「ついに結ばれたんだね」

?d「私、孫は3人は欲しいわ」

?c「私はもっと欲しい!」

?d「あ!お赤飯!お赤飯炊かなきゃ!」

?c「今日はお祝いね!」

?a&b「おーい!どうなんだー?」

?c&d「やっぱり男の部屋に居たー!」

ガバッ!
男「はっ!?」

男「母ちゃん!おばさん!」

男「な、何で居るの?」

男「あ…こ、これは!そのっ!」

幼「男…うるさぃ…もうちょっと寝させてよぅ…」

男「お、起きろ!幼っ!」
ユサユサ

男母「もう見ちゃったし」

幼母「全部見えちゃったし」

男「あ、あの…その…」

男母「アンタ、ちゃんと責任取りなさいよ」

幼母「男君なら、大丈夫よねー?」

幼「んぅー?お母さんの声がする…」

男「幼、ちょっと、マジで起きて」

男「か、母ちゃん達っ!何で居るんだよ!」

男「た、台風は?飛行機は?てか今何時だ?」

男母「もう11時過ぎよ」

幼母「飛行機は朝一便から、全便運航よ」

男母「母さん達、第一便に乗って帰って来たの」

男「あ、あの…」

幼「…あれー…お母さんとおばさんがいるー」
ぼけー

幼母「幼ちゃん!おめでとう!」

男母「幼ちゃん、男の事宜しくね?」

男母「頭は良くないけど、誠実な子に育ったと思うから!」

男母「二人とも、さっさと服着て一階に降りて来なさい」

幼母「幼ちゃんをちゃんと起こしてあげてね、男ちゃん」
バタン

男「…」

幼「…あー、男。男が私のベッドに居るー」

幼「ずっと夢見てたんだー…叶ったー。えへへー」

男「幼、起きてくれ。ほら。もう昼前だぞ?」

幼「もうちょっと。良いじゃんかー…」

男「寝ぼけてる場合じゃないぞ!」

男「母ちゃん達、帰って来てて、全部見られた!」

幼「…」

幼「はっ!?」

幼「い、今、お母さん達が居たような?」

男「目が覚めたか、幼。おはよう」

幼「おはよう、男。それより…」

男「あぁ…お互いの母親に、ばっちり見られた…」

幼「何で?台風は?飛行機飛んだって事?」

男「そうらしい…」

幼「観測史上最大の台風はどこ行ったのよ!」

男「肩透かしだった見たいなだ」

男「…服来たら、下に降りて来いってさ…」

幼「お父さん達も居る…よね?」

男「そうだろうな…」

男・幼「…」

幼「多分、ウチのお父さん、一発殴らせろ!とか言うと思う」

男「あぁ…言いそうだな」

男「けどまぁ、責任はちゃんと取るから」

男「一発殴られるくらい、なんてことないぜ」

幼「男…」

男「さ、いじられに行こうぜ!」
スッ

幼「う、うん」
ぎゅっ



一ヶ月後

男「観測史上最強だって」

幼「マジで?」

幼「一ヶ月前もそう言ってなかった?」

男「だよなぁ」

男「しっかし今年は台風多いな!」

幼「そうだねー」

男「しかも、またあの四人が旅行に行ってる時にって!」

幼「ひょっとしたら、四人の中の誰かが守護神なのかもよ?」

男「守護神?」

幼「守護神が居るから、普段台風来ない…みたいな?」

男「だとしたら厄介だな!旅行好きな守護神なんて!」

幼「きょ、今日も泊まって行って良い?」

男「もちろんそのつもりだ」

男「て言うか、今日の台風はマジで強いな」

幼「そ、そうだよね」

幼「何か、家が揺れてる気がする…」

男「実際揺れてるんだろう」

男「風速50メートルだってよ」

男「そろそろ最接近みたいだ」

男「お!瞬間最大も70メートル吹いたって」

幼「て、停電するだろうね」

男「あぁ、先に色々準備しておいて良かったぜ」

ビューーーーガタガタ

幼「ひゃっ!」
ぎゅっ

男「おぉっと…大丈夫だよ、幼」

幼「風強い!怖いよ、男!」

男「…」
ぎゅうっ

幼「…」

男「大丈夫だから。俺が傍に居るからさ」

男「な?」

幼「う、うん…」

男・幼「…」


バツンッ

幼「きゃっ!」

ガツンッ
幼「痛っ」

男「んがっ」
バタッ

幼「お、男?どこ?真っ暗で見えないよ?」

幼「た、倒れたの?まさか、また気絶?」

幼「こ、怖いよ、男…男!」

男「うー…顎が痛い…」

幼「男っ!どこ?」

男「幼、落ち着いて」
カチッ

幼「あ、懐中電灯…」

男「用意しておいて良かったよ」

幼「ご、ごめんね、また停電にびっくりして…」

男「大丈夫だから、幼」
ぎゅうっ

幼「うん…」

男「何があっても、俺が幼を守るから」

幼「うん…」

男「ずっと傍に居て、守るからさ」

幼「うん…」



幼「男と一緒なら…台風も、停電も怖くないよっ!」

幼「これからもずっとずっと宜しくねっ、男っ!」



おわり

これで終わりです
読んでくれた人、どうもありがとうございます

次スレは
幼馴染「クリスマス…ちゃんと伝えるんだ」
ってタイトルで立てます
割とすぐに
では。

台風のふたり幸せになったんですね
よかったー
アンコールに応えていただけるとは
どうもです

乙です

あれ、これヤったの初めてかね?

だがそれすらも清々しい

乙です

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