神話狼少女ふぇんりる (22)


みなさんは“ふぇんりる”という存在をご存知でしょうか。

北欧神話に登場する巨大な狼、フェンリル。その細胞とヒトの細胞を混ぜ合わせて作られたのが神話狼少女、ふぇんりるです。

神話生物特有の丈夫さ・力強さ、イヌ科特有の人懐っこさ、少女特有の愛らしさを兼ね備えた彼女たちは今や、街中で目にしないことはありません。

ところでみなさんはふぇんりるにはどのような種類があるかご存知ですか?

ふぇんりるは戦闘用、愛玩用、食用の三種に分類されます。彼女たちは体毛に覆われ、狼の耳や尻尾、牙や爪を有した少女の姿で産まれて来るので、誕生後すぐに選別テストを受けることになります。

選別テストで規定値以上の身体能力、知能を有しているふぇんりるは晴れて戦闘用ふぇんりるを名乗ることができ、その多くが紛争地帯やレスキュー現場など、死と隣り合わせの環境へ送り出されます。

その他のふぇんりるは全て愛玩用として全国のショップなどへ送られますが、厳しい選別の中死亡してしまったり大怪我を負って愛玩用に相応しくないと判断されてしまったふぇんりるなどは食用として闇市へ出回るのです。

ではここで、三種のふぇんりるたちの生活する姿をご覧いただきましょう。


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愛玩用ふぇんりる(愛りる)「ふあぁ……我輩は愛玩用のふぇんりるということです。ねむ……」

戦闘用ふぇんりる(戦りる)「お前は今起きたばかりだろう……私は戦闘用だ」

食用ふぇんりる(食りる)「最後の僕がイキイキしてる食用ふぇんりるだぜ」デローン

戦りる「頼むからはみ出ている内臓を仕舞ってくれ」

食りる「イキイキどころか普通に死んでたわ」

愛りる「死体は喋るのです?」

食りる「死体は死んでて動かないから死体なんだぜ? そんな非常識な奴がいたら見てみてーよ」

戦りる「話は変わるが鏡というものを知っているか?」


愛りる「お腹がすいたんです」

食りる「ソーセージでも食うか?」ゴソゴソ

戦りる「その腸を仕舞え。そもそも肉が入っていないだろう」

食りる「あー、じゃあミンチも今から作るわ」モギモギ

戦りる「自分のモモ肉を使おうとするんじゃない!」

愛りる「眠いからもういい……」

戦りる「お前はさっき起きたばかりだろう寝るな!」

愛りる「うっさい滅びれ」

戦りる「滅びれ!?」ガガーン

食りる「僕はもう半分滅びてるようなもんだぜ」

戦りる「頼むからお前はちょっと黙っていてくれ……」

食りる「これがホントの死人に口なしってか」


食りる「なあなあ戦闘用」

戦りる「ん、どうした?」

食りる「僕の右目知らね? 愛玩用とキャッチボール……キャッチアイか。してたらなくなちゃったんだけど」

戦りる「……選別漏れした者はここまで馬鹿だったか」

愛りる「食ちゃん、右目ってこれです?」

食りる「そりゃピンポン玉だ。……あ、意外とピッタリはまるわこれ」スポッ

戦りる「お前は本当にそれでいいのか?」

愛りる「黒目がないとおかしいですよ! サインペンとかで書きましょう!」

食りる「お、ナイスアイデアだ愛玩用」

愛りる「褒めろ褒めろ」

戦りる「……はぁ」


愛りる「戦ちゃん、みんなで大縄しましょー」

戦りる「構わないが……縄はあるのか?」

食りる「あるぜ、ここにな」デローン

戦りる「仕舞え」

愛りる「大縄だめです?」ショボリン

戦りる「……縄を探してくる。ちょっと待っていろ」

食りる「やべぇ、腸が絡まった」

愛りる「大丈夫です?」

食りる「腸が! 超絡まった!!!」

愛りる「クスリとも笑えない」

食りる「僕の体温より冷たい反応が返ってきやがった」


戦りる「なあ愛。愛玩用というのは何をするふぇんりるなんだ?」

愛りる「吾輩はー、寝たり遊んだりするのが仕事でー、あー……眠い」

戦りる「……それが仕事と言えるのか?」

食りる「戦ってない戦闘用に言われてもなー。あ、ちなみに僕は食卓に並ぶのが仕事だぜ」

戦りる「お前は煮ても焼いても食えない奴だよ」

食りる「食用なのになー」

愛りる「……」Zzz...


食りる「戦闘用、ちょっと助けて」

カラス「……」チムチム

戦りる「それはお前たちの食べるものではない! 離れろ!」バッ

カラス「!」バサバサ

食りる「いやー、今度ばかりは死ぬかと……あ、もう死んでたわ。なんにせよ助かったぜ――」

戦りる「腹を壊したいのか! もっと他に食べるものがあるだろう、生ゴミとか!」

食りる「お前今闇市のユーザー敵に回したよ?」


愛りる「今日の晩ごはんはお肉です!」モグー

戦りる「ほう、これは脂がしつこくなくて美味しいな」モグモグ

食りる「さっすが僕の仲間、いい味してる」モグィー

戦りる「」

食りる「なーんちゃって。ちょっとしたシニックなジョークだよ。死肉だけに」

愛りる「食ちゃん、なんか寒くなってきたから毛布取って」

食りる「愛玩用はホント容赦ねーよな」


食りる「戦闘用はおっぱいでけーよなー」

戦りる「まあ……そうだな」

愛りる「めちゃくちゃやらかいですし!」モニュ

戦りる「やめろ! 触るのなら自分のを触らないか!」

愛りる「えぇー」モニュ

食りる「やめたげなってよー、愛玩用はぺったんこなんだからさー」

愛りる「……ちょっとはなだらかだし」

戦りる「……じゃあお前が触らせてやればいいだろう」

食りる「しょーがねーなー。ほら、戦闘用ほどデカくはねーが思う存分触っていいぜ」スッ

愛りる「このパック詰めされたお肉は……?」

食りる「僕の予備おっぱいだよ。闇市に行けば100グラムいくらで手に入るんだぜ」

戦りる「それはただのムネ肉だろう!」

愛りる「こっちもやらかい!」モニュ


愛りる「裸なのはデフォルト……夜だしいいですよねっ!」バサッ

食りる「僕も開放的だぜ」ガバァ

戦りる「裸にコートの露出狂特有のポーズで内臓を見せるんじゃあない。それと愛は服を着ろ」

食りる「いやほら、たまには腹開いて風通さないと腐臭が籠っちまうからさ」

戦りる「……意外と手のかかる身体なんだな」


食りる「へーい愛玩用に戦闘用。観たら死ぬって噂の呪いのビデオが手に入ったから一緒に観ようぜ」

戦りる「フン、観たら死ぬなど所詮ただの噂だろう? コーラとポップコーンでも持ってきてやるから再生の準備をしておけ」

愛りる「ま、待て、観たら死ぬって食ちゃんだけ損がない!」

食りる「いーじゃんいーじゃん。死んだら三人仲良く食卓に並ぼうぜ」

愛りる「嫌だ、我輩はまだ死なんのですよ! 滅びろ!」

戦りる「落ち着け愛!」

愛りる「ポップコーンだけ食べて寝るし!」

食りる「真っ先に殺されそうな奴の台詞だな」

愛りる「逃げ場が!」ガガーン

戦りる「お前も煽るな!」


食りる「昨日闇市行ったんだけどさ」

愛りる「売り物と間違われなかったです?」

食りる「あそこのユーザーもさすがに歩いてるのは食わねーよ」

戦りる「で、闇市がどうかしたのか?」

食りる「あそこって愛玩用のエロビデオも売ってるんだぜ」

愛りる「うわー……」

戦りる「フン、下劣だな」

食りる「全くだぜ。僕に頼んでくれりゃあ安くで直接見せてやるのに」ガバァ

戦りる「中身を見せてどうする。閉めろ」


食りる「まあアレだ。僕ら関連でそーゆー違法なコトやってるとあいつらにフクロにされるもんな」

戦りる「あぁ、奴らか」

愛りる「? 誰かいるんです?」

食りる「身体能力だけはある馬鹿が集められたチームがあるのさ」

戦りる「隊についての情報は戦闘用のみに明かされているもののハズだが……どうして知っているんだ?」

食りる「僕の腹ブチ抜いたノータリンの処遇について話してる奴らの足元にいたからさ。あいつら人が苦しんでるのを無視して話し込んでやがったんだぜ」

愛りる「やっぱり痛かった……?」

食りる「そりゃそうさ、あの時はまだ痛覚のある生き物だったんだからよー」


戦りる「そういえばお前、もう死んでいるんだったな」

食りる「そーそー、死んだおかげで痛覚が無くなったのは有り難いよな。タンスの角に足の小指ぶつけてももげるだけで済むんだぜ」

愛りる「どんだけ勢いよく足動かしてんですか」

戦りる「そういう問題じゃあないだろう」

愛りる「だってよく身体もいでるですし」

食りる「だよなー」

戦りる「なんで死んでいるのに動いているかじゃないのか」

食りる「そこは僕にもよく分かんねーんだよなー」


食りる「身体もぐの、君らの反応が面白いからやってるだけで実は直すの面倒なんだよな」

戦りる「……ならもがなければいいだろうが」

愛りる「やっぱり生えてくるんです?」

食りる「いや、闇市で新鮮なパーツ買ってくっ付けてる。馴染むのに時間がかかってさー」

愛りる「家計に響いてた!?」

食りる「いやさ、闇市でコート着て『この中見せたげるからあれ買って♪』つったら結構買ってくれんのよ。だからほとんどお金かからねーの」

戦りる「どうせ身体の中を見せているんだろう?」

食りる「だーいせーいかーい。ご褒美に中身見せたげよう」

戦りる「いらん!」


愛りる「うわあぁーっ、助けてぇ!」

戦りる「どうした愛!」

愛りる「食ちゃんのあばらに引っ掛かって出れない!」

食りる「これぞアイアンメイデンならぬミートメイデンだぜ」キャルーン

戦りる「何をやっているんだお前たちは!」ポカッ

食りる「いてぇ」

戦りる「痛覚!」

愛りる「うわぁ、べとべとする……」


食りる「メイデンってのはつまり処女って意味だがよー、さっき愛玩用を受け入れちまった僕はもう処女とは言えねーよな」

愛りる「えへへ、食ちゃんの初めていただいちゃいましたぁ」

戦りる「……腹に空いた穴に入れられたのでは違うだろう」

食りる「じゃあどこに入れられればいいんだよー。でっけー声で教えてくれなきゃ僕わかんなーい」キャルーン

戦りる「うるさい!」


愛りる「戦ちゃんは戦闘用なのにどうして戦わないです?」

戦りる「どうして、と言われても送られた先がここだっただけだ。まさかこんな平和な所に送られるとは思ってもいなかったさ」

食りる「僕も出荷された先がここだったからなー。愛玩用はどうしてここに来たんだよ」

愛りる「えーっと、確か寝てて……起きたらここにいた?」

食りる「すっげーな、誰も自分の意志でここに来てねーじゃん」

愛りる「しかも全種類揃ってる!」

戦りる「我々は何の為にここに集められた……?」

食りる「案外僕らの生活、誰かに観られたりしててなー」

愛りる「そんなわけないですよぉ! 有名人じゃあるまいし」

食りる「だよなー」

戦りる「……フッ、考え過ぎか」


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可愛らしいふぇんりるのたちの日常生活、いかがでしたか?

それではまた、機会があればお会いしましょう。

これにて終了です。神話要素が薄いと思った方は適当にSANチェックでもしといてください。0/1D2でいいと思います

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