橘志狼「ありすっライブのチケットくれ!」橘ありす「なんの冗談ですか」 (156)


橘志狼
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志狼「どうすっかな」ウーン

志狼「やっぱり本人に頼むのがイチバンいいよな!」

志狼「オトコは正々堂々真正面からいってギョクサイしろってにーちゃんも言ってたし! よしっ、さくっとミッションクリアしてやるぜ!」

志狼「……でも、なおにも一応声かけとくか。一応」





・・・


・・・・・




橘ありす
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的場梨沙
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結城晴
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――

晴「よーしっ、今日のレッスン終わりー!」

ありす「ええ。お疲れ様でした」

梨沙「はー! つかれたわー! ま、こんだけやっとけば本番ミスなんかしないでしょ!」

ありす「ええ。歌を自分のものに出来た手ごたえがあります。ノドあめどうですか?」

晴「おーくれくれ」


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晴「ここまで練習したんだから、客席満員のジョータイでやりてーよな」モゴモゴ

梨沙「でもキモい客また来てたらイヤね! あいつらの視線、ゾワってするわ!」

ありす「ええ……プロデューサーが言っていましたが、私たちのライブに来るファンって結構年齢層が上の方が多いみたいですね」

梨沙「うえ~~、なんで? アタシ達がフェロモンバリバリだから? だから大人もこぞってくるわけ? ロリコンじゃない」

ありす「それはわかりかねますが……」

晴「まぁ、応援してくれてるんだからさ。ファンの人をそーいうふうにいうのやめとこうぜ」

梨沙「なーによ、晴。あんたもヘンタイにじろじろ見られるの嫌でしょ~?」

晴「そ、そりゃ嫌だけどよ。同じくらいの年齢のヤツも来るじゃんか。一応オレらもプロだろ? 全力でやることには変わりねーんだからよ。やる前からモチベ下げること言うの止めよーぜ」

梨沙「ふんっ、大人ぶっちゃって。晴っぽくないわね」

晴「大人ぶってるわけじゃねーけど。でも、梨沙、お前また招待チケットで『パパ』呼ぶんだろ?」

梨沙「……そっ、それがなによ!」

晴「じゃ、『パパ』だってロリコンになるじゃん」

梨沙「なっ、ならないわよ!! アタシが呼ぶんだもん!! それにステージ前のS席でパパが見てくれてるって思うと、ブーストかかるからいい効果あるの!!」

ありす(そうだ……チケットどうしましょう。身内に配る用のチケットは一枚もらえてますけど、今回はお母さんもお父さんも予定があるって……返しましょうか)


晴「おーい、ありす。レッスンルームからもう出ようぜ」


――

――――


千枝「――そういえば『絆物語』見たよ、直央くん、志狼くん」

直央「ええっ! 映画見たの!?」

志狼「おう! すげーおもしろかっただろー? オレナイフ捌きどうだった!」

千枝「おもしろかったよ! ナイフくるくる回してたの、スゴイなって思った! 直央くんは魔法使いだったよね?」

直央「う、うん……変じゃなかったかな?」

千枝「ううん、かっこよかったよ! 最後勇気出すとこ感動した」

直央「あ、ありがとう」

千枝「えへへ、魔法使いのカッコウ私もしたことあるけど、直央くんの方が似合ってたかも」


岡村直央
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佐々木千枝
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直央「そんな……路線が違いますよ」

志狼「まー、なお、撮影の時色々テンパってたけどな」

千枝「そうなの?」

直央「え!? ……うん。ボクすごく緊張しちゃって。でもみんなに助けられて、なんとか」

千枝「そうなんだー。映画見てるとそんなのわかんなかったけど、色々あったんだね。――――あ、志狼くん! ありすちゃん達が戻って来たよ!」


晴「ん? あそこで立ってんの千枝か? そんで……あれは」

梨沙「ちょっと、なんか男子が走ってきてるんだけど?」

ありす「あ……、あの、男子、は……!!!」



志狼「よーうっ! ありす!!」ダダッ



ありす「出ましたね……!!」

晴「よう、志狼じゃねーか! 今日はどうした? またオレと勝負しに来たか?」

志狼「いや、晴、今日はちげーんだ」

梨沙「しろーって、コイツ? あんたたち、前ドッジいっしょにやったんだっけ?」

ありす「あれをドッジと呼ぶならそうですけどね……! 何の用ですか? 待ち伏せとは穏やかじゃないですね」

志狼「ああっ! 実はさ、頼みがあるんだけどよー……」

ありす「頼み?」


志狼「たのむっ! ありすっライブのチケットくれ!」


ありす「…………なんの冗談ですか」


千枝「あのね志狼くんね、ありすちゃん達が次にやるライブのチケット欲しいらしいの。今日はそのお願いのために来たんだって」

梨沙「直談判~? ゴーインね」

ありす「…………本当に? あなたが?」



ありす(意外、ですね。私たちのライブに興味があるなんて。確かに今までアイドルとしての私の姿は見せたことがありませんでしたが)

志狼「たのむっ! チケット欲しいんだよ!! いいだろー!?」

ありす(そんなにライブに来たいんですか? あなたが?)


晴「志狼。そんなにチケット欲しいんなら買えばいいじゃねーか」

志狼「それがよ、もう無いらしーんだよ!」

晴「えっ。無いって……」

ありす「完売しているんですよ」

直央「事務所のみのりさんも言ってたんですけど、今回のライブはすごく人気があるそうですね……」



ありす(プロデューサーとちひろさんが企画を練りに練ったそうですからね……規模はそれほどではないんですが。それゆえチケットの絶対数が少なく争奪戦が繰り広げられているとか)



ありす(――【 CINDERELLA GIRLS FRESH UTOPIA!! 】)

ありす(メンバーは小学生組オンリーという初めてのキッズアイドルだけのライブ)

ありす(メンバーのCDを4枚買えば先行申し込み受付が可能で、そのためチケットを求める人がこぞってCDを買い漁る姿が各地で見られたそうです)

ありす(ネットで見ましたが……あまりに熾烈なチケット争奪戦が繰り広げられているためその様子は『Mad Teen Party』、『オペレーション:ローリングサンダー』、『凍てついた本能の墓場』、『屠殺嬢5号――ロリーターハウス5』などとも呼ばれてるようです)

ありす(チケットが入手困難なため、志狼くんは直接私のところに来たわけですか)


志狼「ありす、出演者ならチケット用意できるだろ? 頼む! 一枚でいいからくれ!」

ありす(確かに、身内用のチケットはありますが……)

梨沙「ふふふっ、どうすんの?」

ありす「……簡単にOKというわけにはいきません。こちらとしても色々都合がありますからね」

志狼「えー! なぁ、頼むよ! そうだ! ほら、『絆物語』の映画チケット代わりにやるから!」バッ

ありす「べ、別にそんなのもらっても」

晴「あ、それオレまだ見てなかったんだよなー。貰っとけよありす」

志狼「ほら! そうだ、これからありすと収録いっしょの時があったら助けてやるから!」

ありす「助けるって……なにをしてくれるんですか」

志狼「ろ、ロケ弁に苦手なおかずあったら代わりに食ってやるよ」

ありす「……それだけですか」

志狼「そ、それだけじゃねーよ? えーっと、そうだ! 肩叩き券! 肩叩き券も付けるっ!!」

ありす「………………」

梨沙「あんたさぁ、もー少しミリョク的な提案できないワケ?」

志狼「なんだよっ! おおばんぶるまいしてんだぞ! どうだありす!? OKかっ?」

ありす「すいません。厳正な審査の結果、あなたの貴意に添いかねる結果となりました。一層の御自愛と今後の御健闘をお祈りいたします」


志狼「あん? どういうこった?」

ありす「………行きましょうかみなさん」スタスタ

志狼「おい! 待てよありす!!」

ありす「人にものを頼むのなら、もう少しやり方というのがあるでしょう」

志狼「やり方?」

ありす「とりあえず、名前を呼び捨てするのはやめてください」

志狼「えっ、ありすはありすだろ? オレだって『橘』なのになんか変なカンジになっちまうじゃん」

梨沙「タチバナ……ふ~ん、そういえばいっしょね」

ありす「私はあまり呼ばれたくないんですよその名前」

千枝(最近気にしてなかったのになぁ。男子相手だと違うのかな)

志狼「じゃあなんて呼べばいいんだよ。あーちゃん?」

ありす「その呼び方はやめてくださいっ! ……名字だけというのが収まりが悪いのなら、妥協してフルネームとさんづけならばいいでしょう。ありすの部分の発音はピアニシモ気味でお願いします」

晴「橘ありすさん、か」

志狼「じゃあ、オレは橘志狼くんか」

ありす「あなたまで合わせなくていいです……」

志狼「わかったよ。タチバナ、アリス、サン。これからはそう呼ぶよ」

ありす「ぎこちないですね……ですが、まぁ、いいでしょう」


志狼「ふーっ、中々手間取ったぜ。じゃっ、チケットくれ」

ありす「いや、なぜ貰えると思ったんですか」

志狼「えっ! くれないのかよ!! なんだよ! ウソつき!!」

ありす「呼び方変えたらチケットあげますなんて一言も言っていません!」

志狼「なんだよ……。なお、このオンナ、ウソつきだぞ。オレの気持ちをモテアソビやがった」

直央「え、えっ」

ありす「イヤな言い方しないでくださいっ。呼び方の件は、あくまで頼みごとをする前の礼儀の話です!」

梨沙「ざーんねん、もっとアピールしないとダメみたいね~! あはっ!」

志狼「くそー……じゃあ、あれだ。将来自由の女神ぐらいのでっかいオレの像を建てる時、隣にありすのも……タチバナアリスサンのも、いっしょに建ててやる! これでどうだ!」

ありす「えっ」

千枝「えーっと、志狼くんの像の隣にありすちゃんの像を建てるってこと?」

志狼「おう! 出世払いってヤツ?」

直央(それって……)

梨沙「それ、よくある夫婦の銅像みたいなカンジになっちゃうじゃない」

晴「ツイン橘像か」

ありす「や、やめてくださいそんな関係を誤解されるような真似は!! あなた、お願いしてくるフリをして私をからかいにきたんですか!」

志狼「なんだよ! オレはホンキだっての!」

梨沙「きゃははっ! アッツいセリフね~!!」

ありす「煽らないでください! ……だいたいあなた、本当に私たちのライブのチケット欲しいんですか」


志狼「欲しいって言ってるだろ! だから、こんなに頼んでんだろ!」

ありす「私も出演者として出るんですよ? わかってますか?」

志狼「だーかーら、知ってるって! あり……スサンも踊って歌うんだろ! そのライブのチケットが欲しいんだよ!!」

ありす「転売目的ではありませんよね?」

志狼「売ったりしねーって!! カネの問題じゃねーんだよ! オレがオトコのケジメをつけるかっていう問題なんだよ!」

晴「壮大なこと言ってんな」

ありす(ど、どうして私のライブを見ることがオトコのケジメという話になるんです……!? この人にとってそんなに私のライブは重要なんですか?)

直央「しろうくん……」

志狼「なあ頼むよっ! 玄武にーちゃんが発行してくれた肩車券もやるから! ブレイクダンスも教えてやるからー!」


ありす(こんなに必死に……。あの橘志狼が)

ありす「ふ、ふふっ」

ありす(あれ……なぜか、いい気分です)


梨沙「どーすんの?」

ありす「さて、どうしましょうか」

志狼「ぎぶみ~ちけっとぉ~!」



晴「……なぁ志狼。オレの、やろうか」


ありす「え」

志狼「えっ! 晴! お前もチケット持ってんの!?」

晴「ん。オレんとこの家族は男ばっかだし……ガキンチョの女ばっかのこのライブなんてあんまキョーミないと思うしな。チケット余ってるんだよ。回してやってもいいぜ」

梨沙「なによ、あんた遠まわしにアタシのパパ馬鹿にしてるんじゃないでしょうね!?」

晴「んなツモリはねーって! どうする志狼。オレじゃ……ダメか?」

志狼「晴……オレ、お前を一目見たときからコイツは他のヤツとは違うなって思ってたぜ」

梨沙「オトコっぽいからね~」ケラケラ

千枝「でも優しいところはすごく女の子らしいと思うな」ニコニコ

晴「う、うるせーなっ! ……でも、代わりにアレだぞ? ときどきサッカーに付き合ってもらうかんな。まだ決着つけてねーし」

志狼「そんなんでいいのか? いつものことじゃんか、お安い御用だぜっ!」

直央「良かったねしろうくん」

晴「よーし。じゃあ……」


ありす「待ってください。晴さん。そんな風に軽く渡してしまっては、チケットを手に入れるのに苦労しているファンの方に申し訳が立ちませんよ!」


晴「えっ?」


ありす「確かに芸能界と言うところはコネがモノを言う、癒着した関係で成り立っている部分がありますが、だからこそ私たちの世代はそれを改めていくべきではないですか」

晴「え。渡しちゃ駄目なのか」

志狼「なんだよー、ありす邪魔すんなよっ」

ありす「邪魔をしているわけではないです。晴さんはチケットを贈るのがどういうことなのかまだ深く分かってないと思うんです。あとありすって呼ばないでください」

梨沙「深く分かってないって?」

ありす「えっと……、そう、アイドルとして致命的な傷がついてしまう危険があるんですよ」

晴「キズぅ?」

ありす「私が躊躇したのもそれが理由にあるんですが この件が元でマスコミの方にあることないこと書きたてられたら、晴さんのこれからが危ぶまれてしまいます」

千枝「あること」

直央「ないこと?」

梨沙「あぁ、スキャンダルってヤツ?」

ありす「そうです。アイドルなのに男性の方と近しいと思われては……危険でしょう?」

晴「危険ってな……志狼とはトモダチだぜ?」

志狼「それがなんで危険なんだ?」

ありす「友達と言ってもファンの方がどう取るかわからないでしょう。アイドルに男性の影があるのは……好ましい状況だとはいえないです。誤解する方が必ずいらっしゃいますからね」

晴「オレらの年齢でもんなことに気をつけなくちゃいけないのかよ」

梨沙「意識高っ、ちょっと見習うわ」


志狼「誤解するヤツがでたら説明すればいいだけだろ? オレらの関係をさ。サッカーで時々遊んでるけどそれだけだって」

晴「そうそう。ま、たまーにバスケもやるけど」

志狼「それだけだもんな……あー、お菓子も結構やりとりしてるか。みのりさんとかそーいちろー兄ちゃんが持たせてくれる菓子を渡したり」

晴「だな。オレもこっちからかな子さんとか法子が作ってくれたクッキーとかドーナツ渡してるし」

千枝「えっ! 最近事務所に置いてあるお菓子、美味しいなって思ってたけどあれ志狼くんから渡されてたやつだったの!?」

志狼「おう、そうだぜ。そっちのドーナツも持ち帰って事務所に置いといたら春名にーちゃんすっごい喜んでたぜ。プロが作ってるだろこれって言ってた」

梨沙「じゃあ前一回だけ見たマフィンも志狼―晴便だったわけね。あれまた食べたいのに無いなーって思ってたのよ。今度持って来てよ」

志狼「いいぜ。そーいちろー兄ちゃんに頼んどく。代わりにクリームパンまたくれよ?」

直央「あ、あれおいしかったよね」

千枝「みちるさんのだね。あれふわとろでおいしいよねっ」

ありす「知らない間に交易が行われていたとは……」


志狼「でもさ、苺パスタはびっくりしたなー。発想がすげーよ。人類の感覚をチョーエツしてんなって思ったもん」

ありす「!? い、いちごパスタ……?」

晴「あ、おいっ!」

志狼「まず見た目がすげーよ、あれ。極彩色っつーのか? ピンク色で宇宙からの物体Xっぽくて」

ありす「……」

志狼「それで食ってみたら生クリームが口の中でパスタと絡み合って、ぬるくて口の中がぐにゃってなってさ」

ありす「…………」

志狼「そこに苺の酸っぱさが口の中を刺激するだろ? あれまるで崩れかけたボディがアッパーで無理矢理立たされるみてーだった」

ありす「………………」

志狼「極めつけはデコレーションだよ。苺と、シーチキンと、ハーブっつーのか? 変な草が入っててまた味を斜め上にチェンジさせてよ」

ありす「……………………」



直央「し、しろうくん。もう言わない方が……」クイクイ

志狼「えっ?」

ありす「………………恐らく、それは私が作ったものですね」

志狼「あん? そうなのか」

ありす「……晴さん。前、味見をお願いしましたよね? 書置きをして私、置いていましたよね?」

晴「あ、ああ。『バージョンアップしたので評価をお願いします』って言ってたあれな……覚えてる、覚えてる」

ありす「やってくれましたね……その日は巴さんが不在でしたので、あなたに頼んだというのに。まさか、独自のルートを使って処理していたとは……!」

晴「いや! 食ったぜ!? 一口食っただけでもういいって気持ちになるすごい満足感だった!」

ありす「え……? 食べるのを放棄したわけではないんですか?」

晴「違う違う! ちゃんと味は見たって! それで志狼との待ち合わせに遅れそうだったからよ! こりゃいいや、この味をもっと他のヤツにも知ってもらおうって思って持っていったんだよ!」

ありす「そういうわけ、だったんですか……」

晴「だよなっ! 志狼!」

志狼「おう……? まー悪くなかったぜ、あの苺パスタ。ありす中々やるじゃねーか。なんつーか、必殺技っぽい威力があった」

千枝(それ料理の評価としてどうなのかなぁ。またありすちゃん怒るんじゃ)

ありす「……ほ、ほめてもなにもでませんよ?」テレ

千枝(OKだった! 褒められるときにはストライクゾーン大きくなるんだ!)


志狼「……あれ? ってかなんでこんな話してんだっけ? 晴がチケットくれるって言って……」

晴「でもオトコとオンナじゃ問題あるって言われたから、単なる友達だって証明すればいいってことになったんだよ」

志狼「そうだったそうだった。で、どう?」

直央「えっ、どうって?」

志狼「オレ達の関係ってセーフか?」

梨沙「セーフなんじゃないの~? なんか男同士の友達っぽいしね」ケラケラ

晴「ちぇっ……自分がオトコっぽいなんてわかってるっての。志狼の前でわざわざ言うなよ……」

千枝(あ、ちょっとすねてる。ふふっ、男子の前で男っぽいって言われちゃ傷つくよね。内面の方は十分女の子だよ、晴ちゃん)


志狼「よっしゃー! これで堂々とチケットもらえるな! へっへ~ん、ケチなありすなんかに頼む前に晴に言っときゃよかったぜ!」

ありす「なにを……! 私だって誠意を見せれば考えなくもなかったのに、あなたが――」


Prrrrr


晴「わり、電話だ……」

直央「?」


晴「あ、美嘉さん。――えっ、チケット? プロデューサーに頼むんじゃ…………あー、ムリだったのか? 人気すぎて品薄? 機材席とかねーの? あ、それは売るのか……」

梨沙「む?」

晴「オレの? イヤもうあげる相手今決まったとこで…………確かに約束したけど。あーわかってる! わかってる! オゴリの分の恩返しだろっ? 忘れてないって!」

志狼「ん?」

晴「ふー」ピッ





晴「志狼、わりぃ。先約があったこと忘れてたわ」




――――


―――――――




志狼「タチバナアリスサンお願いしますっ!! このとーりっ!!! どうか!! どうかひとつ!!」ドゲザー

ありす「ケチな私に頼むことないんじゃないんですか?」

志狼「だからケチって言ったことは謝ってんじゃんか!! しつこいヤツだなー!!」

ありす「しつこ……っ! 言ったそばから……!! 謝る態度ですかそれが!」


ギャーギャー!


千枝「ありすちゃん……」

直央「はわわ、またケンカの流れに……。しろうくん、落ち着いて! お願いするんでしょ?」


志狼「そうだ! レッスン帰りで疲れてんだろ? ほら飲むと体力が回復する不思議なゼリーやるよ!」バイタルゼリー

ありす「間に合ってます。こっちにだって飲むとスタミナが回復する不思議なドリンクがあるんです」スタミナドリンク

志狼「えーっとじゃあ、お前らんとこも総選挙やるだろ? その時ありすに入れてやるよ!」

ありす「別にあなたの票なんて……」

志狼「ひょう? あー! 思いだしたっ! そうだ!」

ありす「な、なんですか」

志狼「お前にとっておきの『カッコいいポーズ』を教えてやるよ! そしたらチケットくれるだろ?」

ありす「……かっこいい、ポーズ? ビジュアルの強化法ですか」

梨沙「へぇ~、どんなのよ?」


志狼「まずな、こうやって四つん這いになってよ、腰だけくいっと浮かせて……てのひらは爪を地面に立てるカンジ。それで視線はフテキにして……」

晴「なんかこれ……礼子さんがやってんの見たことあるぞ」

直央「し、しろうくん……まさか」


志狼「めひょーのポーズ!! どうだ超かっこよくね!? ありすもやれよ!! 似合うって!」

千枝(……! め、雌豹)

ありす「…………」




ありす「志狼くん」

志狼「あん?」


ありす「もう少し首を伸ばしてください」

志狼「こうか?」グッ



ありす「どうしてっ! 私にっ!! それが似合うと思ったんですか!!」ビシ! ビシ!! ビシ!!

志狼「うわああっ! チョップやめろぉ!!」





梨沙「きゃははははははっ!! あははははっ!!! ウケる!! おもしろいわ~あんたたちっ!!」

千枝「わ、笑い過ぎだよ……」


ありす「なんですか!? 私が雌豹のポーズしてるとこ想像したんですか!? セクハラで訴えますよ!! 最高裁まで争いますよ!!」

志狼「んだよー!! 人がせっかくとっておきのポーズ教えてやったのにー!!」

直央「ごめんなさい……! あ、あの、しろうくんは本当にかっこいいと思ってやってるんです! けっして橘ありすさんが非清純派だとかそういう含みを持たせたワケでは……!」

千枝(直央くんも大変だ……がんばって)


――


ありす「はーっ、はーっ…………」

志狼「ふーっ」

ありす「ん……は…………ぁ……っ」

志狼「……大丈夫かよ」

ありす「え、ええ…………まったく、無駄に体力を消耗しました………」

志狼「早くチケット渡せばこんなことになんねーのに」

ありす「それが、お願いする立場の人が言うことですか……っ」


志狼「なぁ、関係ってのがやっぱ問題なのかよ?」

ありす「関係?」

志狼「お前が言ったんじゃん。チケット渡すと周りのヤツらが変な風にオレとありすの関係を想像するって。だから渡せないって」

ありす「え、ええ……」

志狼「オレらってどんな関係だっけ?」

ありす「どんなって……」


千枝「知り合い……ではあるよね?」

直央「アイドル仲間……かな」

梨沙「同じ名字繋がり。あ、姉弟ってのもありじゃない? きゃははっ」

晴「ケンカ友達ってとこじゃあねーか?」


志狼「なんか薄いっつーか、ろくでもない繋がりだな。今のままじゃダメか」

ありす「ダメって……諦めてしまうんですか」



志狼「いや、条件があるならいっこいっこクリアしてくしかねーよ。めんどくせーけど」

ありす「クリア?」

志狼「要は、チケット貰ってもいい関係性っつーのを作ればいいんだろ?」

ありす「まぁ……それが前提条件ですけれど」

志狼「うしっ! じゃあ、勉強しにいくか。お前もついてこいっ!」グイッ

ありす「ちょっ、ちょっと! どこにいくんですか! 急に手を取って!」

志狼「問題になってない関係ってのを作ってるヤツらのとこに行くんだよ! ありすにも勉強してもらうかんな!」



直央「あ、しろうくん!」

梨沙「おもしろそうね。着いてってあげるわ!」

千枝「なんか変な話になってきた様な……」

晴「本当にどーして、あいつらが絡むとこうなるんだろうな。ま、飽きねぇからいいか! 待てよー! オレらもいくぜっ!」



ありす「一体誰のところに行くんです? あてはあるんですか」

志狼「ある! 大丈夫!」

ありす「男同士とか、女同士の二人じゃダメなんですよ? 参考にしなきゃいけないのは、男女の」

志狼「わかってるって!」


――

――――



アスラン「アーハッハッハッハッ!! 闇に魅入られし瞳を持つ堕天使よ!! よくぞ来たっ!! その身に黒翼の洗礼を刻むがいいっ!!」

蘭子「深淵の魔王(サタン)からの御使いよ! 此度の歓待特に褒めてつかわす!! 蟲惑振り撒く聖贄を以て、共に闇月(エクリプス)の儀に至ろうぞ!!」

アスラン「然り!! 竜の翼の帳が下りし刻まで、存分に混沌を振るうとしようっ!! 我らが聖杯を掲げよ! 瞳を持つ者よ!!」

蘭子「エリクシールを体に満たし、然る後――――」


アスラン&蘭子「「杯を逆しまにっ!!」」


アスラン「闇の契りは一層深く、黒き輝きを得たっ!! サタンもその興趣の器が満たされつつあるわっ!!」

蘭子「瞳を持つ同輩よ!! 我が胸にサタンの映し身を抱く栄誉を与えたまえっ!!」

アスラン「…………っ!! ここは饗応の場っ!! ええいっ!! 同輩ならばっ、許そうではないか!!! 存分に瀆神的な悦びに浴するがいい!!」スッ

蘭子「おお! サタンよ久しいなッ!! 共に現世の覇権を奪おうと近い、轡を並べた神代の頃の風が蘇るわっ!!!」ギュッ








ありす「…………あれは参考にならないでしょう」

志狼「なんだよ。仲良くて、それで問題になってない関係だぜ、あれ。すげーヘンだけど」

ありす「ベクトルが明後日の方向だからですよ……それは」

梨沙「あの人ら収録が同じだったから打ち上げしてるだけよね? あのテンションと言葉遣いは何よ」

直央「あのキャラクター成りたちはお二人それぞれ違うみたいですけど、すごく合ってるんですよね……」

志狼「あーゆーふうにさ、『ノリが同じ』って感じでやればいいんじゃねえかな。だからさ、ちょっとありす真似してみようぜ」

ありす「はいっ!?」

中断
蘭子とアスランの干支は同じ

橘志狼「よーっし公園で自主練だ!」橘ありす「私たちが使う予定なんですけど」
橘志狼「よーしっ公園で自主練だ!」橘ありす「私たちが使う予定なんですけど」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1408347849/)
橘志狼「顔面セーフっ!!」橘ありす「アイドル的にはアウトですよ」
橘志狼「顔面セーフっ!!」橘ありす「アイドル的にはアウトですよ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1412725524/)

一応前スレ



神崎蘭子
http://i.imgur.com/GM5L1oO.jpg

アスラン=BBⅡ世
http://i.imgur.com/lSadfri.jpg


前の二回戦目のドッジボールは必殺技と天変地異と歪んだ物理法則が荒れ狂い、最終的にはコートが損傷しすぎたためノーゲームになりました





千枝「じゃあ、シーンスタート」


志狼「橘ありす? はははっ! アヤツはオレ様の同じ名字と言う印を持つもの! えーっと……言うなれば因縁の相手だ!」

ありす(ど、どうしてこんなことをするはめに…………大仰に、堅苦しそうに話せばいいんでしょうか)


ありす「――黎明の頃より我らは所縁なき二枚羽。そこに所以無き系譜を見出すのは無理からぬことだが、それは愚考でしかなく無益な止揚に過ぎまい」

志狼「えっ?」

ありす「同じ姓(かばね)を賜った者同士ではあるが、それは諧謔の弦を弾くものでしかない」

志狼「……よ、よって我らは、闇の力をもって闇を切り裂き、闇で争い合うのだっ!」

直央(噛み合ってない……ような)

ありす「我らに縁(えにし)があるとするならば、それは争いの、鉄火の軌跡であるべきだろう」

志狼「闇に消え、闇に飲まれるのはオマエか、オレ様か……決着をつける必要があるだろう。さあ、闇の力をいまこそ解き放つぞ!」


梨沙「ぎこちないわね。あんた、『闇』使い過ぎ。ボキャブラないわねー」

ありす「……そうですよ。せめて同レベルの言葉遣いをしていただかないと、『ノリが同じ関係』にはなりません」

梨沙「ってか、そっちもノリノリすぎでしょ。ボキャブラあんたは多すぎ」

ありす「え、そうですか」

志狼「慣れねーんだもん。こんなこと言ったことねーし」

直央「ほ、本読んで勉強したりしたらいいんじゃないかな……。僕、本選んで渡そうか?」

志狼「なお、読んで教えてくれよ……。オレ読んでもよくわかんねーし」

直央「う、うん。わかった」


晴「いきなりあんな喋り方しろっていってもムズいよな」

ありす「確かに。まだ私たちは『中二病』の発症時期になっていませんからね。年を重ねないとこればかりは感覚をつかむのが難しいかもしれません」

志狼「俺達には使えないか、あのスタイル」

梨沙「ま、あーゆう喋り方って趣味が高じてなるもんでしょ。オタク的に」

志狼「そうだな。ありすぐらいオタクにならないと真似もできねーな」

ありす「さらっと私をオタクにしないでくださいっ! 私はただあなたと違って読書をしてますから、語彙や知識があるだけですっ!」

梨沙「ま、勉強すればキャラ作れんじゃない? あの肩にぬいぐるみ乗せてた男もキャラ作りでやってるんでしょうしね。そうじゃなきゃ、いい年こいてキツいでしょ」

志狼「アスランいつもあんなだぜ」

梨沙「えっ、キャラじゃないの」

志狼「たまにサタンが無い時はオドオドしてっけど、それ以外はいつもあんな風だ」

梨沙「何歳なのよあの人」

直央「えっと……26歳だったはずです」

梨沙「えっ、マジ? それで中二病脱しきれてないワケ?」


ありす「…………」

千枝「…………」

晴「…………」



アスラン「むっ!? なにやら迷える仔羊の眼差しの気配! ……なっ、どうしたのだ! そこの幼き紡ぎ手達よ! なぜに我に憐れみの視線を向けているっ!?」

蘭子「あっ! これはこれは我が同胞達! この地に降り立っていたのだな! (あっ、みんな! どうしたの奇遇だね)」



ありす「すいません、打ち上げ中に。聞いてもいいですか? あなたどうしてそんなキャラを作ったままここまできてしまったんですか」

アスラン「な、な、なにを言っている!?」

千枝「あ、ありすちゃん! そんな風にダイレクトに聞いちゃうの良くないよっ」

志狼「オレもかっこいーとは思ってたけどよ、よく考えりゃそんな喋り方してる大人なかなかいねーよな。よく続けられんなー」

アスラン「つ、続ける? なにか勘違いをしているな童よ! 我はただ我の心のままに……」

直央「しろうくん、ダメだって! こういうのはもう少しデリケートにいかないとっ」

アスラン「き、気を回す必要などないっ! 我はこれがそう、もっとも純度が高い自己の顕現であって……っ!」

蘭子「ど、同輩! 叫ぶのだ! 己に刻まれし唄を!」ハラハラ

アスラン「我は、我なり! 深淵より生まれ出でし魔王の眷属、アスラン=ベルゼビュートⅡ世なりっ!!」

志狼「シンエンだったっけ? ゲヘナってとこで生まれたんじゃなかったのかよ?」

アスラン「同じ地を指すのだ!!」

ありす「ゲヘナ…………あっ、煉獄とか地獄って意味なんですね。タルタロスとも言うって書いてあります。元々はエルサレム市の近くにある廃棄物の集積地だそうです」タブレットスッスッ

志狼「えっ、外国のゴミ捨て場で生まれたってことか?」

直央「だから、蝿の王……ベルゼビュートなのかな」

アスラン「ち、違うっ! 我はこの現世ならざる漆黒世界より来たのだっ!! 煉獄の炎を越え! 超重闇を破り!」


志狼「なんのためにきたんだ? 観光?」

ありす「煉獄の炎と言うのは死者の罪を清めるものでは? 魔王の眷属なのにもう既に罪は清められている状態なんですか?」

アスラン「む、むむむ……!」

蘭子「同じ瞳を持つ者よ! ロゴスの鎧を纏うのだ! 致命の傷に至るぞ!!」

直央(あわわ……純粋と理詰めに弱いのに、それを二つとも相手にしなきゃいけないなんて)


蘭子「そうだ! サタンに我が魔力を乗せ――」ギュー!

蘭子「同輩! サタンの映し身をその肩に帰還させるぞ! 魔の力を満たすのだ!」ポスッ

梨沙「あ、ぬいぐるみまた肩に乗せた」


アスラン「…………アーハッハッハッハッ!! アーハッハッハッハ!!!!」

晴「うわっ! びっくりした!」

アスラン「マルコシアス! グレゴリー! 我がなぜこの地に降りたか、問いを投げるか!」

志狼「あん? オレ、マルコシアス?」

ありす「グレゴリーって私ですか」

アスラン「我はこの世の罪全てを着せられ肩に鎮座せし悲しき運命を背負う堕天使サタンに仕えし者!」

梨沙(ながっ)

アスラン「我がこの地に在り、アイドルを志したのは、飢えた子羊どもに我が糧を与え、肥やし続けるためだっ! アーッハッハッ!」

アスラン「これが! その計画を成すための黒き糧だ! 舌の上に乗せてみよ! 我が幼き同胞達よ!」スッ

志狼「おっ! うまそうなメシ! 食べていーのか?」


蘭子「存分に食するがいいっ! そして同輩が一皿の上に現せしめた幽玄なる世界をその眼に映すのだっ!」

千枝「この打ち上げの料理アスランさんが作ったんだ……」

晴「そーいや、レッスンしてなんか食べたいなって思ってたとこなんだよな。このパスタ貰うよ」

ありす「パスタを食べたい時は……私だって作りますよ」

晴「お、おう。でも、たまには別なパスタも食ってみたいんだよ。どれどれ……」チュルッ

晴「――っ!?」ゾワッ

晴「……うっ、うまい!! 何だ……っこれ! 一口で、香りが口の中に広がって……スパイスが弾けて、凝縮されたうまみが、二段階にっ……!!!」

志狼「このパエリヤもうめーっ!」ガツガツ

梨沙「ウソそんなにっ? あ、あたしにも一口よこなさいよ」

アスラン「アーハッハッ!! 感謝を捧げよ仔羊達よ! しばし時を塗り潰しているがいいっ! 我が腕が織り成す魅惑の世界をさらにご覧に入れようっ!!」

蘭子「瞳を持つ同輩よ! 私も黒翼の導きに従おうっ!!(お料理、私も手伝いますっ!)」タタッ


……


…………



――やみのまーっ!!(お疲れさまでしたー&ごちそうさまーっ!)


志狼「あー食った食った! うまかったなー!」

ありす「なかなかやりますよね、あの人」

直央「僕達までごちそうになっちゃって、良かったのかなぁ」

千枝「うん、いきなり来ちゃったのにね……」

梨沙「けふっ。良いに決まってんでしょ~? すごい嬉しそうだったじゃない。私たちは食べ物を美味しく食べてるだけで価値があるのよ」

志狼「ふーっ、やっぱあの二人で正解だったな」

ありす「ええ」

晴「あれ……?」


ありす「…………って、正解じゃないでしょう。そもそも関係性を参考にするために来たんですよ、私たちは。忘れてどうするんです」


志狼「わ、忘れたわけじゃねーよ! 勉強になったし!」

ありす「カロリーの他になにを得たんですか私たちは」

志狼「やみのま……」

千枝「え?」

志狼「やみのまって言葉覚えたから。とりあえず、オレらが会った時は『やみのま!』って挨拶するようにしようぜ。まずはこれから始めよう」

直央「やみのまの絆……?」

ありす「……それで私たちの関係がどう変わるというんですか」

志狼「やっぱダメ? これじゃチケット渡すの無理か?」

ありす「無理ですっ!」

志狼「ちぇっ! しょうがねーなぁ、次行くぞ!」グイッ!

ありす「あっ、またっ引っぱって……!!」

晴「今度は誰のところだ?」

――

――――

音葉「これ……前お貸しいただいたツィメルマンのライブ音源のCDです」

圭「ああ、どうだった? 君の世界を揺らせた?」

音葉「白眉は……やはり、バラード第四番ですね。凄まじく技巧的でありながら……それでいて聖性に満ちていて……」

圭「激しく、かつ理性的。抑制の効いたパッセージの中に、激情とそれを抑える手綱が見え隠れしてる」

音葉「そうです……まさに。細部への敬意を忘れない精微な指運びが目に見えるようでした……」

圭「僕もそうだったよ」

音葉「また、貸して下さいますか……?」

圭「君の気が向いた時に、いつでも。あっ、僕約束忘れちゃうからねぇ、その時また頼んでね」

音葉「ふふっ、わかりました」

圭「あ、ピアノのAis(アイス)に変わったね」

音葉「えっ? ――ああ、足音ですね……?」

圭「うん、さっきまではG(ゲー)だった。足取り、軽くなってる」

音葉「ふふっ、浮足立っていると悟られてしまいましたね。……その耳が、あなたにヒトの心を見せるのですね……」

圭「あはは、そこまでは無理だよ。僕はただ、音を捉えるだけ、音域の跳躍を気にするだけ……」

音葉「そこに、感情の風紋を見出すだけ……私がやっていることと同じです……」


都築圭
http://i.imgur.com/ch0RpDm.jpg

梅木音葉
http://i.imgur.com/tTNrXoZ.jpg?1


ありす「…………」

千枝「はーっ……」

晴「……」

志狼「どう? あれ」

ありす「断言します。あの関係は無理です」

主食が水の都築さんじゃないですか


ありす「あれは『同志』って言うんでしょうか。きっと同じ領域で生きていないと作れない関係です……」

志狼「アスらん子のわけわかんなさとはまた違うよな」

ありす「確かにあの人達は互いのチケットを渡しても、音楽的興味が理由になるでしょうが……」

志狼「えっ、そーいう理由ならいいのか? じゃあそれで……」

ありす「あなたが音楽的興味とかいう人ですか」

志狼「ダメなのかよ。あーもー、ありす、めんどくせーなー!」

ありす「なっ! めんどくさいのはあなたでしょう! 人を勝手に付き合わせているくせに! 大体さっきから呼び方がありすに戻ってますよ!」

志狼「わかったわかった、『ありすお姉ちゃん』。これからもオレのミス見つけたら注意してくれよ」

ありす「お、お姉ちゃん……!?」

梨沙「きゃははっ、もう『橘姉弟』にしとけば? 関係性っていうのを」

ありす「はぁ? 誰がこんな落ち着きもなく、教養もなく、知性もない人と……!」

志狼「あぁ!? ボロクソに言ってくれるじゃねーか! オレだって兄弟になるなら晴の方がよっぽどいいっての!」

ありす「なにを言って……っ! 私だって、あなたよりは晴さんの方を家族に迎え入れたいですよ!」


晴「えっ! オレっ? なんでそこでオレが出てくるんだよ!? 関係ねーだろっ?」

梨沙「いきなりモテモテになってるじゃない。よかったわねー晴」

千枝「……三姉弟で歪な三角関係…………だ、ダメだよ晴ちゃん! どっちにするのかはっきりしないと! どっちもダメな関係だけど!!」

晴「うわっ!? 千枝までいきなりどーしたんだよ!?」

直央「み、みんな冷静に……!!」


音葉「あら、セクステットのソプラノが響いていると思えば……」

圭「やぁ、みんな。今日も元気だね」


志狼「あ、こんちは」

音葉「ふふっ、なにを話していたの? 仲よさそうね」

千枝「えーっと、理想的な家族構成について男の人と女の人の考えを戦わせていました」

音葉「それは……随分と、トーンが低そうな話題ね……」

直央「え、確かにそうなんだけど、なんか意味合いが違うような気が……」

梨沙「今、晴の親権がどっちにあるかで揉めてるわ」

圭「もうそんなに進んでるんだ」

晴「話をややこしくすんな! オレは結城家だっての!」

志狼「オレ達がきょーだいってことなら、問題なくチケット貰えるんだけどなー」

圭「うん? ごめん、話がちょっと見えないや」

ありす「男女が絡んでいたら、騒ぐ人がいるでしょう? それはアイドルにとって火種です。だから、説明する時に怪しまれない関係にしておこうと色々模索しているんですよ」

圭「ふぅん。君たちすごいなぁ。意識高いや」



音葉「あら、セクステットのソプラノが響いていると思えば……」

圭「やぁ、みんな。今日も元気だね」


志狼「あ、こんちは」

音葉「ふふっ、なにを話していたの? 仲よさそうね」

千枝「えーっと、理想的な家族構成について男の人と女の人の考えを戦わせていました」

音葉「それは……随分と、トーンが低そうな話題ね……」

直央「え、確かにそうなんだけど、なんか意味合いが違うような気が……」

梨沙「今、晴の親権がどっちにあるかで揉めてるわ」

圭「もうそんなに進んでるんだ」

晴「話をややこしくすんな! オレは結城家だっての!」

志狼「オレ達がきょーだいってことなら、問題なくチケット貰えるんだけどなー」

圭「うん? ごめん、話がちょっと見えないや」

ありす「男女が絡んでいたら、騒ぐ人がいるでしょう? それはアイドルにとって火種です。だから、説明する時に怪しまれない関係にしておこうと色々模索しているんですよ」

圭「ふぅん。君たちすごいなぁ。意識高いや」


志狼「んー」ジーッ

音葉「どうしたの……?」

圭「?」


志狼「なぁ、ちょっと二人で兄妹の役で演技してくんね? 参考にしてーんだ」

音葉「え……?」

ありす「確かに似通った雰囲気なので、私たちよりは設定がハマるかも……」

圭「音葉さんと僕で? 演技はあんまり得意じゃないんだけどな」

梨沙「待ちなさいよ。あんたたち橘コンビとこの二人じゃ、全然キャラ違うから演技してもらってもなにも得るもんないと思うけど?」

晴「片っぽはケンカばっかで、片っぽは音楽関係の同志だもんな。全然レベルが違うな」

志狼「なんだよっ! そこまでレベル低くねーよっ!!」

ありす「そうですっ! レベルが低いのは志狼くんの方だけです! 私は彼を正してるだけなんです!」

晴「いや、だからそーいうとこだろ?」


志狼「わかった…………こうなったらゼッタイこの二人からなんか掴んで帰ってやる」

直央「どうするの? 音楽用語でも勉強するの?」

志狼「うーん、そうだ! 二人がさ、オレらのレベルに合わせてくれれば参考になるところが見えてくるんじゃねーか?」

圭「ん、僕らは何をすればいいのかな?」

音葉「力になってはあげたいけれど……」


志狼「ああ、ちょっとケンカしてみてくれ」

直央「公約数がそれっ!?」


圭「ケンカ?」

音葉「新鮮ね……そこからどんな音が生まれ、拾い上げられるのか……」


・・

・・・・・

・・・・・・・・


――――ありがとうございましたーっ


圭「ばいばい、またね」

音葉「気をつけてね」







志狼「いやー、まぁ、あれだな」

ありす「ええ……せっかくケンカの演技をしていただきましたけれど、なんというか」

志狼「ああ、なんつーか」



ありす「結局全然参考になりませんでしたね」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

圭「まったく君という人はつまらない人間だね。ゲオルグの指揮みたいだ」

音葉「ではあなたは差し詰めフルトヴェングラーでしょうか。思いのままに生きていますからね。……あなたからみればそのようにつまらない風に見えるでしょうね」

圭「印象だけで語ってくれるなぁ。カーゲルの『フィナーレ』でも指揮して、もっと指揮について理解を深めたらどうかな?」

音葉「あなたも、『革命のための音楽』でもおやりになったらいかがでしょう。耳には自信があるのでしょう? ……それだけで生きてみては?」

圭「ヴェルデニコフかい君は? 天邪鬼で、いつも何かにつけて異を唱え、有無を言わせぬ口調で人の神経を逆なでして――」

音葉「彼ほど偏屈では無いと思いますが。しかし、天才ヴェルデニコフと言われることは私にとっては称賛にしかなりませんよ?」

圭「ははは、それもそうだね。僕もリヒテンって言われたら嬉しいだけだ」

音葉「ふふふ…………」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



志狼「あれ本当にケンカだったのかよ。意味わかんねーよ」

ありす「だから真似するの無理だっていったじゃないですか」

千枝「あの……チケット貰っても不自然じゃない関係っていうのを作ろうとしているのはわかるんだけど、人の真似よりも二人がどんな風に気を使うかの方が重要なんじゃないかな?」

志狼「あん? どういうこと?」

千枝「お互いに迷惑を掛けないな答え方を用意しておくってことだよ」


ありす「ですが、『単なる友達です』では疑う人が出てきますよ。本当は友達かどうかも怪しいんですが」

晴「でも『いっしょにシャトルランとドッジやった仲ですけど、友達じゃありません』じゃ意味わかんないだろ」

梨沙「そういや志狼は、手作り苺パスタも食べてんのよね。なかなか濃い関係よね」

千枝「濃い関係だけど、恋は……ないんだよね?」

志狼「なっ、なに言ってんだよ!! そう思われないためにこうして怪しまれない関係を作ろうとしてんのに!! ――あっ」

直央「どうしたの?」

志狼「すげー、オレ、やっぱ天才だな……」

梨沙「なによ? なんか思いついたの?」

志狼「要はぶっちぎっちまえばいいんだよ。変になんでもありませんとかごまかすから疑うヤツが出てくるんだよ」

晴「うん?」


志狼「疑われたらこう言えばいいんだよ。『ありすとはもう別れました』――――ってさ」

秋山隼人
http://i.imgur.com/7wfFjvd.jpg

多田李衣菜
http://i.imgur.com/0NXmSCm.jpg



隼人「へぇー、初めからロックなアイドルを目指してたんだ。じゃあギターも……」

李衣菜「うん、まぁ、弾くよ!」

隼人「う、うわー偶然! オレもギターやってるんだ!」

李衣菜「し、知ってるよ。『High×Joker』のギター担当なんだよね」

隼人「あ、そう? 知ってた? あははは…………えっと、ギターなに使ってるの? オレはストラト使ってるんだけど」

李衣菜「えーっとね! まってね! 思いだすから…………イエローサンバースト! イエローサンバースト、使ってる!」

隼人「ああ、ストラトでもあれ人気だよね!」

李衣菜「うん、ストラト、ストラト」

隼人「いやー、まさかあの李衣菜ちゃ……多田さんと会えるなんてなぁ」

李衣菜「私も、『High×Joker』はちょっとだけ気になってからさ、こうして話ができてうれしいよ」

隼人「うれしい……えっ!? それは……そういうこと!?」

李衣菜「えっ、なに? どうかしたっ?」

隼人「あ、いや、なんでもないよ!? オレは平常心だよ!?」

李衣菜「そう? ならいいんだけど」

隼人「えーっと、作詞もやるんだって?」

李衣菜「うん。やるよ! なんでもやってみないと進まないって思ってさ、始めたんだ」

輝光は出せたら出します
今回出さなくても、いつか書きたいです

李衣菜「聞いてくれた人にさ、何か熱いものが届けられたらいいなって思って」

隼人「うん。『フォー・ピース』の演奏も見たんだけどさ、すごいカッコ良かった。オレらも負けらんないなって思ったよ……オレの詞も誰かの心に届いてたらいいな」

李衣菜「届くよ、きっと。最初にそうしようって想いがあれば、きっと」

隼人「ありがとう。そう言われるとなんか力が湧いてくるよ」

李衣菜「うん。私もさ、色んな人に支えられてここにいるからさ。なつきちにはよく練習に付き合ってもらったし」

隼人「なつきち?」

李衣菜「私の友達。木村夏樹。ギターやってて、ロックでカッコいいんだ。最近はよくベースを練習してる」

隼人「奇遇だなー! オレらのベースも『ナツキ』なんだよーっ!」

李衣菜「あ、あの榊夏来ってイケメン君だね!」

隼人「う、うん、そう! ナツキ……かっこいいよな、うん……」

李衣菜「あれだねっ! いつか対バンできたらいいね! アイドルバンド同士で!」

隼人「えっ! そうだね、やってみたいな! みんなもきっと乗りたがるよ! はははっ、早くみんな来ないかなー!」

李衣菜「待ち合わせ場所、たまたま被るなんて、奇遇だったよね。あれかな? ロッカー同士は惹かれあうっていう」

隼人「そうかもね、はははっ」


隼人(ふーっ、オレ今大丈夫かなっ? 服とか髪、おかしくないかな。みんなが早く来てほしいような来てほしくないような、不思議な気分だー……)

李衣菜(ふぅ。ちゃんとバンドマン同士の会話はできてたよね……? 男の子と音楽についてこんなふうに話したことあんまりないから、ちょっと緊張するなぁ)



志狼「いたいたっ! おーい隼人にーちゃーん!!」タタタッ



隼人「あ、シロウじゃないか」

李衣菜「あれありすちゃんたちも。どうしたの?」


志狼「あのな、オレさ、今オンナの扱いを知らなきゃいけなくてさ、知ってそうな人に聞いて回ってるんだ」

隼人「えっ」

ありす「ちょうどよく李衣菜さんもいますね」

李衣菜「え、私も?」

直央「ご、ごめんなさい、いきなり……」

隼人「いや、それはいいんだけど、なんて言った? 女の扱い知りたいって?」

志狼「おう、そうだ! 教えてくれよ!」

隼人「それをなんでオレに聞こうと…………」

志狼「そりゃ高校生だからだよー」

隼人「高校生? それがどうして理由になるんだ」


志狼「えっ、高校生になったら普通に彼女くらいできるだろ?」

隼人「――がはっ!」グサァッ!!

ありす「李衣菜さんも告白されたことぐらいありますよね? 17年も生きてきたんですから」

李衣菜「ぐはぁっ!」グサァッ!!


志狼「どうした?」

隼人「…………オレハアイドルダカラ」

志狼「えっ?」

隼人「アイドルズットメザシテタカラ、アエテ、カノジョ、ツクラナカッタ」

志狼「へー、そうなんだ。やっぱみんなそういうの気ぃつけてんだな」

千枝「あ、あの大丈夫ですか? 声も目も……なんだかゾンビみたいですけど……」

ありす「李衣菜さんもそうですか? やっぱり告白は断っていたんですか」

李衣菜「あ、うん! そうそう! 私もね、気をつけてたよ!? 百人切りくらいしたかなっ。多い時は一秒間に20人振ってたねー!」

志狼「うおっ、すげーな!」

梨沙「李衣菜やるじゃない」

隼人(えっ、李衣菜ちゃんそうなの!?)

ありす「だから言ったでしょう。女子の方が大人びているんですから。主体は私で……」

志狼「いや、だから、それはレクチャー受けてから決めるって話だったろ!?」

志狼「なぁ、隼人にーちゃんは『彼女作れるけど、あえて作らなかった』んだよな。じゃあその気になればいつでも作れるんだよな!? モテるためにバンド始めたんだし」

隼人「い、いや、なんか誤解してるなっ! お、オレはそんな不純な動機で、は、始めたわけじゃないし……まぁ? 彼女はいつでも作れるとは思うよ? うん」

直央(無理してないかな……)

志狼「ほっ、良かったぜ。それなら教えてもらえる。じゃあ女子との――」

隼人(――まずい! この流れは女子との付き合い方を教えてくれとか聞かれてしまうっ! ど、どうしよ、オレ……)


志狼「別れ方を教えてくれ」


隼人「予想の上だった!」

――

ありす「では、別れ話を切り出すところからスタートしてください」


李衣菜「どうしてこんなこと……」

隼人「演技の練習だと思って乗り切ろう……」


志狼「隼人にーちゃん! 先制攻撃を仕掛けろー! こっちがフる側になるんだーっ!!」


隼人(こうなったらなんとなくでもやるしかない……!)

隼人「えっ……じゃ、じゃあ。――――李衣菜ちゃん、オレ達もう別れよう」

李衣菜「うっ……! 演技でもケッコウくる!」ズキッ

隼人「このままだとお互いダメになる気がするんだ……もっと良い相手を見つけた方がいい」

李衣菜「は、はい……」


ありす「押されてはダメですっ! そんな言葉、優しさに見せかけた自己満足でしかありませんっ!! こっちから願い下げだと意思表示するんですっ!」


李衣菜「うぇっ!? えっと……実はそういうところ、ワガママで付き合ってられなかったんだ……自分だけで完結してさ、幼稚だよ」

隼人「ぐぅっ!?」

李衣菜「思えば、ちょっとがっつき過ぎてて引いたよ。君こそもう少し大人になった方がいいじゃないかな」

隼人「なんだ、む、胸が……すごく痛いっ!!」


直央(すごいことさせちゃってる……ごめんなさい、二人とも)


千枝「これが別れ話かぁ……」ドキドキ

志狼「負けんなーっ! この際ダメなとこ指摘してやれっ!!」


隼人「え……オレもっと、おしとやかな子の方が好きなんだよね……ちょっと君、生き方ガサツだったよね」

李衣菜「がふっ」


ありす「自分のことを棚にあげた発言なんかに屈してはダメです! こっちだって反撃を!」


李衣菜「わ、私は耐えてきたよ……! 君の方こそ、全然デリカシー無かったよ! そういう子に好かれたいんなら、まず気遣いもできない低レベルな自分から脱しなよ!!」

隼人「ごほっ」



志狼「がんばれっ! 隼人兄ちゃん! 男の勝利のために!!」ワーワー!

ありす「気をしっかり持ってください李衣菜さん! 女性の威信にかけて!」ワーワー!




――――「なんで今さら言うの? その時言えばよかったじゃん」

――――「たまに服装が小学生だったよね。あれ恥ずかしかった」

――――「このまま続けても得るものがなにもないよ」

――――「音楽性の違いだね」



晴「すげー……これが言葉のボクシングか」


隼人「わ、別れ方? えーっと、えーっとな……」

志狼「無理か?」

ありす「経験ないんじゃないんですか」

隼人「な、なに言ってんだよー!?」

ありす「すいません、女性を捨てた経験がないように見えたので。志狼くん、やはり私があなたにフられるよりも、私があなたをフったことにする方がいいですね」

志狼「やだね! なんか負けた気分になるじゃねーか。お前がオレにフられろよっ」

ありす「こっちだって嫌ですっ! あなたが玉砕したという格好の方が絶対に自然です!」

千枝「も、揉めないで……」

梨沙「あー、もうこんな感じでめんどくさいからさ。お互いちょっとテクニックを披露してやってよ。それで男か女どっちがフる側か決めるから」

李衣菜「えっ、私もっ!?」

梨沙「百人切りしたんでしょ?」

李衣菜「えっ? あっ……」


隼人&李衣菜(見栄張るんじゃなかった……)


――

――――


ありす「な、中々白熱しましたね……勉強になりました」

志狼「痛み分けってとこかー。相手も強かったな」


隼人「」

李衣菜「」

直央「あわわ、二人とも生気の無い眼をしてくずおれちゃってる! だ、大丈夫ですかっ」


晴「まぁ、あの音楽コンビよりは参考になったんじゃないか」

ありす「ええ……」

志狼「ありがとな隼人にーちゃん」

ありす「ありがとうございました、李衣菜さん」

隼人「オウ、イイヨ――ぐふっ」ガクッ

李衣菜「コレグライ、ナンテコトナイヨ――かはっ」ガクッ

直央「わぁ!? 気を失っちゃったー!?」



春名「あ、あれ!? どーしたハヤト! なにがあった!?」

夏来「大丈夫……?」

夏樹「うわっ! だりーなんで失神してんだ!?」

未央「りーなっ! 誰に襲われたのっ? もしかしてそこの男子!?」


High×Joker
http://i.imgur.com/5wy9XoB.jpg

本田未央
http://i.imgur.com/PV5BL7i.jpg

木村夏樹
http://i.imgur.com/hMkbHUc.jpg



未央「あっ、キミらはっ! えーっと……はるなん、なつきん、あきやん、ふゆみん、しきわんだなっ!」

冬美「どうも」

四季「おーっ! 覚えやすいっすね! そのあだ名! メガクール! でもわん、よりもにゃんのほうがよりイケてないっすか?」

春名「おーい、ハヤト、大丈夫かー」ペシペシ

隼人「う、ぅぅ……ハルナか。オレ……もう、戦えない……ごめん……」

夏来「ハヤト…………最後に伝えること、ある?」

隼人「……えっと…………オレん家、今日の夕飯、から揚げだったんだよな…………食いたかった……なぁ」ガクゥ

四季「ハヤトッちー! 目を開けるっす!! から揚げをっ! メガクールで、メガホットなから揚げを食わずに終わっていいんすかーっ!」

夏来「ハヤト……安らかに」

夏樹「いや、勢いで殺してやるなよ」

未央「ありすちゃんたち、この二人になにがあったの?」


ありす「えっと、縁を切る時どうすればいいかを指南して頂くために、演技形式で実演をしてもらいまして――――」





未央「ふぅ~ん、なるへそ。それでダメージ負ったワケか」

梨沙「なんてことないって言ってたんだけどね」

夏樹「バカだな……見栄張りやがって」

李衣菜「み、見栄張ってないよっ。まぁ、ちょ~~っと胸が痛かったけど」

隼人「ご、ごめん……」

李衣菜「あ、いやこっちも」

未央「そんで、志狼くんとありすちゃんはもうこれで満足したの?」

志狼「ああっ、ばっちし! これで思いっきりありすをフれるぜっ!」

ありす「だから、違うって言ってるでしょう!! 私が、あなたをフるんですよっ!」


夏来「ねえ。フるとか、フらないとか……どうして別れる勉強なんてしてるの? 繋がりが消えちゃうのは……俺、寂しいと思うよ……?」


ありす「えっ」

直央「あの、これは違うんです。しろうくんがチケットを貰うための準備なんです」

志狼「ありすがさー、男にチケットあげるのは、アイドルとしてダメだって言うからさ。問題にならないような関係を勉強してんだよ」

旬「なんですかそれは……随分と迂遠ですね」


未央「だいじょーぶだよっ! ありすちゃん! なんか問題になったらみーんなでありすちゃんを守るからっ! 心配なくチケットあげていいよっ!」

ありす「え……? いや……違います。心配なくチケットをあげていいとか……ちょっとずれてます、それ。私は志狼くんにチケットあげたいわけじゃないんです」

千枝「ありすちゃん……」

梨沙「もうあげてもいいんじゃない? 志狼、チケット一枚でこんなにも必死になったんだしさ」

ありす「私達を引きずりまわしたのは……迷惑でしたよ」

晴「アスランの料理おいしそうに食べてたじゃないか」

ありす「それとこれとは話が別でしょうっ。大体この男子、人にものを頼む態度では」

志狼「お願いしますっ! チケットください!」ペコペコ

ありす「うっ……ひ、卑怯ですよ! そうだ……さっきの話に戻りますが、騒がれて説明しなきゃいけない時、私が『フる側』じゃないと――――」

志狼「ううっ! わかったよ! そうじゃないとチケットくれないっつーんなら、それでいいよっ!! オレをフればいいだろー! ボロ雑巾みたいに捨てればいいだろっ!!」

ありす「な……っ! ここに来て取り下げるんですか、あなたは! ず、ずるい……っ!!」


隼人「なんかさ、オレをフればいいって言葉、かっこよくないか? 男の美学っていうか、そういうの感じる。作詞の時使えるかも……」

旬「ハヤト……」

隼人「え、なにジュン、その目!」

旬「いえ。まぁ、インスピレーションは小学生から受けてもいいですよね……」


夏樹「チケットあげんの嫌なのか? 嫌なら断れよ」

ありす「嫌とか、そういうんじゃないんです……私は、アイドルとして……正しい振る舞いをしなきゃいけなくて」

旬「杞憂です。チケットあげただけでそうそう問題になりませんよ。もっと大人ならまだしも」

春名「そうだなー、オレらもライブする時はクラスメイトにチケット配りまくったもん。それで勘違いするヤツなんていなかったぜ?」

ありす「う、うぅぅ……」

千枝(ありすちゃん、関係が疑われるから渡せないって言ったからそれに縛られちゃってるんだ……。その理由が無くなって、今揺れてるんだね……)

梨沙「どうするのよ」

志狼「ありす――いや、ありすさん、お願いだ! チケットくれ! オレどーしても手に入れたいんだっ!!」

ありす「む、むむ……!」


未央「ふーっ、はい、みんなちょっとタンマっ!」パンパン


李衣菜「えっ?」

未央「重要な決断する時はさ、落ち着いて考えたいじゃん? ありすちゃん、こっちおいで。あっ、男子はそこで待機ね!」

ありす「あの、未央さん……?」


志狼「なんだなんだ」

四季「答え待ちっすね。こーゆう時男は、心でカクゴを決めて黙って待つっす!」


志狼「どうして、ありすオレにチケット渡してくれねーんだろ」

直央「うーん」

志狼「女心に詳しい隼人兄ちゃん、わかる?」

隼人「えっ!? またそういうこと聞くのか!?」

旬「ハヤトには荷が重い話題ですよ」

隼人「重くないっ! ぜんっぜん重くないよ!」

夏来「ハヤト…………俺達には見栄張らなくて、いい……」

隼人「うっ」

春名「もー少し、グッとくるお願いしたらいいかもなー」

志狼「え、グッとくるってどんなんだ?」


春名「ハヤト、こっちゃこい。質問に答えてやろうぜー」クイクイ

隼人「え、答えるって……なにするんだ」

春名「いいかっ、よく見とけよ? まず名前をよんで両肩を掴むっ!! ――ハヤトッ!!」ガシッ!!

隼人「わっ! ハルナ!?」

春名「そしたら相手の目を凝視! 穴が空くほど凝視!! 目を逸らされようがひたすら凝視ッ!!」ジーッ!!

隼人「そ、そんな見つめんな……よ……っ」

春名「そんでぐいっと相手の頭を引き寄せてっ! 耳元で低く落ち着いた声で囁く! ――――なぁ、ハヤト……お前にしかできないお願いしていいか?」ボソッ

隼人「な、なに……?」

春名「おととい、隼人の分のフレンチクルーラー、食べちまったの俺なんだ……許してくれ」

隼人「え……な、なんだよそれくらい……っ、き、気にしてないよ」


春名「こんな感じ」

志狼「なるほどーっ!!」

四季「ハヤトっちー、ちょっとチョロすぎっすね」

隼人「な、なんだよー! びっくりしたんだよー!」

旬(ハヤト、今日散々ですね)




・・・・・・





未央「で、志狼くんにチケットあげるの嫌なの?」

ありす「…………ですから、嫌とかそういう感情論ではなくてですね……」

未央「もうシンプルにいこうよ、嫌ならあげない、良かったらあげる」

ありす「……橘志狼って男子はですね、その……気に食わないんです」

夏樹「ふぅん?」

ありす「いつもからかうし、馬鹿にしてきますし、幼稚ですし、強引ですし、無知ですし、人の話を聞きませんし、何度言っても名前で呼んできますし……」

未央「うんうん」

ありす「公園を横取りしてきましたし、ボールをぶつけてきましたし……あの男子には迷惑を掛けられてばかりなんです。嫌いです、あんな人。チケットをあげるなんて……」


千枝「ありすちゃん……」

未央「そっか。あげないんだね」

ありす「そうですね……そう、なります……」

未央「じゃあさ、ひとつ聞いていい? ――チケット欲しいって言われた時どう思った?」

ありす「ど、どうって……?」

未央「嬉しかった?」

ありす「どうしてそんな質問をするんですか。……なにを企んでいるのかと思いましたよ」

未央「えーそれだけー? 良い気分にならなかった?」

ありす「っ!? それは……えっと、なるわけ……」

未央「いや、そういう気分になっていいんだって! 自然な気持ちだからそれ!」

ありす「え、自然、ですか?」

未央「うん。“ファン”の熱意に触れてうれしくなるのは、アイドルとして当たり前のことじゃん」

ありす「ファン……志狼くんが、ファンですか」

梨沙「そうね、言われてみればあんた意識高い割に、プロじゃないわね。ファンを選り好みしてるんだから。……まぁ、これアタシが言えるセリフじゃないか」

ありす「…………別に、選り好みしているわけではありません。ただ、橘志狼に因果応報を教えたいだけです。私に色んな迷惑を掛けておいて、今更、図々しいとは思いませんか?」

晴「…………」

梨沙「…………」

千枝「…………」

ありす「どうして黙るんです」


晴「いっしょになって騒いでた気がするんだけどな。まぁ、志狼を迷惑かける嫌なヤツって思ってるんならチケットあげんなよ。でも因果応報とか新しい理由出してくるのはちょっとフェアじゃねーな」

ありす「私は公正に考えてますっ」

梨沙「でも感情思いっきり乗せてない?」

千枝「あのねありすちゃん。私思うんだけど、志狼くんから尊敬してもらえれば、もうからかったりされなくなるんじゃないかな。……あの子ちょっとだけおバカさんだから天然でやる分はしょうがないけど」

ありす「…………尊敬、ですか?」

夏樹「だな、気にいらないヤツがいるならパフォーマンスで見返しな。アイドルなら、それが本道ってもんだ」

千枝「あんなに熱心にお願いしてきたんだよ。志狼くんはありすちゃんを頼ってきたの。そのこと、考えてあげてもいいんじゃないかな……ごめんね。でしゃばって」

ありす「いえ……」



ありす(私だって…………あの男子が見に来たいと言うのであれば、アイドルとして無下にはしませんよ……そうプロとして……)

ありす「……………………」



ありす「はぁ、しょうがありませんね。やれやれです」

李衣菜「うん?」


ありす「もう一回」

晴「あん?」

ありす「もう一回本当にチケットが欲しいのか確かめます。それでまだお願いしてくるなら……今回ばかりは折れてあげます。貸し一つですね」

千枝「ありすちゃん!」

未央「おおっ! そうかそうかっ! よーし、なら行こうっ!」



直央「あ、女の子たち戻ってきたね」

志狼「よーしっ! いくぜっ! 発進ーっ!!」ダダッ


ありす「なっ! なんでいきなり走ってきて――――」

志狼「橘ありす……さん!!」ガシーッ!

ありす「きゃっ!?」

志狼「お願いしますっ!! チケットくれ、いや、ください!!!」

ありす「ま、まず、手を離して下さい……!」


梨沙「うわっ、これ確かめるまでもないんじゃない?」

千枝「すごい勢い……」


志狼(えーっと、これからどうすんだっけ? そうだ耳元で叫ぶんだ)

志狼(よーし!)グググ

ありす「ちょっ! なんですかなんですか!? なんの準備ですか!?」


ありす「――わかりましたっ! わかりましたからっ!!」

志狼「……え?」

ありす「わかったって言ってるんです! 強引すぎですあなたはっ!! 強盗ですか! 映画の役で目覚めたんですかっ!」


夏来「手……離してあげて……」クイッ

志狼「あ、わりぃ、ありす……さん。でも、わかったって言ったのか?」

ありす「ええ。…………こほん、あなたのそのしつこさと熱意に免じて、チケット……あげると言ったんです」

志狼「えっ!! ほんと!?」

ありす「貸しですからね。いつか返してもらいますよ」

志狼「おう!! わかったっ!! やったーっ!! やっと手に入れたーっ!!」

晴「良かったな志狼」

直央「長い道のりだったね……」


ありす「チケット、財布に入れていたんです…………どうぞ。無くさないでくださいよ」スッ

志狼「おう! サンキュー!!」

ありす「破いたりしないでくださいよ」

志狼「分かってるって!!」

ありす「……ちゃんと、重みを理解してますか?」

志狼「してるっ!! 心配すんなっ!!」

ありす「そうですか……では、最後の注意です」


ありす「私たちのパフォーマンスを見て、腰を抜かさないでくださいよ」


志狼「心配ねーって! ライブ、オレが行くわけじゃねーから!!」


ありす「――――え?」

中断
明日辺りで終わらせられたらいいなぁ


ありす「…………………………どういうことですか」

千枝「志狼くん、ありすちゃん達のライブに行きたいからがんばってたんじゃ……」


志狼「ちがうちがう。ガッコウのクラスメイトに頼まれたのっ! オレ、ありすと知り合いだって言ったらさ、絶対ライブ行きたいからってよ」

ありす「…………なんですか、それ」

志狼「給食のプリンくれてよー。嬉しくてなんでもやってやるって言ったら、チケット欲しいから頼んでくれって」

直央「あっ……給食の時頼まれてたの、それだったの! 僕、てっきりしろうくんが橘ありすさんのライブに興味持ったんだと」

志狼「あれ? なおにも言ってなかったか?」

直央「うん。そういえば確かに、『チケット欲しい』とは言ってたけど『ライブに行きたい』とは言ってなかった……」

千枝「そんな……ありすちゃんのファンになったワケじゃなかったの?」

志狼「なっ! なんでオレがありすのファンなんだよっ!? そ、そんなワケねーだろっ!! やめろよそんな誤解!!」

梨沙「うわぁ……」

志狼「なんだよっ、みんなもしかしてオレがありすのダンスとか見たいためにがんばってたとか思ってたのかっ!? そんなワケないじゃん!!」

志狼「勘違いすんなよっ! オレはただチケット欲しかっただけだぜ!?」

志狼「やめろよなーっ! なんでオレが――――」

晴「志狼……もう、やめとけ。ありすが」

志狼「あん?」


ありす「……………」


志狼「どうしたありす、なに震えてんだ? バイタルゼリーやろうか? チケットのお礼に」


ありす「……………………………………このっっ、バカー――――ッッ!!!」


パシーンッ!!


志狼「ぶはっ!?」

李衣菜「ビンタッ!?」

志狼「な、なにすんだよっ!?」

ありす「うるさいっ! この橘・単細胞!! 私……は……! あなたが来ると思って…………っ! なのに……!!」

志狼「……おい、どうしたんだよ」

梨沙「んーまぁ、結果的にはサイテーなことしたわね、あんた」

志狼「はぁ!?」

千枝「ごめん……さすがにかばってあげられない……」

志狼「え」


ありす「もうあなたなんか知りませんっ!!」


未央「ちょっ!? ありすちゃんどこ行くの?」

ありす「帰りますっ!!!」

梨沙「あーあ……」

志狼「なんだよイミわかんねー!」

晴「志狼、オレお前に悪気なんてなかったなんてわかってるけどさ、今回のはちょっとよくねーと思う」

志狼「晴まで言うのかよ。オレ最初からチケット欲しいって言ってたじゃんか! それをあっちが勝手に勘違いして……」


春名「よーし志狼、言いたいことはあるだろうけど、ぐっと抑えとけー。男はあんまり女を責めるもんじゃないんだ」

志狼「むぐぐっ」

千枝「ありすちゃん、一人にできないよ……ごめん、ここで私たちも帰るね。ばいばい、今日は色々楽しかったです」

直央「うん、さようなら……ごめんね。迷惑かけちゃって。謝ります」

千枝「なおくんも色々大変だね……」

梨沙「それじゃ、またね」

志狼「ぷはっ……春名にーちゃん、はなしてくれ」

志狼「……オレ、悪いことしたか?」

梨沙「それは自分で考えなさいよね」

志狼「えー……」

晴「じゃあな、志狼」

志狼「あ、待ってくれ、晴」

晴「どした?」

志狼「あー……ライブ、がんばれよ。ぶっちぎりのパフォーマンスしろよな」

晴「おうっ、ありがとな。ありすにも伝えとくか?」

志狼「……んー、むむー、……ど、どっちでも、いいや」

晴「わかった。んじゃ、またな」

315プロ



道夫「橘志狼くん。それは君に非があるぞ」ズバァ

志狼「ええー!」


硲道夫
http://i.imgur.com/O2drw29.jpg


道夫「最初から順序立てて理由を説明していれば、無用の誤解を与えその少女を混乱させることもなかった。貴重なチケットの取引においてそのような説明不足があっては彼女が怒るのはもっともだ」

志狼「……だって、普通ライブオレが来るとは思わないだろ。早とちりしたんなら、あっちだって悪いじゃんか……」

道夫「それは君の勝手な判断だ。説明しなくても大丈夫だというのはただの怠惰だ。反省したまえ」

志狼「むー……」

次郎「ま、ま、はざまさん、そこらへんで」

志狼「説明しときゃよかったっていってもな……オレだって、ありすがあんな怒るんだったら説明してたよ」

道夫「……過去の過ちは悔いるのではなく、未来への糧にしたまえ。今君がしなくてはいけないことは謝ることだ」

志狼「謝る? 誤解させて悪かったってか?」

みのり「謝るなら、いっしょに花を贈ったらどうかな」

志狼「あ、みのりさん」
 
みのり「あの競争率の激しい『Mad Teen Party』のチケットを手に入れて突破者になったんだってね! 敬意を表するよ」

志狼「ああ、ま、なんとか手に入れたけど……ありす怒っちゃってよ。花贈って謝るのもオレのガラじゃねーしな」

みのり「そんなことないよ。花と果物はお祝いにも慰めにも使えるプレゼントなんだから。そうだ、ライブの会場にフラワースタンドを贈るのはどうだい?」


渡辺みのり
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山下次郎
http://i.imgur.com/JAyVHdg.jpg


志狼「花かー……ん~」

次郎「まあ、いっしょに高そーなアクセサリでも贈ってやったら機嫌治るんじゃないの~?」

道夫「山下くん。確かに誠意を見せるのは重要だが、それはいささか即物的すぎる。なにより子どもには不健全な提案だ。却下する」

次郎「冗談ですよう、はざまさん」

志狼「……」


――『私……は……! あなたが来ると思って…………っ! なのに……!!』


志狼「誠意を見せるかー。…………やっぱ、あれか」

志狼「オレもライブ行った方がいいのか」

みのり「はは、それができたらかっこいいね」



信玄「なんの話をしているんだ?」

英雄「志狼、先生たちに叱られてるのか? 謝るとかなんとかって……」

直央「あの、えっと……ちょっと色々ありまして。女の子を怒らせちゃったんです。で、志狼くん、その子が出てるライブに行けないかって」

英雄「謝るために?」

信玄「ほう……」


FRAME
http://i.imgur.com/FAq6CGw.jpg?1




志狼「やっぱムリか」

みのり「……そうだね、ちょっとむずかしいかもね。あのチケット人気だそうだから。素人が突っ込んだら危ないよ」

志狼「そっか。あーあ、こればっかりはどうしようねーな」

道夫「入手が困難なのか。しかし志狼君。大事なのは誠意を見せることだ。他の手段を取ることもできる」

志狼「うーん、なぁ、みんなあてはねーか?」

直央「そのライブのチケットすごく入手が難しいって言ってたよ……」

龍「へえ、レアなんだ。協力してあげたいけど運が悪い俺じゃあ手に入れられないだろうなぁ」

みのり「転売する野郎……おほん、転売する人もいるけど、騙しも多いしね。あっちの事務所も対応に苦慮してるんじゃないかな」

英雄「そういうやつがいるせいで本当に欲しい人に回らないのは許せねえな」


志狼「…………そうだよな。ムリだよないくらなんでも。ちょっと考える」


直央「しろうくん……」

次郎「ありゃりゃ、失望させちゃったかね。ま、大人だからってなんでもできるわけじゃないし、しょうがないよね」

信玄「……歯がゆいな。志狼が行きたいライブはなんていうんだ? 良かったら教えてくれ」

直央「えっ」

みのり「うーん……やるだけやってみるか」

――

――――

――――――
教室


女子「ありがとう志狼君! さすがっ! 私ありすちゃんと仁奈ちゃんが好きでねっ! ゼッタイ見たいと思ってたの!」

志狼「ああ、ラクショーだったぜっ」

女子「えへへ、今度プリンあげるから、チケットもまたもらえる」

志狼「もうかんべんしろよっ!」


直央(あ、志狼くんチケット渡してる)


志狼「そんで一応聞いとくけど、ちゃんと行けるんだろーな?」

女子「え?」

志狼「いや、予定が合わねーようだったら、またチケット他のヤツに回そうかなって思ってさ」

女子「そんなわけないじゃん! 絶対ライブ行くよ!」

志狼「だ、だよなー!」

――

志狼「うー、どうすっかなー……もうライブの日が近いぜ」

志狼「んー……やっぱ、あれか。代わりにロケ弁献上ぐらいしなきゃダメかぁ?」

志狼「くそ、なんでありすなんかのためにこんな悩まなきゃいけねーんだ。そこまでオレ悪いのかよー」



かのん「しーろうくんっ、どうしたの。ナヤミゴト?」ヒョコ

志狼「あ、かのん」


姫野かのん
http://i.imgur.com/NRijFQb.jpg


かのん「かのんでよかったらおはなし聞くよっ!」

志狼「そっか。んー、話しとくか。じゃあ……聞いてくれよー、実はさ――」



・・・

・・・・・



志狼「――――ってなことがあってよ。オレが悪いと思うか?」

かのん「わるくないとおもうっ!」

志狼「えっ? マジか!?」

かのん「うんっ! しろうくんは上手じゃなかっただけだもん。悪気はないまま、ありすちゃんにひどいことしちゃったんだよね?」

志狼「うっ、ひどいことってのは否定してくれないのかよ……」


かのん「うん。だって……ありすちゃんのキモチ、ぱきーんって割っちゃたんだもん。オトコノコのすることじゃないと思いま~す」

志狼「うっ! 男失格っ!?」グサッ

かのん「ありすちゃん、しろうくんにキタイしてたんだよ?」

志狼「あん、期待? あいつが、オレに?」

かのん「うん、しろうくんがくるって思ってココロで準備したと思う。ライブがんばってしろうくんをびっくりさせるぞー、みかえすぞーって!」

志狼「ああ、そういう勝負に燃える気持ちか」

かのん「そのキモチ、しろうくんうらぎっちゃったんだよ? 悪気もなくて、なんにも気がつかないまま」

志狼「うっ……くそっー、なるほどだ。オレもせっかく燃えたのに相手に無視されてたらムカつくわ」

かのん「はいっ、しろうくん、手を出してはんせーいっ」

志狼「反省しやっす」


かのん「で、どーするの?」

志狼「謝んなきゃダメかな……やっぱ。ライブに行けたらいいんだけどな」

かのん「あ、それグッドアイディア~♪ そうしたら?」

志狼「でもなー、チケットぜんっぜん手に入らねーんだよ」

かのん「そうなんだ」

志狼「あーあ、ホントに紙一枚なのに大騒ぎだぜ。こんなことになるなんてよ」

かのん「…………」

志狼「どうすっかな。こうなったらストーカーみたいで、すげーいやだけど出待ちってのやってみっか?」


かのん「チケット、かのんの、あげるよ」



志狼「は? だからチケットは手にいれんのムズいんだって……」

かのん「これでしょ? “フレッシュユートピア”。はいっ」スッ

志狼「え……うおおおぉぉぉっ!? チケットじゃん!! マジでッ!? どうしてかのんが持ってんの!?」

かのん「えへへ、もらったの」

志狼「オレにあげちゃっていいのかっ!?」

かのん「うん! その代わり、ちゃーんとありすちゃん達のキラキラしてるとこ見て、しっかりびっくりしてあげてねっ! それがオトコのセーイだよっ!」

志狼「お、おう! ありがとなかのん! お前ってヤツは、さすがオレの仲間だぜ!!」ギューッ!!

かのん「ふわわ~! ぎゅーっ、じゃなくて、もふってしてよぅ~!」


かのん「…………」

――――――――――――――――――――――――――――――――


市原仁奈
http://i.imgur.com/8helWRq.jpg


仁奈「あっ! 見つけやがりましたっ! 待ってくだせー」トテトテ

かのん「あれ~になちゃん? わっ、今日もすっごくかわいいカッコだねっ!」

仁奈「さすがお目がたけーですっ! でも、今日はもふらせにきたわけじゃねーのですよ」

かのん「ふぅん? じゃあ、なにかかのんに用があるのかなっ」

仁奈「そうでごぜーますっ! ソウルフレンドにチケットを渡しにきたのでごぜーますっ! ありがたく受け取りやがれですっ」スッ

かのん「わぁ……! ライブのチケット? かのんが貰っていいのっ? パパとかに来てもらわないの?」

仁奈「その日、仁奈のパパは海の向こうにいやがるので…………かまわねーのですっ」

かのん「そうなんだ。じゃあ、もらうねっ! ありがとうございまーすっ!」ペコリ

仁奈「くるしゅーない、でやがります」

かのん「ライブ楽しみだなぁ……えへへ、これからうさぎさんと遊びにいくところなんだけど、いっしょに行く?」

仁奈「行かいでかっ! でごぜーます! ウサギの気持ちになるですよっ」


――――――――――――――――――――――――――――――――



かのん(ごめんね、ごめんね、になちゃん……でもしろうくん困ってたから)

かのん「おわび、しなきゃね……」

――

――――

ライブ当日


会場・控室



モバP「みんなっついにこの日が来たな! 存分にやってこいっ!!」


「「「はいっ!」」」


みりあ「会場、なんかすっごく熱いね。まだ始まってないのに、ざわざわってしてるのが聞こえてくる」

晴「それだけ期待されてるってことか。へへっ、燃えるな」

梨沙「そうそう、観客どんな感じだったのよ?」

モバP「うん? もちろんいっぱいだったぞ!」

梨沙「違うって。大人の男で来てる人どれくらいいたのかって聞いてんのよ」

晴「まだ気にしてんのか……」

梨沙「心の準備のためよっ」

モバP「ん、ん~! 7、いや8……かな? ――梨沙! いいか! どんな状況でも真のアイドルは最高のパフォーマンスを発揮するもんだ!」

梨沙「なによいきなりっ? 志を今説かれても困るわよ――――ちょっ、待ちなさい。7とか8とかなによっ! もしかして8割ってこと!?」

モバP「大丈夫、みんな心は女子小学生みたいにきれいだから……。最前列の周りには、女の子のが多いし」


梨沙「ちょっともう! プロデューサーなんとかしなさいよ!」

モバP「無茶言うな。苛烈な生存競争を勝ち抜いてきたお客さんだぞ……」

ちひろ「梨沙ちゃん、あんまりプロデューサーさんに当たっちゃだめですよ。プロデューサーさん今回がんばったんですから。条例違反の転売屋を摘発したりもしましたし」

小春「え~っ、ほんとですか、すごいです~!」

千枝「やるじゃないのプロデューサー!」

モバP「はははっ、まぁこのくらいはな!」


ちひろ(まぁ、転売屋を特定して、告訴するまで段取りを組んで、行政処分までもっていったのは協力者のあの人達ですけどね……)

ちひろ(気持ちよくお金を払って気持ちよく見る! これが本道なのに転売なんて本当に腹が立ちますね、まったくもう)


千枝「大丈夫、ありすちゃん。緊張してない?」

ありす「あ、はい。大丈夫です。気遣っていただいてありがとうございます。あなたはシークレットゲストでしたね……」

千枝「うん、でも小学生の子ほとんど出てるから、ゼッタイばれちゃってるだろうけどね。えへへ」

ありす「それでも、ファンは喜んでくれますよ」

千枝「うん……あの」

ありす「なんですか?」

千枝「ううん、なんでもないよ」


千枝(やっぱり志狼くんのこと話題に出すのはやめておこう……ありすちゃん、きっと気にしてないフリするだろうし)


ありす「…………」

仁奈「…………」

ありす「あれ、どうしたんです? ずっと黙って」

仁奈「…………アイドルの気持ちになっているのでごぜーますよ」

ありす「アイドルの?」

仁奈「その通りでやがりますっ。仁奈、これから会場をどかんと盛り上げるために、最強のアイドルを自分に流し込んでセイシントウイツしてるのでごぜーますっ!」

ありす「……偉いですね。そうですよね。心を揺らしていてはいけませんよね……見習います」

仁奈「見にきやがってくれてるファンの野郎どものために、仁奈、今日は全力で駆けぬけるのです!!」


モバP「いいこと言うなッ仁奈! 梨沙も仁奈を見習えよ」

梨沙「なによもー! 手を抜くってアタシ言った!? 言ってないでしょ!」

晴「ははは、がんばろうな」


ありす(見に来なかったことを後悔するぐらい、すごいパフォーマンスをしてやる)

ありす「って、私、なにを考えてるんですか。もうあの人のことなんて気にしてないのに」

ありす「平常心で行きましょう。アイドルとしての仕事をしっかりとする――そのことだけ考えて」


モバP「そろそろ開演だっ!! みんな行くぞっ!」

龍崎薫「それじゃみんな円陣組もうっ!!」


集中している頭の片隅で、そんなことを考えて。



ありす「――――ピンチもサバイバルもクールに越えたい  ♪」

ありす(……ん?)



そこで瞳は、一人の少年を捉えた。




志狼「――」




ありす(…………………………えっ!! あれは)

ありす(志狼くん!?)



どうしてこんなところに。しかも前列のいい席だ。だからこんなに早く見つけることができた。


どうにかしてチケットを手に入れたというのか。


ライブに来るために…………


ありす(それが、あなたの誠意ですか。――驚かせたのはマイナス点ですが、まぁ…………)

ありす(努力は認めてあげましょう)フフッ

あ、↑投下ミスです。


――――



ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ――!!


歓声が会場に噴き上がった。

登場するアイドル達に向けられる熱気は、彼女たちを昂ぶらせ、いっそう感覚を鋭く研いでいく。


高らかなユニゾンが、ライブの開演を告げ――ここに少女達の宴が始まった。




   おーねがい   シンデレラ   ――――― ♪





ありす「夢は夢で終われない ――――♪」

梨沙「動き始めてる ――――♪」

千佳「輝く日のために ―――― !! ♪」



     Y  e  a  h   ー   !!!!!




ありす(すごい熱狂……この中に、彼からチケットを貰った人がいるんですか)


集中している頭の片隅で、そんなことを考えて。



ありす「――――ピンチもサバイバルもクールに越えたい  ♪」

ありす(……ん?)



そこで瞳は、一人の少年を捉えた。




志狼「――」




ありす(…………………………えっ!! あれは)

ありす(志狼くん!?)



どうしてこんなところに。

……しかも前列のいい席だ。だからこんなに早く見つけることができた。


どうにかしてチケットを手に入れたというのか。


ライブに来るために…………


ありす(それが、あなたの誠意ですか。――驚かせたのはマイナス点ですが、まぁ…………)

ありす(努力は認めてあげましょう)フフッ


晴(お、ありす……いい顔で笑ってるじゃん)




私にできること更新 ―― ♪


仁奈(ソウルフレンドはどこにいやがりますかねー?)

仁奈(えーっと、えーっと)

仁奈(見つからねーですよー)




仁奈(でも見つからなくても、精一杯歌えばいいのですよっ!!)




ニナチャーンッ!!




仁奈「?」




かのん「になちゃーんすっごくかわいいっ!! ふれーっふれーっ、ふぁいとっだよっ!!」ピョンピョン




仁奈(おおっ! 仁奈、もくひょーぶつを発見せりですよ!)


   私に出来ることだけを 重ねて ―――― ♪


            セーノ ハーイ ハーイ ハイ ハイ ハイ !!!!!



ありす(しかし、志狼くんはともかく……)



   魔法が解けないように   ―――― ♪


  ウオォー…ハイッ! ウオォー…ハイッ! ウオォー…ハイッ!  ウオォー…ハイッッ!!!!




ありす(なぜいっしょに信玄さん達もいるんですか…………?)




  リアルなスキル 巡るミラクル   ――信じてる  ♪



みのり「――――Hey!! Hey!! Hey!! Hey!!  \Woo/  信じてるっ!!!!  ♪!!」




信玄「す、すごいな……いろいろと」

道夫「 ――FuFuu!! FuFuu!! ……予習はやはり重要だな。コールを習得していなければ場を乱すところだった」

英雄「俺達が来るつもりはなかったのにな……」


みのり&道夫「  Fuwa!! Fuwa!! Fuwa!! Fuwa!!  」


志狼「ノリノリだな。……ちくしょー、ありす達やるなっ!」



ありす(なんですかアレ)

……


―――――――――――――――――――――――――


志狼「ふぃ~、チケット手に入れたし、とりあえずはやれやれだぜ」


信玄「ああ、志狼! 探したぞ――い、いや、奇遇だな。ああ、ちょうどよく偶然にも会えた、うむ」

志狼「なんだ、オレに何か用?」

信玄「いや、チケット欲しいって言っていたな。本当にたまたまなんだが……それ、手に入ってな。あげるから行ってきたらどうだ。これで男のケジメをつけてこい」スッ

志狼「えっ……?」

信玄「いや、大丈夫だ。姪がな、興味あったみたいなんで、くれたんだ。うむ。決して英雄達といっしょに悪徳業者を潰して、そのお礼で貰ったとかそういうんじゃない。気にするな。本当にたまたま手に入っただけだから」

志狼「え、いや」

信玄「ではな! 自分はレッスンの時間だ! 時間厳守はアイドルの基本っ」ダダッ


志狼「…………あ、行っちまった」

――――――――――――――――――――――――――


・・・・・・


――――――――――――――――――――――――――

みのり「ああ、いたいた。はいこれ」

志狼「えっ、これチケット!? なんで――」

みのり「花屋のお得意様からね、その筋の人がいてね……たまたま手に入ったんだ」

志狼「え。でも、いいよ……」

みのり「気にしないで。本当にたまたま手に入っただけだから」

みのり「――ずっと潰したいと思ってた転売ヤーのルートを撲滅するのは俺も悲願だったしね」ボソッ

みのり「それじゃねっ! サイリウム持っていくんだよ!」タタッ

志狼「あ、おいっ!」

――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――――

志狼「なんだよ、みんな。さりげなく渡してクールに去っていくなよ……」

次郎「あ、いたいた。しろうくん、はざまさんからお届けものだよー」

志狼「あん? 次郎センセ、この封筒なんだよ」

道夫「宿題だって言ってたよ」

志狼「げっ、宿題? やめてくれよ――――ってチケット入ってやがる!? またかよ!?」

次郎「メモが同封されてるねー」


――『志狼君。チケットを用立てることができたので君に贈る。しっかりと誠意を見せに行きなさい』

――『しかし、ライブの場に未成年が一人で行くのは好ましいとはいえないので、私も同伴することにした』

――『遠慮はいらない。このチケットはたまたま手に入ったものだ。気兼ねなく受け取ってほしい。それにこれは私の教育方針の実現のためでもある』


志狼「ホントに……みんなどうやって手に入れてんだよ」


志狼「こんなにチケット集まっちまったよー。どうすりゃいいんだ」ズラッ

次郎「うわぉ!? レアモノなんでしょ、それ? こんなにあるなら余ったのをオークションに出品すれば大儲け――――って、だめだよね。みんな怒るよね……」


志狼「とりあえず、みんなに返すか」

――――――――――――――――――――――――――


信玄「こんなことになるなら、向こうのプロデューサーさんに返しておけばよかったな……」

道夫「成程……アイドルの曲にはこのように合いの手を入れる隙間を入れることで……観客との一体感のフックが……」ブンセキ

英雄「しっかし、あんなちっちゃい子達のライブなのに、客は大人が多いんだな。幸いにも目立たずにすむな」


みのり「   \Woo!!/   Fu Fuu !!!!  」(サイリウム八刀流)


英雄「……大人しくしていれば、だけど」

>>126
訂正
道夫「宿題だって言ってたよ」  → 次郎「宿題だって言ってたよ」


みのり「ヘイ!! ヘイ!! ヘイ!! ヘイ!! ――どうしたのっ! ライブに来る人にも色々スタンスがあるのはわかるけど、オープニングはゼッタイ思いっきり叫んどくべきだと思うよ!!」

信玄「お、おう。そうか」

英雄「アンタ、なんかいつもとテンションが全然違うような……。こうか? へい、へい、へいっ」

みのり「もっとお腹の底から!!! 俺達の元気が出演者のパワーになるんだからっ!!」

信玄「よ、よし! 確かに、来たからには本気でやらねば失礼だな……!」




――――ときどき  落ち込んじゃって  逃げ出したくなったり ♪ 


みのり「   \ ダーッシュ / っっ!!!  」


――――チャンスも オーディションも 掴めなかったり ♪


道夫「  \ しゅん ……/ っ!」


――――そのとき 君の笑顔 私のパワーになって


英雄「  は……\ ハピハピ / っ!!」



――――もう一度  頑張れる勇気 くれるの ♪


信玄「   せ  ー  の  っ  !!!   は  ー  い!!!  は  ー  い!!!    は  い!!    は  い!!    は  い!!   は  いっっ!!!!   」



スゲエコエ・・・! キアイハイッテンナー!


英雄(うっ、一番目立っちまってる……! 来れなかった龍が今日ばかりは一番ラッキーかもしれねえ)



ありす「  誰もが シンデレラ   夢から今目覚めて ―― ♪」



志狼「…………」



ありす「  始まるよ 新たなストーリー 描いたら  ―― ♪」



志狼「あいつ……」



ありす「  掴もう! My Only Star  まだまだ遠くだけど ―― ♪」



志狼(歌、うまいんだな)



ありす「  光り降り注ぐ 明日へ向かうために ―――――― !! ♪」



      W   o   o   !!      F   u    F   u   u    !!



志狼「ふ、Fu Fuu ……!」

志狼(ありすめ……オレらだって負けねぇからなっ!!)


――

――――

控室


晴「おいっ! 気付いてたか? 志狼来てたぜ!」

梨沙「やっぱり!? アタシも気づいたわ。一際エネルギッシュなオトナ達がいたから、見てみたらその隣に志狼いるんだもん。びっくりしたわ」

千枝「えっ! 良かったねありすちゃん!」

ありす「なにがですか?」

千枝「え、だって志狼くん、きっと反省したからどうにかチケット手に入れて今日のライブに……」

ありす「ああ……あの男子ですね。そういえばあの人に迷惑を掛けられたこともありましたね。全然気にしていなかったので忘れていました」

千枝「そ、そうなんだ……」

ありす「そうですか来てたんですか。ふぅん」

千枝「もー……」

晴「もう許してやってもいいんじゃないか」

ありす「ですから、許すもなにも気にしてませんよ。というかあの男子に脳細胞の働きを向けてませんし」

梨沙「アンタ、そこまで言うの」

晴「……んー、でもよ、志狼びっくりしてたな」

ありす「?」


晴「オレ達のパフォーマンスにさ。オレのダンスに対抗心燃やしたかな?」

梨沙「いや~わかんないわよ? ライブ仕様のアタシに見蕩れたのかも」

千枝「そうだね。でも薫ちゃんの元気さとか、みりあちゃんの一生懸命な姿とかにびっくりしてたのかも知れないよ?」

ありす「…………私の歌にという可能性も、あるんじゃないでしょうか」

晴「……ん、そ、そうかも、な」

千枝「だよね。ありすちゃんの歌声きれいだもんね。きっとそうだよっ。ふふふっ!」

梨沙「かもねー」ニヤニヤ

ありす「な、なんですかっ、どうして笑ってるんです! ただ可能性を提示しただけでしょうっ!」


ありす「それに……びっくりさせられたのはこっちです。どうして信玄さん達まで来てるんですか……」

晴「ああ、それな。オレも……あれには驚いたぜ」

雪美「あ……やっぱりあれ……英雄たちだったの……」


ありす「もしかして嫌がらせで私の心を乱すために――」

晴「それはないって」

ありす「…………ですね、それはないですね」

ありす「志狼くんにそんな回りくどいことをやる知恵はないですからね。チケットを乞う時も私に直談判という単純ぶりでしたし」



ありす「本当に迷惑を掛けられました。ふ……、貸しはどんな風に返してもらいましょうか」


――

――――

――――――

翌日

315プロ


みのり「昨日は楽しかったね。久々にファンとして楽しめたよ」

信玄「う、うむ。得難い体験だった」

道夫「同意する。帰りのカラオケボックスで、研究の成果を確認することができ、非常に有意義な日だった」

みのり「ライブに行ったら帰りにカラオケに行くのは鉄板だからね」

英雄「……でも、流石に、ノドが…………アイドルとして、ノド枯らしちゃ、ダメなんじゃねえか……」

みのり「大丈夫? ノドに良いハーブティーでも入れようか?」

英雄「……アンタは何者なんだよ……」



志狼「いくぞっ、なお! かのん! レベル上げるぞっ!!」

直央「わわっ! どうしたのしろうくん? 今日はいつにもまして燃えてるね……」

志狼「オンナどもに負けてらんねーからなっ! ……歌、もっとうまくなんねーと……」

かのん「昨日のライブでシゲキ受けたんだね~!」

直央「そうなんだ。しろうくんにとっていい経験になったんだね」

かのん「うん、そうみたい。ふふっ、それにしても衣装みんなふわふわのふりふりのきらきらですっごくかわいかったなぁ~……。仁奈ちゃんにカンシャだよ~」

志狼「ほら、はやく行くぞ!!」



英雄「志狼もかのんも元気だな」

信玄「ああ、男の子はああじゃないとな」


英雄「あ、そろそろ向こうのプロデューサーが来る時間じゃないか。例の摘発の件の話で」

信玄「ああ……こちらとしてはチケットまで貰って、もう礼などいいんだがな」






モバP「それじゃ、お前達ちょっと待っててくれるか。昨日ライブで疲れてるところすまないな。すぐに送るから」

ありす「はい、わかりました」

晴「あれ、ここ……315プロダクションじゃねーか。どうして」

モバP「まぁちょっと色々あってな……それじゃ、行ってくる」





ありす「…………」

晴「…………」


晴「ヒマだな。ちょっと車の外に出てみるか」

ありす「まだ一分も経ってませんよ!? 外に出るなんて危ないですよ。もしも誘拐などされてしまったら、プロデューサーの責任に……」

晴「大丈夫だって」ガチャ

ありす「もう、晴さん――――」


志狼「あーっ! 晴とありすっ! こんなとこでなにしてんだ? せんにゅーそうさかっ!?」


晴「お、よう! 志狼!」

ありす「…………ほら、出くわしてしまったではないですか」

直央「あ、おはようございます」

かのん「おはようございまーすっ!」

ありす「あ、はい。おはようございます」


志狼「なんでここにいるんだよ?」

ありす「プロデューサーが送迎の途中で立ち寄っただけですよ」

志狼「ふーん、そうなのか」


ありす「………………」

志狼「…………」

ありす「…………」

志狼「…………」

ありす「なんですか、なんで黙って――」


志狼「ライブ、お疲れ」


ありす「え」

志狼「中々やるじゃねーか、おまえら。……オンナのライブなんてって思ってたけど、ケッコウすごくて驚いたぜ

ありす「……どうも」



志狼「悪かったよ。説明不足で、変な勘違いさせちまって……」

かのん「あ、しろうくん、えらいっ!」

直央「ちゃんと謝るなんて――しろうくん、成長してるんだね」


ありす「……もう、別にいいですよ」

志狼「そっか?」

ありす「こちらもビンタしてしまいましたし……すいませんでした」

志狼「あ、あんなヘロヘロビンタ、全然いたかねーよ! なめんなっ!」

ありす「へろへろ……っ!? 謝っているのにいちいち失礼な言い方をしないでくださいよっ」

志狼「え、だって全然きかなかったからよ。ヘロヘロって言われたくなかったらもうちょっと体鍛えろよ。昨日のダンスで一番力が無かったのもお前だったし」

ありす「…………っ! チケットの恩人に随分な言い草ですね。あなたには言われたくありませんよ。――音痴なクセに」

志狼「オンチ……っ!? な、なんでそれ」

ありす「そこの岡村さんが千枝さんに話したそうで、耳に入ってきたんですよ、たまたま」

志狼「う、こらーっ! なおー!!」

直央「ひゃあ!? ご、ごめんっ!」

ありす「人に当たる前に、歌を練習したらどうですか? まぁ、歌はテクニックも重要ですからね。頭を使うのであなたには難しいかもしれませんが」

志狼「言ってくれんじゃねぇか! 今から練習するとこなんだよ!」

晴「あーもう、なんでケンカになんだよいつも」


直央「でも、これがある意味不安定に安定してるんじゃないかな……」

晴「まぁ、そうかもなー」

かのん「あ、そうだ。はい、みのりさんから貰ったハーブティーのパックどうぞ~。ノドはだいじにしなきゃダメっ、だよっ!」

晴「おお、ありがとう。お礼に、こっちからも志狼経由でお菓子送るぜ」



ありす「ほら、練習しに行ったらどうですか? レッスンを重ねることでしか実力は上がりませんよ?」

志狼「うるせーなっ! わかってるよ!」

ありす「わかっていましたか。すいません。マンガの様なご都合主義な覚醒とかを信じていると思っていたので」

志狼「ありすっ……おまえなっ! 戦いの中で男は成長するんだからな! なめんなよ!?」

ありす「ということは平時は堕落していくんですね。レッスンを軽んじる人には負ける気がしませんね」

志狼「か、軽んじてねー! 練習するっつってるだろ! お前こそダンス磨いとけよ! この運動音痴!」

ありす「む……! あなたに言われるまでもありませんっ!」


直央「しろうくん、そこらへんで……」

晴「おーい、ありす。昨日ライブだったのにあんま大声出すなよ」


ありす「私に勝ちたかったらもっとレベルアップすることですねっ!!」

志狼「こっちのセリフだーっ!!」



完!

終わりっ! 読んでくれた人に感謝!
総選挙もふもふえん応援!

志狼はかのんに貰ったチケットは返してます
硲先生は志狼に贈ったのと、同伴用の二枚持ってました。まぁ、好きなように解釈してくれていいです

輝光出そうと思ったけど入れられなかった。ごめんね。次はどうしよ

乙です

前スレを貼っておきます。

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