【咲-saki- 短編SS】京太郎「喼急如律令!」まこ「極楽へ送ってやるけぇ!」 (409)

※※※※※※※※※※……Caution……※※※※※※※※※※※


スレを読む方への注意10箇条


1.このスレは京太郎を主人公とした『咲-saki-』の短編SS集

2.GS美神とのクロスオーバー要素 、誰得?

3.麻雀描写は少ない。原作で散々麻雀やってるからよくね?

4.ジャンルは不明。…ほのぼのシリアスラブストーリのギャグホラー風味?

5.流れ星が見れるくらいの低確率で安価があるかも?

6.まこさんは可愛い。異論は認めない

7.京まこは正義。異論がある奴はまとめて極楽に送ってあげる

8.かなりの設定改変。一部のキャラがネタキャラ化

9.投げっ放し、フラグの置き去り注意

10.基本超遅筆。>>1にネタが降ってきて>>1が書きたい時に書く。のんびり更新を待ってください





以上のことが許容できない方はそっ閉じ推奨


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【長野県○○市廃工場跡 201○.Feb.19 AM 1:30】


亡霊『オオォォォォオオオォォォォ……』

悪霊『クヤシヤ… クヤシヤ…』

地縛霊『ココハオレノコウジョウダ…!』




《時は二十一世紀。日本ではかつてバブルと呼ばれた時代に多くの土地が開発された》




まこ「勝手なことを吐かすの… 死んだ後まで世話を焼かすな」




《それまで異怪との住み分けのできていた社会構造が崩れ、経済発展とともにオカルト的なトラブルが頻発することとなる》




京太郎「死後をも縛るその無念… 理解は出来るけど、死んだら成仏するのが筋だろ」




《そんな社会に害をなす異怪に対処し、トラブルを解決する者たちがいる…》




京太郎「許してくれとは言わないさ… その未練を断ち切る!」




《人は彼らを…》




まこ「わしらが…」




《GS(ゴースト・スイーパー)と呼ぶ!》




京太郎「極楽に送ってやる!」
まこ 「極楽に送ってやるけぇの!」

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            Report.1;ヨモツヒラサカノボレ
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数体の悪霊が一直線にビクトリアンスタイルのメイド服に身を包んだまこに突撃する。

まこ「吸引!!」

呪符を拡げ、声に言霊を載せると悪霊が吸魔護符に吸い込まれていった。

使い終わった護符を丁寧に折りたたみ、ライターで火をつけて燃やす。

空に立ち上る煙を優しく見守る。魂が無事に新たな輪廻に入ることを祈って。

京太郎「まこ、そっちは終わった?」

まこ「おお、終わったぞ。そっちはどうじゃ?」

火が護符を燃やし尽くした直後、自衛隊払い下げの迷彩戦闘服を着た京太郎が声を掛ける。

少し離れた場所でまこと同じ作業をしていたが、手早く終わらせたので様子を見に来たのだった。

須賀京太郎(茅野中学3年;15才)、清澄高校1年染谷まこ(清澄高校1年;16才)。二人共10代で『GS免許』を保有する逸材である。

正式名称『対心霊現象特殊作業免許』、通称『GS免許』は国家資格であり、新規取得者の枠が年間32人しかない超難関の資格。

平均取得年齢は25才前後。その為、国内の資格保有者は2000人を超えず、現役の有資格者については1000人前後という状況だ。

有資格者が少数精鋭のため資格自体の信頼性はとてつもなく高い。

一方で社会の基礎が科学に置かれてるため、オカルトを信じていない者の中にはGSを「詐欺師」と同一視する人もいるのだが…。

まこ「じゃあ、帰るかの。はよ側車に乗りんさい」

帰る準備をし、まこは愛車のOD色に塗られたKLX250に跨る。京太郎は取り付けてある側車に乗った。

片側二車線の県道を60kmでゆったりと風を切りながら走るまこ。そんなまこに京太郎が声を掛ける。

京太郎「俺も運転できればいいんだけど…」

まこ「ははは、一年後は免許取れるじゃろ。取ったらそっちに乗せてもらうけえの、楽しみにしとるぞ」

そんなこんなで話しながらバイクを走らせてるうちに京太郎の家に着く。

側車から降りた京太郎は夜食を食べていかないかとまこを誘う。

まこ「いいのか? こんな時間に」

京太郎「大丈夫だろ、親も歓迎するっていつも言ってるしな」

お誘いを了承するまこ、2人は「ただいま~」っといって須賀家の玄関をくぐる。

京太郎が両親にまこも一緒に夜食を食べる旨を告げると、父母ともに嬉しそうに表情を崩す。

母親が台所から料理をとってきた。その量およそ5人前。

どうやらまこが夜食を食べていくのは京太郎の両親にとって確定された未来だったようだ。

まこ「う~ん、やっぱり美味い♪」

京子(京太郎の母親)「あら、そう言ってもらえると嬉しいわね♪」

文太郎(京太郎の父親)「まこちゃん遠慮せずにね。ところで京太郎、今日は幾らぐらいの仕事だったんだ?」

京太郎「2500万の仕事だよ、父さん」

京子「あら、それじゃ企業依頼のCランク?」

文太郎「ははは、そうか。お疲れ様だったな二人共。よし、労いの酒だ、京太郎、飲め」

京太郎「…まだ、中学生だぞ…」

中学生の息子に何の躊躇いもなく酒を飲ませようとする父親。それに呆れる京太郎だったが母親が宥めに入る。

京子「それだけお父さん嬉しいのよ。そうだ、まこちゃん。凄くいい縞ホッケ有るんだけど、食べる?」

まこ「た、食べたい!!」ピョコン

京太郎「まこ、猫耳と尻尾出てるぞ… 興奮しすぎ…」

まこ「えっ!!!???」

京子・文太郎「ははは!」


夜食を食べ終わってお茶を飲んで一服し、まこは自宅に帰るためにKLX250に跨る。京太郎は見送りに出てきていた。

京太郎「まこ、お疲れ様」

まこ「おう、お疲れさん」

まこ「そういえば京太郎、わりゃ清澄受けるんか?」

京太郎「うん、そのつもり」

まこ「頑張りんさい、ちょっとコッチに寄ってきてくれんか?」

そう言われてまこに近寄る京太郎、まこは彼の頭に手を回しキスをする。

まこ「えへへ/// それじゃ、お休み!」

京太郎「あ、ああ…/// お休み///」

まこはバイクのアクセルを目一杯噴かすと、エンジン音を残して夜の道路を走り去っていった。

時は流れて3月の上旬。清澄高校の正面玄関では合格発表が行われていた。

京太郎「よし! 受かった!!」

合格者番号に自分の受験番号が載っていることを確認した京太郎はガッツポーズをする。そんな京太郎に声を掛ける小柄な少女。

咲「私、受かったよ! 京ちゃんはどうだった!?」

京太郎「おう、咲か! 俺も受かったぞ!」

咲「ホント!? よかった~」

京太郎と咲が話している場所から少し離れたところで二人の少女が会話をしている。

優希「のどちゃん! 二人一緒に受かってよかったじょ!! まぁ、この天才優希ちゃんが落ちるなんて万が一にも無いんだけどな!」

和「もう、ゆーきったら… でも本当に良かったです。これからもよろしくお願いします、ゆーき」

優希「こちらこそよろしくお願いするじぇ! のどちゃん」

こうして、清澄高校に4人の少年少女が入学することが決まった。役者は揃い、物語は加速していく。

【同じ頃・奈良県吉野】

奈良県の阿知賀と呼ばれる地区にある庚申堂の分社、そこにジャージの高鴨穏乃が駆け込んできた。

穏乃は手に持っていたサルを型どった手のひらサイズの人形を本殿の前に供えて手を合わせて拝む。

穏乃「庚申さん。それじゃ、お役目に行ってきます」

そう言って、持ってきた人形を再び手にとって駆け出していった。

その後、山を駆け回り阿知賀に続く旧道にある道祖神や地蔵尊に異常がないか見て回る穏乃。

それらの道祖神や地蔵尊は阿知賀に禍が入らないようにするための結界の役割も持っていた。

穏乃「後は… あそこだけか… あそこの雰囲気嫌なんだよな~…」

そう言いながらさらに山の奥を目指して進んでいく。着いたところは小さな社、穏乃は慣れた手つきで10分ほどでそのお社をきれいにする。

そして、お社の奥の茂みに入っていった。茂みを抜けたところはそこそこの広さを持った広場になっていて真ん中に結果石が置いてある。

何回も来ている場所であるが、穏乃は背筋に走る悪寒を感じていた。

穏乃「…やっぱりここは気味が悪いね…」

そう言いつつ異常がないか確認していく。確認が終わると直ぐにその場を後にした。

その後、見晴らしのいい山頂でお弁当を食べる穏乃。

穏乃「やっぱり山で食べるご飯って美味しいよね~♪」

高鴨穏乃、阿知賀の守護結界を保守する役目を担う結界守の少女である。

【鹿児島・永水】

3月は全国的にまだ肌寒い季節であるが、ここ南国の鹿児島はポカポカといい陽気であった。

霞「いいお天気ね~…」

小蒔「…zzz……」

春「…………………」ポリポリ

三人が軒で日向ぼっこをしているところへ巴がお茶を運んできた。

巴「お茶を煎れましたけど飲みます?」

春「…飲む」

霞「あら、ありがとう。ほら、小蒔ちゃん」

小蒔「…ハッ! いただきます!」

お茶を啜っているとそこに巫女服を着崩した小学生くらいの体型の初美がやってきた。

初美「私にもお茶ください!」

巴「はい、どうぞ」

小蒔「今年はみんなで大会に出れるんですね」

春「うん…」

巴「そうだ、ハッちゃん。得意の方忌みで占ってよ」

初美「いいですよ~。大会の日程と会場の方角教えてください~」

巴が部屋から今年のインターハイの予定と会場を書いた書類を持ってくる。それをもとに初美が方忌みを始める。

霞「どう?」

初美「予選は大丈夫なのですよ~、でも…」

春「でも?」

初美「本戦の方は… 準々決勝の日にちょっとまずい結果が…」

巴「え゛っ…」

初美「まぁ、泊まる宿舎によっても結果は違ってきますし~。何よりもこんなのは当たるも八卦当たらぬも八卦なのですよ~」

霞「でも… 初美ちゃんの方忌みってかなり当たるし…」

初美「そんな事で結果を決めてかかるのは、勝負としてどうかと思うのですよ~」

小蒔「そうですね、どんなに運勢が悪くとも精一杯努力をしましょう。それが相手に対する敬意にもなりますし」



巴「やっぱり、ハッちゃんって凄いね。方忌みが出来るんだから、時代が時代なら陰陽師だよ」

初美「方忌みしか出来ない陰陽師っていうのもどうかと思いますが… 方忌みが出来るだけではGSには成れませんからね~」

春「…そうなの?」

初美「方忌みって除霊には物凄く不利なのですよ~」

小蒔「GSって凄く稼げるんですよね?」

霞「初美ちゃん凄いのに、残念よね~」

【岩手・宮守】

宮守の街の外れにある道祖神の祠。そこに髪をお団子にしてモノクルをかけた少女がいる。少女の名前は臼沢塞。宮森女子の麻雀部員である。

塞「道祖神… 塞の神(さえのかみ)か… フフッ、私の名前が入ってるんだよね」

塞「そういえば岐の神(ふなどのかみ)とも言うんだっけ… 『導きの神』の猿田彦命と同神だって言うし… ご利益あるかな?」

そう言って道祖神に手を合わせる塞。

塞(どうか私達、宮森女子麻雀部を全国に連れて行ってください。皆でたくさんの思い出を作りたいんです)

エイスリン「サエ、ドウシタノ?」

塞「神様にお祈りしてたんだ」

エイスリン「? カミサマ?」

塞(あっ、そうだ。エイスリンってクリスチャンだからよくわからないんだ…)

塞「後で教えてあげるよ。部室に行こう」

エイスリン「ウン! トコロデ、ナニオイノリシテタノ?」

塞「それは、ヒ・ミ・ツ」

エイスリン「サエノイジワル! オシエテ!」

そう言い合いながら学校へ向かって走る2人。2人は道祖神の社に小さく姿が透き通った猿が座って微笑みながら彼女達を見送った事に気付かなかった。




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                Report.1 closed
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【次回予告】

まこ「ふん、麻雀にそんな気持ちで挑んだんじゃ… 自業自得じゃな」

京太郎「結果に同情は出来ねえな」

自惚れによって失敗し、その結果に目を背ける。

目を背けることによって、道を踏み外す。

そんな失敗を犯す人間のなんと多いことか…

『Report.2;血に濡れた麻雀卓』

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【人物・用語解説】

〈須賀京太郎〉

清澄高校1年生、麻雀部所属。実家がスサノオの系譜の神主の家系、中学1年の時にGS試験に合格し現在は幼馴染兼恋人の染谷まことGS稼業に精を出す。

除霊スタイルは基本は古神道や呪符などだが有効とみなせばキリ○ト教式やイ○ラム式なども取り入れる柔軟な思考の持ち主。

除霊をする時は自衛隊から払い下げた迷彩戦闘服を着用。サブウエポンに神通棍、ヴァルターP38を装備。宮永咲とは中学以来の付き合いで親友ポジション。

まこのことは大切にしているが、スケベな性格でルックスやスタイルのいい女の子ついつい目がいってしまう。その度に嫉妬したまこに制裁を食らっている。



〈染谷まこ〉

清澄高校2年生、麻雀部所属。実家は代々陰陽師の家系で化猫を遠い祖先に持つ。体は完全に人間だが霊的に先祖返りを起こしており興奮すると猫耳と尻尾が出てくる、なお毛色は黒。

GS試験には中3の時に合格した。除霊スタイルは古神道と陰陽道のハイブリッド。

除霊をする時はビクトリアンスタイルのメイド服を着て竹箒を持つ。サブウエポンは神通棍、南部十四年式を装備。なお、須賀一家とは家族ぐるみの付き合い。

ヒーリングなども出来るが、霊的先祖返りのおかげで舌で舐めるという方法でしか効果を発揮しない。なので京太郎にしかかけた事がない。

[立ち姿は、め・○・り・○・と様の同人誌;喫○roof-○opのまこさんをイメージして頂ければ]



〈麻雀〉

ご存知、牌で役を作って相手から点棒をむしり取る競技。賭け麻雀も存在するがごく少数で、現在ではスポーツとしての競技人口が圧倒的大多数を占める。

競技の性質上オカルト能力を持っている競技者が圧倒的有利となるので公式戦では“クラシカルスタイル”と“フリースタイル”にスタイル分けがなされている。

統括団体は日本麻雀協会。なお、高校生以下の公式戦では予算・日程その他諸々の事情により“フリースタイル”のみの開催となっている。



〈クラシカルスタイル〉

能力を封じる結界の中で行われる麻雀。純粋な洞察力、経験、カン、運、技術が必要となり、能力保有者と無保有者間の有利不利は一切無い。

闘牌は地味であるが高度な戦略の遣り取りとなるので玄人好み。



〈フリースタイル〉

能力が使用可能な麻雀。能力保有者と無保有者間の有利不利の差がとてつもなく激しいが、闘牌がダイナミックになる傾向が強いので見応え充分である。

観戦者数はクラシカルスタイルよりも多い。

Report.1の投下は終了です。Report.2は二時以降に投下の予定です。

お楽しみに~

じゃあ、第二話投下します。

初夏の足音の聞こえ始める5月のある日、ここ清澄高校麻雀部の部室の扉が勢いよく開けられる。

京太郎「カモ連れてきたぞ~」

咲「カ、カモって…#」

部室に入ってきたのは京太郎と京太郎に無理やり連れてこられた咲。部屋に入るときの京太郎のあんまりな発言に咲は少しムッとする。

和「おや、先ほどの…」

京太郎「ん? 知り合いか?」

和の反応を疑問に思った京太郎は和に聞く。

和「ええ、先ほど川端で本を読んでいらしたのをお見かけして」

京太郎「なるほどね」

咲(き、気づかれてたんだ…)

川縁で和のことをガン見していたのを気づかれたかと思い少し顔を赤くする咲。そんな彼女に京太郎がヒソヒソ声で耳打ちをする。

京太郎「…咲と違ってデカイ胸だろ?」

咲「…ムッ#」


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            Report.2;血に濡れた麻雀卓
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ほのかに思いを寄せている男子からのご無体な言葉。しかも、自分がナイムネであることを気にしている咲にとっては許しがたい言葉であった。


ドカッッッ


京太郎「痛ぇ!」

咲「ふんっ!」

和「?」

思いっきり京太郎の足を踏んづける咲。痛がる京太郎。二人の間に何があったのか推し量れずに首をかしげる和。

そんな時に、もう一人の一年部員である片岡優希が入ってきた。その手に大好物のタコスを抱えハイテンションで。

場を仕切りなおした京太郎は和・優希に咲を、咲に和と勇気を紹介して4人で麻雀を打ち始めた。

優希「リーチだじぇ!!」

優希は自分の得意の東場で大きく稼ぐべく猛烈なスタートダッシュをかける。結果、満貫・跳満と大きくリードを奪う。

しかし、独走は許さないとばかりに和がすかさず優希から直撃を奪う。

和「させません。ロン、満貫です」

まだ麻雀を初めて1ヶ月程度の京太郎は技量では上級者たる和と優希には及ばない。

京太郎「う~ん… これかな…?」

しかし、GSとして磨かれた霊感を頼りに直撃を避けうまく和了を奪っていく。その麻雀の打ち筋は傍から見ると定石を無視したかなり不思議な感じのするものだった。

ほかの3人もその打ち筋に違和感を感じて首を傾げる。最も和はその実態を知っても「そんなオカルトありえません!」と一蹴するであろうが…。

そうして半荘が終了する。一位は和、二位は±0で咲、三位は優希そして四位は京太郎。最も、優希と京太郎の点数差は僅かに300点であったが。

そして、もうひと半荘対局する。結果は和・咲は先程と同様、しかし京太郎は大きな役を和了り、咲と同じ±0で三位で対局を終える。優希は一人沈みの四位に終わった。

京太郎「…しかし、咲の麻雀はパッとしないな…」

優希「点数計算は出来るみたいだけどな!」

和「…私からすれば須賀君の麻雀が不思議で仕方ないんですけど…」

和にとってはあそこまで定石を無視して打っているのにそこそこの点数を出している京太郎が不思議で仕方ないようだ。

京太郎「ほら、俺初心者だし… ビギナーズラックってやつだよ」

自分が初心者であることで追求を躱す京太郎。学校の友達には自信がGSであることを内緒にしているのだ。

京太郎が和の追求を躱し、そのまま3回目の対局を始める。4人が淡々と牌をツモって切っていく。そのうち外では雨が降り始めた。

優希「雨だじょ…」

優希がぽつりと呟く。その呟きが聞こえたのか、部室の奥のベッドで寝ていた竹井久が大声を出して飛び起きる。

久「ウソ!? 傘持ってきてないわ!!」

窓に走り寄って空を確認する久。そんな久を見て先が首をかしげる。

咲「生徒会長…?」

久「この学校では学生議会長だけどね。あなたが今日のゲスト?」

そう言って、久は簡単な自己紹介を済ませ咲の後ろで対局を見守る。

今回の対局も咲は±0で終了する。そして用事があるからといって部室を後にした。


久「そうかしら、圧倒的な実力差があったら? 彼女、意図的に±0にしてるかもね…」

咲の打ち筋について一年生3人があれこれ言っていると、久が口を開く。

それを聞いた和がいきなり走り出して部室を出て行く。心配になった優希が追いかけようとしたが久がそれを止める。

久「それじゃ、今日の部活はここまでにしましょう! それじゃ、各自解散!」

解散したあと京太郎は廊下で携帯を取り出す。周りに誰もいないことを確認し電話をかける。

京太郎「あっ、まこ? 依頼が入った。今夜家に来れる? うん、ブリーフィングをしたいから。ついでに夕飯も食べていく?」


降っていた雨も日が暮れる頃には上がり、雨上がり後の澄んだ空気が夜の空に満ちる。

ピンポーン♪

京太郎「いらっしゃい、まこ」

まこ「来たぞ、早速上がらしてもらうけぇ」

まこが京太郎の両親に挨拶をし、2人は京太郎の部屋に行く。そして、今回受けた依頼を確認する。

依頼書、状況報告書、除霊対象調査書など十数枚の書類をチェックしていく。

地味ではあるがGSはこの作業に2番目に時間を使う。事前調査の出来が生死を左右するからだ。

ちなみに1番時間を使うのは最後の報告書の作成だったりする…。

まこ「…フリー雀荘が中古で買った麻雀卓の使用中に意識がなくなる事件が頻発か… しかも心臓発作で1人死んどるとはな…」

京太郎「状況から見るに麻雀卓への物憑きだな… しかし、除霊対象調査書の内容があまりにも薄い… これじゃ何も調べてないのと同じだぞ…」

まこ「これじゃ除霊はできんの、危険すぎる」

京太郎「調査に二・三日当てるか…」

まこ「じゃあわしが調査するか、実家が雀荘をやっとるからそのルートが使えるはずじゃ」

京太郎「調査は頼むよ、俺は考えられるパターンでのプロトコルを組んでおくから」

まこ「頼んだぞ」

そうしてブリーフィングを終えた2人は、京子の用意した夕食を食べる。

途中まこがイタズラ心を起こし、京太郎にアーンをする。突然のことに顔を赤くし狼狽える京太郎。そんな彼を見て京子と文太郎はニヤニヤと表情を崩す。

平和な須賀家での団欒であった。


そうして三日が経つ。その間に咲が再び部室を訪れ、和、優希、まこと対局したり、その翌日には咲が入部したりと色々イベントが起こった。

まこの調査の結果と京太郎の組んだプロトコル、それらの検討を行うために再度ブリーフィングを行う。

今回はまこの家が会場だった。

まこ「…………………」

眉間に皺を寄せ明らかに不機嫌な様子のまこ。このままでは話が進まないので京太郎が調査の結果を促す。

まこ「すまんの、あんまりにも腹立たしいことが分かったけん」

京太郎「学校でも不機嫌そうだったもんな」

まこ「ああ、周りにはすまんことしたのぅ…」

そう言って頭を掻くまこ。脇に置いてあったファイルを取り出して調査の結果を話す。

まこ「取り敢えず麻雀卓に悪霊がついとるのは間違いない。しかし、この悪霊が問題じゃ」

まこ「現世への未練による悪霊化。憑いた麻雀卓を使用する者の意識を乗っ取て祟るなどの凶暴な行動。意識はややあるが意思疎通は不可能じゃな」

まこ「ラグクラフトランクはE-、際立って特殊な点はないので通常の除霊処置で十分と判断される」

まこ「しかし、こいつが悪霊になりよった理由が最悪じゃ!」

京太郎「一体どんな理由なんだ?」

憤るまこ、京太郎は話を促す。

まこ「…結構いい大学の学生でな、それまでの人生で失敗を犯しておらんかったんじゃ」

まこ「で、自分はなんでもできると過信したところで麻雀に出会った。仲間内での対局では連戦連勝、それで勘違いが酷くなった」

京太郎「…それで?」

まこ「いきなりヤクザの高レートの賭け麻雀に飛び込みよった」

京太郎「………結末が読めるなぁ……」

テンプレと言うか使い古された小説のような流れに、頭痛を感じて眉間を揉みほぐす京太郎。

まこ「結果は大負け。勝てると過信しとるから金も持っとらん。で、ナイフでグッサリ。その時血の一部が麻雀卓についてそれが媒質になったんじゃろうな」

京太郎「それまでの人生がなまじ順風満帆だったから未練タラタラ… その未練で悪霊化したか…」

京太郎「結果に同情は出来ねえな」

まこ「問題の麻雀卓じゃがしばらくヤクザどもが使っとったが… あまりにもヤバくなったので中古市場に放出しよったんじゃ」

京太郎「…全く… さっさと捨てろよな、ホント…」

溜息を吐く京太郎、釣られてまこも溜息をつく。

まこ「まぁ、今回は死人も出とるから警察からも除霊処置依頼が来よった」

京太郎「ってことは依頼料は行政と雀荘の折半か?」

まこ「…200万で9:1らしい」

京太郎「まぁ妥当なところか。じゃあ、このプランFで行こうか」

まこ「問題ないと思うぞ」

そうしておおよその方針が決まりブリーフィングを終了する。ちょうど夕飯時であったのでまこの両親が京太郎をご飯に誘う。

京太郎「じゃあ、ゴチになります」

即答する京太郎。実はまこの家でご飯をご馳走になるのはよくある事であった。


京太郎「うまい! 美味い!」

妃呂子(まこの母親)の作った料理を美味そうに京太郎は頬張る。そんな京太郎を見て妃呂子は嬉しそうにご飯のおかわりをよそう。

真司(まこの父親)「京くんは本当に美味そうに食べるな! 母さんも作り甲斐があるって言ってたぞ」

まこ「気持ちいいくらいの食いっぷりじゃからの~」

妃呂子「ふふっ、ところで今回のお仕事はうまくいきそうなの?」

まこ「まぁ、普通の除霊じゃからの。理由は腹が立つが、さっさと祓って輪廻に戻してやらんと哀れじゃからな」

京太郎「大丈夫ですよ、まこには傷ひとつ付けさせません」

まこ「うっ…/////」

京太郎の宣言を聞いて顔を赤くするまこ。

妃呂子「あらあら、これは…」

真司「はっはっは、京くん頼んだぞ!」

こうして和やかな雰囲気で染谷家での夕食はすすんでいった。


翌日、学校終わってから問題の麻雀卓が保管されている施設を訪れる。

麻雀卓は少し広めの部屋の真ん中に置かれていて、京太郎とまこは卓をしばらく観察した。

そして、除霊を開始するべくその場にいた雀荘と警察の関係者を部屋から退出させる。

ドアを閉め、悪霊が逃げ出さいよう卓を囲む形で結界を張っていく。

結界用の護符を使えば早いのだが、それなりに値段が張るので経費節約のため榊・塩・酒・水・しめ縄を使った。

結界の展開が完了したら京太郎が反閇で場を清め悪霊が力を出せないようにする。

まこ「……、…………………、……」

すべての準備が整い、まこが呪を唱え悪霊を麻雀卓から引っ張り出す。

悪霊『グォォォォォ…!』

京太郎「やっとお出ましか」

悪霊『ガァァァァァ…!!』

咆哮を上げまこに取り憑こうとする悪霊。まこは素早く印刀を結び呪を唱え撃退する。

まこ「存思の念、禍を禁ず!」

悪霊『ガァァァァァ…!!』

京太郎「…まったく猪みたいだな」

悪霊『グゥッ… ォォォォォオ…』

まこ「なんか言うとるぞ」

悪霊『オレハ… ナンデモデキル… カケニカッテカネモチニナルンダ…』

京太郎「……………………」

悪霊『ナノニ… ナノニナンデオレハシンダ…』

京太郎「…一応死んだって認識はあるか…」

まこ「ふん、麻雀にそんな気持ちで挑んだんじゃ… 自業自得じゃな」

まこ「執念が強すぎるな… 吸魔護符では対応できんぞ」

京太郎「なら、破魔札を使うさ」

そう言って脇の下に吊るしてあったホルダーから破魔札を抜き出す京太郎。その破魔札の包紙には『十万円』と書かれていた。

まこ「十万ものか… 報酬を考えると百万でも良いんじゃないかの?」

京太郎「まぁ、確かにそうだけど… 場もきちんと清めてあるしアイツの霊力からしたら五万でも十分だと思うぞ」

そう言って悪霊との距離を一気に詰める京太郎。悪霊が京太郎に気づいたときには破魔札を叩きつける瞬間であった。

京太郎「極楽に… 行きやがれ!」

叩きつけた瞬間、破魔札に封じられていた霊力が解放される。放たれた霊力は指向性爆弾の爆風のようになって悪霊に襲いかかった。

悪霊『グァァァァァァァァ!!!!』

破魔札の一撃を受けた悪霊はその衝撃に耐え切れずに消滅する。


悪霊の消滅を確認した2人は霊視ゴーグルで他に問題ないか確認をしていく。

もう問題はないとわかったので除霊完了の旨を担当者に告げ報酬を受け取り帰宅する。


まこ「無事に終わったの~」

京太郎「まぁ、あの程度の悪霊ならこんなもんだろ」

まこ「そうじゃの~ 京太郎…」

京太郎「ん? なに?」

チュッ

まこは京太郎の不意をうって唇にキスをする。

まこ「へへへ…」

京太郎「…本当、いきなりだよな…////」

まこ「今日、京太郎の部屋に行くからの!」

京太郎「本当にいきなりだな! おい!」

まこ「もう決めたからの♪」

京太郎「いや、だからちょっと待てって! 片付けてないんだよ!」



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                Report.2 closed
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【次回予告】

まこ「わりゃぁ! なんでこんなトコにおるんじゃ!!??」

京太郎「アベシーーー!!!」

風呂はリリンの生み出した文化の極み。

しかし、そこでは人には語られぬ戦いがある!

次回『Report.3;露天風呂狂騒曲』!

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【人物・用語解説】

〈宮永咲〉

京太郎の中学時代からの親友。普段はおとなしく本を読んでいる文学少女。しかし、雀卓につけば嶺上開花を連発する鬼ヅモ雀士に変身する。

京太郎にほのかな恋心を寄せている模様。


〈片岡優希〉

タコス大好きな清澄高校の女子高生雀士。東場の爆発力は凄まじの一言。和の中学時代からの親友。

事あるごとに京太郎に突っかかるがそれは好意の裏返し。


〈原村和〉

清澄高校麻雀部の一年生。冷静沈着なデジタル雀士でオカルト否定派、お化けなんか居ない。いや、お化けが怖いからオカルトを否定しているのかも。

京太郎とはいたって普通の友達である。


〈竹井久〉

清澄高校麻雀部の部長兼学生議会長。目的のために様々な策を練る策略家、麻雀のマナーはちょっと悪い。去年はまこと二人きりで麻雀部を支えた。

嫌な顔一つせず進んで雑用をこなしてくれる京太郎が気になるご様子。


〈吸魔護符〉

悪霊を吸い込む護符、GSがよく使う除霊具の一つである。使用法は符を広げ、言霊を乗せて「吸引」と発声する。大概の霊に使えるが未練の強すぎる霊には効果がない。

お値段は性能によって決まり5万円~500万円までバリエーションがある。


〈破魔札〉

悪霊に対して攻撃力のある霊力を封じた護符、悪霊にとっては爆弾のようなもの。使い方は叩きつける、投げつける、ブービートラップに使うなど汎用性に富む。

霊力の放出を抑える包紙に包まれており、その包み紙にお値段が書いてある。価格は5円~5000万円まで様々で、一部もっと高価格なものも存在する。

使用するときに向きを逆にして使うと霊力の爆発が自分を襲うハメになる、ちなみに初心者がよくやるミス。

もう1つおんなじスレあったけどあっちとおんなじ>>1

それじゃ、今日はここまでです。

また次回お会いしましょう。

感想などは大歓迎です!よろしくお願いします!

>>21

友達にタイトルがわかりづらいと言われ、またReport.1の手直しをしたので立て直しなんです。

ややこしいことしてスミマセンm(_ _)m

>>23
それならあっちはhtml化依頼出しといた方がいいでー
その前に誘導貼っとくかね

>>24
了解です!

ただhtml化依頼の仕方知らないので教えてもらえます?

>>25
ここのスレが依頼スレ。やり方は書いてあるやで

>>26-27

ありがとう!

それじゃ、誘導貼ってからhtml化依頼出しときます。

これからもこのスレをよろしく~

乙、
GSとクロスしてるけどGSキャラって出るの?
(出なくてもいいけど)
しかし、オカルトのある世界でオカルト否定って和……事件に巻き込まれて遭遇したらどうなるんだろう。
(後、GSで好きなキャラって誰?答えなくてもいいです。

>>31
チョイ役で出す予定

まぁ、GS美神でも白井院長とか居るしね…

ちなみにGSで好きなキャラは横島、おキヌちゃん、タマモやね。

皆さん、お待たせしました。

もう少ししたらReport.3の投下が出来ると思います。

お楽しみに~

ちなみに聞いておきたい。

京太郎を予選突破させて全国に出場させてもええかな?

ジュジュジュ……

優希「おおっ、ここか!?」

咲「こんなところに学校の施設があったんだ…」

和「でも、綺麗な施設ですね」


清澄高校から少し離れたところにある合宿所、そこに麻雀部の面々の姿があった。


久「使うのはほとんどが運動部ばっかりだからね」

京太郎「荷物、全部部屋に運びましたよ」

久「えっ!? ホント?」

京太郎「ええ」

久「ゴメン、須賀君… ありがとう」


そう言って微笑む久。


久(ほんと、須賀君に負担かけっぱなしね… 私達…)

まこ「京太郎、お疲れ。重かったじゃろ?」

京太郎「あっ、染谷先輩。大丈夫ですよ、あれくらい」


京太郎がそう言うと、ススッっと寄ってきてヒソヒソと話をするまこ。


まこ「…本当にすまんかったの…」ヒソヒソ

京太郎「まこ、だから大丈夫だって…」ヒソヒソ

まこ「帰ったらしっかりお礼するけぇ…」ヒソヒソ

京太郎「…ハハッ、楽しみにしてるよ…」ヒソヒソ

ヒソヒソ話をしている二人を尻目に、久が高らかに宣言する。

久「それじゃ、強化合宿はじめるわよ!!」

咲京和優希まこ『おーっ!!!!』



****************……………………………………****************
            Report.3;露天風呂狂騒曲
****************……………………………………****************



時は数日前、部室にて。


久「強化合宿するわよ!」

咲和『おー!』

まこ「…なんじゃ? 藪から棒に…」


突然の久の宣言、そしてノリよく右手を高々と上げて賛同する咲と和。

話の流れについて行けず困惑するまこ、京太郎、優希。まこが3人を代表して疑問の声をあげる。

先日、雀荘roof-top(まこの実家)で藤田プロにボコボコに凹まされた咲と和。悔しさのあまり帰らずに部室に行き残っていた久に強化合宿の提案を行う。

当然それを読んでいた久は咲と和に温めていた合宿プランを披露、そして今日に至るというわけである。


まこ「全く、部長め… 張り切りおって… 後輩が4人もできて嬉しいのはわかるが、ちっとはわしを頼らんかい… 一人で抱え込みおって」


とは、まこの弁である。



時を戻して強化合宿初日。


久「それじゃ、合宿を始める前に各自の弱点を確認しましょう」

久「じゃあ、まず優希!」

優希「ハイだじぇ!」

久「優希は東場での爆発力はものすごいわ、でも難波で失速して逆転されることが多いわね… きっと集中力が続かないからだと思う」

久「相手の点数と、自分の点数を把握して戦略を立てるのも苦手みたいだしね… なので、これをやってもらいます」


そう言って久が出したのは小学生向けの計算ドリルだった。


優希「そ、それは……」

久「見ての通り計算ドリルよ。計算するっていうのは結構集中力を必要とするから優希にはぴったりだと思うわ。あと、9冊あるから合宿中に全て終わらせるのがノルマね」

優希「じぇー… 麻雀の合宿で算数漬けになるとは思わなかったじぇ…」

久「それじゃ、次は和!」

和「はい」

久「あなたは典型的なデジタル派ね、でも実戦では結構ミスが目立つわ…」

和「…………………」

久「しかし、ネット対戦ではコンピュータのように効率的に手牌を処理してるわね」

久「きっと、ネットにはないリアルな情報に惑わされてるんだと思う…」

久「だから、ツモ切りの練習をするとか実際の動きを練習していきましょう。それに慣れるだけでもだいぶ違うと思う」

和「はい」

久「次は咲ね」

久「あなたは和の逆… つまり、リアルからいろんな情報を得てそれで判断している」

久「結果、効率的な理論が疎かになってると思うの」

咲「はい」

久「だから、あなたはネット対戦でリアルの情報を遮断して、打つ練習をしてもらうわ」

咲「分かりました」


一年生女子に課題を与えたあと、久は京太郎の方を向く。


久「次は須賀君ね」

京太郎「はい」

久「須賀君は麻雀を始めてまだ1ヶ月かそこら、だからやるべき事は沢山あるわ」

久「…長野県大会には間に合わないかもしれないわ」

京太郎「それは当然でしょ、わずか1~2ヶ月で県大会勝ち抜けるようになるなんて虫のいい話、他の努力してる人たちに対する冒涜ですよ」

久「…そう思ってくれてるならいいわ、でも出場するからには勝ち抜く気でいなさい。私もそのつもりで指導するから」

京太郎「よろしくお願いします」

久「クスッ… でも須賀君には大きな武器があるわ」

優希「部長、京太郎の武器ってなんだじぇ?」

久が京太郎に話しているところに優希をはじめとした一年女子トリオが首を突っ込む。

久「放銃率よ」

咲「京ちゃんの放銃率…?」

和「…そういえば、須賀君からロン上がりした記憶ってほとんど無いですね…」


首をかしげる咲と和。


久「…和がそう思うのも当然ね… 須賀君の放銃率は3%未満… しかも入部してからの累計値でね… 直近の30対局だけで見れば放銃は0よ…」

咲和優希『…………えっ!?』

まこ(そうじゃあろうなぁ… 京太郎の危険に対する霊感は人間業とは思えんからの~ まず危険牌なんて切らんじゃろうし…)

まこ(…まぁ、ギャグ空間だと何故か働かんが…)


初めて聞く事実に驚愕する咲と和、優希。まこは恋人の特性は既に把握済み、驚くことはなく、ただただ納得していた。


京太郎「あ~… 何かこう、危険牌掴んだ時に「この牌はヤバイ!」って勘が囁くんですよ… まぁ、こんな不確実なものですけどね」

久「それでも3%未満はすごいわ、上級者の平均放銃率は約13%と言われてるから上級者を遥かに凌ぐ超一級の防御力よ」

京太郎「…そうなんですか?」

久「そうよ。でも、攻撃に関してはダメね… 定石を知らないから当然といえば当然なんだけど」

久「だから、須賀君には攻撃の定石をマスターしてもらうわ、防御力が凄まじいから一発大きい役を当てれば逃げ切ることも可能になる」

京太郎「了解です。全力で頑張ります」

久「うんうん、お姉さん素直な男の子は好きよ♪」

京太郎「…うっ//////」


京太郎の返事に気を良くしたのか久がにっこり笑って声をかける。その笑顔を見て赤くなる京太郎。


まこ(…京太郎のやつ…# 久にデレデレしおって…#)


そんな京太郎の様子に嫉妬する少女が一人…。


久「それじゃ、特訓を始めましょう!」


久の一言で始まる特訓。咲がPCでの対局オンリー、優希が計算ドリルにかかりっきりだったので他の4人で対局をしていく。

もちろん、ずっと打っていた訳ではなく対局と対局の間に時間を取り、自分のクセや効率牌などの研究をしていく。

特訓が終わったあとは夕食の時間。準備か簡単かつ親睦を深めるという目的も兼ねて鍋を6人でつつく。

京太郎と優希が肉の取り合いを始め、それにまこも参戦する。咲と和はマーイペースに箸を伸ばし、久が鍋を仕切っていた。

楽しい夕食が終わり、後片付けの後、京太郎は久に風呂に行くことを告げる。

何故そんな事をと思うかもしれないが、合宿所の風呂は内湯は男女別だが、露天は共用だから事故を防ぐためであった。




ザブンッ!!!




京太郎「ハー… いい湯だな~」


誰もいない露天風呂に勢いよく入り、オヤジ臭いセリフをつぶやく京太郎。


京太郎「それにしても合宿所に露天風呂って贅沢すぎるだろ… うちの高校公立なのに金あるな~」

京太郎「夜空も綺麗だし… ゆっくりするとしますか」


その頃、女子部屋では一年三人娘がおしゃべりをし、久は今後の練習計画を練るのに集中していた。

ちなみにまこは何故かタロットをやっていた。


まこ「ん? 状況がフールの逆位置… 対象がラヴァーズ… で感情がエンプレスの逆位置… そして結果がチャリオットの逆位置か…」

まこ「…嫌な予感がするの… ことごとく逆位置とか…」

優希「染谷先輩! 露天風呂に行こうじぇ!!」


優希がまこに声をかける。


まこ「おう、行くか」

咲「露天風呂楽しみです」

和「それじゃ、部長。露天風呂に行ってきますね」


和が声をかけると久は「ん…」とだけ生返事をした。集中していてほとんど聞いてないのも同だった。

この時、久がもう少し周りに気を回していたらこの後の悲劇は回避できていたかもしれない…。



京太郎「あ~なたに逢える~♪ 角~曲~がるたび~♪ 出会~~い~と~~~♪ 別~~れ~~と~~~♪」


小さく鼻歌を歌いながら温泉を満喫する京太郎。脱衣所の方でするゴソゴソという音は聞こえていないようだった。


京太郎「はぁ~… 極楽~…」


京太郎がそう呟いたその時、“ガラッ”と扉を勢いよく開ける音がした。


京太郎「…ん?」

優希「おお、ここが露天風呂か!」

咲「うわ~ きれい」

和「そうですね」

まこ「気持ちよさそうじゃの~」


そう言って露天風呂に入ってくる4人娘たち。そして、優希が湯船に吶喊しようとする。


優希「ようし! それじゃさっそ…く………」

和「ゆーき、流石に体を先に洗うべきで…す…………」

咲「? どうした…の………」

まこ「ん? なんじゃ、いった…い………」

京太郎「…………………」


カポーン…………………


皆が一斉に硬直した。京太郎も突然のことに脳の処理が追いつかずボーゼンとしている。

しかし、男の本能のなせる技か…。京太郎の視線は見慣れたまこよりも和の胸に釘付けだった。

ちなみに、4人娘たち…。タオルを巻いておらず、生まれた時の姿だったりする。

京太郎(和ってやっぱりおっぱいデカいよなー)


あられもない感想を浮かべる京太郎。その時、まこの怒声が露天風呂に響き渡る。


まこ「わりゃぁ! なんでこんなトコにおるんじゃ!!??」ブゥンッ

京太郎「アベシーーー!!!」カーーーーンッ


そう言って手近にあった桶を京太郎に投げつけるまこ。桶は京太郎の顔面を直撃、見事に撃沈した。ちなみに、怒っている理由は言っていることと全く違ったりする。


まこ(なんで、恋人のわしの方を見んと和の方をガン見するんじゃ!!?? 胸か!? 胸なんか!!!???)

咲「ああっ! 京ちゃん!!」

優希「あ、あれは痛いじぇ…」

和「す、須賀君! 大丈夫ですか!!?」


まこの見事な一撃で気絶した京太郎を見て、裸を見られたことは意識の外へやった咲、和、優希。3人は京太郎を心配して駆け寄っていく。

ちなみに京太郎は一撃をもらった後、土左衛門のごとく湯船の中を漂っていたりする。


まこ(あ、あわわわっ… や、やり過ぎてしもうた…(汗))

久「一体何事!!??」


まこの怒声を聞きつけ、走ってきた久。その時、京太郎は優希が用意した冷水で冷やしたタオルを額に載せて咲の膝枕で横になっている。

和が取り敢えず久に状況を説明し、皆で気絶した京太郎を女子部屋まで運び横たわらせた。

京太郎が意識を取り戻すとすぐさま原因の追求がはじまる。結果、目出度く久が有罪、京太郎が無過失責任に問われることとなった。


京太郎「俺、今回何にも悪いことしてないよね!?」

まこ「やかましい! 乙女の柔肌見たんじゃろうが! それくらい当然じゃ!」

久「…あの… そろそろ許してくれると嬉しいな… なんて」イタタ・・・

和「…今回の諸悪の根源は部長でしょう?」

咲「就寝時間までそのままですからね♪」

優希「だじぇ!」

久「そんなぁ~…(滝涙)」


ちなみに京太郎へのペナルティーは1週間学校ではなんでも言うことを聞くこと。久は十文字縄(江戸時代で容疑者を縛るアレ)に縛られて角材を4本並べた上に正座させられていた。



ザブンッ!!!



京太郎「ぷはーっ!! ひどい目にあった…」


就寝時間が過ぎ、皆が寝静まった頃に京太郎は再び露天風呂に入っていた。


京太郎「…今度こそゆっくり入れるよな…」

まこ「大丈夫だと思うぞ、みんな爆睡じゃったからな」

京太郎「おう、まこー」


京太郎が振り向くと、そこに立っていたのはまこだった。

そして、躊躇いもなく湯船に入り京太郎の隣に行く。


京太郎「抜け出してきて大丈夫か?」

まこ「大丈夫じゃ、それにコイツも気になったからの」


まこが手を出し、手のひらを上に向けると其処に野球ボール大の光る玉が浮いていた。


京太郎「…やっぱり浮遊霊だったか… なんか気配がすると思ってたけど…」

まこ「まぁ、化猫へ霊的に先祖返りしてるわしだから気づけたと思う。猫は気配に敏感じゃけぇ」

京太郎「…子供の霊か…」

まこ「ああ、多分死んだことに気づいてないんじゃろう…」


そう言いながら京太郎に視線を向けるまこ。京太郎は頷いて祝詞を唱えた。

すると、魂は優しく光を発して空に登っていった。


まこ「成仏しよったの」

京太郎「そうだな、来世では幸せに生きてほしいな… そういえばまこ。さっきのは痛かったぞ!」

まこ「フン! 恋人が裸でおったのに他の女裸見て鼻の下伸ばしとったからじゃ」

京太郎「グッ…」


グゥの音も出ない京太郎。


まこ「わし、魅力ないんか…?」


まこは急に落ち込んだようにトーンを落とした。


京太郎「そんなことないさ。まこはすっごく魅力的だし可愛い!」

まこ「じゃあ、なんで他の女に現を抜かすんじゃ?#」ギリギリ

京太郎「アダダダダダッ!! 男の本能なんだ!! ゴメン!!!」


少々過激にじゃれあう二人。その時、脱衣所の扉が開く音が聞こえた。

瞬時に岩陰に隠れる京太郎とまこ。

露天風呂に入ってきたのは咲と和であった。


咲「さっきはゆっくり入れなかったもんね」

和「そうですよね… 部長もしっかりして欲しいものです」

咲「うわぁ… 夜空が綺麗…」


2人は軽くお湯をかぶり湯船に入る。岩陰では京太郎の目をまこが塞いでいた。

咲と和が入ってくる前に少なくとも15分はお湯に浸かっていた二人。だいぶ茹だってきていた。


京太郎「ア、アカン… 目眩してきた…」ヒソヒソ

まこ「…あ、あんまり大きい声出すな… 気づかれる…」ヒソヒソ


温泉をゆっくり楽しむ咲と和。二人がお湯を楽しめば楽しむほど追い詰められていく京太郎とまこ。


京太郎(…や、ヤバイ…………………)

まこ(は、早う出てくれ…………………)


たっぷり30分経って湯船から出る咲と和。二人が、脱衣所から出たのを確認して湯船から飛び出す二人。50分は湯に浸かっていた計算になる

京太郎は石でできた床にうつ伏せに寝そべり体を冷やす。まこはフラフラと歩いていたが足が縺れて京太郎にうつ伏せで覆いかぶさるように転けた。

ちなみに二人共、動く余裕など無かったりする。典型的な湯疲れであった。

まこの柔らかい体が背中に感じられるが、煩悩が一切湧かない京太郎。話すのもしんどそうである。


京太郎「…………………まこ…」

まこ「…………………なんじゃー…」

京太郎「…おれ、じーえすとしてじょれいでしにかけることはかくごしてたけど…」

京太郎「…おんせんでしにかけるとはおもわなかった…」

まこ「…わしもじゃー…」


たっぷり一時間かけて体を冷やした二人。覚束無い足取りで部屋に帰る。

なんとか寝ることは出来たが、二人共その夜は地獄で釜茹でにされる悪夢を見たとか、見なかったとか。




****************……………………………………****************
                Report.3 closed
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【次回予告】

インターハイ…

全国の高校生雀士の頂点を決める大会。

インハイへの切符をかけた県大会、麻雀に青春をかけた少年・少女たちの戦いが始まる!


京太郎「おっ、弁当ですか!」

まこ「早起きしたんじゃ。ほれ、お稲荷さん」

京太郎「うん! 美味いですよ」

次回『Report.4;誰がために鐘は鳴る? Ⅰ 』!



【用語解説】

〈十文字縄〉

手錠のない江戸時代では容疑者を拘束するのに縄を使った。その為捕縄術という技法が発展した。

十文字縄はその捕縄術から発達したもので人を縛る縛り方の一つ。

今回の投下はこれで終了です。

投下のペースはこれくらいになると思います。気長に待っていたください。

感想を書いていただけると、イッチは感激して執筆速度が上がるかもしれません。

では、また次回お会いしましょう。

スミマセン、生存報告です。

当方、院生でしてこの時期リアルが忙しくほとんど書けてない状態です…orz

書き上がるまで、お待ちください。

エタには絶対しませんので。

生存報告を兼ねて進捗状況の報告です。

現在、9割ほど書き終わりました。残りの部分と、出来上がりのチェックを考えると数日中にはUPできそうです。

もう暫くお待ちください

遅くなりました!

それじゃ、『Report.4:誰がために槓は成る? Ⅰ』

の投下をします!

ちなみに、予告とは題名が変わっています!

【須賀家・京太郎の部屋 201○.Jun.4 AM 5:30】

ピピピッ  ピピピッ

「う~ん… 朝か…」

布団の中から朝を告げる目覚ましに京太郎の手が伸びる。

まだ眠気が残っているのか瞬きは重そうだった。

寝ぼけ眼を擦りながら京太郎の視線は横にあるブランケットが盛り上がった部分に注がれる。

「まこ… 朝だぞ… 起きろ~」

そう言って京太郎はブランケットを捲る。そこには猫のように丸くなって京太郎に密着するまこが居た。

「ん~…」

未だ夢の中にいるまこ、その可愛い寝顔を見て京太郎は「もう少し寝かせてやりたい」と思ったが、あいにく今日は県大会があって早起きしなければいけない。

京太郎は声を掛けつつ揺すって起こそうとする。

「ほら! 今日は県大会だろ! 早く起きろ!!」

「…後、86400秒…」

漫画やアニメならここで「後、5分……」と言うのが様式美であろうが、まこの口からでた言葉は丸一日。

しかも、わざわざ秒単位で言うあたり実は起きているのではないかと京太郎は疑ってしまう。

「それ丸一日だから!!!」

京太郎のツッコミの声が早朝の青空に響いた。


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           Report.4:誰がために槓は成る? Ⅰ 
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「…あふぅ…」

気持ちよく晴れた青空の下、京太郎とまこは清澄高校の最寄り駅であるJR飯田線の七久保駅までで歩いている。

京太郎の横を歩いているまこはまだ眠いのか大きな口を開けて欠伸をしていた。

「…眠いの~… 集合時間まで45分はあるじゃろうに…」

「…自分の家で寝ればもう少し寝れたんだろう…」

まこの愚痴のような呟きに呆れた声で京太郎が返す。

「ウチに泊まるから、駅で待ち合わせしてる部のみんなを誤魔化すために早く出なきゃいけなくなったんじゃないか…」

「…そうは言うけどのぉ… 除霊長引いてしんどくなるし… あの体調で単車運転すると確実に事故るし…」

言い訳がましくまこが言葉を返す。

二人とも昨日は大会に向けて早く寝るつもりだった。しかし、夕方に緊急の除霊依頼が舞い込んできた。

依頼主は大口のお得意様である市役所。当然、断ると言った選択肢は存在せず夜遅くまで仕事に精を出す羽目になった。

悪いことは重なるもので、市役所も突然の霊障にパニックを起こしたらしく依頼書に書かれていた悪霊のランク・推定難易度などが笑えないほどいい加減。

結果、仕事の完了がさらに遅くなると言う自体を引き起こし、まこが霊力を使い果たしフラフラになってしまったのだった。

「まぁ、あれは酷かったよな… 契約内容齟齬で違約金はせしめたけど、おかげでまこに霊力を補充する羽目になったし…」

京太郎もまこの言い訳には一理あると思っていたので同意する。

「くふふっ、昨日は激しかったのぉ~///」

ニヤニヤと面白がって京太郎を見るまこ。からかわれたのが悔しかったのか、京太郎は顔を少し赤くしながらまこにデコピンをお見舞いする。

「…てぃっ!///」ビシッ

「あうっ! な、なんでデコピンするんじゃ~!?」

クリーンヒットする京太郎のデコピン。まこは少し赤くなったおでこを左手で抑えて涙を浮かべ、上目遣いで抗議する。

京太郎はその表所にドキッとしながらも言い返す。

「女の子なんだから恥じらい持てって!」

「きょ、京太郎じゃから言うんじゃ… ほかの男子のいちょるところでは言わんわい」

そんなまこの言葉が物凄く嬉しかったりする高校一年生、須賀京太郎。とてもチョロかった。

ちなみに、京太郎がまこと関係を持ったのは中2の時、もうかれこれ3年前のことになる。

世間一般の高校生なら親に隠れてコッソリというのが普通であるが、この2人の場合お互いの両親は承諾済み……

むしろ、最初に嗾けたのはお互いの両親だったりする。

「ハァ… 全く… しかし、同年代の連中に比べて俺たちって爛れた生活してるよな…」

溜息を吐き出しながら京太郎が言う。

「…まあ確かに… わしらの使う古神道では【バキューン!】が霊力を高める行の一環でもあるけぇのぉ…」

隠す気は一切なくストレートにまこが言葉を口にする。

「日本神話でも【検閲済み】がこの国が誕生する切っ掛けだしな」

長い幼馴染付き合いのせいか京太郎も気負い無くストレートに言葉を口にした。

「メソポタミヤ文明でも【自主規制】は神聖なものと見られちょたらしいけぇ、新しい命を授かるということが神聖視されたんじゃろうな」

ちなみに、この2人が【お察しください】をするのは、お互いの霊力の補充と底上げのため。

もちろん理由は其れだけではなく一番の理由はお互いが好きだからであるのだが。

そんな会話をしているうちに七久保駅に到着した。ちなみに集合時間の50分前である。


七久保駅は周りに何もない無人駅、京太郎たちはベンチに座りみんなを待つことにした。

「誰も来ちょらんけぇ、これで一緒だったことを疑問に思われずに済むの~」

二人が集合時間よりもずっと早く来た理由はGS家業を高校の友人たちに内緒にしているから。

また、2人が付き合っていることが知られるとあらぬところでバレると考えているからだった。

「…取り敢えず俺が先に来てて、まこが後から来たって設定でいいんだよな?」

「そうじゃ」

ほかの部員を待つ間他愛もない会話をして時間を潰す。

小学校低学年の頃からの幼馴染であり、GSとしてお互いの背中を預け合ってる二人だけあって会話の呼吸はぴったりだった。

しばらくすると久がやって来た。そして、和、咲の順で駅に到着し、集合時間ギリギリの1分前に優希が到着する。

皆が揃ったところでホームに入線していた電車に乗り込む。早朝の列車だけあって車内にほとんど人は居なかった。

ボックスシートに座った京太郎は列車の振動に身を任せながら暫く車窓を楽しんでいたが、ふと視線を向かいの席に向ける。

視線を向けた先では緊張した様子でシートに座わる咲がいた。

「咲、緊張してるのか?」

京太郎は咲に声をかける。

「う、うん… 大会なんて初めてだし… 京ちゃんは緊張してないの?」

ぎこちない返事を返す咲、その様子を見て京太郎はフッと表情を和らげる。

「俺か? まぁ、それなりにな」

「そうなんだ… みんなも緊張してないみたいだし…」

周りを見わたす咲。和、優希、まこ、久は各々リラックスした様子でシートに座っていた。

緊張していない理由はそれぞれ違っていた。和と優希は中学時代に何度か大会に出て場慣れしているから、久はそれに加えて学生議会長などをやっているからだった。

京太郎とまこに至っては、「失敗したからといって命を取られるわけではないし…」という理由だったりする。

命を落とす危険があるGSをやっているからこそ言えることだった。

「なーに二人だけで喋ってるんだじぇ。ほら、こっち来てポーカーやろうじぇ!」

和とポーカーに興じていた優希が話をしている2人に声をかけた。

優希の誘いを受けて京太郎と咲はポーカーに参加する。


途中で一度電車を乗り換えて塩尻の駅で下車、徒歩十数分でようやく会場に到着した。

会場の正面玄関には大きな白色の看板が立てかけてあった。

〈全国高等学校麻雀大会・長野県予選会会場〉

清澄のメンバーは玄関をくぐって、エントランスのトーナメント表を見に行く。

「ほほぅ… ウチの高校みっけ♪」

優希がトーナメント表に書かれている清澄高校の場所を指差す。

「決勝まで風越や龍門渕に当たらない良いブロックじゃの~」

まこは清澄高校の入っているブロックを参加校を確認すると安心したような表情になる。

「そうね… それと個人戦のトーナメント表はあっちよ」

久はまこの言葉に同意した後、個人戦のトーナメント表が掲げられているエントランスホールの奥の方を指差す久。

「それと… 日程なんだけど、まず男子個人戦と女子団体戦が2日間。そして次の2日間で男子団体戦と女子個人戦っていう風になってるわ」

そう言ってプログラム表に目を落とす久、プログラムの確認が終わると京太郎の方を見る。

「プログラムからすると、ウチの先陣は… 須賀君ね!」

「お、俺ですか!?」

久の言葉に驚く京太郎。

「まぁ、頑張ってきんさい」

「京ちゃん頑張ってね!」

「普段通りやれば大丈夫ですよ。 …須賀君が直撃される事態なんて想像できませんし…」

まこ、咲、和は応援の言葉を京太郎に送る。和は練習で京太郎から一度もロンを取れなかったことが堪えている様子だったが。

「…そうだよね… 合宿終わってからずっと京ちゃんを狙い撃ちしようとしたんだけど… 一回も直撃を取れなかったよ…」

「…咲… お前そんなことしてたのかよ…」

咲も京太郎からロンを和了れず、ずっと狙ってた事実を口にする。それに対して京太郎は呆れ気味だった

「あら、私もよ。…って言うか、みんな須賀君を狙い撃ちしてたはずだけど?」

「みんな揃って鬼だ…」

久から告げられる笑撃の事実、一方の京太郎は肩を落としてゲンナリとしていた。

「まぁ、まぁ… それだけワレから直撃とるんが難しいんじゃ。いい練習になりよったけん」

そんな京太郎を見てフォローするまこ。

「そうだじぇ。だから、初戦敗退したら毎日タコス作るんだじぇ!!」

「お前は敗退しなくてもタコス作らせる気満々だろ!! しかも、何の関係もねぇし!!」

フォローしているのか貶しているのか分からない優希のセリフにツッコミを入れる京太郎。そんな2人を見て残りの4人はクスクスと笑う。


そんな時、ある制服の一団が颯爽とエントランスに入ってきた。

「風越だ!!」

「王者奪還なるか!」

途端に騒がしくなるエントランス、その場にいた誰も彼もがその一団に注目していた。

「風越だじぇ」

優希の口から出た高校の名前、風越女子高校。

去年は惜しくも長野女子団体の代表を逃したが、それまでは連続優勝記録を塗り替え続けた長野屈指の強豪校だった。

「去年は珍しくインターハイに行けませんでしたから。王者の復活に期待する人が多いんでしょう」

野次馬が騒がしくなった理由を分析する和。

「そうね… でも、ウチはウチよ! 清澄らしく行くわよ!!」

観戦室に向かう事にした清澄一同。風越の一団が留まっている横を通過するのだが、横切るほんの一瞬、久と風越のキャプテンの目が合った。

(あれ? あの娘… どこかで…)

(あら? あの人…… どこかで見たような…?)

目があった瞬間にお互いの胸に去来したのは同じ疑問だった。




…………………

…………






観戦室には超大型モニターを備え付けた大ホールが宛てがわれていた。ホールは段差があり後ろの席でも見やすくなっていた。

自分たちの席を確保し終わって直ぐに場内アナウンスが入る。

『男子個人戦Aブロックの一回戦を開始します。選手の皆様は対局室にお越し下さい』

「それじゃ、行ってきます」

アナウンスを聞いて立ち上がる京太郎。

「京ちゃん… 頑張ってね!」

「負けるなよ! 京太郎!」

「頑張ってください」

「健闘を期待してるわよ… 須賀君!」

「フフフ… まぁ、全力で頑張ってきんさい」

「はい!」

京太郎に咲たちがエールを送る。京太郎はニッっと笑って答え、観戦室をあとにする。


対局室に向う途中の廊下、京太郎は緊張しながら歩いていた。

(…麻雀初めて2ヶ月ぐらいの俺が… みんなの期待に応えられるかな…?)

京太郎の胸に少し弱気な思いが生まれる、しかし、京太郎は首を横に振りそんな思いを振り払う。

(何を迷ってるんだ須賀京太郎!! 頑張るって言ったんだ! やるしかないだろ!!)

京太郎が対局室に到着した時には、他のメンツはもう既に到着し席についていた。

通信機器など不正を出来る物を所持して無いかのチェックを受け、空いている席に着く。

「すみません、お待たせしました」

京太郎が遅れたことをほかのメンツに詫びる。

「大丈夫ですよ、さっき来たばかりですし」

「そうそう、開始時間までまだ時間あるです」

「気にしない、気にしない」

そんな京太郎に気にしていないことを告げる3人。

(ホッ… 良かった~、懐の広い人たちで…)

安堵の溜息を吐く京太郎。始まるまで時間があったので自己紹介をすることにした。

「あっ… 俺、清澄高校一年の須賀って言います。よろしくお願いします」

「よろしく、佐久高校二年の川井です」

「同じく二年、千曲高校の聖澤です。こちらこそ」

「じゃあ、僕が一番上になるのか… 三年、松本高校、上田だよ。よろしく」

自己紹介を終えたと同時に対局の開始時間となる。スタッフがやってきて対局の開始を宣言した。

仮東になった松本高校の上田選手が卓のサイコロを転がすボタンに手を伸ばす。

運命の開始を告げるサイコロが転がる音が対局室に響いた。



…………………

…………





京太郎の対局は順調に進んで東四局が終了した。メンツ全員が最初の試合ということで完全に守備に徹し、様子を伺う姿勢を見せている。

実際、流局以外の得点の動きは聖澤選手が川井選手に七対子のみで2400点のロンをした以外無かった。

自動卓から山がせり出し、各自必要な牌をとっていく。全員の配牌、そして理牌が終了し南一局が始まる。



「須賀君にチャンスが来ましたね」

観戦室で京太郎の対局を見ていた和が言う。

現在の京太郎の手牌は ―― 二二四五六②③④⑥⑦ⅣⅤⅨ ―― 理想的なタンピンイーシャンテンだった。(漢数字:萬子 丸数字:筒子 ローマ数字:索子)

「……でも、点数は低いね……」

心配そうな声を上げる咲。京太郎を含めメンツ全員の点数は原点である25000点から動いていなかった。

「……でも、ここで2000点でもゲット出来ればあとの試合運びが楽になるわ」

久はこの後の試合の流れまで読んだ上で低得点でもここで和了っておくことに意味があると咲に言う。

そして、京太郎は次のツモ番でⅢを引きテンパイする。それを見た優希が大きな声を上げる。

「よし! これでタンピン聴牌だじぇ!! 当然リーチを…… しない!? なじぇ!!?」



Ⅲをツモった後、当然のごとくⅨを切りテンパイを選択した京太郎。

優希ならリーチをかけて3翻を確定させ、あわよくば一発を加えた4翻を狙って行く場面だったが京太郎はダマを選択した。

理由としては、リーチをかけると当たり牌を掴んだ時に対処できないからだった。

「リーチ」

トイメンに座っている聖澤選手からリーチの宣言がかかる。

京太郎は聖澤選手の河を見て考える。

(……ダメだな…… 読めない。捨て牌に偏りが見えないな……)

思考に浸りながらも京太郎は他家の切る牌は確認している。

そうしている内に、京太郎のツモ番が回ってきた。

山に手を伸ばし、引いた牌は……。




「千曲高校の選手の河、完全に明細が効いていますね」

「そうね、あれでは待ち牌を読めないわ」

和と久が危機感を滲ませながら聖澤選手のプレイングを分析する。

「次の京太郎のツモ…… かなり重要になるのぉ」

まこが言葉を発した瞬間、京太郎のツモ牌がモニターに映し出される。

それは、Ⅷだった。

「!! 京ちゃん!!」

咲が悲痛な声を上げる。隣に座っている優希も悲壮な表情をしていた。

「清澄は当然Ⅷを捨てるだろうな。ドラがⅧだから、千曲がチートイドラ2で6400確定か」

「……だな、これだけ守備ガチガチの対局だからな、千曲で決まりだな」

京太郎のピンチを見て観戦していた他校の選手たちが呟いた。



ツモ牌を引いた瞬間、京太郎の背筋を悪寒が走り抜けた。

(……ッ!! この感じ、これが当たり牌か! ここで失点はできないからな…… 崩すしかないか)

そうして、京太郎は安牌の②を河に切った。


「お、おい!! 清澄の奴、千曲への当たり牌抱えて手を崩したぞ!!」

「嘘だろ!?」

京太郎の神がかり的な捨て牌の選択に観戦室は騒然となる。

当然の如く観客や他校の選手たちは聴牌を維持するためにⅧを切ると読んでいた。

しかし、京太郎が切ったのは聴牌を…… しかもタンピンという理想的な形を崩す②。千曲の待が読めない状況ではまず切ることが無い牌だ。

結果、放銃を躱すことに成功したのだから観戦室が騒然となるのは当然の流れだった。

観客の喧騒を聞きながら改めてまこは自分の恋人の凄さを実感する。

(……ふふふ、まぁ、そう思うのも無理はないの。実際放銃しててもおかしくない…… いや確実に放銃する状況じゃったけぇ)

しかし、内心ドキドキしていて、それを京太郎に内緒にする事にした。

「な、なんで読めたんでしょうか……」

視線をモニターから背け、和が声を震わせながら久に聞いた。完全デジタル派の和にとってはあまりにも不可解な打牌であったからだ。

一方の久も和の質問に対する答えは持っていなかった。

「……分からないわ。でも現実として須賀君があの危機を回避した…… その事実は受け入れないといけないわ」

モニターはどんどん進んでいく試合を写している。和が再びモニターに視線を向けると、ちょうど京太郎のツモ番が写っていた。

「さて…… 次に何をツモるのかしら?」

久のつぶやきは観客のどよめきに紛れて誰にも聞こえなかった。なぜなら、久が呟いた瞬間に京太郎がⅧをツモる映像がモニターに現れたのだから。

「やったじぇ! これでタンヤオドラ2! 再び聴牌だじぇ!!」

「和了れば3900は確定だね!」

一度手を崩したが再び聴牌にこぎ着けた京太郎に興奮気味の咲と優希。

しばらくしてついに京太郎が3枚目のⅧをツモる。

『ツモ。 メンゼン、タンヤオ、ドラ3… 4000・2000』

スピーカーから和了を宣言する京太郎の声が静まり返る観戦室に流れた。

その後、3人は一人浮きでトップに出た京太郎から点数を奪おうとする。

しかし、相手は防御に関しては超一級の京太郎。当然失敗した。

結果は京太郎が逃げ切りで1位となり、1回戦突破を決めた。


観戦室に戻った京太郎を待っていたのは部員たちの手荒い歓迎だった。

「一回戦突破おめでとうございます。でも、もっと牌効率を考えたほうがいいですよ」

「ハハハ…… いや、ごめん……」

完璧主義者の和は、京太郎の一回戦突破を祝福しながらもキッチリ注文を付けてきた。

「ハラハラさせるな! 京太郎! お詫びとしてタコスを奢るんだじぇ!!」

「お前はいつも奢らせるだろうが!!」

優希はいつも通り絡みに走る。しかし、その絡みも京太郎に甘える一種の愛情表現であるが。

「京ちゃん! おめでとう!!」

「おう、おめでとうさん! お前さんならやると信じとったぞ!」

「咲、サンキュー! 染谷先輩もありがとうございます!」

素直に祝福するのは咲とまこの二人。

「おめでとう須賀君、ホントよくやったわ。特にあの南一局のタンピン崩し、牌に触れ始めて2ヶ月かそこらの初心者とは思えないわよ? なんで読めたのかしら?」

こちらも素直に祝福する久。しかし、祝福する一方で京太郎の打ち筋の分析をしてきた。

今後の対局に向けて、何としても勝ち進んでもらいたいと思うが故のセリフだった。


京太郎が観戦室に戻って暫くすると女子団体の一回戦の開始を告げるアナウンスが入る。

清澄の対戦校は東福寺・千曲東・今宮女子。

試合は咲が東福寺の大将を飛ばして終了した。

優希の東場の爆発力、まこの安定性、久の悪待ち、和のデジタル、そして咲の神がかり的な嶺上開花が噛み合った結果だった。



女子団体の一回戦が終わると昼食時間になった。京太郎を始め咲、和、優希、久は食堂で昼食を取ろうと思っていた。

久が「食堂へ行きましょう」と言った時にまこが待ったをかける。

「天気もええし、せっかくじゃけぇ外で弁当でも食わんか? 6人分作ってきたけぇ」

そう言って自分が持ってる大きめの肩掛けカバンを指差すまこ。

「おっ、弁当ですか!」

まこのセリフに相槌を打ちながら内心首をかしげる京太郎。

(えらく大きなカバンだと思ってたけど、6人分の弁当入れてたのか…… と言うより、朝は結構ギリギリだったはず…… いつ作ったんだろう?)

恋人の行動の謎に頭をひねる京太郎であった。



…………………

…………






「いただきま~す!」

会場の中庭に移動した清澄チーム、芝生の上にシートを広げまこの弁当を広げる。

「ん~♪ 美味しいです! 染谷先輩!」

「本当だじぇ! しかし、タコスがないのが残念だじぇ……」

「ハハハッ、そう言ってもらえると嬉しいのぉ。それと優希、流石にタコスの作り方はしらんけぇ」

弁当を褒める咲と優希に笑いながら答えるまこ。最も、優希の発言の後半部分に答えるときは苦笑していたが。

「それにしても、6人分なんてよく作れましたね?」

京太郎は卵焼きを頬張りながら疑問を口にする。

「早起きしたんじゃ。ほれ、お稲荷さん」

まこは京太郎の疑問に答えつつお皿に乗っけた稲荷寿司を差し出す。

「うん! 美味いですよ」


稲荷寿司を食べ笑顔でそう返す京太郎。彼の様子を見て内心「しまった!」と思う咲、優希、久。

3人とも京太郎の事が気になっていたのだった。

(明日は全員お弁当の持参するわ……)

(明日、早く起きなきゃ……)

(手作りタコス持ってきて、京太郎に食べさすじぇ……)

3人とも色々な事を考えていたが、根本的なところは一緒だった。曰く。

「まこ、須賀君と最近仲がいいわね…… 先手を打たれたわ……」
「染谷先輩、京ちゃんと仲いいな…… 出遅れちゃったかな……」
「染谷先輩、京太郎と仲いいじぇ…… 挽回するのは大変かもな……」

一方の和は現在“花より団子”“麻雀牌こそ我が恋人”な状態である。

京太郎のことは麻雀仲間と見ているのであって、同年代の男子、間違っても恋愛対象として見ることは無かった。

もっとも、それは男子全員に言えることであろうが。

(これは…… 修羅場の予感ですね)

しかし、3人の微妙な雰囲気を読み取っていて、今後の展開を予想していた。

(……面白くなりそうです♪)

訂正。彼女にとって花とは触れ合うものでは無く、縄張り争いをする蝶を集めるものであり、その様子を見るのが楽しいらしい。

こうして、昼休みの時間は過ぎていった。




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                Report.4 closed
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【次回予告】

寂しさ、憎しみ、怒り……

負の感情は容易に誘惑に負ける素地となる。

悪霊や物怪達はソコを狙ってくる。


「寂しかったんだな……」

「大丈夫じゃ、無事に取り返しちゃるけぇのう」


次回『Report.5;誰がために槓は成る? Ⅱ 』!



              _ぇ
             下聿a_   ________
             |lllllllllllllll工_,,   二二―宀 、
             lllllllllllllllllllll宀"´ ‐-‐ ‐ン下'' 、

             _|llllllll聿l!ヌllllト     │ ノ「ユ  \..- 、
            丿〈lllllllla! ‐ 夕  _    ィ癶{彳' ノ'" :‐‐ ヽ
           丿 l斗- ̄^个"^ ... │/ ィl上l!dノ ゙ _コ ''  '、
          丿ノ:/   _ ‐  ゙'' ‐ /^__个 `'''1っ'彡斗   ‐ |聿a__
        ..... ^'´ ./彡-‐l   ./ヘ''"^  ヘ-    `ー广   ^ |聿llllllll聿''
     ,,-    ノ" ____ : ヽ│-  |  ゝ__,,.  _.    〈      丿ャllllllll广^
    ^彳 ノ了ン"./´⌒lノ" 个 ゙‐     `^^‐''    │    〈jlllllll广
      ‐!  〈t  !  冫l ┌  \_         ¦ │     l广´
         ¦ ''|  ヽ  │ __  \_          ^│l     ̄`\
         7.n | lー:t  ヘ ゙゙ ̄'ーlユa ./_/      ,ノ ,'1    !'''''''`
            ^ノヽ⊥ ィ      ‐ン" ソ上宀宀っ'ソノ │'、  l
          _,,,,....上!\゙‐ ./ー宀......_´` '' ゙ンlax=ニ│"  ! ヽノ

        _,.-彡!彡ン个'' ニンl     ヽ 、    !./ィソンj丿 __,
      ;xノ``^ニ二ソ ../",.-'宀-..,,_   丿 __ノ-ヘ´ 、_ ´  |llll聿
     ノ‐土kョlュa∟.ノ'´ /ン'"  1 _/ ̄ ̄'/―'''^!,il ...ニ' 、lllll聿
     _ノ聿宀"-‐ -ン'´    │a_゙j _  1     .._'、 ^ ノllll彳
    /         r^ ___    上介'"⌒゙''ィ    '¦ ^  _lllll广
   _彳''''''''''/i''r    ヽ   `ー,,  爻l- 、,,_ │    __ィllllll彡
   "’            `     ^  ̄''''―‐―――  ''゙宀宀"

た、楽しみにしときんさい!!


それじゃ、今回の更新はこれで終了です。

卒業式とか色々あって更新が遅れました……

今後もリアルが忙しいので、更新遅くなったりすると思います。そんときは首を長くして待っててくださいm(_ _)m

AA得意な方、まこさんのAAとか作っていただけると嬉しいです(チラチラ)

感想は大歓迎です! どんどん書いてください!

>>75
感想ありがとうございます!

>>77
応援ありがとうございます!

>>78
このAA自作なんです。
まこさんを可愛く描くのでリスペクトしてる同人作家さんがいまして、その作家さんの同人誌画像からコマを切り出して、トリミングして、オートでAA化しました。

な、なんかおかしくなってた……

>>79つイッチです。

酉、大文字と小文字区別するんですね…… 初めて知りました。

GSとか俺得、面白いので期待してる

もしGS原作に咲のキャラを当て嵌めたら美神さんはやっぱ部長だろうか

>>81
確かに当てはまってる気がする。 お金にガメツイ点以外は……

横島=京太郎…… これも違和感はないな

じゃあ、おキヌちゃんは咲か?

今晩は。

今後の展開についてアンケートを取りたいと思います。いいと思えるものを選択してください

Ⅰ.今後の咲、優希、久の立ち位置について。
  ①京太郎とまこの関係を知って渋々ながらも祝福
  ②まこに宣戦布告

Ⅱ.須賀除霊事務所(仮称)の設立
  ①京太郎とまこの二人だけで運営
  ②咲、和、優希、久がアルバイトとして入る

多くの方の回答お待ちしています。


まさかおもちスレのイッチさんが見てくださってるとは思いませんでした。

おもちスレ面白いので頑張ってください。

只今絶賛スランプ中…… Report.5のアップは時間がかかりそうです。

あと、スランプだからって気分転換に「時かけ」とのクロスの執筆に手を出してしまった……

ID:8hVcjlqROさん。
早速の回答ありがとうございます。
参考にさせていただきます。

皆さん、アンケートありがとうございます!
今後の展開の参考にさせていただきます。

そう言えば、この板ってR-18は禁止ですよね?

R18スレも立ってますよ

>>97
そう言えばあるスレも速報だったっけ……
じゃあ、余力があればR-18の執筆も考えてみます。
……需要があればですが。

お久、およそ二週間ぶりです。

何とか書き上げています。調子がよければ本日中。
遅くても明日の夜には投下できそうです。

あと、相談があるのですが乗っていただけるとありがたいです。

今日の23:00頃に投下します。
お楽しみに?

お待たせしました!

では投下を始めていきます!

中庭でまこ手製のお弁当を平らげた清澄高校の6人。食後のお茶とお喋りで英気を養い午後からの試合に備えた。

一日目の午後は男子個人戦の2回戦、3回戦と女子団体の2回戦が行われた。

京太郎は2回戦、3回戦とも1位で突破し二日目の準決勝に駒を進めた。ちなみに京太郎は両対局とも2位とは1000点差以内、放銃0。

女子団体は和が副将戦で他校を飛ばして終了させていた。

大会が始まる前までは誰も注目していなかった清澄高校麻雀部。しかし、この一日で一気にダークホースとして注目を浴びることとなった。




…………………

…………





大会一日目が終わり、京太郎達の姿は七久保駅横のラーメン屋台にあった。

「私がおごるから好きなもの頼んでね!」

二日目に向けて頑張ってもらおうと思い、久が奢りだとメンバーに言う。5人は久に礼を言ってそれぞれ好きなラーメンを注文していく。

そんな中、優希がタコスラーメンと無茶を言って屋台のおっちゃんに苦笑いをさせていた。

和はラーメンを食べるのが初めてらしく、オーソドックスに醤油ラーメンを注文した。

「部長、いただきます!」

それぞれが頼んだラーメンが運ばれ、久に一言言ってから食べだす。

一年生組がハフハフ言いながらラーメンを攻略している中、まこが久に耳打ちする。

「大丈夫か? 無理しちょらんか?」

「ふふっ、大丈夫よ。それに後輩を労うのは3年生の仕事よ♪」

そう答えてラーメンを啜る久。上手く誤魔化した積もりであったが、まこは久の胸の内を正確に理解していた。

(ああ、なるほど。後輩にこういう事が出来るのが嬉しくて仕方ないんじゃな。去年はこんな夢物語のような事、想像も出来んかったからのぉ)

まこの推測通り、久にとってこんな風に後輩の面倒を見るのは夢の一つだった。

彼女にとって部活の時間とは孤独の時間でもあった。去年はまこも一緒だったがそれでも寂しさを感じる。

しかし、今年は4人もの1年生が入部し、一気に賑やかな雰囲気になった。諦めかけていた全国大会ももしかしたら手が届くかもしれない。

久はそんな今が嬉しかったのだ。そんな今を運んできてくれた後輩達が可愛くて仕方がなかったのだった。

まこはフッと表情を綻ばせ、メガネが曇らないようにおでこに上げてからラーメンを食べ始めた。


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           Report.5;誰がために槓は成る? Ⅱ  
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大会二日目の朝、会場の廊下を京太郎とまこが歩いている。二人共両手に缶ジュースを抱えていた。

京太郎は朝一の準決勝を1位で勝ち抜き、決勝進出を決めているので気楽な表情をしている。

男子個人戦の決勝は午後からで、今は女子団体戦の準決勝先鋒戦が行われていた。

「まさか京太郎が決勝に進むとはな。正直厳しいかと思っちょったが」

正直な言葉を口にするまこ。京太郎もその意見に同意する。

「俺も自分のことだけど吃驚してるさ。ド素人の俺が決勝だなんて」

にこやかに会話をしながら控え室に戻る二人。団体戦の準決勝からは各チームに控え室が割り当てられていた。

ちなみに、周りに人がいないので京太郎は恋人モード、タメ口で会話している。

その内に前から小柄な少女がトテトテと歩いてくるのが見えたので咄嗟に先輩後輩モードに切り替える京太郎。

「あの子、選手の兄弟か親戚ですかね? うさ耳カチューシャなんか着けて可愛いですね」

鮮やかな切り替えの早さであった。

「……わりゃぁ、麻雀部員ならもうちょっと他校の選手の事とか勉強しんさい……」

去年、全国大会で大暴れしてあまりにも有名な高校生雀士を知らない京太郎に呆れるまこ。

「えっ! 有名なんですか?」

「……後で嫌なほど理解するじゃろうからええわい……」

そんな会話を交わしながら歩みをすすめる二人。そして、少女とすれ違う。

すれ違った瞬間、少女は雷に打たれたように身を震わせる。

電光石火のごとく京太郎達の方を振り向くが、視線の先に居る二人は全く気がついていない。

(な、なんだ! あの二人は!! なんという圧迫感…… まるで泰山のようだ!)

少女の名前は天江衣。彼女は自身の持つ雀士としての存在感のおかげで今まで他人の存在感に圧倒された経験がほとんど無かった。

麻雀ではないがGSの仕事で様々な修羅場を、それこそ命懸けでくぐり抜けて来た京太郎とまこ。二人から滲み出る雰囲気は衣を圧倒するには十分すぎた。

当然、二人はその気配を消して生活している。一般人には気付かれることはまず無いと言っていい。

しかし、雀士としては一流の衣は僅かに消しきれなかった気配を感じ取ったのだった。




…………………

…………




「ただいま~」

そう言って控え室に入る京太郎。部屋の中には久、咲、和そして一回目の半荘が終わって休憩に来た優希が居た。

「おっ、優希いたのか。ほら、ジュース」

そう言って優希にジュースの缶を投げ渡す京太郎。

「京太郎、ご苦労だじぇ!」

そう言って受け取る優希。プシュっと音をさせ開栓すると、ゴクゴクとわずか10秒ほどで飲み終えてしまった。

他のメンバーはその様子を見て目を丸くする。

ちなみに、京太郎が渡したのはスプライト。炭酸のキツイ飲料の代表格だ。

優希は「プハァ!」っと口元を拭い、時計をチラッと見る。

「おお、もう時間だじぇ! それじゃ、みんな行ってくるじぇ!!」

そう宣い、嵐のように部屋を出て行った。

「……ゆーきはもっと女の子らしくするべきですね……」

溜息とともに中学からの友人への苦言を口にする和。

「あ、あはは…… 優希ちゃんらしいね……」

「私は咲に同意見ね。そう言うと、女らしさって言えば……」

咲は表情を少し引き攣らせ優希をフォローする。一方、久は咲に同意しつつもまこに視線を向けて……

「まこの腰付きって、結構エロくない?」

そう二人に耳打ちする。

「え、エロって! いきなり何言うんですか!?」

顔を赤くして抗議の声を上げる和。怒鳴り声のように勢いのあるヒソヒソ声を出すという奇跡のような事をやってのけている。

ある意味すごい才能ではあるが、この手の話題に免疫が無いのが丸分かりになる反応だった。

「で、でも、確かに染谷先輩の腰って…… ムッチリしてて充実しているというか…… 色香があるというか……」

咲も顔を赤らめるが、和とは対照的に久に同意した。その後もエラく生々しい表現でまこの腰を形容していく。

本で得た知識であろうが、大概な耳年増っぷりである。

一方、話の肴にされているまこ。三人の視線に気付いてはいたが、話の内容にまで想像が及ばす「?」を浮かべていた。



…………………

…………




『試合終了ー! 清澄高校が決勝進出を決めました!』

控え室に据え付けてあるモニターから実況の声が流れてくる。

画面には「ありがとうございました!」と言ってお辞儀をする咲と、三者三様の姿で涙を流す対戦校の大将の姿が映っていた。

「いよいよ決勝戦だじぇ!」

「ゆーき、決勝戦は午後からですよ。まだ早いです」

思いっきり意気込む優希、やんわりとたしなめる和。

先輩である久とまこは冷静そうに見えるが内心結構興奮している。

咲が控え室に戻って来るのを待って、昼食を食べに中庭へ移動をはじめる。

昨日、解散するときに久が「明日はみんなお弁当を持ってくること!」と宣ったため、全員弁当を持参していた。

二日続けてカラッと晴れて、外で弁当を広げるには最高の状態だった。

京太郎が持ってきたビニールシートを敷き、各自弁当を見せ合いっこする。定番であるオカズの交換も行う。

中庭はあまり人が通らない場所とは言え、全く人気が無いわけではない。

女子高校生五人と男子高校生一人が一緒に弁当を食べる様子は結構目立っていた。

側を通った人は皆視線を向けていたし、みなしごと思われる男子などが京太郎に向ける視線にはあからさまな嫉妬の色が見えている。

中には血の涙を流しながら一心不乱に釘を藁人形に打ち込む者もいた。

「畜生! チクショウ!! リア充め、くたばれ!!! クタバレ下さい!!!!!」

藁人形に釘を打ち込む行為は丑の刻参りという呪殺の一種だが、このような作法を無視した方法では当然だが呪い殺すことなど期待できない。

しかし、簡易過ぎるとは言え呪法は呪法。一瞬とは言え簡単な呪いはかかるし、それなりの才能があれば嫌がらせぐらいはできる。

加えて今回は心からの嫉妬による行為だ、胸が痛くなる程度の効果はあった。

「イ゛ダダダダダッ!!?」

しかし、胸の痛みによって七転八倒したのは藁人形に釘を打ち込んでいた彼だった。一方の京太郎は平然とまこ手製の肉じゃがを食べている。

京太郎が素人、もしくは呪ったのが同じGS仲間の横島忠夫のような人物ならば、のたうち回るのは京太郎だっただろう。

京太郎はプロのGSで素人が掛けた呪いを防いで返す事は朝飯前だ。しかも呪詛を倍にして返している。才能と実力の差は歴然だった。

ちなみに『オカルト犯罪防止法』では丑の刻参りの手順を踏んだ上で藁人形に釘を打つ行為は禁止されているが、単純に藁人形に釘を打つ行為のみと言うのは禁止されていない。

呪詛返しに至っては正当防衛扱いだった。

「京ちゃん…… なんかあの人変だよ」

呪詛返しによって転げまわる彼を見て呟く咲。

見れば周りの通行人もドン引きしていた。

「頭が可哀想な奴なんだ、ソッとしといてやれ。それよりもシッカリ食べとかないと後で後悔するぞ?」

優希の弁当に入っていたマカロニサラダを咀嚼しながらシレっと言う京太郎。

(自分でやっちょるのに、白々しいのォ)

まこは何があったのか正確に理解しているが、彼女も素知らぬ顔で久の弁当箱から唐揚げをつまむ。

咲達四人は転げまわる男子高校生のことを考えるのを止め、おしゃべりしながら食事を再開する事にした。



…………………

…………



対局室と控え室を結ぶ廊下にパチンと手を合わせる音がした。咲と和がハイタッチをしてすれ違う。

女子団体決勝戦、副将戦が終わりいよいよ大将戦が始まる。

現在トップは清澄高校。二位とはおよそ10000点の差をつけていた。

「あとは任せました。咲さん」

背中越しに和が咲に声をかける。

「うん、頑張るよ。京ちゃんがインターハイに出場するんだもん。私達も負けられないよ」

強い意思を込めて答える咲。ちなみに京太郎は咲の言葉通りに全国への切符を手にしている。

男子個人戦決勝は女子団体戦決勝先鋒戦と同時に始まった。

決勝のみ各自5万点持ちで一荘戦と言う変則ルール。長丁場な戦いである。

―― 攻撃力不足が須賀君の弱点ね……

練習で卓を囲っていた時に久が言った言葉だが、京太郎の現状をよく表していた。

磨かれた霊感によって防御力はトップクラスのプロですら迄ばぬ領域であったが、攻撃力はスカスカ。

お互いが点数を激しく奪い合う消耗戦においてはジリ貧になる危険性を孕んでいた。

事実、決勝では京太郎の防御力を把握した他家は端から京太郎より点数を奪う事を諦め、他の面子に対して積極的に攻撃を仕掛ける戦術を採る。

結果、京太郎は殆んど点数を失わなかったが、点数を奪うこともなく試合は終了した。

激しく叩きあいをする京太郎を除く三人、京太郎の対面が他二人からの集中砲火を浴びて一人沈み。

蚊帳の外に置かれた京太郎は棚からぼた餅でインターハイ出場枠である三位に収まる。

激しくどうでもいいことだが、京太郎は長野予選大会において放銃0と言う大会新記録を打ち立てていて『鉄壁の須賀』と言う異名が本人の知らぬ間に広がっていた。

対局室に入る前のチェックを終えた咲。対局室には鶴賀と風越の選手が到着していた。

風越の大将は池田華菜。猫のような雰囲気の少女だった。

敦賀の大将はクールビューティーといった感じの少女だ。名前は加治木ゆみ。

すこし遅れて龍門渕の大将が到着する。廊下で京太郎、まことすれ違ったうさ耳カチューシャをつけた少女だ。

彼女の名前は天江衣、去年のインターハイで大暴れした女子高生雀士の中でもトップクラスの選手だった。

(あれ? なんだろう、あの娘の後ろに見える黒い靄は……)

咲の目は衣の後ろに微かな靄を捉えていた。しかし、それは他の人間には見えていない様子だった。

咲は周りの反応から自分の目の錯覚だと思うことにした。

「それでは、女子団体決勝。大将戦を始めます!」

全員が席に着いたのを確認して審判が対局開始を宣言する。



…………………

…………




女子団体決勝大将戦、それは異様な戦いだった。

咲、華菜、ゆみは全くと言っていいほど手が進まない。聴牌すらできない有様だった。

一方の衣は場を完全に支配し連荘を重ねていた。

華菜を飛ばそうと思えば飛ばせたのに、わざと0点になるように点数を調節して直撃の点数を調整したりした。

彼女にとって麻雀とは強者である自分が弱者を蹂躙することだった。

彼女の性格が悪いわけではない。彼女の麻雀の強さは生まれて持ったものである。

そんな彼女の強さを恐れ一緒に麻雀を楽しもうとする者は龍門渕のメンバーを除いて殆んど居るはずはなかった。当然、衣は寂しい思いをしていた。

そのような状況が今の彼女を作り出したといっていい。誰が悪いと言う訳ではなかった。

そして試合だが、華菜が100点でも失点をすれば即ゲーム終了。そんなギリギリの状況は咲が華菜に槍槓を差し込むことによって解消する。

そして、運命の南三局が訪れる。

「ツモ。嶺上開花・断么・対々・三暗刻・三槓子」

咲が親の倍満を和了る。2000点の手が一瞬にして24000点に化けた。

そんな手を上がられて動揺しない者はいない。衣も驚きのあまり一瞬呆然としていた。

「清澄…… 逆転できると思っているのか?」

衣が咲に聞く。その疑問に対する咲の答えは肯定だった。

―― うん、全国に行って、お姉ちゃんと仲直りして…… また、家族みんなで暮らすんだ。

―― それに京ちゃんが全国を決めた…… だから私も、いや、私達も全国に出て、みんなで肩を並べて戦うんだ。

絆に対する咲の思い。そして、そんな絆を結べる仲間・家族がいること。

それは幼い頃に両親を亡くし、透華や一、智紀、純、歩、ハギヨシ意外に親しい人が居らず孤独の中を過ごしてきた衣には眩しすぎた。

望んでも、心の底から望んでも手に入れられなかったモノを持つ者に対する嫉妬が衣の思考をドス黒く染め上げる。

(もう…… 一切合切、烏有に帰せばいい)

その嫉妬が致命的な隙になった。孤独という負の気配に惹かれ衣に付き纏っていた悪しきモノが本格的に取り憑いた。

―― ケケケケ! 憎いんだろ? だったら全部ブッ壊せばいいんだよ!


「て、停電!」

和の驚きを含んだ声が控え室に響く。急に会場内すべての電気が落ちたのだ。

直ぐに自家発電機が周り、薄暗い非常灯が点いた。

「何があったんだじょ!?」

送電に関する保安設備が発達した現在では長時間に及ぶ停電は非常に珍しくなっている。

しかも窓から外を見れば他の建物には煌々と明かりが点いていて、停電しているのは会場の建物だけと言う異常な状況だ。

優希の声が聞こえたとほぼ同時に非常ベルが鳴り響いた。

その音に和と優希はビクッっと身を竦ませたが、久は素早く保安装置のディスプレイに目をやる。

ディスプレイには非常事態が、今、咲の居る対局室で起こっていることを示していた。

「対局室よ! 咲!!」

そう言って控え室を飛び出す久。久に続いて四人も駆け出す。


全力で走ったので直ぐに対局室の入り口に到着する。

「咲さん! 無事ですか!! っっ!!」

「咲ちゃん! 大丈夫か…… ってなんだじぇ!? あれは!?」

扉を勢いよく開けて対局室に飛び込む。

咲に安否の確認の声をかける優希と和だが、その目に飛び込んできたのは部屋の隅に固まった咲と華菜、ゆみ。

そして、目に怪しい赤い光を湛えて宙に浮いている天江衣…… いや、衣の姿をした何かだった。

(ッ!! しまった、憑き物か!)

状況を一目見て何が起きているのか正確に理解するまこ。事態を把握し、どの様に対処するか思考を巡らせる。

しかし、彼女が携帯している除霊具は神通棍二本に南部十四年式拳銃、御札数枚と玩具のような道具があと一つ、それだけだった。

京太郎の方も状況は似たようなもので、神通棍三本に Walther P-38 加えて護符数枚。

衣に悪霊が取り憑いている状況では手持ちの中で一番頼りになる拳銃は使えない。

霊的存在に効果がある銀でコーティングした弾丸は実態を持つ存在に対しても破壊的な攻撃力を持つのだから。

京太郎とまこがどう対処しようか必死で頭を働かせている時に、新たな役者が対局室に飛び込んできた。

そう、風越・鶴賀・龍門渕の部員たちだった。彼女たちも仲間が心配になって駆けつけてきたのだ。

しかし、いささかタイミングが悪いと言わざるを得ない。

「こ、衣……」

衣の異様な姿を見て呆然と呟く透華。そんな透華に気づかずに衣に取り憑いた何が喋りだす。

『ケケケッケッケケッケ!!! やっぱり実態のある体はいいなぁ! 特に若い女の体、最高だぜェ!!』

(クソッ! 自我がある奴かよ…… 最悪だな)

衣に憑いた悪霊が流暢に喋る様を見て危機感を募らせる京太郎。自我のハッキリしている悪霊はそれだけで厄介さが何倍にも跳ね上がるのだ。

事の厄介さにまこも臍を噛む。そうしている内に悪霊が動きを見せる。

『これでまた好き勝手に暴れられるぜェ~ まずは、そこの嬢ちゃん達だ!!』

悪霊がそう言うと、床に散らばっていた麻雀牌や点棒が宙に浮く。所謂ポルターガイストだった。

浮いていた物の矛先が部屋の隅にいた咲、華菜、ゆみに向かい、銃弾の様な物凄い速度で打ち出された。

「やめなさい! 衣ーー!」

『ケケケケケケケケケケケケ!!』

衣に取り付いた悪霊の暴挙を見て、それを衣の仕業として勘違いした透華が声を上げる。

悪霊には透華の声が聞こえていないらしく、ただ笑い声を上げていた。

自分たちの方に牌や点棒が飛んでくるのを見た咲達。飛んでくる牌等は何故か非常にゆっくり動いて見える。

(華菜ちゃん…… もうダメなのかな?)

(まさか霊障に合うとはな…… 良くても大怪我、最悪は…… ああ、死にたくないな……)

華菜とゆみは既に心の底では生きることを諦めていた。

(京ちゃん…… 助けて……)

咲は来ないと思いつつも心の中で困ったときはいつも助けてくれた京太郎に助けを求める。

三人は身を寄せ合い、キュッと目を瞑って最期の時を待つ。

しかし、何時まで経っても何も起こらなかった。不思議に思い三人はほぼ同時に目を開ける。


「現にて禍をもたらす怨霊、天地の理を以て命ず、退け、喼ぎ急ぎて律令の如くせよ!」

三人の目に入ったのは左手で護符を掲げ、右手で印刀を結び言霊を唱える京太郎の後ろ姿だった。

ポルターガイストを無効化し悪霊と対峙する京太郎。いつものお調子者の姿とはかけ離れた凛とした姿に咲は戸惑う。

「……京、ちゃん……」

「おう、咲無事か?」

呆然とした咲の呟きに対して気楽な声を返す京太郎。しかし、その目は厳しい光をたたえ衣に取り憑く悪霊に向けられていた。

『キサマ…… 調伏士か!!?』

忌々しげに聞いてくる悪霊。

「全く、か弱い女の子に取り憑くとは…… 趣味の悪い悪霊だぜ」

悪霊に対して挑発的な言葉を投げる京太郎。その言葉を聞いて龍門渕の四人は驚愕する。

「あ、悪霊が取り付いただぁ!? 衣になんでそんなもんが……」

井上純が疑問の声を上げる。その疑問に答えたのはまこだった。

「まぁ、悪霊が取り憑く可能性は誰にでもあるけぇ」

「大方、負の感情を利用されたんじゃろ。午前中にすれ違ったときはこんな気配はなかったがのォ」

透華達には心当たりがあった。悪霊のことではなく負の感情の方に。

透華や一、智紀、純の前では子供扱いされることを嫌い、精一杯背伸びしたような態度を取る衣。

しかし、心の内では寂しい思いをし、非常な孤独感を感じていた。

四人はそのことを知っていたからこそ衣の事を気にかけてきたのだ。

「結局…… ボク達がやって来た事って、全部無駄だったの……?」

声を震わせながら力なく一が言う。しかし、そんな一をまこが一喝する。

「アホぬかせ! わりゃぁ等が居ったお陰で、今までこんな事にまで成らんかったんじゃろうが!」

「まぁ、龍門渕の中だけで生活っていうのは少し拙かったかもしれんがのぉ。それは後じゃ、悪霊を何とかするんが先じゃな」

まこの一喝で少し気力を取り戻した透華達。

「まぁ、悪霊のことはわし等に任しんさい」

「貴女は確か…… 清澄の染谷まこ。どうにか出来るの? それにわし等?」

悪霊は自分達がなんとかするとのまこの言葉に智紀が返す。

何故そんなことが言えるのか? 考えていることが表情に出ていた。

普段はあまり感情が表に出ない智紀だが、緊急事態、しかも衣がその中心に居るので彼女もかなり動揺していた。

「あぁ、GSなんじゃ。わしとあそこで悪霊と対峙している京太郎は、な」

そう言ってニッっと笑うまこ。その表情を見て心が落ち着いたのか幾分、透華達の緊張が緩む。

すぐ傍に霊障のエキスパートのGSが居るということ、そしてまこの様子を見て何とかしてくれるのではないかという勘めいた予感がそうさせた。

透華は真っ直ぐまこの方を向き、口を開く。

「まこさん、どうか衣をよろしくお願いしますわ」

そういってまこに頭を下げる透華。彼女は普段は上から見下した言動をすることが多い。

しかし、それは将来、龍門淵という巨大なグループを先頭に立って引っ張らなければならないという責任感とプレッシャーに対する自己防御だ。

本来の彼女は仲間のためなら躊躇なく頭を下げるやさしい少女だった。

そんな透華にまこはこう答える。

「大丈夫じゃ、無事に取り返しちゃるけぇのう」


一方の京太郎、悪霊と対峙しつつもまこ達のやり取りをバッチリ聞いていた。

衣のおおよその状況を理解する。

「寂しかったんだな……」

ポツリと呟く。改めて失敗は出来ないと気合を入れ直し悪霊に向かって叫ぶ。

「こんな子供みたいに小さい娘に取り付くとは卑怯千万! このGS須賀京太郎が……」

しかし、京太郎のセリフの途中で衣の様子が激変する。

目に湛えていた怪しい赤い光は消え、纏っていた禍々しい雰囲気も霧散する。

顔は伏せられていて分かり辛いが、代わりに目に浮かぶのは僅かな涙、身に纏うのは可愛らしい怒気だった。

身をプルプルと震わせながら衣は顔を上げ、叫ぶ。

「コドモじゃない! コロモだーーーーーーーーー!!!!!!」

まさに魂からの叫びだった。

「コドモじゃない! コロモだーーーーーーーーー!!!!!!」

再び叫ぶ衣。突然のことに周りにいた全員がフリーズする。

しかし、京太郎とまこは除霊現場であることを思い出し何かあればすぐに対応できる体制を取る。

その素早さはまさに“プロ”だった。

そんな二人でも、先程何があったのか理解出来ていない。必死に思考を巡らすが、何があったのかサッパリだった。

「……一体、何があったんじゃ?」

そう呟くまこ。その疑問に答えたのは純だった。

「あー、多分子供扱いされたのが嫌だったんだと思うぜ」

衣の叫び声からおおよその感情を読み取った純。まこに説明を始める。

純曰く、衣はそのチマイ体型からいつも子供扱いされていた。一度ファミレスに入った時には子供用の椅子を素で持ってこられたことがある。

純曰く、衣は龍門渕のメンバーの中で一番誕生日が早くお姉さんとして振舞いたがっていた。

純曰く、……

衣の子供体型および子供っぽい性格に関するに幾つものエピソードを暴露。確かに子供扱いされて怒るのも理解できる。

周りに居るみんなの目線が衣に注がれる。その視線には微笑ましいモノを見るような優しい色がふくまれていた。

皆の緊張がとけ、場に溜まっていた陰の気は完全に霧散して状況は良くなったと言っていい。

しかし、何故かこの除霊現場に流れるほのぼのとした雰囲気には物申したいまこだった。

ちなみに、部屋の端っこで一と優希が何かヒソヒソと話をしている。

「ボクも小さいから衣の気持ちわかるな……」

「私も同じ気持ちだじぇ……」

チンマイ者同士で意気投合をしていた。


『グオオオオォォォォ! 何だコイツ!? いきなり俺の支配から抜け出しやがって!!』

再び衣の意識を乗っ取る悪霊。

周りの皆は再び身構えるが、京太郎をまこはハァっと溜息を付き目配せする。

コクッと頷いた後、まこは悪霊に気づかれないようにコソコソと移動を開始する。

京太郎は再び悪霊に向き合うが、脱力した雰囲気を漂わせていた。

『ギャハハハハ! さっきは油断したがもうそうはいかねえぞォ!!』

再度、京太郎は大きな溜息をつく。皆はその様子を訝しげに見ているが京太郎はお構いなしである。

腰に付けていたウエストポーチに左手を突っ込み、何かを探す。

お目当てのモノを探り当てたのか左手の動きが止まる。そして、勢いよく左手を衣の方に突き出し大きな声で叫ぶ。

「ほらほら! お兄さんが飴ちゃんあげるから、コッチにおいで~♪」

「だぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

左手に持っているのは棒に付けられた渦巻き状の飴・ロリポップ、通称ペロペロキャンディー。

ペロキャンを持ちながら小学生高学年ぐらいに見える娘に「コッチにおいで♪」という金髪男子高校生。

危ない、実に危ない光景だった。濃紺色の制服を着た公務員の方々に見られると補導は確実だろう。

いきなりの予想外すぎる京太郎の行動に周りで見ていた皆はズッ転けている。

「ワハハ…… 清澄のGSの男の方はロリコンだったのか……」

「くぉらぁぁぁぁ! そこのカマボコ口! 失礼なこと言うなァァァァァァァァ!!」

鶴賀麻雀部の部長・蒲原智美が冷や汗を流しながら呟く。

ホントに小さな呟きだったが、京太郎の耳にはキッチリ届いていて血の涙を流しながら力の限り否定する。

自身の貞操の危機を感じた一は両手で自分の身を抱くようにしておよそ三歩、智美の呟きを聞いて誤解した他の皆も一歩後ずさっていた。

何故か智紀もノリノリで一と同じ仕草をしていたが純に「お前の体型でお子様扱いは無ぇから」と突っ込まれる。

後々、京太郎が誤解を解くのに苦労するのは請け合いだった。

そして、もう一度予想外の出来事が起こる。

「衣を子供扱いするなーーーーーーーーーーーーー!!!」

悪霊に再び乗っ取られたはずの衣が叫ぶ。またまたズッ転ける一同。

衣が意識を取り戻したのだが、あのような方法で成されるとなんとも微妙な雰囲気になる。

その瞬間を狙っていたまこが衣の正面に飛び出す。

「おんどりゃぁ! わりゃぁ、ええ加減に天江衣から出て来んかい!」

広島弁で映画のヤクザのカチコミみたいな声を上げながらその両手で持っていた物で衣の顔面に力いっぱい振り抜くまこ。

スパーーーーーン! と景気のいい音を立てる手の中の獲物。

それは梵字の書かれた純白の厚手の紙(見た目殆んどケント紙)を束ねたもの…… つまりはハリセンだった。

「なんでハリセンやねん!!!」

その場にいた皆が一斉に突っ込む。関西出身者は居ないはずだがなぜか全員大阪弁になっていた。

神通ハリセン。

まこの持っていたものの名前だ。

神通ハリセンは霊力を通して叩くことによって大きな音と衝撃を生むことができる。

しかし、いくら霊力を注ぎ込んでもハリセンはハリセン。普通のハリセンとの違いは霊も叩くことができるという程度。相手に対してダメージなど無いに等しい。

一応、取り憑いた霊を叩き出すことはできるが、取り憑かれた本人に意識が有る、もしくは半分有る状態でなければ効果がなかった。

今回は衣の意識を取り戻させる方法があったから活躍したが、いつもは幽霊が参加する宴会で使うパーティグッズとしてしか使い道がない。


「フギャッ!!」

『グァァァァァァァ!!』

顔面にハリセンのクリティカルヒットを貰ってひっくり返る衣、衣から叩き出される悪霊。

悪霊も突然のことに何が起こったのか分からずに狼狽えていた。

パン! パン!

何かが破裂する音が二回聞こえると同時に香ばしい香りが漂う。

音がしたところに目を向けるとそこには銃口から硝煙を出す Walther P-38 を両手で構えた京太郎がいる。

出てきた悪霊に向かって発砲したのだ。二発とも命中し、ちゃんとダメージを与えていた。

「死んでまで世話焼かせるなや! サッサと成仏せんかい!!」

ダメージを受けて悶絶している悪霊に破魔札が叩きつけられる。

ちなみに包み紙には五萬円(安っ!!)と書かれている。依頼料を取れないと踏んだまこが経費節約を図ったからだった。

『ギャァァァァアァァァ!! 覚えてろーーーーー!!!』

破魔札をモロに食らって消滅する悪霊。何やら三流の悪役の捨て台詞を残していったが。

悪霊が完全に滅んだことを確認して、気絶している衣に駆け寄る京太郎。バイタルを取って無事を確認する。

「もう大丈夫ですよ。天江さんも無事です」

そう言って衣を抱きかかえて龍門渕のところまで運ぶ。その顔には爽やかな笑みが浮かんでいた。

しかし……

「このロリコン! 衣を離せーーー!!」

「ブベラァッッッ!!」

一の腰の入ったパンチが京太郎の顔面を襲う。ブッ倒れる京太郎。

「きょ、京太郎!!」

ピクピクと痙攣する京太郎をまこが急いで介抱する。

ちなみに衣は、京太郎が有難いパンチを頂いた時に京太郎の腕から落ちたが、純のナイスフォローによって無事だった。

まこと一の言い争いが始まった。

まこ曰く、わりゃぁ自分の仲間を助けた人間に何晒すんじゃ!!

一曰く、衣に近づかないでよ! このロリコン!!

ギャアギャア言い合う二人、風越のキャプテンである福路美穂子が仲裁に入る。

美穂子は何とか二人を宥めてまこに事の次第を説明させる。まだ殆どの人間が状況をよく飲み込めていなかったのだ。

30分ほどまこが状況を説明し京太郎の誤解が解けると、一は気まずそうな表情をする。

「あら、須賀君の頬っぺたに傷が……」

場が収まったので、濡れタオルをとってきた美穂子が京太郎の頬に付いた傷に気づく。

「ホントじゃ、仕方ないのォ」

そう言ってまこは傷をペロペロと舐め始めた。

まこの突然の行為に周りで見ていた一同は嬌声をあげる。

殆どが顔を赤~くしていた。

一部の人間はショックを受けていたが。


「な、何やってるのよまこ!」

「何って、さっき説明したじゃろ? わしは化け猫の先祖返りじゃけぇヒーリングは舐めてやるって」

久はまこに詰め寄るがあっさりと返された。

「だ、だからって…… 付き合ってもないのにそんなこと……」

「ん? 京太郎はわしの恋人じゃぞ」

「え゛っ!!」

なおも食い下がる久に爆弾発言をかますまこ。

その発言を聞いて固まる咲、優希、久。

京太郎に思いを寄せていた三人には飛びっきりの凶報だった。

「こ、恋人って…… い、いつからなんですか……」

咲が震えながら聞く。中学一年から京太郎とはずっと一緒のクラスだったが、京太郎に彼女が出来たと言った様子は全く見られなかった。

「ん~、わしが中三の時じゃったかのォ」

「さ、三年も前から…… と言うかどうやって知り合ったんだじぇ!?」

優希がさらに疑問に思ったことを聞く。

確かに、まこと京太郎は通っていた中学が違う。

二人の家はかなり近いのだが、校区の境界線を跨いでいるため違う中学校に通っていたのだ。

「どうやってって…… 幼馴染じゃからのォ。それこそ小学校の低学年以来の付き合いじゃ」

10年以上の知り合いで、三年前からの恋人。圧倒的なアドバンテージだった。

まこの言葉を聞いてorzしながら真っ白な灰になる三人。この失恋のショックは果てしなく大きい、恋が始まる前から終わっていたのだから。

衣が目を覚まし、状況が落ち着いてきた。京太郎とまこはGS免許を大会役員に提示し警察を呼ぶように指示する。

警察が到着すると大会役員と警官を残して全員を対局室から退出させ、現場検証をはじめた。

ことはオカルト事件ゆえ指揮権はGSにある。二人はテキパキと警官達に指示を出しおよそ20分ほどで検証を終えた。

さて、問題となったのは大会の運営である。

大将戦二回目の半荘の南四局で中断していたのだが、どの時点で再開するかで運営委員会が揉めたのだった。

理由はいつ衣に悪霊が取り付いたか分からないからだ。

大将戦そのものをやり直し、二回目の半荘をやり直し、南場のみやり直し、南四局のみやり直し等様々な意見が委員会で出て紛糾する。

オカルト事件発生時に関する規定が無かった故の問題だが、普通そんな事態の想定などしない。

結果、このままではグダグダになると判断した大会役員会は対戦校に意見を伺うことを決定。

清澄、鶴賀、風越女子は大将の意向を聞いた上で南四局のみのやり直しを具申した。

しかし、龍門渕が二回目の半荘のやり直しを主張し、それが採用された。


…………………

…………



「……では行ってきます……」

控え室で咲が言う。大将戦のやり直しが始まるのでこれから対局室に向かうところだ。

ちなみに咲の背後には黒いオーラが見える。

失恋のフラストレーションを試合で発散する気満々である。

「……ええ、頑張ってきなさい……」

「……咲ちゃん…… 任せたじょ」

こちらもドス黒いオーラを背負っている久に優希。

この二人に関してはフラストレーションを叩きつけるところがなく溜め込みまくっている。

ここまで混沌としていれば霊が集まりやすくなる。現にさっきから雑霊、浮遊霊が集まってきているが三人の迫力に押されて次々に成仏していった。

この様子だと三人とも霊的才能は十分に有る。

ちなみに、京太郎とまこは居心地が悪くなってコッソリと何処かに退散済み。

付け加えるが、五人の関係に罅は入っていない。三人が京太郎とまこの関係を本当に渋々ながら認めたからだ。

しかし、恋のパワーとは物凄いものである。失恋ともなれば現実を忘れて我武者羅に何かに没頭するドライビングフォースが凄い事になる。

ゴゴゴゴっと音が出そうな迫力を引き連れて対局室に入る咲。対局室の他の三人はビビりまくっていた。

「……それじゃ、始めましょう」

ニッコリと笑う咲。この試合を見ていた者は語る。この微笑みこそが後に伝説となる『清澄の白き大魔王』の誕生の瞬間であったと。

そして、この試合こそが三年間続く伝説の幕開けであったと。

敗者となった三校の大将の呻き声こそが大魔王誕生を祝う讃歌であったと……


補足しておく、衣が悪霊に取り憑かれた時にダウンした照明や中継カメラ群だが、優希と和が対局室に突入したと同時に復活していた。

長野県予選女子団体の決勝戦、当然長野県全域では中継生放送である。

京太郎とまこが除霊する場面もバッチリ長野県中のお茶の間に流れていた。

もはやGSをやっていること、二人が付き合っていることを高校の友人たちに隠す必要は無くなった。

と言うかこんな形(県内生放送)でバレるとは思っていなかったので、二人は葛藤し全てを諦めきった段階で状況の流れに下駄を預けることにした。

ちなみに和だが、対局室に突入し超常現象を目の当たりにした瞬間に、飛び込んだ時の姿勢のまま固まってしまう。

今は控え室のソファーの上に転がされていた、同じ姿勢で固まったまま。



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                Report.5 closed
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【次回予告】

抜けるような初夏の青空

青春を謳歌する高校生たちの声が響き渡る

「ねえねえ、まこ。何処までいったのよ?」

「羨ましいぜ! 京太郎」

「おっ嬢さーん!!!」


次回『Report.6;GSたちの華麗なる日常 Ⅰ 』!

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【人物・用語解説】

〈神通ハリセン〉

見た目は梵字が書かれた普通のハリセン。効果は大きな音と光が出るくらい。

使い道は幽霊が参加する宴会の余興道具ぐらいか。

開発者は大阪府出身の高校生GS、横○忠○。


〈龍門渕透華〉

龍門渕グループの総裁の一人娘。衣とは従姉妹の関係。

将来、龍門淵グループを引っ張らなければならないという責任感とプレッシャーから普段は高飛車な言動をすることが多い。

しかし、素は仲間のためなら躊躇なく頭を下げるやさしい少女。龍門渕高校の二年生。


〈国広一〉

透華や衣および仲間のためなら一生懸命になるメイド女子高生。

しかし、そのファッションセンスは痴女と言われても仕方の無い面が……

手品が得意な龍門渕高校の二年生。


〈井上純〉

背の高い龍門渕麻雀部の先鋒を勤める二年生。

その言動や雰囲気から男子と間違えられる事もしばしば。

「俺は女だ!」が口癖。


〈天江衣〉

身長およそ130㎝という超お子様体型。そのため子ども扱いされる事を極端に嫌う。

麻雀が強い星の下に生まれた。しかし、それが仇となり透華の父親による軟禁、友達が居ないボッチに。

龍門渕高校麻雀部の愛玩マスコット。部の皆とは仲がいい。二年生。


〈沢村智紀〉

パソコンが得意なロングヘアーのお嬢さん。透華の家でメイドとしてアルバイトをしている。

ちなみに感情が読み取りにくい腐女子、お腐れ様が通るぞ~! ハギ×京と言う凄まじい風評被害の源は彼女だという噂も……

かなりスタイルがいい。龍門渕高校の二年生。

はい!今日の更新はここまでです。

読んで下さりありがとうございます!

感想は大歓迎です!どんどん書いてくださると>>1のテンションが上がって更新速度が上がるかも?


それと相談なのですが、最近、第一話から見直していて加筆修正をしていました。

せっかく書き直したので公開したいなぁと思いますが、このスレに直接上げてしまうと話の順番がグチャグチャになってかなり見辛くなると思われます。

なので、どこかの小説投稿サイトにあげようかなと思っています。

>>1の知ってるサイトとしては

①ハーメルン
②Over the rainbow ~にじの彼方~
③Arcadia

などです。pixivやTinamiなどもありますが、あれは画像がメインのサイトなので除外してます。

また、③のArcadiaはサイトに投稿されている小説の傾向からこのSSは合わないと判断しています。

ハーメルンは機能の充実がすごい点で優れていて、OTRはこじんまりしたサイトなので小回りが効きそうです。

また、GSとのクロスものなのでOTRの方が良いのかな?と考えています。

相談は投稿するにあたって①か②、どちらがいいのだろうかという点。加えて他にいいサイトを知っている方が居られれば情報の提供をお願いしたいということです。

よろしくお願いします。


GS美神好きにはたまらんね

サイトの選択は悩ましいねOTRはGS美神専門のインデックスあるしハーメルンは機能充実してるし
この2つならOTRかな

>>121
感想ありがとうございます!

そうなんですよね。ハーメルンは結構規約がうるさいって面もありますし。
ただ、ハーメルンの方が利用者が多い。

今日はまこの誕生日!!

という事で、誕生日記念特別小ネタを投下します。

京太郎とまこの恋人模様をニヤニヤしながらお楽しみ下さい。


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         Extra Report.1;子どもの日の誕生日
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ピーンポーン♪

空は気持ちよく五月晴れ。そんな空にインターホンの音が溶け込んでいく。

見渡せば近所の家の庭先で鯉のぼりが気持ちよさそうに泳いでいた。

「はーい」

返事がして玄関のドアが開く。開けたのはまこの母親の妃呂子だった。

「こんにちは。まこ居ますか?」

「こんにちは、京太郎君。まこね? ちょっと待ってて」

そう言って家の中に戻っていくまこの母親。

待つこと5分、ドアが開いてまこが出てきた。

「おう、京太郎。どうしたんじゃ? いきなり」

「まこ、今日空いてる?」

「ん? 特に予定は入っちょらんが」

突然訪ねてきて、突然予定を聞く京太郎に首をかしげる。

そんなまこの様子などお構いなしに、京太郎は続ける。

「予定ないのか、良かった。じゃあ、今から街に行こうぜ」

またまた突然の提案だった。しかし、まこはクスッっと笑って答える。

「わかった。準備してくるけぇ暫く待っちょれ」




…………………

…………






「いきなり誘ってきたが…… どうしたんじゃ?」

遊びに行く途中でまこが聞く。確かに今日は祝日(こどもの日)で学校は休みだ。

しかし、他の友人と遊びに行く事も考えられるから前もって確認をするのが二人の間の習慣だった。

京太郎もまこもそれぞれ友人はいるのだから。

「まぁ、いいじゃないか。まず、昼ごはんにしようぜ」

そういてはぐらかす京太郎。まこはあまり追求しないことにした。

そのままちょっといいイタリアンレストランで昼食する二人。

ちなみに並の高校生のお財布にはかなり厳しい店だ。GSでそこそこ稼いでる二人には関係なかったが。

お昼の後はゲーセンに行って遊んだり、ウィンドウショッピングを楽しんだ。

思いっきり遊んだ二人、暗くなる頃に染谷家に戻る。

「京太郎君、ご飯食べていくでしょ? もう作ってあるから」

妃呂子が京太郎に夕食を食べていくように言う。二つ返事で答える京太郎。

夕食後のお茶を飲んでいる時に京太郎がまこに綺麗にラッピングされた包みを差し出す。


「なんじゃ? これは?」

いきなり差し出されて首をかしげるまこ。

妃呂子と真司はニヤニヤしながら二人の様子を見ていた。

「Happy Birthday! まこ」

京太郎の言葉にキョトンとするまこ。

「そう言えば…… わしの誕生日じゃったか」

まこの言葉に笑顔を引き攣らせる京太郎。

「じ、自分の誕生日くらい覚えておこうぜ…… そうだよ、だから誕生日プレゼント」

「そうじゃったか、開けてもいいか?」

自分の誕生日に全くと言っていいほど無頓着なまこだった。

京太郎から包みを受け取って、丁寧に開けていくまこ。プレゼントの中身は小さな銀色のペンダントだった。

「これは……」

「モリア銀が手に入ったから、手作りのアクセサリーにしてみたんだ」

「ハンドメイドアクセサリー……」

「どうかな?」

おずおずと京太郎が聞く。まこは暫くアクセサリーを眺め、微笑みながら京太郎の方を向いた。

「よう出来ちょる。ホントに貰ってええんか?」

「当然」

京太郎の返事を聞いて、嬉しそうな表情のまこ。手に持っていたペンダントをそのまま自分の首に掛けた。

ちなみにモリア銀は霊的な存在に対する干渉力を持っていて、モリア銀製のアクセサリーを身につけていると災いから身を守る効果がある。

産出量も少なくその霊験灼かな性質で結構な値段のする金属だ。

京太郎はまこの身を守る助けになるならとこの金属で出来たアクセサリーをプレゼントにすることにした。

「どうじゃ? 似合っとるか?」

「うん、似合ってるぜ」

まこの質問にニカッと笑いながら答える京太郎。

そんな京太郎の言葉を聞いて少し頬を染めるまこ。

妃呂子と真司も異口同音に「似合う」と言った。

ペンダントの本体はだいたい一円玉くらいのサイズで、デザインは円形の枠の中に入ったセーマンだ。

モリア銀は鋼以上の硬さと粘りを持つのでかなり細く作っても十分な強度を保つ。

大きさのお陰で着けてても目立つような代物ではなかったが、その細工は結構上手になされていて素人の作とは思えない。

セーマンの一辺々々には魔除けの祝詞が刻まれていた。


「それにしても素人の出来とは思えんのォ~、どこかの工房にでも弟子入りしたか?」

ケラケラと笑いながら京太郎に聞くまこ。

「実は、3~4ヶ月前から銀細工の工房に教えてもらいに行ってた」

ハハハっと笑いながら返す京太郎。

まこは自分の為に色々考えてくれていた京太郎の気遣いが嬉しかった。

京太郎の首に手を回して抱きつきキスをする。

「ホントにありがとうのォ、京太郎」

ちなみに、まこの両親は既にこの場に居なかった。

母親は台所で片付けの続き、父親は雀荘の経営書類のまとめをしに書斎へ行っていた。

その後、居間でテレビを見ながらおしゃべりをする二人。

真司が書斎から戻って来て、京太郎に「泊まっていきなさい」と言う。もうすでに須賀家へは連絡済みと付け加えて。

翌日も振替休日で学校は休み、当然の如く泊まることになった。

京太郎とまこは小さい頃からお互いの家にお泊りをしてきている。

その時に寝る部屋はまこの部屋、および京太郎の部屋だった。

今回も何時もの様にまこの部屋に布団を敷いた京太郎。しかし、その布団が使われることは無く、まこのベッドが二人分の重量を支える羽目になった。

しかも、激しい振動というおまけ付き。

裸で毛布にくるまり朝を迎える二人。その目から寝不足の気配が漂っていたが、二人とも充実した幸せそうな表情をしていた。

後にまこは語る。京太郎手製のモリア銀のアクセサリーも非常に嬉しかったが、一番嬉しかったのは京太郎の愛であったと。



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             Extra Report.1 closed
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以上です。

>>126で酉を忘れるというミスをしてしまいました……orz

いかがでしたか? 感想は大歓迎、と言うか積極的に書き込んでください。

本編はもう暫く時間がかかりますので、ご了承ください。

あと、投稿する小説サイトの方は今、検討中ですので決まり次第連絡させていただきます。

Night Talkerは何回も行っていたのに素で忘れてたという事実……orz

読んでくださってありがとうございます。

まこの誕生日が近づいてることに気づいたのは最近。
なので時間がなくて、こんな薄いものになってしまった……orz

もう少し早く気づいていれば

予告です。

明日の夜にReport.6の投下をします。
良ければ読みに来てください。
お楽しみに~

それではそろそろ投下します。



インターハイ長野県予選の翌日、つまりは平日である。

いくら大会で疲れているとは言え学校へ行かなければいけないのが学生の辛いところだ。

登校時間にはチョット早い時間帯。早朝の清々しい空気が通学路を包むなか京太郎とまこが一緒に登校している。

「ふぁ~~~~っ……」

大きな口を開けて欠伸をするまこ。少々寝不足のご様子。

昨日の予選会での霊障騒ぎの一切合切が長野中のお茶の間に中継されたことを知った二人は愕然とした。

高校の友人たちにGSをやっている事を隠していたので、何とかしてもみ消そうと考えた。

しかし、リアルタイム生放送という壁の前ではどうする事もできず、結局隠すことを諦めた。

ヤケクソになったとも言う。

ちなみに、事実を知ったのが対局室に居た人間+大会関係者だったらオカルトアイテムや呪いを使って記憶を消し、箝口令を敷いてでも揉み消すつもりだった二人。

かなり物騒な話である。

「大きな欠伸だな、まこ」

京太郎が言うと。

「眠いんじゃけ、仕方ないじゃろ」

そうまこが返す。

ちなみに、昨日は解散した後まず須賀家へ大会の結果を報告に行き、次に染谷家へ報告へ行った二人。

晩御飯をまこの家で食べて、京太郎はそのままお泊まりの流れとなった。

京太郎がどこの部屋で寝たかは秘密である。

「しかし…… 絶対学校の皆にはバレてるからな。これから面倒くさいことになるかもな」

「まぁ、入学時に校長には全て承知してもらってるけぇ、先生方を丸め込むのは簡単じゃ」

「ハァ、問題はクラスメイトか……」

京太郎がそう言うとまこは遠い目をして空を見上げる。

「確かにのォ。自分のクラスメイトがGSだったとか、こんな盛り上がりそうな話題をスルーするような奴らじゃないからのォ」

二人の幸先は微妙そうだった。



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           Report.6:GSたちの華麗なる日常 Ⅰ  
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時が進んで、中休みの京太郎のクラス。

「おう、京太郎! 羨ましいじゃねか、この野郎!」

声を掛けてきたのは辰野梓。以前、学食で咲にレディースランチを代わりに頼んでもらった時に「いい嫁さんだな」と京太郎をからかった前歴がある。

高校に入ってからの友達で憎めない性格の男子だ。

「GSって言えば稼げる職業の代表格じゃねえか! しかも幼馴染の恋人もGS。高1にして将来安泰ってか? 勝ち組は羨ましいね! こんチクショウ」

京太郎にヘッドロックをカマしながら言いたいことを言っていく梓。そのセリフが何故か嫌らしく聞こえないのは偏に彼の人柄のお陰か。

取り敢えずヘッドロックが鬱陶しかったので、梓の腕を振り払う京太郎。

周りを見ればクラスメイトが何人か集まってくる。教室に居る他のクラスメイトも京太郎たちの会話に耳を傾けていた。

「本当にね。須賀君がGSって知ってたら唾つけてたのになぁ」

冗談半分にクラスメイトの女子が言う。以前からクラスの女子の間で京太郎は人気があったのだ。

顔良し、社交的で性格良し、成績もソコソコなので人気が出ない方がおかしい。

加えてGS資格持ちの超優良物件、まこと言う恋人がいなければ争奪戦が起きたことだろう。

クラスの女子達がキャピキャピ騒ぎ始めたのを見て、ジト目を京太郎に向けてくる野郎たち。

そんな浮ついた雰囲気の中、キッっと表情を引き締める梓。この切り替えの良さが彼の良いところだ。

「で、京太郎。ここからは真面目な話だ。本気でアレどうにかならないか?」

そう言って親指で背中越しに後ろを指す梓。その親指の指し示す先には冥界が広がっていた。

頭を机に伏せてダークなオーラを撒き散らす咲。そのまま地面に沈んでいきそうな雰囲気だ。

咲と同じ図書委員の女子3人が心配して声を掛けたり、揺すったり、鉛筆で突ついたりしているが動く気配は一向に無い。

耳を澄ませばシクシクと小さな声が聞こえてくる。

「あの一帯だけ異界と化してる……」

冷や汗を流しながら一言呟く京太郎。

「原因はどうせ京太郎、お前だろ? 教室全体が異界に飲まれる前に何とかしろ。胃に悪い」

「何とかしろって言われても…… 俺が慰めたって火に油…… いや、ニトログリセリンか」

梓の何とかしろ発言に、京太郎は不可能と返す。

原因が京太郎相手の失恋なので京太郎が慰めるのは正に逆効果だった。

ちなみに、咲は登校して席に着いてからずっとこの状態。一時間目と二時間目の担当教師もあまりの不気味さに見てみぬ振りをした。

中休み終了のチャイムが鳴り三時間目が始まる。三時間目の担当教師も咲の様子を見て触らぬ神に祟り無しの態度を決めた。


時が進んで昼休み。用事があると言って京太郎は早々に教室を出て行った。

未だ教室の一部は咲を中心とした異界と化している。

正直言えば今の咲に近寄りたいとは思わない。クラスメイト達がどうするかと悩んでいるとガラッと教室の扉が開く。

「……すみません、咲さん居ますか?」

教室に入ってきたのは和だった。清澄高校で五本の指に入るアイドルのご降臨にいつもならクラス中の男子のテンションが天元突破! するのだが今回ばかりは違った。

咲も原因の一つではあるが、和が左手で引き摺っているモノが大きな原因だ。

和の左手で引き摺られているのは優希だ、なお真っ白に燃え尽きて口から魂が出ている。

いくら清高男子イチ押しのアイドルでもそんな地球外物質がオマケで付いていてはテンションなど上がりようはなかった。

「あ、あぁ…… あそこで物言わぬ冥界の主と化してるぜ……」

梓が冷や汗を垂らしながら答える。

「ありがとうございます、辰野君。咲さんに用事があるので連れて行きますね」

梓に礼を言い、咲を連れて行くと宣言する和。

ツカツカと一時間目から微動だにしていない咲のところに歩いていく。

もちろん優希は左手で掴まれて引き摺られたまま。こちらもピクリとも動かない。

咲の傍まで行くとムンズと咲の制服の後ろ襟を右手で掴む。

そのまま右手に咲、左手に優希を掴んで引き摺り教室の入口まで歩いていく。

「すみません、咲さんをお借りしますね。お騒がせしました」

入口で振り向きそう言って教室から出て行った。あとに残されたクラスメイト達は突飛な事態に思考が停止していた。

「……一体何だったんだ?」

梓の呟きがクラスの全員が思っていたことだった。


教室を早々に出た京太郎だが、二年生の教室に向かっていた。

京太郎の目的は当然まこだ。生徒指導にまこ共々呼び出されていたので迎えに行くのだった。

そのまこだが、教室でクラスメイトの女子とお喋りをしている。

「ねぇ、まこ。須賀君と何処までいったのよ? A?B?C?」

お喋りではなく女子主導の尋問が行われているようだ。当然、こちらでもGSや恋人関係のことは完璧にバレている。

高校二年生という箸が転がっても可笑しい年頃の女子達だ。こんな美味しい話題に喰いつか無い筈は無い。

まこは5~6人の女子に囲まれて顔を赤くしていた。

「え、ええじゃろ。そんなこと……」

「隠さなくてもいいじゃない、早く吐いた方がいいわよ~♪」

何とか追求を躱そうとするまこだが、クラスメイト達の好奇心に満ち飢えた獣の様な目に追い詰められついに自白してしまう。

ちなみに、まこの周りに集まる女子の数はどんどん増えていた。

「シ、Cじゃ……」

陥落したまこの口から出た言葉を聞いて、場が一気に盛り上がる。

ちなみにまこ、京太郎相手なら恥ずかしい発言を平気で出来るがクラスメイト相手には免疫が無く顔を真っ赤にして小さくなっていた。

そんなまこを見て場はさらにヒートアップしていく。そして、まこと特に仲が良い女子がソーっとまこの背後に回る。

「もう! まこったらカワイイ♪」

「うにゃぁ!!?」

背後からまこに抱きつき、制服の下から手を突っ込んで直に胸を鷲掴み、そして揉み始めた。いきなりの事に驚いてまこの猫耳と尻尾が出てきてしまう。

女子同士の絡み合い、しかも片方は猫耳少女と来ている。当然の如くガン見する男子が多数出現した。

「おおっ!! 猫耳萌え! ぶげらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

破廉恥な男子に向けて無数の上履きや筆箱が投げつけられる。中には広辞苑や鉄亜鈴など危ない物も混じっていた。

過激な制裁を喰らって撤退する男子陣。魔女達のサバトは激しさを増す。

「や、止めんさい! うにゃあぁ……!」

涙目になりながら手足をバタつかせ必死に抗議するまこ。しかし、火の付いた女子高生に怖いものなど無い。

胸は未だに揉まれていて、挙句の果てには猫耳や尻尾をモフモフする女子まで現れて完全に揉みくちゃだ。

壁の方を向いて「色即是空・空即是色」と呟く男子まで現れて教室は完全にカオスな空間と化す。

そんな中、ガラッと扉が開き京太郎が姿を現した。

「すみません。一年B組の須賀京太郎と言いますが、染谷先輩は居られますか?」

まこにとっては天の助けだった。

「きょ、京太郎~……」

京太郎の姿を見てまこは魔の手を振りほどき京太郎の方に歩み寄っていく。

教室に入った瞬間に何が起こっていたのか見えていたので表情を引き攣らせる京太郎。取り敢えず要件を手短に話し、この場からの撤退を決める。

京太郎に手を引かれて教室を出て行くまこを見送るクラスメイト達。

廊下から「京太郎~…… わし、もう嫁に行けん……」「俺が貰ってやるから泣くなって……」と言う会話が聞こえてくる。

教室の隅に目をやると即席の藁人形に釘を一心不乱に打ち込み「リア充爆発!」と叫ぶ男子が幾人か。

この手の人物は何処にでも必ず湧いてくるようだ。キッチリ京太郎の呪詛返しを喰らって悶えていたが。


同じ頃の麻雀部の部室。部室には和と咲、優希、久の姿がある。

咲と優希は相変わらず、久も二人と同じように屍と化している。教室でも咲や優希と同じようにタルタロスに沈んでいた。

ピクリとも動かない三人が何故ここに居るかというと和が運んだから。

ちなみに優希をアルゼンチンバックブリーカーみたいに担ぎ、左手で久、右手で咲を掴んで引き摺って来た。

途中ですれ違う生徒達は皆一様に引いていたが、そんな事を気にする和ではなかった。

三人をソファーに座らせ溜息を付く和。

「……さて、水でも被せて目を覚まさせたいところですが……」

「制服と部室がズブ濡れになりますし…… 何よりその程度では目が覚めそうな様子でもないですね」

そう呟くと取り敢えずこの状態で話をする事にする。

「三人とも失恋して悲しいのは解りますが、どうしようも無いですよ? 須賀君と染谷先輩の様子を見てたら割り込むなんて出来ませんよ」

いきなりド直球で切り込む和。三人の背負う闇がさらに深くなったようだ。

その後も和は容赦ない直球で説教する。三人のライフはゼロを通り越してマイナスの域に達しつつあった。

「まぁ、須賀君に本心から惹かれたからその落ち込み様なんでしょうけど……」

和にはある解決方法が浮かんでいたのだが、この場で口にするのは避けることにした。

(“妻妾同衾”や“二号さん”って言う手がありますけど…… 今の三人の状態では提案なんか出来ませんね)

かなりロクでもない解決方法だった。

(私としては修羅場を見てみたいのですが、須賀君と染谷先輩の関係と麻雀部の状況を考えると明らかに地雷ですし…… 収拾がつく状況でこそ修羅場は楽しいですから)

そう心の中で溜息をつく。昼ドラの見過ぎではなかろうか。

その後もキッツイ言葉で諌める和。昼休み終了のチャイムが鳴るがお構いなしに説教を続ける。

和本人はショック療法の積もりだが、当事者達としてはキツイにも程がある。

まぁ、この説教が切っ掛けで部活が始まるまでには現実に戻って来れたのであながち無駄ではなかったが。


…………………

…………




時はさらに進み放課後。色々なクラブの部活が始まり騒がしくなってくるが、麻雀部の居る旧校舎は人気が少なくひっそりとしている。

まこと京太郎は昼休みに生徒指導の先生に呼ばれて「高校生がアルバイト以外で稼ぐなどけしからん!」と言われた。

しかし、長野県のGSの状況に加えて校長が二人を援護したので早々に生徒指導部を丸め込んでしまった。

「こんにちは~、遅くなりました~」

そう言って部室に入ってくる京太郎。もうすでに5人とも揃っていた。

咲や優希、久も既に我を取り戻し普通に5人で談笑をしてる。京太郎はその様子を見てホッと安心の溜息を吐く。

そんな京太郎を見て和がスッと寄ってきて耳打ちをする。

「私が話をしておきましたから、もう大丈夫だと思います」

「和が? サンキュー、この埋め合わせは必ずするから」

ヒソヒソと話をする中で、京太郎は和のことだから淡々と説得したんだろうと想像する。

直球で切り込み凹ませまくるショック療法を採ったなど微塵も想像出来なかった京太郎だった。

京太郎の到着で全員が揃ったので部活が始まる。

ちょうどその頃、清澄高校の校門前では三人の男女の姿があった。


「フッ…… ここが清澄高校か……」

「ヨコシマ、全く似合ってないから。無駄な事せずに、サッサと用事済ませて長野のきつねうどん食べに行くわよ」

頭に赤いバンダナを巻きジーパン・ジージャン姿の少年・横島忠夫が格好を付けつつ言うが壊滅的に似合っていなかった。

それに突っ込むのは見事な金色の髪をナインテールにしたクールな雰囲気の少女タマモだ。

「悪かったな! ワイかって一寸は格好つけたいんやーー!」

タマモの容赦ない突っ込みに涙を流して激しく抗議する横島。それをもう一人の黒髪ロングの美少女・氷室キヌが宥める。

「ま、まあまあ横島さん。タマモちゃんも本心から言ったんじゃ……」

「あら、魂魄の奥底からの言葉よ、おキヌちゃん♪」

ニシシっと意地悪い笑みを浮かべながらおキヌに言うタマモ。完全に遊んでいる。

「こらーーー! タマモーーー! 成敗しちゃるからそこに直れーーーー!!!」

「よ、横島さーーん! 落ち着いてーーーー!!」

霊波刀を出して振り回しつつ叫ぶ横島。そんな横島を止めようとしがみ付くおキヌ。

傍から見れば出来の悪いコントそのものだった。

そんな三人を見てクスクス笑う存在がある。アシュタロス戦後に横島の式神として復活したルシオラだった。

ちなみに彼女、魔族の時の格好で身長は約40㎝ほど、しかも二頭身だった。

「フフフ、ヨコシマと居ると本当に飽きないわ♪」

ギャアギャアと騒ぎながら清澄高校の敷地を歩く三人と一体。

すれ違う生徒たちのほとんどはタマモとおキヌの容姿を見て振り向く。

中には、横島の姿を見て「何であんな三枚目と……」と血涙を流して悔しがる男子も結構混じっていた。


「残念だったな優希、それロンだ。清一・一盃口・ドラドラで倍満だ」

手元の牌を倒して宣言する京太郎。一方、直撃を喰らった優希は頭を雀卓にぶつける。

「……あんな待ち予想しなかったじぇ……」

「これで終了ですね」

結果は和が一位、二位に京太郎、三位がまこで四位に優希だった。

戦局としては南三局まではまこ、和、優希の点数の取り合いで、南四局に京太郎が倍満を和了ってまこと優希を捲った形だ。

ちなみに三人娘、虎視眈々と京太郎から直撃を奪おうとしていたが今回も無残な失敗に終わっている。

「……ホント、須賀君の防御は硬いわね」

久が呟く。現在、京太郎は連続無放銃記録を更新し続けている。

まこと京太郎が席を立ち、代わりに久と咲が座って「それじゃ、次の対局~」と言って席決めを始めた時に部室の扉からノックが聞こえてきた。


まこが「はい、どうぞ」と声をかけると、ガチャっと扉が開きおキヌが顔を覗かせる。

「すみませ~ん、美神除霊事務所の者ですけど。須賀京太郎さんと染谷まこさんはいらっしゃいますか?」

京太郎とまこの客と言うことで部室に入るよう久が促す。

ペコリとお辞儀をしておキヌが入室するとそれに続くようにタマモ、横島が入ってくる。

ちなみに横島、霊力の源が煩悩などと言う非常識な人間だ。それに見合うかのように女性についてはだらしが無い。

女性のほうから迫られるとビビッて手を出せないヘタレでもあるが。

京太郎もスケベな性格をしているが、横島の煩悩は格が違う。

一般人の煩悩が米粒くらいの大きさとすると、京太郎のは胡桃ほどの大きさで横島はフタゴヤシの実くらいと言えるだろう。

文字通り桁が違った。ちなみに、京太郎はまこが完全に手綱を握っているため表に出る煩悩は一般人程度だったりする。

そんな横島が和を見て何もしない筈は無かった。

「おっ嬢さーん!!!」

そういって人知を超えた跳躍を見せる横島。その素早さゆえ誰も反応することが出来なかった。

和から見れば奇声を上げながら飛び掛ってくる不審人物そのもの、当然貞操の危機を感じる。

「きゃあぁぁぁあぁぁぁぁああぁぁぁぁ!!」

「生まれる前から愛してましたーーー…… ぶげらぁぁ!!」

防衛本能のままに拳を突き出す和。目を瞑っているので咄嗟に出たのは間違いないだろう。

和の拳は横島の顔面に吸い込まれるようにヒットする。

奇妙な叫び声を挙げて床に沈む横島。かなりのダメージを受けていたが彼の連れ達がそんな程度で許すはずは無い。

「よ~こ~し~ま~さ~ん! 私と言うものがありながらーーー!!」

怒りの声を上げながらネクロマンサーの笛を吹き鳴らすおキヌ。ニコニコと笑顔だが目が一切笑っていなかった。

おキヌに操られた雑霊が横島に攻撃を仕掛ける。

「ヨコシマーーーー!!! 私の前で、流石に許せないわよ!!」

最大出力で霊波砲を撃ちまくる式神・ルシオラ。こちらもかなり怖い笑顔だった。

ちなみにその霊波砲、下級魔族なら一撃でノックダウンする威力がある。

「……ヨコシマ、とりあえず燃えなさい」

こちらは冷静そうな表情で狐火を出すタマモ。よく見ると額にいくつもの青筋が浮かんでいるのが見える。

無数の雑霊と霊波砲に打ち据えられ狐火に焼かれる横島。自業自得とは言え凄まじい光景だ。

「かんにんやーー!!  しかたなかったんやーーーーー!! あんな立派なちちを見ると欲情するのは男の性なんやーーーー!!」

謝りつつも言い訳を口にする横島。しかし、彼の「あんな立派なちち」と言う発言がおキヌたち女性陣の怒りの火に油を注ぐ。

そしてさらに折檻は過激になっていく。

「あんぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!!」

地獄の責め苦もなんとやら、むしろこちらの方がキツそうだった。

目の前で突然始まった殺戮ショーを見て京太郎とまこを除く麻雀部の面々はお互いの体を抱き合ってガタガタと震えている。

京太郎とまこはあまりにも予想通りの展開にそっと溜息をついた。


しばらくして折檻大会が終了する。そして、横島達が京太郎とまこを尋ねてきた用件を済ませる。

ちなみに横島は折檻終了から僅か20秒で完全復活を果たし、麻雀部の面々は横島のことを地球外生命体ではないかと考えていた。

横島達がわざわざ長野まで来たのは山梨で大きな除霊を行うので協力を依頼するためだ。

この協力依頼の交渉はすんなりと進む。京太郎達も手に負えない物件で美神除霊事務所などに協力を求めたりしているから持ちつ持たれつの関係なのだ。

撃墜されてから交渉が終わるまで横島は学校用イスに縛りつけられていた。加えて和は横島から10mほど距離をとっている。

飛びかかってくる変態がよほど怖かったのだろう。

交渉が終わると久が「せっかく訪ねてきたんだから麻雀やりましょう」と提案する。


…………………

…………




卓についたのは咲、和、優希、横島の4人。咲はやる気満々、和は警戒心MAX、優希は京太郎にタコスをねだっていた。

和に対するセクハラ前科一犯の横島君。連れの3人が即応体勢に入って警戒しているので冷や汗をダラダラと流していた。

要らん行動を起こせば即座に撃墜されること請け合いである。

横島の冷や汗であるがもう一つ原因がある。それは、東京を出発する直前に美神令子が笑顔で――

「須賀君とまこちゃんね…… 麻雀部に入ってたっけあの二人。久しぶりに会う友人なんだから一寸くらい麻雀で遊んできてもいいわよ」

「……でもやるからには必ず勝ってくるのよ。美神除霊事務所に負けは許されないんだから。……もし負けて帰ったらどうなるか、分かってるわよね?」

――と素晴らしい笑顔で宣ってくださった。

(麻雀競技のインハイ出場選手に麻雀で勝てる訳あらへんやろーー!! 美神さんのアホーーーーー!!!)

内心で滝のような涙を流し喚きまくっていた。

チラッとメンツの様子を伺ったが3人が3人とも手加減する気など一切なさそうである。

優希など「優希ちゃんの足元に跪かしてやるじぇ!」などと挑発する始末。

さらにワクワク顔の咲からは伊達雪之丞に似たバトルジャンキーらしき気配が漂ってくる。

唯一まともそうなのは和だが、彼女はインターミドル王者。しかも先ほどのセクハラ行為の報復をしてくる可能性が非常に高い。

結論から言うとルールを知っているが多少打てるだけの横島では丁度いいカモでしかなかった。確実にボコボコにされるだろう。

(アカン!! 負けて帰ったら地獄の折檻フルコース…… そんなん嫌じゃーーーー!!!)

状況的に見れば既に詰んでいると言っていいだろう。しかし、絶体絶命の状況から大逆転を遂げるのが横島忠夫の本領だ。

もちろん逆転の手段が真っ当と言える事は殆んど無かったが。

(!! インハイの麻雀は確かフリースタイルだけだよな。能力使用はOKのはず、なら霊能力も能力といえば能力だからOKだな!!!)

何かロクでもない手段を思いついたようだった。

(……横島のやつなんかロクでもない手を思いついたようじゃのォ)

横島から漂う良からぬ気配に敏感に反応するまこ。この辺の人の意思に対する敏感さは化け猫の祖先を持つ恩恵か。

同じようにタマモもなにか感じ取っているようだ。

(まぁええわい、言い方は悪いがこの対局はお客さんとのお遊びみたいなもんじゃからな)

そうこうしている内に対局が始まる。

この時、横島がこっそり文珠を取り出し発動させたのに誰ひとりとして気づかなかった。

ちなみに込められた文字は――

   『役』『満』『御』『礼』

――の4文字だった。


咲、和、優希が麻雀卓に突っ伏し頭から煙を出している。現在、東二局。優希がハコで対局が終わったところだった。

周りで見物していた6人はあまりの出来事に目を丸くし戦慄している。

肝心の横島は大量の汗を流しつつ――

「か、勝った…… こ、これで地獄の折檻フルコースは回避できる……」

――と呟いていた。

ちなみに対局はどんな様子だったかというと、東一局で横島が地和をツモり、東二局の三巡目で横島が優希から国士無双をロンして飛び終了だった。

横島のあまりの豪運ぶり(?)に危機感を覚えた久は取り敢えずメンツを総入れ替えする事にした。

次に卓についたのは麻雀をよく知らないおキヌにタマモ、ルシオラ、そして3人と知り合いのまこだ。

麻雀初心者の3人には先程卓についていた3人が付きアドバイスしながら打っている。

当然まこは手加減している。その光景は初心者相手の麻雀教室そのものだった。

そんな微笑ましい光景を見つつ横島に寄る京太郎。ヒソヒソ声で話しかける。

「……横島さん。文珠使ったでしょ?」

京太郎の声を聞いてビクッと体を震わせる横島。

「な、何の事かな…… 京太郎……」

冷や汗を流しつつぎこちなく答える。態度でイエスと言っているも同然だった。

「ハァ…… フォローするのも大変なんですから少しは考えてくださいよ……」

どうフォローするか、京太郎の悩みは深そうだ。


「只今、戻りましたーーー」

美神除霊事務所に帰還した横島達。まずは交渉の件について美神に報告する。

報告を聞いた美神は笑顔で帰ってきた3人と1体をねぎらう。

「4人ともご苦労さま。ちょっとは親交を深めてきた?」

質問する美神。それにおキヌが答える。

「ええ、麻雀教わってきました。すごく楽しかったです!」

「そう良かったわね。ところで横島くん…… 勝ったの?」

眼光鋭く横島に質問を飛ばす美神。当の横島は拳で胸をたたいて当然とばかりに答える。

「ワハハハハ! 当然ですよ、美神さん!」

対局の流れさえ知られなければバレる事はない。そう思っている横島だが思わぬところから破綻する。

「美神さん聞いてください! 横島さん凄いんですよ! 東二局で麻雀部の人を飛ばして勝っちゃったんですから!」

興奮気味に話すおキヌ。横島は大量の冷や汗をかき始めていた。

「へぇ、詳しく聞かせてくれない? おキヌちゃん」

おキヌの言葉を聞いて対局の詳細を聞いてくる美神。

おキヌがまるで我が事のように嬉しそうに話していく。それに連れて横島の顔色はどんどん悪くなっていく。

(イカン!! このままでは美神さんの無慈悲な尋問が始まってしまう!)

絶望的な思考に囚われる横島だった。

「横島くん、凄いじゃない!」

しかし、横島の懸念とは反対に横島を褒める美神。懸念が外れた横島は鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をする。

そしておキヌも褒め称えるのでドンドンその気になっていく横島。当初の懸念は無限の彼方へブッ飛んでいった。

横島忠夫、単純な男である。

「で、何文字だったの?」

「ワハハ! 実は四文字で。 ……あれ?」

さり気なく聞いてくる美神。その気にさせてから致命的な質問で自白させるその手腕は見事の一言だった。

そしてアッサリ白状する横島。気づいた時にはもう遅かった。

美神の方に目をやるとそこには地獄の閻魔も裸足で逃げ出す夜叉が居た。

「よーこーしーまーくぅぅぅぅン!! たかが麻雀なんかに文珠を使うなーーー!!! このバカタレーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

「かんにんやーー!!  しかたなかったんやーーーーー!! 麻雀部員に勝つにはあれしか無かったんやーーーー!!」

「問答無用ーーーーーーー!!!」

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!!」

こうして開始される地獄の折檻フルコース。おキヌはオロオロと狼狽し、タマモは我関せずにきつねうどんを啜る。

人狼の犬塚シロが部屋に入ってきて空気を読まずに「せんせー、散歩行くでござる」と言って美神に睨まれスゴスゴと引っ込む。

そしてルシオラがヒーリングの準備をバッチリ整えて笑顔でこの光景を眺めている。

これが美神除霊事務所の日常である。

ちなみに横島達が帰った後の清澄高校麻雀部の部室では、京太郎がフォローするまでもなく立ち直った咲達が打倒横島を合言葉に更なるレベルアップを誓い合っていた。




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                Report.6 closed
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【次回予告】

長野のとある温泉付きの施設。

ここに長野県予選の女子団体決勝を戦った四校の選手が集まった。

「あ、あれ…… そうだったっけ……?」

「そう連絡したはずだが?」

「部長…… それはあんまりです……」


次回『Report.7;四校合同麻雀合宿!! Ⅰ 』!


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【人物・用語解説】

〈GSの状況〉

現役のGSの9割9分は東京首都圏、名古屋都市圏、京阪神都市圏に集中する。
Cランク以上のGSに至っては極めて特殊な例外を除いて全員が3都市圏にしか常駐していない。
Aランクの京太郎とまこが居る長野県はその例外の一つ。


〈美神令子〉

日本最高のGSの一人。その美貌と除霊技術から知名度は抜群。
しかし、金にがめつい。脱税も数え切れないほど、国税局のブラックリスト№1に輝いていると言う噂も。
身内には甘い面があるが、横島のセクハラ行為には容赦なく折檻する。
魔族曰く、魔族より悪どい。
最近、横島に気があるような言動がよく見られる。


〈横島忠夫〉
 
ご存知、煩悩大王ことセクハラ大魔王。美神除霊事務所の除霊助手の高校2年生。
生身で大気圏突入をしても記憶喪失で済んでしまうなどゴキブリをも凌駕する生命力の持ち主。
霊能力を使った格闘戦では美神を凌駕するなどかなりの実力を持っているが知識が不足しているためGSとしては二流。これからの経験に期待か。
文珠の使い手であり唯一作ることができる万国吃驚人間である。
ロリコン・ペドと言われると激しく否定する。


〈氷室キヌ〉

美神除霊事務所に下宿している六道女学院の1年生。
300年前に人柱になったが反魂の術で現代に蘇ると言う、ある意味横島と肩を並べる非常識な経験の持ち主。
世界に数える程しかいない一流のネクロマンサーである。美神除霊事務所除霊助手。
横島にほのかな恋心を寄せている。しかし、ライバル多数でヤキモキすることもしばしば。


〈ルシオラ〉

地獄の大公爵アシュタロスによって作られた魔族。
アシュタロス事件の際横島の人柄に触れ恋人になり、アシュタロスを裏切り人間側に味方する。
事件解決直前に瀕死の横島を助けるために自身の霊基構造を分け与え消滅する。
その後、ハヌマンの協力によって奇跡的に横島の式神として復活を果たした。
小さい胸を気にしている。ちなみに年齢は“0歳”!


〈犬塚シロ〉

数少ない人狼族の少女。父親の敵を討つべく人狼の里を出てきた時に横島に出会う。
その際、横島の霊波刀に感服し弟子入りを志願する。
現在は美神除霊事務所の除霊助手として住み込みで働いている。
しょっちゅう横島に引っ付くのは恋心かも?

〈タマモ〉

美神除霊事務所で保護されている金毛白面九尾の狐の少女。ナインテールにした金色の髪の毛がチャームポイント。
殺生石から復活した際に自衛隊や美神に除霊対象として追い掛け回されるも横島の機転により保護されることに。
きつねうどん大好き。現在は除霊助手として活躍中。
人間と人外を分け隔てなく接する横島に惹かれている模様。

はい、今回の投下は以上です。
ちょっと、文量が足りないかな?

今回、横島くんにはピエロ役を徹底的に演じてもらいました!

次回の更新も少し時間がかかると思いますのでのんびり待っていてください。
このスレは感想大歓迎ですのでどんどん書いてください。

……本日の23:00から一時間の間に10人の人がキンクリと書き込んだら5月中にR-18を書こうと思います。

う~む…… 一時間で10人はこのスレではキツ過ぎるか……
では明日の23:00までで5人に変更。

キンクリ:9(内16日分:4) クリキン:1

二回目の人の可能性を入れても規定数に達しました。
なのでR-18を書きます。5月中ということですので最悪5/31の可能性もあります。
これからもこのスレをよろしくお願いします。
駄作ですが完結を目指すので末永くお付き合いください。

連絡です。

以前に通知していた改訂版の掲載サイトですが、Over The Rainbow ~にじの彼方~の管理人様から許可を頂きました。
まだ、本文の公開は始めていませんが、サイトが決定したことをお知らせいたします。
本文の公開が始まりましたら詳細を改めて連絡させていただきます。

R-18ですがやはり月末になりそうです。もうしばらくお待ちください。

再度の連絡です。

昨日から『Over The Rainbow ~にじの彼方~』の方で改訂版の掲載が始まりました。
現在2話まで公開しています。


『Over The Rainbow ~にじの彼方~』ではハンドルネーム:エルクカディスを名乗っています。
URLですが、http://nijikana.ddo.jp/index.php/page/elkcadizになります。
こちらは私の公開ページのリンクです。
今後ともよろしくお願いいたします。

忘れていました……

タイトルも『Over The Rainbow ~にじの彼方~』では『GS染谷の忘備録』に変更していますのでよろしくお願いいたします。

スミマセン……

5月中と言いましたが、リアルが色々立て込んでまだ書きあがっていません……
来週中には投下するので何卒ご容赦を!

約束守れないクズな>>1で御免なさい……

本日12時過ぎに投下しますね。
遅くなって申し訳ない。

それじゃ、投下行きます。
かなりコレジャナイ感があるかもですから気をつけて下さい。

あと【R-18】なので18歳未満の方はソッ閉じもしくはスキップして下さい。


6月のとある平日、太陽がもう少しで顔を出すと言う時間。

まこの家のガレージに車体をオリーブドラブ一色に塗られた側車付きのKLX250が滑り込んだ。まこが運転し京太郎は側車に乗っている。

二人共かなり疲労していてヘロヘロだった。

「クソ~…… 新聞配達に未練タラタラな幽霊なんて前代未聞だぞ…… お陰で徹夜になっちまった……」

「しかも、何でチャリであんな速度が出るんじゃ? この業界、大概のことはなんでもアリじゃが単車でチャリを二時間も追い掛け回す羽目になるとは思わんぞ……」

今回のターゲットは新聞配達に青春を捧げた青年の幽霊だった。ママチャリの前後に山ほどの新聞を積み、住宅街を徘徊すると言うはた迷惑な幽霊だ。

京太郎たちが除霊しようとすると猛スピードで逃げ出してカーチェイスの幕が上がった。

住宅街なのでフルスロットルで追いかける訳にも行かない。しかも何故か80キロのスピードで逃げる悪霊。

お陰で二時間、ヘトヘトになるまで追い掛け回す羽目になった。

「……まぁ、恐怖新聞を配達するようになる前で良かった」

さらりと怖いことを言う京太郎。

「今日はサボる! 学校も部活も休みじゃ! 一日家でゴロゴロしちゃる!!」

まこがそう宣言する。

「賛成ー」

京太郎が返事する。

まこの家に入って手早くシャワーを浴びベッドに潜り込む。

まこのベッドで仲良く一緒に寝る二人だった。



****************……………………………………****************
         Extra Report.2;京太郎とまこの恋人模様
****************……………………………………****************

時は進んでお昼前、ベッドから京太郎がゴソゴソと起き上がる。どうやらお腹がすいて目が覚めたようだ。

まだ眠いのか足取りは覚束なく、目は半開きで何処に焦点があっているのか怪しかった。

しかし、勝手知ったるまこの家。無事に台所にたどり着く。

冷蔵庫を開けて中身を確認していく。食パン、シャケ、ハム、卵、キュウリ、レンコン、椎茸、ホッケの干物、チーズ各種……

「……よし、サンドウィッチくらいは作れるか」

そう呟くと薬缶を火にかけ、食パンをトースターで焼いていく。

しばらくするとハムチーズサンドが出来上がった。傍らには湯気を出す淹れたてのレギュラーコーヒーもある。

「いただきます」

そう言ってムシャムシャとサンドウィッチを頬張る。リモコンでテレビの電源を入れ幾つかチャンネルを変えていく。

一通り見て面白い番組が無かったので電源を切った。

ズズッとコーヒを啜っているとまこが入ってくる。寝巻き姿だが右肩がはだけていて鎖骨が見えている。かなり色っぽい姿だった。

「……くゎぁぁ~~…… きょうたろ~……」

「ん、今持ってくる」

欠伸をしながら寝起きの声で京太郎の名前を呼ぶまこ。それだけで何が言いたいのか察して台所に作ってあったサンドウィッチを取りに行く京太郎。

以心伝心とはまさにこの事を言うのだろう。

テーブルに向かい合って座る二人。京太郎はコーヒーを啜り、まこはサンドウィッチを頬張る。この間、二人共無言。

食べ終わり一息つくまこ。そして「書置きがあったけぇ」と言って母親の書置きを京太郎に渡す。

―― お父さんと二人で出かけてきます。帰りは遅いと思います。京くんの家には連絡してあります。二人共程ほどにね♪ ――

と書かれていた。

「……のぉ、今日一日サボるんじゃけぇ、やらんか?」

そう言って頬を染めながら上目遣いで京太郎を見つめるまこ。当然、京太郎の返事はyesの一択だった。



カーテンを閉めたまこの部屋、まだ正午にもなっていない時間なので結構明るかったりする。

そんな中、ベッドの上でディープなキスを交わす京太郎とまこ。

朝食を兼ねた昼ごはんの後、シャワーを浴びたのでまこから漂ってくる仄かなシャンプーの香りが京太郎の鼻腔をくすぐる。

「……ンフゥ……あふぅ……」

お互いより深く甘美な感触を味わおうと舌を絡めていく。

舌に感じる感触で興奮してくる二人。まこの表情は完全に蕩けていた。

京太郎の舌がまこの口のさらに奥まで侵入する。京太郎の攻勢を受けてさらに蕩けた表情になるまこ。

口の中の粘膜を京太郎の舌が縦横無尽に這い回る感触がまこの理性を奪っていく。

「……クチュ…… プハァ!」

長い長い接吻が終わり、二人の唇の間に透明な橋が架かる。

京太郎はまこの表情をじっと見つめる。その瞳からはこれから始まる行為に対する期待の色が見えていた。

もう一度まこの唇を咥える京太郎。左手でまこを抱きしめて再び口腔を舌で蹂躙しながら右手を決して豊かとは言えないが形のいい胸に伸ばす。

手のひらでまこの乳房を転がすように揉み始める。

「……くふぅ、……んんっ、ぷふぅ……」

胸への刺激でさらに興奮するまこ。だんだんと息が上がってくるが、クチュクチュとキスによって口を京太郎に塞がれているため鼻から息が漏れる。

京太郎の手のひらによって優しく転がされる乳房はクニュクニュと形が変わる。その感触は柔らかめのお餅のような感じだ。

乳房全体が熱を持ったようになっていくのを感じるまこ。手のひらが動くたびに乳首が擦れて快感をまこの脳髄に送り込む。

「……ぅンん…… ぷはぁ…… きょ、京たろぉ…… ひゃァァん!」

京太郎の唇がまこの口から離れる。口が自由になると大きく息を付き、愛しい相方の名前を呼ぼうとする。

しかし、名前を呼びきる前に嬌声を上げてしまう。

京太郎が愛撫を受けていない右の乳房に吸い付いたのだ。おっぱいの表面を嬲るように這い回る舌の感触に翻弄されるまこ。

さらに左の乳房を揉んでいた京太郎の右手の動きも変化する。先程まではコロコロと転がすように動いていたのがギュッギュッと強く揉みしだくような動きになっていた。


クチュ…… じュッ、じゅるる…… 

(ふぁぁぁぁっ…… お、おっぱいが…… あぁ……)

京太郎が音を立ててまこの胸を吸い上げる。たちまち乳房は唾液に塗れていく。

まこは胸に感じる快感に意識を集中させていく。その時、顎を上げて一際大きい嬌声が上がる。

「ふひゃぁぁぁあぁぁぁん!! あぁぁぁン……!!」

京太郎の舌が乳輪をなぞる様に這い回り、右手が固く尖った乳首をキュッと強く捻り上げる。

間を置かずに吸われている方の乳首が奥歯で強く噛まれ、そのまま舌で転がされた。

愛撫のお陰で敏感になってきているまこには軽く絶頂するのに十分な刺激だった。

オーガズムが通り過ぎポテっとベッドに横になるまこ。軽く喘いでいる。

「ハァ…… ハァ……」

軽く汗をかいて色っぽく濡れるまこの肌。そのエロさに京太郎はゴクリと唾を飲み込む。

まこの女性の部分の毛はかなり薄い。殆んど生えていないと言っても過言ではなかった。

そんなまこの秘所に京太郎は目をやる。

日本では女性の秘所のことを隠語で貝と言ったりするが、これは女性器が貝の形、特に貽貝(イガイ)と呼ばれる貝に似ているからだ。

処女はぴっちりと閉じていてそうは見えないのだが、何度も京太郎を受け入れてきたまこのそこは貽貝の形そのものだった。

トロトロと愛液が溢れてくるなか、プックリと膨らんだ小陰唇がヒクヒクと京太郎を誘うかのように動く。

京太郎はまこと頭の位置が逆になるように覆いかぶさる。俗に言うシックスナインの体勢だ。

濃密なメスの匂いを垂れ流すまこの秘部。その匂いを堪能した京太郎は舌を伸ばして舐め始める。

「ひゃぁぁぁぁぁ!」

京太郎のザラザラとした舌が小陰唇を這っていく。途端に声を上げるまこ、そして穴の奥からは愛液が溢れてくる。

まこのスベスベした太腿を撫で回しながら京太郎は舌を更に奥まで侵入させる。

膣の襞の一枚一枚を舌で丁寧に擦っていく。

「んんんんんんっ!」

ネットリとした感触が更に快感を生む。

声を出すまいと口でシーツを咥える。ピチャピチャと京太郎の舌が動くたびにまこは体を細かく痙攣させる。

そして快感によってプックリと充血したクリトリスを口に含まれ、チューっと吸い上げられた。

「あぁぁぁぁぁっっ!! そこはダメじゃ~!!」

吸い上げられたクリトリスは何回も甘噛みされ、舌でクニクニと弄ばれる。

あまりに強すぎる刺激にまこは半泣きになりながら頭を左右に振り、腰を逃がそうとする。

逃がすまいと腰を両手でホールドする京太郎、そのまま責め続ける。

そして、まこが絶頂する。

「んあぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

絶頂の声を上げ、まこの体が弓形になりビクッビクッと痙攣する。

まこの牝穴はプシャッと勢いよく潮を吹き京太郎の顔を濡らしていく。

「ハァ、ハァ、ハァ……」

まだ行為の半分も終わっていないのに体力を半分は使い果たした感じのまこ。その表情はとても幸せそうに見える。




その頃の清澄の部室では咲達4人が練習に励んでいた。

「染谷先輩と京ちゃんが休みなんて…… どうしたんだろう?」

ツモった三筒を河に切りながら咲が言う。

「そうね…… まこは授業にも来てなかったらしいし……」

咲の言葉に調子を合わせつつ久は山から五萬をツモり手牌の四索を河に切る。

切った後、頬に人差し指を当てて思案顔をしている。

「あっ、ポンだじぇ。咲ちゃん、京太郎も授業来てなかったんだろ?」

「うん、そうだよ…… あっ、槓!」

久の捨て牌を優希がポンする。このため和が順番を飛ばされ次のツモ番は咲になった。

咲は牌をツモるとすかさず暗槓を宣言し嶺上牌に手を伸ばす。

「2人共ですか…… 学校に連絡は無かったんですよね……」

「そうらしいわ、一体何をやってるんだか……」

和と久が会話している間に咲は嶺上牌をツモる。ツモった牌を確認して手牌をパタパタと倒し宣言した。

「ツモ。嶺上開花・三暗刻・対々和・混老頭・ドラ4で倍満。8000・4000です」

「あちゃぁ~、最後の最後で大きいのが来たわね」

「……親っ被りで、私がドべだじぇ……」

それぞれが咲に点棒を支払う。優希は少し恨めしそうに咲を見ながら支払っていたが。

「ゆーき、勝負は時の運ですよ。染谷先輩と須賀君が2人とも無断欠席…… デートかもしれませんね」

天板が開いた麻雀卓に牌をガラガラと落とし込みながら和が言う。途端に部室の空気が凍りつく。

咲、久、優希の背中から黒いオーラが立ち上る。3人の表情は笑っていたが目が笑っていなかった。

「クスクスクス…… 私たちは授業に出て部活で練習しているのに……」

「2人揃ってズル休みでデートするとか……」

「万死に値する大罪だじぇ……」

和が言ったテキトーな言葉に過剰反応する3人。

まぁ、今現在、まこの家で激しくニャンニャンしているので強ち間違いでは無い。

京太郎とまこの仲を認めた咲達だったが、失恋の傷が言えるほど時間は経って無かった。

そんな状況でこんな話を聞かされれば、そりゃ嫉妬くらいはする。

3人の出すオーラで途端にタルタロスと化す清澄高校麻雀部部室。部室の壁を這っていたゴキブリが余りのプレッシャーにショック死してポトリと床に落ちた。

そんなカオスの中、平然としている和。

(……焚きつけてしまいましたか…… まぁ、須賀君と染谷先輩ですから大丈夫でしょう、イザとなったら止めますし)

そんなことを考えつつクスリと微笑し3人を見守る和。彼女、なかなか肝が太いようだ。



場所を戻してまこの部屋。激しい前戯のおかげで部屋には2人から発せられる濃密な空気が満ちていた。

ベッドに仰向けに寝転がりМ字開脚しているまこ。まこの陰唇が物欲しそうにヒクヒクと動いている。

まこの視線は京太郎のイチモツに注がれている、釘付けと言ったほうが正しいかもしれない。

これから胎内に入り思いっきり自分を責め立てる凶器を見て、まこの性的興奮はさらに高まっていく。

かなり大きい京太郎のイチモツ。長さは20センチ位、下手すればそれ以上ある、しかもかなり太い。

正直言って女性を悦ばせる為のモノではなく、責め上げる為の拷問器具に見えなくもなかった。

「まこ、挿れるぞ」

そう言って、自分のイチモツに手を添えながらまこの秘部に鈴口を近づけていく京太郎。

クチュリと音を立てて京太郎の亀頭がまこの陰唇にキスをする。

触れ合った瞬間に2人の脊髄に鋭い快感が走り体がピクッと痙攣した。

「ンンッ…… は、早う挿れてくれ…… 切ないんじゃ……」

潤んだ目と蕩けた表情で先を促すまこ。

もうまこの脳裏には胎内を京太郎のモノでかき回してもらい快楽を貪ることしか無かった。

まこのねだる様な声を聞くと、京太郎は自身の巨大なモノを一気にまこの奥まで突き込む。

ズチュン!!

まこの膣壁を押し広げ、襞々を擦り上げる。

勢いよくグイィッと突き上げられる子宮口。快感で子宮が弾け飛びそうな感覚に襲われるまこ。

「ふぁあああああああぁぁぁぁァァァァァンン! 京太郎のチ○コが入ってくるぅぅぅぅぅうッ!!」

元々まこはかなり感じやすい体質だ。加えて今まで京太郎と情を交わしてきた経験がまこをよりイき易い体にしていた。

そんな体に加えて体を重ねるごとに上達する京太郎の愛撫のおかげで、前戯で2、3回イくのが最近では当たり前になっている2人だった。

京太郎の突き込みの刺激でまこは今日一番のオルガズムを迎える。

膣がキューッと京太郎の息子を締め付け、子宮口が精液を強請るように鈴口に吸い付く。

しかし、挿れたばかりなので射精には至らない。

体をピンと突っ張らせ絶頂の衝撃に耐えるまこ、しばらくして全身から力が抜ける。


「まこ…… 動くぞ!」

まこの体から力が抜けた瞬間にそう言い、京太郎は胎内の蹂躙を始める。

ゆっくり抜けそうになるまで肉棒を引き抜き、勢いよく奥まで突き入れる。

ズニュニュ…… グチュン! ズニュニュ…… グチュン!

リズミカルに抽挿する京太郎。脊髄に走る快楽に悶えるまこ。

「あっ! ああっ! 京太郎……っ! 好きじゃ! 大好き……ッ!!」

京太郎の抽挿に合わせてまこが喘ぐ。

「俺も……ッ! 好きだ……ッ! まこ!」

そんなまこに京太郎が愛の言葉を囁くとまこの膣がキューッと、京太郎の肉棒を逃すまいとより強く締め付けてきた。

最初のうちはゆっくりと動き、挿入する角度を変えてまこの膣壁を余す所なく擦り上げていた京太郎だったが、次第にピストン運動が早くなっていく。

二人の理性はとっくに溶けきり、頭にあるのは愛おしい相手の肉体を貪ることだけだった。

性器から生まれる肉の悦びによって10代の少年少女は性欲に貪欲な獣に成り果てる。

「はっ! ァんん…っ! ンくぅ! しゅごぃいぃい! オ○ンコ気持ちイィいぃぃぃ!!」

首を左右に振って喘ぎまくるまこ。口は半開きで目からは悦びの涙が流れている。

小さな膣を目一杯広げられ、激しい抽挿で責めまくられる。まこの体はメスの悦びで満たされ爆発寸前だった。

腰をグラインドさせていた京太郎が体勢を変えようとして、まこの腰をしっかりとホールドしていた手を動かす。

胸に手をやって軽く揉んだ後、背中の方に手を回しまこの体に覆い被さっていく。

下半身だけでなく上半身も密着させ少女特有のムッチリとした柔らかい体を堪能する。

まこも京太郎の背中に手足を巻きつけその逞しい胸板に体を密着させる。

全身でお互いの体を貪る二人。

「ああぁ! イク! イク! イってまう!」

「ク…ッ! で、出る……ッ!!」

「な、中に…ッ! 中出しして!」

二人の背筋を快感が走り抜け脳髄で爆発する。たまらず京太郎が声を上げる。

「ク……ッ!! まこ! 出すぞ! ウ…ッ!!!」

そう言って、まこの股に腰を押し付けて密着させる。

そして、京太郎の陰茎が膨らみ鈴口から精液が放出され、瞬く間にまこの子宮に満ちていく。

子宮に熱い京太郎の欲望を受け止めたまこはその刺激で達してしまう。

「んああぁぁぁあ! 出ちょる! 中に出されちょる……ッ!!」

まこの胎内に精を放ち続けている京太郎。まこの膣は精液を強請るように京太郎の陰茎を締め付ける。

「あぁあ…ッ! 熱いのが… 京太郎のが子宮にぃぃ…ッ!」


射精が終わると2人は脱力して荒い息をつく。しばらく息を整えたあと、どちらともなく自然とキスをした。

「京太郎のココ、まだ元気じゃのォ……」

クスリと笑いながら京太郎に話しかけるまこ。

「いや…… まぁ、久しぶりだから」

そう言って京太郎は腰を少し揺する。途端にまこは「あンっ♪」っと甘い声を上げる。

「まだ時間はあるんじゃけぇ、もっとせんか?」

「フフフ、覚悟するんだな。まこ」

以前まこは「一般人の煩悩を米粒とすると、京太郎はクルミの実、横島はフタゴヤシの実」と評したことがある。

横島は桁違いとしても、米粒の基準でクルミ位も十分過ぎるほど大きい。

当然、そんな煩悩を持つ京太郎の性欲がたった一発で収まるはずもなく、続きが必要なことはセックスを始める前から百も承知のまこ。

繋がったまま二回戦目に突入する二人。京太郎の有り余る煩悩を一身に受け止めるまこはとても幸せそうに蕩けていた。

ちなみに、この日は6回戦まで行われ、まこは最後の射精が終わると同時に気を失うこととなった。



****************……………………………………****************
              Extra Report.2 closed
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以上です。
長い間お待たせして申し訳ありませんでした。

それにしても、たったこれだけの分量書くのに時間かかり過ぎ……

今後は、本編を進めていきますが、Report.3の修正も進めていくので時間がかかりそうです。

本当に申し訳ないm(_ _)m

あっ、感想等は大歓迎です。
どんどん書いてください!

報告です。先程、Report.3の加筆修正版をOTRにアップロードしてまいりました。
もし宜しければ、ご一読ください。

フィルタリングされましたとかで暫く見方わからなかった(^_^;
トップページ行かないといけなかったのね

>>195
スミマセン、露天風呂の描写があるので15禁フィルターを掛けていました。
トップページからフィルター設定に入って15禁指定を表示するにすれば見れるはずです。

言い忘れていてスミマセンでした。

まとめの新たな更新分読んできたー
もしかして池田も修業すれば舐めてヒーリングできるようになりゃせんか?ww

>>197
読んでくださってありがとうございます。
その発想は無かったwww

あと、次話はもう少しお待ちください

こんばんわ~

先ほどReport.6の加筆修正版をOTRで公開してきました。
もし宜しければご一読ください。

そろそろReport.7の投下をしよう思います。

カッコウの鳴き声が木霊する信州の山間を走る新設されたバイパス道路。

片側二車線の広い道路を一台のバスがゆったりと走っている。

そのバスにまこを除く清澄高校麻雀部の女子メンバーが乗車し、目的地へ移動していた。

「だいぶん山の中に入りましたね」

ピンク色の長い髪をツインテールにした和が呟く。

バスは10分ほど前から市街地を抜け、どんどん山の方へ向かって走っている。

「山間の温泉旅館を借り切ることに成ったからね、今回の四校合同合宿は」

和の呟きに部長の久が答える。選抜選手の選考の一環として長野県の麻雀協会が絡んでいるため潤沢な予算が降りたのだ。

しかし、物事には必ず裏がある。選抜選手の選考委員会のメンバーには麻雀プロの藤田靖子が入っている。

選手の書類と睨めっこして選考をするのに厭きた彼女、無性に麻雀を打ちたくなった。

そんな彼女が「予選の決勝を戦った四校で合同合宿をさせ、そこに混ざって評価を出す」と言う案を思いつき、協会に捩じ込んだのが事の真相だった。

「へぇ~、ところで染谷先輩はどうしたんだじぇ?」

そう言ってキョロキョロとバスの中を見渡す優希。まこは集合場所のバス停に来なかったのだ。

すでにバスに乗ってるのかと思いきや、バスの中にも居ない。

「あぁ、まこは先に行って色々手続きとかしてくれているわ」

「どうやって先に行かれたのですか?」

「……バイクらしいわ……」

咲の質問に苦笑いをしながら答える久。彼女もまさか自分の右腕であるまこが普通自動二輪の免許を持っているとは思ってもみなかったようだ



****************……………………………………****************
           Report.7;四校合同麻雀合宿!! Ⅰ   
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「この度は合同合宿にご賛同いただき…… そして、バッチリお集まりいただきまして、誠にありがとうございます」

旅館のホールには合同合宿に参加する面々が集まっている。

一同を前にして主催者である清澄高校麻雀部の部長の久が挨拶をしていた。

「移動の疲れもあることと思いますので本日は自由行動という事で…… よろしいでしょうか?」

「異議なーーし!」

初日のスケジュールに関する久の提案に皆が賛成の拍手をする。

「では、今日はこれにて解さ……」

久が解散を宣言しようとすると風越のコーチである久保貴子から待ったがかかった。

「あー、スマンが。須賀はどうしたんだ? 後から来るのか?」

「……え?」

久保コーチから京太郎の名前が出て清澄勢は一瞬何の事か分からず思考が停止する。

固まった久達を尻目に続いて発言をしたのは風越のキャプテン・福路美穂子。

「私も不思議に思っていたんです…… 清澄は部員全員で来られると聞いていたので」

美穂子の言葉を聞いて龍門渕の部長・龍門渕透華、鶴賀の部長・蒲原智美も口を開く。

「龍門渕もそうですわ」

「ワハハ、鶴賀もそう聞いていたぞ~」

ここに至り、合同合宿に京太郎は参加出来ないと思っていたのが清澄だけだと言う事実が明るみに出る。

清澄側で合同合宿の事務を取り仕切っていたのは久だ。

彼女は想定外すぎる事態にパニックに陥っていた。

(えっ? えっ!? どう言う事なの!?)

混乱の極みに達している久の肩にポンっと手が置かれる。

振り返ってみるとそこに居たのは夜叉と化したまこだった。


普段抑えている霊力も全力で噴出していて其処らにいる下手なヤクザよりも余程怖かった。

事実、周りに居た合同合宿のメンバーは全員尻餅を搗き、お互いの体を抱き合って震え上がっている。

「久……」

まこがゆっくり久の名前を口に出す。

普段の彼女からは想像も出来ないような低い声だ。

「な、なにかしら…… まこ……」

一方、久は完全に余裕を無くしており答える声も完全に震えていた。

「ワリャぁ、一体どういう事じゃ…… キッチリ説明せぇや……」

広島弁と相まって威圧感は10割り増しだった。

涙目になりながら、藤田プロの方を見る久。恐怖感のせいでオフィシャルな場所での口調も吹っ飛んでいた。

「や、靖子! どういうことなの!?」

「こっちに振るな! 久! 私は知らんぞ!!」

藤田プロもよそ行きの口調が吹っ飛んでいた。

ちなみに藤田プロ、まこの実家の雀荘の常連なのでまこの恐ろしさをよ~く知っている。

かなり破天荒な彼女でも夜叉と化したまこは怖い。

「だって! 参加するのは”女子の選手全員”って言ったじゃない!」

「確かに“選手全員”と言ったが、“女子の”とまでは言っていないぞ!」

「……えっ」

そう、原因は久と藤田プロの連絡のやり取りにあった。

四校合同合宿の開催の連絡を藤田プロが久に入れたのが2週間前。

その時の連絡が「女子団体の決勝を戦った四校で合同合宿を開催する事になった。予算は協会から出るから、インターハイ出場選手は全員参加すること」と言うものだ。

この連絡を受け取ったとき久は“女子団体の決勝を戦った四校”の下りで女子選手のみの合宿だと早合点した。

しかも間の悪いことに風越女子高校、龍門渕高校、敦賀学園高校の三校は私立の女子高。

結果、久の早合点は完全な早トチりになり現在の状況となった訳だった。


「う、ウソ…… どうしよう……」

目に見えて血の気が引いていく久の顔色。声も体も震えており見ている方が哀れになってくる。

責任の所在は微妙なところだが早トチりした久にある。まあ、ややこしい連絡の仕方をした藤田プロも一部責任があるといえるだろうが……

問題は京太郎の事を如何するかだった。

どれだけ温厚な人物でも激怒するだろうこの状況、連絡を入れるにしても対応を誤ればややこしい事態に発展する事は火を見るよりも明らかだ。

気まずい沈黙がホールに満ちる。そんな状況の中、まこは軽い溜息をついて携帯を取り出す。

「……あっ、京太郎か? 実はのォ……」

気楽な様子で京太郎に電話するまこを一同は黙って見つめる。

頷きつつ話をするまこ。しばらくして話が終わったのか耳元から携帯電話を離して通話終了ボタンを押す。

鶴賀の加治木ゆみが恐る恐るまこに声をかける。

「で、須賀君だったか…… 彼はなんと……」

「大丈夫だと思うのォ。「急いで準備する」と言ぅてましたけェ」

まこの言葉を聞いてホッとした空気がホールに流れる。

「しかし…… どうやって此処まで来るかだな…… 急いで準備して出ても、バスが無いから着くのは明日になるぞ……」

久保コーチが懸念を口にするが、それはまこによって拭われる。

「わしが迎えに行きますけェ」

「えっ、でも染谷先輩ってバイクで来たんじゃ……」

迎えに行くとのまこの発言を聞いて、逆に不思議に思う咲。

まこは此処にバイクで来ている。まこが迎えに行くなら、京太郎との二人乗り加えて京太郎の着替え等の荷物まで載せなければならない。

当然バイクではそのような芸当が出来るはずもない。咲の心配は当たり前のものだった。

「ハハハッ、実は家に側車があるんじゃ。今から迎えに行くと夕食の時間までには到着できるのォ」

しかし、ちゃんと手段はあると笑い飛ばして見せるまこ。

積載の問題さえ解決すれば幼馴染兼恋人のまこが行くのが一番だろう。

まこが「それでいいか?」と皆を見渡すが特に異論は出なかった。と言うより、それ以上うまく場を収める案が出なかっただけだが。

バイクに乗るためにバイクウェアに着替えに更衣室へ行くまこ。

しばらくして更衣室から戻ったまこは白地に黒いラインの入ったスーツに身を包み脇に黒いフルフェイスヘルメットを抱えていた。

そんなまこの格好を見て「うわぁ! か、カッコイイ!!」と何故か燥ぐ鶴賀の妹尾佳織、憧れの女性を見るような目を向けていた。

まこは玄関を出て駐輪場に停めてあった愛車に跨り、ニグニッションキーを捻ってセルスイッチを押す。

エンジンが始動すると間を置かずにバイクが動き出し、心地いいエンジン音を残して走り去っていった。


走り去っていくまこを見送る一同、なぜかテンションの上がっている佳織がまこの姿が見えなくなるまで手を振る。

そんな彼女の様子を見て不思議に思った久は近くにいたゆみに声を掛ける。

「加治木さん。あの子、妹尾さんだっけ? 彼女、どうしたの?」

「ああ、妹尾か…… 実はよく分かないんだ」

少し困った顔をするゆみ。そんな彼女に助け舟が来る。

「ワハハー、佳織はドン臭いからな~。出来る女ってやつに憧れてるんだ~」

「蒲原さんだっけ」

「ワハハ~、智美でいいぞ~」

「分かったわ、私のことも久って呼んで。加治木さんもね」

「じゃあ、私もゆみと呼んでくれ」

お互いを名前呼びする事になって心の距離が縮まった気がする久。

「ところで、なんでまこが出来る女なの?」

話題を元に戻し、智美に疑問をぶつける。

すると智美は自分のカバンをゴソゴソと漁り、一冊の雑誌を取り出した。

「これが原因だな」

「……『月間GS』?」

その雑誌の表紙には神通棍を構えた京太郎と破魔札を構えたまこの姿が印刷されていた。

神通棍と破魔札、ともにGSを象徴する道具だ。

その二つを見て久とゆみはGS関係の雑誌である『月刊GS』と判断した。

しかし、それはトンデモナイ間違いで――


「ワハハ、やっぱり騙されたか~…… これは『Weekly麻雀Today』の今週号だぞ」

「嘘ぉぉぉぉっ!!」

智美の口から明かされる驚愕の事実に久とゆみは思わず声を上げてしまう。

問題の『Weekly麻雀Today』の表紙、麻雀を表すシンボルが一切見あたらず外見からは麻雀雑誌と判断が付かなくなっている。

「で、参考までにコッチが昨日発売の『月間GS』今月号だ~」

新たに雑誌をカバンから取り出し二人に見せる智美。その表紙には雀卓について牌をツモっている京太郎とまこの写真が載っていた。

こちらの雑誌はこちらでGSのシンボルらしきものは一切見当たらず麻雀雑誌にしか見えなかった。

両雑誌ともその正体を見抜く唯一の手がかりは表紙に書かれた書名だけと言う有様、パッと見で見間違えるのは仕方なかった。

「……いったい何があったの……」

震える声で呟く久。

「ワハハ~、そこまでは分からないな~」

のんきな声の智美。

「で、まぁ、佳織が『月刊GS』と『Weekly麻雀Today』を間違えて買ってきたんだ~。不幸なことに発売日も一緒だったからな~」

「せっかく買ったのに読まずに捨てるのは勿体無いってことで『月刊GS』を読んだんだがな、須賀と染谷の特集だったらしいんだ~」

「二人ってGSでは結構名が知られてるんだな~、染谷の記事を読んであの有様さ。佳織はドン臭いところがあるから憧れがあったんだろうな~、出来る女性に」

智美のおかげで、佳織がなぜ憧れの視線をまこに向けていたのかが分かった。

しかし、それ以上の疑問を運んできたのもまた事実。

なぜ、『月刊GS』と『Weekly麻雀Today』がお互いの表紙を取り換えっこした様な状況になっているのか分からず久は頭を抱えた。

ちなみに、数日前に清澄高校麻雀部を両雑誌の記者が取材に訪れている。『Weekly麻雀Today』の記者は和の知り合いの西田記者だった

おそらく『月刊GS』と『Weekly麻雀Today』の表紙はその時に撮ったものだろう。

頭を抱え続けていた久の肩にポンと手が乗せられる。

久が振り返るとそこには清澄の一年生三人組が居た。


「どうしたの?」

そう久が聞くと和が答える。

「……部長、お仕置きの時間です」

「……へっ?」

返ってきた和の返事の意味が一瞬分からずに間抜けな表情で固まる久。

その一瞬のスキに両腕を咲と優希が拘束した。

進む事態に全く理解が追い付いていない久はキョロキョロと両脇を固める二人の顔を見る。

「なに? 一体なんなの!?」

「だから、お仕置きです」

「なんで!?」

「染谷先輩からのお達しです」

訳が分からないといった感じで久が叫ぶ。しかし、和は微動だにしない。

拘束を解こうとしても、捕られた腕は小揺るぎもしなかった。普段の咲の運動神経からは想像も出来ないような力だ。

なぜ三人がこの様な行為におよんだのか、それはまこが玄関先で「部長にお仕置きしときんさい」と耳打ちしたからだ。

ニコニコとした笑顔だった、目も優しい光をたたえていて声も穏やかだった。

しかし、何故か咲たちはコクコクと頷くことしか出来なかった。

今のまこに逆らうと言う行為に命の危険を感じた三人。アッサリと久を人身御供にすることにした。

「咲さん、ゆーき。連行しますよ」

咲と優希にそう宣う和。

「らじゃー!」

大声で返事をし、腕を捕っていないほうの手で敬礼する二人。

咲と優希は久をズリズリと引きずって連行を始める。そして、和は久を見張るため後ろからついて行く。

上級生に無礼を働く下級生と言うこの状況を見て風越の面々は戸惑った。

風越女子の麻雀部は歴史ある部でかなりの大所帯。当然、上下関係には厳しくなる。

彼女達にしてみれば清澄のこの状況はあってはならない光景なのだ。

「わ、私はやってない! 無実よぉぉーーー!!」

「犯罪者はみんなそう言うんです。大人しく裁きを受け入れてください。 ……私たちの身の安全のためにも……」

大きな声で無実を訴える久。しかし、その声にこたえるのは冷淡な和の声だけだった。

最後にボソッと本音が出ていたが誰にも聞こえることは無かった。


日も落ちて薄暗くなってきた旅館の駐車場に側車を取り付けたバイクが停車する。

エンジンが切られると同時に側車に乗っていた京太郎がヒラリと身軽な動きで降りる。

濃い緑色のオープンフェース型ヘルメットを脱ぐとトランクから荷物を出し始める。

「やっとついたなぁ。ん~、腹減った!」

そう言って大きく伸びをする、そんな京太郎にまこが声をかける。

「ほんにスマンかったのォ、突然じゃけぇ吃驚したろ?」

「ははは、別に構わないさ。まこが居ないからGSは休業、だから合宿中はダラダラしてただろうしな」

そういってニカッと笑う京太郎。心の底から気にしていない様子だ。

そんな京太郎の様子を見てまこはホッと安堵の溜息をつく。

着替えなのどの最小限の荷物を入れたバッグを担ぎ終わると二人並んで旅館の方へ喋りながら歩いて行く。

そして玄関に到着したときにある物体を見て京太郎は固まる。

そう、それは簀巻きで玄関先に逆さに吊るされた久だった。

「……まこ、一体これは……」

「おー、和らもなかなかやるのォ」

引き攣った声の京太郎、のんびりした声のまこ。見事な対比だった。

「まこ…… 須賀君…… 深く反省しているので降ろしてください……」

滝のような涙を流しながら、久は二人に許しを請う。

あるていど溜飲が下がっていたまこは素直に久を下してやる。

「ほれ、これから夕飯の時間じゃろ?」

そう言って歩き出すまこ、そして結構長い時間逆さに吊られていて頭に血が上り切っていたのかフラフラとついていく久。

「……やっぱ女って怒らすと怖ええな……」

ちなみに京太郎は少しばかり引いていた。



四校そろっての賑やかな夕食も終わってそれぞれが自由に時間を過ごすことになった。

旅館自慢の源泉かけ流しの浴場にまこは居た。

京太郎を迎えに行くためにバイクで走り回ったので汗を

「~~~♪ ~~~♪ 」

「ふぃ~~、極楽じゃ~~♪」

眼鏡を額に上げて気持ちよさそうに温泉につかる。自然と鼻歌を歌っていた。

そんな中、まこに一人の人影が近づく。

誰かが近づく気配を感じたまこは眼鏡を掛け直して振り返る。

「ん~……、確か、風越の……」

「吉留です、吉留未春。染谷さんですよね」

そう言って未春は湯船に入りまこの隣に腰を下ろす。

世間話を始める二人。

「それにしても、決勝での役満にはやられましたね」

「あー、あれにゃー参ったのォ。いつかリベンジしたいのォ」

「賛成」

「誰!?」

まこのリベンジ発言に未春以外の声が答えて、思わず声を上げてしまうまこと未春。

声のしたほうを振り向くと黒髪を纏めたスタイルのいい少女が湯に浸かっていた。

「……誰?」

よーく見ても誰だか分らなかったので再び疑問を口にするまこ。

すると纏めていた髪を解いて立ち上がる少女。

「おぉ、龍門淵の……」

「……沢村智紀」

そうして三人で世間話を始めるが、まこがチラチラと未春と智紀を見比べだす。

その視線が気になった未春がまこに聞く。

「どうしたんですか?」

「いや、まぁ、なんと言うか……」

そう言い淀んだ後――

「吉留さん、胸無いのォ」

―― スバッと言い切ったまこだった。


「ひ、ヒドイ! そんなにハッキリ言い切らなくても!」

そう言って未春は口まで湯船に沈む。

口から空気をだしてブクブクしながらまこと智紀の胸を見比べる。

まこ…… きれいな形をしていて、おそらくCカップ…… 体とのバランスも良い。

智紀…… ハッキリ言って大きい、余裕でGくらいはあるのではなかろうか……

そして、自分の胸のサイズを思い浮かべる。Aカップ…… あまりの虚しさに涙が出そうになる未春だった。

「クッ…… 女性としての魅力は胸のサイズだけでは無いんです!」

そう自分に言い聞かせる未春。そのとき、ガラッっと引き戸を開ける音が浴室に響く。

「ワハハ、ここが温泉か~」

「わ~、気持ちよさそう~」

入ってきたのは智美と佳織、二人が入ってくるのを見てまこが呟く。

「役者が揃ったのォ~」

「うん」

まこの呟きに同意する智紀。一方の未春はジーッと佳織の胸を凝視し――

「フフフ…… 別の意味でも敵です…… フフフ……」

――見事に暗黒面に堕ちていた。


「それじゃ、連絡することは以上かしら……」

そう言って久は合宿のしおりを閉じる。ここは清澄の女子メンバーに割り当てられた部屋で、久は広縁におかれた椅子に座っている。

寛ぐ久の前には湯のみが置かれた机と、もう一つの椅子に腰を掛ける京太郎がいた。

数時間前に急遽参加する事になった京太郎、当然合宿の説明を受ける暇など一切無かった。

なので、久が夕食後の空き時間を利用して京太郎に合宿の説明をしていたのだ。

「今回のことは本当に御免なさい。私の落ち度だわ」

「気にしなくて良いですよ、話を聞いている限りでは不幸な行き違いみたいですから」

頭を下げる久に苦笑しながら返す京太郎。本日何度目かのやり取りだった。

「それにしても…… 女子高校生が20人もいる中で俺が混じって良かったんですかね? 問題になりませんか?」

ずっと頭の中にあった懸念を口にする京太郎。

「ん~…… 大丈夫よ。協会が絡んでいるし、それぞれの学校からも許可が出てるらしいから。うちの学校もさっき連絡入れたらOKだって」

京太郎に答える久の声は気楽なものだった。

その返事を聞いて京太郎はホッと安堵の溜息をつく。

京太郎の溜息が消えるか消えないかと言ったタイミングで部屋の扉が開く音がする。

入ってきたのはまこだったが、その背中にドヨーンとした空気を背負っていた。

その様子を見た京太郎が心配して声をかける。

「まこ、どうしたんだ? 一体……」

まこと付き合っていることが完全に周囲にバレているので、まことの会話は他人がいてもタメ口になっていた。

「……妹尾にまた役満上がられた…… しかもわしが一番好きな役満で……」

そのまま、ガクッと畳にへたり込む。

そんなまこを見て久は苦笑いしつつ――

「それはご愁傷様ねぇ……」

――と呟いた。


その頃、風越女子の部屋では、未春が畳の上で俯せに転がって涙を流していた。

「みはるん…… どうしたの?」

心配した華奈が声を掛けるが、未春は――

「ほっといてよ…… 華奈ちゃん……」

――と素っ気なかった。

そのあとブツブツと呟き始めた未春を引き気味に見ていた華奈。

しかも、呟いている内容が何故かはっきり聞こえるので始末が悪かった。

「どうせ私は引き立て役のモブですよ…… カービーのキャラで例えるとキャピーですよ……」

「染谷さんみたいにGSのような特殊技能がある訳でもないし…… 沢村さんみたいにきれいな黒髪じゃないし…… 妹尾さんみたいにおっぱいが大きいわけでもないし……」

「挙句の果てに役満上がられちゃうし…… 大物手は平和で流されちゃうし……」

かなり鬱陶しいオブジェと化した未春だった。

華奈は見て見ぬふりをすることに決めて持ってきたDSで脳トレの新記録をたたき出すべく電源スイッチを入れた。


同じ頃、龍門淵の部屋では一が冷や汗を流しながら智紀を見ていた。

部屋の中央でアヒル座りをし首を少し前に傾けている。

艶やかな黒髪は顔の前のほうにも流れていて表情を窺い知ることは出来ない。

一番しっくり来る表現をすれば「貞子」だろう。おそらく100人中99人は同意するはずだ。

「ともきー…… まるでホラー映画だよ、須賀君と染谷さんに除霊されちゃうよー……」

一の言葉に全く反応を示さない智紀であった。

一方の透華は腕を組んで考え事をしていた。

「透華、どうかしたのか?」

純が不思議に思って声をかける。

「ええ、染谷さんと須賀さんのことでちょっと……」

「ああ、あの二人か…… 衣が世話になったからな~」

透華の言葉を聞いて合点が行ったと頷く純。

「除霊代をお支払しようとしたんですが、「緊急除霊事例」と仰られて受け取られませんでしたわ」

「そうなのか?」

「ええ、でも衣の命を助けて下さったのですから何かお礼をしなければならないのですが無いがいいのか分からなくて…… 今、ハギヨシにお二人の調査してもらってるところですわ」

なかなか無茶な頼みをするお嬢様・透華だが、そんな依頼でもこなすスーパー執事・ハギヨシ。

彼はいったい何者なのだろうか。






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                Report.7 closed
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【次回予告】

気持ち良く晴れたある日。

長野のある旅館に合宿で清澄・風越女子・鶴賀・龍門淵のメンバーが集まっていた。

上級者が集うこの合宿に急遽放り込まれた京太郎…… 彼は一体どうなるのだろうか。 

「あれ? まこー、どこいったのー?」

「ああ、これを炙ればひょっこり出てくると思いますよ」

「うにゃあ~♥」


次回『Report.8: 四校合同麻雀合宿!! Ⅱ 』!


【人物・用語解説】

〈妹尾佳織〉

鶴賀学園の次鋒。インターハイ予選ではまこ、智紀、未春相手に役満(四暗刻)をツモると言う快挙を果たす。
金髪が特徴の巨乳娘。天然でいつもオドオドしている印象が強い。
本人も少しドン臭い自分の性格を自覚しており、いわゆる「出来る女性」に憧れを抱いている。
ちなみに、GS資格を持つまこは佳織の中では出来る女らしい。


〈吉留未春〉

伝統の風越女子麻雀部の次鋒。癖の強い髪と眼鏡がトレードマーク。
胸がないことを気にしている。それに加えてインターハイ予選で役満を上がられた経緯から佳織を倒すべき敵と認識している。
挑んだリベンジでは再度役満(緑一色)を上がられて甚大なダメージを負う羽目になった。


今回の更新は以上になります。
長いことお待たせして申し訳ありません。

書いていて「この作品皆に楽しんでもらえているのだろうか?」と不安になってしまいました。

さて、夏も本格的に始まったことだし…… 夏をテーマにしたR-18でも書こうかなと思いますが、見たい人は居ます?

夏祭りとかですかねぇ~

書き忘れてました。
『Over The Rainbow ~にじの彼方~』で投稿の規定に達していたらしく、このたび仮作家から本作家に移行しました。
OTRのトップページの右側のインデックスに「エルクカディスの書庫」が表示されるようになり、そこから小説に飛べるようになりました。

こんばんわ。VIPアンケートの時間です。

……冗談は置いておいて、このスレの更新ですが現状では大体一か月に一回のペースで一話の感じです。
しかし、こう間が空いては…… という方も居られるかもしれません。
なので、今後の更新について

①今迄通りきりのいい一話
②話の途中でもいいから更新

のどちらが宜しいでしょうか?皆様の意見を聞いたいです。
よろしくお願いします。

了解です、皆さんありがとうございます!
今後の更新も今迄通りにやっていきます。

京まこという誰得カップルかつ下手な文章の二次創作ですが、今後とも末永くお願いします。m(_ _)m

こんばんわです。
次話の投下は日曜日になりそうです。
もうしばらくお待ちください。

それと、これから定期的な生存報告は入れた方がいいでしょうか?

板の決まり的に、最低でも月イチは必要なはず

>>234-235
ありがとう、取り合えず月イチかそれ以上の頻度で必ず生存報告するようにするわ

そろそろ投下します

長野県にある一軒の温泉旅館の大広間、いまそこはある熱気に包まれていた。

牌をかき混ぜる騒がしい音、ツモった牌を切る静かな音。

それらの音をBGMに麻雀に青春をかける高校生雀士達が競い合っていた。

「ツモ! メンタンピン三色ドラ2! 4000・8000! 裏ドラはサービスしておいてやるし!」

威勢のいい声を上げながら手牌を倒す華奈。

ちなみに8翻の手で順子が被らないピンフだと裏ドラが乗ったとしても点数は変わらない。

早く点棒寄越せとばかりに視線を向けてくる華奈に頬を引き攣らせながら点棒を箱から取り出すまこ。

「あー…… はいはい、じゃ二千バックで……」

親っ被りの彼女は一万点棒と引き換えに千点棒二本を華奈から受け取った。



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           Report.8;四校合同麻雀合宿!! Ⅱ   
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練習が進むにつれて熱気はドンドン上がってくる。

そんな中「ここらで一服」とばかりに飲み物を入れた冷蔵庫の扉を開ける京太郎。

冷蔵庫の周辺は休憩コーナーになっていて、冷えた飲み物が満載の冷蔵庫、テーブルの上にはお湯の入ったポッドにインスタントのコーヒー、ティーパック各種、色々なお菓子が乗っていた。

若干お菓子が多めなのは女子中心の合宿だから仕方がないのかもしれない。

テーブルのすぐ横に置かれた「プロ麻雀せんべい」が大量に入った段ボールが三箱ほどあった様な気がしたが京太郎は見なかったことにした。

冷蔵庫の中からラムネの瓶らしきモノを取り出す。形はラムネ瓶そのものだったが色が緑色とかなりの違和感が感じられる。

ちなみにラベルには黒く縁取りされた緑色の文字でデカデカと『おとな味 わさびらむね』と書かれていた。

瓶を開封しゴクゴクと飲んでいく。

「ぷはぁ! 旨いなぁ~ ……ん?」

一気に飲み干した京太郎。横目に何かが見えたようでそっちの方を向く。

そこには一人椅子に座ってポリポリとピーナッツを口に運ぶ桃子の姿、その横顔はちょっと憂いを帯びていた。

少し気になった京太郎はこっそり後ろから近づくと、キンキンに冷えた『FINAL FANTASY VII POTION』の缶を彼女の首筋にピトッと当てる。

「!?!?!? わひゃぁーーー!?」

あまりの冷たさに声を上げて飛び上がる桃子、そのまま椅子から転げ落ちる。

何が起こったのか分からずにキョロキョロしていると俯いて必死に笑いを堪えている京太郎が目に入る。

瞬時に事態を把握した桃子は京太郎に詰め寄った。

「い、いきなり何するんすか!?」

「あはは、ごめんごめん。なんか一人で寂しそうに見えたから」

「それにしてもやり方があるっすよ!? もう! ……ん?」

京太郎に抗議している途中で何か違和感を感じた桃子は急に無口になって首を捻る。

桃子の様子が変わったのを見て京太郎も不思議に思うが、その視線はとある一点に固定されている。

(うおおぉぉぉぉお! なんと大きなおもち! これを見れただけでも合宿に来たかいがあったぜ!!)

心の中でガッツポーズを取りながら邪な事を考える京太郎。そう、その視線は桃子の豊かな胸に固定されていた。

ちなみに桃子が首を捻ったとき胸がユサッと揺れたのにもキチッリと反応しているスケベぶりである。

情を交わした幼馴染が居るというのに何とも罪深い男だ。


もっとも、この光景をまこはしっかり視界に収めていた。

今は対局中なので中座などと言うマナー違反こそしなかったが…… 背中からはドス黒い嫉妬のオーラが噴出していた。

(それにしても風越のキャプテンと言いレベルの高い子多いぜ! くぅーーーっ、本当に来てよかった!!)

「す、須賀君っすよね!? 私のことが見えるっすか!?」

「へっ、いや何のこと!?」

「良いから答えるっす!?」

京太郎の胸倉をつかんで揺さぶりつつ質問する桃子。

影の薄すぎる彼女は今までの人生で普通に声を掛けられたことが無かった。




状況を読めない京太郎は豹変した態度に焦るばかり。しかし、傍から見れば二人仲良くじゃれ合ってる様に見えなくもなかった。

当然そんな様子が面白くないまこ、さらに溢れる嫉妬の波動。

まこと同じ卓についていたのは衣、星夏、睦月の三人。まこの負の気配に当てられて涙目で震える羽目に……

「私が見えるっすか!? 見えるっすね!? 見えるんですよね!?」

「良いから落ち着いてくれーーー!! 見える! 見えてるからーーー!!!」

京太郎の叫びを聞いてパッと手を放す桃子、離された瞬間に距離を取る京太郎。

「……そうっすか。ふつうは影の薄い私のこと見えないはずなんですけど……」

疑問を口にする桃子に京太郎が答える。

「そもそも影が薄くって見えないってなんだよ!? それだけの霊波が垂れ流しなら気づかない方がおかしいわ!」

「ふつうの人間に霊波なんか見えるわけ無いっすよ!!!!!!!」

「……それもそうか…… そもそも、そんな大きなおもちの持ち主をこの須賀京太郎が見逃す訳は……」

そこまで京太郎が言うと、ガシッと京太郎の頭を誰かが鷲掴みにする。

ダラダラと冷や汗を流す京太郎、彼は目で確認しなくてもその正体は分かっているようだった。

「……京太郎……」

「な、なんだ……? まこ……」

衣達と対局していたまこだった。

京太郎と桃子が話し始めた頃は東三局が始まったばかりで、常識的に彼女がいま京太郎の後ろに居るなど考えづらい。

まこがさっきまで居た卓を見ると、雀卓に突っ伏した衣が頭に箱を被り、頭から煙を出して突っ伏していた。

「天江さん…… 大丈夫ですか……?」

「だ、大丈夫…… げに恐ろしきは嫉妬のパワーよ……」

「……役満二連発とは恐れ入りましたね……」

恐ろしい会話が聞こえてきたが周りの人たちは聞き流すことにした。

「……のぉ、京太郎…… そんなに大きいおもちがええんか?」

「いや…… あの…… その……」

俯きつつ絞り出すような低ーい声で詰問するまこ、京太郎は完全にパニックになっていてシドロモドロだ。

「わしが頑張って練習してるそばで…… ようも東横と激しいスキンシップしよったのぉ……」

「いや、あれはちが……」

「京太郎の……」

そこまで言って顔を上げるまこ、目の端に涙を溜めてぷるぷると震えていた。

「浮気者ーーーーーー!!!!」

「ノォーォォォォォォ!! ギブ! ギブ!! ギブーーーー!!!!」

叫ぶと同時にまこはコブラツイストを京太郎にかける。

完全に決まっているのか京太郎はもがくことすら出来ない。

ギリギリとさらに力をかけていくまこ、それに比例して京太郎の顔色も青くなっていく。


「こ、コーチ…… 止めなくていいんですか……?」

困惑した様子で風越の深堀純代が久保コーチに声をかける。

しかし、心配した様子の純代に対して久保コーチの声には呆れの響きがあった。

「まぁ、大丈夫だろう。犬も喰わない痴話げんかだしな」

「そ、そんなものですか……」

「あの二人は早熟見たいだなぁ…… お前らも、もう少し年を重ねてお相手が出来れば分かるようになるさ」

なおも心配した様子の純代に優しく諭す久保コーチ、その落着きは大人の余裕というモノを感じさせる。

「……裏を返せばコーチにも男が居るってことか…… 良く捕まえたし、いや、むしろ想像できないし……」

ボソッと呟く華奈、久保コーチに聞こえないように言った心算(つもり)だったがバッチリ耳に入っている。

大人の対応でこの場は黙っておくことにしたのだが、頬がひくつくのは隠しようがなかった。

なお、まこの折檻はコブラツイストから頸動脈絞めに移り京太郎が意識を失うと同時に終了する。

二人のかなり激しいジャレ合いを見ていたのは風越の面々だけではなく、合宿参加者の全員が見ていた。


「……それにしてもあの三人は何してるんすか?」

桃子がそういって指差した先にいるのは咲、優希、久だった。

三人とも指をくわえて羨ましそうにしていた。

「……さぁ? さっぱりわからん……」

首をかしげるのは加治木ゆみ、そんな彼女の後ろにソソッと近づく影がある。和だ

「羨ましいんでしょう、きっと。あの三人は須賀君に思いを寄せていますから」

「!? うぉ!? は、原村か…… 脅かさないでくれ、心臓に悪い……」

突然、背後から声を掛けられて飛び上がらんばかりに吃驚したゆみ。

しかし、和のセリフに聞き捨てならない単語が含まれていたことにすぐに気付いた。

「……ちょっと待て、それは横恋慕ってことか?」

「はい」

ゆみの質問に冷静に肯定の返事を返す和。

本来なら部の雰囲気は大丈夫なのかと心配するべきところであるが、彼女の発言を聞いてハッスルしだす少女が一人……

「おおおおお! そ、それって修羅場ってことっすよね!? 昼ドラみたいっす!!」

「モモ…… お前……」

ゆみの後輩・桃子の意外な趣味が明らかになった瞬間だった。

影が薄く今まで人の輪に入ろうとしなかった桃子、友達と遊びに行くなど殆ど無かった彼女は時間を持て余すことが多々あった。

そんな時、暇を潰すためにしていたことはドラマ鑑賞だったりする。

当然、修羅場シーンなど数えきれないほど見ている。

しかし、それは現実感を伴わない知識上のモノだ。

現実の修羅場がここにあるかも知れない…… そう考えてしまい箍が外れて興奮してしまったのだった。

「まだ、修羅場は発生していませんね。確かに面白そうですけど、収拾がつかなくなると大変なので阻止するつもりですが……」

「そうっすか…… まぁ、そりゃそうっすよね」

(原村はまともみたいだな…… 良かった)

和の考えを聞いてゆみは安堵の溜息を心の中でつく。

だが、安心するのはまだ早かった。

「代わりに面白い解決策を考えています」

「ほぅ…… 何っすか?」

「『妻妾同衾』とか『二号さん』という言葉、知っていますか?」

ニコリと微笑む和。笑みこそ天使のようだったが、その口から出た言葉はトンでもなかった。

予想外過ぎる言葉を聞いて頭の中が真っ白になるゆみ。

一方の昼ドラ大好きの桃子は再びハッスルする。

「おおおおお! そ、それも面白そうっす! 手伝うっすよ!!」

燥ぐ後輩の声を聴きながら本格的な頭痛を感じ始めたゆみ。

蟀谷を揉み解しながら彼女は思う――

 清澄の麻雀部にマトモな奴は居ないのか?

―― と。


午前の練習が終わり昼食を採る。そして午後の練習が始まった。

午後の練習は16時ごろまで続き、そのあと夕食まで自由時間が設けられた。

「まこ~、どこ行ったのー?」

もう夕食までまだ少し間がある頃、まこを探して久が旅館内をウロウロしていた。

「おっかしいわね、一体どこに行ったのかしら…… まこ~~」

「部長どうしたんですか?」

散歩に出ようとした京太郎が久を見つけて声をかける。

「あっ、須賀君、丁度良かったわ。藤田プロがあなたとまこを呼んでるわよ。それと、まこ見なかった?」

「藤田プロがですか? 了解です。それと、まこでけど…… 見てないですねぇ」

「困ったわねぇ……」

まこのことなら京太郎に聞けば良いのではないか? そう考えて尋ねるが帰ってきた答えはNO。

京太郎の返事を聞いて久は本格的に困った表情になる。

そんな二人のところに合宿メンバーが何人か通りかかったので、片っ端か「らまこを見なかった?」と聞いていく。

鶴賀の睦月曰く、

「染谷さんですか? いえ、見てないです」

風越の池田曰く、

「染谷? いいえ、華菜ちゃん見てないです」

龍門淵の純曰く、

「染谷? ああ、次鋒の眼鏡か…… いんや、見てないぜ」


「もう! まこったら一体どこ行っちゃったのよ!」

まこの行方が全くつかめないことに苛立ち始めた久。

親指の爪を噛み、トントントンと一定のリズムで足を踏み鳴らす様子からしてかなりストレスが溜まってきている様子だ。

その後、さらに何人かが合流してまこを探すが成果は上がらなかった。

一旦、まこ探しに参加した面々は玄関前に集まる事にした。

「ここまで探しても居ないとなると…… 外に出たのでは……?」

和が口を開く。旅館内は隅々まで探したといっても過言ではなく、外へ出たとしか思えなかった。

皆が困惑顔で思案しているなか、軽く京太郎が溜息をついた。

「仕方ない…… あれを使いますか……」

「須賀君、何か当てがあるの?」

「ああ、これを炙ればひょっこり出てくると思いますよ」

そう言って、京太郎はあるものをカバンから取り出す。

「……それは干物か……?」

見れば京太郎が取り出したものの正体は解るが、あまりに場違いなモノだったので衣が確認するかのように聞く。

「北海道は函館の最高級真ホッケの干物! なかなか手に入らないんですから。程よく乗った油が口の中を迸って、これがもぅ……」

「宣伝はいいから。それで、それをどうするのさ?」

いきなり干物の宣伝を始めた京太郎に突っ込みを入れて止める一。

周りの皆も呆れ顔で京太郎を見る。

少し気まずくなった京太郎。コホンと咳払いを一つして何処からともなく七輪を取り出す。

「だから、これを炙るんですよ」

そういって程よく炭の熾っている七輪にホッケを載せる。

暫くするとジュゥゥゥっといい音がして、食欲をそそる香りが辺りに漂い始める。

京太郎は懐から扇子を取り出すと片手で広げて扇ぎ始める。


「京ちゃん…… いくら何でも動物じゃないんだから…… そんなので染谷先輩が見つかる訳ないと思うよ」

周りが京太郎を見る目がドンドン冷めていく、冷や汗を一筋流しながら扇ぎ続ける京太郎。

その時、繁みの一つからカサカサと小さな音がした。

「そこか!?」

そう叫ぶと、京太郎は音がした方へ煙と香りが行くように扇ぐ方向を変える。

途端に繁みからピョコっと黒い猫耳が飛び出し、ピクピクと忙しなく動く。

さらに猫耳と一緒に特徴のある緑の髪の毛も一部見えていた。

「……えっ?」

京太郎以外の皆はハトが豆鉄砲を喰らった様な顔をして固まる。

一方、京太郎は声をかけて更に誘い出す作戦に出た。

「ほ~ら、北海道は函館産の真ホッケの開き…… しかも最高級品だぞ~…… 程よく脂もノってて…… 旨いだろうなぁ…… 口の中を旨味と脂が迸って…… あぁ!」

猫耳の動きはさらに激しくなる。完全にホッケに心を奪われているのが丸わかりだった。

そうしている間に程よく焼けたのかお皿にホッケを載せる。

そして繁みの方に向かってお皿を出しながら一言。

「はい、お食べ。まこ」

途端に繁みの中から人影が飛び出す。

「うにゃあ~♥」

「確保ォォォォォオオオオォォォォ!!」

京太郎の一喝でフリーズ状態から再起動を果たす一同。

十数人が一斉にまこに飛び掛かり取り押さえる。

「ふぎゃぁぁぁぁ!? ホッケーーーー!!」

大好物が目と鼻の先にあるのに拘束されて動けない。

必死になって振り払おうとするまこに久が怒鳴った。

「いいから大人しくしなさい!!」

こうしてまこの捜索劇は幕を下ろした。

そのまま藤田プロのところに連行しようとした一同だったが、京太郎の持つホッケの干物を食い入る様に見つめるまこの瞳があまりにも哀れだったので食べさせることにした。

輝かんばかりの笑顔でホッケに齧り付くまこ。さんざん苦労させられた一同もその笑顔を見て「まぁ、いっか……」と思ってしまった。



夕食後の夜の練習が終わって、就寝までの自由時間。

京太郎とまこは透華から招待されて龍門淵のメンバーが泊まっている部屋を訪れていた。

敷かれた座布団に座り、ハギヨシが淹れたお茶を啜って一息つく二人。そして……

「で、わしと京太郎に何の用じゃ?」

開口一番にまこが聞くと透華が微笑んで答える。

「お礼を…… 正式にお礼をしておきたかったもので」

透華はそう言うと姿勢を正し両手をついて先日の衣の件について感謝の言葉を述べていく。

周りでは一、智紀、純、衣、ハギヨシに歩も透華と同じように頭を下げていた。

「本当に、ありがとうございました」

「当然のことをしたまでじゃ、そこまでされると背中が痒ぅなってきよるけん、頭を上げてくれんか?」

「そうですよ、頭を上げてください」

二人がそういうと、龍門淵のメンバーは顔を上げる。

その後、透華が除霊代の支払をしたいと申し出るが、きっぱり断る二人。

「いや、『緊急除霊事例』でGS協会に報告してますから…… これで除霊代をいただいたら『GS基本法』違反で俺たちがしょっ引かれますよ」

「やはりそうですわね…… 一応こちらでも制度を調べましたから……」

そういって優雅にお茶を啜る透華、湯呑をそっと机に置くと本題を切り出した。


「では、事務所設立の支援と言う形では如何ですか?」

ハギヨシが調べ上げたGSの制度や二人の現状を考慮して出た結果がこれだった。

京太郎とまこはまだ事務所を持ってなかった。いや、書類上は二人とも事務所を開設していることにはなっている。

しかし、登記上の住所はそれぞれの実家。しかも依頼は県の危機管理部を通して受注するため正式なGS事務所とは言いづらい。

もちろん独自に依頼を受けてはいるが、9割がたが県を通した依頼だ。

何故こんな変な方法を取っているのかと言うと、GSだった二人の母親が「自分で依頼処理するの面倒くさい~」と言って今の形を取ったからだ。

ずいぶんとズボラな母親たちだった。 ……で、それぞれ登記上の事務所を引き継いで今に至っている。

「企業グループとしてGSの事務所設立の支援を行うという形なら不自然ではありません。行政手続きも手慣れたスタッフが家に居ますからスムーズに進むでしょうし……」

「事務所の設立にあたっては色々と入用でしょうから、寄付や給付といった形を取れば法律上問題は出ませんわ」

途中でハギヨシの手助けを借りながら、粛々とメリットを語っていく透華。

京太郎とまこにとっては悪くない話だ。

いや、そろそろ事務所関係のことを整理して二つの事務所を合併しようかと考えていた二人にとっては渡りに船だといっていい。

しかし、透華の提案に容易に頷くことが出来なかった。

事務所を一つにするなら行政手続きはかなり面倒なことになるだろうし、本格的な事務所を開くとなればかかる費用は数億になるだろう。

果たして厚意に甘えてしまっていいものか、そんな考えが脳裏をよぎる。

「突然の話で戸惑っておられるでしょうが、衣の命を助けて頂いたんですから、これくらい当然ですわ」

「透華お嬢様の仰る通りです。お二方とも衣様の恩人です。旦那様もこの件に関して出来る限りの協力すると仰られています。どうか、受け取っていただけませんか」

「……分かりました。ただ、俺たちの一存では決めることが出来ない問題ですので…… 合宿が終わった後で詳細を詰めていくということでいいですか?」

「ええ、大丈夫ですわ」

京太郎はこの場で即答することを避け、合宿後に改めて支援を受ける方向で交渉を行うことを提案する。

透華も、その提案を快諾しこの場での話が終わる。

場を支配していた適度な緊張感が緩み、皆笑顔になる。

そんな中、衣が京太郎の方に寄っていって一言。

「きょうたろー、今日の練習を見ていたが面白い打ち方をするな。どうだ、これから衣と打たないか?」

「え゛っ?」

「おっ、いいな。面白そうじゃん」

純も乗り気な発言をする。こうして、その夜はインハイ屈指の実力者達に麻雀で揉まれる運命となった京太郎だった。







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                Report.8 closed
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【次回予告】


ちょっとした手元の狂いが思わぬ悲劇を生み出す。

宅配荷物の取り扱いは慎重に!

「桃子さぁ~~~~~ん♥」

「助けてっすーーーーー!!」

「この…… ドサンピンが!!!」

次回『Report.9: 四校合同麻雀合宿!! Ⅲ 』!


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【人物・用語解説】

〈GS基本法〉

GS業務のもっとも基本的な事柄を規定した法律。正式名称「対心霊現象特殊作業業務に関する基本法」
「オカルト犯罪防止法」「祭祀法」とともにオカルト三法に数えられる法律。

では、Report8はここまでです。
次はおそらくExtra Reportの投下になると思います。

読んでくださった皆さん、感想など大歓迎です。
お待ちしてます。

もしかすると、今晩中に投下できるかもしれません


              _ぇ
             下聿a_   ________
             |lllllllllllllll工_,,   二二―宀 、
             lllllllllllllllllllll宀"´ ‐-‐ ‐ン下'' 、

             _|llllllll聿l!ヌllllト     │ ノ「ユ  \..- 、
            丿〈lllllllla! ‐ 夕  _    ィ癶{彳' ノ'" :‐‐ ヽ
           丿 l斗- ̄^个"^ ... │/ ィl上l!dノ ゙ _コ ''  '、
          丿ノ:/   _ ‐  ゙'' ‐ /^__个 `'''1っ'彡斗   ‐ |聿a__
        ..... ^'´ ./彡-‐l   ./ヘ''"^  ヘ-    `ー广   ^ |聿llllllll聿''
     ,,-    ノ" ____ : ヽ│-  |  ゝ__,,.  _.    〈      丿ャllllllll广^
    ^彳 ノ了ン"./´⌒lノ" 个 ゙‐     `^^‐''    │    〈jlllllll广
      ‐!  〈t  !  冫l ┌  \_         ¦ │     l广´
         ¦ ''|  ヽ  │ __  \_          ^│l     ̄`\
         7.n | lー:t  ヘ ゙゙ ̄'ーlユa ./_/      ,ノ ,'1    !'''''''`
            ^ノヽ⊥ ィ      ‐ン" ソ上宀宀っ'ソノ │'、  l
          _,,,,....上!\゙‐ ./ー宀......_´` '' ゙ンlax=ニ│"  ! ヽノ

        _,.-彡!彡ン个'' ニンl     ヽ 、    !./ィソンj丿 __,
      ;xノ``^ニ二ソ ../",.-'宀-..,,_   丿 __ノ-ヘ´ 、_ ´  |llll聿
     ノ‐土kョlュa∟.ノ'´ /ン'"  1 _/ ̄ ̄'/―'''^!,il ...ニ' 、lllll聿
     _ノ聿宀"-‐ -ン'´    │a_゙j _  1     .._'、 ^ ノllll彳
    /         r^ ___    上介'"⌒゙''ィ    '¦ ^  _lllll广
   _彳''''''''''/i''r    ヽ   `ー,,  爻l- 、,,_ │    __ィllllll彡
   "’            `     ^  ̄''''―‐―――  ''゙宀宀"

この先のSSは【R-18】じゃけえ18歳未満の方はソッ閉じもしくはスキップしんさい

「須佐之男の末裔が願い奉る、古き面に宿りし思慕の念を解き放ちたまへ……」

蝋燭の明かりに照らされた神社の奥之院の一室に朗々と呪を紡ぐ声が流れる。

目を閉じ京太郎は印を結んでいく。

「……?急如律令」

京太郎は呪を唱え終わるとゆっくりと目を開ける。

目の前にあったのは憑いていた念が消えた能面だった。

「……終わったか? 京太郎」

建物の外で結界を張っていたまこが部屋の中に入ってきた。

「ああ、無事終わったよ。神主さん呼んできてくれ」

「了解じゃ」

京太郎のお願いに返事をすると、神社の神職を呼びに社務所へ向かうまこ。

暫くして神職を連れて戻ってくる。

「無事、終わりました。お面に憑いていた念は完全に祓えました」

「本当ですか!? いやぁ、ありがとうございます! 助かりました」

京太郎の報告を聞いて手放しで喜び始める神職。

「いやぁ、流石は腕利きGSと評判のお二人だ! 本来なら神職たる私が祓うべきなのでしょうが…… 生憎と雇われ神職なもので霊能力はこれっぽっちも持っていないんですよ」

少し決まりが悪そうに後頭部を掻きながら話す。

昔は、神職や住職と言った宗教に関わる職業に就いている人は簡単なお祓いや呪い位は出来た。

しかし、時代の変化か専業で就く人も減り世俗化が進んだせいでそれすら出来ない聖職者が殆どだった。

「いえ、時代の流れですから仕方ないと思いますよ。それに、そんな事態に対処するためにGS(われわれ)が居るのですから」

「そう言って頂けると気が楽になります…… はい、お約束の除霊料です」

そう言って神職は封筒を差し出す。恐縮した様子でまこが受け取る。

まこが封筒を懐にしまったと同時に何かを思い出したのか神職がはたと手を打つ。

「そうだ、今日ウチの神社で夏祭りがあるのをご存知ですか? これは除霊量とは別に私からの気持ちです。受け取ってください」

そう言って神職が二人に手渡したもの。それは、夏祭りに出てくる全ての出店で使える金券だった。




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         Extra Report.3;夏祭り
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「どうじゃ、京太郎? 似合うか?」

くるくると回りながらまこが言う。

薄い水色地にピンクや紫の朝顔がデザインされた浴衣を着ていて、手には巾着を持っていた。

今回の依頼先の神社で夕方から夏祭りがあることを知っていた二人。除霊が終わった後に遊ぶことを予定していたのだった。

浴衣は予め荷物の中に入れていたし、社務所の更衣室を借りて着替えたのだ。

「うん、めっちゃ似合ってるぞ!」

「えへへ…… 京太郎も似合っちょるのォ」

京太郎に褒められて頬を赤く染めるまこ。はにかみながらも京太郎の格好を褒める。

京太郎は濃い紺地に細い白の縦線が入ったシンプルな浴衣だった。

渋めの柄だったが京太郎の容姿が良いからか、かなり良い味が出ている。

「それじゃ、神主さんから金券もらってることだし…… 遊ぶか!」

「おう!」

京太郎の声に元気よく返事するまこだった。


祭りにはかなりの数の屋台が軒を並べている。ここの神社の祭りはかなり大きらしい。

たこ焼き、イカ焼き、リンゴに射的。変わったところでは“イワナの塩焼き”や“ザザ虫の佃煮”の屋台なんてものもあった。

定番の粉モノなんかで軽くお腹を満たした二人は金魚すくいなんかを楽しんでいく。

京太郎がふざけて「美味しそうだからって金魚食うなよ?」とニヤニヤ顔でからかうと、まこは涙目で京太郎のお尻を抓る場面もあった。

「やっぱり祭りの屋台の定番と言えば綿あめじゃのぉ、このふわふわ感が堪らん」

そう言いながら笑顔で綿あめを齧っていく。

「う~ん、このキュウリ串も中々イケるぞ」

京太郎も頬を緩ませながら串に刺さったキュウリの浅漬けを齧る。

「ん? まこ、ほっぺたに綿菓子が付いてるぞ」

「ん? どこに?」

「ほら、動かないで……」

そう言って京太郎はまこの頬に付いた綿あめの欠片を摘む。

「ね?」

摘んだ欠片をまこに見せて、そのまま綿あめの欠片を自分の口にヒョイっと放り込む。

そしてお互いの顔を見合ってクスクスと笑いあう。

「そういえば、花火もあるんだっけ」

「神主さん、言うちょったのォ」

「場所取りに行こうぜ。ぼやぼやしてるといい場所が無くなっちまう」

そう言うとまこの手を取って神職が教えてくれた花火が見れる穴場に向かって歩き出す京太郎。

「ちょ、京太郎! 焦らんでもええじゃろ!」

いきなりだったので少しバランスを崩して抗議の声を上げるまこ。

しかし、京太郎と手を繋いでいることを意識したのかその表情は嬉しそうだった。

手は当然恋人つなぎ、その様子は手慣れた感もあってよく似合っていた。

「……クッ! リア充め…… 爆死しろ!!」

そんな京太郎とまこの様子を見て悔し涙を流す野郎どもがチラホラと……

異性の友達を誘えず、同性の友達だけで祭りに来た哀れな惨敗者達だった。

知らず知らずのうちにみなしご達に敗北感を味わわせつつ穴場へ向かう京太郎とまこ。

そんな二人を偶然見つける見知った顔触れが居た。

「あれ? あれって清澄の須賀君とお姉さまだよね?」

「ほんとっすか? 清澄とこの神社じゃ結構距離があるっすよ」

「あっ、本当だ! 妹尾さんよく見つけましたねぇ…… ところで妹尾さん、なんか染谷さんの呼び方が変だったのですが……」

そう、女子団体決勝で清澄と戦い、四校合同合宿をともにした鶴賀の面々だった。

ちなみにこの神社、鶴賀高校にかなり近い。

「ワハハ、逢引か? あの二人だと絵になるなぁ~ キスとかするのかな~」

「キ、キスって…… そう言うのは成人してからだなぁ……」

「……ユミちん、一体何時の時代の人間だ? いくら何でも古風すぎるぞ……」

その後、鶴賀麻雀部のメンバーはモモから即席のステルス講習を受けつつ二人の後をつけていった……


ヒュゥゥゥゥゥゥ……………… ドォォォォン………………

「たーまーやーーーー!」

花火が炸裂する音にかなり楽しげに声を被せるまこ。

神職に教えてもらった穴場は神社の敷地にある小さなお社の前の広場だった。

全く人が居ないという訳ではなく、地元の人がそこそこ来ていた。

ヒュルヒュルヒュゥゥ……………… ドォォォォン………………

「「たーまーやーーーー!」」

今度は京太郎も一緒に声を被せる。

そんな二人を鶴賀のメンバーは絶妙な距離を取って観察する。

「本当にラブラブっすね、あの二人」

「そうだね、桃子さん。あっ、見て、未だに恋人つなぎしてるよあの二人」

「うむ…… こう言ってはなんだが、恋人がいるって羨ましいですね……」

一年二年トリオが二人をガン見している傍らで三年コンビは打ち上げられる花火を見ながら感傷に浸っていた。

「ワハハ、結局男っ気の全くない三年間を過ごしてしまったな~ なぁ、ユミちん」

「ああ、女子高なんてそんなもんだろ…… あと、この間雑誌で見たが女子高出身者は行かず後家になり易いらしいな……」

「ワハハ…… この位じゃ泣かないぞ……」


花火大会が終わり、花火を見ていた時の興奮が冷めぬまま石畳の道を散歩する京太郎とまこ。

月明りで少し明るめの夜空の下、カランコロンと下駄が石を叩く音がする。

少し頬を染めながらまこはチラチラっと京太郎の顔を窺う。

当然、京太郎は気づいていたが、まこの仕草が可愛かったので気づかないフリをしていた。

「のぉ…… 京太郎…… その……」

ついに我慢できなくなったのか上目づかいで、京太郎の顔を覗き込むまこ。

そして、口元を京太郎の耳に近づけて一言。

「興奮しすぎたけぇ…… その…… ムラムラして来よってな…… ちょっとやらんか……?」

繁みの方を指差すまこを見て少し笑顔が引き攣った京太郎だった。


石畳の道をそれて人目に付かない繁みの奥に小さなスペースを見つけた二人。

そのスペースの真ん中に真っ直ぐ生えている木が一本ある。

まこはその木に手を付き、お尻を京太郎の方に突き出す。

京太郎はまこの浴衣が汚れないように裾を捲る。下着を着けていなかったまこの尻を風が直に撫でていく。

「本当にいいのか? ここで……」

「たまには、こんなシチュエーションもいいじゃろ」

「全く……」

口ではそう言いつつも、まこのお尻をさすっていた右手でお尻の穴、蟻の門渡をほじる様にねっとりと刺激していく。

そして右手をさらに雌穴まで移動させ刺激していく。

指が膣壁の浅い部分を掻く様に刺激する。まこの膣内は既に十分濡れていてクチュクチュと音が立ち、ゾクゾクとした快感がまこの脊髄を駆け上がる。

「……ふぁぁぁぁ! くふぅっ……!」

だらしなく開いた口から喘ぎ声が上がり始め、雌穴からさらに大量の愛液が出てきて京太郎の右手を濡らす。

開いて木に突いていた手が快感に耐えられなくなってきたのかキュッと握りしめられた。

「今日は特に感じやすくなってないか? まこ」

ベッチョリと濡れた右手を見つめながら話しかける京太郎。

そのまま右手をまこの顔まで持って行って頬を撫でたりする。たちまちまこの顔は自分で出した愛液まみれになった。

胸元が肌蹴けプックリと勃った乳首が見え隠れする。

青姦と言う普段する事の無いシチュエーションで何時もより昂ぶっているみたいだった。

「……あんまり声出すと誰かに見られるかもしれないし……」

「きょう…… たろ…… その…… 手ぬぐい……」

「手ぬぐい? ああ、噛むのか。でもいいのか? 俺、これで汗を拭いてたけど」

まこの言葉の意味を理解した京太郎は手ぬぐいをまこの口元に差し出す。

まこは差し出された手ぬぐいをハムッと咥える。

(京太郎の匂いじゃ~?)

京太郎の匂いを感じて興奮の度合いが増したのか、それとも制御する気が無くなったのか猫耳と尻尾がニュっと出てくる。

声でばれる心配も無くなったので、本格的に愛撫を始めようと手を動かす京太郎。

なんやかんや言いながら彼も青姦と言う背徳的な行為に興奮していたのだった。


「あわ……!? あわわわわわ……!!」

「おぉぉぉぉぉおおおっ!! これはすごいっす!!」

「……きゅー……」

繁みに隠れて京太郎とまこの行為を見物する鶴賀の面々。世間一般では出歯亀とも言う。

睦月は完全に狼狽、桃子は興味津々でガン見、佳織は刺激が強すぎたのか目を回していた。

「むぐーーー! むぐむぐむぐーーーー!!(離せ蒲原! あのような破廉恥な行為は止めさせなければならないんだーーーー!!)」

「わははー、ユミちん。馬に蹴られるから大人しくしてようなー。お互い同意の上で犯罪じゃないんだから、邪魔しちゃ悪いだろー?」

「むぐーーーー!!!!(そんな訳あるかーーーーー!!!!)」

完全に理解の範囲外の出来事だったゆみ。止めさせる為に繁みを飛び出そうとしたところを智美に口を塞がれたうえで拘束された。

ちなみに五人の着ているモノは浴衣で、祭りに参加していた時と同じだった。

しかし、各々が頭に巻いた手ぬぐいと腰帯に木の枝を刺しまくっている。

カモフラージュの心算だろうが、かなり異様な格好になっていた。

「おぉぉぉおおっ! 染谷さんすでにマッパっすよ!! それに手でオマンコをグチュグチュにかき回されてるっすよ!!」

「あわわわあわわわわっわ!?」

「むぐーーーーーー!!(破廉恥だーーーー!!)」

「モモはガン見しすぎだなー、 むっきー はもう少し落ち着こうなー」

京太郎がまこに激しい手マンを始めたのを見てさらにカオスな空間になる鶴賀一同。

佳織は相変わらず気絶していたが。


「んんん……っ!」

まこの胎内を掻き回していた右手がグチュっという音と共に抜かれる。

さっきまで激しく責められていたまこはハァハァと荒い息をつく。

「まこ…… 挿れるぞ」

京太郎が声をかけるとまこは赤みが差した顔を向けてコクっと小さく頷く。

それを確認した京太郎は自分の肉槍をまこの陰唇にあてがう。

クチュリと音がして粘膜と粘膜が擦れ合う。そして勢いよくまこの子宮めがけて京太郎の肉槍が突き込まれた。

「んんんンンッッッ?」

グイッと子宮が突き上げられ背中が弓なりに痙攣するまこ。

膣が締め付けたり緩んだりするなか、京太郎のイチモツはまこの大切な女性の部分を蹂躙する。

「ふぅんんんッ……! んんんンンッッ……!!」

後背位での激しいピストン運動 、抜かれる時はカリが分泌した愛液を掻き出すように膣壁を刺激し、突き込むときは子宮を串刺しにするような勢いだった。

抜き差しされる度にまこの体が前後に揺れる。その程よく実った二つの乳房も体の揺れに合わせて踊っていた。

乳首は痛々しいほどにしこっていて、まこが凄まじい快楽に翻弄されているのがわかる。

「フゥ……ッ! んんんンンッッッ!!!」

口に加えた手ぬぐいを噛み、目をキュッと瞑って快楽に耐えるまこ。

しかし体は正直なようで、より強い快感を得ようと京太郎のピストン運動に合わせて腰が無意識に動いている。



「おおおおおおおおおおおおおおおおおっ!! すごいっす!! ズッコンバッコンやってるっすよ!! あの二人!!」

「あわわわあわわわわっわわわわあわわわわっわわわわあわわわわっわわわわあわわわわっわわわわあわわわわっわわわわあわわわわっわわわわあわわわわっわ!?」

鼻息荒く更にガン見するモモ、その瞳は爛々と輝き鼻の孔は当社比1.25倍でほどに拡がっていた。

睦月は顔をさらに真っ赤にして錯乱中。

「ワハハ、だからモモはもう少し落ち着こうな~ むっきーも落ち着こうな~ 初心なのは解るけどな~」

モモと睦月に声を掛けつつ自分の傍らを見る智美。

そこには――

「……きゅー……」

「……きゅー……」

―― 顔を真っ赤にして目を回している佳織とゆみが寝かされていた。

「ワハハ…… 本当に初心なのはこっちだったか…… 二人には刺激が強すぎたんだな~」

「ワハハ…… なんかお母さんになったみたいで複雑な気分だぞー……」

ちょっぴりブルーな気分になる智美、そんな彼女を尻目に更に盛り上がっていく二人。

「おおぉぉぉぉぉおおっ!! オチンチン抜く時ってオマンコあんなに捲れちゃうんすか!? おおッ!! 突き上げられた時の染谷さんのアヘ顔がすごいっす!!」

「あわわわあわわわわっわわわわあわわわわっわわわわあわわわわっわわわわあわわわわっわわわわあわわわわっわわわわあわわわわっわわわわあわわわわっわあわわわわっわわわわあわわわわっわ!?」

モモは一目瞭然のムッツリだった。

睦月はあわあわと手で目を覆っていたが、指の隙間からガッツリ見ていた。この娘もムッツリだったようだ。


「あっ! あアっ! あンッ!! ンンッ!!」

まこが加えていた手ぬぐいは既に地面に落ちていて、まこの口からは嬌声が出ていた。

京太郎が片足を担いでるので、まこは片足と木に突いた手で体を支えていた。いわゆる後矢筈と言われる体勢だ。

「ああぁぁん…っ! しきゅう…が… おりてぇ… きょ、きょうたろうに…突かれとるぅ…!」

体中を駆け巡る性感によって子宮が降りていたまこ。そこを逞しく京太郎の肉槍に突き上げられる。

激しく揺さぶられる子宮によって快感が倍以上になって体を苛み、極上の頂へまこを誘う。

「もっと…! もっとつきあげてぇ!! ンチュ……」

なおも嬌声を零すまこの口を京太郎が口で塞ぐ。

ヌチャっと京太郎の舌がまこの口の中に侵入し歯茎を舐る。

まこの方も答えて舌を京太郎の舌に絡める。

「クチュ…… ジュル… ヌチュ… ……ンンッ、ぷふぅ……」

上と下の口で京太郎を求めるまこ。

「プハッ! ァんん…っ! ンくぅ! オ○ンコいイィいぃぃぃ!!」

「あぁぁぁッ! イク、イってまうぅぅ!」

ディープなキスから解放されたまこの口から再び嬌声が漏れる。

劣情に支配されたまこの膣と子宮が京太郎の精液をねだる。

「な、中に…ッ! 中出しして!」

「ああっ! タップリ射精してやるからな! それッ!」

「んあああぁぁぁぁぁぁぁあああ…ッ!! イっクぅぅうぅぅぅぅううぅぅ…ッ!!!!」

絶頂への階段を限界まで上っていたまこに京太郎が止めの突き上げをお見舞いする。

まこの股に京太郎の股がズッポリと食い込み、肉棒がまさしく槍となって子宮口に突き刺さる。

その刺激で子宮が歓喜に震え、まこの脳裏に白い光が爆ぜ絶頂が体中を駆け巡る。

体中の筋肉が硬直し、まこの体が弓なりに反る。

膣がキューキューっと京太郎のイチモツを締め付け子宮口が鈴口に吸い付き射精を促す。

「くぅぅッ!! 射精る!!」

「んああぁぁぁあ! 中に射精されちょるぅぅ…ッ!!」

京太郎もまこの名器からの刺激に耐えられずに思いの丈を胎内にぶちまける。

熱い京太郎の精液に子宮を染められて再度絶頂するまこ。

大好きなオスに犯され種付けされる、メスの最大の悦びが真っ白になったまこ脳裏を支配した。

登り詰めた為、ピクンピクンと硬直していた二人、しばらくして脱力する。

まこは地面に崩れ落ち、京太郎はフラついて木に凭れ掛る。

その様子から二人ともかなり消耗していることが窺えた。

まこの雌穴から京太郎の雄棒がヌチュリと抜ける。広がり切った雌穴から白く濁った精液が漏れてくる。

顔は汗と涙、涎に塗れ、股間は信じられないほどの愛液と京太郎の精液で汚れていて、全身は汗だくだった。

そんな様子で横たわる全裸の少女、傍からはレイプ現場と見間違うほどだ。

しかし、恍惚とした表情で横たわるまこの姿は不思議な魅力を放っていた。


「すまんのォ…… 京太郎」

「ははは、軽いから大丈夫さ」

行為の後、身支度を整え帰ろうかという時にまこが腰を抜かしていることが判明。

今は京太郎がまこを背負って帰り道を歩いている。

「それにしても…… 今日は珍しいくらいに乱れてたなぁ…… あそこまで淫乱になったのはいつ以来かなぁ」

にししっと悪い笑顔でまこに話しかける京太郎。

当然、まこは顔を真っ赤にしながら言い訳する。

「そ、そんな言い方せんでもいいじゃろ! ……誰かに見られちょるかもと思うと興奮して……」

最初は威勢良かったが次第にモジモジと声に勢いがなくなるまこ。

「まぁ、俺もそうだったな。なんか背徳的な気分で興奮するよな」

二人は知らない。今回の男女の事情の一部始終を鶴賀のメンバーに目撃されてたことを……

まさしく『知らぬが仏』だった。

「えへへ……」

背負われつつ京太郎の背中に頬ずりしだすまこ。

「……どうしたんだ? 一体……」

「えへへ…… 京太郎の匂いじゃー」

大好きな彼の匂いを満喫しご満悦なまこ。

もっとも今現在、彼女の子宮はそれ以上の京太郎臭で満たされているが。

「なんだよ、まこって匂いフェチか?」

「女の子にとっては好きな人の匂いはいいもんなんじゃ」

「結構元気じゃねぇか、歩けるか?」

「……まだ腰が抜けとるけぇ……」

スッと目線をそらすまこ、結構元気なようだ。


そんなまこの様子にフゥっと溜息を一つつく京太郎。

「まぁ、良いけど…… 家帰って、風呂入って…… それから……」

京太郎がそこまで言うと、まこの声が割り込んでくる。

「のぉ…… もう一戦せんか?」

ベッドインのお誘いだった。

「……あれだけ乱れたのにまだ足りないのかよ……」

「だって、体が火照って仕方ないんじゃもん!」

頬を膨らましてむくれるまこに京太郎は再び溜息をつく。

しかし、すぐにニヤリと悪い笑顔を浮かべる。

「だったら、今日は道具使って二日は足腰立たなくなるまで責め抜いてやるよ」

「おう、やってみんさい」

京太郎の挑発にアッサリ乗ってしまうまこ。

この後、家に帰りつくと二人はまずお風呂で身を清め、そして再び情を交わすことになった。

なお、京太郎が道具を駆使して責めに責めあげた為、まこは本当に二日間足腰が立たなくなってしまう。

まこは最初、涙目で抗議していたが京太郎に付きっ切りで世話をしてもらったので機嫌は直ぐに戻った。

もっとも、一番お世話になったのはまこの下のお口だったのは割とどうでもいいお話。


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              Extra Report.3 closed
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では、今夜の投下はこれで終わりです。
読んで下さった方、ありがとうございました。

感想は随時受け付けてます。色々書き込んでください。

あと、まこのAAトリミングできる方、もしよければトリミングしていただけないでしょうか?

おおぅ…… いくつか文字化け……
専用ブラウザ初めて使ったからか……

スマヌ、スマヌ……
出席しなければいけない用事があり過ぎてまだほとんど書けていません……
投下、かなり遅れそうです……

ごめん、ちょっと忙しくて書く時間が確保できず
現在4割完成といったところです……

とりあえず報告まで、
現状9割の執筆が完了しました。
残りは締めだけ、来週中には投下できると思います。
もうしばらくお待ちください。

こんばんわ。
どうにか書き上がったので、文章のチェックをして明日投下します。
お楽しみに

それじゃ予告通り投下しま~す!

    カチャカチャカチャ……

清澄高校主催の四校合同合宿が開かれている旅館の大広間の一室は朝だと言うのに今日も熱気に包まれていた。

己の技量に更に磨きを掛けるため、みんな自分の成長に必要なものを対戦相手から盗み取ろうと神経を研ぎ澄ます。

「ツモ、タンピンドラドラ」

そんな中、京太郎が上がり宣言する。

「えっ!? リーチ無しで?」

「そんな勿体無いことを…… リーチしていれば裏が乗るかも知れないのに」

下家と上家に座っていた華奈とゆみが声を上げる。

ゆみは実際に裏ドラを確認してみたが、雀頭が裏ドラだった。

「須賀! やっぱりこういう時はリーチすべきだし!!」

華菜が詰め寄って京太郎に説教するが、当の京太郎はニコニコとするだけ。

一方、対面の透華はこの対局で京太郎がやって見せたことに鳥肌を立てる。

(ま、まさか…… 放銃を回避するために敢えてリーチをしなかったというのですか!?)

京太郎の打ち筋に込められた意味を理解した透華、なお正解にたどり着いたのは彼女だけではなかった。

「うーん…… 防御力は凄いな。私でも捲れるかどうか厳しいな」

「全くですね…… しかし、攻撃力が低いのでジリ貧になりますが」

京太郎の打ち筋についてヒソヒソと話し合う藤田プロと久保コーチ。

久から彼の特異性をある程度聞いていた二人は京太郎の対局を観察、分析していたのだった。

「でもビリは無し、加えて3位になった回数は数えるほど…… ほとんどの対局は2位に収まってますね」

「ああ、アベレージで見ると此処にいるメンツの中でもかなりの上位に食い込むぞ。リーグ戦で強いタイプだな。トーナメントは弱いが……」

「まぁ、麻雀を初めてまだ2か月かそこらの選手ですから、今後の伸びを考えると有望株ですね」

「確かに、そう考えると恐ろしいな……」

知らず知らずのうちに風越のコーチとプロからの評判を上げている京太郎だった。







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           Report.8;四校合同麻雀合宿!! Ⅲ   
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さて四校合同合宿も残すところ後2日、今日は各校の交流もかねてお昼から夕食まで自由時間と言うことになった。

昼食後に周辺を散策しようということになって、およそ20人オーバーの集団で散歩する。

制服女子高生の集団の中にあってただ一人男子高校生。結構浮いていた。

「京ちゃん、京ちゃん! 見て見て! キツネ!!」

咲がそう言って道端で見つけた一匹の小ギツネを抱きかかえて京太郎の方に向ける。

少しモッフリしているがキツネには間違いなかった。しかし、毛色はかなり白っぽい。

かなり人馴れしているのか逃げ出すそぶりさえ見せない。

「宮永さん、見せて見せて!!」

流石は可愛い物好きな女子高生たちと言うべきか、小ギツネを愛でようと咲の周りに殺到していく。

数多の女子高生に撫でまわされて狐は嫌がるかと思いきや気持ちよさそうにしてなされるがまま、野生動物とは思えないほどの人懐っこさである。

しかし、京太郎は狐から漂う妙な霊力を感じた。ジックリ観察してみてその正体に気づき顔が引き攣る。

(あれって、稲荷の白狐じゃねえか!?)

そう言えばと、この旅館の傍に小さな稲荷社があることを思い出す。

フッとまこの方を見てみると、まこも額に大粒の汗を浮かべて表情を引き攣らせていた。

彼女は結構早い段階から気づいていたらしい。

なお、まこの傍らに佇んでいる佳織は彼女の様子を不思議そうに見ていた。

その折まこ達の頭上から声が聞こえてくる。

「ん~、いい天気っすね~」

声のしてくる方を向けばそこに居たのはグーッと伸びをしながらリラックスしている桃子だった。

ちなみに彼女は横に張り出た木の枝に腰かけている。

「……モモ、気を付けないと落ちるぞ…… それに制服なんだから見えるぞ」

桃子の先輩であるゆみが注意する。

この合宿中、参加者はみんな浴衣を着る時以外は制服を着る事になっていた。

鶴賀女子学園の制服は上はブレザー、下はもちろんスカートである。

京太郎が合宿に参加していることも有り、木に登っている桃子の下が見えるんじゃないかと気が気ではない様子だ。

ちなみにその頃の京太郎は……

「……zzz ……zzz」

程よく眠気が襲ってきたので、手近な気にハンモックを渡し横になってお昼寝中だったりする。

他のメンバーも好き好きに午後のひと時を楽しんでいて、平和な光景が広がっていた。


   ピリリリリ! ピリリリリ!


そんな時に携帯電話の着信音が鳴る。

まこは鳴っているのが自分の携帯だと気付くと慌てて取り出し、サブディスプレイに表示されている発信元を確認する。

発信元を把握した彼女は少し表情を歪めて溜息をつきながら通話ボタンを押す。

どうやらあまり関わり合いたくない人物のようだ。

「もしもし、まこじゃ」

『アイヤー、まこちゃん元気あるか? 相変わらず須賀の坊主とよろしくやってるあるか?』

受話器から聞こえてきたのは男性の声、しかも口調は小説やアニメに登場する怪しい中国人が喋る口調そのもので怪しさ爆発だった。

「いきなり何の用じゃ、厄珍。わしはあんまりお前さんと長話するつもりは無いけん」

電話の主は東京でオカルト商品から日常雑貨まで取り扱う『厄珍堂』の店主をやっている厄珍だった。

この厄珍と言う男、金に汚いうえにチビで二つにまとまった髭を生やしていて常にサングラスを掛けている。

腕は確かだが胡散臭い。『厄珍堂』を利用する常連たちの人物評だ。

尤も顧客の信用を裏切るような行為はしないのでその辺だけは信用されていたりする。

『須賀の坊主にはデレデレなのに、相変わらずワタシには素っ気ないあるなー』

「ワリャーのやっちょる事を胸に手を当ててよーぉ考えてみんさい」

『ワ、ワハハハ! そ、それよりもまこちゃん頼みたい仕事があるね!』

ジト目をしているのが電話越しでも感じられるまこの声とセリフに、露骨に話題の転換を図る厄珍。

厄珍から出た「仕事を頼みたい」と言うセリフを聞いた途端、まこの眉が僅かに吊り上る。

まこは経験上知っていた。厄珍から持ち込まれる仕事の7割がロクでもないもの。

2割が内容はマトモだが何らかの原因によってロクでもないものに早変わりすると言う事を。

「そうけェ、仕事けェ」

『ワハハ、そうよ、仕事ある』

「はっはっはー…… 断る、他を当たっちょくれ」

『待つアル! 令子ちゃんにも断られて、もうワタシまこちゃんに縋るしかないあるよ!!』

「美神さんが断るような仕事なんぞ、わしかって願い下げじゃーーー!!!」

電話に向かってギャアギャア喚くまこ。

そんな彼女の様子を遠巻きに合宿メンバーが眺めている。

「ふぁ~…… 咲、まこの奴何喚いてるんだ?」

「あっ、京ちゃん。あのね、厄珍って人からの電話らしくて……」

騒がしくなってきたので昼寝を中断した京太郎。

大きな欠伸をし、右手で頭を掻きつつ咲に状況を聞く。

そして咲の説明の中にあった厄珍と言う名前を聞いて顔を引き攣らせる。

「厄珍か…… また面倒臭い話を持ち込んできたんだろうな…… せめて合宿中は平穏に過ごしたいぜ」

京太郎の呟きが風の中に吸い込まれていく。


『れ、霊薬の類の処分アル。そういう事は陰陽師の領分あるね!』

「確かにその通りじゃが……」

『この通りある! 知り合いに信頼できる陰陽師の家系は二人しかいないね!』

電話口から聞こえる厄珍の拝み倒すような必死の懇願についにまこも根負けする。

ちなみに厄珍、面倒な作業は京太郎たちに押し付けて自分は仲介料をタンマリせしめる魂胆だ。

そんな厄珍の真っ黒な腹の内を知らずに、まこは「ハァ……」と小さくため息をついて不承々々と言った様子で携帯に声を送り込む。

「わーった、その仕事受けるけェ。今度、東京に取りに……『流石、まこちゃんある! すぐに例のブツを送るね!』……ってオイ! こっちの話を聴きんさい!?」

穏やかな口調になったと思った途端に一転してさっきまでのキツイ口調に戻るまこを見て嫌な予感に囚われる京太郎。

彼の霊感が囁いていた…… 途方もなく厄介なイベントに巻き込まれること請け合いだと。

『なーに、すぐにブツは着くね。カオス! 転送機の準備は整ったあるか?』

「おい! 今“カオス”と言っちょらんかったか!? 厄珍、今すぐ辞めんさい!!」

『おお、厄珍。カオス式物質転送機の準備はバッチリじゃ!』

「おどらー、止めいや!!!!」

勝手に盛り上がる厄珍、それを止めようと必死になって電話に向かって怒鳴るまこ。

しかも怒りで理性が吹っ飛んだせいか普段は使わない汚い広島弁が飛び出していた。

そう、ヤのつく自由業の方々の広島弁が。

しかし“カオス”と言う単語が電話から聞こえたので其れも当然と言える。

Dr.カオス、ヨーロッパの魔王と渾名された稀代の天才錬金術師。

彼が世界のオカルト史に与えた影響はあまりにも大きい。

古代の秘術を再現し不完全ながらも不老不死を手に入れていることからもその凄さが伝わるだろう。

尤も齢1000歳を超えた今では記憶のキャパシティが満杯であり、新しくモノを覚えるとトコロテン式に古い記憶を忘れてしまうためタダのボケ老人とほとんど変わらなかったが……

『厄珍、染谷まこの現在地に送ればいいんじゃな? なに、座標はマリアの霊波レーダーですぐに解るから問題なしじゃ』

『わはは、すぐ送るあるね!』

「おう! 今すぐ止めいや!!」

まこの叫びはあちらに一切届いていなかった。

一方でまこの迫力満点の怒鳴り声を聞いて合宿のメンバーのうち何人かは抱き合って震えている。

GS染谷まこ、この合宿の知り合いに大きなインパクトを植え付けることに成功したようだった。

最も本人は嘆くだろうが……


「厄珍って人、何者なんすかねぇ。温厚な染谷さんがあそこまで怒るのは珍しいっすよ」

未だ木の枝に腰かけてノホホとしている桃子が呟く。

下に心配してヤキモキしているゆみと宥めている佳織が居るのもお構いなしだった。

しかし手元で突然に光が溢れ出し、リラックスしていた桃子を慌てさせる。

「う、うわぁっ! 何すっか!?」

眩く明りに輝く桃子の手元、その光の中から壺が出現する。

壺の大きさは片手で持つには大きくて、両手で持つには少し小さいくらいのサイズ。

その草臥れ具合からかなりの年代物だと素人目にも分かった。

「へッ? 壺っすか?」

取りあえず、壺をキャッチする桃子。

その古さから価値のある骨董品だと思い、落として割られないようにと判断したからだった。

          ツルッ!

「あわわわ!」

しかし突然の出来事が続いていたので知らず知らずのうちに動揺していたらしく手を滑らせてしまう。

桃子の手から滑り落ちた壺は三回転半二回ひねりを披露しながら落下していく。

蓋はしてあったのだが、通常の乗せ蓋だったので当然中身をぶちまけてしまう。

          バシャッ!  ガッシャーン!

「お、おい…… アレ、厄珍が言っていた霊薬の入ってる壺だろ!」

一部始終を少し離れて見ていた京太郎は事の重大さに気が付き顔色を悪くしていた。

あの悪徳万屋店主・厄珍が京太郎たちに厄介払いを依頼するほどの霊薬……

効果など想像もしたくは無かったが、ソレを目の前で友人とも言える交流を合宿の間で結んだゆみと佳織が引っ被ってしまった。

中身が時空消滅内服液とかだったら目も当てられない。

「おい! 厄珍!! あの壺の中身は何じゃい!!」

『あいやー、ちゃんと届いたあるかー。処分よろ……「カオスの機械なんぞ使うから変な所に転送されて、わしの友達が引っ被ったんじゃ!!」……あいやーーー!?』

「……厄珍、壺の中身は何じゃ? 事と次第によってはわりゃあとカオスを地獄に送ってやるけぇのォ」

『ほ、惚れ薬ある……!』

厄珍の答えを聞いて取りあえずホッと息を吐くまこ。

惚れ薬なら大した事(命に係わるとか)にはならないだろうと判断したからだ。

しかし現実は無常だった。


『惚れ薬は惚れ薬でも超強力な奴ある! 飲んだ人間は惚れた相手が窒息するまでキスをして、背骨が折れるまで抱きしめるあるね! ちなみに惚れる相手は飲ませた人間ある!』

「……は?」

ちなみにこの惚れ薬、以前に横島がマリア(カオスの作った超傑作の人造人間)にブッ掛けてしまってエライ目にあった時の惚れ薬よりも強力だ。

厄珍の説明を聞いて一瞬目が点になったまこ、恐る々々引っ被ったゆみと佳織の方に目を向ける。

そこには木から降りて「大丈夫っすかーー!?」っと肩を掴んで必死になってゆみを前後に激しく揺さぶる桃子とボーっと立ち尽くす佳織の姿があった。

パッと見ではゆみの頭がもげそうなくらい前後に揺さぶられていること以外は、何も異常がないように見える。「古くて薬効が消えていたか?」と思ったまこだったがその考えは甘かった。

「桃子さん……」

「ん? 何すか、佳織先輩?」

ユラリと桃子に近づく佳織、いつものオドオドした様子ではなく何やら不穏な雰囲気を纏っていた。

その異様な空気を本能が嗅ぎ取ったのか桃子が無意識にジリっと後ずさりをする。

「か、佳織先輩……?」

桃子がそう言った瞬間に佳織が桃子目がけてヘッドバットをかます。

     ブゥン!

「ふっきゃぁ!!」

佳織のヘッドバットを間一髪で躱した桃子、佳織は勢い余って庭石の一つに突っ込むがその時信じられない光景がみんなの目に入る。

     ズドガン!

「なぁっ!?」

佳織が突っ込んだ庭石が砕け散ったのだ。

腕力なんか無さそうな佳織じゃなく、ムキムキのマッチョマンが突っ込んだとしてもありえない光景だった。

『あー、まこちゃん、もう一点注意があるね。その薬を飲んだ人間は超人ハルク見たいにパワーアップするね』

電話から厄珍の声が聞こえるが、正直知りたくもない情報だった。

「桃子さん…… なんでキスを避けるんですか……?」

「き、キス!? あ、あんな事されたら頭がザクロになるっすよ! ここは逃げるっす!!」

横島のような超常生命体?でもない限り岩をも砕くヘッドバットを喰らって無事で居られるはずはない。

当然脱兎のごとく桃子は逃げ出す。

「桃子さぁ~~~~~ん♥」

「助けてっすーーーーー!!」

ひと時、間が空いて佳織が叫びつつ桃子の後を追う。

事態ここに至っても殆どのメンバーが付いていけずに呆然としていた。


『惚れ薬は惚れ薬でも超強力な奴ある! 飲んだ人間は惚れた相手が窒息するまでキスをして、背骨が折れるまで抱きしめるあるね! ちなみに惚れる相手は飲ませた人間ある!』

「……は?」

ちなみにこの惚れ薬、以前に横島がマリア(カオスの作った超傑作の人造人間)にブッ掛けてしまってエライ目にあった時の惚れ薬よりも強力だ。

厄珍の説明を聞いて一瞬目が点になったまこ、恐る々々引っ被ったゆみと佳織の方に目を向ける。

そこには木から降りて「大丈夫っすかーー!?」っと肩を掴んで必死になってゆみを前後に激しく揺さぶる桃子とボーっと立ち尽くす佳織の姿があった。

パッと見ではゆみの頭がもげそうなくらい前後に揺さぶられていること以外は、何も異常がないように見える。「古くて薬効が消えていたか?」と思ったまこだったがその考えは甘かった。

「桃子さん……」

「ん? 何すか、佳織先輩?」

ユラリと桃子に近づく佳織、いつものオドオドした様子ではなく何やら不穏な雰囲気を纏っていた。

その異様な空気を本能が嗅ぎ取ったのか桃子が無意識にジリっと後ずさりをする。

「か、佳織先輩……?」

桃子がそう言った瞬間に佳織が桃子目がけてヘッドバットをかます。

     ブゥン!

「ふっきゃぁ!!」

佳織のヘッドバットを間一髪で躱した桃子、佳織は勢い余って庭石の一つに突っ込むがその時信じられない光景がみんなの目に入る。

     ズドガン!

「なぁっ!?」

佳織が突っ込んだ庭石が砕け散ったのだ。

腕力なんか無さそうな佳織じゃなく、ムキムキのマッチョマンが突っ込んだとしてもありえない光景だった。

『あー、まこちゃん、もう一点注意があるね。その薬を飲んだ人間は超人ハルク見たいにパワーアップするね』

電話から厄珍の声が聞こえるが、正直知りたくもない情報だった。

「桃子さん…… なんでキスを避けるんですか……?」

「き、キス!? あ、あんな事されたら頭がザクロになるっすよ! ここは逃げるっす!!」

横島のような超常生命体?でもない限り岩をも砕くヘッドバットを喰らって無事で居られるはずはない。

当然脱兎のごとく桃子は逃げ出す。

「桃子さぁ~~~~~ん♥」

「助けてっすーーーーー!!」

ひと時、間が空いて佳織が叫びつつ桃子の後を追う。

事態ここに至っても殆どのメンバーが付いていけずに呆然としていた。

「そ、そうだ…… ゆみちんは!?」

従妹と一緒に同学年の友人も被っていた事を思い出して慌てて件の友人の方を振り向く智美。

そこにはボーっと突っ立っているゆみが居た。


「ん? 蒲原か……」

「ゆ、ゆみちんは大丈夫そうだな……」

彼女はボーっとしている以外は変わった様子もなく普通に返事を返したゆみを見て安心する。

しかし、それはとんでもない間違いで……

「……モモ……」

「ん? 何か言った、ゆみちん?」

「モモオオオォォォォォォォォォォオオオオオオ!!」

大絶叫と共に信じられないスタートダッシュで駆け出す少女・加治木ゆみ。

普段のクールな彼女からは想像の出来ないような様子だった。 ……と言うか目が血走ってて少し怖い。

佳織と同じ様に土煙を上げながら走り去る様を見送ることしか出来なかった一同。

一方、智美はゆみに跳ね飛ばされて10m離れた池に頭から着水し犬神家の一員となっていた。

制服のスカートが捲れ、健康的な太ももに清楚な純白の下着が眩しい。

「まこ! 厄珍達から解毒の方法を聞いていおいてくれ! 俺は三人を追いかける!」

いち早く頭の再起動を終えた京太郎が叫びながら追跡を開始する。

京太郎の声を聴いて他のメンバーも現実に帰ってきてモモ達を探し出すべく走り出した。


「……厄珍……」

『な、何あるか……? まこちゃん……』

「解毒剤…… あるんじゃろ? 今回の媚薬の」

声を荒げるでもなく淡々と電話に向かってしゃべるまこ。

しかし、声に籠った迫力は電話越しでも十分に伝わる。

『ちゃ、ちゃんとあるね…… 一壺1000万するあるが、今回は特別に半額で……』

「今、機嫌が悪うてのォ…… 面白い冗談も面白いと思えんのじゃ……  わりゃぁ、たばかるんもええかげんにせえよ」

『ヒィィ!! わ、分かったある! た、タダにするあるね!』

「急いでこっちに持って来んさい」

『か、カオス、急いでこの壺をまこちゃんの所に……』

「厄珍…… こんなややこしい事態になったのはカオスのメカのせいじゃろうが…… そこにマリアが居るんじゃろ? マリアに持ってこさせーや!!!!!」

『ひええぇぇぇぇぇぇえええ!?!?』

「この…… ドサンピンが!!!」

    ガチャン  ツー ツー


まこの剣幕に耐えきれなくなって電話を切ったのか不通音が受話器から聞こえる。

まこは軽くため息を出しつつ終話ボタンを押す。

京太郎に付いて行かずに残っていたメンバーが恐る々々話しかける。

「で、どうでしたの? 解毒剤を持って来るにせよ東京の厄珍堂からは結構時間がかかりますけど……」

そう透華が言う。

天下の龍門淵財閥の一人娘だけあってオカルト界には疎くても厄珍堂の情報は知っているようだった。

「……東京からここまで車で飛ばしても7時間は掛る……」

頬に指を当てて所要時間を考えていた智紀、凡その時間をはじき出していた。

「7時間ですか…… その間に大変なことに成らなければ良いのですけど……」

「和、もう既に大変なんてレベルじゃなくなっとるけぇ…… まぁ、時間は心配いらん。あと30秒くらいで届くはずじゃから」

「……えっ?」

まこの発言を聞いた一同は信じられないといった表情になる。

それはそうだろう、車で限界まで飛ばして7時間。ヘリを使えばもっと早いだろうが電話での交渉(と言う名の脅し)が終わって5分も経っていない。

手配すら終わってないだろう時間だからだ。

しかし、自信に満ち溢れたまこの表情からは直ぐに問題の霊薬が到着することを確信しているのが窺える。

「……それは一体如何言う……」

訳を聴こうと美穂子が口を開いたその時……


      ヒィィィィン……


「来た!」

甲高い音が聞こえたかと思うと、まこが叫んで空を見上げる。

釣られて皆も空を見上げる。蒼く澄んだ空に一点、黒いシミの様なものが見えた。

そのシミだが…… 段々と大きさを増していた。

「……なんかあの黒いモノ…… 大きくなってませんか……?」

誰かがそう呟いたと同時に……


       ヒィィィイィィィイイイインンンッッ   ドォォォオォォォォォオオオオオン!!!!!!!!!!!!


「きゃぁぁぁああ!!」

轟音と共に盛大に舞い上がる砂埃。

衝撃が強すぎてまこ以外は悲鳴と共に尻もちを搗いていた。

一方、まこは満足げに轟音の発生した場所を見て満足げな表情。

砂埃が収まってくるとそこにあったのは大きめのクレーターと一つの人影。

「ご苦労さんじゃのォ」

「イエス、ミス・染谷。お久しぶりです」

カオスが生み出した最高傑作、アンドロイドのマリアだった。



「助けてーーーーーーっす!! 私はノンケっす!!」

その頃、1対2の鬼ごっこをしていた桃子がピンチに陥っている。

佳織とゆみに組み敷かれ、今まさに衣服を剥かれようとしていた。

「モモ! モモッ!!」

「桃子さんの柔肌…… ぐへへへ……」

荒い息を吐きつつ血走った眼のゆみ、「可憐な女子高生としてそれってどうよ?」と突っ込みを受けるだろう笑いを漏らす佳織。

桃子が貞操の危機を感じ取るには十分…… と言うかそんなレベルはとっくに超えていた。

「だ、誰か! 誰かーーー!!」

逃げてる途中で「ステルスを使えばやり過ごせるのでは?」と考え足を止めて気配を消した結果こんな状態に陥った桃子。

全力のステルス状態で物陰に隠れていた桃子だったが、媚薬によって感覚が強化されていた二人には効果がなくあっさり見つかってしまった。

そのまま走り続けていれば違った展開になったのだろうが、こうなっては時すでに遅し。

しかも場所は山の中、他人に助けを求めても通りすがりの人など通る訳は無かった。

「じゃあ、まず加治木先輩は桃子さんの下の方を…… 私は上の方を頂きますね」

「ふふふ…… じっくり堪能した後交代だな?」

「ええ、それじゃ……」

「いただきまーす♪」

助けは期待できず、自分の細い腕では強化された二人の腕力には敵わない。

彼女が穢されることは規定事項…… そう認識し桃子の心が絶望一色に染まった。

その時――


「火をもって金を剋す! 喼急如律令!」


           チュドオオオォォォォォォォォオオオオオオンン!!!


「アンギャァァアァァアアア!!」

京太郎の声と共に爆轟音が山に響き渡り、3人の悲鳴が木霊する。

間一髪駆けつけた京太郎があられもない桃子の姿を見て2人の蛮行を止めるべく陰陽術を行使したのだ。

京太郎の放った術は狙い通り炸裂するが…… 桃子、佳織、ゆみを地面ごと吹っ飛ばしていた。

「お、おい…… 3人も一緒に吹っ飛ばしちまったぞ!?」

京太郎と一緒に走ってきた純が言う。

しかし、京太郎は涼しい顔で「大丈夫でしょう、見た目は派手ですが威力の低い術ですから。部活仲間に犯され、仲間を犯した事実を背負うより吹っ飛ばされる方がマシでしょう」と言い切った。

純は京太郎と吹っ飛ばされた3人の惨状を見て冷や汗を流す。

(いやいや、どう見てもやり過ぎだろう!!)

ちなみに咲や優希、その他諸々が一緒に走って付いてきたのだが…… 途中で完全にヘバッて脱落し此処にたどり着いたのは純だけだった。

「……だれ? 私と桃子さんのアバンチュールを邪魔するのは……」

「……これからだったのに、よくもやってくれたな…… 許さんぞ……!」

ユラリと立ち上がる佳織とゆみ。見た目は煤けていたが殆どダメージを受けていなかった。

これから甘い甘ーい(佳織とゆみの二人の視点、18歳未満はお断りな)行為に及ぼうとしていた所を邪魔されたせいか頭に血が上っている様子だ。

「お、おい! どうすんだよ……」

状況が更にヤバそうになったので京太郎に判断を仰ぐ純。

「そうですね…… 現状ではダウンしている東横さんを何とか回収して…… 解毒剤が届くまで逃げ続けるしか手がありませんね」

10mほど吹っ飛んで目を回している桃子をチラッと横目で見て京太郎が答える。

「マジかよ……」

「手段を選ばなければ他にもやり様はあるんですけど…… 2人に大怪我させても拙いでしょ?」

京太郎の言葉を聞いて殆ど打つ手のない状況を再認識した純は頭を抱えた。

超人ハルク並みの身体能力となった2人相手に人一人抱えて逃げ回る…… 正直願い下げと言うのが純の本音だった。

だけど、やるしかない! そう純が腹を括ったその時、事態は動いた。



      ヒュゥッ  ヒュゥッ    パシィン!  パシィン!


「アベシッ!!」

「ヒデブッ!!」

何かが飛んで来る音と、続いてナニかがぶつかって砕ける音がしたかと思うと佳織とゆみが変な悲鳴を上げる。

同時に2人が前のめりに倒れた。

いきなりの出来事に純は「な、何だぁ!?」と驚きの声を上げる。

「ふ~…… 間に合った見たいじゃのォ」

「遅かったな、まこ」

「スマンかったのォ、森が深いけェ探すのに手間取ったんじゃ」

ガサガサと藪の中から出てきたのは京太郎の相棒・まこだった。

そしてまこの後からもう一人出てくる。

「マリアもサンキューな」

「イエス、ミスター・須賀。お久しぶりです」

「で、まこ。さっき2人にぶつけたのは解毒剤の入った壺でいいんだな?」

ほのぼのと会話を始めるまこと京太郎、純は2人のペースに付いて行けず呆然としている。

決死に近い覚悟を固めて身構えていた中、いきなり場が和やかな雰囲気になれば脱力もするだろう。

ちなみにまこが全力で投げ付けた壺は佳織とゆみの後頭部を直撃している。

解毒剤の入っていた壺は陶器製、大きさは片手で持てる程。

着弾と同時に割れて二人に掛った解毒剤はキチンと効いたのだが…… それは媚薬による身体強化も無くなると言う事だ。

どうやら、ぶつかったの衝撃よりも解毒剤の効果の方が早かったらしい。

地面で延びている2人はピクピクと痙攣していた……



「薬でおかしくなっていたとは言え! モモすまん!!」

「桃子さん! 御免なさい!!」

旅館の玄関先でメンバー全員が見ている中、コメツキバッタの如く土下座をするゆみと佳織。

壺の一撃で伸びた二人を京太郎と純が背負って此処まで運んだのが、その時、まこの嫉妬メーターが地味に上昇してしまった。

原因は佳織を背負った京太郎が背中に感じる圧倒的な感触に鼻の下を伸ばしたから。

合宿後、京太郎はまこの嫉妬を鎮める為に家に帰ってすぐベッドの上で丸一日、精根尽き果てるまで搾り取られることになる。

まぁ、そんな近い未来の話はさて置き、先輩二人の土下座の謝罪対象になってる桃子は――

「わ、わざとじゃないから良いっすよ……」

――と、宣いつつも微妙な距離を取っていた。

まあ、薬のせいとは言え純潔を散らされそうになった(しかも同性同士で)のだからこれは仕方ないだろう。

暫くはトラウマで夢見が悪くなるのは確定だった。

終わり無き土下座祭りを横目で見つつ、玄関先に揃ったメンツを見渡していた京太郎が「あれ?」と首を傾げる。

「如何したんじゃ?」

「いや。咲が見当たらないけど…… どこ行ったんだ?」

キョロキョロと辺りを見回す京太郎に透華が声を掛けた。

「あら? 宮永さんなら須賀さんが駆けて行った時に追いかけて行かれましたが…… 一緒ではなかったのですか?」

この透華の言葉に清澄のメンツは一気に凍り付く、それはもう「ピシッッッ!!」と言う幻聴が聞こえてきそうな位に……

「???」

咲の生態を知らない他校の面々が不思議に思って首を傾げる中、重苦しい雰囲気を纏いつつ久が呟く。

「ま、まさか……」



その頃咲は――



その頃咲は――

「こ、ここ…… ドコ……?」

半べそをかきながら山の中を彷徨っていた。

完全に迷子である。いや、むしろ遭難と言った方が正しいかもしれない。

この後、山狩りが行われたのは言うまでも無い。








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                Report.9 closed
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【次回予告】


インターハイ…… 

幾多の高校生たちが栄光を掴むため、己の全力を出し切る場所。

今年も東京に全国の強豪たちが集まってくる。

「おおっ、このポスター綺麗だじぇ」

「ちゃちゃのんじゃ!」

「かなり稼いでるに違いないのですよー」

次回『Report.10: 決戦! 全国高校麻雀大会 ‐インターハイ・遭遇編‐』!



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【人物・用語解説】

〈横島がエライ目にあった時の惚れ薬〉
横島が厄珍堂にお使い(使い走り)に行った時、棚に置いてあるのを偶然発見し取ろうとして失敗、マリアと傍にあった巨大石像にブッ掛けてしまう。
結果、鬼役:マリアと巨大石像、子役:横島の命を賭けた鬼ごっこをする羽目になった。
横島曰く“人類の夢と希望”

--ワイド版コミック『GS美神 極楽大作戦 03  ~機械仕掛けの愛が止まらない!!~』を参照


〈加治木ゆみ〉
鶴賀学園高校麻雀部の3年生。
切れ長の目とその雰囲気からクールな印象を受けるが、熱い心を持った少女。
ノンケのはずではあるが……

〈蒲原智美〉
鶴賀学園高校麻雀部の3年生、その雰囲気からは分からないが一応部長。
天真爛漫な性格だが、その大らかさゆえ場を纏めるのがうまい。
何時もワハハと笑っている。

〈東横桃子〉
鶴賀学園高校麻雀部の1年生。
産れつき影が薄く自分の家族にすら気づいてもらえない不幸な少女。
しかし、校内のPCでの麻雀を通してゆみが存在に気づき、彼女が熱烈に桃子を探し出した結果麻雀部に入った。
大変豊満なおっぱいをお持ちである。

〈津山睦月〉
鶴賀学園高校麻雀部の2年生、次期部長。
濃い面子の揃っている鶴賀麻雀部にあっては最も普通の少女、それゆえ出番が少ない……
最近、出番を増やす為に風越の何人かと企み事をしている模様。

ハイ、本当に長い間お待たせして申し訳ありませんでした m( _ _ )m
とりあえずこれで合宿編は終わりですね。

次からはインターハイ編に入ります。
……やっとこれで出したかったほかのキャラも出せる……!

OTRの方も更新しなきゃいけないし、これからも精進していきます。

感想は何時でも大歓迎ですのでドンドン書いてください!
もしかしたら感想の量によって執筆速度が上がるかも?

OTRの方も読まれたら是非感想をお願いします!

遅れながら、OTRの方に番外編2をアップしました。
宜しければ、ご一読ください。

読み終わった折には感想をお願いいたします!

おう…… なんかややこしい事になってる?
一応、GS染谷のへのURLです。

http://nijikana.net/index.php/page/elkcadiz_saki_gscross

こんばんわー
先ほど、OTRにReport.7をアップしてきました。
もし宜しければ読みに行ってください。

次話は……
すみません、今忙しくってしばらく時間がかかりそうです……

報告です。
今大分書き上がってきました。
次話の投稿までもうしばしのお待ちを…… m(_ _)m

お待たせしています。
今日には投下できそうな目途が立ちました。

今日(2/17)の23:00を目安に投下したいと思います。
お楽しみに!

遅れて申し訳ない……
後、30分以内に投稿できるよう誠意努力しますので、もう暫くお待ちください

本当にお待たせしました。
では、最新話投下します。

 チャチャチャチャチャチャチャチャチャーン チャーン♪

『本日もJR東日本をご利用下さいましてありがとうございます』

『この電車は長野新幹線・あさま号、東京行きです。次は軽井沢に停まります』

『車内は全席、トイレを含めまして全て禁煙です』

『お客様にお願いいたします。携帯電話をご使用の際はデッキをご利用ください』

『Ladies and gentlemen. Welcome aboard……』



佐久平駅を発車した長野新幹線のE2系列車、車内には殆ど騒音がなく静かだった。

  クゥー… クゥー…

そう、寝てる人の寝息がしっかり聞こえるくらいに。

「それにしても…… まこ、良く寝てるわね」

「ハハハ、昨日深夜まで仕事でしたから」

久の言葉に苦笑いで返す京太郎。

ここの所、霊障が多発し京太郎とまこは大忙しだ、「全国大会前に何をやっている?」と思わなくもない。

しかし、2人とも長野県で活動している数少ないGS、しかも高ランクGSときている。

そんな事情があるから全国大会前とはいえ休むわけにはいかないのだ。

昨日もかなりの数の依頼が持ち込まれ、その全て片付けたのが日の出の2時間ほど前、当然の如く睡眠不足だ。

まこは京太郎の膝を枕にしてグッスリ寝ているし、京太郎の目の下には薄ら隈が出来ている。

「GSって大変なのね~」

「もう慣れましたけどね。それに、人に必要とされてるんですから嬉しい事ですよ」

そう言ってほほ笑む京太郎。

その京太郎の表情を見て僅かに頬を赤くする咲・久・優希。

と、その時まこが「……んー…… 京太郎ー……」と寝言を言いながら京太郎の太ももに頬ずりしだした。

途端に嫉妬メーターのメモリが上昇する3人、少し黒いオーラが出ている。

2人の仲を認めたにもかかわらず嫉妬するのは想いが強いからなのか元々嫉妬深い性格なのか……

GSをやっているが故、霊感の強い京太郎とまこ。

その嫉妬オーラを感知したのか、京太郎は正体不明の寒気に襲われまこは魘されていた。

一方、これを見てワクワクと心を躍らせている厄介なのも1人居る。

(ウフフ、ますます楽しくなってきましたね♪)

普通の高校生なら引きが入るだろうこの状況、平然としていられる和もある意味で普通を超越しているのかもしれない。





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Report.10: 決戦! 全国高校麻雀大会 ‐インターハイ・遭遇編‐
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「~~~♪ ~~~~♪」

ところ変わってここは東京へ向かう東北新幹線『はやぶさ○○○号』の車内。

真っ黒い服を着た一際背の高い少女が雑誌を胸に抱きながら鼻歌を歌っていた。

「ご機嫌だね~、豊音は」

赤味がかった髪をお団子に纏めた少女の臼沢塞が黒づくめの少女、姉帯豊音に声を掛ける。

「だって全国大会だよ! すっごい人が一杯来るんだよ! 楽しみだな~♪」

「豊音、電車の中なんだから少し静かにする!」

「あっ! ご、ごめんねー…… 胡桃ー」

一際小柄な少女の鹿倉胡桃が豊音に煩いと注意すると途端にシュンとする豊音。

そんな豊音に苦笑しつつ塞が口を開く。

「でも、アレだね。特に注目を浴びてる選手がチャンピョンやシード選手じゃないって、今年のインターハイは変わってるよね~」

「……確か、長野県代表の男女のペアだったっけ?」

塞のセリフに気怠そうに確認を入れるのは綺麗な銀髪が特徴的な小瀬川白望。

「うん、確か長野県予選の女子団体決勝で霊障があって……」

「それを解決したのがこの2人、須賀京太郎君と染谷まこさんなんだよー!」

頬に手を当てて思い出しながら白望に答える塞、その塞のセリフに被せる様に豊音が続きを喋る。

そのテンションはアイドルのコンサートに向かう熱烈なファンの如く。

「高校生でGSって凄いよね~」

「Ghost sweeper! Exorcist!」

綺麗な金髪の留学生、エイスリンが手に持ったスケッチブックに十字架と聖書の絵を描く。

日本のGSとはイメージが違うが、ニュージーランド出身の国教会信徒の彼女にとって霊的なものを祓うシンボルなのだろう。


「サイン貰えるといいなぁ~♪」

「フフフ、豊音。現地で会えると思うから少し落ち着きなさい」

「ハ~イ! 熊倉先生!」

テンションの高い豊音を優しく窘める初老の女性。

彼女の名前は熊倉トシ、女子団体・宮城県代表の宮守女子麻雀部の顧問を務める老女。

オカルト能力の強い豊音を見出しスカウトするなどその方面での造詣が深いと思われる女傑だ。

「……フフッ、随分立派になったじゃないか、二人とも……」

車窓から見える景色を眺めつつポツリと呟くが、誰にも聞こえなかったのか麻雀部のメンバーは気にせずに話に花を咲かせていた。




…………………

…………





「おおっ! 向うに城が見えるじぇ!!」

「もう…… ゆーき、少し落ち着いたらどうですか?」

時は進んでお昼前、久率いる清澄高校麻雀部の面々が東京の地に降り立った。

東京駅丸の内中央口前でハイテンションな様子で燥ぐ優希、それをやんわりと窘める和。

ほぼ同じ頃に『はやぶさ』車内でも同じ光景が出現しているのだがそれはどうでもいい話で……

「ここが東京なんだ……」

「そうね…… 見て、咲、あのビル…… 凄い高さよ……」

咲と久は呆然と立ち尽くしている。

生まれて初めて東京に来て、その街並みに圧倒されていた。

「長野駅とは比べ物にならないですね……」

「そうね……」

地元の長野駅と比べて、その規模の違いに凹む二人。

まぁ、一地方都市の長野市と経済大国・日本の首都東京を比べること自体間違っているのだが……

さらにテンションを上げている優希、キョロキョロと駅前に視線を彷徨わせる久と咲。

どこから見ても見紛う事なきお上りさんな3人だった。


「……ハァ、取りあえず宿に向かいましょうか、このままでは埒があきません」

優希を窘めるのに疲れたのか溜息をつきながら提案する和。

京太郎とまこが賛成し、遅れて我に返って頷く咲、久、優希。

大会期間中に宿泊するホテルに向かって歩き出すが、6人はある集団から視線を向けられている事に気付かなかった。

もし気付いていてそっちの方を見ていたなら、きっと京太郎の鼻の下が伸びてまこの制裁を喰らっていた事だろう。

何故なら、そこに居たのは――

「ねえねえはっちゃん、あれって」

「そうですねー、間違いなく須賀SGと染谷GSなのですよー」

――そう、5人中3人が豊満な胸をお持ちの鹿児島代表・永水女子の面々だった。

特に小蒔と霞は真顔で「貴女達、本当に人類?」と聞きたくなる様な規格外の胸威(誤字に非ず!)の持ち主、京太郎でなくても健康な男子なら凝視してしまうだろうバストだった。

春は霞たち見たいな超々々々弩級とは言わないまでも結構巨乳、巴もいいスタイルをしている。

同じ親類でも初美だけは胸も身長も大変残念な幼児体型だった。

遺伝の神秘か悪戯か…… 哀れなり、薄墨初美!

其れは兎も角、巴の“あれ”との具体性も無い発言に対して正確に何を差しているのかを察した初美、伊達に幼少から濃い親戚付合いをしている訳では無かった。

「そう…… じゃあ、あの6人が清澄高校のメンバーなわけね」

霞の言葉に無言で頷いて肯定する初美。

永水女子の面々も件の『月刊GS』と『Weekly麻雀today』を読んでいて、清澄の事をバリバリに警戒していたりする。

インターハイは大人の事情のせいで“フリースタイル”の麻雀競技しか行われない。

このフリースタイル、霊能やオカルト持ちは異常なまでに相性が良い。

もちろん能力の質や種類、本人の努力にもよるが有利不利がかなりはっきり分かれてしまうのは致し方なかった。

そんな中でインハイ出場メンバーに2人も現役のGS(霊能のエキスパート)が所属する高校……

警戒しないはずは無かった。

「……他のメンバーもきっと只者じゃないはず……」

ポリポリと黒糖を齧りながら春が言う。

『月刊GS』と『Weekly麻雀today』を読んだ後、小蒔たち5人はある共通認識を持つに至る。


それは――

  「GSがメンバーにいる以上、そのチームメイトが普通の選手の筈はない…… きっとオカルト否定デジタル派の原村を除く他のメンバーも霊能者に違いない!」

―― と言うものだった。当然全く根拠のない推測なのだが…… 咲の嶺上開花や優希の東場など状況証拠が多すぎて否定が出来ない。


永水女子だけでなく現在進行形で全国のインハイ出場校に厳重なマークをされている清澄高校麻雀部。

久がこの話を聴けば頭を抱えただろう。初出場校と侮ってくれればそれだけ戦い易かったのだから……

と言うより、全国大会初出場校に対するマークの掛け方ではなかった。

「でも高校生でGSかぁ…… 人生の勝ち組、羨ましいね……」

ポツリと巴が零す。視線から警戒の色が消え、羨みの色がついていた。

「かなり稼いでるに違いないのですよー」

巴の言葉に同意の意味を込めて初美が零す。

尤も、自分たち永水女子のメンバーは鹿児島随一の旧家であること。

そして其々の実家がかなりの資産を保有している(しかも神社なので宗教法人! 税金で優遇措置を受けている!)。

おまけに容姿も優れていると来ている。そう、他人が聴いたら「自分たちも十分勝ち組だろうが!!」と突っ込まれることは間違いない。

幸か不幸か本人たちはその事実に気づかず「羨ましい……」発言。正直言ってどうしようもなかった。





…………………

…………








「此処ですか、大会期間中の俺たちの家は」

そう言って京太郎はインターハイが行われる会場近くのホテルを見上げる。

大都会・東京の中心に近い立地のホテルなので外見はとても近代的で高そうなホテルだった。

尤も、中身は高くもなければ安くもない普通のビジネスホテルなのだが。

「じゃあ、チェックインしてくるわね」

「それじゃ、俺は宅配便で送った荷物を受け取ってきますね」

ロビーに入って京太郎と久がフロントへ向かう。

この度のインターハイ、清澄は女子団体、女子個人それに男子個人と4つ中3つのカテゴリに出場する。

当然のごとく東京滞在は長期間になるので必然的に着替え等の荷物が多くなって長野-東京間の移動が物凄く大変になる。

そうなると宅急便の利用が提案されるのは自然な流れなのだが…… 只でさえ長期間の東京滞在で宿泊費が嵩んで予算を圧迫している。

移動でヘトヘトに疲れるのを承知で宅配便代をケチるか、何とかギリギリの予算を遣り繰りを覚悟して宅配便を利用するか……

準備の時、久は散々悩んだが予算と言うあまりに強大な壁に勝てず荷物を抱えての東京行きを渋々ながら選択する。

まさに予算の少ない弱小高校の悲哀と言えよう。

しかし、そこで京太郎から待ったがかかった。

「宅配便の代金は俺たちの除霊事務所の経費で落としましょう」

京太郎の提案を聴いたとき久と優希、咲は「何言ってるんだ? こいつ……」と言った表情だったが和は両親の仕事柄、そっちの方の知識があったのか納得の表情をしていた。

要は「どうせ税金でガッポリ盗られるなら経費の名目で使っちまえ!」と言う税金対策の発想だった。

部員に部の経費を個人的に負担させる…… 当然、久はそんな提案を認める訳にはいかず首を横に振る。

それに対して京太郎はこの提案のメリットを説明――

曰く、税金で盗られる部分を当てるから実質的に自分の懐は痛まない。

曰く、こんな大荷物担いで東京まで移動するのは大変すぎる。と言うか、女性陣がそんな苦行をするのを見るのは自分の精神衛生上よくない。

曰く、荷物の中にオカルト関係の品物を入れておけば名目上全く問題ない。

曰く……

――滔々と部と京太郎自身にとってもメリットがあるwin-winの提案であると語る京太郎。

最終的に説得されて「それなら……」と久は渋々首を縦に振った。

“俺たちの除霊事務所”と巻き込まれた感のあるまこだが、彼女は最初っから賛成派だった。

合法的に払う税金減らせて、尚且つ東京への移動も楽ができる。

彼女に言わせればこんな美味しい提案を拒否する方が間違っているとのことだ。

さて、ホテルに送った荷物だが…… 「どうせ宅配便を利用するなら送れるだけ送れ!」とばかりに全自動卓まで送っていた。

さらに経理処理名目上入れなきゃ拙いオカルト関連の荷物も交じっている。

大量の荷物に加えて、幾つかの『天地無用』『取扱い注意(壊れ物)』『取扱い注意(心霊物品)』の注意ステッカーがベタベタと貼られた怪しげな荷物達……

流石のホテルの担当者も幾分か引き気味だった。

さて、無事チェックインを済ませた京太郎達。

京太郎が1人部屋、まこ達女子勢は2人部屋と3人部屋に分かれることになった。

京太郎と一緒の部屋じゃないことに不満げに頬を膨らませるまこだったが、流石にそれは拙いとメンバー総出で説得にかかる一幕もあった。

何気に青春である。

閑話休題。本日は移動日でインターハイの開会式は明日、よって今日はお昼を食べた後自由行動と相成った。

お昼を食べに行こうとロビーを通り抜ける清澄メンバー。

その時、優希が有るモノを見つけた。

「おおっ、このポスター綺麗だじぇ」

それは全国高等学校麻雀大会のポスターだった。

優希の声でそれに気づいた京太郎たちはロビーの目立つところに貼られたそのポスターを見ようと移動する。

「わぁ! こんなポスターあったんだ」

「2種類あるんですね、私も気付きませんでした」

「ふむ…… 大会の雰囲気がしっかり伝わってくる良いポスターじゃのォ」

「へぇ、私たちと同じ高校生が作ったみたいね。ここに製作者が書いてあるわ」

咲達が感想を言っていると、久がそれぞれのポスターの左下を指差す。

其処には確かに製作者が記名されていた。

「何々、『彩○学園工業大学付属○井高等学校・GA・グループ「色○戦隊イロド○ンジャー」』と『私立や○ぶき高校・芸術科・グループ「ひ○まり荘」』か……」

「それぞれ複数人で作ったんですね」

「私たちと同じ高校生がこんなポスター作るんだ…… すごいなぁ」

一頻りポスターを鑑賞して今度こそ昼食を食べにホテルを出る京太郎達だった。


さて、昼食を食べて予定通り自由行動と言う事になったので京太郎とまこは2人で東京の街をブラブラすることにした。

ちなみに他のメンツは咲と和、優希と久でペアを作ってそれぞれ東京探索に出発している。

特に目的もなくブラブラと街を歩く2人。

時折、気になったお店に入って商品を物色しているうちに、美味しそうな甘味の屋台を見つける。

近くに公園もあったので屋台でクレープを購入、ベンチに座って食べることにした2人。

まこはアプリコットジャムと生クリームを塗ったシンプルなクレープ、京太郎はハムとチーズが入った甘くないクレープを注文していた。

「旨いな、このクレープ」

「そうじゃのォ~♪」

女の子は甘いものが大好きだ、まこもその例に漏れず満面の笑顔でクレープに齧りつく。

もしこの場のまこに尻尾が出ていたら大きくゆっくりと振られていた事だろう。

談笑しながらクレープを胃に収めていく2人、時折、自分のクレープを食べさせ合いっこする。

「まこ、こっち向いて」

「?」

突如、京太郎がまこに言う。

何の用か分からないまこは頭に疑問符を浮かべながらも言われた通り京太郎の方を向く。

「ほっぺたに生クリーム付けて…… ほら」

そう言いながら、まこの頬に付いた生クリームを指で掬う京太郎。

それをそのまま自分の口に持っていきパクッと食べてしまった。

突然そんなことされたまこは一寸吃驚したようだ。

もしこの時のまこに尻尾が出ていたらきっと山形に持ち上がっていた事だろう。

2人が座っているのは公園のベンチ、しかも大都会・東京のど真ん中の公園である。

当然、2人のしていた事の一部始終は衆目に晒されているわけで…… 必然的に幾つもの視線が2人に突き刺さっていた。

そんな状況に置かれても何事も無いかのように振る舞う京太郎とまこ。

バカップルここに極まれりと言った感じだ。

クレープを食べ終えた2人はクレープの包み紙をゴミ箱に捨てると散策の続きに向かう。

公園の出口辺りでまこは京太郎の腕に抱きつく。

本当に大胆である。

さて、2人に突き刺さっていた視線だが…… 色々な種類の視線が混じっていた。

微笑ましいものを見たという視線、何やってるんだという呆れの視線、青春ねぇと言う視線等々本当に色んな種類の視線が有った。

当然その中には嫉妬の視線も交じっているわけで――

「リア充爆死! リア充爆死!! リア充爆死!!!」

「……フフフ…… 呪われろ! 呪ってやる!!」

「……ちょっと可愛いだけの女がなんであんなイケメン男子と…… 悔しいぃぃ!!」

「……顔か? やっぱ顔なんか!?」

――盛大に嫉妬団を量産していた。

公園に渦巻く負のオーラ、どこからかコーン、コーンと木槌で釘を打つ音も聞こえてくる。

大嫉妬大会の会場となった公園、居づらくなった人たちはそそくさと公園から出ていく。

そのカオスの中、公園の繁みの一角がカサカサと小さく揺れた。

さて自分たちが盛大に混乱のるつぼを作り出したことに気づかない2人、現在再開した街角散策中である。

アンティークショップ、ブティック、古書店など色々な店に目移りしていた。

2人とも気も漫ろな状態、そんな状態だと当然周りの歩行者への注意も疎かになる訳で……

「アレもいいのォ~…… 痛ッ!」

「うぉっ!? なんじゃぁ!?!?」

ドンと衝突する音共にまこが尻もちを搗く。

と同時にすぐ近くからまこと同じイントネーションの広島弁が聞こえてきた。

「あいたたた…… す、すまんのォ、よそ見しとったんじゃ ……お?」

「いや、こっちもよそ見しとったけェお互い様じゃ ……ん?」

まことぶつかったのは同じ高校生くらいの少女だった。

癖のある薄い臙脂色の髪の毛、巨乳ではないがまこよりも育った胸、そして整った顔立ちに垂れ目がちょっと泣き顔な印象を与えている。

見紛う事なき美少女だ、しかも特Aクラスの。

さて、読者諸兄は京太郎の性格がスケベなことを覚えておられるだろうか?

特にスタイルやルックスの良い女性を見つけるとついついそちらに目を遣ってしまう。

今回もお約束通り、まことゴッツンした娘の方に目線を向けてしまっている。

そして、それに気づいたまこが嫉妬して大爆発! ……と言うのが何時もの流れだが、今回は何やら様子が違う。

「お、おおおおぉう……」

「な、なななななぁ……」

2人ともお互いを指差して声にならない声を出していた。

ついでに指している指がフルフルと震えている。

「ちゃ、ちゃちゃのんじゃー!」

「ま、まこじゃー!」

「な、なんだ!? 2人は知り合いなのか!?」


「へー、佐々野先輩ってまこのはとこなんですか」

唇につけていたティーカップをソーサの上に置きつつ京太郎が言う。

口の中から鼻へ抜ける紅茶の香りが何とも心地よい。

落ち着いた雰囲気の喫茶店に京太郎、まこそしてまことぶつかった少女の姿があった。

彼女の名前は佐々野いちご、広島県の鹿老渡高校の3年生でインハイ女子団体ではチームの中堅を務めている。

「まぁのォ~、まこのお爺ちゃんがちゃちゃのんのお爺ちゃんの兄じゃけェ」

ちなみまこの祖父は広島出身、何故か長野にやってきてそのまま居ついてしまった経緯がある。

「いや~、東京の街をフラフラ散歩しちょってて出会うとかホントに偶然じゃのォ~」

「そぉじゃのォ、それに2人ともインハイの女子団体に出場しちょるとか…… 偶然って重なるもんじゃのォ~」

ケラケラと笑いながら会話するまこといちご。

容姿は似ているとは言い難い。しかし、その会話の仕方から仲がいいのは十分伝わってくる。

京太郎はそんな2人の会話をニコニコしながら見ている。

「ところで須賀君じゃったか? まこの恋人とは驚いたのォ…… 何時からじゃ?」

「まこが中3の時からですね。でも知り合ったのは小学校の低学年からですよ」

「幼馴染けぇ…… おいまこ、こんな幼馴染が居るなんて広島来た時に話ちょらんかったぞ?」

「そうじゃったか?」

「まぁ、ええわい。須賀君…… いや、まこの旦那なら遠慮はいらんのォ。京太郎って呼ぶけぇ、京太郎もわしのこと“ちゃちゃのん”って呼んでええよ」

いちごがそう言うと苦笑しつつ了承する京太郎。

その時、フッとあることが頭に浮かび直にいちごに尋ねる。

「2人がはとこ同士ってことは…… ちゃちゃのんも化け猫の筋? 猫耳と尻尾でるんですか?」

「出来るよ。まぁ、まこみたいに霊的先祖返りしちょる訳じゃ無いけぇ、相当意識せんと無理じゃが」

京太郎の疑問に答えるいちご。そして、まこがいちごの回答に補足を入れる。

まこの外祖父が広島出身でいちごの内祖父の兄らしい。

まこの外祖父の父、つまりは曾祖父が化け猫を祖に持つ霊的素質を持った系譜でまこはその血を色濃く受け継いでいるとのこと。

いちごはまこみたいに霊的な素質を受け継いでいないらしく霊力は一般人より少し多くて少し勘が鋭い程度。

実家も霊能師をしておらず普通の歴史系の専門古書店を営んでいる。しかし、意識すれば猫耳を出す程度は出来るとは本人の弁である。


「猫耳、見せてもらっても?」

恐る々々京太郎が尋ねるが……

「ええよ~」

いちごの返答はあっさりしたものだった。

返事をした後、いちごは目を瞑って俯き、傍から見ても解るくらい意識を何かに集中させ始める。

霊視ができる京太郎にはいちごの頭と腰に彼女の霊力が集まるのが見える。

「ほら、これでどうじゃ?」

暫くするとポンッという音共にいちごの頭の上に猫耳が、腰のあたりにはゆらゆら揺れる猫の尻尾が見えた。

ともにピクピク動いていて作り物でないことは一発で解る。

「へぇ~、本当だ。三毛猫なんですね」

「まあのォ、まこは黒猫じゃったな」

そう言って自分の隣に座るまこを見るいちご。

其処には既に猫耳と尻尾を生やしたまこが居た。

猫耳を生やした可憐な美少女と愛しい恋人のツーショット。

その光景を見た京太郎は「何と言うパライソ!」と心の中でガッツポーズをしていた。

「やっぱりちゃちゃのんの三毛の猫耳は綺麗じゃのォ~ 『三毛猫ちゃちゃのんの推理』と言う題で小説でも書くかのォ」

まこがいちごを見てニヤニヤしながらそう言う。

「おー、面白そうじゃのォ♪」

いちごも悪乗りをしてくるが……

ここで京太郎が突っ込みを入れる。

「それは赤○次郎!」

その後もワイワイと楽しげに会話を続ける京太郎たち。

インターハイが本格的に始まる前の心休まる一時の光景だった。

しかし、ここでも充実した時間を過ごす3人を見て負の感情を発散する人間がチラホラ……

「チッ…… リア充め、爆死しろ……」

何処へ行こうとも孤児(モテ無いクン/サン)を刺激する京太郎とまこだった。








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                Report.10 closed
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【次回予告】


熱気渦巻く会場、

己の運命が載った籤が引かれていく。

「部長、ガチガチだじぇ……」

「リア充爆発や!」

「細工は流々仕上げは御覧じろですね♪」

次回『Report.11: 決戦! 全国高校麻雀大会 ‐インターハイ・開会編‐』!



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【人物・用語解説】

〈佐々野いちご〉
まこのはとこ。広島の鹿老渡高校の3年生で女子団体戦の中堅を務める。
曾祖父の代でまこと血がつながっていて同じく猫耳が出せる。
しかし、まこは無意識のうちに出てくるのに対していちごは相当集中しないと出せない。
毛並みは三毛猫。


〈神代小蒔〉
鹿児島県の永水女子高校の2年生。
永水おっぱいお化けその1。
麻雀を打つ時は神降ろしをするので本人は全く意識がない。
「それは麻雀を打ってるのではなくて打たされてるのでは?」と言う突込みは無粋なので止めましょう。
降りてくる神様はランダムで決まる。通称「神様ガチャポン」


〈岩戸霞〉
永水女子高校の2年生、永水おっぱいお化けその2。
霞さんじゅうな【検閲済み】。
落ち着いた雰囲気の持ち主だがちょっと子供っぽいところもある。
小蒔の事をいつも気にかけている。


〈滝見春〉
永水女子高校の1年生、永水おっぱいお化けその3。
どんな状況でも表情が殆ど変らないポーカーフェイス、
何時でも何処でも黒糖を齧っている。
そのうちメタボか糖尿になるぞ……(汗)


〈狩宿巴〉
永水女子高校の2年生、おっぱいお化けトリオには及ばないがナイスな体の持ち主。
永水の祓う側の担当。
尤も、祓えるのは悪霊ではなく小蒔の降ろした神様なのだが……
自分の事を地味だと思い込んでいて出番がもっと欲しいらしい。


〈薄墨初美〉
永水女子高校の3年生、ナイスバディばかりの霧島神境において例外的なチビッ子、と言うより幼児体型……
霊力は永水の5人の中では一番強く、また使いこなせている。
しかし、方忌しかできないのでGSには向いていない模様。
ナイスバディを目指して日々牛乳を飲んでいる。

では今回の投下は以上です。
もっと精進していきますので今後とも本SSをよろしくお願いいたします。

感想を書いて下さると非常にうれしいです。
是非書いて下さい。

では、次回作でお会いしましょう!

おお、vip復活してましたか。
荒巻さんお疲れ様でした。

現在、年度末なので忙しいです……
次話の投下、遅れそうな予感がプンプン……
もしかしたらOTRの方の手直しの投稿を先にするかもしれないです。

とりあえず、生存報告です。

dat落ち回避!!
……すみません、リアル忙しくてチマチマ書いてて……
書き上がるまでお待ちください



    正 直

 ノ"~"~`ヽ"⌒゙⌒.ヽ、

.ム    レ )     ."~゙丶
.  ゙、__ ,,,,ノ,,,,,丶 イ   .ノ
  (、と、__;;;;;;;;;,ノ ミ;;;;;;ン


 す ま ん か っ た

生存報告に参りました。
……現状50%の進み具合と言った感じです……
何で、こんなに筆の進みが遅いのだろうか……

自己嫌悪に陥りそうです orz

こんばんわ~
何とか時間を取って執筆
今日の夕方か、遅くとも明日の夜には投下できそうな感じです。
お楽しみに!

おはようございます~
ほ予告通り、本日の夕方(18:00以降)に投下できる目途が経ちました。
書きたいまま書いてたら文章量が8800字になってしまいました……

こんにちは、では、宣言通り投下をします!

ジリリリリリリ……

目覚まし時計の忙しない音が響いている中、口の端から涎を垂らして寝ている少女が一人、

むにゃむにゃと動く唇からは時折寝言が漏れている。

「……ムニャムニャ ……おかわり」

「阿呆な寝言言っちょらんと、早よ起きんさい」

乙女としてそれはどうよ?

と思えなくもない寝言に突っ込みを入れつつ、包まっている布団をまこが引っ剥がした。

「……ふぇ……?」

布団を引っ剥がされたにも関わらず未だ微睡んでいる咲。

寝惚け眼を擦りつつのっそり起きる姿は冬眠から覚めたばかりのヤマネみたいだった。

「咲~、開会式は9時からよ~」

久が「仕方ないな~」といった感じで声を掛ける。

部屋に掛けられている時計を見ると7:45を指していた。

会場から然程離れていない宿舎とは言え、身だしなみを整える時間を考えると余り余裕はないだろう。

特に女性は支度に時間が掛るのだから。

「朝…… 開会式……?」

「寝惚けちょらんと、早よ支度しんさい!」

何時まで経っても微睡んでる咲に堪忍袋の緒が切れたのか、ついにまこの雷が落ちた。



…………………

…………




さて、咲が目を完全に覚ましてから時間が少し過ぎた頃。

京太郎はホテルのロビーでソファーに体を預け、暇つぶしにライトノベルを読んでいた。

集合時間にはまだ少し早い。

実際、彼がこのロビーに来たのは集合時間の30分前、母親の「女の子を待たせてはダメよ?」を代表とした教育はしっかり身を結んでいたようだ。

尤も、そんな母親の教育でも彼のスケベな性格を完全に矯正することは出来なかった見たいだが。

「ごめーん! 須賀君、待った?」

「いえ、今来たところですから」

後輩4人を引きつれた久の声に本から顔を上げ自然体で返す京太郎。

ノリは軽くても他人をさりげなく気遣う事に関しては天才の彼らしい態度だった。

「まぁ、どうせ咲の事だ。涎こいて寝こけてたんだろ」

「京ちゃん! 酷い!」

「おお、よう分かったのォ」

「染谷先輩まで!?」

咲の方を向いて、女子部屋であっただろうと思った事をストレートに口にする京太郎。

デリカシーの欠片も無い京太郎の言葉だったが、その表情から確信犯的に言ったのは明らかだった。

当然、咲は抗議するが当の京太郎はどこ吹く風、それどころかまこまで京太郎の言葉に乗っていく始末。

何度も起こしたけど、中々起きなかった咲への意趣返しの心算だ。

「取り敢えずは会場に行きませんか? 咲さんの寝起きのお蔭で時間も押してますし」

「うぅっ、和ちゃんまで……」

ストレートな和の言葉が止めとなって打ちひしがれる咲だった。




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Report.11: 決戦! 全国高校麻雀大会 ‐インターハイ・開会編‐
****************……………………………………*******************




さて、地方住まいの方は経験があるかも知れない。

初めての上京の時、その高層ビル群に圧倒されたことは無いだろうか?

その高層ビル群のせいで、現在地を見失って容易に迷子になってしまったりはしなかっただろうか?

長野より遥々、全国大会に出場するために上京してきた我らが清澄高校麻雀部。

初めての全国大会、よって彼らも会場へ中々たどり着けずに遅刻! ……と言う事にはならなかった。

なにせ和は小学生の時、東京に住んでいたことが有るし、京太郎とまこはGS試験やGSの仕事で度々訪れており東京の地理には詳しかったりする。

この3人が居なければ確実に迷っていただろう。

「こ、ここがインターハイ会場……」

「つ、ついに来たじぇ……」

全国大会の会場、東京国際フォーラムの正面ゲートは多くの人でごった返していた。

代表選手を始めマスコミ関係者、大会スタッフ、観戦者等々その人数から国民的大イベントなのは明白だ。

「凄い人数だね…… 京ちゃん……」

今まで経験した事の無い人ごみに小心者の咲はオドオドしていて、傍から見ていてら不安感しか感じなかった。

加えて咲の特技?ともいえる「何処でも迷子になる癖」が不安感に拍車を掛ける。

正直言って、この人ごみで咲が無事に目的地まで一緒に来るという確信を麻雀部の面々は持つことが出来なかった。

「はぁ…… しょうがねえな。はい、咲」

溜息一つついて、咲の方に手を差し出す京太郎、その手を「うん!」と頬を赤くしてギュッと握る咲。

背の高い男子高校生の手を握って後ろをついて歩く小柄な女子高生、仲のいい同級生同志の微笑ましい光景だった…… 二人の後ろに嫉妬で闇色のオーラを放つ緑髪の夜叉さえ居なければ、だが。



…………………

…………







『南大阪、姫松高校 38番』

オオオオオオォォオォォォォオオオッ!!



「結構騒がれてるなぁ」

「そりゃそうじゃ。そもそも姫松がノーシードちゅう時点で色々おかしいんじゃ」

南大阪代表の姫松高校の主将らしき釣目で胸が残念な娘が抽選カードを掲げると会場が沸き立つ。

全国でも屈指の伝統強豪校の姫松だ、会場が盛り上がるのも当然と言える。

「去年、鹿児島の永水が出てきた影響で姫松がシードから陥落したんじゃ。じゃけぇシード奪還を目指す姫松に対する世間の期待も大きいんじゃろうなぁ」

「へー、そうなんだ。知らなかったなー」

まこの解説に能天気な声で相槌を打つ京太郎だった。

「……わりゃ、県大会の時も言うたが、麻雀部員ならもうちょっと強豪校とかトップ選手の事知っときんさい……」

麻雀部員、しかもインターハイ個人戦に出場する選手の言葉とは思えない京太郎のセリフに呆れ顔で突っ込みをするまこ。

まぁ京太郎が麻雀牌に本格的に触れだしたのは高校に入学したこの4か月程だと言う事を考えるとそのセリフもアリと言えばアリなのかもしれない。

まこもその事には気付いてはいるのだが、やはり恋人には全国出場選手として恥をかいて欲しくないのだろう。

『次の抽選は長野県代表、清澄高校』

そうこうしている間にも抽選会は進んでいく。

抽選カードを引くためにステージの真ん中まで歩く部長・久。

何時もは飄々としている彼女もこの全国の晴れ舞台で緊張しているらしく……

「部長、ガチガチだじぇ……」

どうにも歩く姿がギクシャクしていた。

表情も一目でわかるほど強張っていてチームメイトの5人はその様子を見て心配しつつも苦笑い。

そしてステージの中央にたどり着いた久が抽選箱の中身をゴソゴソと弄り、一枚のカードを引き出す。

久の手で掲げられたカードには――

『長野、清澄高校、32番』

――大きく32と書かれていた。

全国大会の抽選会で抽選カードを引き掲げる、全国の檜舞台を夢見ていた久にとって正しくこの瞬間は人生の頂点の一つだった。

尤も、カードに書かれていた32の数字が逆立ちしていなければもっと格好良かったのだろうが……

(しかし、ちーっとも騒がれんのォ…… 予想しちょったとはいえ、姫松とはえらい違いじゃ……)


久の抽選を見守りつつ会場の反応にも気を配っていたまこ。

シーンとして誰も反応しない会場に溜息をつきつつ「まぁ、初出場校の扱いなんてこんなモノか……」と呟く。

しかし一呼吸の後、ザワザワと観客たちがざわつき出し、しかもその声はどんどん大きくなっていた。

「な、何……? 京ちゃん何なの、これ……?」

「さ、さあ…… 俺にもサッパリ……」

観客席の予想もしなかった反応、咲は一寸涙目になって京太郎に問いながら彼の袖をキュッと握った。

彼女の弱気がさせた無意識の行動だったが、何気に強かな行動だった。

咲に問われた京太郎だが、彼が彼女の疑問に答えられるはずもなく混乱するばかり、その間もざわめきが収まることは無い。

「何でざわついちょるんじゃ? こうも無秩序じゃ聞き取りにくいのォ……」

一方のまこは会場が沸いている理由を探ろうと聞き耳を立てていた。

この無秩序な喧噪の中で会話の内容を聞き取るなど人間業ではないだろう。

だが恐るべきことにまこは幾つかの会話を聞き取っていた。

――清澄はBブロックか…… って姫松のいるブロックじゃねえか! 胸が熱いな!

――おおっ! 永水女子がBブロックのシードか、異能軍団同士の霊能対決か!

――GS軍団清澄は一回戦突破は確実だろう、組み合わせ次第では永水vs姫松vs清澄の対局が見られるぞ!

――なんで清澄までBに来るのよ!! 永水、姫松だけでもお腹イッパイなのに……

まこの背中を冷たい汗がツツッっと流れる。

正直に言うと聞きたく無かった、知りたくも無かった。

(一体ウチはどんな評価されとるんじゃあ!?)

心の中で絶叫する彼女。

聞こえた分だけで判断するとかなり過大評価されているらしい。

GS軍団と言う単語が聞こえた段階で原因の大半は自分と京太郎にあることに気づくまこ。

何とか行き過ぎた評価を正すための策を考えるが、もはや事態は焚火を通り越して山火事状態。

鎮火を試みるなど無理難題、諦めて流れるままにするのが一番楽だろう。

聡い彼女もすぐにその事に気付き「わ、ワシャ何も聞いちょらんけぇ……」と呟いて全てを無かった事にしたようだった。



さて関係者にとって様々な意味で悲喜交々だった開会式は恙無く進み終了する。

サッサと会場を後にしようとする者、知り合いと手近な椅子に座り世間話を始める者、席に着いたまま開会式の余韻に浸る者、各々が自由に行動を初めて会場は喧噪に包まれていた。

我らが清澄の面々はと言うと…… 会場を後にしようとする者の仲間入りを果たしていた。

尤も、早く出たがっていたのはまこと京太郎のみで咲、優希、和そして久は急かされているだけだったが。

「ちょ、一寸! どうしたのよ! そんなに急いで!? 説明位はしなさい!!」

「ええから早よここから出るんじゃ!」

「そうですよ部長! 手遅れになる前に!」

まこと京太郎が4人の手を持って牽引していたのだが、当然そんな無茶な急かされ方をしてまともに歩けるはずはない。

久が抗議の声を上げるのは当然だった。

現に咲は足が縺れてこけていたりする。

「あら? 手遅れってどういう事かしら?」

突如、後ろから声を掛けられる。

女性の声だがこの会場に大勢居る10代の声ではなく、酸いも甘いも噛み分けた中年女性の声だった。

実は京太郎とまこ、この声を聴きたく無いために早く会場を出ようと部活のメンバーを急かしていたのだ。

ギギギっと錆びついた金属の稼働部品を動かすかのような動きで声がした方に首を向ける京太郎とまこ。

そこに居たのは亜麻色の髪を後ろで纏めてパリッとしたスーツに身を包み、ちょっと太めの眉がチャームポイントの如何にもやり手と言った感じのアラフォーな女性……

「お久しぶりじゃ…… 美神美知恵オカルトGメン日本支部最高顧問殿……」

「いやん、美知恵って名前で呼んでって言ったじゃない。二人とも♥」

腹の底から絞り出したような声であいさつをするまこに明るい声で答えるオカルトGメン日本支部の実力者・美神美知恵。

この時点で避けたかったこの女傑に関わることが確定、2人は疲労感を覚えるとともに深い深ーい溜息を吐いた。



…………………

…………








「あ゛~~~っ、疲れた……」

「同じくじゃ……」

「ちょっと2人とも! テレビで見たことあるけど、あの人ってICPOのお偉いさんじゃないの!? 一体如何言う事か説明しなさい!!」

ホテルの部屋に帰り着くなりグデーと寝ころぶGSコンビ、余程精神的に疲れているのか久の剣幕にも梨の礫だ。

2人にとって美神美知恵はある種の鬼門…… いや、決して彼女を嫌っているわけではない。

GSの先達としての実績に加えてアシュタロスの乱で序盤に人間側勢力を纏め上げ、後の人類側の大反撃の基礎を作り上げた手腕など、寧ろ尊敬の念を抱いてる。

じゃあ、一体如何言う事かと言うと……

「2人とも、ICPOに来ない? 貴女達の実力ならそれなりのポストを用意できるわよ♪」

顔を合わせる度の勧誘にウンザリしているのだった。

毎度々々、勧誘をやんわりと適当な理由を付けて断るのに疲れている高校生GSコンビ。

尤も美知恵の勧誘は本気でなく彼女なりの冗談を含めた挨拶なのだ、むしろ本当にオカルトGメンに来られると逆に困ったことになったりする。

確かにオカGは隊員不足、優秀な人材は喉から手が出るほど欲しい。

しかし欲しい人材は中堅クラスの人間であって、トップクラスの人間を求めているわけではない。

基本的に組織を動かす上で要となるのは中間層、軍隊で言うならば背骨と称される下士官クラスの人材だ。

京太郎とまこは確かに優秀なGSだが、たった2人で一般のオカG隊員数十名分の働きなぞできる訳がない。

もし仮に彼らがオカGに引き抜かれたとすると次の様な状況になる可能性が高い。


『2人以外にまともな高ランクGSが居ない甲信越地方の霊的防御に大穴が開く。

                 ↓

 甲信越地方で高ランクの悪霊ズが大暴れ! 経済力が弱い地域なので都市圏から高ランクGSを呼ぶことはほぼ不可能。

                 ↓

 そしてそっちの対応もオカGがしなくてはならず、引き抜いた人材以上の人的資源を振り向ける羽目になり結果大赤字。』


美知恵はこの流れになると確信していた。

ハッキリ言って2人をオカGに入れるのは危険すぎる。

尤も、当の本人たちには入隊の意志など0なのでそんな心配は杞憂なのだが。

さてさて、色々あって軽ーいパニックに陥って京太郎とまこに追及の矛先を向けている久。

場が落ち着くまで少々時間が掛るだろう。

「すみません、ちょっと用事があるので出かけてきますね」

そんな中、同級生の2人に声を掛けて和が部屋を出ていく。

「用事? うん、分かったよ。気を付けてね和ちゃん」

「のどちゃんの体はエロいからな、狼には気を付けるんだじぇ!」

「もう! ゆーきはなんて事言うんですか!」

2人の言葉に返事を返しつつ和は部屋の扉をパタンと閉める。

廊下に出た和の顔には少し黒い色が浮かぶ笑みが張り付いていた。



…………………

…………







さて和が部屋を出たころ、別の出場校が宿泊している部屋では大声が響いていた。

「リア充爆発や!」

「お姉ちゃん、どないしたん? いきなり大声出して……」

「どーせまた突発的な病気を発症したのよー」

まるで「絶望した!」と叫ぶ糸○望のようにチームメイトの前で叫ぶ面白い顔をした女子高生・愛宕洋榎、御年17歳。

その表情は人類の敵を睨みつけるがごとく憤怒に染まっていたが、相手をさせられているチームメイトの対応は哀れになるくらい淡泊だった。

ここは姫松高校女子麻雀部のレギュラーが宿泊している部屋で、彼女、愛宕洋榎はチームの中堅を務める部内随一の腕の持ち主だ。

「なんやなんや! そのアッサリした態度は!? ウチ等の不倶戴天の敵が居ったちゅうのに!!」

「そやから、お姉ちゃん。何のことなんや?」

チームメイトの素っ気ない態度に更に立腹する洋榎、もはやその怒りは天元突破だった。

まあ素っ気ない態度も仕方ないと言えよう。

なにせ洋榎は乱暴に扉を開けて部屋に入ると理由も言わずに腹にたまっていた怒りを爆発させたのだ。

チームメイトからしたら何で怒っているのかサッパリだった。

「清澄高校のことや!!」

「清澄高校? 原村和の事ですか?」

冷静に理由を尋ねる妹の愛宕絹恵の言葉に大声で答える洋榎。

もう少し静かに答えたらどうかと思わなくもない。

で、告げられた理由から原因の人物を推測したのは一年生の上重漫。

彼女は去年のインターミドルチャンピョンで衆目を集めている和が原因だとあたりを付けたようだが……

「そんな小物とちゃうわ!!」

「こ、小物って…… 主将……」

その予測は外れていたようだ。

しかも、曲がりなりにも全中学生のトップに君臨したインターミドル覇者を小物扱い。

これには後輩の漫も呆れるしかなかった。

「じゃあ、一体誰なのよー?」

独特な口調の3年生・真瀬由子が面倒と言った感じで訊くと……

「金髪のGSにワカメのGSに決まっとるやろ!!」

「へっ?」

「いや主将、確かにフリースタイル麻雀にGS見たいな霊能力者は脅威ですけど……」

「金髪は男子やし、ワカメの方は実績が全くないのよー。正直、警戒はしても目の敵にするほどじゃないと思うのよー」

姫松高校も清澄高校の情報はweekly麻雀todayで話題になった頃から集めている。

そして分析の結果、彼女たちはGSだがぱっと出で実績が全くない染谷まこよりも、十分に実績のある原村和が清澄で最も気を付けるべき相手と判断していた。

もちろん他のメンツを軽視しているわけではなく程度の問題なのだが。


「甘いわ!! 甘すぎやで!!」

クワっと目を見開いて主張する洋榎にドン引く絹恵、漫、由子。

そんな3人の様子にも構わずに洋榎のボルテージは更に上がっていく。

「わ、私たちの考えは取りあえず置いといて…… あの2人を目の敵にする理由は何なのよー?」

「それはな……」

「それは?」

俯きだした洋榎の様子を怪訝に思う由子。

ワナワナと震えながらすーっと息を吸い込む洋榎、そして顔を上げ正面を向くと――

「2人がリア充やからやーーーー!!」

――と大声で宣った。

「……………………」

「特にあんのォ、クソワカメ! そこそこ顔良くて滅茶苦茶稼げるGSの資格持ちぃ? おまけにイケメン彼氏とラブラブとかふざけんなやーーー!!」

「しかも公衆の面前で堂々とイチャつきよるとか舐めとんのか? ウチ等みなしごがどれだけ惨めな思いしとると思っとんのや!!!!」

「天は二物を与えずは嘘なんか!? 禿げろ! 捥げろ! リア充死すべし!!」

ゼーハーゼーハーと息を荒げながら、まだ怒りに身を震わせる洋榎。

捥げろと言っているが、何処が捥げるのかは気にしてはいけない。

洋榎のバストを見れば凡その察しはつくが、決して気にしてはいけないのだ。

一方、チームメイトの3人は余りにもしょうもない理由に呆れ果てている。

3人の洋榎を見る目もゴミを見るような目になっていた。

「という訳で、ゆーこ。アンタに重要な使命ができたで」

「……想像はつくけど何なんよー……?」

「幸いあのクソワカメのいる清澄は二回戦目でウチ等と当たる…… ゆーこ、次鋒戦でボコボコにして目にモノ見せてやるんや!! ウチ等みなしごの力見せてやるんや!!」

周りの様子はお構いなしにヒートアップしていく洋榎の勝手な言い草に付いて行けなくなった由子。

適当に返事してあしらう事にした。

そして、この残念女子高生の妹・絹恵は自分の姉の残念さ具合にそっとハンカチを自分の眼元にやり、浮かんだ涙を拭いていた。



「ところで、末原先輩はどこ行きはったんですか?」

「あ、あぁ…… 恭子ねー……」

この場に大将を務める恭子が居ないことに気づく漫。

由子に尋ねるが、帰ってきたのはお茶を濁すような返事。

「? どうしはったんです?」

「……さっき街を歩いてたら鳥のフンの爆撃を受けたのよー しかも30分の間に10回も…… いま、部屋に引きこもって枕を涙で濡らしてるのよー……」

「うわぁ、それはご愁傷様で…… 末原先輩の不幸体質も大概ですね……」

「全くなのよー まぁ、麻雀ではその不幸を引っ繰り返すくらいの技量があるから安心して大将を任せられるのよー」

南大阪の代表、姫松高校。

この高校も中々個性的なメンツが揃っているようだった。



…………………

…………





さて、更に場所は変わってここは門前中町にある蒲原智美の祖母の家にある離れの部屋。

読者の皆様は覚えておられるだろうか?

いつもワハハと明るい雰囲気を出している鶴賀学園の3年生、蒲原智美の事を。

閑話休題、何故か部屋は暗くなっていた。

シュッっという音共に、小さな光が生まれる。

光がスッと移動したかと思うと、机の上に用意されていた蝋燭に火がついて、仄明るくあたりを照らした。

「同志エトペンよ…… 事態はどうなっているっすか?」

「同志ステルス、順調に進んでいますよ」

「そうすっか。同志よ事態は決して失敗できないっす」

「もちろんですよ、同志」

カチンと言う音がしたかと思うと、仄暗かった部屋に強い光が生まれた。

「……原村にモモよ、一体何をやってるんだ? 何を?」

多分に呆れの混じった声を出しながらゆみは照明から垂れ下がるスイッチ紐に手を掛けつつ足元を見下ろす。

そこには卓袱台に肘をつき手でAの字を作ってそこに鼻先を乗っける、所謂ゲンドウスタイルを決めている和と、仰々しく腕組みをして座椅子にふんぞり返っている桃子が居た。

2人とも何故かサングラスまでつけていて…… 正直言うと奇行にしか見えない。

「加治木先輩、雰囲気って大事っすよ?」

「そうですね、雰囲気あってこそ気分と言うものは乗りますから」

「だから、行ったに何をやってるんだ? 原村、いきなり訪ねて来て一体何の用だ?」

ゆみの言葉にうんうんと頷く智美、睦月、佳織の3人。

ちなみに、鶴賀学園のメンツが東京に居るのは清澄の応援の為なのだ。

「須賀京太郎大奥計画の進捗報告と作戦会議ですが何か?」

サラッととんでもないことを口にする和。

ゆみは「またか……」と言った表情で溜息をつくが、鶴賀の3人の顔には驚愕の表情が張り付いる。

とくに佳織は顎が外れて床に付きそうだった。


「で、同士エトペン、いまどんな手を使っているんすか?」

「同志ステルス、急いては事を仕損じると言います。今は慣らすところから始めています」

「細工は流々仕上げは御覧じろ…… ですね♪」

何事も無かったかのように作戦会議とやらを再開する2人。

「具体的には?」

「定期的に我が家で女子5人揃って映画鑑賞会を開いているのですが、その映画にちょっと細工を……」

「ほうほう」

「静止画1440枚に付き1枚ほど、アレな画像を混ぜてます」

正直、何をやっていると突っ込みたくなるのだが……

最早この場に突っ込むほどの元気を残している人間はいなかった。

そして和と桃子の暴走は更にエスカレートしていく。

「まあ、主に5Pやハーレム、乱交の画像ですね」

「成程、サブリミナル効果ってやつっすね?」

「ええ、映画を加工して画像を仕込むのに時間が掛りましたが…… 労力に見合う効果はあると思います」

「素晴らしいっす、これで一夫多妻に対する禁忌感も薄まるっすね」

「咲さんやゆーき、部長の意識が少しでも妻妾同衾に前向きになると背中を押しやすくなります」

グフグフと黒い笑みを浮かべて怪しい計画を練る2人、当然周りはドン引きである。

そもそもサブリミナルを使ってまで修羅場を見ようとするとか努力の方向音痴としか言えない。

そんな残念美人の2人を見てゆみは長い溜息をつく、もう処置なしと言った感じで諦めが多分に含まれた長い長ーい溜息を。






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                Report.11 closed
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【次回予告】


因果は廻る

因縁の相手に出会った彼女たちは……

「う、うぇぇぇぇぇえええん!!」

「あつっ! アツゥ!!! アツッッッ!!!」

「ところで、あの正体不明な荷物たちは何なのです?」

次回『Report.12: 決戦! 全国高校麻雀大会 ‐インターハイ・覚醒編その1‐』!



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【人物・用語解説】

〈愛宕洋榎〉
姫松高校の3年生で麻雀部レギュラー。チームの主将でポジションは中堅。
同じ高校の同級生の男子によると面白い顔らしい。
ノリ突込みの特異な乙女だが、自身がモテないと思い込んでおり嫉妬の海に溺れることも。

〈愛宕絹恵〉
姫松高校の2年生で麻雀部のレギュラー。チームでのポジションは副将。
かなりの胸部装甲をお持ちの美少女、姉と比較すると遺伝子の神秘を実感できると麻雀部で評判。
元々は女子サッカーをやっていてかなりの腕前のGKだったらしい、なんで麻雀部に入った!?
最近の悩みの種は少々派手姉の残念な言動らしい。

〈上重漫〉
姫松高校の2年生で麻雀部のレギュラー。チームでのポジションは先鋒。
広いおでこがチャームポイント、麻雀での爆発力は凄まじいものが有るらしい。
姫松麻雀部の弄られキャラ、かなり美味しいポジションを得ている。


〈真瀬由子〉
「のよー」と独特の語尾がチャームポイントの姫松高校3年生。
チーム戦では次鋒を務める。
姫松麻雀部の数少ない突っ込み役の常識人。
洋榎の暴走に毎回振り回されている可哀そうな少女

という訳で、11話をお送りしました~
もう少し執筆速度を上げたいけれど……
まぁ、自分のペースで書いていきます。次話も楽しみにしててください!

感想を書いて頂ければ滅茶苦茶嬉しいです!
OTRのほう更新もしていくので宜しくです!

そういや>>1はこないだ完結した京まこスレは当然チェック済みなんだろうね

>>380
卵焼きから始まる恋の物語の奴?
もちろん見たよー

現在9話の手直し中、OTRにアップしたらお知らせします。

OTRに加筆修正版の9話をうpして来ました。
良ければ、読みに行ってください。
感想もよければお願いします。
感想頂けるとかなりモチベが上がります。

スマヌ、艦これの夏イベントで執筆ほとんどしてません(><)
申し訳ない……

皆様、お久しぶりです
……艦これ夏イベントに熱中していて、やっと執筆に掛ると言うカス具合……

今少し時間を下さい

あっ、イベントはE-5クリア、ゲットした艦娘は初風、三隈、夕雲、あきつ丸、矢矧、春雨、大淀、雲龍、早霜、清霜でした。
個人的には満足満足。

あれ? トリップ変?

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