ココちゃんのはなし(32)


余り出来が良くなかったのでhd内に眠らせていたのを偶然見つけたので貼っていく

でも正直貼っていいのかわかんないレベル。ごめん

ココちゃんのおはなし

これから話すことは、ココちゃんが最期の最後に話してくれた事なんだ。
だからよく聞いて欲しい。
私の二つ目の罪、ココちゃんという一人ぼっちの子の人生を。


じゃあ、始めるね。


最初に、簡単な説明をしたいと思う。
私がココちゃんに出会ったのは小学生の頃。と言っても、よく知っているのは小学校の四年生位かだけど。
同じクラスで席がとなりになってから仲良くなったんだ。
ココちゃんは、とても活発で愉快でよく笑う子だった。話す事も面白くて、周りの子はすぐにその魅力にとりつかれてしまったんだ。
なんだか話し慣れしてる感じがした。とにかく、人を引き込むのが得意だった。

なんだか話し慣れしてる感じがした。とにかく、人を引き込むのが得意だった。
それと、周りからの印象だったんだけどとっても賢かった。なんていうか、頭の回転が恐ろしく早いんだ。
ココちゃんもそう言ってたよ。得意げに自慢げに。
でもココちゃんが言うと自慢に聞こえない。とっても自然。不思議。

それでいて、ドジなところがあるんだ。
方向音痴だったり、たまにぼんやりしていたり、よくこけたり。
なんだか近くにいて、癒される感じだったんだ。なんだかとってもかわいかった。


ココちゃんは本も好きだった。音楽も好きだった。なんでも好きなのか、新しいモノをどんどん取り込んで自分の得意分野にしちゃう。
そんなココちゃんに、子供ながらあこがれとかっこよさを感じていた。
だから、ココちゃんと友達になりたいと思ったんだ。で、二人でもっといろんなことを話すようになった。
と言っても、話を振るのはこっちからなんだけどね。
ココちゃんは聞き上手の話し上手。話題に乗るのも得意。話題を変えるのも得意。

ココちゃんにはその頃ほかに仲良くしていた子がいたんだ。本仲間っていうのかな、その子からいろんな本を借りていたんだ。
昔からある本とか、子供向けじゃない普通の本とか、ライトノベルとか。
面白い本があったらココちゃんはその本のことを教えてくれた。ココちゃんが話すととっても素敵な話に聞こえる。
そしてここからが、ココちゃんから聞いた話。


五年生の終わり頃、ココちゃんはいつものようにその子からある一冊の本を借りたんだ。
その本は、人間失格。この本が、ココちゃんを変えてしまった。
変えたと言っても、少しおとなしくなった程度だけどね。それと、一人になるとココちゃんの顔から明るさがふっと消えたんだ。
この本は、多分知ってると思うけど作者の告白みたいなものでさ。
ココちゃんから話を聞いたあとふと読んでみたんだけど、周りから見たココちゃんはその主人公そのものだったんだ。いや、正確に言うと主人公とは少し違うか。
何が違うか。ココちゃんはどちらかと言うと太宰治本人に似ているのかもしれない。


簡単に言うと、ココちゃんには感情が足りなかったんだ。

主人公は感情がない子として描かれていたんだ。そんな話を読んだココちゃんは、自分も同じ状態であることに気づいた。
自分が今まで経験してきた苦しみは無意識の演技とそれによって相手を騙しているという罪悪感によるものだったんだと知ったんだ。
そう言われてびっくりしたよ。苦しんでるようには見えなかったしね。


周りの子は成長してゆく。
誰かが言う。「ココちゃんのアレは演技だ」
ココちゃんは恐れる。
噂が流れる。「ココちゃんのアレは演技だ」
ココちゃんは黙る。
暗くなる。
変わってしまう。
周りの子の噂は確信へと変わる。
「ココちゃんのアレは演技だったんだ」
次第に、ココちゃんの周りから人が消えていった。
次第に、ココちゃんの顔から笑顔が消えていった。


でも二人でいる時はいつものココちゃんに戻っていたから、そんな噂はうそだって思ってた。みんなヒドイって思ってた。
自然と二人でいる時間が増えた。その頃から、私はココちゃんのことが好きだった。
ココちゃんはそのまま、小学校を卒業した。賢い中学校に入った。
私も同じところに行った。ココちゃんと一緒にいたかったから。



中学校に、同じ小学校の子は居なかった。
ココちゃんは、目に見えるように明るくなった。あぁココちゃん、楽しそうだなって、ココちゃんの隣でぼんやりと考えてた。
私は気付いていた。
ココちゃんの笑顔はなんだか今までと違う。本物の感じがする。
小学生の頃が演技だったっていう意味じゃないけど、本当に心の底から嬉しそうだった。

友達も増えた。たくさん遊びにいった。私はいつもココちゃんのそばにいた。
中学一年、二年と、それはもうとっても楽しかった。幸せだった。
ココちゃんもそう言ってた。「あの頃が一番楽しかった」「今までしてたことが途端ばかみたいに思えた」
「演技のことなんてすっかり忘れた」

変化が起こったのは三年の初め。クラス替えである女の子と同じクラスになったんだ。
ココちゃんも私も、その子と同じ塾に通っていたから結構仲が良かったんだ。でも今度はその子が、ココちゃんを変えてしまった。
その女の子は、なんというか、すごい子だった。
可愛くて、活発で、純粋で、とてつもなく頭が良くて。

それでいて、ドジなところがあるんだ。


もう、完璧だった。
それは幼い頃のココちゃんが思い描いていた生き方だったんだ。
しかもその女の子のそれは、演技か本物かわからない。なんといってもすごく頭がよかったから。
その女の子をよく思ってない少数の女子からはあの頃のココちゃんと同じ事を思われていたようだけど、本人の前で言う訳もなくただただ周りから好かれていった。
そう、その女の子はココちゃんのあこがれであり、最大の敵だったんだ。

それからのココちゃんは、小学校の頃に戻ってしまった。
でも、完全には戻りきれてなかった。演技を忘れていたんだ。
しばらくおとなしくなったココちゃんは、あの頃のように私と一緒によく話すようになった。
特にその女の子とはほとんどしゃべらなくなった。理由は一つ、怖いから。
でも私は嬉しかった。ずっとココちゃんにとっての特別な友達でいれたから。
ずっとこのままでいいと思ってた。一緒にいたかった。


それからはずっと、本当にずっと、私とココちゃんは一緒に過ごした。
でもココちゃんはちっとも変わらない。
なんにも変わらない。
あの元気で明るかったココちゃんはもういなくなってしまった。
そんなにココちゃんはおじいちゃんが大切だったんだ。と思った。
そうしたら急にココちゃんが弱々しいものに見えてきて、
「私がついていないとダメだ」と感じたんだ。
ココちゃんの心の拠り所になりたい。ココちゃんとずっと一緒にいたい。

ココちゃんが好きだ。


そう思った私は、ココちゃんに告白することにしたんだ。
二月の中頃、バレンタインのチョコとともに。
だけど、ココちゃんの反応が変だった。
一週間眠れずに準備した言葉をココちゃんに言い終わった瞬間、ココちゃんは固まってしまった。
そしてひどく悲しそうな顔をして、「返事は待って欲しい」と言ったんだ。
それから一ヶ月、二人のあいだには気まずい空気が流れ続けていて、喋らなくなって、ココちゃんはますます一人になっていった。
もうその間のココちゃんは見てらんなかった。


そう思った私は、ココちゃんに告白することにしたんだ。
二月の中頃、バレンタインのチョコとともに。
だけど、ココちゃんの反応が変だった。
一週間眠れずに準備した言葉をココちゃんに言い終わった瞬間、ココちゃんは固まってしまった。
そしてひどく悲しそうな顔をして、「返事は待って欲しい」と言ったんだ。
それから一ヶ月、二人のあいだには気まずい空気が流れ続けていて、喋らなくなって、ココちゃんはますます一人になっていった。
もうその間のココちゃんは見てらんなかった。


一ヶ月後のホワイトデー。忘れもしない3月14日。卒業式の前の日。
「放課後に屋上で待ってる」
と、ココちゃんに言われた。
早めに用事を切り上げて着いた屋上はこれから起こる何かを感じさせるような寒さだった。


彼は屋上に着くと、屋上の端ギリギリまで歩いて行って向こうを向いたまま話し始めた。
止める暇なく必死で「危ないよ」という私の言葉は届かず、彼の口から出てきた言葉は、予想外で、残酷で、何もかもを打ち砕く悲惨なものだった。


「ごめんね。
僕、君にひどいことをしてたんだ。
小学校の頃六年生だったかな、僕なんだか変なこと言われてたでしょ。
演技がどうこう。
実はアレ、全部ホントの事なんだ。
と言っても、あの頃は自覚はなかったんだけどね。
他の人に好かれるために僕が選んだのはそういう生き方だったんだ。

あの頃は苦しかった。
本を貸した子のことは今でも恨んでる。
でも仕方ない。
全部僕が悪いんだ。
全部。
でもね、周りのみんなが僕を嫌っていく中で、君だけは僕とずっと一緒にいてくれた。
嬉しかった。
幸せだった。
僕はそんな君を利用していたんだ。
君だけは信じてくれる。
騙されてくれる。
そう思ったからかはわからないけど、君とずっと一緒に居た。

でも中学校ではそんな必要なかったんだ。
とってもとっても楽しかったから。
友達もたくさんできて、いっぱい遊んでさ。
ずっとこんな日が続けばいいと思ってた。

だけどね、気づいちゃったんだ。
僕、おじいちゃんが死んじゃったでしょ。
その時ね、僕。
なんにも感じなかったんだ。
全然、嫌いだったわけでもないんだよ。
むしろ、とっても大切な人だったんだ。
でもおかしい。
何も思わない。
何も感じない。
悲しみがない。
わかったんだ。
僕はおかしな子だったんだって。
生まれてきてはいけなかったんだって。
大切なものが急に奪われても何も感じなかったんだ。
それからは、ずっとずっと考える日々だった。
これから先どうやって生きていくんだろう。
そして、決めたんだ。
苦しいけど、誰にも傷つけずに生きるって。

でもね、そんな時、君に告白されたんだ。
そしたら急に今まで君を騙していたことに気がついて。
それで、もうだめだって思ったんだ。
僕は人を騙して生きる。
人を傷つけて生きていくんだ。
そう分かった途端、肩の荷がおりたような気がしたよ。
自分のすべきことがわかったからね。
だから、それを気づかせてくれた君にお礼を言ってさ。
今まで騙してきたことを謝って、終わりにしようと思ったんだ。
ねぇ、クロナちゃん

ごめんね。

ありがとう。

そして、」

やめて。という声は、声にならなかった。


「さよなら」


その時振り向いた彼の笑顔を、私は忘れることができない。


彼はそこから、見えなくなった。

終わり

やっぱり貼るんじゃなかったと、今更後悔。ノンフィクションアレンジに手を出したらダメだ

誰かもっといいの書いてね。これは落としちゃって

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