ガーデニング魔王 (104)

魔王「何?魔族の世界をつくろうだと?」

魔王「そんな事する暇があるなら庭の植物達の世話をするわ」

兵士長「しかし魔王様…そんな事している場合ではなくて…」

魔王「『そんな事』だと?!」ガタッ

魔王「知っているか?年々多くの草木が激減しているのだ!」

魔王「我々生ける者達は皆、多くの木々や草花によって生かされているのだぞ!!」

魔王「いや、他にも生かしてくれている物があるのを理解しているし悪く言うつもりはない…」

魔王「だが植物だって欠かさぬ物だというのは確かだ!!」

魔王「そうだろう?」

兵士長「は、はぁ…」

魔王「例えば野菜や果物などの作物……食料として役に立っているし他にも…」ブツブツ




メイド「止めないのですか?」

側近「止めても話が長引くだけですよ、何も知らない新人が来るといつもこうです」

側近「誰なのでしょうね、こんなヒト魔王にしたのは」

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魔王「~♪」チョロロロ

側近「今日も草花のお世話に精が出てますね」

魔王「当然だ」

魔王「こっちが頑張れば頑張るほど相手も応えてくれるのだからな!!」キラキラ

側近「魔王なのに表情が生に満ち溢れている…」

魔王「彼らを見ていると私も自然と頬が緩むのだよ」

側近「絶対生まれるところを間違えてますよね…」

魔王「最初から私は植物達に囲まれて生まれ育ってきたぞ?」

側近「精霊族から魔王が出たという異例も異例でしたからね」

魔王「どうして自分がなかったか未だに分からないが?」

側近「それは魔王になるだけの素質を秘めていたからでしょう」

魔王「素質なんかいらないから、草木と会話できる能力がほしかった…」

側近「いやいやいやいや…」

側近「あ、そういえば今日、勇者16号がこちらへ来るそうです」

魔王「はぁ~また相手にしないといけないのか」

魔王「そっちで処理しておいてくれない?今から庭オブジェを自作しようと思ってたのに…」

側近「なるべく対処しますがなにせ勇者ですからそう簡単には…」

勇者16「魔王!どこだ!?」

側近「もう進入していたようですね」

魔王「早いな…」

側近「これはもしかすると初めて魔王様の本気で戦う場面を見られるのですね!?」

側近「隠れてその様子を拝見しなくては…」コソコソ

魔王「おい…それは独り言を言ってるつもりか?丸聞こえだぞ…」

側近「思ったことを何でも口に出してしまう性格ですので」

魔王「ある意味とんでもない性格だよな…」

勇者16「お前が魔王か!?」ガサガサ

魔王「!?」

勇者16「魔王にはあまり見えないが覚悟しろ!!」グシャグシャ

魔王「…今、何をした?」

勇者16「は?まだ何もしては…」

魔王「今、お前が踏みつけているのは何だ?!」

勇者16「えっと…草?」

魔王「勇者の分際で植物を愛する気持ちもないのか!!」ズゴゴゴゴ

勇者16「いやちょ…この魔力はやべぇ…」

魔王「生きている者として恥を知れぇぇぇぇぇ!!!!」バシュゥゥゥゥン!!

勇者16「何だそりゃ!?ぎょべぇ?!」ブチュン!!

肉片16「」チーン

魔王「あぁ…しっかりしろ…今治してやるからな」ソッ

側近「確かに力は魔王として申し分ないけど倒す動機がメチャクチャです…」

魔王「どうしてこんなひどい事をするんだろうな……なぁ?」

側近「えっと…そうですね」

僧侶「きっと勇者16号は何があったか分からないまま死んだのでしょうが…」

魔王「側近ー」

側近「何でしょう?」

魔王「ちょっと人間界のホームセンター行ってくる」トコトコ

側近「お待ちなさい」ガシッ

魔王「どうした?」

側近「何を近所のコンビニ行ってくるみたいなノリで行こうとしているのですか?!」

魔王「いやぁそろそろ肥料が尽きそうでな」

魔王「皆待っているのだよ」

側近「いやいやいや、聞きたいのはそれではありません…」

側近「わざわざ人間界に行って買ってこなくていいでしょう!?」

魔王「知らないのか?人間界の肥料のほうが良質でよく育つのだ」

魔王「買いに行くのは苦労するが皆のためなのだ」キリッ

側近「そっちを気にするぐらいなら城の兵士達を気遣ってあげてください!!」

魔王「偶然私は人間と外見が同じだし気づかれないからいいだろう?いってきまーす」

側近「だからそういう問題じゃ…お待ちなさい!?」

魔王「うーむ…さすが人間界はすごいな…」

魔王「魔界にない物が何でもそろっている」

魔王「む?この庭用オブジェなかなかいけているな」

魔王「禍々しい物ばかりの魔界とは大違いだ」

魔王「むむ!?この園芸用はさみは非常に使いやすそうではないか!!」

魔王「なんと!!今なら苗がすべて半額とな!?これは買いだな!!」

魔王「おっと、当初の目的である肥料のコーナーはどこだ?」キョロキョロ

ドンッ

少女「あっ」ドサッ

魔王「む、すまない」グイッ

少女「ありがと、こっちもよそ見してたから気にしないでー」パンパン

魔王「そうか…ところで肥料はどこに置いているか分かるか?」

少女「肥料?だったらこっちだよー」

魔王「案内してくれるのか?すまないな」

少女「ここだよー」

魔王「おぉぉぉぉぉ!?何という種類だ!!」

少女「ここ全世界で一番種類が豊富なお店だしね、あたし常連なんだぁ」

魔王「ふむ、これは私も常連になるかもしれんな」

魔王「しかしこれだけ多いと選ぶのに困るな…」

少女「どういう肥料がいるの?」

魔王「うむ、今回は固形の物を買いに来たのだが」

少女「野菜とかじゃなくて普通のお花とか?」

魔王「そうだ」

魔王「一応、野菜・果物もあるが今ほしいのはそれだな」

少女「じゃあこれがおすすめかなぁ、全栄養をバランスよく与えられるよ」ピッ

魔王「ほう?お前にも知識があるのか?」

少女「うちがお花屋さんだしねー」

少女「自然と覚えるんだよ」

魔王「ならばお主を信用してお薦めのやつを買うとしよう」

少女「えへへー」

魔王「と、いうわけで人間の娘に薦めてもらったものを買ってきたわけ」

側近「はぁ」

魔王「量も比較的多いし、お手ごろな価格なんだこれが」

側近「それはよかったですね」

側近「しかし、まさか魔王が普通に買い物に来ているとは人間も思わないでしょうね…」

側近「あ、そういえば魔王様」

魔王「なんだ?」

側近「先程、魔王様と縁を持ちたいという…」

魔王「断っておけ」

側近「相変わらず即決ですね」

魔王「今、私にはそんなもの必要ない」

側近「植物が恋人ですからね」

魔王「違う、植物は良き友でありパートナーだ」

側近「何の違いがあるんですか…」

魔王「まさか承諾したわけじゃあるまいな…?」

側近「今の魔王様は多忙なので現在余裕がないとお断りしましたが」

魔王「ほっ」

側近「こちらが何もせずとも魔王様は人気者のようですね」

魔王「そういう人気はいらんわ…」

側近「ただでさえ良い素材を持って生まれたのに」

側近「ただの宝の持ち腐れなんて…」

側近「あぁ…できるのであるならばわたくしが魔王様のすべてをいただきたいのに!!」

魔王「…さて、早速肥料を撒きにいってくるか」トコトコ

側近「お待ちなさい、今日こそはご自分の素晴らしさを理解してもらいます」ガシッ

魔王「離せ!?『美と健康の授業』とやらはもう聞き飽きた!!」

側近「いいえ!今度は『心と体のケア講義』です!!」

魔王「名前の違いで中身は一緒なくせに!!」

勇者32「えっと…何なのこの状況…」

魔王「そ、そこの勇者32号!助けてくれ!?」

勇者32「な、なに?!」

側近「今度こそ身につけるまで逃がしませんからね!!」

勇者32「見た目と雰囲気からして…君が魔王?」

魔王「そうだ!礼は何でもするから助けて!?」

勇者32「何を言っているの!!悪いけど討たせてもらうよ?!」シャキ

側近「止まりなさい魔王様!!」バシュゥン

魔王「あぶなっ!?大切な植物達に当たったらどうするつもりだ!!」ササッ

勇者32「へ?ふぎゃぁぁぁぁぁぁ!?」ドガァァァァン!!

魔王「こらっ、わざわざ出向いてきてくれた勇者32号に何て事するんだ!!」

側近「そんなのより今心配なのはあなたの方です!!」

勇者32「く…魔王の側近にここまでやられるなんて…」ググ…

勇者32「だけどボクは負け…なぁぁぁぁ!?」バヒューン

魔王「何飛ばしてんだよ!!かわいそうだろ!!」

側近「だったら大人しく降伏したらいい話です!!」

魔王「な、何とか振り切ったか…あとで上位の者にヤツを隔離させよう」

勇者32「…ねぇ?」

魔王「傷が痛むのだろう?大人しくしていろ」ポンポン

勇者32「いや、あの…どうして勇者のボクを介抱なんか…あたた」

魔王「迷惑をかけたからな……部下が」

勇者32「…」

勇者32「今傷口につけてる葉っぱは何なの?」

魔王「これか?これは切り傷などの外傷を消毒できる葉だ」

魔王「人間界で言う薬草よりずっと効果が高い」

勇者32「そうなんだ…でも本当に痛みが引いたや」フリフリ

魔王「人間はちゃんと植物について研究してないようだからなぁ」

魔王「こんなに役立つ植物があるというのにまったく…」ブツブツ

勇者32「植物好きなの?」

魔王「私にとって欠かせない存在だ」フッ

勇者32「変な魔王」ニコ

魔王「そっちの方にも水撒きを頼む、かけすぎないようになー?」

メイド「はい」シャァァァァ

魔王「あ、そこから先のエリアはジョウロで頼むよ」

魔王「デリケートな子が多いのでな」

メイド「あ、分かりました」チョロォォォ

魔王「うんうん、皆満足そうだ」

メイド「…ところで魔王さま」

魔王「んー?」ザクザク

メイド「わたしが側近代理というのはどういうことですか…?」

魔王「アイツ、しばらく監き…自宅療養中だから」ザクザクザク

メイド「何かご病気を?」

魔王「うむ…頭を少々…しばらく落ち着くまで職務させたくなくてな…」

メイド「?」

魔王「気にせず続きを頼むよ」

メイド「はぁ」

メイド「魔王さまー、お客様ですよ」

魔王「む、今剪定が忙しくて手が離せない…客室で待たせておいてくれ」チョキチョキ

メイド「あまり待たせると怒られちゃいますよ?」

魔王「?客は誰なのだ?」

メイド「精霊女王様…魔王さまのお母様です」

魔王「…帰ってもらって」

メイド「無理ですよぉ…」

魔王「あの人苦手なんだよな…」

魔王「キリのいいところまでやってから行くから何とか待ってもらってくれ」

メイド「分かりました、なるべく早くお越しくださいね」パタパタ

魔王「できたらこのまま逃げ去りたいところだが…」

魔王「この子達の世話が遅れるからさっさと話して終わらせたほうがいいよな」ゴソゴソ

魔王「しまった!石灰がもうない!!こういうときに限って?!」

魔王「失礼する」ガチャ

メイド「あ、魔王さまやっと終わりましたかぁ…」

魔王「もう少し早く済ませるつもりだったんだが、石灰がなくてだな…」

精霊女王「客を待たせるなんてさすが魔王様ね」

魔王「申し訳ない…」

精霊女王「よくそんなので魔界の頂点が勤まるわね?」

魔王「返す言葉もない…」

魔王「メイド、食事の準備を頼めるか?」

メイド「畏まりました」ペコリ

バタン

精霊女王「側近ってあんな子だったかしら?」

魔王「彼女は代理、訳あって本人は自宅に監禁中で」

魔王「…それで本日は何の御用で?母上」

精霊女王「分かってるくせに」

魔王「…まぁ、分かってたからメイドを引かせたわけだけど」

精霊女王「さすがね」ニッコリ

魔王「…」

精霊女王「あなたが魔王になってからずっと寂しい思いしてたのよ?」スリスリ

精霊女王「こんな暖かくて柔らかくてスベスベの我が子~」スリスリ

魔王「ちょっと…力入れすぎ…」

精霊女王「だって~こうしないと逃げちゃいそうだもん~」

魔王「はぁ…」

精霊女王「相変わらず植物の世話してるの?」

魔王「さっきまでしてた…」

精霊女王「本当に昔から好きねぇ」

精霊女王「私はあなたの方が好きだけど~」ギュウ

魔王「!!ちょっと離して…」

精霊女王「え~やだ~」

メイド「失礼します…聞き忘れていたのですが精霊女王様は何かお嫌いな食べ…もの…」ガチャ ボトリ

精霊女王「あら?」

魔王「メイドが来たから離してって言ったのに…」

メイド「わたしがご一緒してよかったのでしょうか…?」

魔王「かまわないようだが…」チラッ

精霊女王「ほら、あーんして~」

メイド「えっと、言いたいことは何となく分かります…気にはしていません」

魔王「察してくれてありが…むぐ!!」

精霊女王「や~ん、食べ物ほおばった我が子かわいい~」

魔王「もごもご…無理矢理詰めてくるとは」

精霊女王「ところでここって女の子多いわよね?」

精霊女王「あなたがそうなるよう仕向けたの?側近もそうだったし」

魔王「いや、自然とそうなっただけ」

メイド「そういえば魔王さまになってから急に変わったらしいですね」

精霊女王「でもまぁこんなかわいい子が穢れないようみんな配慮するわよね~?当然よね~?」

メイド「…」ジー

魔王「言いたいことは分かる…」

魔王(こんな面倒な人より私のかわいい子達を早く世話してやりたい…)

精霊女王「それじゃあまた来るわね~」パタパタパタ

魔王「…」コクリ

精霊女王「またね~」ピューン

魔王「やっと去ったか…」

メイド「精霊女王様…お母様ってあんなヒトだったんですね」

魔王「あぁ…とんでもないドタコンだよ」

メイド「ドタコン…」

魔王「今度来た時は側近じゃなくてお前呼ぶから」

メイド「あんな姿知っているのわたしぐらいみたいですしね…」

魔王「出来れば来ないでくれるといいんだけどな…」

メイド「心配なのでしょうね」

魔王「まぁいきなり魔王になって家飛び出したしな」

魔王「気持ちは分からなくもないが過剰すぎる…」

メイド「あはは…」

魔王「あ、今から買い物行くからついて来てくれ」

メイド「荷物が多いのですか?かまいませんが魔王さまと側近代理のわたしが不在というのは…」

メイド(買い物はきっとガーデニング関係だと思うけど…)

魔王「それなら大丈夫、留守番頼むから」

勇者64「失礼する」ガチャ

勇者64「貴様が魔王か?」

幼女ドラゴン「きみだぁれ?」

勇者64「勇者だ」

幼女ドラゴン「じゃあゆうしゃ、いっしょにあそぼ?」クイクイ

勇者64「いやちょ…魔王じゃ…ないのか?」

幼女ドラゴン「あそぼーゆうしゃー」

勇者64「いや…魔王は…」



魔王「発根促進剤買ったし、あと何がいるんだったか…」

メイド「あの子に留守番させて大丈夫だったのですか?」

魔王「大丈夫だろう、勇者が来ても魔族とはいえ幼子には手は出せないはずだ」

魔王「遊び相手になってくれるだろう」

魔王「お?この柵ちょうどいい長さだし良いデザインだな、買おう」

メイド(それより人間界のホームセンターに来ていいのかな…こっちのほうが問題になりそうだけど…)

魔王「戻ったぞ」

幼女ドラゴン「おかえりーまおー」

魔王「大人しくしていたか?」

幼女ドラゴン「うん、ゆうしゃがいっぱいあそんでくれたー」

魔王「それはよかった…メイド」

メイド「はい…あなたはこっちでおやつ食べましょうね」

幼女ドラゴン「わーい」

勇者64「…」グッタリ

魔王「ご苦労だったな、勇者64号」

勇者64「あんな幼い子に留守番させるなんてありえん…」

魔王「絶対相手して待っていてくれると思っていたからな」

魔王「あれだけやらせて無償で帰らせるわけにもいかない」

魔王「うちで採れた物だがもらってやってくれ」スッ

勇者64「大量の野菜と果物…」ズッシリ

魔王「私が丹精込めて育てた最高品質のものだ、うまさは保証しよう」

勇者64「色々とツッコみたいところがあるが帰らせてもらう…戦う気が失せた…」トボトボ

側近「やっと戻ってこれたかと思えば…」

魔王「おーい、そっちのやつも抜いてくれよ」

ハーピー「はーい、うんしょうんしょ…」グイグイ

ハーピー「抜けたぁ!!」ズルズルズル

ゴースト「いっぱいくっついてるね!!」

魔王「おー、なかなかでっかく育ったの出てきたなぁ」

側近「全員職務放棄で芋掘りとな!?」

魔王「側近もやるか?」

ハーピー「にゅるにゅる出てきて面白いよー?」

側近「にゅるにゅる言わない!!何だか卑猥です!!」

側近「じゃなくてどうしてこうなった?!」

魔王「前にお前が言ってたじゃないか、兵士達を気遣えって」

魔王「だから気分転換として芋掘ってみんなで食べようと思ったんだが」

側近「そ、そうだったのですか…しかし芋って…」

魔王「ちょうど収穫時期だったしいいかなって思ってなー」

魔王「そろそろいいのではないか?」

側近「まだです、火を絶やさないでくださいよ?」

魔王「火力調整するの難しいんだがなぁ…」ボボボ…

セイレーン「お芋、枯れ葉で隠して火つけてるけどこれどういう意味?」

ハーピー「知ってる知ってる!!『焼き芋』作ってるんだよね?ね?」

魔王「そうだぞ、こうしてじっくりと燻して焼いていくのだ」パチパチ

側近「ほら!強すぎ!!焦げますよ!?」

魔王「おっと…側近が何故か本気に…」

側近「やるからには完璧な状態で仕上げたいでしょう?芋の様子はどうですか?」

ゴースト「えっと…いい感じに焦げ目がついてきてるよ!!」

側近「ならもう少しですね、引き続き監視をお願いしますね」

ゴースト「はーい!!いい匂いだなぁ」ガサガサ

サキュバス「枯れ葉の山に頭突っ込んでるのはすごくシュールな光景よね…」

魔王「そうだな、物をすり抜けられる彼女だけの特技だしな」パチパチ

側近「今度は弱くなってますよ!?無駄話せず集中してください!!」

ハーピー「側近は芋奉行?」

勇者128「…なんだこれ」

セイレーン「あ、勇者だ」

勇者128「何でこんな所で魔王共が焚き火してるんだ…」

魔王「こんなとふぉろまでごふろぅだっはな」モキュモキュ

魔王「わふぁふぃがあいへひへひゃろう」スッ ホコホコ

側近「魔王様、それ剣じゃなくて芋です」

勇者128「バカにしてやがって!!覚悟しろ!!」ダッ

魔王「んっ」ボコン!!

勇者128「いもっ!?」ズサーゴロゴロガッシャァァァン!!

ハーピー「さすが魔王さまーお芋で痛恨の一撃だしてるー」

魔王「もっほっほ」ヒョイ モキュモキュ

魔王「ちなみに殴った芋は私が今からいただくのでご安心を」

側近「何の安心かは分かりませんけどね」

魔王「せっかく頑張って育てた芋を粗末にはできんだろ!!」キリッ

勇者128「い…芋なんかでやられてたまるか…」ググ

側近「あれで終わっていたらさすがに末代までの恥にしかなりませんしね」

魔王「いつも思っているのだが何故勇者はどいつもこいつも私の命を狙っているのだ?」

勇者128「決まっているだろう!貴様が…あれ?」

勇者128「言われてみれば俺の知る限りじゃ魔物がどこか襲撃したとかはないし…」

魔王「私自身は植物の世話でそれどころではないからな」

勇者128「それが本当だったらどんなやる気のない魔王だよ!?」

魔王「ウソは言ってないし、やる気は確かにない」

側近「そこで堂々とやる気ないとか言わないでくださいよ…」

側近「でもこちら側も不確かな理由で人間を嫌っている傾向にあるのは確かですね」

勇者128「こっちだってそうさ、特に魔王はその元凶だと言われてるぐらいだしな」

サキュバス「じゃああれじゃない?生理的に受けつかない的な」

勇者128「子供の対立じゃないんだからそんな理由じゃないだろう…」

魔王「私が知っている植物の知識を隠しているからか?」

全員「それは絶対ない」

側近「結局、勇者128号は何もせず帰っていったわけですが…」

魔王「いいんじゃないか?詳しく調べてくるって言ってたし」

魔王「平和なのは良い事」シャアァァァ

側近「魔王とは思えない台詞ですね…」

魔王「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

側近「いきなり大声を上げて何事ですか?」

魔王「大イモムシが私のかわいい子達を食い荒らしているぅぅぅ?!」

側近「植物に虫はつきものでしょう」

魔王「ついていいわけないだろう!!食い荒らされるじゃないか!?」

側近「一応そんなでも魔物なんですから処理は…」

魔王「しねしねしねしねぇー!!」プシュゥゥゥ!!

側近「って、容赦なしですか!?」

魔王「天然のものなら仕方ないが、ここは私が管理している庭だから許せん!!」プシュップシュゥゥゥ!!

側近「そういう問題じゃないのですが…もういいです…」

側近「虫系の魔物がその内魔王様に絶滅させられるかもしれませんね…」

魔王「うむ、うまい」シャクシャク

メイド「さすが魔王さまですね」

側近「その野菜はもしかして…」

メイド「はい、魔王さまが大切に育てた物です」

側近「結局、自分で食べちゃうんですか」

魔王「ん?もちろんお前達の分もあるから心配しなくていいぞ」

側近「その心配はしてなかったんですがね…」

側近「そういえばこの後、客人が参りますのでお庭へ行かないでくださいね」

魔王「えー…」

側近「何がえーですか、ちゃんとお待ちになっててくださいね?」

メイド「お庭のお世話はわたしと妖精部隊におまかせください」

魔王「すまないが…頼んだぞ…あぁぁぁ…」プルプルガタガタ

側近「何かの禁断症状ですか」

魔王「できればずっと傍にいたいのに…」

側近「じゃなくて恋人によくあるやつでしたか…」

魔王「それで客人は来たのか?」プク-

側近「そんな頬を膨らましながらあからさまに拗ねないでください」

魔王「だって私の子達が心配で心配で…」

側近「植物のお世話はメイド達に任せたのでしょう?しっかりお世話してくれますよ」

魔王「むぅ…」

側近「もう客室で待っているはずですよ」

側近「ほら、参りましょう」

魔王「た、確か側近って変化魔法使えたよな?」

側近「替え玉なんて嫌ですよ」

魔王「うっ…」

側近「たまには真面目に外部の者達とも会話をなさってください」

側近「それでなくても交流をあまりもとうとしないのですから…」

魔王「魔王だし他の者に任せてて良くない?」

側近「ただでさえ魔王としての仕事すらしてないのにそんな事言いますか…」

側近「覚悟を決めてください」

側近「失礼します」ガチャ

魔王「待たせたな…」

巨人「おぉ、やっとお見えになってくれましたか魔王様」ガタ

魔王「今まで見たことはあったけど近くで見たらやっぱりデカッ!?」

側近「思っても口に出すのはやめてください」

巨人「ははは、現魔王様に変わられて初めてお会いになりますが面白い方だ」

側近「すみません、何しろ自由すぎる方でして」

巨人「いえいえ、ますます気に入りましたよ」

魔王「…ちょっと側近」

側近「何です?」

魔王「まさかとは思うんだが…」

魔王「これは…また例のアレか…?」

側近「えぇ、魔王様の困る顔が見たくて今回はお通ししてみました」ニッコリ

魔王「この話はなかったことに…」トボトボ

側近「せっかく来ていただいたのですから話ぐらいは聞いてあげましょうよ?」ガシッ

魔王「あの子達が待ってるんだーっ!!離せーっ!?」ジタバタ

巨人「ご趣味を伺ってもよろしいですか?」

魔王「ガ、ガーデニングを少々…」

巨人「立派なお庭でしたのでそうではないかと思っていたのですよ」

巨人「実に可愛らしい趣味ですね」

魔王「ど、どうも…」

巨人「ワタシはこう見えても読書が好きでしてね」

巨人「魔王様は何かお読みになられないのですか?」

魔王「一応…一通りには何でも読む…」

巨人「ほぉ!なら共通の話題ができそうだ!!あの素敵なお庭で語り合いたいものです」

魔王「は、はは…」

魔王(どうしてこんな目に合わなければいけないんだ…)

魔王(側近め…隣の部屋で監視するぐらいなら早めに終わらせてくれよ…)

バァン!!

巨人「何だ!?」

魔王「!!」

勇者256「うっ!?敵が二匹もいるなんて!?」

魔王「勇者256号か」

魔王(もしかしてこれで暴れてくれればうやむやにできる??)

魔王「よく来たな勇者256号!私が魔王だ!!」

勇者256「あなたが魔王か!すべてにケリをつけるために来た!!」

勇者256「覚悟!!」ダッ

巨人「魔王様、下がっていてください」スッ

巨人「ワタシが守れるというのをお見せしましょう」ブゥン

勇者256「巨人なんかに負ける自分ではない!!」シュッ

魔王(勇者256号!!ソイツを倒せ!!倒したらフルーツ詰め合わせをやるから!!)

巨人「遅いわ!!」ドゴォ!!

勇者256「ぎゃふぅ!?」ビターン!!

魔王「…」

巨人「ふん、大した事ないな…この程度で魔王様が相手してくれると思うなよ」

魔王(ばかーっ?!ここまで来れたくせにどれだけ弱いんだ!)

側近「お疲れ様です、感想をどうぞ」ニヤニヤ

魔王「もう誰とも会わないからな…」

側近「あらあら、彼はすごく気に入っていたみたいですけどね」

魔王「私が気に入らんのだ!!」

魔王「不愉快だ!庭へ行く!!」ズカズカ

側近「あ、そういえば魔王様」

魔王「もう会わんと言っただろう!?」

側近「いえ、その件ではなく」

側近「現在、メイドと妖精達が虫の集団と戦闘を行っているようです」

魔王「それを先に言えよぉ!?」

側近「言おうとしたら勘違いしたじゃないですか」

魔王「もういいから!現在の状況は!?」

側近「先ほどまでは膠着状態のようでしたが今はどうなっているか…」

魔王「今助けに行くぞ我が子達…と、メイド達よ!!」ダッ

側近「どうしてこういう時だけ元気になるのでしょうね…」

魔王「遅れてすまぬ!現在の状況は!?」

メイド「魔王さまぁ…皆弱音を吐きだしてて士気が下がっていたところですよ…」

妖精「ダッテ…コッチガタベラレソウデ コワインダモン…」「タスケテマオウサマー」「フェェ…ムシコワイヨォ…」

魔王「ふむ…限界ギリギリまでよく頑張ってくれた」

魔王「あとはまかせて…げげぇ!?」

メイド「あぁ、すみません…一部領域を完全に食い尽くされてしまいました…」

魔王「い、いや…ここを任せたのは私だ…お前達のせいでは…」ジワ…

妖精「マオウサマ ナカナイデー」

魔王「わ、私のかわいい子達が…ぐすん」

メイド「相手の質はそうでもないのですがなにせ数が圧倒的に多いので」

メイド「無理に魔法とかで片付けると周りに被害が出ますし…どうにもならなかったのです…」

魔王「物理ではどうにかなりそうな相手ではないしな…魔法か…援軍を呼ぼう」

魔王「私より魔法のエキスパートが知り合いにいる、そいつに頼む」

メイド(魔王さまって交流あまりしないって聞いてたけどそんな知り合いいたんだ…)

魔王「少し交渉に手間取ったがすぐ来てくれるそうだ」

メイド「その方ってどういう…」

魔法使い「呼んだ?」シュタッ

メイド「早過ぎないですか!?」

妖精「ワー!? ニンゲンダァ!!」

魔王「事は一刻を争う、周囲の虫共を殲滅してもらえないだろうか?」

魔王「もちろん植物達を無傷でな」

魔法使い「…」コックリコックリ

魔法使い「Zzz」

魔王「また寝るんじゃない!!頼むよ?!」ガクガクガク

魔法使い「…はっ」

メイド(『また』?もしかして交渉に手間取っていたのって寝てたから?)

魔法使い「しょうがないな」コォォォ…

魔法使い「我が眠りを妨げるのはお前らかぁ!!」ヒュンヒュンヒュン…ズドドドドドドド!!!!

メイド「うわぁ!?絶対庭ごと消し飛ぶよこれぇ!!」

メイド「やりすぎですよぉぉぉぉぉ!!」

プスプスプス…

メイド「綺麗な庭が…あれ?」

魔法使い「終わっ…た……Zzz」フラフラ

魔王「助かったよ、ありがとう」

メイド「あれだけ爆発してなんで無傷なの…」

妖精「タッタママ ネテルヨ?」

魔王「『居眠りの狭間で見る悪夢』の通り名は伊達じゃないな」

メイド「変な通り名ですね…それよりこの人は何者なのですか?」

魔王「昔、勇者にナンバーがつく以前にパーティで勇者達がやって来てた時代あったんだが」

魔王「その頃に出会ったあるパーティの一人だ」

魔王「普段居眠りばかりでやる気なさそうだが本気を出すと悪夢が見れるほど強い」

メイド「確かに夢に見そうなほどの爆撃の雨でしたが…」

魔王「普通に接してるといいヤツなんだ、ちょっと送ってくる」

メイド(魔王なのに人間の友達がいるのはいいのかな…)

側近「はぁ、それでしばらく何を言っても庭から動こうとしなかったのですか」

メイド「さすがに被害出ちゃいましたから落ち込んじゃって…」

側近「まったく、困ったちゃんですね」

側近「メイドさん、少しお使いを頼めますか?」

メイド「かまいませんが何を買ってくれば?」

側近「今から言うものをできるだけそろえてください」


――――


魔王「よし、水やり終わり」チョロロロ

魔王「…」チラッ

魔王「この荒れてしまったスペースに何を植えようかな…はぁ」

魔王「できればまた同じような子を育ててあげたいところだけど」

魔王「また虫共に襲われるとも限らないしなぁ…」

魔王「どうしよう…でも植えちゃおうか」ザッザッ

側近「魔王様、いつまでもそこにいるのはおやめください」ガシッ

魔王「なっ、何をする!?また元通りになるまで離れないと決めたのだ!!」ズルズル

側近「そうなる頃には今度は魔王様が壊れちゃいますから」

側近「飲まず食わず寝ずでお世話をするのはおやめになってください」

魔王「離せーっ?!またあの子達の笑顔を見るまではーっ!?」

側近「メイドさん達に任せてお休みください」グイグイ

側近「…」チラッ

………

メイド「行ったようだね」

メイド「それでは妖精のみんな!!頑張っちゃうよ!!」

妖精達「ハーイ!!」「マオウサマノタメダー」「モウナカセナイカラネ!!」

メイド「気に入ってくれるよう考えながらやっていこう!!」

メイド「まずはそのスペースだけど…」

魔王「あぁ…だめなのぉ…えぁぁぁぁぁ…」ブルブルブル

側近「どこの薬物中毒者ですか…」ガチャ

魔王「だって…皆がほら、そこで泣いてるんだもん…」

側近「なに本格的に幻覚まで見ているのですか」

側近「ほら、お食事作ってきましたのでちゃんとお食べになってください」カチャン

魔王「これ、側近が?」

側近「一通り料理はこなせますので」

魔王「側近はホント有能すぎるよな…」モキュモキュ

側近「あなたが無能なだけです」

魔王「私は何のとりえもないからな…」

魔王「ガーデニングするしか能がない魔王だ」

側近「そんな弱気な魔王様初めて見ましたよ」

魔王「元々そこまで気は強くないさ」

側近「でも、好きな事をしている時の魔王様は嫌いじゃありませんよ」

魔王「側近…」

側近「だからと言ってそれを理由に仕事を放棄するのは許しませんが」

魔王「一瞬でも感動しかけた私がバカだった…」

側近「まぁ後でお庭へ行ってくるといいです」

側近「きっと素敵なものが見られると思いますよ」

魔王「え?」

側近「それより早く食べてしまってください、片づけが面倒になります」

魔王「どうせメイドにまかせるつもりだろう」モキュモキュ

側近「彼女は別の仕事していますので自分の仕事になります」

魔王「珍しいな」

側近「まったく、誰のせいだと思っているのですかね…」

魔王「何だ?」

側近「何でもないですよ」

魔王「ごちそうさま、庭の方へ行ってくる」ガタ テクテク

側近「えぇ、いってらっしゃい」

側近「あ、そういえばそろそろ勇者512号が来る頃でしたね」

側近「最近来る頻度が多いわね…」

魔王「ん?」

妖精「イヤァ ツカレタネー」「タノシカッタワァ」パタパタ

魔王「庭から出てきたから世話をしてくれていたのか?」

魔王「入れ違いになったから声かけられなかったがまぁいいか」

魔王「さて、様子は……え?」

メイド「あ、魔王さま」

メイド「今から呼びに行こうと思っていたのですよ」

魔王「こ、これは…?」

メイド「はい、自分達で荒らされちゃった花壇をもっと可愛くアレンジしてみました」

メイド「あと害虫撃退用の装置を配置しましたので今度は荒らされる事ないですよ」

メイド「わたし達もこのお庭は大好きですから守りたかったのですが…いけない事しましたか?」

魔王「いや…装置はありがたいし、アレンジも私好みでいいと思う」

メイド「みんなで考えて魔王さまが気に入ってくれるよう頑張りましたので」ニッコリ

魔王「そうか…これの発案者はお前なのか?」

メイド「いえ、側近さんですよ」

魔王「そそそそそ側近!!」ドタドタドタ

側近「何ですか騒々しいですね」

魔王「おまっお前があの庭に手をくわっ…加えてくれたんだってな!!」

側近「そうですよ、落ち着いてください」

魔王「私はお前の事を分かってなかったのかもしれない!!」

側近「今でも分かってないでしょう」

側近「私はただ魔王様の仕事に支障が出ないよう対策をとっただけです」

魔王「それでもいいんだ!ありがとう!!」ガシッ

側近「うぇ?!えらい素直ですね…」

魔王「だってだってあそこまでしてくれたらな!!」

側近「だからそれは…」

魔王「これからはもうちょっと仕事にも精を出すからな?!」

側近「えぇ…まぁお願いしますね…」

魔王「じゃあ庭戻るな!!」ドタドタドタ

側近「そこで仕事に向かうわけじゃないのですか…」

側近「でもいつも以上に無邪気で可愛いかったですね、魔王様」ニコ

勇者512「やぁ、魔王」

魔王「お?勇者512号ではないか」

魔王「悪いが今ちょっと戦うのは待ってくれないか?」

勇者512「かまわないよ…それにしても素敵な庭だね」

魔王「そうだろう?普段から手入れをしているが今はもっと良くなったところなんだ」

勇者512「ほぉ…この庭はまるで君のようだね」ポン

勇者512「すごく輝いている」

魔王「そうか?そう言ってもらえると嬉しい」

勇者512「でも君はもっと輝く事ができる…まるで宝石のようにね」キラン

魔王「?」

………

メイド「何ですか、あの気持ち悪い勇者さんは…」

側近「魔王様が別の目的で見られるのは初めてかもしれませんね」

側近「相手が勇者じゃなければいつも通りですが…」

勇者512「どうだろう?僕とここで愛を語り合わないかい?」

魔王「そういうのは遠慮する」

側近「あら、あっさり」

勇者512「どうしてだい!?こんなにも愛しているのに!!」

魔王「どうして敵対する私にそんな感情持つんだ?」

勇者512「決まっている、敵対しているもの同士の禁断の愛…これほど素敵なものはない!!」

メイド「あの人、ただのスケコマシですね」

側近「そんなはっきり言わなくてもいいのではないですか…」

勇者512「さぁ!僕と一緒に遠い土地で愛し合おうよ!!」

魔王「庭の手入れができないから断る」

勇者512「なぜだぁぁぁ…」ガクリ

側近「結局、断る理由はそれなんですね」

魔王「戦う気がないなら帰ってくれ」

勇者512「くっ…やはりこの手で愛する者を斬らないといけないのか!?」シャキ

メイド「もう気持ち悪くて見ていられないです、えいっ」ザクッ

勇者512「あれー?」ブシュー

魔王「…」ザッザッ

メイド「よいしょ…っと」ザックザック

魔王「ふむ、こんなものだろう」

メイド「あとは…これを埋めてっと…」ドサッ モリモリ

魔王「少し休憩しよう」

メイド「ふーやっと片付きましたぁ」

魔王「…メイド、変なモノを花壇に埋めないでくれるか?」

メイド「え?でも肥料になるかと思いましたが…」

魔王「確かにその内なるんだろうが…」

手512「」ニョーン

メイド「ほら、こう一部生やしておけばオブジェにもなりますし」

魔王「やめて!?植物に囲まれて手が生えてたら怖い!!」

側近「それ以前の問題だと思いますけどね」

魔王「もうちょっと右だ、うん、そこそこ」

セイレーン「パチンっていっちゃうよー?」パチンパチン

ハーピー「わわ…もうちょっとゆっくり落としてー」パシッパシッ

セイレーン「えへへーごめーん」

魔王「いっぱいあるから頑張ってくれよー」

側近「…今度は皆で何してらっしゃるので?」

魔王「おぉ、今実った果物の収穫をしているのだ」

魔王「一人でやってると皆が見物しておったので手伝ってもらってるところ」

側近「皆も大概魔王様には甘いですよね…」

サキュバス「魔王さま面白い人だしアタシは好きよー?」テクテク

側近「普段から動くの嫌いなあなたまでやってるの?」

サキュバス「だって、取ったやつ皆で食べられるもの」

魔王「ここではおやつは果実ぐらいだしな」

魔王「他は取り寄せないといけないから時間がかかる」

側近「そういう問題ではないような気もしますがね…」

魔王「ふむ…」グツグツ ペロリ

魔王「もうちょっと果実が必要だな」ポイポイ…コネコネ

側近「魔王様!?そこを離れてください!!」

魔王「え?何でそんな慌ててるのだ?」

側近「料理なら他の者にやらせばいいですから!!」

魔王「何故かは知らないが、ほら」グイ

側近「んむ…あ、おいしい…」

魔王「でも、もうちょっととろみがほしいんだよな」コネコネ

側近「魔王様って料理できたのですか…?」

魔王「まったくする機会ないけどできるぞ」

魔王「魔王になる前からこういうおやつ系料理はしてたし」

側近「意外だ…あなたの事だから絶望料理でも作る気かとばかり…」

ゴースト「時々、魔王さま特製のおやつ食べさせてもらってたよー」

側近「いつの間にそんな事まで…」

魔王「自分用に作ってたら多くなりすぎて配ったりしてたんだわ」

側近「意外な一面を知った気がします…」

魔王「できたぞ!果実のスープ風だ!!」ゴトン

ハーピー「おいしそう!!」

セイレーン「お粥みたい!!」

魔王「粥よりもっと固形に近い感じに仕上げてみたぞ」

ゴースト「何これ不思議食感!!」

側近「…」

メイド「何だか納得できてないって顔してますが?」

側近「あの無能だったヒトがこんなの作れるのに驚いているんです」

メイド「ヒトは見かけによらない、ですね…あーおいしいです」ズズー

勇者1024「いい匂いがするからこっそり来てみれば……どういう状況?」

ハーピー「あ!勇者だ!!」

勇者1024「確かに私は勇者だが…」

勇者1024「どう見てもおとぎの国の可愛い動物みたいな生き物ばかりじゃない」

メイド「へぇ、人間ってこちらがそういう風に見えるんだ?」

勇者1024「いやいや!ここは悪の巣窟なのよ?!落ち着け私!!」ブンブン

魔王「これはまた面白い勇者が来たものだな」

勇者1024「ど、どれが魔王なの!?」

魔王「私だが?」

勇者1024「ウソ!?見た目が私と何も変わらない女の子じゃない!!」

側近「そんなでも元精霊族で魔王ですけど、戦ってみたらどうです?」

魔王「できればお茶会中だし争いは避けたいところだが…」

勇者1024「それでも魔王なの!?戦いなさいよ!!」シャキ

魔王「まぁまぁ、ソレ片付けて座るといい」

セイレーン「はい、没収ー!!」ヒョイ バヒューン

勇者1024「私の剣が!?どうしてこうなった…」ストン

ゴースト「どうぞー」スイー

勇者1024「ひっ!?…これは?」

ゴースト「おいしいよ?」

勇者1024「…」クンクン…ゴクリ

勇者1024「!!」

魔王「口に合わなかったか?」

勇者1024「…これ、何を使ってるの?」

魔王「ここで育てた果実を使ったものだが?」

勇者1024「こんなおいしいもの人間側にないわ…悔しいけど」

魔王「気に入ったなら作り方とか教えてもいいが?」

勇者1024「教えてほしい」

魔王「よしよし、まずはだな…」

側近「よく分からない展開になりましたね」

メイド「もしかして意外と魔王さまって女子力高いかもしれませんね」

側近「何ですかそれは?」

メイド「いえいえなんでもー」

メイド(もうちょっと手を加えたらもっと魔王さまの人気上がるかもなぁ)

勇者1024「とろみつくまで混ぜるのかぁ…」

魔王「そうだ、他の調味料はなるべく使わず果物本来の味を使ってだな…」

魔王「うーん」

側近「手が止まっていますよ?早く書き進めてください」

魔王「少しは休憩させてくれよ…これでも頑張って仕事してるんだぞ」

側近「そうですね、『 珍 し く 』仕事していますね」

魔王「働き詰めは体に悪いんだぞ…それに庭の様子が気になる…」ソワソワ

側近「一刻程度で何も変わる事はありません、続けてください」

魔王「うぅ…」カリカリ

メイド「失礼します、魔王さまお客様がお見えです」ガチャ

魔王「追い出せ!伴侶候補は募集しとらん!!」

メイド「違いますよ…以前お越しになられた勇者128号さんですよ」

メイド「今回はお話に参られたようですよ」

魔王「あ、そうなの?じゃあ通してくれ」

メイド「畏まりました」パタン

側近「伴侶候補募集させたのは私ですけどね」

魔王「道理で来る者が尽きないと思えば 貴 様 の せ い か ?!」

勇者128「入っていきなり自分の側近の首絞めてる魔王ってどんな場面だよ…」

魔王「おぉ、よく来たな勇者128号」

勇者128「ここへ来るまで色々ついてきてしまったがいいのか?」

ハーピー「芋勇者!!」

勇者128「芋勇者言うな!!もう思い出したくもないわ!?」

ゴースト「トラウマになったの?」

魔王「別に入るなとも言ってないしかまわんよ、庭以外は」

側近「もう一人外部の人間が混じっていますが?」

勇者32「やぁ、久しぶりだね魔王」

魔王「勇者32号ではないか、お前はどうしてここにいるんだ?」

勇者32「訳あって芋勇者についてきたんだよ」

芋勇者「お前まで芋勇者って言うんじゃない?!」

魔王「それで話というのは?」

芋勇者「あぁ、以前話してた人間と魔族の関係について調べてきた結果を聞かせようとな」

側近「やはり双方の勝手な決めつけでしたか」

芋勇者「間違いなく人間側は過去の魔族の行いを自分達のせいだと思っていないんだ」

側近「こちら側だって力のない下等な存在としか思っておりませんでした」

芋勇者「元を辿ればどちらにも対立した原因はあるのにな…」

側近「あなたがここへ再びやってきたのには他に目的があるのでしょう?」

芋勇者「よく分かったな、魔族側を危険な存在じゃないことを証明しようと思ってな」

側近「そこで彼女ですか」チラッ

勇者32「ねぇ、これホントにここで作られた果物なの?すごくおいしいんだけど」モグモグ

魔王「そうだ、私が丹精込めて育ててきたものだ」

勇者32「やっぱり変な魔王だね」

魔王「なんなら栽培している所を見てみるか?いや、見てくれ!是非!!」キラキラ

勇者32「うわ、なんか知らないけどすごく嬉しそう…」

芋勇者「あれでも一応王族なんだよ、彼女」

側近「しばらく滞在させてこちらの様子を見てもらうわけですね」

側近「分かりました、許可しましょう」

魔王「何?しばらくここで過ごすだって?」

勇者32「うん、魔族の様子を観察するのが仕事でね」

魔王「別にかまわないが人間界より少々不便だぞ」

勇者32「気にはしないよ、元々田舎とかのほうが好きだったし」

勇者32「もうちょっと魔王の事知りたかったし」

魔王「そうか…あっ!これ見てくれ!!もうすぐ開花しそうなんだ!!」

勇者32「ホントに植物好きなんだね」

メイド「元々精霊族らしいのでそういう環境で生まれ育ったのもあるのでしょうね」

勇者32「ふぅん」

魔王「これだよ!見て見て!!」

勇者32「すごいテンション…」

メイド「本当にお好きなんですよ」

芋勇者「問題なさそうだし、俺帰るわ」

側近「はい、こちらの事はお任せください」

魔王「ふんふんふーん♪」シャァァァ

勇者32「ホント変わってる」

魔王「私がか?」

勇者32「植物が好きで半分引きこもりな魔王なんて聞いた事ないよ」

魔王「勇者32号も分かってると思うが私は面倒事が嫌いなんだ」

勇者32「もう勇者やってないからその呼び方やめてよぉ」

魔王「じゃあ王族らしいから『姫』とか?」

勇者32「それはやめて!トラウマなんだ…」

魔王「呼ばれるのがトラウマとかどれだけだよ」

勇者32「と、とりあえず『剣士』でいいから」

魔王「分かった」

魔王「それよりこれを見てくれ、こいつをどう思う?」

剣士「すごく…満開です…」

剣士「はっ、変な事言っちゃった…」

魔王「はっはっは、面白いヤツだ」

側近「で、何であなたが仕事をなさっているのでしょうか?」

剣士「ここでお世話になってるからできる事はやろうかなと」カリカリカリ

側近「そもそもソレは魔王様の仕事だったのですが」

剣士「あはは、全然やってないんだって本人から聞いたよ」

剣士「ホントに植物育てる以外何もやる気ないんだね」

側近「だから困っているのですよ…」

剣士「ここにいる間はボクに回してくれていいよ」

剣士「少しでもこちらの事が分かるならちゃんと意味あるしね」

側近「ふぅ…分かりました」

側近「じゃあ魔王様には交流のほうを頑張ってもらいましょうか」

剣士「交流?他の魔族と仲良くするため?」

側近「それもありますけど他にも…」ニヤリ

……

魔王「っくしゅ!」

魔王「むぅ、突然鼻がむずむずしたぞ?」

魔王「む、栄養剤とか色々なくなっているな」

魔王「買いに行くか…おーい、メイドー」

側近「なんでしょうか?」

魔王「いや…お前は呼んでいない…」

側近「何の御用事でメイドを?」

魔王「そ、それはだな…」ダラダラ

剣士「側近ー!ちょっとこれどうなってるのさぁ?」ペラペラ

側近「はい、今行きますよ…くれぐれも変な行動とらないでくださいよ?」タタタ…

魔王「た、助かった…」

メイド「お呼びですか魔王さま?」

魔王「あぁ、すまんが急いで買い物に出かける準備を頼む」

メイド「いいですけどまた側近さんに怒られますよ?」

魔王「いいのいいの、さっさと行こう」

剣士「しばらく相手してるからゆっくり出かけてきなよー」

魔王「ありがとう、剣士」

魔王(本当にいいヤツだな)

勇者2048「なんか魔王城と思えない雰囲気な所来たが……」

ハーピー「あー、勇者だー」

セイレーン「ねーねー、人間の話聞かせてよ」

勇者2048「いや…何でこんなに懐かれてんの魔物に…」

ゴースト「そーれみんなで囲め!沢山話を聞くんだー!!」ゾロゾロゾロ

勇者2048「うわぁぁぁぁぁ!?」


………


剣士「庭前に勇者来てるみたいだけど?」

側近「いつもの事ですよ」

剣士「いつもあんな感じで戦わず相手してたんだね」

剣士「あの魔族の子達全然禍々しい容姿でもないし」

側近「ここの子達は戦うより遊ぶ方が好きな子ばかりですからね」

剣士「ここどこだったっけ…」

側近「あんなでも魔王様は支持されているのですよ」

剣士「え?」

側近「今、こちらが平和なのはあのヒトのおかげです」

側近「今はガーデニングマニアでも昔はやる事は必要以上にやってました」

側近「血の気の多い連中のために闘技場を建てたりしました」

剣士「それで人間襲わないように?」

側近「えぇ、『そんなに無駄に戦いたいならいい場所用意するからそこで好きに暴れろ』ですって」

側近「『面倒な事嫌いだから人間はもう襲うな』と、結局自分の都合でしたけどね」

剣士「あはは、面白い事言うなぁ」

側近「それだけじゃないですよ」

側近「さっきも言いましたがここは遊ぶのが好きな子が多いのですが」

側近「元はあのヒトがそういうヒト達を募集したせいなんですよ」

側近「普通の兵士のような方達はすべて闘技場に出払っていましたし」

側近「その役割をそういうヒト達に与えるとどうなるか分かりますか?」

剣士「そりゃただのお遊技場になっちゃうね、ここが」

剣士「なるほど、ここのイメージを変えてしまいたかったんだね……すごく興味深い魔王だなぁ」

魔王「これとかどうだ?」

メイド「いいですね、かわいらしいですよ」

魔王「じゃあこのエプロン買いなー」パサ

メイド「えっと、わたしがこんな事言うと怒られそうですが…」

メイド「園芸関係ではなく普通の服も見てみませんか?」

メイド「魔王さまっていつも同じような服ばかりですし…」

魔王「服か…いや、たまにはオシャレとかしてみたかったんだがな」

メイド「自分の事よりかわいい植物達が気になっていたんですよね」ニコ

魔王「うん、それだけは譲れなくてだな…」

メイド「この際してみてはいかがでしょうか?」

メイド「側近さんだって喜びますよ」

魔王「いや、アイツは調子に乗せてはいけない…」

メイド「あれでも心配してくれているんですよ」

魔王「分かってるよ」

魔王「そうだな…よし、ちょっと服見ていくか」

メイド「みんなビックリさせてあげましょう!」

側近「魔王様起きてますか?もうすぐお食事できますよ」

魔王『あぁ、すぐ行く』ゴソゴソ

魔王『おっと、まずは植木鉢に水を与えておかないと』シャァァァ

側近「珍しく起きていた…」

魔王「早く起きていたら悪いか?」ガチャ

側近「!?」

側近「その服装は…」

魔王「ん、人間用のだがメイドと一緒に買ってきたやつだ」

側近「どうしていきなり…」

魔王「気が向いたんだ」

側近「そ、そうですか…」

魔王「ほら、早くしないと飯が冷めるぞ」

側近「え、えぇ…」

側近(唐突な変化にいつものノリで話せなかった…)

剣士「…」キョロキョロ

剣士「ここかな」ギィィィ

剣士「さて…始めるか」ポォ

剣士「ふんふん…」コツコツコツ

剣士「反応ないなぁ…まぁあっても困るけど」

メイド「何がです?」ヒョコ

剣士「うわぁぁぁぁ!?」ドンッ

メイド「ここは倉庫ですけど何をなされていたので?」

剣士「あーびっくりした…ちょっと確認をね」

メイド「確認?」

剣士「ここに危険な物がないか識別魔法で検査してたんだ」ポォ

メイド「目の前の壷が青く光っていますね」

剣士「青の場合は危険なし、赤は危険ありだよ」

剣士「こう言うのも悪いけどやっぱり魔王城だし念のためね?」

メイド「その気持ちは分かりますし、ご自由にどうぞです」

メイド「でも魔王さまの植物には触れないほうがいいですよ」

剣士「あはは、そんなことしてたら魔王自身が真っ赤になるしねぇ」

魔王「うーん」

側近「どうしました?お庭で悩んでいるなんて珍しい」

魔王「どこか他にもっと広いスペースないか?」

側近「はい?何をなさるおつもりで?」

魔王「もっと我が子達を増やそうと思って」

側近「ついにここだけでは飽き足らず拡張までする気ですか!?」

魔王「だってほら、育てるにも種類とかに限度があるし」

魔王「広げればもっと数多くの植物達に出会えるわけだ!!」

側近「ですがそういうスペースがありませんので無理ですね」

魔王「探せよ!?裏の森をひっくり返してでも作れ!!」

剣士「物凄い無茶言ってるね…」

メイド「いつもの事ですよ、植物が絡むと大体あんな感じで暴走するんです」

剣士「でも本当にスペースないの?」

メイド「お城の周りとか大分開いていますが不思議な事に何を植えても育たないらしいです」

剣士「すでにやっていたんだ…他と地面同じっぽいのに何でだろうね?」

魔王「もっと植物達に囲まれたい!!」

魔王「いきなり地面を調べてどうした?」

剣士「聞いたんだけど表で植物いくら植えても育たないらしいね」

魔王「あぁ、当初はかなりの量の種と苗を植えまくったんだが…」

魔王「ことごとく土に消えるか枯れるばかりでどうにもならなかったんだ」

剣士「魔王城なだけに生あるものは育たないのかな?」

魔王「だがそれだと庭で普通に育つ事に矛盾が生じると思うが」

剣士「そうだよねぇ…」

魔王「さっき森を削ってでもスペース作れといったがそんな事できんのだよな…」

剣士「自然の植物も大事だから?」

魔王「もちろんだ、植物だって我々と同じく生きているのだ」

魔王「無駄な伐採は行うつもりはない」

剣士「でもそこに自分の好きなのが植えられると考えたらどう?」ニヤニヤ

魔王「そ、それは…でも森も生きているし…うーん…」

剣士「ホント面白い魔王だよ」ニコ

勇者4096「これが魔王城…」ゴクリ

剣士「あ」

勇者4096「はっ!?魔族か!!」シャキ

剣士「残念、人間だよ」

勇者4096「何で人間が…あぁ、君も勇者か」

剣士「元・勇者32号」

勇者4096「元?まぁいいや、共に魔王を倒そうじゃないか」

剣士「悪いけどボクは一緒に戦えない」

勇者4096「どうしてだ?ここにいるということはそういう事じゃないのか?」

剣士「ボクは今ここに住んでいるの」

勇者4096「まさか捕らわれの身に!?」

剣士「そうじゃなくてね…」

剣士(これは面倒くさいことになったなぁ…)

剣士「そうだ!これを」スッ

勇者4096「?花か、今はこんなものどうでもいい」ポイッ

剣士「あっ、なんてことするの!大事な花が!?」

魔王「花に何があった!?」ガチャ

剣士(予想通り凄まじい反応だね)

勇者4096「何だ!?」

剣士「この人が花捨てたよー」

魔王「おい…本気か…?」ピューン スタッ

勇者4096「あの距離からひとっ飛びだと…何者なんだ…?」

剣士「魔王」

勇者4096「え?」

勇者4096「どう見てもどこかのお嬢様にしか見えないのだが…」

剣士「うーん、前より随分綺麗になっちゃったから確かにそうしか見えなくなってるね」

魔王「貴様は万死に値する!!消し飛べ、自然の敵めがぁ!!」バシューン!

勇者4096「は―――」ジュボッ

消し炭4096「」サラァ…

魔王「かわいそうに…傷がないからせめて花瓶に活けてあげよう」トボトボ

剣士「ボクも手伝うよ」

魔王「すまんな…くそ、怒りが収まらないぞ…」ギリギリ

剣士(ちょっとひどい事しちゃったかな)

メイド「ふんふ~ん♪」トントントン

剣士「ねぇメイドさん」

メイド「はい?なんでしょうか」

剣士「食事作ってるのキミしかいないの?」

メイド「他にも何人か手伝ってくれますけど今日は誰も捕まらなかったんですよね」

剣士「他の子達も働いてるはずなのにそれでいいの…?」

メイド「遊びたい盛りだから仕方ありませんよ」

メイド「それにわたしだけでも十分作れますから」

剣士「結構数いるから量も多くて大変のはずなのに凄すぎる…」

メイド「あら?こんな所に何故植物が…」

剣士「床から生えてるのかな…?」

メイド「ここは地下の貯蔵庫になっているのですが…」

剣士「ちょっと開けてもいいかな?」

メイド「あ、どうぞ」

剣士「ん…堅いな…んぐぐぐぐ…」ググ

 バァン!ニュルゥゥゥゥゥン!!

メイド「何これぇ!?」

剣士「げげっ!?よく分からないけど魔王呼んできてよ!!」

メイド「は、はい!!」ダッ

剣士「入り口全部植物で埋め尽くされてるじゃない…どうしてこうなった…」

魔王「どうしたー?」

剣士「どうしたじゃないよ、これ見て」

魔王「げぇっ!?どうしてあれがこうなった…」

魔王「…ごほん、何が原因か知らないが取り除くか」

剣士「もしかして何か知ってる?」

魔王「知らん」プイッ

メイド「でも確かどうしてあれがこうなったとか言いましたよね?」

魔王「気のせいじゃないか?はははぁ…」

側近「何の騒ぎで……魔王様?これはどういう事ですか?」

魔王「わ、私じゃない…地下深くに種を保管なんてしていない…」

側近「そういう事ですか」

剣士「自ら言ってるじゃない」

魔王「うっそ!?」

側近「とりあえずこれをどうにかしないと厨房に支障をきたしますので早く片付けましょう」

魔王「折角育ったのにもったいな…分かったよ、そう睨むな側近」

魔王「ちょっと前に森の方で変わった種を見つけたのだがあまりの数に保管に困ってな」

魔王「暗所で温度もちょうどいいここでならいいかと隠して置いたのだが」

魔王「まさかこんな環境でも育つとは思わなかった…」

剣士「魔王でも知らない植物だったの?」

魔王「あぁ、突然変異のものかもしれん」

側近「まったく、自ら迷惑を持ってくるとは呆れます」

魔王「知らなかったのだから仕方ないだろう!?」

魔王「しかし凄まじい成長速度だな」メラメラ

剣士「斬ってもすぐ成長してくるし」ザシュ ニュニュニュ

剣士「もう少し気づくの遅れてたら大惨事になってただろうね…」

魔王「うむぅ…仕方ない、除草剤散布するか」

魔王「側近、周りの食料など保護できるようなシートを持ってきてくれないか」

側近「やったのは自分の癖に命令するのですか?」

魔王「お、お願いだ…シートを持ってきてく…ださい…」

剣士「今回ばかりはフォローしてあげられないよ」

魔王「ぐすん…」

魔王「はぁ~やっとすべて排除したか…」ドサッ

メイド「お疲れ様です、飲み物をどうぞ」

魔王「ありがとう」ゴキュゴキュ

剣士「あー生き返るー」

側近「さて、魔王様…客人がお待ちなのでご用意ください」ニヤニヤ

魔王「ぶーっ!!」

剣士「きたなっ!?」

魔王「げほっ!ごほっ!今なんて!?」

側近「今回はお一人がお相手ではないので頑張ってくださいね?」

魔王「ま、まさか…また…」

側近「そのまさかです、今回は拒否権は与えませんので」グイ

魔王「い、いやだぁぁぁぁ…まだ我が子達の手入れがぁぁぁ…」ズルズル

剣士「お客さんに会うのがそんなに嫌なのかな?」

メイド「まぁ…魔王さまのアレですし嫌がるのが普通ですよ…」

剣士「?」

剣士「また表に出てきちゃった」

剣士「裏側以外は相変わらず草一本もないなぁ」

剣士「ん?」

少女「…」キョロキョロ

剣士「ねぇキミ、こんなところでどうしたの?」

少女「!?あぁびっくりしたぁ…」ドテッ

少女「ここが魔王城だよね?」

剣士「そうだよ」

少女「あたし、魔王倒せって言われてきたんだよ」

剣士「え?じゃあ勇者なの?」

少女「うんー、お姉さんはー?」

剣士「用事があってここにいるんだ」

少女「そっか、あとね王様にもう一つ言われたんだけど意味が分からないんだよね」

剣士「ん?何て言われたのかな?」

少女「お前が魔王と戦わなくてもそこに行った時点で魔王はおしまいだって」

剣士「え…?ちょ、ちょっと詳しくそれ聞かせて!?」

サハギン「いやぁ、さすが魔王はん」

サハギン「ワイの想像通りの方やったわぁ」

魔王「そ、それはよかったな…はは…」

サハギン「他にも候補おるらしいが、絶対ワイを選んでぇな?」

魔王「善処するよ…」

サハギン「ほなまた~」ガチャ バタン

魔王「はぁ…やっと終わった…あの子達の世話でも…」

剣士「魔王!!」バァン

魔王「うひぇ!?いきなりなんだ!?」

剣士「大変な事になったよ!?」

魔王「そんなに慌てて私の子達に何かあったのか?」

剣士「植物どころの騒ぎじゃないよ!?」

魔王「なんだと!?それ以上に気になるほどの騒ぎがあるわけないだろ!!」

剣士「えーっと…いや、ごめん…」

剣士「でも、すごく大変な事態になったんだって!」

魔王「そこまで慌てた様子だとよっぽどの事でもあったのか?」

少女「入っていいのかな?」キィィィ

魔王「む?勇者8192号か…あれ?どこかで見た覚えが…」

少女「この人が魔王?あ、この前にホームセンターで会った人だ」

魔王「あぁ、おすすめ肥料を教えてくれた少女か」

魔王「まさか勇者になっていようとはな」

少女「あなたがホントに悪い人なの?」

魔王「正直、私は何もやっておらん」

少女「そうだよねー優しいヒトだったしー」

剣士「ちょっと待って、今のんびり会話してる場合じゃないんだよ」

剣士「この子からすごく大事な事聞いちゃったんだ」

魔王「だからそれが何なのだ?」

剣士「近い内、ここに人間の軍が襲撃してくるみたいなの」

剣士「それもすごい勢力引き連れて」

魔王「なに?勇者を送っているだけじゃ飽き足らなくなったのか?」

剣士「それもその軍を送り込んだのが……ボクの国なんだ」

魔王「お前が来ているのに何故そんな事をする必要がある?」

剣士「ここへ来たのはボクの個人的な意思でだからここにいるって知らないと思う」

剣士「正直、どうしてこのタイミングで送り込んだかは…」

魔王「本当に軍はここへ来るのか?」

剣士「分からないけどこの子はボクと同じ国から来てるから直接父から話を聞いてるはずなんだ」

少女「お姫さまだったのは驚きだよー」

剣士「悪いんだけどボクはあの王国の姫だった事が嫌いだったんだ」

剣士「考え方がボクにはまったく理解できなかった」

魔王「再びここへ来たのは魔族の件だけでなく自分事のためでもあったのか」

剣士「そういうこと」

剣士「でも本当に来てるとしたらそろそろ来てしまうかもしれないよ…」

側近「もう傍まで来てますよ、人間達が」ガチャ

魔王「…」

剣士「やっぱりウソじゃなかったんだね…」

少女「ウソなんか言わないよー他の国の人もいっぱい連れていくって王様言ってたもん」

剣士「ボクはこんな事望んじゃいない!!」

剣士「勇者128号と一緒に争いを終わらせようと頑張り始めた所だったのに…!!」バンッ!!

魔王「はぁ…ここだと植物達にはすごく良い環境だったんだがな…」

側近「どうなさいますか?」

魔王「面倒事は嫌いだというのを知っているだろう?」

側近「そりゃ何度も聞きましたよ、洗脳されるんじゃないかってぐらい」

魔王「見えているという事はもうすぐ攻めてくるのか?」

側近「見張り兵達の知らせがあってやっと気づいたほどですからもう時間はないかと」

魔王「そうか」

剣士「…」

魔王「剣士、お前はその少女を連れて裏の森から出ろ」

少女「?」

剣士「え…?」

剣士「もしかして…戦うの…?」

魔王「今までの私を見てそんな事すると思うのか?」

剣士「植物傷付けない限りそんな面倒な事はしない…だね」ニコ

魔王「分かってるじゃないか」ニッ

魔王「何をするかは言う事ができないが…」

魔王「お別れだ」


…………


魔王「おー、またすごい数呼んだもんだなぁ」

側近「本当にあれでよかったのですか?」

魔王「いいんだ」

魔王「彼女を巻き込むわけにはいかないだろ」

側近「納得はしてなさそうでしたけどね」

魔王「仕方ないだろ、我らの秘密を教えるわけにも行くまい」

メイド「魔王さま、準備できましたがいかがいたします?」

魔王「そうか、じゃあ皆に城の中に待機させておいてくれ」

メイド「畏まりました」パタパタ

魔王「それじゃあ私達も中へ入るぞ」コツコツ

側近「えぇ…」

側近「本当は一人が嫌いな寂しがりやの癖して」

側近「それに植物に興味持ってくれる仲間が見つかったのに…やせ我慢するんだから…」

側近「さて…これからはもっと静かな生活が始まるわ」トコトコ ギィィ…バタン

隊長「皆の者よ!もうすぐ魔王城が見えるぞ!!」

兵士s「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

狙撃手「隊長!!」バタバタ

隊長「どうした?ついにヤツらが動き出したか?!」

狙撃手「いえ…それが…」


………


隊長「どうしたことだこれは…」

通信兵「勇者につけた受信リングの反応は確かにここからしているのです」

兵士「リング見つかりません!」

兵士「こちらもです!それに周辺の魔族共もまったく見当たりません!!」

隊長「どうしてだ…」

隊長「どうして魔王城があったという場所には花畑があるだけなのだ!?」

通信兵「今までの勇者の話では魔王城の名の通り、禍々しい景色だと聞いてたはずですのにね」

隊長「引き上げるぞ」

隊長「勇者の行方を追って事情を聞かん限りは俺達では国王に報告すらできん…」

剣士「心配になって戻ってきたけど…」

剣士「魔王は何をしたんだろう?咲く事のない地面からこんなに植物が…」

少女「うわぁ…綺麗なお花畑だなぁ」

剣士「あの魔王らしい言えばらしいけどこんな終わり方って…」

少女「お城なくなっちゃったね?」

剣士「そうだね、魔王達はみんなのためにいなくなってくれたんだよ」

芋勇者「連絡通り来たが、なんだこれ…」ザッザッ

剣士「ごめんね、突然呼んじゃって」

剣士「多分、魔族が住んでいる地域ごと知らない場所へ飛ばしたんだと思う」

芋勇者「どこへかは……顔見たら分かるな」

剣士「もう会えないと思う」

剣士「絶対関与しないように…争わないようにやってくれたんだよ」

芋勇者「何だか切ないな…」

剣士「折角ボク達で仲良くできないか頑張ろうとしてたのにね」

芋勇者「俺らというか人間のその他大勢が納得しなかったんから仕方ないだろう」

少女「おじちゃん誰?芋のにおいがするー」

芋勇者「しねぇしまだ十代だ!?どうしてどいつもこいつも芋芋言うんだ!!」

剣士「あっはっは…それじゃあ帰ろうよ」

芋勇者「お前はこれからどうするんだ?」

剣士「一度自分の国に帰るよ」

剣士「絶縁宣言してこないといけないしさ」

芋勇者「魔王の話もう一回してみたらどうだ?」

剣士「無駄だよ、魔王は悪ってイメージを変えようとしないんだもん」

剣士「それ以前に人の話をまったく聞かず好き勝手してる人だったし?」

芋勇者「そうか…なんというか悪かった」

剣士「ガーデニングが趣味の魔王だったとでも言っておけばよかったかな?」

芋勇者「それは普通の人でもなかなか信じてくれなさそうだが…」

剣士「まぁいいや」

剣士「最愛のお父様(笑)を絶望の淵へ叩き落しに行かなくちゃ」

剣士「移動魔法よろしくー」

芋勇者「お前が魔王と呼ばれても知らんぞ…」シュイーン

剣士「魔王になってもいいかなぁ」

少女「だったらわたしがおねえちゃん倒しに行かなきゃ!」

剣士「小さな勇者にならやられてもいいかもね」シュゥゥゥン

植物が好きで

 必要以外には面倒くさがりで

 見た目がだらしなくて

 強いけど気が弱くて

 人気者で誰にも好かれてて

 人に優しくて

 以外にも可愛くて

 そして……魔王で…


 そんなヒトがいた事をボクは忘れないだろう

 植物を見るたび思い出す

 庭の真ん中で楽しそうに口笛を吹きながら水を撒いている彼女の事を…

魔王「ふんふんふーん」シャァァァ

側近「今日もお世話に精が出ますね」

魔王「世話した分、ちゃんと応えてくれるからな!」キラキラ

側近「相変わらず表情が生に満ち溢れている…」

側近「そういえば今回は麦とやらを育てていくんでしたっけ?」

魔王「あぁ!この周辺の枯れた地を一面小麦一色にしてやろうと思ってな!!」

魔王「あ、もちろん他のやつも育てるよ」

側近「まぁ別にかまわないんですけどね…今は仕事の一環になってる事だし」

側近「『裏世界の死んだ大地の再生』…か」

魔王「表世界と同じか、それ以上にしてやりたいんだ」

魔王「兵達や他の魔族達も協力してくれるし」

魔王「私はできると思っている」

側近「城だけでなく、その周辺まで表世界に転送したのはそういう理由でしたか」

側近「大地の違いを研究するためだったのですね」

魔王「どうしても原因がまったく分からなかったから生きてる大地を調べる方法しかなかったんだ」

魔王「そして分かったのは死んでいるのではなく休んでいたからなのだ」

魔王「その例に一部の地域では何の問題もなく植物が育成できている地域があるからな」

魔王「まず大地を起こすため必要なのは気候だ」

魔王「こちらの地面は低温で保たれたままだったのだ」

魔王「だからまず必要なのは太陽だ」

魔王「次に太陽ばかりだと今度は干上がってしまう」

魔王「だから次に水と雨だな」

魔王「水分は植物だけでなく、どの生物にも必要だから当たり前だろうな」

魔王「だがこれだけでは植物は育たない」

魔王「そこで必要となるのが小さな生き物などだ」

魔王「例えば細菌は様々な植物と共生してその植物を生かすことができるのだ」

魔王「あとは土に生きる一部の生物が土壌形成に役立つ」

魔王「地上では花粉を運搬し、受粉させたりと」

魔王「とにかく植物を生かすために必要不可欠なのだ」

魔王「と、途中からは育成途中からのことになるがこのあたりがそろえば土は生き返る」

側近「そうですか…しかし、よくそこまで知識があるものです」

魔王「こっち側の分野なら頭にこびりついて離れないほど記憶したからな」ツンツン

魔王「よし、そろそろ仕事に取り掛かろうか」

側近「そうですね」

側近「もうあちらに関与できるゲートも閉じましたし、人間が入ってくることももう…」

魔法使い「どういうことなの?」

側近「!?」

魔王「いつ来ていたのだ?」

魔法使い「さっき、世界中で話題になってた」

側近「もうゲートもないのに何故人間がこの世界に…」

魔法使い「なければ作れば良いじゃない」ゴォォォォ…バチバチ

側近「そういえば過去の勇者達は自らゲートの代わりを生成して来ていたっけ…」

魔王「すまなかったな、報告を忘れていた」

魔法使い「ぷんぷんだ」

魔法使い「もう帰って冒険の旅してくる」クルリ

魔王「今度はどういう仲間と行くんだ?」

魔法使い「妹達と楽しく」

魔王「それは面白そうだな、楽しんでこい」

側近「今度こそ仕事に取り掛かりましょうか?」

魔王「そうだな……」

側近「どうしました?」

魔王「いや、何でもない」

魔王「暇なヤツ!集まれぃ!」

ハーピー「なになに?」

セイレーン「また面白い事するの?」

ゴースト「できる事なら何でもするよー」

魔王「うむ、今回はまず必要なモノの成形をしたいのだが手伝ってもらえるだろうか?」

側近「一応仕事になりますのでなるべく参加してほしいところですね」

セイレーン「もちろん魔王さまのお仕事じゃやるっきゃないね!」ワイワイ

ゴースト「そーだねーまたおいしいものもらえるのなら頑張っちゃうよ!」キャッキャ

ハーピー「さぁ、お仕事をちょーだい!」ポンポン

側近「遊び感覚っぽいけど真面目にやってくれそうですね」

魔王「私の住むこの城に悪い子などおらんよ」

魔王「それじゃ今日も植物達のために一仕事しよう!!」

魔王「あ、赤玉土とか腐葉土とか足りないものがあるな」

メイド「そういうのって人間のところで殆どそろえていたんでしたっけ?」

魔王「うむ、こっちじゃ存在しない土だからなー」

魔王「ちょっと買ってくる」テクテク

魔王「皆は続きを頼むな」

メイド「え?人間界にはもう行けないんじゃ…」

魔王「ゲート」ブゥン シュルン

メイド「えーっとぉ…」

側近「魔王様ならあちらと繋がる魔法を持ち合わせているのですよ」

メイド「それじゃあの人間の方達と別れ言ったりする必要は…」

側近「また魔王の存在がどうとか言われて問題になってくるでしょ?」

側近「こちらの状況知ってる人以外とは二度と会うつもりないらしいですよ」

メイド「そうだったんですか…剣士さんとは仲良くできそうだったのにな…」

側近「それでもバレたりした場合はお庭の植物全部焼き払うって脅してますし必死に隠すでしょう」

メイド「魔王さまかわいそう…」

魔王「うーむ」カラカラ

魔王「持って帰るにもカートごといかなければ難しいな…」

魔王「勝手に持ち出したら怒られそうだしなぁ」

魔王「ん?」

女の子「よいしょよいしょ」ザクザク

魔王「そこの、植物でも植え始めるところか?」

女の子「え?はい、小さな花壇ですけど何も植えられてなかったので」

魔王「ふむ、それなら育てやすくて見た目が美しいやつがいいな」

魔王「種類を言っていたらキリがないから自分で調べてみるといいぞ」

女の子「こういうの詳しいのですか?」

魔王「趣味がガーデニングだしな」

女の子「へぇー」

女の子「もう少し教えてくれますか?自分の力でやってみたいの…」

魔王「いいよ、あまり時間は取れないができる限り教えよう」ニッ

魔王「ふぅ」チョコン

魔王「まだこの辺でまともに育っているのはこの子達だけだな」サァァァ

魔王「そりゃあっちで元気に育ったのだから間違いはないんだけどな」

魔王「城周りは小麦畑にするとして…」

魔王「あとは先の道端に沿って表から購入した冷凍室に保管してある苗を植えていって…」

魔王「さらに広大な高原に低温保管させた種を蒔くと…」

魔王「それから…」ウトウト

魔王「私の…大好きな植物に…囲まれる…よ…に…」ズルズル

魔王「すぅ…すぅ…」

メイド「魔王さまー?」

側近「しっ、お眠りになっているようです」

メイド「ここだけ表世界のお日様入ってくるからポカポカで気持ち良いですからね」

側近「色々考える事があって疲れていたのでしょう」ソッ パサリ

側近「おやすみなさい、魔王様」

側近「大好きなモノに囲まれた場所で良い夢を――」

これで本当におしまい

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