女「この世界は腐ってる」(10)

男「ふうん。そうなのか」

女「そうだ。この世界は腐ってるんだ」

男「主にどの辺が?」

女「たぶん全体が」

男「ぼくにはそうは思えないけど、キミがそう言う
  んなら間違いないんだろうな」

女「もちろんだ」

男「じゃあ腐ってるならどうしたら良いんだい?
  まさか世界をゴミ箱に捨てるわけにもいくまいよ」

女「いいや、腐ってるから捨てるんだ」

男「どうやって?」

女「こうやって」

男「んぅ!?」

女「……」

男「…………」

女「…………プハッ」

男「キスですか」

女「接吻とも言う」

男「これで世界が捨てられたの?」

女「いいや、まだまだだ。こんなのほんの序の口さ」

男「じゃあどうするんだよ」

女「まずは裸になりなさい」

男「分かった」

女「……厭に物分かりがいいんだな」

男「出来れば説明を求めたいところだけど、どうせ
  聞いたって教えてくれないだろうからね」

女「そんなことはないさ。聞かれたらちゃんと答える」

男「じゃあ聞こう。ぼくが裸になって世界を捨てられる
  ものなのか?」

女「捨てれるさ。いとも簡単に」

男「……」

女「わたしの世界が」

男「ああ、納得」

女「納得してくれたか。じゃあ裸に……」

男「ならない」

女「なんで!」

男「キミの世界を捨ててほしくないから」

女「そんな事言わずに……」

男「なんで捨てようとするんだよ」

女「腐ってるからに決まってる」

男「腐ってたら捨てるのか?」

女「みかんだって腐ったら捨てるだろう」

男「ぼくは食べれそうなトコは食べるけどな」

女「でも食べれないところは捨てるだろ?わたしの世界は
  全部腐ってるから全部捨てなきゃ」

男「腐ってるなんて誰が決めたんだよ」

女「わたしが決めた」

男「美人で頭がよくて皆に頼られる優等生を演じる
  のに疲れたから?」

女「…………」

男「でも、ぼくの前じゃ猫かぶってないじゃないか。
  それじゃダメなの?」

女「我ながら、なんでこんな面倒な役を演じるように人生の
  レールを敷いちゃったんだろうな」

男「だから捨てたいのか」

女「捨てたいよ。もっとふつうでいたかった」

男「この世界に普通なんてないさ。皆が言ってる普通ってのは
  ただの平均だ」

女「なら、平均になりたかった」

男「……それもそうだね。ぼくもそう思う」

女「じゃあ捨てさせてくれないか?大丈夫、痛くしないから」

男「女のキミが言う台詞じゃあないな」

女「捨てさせてほしいにゃん。御主人様」

男「……条件がある」

女「なに?」

男「これからぼくの事は御主人様と呼べ」

女「畏まりました。御主人様」



おわり

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