雁屋「裏ムエタイ界の死神?」 (179)
※自分得SSです。細かい設定は気にしない方向でお願いします。
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臓硯「今宵、お前のサーヴァントを呼ぶ儀式を行う。とはいえ、神代の時代の英霊は強いが扱いにくい。3流以下の魔術師にすぎんお前では維持すら出来ん可能性が高い。そこで、『裏ムエタイ界の死神』と呼ばれた近代の男をバーサーカーとして呼ぶ。」
雁屋「それはわかったが・・・そいつはどんな奴なんだ?」
臓硯「例え格下相手でも一切の手心を加えない、猛獣を支配するほどの気迫、相手が死ぬ一歩手前の姿を楽しむ、人助けと評してチンピラ共を半殺しにする、同僚の稼いだ金で飯を食いながら自分は一切出さない、こんな感じか。他にもあるが聞くか?」
雁屋「もういい、貴様好みの外道が呼ばれそうだな。」
雁屋「(中略)されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者――」
雁屋「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
シュゴオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!
狂「アパ!」
雁屋「・・・・・・」
臓硯「・・・・・・」
狂「アパ!アパアパ!」
身長2mを軽く越える高さに分厚い筋肉の鎧。
そこに刻まれた無数の傷、一目見ただけで歴戦の戦士である事を思わせる。
その顔が・・・(・∀・)な感じでなければ!
雁屋「ゲホゲホ!くそ、やはり召喚してすぐは体が・・・」
狂「アパ!」
ヒョイ
雁屋「・・・お姫様抱っこ?まさか、運んでくれるのか?」
狂「アパ!」
コク、と頷く。
雁屋「なあ、コイツはさっき聞いた様な外道なんだよな?」
臓硯「筈、なんじゃが・・・」
それから数日、バーサーカーについて少しだけわかってきた。
どうやら、このサーヴァントの本質は・・・極めて優しい。
俺が体内の虫に苦しんでいる時、アイツが話しかけてきた。
狂「アパ。アパアパ!」
雁屋「なんだ?なにを言って・・・!?少し楽に・・・」
狂「アパ!」ニコリ
雁屋「お前・・・まさか体内の蟲共に?」
そのおかげか、俺の体の気だるさは幾分か解消された。
また、どうやらコイツは腹が減るのが嫌らしい。
涙目で腹を抑えていたので、大量の食料を手配して持ってきてもらった。
(*゜▽゜*)な顔でガツガツ飯を食う姿はおっかないんだか微笑ましいんだか。
雁屋「不思議な奴だな。どうにも、臓硯が言ってたような外道には・・・ん?」
鬱蒼とした洋館である間桐の家。
それでも昼間は暖かい光が庭に差し込む。
雁屋「なっ!?」
そこで雁屋が見たものに酷く驚く。
光の中心にバーサーカーが座り、その周りにハトにネズミに野良猫と、数多くの野生動物に囲まれている。
その膝に座るのは・・・
雁屋「さ、桜ちゃん・・・」
間桐の家の養子になった女の子。
家の後継として優秀な体にする為に幼いというのに外法の術をかけられ続けている。
1年で元気だった頃は見る影もなくなり、何時も何かに怯えている。
雁屋「なんて穏やかな顔を・・・」
そんな少女が、狂戦士の膝で猫の様に丸くなり、
お姉ちゃんとお母さんと一緒にいた頃の様な顔を、
屈託のない笑顔で眠っている。
己の膝を枕にする桜の頭を優しく撫でるバーサーカーの姿を見て、雁屋は確信した。
雁屋「アイツをサーヴァントにできたのは、僥倖・・・だな。」
・・・あああああああああああああああああ雁夜おじさんゴメンなさい!
こっからは雁夜おじさんで行きます!指摘ありがとうです!
その日の夜、雁屋は夢を見た。
一瞬なんなのかはわからなかったが、それがバーサーカーの一生の一部である事は分かった。
満足に食べられなかった幼少期
力だけはあるけど厄介者だった
>>16
・・・言ったそばからまたミスだよ!訂正!
その日の夜、雁夜は夢を見た。
一瞬なんなのかはわからなかったが、それがバーサーカーの一生の一部である事は分かった。
満足に食べられなかった幼少期
力だけはあるけど厄介者だった
『腹いっぱい食わせてやる、それだけは約束する』
『どうだ○○○○○、バナナの木はいい練習相手になるだろ?』
『気にすんな○○○○○、裏ムエタイもゲームだ。お前を守る為に大きめのカードを切ったに過ぎない』
なるほど、確かにどんな相手でも手心は加えないし、相手が死ぬ一歩手前の状態まで持ち込んでいる。
しかし、そこに一切の悪意はない。
兄であり師であり父の様な男とコーチと仲間達に囲まれ、わんぱく小僧として育ったが故だった。
『そうか、パンチを突き詰めたら、相手が痛みを感じる前に失神したか!』
『そうか、木のてっぺんまで相手が吹っ飛んだか。』
『そうか、車も吹っ飛んだか。』
『そりゃ手加減とは真逆の結果になるな。』
・・・まさか文字通り手加減ができないというのは初めて聞いたが。
で、あるが故にチンピラ相手にも手加減なしというわけだ。
確かにこれでは、人となりを知らないものには死神にしか映らないのも道理だ。
『『『気にするなって、○○○○○!お前の食費は俺達が稼ぐ!』』』
その強さ故に試合が中々組めず、同僚達にお金を入れられない。
だがそんなバーサーカーを疎むことなく暖かく受け入れる。
そうだよな、家族って本来こんなものなんだよな。
「(待てよ?じゃあ桜ちゃんにとっての家族は・・・)」
狂「アパ!」
桜「おはよう、おじさん。」
雁夜「・・・お早う、バーサーカー、桜ちゃん。」
――時臣を殺したら、桜ちゃんから家族がいなくなる。
でも、もう後戻りはできない、俺は、どうしたら・・・・・・
~サーヴァント ステータス~
バーサーカー
真名:アパチャイ・ホパチャイ
マスター:間桐雁夜
身長:201cm/体重:120kg
属性:混沌・狂
イメージカラー:赤
特技:--(狂化している為なし)
好きなもの:ハンバーグ/苦手なもの:--(狂化している為なくなっている)
筋力:A+++
耐久:A++
敏捷:A++
魔翌力:E
幸運:A
宝具:-
~スキル~
狂化:B 動物会話:A ムエタイ:EX 気配感知:A 圏境:C 心眼(真):A 戦闘続行:A+ 千里眼:A てっかめん:C 純真無垢:A
~オリジナルスキル解説~
動物会話:A 言葉を持たない動物との意思疎通が可能。本来あまり複雑なニュアンスは伝わらないのだが、ランクAの場合競馬の馬に対し説得(八百長?)させる事も可能となる。
ムエタイ:EX タイの国技でもある武術。A以上の場合、ムエボーラン(古式ムエタイ)もマスターしている事が絶対条件。達人中の達人。
圏境:C 気を用いて周囲の状況を感知し、また、自らの存在を隠蔽する技法。達人(マスタークラス)ならば多くの者が習得している。
戦闘続行:A+ 名称通り戦闘を続行する為の能力。決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。このスキルを習得している者は、腹に風穴が空くほどの致命傷を負っても、『死んでも守りたい』存在が命の危機にさらされた場合に限り、短時間の間に限り蘇生する。その僅かな期間に治療できれば生き残る可能性はある。
千里眼:A 視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。Aにもなると、遠方の電車に乗ってる人の腕時計さえ見える。
てっかめん:C このバーサーカー特有のスキル。鍛錬中、戦闘中に限り発動する可能性がある。手加減に失敗し、自身の全力を出してしまう。
純真無垢:A 自身が持つ優しさにランクが大きく左右されるスキル。ここまで行くともはや神と呼んでも差し支えない。殺伐とした世界に生きながらも、決して曲げることのない優しさ。一度触れ合った者を動物人間老若男女関わらずに慕う様になる。また、このスキルの所有者は人質、近くに動物や子供がいるとステータスが下がるというデメリットもある。
対キャスターがめっちゃ弱いな
>>24
肉弾戦特化ですから。
本来なら大きく時代は異なりますが、
こちらでは近世の人という扱いとなってます。
これお父さんにも負けるんじゃないの
>>26
お父さんというと・・・時臣?
アーチャーとの戦いは描くつもりです。
結果はお待ち頂けたら。
戦うだけのモノであったか……
>>28
主役バーサーカーですし。
>>25
一度こう書きましたが、ちょっと変更します。
英霊の座からは未来の英霊を呼ぶこともある事を思い出したので、
少し設定を変更します。
他陣営の鯖は本来通りなのか否か
から始まって、横島が喚ばれたらクラスは何になるんだろうなとか考えてたらFateと極楽のクロスがめっちゃ読みたくなってきた
雁夜「そういえば、あのバーサーカーを呼び出す時に使ったあの布はなんだったんだ?」
臓硯「裏ムエタイ界で『死神』と呼ばれた男が身につけていたバンテージじゃ。
しかし、聞く限り言った通りの外道としか期間のじゃがな。」
雁夜「ふーん・・・待てよ、そいつの二つ名は『死神』なのか?」
臓硯「さっきからそう言っとるじゃろ。なにかあるのか?」
雁夜「呼び出したバーサーカーの記憶が見えたんだが、アイツの二つ名は
『裏ムエタイ界の死神』だったぞ。」
臓硯「んん?『裏ムエタイ界で“死神”と呼ばれた男』ではなく、
『“裏ムエタイ界の死神”と呼ばれた男』だとでもいうのか?」
雁夜「ああ。アンタが呼ぼうとした男とは別の男が呼ばれたのかもしれないな。」
臓硯「なる程、道理でつまらん事をするハズじゃ。
さっさと寝ておけ、貴様には無様に踊ってもらわんといかんからな。」
雁夜「あ、ああ、お休み。」
雁夜「・・・・・・・・・」
雁夜「まさかアイツが俺に気を遣い、
俺があいつにお休み、なんていう日が来るとはな。」
雁夜「・・・バーサーカー、いるか?」
狂「アパ!」
雁夜「これから寝るから、傍に居てくれないか?お前がいたら安らかに寝れそうだ。」
狂「アッパパー。」
以上、小ネタ終わり。
「臓硯が呼ぼうとした人とは別人でした」という事にしました。
これならZeroより後の時代の人間だとしてもOKだと気づいたので。
>>31
ほかの鯖をどうするかはぶっちゃけ考え中(笑)
横っちはキャスターが本命かも(道具作成で文殊・前世退魔師)、
他にはバーサーカー(ちちしりふとももー!)、
アーチャー(サバイバル的な意味で)、
ランサー(往生際の悪さ的な意味で)とかありそう。
アサシンが遠坂のアーチャーによって敗退し、聖杯戦争は新たな動きを見せる。
港にあるコンテナに囲まれた倉庫街、そこでセイバーとランサーが一騎打ちを行っていた。
その戦いを近すぎず遠すぎない距離で見張る者、相棒と連絡を取りながら狙撃銃を構える者、誰にも気づかれない様に見ている男が一人。
雁夜「(本当にすごいな、結構近いのに全く気付かれていない。しかし、バーサーカーだというのにピクリとも動かないとはな。)」
その理由だが、バーサーカーとなっている男は本質的に極めて穏やかで、野生の獣の様に感覚が鋭い。
自分が大きく動くと雁屋の体は大きく傷つく、そうならない為に自ら律している。
理性を奪われ、本能のままにしか行動できないのがバーサーカーだが、どうやら本能レベルで優しさが染み込んでいるらしい。
さらに宝具がない事で、急激に魔翌力を使われる事もない。つくづく初心者向けのサーヴァントだと雁夜は思う。
?「A-Lalalaaaaaaaaaaa!」
ー!?ビックリした。上空から戦車(チャリオット)が駆けてくるって事はライダー。中々派手な登場・・・ぐぁ!!
雁夜「(ば、バーサーカーが急に動き出しただと?一体、なにがあったって言うんだ!)」
剣「こいつは・・・バーサーカーか!」
槍「征服王、そいつに声はかけんのか?」
騎「のっけから交渉の余地なさそうだしなぁ。」
ウェイバー「でも、なんでライダーの突進に割り込んで来たんだ?」
アイリ「避けてはいたけど・・・あら、なにか抱えてるわ。」
にゃーん。
アイリ「・・・猫?」
ウェイバー「もしかして、猫がライダーに轢かれそうになったから出てきたのか?」
騎「狂化しとるのに珍しい奴だのう。」
狂「アパアパ。」
にゃにゃーん。
ケイネス「ウェイバー君、君には特別授業をしてあげよう。」
騎「おいこら!覗き見してる連中でてこんかい!」
トッキー&愉悦「「(・・・まずい)」」
弓「王はこの我ただ一人。」
剣「!」
槍「!」
騎「!」
アイリ「!」
ウェイバー「!」
雁夜「(あの金色は・・・時臣のサーヴァント!どうする、俺個人としては殺してやりたい・・・けど、それは桜ちゃんの家族を・・・)」
弓「そこな狂犬、我が目の前にいるという事がどれだけ栄誉なことかも理解できぬか。」
にゃにゃにゃ!
狂「・・・アパ。」クルリ
弓「下賎な犬めが・・・せめて散りざまで我を興じさせよ。」
ズォオオオオオオ・・・
アーチャーは二振りの宝具の剣を空間から呼び出し、それをバーサーカーに向ける。
剣「待て!バーサーカーの傍には子猫が・・・!」
弓「知ったことではない。消えよ!!」
ヒュゴオオオオ!
シュゴオオオオ!
狂「アッパァアアアアアアア!!!」
ドガッ、ゴッシャアアアアアアアン!!!!
ヒュルルルル・・・ドーン!ドーン!
ウェイバー「・・・今、なにが?」
騎「アーチャーが放った宝具を、足蹴りだけで吹き飛ばしおった。かなり遠くに吹っ飛んだのう。」
アイリ「流石、筋力A+++ってところかしらね。」
剣「いいえ、アイリスフィール。今のは力だけで出来る事ではありません。」
切嗣「(そう、あの猫を守ろうとしたら一本弾くだけでは無理だ。
弾いた剣をもう片方の剣にぶつけて軌道をそらす必要がある。
そもそも高速飛行体を弾くだけでどれだけの高等な技術がいるか・・・)」
時臣「あれが、間桐雁夜の呼び出したサーヴァント・・・。」
綺礼「(間違いない、類まれなる才と計り知れない鍛錬によって英霊の座に免れた男だ。
しかし、時臣師は気づいていないのか?
今ので仕留められなかった、それも足蹴にされたとなるとアーチャーは・・・)」
弓「貴様、下賎な者の分際で我が宝物を・・・それも足で触れるとは・・・!
望み通り、今この場で殺してくれる!」
ズォオオオオオオオオオオ・・・・・・
次に出した宝具と思わしき武具は軽く見積もっても10本以上。
通常、英霊一人が持つ宝具の数は少なくて0~1、多くて3~4程度。
ならば、惜しげもなく大量に取り出すこの英霊は一体?
雁夜「(マズイ!あれではバーサーカーが・・・!)」
狂「ア~~~・・・パァアアアアアアアアア!!!」
ダッ!
バーサーカーはアーチャーに向けて疾走。
それをみて、アーチャーはさらに表情を歪ませる。
弓「我相手に真正面からとは・・・我が眼前から消えうせよ、狂犬!!」
ドギュギュギュギュギュギュ!!!!!
狂「イ~ヤバダバドュゥウウウウ!!」
右から来る剣を右腕で弾き、
左から来る槍を左腕で薙ぎ払い、
正面から来る鈍器を身をかがめて回避。
やってる事は当たり前の事、しかし足を止めずに行っている上、
当たり前の事を当たり前にこなすと言うのは非常に難しい。
飛来する質量の一つ一つが常識外れである現状ならなおさらだ。
槍「・・・まるでお手本を見ているかのようだ。」
騎「狂戦士となっているのに、この体さばき、見事としか言い様がない。」
剣「悔しいですが・・・我らより遥かに修羅場をくぐり抜けてきたのでしょうね。」
ウェイバー「もう何が何やら・・・あ!」
ウェイバーの視線の先で、バーサーカーが空に跳んだ。
そして、アーチャーが立つ街灯と同じくらいの高さのコンテナの所で対峙する。
弓「理性なき狂犬の分際で、我と同格の高みに来ようなど、片腹痛い!」
狂「アパァアアア!!」
バーサーカーは、アーチャー目掛けて再び跳び上がる。
肘を顔のあたりまで振り上げている所を見ると、肘で攻撃しようとしている事が分かる。
空中という自由の効かない場所である以上、先程の宝具射出は大いに効果があるだろう。
弓「(この場で我の王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)を開放したらこの狂犬を消せるだろう。
しかし、それではつまらん。あくまで格というものを知らしめねば気がすまん。)」
だが、アーチャーのサーヴァント、英雄王ギルガメッシュは最善の一手を自ら捨てる。
英雄王にとって、森羅万象何事も自分が一番であるのが当たり前の話。
故に、敢えて一発受けてから葬ることにした。
時臣「『王よ、今こそバーサーカーを葬る好機!』」
弓「騒ぐな、この程度我にはなんでもない。
(さて、なにで受けてやろうか。
よし、この剣にしよう。分厚く重いこの剣なら、
あの狂犬も自身の愚かさに気づくだろうて。)」
アーチャーは自身の宝物庫から一際重く頑丈な大剣を取り出し、
それでバーサーカーの一撃を受け止める態勢に入る。
慢心していたアーチャーは気付けなかった。
バーサーカーは跳び上がる前に特殊な呼吸をしていた事を。
それによりただでさえ太い筋肉がさらに太く頑丈になっていた事を。
弓「ハッ!所詮貴様はくるった――っ!?」
アーチャーは最後まで喋ることは叶わず、バーサーカーによって強制的に口を閉ざされる。
なにがあった、アーチャーは考える。
英雄王が口を閉ざすなど、宝具の大剣を破壊しない限りありえない。
バーサーカーが生きているなど、アーチャーの宝具の大剣を破壊しない限りありえない。
ならば答えは一つ、バーサーカーがアーチャーの宝具を破壊したのだ。
宝具を一つも持たないサーヴァントによって、だ。
破壊したのは、バーサーカーが生前取得した技の一つ。
それは、殺戮のみに特化した古式ムエタイの技の一つ。
それは、高く飛び上がって空中に浮いた状態で肘を振り下ろす大技。
その名は・・・ガーンラバー(爆ぜる斧を)・ラームマスーン(撃ち振る)・クワン・カン(雷神)。
ゴギャメギャゴギャガララララララ・・・・・・!
バーサーカーの振り下ろした肘はアーチャーに突き刺さり、
雷が間近に落ちたかのような轟音を一体に響かせる。
自慢の宝具でさえも威力を殺せなかったその力は、
アーチャーを地中深くまで沈めることとなった。
アイリ「い、今なにが起こったのかありのままに教えて欲しいんだけど。」
剣「バーサーカーの肘による攻撃がアーチャーの宝具を破壊して」
槍「その勢いは削がれずにアーチャーに突き刺さり」
騎「その馬鹿力によってアーチャーは地中深くまで沈んだ、という訳だな。」
ウェイバー「そんなのアリ?」
弓「狂犬めがぁあああ・・・この我に向かってなんたる不敬を・・・」
剣「まだ生きていただと!?」
槍「恐るべき頑丈さだな・・・」
ウェイバー「(あれ、でも耐久性は普通に高いくらいだとおもうんだけど。)」
弓「貴様、もう許さ・・・なに、引けだと?ふざけるn・・・
チィイイイ!雑種ども、次に会うまでに有象無象を間引いて置け!」
礼呪を使われたのか、憤怒の表情のまま、ボロボロの鎧と共に姿を消す。
騎「ふむ、アヤツのマスターはアイツ程剛毅ではなかったようだな。」
ウェイバー「いや、あれで折れてないアーチャーがすごいんだよ。」
槍「さて、これで姿を見せてないのはキャスターだけになったか。」
剣「そうですね。あのバーサーカー、宝具はない代わりに・・・あれ、バーサーカーは?」
アイリ「あそこ。」
――にゃにゃ~ん
狂「アッパパ~。」
・・・・・・・・・・・・・・・
騎「どうする?今のあれ見て気が抜けちまったんだが。」
槍「煮え切らないが、今日の所はこれでお開きだな。」
剣「そうですね、今ここで戦っても納得の行かぬ終わりになるでしょう。」
狂「あっぽぅ。」
――にゃおう
こうして、第四次聖杯戦争の第2戦は、gdgdに終わったのだった。
続く。
おつ
よく我様生き残ったなと思ったがアパも一応活人拳だった
>>65
狂化されても揺らぐことのない活人スタイルです。
今回短いです。
狂『・・・・・・。』
雁夜「どうしたんだバーサーカー。変にキョロキョロして。」
狂『あぱー・・・』
それは、純粋無垢な心を持つ、ムエタイを極めた武人が感じた嫌な感じ。
本来の彼ならば、どこで、なにものが、なにをしているのか感じ取ることができただろう。
雁夜「(霊体化しているから俺への負担はほとんどないが・・・なにがそんなにきになってるんだ?)」
されど、今のアパチャイは意識を狂わされており、本来の感覚を大幅ににぶらされている。
そんな彼に感じ取れるのは、子供達が恐ろしい目にあっている、かもしれない事だけである。
今のアパチャイは、自由に動けない。
下手に動き、戦いになったら、自分と繋がっている男の人が死んでしまいかねない。
それではあの女の子が悲しむ。
故に、心優しいバーサーカーは身動きがとれなかった。
アーチャーに手痛い一撃を加えたその日の晩、それがアパチャイがソワソワしだした日であった。
それから少しの日にちが過ぎて、ようやく雁夜も少しは動けるようになった。
狂『アパ!アパ!』
雁夜「・・・なんだ?」
雁夜は霊体化しているバーサーカーが、なにかお願いをしている事を察する。
なお、普通のバーサーカーはそんな回りくどい事せずに勝手に行動するものなのだが。
狂『アパ!アパパ!』
雁夜「(指さしてるだって?あっちは・・・川のほうじゃないか。)」
一体なにがしたいというのか?
あ、もしかしたら川遊びしたいのかも。
こいつなら暴れたりしないだろうし・・・ま、ちょっと位いいか。
雁夜「ああ、いいぞ。ただし、ちゃんと霊体化したまま・・・うぐっ!」
狂「アッパー!」
雁夜「こ、こらバーサーカー!霊体化したまま・・・うわっ!ちょ、放せ!」
狂「アーパパパパパパ!!!」
雁夜「ちょ、こら!何処にいくんだー!!」
雁夜は自分のサーヴァントに脇に抱えられ、間桐邸を後にする。
バーサーカーの目的地は、ある少年の魔術師が「なにかがここにある」という事に気がついた場所。
方や鍛え上げた感覚で調べた結果、方や錬金術で調べた結果、それが偶然一致、その場所を、貯水庫と言う。
きょうはいじょ。
おしごとたいへん。
狂「アパ・・・」
雁夜「あんた等は・・・ライダーと、そのマスターか?」
騎「如何にも、余がライダーだ。しかし、お主・・・」
ウェイバー「ば、バーサーカーのマスターだな?な、なんなんだよその体?」
騎兵のマスターである少年、ウェイバーは恐る恐る尋ねる。
バーサーカーのマスターである間桐雁夜の体が、魔術師からしても異常だからだ。
まだそう年はとっていないだろうに、真っ白にそまった髪。
肌は肌色ではなく、死体のように色落ちしている。
また、その肌に直に触れたら時間がたった死体の様に感じるだろう事も、見ただけでそう思わせる。
一番ひどく見えるのは彼の顔だ。
左半分が明らかに稼働しておらず、先ほどライダー組に呼びかけた時も、唇は右側しか空いていなかった。
左目に至っては眼球がドロドロに溶けてしまっている。
この分では、服の下、体の中はもっとひどい惨状なのだろう。
ウェイバー「な、なんでそんな体で聖杯戦争に参加してるんだよ?
しかもバーサーカーなんて・・・ずっと魔翌力を吸われるんだろ?」
雁夜「まぁ、な。こいつじゃなかったらどうなってた事やら。」
騎「ううむ・・・お主の聖杯の願いは、健康な体になる事か?」
雁夜「いや、ウチの党首に献上する為さ・・・
が、俺は生憎落ちこぼれでね、こうでもしないと参加は無理だったのさ。」
ウェイバー「な、なんでそこまでするんだよ!そいつに恩でもあるってのか!?」
雁夜「いや、恨みしかない。ちょっと、交換条件でね・・・」
騎「まあ落ち着け坊主。それよりバーサーカーのマスターよ、
貴様も狙いはキャスターか?」
雁夜「なんだって?この中にキャスターがいるのか?」
騎「すくなくとも、なにかあるらしい。知らずにそやつに連れてこさせたのか?」
雁夜「いや、俺は連れてこられたばかりでなにが何やら・・・」
ウェイバー「狂化してるんだよな・・・そいつ。」
騎「まあそれはさておき、お主世の配下にならんか?」
ウェイバー「うぉおおい!だからそんなもん絶対失敗・・・ぶふぉ!!」
雁夜「(痛そうなデコピン。しかし、要は手を組むか否か・・・)」
雁夜は聖杯戦争史上でも最底辺に位置する魔術師なのは間違いない。
ならば、戦争に勝つには同盟を組む方がいいだろう。
形はどうあれ、手を組もうと言ってくれるのは正直な話ありがたい。
雁夜「(しかし、最終的には敵対することになるだろう。・・・いやまて、俺が聖杯戦争に参加したのは桜ちゃんを葵さんの所に戻すため。
そうなると、時臣のサーヴァント・・・アーチャーが厄介だ。悔しいが、奴にふさわしい実力をもった英霊だった。)」
実際はあまり仲良くないし、アーチャーを制御できてない事を雁夜は知らない。
アイツに限ってそんなのはありえない、と雁夜は考えてるからだ。
しかし、どちらにせよ極めて大きな壁である事には違いない。
雁夜「(いや、それだけで終わることじゃない。他にも敵はいるんだ。アーチャーを倒せば済むことではない・・・)」
――むつかしいことは、とりあえずぶっとばしてから考えるよ!
「・・・?」
夢の中で聞いた、バーサーカーの声が聞こえた気がした。
雁夜は振り返るも、そこには直立不動のバーサーカーしかいない。
雁夜「(でも、そうだな・・・俺の体はしばらくは持つ。なら、一体ずつ倒せばそのうち・・・)
・・・アーチャーだ。」
騎「んむ?」
ウェイバー「え?」
雁夜「アーチャーを倒すまでは同盟を組みたい・・・どうか?」
騎「アイツか・・・アイツの事は気に食わんし、余は構わん。坊主は?」
ウェイバー「あ、ああ。アーチャーを倒すまでなら。
(あのアーチャーに大打撃翌与えてたし、損はないだろう。)」
雁夜「(拍子抜けする位あっさりだったな。俺が難しく考えすぎなのかもな。)」
間桐雁夜、確実に自身の狂戦士の影響を受け始めていた。
一時同盟を組むことになった狂戦士組と騎兵組。
ライダーの戦車(チャリオット)に乗り込み、キャスター組の根城目掛けて侵攻開始。
しかし・・・
雁夜「おい、ここどうにもおかしい・・・ゲハァ!」
ウェイバー「喋るなよ!振動でダメージ受けてるじゃないか!
・・・でも、おかしいってのは僕も同意だ。」
騎「どういう事だ?そもそも、魔術師の工房とやらはこんなに柔いもんなのか?」
ウェイバー「いや、生前少し魔術をかじったとか、関わっただけの人物が呼ばれたのかも。
使い魔しか置いてなく、結界もないのは魔術師ならおかしいんだ。」
雁夜「同感、だ。それに、工房なら魔術で作られた罠があってもおかしくないしな。」
騎「ふーん、よくわからんなぁ。・・・お、出口だぞ!」
ウェイバー「な・・・な・・・・・・うげぇ!」
騎「・・・だから見るなと言ったろう。」
雁夜「ふざけるな・・・なんなんだ・・・なんなんだこれは!」
貯水庫の中を通り、開けた所にでると・・・そこには地獄が広がっていた。
幼い子供の皮を剥いで作られた服。
幼い子供の骨と肉で作られた椅子に傘。
眼球で作られたアクセサリー。
顔面をくり抜いて作られた時計立て。
内蔵をほとんどくり抜かれながらも、無理やり生かされている少女・・・
そこにある光景は、凄惨、残酷、非道・・・いくら言葉を並べても足りなかった。
ウェイバー「うるさい!ばかにしやがって・・・!」
騎「それでいいんだよ。こんなもん見せられて平然としてたら余が殴っとる。
なるほど、こういう連中なら一分一秒生かしとくのも胸糞悪い。」
雁夜「同感だ。アーチャーより先に・・・バーサーカー?」
バーサーカーが、机のうえに寝かせられてる・・・呼吸をしているだけの少女の元に近寄る。
少女の頭に触れてみるが、なんの反応もない。
撫でてみるが、やはりなにもない。
ほほに触れると、少女は目線だけをバーサーカーにむけて・・・一言、呟いた。
―――ころして、と。
狂「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
キャスターによって広げられた空間に、バーサーカーの絶叫が響き渡る。
深い悲しみ、怒り・・・狂わされてなおなくしてない優しさ。
狂「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
なぜもっと早く気づかなかったのか、呑気になにをしていたのだ・・・
狂戦士がこんなことを思うはずはない。
しかし、この叫びには・・・そんな感情が込められていた。
ウェイバー「バーサーカーの奴・・・」
雁夜「しかし・・・ウェイバーくんも、これみて怒ったりするんだな。」
ウェイバー「いや、するだろ普通。・・・・そっちの党首はしないのか?」
雁夜「絶対しない。それが俺の基準だから、魔術師ってのはどいつもそんなもんだと・・・」
狂「!」ピクッ
騎「二人共、ちと黙っておれ。」
ビュッ
騎「フン!」
ギィン!
狂「アパアアア!」
ドゴシャア!
暗「ガハァ!」
雁ウェ「「なっ!?」」
暗’S「「(ぬかった・・・逃げなくては)」
なお、バーサーカーに蹴られたのは空の彼方に吹っ飛んだ。
雁夜「今のは・・・アサシンじゃないか!最初の方で負けてたんじゃ・・・!」
騎「知らん。それより乗れ、ここから出るぞ。
余の戦車でここを焼き払う。」
ウェイバー「なあ、ここの子供達は・・・」
騎「息があるのもいるが・・・天国に行かせたほうが情けってもんだ。」
雁夜「・・・だな。頼む。」
騎「ゼウスの子らよ、塵一つ残さず焼き払え!」
ゴルディアス・ホイール『『ブモオオオオ!!』
ウェイバー「・・・・・・うわ!?」
ライダーの大きな無骨な手がウェイバーの頭を荒く撫でる。
騎「これで奴等は逃げも隠れも出来ん。引導を渡すのもそう遠いことではないぞ。」
ウェイバー「やーめーろーよー!」
騎「しっかしまあ、辛気臭い所だったのう。・・・よし、余にいい考えがある!」
雁ウェイ「「(あ、これアカンやつや。)」」
続く!
鬱蒼とした森の奥深くに建てられた、日本という国に不似合いな荘厳な石造りの城。
そこはドイツに本拠地を置く魔術師、アインツベルンの日本での拠点。
いわば日本支部だ。
その敷地内の数多の森を薙ぎ倒し、警備員としての任を与えていた魍魎を蹴散らし、そして結界はノック代わりなのか正面から木っ端微塵にする始末。
その侵入者は城の正門までたどり着き、城主の奥方と、その女性の騎士たる少女に告げる!
騎「おーいセイバー!酒盛りしようぜー!」
剣「(-_-#)・・・」
どこぞの日曜日の午後六時半からのアニメの野球しようぜ! 的なノリである。
剣「なあ征服王、その少年はお前のマスターだろうが、横の青年は何者だ?」
騎「おう?」
何を隠そうその人こそ、バーサーカーのマスターである間桐雁夜である。
キャスター陣営の根城をライダーの戦車で粉砕した際、酒盛りついでに連れてこられた・・・のだが、ライダーの荒っぽい運転によって全身ガックガクに震えている。
雁夜「ゲホ、ガハァ・・・」
騎「おお、こりゃいかん!おーい、生きてるか?」
ウェイバー「ライダー、その気遣いを少しでいいから僕にも分けてくれヨォォ~」
アイリ「(あれさえも珍しいのね。)」
剣「(苦労してるなライダーのマスター・・・)」
剣「しかし、酒盛りもまた真剣勝負。受けて立つぞ、ライダー!」
騎「そうこなくてはな!」
城の中庭に移動。
弓「我を呼ばんとは何のつもりだ?ほれ、王の酒を飲むがいい。」
ぐびぐび ゴクゴク
剣「なん・・・だと・・・」
弓「俺が法だ。」
剣「王たらば孤高。」
騎「王とは孤高にあらず!」
喧々諤々
ウェイバー「入り込めない・・・。」
アイリ「ところで・・・バーサーカー、よね?」
つい先日の戦いで、アーチャーを圧倒したサーヴァント。
そんな筋骨隆々な戦士は・・・体育座りをしている。なにゆえ?
雁夜「ちょっと、さっきな・・・でもなぜ三角座り?」
騎「フン、キャスターめが酒がまずくなる事をしていたからな・・・でも何故三角座り?」
ウェイバー「ほんと、バーサーカーとは何だったのか・・・でも何故三角座り?」
弓「ま、この席で粗相せんのならなんでも構わん。時臣のヤツの様につまらんのも困りものだがな。」
雁夜「?アーチャーは時臣のサーヴァントだろ?なんでそこまで疎んでるんだ?」
弓「煩いぞ雑種、たたでさえ醜悪な顔を表に出すな。ヤツは俺に魔翌力を献上し、臣下として務めている。
雑種共とこの我を同格に扱うでない。それだけで極刑ものぞ?」
雁夜「(もしかして仲悪いのか?にしても口悪いなコイツ。)」
実際の所、時臣は『ギルガメッシュ』という英霊に対しては掛け値なしの敬意を表しているが、
今地上に姿を現してるのはそのコピーに過ぎない。
事が済めばこの世からご退場願う存在、それが遠坂時臣にとってのアーチャーのサーヴァント。
雁夜にとってのバーサーカーや、ウェイバーにとってのライダーの在り方とは根本から異なるといえる。
こんな事は雁夜が知る由も無いし、思いつきもしない。
その男を、遠くから見ている男がいた。
?「(なぜ、あの男は対して興味を示さない?)」
アインツベルンの城の周りに配備させ、その内の一つと視覚を共有させている。
配備させているのはアサシンのサーヴァント、視覚を共有しているのは、そのマスターたる言峰綺礼だ。
言峰綺礼は、不満な顔が表に出ていた。
因縁の相手である遠坂時臣が呼び出したサーヴァント、アーチャーが目の前にいると言うのに、何故そんな反応しかしない?
もっとこう、我を忘れて飛びかかるとか、あるいはバーサーカーに令呪で命じて・・・
綺礼「・・・馬鹿な、私は何を考えている。」
そのような事を考えるなど、聖職者としてあってはならない。
この信仰の道において、あってはならない悪徳ではないか。
それより、早々に師の命令を終わらせよう。
綺礼「時臣師、始めます。」
時臣「ああ、頼んだよ。」
自宅に帰ってPCでの投稿となります。
IDは変わるでしょうが、ご了承ください。
弓「おい狂犬!我の酒が飲めんというのか!?」
雁夜「お、おい落ち着け。ほら、バーサーカー。」
酒を飲むことなく、一言も喋らずに終始三角座りのバーサーカー。
盛り上がってる席で、一人だま~ってるのは空気を読んでない行動であろう。
狂戦士にそんな事を期待する方が間違ってるのだが、アーチャーからしたら知ったことではない。
それでも、マスターである雁夜から酒が入ったコップを受け取ると、それを一気に飲み干した。
酒を飲んだらどんな反応をするのか?一同バーサーカーの反応を伺う。
狂「アパああああああああああああああ!!」
そして絶叫。前兆?んなものはない。
弓「ええいやかましい!なんなのだ一体!?」
雁夜「そういえば、キャスターの所で多くの子供が犠牲になってた所を見たときも、こんな感じに泣き叫んでたから、
多分その事を思い出したんだじゃないかな。」
剣「そうですか・・・あの外道め。」
ウェイバー「ところでこの声、どうにか止まらないか?」
騎「あの時はアサシンめが襲ってきたからなんとか止まったが・・・」
アイリ「待って、何が襲ってきたですって?」
この間もバーサーカーの絶叫は絶賛放送中である。
その音が止まるのは割と近い。
なぜなら、そのアサシンのマスターは自身のサーヴァントに対し――
綺礼「『礼呪をもって命ずる。アサシン総動員でライダーのマスターを抹殺せよ。』」
狂「アパぁ・・・・・・」
雁夜「あの時のアサシン・・・まだこんなにいたのか!」
今までどこに潜んでいたのか、中庭の目と鼻の先、それどころか入り込んでいるアサシンまでいる始末。
アサシン自身のスキルである『気配遮断』の力だろうが、その数は10や20ではきかない。
本来、一つのクラスに一人しか現界できないはずなのだが。
その正体は、『山の翁』と呼ばれた歴代ハサン・サッバーハの一人、『百の顔』のハサン。
多重人格者であった彼は、一つの体に数多くの人格、すなわち魂を宿していた。
サーヴァントとなった事で、その魂一つ一つに、仮初とはいえ別個の肉体を与える事が可能になった。
もっとも、一つ一つに分け与えた事で肉体はかなり弱く、人間相手でも不覚をとる可能性は非常に高くなるという弱点もある。
けれど、アサシンの得意技は文字通り暗殺。
正面切って戦うのが本領ではないので、大した問題ではない。
むしろその性質から、デメリットよりメリットの方が多かったりする。
弓「(チッ・・・時臣め不粋な真似を。)」
騎「お~い、少しは殺気を沈めてくれんか?余の連れがビビってビビって酒が飲めんのだ。」
今回、マスターである言峰綺礼がサポートにしか使わなかった為本領を発揮できなかったが、
人海戦術を使える『百の顔』は、相性や戦術眼を用いるタイプなら恐ろしい力を持つ。
ただし・・・
騎「遠慮はいらん。共に語ろうという者はこの杯を・・・」
この男、征服王アレクサンダーがいなければ。
暗「ヒヒヒ、ライダーは底抜けの阿呆と聞いてたが、これほどとはな。」
暗「ククク、そんな奴からの酒など飲めたものか。」
暗「プププ、違いない。」
暗「「「「「ハッハッハッハッハ!」」」」」
アサシンの一人が投げた短剣が、ライダーが手にしていた杯を正確に弾き、
その中に入っていた酒が地面に溢れる。
ライダーは地に堕ちた酒を見て、ゆっくりと立ち上がり、私服から征服王の戦闘衣装に着替える。
騎「そうかぁ。これが貴様らの返答では仕方ないな。」
大地に立つライダーを中心に、風と共に細かいなにかが近くの者達に飛んでくる。
雁夜「なんだこれ・・・?」
暗「砂・・・だと?」
アイリ「なんでこんな所に・・・」
砂、これ自体は屋外である以上は珍しいものではない。
ただし、今雁夜達がいる場所は整ったタイル床と花が咲き誇っている中庭。
ホンの少し程度ならともかく、大量の砂が・・・ライダーから舞っているのだ。
騎「行くぞ貴様等・・・余の王たる者の姿をその目に焼き付けるがいい!!!」
ライダーが起こした異変は全貌を表し、真夜中の深い森の奥の石造りの城は、
辺り一面遮るものはなにもない、雲一つない青空、熱風が吹き荒れる砂漠へと姿を変えた。
ウェイバー「まさかこれは・・・固有結界!?」
雁夜「こ、固有結界?」
アイリ「リアリティ・マーブル!心象風景を具現化する、限りなく魔法の領域に近い魔術よ!
この領域に到達したものは人類史で10人がいいとこだけど、魔術師でもないライダーが・・・!?」
騎「この風景はな、かつて我が軍勢が駆け抜けた大地。余と苦楽を共にした勇者達が心に焼き付けた景色。
余がこの風景を現実に出来るのは、『我等』全員の象徴であるからさ。」
砂漠から、アサシンとは比べ物にならない数の人物が現れる。
現代の感覚からしたら古めかしい、鎧に剣に槍に馬に乗った男たちだ。
剣「ひいふう・・・いったい何人いるんだ?」
ウェイバー「こいつら・・・一人一人がサーヴァントだ!」
雁夜「まさか・・・ライダーが生前率いていた軍勢をそっくりそのまま呼び出したってのか!?」
アイリ「なんてこと・・・!」
騎「見よ!我が無双の軍勢を!
肉体が滅び、はるかな時をこえてなお余に忠義する伝説の勇者達!
時空を超えて我が声に応える永遠の朋友達!
これこそが我が至宝!王道!
この征服王イスカンダル最強の宝具・・・『王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)なり!』」
王の軍勢「「「「「「「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」
騎「全ての勇者の道標として立つ者こそが『王』!!
故に!王とは孤高にあらず!
その姿は民の志の全てであるがゆえに!」
王の軍勢「「「「「「「「「「然り!!!!然り!!!!然りイィィィ!!!!」」」」」」」」」
騎「さて・・・アサシンよ、この岩一つない開けた大地、数で勝るこちらに地の利があり、
ここでは貴様らの気配遮断も対して役にはたたんな?
・・・・・・蹂躙せ「アパぁあああ!」ぬわ!?」
軍勢に号令をだそうとしたライダーに、バーサーカーが大声をだして止める。
その姿は、どうにもぎこちなく、弱弱しい。
狂「アパ、アパ・・・」
騎「?どうかしたのか?」
雁夜「どうもな、戦場で命が散るのがイヤみたいなんだ。
殴り飛ばす事はあっても、命を奪うことは一回もないみたいだから・・・
でも、今この状況は俺達が危ないことは分かってる。
それでも・・・我慢出来ずに大声を出しちまったらしい。」
騎「通訳ごくろう。・・・どうにも調子狂わされるな、そやつには。
では、行くぞ・・・蹂躙せよぉおおおおお!!!!!」
王の軍勢「「「「「「「「「「ALALALALALALALAaaaaaI!!!!」」」」」」」」」
こうして、ライダー対アサシンは、ライダーの圧勝で幕を閉じる。
宴もお開きとなり、雁夜とバーサーカーはライダーの戦車で、道の途中で分かれる。
その間、バーサーカーは終始無言だった。
子供達、そしてアサシン達に対してなにもしてあげられなかった事が堪えているのだろうか・・・。
続く。
王たちの宴から夜が明けて、夕方に時間は移る。
この日は、戦争中の僅かな休息、インターミッションで終わりそうだ、と思われた。
しかし、それは大きな間違いであった。
冬木を流れる大きな川。
その水面に立つのは、異界の異形を使役する悪霊、キャスターのサーヴァント、ジル・ド・レェ。
「これはこれはジャンヌ。どうかわたくしめが催す狂宴を満喫なされますよう。」
――おお天上の主よ!我は糾弾を持って御身を讃えよう!
キャスターが語る狂宴、そのメインゲストは、天まで届くような巨大な怪物。
タコを連想させるその体には、触手の一つ一つに口や目がついており、それらが時折瞬きや呼吸をしている。
それは、この世に存在してはいけない存在であった。
剣「つまり・・・あの怪物は私たちに戦いを挑みに来たのではなく?」
アイリ「ええ、キャスターに食事に呼ばれたから来たってだけよ!街に出たら数時間掛からずに平らげてしまうわ!」
河のほとりでキャスターの気配を察し駆けつけたセイバー主従。
如何にステータスに優れる彼女でも、一人でこの怪物の動きを止めるのは不可能だ。
そんな時、轟音と共に少し前に聞いた声がセイバーの耳に届いた。
騎「ようセイバー!・・・分かっとると思うが、こんな怪物ほっといたらおちおち戦いもままならん。今夜ばかりは休戦だ。」
剣「ああ。しかし、駆けつけたのは貴様だけか?」
騎「おお、ランサーにはすでに声をかけとる。もうすぐ来るはずだ。後、バーサーカーもマスターごと連れてきた。」
雁夜「や、やあしばらくぶりだな・・・」
狂「アパ!」
騎「後は・・・アサシンは余がぶちのめしたし、アーチャーは呼んだところでこないだろ。」
剣「了解した。こちらも共闘に異存はない。共に戦うとしよう、征服王に狂戦士よ。」
アイリ「アインツベルンも休戦を受諾します。」
雁夜「間桐の方もおなじく・・・グハァ!」
ウェイバー「アンタはむしろ下がってろよ!・・・あ、僕も賛成する。・・・で、どうやってアイツを倒すんだ?」
アイリ「速攻で決着を着けるしかないわ。今はまだ出てきたばかりで不安定だけど、食事で自給自足を始めたらそれでチェックメイトよ。」
剣「となると、狙うはキャスターの宝具の魔道書ですね。それさえ潰せばあの怪物は消える。」
騎「岸に上がったらおしまい、か。しかし、当のキャスターは分厚い肉の中に引きこもってる、と来たもんだ。ならば・・・」
?「引きずり出すしかあるまい。」
ヒュウ、と静かな風と共に、赤と黄色の槍を手にする美丈夫が現れた。
雁夜「ランサー、か。噂通りの美形だな。で、引きずり出した後はどうするんだ?」
槍「俺のこの赤い槍は、キャスターの宝具の天敵だ。掠りさえすればそれで十分。・・・しかし、先の戦闘でそれをやっているからな。最大限の注意を払っているだろう。」
騎「ランサー、投槍の要領で岸から狙えるか?」
槍「見えさえすれば他愛ないものさ。」
剣「なら、私、ライダー、バーサーカーで道を作ろう。いいな、二人共。」
騎「構わんが、余の戦車は空を飛べる故にいいとして、貴様は川の中の敵をどう攻めるんだ?バーサーカーと一緒に載せてやろうか?」
剣「私は湖の乙女の加護がある故にな、水の上で歩けるから問題ない。」
雁夜「なあ、サーヴァントが戦ってる間、できるなら俺に回復の魔術を頼めないだろうか・・・ゲフォ!」
アイリ「い、いいけど・・・人間相手は難しいわよ?」
ウェイバー「じゃあ、僕もやろうか?激しい戦いになるだろうし、同盟組んでる相手だしね。」
騎「ふむ、それなら坊主は残れ。コイツも載せねばならんしな。」
狂「アパァ!!」
剣「ならば・・・」
騎「一番槍はいただくぞ!」
狂「アパパアパ!」
剣「決着をつけるぞ!キャスター!!」
雁夜「ガッハ・・・!い、今はどうなってる?」
アイリ「セイバー達が必死に触手を破壊しているけど・・・」
ウェイバー「再生能力を持ってるから、何回切ってもキリがない・・・!このままじゃ・・・」
3騎のサーヴァントが攻撃を加えている最中、遥か上空から、強大な神秘を宿す武器が降り注ぎ、怪物の体を貫き、目に見える程の風穴を開けた。
アイリ「今の・・・宝具!?」
ウェイバー「って事は、アーチャーか!」
雁夜「へっ、遅いんだよ時臣。やっと参戦か。」
槍「(いや、あのアーチャーの性格からして・・・)」
~遥か上空 トッキー&アーチャーonヴィマーナ~
弓「貴様、少し見ない間に随分と偉くなったか?あの醜い怪物を我になんとかせよ、と?
礼呪でも使ってやらせるか?使えるものならな。」ハッ
時臣「うぐ・・・」
時臣「(必勝の為に用意した策が、何故こうも裏目にでる!あの落伍者でさえ、冬木の為に戦っているというのに、土地の管理者である私はこんな所で・・・!)」ギリギリ
剣「アーチャーの宝具による攻撃すら即座に修復とは・・・!」
騎「さあて、どう攻めたらいいやr・・・ってアレ?バーサーカーは?」
ガツガツムシャガツガツムシャガツガツムシャガツガツムシャ
剣騎「「ん?」」
狂「ガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャ!!」
剣騎「「食ってるぅううう!」」
弓「ハッハッハ!流石狂戦士!アホな事をさせたら右に出るものはいまいな!・・・お、みろ時臣、面白そうな場面ぞ。」
時臣「はっ?」
自衛隊パイロット(小林)「『なんだあの怪獣は・・・仰木先輩、もう少し近づいてみます!』」
自衛隊パイロット(仰木)「『ダメだ!小林、戻ってこい!』」
触手によって、戦闘機がメキメキと悲鳴を上げ、グシャグシャと機械部分が潰れていく。
小林「『うわああああああ!!』」
仰木「『小林ぃいいいい!!』」
怪獣が大きな口を広げ、戦闘機はあっけなく食べられてしまった・・・
自衛隊管制「『どうした仰木!なにがあった!?』」
仰木「『こ、小林が、怪獣に食われ・・・うおっと!?』」
仰木の機体が突如揺れる。
突風が吹いたのかと思ったが、機体の翼の所に・・・全身真っ黒な大男が!
仰木「『ひ、ひいいいい!な、なんだコイツは・・・ありゃ?』」
管制「『今度はなんだ!?』」
仰木「『えーと・・・小林の機体は食われたが、小林本人は怪人によって救出された模様。』」
管制「『(゚Д゚)ハァ?』」
騎「ほう、あの戦闘機なる兵器の操縦士を救出しおったぞ。相変わらずの善性っぷりだ。」
剣「しかし、先程までと様子が違わないか?怪異を喰らい始めてから・・・」
ガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャ
ガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャ
ガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャ
ガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャ
ガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャ
ガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャ
ガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャ・・・・・・ゴックン
ウェイバー「アイツ、何時まで食べる気なんだ?」
アイリ「味は良くなさそうなのにね。あら?アナタ、体大丈夫なの?」
雁夜「え?あ、言われてみれば、だいぶ楽になった・・・というか、魔術使ってない時と同じ感覚だ。バーサーカーを現界させてると、それだけで痛みがあるはずなんだが・・・」
小林「あのー、なにがどうなってるんですか?」←下ろされた。
キャスター「おお、この大海魔の肉を噛み砕くとは、まっこと強靭な顎の様ですなぁ。
しか~し、そんな程度では私の所までたどり着くなど不可能!精々己の不甲斐なさを嘆くがいい!」
狂戦士「アパー、アパー、アパー・・・・・・ア~パチャ~イ・・・」
続く!
狂「ア~パ~・・・チャァアアアアアアアイ!!!!」
醜悪で巨大な怪物の体の上で、狂戦士が吠える。
その声は、自身と同じく怪物を倒す為に戦う剣士と騎兵、
川沿いで戦士たちの武運を祈る槍兵や主達、
そして見物に来た野次馬たちにまで響いた。
騎「っかー、なんてでかい声だ。耳がイカレるかと・・・っ、マズイ!」
狂戦士の声に気を取られた隙を狙ったのか、怪物から生えている触手の一つがライダーの死角から襲う。
如何に歴戦の勇者といえども、乱戦では雑兵に命を絶たれる事は珍しくない。
ましてや相手は凶暴な生物。まともに喰らえば致命傷は必至。
狂「アパァアアアア!!」
だが、そうは問屋が下ろさない。
バーサーカーの蹴りが触手の軌道をライダーからずらした。
その勢いのまま、バーサーカーはライダーの戦車に着地する。
狂「アパ!大丈夫かよ?」
騎「おう!助かったぞ、バーサーカー!・・・って、え?」
聞き間違いか?
簡単な言葉しか口に出せなかったバーサーカーが、明確な意思を持って話しかけてきた?
狂「やぁ!アパチャイだよ!タコさんをい~っぱい食べたら、元気になったよ!
で、喋りづらかった所をぶっ飛ばしたよ!」
騎「あー、うん?理屈はわからんが、要は高密度の魔翌力の塊という訳か!
なら、余も頂いてみるとしよう!」
ライダーの剣で触手の一部を切り裂き、口に入れてみる。
鼻から感じる嫌な臭み。
舌に触った時の不気味な感触。
歯で噛んだ時のゴムの様な硬さ。
飲み込もうとした時の・・・ザラザラした飲み込みづらさ。
要約:不味すぎるわ!
騎「こんなもん食えるか!」
狂「アッパ!これでアパチャイも一緒に・・・!」
騎「おい、どうしたバーサー・・・うお!?」
急に止まったバーサーカーを見たライダー。
その顔が一瞬で驚愕に止まる。
噴火せんばかりの怒りを露わにし、一点を見つめている。
その方向は、野次馬が集まっている一画。
ライダーは少ししかバーサーカーと行動を共にしていないが、それでも人となりは割と分かる。
極めて優しく、善性という言葉がよく似合う男だ。
その彼が、こうまで激怒する理由とは?
狂「ゴメンライダー。ちょっと離れるよ。」ダッ!
騎「お、おい!?」
龍之介「超Cool!だぜ旦那ぁ!この世界は神様のオモチャ箱だぜぇ!」
雨生龍之介は、興味ある事に全身全霊を注ぐ男だった。
しかし、彼の興味は生命活動、とりわけ『死』について。
それを知るために多くの人々の命を奪ってきた。
そうすると最後に自分を待つ結末、それも分かっていた。
されど、彼はその道を選んだ。
細く長くよりも、太く短く生きる事をよしとしたのだ。
その途中で、彼は自宅から聖杯戦争の資料を手に入れる。
彼にとっては悪魔を呼び出す為のモノと考えていたが、
現れたのは歴史に名を残し、悪霊となった男。
彼らの相性は極めて良かった。
実際には、お互い相容れない部分もあったのだが、
交流を経てお互いを知り合い、そして悪霊の魂は新たな道を見つけた。
絆を深め、友と新たな生を歩むのだ。
龍之介「やっと見つけた玉手箱・・・!もう退屈なんてサヨナラだ!」
ヒュゥウウウ・・・ズドン!!
龍之介「ひょ?」
狂「・・・・・・・・・。」
龍之介「・・・誰?」
モブ「な、なんだコイツ!?」
モブ「え、ちょ、今どこから?」
モブ「空から降ってこなかったか?」
龍之介「あ、もしかしてアンタも悪魔さん?」
狂「・・・ちょっと、来てもらうよ。」ガシッ
龍之介「え、ちょ、ウヒョオオオ!!」
小林「zzz・・・」←魔術で眠らされた
アイリ「バーサーカーが・・・喋ってるですって?」
ウェイバー「それより、誰だよコイツ・・・っ!礼呪があるじゃないか!」
雁夜「ということは・・・キャスターのマスターか!」
龍之介「旦那ー!カッコイイー!ヒューヒュー!」
雁夜「なんか・・・能天気だな。アレを作ったんだから、もっと陰湿かと―」
龍之介「ん?・・・あ!俺達が作ったアートを壊したのはお前等か!」
ウェイバー「・・・え?今、なんて言ったんだ?」
雁夜「アート、だって?あんなのが、芸術だというのか?」
龍之介「芸術以外のなんだってんだよ!」
雁夜「ふざけるなぁあああ!!!!」
間桐雁夜が吠える。
彼は魔術師のことなどなにもわからない。
ただの青年だ。
そんな彼だが、行動力は一人前だ。
日常を愛する心は人並み以上だ。
狂わされても、一人の少女への愛は失わなかった。
歪んだ心は、心優しい戦士が癒してくれた。
故に、雁夜は怒った。
誰にでも与えられるべき、自分が得られなかった安らぎ、
それを自分勝手に奪い去り、弄び、陵辱したこの男を。
雁夜「蟲ども!コイツを食いちぎれええ!!」
雁夜の足元にいた、奇妙な虫たちが幼虫から成虫となり、羽ばたく。
それは、雁夜の実家である間桐の家の基本の一つ、虫の操作。
牛の骨をも噛み砕く力をもつ蟲、ただの人間である龍之介を肉塊にするのに時間はいらない。
止める者がいなければ。
狂「ダメよ、雁夜。」
きょうはいじょ。
雁夜「バーサーカー!何を言って・・・!」
狂「アパチャイ、小さい頃悪さしたらご飯抜きだったよ。」
狂「違う日はお尻ペンペンだったよ。」
狂「おっきい人が悪さしたらおまわりさんのところだよ。」
静かに話すバーサーカーの右腕は、震えている。
それも当然だ。なにせ、意識がほとんどない状態ですら子供達の惨劇に涙を流したのだ。
その元凶が目の前にいて、どういうわけだか理性を取り戻している。
今、どれだけの怒りに震えているのだろうか。
槍「それはさておき。」
と、ランサーは自身の獲物の赤い槍を龍之介に向ける。
龍之介「うひょう!?お、その真っ赤な血みたいなデザインバッチグー!」
槍「今、ここで殺されたくなければ、貴様の礼呪でキャスターを止めろ。」
龍之介「礼呪?なにそれ。」
雁夜「・・・お前の右手甲にある模様の事だ。それで命令されたらサーヴァントは逆らえない。ストックは3回までだがな。」
龍之介「ふ~ん・・・キャスターの旦那に「止まって」っつたら止まっちゃうの?」
雁夜「そうだ。」
槍「早くだ。さもなくば命、あるいは一生治らぬ障害を背負ってもらうぞ。」チャキ
龍之介「・・・・・・・・・あー!あんな所にキャスターの旦那が!」ユビズビシィ!
ウェイバー「えっ!?」クルリ
アイリ「えっ!?」クルリ
槍「なに!?」バッ
狂「アパ!?」バッ
雁夜「なにぃ・・・!?」グググ
龍之介「(今だ!)頑張れ旦那!ガッツだ!ファイトー!」キィン!キィン!キィン!
~海魔の中~
キャスター「おお・・・力が漲ってきます。礼を言いますよ、龍之介。」
キャスター「さぁ行きますよ。我がマスターの名に従い、殺戮の宴を世界中で巻き起こしましょう!!」
キャスター「(しかし、先程の感覚、魔翌力の増加の他に、なにか高翌揚感があったような?)」
~川辺~
龍之介「へへ、やっぱり応援したらパワーアップ!旦那、俺の分までハラワタを見てくれよぉ!!」
槍「きっさまぁあああ!!」
ランサーがゲイ・ジャルグ(赤い槍)で龍之介の首を刎ねようと振り上げる。
そこにバーサーカーが待ったをかけた。
狂「ダメだよ!死んだら生きられないよ!」
槍「今更なにを言っているんだ!大体生かす価値などないだろうが!」
狂「おまわりさんの所に連れてかなきゃダメだよ!」
ウェイバー「そんな事言ってる場合じゃないだろ二人共!」
雁夜「お、おい!明らかにデカブツのスピードが上がって・・・!」
騎「これは・・・!お前達、世の軍勢で一時的に切り離す!長くはもたんが、そのあいだに打開策を作れ!
バーサーカー、手をかせ!!」
狂「アッパー!!」
~ライダー・王の軍勢内~
王の軍勢「「「「「AaaLaaaaaaiii!!!」」」」」
大海魔「Kisyaaaaaaaaa!!」
王の軍勢「「「「「ぐわあああああ!!」」」」」
騎「おのれ・・・我が軍勢がこうも蹴散らされるとはな・・・。」
狂「アッパー!」
触手を蹴り飛ばす。
触手を殴り飛ばす。
触手を食べて魔翌力を回復する。
しかし、パワーアップした今、大海魔の再生スピードは、
バーサーカーの捕食スピードを上回っていた。
騎「バーサーカーも頑張っとるが、もって後数分といった所か・・・。」
~現実世界 川の辺り~
ウェイバー「え、ランサーに?うん、うん・・・分かった。えーと、電源ボタンは・・・これか。」ピッ
槍「ほう、それが携帯電話か、便利なものだな。で、俺がどうかしたのか?」
ウェイバー「ああ、今のセイバーの協力者の伝言で「セイバーが本調子なら対城宝具が使える」だって。」
槍「・・・本当か、セイバー。」
剣「・・・はい、その通りです。」
セイバーは数日前にランサーと交戦した時、左手の腱を負傷した。
その傷をつけたのはランサーの宝具である黄色い槍『ゲイ・ボウ』であり、
自然治癒さえも行われなくなるという恐ろしい呪いが込められている。
呪いを解くには、呪いの根源たるゲイ・ボウを破壊する他はない、と言っても過言ではない。
今、この場の最適解は、ゲイ・ボウを破壊する事だろう。
けれど、セイバーの誇りはそれを良しとしなかった。
決闘のさなかについたその傷は、紛れもなく騎士の誉れ。
また、宝具というのはその人物が生きてきた証が奇跡によって形をなしたもの。
その誇りを砕くなど、どうして提案できようか。
槍の英霊『ディルムッド・オディナ』の助力は、左手とは比べ物にならない力となるだろう。
セイバーはその考えを言葉にしようと、首をランサーに向けた。
剣「ランサー、あの時の傷は・・・っ!?」
だがその瞬間、セイバーは絶句する。
ランサーがなんのためらいもなく、自らの誇りである宝具『ゲイ・ボウ』をへし折ったからだ。
そうして呪いは解け、セイバーの左手に力が戻る。
しかし、呆けた顔は戻らない。
槍「なあセイバー、俺はキャスター達が許せない。」
剣「え?」
槍「人々を絶望を悦とし、気のままに殺戮を繰り返す。紛れもない悪だ。騎士として決して見過ごすわけには行かない。」
槍「暴君として自分の国を滅ぼしたライダー、そして出処は知れんが破壊と悲劇を繰り広げる為に呼ばれたはずのバーサーカー。
今、罪なき民の為に自分の全てを賭して戦っている。」
槍「さらに、そこにいる外道の片割れに至っては、友の為に殉じる覚悟すら示した。騎士の名誉であるそれを、だ。
なら、今俺にできる事は・・・我等の『騎士道』をお前に託すことだ。後は任せたぞ。」
剣「・・・・・・分かりましたランサー。今こそ我が剣に勝利を誓う!」
騎「・・・っと、ミトリネスに言われた通りの場所に奴を出したが、一体何を「ライダー、離れるよ!」んん?おわ!こりゃいかん!!」
ライダーの『王の軍勢』が消滅し、大海魔が帰ってくる。
その化物の前に立つのは、聖剣を手にする少女。
少女は聖剣を上段に構え―――
過去・現在・未来問わず、戦場の勇者達が抱く誇りが結晶となったもの。
正義と誇り、勇者達の魂の結晶。
今ここに、勇者を統べる王は、高らかにその名を世界に放つ。
その名は―――――!!
エクス カリバァアアア
剣「 約束された 勝利の剣 !!!!!」
魔「こ、この光は・・・!」
自分の焼こうとする太陽の如き光を前にして、キャスターは小さい声をだす。
その光には見覚えがあった。
フランスの救国の英雄として、シャルル皇太子の戴冠式に参列し、
大聖堂のステンドグラスから差し込んできた光だ。
ああ、私はなんと愚かだったのだろう。
なぜ、この光が穢されると思ったのだろう。
どれだけ尊厳を奪われても、悪辣な神にも運命にも、その光が曇るなどあり得なかった。
私はなにを・・・お?
光の中から、一人の少女が姿を現す。
見間違うことも忘れることもない。
いつも共にあった、ジャンヌ。
あんな事をした私に、ジャンヌの光を曇らした私に、手を差し伸べている。
私は・・・また彼女の手をとっていいのだろうか?
魔「おや?この格好は・・・。」
大海魔の肉塊に埋もれていた自分の体から、触手が外れている。
その代わりに、自分の今の姿は・・・・・・・・・ああ、なんということだ!
今の今まで忘れていたなんて!
ジャンヌとともに、戦場を駆け抜けたあの時の姿ではないか!
どうして忘れていた?どうして思い出せた?
思い出させてくれたのは・・・一人しかいない。
あの時、私の背中を押してくれた者、戦場で共に戦う、託される言葉。
戦場でありふれた光景。けれど、長らく戦場に出ていなかった私は、あの時の事を忘れてしまってた。
なんという事だ・・・彼は・・・龍之介は、神への愛を取り戻してくれただけではなく、
ジャンヌとともにあった時の事まで私の所に持ってくてくれたのか!
魔「ありがとうございます、龍之介。貴方のおかげで、私は自らの足で、ジャンヌの、ところへ・・・・・・。」
~キャスターとの決戦後・深夜の廃病院~
ケイネス「この・・・役たたずが!宝具の片割れを失い、仮にもマスターであったソラウを拐かされる等と!」
槍「・・・・・・・・・。」
ケイネス「また騎士道とやらに浮かれておったのか!貴様はどれだけ馬鹿なまねをすれば・・・!」
ヒステリックに叫ぶケイネスに、ランサーはただ頭を垂れる。
川辺での決戦の直後、あの場であった事を思い出していた。
龍之介『わぁ、すっげーキレー・・・。』
セイバーの宝具によって、光の粒子となり消滅したキャスターを見て、龍之介はただ涙を流した。
キャスターを滅ぼされた悲しみではなく、光り輝くアートを目の当たりにしたからだ。
龍之介『俺だっせぇ・・・こんなの見たこともなかったのに、芸術家気取りとか・・・
旦那にも言ったじゃねえか、絶望も人間賛歌も、神様は大好きなんだって・・・
・・・なぁ、あんた等。』
剣『・・・なんだ?』
龍之介『俺、警察に行くよ。』
ウア雁剣槍騎『『『『『『なっ!?』』』』』』
龍之介『そこでさ、命って芸術に対してさ、考えてみるのもいいんじゃないかなって・・・
ま、俺散々好き勝手やってきたから確実に死刑になるだろうけど。』
雁夜『あー・・・お前にこんな事いうのもおかしいんだけどさ、いいのか?』
龍之介『何言ってんだよ!こんなCOOLなもん、生まれ変わったって忘れるわけねえじゃん!』
槍「(あの時、俺はためらいなくあの男に槍を向け、バーサーカーはためらいなく槍を止めた。
そして、セイバーの宝具の事もあったとは言え、命をなんとも思わぬ外道に
贖罪の道を歩ませることになった。)」
槍「(バーサーカーのあり方は、言動こそ幼いものだが・・・高潔な魂と言っても過言ではないだろう。
・・・それに引き換え、俺は何をしている?この世に来てから、俺は何を成し遂げた?)」
ケイネス「この分では、フィオナ騎士団の伝説も怪しいものだな!貴様如きでもなれるのだからな!」
槍「・・・・・・っ!」
ランサーは反論を口にしようとして、咄嗟に口を塞ぐ。
ケイネスの怒りは最もだから。
自身の伝説を、自分自身で貶めているのだから・・・
槍「(全くもって情けない!こんなザマでは、皆に合わせる顔が・・・む?)」
槍「ケイネス殿、少しよろしいですか?」
ケイネス「なんだぁ?口答えする気かぁ?」
槍「いえ、自動車という乗り物の音が聞こえました。真っ直ぐこちらに向かっている様です。」
ケイネス「なに・・・チィ、偽装結界を仕掛けてから長いからな・・・話は後だ、迎えて来い、ランサー。」
槍「承知。」
~廃病院 中庭~
アイリ「(どうしてこんなスカスカの結界を貼ってるのかしら?)」キョロキョロ
剣「暫くぶりだな、ランサー。この場所は、私の協力者に調べてもらった。」
槍「そうか・・・所でセイバー、我が主の婚約者が何者かにさらわれたのだが、心当たりはないか?」
剣「なんだと?・・・アイリスフィール?」
アイリ「」フルフル
剣「・・・と、いうわけだ。悪いが知らない・・・ん?(そういえば、キャスターのマスターの・・・)」
~川辺~
狂『じゃあ、コイツはアパチャイが送っていくよ。』
龍之介『別に逃げやしないけど・・・大人しくタクシーされとくよ。』
狂『アパ!だから・・・皆は帰って大丈夫よ。』ギロリ
剣『(バーサーカーはどこを睨みつけているんだ?)』
剣「まさか、あの時切嗣があの男を狙って・・・!」
槍「心当たりがあるのか!?」
剣「っ!・・・すまない、わからないんだ。協力者は一応協力してくれているが、
我々のような存在を嫌悪している。今どこで、何をしているのかさえも教えてはくれないだろう。」
槍「そうか・・・いや、気にするな。信用のなさではこちらも似たようなものだ。しかし、お前は何をしに来たんだ?」
剣「ああ・・・決着をつけにきた。何を企んでるかは知らんが、勝負をつければ文句もあるまい!」ヨロイシュピィイン
槍「ふっ・・・そうだな。少しは名誉挽回もせんとな!騎士団の皆に申し訳がたたん!」
剣「ブリテンが騎士王、アーサー・ペンドラゴン!」
槍「フィオナ騎士団が一番槍、ディルムッド・オディナ!」
剣「いざ・・・」
槍「尋常に・・・」
剣槍「「勝負!!」」」
剣の英霊と槍の英霊の一騎打ちは、なぜ『英雄譚』という物が作られたのか、という問への答えになるだろう。
ほんの一瞬の攻防に行われるやり取り、踊るような姿、その全てが見る者の心を惹きつける。
しかし、それも見ようとしなければただの対岸の火事。
見ようとしてないもの、今そこには二人・・・
切嗣「わかってると思うが、妙な動きをした瞬間、この女を[ピーーー]。
そのギアススクロール、サインするか?」
ケイネス「よりにもよって、貴様がソラウを・・・!このセルフギアスロールは・・・」
その条文に書かれているのは、要約すると『ランサーを自害させたら、衛宮切嗣はケイネス達に一切の危害を加えられない』というもの。
聖杯戦争の敗北を自ら認めるか、あるいは婚約者ともどもこの地で果てるか・・・この条件では、実質一択である。
ケイネス「礼呪をもって命じる。ランサー・・・」
―――――自害せよ
英雄譚に記されるべし戦いは、突如中断された。
セイバーとランサーの決闘の最中に、ランサーが自らの槍で自身の心臓を貫いたのだ。
――何が起こった?何をされた?
二人は共通した疑問を浮かべる。
そんな時に現れたのは、ランサーのマスターである男性と、その婚約者。
その隣には、銃を構える男。
槍「そう、か、礼呪、か・・・!きさ、ま達はぁ・・・!そこまでして勝ちたいか!?何一つ恥を感じることすらないのか!?」
ランサーの乙女狂わす顔立ちがみるみる内に憤怒に塗られていく。
ランサーの喉が呪い節を残す為のモノに特化していく。
悪鬼のごとく、悪霊の如く、この世の全てを呪う存在に変貌していく。
槍「赦さん・・・断じて貴様らを赦さん!!」
このまま、ランサーは全てを呪いながら消滅する、はずだった。
ランサーは憎しみを吐露する準備をしながら、現世に現れてからの走馬灯を脳裏に流していた。
その内の光景の一つが、ランサーの眼に輝きを戻す。
雁夜『・・・ゲホ、ガハッ!』
狂『雁夜!大丈夫かよ!?』
雁夜『はは・・・大丈夫、ではないな。だが、元より余命はたったの一ヶ月。十分持ってる方だよ。』
雁夜『でも、さ、バーサーカー・・・一つ、いいか?』
狂『アパ?』
雁夜『もし、俺が勝っても、負けても・・・死ぬときは、桜ちゃんの傍がいい。
だから・・・その時が来たら、何があっても・・・あの子の所に連れて行って欲しい。・・・頼めるか?』
狂『・・・アパ!アパチャイ一回死んじゃってるけど・・・約束、絶対守るよ!『死んでも守るよ!』』
――そうだ、あの時、あの男はそう言った・・・。なら、俺が死んでも守るべき事とは?
聖杯戦争に勝利?いや、それはもう無理だ。俺はもう死ぬしかない。
ならば、俺がするべきことは・・・現世での主たちを守ること!それこそ、死んででもなすべきことだ!!
槍「うぅ・・・おおおおおおおお!!!!!」
ケイネス「!?」
剣「アイリスフィール!」
切嗣「・・・アイリ!」
ランサーは胸を抉った槍を引き抜いて、自慢のスピードでアイリスフィールの背後に回り込み、喉元に槍を押し付ける。
槍「ケイ、ネス、殿から、離れ、ろ・・・!俺が、死ぬ前に、はなさなけれ、ば・・・・・・この女の喉を切り裂くぞぉおおおおお!!」
息も絶え絶えに、銃を構える切嗣に叫ぶ。
制限時間はそうない。銃を捨てるか、女の命を捨てるか、そのどちらか、を突きつけたつもりだった。
意趣返し、という奴だ。しかし・・・
ケイネス「・・・その必要はない、ランサー。」
槍「・・・?」
ケイネス「この男とは、契約を交わしたのだ。敗退を認める代わりに、我らを見逃す、とな。」
槍「そう、なのです、か・・・」
気が抜けたのか、ランサーの右足の膝から下が消える。
そうなることで、アイリの喉元から槍が離れた。
槍「申し訳、ない、貴婦人・・・。」
ケイネス「・・・なぁランサーよ、貴様は何を求めて聖杯戦争に応じたのだ?」
槍「・・・以前も、言ったように、望みなど、ありま、せん。しかし、一つ、あるとしたら・・・」
―――生前俺は主君の妻の手をとるか、主君の忠誠を貫くか、の問いに、主君の妻を取りました。
今度は、主君の忠誠を取りたかった、それだけ、で、す・・・。
切嗣「ギアスロール成立・・・完全に消滅したな。」
ケイネス「ああ・・・ランサー、貴様はどこまで愚鈍なのだ。
生前の悔恨の払拭、という望みがあったのではないか・・・。」
ケイネス「さて・・・おい、この人でなし。これでお前は私たちには・・・」
切嗣「ああ。『ボクは』なにもできない。・・・やれ、舞弥。」ユビパッチン
ドタタタタタタタ・・・・・・
剣「このっ・・・・・・外道がぁあああああ!!」
「人でなし!」をセイバーに言わせるか迷った。
続く。
~間桐家 玄関~
桜「おじさん?どこにいくの?」
雁夜「協会から来るように言われてね・・・ゴホ キャスター討伐の褒賞だって。とき・・・いやなんでもないよ。」
桜「?」
雁夜「(下手に時臣の名前出すとどうなるかわからないしな・・・)それじゃあ、行ってきます。」アタマナデナデ
桜「あ・・・いってらっしゃい。」
力弱く、けれど地面を踏みしめて進む雁夜の後ろ姿を、桜はじっと見つめていた。
いつもなら家に入るのに。どうしてか、ずっとずっと、見えなくなるまで、見えなくなっても立っていた。
雁夜「あー疲れた・・・ゲホゲホ!! あーくそ、限界が近いな。」
冬木の外れにある協会。聖杯戦争の観察役の拠点でもある。
中立の立場を守り、魔術の秘匿に力を注いでいる。
雁夜「時臣も来てるんだったな・・・あいつには桜ちゃんに謝らせないと気がすまねえ。いくぞバーサーカー・・・おい?」
狂「アパ!」
バーサーカーが雁夜から反対方向を指差す。そこから現れたのは・・・
遠坂葵「あなた・・・雁夜くん?」
雁夜「葵さん!?どうしてここに?」
葵「言峰さんから言われて・・・雁夜くんも?」
雁夜「あ、ああ。そんな所さ。とにかく早く入ろう、ここは冷える。」
葵「え、ええ。」
~協会~
雁夜と葵は扉を開き、協会の中に入る。
協会特有の横に陳列された椅子、その一番前には二人が見慣れた背中があった。
葵「時臣さん!」
雁夜「時臣!ちょうどいい、お前には言いたいことがあったんだ!」
足を引きずり、雁夜は時臣に近づく。
雁夜「お前、前のキャスターとの戦い、ちょっと攻撃しただけでほったらかしただろうが!それでキャスター討伐に貢献、っていえるのか?」
雁夜「それのどこが優雅なんだ?ああいう時こそ遠坂の役目を果たす時じゃないのか?」
雁夜「・・・?おい、お前が俺のこと馬鹿にしてるのは知ってるが、返事くらいしろよ。」
ようやく、雁夜は一般人より倍の時間をかけて、遠坂時臣の所に到着する。
しかし、雁夜の方を振り向こうともしない。
雁夜「おい、時臣!・・・こっち向けよ!」
ドン!と雁夜は精一杯の力を振り絞って時臣に張り手を放つ。
絶対安静の体を無理に押して放ったそれは小突く程度の力しかなかったが、時臣の体を少し動かし、そのまま力なく地に伏す。
椅子に立てかけられていた、家宝の大きなルビーがかけられた杖がカラン、と力なく音を立てた。
葵「・・・え?」
雁夜「・・・え?」
時臣の目には光が映っておらず、最低限の反射もなく・・・なにより、呼吸をしている様子も見られない。
その場の二人は理解した・・・いまここにいる遠坂時臣は、死亡していると!
雁夜「と、時臣ぃ!おい、馬鹿なまねはやめろ!お前がいなかったら、俺が死んだあと誰が桜ちゃんを・・・おい!」
葵「時臣さん!目を開けて!時臣さん!」
二人が駆け寄り、必死に時臣の目をさまそうとするが、既に時間が経過しているからか、その気配もない。
そんなとき、雁夜の傍に控えていたバーサーカーが実体化した。
雁夜「どうしたバーサーカー?・・・まさか別のサーヴァントか!?」
?「待て待て、はやるな。矛を収めろ、間桐雁夜。」
雁夜「その服・・・監査役か。」
監査役はポーズで協会を本拠地にしているのではなく、れっきとした本当のクリスチャンであり、神父として認められている人物である。
今雁夜達の前に姿を現したのは言峰綺礼。現監査役の言峰璃正の息子であり、彼も監査役の任を与えられている。
葵「あなた、時臣さんのお弟子さんの・・・」
雁夜「え?知り合いなのかい?」
葵「え、ええ。お父上の璃正さんともよく会っていたの。」
雁夜「時臣の奴、八百長じゃねえか・・・ところで、なんでここにいるんだ?」
綺礼「私が協会にいるのは当たり前と思うのだが?それより、そこに倒れている時臣師・・・下手人は君かね?」
雁夜「違う!俺が来た時には・・・バーサーカー?」
バーサーカーが体を大きく身振り手振りして、何かを訴えている。
以前理性が戻った時は話せていたのだが、その時は1時間持たずに元に戻ってしまった。
狂「」フンス!フンス!
雁夜「鼻で呼吸・・・いや、匂い?」
狂「」コレ!コレ!
雁夜「どこを指差して・・・っ、心臓のある場所に切り傷が・・・!」
狂「」アレ!アレ!
雁夜「で、監査役・・・っ!時臣を殺したのはアイツなのか!?」
葵「なっ・・・!なんですって?」
綺礼「おいおい、酷い事をいうな二人とも・・・」
フルフル、と綺礼の体が震えだす。その姿は、深い悲しみをこらえているように見えた。
綺礼「まさか・・・時臣師が・・・まさか・・・まさか・・・・・・!」
震えながら、綺礼は懐から何かを取り出す。
それは・・・ナイフよりは大ぶりで、剣よりは小ぶりな刃物、短剣。
雁夜はなにをしているのかはわからなかったが、葵は察しがついた。
魔術の事はほぼわからない彼女だが、それは逆に言えばほんの少しだけ知っているという事。
彼女は見覚えがあったのだ。それは、特に親しいものに渡す、友愛と信頼の証の――
綺礼「完璧を心がけているあの時臣師が・・・弟子が師を裏切るのは普通だと言っていた時臣師が・・・っくふ!あそこまで隙だらけだったとは!全く思いもよらなかった!くはっ、ハハハハハ!!」
歪みきった笑みを浮かべて、言峰綺礼は高笑いを上げる。これでハッキリした・・・遠坂時臣を殺したのは、この男だと!
葵「アンタって人は・・・!よくも・・・時臣さんを・・・よくもぉおおおお!」
遠坂葵は目尻に涙を、普段柔らかな笑みを浮かべるその顔に憤怒を露わにし、床に転がっていた時臣のステッキを手に夫の敵討ちに挑む!
雁夜「だめだ、葵さん!・・・ッゲホ バーサーカー!葵さんを守れ!」
狂「アッパー!」
相手は戦いのプロ。まともに戦わせては1秒持たずに彼女は殺される。
その為、雁夜はバーサーカーに葵に仇名す者を退けようとした。
バーサーカーが動いたその瞬間、言峰綺礼の後方から輝く武具が飛来した。
今日は以上。暑い。
このSSまとめへのコメント
落ちたのか…とても残念。