男「真夜中の月、綺麗だな」友「ああ」 (42)
短編
地の文あり
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月が綺麗ですね→I love you.
よっしゃホモやんけ!
その日は綺麗な満月だった。
夏だというのに、いい月だった。
月明かりに照らされている俺たちは、とある山に来ていた。
なんて言う山かは忘れたけど、この山に登るのも久しぶりだ。
道のりは長い。
男「そういや、つい最近皆既月食があったな」
友「ああ。俺も見てたよ」
男「結構綺麗だったな」
皆既月食は、確か太陽と月の間に地球が来て、月に地球の影が重なるんだっけか。
なんで紅くなるのか分かんねぇけど、ほんと綺麗だった。
友「まー、俺は皆既日食の方が好きだけどな」
男「だよな。金環日食とか超見たい」
友「ああ、ダイヤモンドリングな」
男「皆既日食、遠い先だな。見えるかな」
友「見えたら見たいなぁ」
男「てか、まず友と一緒にいるかどうかだけど」
友「それはない」
男「ちょ、真顔でそんなこと言うなよ!傷つく!」
友「ま、早く行こうぜ」
男「……あぁ、そうだな」
>>2
悪いが俺はノンケだ
友「そういや、中学の頃にさ」
男「おう」
友「なんか登山やったよな」
男「あー、なんか修学旅行で行ったな」
中学の修学旅行。
五月初めに、長野へ行った。
やっぱりなんて言う山かは知らないけど、結構楽しかった覚えがある。
俺と、友と、幼馴染。
あの時はこの三人で登っていた。
男「確か、友がバスで吐いてたな」
友「うるせ、バス酔いが酷いんだよ」
男「ハハハ、あん時は面白かったな」
友「皆で笑いものにしやがって」
道のりは長い。
あの頃が懐かしい。
友とこんな話をするのも、ちょっとした暇つぶしだ。
友「あ、荷物重いだろ。変わるか?」
男「え?いいのか?」
友「いいっていいって」
俺は友から荷物を受け取り、また歩き出した。
この荷物、大きなバッグの中身は、まあ、後で紹介しよう。
俺たちは、この荷物の他に、それぞれで個人の荷物も持って来ている。
それプラスこの荷物なので、重さは尋常ではない。
友「男って、確か中学の時に彼女いたよな」
男「ああ、その話はしないでくれ」
中学の彼女、というのは同じクラスだった美少女さんだ。
美少女さんは中学三年の冬、俺に告白し、そのまま付き合っていたが、卒業前に振られてしまった。
というより、原因は向こうの浮気だ。
相手は、同じクラスだったDQN。
友は必死に美少女さんの浮気相手だったDQNと闘った。
今でも、その決闘は目に焼き付いている。
友は結局負けてしまったが。
友「美少女さん、可愛かったのに、残念だったな」
男「もう大丈夫だ。これから、また新しい人を探していくよ」
友「く、リア充マジで殺す」
男「まあまあ、落ち着け。それより、あん時はありがとな」
友「過ぎた事だ」
中学でも、友は一番の親友だった。
三年間同じクラスになるという奇跡も起こった。
幼馴染もいたけど、一年と三年で違うクラスになってしまったので、学校で関わることは少なくなっていた。
それでも家が近かったこともあり、結構な割合で俺の家に来て、妹と遊んでいた。
学校外で関わることは多かった気がする。
高校には三人同じところに入ることができた。
クラスはそれぞれ離れてしまったが、友と同じ部活に入り、関係はずっと続いていた。
幼馴染は相変わらず家に来て、当時中学二年だった妹に勉強を教えていた。
友「高校は高校で楽しかったな」
男「今考えるとまさか夜にこの山登ってるとは思ってなかったが」
友「それは言える。こんな夜中にな」
俺は高校では意外と成績が良く、学年でも五位以内を争っていた。
友は大体二十位くらい、幼馴染は八十から九十位をウロウロしていた。
友「去年の五月にさー。修学旅行行ったじゃん?」
男「おお、確か北海道だったか」
高校二年の五月。
北海道に行って、俺たちは存分に遊んだ。
あっちは五月といえどとても寒く、長袖必須だった。
そんな中、友は半袖の服しか持ってこず、寒い寒い言いながら風邪を引いて寝込んだ事件があった。
あの時は本当に可哀想だった。
そういえば、幼馴染はこの頃に少しネガティブになっていたようで、幼馴染と同じクラスの人から助けを求められたことがあった。
俺がちょっと慰めると、すぐに元気を取り戻し、復活したが。
思えば、告白されたのも、これが影響していたのかもしれない。
友「俺、あん時風邪で寝込んでるときにさー」
男「おー」
友「ホテルの窓の外にさー。見知った人を見た気がしたんだよな」
男「ほー。誰?」
友「DQN」
男「は?あいつ北海道いんの?」
友「さあ?だから勘違いかなと」
男「そうだろ」
友「だよな」
まあ実際、当時の俺が聞いてたら事実確認なんかせずに飛び出していったろうな。
言わないでくれてありがとうな。友。
男「おー、いい眺め」
ふと、後ろを振り返ってみる。
そこからは、今まで歩いてきた道のりと、麓にある俺たちの町が見えた。
町はまだ明かりは消えず、そこだけ輝いていた。
所々、赤い光と電灯の黄色い光、そして家の明かりが見える。
友「おー、ほんとじゃん」
男「俺の家、あそこらへんかな」
友「見えねぇよ。こんな遠くからじゃ。……それより」
男「……ああ、早く行くか」
高校二年の夏、俺は幼馴染に告白された。
俺は別に断る理由もなかったし、妹も嬉しがっていたので、付き合い始めた。
友は相変わらずだったが。
友「お前の人生は、嬉しいことばかりだな。羨ましいぜ全く」
男「そうか?でも、振られてるぞ?」
友「でも告白されてるじゃん」
男「いや別に告白されたからいいってもんじゃないと思うが……」
友「ちげーよ。それだけで羨ましいわ」
全く、友は結構楽天家だな。
振られるのは精神的にキツい。
友「でも、なんでお前だけ告られるんだろうな。不思議」
男「あれだよ。俺優しいから」
友「ハハッ、面白い冗談だな」
男「ひでぇ。あの時は優しかっただろ」
友「今とは正反対」
男「一々ひでぇな!……あ、あと頭良かったし」
友「くっ、そこだけは認めるけども!」
男「ちゃんと大学も行けたし。まぁ、これから行くか分からんけどな」
友「でも、なんでお前だけ告られるんだろうな。不思議」
男「あれだよ。俺優しいから」
友「ハハッ、面白い冗談だな」
男「ひでぇ。あの時は優しかっただろ」
友「今とは正反対」
男「一々ひでぇな!……あ、あと頭良かったし」
友「くっ、そこだけは認めるけども!」
男「ちゃんと大学も行けたし。まぁ、これから行くか分からんけどな」
>>17
ミスった
友「妹ちゃんは元気か?」
男「おう、もう大丈夫だよ。リハビリも順調だし」
妹は今年の春、事故で怪我を負ってしまった。
俺は当然、悲しんだ。
しかし、友は俺よりも悲しんでくれた。
友はとてもいい奴だ。
妹も嬉しかったろうと思う。
友「今度、会いに行っていいか?」
男「お前ならいいよ。てか、帰ったら一緒に行くか?」
友「……行けたらな」
男「?最近忙しいのか?」
友「……ああ。ちょっと準備が多かったからな」
男「……そうか。じゃあ早く済まさなきゃな」
友「……ありがとな」
男「はー、着いたー!」
友「よっこいせっと」
友は、ドスッと背中に抱えてた大きなバッグを降ろす。
男「あ、てめそっと降ろせよ」
友「大丈夫だって、こんぐらいなら」
友はマジで楽天家だ。
男「さて、じゃあ、始めるか」
友「荷物、持ってきたんだろうな」
男「当然」
俺たちは、それぞれの荷物から、「あるもの」を取り出した。
そうして、俺たちは働きアリの如く、せっせと準備をした。
そういえば、働きアリの中でも働かないやつはいるんだっけ。
アリでも働かないやつはいるんだなぁ。
友「今年の春」
男「……なに?」
友「……残念だったな」
男「……またその話か」
高校三年、今年の、春。
俺が最も忘れたい、忘れがたい出来事だ。
高校三年の春。
俺は受験シーズンということもあり、勉強に集中していた。
高校三年でやっと一緒になった友は、勉強している俺をいつも応援していた。
友も進学だったので、一緒に勉強したこともあった。
当時の俺は進学にはさほど問題はなく、友も普通にやれば受かるだろうくらいの成績だったので、毎日が楽しかった。
志望校も、友と一緒だ。
しかし、問題は幼馴染で、同じところには少し足りなく、俺たちより少し下の大学を志望していた。
幼馴染は高校二年から塾に通い出し、受験モードに入っていった。
高校二年の頃は学校で、俺は幼馴染に勉強を教えたり、また家でも勉強を教えたりしていた。
ついでに妹も一緒に教えたりしていた。
妹は俺たちと同じ高校に入り、勉強を教えられたこともあり、成績が良くなっていった。
俺より、とは行かないが、当時の友と同じくらいだったと思う。
さて、ここから、最悪の出来事の内容を話そう。
高校二年の冬
幼馴染は塾に通い出して、この頃から様子がおかしくなっていった。
思えば、これが始まりだったのだろう。
幼馴染は塾の帰り、よく俺の家へ遊びに来ていたが、高校二年の冬から突然来なくなった。
俺は特に気にしていなかったが、妹は気にしていたようだ。
高校三年になったとき。
俺は妹に相談された。
幼馴染のことだった。
最近様子がおかしく、家にも来ていないので、聞いてきて欲しいとのこと。
俺は断ったが、妹の「彼女でしょ?」の一言で負けた。
幼馴染は確かに、最近すれ違いが多いが、まだ彼女だ。
嫌々ながらも、俺は引き受けた。
何故か彼女と話すのが嫌だった。
何か悪い予感しかしなかったから。
次の日に、俺はすぐに聞きに行った。
幼馴染は意外と簡単に捕まった。
「最近、塾が忙しいのか?」
「……うん」
「前までは帰りに俺の家に来てただろう。それが今は来なくなって、妹が心配していたぞ」
「……ち、ちょっと迷惑かな?とか思っちゃって。あ、あと塾の宿題とかあったし……家でやってたの」
「別に、それくらいなら俺の家でも出来るだろう」
「……で、でも、私一人の実力でやりたいからさ。男くんの助けは、欲しいけどダメみたいな」
「……まあ、それなら仕方ないが、たまには妹に顔見せに来いよ」
「……うん。行けたら行くね」
これは全て、全くのデタラメだった。
それが分かったのは、一週間後の夜。
友から一通のメールが届いた。
『幼馴染が知らん男と歩いてる』
もちろん最初は信じなかった。
でも、友から送られた写真を見て、俺は信じなくてはならなかった。
知らん男は、暗闇の中だったので誰かは分からなかった。
しかし、幼馴染の方は電灯のおかげで分かってしまった。
友から二枚目が送られてきた。
キスをしている写真だ。
俺は、吐き気を催した。
俺がトイレに立てこもっていると、心配したのか、妹が駆けつけてくれた。
今は、妹の優しさがただただ嬉しかった。
妹には、この事実は伝えることができない。
妹には、出来るだけこの件には関わらせないようにしよう。
そうして次の日、俺は幼馴染に聞く、いや問い詰めることにした。
もちろん、幼馴染はクロだった。
少し聞いただけで幼馴染は全て教えてくれた。
一緒にいたのはDQNだった。
DQNとは、塾で偶然同じになって懐かしさからたまに一緒に帰っていたらしい。
友が撮ったキスの写真を見せると、幼馴染は顔を強ばらせた。
幼馴染は、謝った。
キスはあの一回だけらしい。
それ以上は何もしていない。
本当にごめんなさい。
俺は愚かにも、これらを信じてしまった。
当然だが、全て嘘だ。
DQNとの付き合いはなんと中学からずっと続いていた。
あいつらは、二人で協力関係を築いていてやがった。
俺が中学の時、美少女さんに振られたのも、こいつらのせいだった。
DQNは美少女さんと付き合うため。
幼馴染は俺と美少女さんを別れさせるため。
この二つが丁度一致し、利害関係を結んだ。
このことは、後日また送られてきた友の写真を見せたところ吐き出した。
俺は、幼馴染に二回も嘘をつかれたのだった。
幼馴染と別れ、俺はいつもどおりに戻ろうとした。
ある日、妹と家に居た時。
既に幼馴染のことは忘れ、妹もそれに触れるようなことはしなかった。
俺の理想であった、元通りになっていた。
幼馴染が、突然俺の家に訪ねてくるまでは。
その手には、一丁の包丁を持っていた。
彼女は、突然俺に突っ込んで刺しに来た。
俺は何が起こったのか分からないまま、慌てて避けた。
大きな物音が響き、妹がリビングから様子を見にきたが。
悲鳴。
妹の悲鳴。
幼馴染はその悲鳴を聞いて、標的を妹に変えたようだった。
妹は、俺のようには、動けなかった。
俺は幼馴染をすぐに取り押さえたが、妹の足からは血が噴き出ている。
包丁を取り、警察と救急車を呼んだ。
妹は命に別状はないが、足を三度も刺され、アキレス腱の断裂。
全治二ヶ月半らしい。
しかも、手術をしてから歩けるようになるまでリハビリをするとのこと。
てっきり一生歩けないかと思っていたが、リハビリをすれば歩けるようになるのだ。
妹は、「頑張ってリハビリする」と言っていた。
妹には迷惑をかけてしまった。
絶対に、関わらせないと誓ったのに。
俺のミスだ。
幼馴染は、保釈金を支払って釈放されやがった。
どこまでも、悪人だ。
もう、俺は許すことが出来ない。
友とも、意見は一致した。
だから、俺は決めたのだ。
DQNと。
幼馴染に――――。
男「疲れたー!」
友「終わった!」
俺たちは、準備を終えた。
友「じゃ、『荷物』開ける?」
男「えー、俺が開ける!」
友「ちっ、しょうがないな。ほれ」
男「じゃ、ご開帳ー!」
大きなバッグのチャックを開ける。
出てきたのは。
男「久しぶりだな。『幼馴染』」
幼馴染(死体)「…………」
既に冷たい、幼馴染の死体だ。
俺たちがやっていたのはなんてことのない。
ただの穴掘りだ。
持ってきたのは大きなスコップ。
縦170cm程度、横50cm程度、深さ35cm程度の直方体。
さっきまで掘ってた。
友「にしても、隣のは本当テキトーだったよな」
男「あー、まぁね。こいつにはテキトーが似合う」
隣には、前に行った時に作ったものがあった。
『DQNのはか!』
友「ふざけ過ぎだな!」
男「ははっ!確かに!」
友「ふぅー、じゃ、埋めるか」
男「だな」
ザッザッザッザッザッザッザッザッ
ザッザッザッザッザッザッザッザッ
ザッザッザッザッザッザッザッザッ
ザッザッザッザッザッザッザッザッ
ザッザッザッザッザッザッザッザッ
ザッザッザッザッザッザッザッザッ
ザッザッザッザッザッザッザッザッ
ザッザッザッザッザッザッザッザッ
男「お疲れ」
友「お疲れ」
男「いやー、早めに終われてよかった」
友「まぁな。ただ、帰りは辛そうだけどな」
ふと、後ろを振り返る。
俺たちの町はまだ輝いていた。
家の灯りや電灯はまだついていて。
俺たちの町を蠢く赤い光、パトカーは今日の捜査を打ち切るためか、その数を減らしていた。
もう深夜真っ只中。
こんな夜中までやってるのか警察は。
友「まさか、幼馴染の親が捜索届け出してたとは」
男「ちょっと驚いたな」
友「明日から怪しい行動はできないな」
男「特に俺はやばいな」
友「いや、お前は大丈夫だと思うぞ?」
男「え?マジで?」
友「勘だ」
男「勘かよっ!」
友「俺の勘を舐めるなよ?結構当たるぞ」
男「へいへい。当たるといいな」
男「さて、帰るか」
男「片付けて、と、友?行くぞ?」
友「おー、ちょい待ち」
この山に登ることは、もうないだろう。
結局、何と言う山か知らないままだ。
だが、決して忘れることはない山だ。
俺たちの町を眺める。
輝きは、俺たちを祝福しているかのよ――――。
ガンッ!!
男「…………あ?」
ドサッ
何が起きた?殴られた?倒れた?何故上を向いている?この痛みは?流れている感覚は?血の匂い?鉄の味?
友?
友「よ、男」
友「悪いが、お前はここで死んでもらうよ」
友「いままで話してた中にヒントは多く出してたけどな」
友「動機はないが、あえていうなら妹ちゃんと付き合うためだな」
友「妹ちゃんは、俺がちゃんと面倒見るから」
友「お前は、あの世から見てな」
友「俺は、このために親に寝たふりを見せてアリバイ作って来たから」
友「後は証拠隠滅すりゃオッケーだわ」
友「ま、そこら辺は慎重にやるし、お前が見つかるのも遅れるかもな」
友「じゃ、いままでありがとうな」
友「はは、はははは」
友「は、ははははは、ははははは!」
友「ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
友「死ね」
友「あばよ」
友。
待て。
暗い。
暗い。
暗い暗い暗い。
死ぬのか。俺は。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
死にたくないのに……。
黒い。
黒い黒い。
黒い黒い黒い黒い黒い黒い黒い黒い黒い黒い黒い黒い黒い黒い黒い黒い黒い。
くろい、なぁ。
最後に目に写ったのは。
満天の星と、満月だった。
終
ありがとうございました
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