ほむら「また……勝てなかった」
ほむら「これで何度目かしら? 彼女を救えなかったのは……」
ほむら「巴マミを生かし、美樹さやかの魔女化を防ぎ、佐倉杏子の協力を得てもなお届かない」
ほむら「いったいどうすれば……あの夜を越えられるの」
ほむら「いえ、悠長に考えている暇はないわ。今は少しでも、今までにしてこなかった“何か”を探さなくちゃ」
――夜の街中――
ほむら「とは言ったものの、ワルプルギスの夜を倒すための手段なんて見当もつかないわね……」
ほむら「とりあえず誰かに会いに行こうかしら。例えば今のうちから佐倉さんに協力を……」
ほむら「えっ? この感覚……」ピクン
ほむら「魔女!? こんな時期に?」
ほむら「こんなに早く魔女が現れるなんて今までになかった……」
ほむら「行ってみましょう。新しい何かの切欠があるかもしれない」
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――in結界――
ほむら「今までに見たことのない魔女の可能性もある。慎重に行かないと……」キョロキョロ
ほむら「見つけた。これは……使い魔?」
ほむら(赤い鎧に巨大な剣、使い魔とは思えない威圧感があるわね)
使い魔?「……」
ほむら(まぁいいわ。まだ気づかれていないようだし、この位置から狙撃で……)
ほむら「仕留める!」パーン
ほむら「イレギュラーな事態だったけど、たいした変化はなさそ……え?」
使い魔?「……」クルッ
ほむら(効いてない? どれだけ分厚いのよあの鎧! いや、そんなことよりも相手に位置を悟られた!)
ほむら「くっ……!」パーン パーン
ほむら(やはり銃では倒せない……あまり魔力は使いたくないけど、ここは時間を止めて手投げ弾で)
ほむら「なっ!?」
ほむら(早い! いつのまに剣の間合いまで? 間に合わない!)ギュッ
使い魔?「……ッ!」ザンッ
ほむら(生き……てる?)パチ
ほむら「いったいなにが……ひっ!」
使い魔?「……」
ほむら(首筋に剣……動くなということ?)
ほむら「よ、余裕でも見せているつもり? 殺すならさっさと…… ???「GYAAAA!!」
ほむら「なに!?」クルッ
使い魔「GIIYAAA!!」
ほむら(もう一匹使い魔が! でもなぜ鎧の使い魔がこいつを? まさか、私を助けた?)
ほむら「あなたはいったい……きゃっ」
ほむら(払い除けられた? 鎧の使い魔に?)
使い魔?「……」
ほむら(刺された方の使い魔もまだ生きている……邪魔をするな、ということかしら?)
ほむら(それにしても、こうして使い魔同士で争うこともあるのね)
使い魔「GUGYAAA!」
使い魔?「……」スッ
ほむら(かざした左手の先に……炎のリング?)
使い魔?「……」チャキッ
ほむら(そして手に持った剣を炎の中に挿し入れ……)
使い魔?「……!」ガシャン
ほむら(引き抜いたのは、より巨大な炎を纏った剣!)
使い魔「GIIYAAA!!」
使い魔?「……ッ!」ザンッ
ほむら(2体目の使い魔が細切れに!)
ほむら(あんなに重そうな鎧で、しかもあの巨大な剣を軽々と!)
使い魔?「……」ザクッ ザクッ
使い魔「GYAAAAA!」
ほむら(いけない……コイツを魔女にしては!)
使い魔?「…………ッ!!」ドシュッ
使い魔「GUGIAAAAAA!!」
ほむら(私がここで……倒す!)
使い魔?「……」クルッ
ほむら「来なさい! あなたをこれ以上成長させな……きゃあ!」ピカー
ほむら(目潰し!? いえ、うっすらとシルエットは見える……)
使い魔?「……」シュゥゥ
ほむら(姿が変わっていく……人間? それに結界が消えている?)
使い魔?「ふぅ……」
ほむら(細身の男? 使い魔ではないの? いったい何者?)
使い魔?「……ゴメンナサイは?」
ほむら「え? あ、ごめんなさい」
ガラの悪い男「あんたじゃね……いや、あんたもか」
ガラの悪い男「なんなのいきなり。鉄砲でパンパーンって」
ほむら「それはその……申し訳なかったと思っているわ」
ほむら(この男はいったいなに? 使い魔を倒したけれど、魔法少女ではなさそうだし)
ほむら(それにあの変身も……今までにこんな男が現れたことはなかったわ)
ガラの悪い男「ったくよぉ、岩でグサーってやられたと思ったらいつの間にか変なとこにいるし」
ガラの悪い男「そんで変な化けモンに襲われるわ、ぶん殴って撃退したと思ったらお次は撃たれるわ」
ほむら「本当にごめんなさい。あなたも使い魔……さっきの化け物の仲間かと思って」
ガラの悪い男「あぁ……まぁいいさ。けど急に景色が変わったな。さっきまではとっちゃん坊やの結界みたいだったのに」
ほむら(結界!? この男、魔女の結界を知っている?)
ガラの悪い男「んじゃ、俺はもう行くから。仲間を探さなきゃなんねぇし」
ガラの悪い男「そうだ、あんたもどっかで見なかったか?」
ガラの悪い男「赤毛でピチピチの服着た姉ちゃんとか、女の子の人形持ったじいさんとか、白くてでっかいわんことか……」
ガラの悪い男「エロそな占い師の姉ちゃんとか、盗撮が趣味の王女とか、真面目そうなお侍さんとか、あと変体とか」
ほむら「い、いえ、見てないわ」
ほむら(いったいどんな取り合わせよ……)
ガラの悪い男「そっか。じゃあどっかで見かけたら俺が探してたって伝えてくれ。じゃあな」
ほむら「あ、待って!」
ほむら(今までにないイレギュラーな人物、そして使い魔を圧倒できる力。この人の存在は運命を変える鍵になるかもしれない)
ほむら「良ければ名前や連絡先を教えてもらえないかしら? あなたの仲間を見つけたときに、すぐに知らせたいの」
ほむら「私は暁美ほむら。これは私の番号よ」スッ
ガラの悪い男「連絡先っつっても、どこに行くかも決めてねぇしな……」
ガラの悪い男「とりあえず、俺はウルムナフ・ボルテ・ヒュウガ」
ウル「ウル、って呼んでくれ」
――ほむら転校初日――
先生「転校生の暁美ほむらさんです」パチパチパチ
先生「彼女は東京の病院に……」
ほむら(眠い。とてつもなく眠いわ)
ほむら(このところ彼の仲間というのを探し続けていたせいでろくに寝ていない)
ほむら(でも、今回を逃せば次に彼が現れるのはいつになるかわからない)
ほむら(でもそろそろ巴さんや佐倉さんとの接触を図るのも…… 先生「暁美さん、挨拶をお願いします」
ほむら「え!? あ、その、暁美ほむらです。よろしくお願いします」ペコリ
ほむら(いけない、眠気で頭がボーっとしている。でもこれも、まどか、あなたを助けるためなら辛くないわ)キリッ
さやか「まどか、あの転校生、あんたのこと睨みつけてない?」
まどか「き、気のせいじゃないかな」ウェヒヒ
――休み時間――
生徒A「暁美さんの前の学校って……」
B「キレイな髪ー」
C「福引に興味ない?」
D「なにか部活とかは……」ワイワイガヤガヤ
ほむら(そろそろまどかと接触しないと)
ほむら「ごめんなさい、ちょっと体調が優れないから保健室へ行きたいのだけれど」
C「あ、そういえば体が弱んだっけ、ごめんね。保健室まで案内するよ」
ほむら「いえ、鹿目さん……保険係の人にお願いするわ」
C「お大事にね。あとこれ、良かったら使って」スッ
ほむら「えぇ、ありがとう」
ほむら(これは……ポケットティッシュ? 裏に何かのチケットみたいなものも入ってるわね)
C「鹿目さーん、保険係のお仕事だよー」
ほむら「……」コツコツ
まどか「……」オドオド
ほむら「鹿目まどか、貴女は自分の人生が尊いと思う? 家族や友達を大切にしてる?」
まどか「え? えと、大切だと思うよ。家族も、友達も、みんな」
ほむら「そう、それなら良いの。あなたは鹿目まどかのままでいれば良い」
まどか「え、あ、うん……」
ほむら「ところでひとつ聞きたいのだけれど、この町に赤毛でピチピチの服を着たetc……見たことはないかしら?」
まどか「さ、さぁ……私はちょっと知らないかなぁ」
ほむら「そう。ごめんなさい、突然変なことを聞いて」
まどか「あ、うん。別に気にしてないよ」
まどか(急に変な質問するし、おかしな人を探してるみたいだし、変わった子だなぁ……)
――放課後inCDショップ――
『たすけて……まどか、たすけて……』
まどか「ん? さやかちゃん、何か言った?」
さやか「え? どうかした?」
まどか(さやかちゃんじゃない? でも今、確かに私を呼ぶ声が……)
『たすけて! まどか!』
まどか(空耳なんかじゃない! 誰かが私を呼んでる!)
まどか「ごめんさやかちゃん! 私行かなくちゃ!」ダッ
さやか「え!? ちょ、まどか! 行くってどこへ!?」
――廃ビル内――
QB「たすけて……まどか……」
ほむら「見つけたわ」ザッ
QB「ん? 誰だい君は?」
ほむら「まどかを魔法少女にはさせないわ、インキュベーター!」
QB「僕のことを知っているのかい? それにその格好、魔法少女のようだけど、僕は君と契約した覚えはないなぁ」
ほむら「まどかと接触する前に、あなたを排除する」
QB「ずいぶんと物騒だね。でも、もう遅いみたいだよ」
まどか「暁美さん!? なんでここに!?」
ほむら「鹿目さん!? もう着いてしまったの!」
ほむら(保健室で仮眠を取るつもりが、しっかり寝入ってしまったのが仇になったわ)
QB「まどか……たすけて」ヨロヨロ
まどか「へ? この子が私を呼んでいたの?」
ほむら「だめよ鹿目さん! そいつから離れて!」
まどか「で、でもこの子こんなに弱って……」
ほむら「そいつの言葉に耳を傾けては……きゃっ!」
さやか「まどか、早いとこ逃げて!」バシュー!
ほむら「消火器……! それに、またこうなるのね」
グニャア
さやか「へ? なにこれ?」
まどか「景色が、歪んでいく……」
使い魔「KISYAAA!」ゾロゾロ
まどか「お化け!?」
さやか「なんなのよこの化け物!」
ズドン!
使い魔「GYAAA!」
マミ「2人とも、怪我はない?」
まどか「あ、ありがとうございます! これはいったい……」
マミ「話は後。今は安全なところまで早く逃げて!」ドン! ドン!
さやか「は、はい! 行くよまどか!」
ほむら(今までに比べて使い魔の数が多いわね。巴さん1人では大変そうだし、少し手伝おうかしら)ジャキン
まどか「きゃー!」
ほむら「まどか!?」
ほむら(まどかたちの逃げた先に回りこんでいる! まずい、ここからでは時間を止めても間に合うか……)
使い魔「GUGIII!」ゴシャァ!
ほむら「え?」
ほむら(使い魔の足元から地面が盛り上がって……押しつぶした?)
使い魔?「……」ズシンズシン
ほむら(新しい使い魔? まるで恐竜ね。でもあの異様な雰囲気、まさか……)
マミ「まだ隠れていたのね! 彼女たちには触れさせない!」ジャキ!
ほむら「待って巴マミ! あれは敵じゃないわ!」
マミ「え? どういう……」
使い魔?「……!」ズシンズシンズシンズシン!
マミ「彼女たちを素通りして、こちらへ来る!」
使い魔「GUVAAAA!」カキンッ
マミ「他の使い魔から攻撃を受けている!? けどものともしないわね」
使い魔?「……」ブオンッ!
マミ「見る間に使い魔が減っていくわ……」
ほむら(やはりとんでもない強さね)
使い魔「IYAAAA!」
使い魔?「……!」ドカァッ!
ほむら「終わったようね」
マミ「結界が消えていく? あの恐竜のような使い魔は残っているのに……」
ほむら「ありがとう、助かったわ。ウル」
シュゥゥン
ウル「おう。今度は撃たれずにすんだな」
マミ「人!? 使い魔が人に変身した!?」
ウル「なんだよさっきからうるせぇな……」
ほむら「巴マミ、少し落ち着いてちょうだい」
マミ「あ、ゴメンナサイ……」シュン
ほむら「どう? 少しは落ち着いたかしら?」
マミ「ええ。ごめんなさいね、みっともないところを見せてしまって」
ウル「わりぃわりぃ、ちっと驚かせすぎちゃった」
マミ「ありがとう。あなたが教えてくれなかったら、私はきっとこの人を撃っていたわ」
ウル「まぁ実際に撃たれたこともあるからな」
ほむら「あ、あれは初見だし仕方がなかったのよ……」
ウル「わーってるわーってる」
マミ「ところであなたはその……魔法少女なのよね? 私のことも知っていたみたいだけれど」
ほむら「そういえば自己紹介がまだだったわね。私は暁美ほむら、少し前にこちらへ越してきたの」
ほむら「あなたのことは予め調べさせてもらっていた。好戦的な魔法少女なら注意しなければならないから」
ほむら「気分を害してしまったなら謝るわ」ペコリ
マミ「いえ、気にしないで。新しく住む町に他にどんな魔法少女がいるか、気になるのもわかるわ」
さやか「あのー……」
まどか「すいません……」
マミ「あ、ごめんなさい。あなたたちには良く分からない話よね」
マミ「でも、2人とも怪我もなさそうで良かったわ」
まどか「あ、はい。ありがとうございました」
さやか「ところでさっきから言ってる魔法少女ってやつ……皆さんもしかしてそれなんですか?」
マミ「ええ、そうよ」
ウル「うん」
ほむら「あなたは違うでしょう……」
――セミナー:魔法少女とは(講師・巴マミ)――
マミ「……というわけで、魔法少女の素質がある子にはキュウべえを見ることができるの」
マミ「キュウべえも魔女を倒すため、魔法少女になれる子を探しているの」
さやか「魔法少女かぁ……それで転校生もこんな格好してたんだね」
さやか「コスプレしたおかしな人に、まどかが言い寄られてるのかと思っちゃった。消火器ぶちまけてごめんね」
まどか「あ、そういえばさっきの子! 使い魔が目の前に来たときに落っことしちゃって……」
QB「たす……けて……」グチャァ
ウル「あ、やべ……」
マミ「キュウゥゥゥべえぇぇぇ!!」
まどか「え!? あの子が?」
ほむら(顔が3分の1くらい潰れてるわね。さっきのウルに踏まれたのかしら)
ほむら(いい気味ね)
マミ「キュウべえ! しっかりして!」
QB「マミ……僕はもうだめみたいだ」
マミ「諦めちゃだめ!」
QB2「だから新しい体にするよ」
マミ「へ? あれ? キュウべえが2人……?」
ウル「ねぇ、なにあの変な生き物」ヒソヒソ
ほむら「インキュベーターよ。というかやっぱりあなた、あれが見えるのね?」
ウル「いや、あそこにいるんだから、そりゃ見えるだろ」
ほむら「そういうことじゃなくて……まぁいいわ」
今日はここまで。
2ラストで岩がグサー→気がつけば見滝原な設定(理由なんてない)
ご覧頂いてありがとうございます。
エナジーチャージ→インフェルノは中盤から終盤に掛けての主力。
――QB3分間イーティング――
マミ「ま、まぁ一応はキュゥべえも無事なようで良かったわ……」
QB「個体数を無駄に減らされたくはなかったんだけどね」モシャモシャ
QB「それよりもそこの2人」
まどか「は、はい! なに?」
さやか「ん? 私も?」
ウル「なになにー?」
QB「君たち2人は、僕の姿が見えるようだね」
まどか「う、うん。ちゃんと見えてるよ」
さやか「さっきみたいなシーンは見たくなかったけどね……」
ウル「みえるみえるー」
QB「つまり君たち“2人”には、魔法少女としての素質があるんだ」
まどか「私なんかに……魔法少女の素質?」
さやか「じゃあ私も、マミさんみたいになれるってこと? それに願い事が何でも……」
ウル「いや、そんな急に魔法少女とか言われても……」
ほむら「もういい加減諦めなさい」
QB「だから君たち、僕と契約して魔法少女に……」
ほむら「ちょっと待って!」
さやか「へ? どしたの転校生? 急に大きな声出しちゃって」
ほむら「魔法少女になるというのは、とても危険なことよ」
ほむら「今日のように戦いに巻き込まれ、いつ命を落とすかもわからない運命に身をおかなければならない。だから……」
マミ「もっとよく考えてから、本当に魔法少女になるかどうかを決断してほしい、ということよね?」
ほむら「そうよ。あなた達の望みが、本当に平穏な日常と引き換えにできるほどのものか、それをじっくりと考えて」
まどか「願い事、かぁ……」
さやか「急に言われると、案外思いつかないもんだねぇ」
ウル「命を掛けられるほどの、願い事か……」
ほむら「ウル、あなたには関係ない話なのよ。あまり真剣に考え込まないで」
マミ「いつまでもこんな場所で話し込んでいるのもなんだし、良かったらみんな、私の家に来ない?」
マミ「みんなとお近づきになれた記念に、美味しいお茶でもご馳走するわ」
ウル「いくいくー」ワーイ
まどか「それじゃあ私もお呼ばれしちゃおうかな」ティヒヒ
さやか「もちろんさやかちゃんも行きますよー!」
ほむら「私は遠……」
まどか「暁美さんも一緒に行こうよ」
ほむら「まど……鹿目さん?」
まどか「会ったばかりだけど、私は暁美さんのこともっと知りたいな、なぁんて……」
マミ「私もあなたともっとお話したいわ。同じ町に住む魔法少女として、そしてお友達として」
さやか「ノリが悪いぞー転校生ー」ブーブー
ウル「そうだそうだー」ブーブー
ほむら「そうね……それじゃあ私も、ご一緒させてもらうわ」
ほむら「それと私のことはその……ほ、ほむらで良いわ」
まどか「ほむらちゃん、だね! じゃあ私のこともまどかって呼んで。よろしくね、ほむらちゃん」
ほむら「ええ。よろしくね、まどか」
――inマミハウス――
マミ「ところでウルさん、少し聞きたいのだけれど」
ウル「ん? なに? あ、このクッキーうめぇな」モシャモシャ
さやか「あの化け物みたいなのなに!?」
マミ「あなたは魔法少女ではないようだけれど、アレはどういった力なのかしら?」
マミ「それに暁美さんはウルさんだとすぐにわかったようだけれど、以前にも見たことがあったの?」
ウル「あー……説明がめんどくさいんだけど、あれはフュージョンつって……(以下略)」
まどか「心の中に住む魔物……」
マミ「グレイヴヤード……ハーモニクサー……なかなか良い響きね」ブツブツ
ほむら「私は数日前に、結界の中でたまたま彼に出会ったの」
ほむら「そのときは違う姿に変身……いえ、フュージョンしていたけれど」
マミ「それじゃあ今日のあの姿は初めて見たの? よくウルさんだと分かったわね」
ほむら「そこはなんというかその……使い魔とは明らかにデザインが違うじゃない?」
マミ「あぁ……まぁ確かにそうね」ウンウン
マミ「ところで2人とも」
まどか「はい?」
さやか「なんですか?」
マミ「あなた達、魔法少女になるかどうか、悩んでいるのよね?」
まどか「ええ、まぁ……」
さやか「願い事、なんてのも急に言われると意外と思いつかなくて……」
ほむら「それなら魔法少女になんてなる必要はないわ。命を粗末にしないで」
マミ「暁美さんも落ち着いて。私も、理由もなくなるべきではないというのは同感よ」
マミ「ただ、それでも叶えたい願いがあるというのなら、止めることはできないわ」
ウル「はいはーい」ビッ
マミ「あら、なにかしら? ウルさん」
ウル「それって例えば……死んだ人間を生き返らせたい、みたいな願いも叶っちゃうの?」
マミ「そうね……十分な素質の持ち主なら、その願いだって叶えられると思うわ」
マミ「例えば鹿目さん」
まどか「は、はい?」
マミ「キュゥべえはさっき、あなたを呼んでいたのよね?」
まどか「はい。『まどか、たすけて』って」
マミ「それはキュゥべえが、あなたに魔法少女としての大きな素質を感じたからだと思うの」
マミ「だからあなたなら、人を生き返らせることだってできるかもしれない」
まどか「わ、私にそんな大きな素質なんて……」
さやか「ね、私は私はー?」
マミ「えーと、美樹さんについては私もちょっとわからないわね……」ウーン
さやか「えー! せっかく私も、マミさんみたいに怪物をちぎっては投げちぎっては投げってできると思ったのに……」
まどか「さやかちゃん、魔法少女になりたいの?」
ほむら「漫画やアニメのヒーローになりたいのなら、魔法少女はお勧めしないわ。もっと残酷なものなのだから」ギロッ
さやか「わ、わかってるって。そんな睨まないでよ……」
ウル「……」
マミ「ウルさん、どうかしましたか? さっきから深刻そうな顔ですけど」
ウル「え? ああ、いや、ちょっと考え事。晩飯はなににしよっかなーって」
さやか「あれだけクッキー食べてたのに、もう次のご飯のこと~?」
ウル「いいだろ別に。戦ってお腹ペコペコなの」
マミ「でも、そうね。もう日も暮れるし、今日はお開きにしましょうか」
まどか「あっ、ホントだ。もうこんな時間」
さやか「しまった、恭介のとこに行くつもりだったのにー!」
ほむら「そうね。お茶、ごちそうさま」
ウル「ごっそさーん」
マミ「あ、鹿目さんと美樹さん、最後にちょとだけ良いかしら?」
まどか「はい?」
さやか「なんです?」
マミ「良かったらあなた達、しばらくの間私の魔法少女としての活動に付き合ってみない?」
さやか「付き合うって、どういうことですか?」
マミ「魔法少女として、毎晩街の中をパトロールしているの。それで使い魔や魔女を見つけたら戦うのよ」
マミ「あなた達も実際に戦いの場面を見て、その上で魔法少女になるかどうか……」
ほむら「ダメよそんなの!」
さやか「わっ、どうしたの転こ……ほむら。急に大声出して」
ほむら「魔法少女の戦いに一般人を連れて行くなんて危険すぎるわ」
マミ「大丈夫よ。2人には安全なところで見ていてもらうから……」
ほむら「魔女との戦いでは何が起きるかわからないわ。あなただって知っているでしょう!」
ウル「んじゃ、俺もついてくよ」
マミ「ウルさんが?」
ウル「俺なら戦えるし、なにかあったら守ってやれるだろ?」
ウル「それにそんなに心配なら、おまえも来たら?」
ほむら「私……も?」
マミ「そうね。ウルさんに暁美さんも来てくれれば、とても心強いわ」
ほむら「……わかった。私も同行するわ」
ほむら「ただ、もしまどかが危険な目に会うようならすぐに中止よ」
さやか「ねぇ、私は?」
ほむら「美樹さんが危険な目に会っても、よ」
さやか「すっごい取ってつけた感が出てるんですけどー」
ウル「俺は?」
ほむら「あなたは自分でどうにかなさい」
ウル「だよねー」
マミ「それじゃあみんな、気をつけて帰ってね」
まどか「はい、今日はありがとうございました」
さやか「明日からのパトロール、よろしくお願いします」ビシッ
ウル「そんじゃ、帰るとしますか。またなー」スタスタ
ほむら「あ、私も同じ方向だから。それじゃあみんな、また明日」タタッ
まどか「バイバーイ、ほむらちゃん」
さやか「またねー」
――――
ほむら「どう、仲間は見つかったのかしら?」
ウル「全然。仲間どころか、ここがどこなんだかもよくわかんねぇよ」
ほむら「え? ここは見滝原という街で……」
ウル「いや、そういうんじゃなくてさ。ここって、日本なんだよな?」
ほむら「……当たり前でしょう。いったい何を言っているの?」
ウル「でもさぁ……今までに日本橋とかレンガ街とかいろんなとこ見てきたけど、こんなでかい建物ばっかのとこは初めてでさ」
ウル「石村とかいう帝国の偉いさんのとこよりずっと立派だ」
ほむら「ちょっと待って。帝国というのはどこの……」
ウル「決まってんだろ。大日本帝国だよ」
ほむら「え?」
ウル「ん?」
ほむら「ひとつ聞かせてもらえるかしら。あなた……今は西暦何年か分かる?」
ウル「な、それくらい知ってるての。えっとあれだ……たしか、1915年?」
ほむら「やっぱり……」ハァ
ウル「や、違うって。1914年だよ。さっきのはちょっと勘違いしただけで……」
ほむら「そういう問題じゃないの」
ウル「え?」
ほむら「あなたの生きていた時代は、今より100年近くも昔よ」
ウル「いやいやいや、さすがにそりゃねーわ」
ほむら「今はもう21世紀よ。これは私の手帳だけど……」ゴソゴソ
ほむら「年のところを見てちょうだい。今が何年か、ちゃんと書いてあるでしょう?」
ウル「え、あー、いや、なんかの間違いじゃ……」
ほむら「間違いじゃないわ。あなたは100年前からタイムスリップしてきたの」
ウル「……な」
ほむら「え?」
ウル「なんじゃそりゃあああ!!」
ウル「100年後とかなんだよそれ聞いてねぇよ」
ウル「加藤も望んだ世界がどうとか言ってたじゃん。俺、100年後とかこれっぽっちも望んでねぇよばーか!」
ほむら「加藤さんと何があったか知らないけれど、私に言われても困るわ」
ほむら「ただ、あなたがここにくるまでについては興味があるわ」
ほむら「教えてもらえないかしら? ここに来るまで、あなたがいったい何をしていたのか」
ウル「別にいいけど……長いし、あんまり楽しいもんでもねえぞ」
――――
ほむら「天凱凰に神降ろし、秘密結社サピエンテスグラディオ、加藤特佐による歴史の改変未遂……」
ほむら「どれも初めて耳にする話ばかりね」
ウル「胡散臭くて信じらんねえか?」
ほむら「それを言い出したら、魔法少女だって似たようなものよ」
ウル「そりゃそうだ」
ほむら「それにしてもその加藤特佐という人……私とよく似ているわ」
ウル「似てるぅ? ムキムキのいかつい軍人だぜ? 昔はそうでもなかったんだけどなぁ……」
ほむら「外見の話じゃないわ。そうね……今度は私のことを話しましょうか」
ほむら「私が今まで何をしてきたか。そして何のためにここにいるのかを」
――――
ウル「あの子を助けるために過去へ、か……確かによく似てるな」
ほむら「私はまどかを助けるため、何度も同じ時間を繰り返してきた」
ほむら「でも何度やっても、まどかを助けることはできなかった。失敗ばかりを積み重ねてきたの」
ほむら「でも今回は今までとは違う。ウル……あなたがいる」
ウル「今までに見たことのない異物ってわけか」
ほむら「だからお願い、私に力を貸してほしい」
ウル「神だとか悪魔だとか、それに魔術師だとか……胡散臭いのをぶっ飛ばすのは馴れてるんだ」
ウル「魔女だって似たようなもんだ。やってやるよ」
ほむら「ウル……ありがとう。それにしても皮肉なものね」
ウル「あ? 何が?」
ほむら「あなたが止めたお友達がしようとしたのと同じことを、私は何度も繰り返してきた」
ほむら「そんな私が、あなたに協力してもらうなんて……」
ウル「ああ……だから、もう二度と繰り返させてやらねえ」
ウル「世界を救うこと、そいつが俺の特技だ」
――――
ほむら「ところでウル、あなた今までの生活はどうしてきたの?」
ウル「生活?」
ほむら「100年も前から来たんじゃ、今のお金なんて持ってないでしょう」
ほむら「食べ物もだし、住むところだってないんじゃない?」
ウル「あぁ、それね。水はいろんなところで飲めるから助かってる」
ウル「食い物はバッグに少し入ってた……けど、昨日全部なくなっちゃって、もうお腹ぺこぺこ」
ほむら「それで、巴さんの家であんなにがっついてたのね……」
ウル「住む場所はさ……今日、あの使い魔ってのと戦った場所あるじゃん」
ほむら「ええ、まさか……」
ウル「うん。あそこに住んでたの。そしたらまたあの結界ってのが出るし、下から鉄砲の音が聞こえるし……」
ほむら「それで下りたら、私達がいたと」
ウル「そういうこと」
ほむら「住所も身分証もなしじゃ働くのも難しいし、仕方ないわね……」ゴソゴソ
ほむら「今は持ち合わせも少ないから、少しだけだけど持っておいて」ピラ
ウル「なにこれ?」
ほむら「五千円よ、現代の。さすがに住むところは難しいけど……」
ウル「マジ? お金? わーい!」
ほむら「くれぐれも無駄遣いはしないようにね」
ウル「はーい」
ほむら「あとは連絡手段として携帯くらいはほしいわね……巴さんにでも援助をお願いしようかしら」
ウル「悪いね。世話かけちまって」
ほむら「気にしないで。協力をお願いしたんだから、これくらいはさせてちょうだい」
ウル「まぁ任せとけって。そのわぷる……」
ほむら「ワルプルギスの夜」
ウル「そうそれ、わるぷるぎす。ちゃんと倒してやっから」
ほむら「……はぁ」タメイキ
――ほむら宅――
ほむら「ウルムナフ・ボルテ・ヒュウガ……不思議な男ね」
QB「まったくだよ。神殺しの男が、現代に現れるなんて」
ほむら「インキュベーター……何の用? 巴さんのところへ帰らなくて良いのかしら?」
QB「マミがなぜか僕を怖がるんだ」
ほむら「自分の死体を食べる姿なんて見せたんだもの、当然のことよ」
QB「やっぱり人間の感情というのはよくわからないよ」
QB「ところでほむら、あの男のことが気になっているようだね」
ほむら「ええ。あなた達による魔法少女と魔女の呪われた運命、それを変えられるかもしれないのだから」
QB「君はいったいどこまで知っているんだい? そもそも、僕は君と契約した覚えもないんだけれど」
ほむら「教える必要はないわ。ところで、その神殺しの男という呼び方……ウルの言っていた歴史は本当にあったことなの?」
QB「そうだね、概ね正しいはずだよ。様々な力が働いて、その事件が公にはなっていないようだけれど」
QB「確かに彼は、何度も地球を救っている」
ほむら「そう……それじゃあもう用はないわ。さっさと消えて」
QB「聞きたいことだけ聞いて、ずいぶん冷たい仕打ちだね」
ほむら「無駄に個体を減らしたくはないのでしょう?」
QB「それもそうだね。それじゃ、僕は去るとするよ」キュップイ
ほむら「ええ。できれば二度と顔を見せないでちょうだい」
ほむら(ウルが存在することで、今までにないくらい多くの変化が見られている)
ほむら(巴さんや美樹さんと良好な関係を築けているのはもちろんだけど)
ほむら(異常な姿を見せられたことで、巴さんとインキュベーターの間にも距離が生じているようね)
ほむら(あとは……ウルにも話していない、魔法少女の呪い)
ほむら(美樹さんを絶望させず、巴さんも取り乱すことのないよう細心の注意を払っていかなくては……)
ほむら(簡単なことではないけれど、そこさえ越えられれば)
ほむら(勝機は、ある)
――翌日夜――
マミ「さぁ、みんな揃ったわね。それじゃあ魔法少女体験、始めましょうか」
ウル「いえーい!」
さやか「ヒューヒュー!」
まどか「2人ともはしゃぎすぎだよぅ……」
ほむら「魔女退治は遊びじゃないのよ」
ウル「だいじょぶだいじょぶ、任せとけって。な、さやか」
さやか「うん、準備はしてきたよ。ホラ!」ズイッ
さやか「何もないよりマシかと思って、一応バットを持ってきましたー!」
マミ「それを使わないようにするつもりだけれど、ね」
ウル「俺はこいつだ」ジャーン
まどか「ぬいぐるみ……?」
ほむら「私達は真剣なの。あまりふざけないで」
ウル「いや、これ強いんだって! ホントだって!」
ウル「コイツをこうして……」スポッ
さやか「あはは、かわいー。顔にかぶせる袋でも持ってこようか?」
マミ「アレを付けてウルさんがネタを……フフッ」
ウル「ホントに強いんだもん……嘘じゃないもん……」
さやか「ね、まどかは何かないの?」
まどか「わ、私は武器とかじゃないですけど……」
まどか「魔法少女になったときの衣装だけでも、って考えて……」オズオズ
さやか「まどからしいねー」
ウル「おーいいじゃん。どっかのカマの仕立屋が喜びそうだ」
まどか「あ、あはは……喜んでいいのかな」
マミ「さて、おしゃべりはこのくらいにしてそろそろ行きましょうか。魔女を探す時間が無くなっちゃうわ」
――廃ビル(ウルのおうち(仮))――
まどか「ここってたしか……」
さやか「昨日のビルですよね?」
マミ「ええ。昨日この付近に結界が現れたということは、姿を見せなかっただけで魔女も近くにいたということ」
マミ「そしてその魔女の痕跡は、ソウルジェムがあれば辿ることができるの」
ほむら「とはいっても、1日経ってしまうとさすがに痕跡も薄れているわね……」
マミ「2人を置いて魔女を追うわけにもいかないし、仕方ないことよ」
ウル「じゃあ、こっからどうやって探すの?」
マミ「捜査の基本は足よ」
ウル「それってもしかして……」
マミ「魔女の現れそうな場所をひたすら歩いて回るわ」
ウル「やっぱりだー」
さやか「魔女ってどんなところに現れるんですか?」
マミ「そうね……魔女の呪いによる被害は、交通事故や自殺、あとは人間同士を争わせるようなケースが多いわ」
マミ「だから大通りや人通りの多い場所、逆に人気が少ない自殺に向いた場所なんかを中心に探していくわ」
まどか「なかなか範囲が広そうですね……」
マミ「ええ。だから時には魔女を見つけられなくて、誰かを救えないこともあるわ」
マミ「でもそれは仕方がないの。私1人で救える命には限りがあるのだから」
ほむら「……巴さん」ジロッ
マミ「あ……いえ、だからといって魔法少女が増えてほしいというわけではないのよ」アセアセ
――人気の少ない裏通り――
さやか「これって良く考えたら、ウルがつかまりそうな光景だよねぇ」
ウル「へ? なんで?」
ほむら「女子中学生4人に囲まれた大人の男……確かにちょっと危険ね」
ウル「マジ? そんなんでつかまっちゃうの?」
まどか「う、ウルさんは良い人だし、大丈夫だと思いますよ」
さやか「そうそう、ウルなら大丈夫! ちゃんと逃げ切れるって」
まどか「それは大丈夫じゃないんじゃ……」
マミ「みんな、少し静かに!」
まどか「は、はい!」
さやか「どうしたんですか?」
マミ「魔力を感じるわ」
ほむら「それもかなり強力ね」
ウル「どっち?」
ほむら「あちらの方角……おそらくあの廃ビルね」
マミ「急ぎましょう。すでに被害が起きてるかもしれないわ」
――廃ビル②――
さやか「近づいてきたね……」
まどか「うん。あそこに魔女が……あれ、屋上に誰かいる?」
マミ「なんですって?」
さやか「ホントだ。なんかフラフラしてるけど、まさか……」
マミ「飛び降りる気!?」
ほむら「ウル、行くわよ」スッ
ウル「おう」ギュ
カチッ
マミ「みんな、急いで……あら? 暁美さんとウルさんは?」
さやか「あれ!? さっきまで後ろにいたのに!」
まどか「マミさん! さやかちゃん! アレ!」
さやか「へ? まさかもう……」
マミ「とても大きな……鳥?」
まどか「屋上の人を掴んで、こっちへ向かってる?」
バサッバサッ
ほむら「なんとか間に合ったわ」
マミ「暁美さんも乗っていたのね。ところでこちらはやっぱり……」
ウル「おう、俺だよ」シュゥゥン
さやか「ホントいろんなものになれるんだね、フュージョンって」
ウル「魔女を追ってたら自殺の現場に遭うとはなぁ……」
ほむら「それも魔女の影響よ。その人の首筋を見て」
さやか「首? あ、なんか変な模様が……」
ほむら「魔女の口づけよ」
ウル「口づけ? ずいぶん変わった唇してんだな」
マミ「口づけなんて呼び方をしているけれど、実際は魔女のターゲットになった印のようなものよ」
マミ「これを付けられた人はこうやって自殺しようとしたり、自分を滅ぼそうとする行動を起こすの」
ほむら「屋上に結界が現れているわ。行きましょう」
マミ「ええ。2人とも気をつけてね」
まどか「は、はい!」
ほむら「ウル、2人をお願いね」
ウル「おう」
――薔薇園――
マミ「見えたわね。あれが魔女よ」
さやか「うわぁ……なんか気持ちわる」
ウル「おー、いかにもって感じの化けモンだな」
ほむら「2人はこれ以上魔女に近づかないように。ウルは二人の周りに使い魔が現れたら排除して」
ウル「はーい」
まどか「あ、マミさん、ほむらちゃん……無事に戻ってきてね」
ほむら「まどか……大丈夫よ」
マミ「サクッと倒して、帰ったらおいしい紅茶でも入れましょうか」
さやか「魔法少女の戦いなんていうから、もちっとメルヘンな感じと思ってたんだけどな……」
まどか「あはは……ほむらちゃん、銃とか爆弾で攻撃してるね」
ウル「どこの女スパイだありゃ……っと、こっちにもきやがったな」
まどか「つ、使い魔……」
さやか「ウル、やっちゃえー!」
ウル「おうよ!」スポッ
まどか「え?」
ウル「ん?」
さやか「ウル……冗談やってる場合じゃないんだよ?」ジトー
まどか「さすがにここでそれはちょっと……」
ウル「だからマジなんだって! 見てろよ……オラッ!」ドカッ
使い魔「GYAAA!」
さやか「一撃で吹っ飛んだ! 河童くん凄い!」
まどか「ウルさんの力が凄いだけなんじゃ……」
ウル「こいつのおかげなの! また来たな……ぶっ飛べ! お前も!」バキッガスッ
さやか「熊猫くんも超強い!」
まどか「蹴っても同じくらい凄いみたいだけど……」
ウル「オラオラオラ!」タンッタンッタンッタンッタンッ! Perfect!!
さやか「もうフュージョンとか無しでも十分なんじゃないかな……」
マミ「本当に強いのねぇ」
さやか「マミさん! あ、魔女は……」
ほむら「もう倒したわ」ファサ
マミ「いくら使い魔が相手とはいえ、生身であそこまで……」
ほむら「神殺し、は伊達ではないみたいね」
――マミ宅――
マミ「それじゃあ今日はお疲れ様」
さやか「お疲れ様でしたー! ウル、ホンッと凄かった!」
ウル「よゆーよゆー。肩慣らしにもなりゃしねえ」
マミ「あらあら、私達も頑張ったのだけれどね」
さやか「あ、すいません、そういう意味じゃなくて……」
まどか「マミさんも格好良かったです。大きな銃でドーンって!」
ほむら(やっぱり私のは地味なのかしら……)
マミ「さ、あまり遅くなるとご両親も心配するでしょうし、今日はこれまでにしましょう」
ほむら「明日からも同じ時間にここへ集合で良いわね」
さやか「りょーかーい!」
まどか「はーい」
ウル「よし、それじゃ帰るか……」
マミ「あ、ウルさん、ちょっと待っててもらえる」タタタッ
ウル「いいけど、なに?」
マミ「ごめんなさい、お待たせして」タタタッ
マミ「これを渡しておきたくて。どうぞ」スッ
ウル「お、サンキュー。で、なにこれ?」
ほむら「携帯電話……持ち運び可能な通信手段よ」
ウル「けーたい……でんわ? 電話ってあの電話?」
マミ「そう。なにかあったとき、連絡が取れるほうが良いでしょう?」
ウル「いやいや……うっそだー。こんなんで電話なんてできないって」
ほむら「使い方を覚えるのはなかなか大変そうね……」
マミ「そうね。3人とも、もう帰っていいわよ。私が最低限の使い方くらいは教えておくから」
まどか「そうですか? それじゃあ……」
ほむら「お先に失礼するわ。2人とも、頑張って」
さやか「マミさんもウルも、また明日ねー!」
マミ「はい、さようならー」フリフリ
マミ「さて、それじゃあ電話のかけ方から始めましょうか」
ウル「ねぇ……ホントにこれが電話になんの?」
マミ「先は長そうねぇ」
――翌日・病院――
まどか「上条君、CD喜んでくれたみたいで良かったね」
さやか「うん! あ、ま、まぁ恭介が落ち込んでるとこっちも調子狂うからってだけで……」
まどか「素直じゃないなぁ」ティヒヒ
さやか「別にそういうんじゃな……」
QB「やぁ、久しぶりだね。まどか、さやか」
まどか「きゅ、キュゥべえ!」
さやか「何の用? 魔法少女ならまだなるかどうか検討中だよ」
QB「ずいぶん嫌われてしまったね。でも今日は、別の用件でここに来たんだ」
まどか「別の用?」
QB「うん。この病院から微弱だけど魔力を感じたんだ」
QB「おそらくグリーフシードから魔女が生まれようとしている。それも近いうちにね」
さやか「ちょ、ちょっと待って! こんなとこで魔女が生まれたら、入院してる人は……」
QB「うん。なんらかの被害にあう可能性は高いだろうね」
まどか「それじゃあ上条君も……」
さやか「急いで探さないと! キュゥべえ、どの辺りかはわからないの!?」
QB「そうだね……もう少し上の階みたいだ」
さやか「上だね……よし!」ダッ
まどか「待って! さやかちゃん!」
さやか「なに!? 早くグリーフシードを見つけなきゃ!」
まどか「落ち着いて! まずはほむらちゃんとマミさんに連絡しなきゃ」
まどか「私も一緒に探すから。だから、あんまり焦らないで」
さやか「まどか……うん、ごめん。じゃあ私はマミさんに電話するから、まどかはほむらにお願い!」
まどか「……」プルルルル……ガチャ
ほむら『もしもし、どうかしたの?』
まどか「ほむらちゃん! 今、病院にいるんだけど、ここにグリーフシードがあるみたいなの!」
ほむら『なんですって!? 早すぎるわ!』
まどか「早すぎる……?」
ほむら『あ、いえ、なんでもないわ。私も急いで向かうけれど、少し時間がかかりそうね……巴さんとウルに連絡は?』
まどか「マミさんにはさやかちゃんが電話してる。ウルさんはまだ番号聞いてなくて……」
さやか「ウルにはマミさんから連絡するって! マミさんもこっちに向かってる!」
ほむら『そう……私達が着くまで、無理はしないで。美樹さんにもそう言っておいて』
まどか「うん、伝えておくね」プチッ
まどか「ほむらちゃんは少しかかるって。マミさんは?」
さやか「わりと近いところにいるみたい。よし、じゃあマミさんが来る前にグリーフシードの場所だけでも見つけちゃおう!」
まどか「うん! 急ごう!」
――――
ほむら「お菓子の魔女がこんなにも早くに……」
ほむら「今回はウルといいイレギュラーが多すぎる」
ほむら「急がないと。巴さん1人で戦わせるのは危険ね」
さやか「キュゥべえ、どっち?」
QB「そこを右だね。ところで尻尾を掴んで持ち運ぶのはやめてもらえないかな」キュップイ
さやか「そんなのどうでもいいでしょ! で、次はどっち?」
QB「あの突き当りの辺りから感じるね」
さやか「あそこね! まどか探すの手伝って!」ポーイ
まどか「うん!」
QB「マミの家に住まわせてもらってたころが懐かしいよ……」
――――
さやか「あった!」
まどか「マミさんに場所を連絡するね」
QB「見つかったみたいだね。でも、もう孵化は間近のようだ」
まどか「ええ! そんな、どうすれば……」
さやか「まどかは入り口まで行って、マミさんが着いたらここへ案内して」
まどか「うん……でもさやかちゃんは」
さやか「私はここで、こいつを見張ってる」
まどか「危ないよ! もし孵化したら……」
さやか「そんときはコイツがいるでしょ」グイッ
QB「今度は耳かい?」
まどか「さやかちゃん、それってまさか……」
さやか「間に合わなければの話だってば。それに、願い事もないわけじゃないからね」
まどか「そんな、ダメだよ!」
さやか「いいから早く行った行った! メールだけじゃ、マミさんもこの場所わかりにくいでしょ」
まどか「うぅ……わかった。すぐに戻ってくるからね! ……あっ!」
さやか「ん? どったの?」
まどか「ほむらちゃんからの伝言、無理はしないでって。それじゃあ行ってくるね!」ダッ
さやか「ん……わかってる」
さやか「まったく……ホントにお節介焼きだね、ほむらってば」
さやか「ねぇキュゥべえ」
QB「なんだい?」
さやか「私って、ホントに魔法少女の素質あるの?」
QB「僕が見える以上、素質があるのは間違いないよ。ただ……」
さやか「ただ?」
QB「まどかほどの大きさは感じないね」
さやか「やっぱりかぁ……」
QB「でも、ここにいる魔女を倒すのは君にしかできないことかもしれないよ」
QB「魔力がどんどん強まってきている。このままではマミも間に合わない可能性があるんだ」
さやか「え? もうそんなヤバイの?」
QB「今ならまだ間に合う。さやか、君の願いはなんだい?」
さやか「私の願いは……」
マミ「その必要はないわ!」ザッ
QB「マミ、間に合ったんだね」
さやか「ま、マミさーん!」ダキッ
マミ「ご……ごめんなさい……お待たせ……しちゃって」ゼェハァ
まどか「間に……あって……良かった」ゼェハァ
マミ「美樹さんも良く頑張ったわね。ここにいるだけでも怖かったでしょう」ギュッ
さやか「あ、ごめんなさい……マミさんの顔を見たら急に安心しちゃって」
QB「悪いけど、いつまでもそうしてはいられないみたいだよ」
まどか「えっ?」
QB「グリーフシードが孵る。魔女が来るよ」
マミ「可愛い後輩をこんなに怖がらせて……」
マミ「しっかりとお仕置きさせてもらうわよ!」ジャキン
ほむら(もうすでに巴さんは戦いに入っているかしら)タッタッタ
ほむら(これまでの時間で、巴さんが単独でお菓子の魔女に勝てたことはない……)
ほむら(せっかくここまでは良い流れで来ているのに、ここで巴さんが倒れてしまっては)
ほむら(あった、結界。どうか、全員無事でいて!)スゥ
――――
マミ「ティロ・フィナーレ!」ズドォン!!
さやか「さっすがマミさん! 圧勝じゃん!」
マミ「ふふっ、たいしたことなかったわね……」
ほむら「巴さん! まだよ!」
マミ「暁美さん! まだってどういう……」
シャルロッテ「……!」ガパァ
マミ「……え?」バクン
ほむら「巴さん!!」
マミ(こんなにあっけないものなのね、私の最期って……)
さやか「マミさん、しっかりして!」
まどか「マミさん! マミさん!」
ほむら「巴さん、怪我はない?」
マミ(ここは天国かしら……? でも3人がいるということは、私は守れなかったのね)
マミ「みんな、ごめんなさい……」
さやか「良かった! マミさん無事だ!」
ほむら「謝っている暇はないわ。早くあの魔女を倒さないと」
マミ「魔女? でも私達はもう……」
マミ「あら、もしかして……生きてる?」
ほむら「落ち着いて巴さん。今はウルが1人で戦っている。私達も援護するわよ」
マミ「ウルさんが……?」
さやか「いっけー! そこだー!」
まどか「ウルさーん! 頑張ってー!」
リベルティス「……!」バサッバサッ
マミ「あれは昨日も見た鳥のフュージョン……暁美さん、いったい何が起こったの?」
ほむら「私にもよくわからないわ……」
ほむら「ただ、あなたが魔女に食べられたと思った瞬間、私達4人がこの場所に固まるように集まっていたの」
マミ「暁美さんでもわからないのね……」
ほむら「なんにせよ、あなたが無事でよかった。さぁ、いつまでも話していないで早く3人で魔女を倒しましょう」
マミ「そうね。格好悪いところを見せてしまったし、汚名返上といきましょうか」
リベルティス「……!」ブォォン
ほむら「喰らいなさい!」ターンターン
マミ「ティロ・フィナーレ!」ズドンッ
さやか「やった! あの恵方巻みたいの倒した!」
まどか「結界が消えていく。これで病院の人たちも……良かったぁ」ストン
マミ「2人とも、心配掛けてごめんなさい」
ほむら「危ないところだったわね」
ウル「なんとか間に合ったみてえだな」シュゥゥン
マミ「やっぱりあれはウルさんの……ありがとうございました」ペコッ
ウル「いや、いいってそんなん」
さやか「アレびっくりしたよ! 急にマミさんとほむらが目の前にいるんだもん!」
ほむら「いったい何をやったの?」
ウル「あぁ、あれは……」
マミ「ごめんなさい、ちょっと疲れてしまったから……今日はもう帰らせてもらうわ」
まどか「あ、はい。お疲れ様でした!」
ウル「おつかれー」
マミ「みんなもあまり遅くならないようにね。それじゃあ」フリフリ
ほむら「……」
さやか「どったの? 難しい顔しちゃって」
ほむら「いえ、なんでもないわ……私も用事があるから、これで失礼するわね」
さやか「そっか。それじゃまたねー」
まどか「ほむらちゃん、また明日」フリフリ
ほむら「ええ。さようなら」
ほむら「巴さん!」タッタッタッ
マミ「へ? あ、暁美さん!? どうしたの?」
ほむら「話があってきたの」
マミ「あら、そうだったの。でもごめんなさい、今日はもう……」
ほむら「疲れているのはわかってるわ。でも聞いて」
マミ「いつになく強引ねぇ」
ほむら「あなたはいったい、何をそんなに怖れ、焦っているの?」
マミ「わ、私はそんな……」
ほむら「今日の戦い方も、さっきの態度も、何もないなんて風には見えなかったわ」
ほむら「それに、これもよ」スッ
マミ「あ、グリーフシード……」
ほむら「疲れているとはいえソウルジェムの浄化も忘れるなんて、いつものあなたなら考えられないわ」
ほむら「特に、今日みたいに魔力を多く消費した後でなんて」
マミ「そうね……暁美さんの言うとおりよ」
マミ「私は怖がり、焦っていた」
ほむら「教えてもらえないかしら? あなたが何にそんな感情を抱いているのか」
ほむら「仲間として。あと、その……と、友達として」
マミ「私ね、ウルさんに嫉妬していたの」
ほむら「嫉妬? それもウルに?」
マミ「私、あの2人に良いところを見せよう、尊敬される先輩になろうって思ってた」
マミ「でもウルさんがいると、2人の視線はいつもそっちにばかり……私は必要ないのかなって」
ほむら「まどかは……あと美樹さんも、あなたを尊敬しているわ」
マミ「それはわかってるの。でも、それでも2人にちゃんと見てもらいたいって考えてしまって……」
ほむら「それで今日のようなピンチに陥ってしまった、というわけね」
マミ「本当にお恥ずかしい話よね。それに私は助けてもらったのに、そのことにもまた嫉妬してしまって」
マミ「そんな自分が嫌で嫌で、でもウルさんを見ているとまた嫌なことを考えてしまいそうな自分がいて……」
マミ「私、本当にどうしたら……」ポロポロ
ほむら「……と、巴さん!」ギュ
マミ「暁美……さん?」グスッ
ほむら「今日のことは、あなたがいなかったら美樹さんが危なかったかもしれない」
ほむら「あなたがいてくれたから、美樹さんは無事だったのよ」
マミ「で、でも……」
ほむら「私達はいつもあなたに頼ってきた。でも、たまにはこちらを頼ってほしいの」
マミ「だけど私は先輩として……」
ほむら「知ってる? ウルはあんな子供っぽいことばかり言ってるけど、実はもう25歳なんですって」
マミ「年上だとは思っていたけど、そんなに上だったのね……」
ほむら「だから、あなたがウルを頼ったってなんにもおかしなことなんてない」
ほむら「それにあの性格じゃ、いつかきっと危ない目に逢うわ。そのときはあなたが助けてあげればいい」
ほむら「それが仲間というものじゃないかしら?」
マミ「そうね……ありがとう、暁美さん」
マミ「もう戦っているのは私1人じゃない。あなたもウルさんもいるし、鹿目さんや美樹さんだって支えてくれている」
マミ(私にはこんなにも頼れる仲間がいる)
マミ(もう何も……恐くない!)
いつも感想などありがとうございます。ペースが遅くて申し訳ない。
そして今気づいた、緑の子が出ていないことに。
まぁこれ読んでる人にまどマギ未視聴って人も少ないでしょうし、いきなり登場しても大丈夫だよね……
ウル「……またかよ」ハァ
使い魔「GYAGYAGYA!」
ウル「まだ俺、呪われてんのかなぁ……なんで寄ってくんのよ?」
使い魔「GYAAA!」
ウル「うっせえ!」ドガッ
使い魔「!?」ピューッ
ウル「あっ、てめえコラ、逃げんな!」ダッ
――――
ウル「ったく……無駄に……走らせ……やがって」ハァハァ
ウル「でも、もう逃げらんねえぞ」
使い魔「KII!」
ウル「いくぜ!」ザッ
杏子「ちょっと待ちな!」
ウル「あん?」ピタ
杏子「人の縄張りで、なに勝手なことしてんのさ?」
ウル「縄張りぃ?」
杏子「ああ、この街の魔法少女はあたしだ。勝手なことしないでくんない」
ウル「あぁ……そういえば、ほむらが魔法少女には縄張りがどうとか言ってたっけ……」
杏子「知ってるなら、手ぇ出さないでくんない? アイツはあたしの獲物」
ウル「わーったわーった。そんじゃ、ほれ……やっちゃえよ」
杏子「いや、やらないよ」
ウル「へ?」
杏子「ん?」
ウル「魔法少女なんでしょ? なんで?」
杏子「いや……使い魔なんて、グリーフシード持ってないんだから倒すだけ魔力の無駄じゃん」
ウル「いやいやいや……他の人が危ないでしょ」
杏子「それで良いんだよ。何人か食えば魔女になって、そうすりゃグリーフシードを孕む」
ウル「へぇー。あぁ……そういうことね」
杏子「わかってもらえ……」
ウル「怖いんだ?」ニヤッ
杏子「あん?」ピキッ
ウル「怖いんでしょ、あの使い魔が」
杏子「ちげーよ。だからグリーフシードが……」
ウル「あぁもう、いいってそういうの。頼ってくれてもいいんだぜ? たすけてーって」ニヤニヤ
杏子「ちがうつってんだろ! あんなのあたし1人で楽勝なんだよ!」
ウル「ウソくせえなぁ……」
杏子「ホントだよ! 見てろ……おりゃ!」ザクッ
ウル「おー、つえーつえー」パチパチ
杏子「へん! だからさっきからそう言って……あ」
ウル「ばーか」
杏子「テメェぶっ殺す!」
ウル「えー? 自分で勝手にやったんじゃーん」
――――
ほむら「佐倉杏子さんね?」ファサッ
ほむら「あなたに伝えたいことがあって……なにやってるの?」
ウル「へ?」トックミ
杏子「あ?」アイ
ほむら「なんであなたがここにいるのよ……」ハァ
ウル「使い魔追っかけてたら、この頭の弱そうなのに絡まれたんだよ」
杏子「んだとぉ! テメー殺す! 絶対殺す!」
ほむら「佐倉さん落ち着いて……ウルも挑発しない」
ウル「はーい」
杏子「あんたこのクソむかつく野郎の知り合いか? ってか何であたしの名前を……」
ほむら「私は暁美ほむら。見滝原の魔法少女よ」
杏子「見滝原ぁ? お隣の魔法少女がなにしに来たんだよ」
ほむら「あなたに協力してもらいたいことがある。今日はそのお願いに来たの」
――――
恭介「さやかは僕を苛めているのかい?」
さやか「え?」
――ウルホーム――
ほむら「そろそろ、美樹さんが魔法少女になるのを決めるわ」
ウル「ふーん。止めないの?」
ほむら「今まで何度も試してきたけれど、魔法少女になるのは止められなかった」
ほむら「何度時間を繰り返しても、変えようがない部分もあるの」
ウル「でもさ、わるぷ……なんとかを倒すにはもっと力がいるんだろ?」
ウル「魔法少女になってもらったほうが良いんじゃねーの?」
ほむら「それは……今は言えない。でもいつか理由は……」ピリリリ
ほむら「メール? 美樹さんから……巴さんの家に?」
ウル「どうした?」
ほむら「美樹さんに呼ばれた。魔法少女関係の話だろうけど、あなたも来る?」
ウル「おまえが呼ばれたんだろ? じゃあ俺はいいや」
ほむら「そう。それじゃあ、行ってくるわ」
ウル「いってらっしゃーい」
ほむら「あ、そうだ。来ないのなら1つ頼みたいことがあるのだけれど……」
――マミルーム――
さやか「私、魔法少女になります!」
ほむら「やっぱり、ね」
マミ「ま、待って、もっと良く考えてからの方が……」
さやか「私は馬鹿だけど、それでも良く考えて決めたんです」
さやか「ほむらも、私のことを思って止めてくれてたのはよく分かってる」
マミ「それならどうして……」
さやか「それでも、叶えたい願いを見つけたんです」
さやか「魔法少女の先輩2人には、このことをちゃんと伝えておこうって思って」
マミ「もう、決めてしまっているのね?」
さやか「はい。でも、ほむらは意外と止めないんだね」
ほむら「美樹さんは一度決めてしまったら意地でも譲らない。今まで一緒にいて十分にわかってる」
さやか「あはは、まだ知り合って少ししか経ってないのに、そこまでわかっちゃうかー」
ほむら「そ、それくらいわかりやすい性格ということよ」
マミ「魔法少女になるからには、先輩としてビシビシ指導してあげるわね」
ほむら「そうね。最初から激辛で教えてあげる」
さやか「は、はじめはチキンカレー甘口くらいからお願いします……」
――病院前――
まどか「さやかちゃん、思いつめたような顔してたけど大丈夫かな……」
ウル「よぉ、元気?」
まどか「あ、ウルさん。どうしたんですか、こんなところで」
ウル「ちょっと待ち合わせ。ほむらが来るはずだったんだけど、呼び出されたから俺が代わり」
まどか「へぇー、いったい誰と待ち合わせですか?」
ウル「ん? あーちょっと待って、いたいた。おーい!」
杏子「ゲッ! なんでお前が!?」
ウル「ほむらの代理だよ。まどか、コイツは隣町の魔法少女で、えーと……馬鹿の子?」
杏子「佐倉杏子だ! テメーわざとやってんだろ!」
まどか「あはは……よろしくね、杏子ちゃん。でも、なんで隣町の魔法少女が?」
ウル「えーと、アレだ。わるぴ……」
杏子「ワルプルギスの夜。最強最悪の魔女がこの街にやってくる。あたしはそいつを倒すお手伝いさ」
杏子「ま、貰うもんは貰うけどね。しばらくは一緒に魔女退治をして、グリーフシードの分け前を頂くってワケ」
ウル「ディスカウントとかできねえかな……」
杏子「ビタ一文まけないよ」
まどか「とにかく、ほむらちゃん達と一緒に戦ってくれるんだよね? ありがとう!」
杏子「おう。ところでアンタは? 魔法少女なんだよな?」
まどか「あ、私は鹿目まどかです。魔法少女じゃ……ないです」
杏子「魔法少女じゃない? じゃあなんで……」
ウル「とりあえず、まずはほむらの家まで行こうぜ。今日はあっちのほうをパトロールすんだろ?」
杏子「そうだったね。よし、さっさと案内しろよ」ドカッ
ウル「いって、蹴るんじゃねえ!」
杏子「うるせえ、とっとと……まどかだっけ? あんたも来るんだろ?」
まどか「あ、うん……ごめんね」
――――
杏子「それにしても、コイツみたいのが魔女退治を手伝うなんてねぇ……」
まどか「ウルさんはとっても強いから……」
ウル「おう、任せとけ」エヘン
杏子「はぁ……マミの奴も腕が鈍ったか?」
まどか「マミさんを知ってるの?」
杏子「ああ、ちょっとした知り合いだよ」
まどか「そうだったんだ……あれ?」
ウル「どうした?」
まどか「あそこにいるの……仁美ちゃん?」
仁美「……」フラフラ
杏子「お友達か? なんだかえらく危なっかしい足取りだけど」
まどか「仁美ちゃん! 大丈夫!?」
仁美「あら、鹿目さん御機嫌よう」フラフラ
ウル「おい、なんか目ぇやばくない?」
仁美「今からとても素敵なところへ行きますのよ。鹿目さんもご一緒にどうですか?」フラフラ
まどか「仁美ちゃん、なんだか変だよ!? しっかりして!」
杏子「落ち着け。そいつの首もとを見てみな」
まどか「これは……魔女の口づけ!?」
ウル「しかも、1人だけじゃねえみたいだな」
ゾロゾロ
杏子「こりゃあ、魔女をどうにかしなきゃなんないようだね」
ウル「とりあえず、こいつらに着いていってみるか」
まどか「う、うん……そうだ、ほむらちゃん達に連絡を……」
杏子「あたしがいるんだ、いらないよ」
杏子「二度となめた口きけないように、あたしの実力を見せ付けてやる」
――廃工場――
男「俺はもうダメだ……どうしようもないダメ人間だ……」ドポドポ
まどか「ここは……みんないったい何を?」
仁美「神聖な儀式ですわ。鹿目さんも一緒に見守りましょう」
男「俺は生まれ変わるんだ……生まれ変わって今度こそ……」チャポン
まどか(あれは……洗剤? それじゃあ注いでいたのは!?)
ウル「なにやってんの? あれ」
杏子「あたしに聞くなよ。知るわけないだろ」
まどか「ダメー!」ダッ
ウル「うおっ! なにやってんの!?」
まどか「えっと……あ、この窓から!」ポイー
杏子「なんか捨てちゃったよ。どしたのあれ?」
ウル「俺に聞くなよ。知るわけないだろ」
まどか「良かった、間に合ったぁ……」フゥ
仁美「神聖な儀式に……なんてことを!」
男「邪魔を……するなぁ!」
杏子「なぁ、あいつヤバいんじゃない?」
ウル「ああ、助けるぞ!」
男「儀式を冒涜したものには制裁を……」
仁美「鹿目さんも一緒に、素敵なところへ行きましょう……」
まどか「ひっ……こ、来ないで……」
杏子「オラオラ、邪魔だァ!」ドカッ
ウル「踊り子へのお触りはご遠慮くださーい!」バキッ
まどか「ウルさん……杏子ちゃん……」
杏子「あそこにドアあるだろ、さっさと逃げな!」ドカッ
まどか「う、うん! でもこの人たちは操られてるだけだから……」
ウル「ああ、気絶させるだけだから安心してさっさと逃げろ!」バキッ
まどか「は、はい……2人ともごめんなさい!」ダッ
ウル「よし、さっさと片付けんぞ!」
杏子「足引っ張るんじゃないよ!」
――――
杏子「だいぶ数は減ってきたかな……」
ウル「ああ。あんまり大怪我とかさせんなよ?」
杏子「甘っちょろいねぇ。あたしたちがいなけりゃ、死んでたような奴らだろ?」
キャーー!!
杏子「あん? 今のあいつの声じゃないか?」
ウル「ああ……ここ、任せてもいいか?」
杏子「誰に向かって言ってんのさ。楽勝に決まってるだろ」
ウル「わりいな」ダッ
杏子「ただの人間が魔法少女に適うわけないだろ」
杏子「おら、めんどくさいからさっさと来いよ!」
――――
男「……」バタン
杏子「人間なんかにまけるあたしじゃないさ」
杏子「さて、あいつらはどうなってんのかな……」ガチャ
グニャア
杏子「な、これは結界!?」
杏子「2人は……いた! おい、大丈夫か!?」
まどか「みんな……ごめんなさい……ごめんなさい……」ガタガタ
ウル「アリス……待ってくれアリス……」ブツブツ
杏子「おいおい……なんだってんだよこりゃ」
使い魔「GYAHAHAHA」
杏子「こいつらは使い物にならないみたいだし、1人でやるっきゃないか……」ジャキ
――――
杏子「オラァ!」ザクッ
使い魔「GYAAA!」
杏子「いつまで雑魚の相手をさせるつもりだ? さっさと出てきな!」
エリー「……!」ズォォ
杏子「あんたが魔女か。行くぜ……」チャキ
エリー「……」ピカッ
杏子「な、これは……」
杏子(まだ幸せだったころの、あたしの家……)
杏子(あたしのせいで、この家が……でも)
杏子「それがどうしたぁっ!」ブオン
エリー「……!?」
杏子「そうやって人のトラウマほじくり出して楽しんでるのかもしれないけどよぉ!」ブンブン
杏子「その程度の攻撃、慣れっこなんだよ!」グサッ
エリー「!!!!」
杏子「自慢の画面も使い物にならなくなっちまったな!」
杏子「でも安心しな! テメーもこれで、終わりだよ!」ザンッ
エリー「……!!」シュゥゥ
杏子「この手の奴は、目や耳を貸すより先に手を出しちまえばいい」
杏子「そんなことも知らないとはね……お、結界が消えたかな」
杏子「おい、さっさと起きろ!」ペチペチ
まどか「あ……杏子ちゃん?」
ウル「うーん……あと2時間……」
杏子「なげえよ! おら、しっかりしろ!」ペチン
まどか「ここは……あっ! さっきの魔女は!」
杏子「もう倒した。あんたとそこのデクの棒がぶっ倒れてる間にね」
まどか「え? でもさっきマミさんもほむらちゃんもやられて……」
杏子「幻覚だよ。あいつはそうやって人を無力化するんだろうな」
ウル「幻覚……か」フゥ
杏子「あんたはやっぱり役に立たなかったみたいだねぇ。アリスアリスーってうなされてたみたいだけど」ニヤニヤ
杏子「そんなんザマなら、さっさと恋人のとこにでも戻ったらどうだい?」
まどか「きょ、杏子ちゃん! そんな言い方ってないよ……」
ウル「いや……悪かったな、迷惑掛けて。次からは気ぃつける」
杏子「お、おう……なんだよ、急に素直になりやがって……」
まどか「あ、仁美ちゃんたちをどうにかしないと! わっ、もうこんな時間!? マミさんから着信がいっぱい!」
ウル「落ち着けよ。まずマミに電話してやれ。倒れてる奴らを運ぶのは俺がやるから」
まどか「は、はい!」
まどか「もしもし、マミさんですか。……はい、途中で魔女に……もう大丈夫です、ウルさんと杏子ちゃんが……」
杏子「チッ……なんだってんだよ、調子狂うなぁ……」
終わったんかな?とりあえず乙
投稿済んだら区切りにレスあるとわかりやすくてありがたいかも
ウル、単純に混乱してただけなのか
列車イベントやってないのか、はてさて…
>>100
確かにわかりにくかったですね。
今日はいったんここまでです。
ウル君はほら、トラウマが質・量ともにかなりのもんだから……
――――
杏子「魔法少女はあんたとマミの2人だって聞いてたんだけど?」
ほむら「事情があって1人増えたのよ」
杏子「言っとくけど、取り分は変えないからな。何人魔法少女がいようとあたしが半分だ」
まどか「さやかちゃん、その格好……」
さやか「えへへ……私、魔法少女になっちゃいましたー! どう? 格好良いでしょ?」クルン
まどか「願い事はやっぱり……上条君のこと?」
さやか「まあ、ね」
杏子「あ? もしかしておまえ、誰かのために願い事を使っちまったのか?」
さやか「そうだけど……何か文句でもある?」
杏子「いーや、あたしは何の文句もないさ。ただ、一度しかない奇跡を誰かのために使う馬鹿が珍しいだけ」
さやか「なんだと!」
マミ「佐倉さん、あなたまたそうやって……」
杏子「くだらない願い事をする馬鹿に、馬鹿って言ってなにが悪いんだよ」
さやか「くだらないだと……あんたに私のなにが……」チャキ
まどか「だ、ダメだよさやかちゃん!」
杏子「なんだ? 剣なんて構えて、もしかしてあたしとやる気? ひよっ子が無理するもんじゃないよ」
さやか「うるさいっ! あんただけは絶対にゆるさ……モガッ」シュルシュル
マミ「ごめんなさい美樹さん。でも、少しだけ落ち着いて」
杏子「ハハッ、情けない格好。でもそれがお似合……うわっ!」ビクッ
ほむら「あなたもよ、佐倉さん。それ以上くだらない挑発を続けるようなら……」チャキ
杏子「いつの間に目の前まで……これがあんたの魔法かい?」
ほむら「巴さん、呼び出しておいて悪いけれど、今日はもう3人には帰ってもらいましょうか」
マミ「そうね。あなた達は魔女も倒してきていることだし、疲れているでしょう」
杏子「おいおい、わざわざ来てやったのに帰れってか?」
さやか「あたしが魔法少女になったんだから、あんたなんていなくても平気なの!」
杏子「ひよっ子がなに偉そうなこと言ってんだか」
マミ「佐倉さん、お願い。今日のところはもう……」ペコリ
杏子「チッ……わかったよ。でも明日からは、きっちり貰うもんは貰うからな!」スタスタ
まどか「あ、杏子ちゃん……」
ほむら「まどか、あなたも今日は帰っていいわ。ウル、まどかをお願い」
ウル「ん? あ、おう」
まどか「でも……」
さやか「大丈夫、さやかちゃんがいれば魔女なんてちょちょいのちょいだってば!」
まどか「うん……それじゃあ、また明日ね」
さやか「うん。また明日ー」バイバーイ
――――
まどか「送ってくれてありがとうございました、ウルさん、杏子ちゃん」
ウル「ちゃんとやらないとほむらが怖えーからな」
杏子「あたしは方向が同じだっただけだよ……」
まどか「あはは……それじゃあ2人とも、おやすみなさい」フリフリ
ウル「おう、おやすみー」
杏子「……またな」
――――
杏子「……」テクテク
ウル「……」スタスタ
杏子「なあ……なんか言いたいことでもあんだろ?」
ウル「へ!? え、なんで!?」ビクゥ
杏子「あんたはわかりやすいんだよ。さっきからチラチラ見やがって」
ウル「そっか……俺、そんなにわかりやすいんだ……」
杏子「どうでもいいことでいちいちショック受けてんじゃねえよ! 言いたいことがあるならさっさと言えって!」
ウル「お、おう。あのさ……俺、100年前から来たんだ」
杏子「はぁ? あんた大丈夫か? もうそこそこいい年だろ?」
ウル「ま、普通はそうなるよな。でも本当らしいんだ」
杏子「ふーん……で、100年前から来た男が何を言いたいわけ? あたしのご先祖様とか言い出しちゃうつもり?」
ウル「そんなんじゃねえよ。俺にはさ、すっげえ大事な女がいたんだ……」
ウル「でもそいつは死んじまった。それも、俺を助けるために」
杏子「それってまさか、さっきの……」
ウル「ああ。アリス、それが俺の一番大事な人の名前だ」
杏子「そうか……その、悪かったな、さっきは茶化しちまって」
ウル「いや、そいつはもういいよ」
ウル「俺さ、アリスが死んだとき、後を追いたいって思った……」
ウル「でもアリスがくれた命を捨てることもできなくて、ウジウジと生きてた」
杏子「……それで?」
ウル「友達からアリスを生き返らせるための手段を貰った」
ウル「失敗すれば化け物を生み出すか、自分が化け物になるかもしれない、禁断の秘術だ」
杏子「でもあんたはやったんだな?」
ウル「ああ。アリスが生き返るんなら、自分が化け物になるくらい怖くなかった」
ウル「でも失敗した。アリスは俺の目の前で消えちまったよ」
杏子「そっか……で、結局あんたは何が言いたいんだ?」
ウル「アリスが俺を守ってくれたように、俺がアリスを蘇らせようとしたように……」
ウル「命を賭けてでも守りたいもの、それがさやかにもあるんじゃねえかなって」
ウル「なぁ、お前にもないか? そういうの」
杏子「チッ……あたしには、そんなもんないね」
ウル「そうか。ま、俺も見つけたのはほんの少し前のことだからな。お前にまだなくてもしょうがねえよ」ポンポン
杏子「やめっ……頭触んな!」バシッ
ウル「わりーわりー。ま、そういうもん背負っちまってる奴がいるってこと、忘れないでくれよ」
杏子「しゃーねーな……わかったよ」
ウル「まぁ、さっき見せられてたのは脂ぎった小太りな中年男と、筋肉ムキムキな変体男の絡みだったんだけどな」
杏子「そっか……はぁ!? 今の話と全然関係ねぇじゃねえか!」
ウル「2人の男がリングの上で絡みって、俺はそのリングから逃げることもできない……きっちぃぞ」
杏子「やめろ! 想像して気持ち悪くなってきた!」
今日はこれだけ。遅くてすいません。
トラウマ(梅元・漢祭り)
プレイヤー的な意味での一番のトラウマは、間違いなくナイトメアですけどね。
――翌日・病院――
さやか「恭介ー、お見舞いに来たよ」ガラッ
看護師「あら、美樹さんこんにちは」
さやか「あ、こんにちは。あれ、恭介は……」キョロキョロ
看護師「上条君なら検査に行ってるわよ。それがね、彼の腕、急に良くなったの」
さやか「本当ですか!?」
看護師「ええ、昨日の晩にね。それも事故なんてなかったみたいに、すっかり今までどおり。先生も驚いてたわ」
さやか「そうなんですか……良かったぁ……本当に叶ったんだ」グスッ
看護師「きっと、あなた達みたいなお友達がいてくれたおかげよ」
さやか「それで、検査はまだかかりそうなんですか?」
看護師「そうね、いつもならもう戻ってきてもいい時間だけど、さすがに今日は長引いてるみたいね」
看護師「でも、もうそんなに時間もかからないと思うし、せっかくだから顔を見せていってあげたら? 彼も喜ぶわよ」
さやか「はい! それじゃあちょっと待たせてもらいますね。あ、その前に……」ゴソゴソ
さやか「まどかや仁美にも、このこと知らせてあげないと。ちょっと電話してきます」
看護師「いってらっしゃい。ここからなら屋上に出るほうが早いわよ」
さやか「よーく知ってます。慣れてますから」タタッ
看護師「走るのはダメよ……ってもう行っちゃったわね」
――――
さやか「まどかも安心するし、仁美は驚いちゃうだろうなぁ」テクテク
さやか「まずはまどかに電話して……」ガチャッ
さやか「……え?」
さやか(なんで恭介がここに? それに隣にいるのはにいるのは……)
さやか(仁美?)
――病院前――
さやか(うぅ……なんかわからないけど、逃げてきちゃった)
さやか(それに恭介、ヴァイオリン持ってた。どういうことなんだろ……)
さやか(腕が治って、真っ先に聞かせたかった……?)
さやか「あーもう、わかんない!」
杏子「なんだなんだ? 急に叫びだしやがって」
さやか「あんたは……」
杏子「あんたの頭じゃ考え込むだけ無駄なんじゃないか?」ニヤ
さやか「……スゥー……ハァー」シンコキュウ
杏子「あ? なんだ急に?」
さやか「ふぅ……『ホントだよ! 見てろ……おりゃ!』」ミブリテブリ
杏子「おい、そいつはいったい何のマネ……」
さやか「『へん! だからさっきからそう言って……あ』」
杏子「それ……誰に聞いた?」
さやか「ウル」
杏子「あの野郎……やっぱムカつく!」ピキピキ
さやか「人のこと馬鹿って言うわりに、自分は安っぽい挑発に乗っちゃうんだねぇ、きょーこちゃんは」プークスクス
杏子「うっせえ! なんだよその気持ち悪い呼び方は!」
さやか「いやぁ、ちょっと頭の足りてないきょーこちゃんは、こういう可愛らしい呼び方してあげた方が良いかなって」
杏子「黙れぇ! 今すぐその呼び方やめろ!」
さやか「わー、きょーこちゃんが怒ったー」ダッ
杏子「おいこら! 待ちやがれ!」
――――
さやか「はぁ……はぁ……無駄に走らせないでよ」
杏子「おまえが……逃げる……からだろ」
さやか「まったく、怒りっぽいんだから、きょーこちゃんは……」
杏子「殴るぞ」グッ
さやか「わかったわかった。それじゃ……杏子、で良い?」
杏子「それなら許してやる」
さやか「なんか偉そうな言い方……で、杏子は何しに来たの? パトロールならまだ時間あるよ」
杏子「ああ……この病院にいるのかい? あんたが願いを使った相手」
さやか「うん、もうすっかり元気になったみたい」
杏子「そうか……あたしはやっぱり、願い事は自分のために使うもんだと思ってる」
さやか「あんたには思いやりってもんが……」
杏子「そういうんじゃない。まぁちょっと聞きな」
杏子「誰かのために願いを使って、その相手が死んじまったらどうする? 自分を捨てていっちまったらどうする?」
さやか「そ、それは……」
杏子「魔法少女として、命がけで魔女と戦わなくちゃあなんない。いつ死んでもおかしくない日々」
杏子「手元に残るのはそんな呪いだけだ」
さやか「杏子、あんたもしかして……」
杏子「時間は……まだ大丈夫だね。ちょっと着いてきな、見せたいところがある」
本日これだけ。
お仕事がSPダウン攻撃連発してきます。
対策教えてください。
――――
さやか「おりゃー!」ザクッ
杏子「前ばっか見てないで周りにも気を遣えー」
さやか「えーい!」ズバッ
杏子「仕留め損ねてるぞー。相手の動き、もっとよく見ろ」
さやか「きゃっ!」ドカッ
杏子「体が治せるからって無理に突っ込むな。魔力の消費はできるだけ抑えろ」
マミ「あらあら……」パーン
ほむら「これはちょっと……意外ね」ズダダダダ
まどか「マミさんの家にも、2人で一緒に来てましたね」
ウル「いがみあってるよかずっと良いだろ」ドカッ
――――
さやか「このっ……まだまだー!」
杏子「だから魔力を使いすぎだっての。それも使い魔相手にさぁ」
マミ「私達と美樹さんでは戦い方がまったく違うから、佐倉さんがいてくれて良かったわ」
杏子「……あいつが少しでもマシになりゃ、あたしも魔力を節約できるってだけだ」
マミ「ふふっ、そういうことにしておいてあげる」
杏子「チッ……ほら、魔女がお出ましだ」
エルザマリア「……」
さやか「よーっし! 先手必勝ー!」
杏子「馬鹿! だから突っ込むなって……」
さやか「これでもくら……うぎゃ!」バババッ
杏子「言わんこっちゃない……あれは、木の枝か?」
ほむら「また使い魔も湧いてきたわ」
マミ「佐倉さんは美樹さんを守りながら接近! 暁美さんは私と一緒にサポートをお願い! ウルさんは鹿目さんを!」
杏子「どれだけ潰されりゃ気が済むんだよ!」ザクッ
マミ「暁美さん、2人に近い相手から優先的に!」パーンパーン
ほむら「わかっているわ、だけど数が……」ドンッドンッ
杏子「クソッ、近寄れねえ!」ザクッ
さやか「ここまで来れば……行ける」スゥ
杏子「さやか、何するつもりだ……」
さやか「おりゃー!」ダッ
杏子「おい! やめろ!」
エルザマリア「……」ビュッ
さやか「痛っ……くても止まらない!」ダダダッ
さやか「怪我くらいなら、後から治せばいい! もらったぁ!」バッ
杏子「下だ馬鹿!」
さやか「え……?」
エルザマリア「……!」ビュン
マミ「真下から枝が! 美樹さん!」
まどか「さやかちゃん!」
さやか「あ、あっぶなー……」ヒヤアセ
エルザマリア「!?」
杏子「避けた……のか?」
さやか「でももう、これで終わりだぁ!」ズバッ
エルザマリア「!!!!」
ほむら「倒した、みたいね」
マミ「ええ。結界が消えていく」
まどか「さ、さやかちゃん……良かったぁ」
杏子「ビビらせんなよ。刺さったかと思った」
さやか「へへっ、間一髪ってやつ? まぁちょっとかすったけ……ど」バタン
杏子「へ? お、おい! さやか!」ダッ
マミ「美樹さん!? いったい何が……」
QB「ソウルジェムから離れすぎてしまったようだね」ヒョコ
マミ「キュゥべえ!? どういうことなの!?」
杏子「コイツ……死んでるじゃねえか!」
ほむら「まさかさっきの攻撃で……どっちに飛んだかは分かる!?」
QB「あっちだよ」キュップイ
ほむら「くっ……急いで探さないと!」ヒュン
ウル「おい待てよ! って、もういねえか」
マミ「キュゥべえ、これはいったいどういうことなの?」
ウル「話せよ。お前は何が起きたかわかってんだろ」
QB「そうだね……まずはほむらが戻ってくるのを待とう。全員が揃ったら、ちゃんと教えてあげるよ」
ほむら「ゼェ……ハァ……」ヒュン
杏子「うおっ、なんだよ急に消えたり現れたり」
ほむら「そんな……話は……後よ。これを美樹さんに」スッ
まどか「それ、さやかちゃんのソウルジェム……」
ほむら「ええ。今ならまだ間に合うはず」ソッ
マミ「ソウルジェムを握らせて……どうするつもり?」
さやか「ん、あれ……? 私なんで倒れて……」
まどか「さ、さやかちゃーん!」ダキッ
さやか「わっ、なに!? いや、無理したのは悪かったって!」
マミ「良かった……」ペタン
さやか「マミさんまでどうしたんですかぁ! 急に座り込んじゃって」
杏子「えっと、さやかはさっきまでな……」
QB「さやかはさっきまで死んでいたんだ。ソウルジェムを失って」
さやか「死んでた……? どういうこと?」
QB「わかりやすく簡単に説明しようか」
QB「君達魔法少女の魂は、ソウルジェムの中にある」
マミ「私達の魂が、ソウルジェムの中に……?」
QB「人間のまま魔女と戦わせるなんて、そんな危険なマネはさせられないからね」
QB「ソウルジェムに魂を移してしまえば、君達は心臓が破れても、真っ二つになっても修理すればまた動く」
杏子「んだと……それじゃあまるでゾンビじゃねえか!」
マミ「キュゥべえ、なぜそんな大事なことを言ってくれなかったの?」
QB「聞かれていないからね」
まどか「そんな、ひどいよぉ……」
QB「君達人間はいつもそうだ。真実を伝えると決まって……キュップイ!」ズム
ウル「聞かれなかったから言わなかっただと? それで済むと思ってるのかよ」ゲシゲシ
ウル「テメエはこいつらを……人間を何だと思ってやがる!」ドカッ
ほむら「ウル、そいつを殺したところで、新しい個体がやってくるだけよ」
ウル「わかってるよ! くそ!」
QB「僕ばかりが責められているけど、説明をしていなかったのは僕だけではないんじゃないのかい?」
マミ「え?」
QB「暁美ほむら、君は知っていたはずだ。魔法少女がどういうものか」
まどか「ほむらちゃんが!?」
杏子「あんたも知ってて黙ってたってのかい?」グイ
マミ「佐倉さん、ダメよ!」
ほむら「……ええ、全て知っていたわ。それより手を離してくれないかしら」
杏子「じゃあなんで教えなかった!」グググ
ほむら「伝えてどうなるというのよ!!」バシッ
ほむら「今さら伝えたところで、もう人間には戻れないのよ!」
マミ「そ、それは……」
杏子「確かにそうだけど……」
ほむら「美樹さんも、知っていれば願いを諦めたの!?」
さやか「う……私は……」
ほむら「あなたはもう人間じゃない、と言ってほしかった!? 逃れられない呪いなら、知らない方が幸せよ!」
ほむら「私は、ただそう思って……!」
ウル「落ち着けほむら!」
ほむら「あ……ごめんなさい」
杏子「いや、あたしのほうこそ……ゴメン」
さやか「ほむらは私達のこと思って、言わないでいたんだね」
ほむら「ええ……だからまどか、お願いだからあなただけは……」
まどか「ほむらちゃん……」
ウル「ところでさ、ほかにはなんかヤバイこととかあるの?」
マミ「他に?」
ウル「うん。どうもあいつは信用できねぇ、他にも何か隠してそうじゃん」
杏子「確かに、まだあってもおかしくないね」
ウル「あいつはいつのまにか逃げちまったけど、ほむらなら何か知ってんじゃねえの?」
ほむら「それは……」
マミ「何があるの?」
ほむら「今は……言えない。でもいつかきっと……」
ウル「あー、いいよそういうの。わりいな、変に期待して」
ほむら「へ?」
ウル「ほむらは知らないもんなぁ、何も」
ほむら「知っているわよ」
ウル「じゃあ教えてよ」
ほむら「今は言えない」
杏子「うわ……始まったよ」
ウル「やっぱり知らないんだぁ」
ほむら「……ええ。本当は知らないの」ハァ
ウル「え?」
杏子「あ?」
ほむら「そんな挑発に引っかかる人がいると思ってるの?」
杏子「うぐっ」
さやか「はいはーい、ここに1人いまーす」ユビサシ
ほむら「本当に、今はまだ伝えられない。でも必ず話す日が来るから……」
ウル「ちぇ、しゃーねーな」
マミ「今日はそろそろ帰りましょう。もうずいぶん遅い時間になってしまったわ」
まどか「わっ、ホントだ! ママに怒られちゃう!」
杏子「仕方ないね。帰るとするか」
――ウル宅――
ウル「で、さっき別れたばっかで何の用?」
ほむら「さっきの話の続きよ。魔法少女の呪いについて」
ウル「……なんでさっき言わないの?」
ほむら「魔法少女である彼女達には辛い話になるわ。でもあなたには伝えておくべきと思って」
ウル「さっきのよりキツイってか……」
ほむら「ええ。ソウルジェムが穢れきったとき……」
――――
ウル「魔法少女が魔女に、か……確かにあの場では聞かせらんねえな」
ほむら「今日のことで大きなショックを受けている。そこに追い討ちはかけられないわ」
ウル「でもなんで俺に?」
ほむら「もしそうなった場合、躊躇わずに殺してほしいから」
ウル「おいおい……物騒だな」
ほむら「今までの時間では、今日のことを知った美樹さんは高い確率で魔女になる」
ほむら「そして佐倉さんが命を奪われたことも少なくない」
ウル「被害を増やさないために、俺にやれってか」
ほむら「そう。そしてもしも……」
ウル「お前が魔女になっても、殺せって言うんだろ?」
ほむら「ええ。それにそうなったらもう時間を遡ることはできない。だからその時はまどかを……」
ウル「ったく、面倒ごとばっか押し付けやがって……」
ほむら「ごめんなさい。でもあなたくらいしか頼れないの。それじゃあ私はこれで」ポト
ウル「おい、なんか落ちたぞ」パシ
ほむら「あら、ごめんなさい」
ウル「なんだティッシュか……ちょっと待て、これだれから貰った?」
ほむら「転校した日に、クラスメイトからだけれど……」
ウル「そいつに会わせてくれ。ちょっと聞きたいことがある」
本日はここまでで。
ビルダーカードとか積極的に暴走させに来るのはやめろください(懇願)
――翌日・放課後――
生徒C「どうしたの、暁美さん? 急に校舎裏に呼び出すなんて」
ほむら「あなたに会いたいという人がいるの」
C「私に?」
ほむら「ええ。ウル、こっちよ」
ウル「おう、悪いね、急に呼び出して」
C「え、えっと……どちら様でしょうか? 本日はどのようなご用件で……」
ウル「ああ、これについて聞きたくてね」ピラ
C「そ、それは福引券……ということは」
福引会員№08「私から福引をしたい、ということですね! さぁどうぞ! どこからでも!」ワクワク
ほむら「ウル……あなた福引がしたかったの?」
ウル「ちげーって。あのさ、あんたらの会長に用があるんだけど……」
№08「会長に、ですか?」
ウル「うん。連絡取れないの?」
№08「事務局には電話できますが、しかし会長もお忙しい人ですし……」
ウル「これ、使ってやっから」ピラピラ
№08「わかりました、では電話をかけてみます。でもその前に福引を! さあ! 早く!」ズイッ
ウル「お、おう……それじゃあ」ッタン!
№08「大当たりー! おめでとうございます! こちらが景品になります!」スッ
――第5の鍵を手に入れた。――
ウル「さ、早く連絡つけてくれよ」
№08「引いて頂いたからには、約束を破るわけにはいきませんね。少々お待ちください」ピポパポ
№08「あ、お疲れ様です、福引会員№08のCです」
ウル「ウルって男からだって伝えてくれ」
№08「会長に繋いでほしいのですが……ええ……ウルさんという方が用事があるそうで……え?」
№08「ああ……はい、お待ちください」
ウル「どうした?」
№08「事務局の方が、あなたとお話したいとのことで……」スッ
ウル「事務局が? はいもしもーし」
???『お久しぶりですね、ウル』
ウル「おまえ、もしかして……」
キース『ええ、キースです。またこうして話すことができるとは思いませんでした』
――教会――
杏子「なにやってんだい? こんなところで」
さやか「へ? ああ、杏子か……」
杏子「その様子じゃ、昨日のアレがずいぶん効いてるみたいだね。ほれ、食うかい?」ポイ
さやか「りんご? ありがと……ねぇ、杏子はつらくないの?」
杏子「あたしは別に……この体のおかげで好き勝手やらせてもらえてるからね」
杏子「ま、このことを言わなかったキュゥべえの野郎は許せないけどさ」
さやか「でも、こんな化け物みたいな体じゃ……」
杏子「あたしはもう、誰かに愛してほしいだとかは考えちゃいないよ」
さやか「そんな、そんなのって……」
杏子「こんな体にされちまったんだ、もうすこし自分勝手に生きてもバチは当たんないんじゃない?」
杏子「誰かに愛されたいって願うくらいなら、力ずくで奪いとって、離れらんないように縛りつけちまえば良い」
さやか「できないよ、そんなこと……」
杏子「あんたもあたしと同じで、誰かのために願いを使っちまった大馬鹿だ」
杏子「だから、あんたが苦しんでるのは見てらんないんだよ」
さやか「杏子……でも、やっぱり私にはできないかな」
さやか「私は自分の願いに後悔なんてない。大事な人がまた希望を持ってくれたんだもん、後悔なんてあるわけない」
杏子「そうか……あんたはあたしよりもずっとずっと、とんでもない大馬鹿ってことか」
さやか「あはは、それは否定できないかな……でも、ありがとね、杏子」
杏子「なんだよ急に」
さやか「私のこと気にかけてくれて。マミさんの言ってたとおり、根は良い子なんだねぇ」
杏子「あたしはただ、、おまえが間違えちまったら気分が悪いってだけで……」
さやか「わかってるわかってる。あ、ところでこのりんごどうしたの? まさか盗んだとか……」
杏子「ちげーよ。それはその……」
さやか「どうしたの? ちゃんと買ったの?」
杏子「マミが無理やり持たせてきたんだ。『ちゃんと食べてるの?』とか、お前はあたしの母親か!?」
さやか「あぁ……マミさんらしいっちゃらしいのかな」
――翌日――
まどか「授業終わったし、帰ろうさやかちゃん。今日も病院、寄っていくんだよね?」
さやか「うん……いや、今日はいいや」
まどか「そう? さやかちゃんがいいならいいんだけど……」
仁美「美樹さん、少しよろしいでしょうか?」
まどか「あ、仁美ちゃん。授業お疲れー」
仁美「お疲れ様です、鹿目さん。それで、美樹さんにお話が……」
まどか「あ、ごめんね。それじゃあ私は1人で帰ろ……」
さやか「ごめん、仁美。今日はちょっと用事があるから、また今度ね」タタッ
まどか「あ、さやかちゃん! ……行っちゃった」
仁美「ずいぶんと急いでいましたわね……鹿目さん、よろしければ一緒に帰りませんか?」
まどか「うん、一緒に帰ろ」
仁美「少し寄っていきたいところがあるんですが、ご一緒してくださいます?」
まどか「別にいいけど、どこに行くの?」
仁美「ふふっ、それは着いてからのお楽しみですわ」
ほむら「……」ホムゥ
ほむら(美樹さんの状態はあまり良くないようね)
ほむら(間に合ってくれれば良いのだけれど……)
――――
さやか「こんのぉ!」ザクッ
マミ「美樹さん! 前に出すぎよ!」
さやか「大丈夫ですって、このくらい! うおりゃー!」ズバッ
杏子「無茶しすぎだ馬鹿!」
まどか「だめだよさやかちゃん……こんなの」オロオロ
ほむら「魔女は倒したみたいだけれど、これでは……」
さやか「へへっ、楽勝楽勝」ボロボロ
杏子「なにが楽勝だよ! 傷だらけじゃねえか!」
マミ「美樹さん、もっと体を大事に……」
さやか「大事にしてどうなるっていうんですか! こんな体!」
マミ「えっ!?」ビクッ
さやか「大事にして元の体に戻れるってなら、いくらでもそうしますよ! でももう人間には戻れないんでしょ!」
まどか「さやかちゃん、そんな言い方……」
さやか「まどかには関係ないでしょ! 魔法少女でもなければ、魔女と戦いもしないまどかには!」
まどか「うぅ……」
さやか「アイツにだまされた私達が必死に戦ってるのを見て、面白がってるんでしょ!」
まどか「そんな、私はそんなつもりじゃ……」グス
さやか「自分は戦いもしないで、守ってもらうだけで……」
ウル「もうやめとけよ」チョップ
さやか「痛、なにすんのよ……」
ウル「おまえが一番わかってるはずだろ、あいつがそんなこと考えるわけないって」
さやか「……今日はもう帰る。まどか、ゴメンね」タッタッタッ
杏子「あいつ、そうとうキテるな……」
マミ「ええ。普段どおりに振舞おうとしてるのが、かえって痛ましいわ」
ほむら「ウル、間に合うんでしょうね?」ヒソヒソ
ウル「明日の晩には着くらしいぜ」ヒソヒソ
――翌日――
仁美「美樹さん、この後にお時間を……」
さやか「ごめん仁美、今日も用事が……」
まどか「待って、さやかちゃん!」
さやか「ま、まどか? どうしたの大声出して」
まどか「お願い、仁美ちゃんの話を聞いてあげて。とっても大事な話だから……」
仁美「お願いします。美樹さんにはどうしてもお聞かせしなければいけないんです」ペコリ
さやか「……わかったよ。で、話って?」
仁美「まずは一緒に来てもらってもよろしいでしょうか?」
さやか「ここじゃできない話なの? どこ行くの?」
仁美「病院です。上条君の入院している」
――病院・屋上前――
さやか「って、屋上? 恭介の病室じゃなくて?」
仁美「病室では迷惑になりますから。さぁ、こちらへ」ガチャ
さやか「なんなのよいったい……って、恭介?」
恭介「久しぶり、さやか」
仁美「それでは私はこれで……」ソソクサ
さやか「え? 仁美? これいったいどういうこと?」
恭介「落ち着いて、さやか。僕が志筑さんにお願いしたんだ」
さやか「お願い? あ、それ恭介のヴァイオリン……」
恭介「うん。志筑さんに持ってきてもらった」
恭介「もしも腕が治ったら、最初にさやかに聞いてほしかった」
恭介「いつもお見舞いに来てくれたさやかのおかげで、この腕は治ったようなものだから」
さやか「え? それじゃあ一昨日のは……」
恭介「一昨日? 志筑さんにヴァイオリンを持ってきてもらって、その後に1人で少し練習をしてたんだけど……」
恭介「もしかして練習、聞いちゃってた? だとしたら僕、今ものすごく格好悪いなぁ……」ショボン
さやか「いや、違う違う! なんでもないから!」
恭介「本当に?」
さやか「正真正銘、これが事故以来初めての、恭介のヴァイオリンだよ!」
恭介「そっか、良かったぁ……よし、それじゃあ行くよ」スッ
さやか「うん!」
――♪~♪――
――――
まどか「ね、来て良かったでしょ?」
さやか「うん、ありがとね」
まどか「それにしても、一番最初に聞かせたいなんて、大切に思われてるんだね」ティヒヒ
さやか「そんなんじゃないってば。でもまどか、あんたこのこと知ってたんだよね……」
まどか「それはその……上条君からサプライズにしたいって頼まれて」
さやか「しょうがないなぁ。でも、仁美も私を必死に呼んでくれて……」
まどか「うん。やっぱり良い子だよね、仁美ちゃんは!」
さやか「私、自分が恥ずかしいよ……」
まどか「さやかちゃん? どうして?」
さやか「一昨日病院に行った時、屋上で恭介と仁美がいるのを見ちゃったんだ」
まどか「ヴァイオリンを持ってきた日、だよね」
さやか「うん。でも私はそれを見て、2人が付き合ってるんじゃないかなんて考えて……」
さやか「恭介を治したのは私なのになんでとか……」
さやか「それどころか、仁美が魔女に襲われたとき、助かってなければ……なんてことまで考えちゃってさ」
まどか「さやかちゃん……」
さやか「最低だよね、私って。こんなに良い友達がいるのに、そんなことばっかり考えてて」
まどか「そんなことない! さやかちゃんだってとっても良い子だって、私は知ってるよ!」
さやか「ありがと、まどか。でもね、そんなこと考えちゃうような私は……」
さやか「体だけじゃなくて、心ももう人間じゃなくなっちゃったのかな」
――――
マミ「今日のパトロールは、少し寂しいわね」
まどか「ほむらちゃんとウルさんは用事があるみたいですから」
杏子「あいつらがいなくても関係ない……っと、魔女のお出ましだ」
マミ「行くわよ、佐倉さん! 美樹さんは鹿目さんを……あら?」
さやか「魔女退治はさやかちゃんに任せろー!」ダッ
杏子「また1人で先走りやがって! マミ、援護だ! まどか、あたしから離れるなよ!」
マミ「美樹さん、少し引いて! そんな戦い方じゃ……」
さやか「化け物の私でも、恭介や仁美たちのために戦うことくらいはできるんです!」ズバッ
さやか「私にできるのはこうやって戦うことしかないんだから、せめてそれだけは全力で!」ザクッ
杏子「くそっ、変な方向に吹っ切れやがって!」
杏子「こっちも助けにいける状態じゃないぞ!」ズバッ
マミ「こうなったらまとめて! ティロ……」ズォ
杏子「どうした!? 撃たないのかよ!?」
マミ「使い魔に囲まれて、美樹さんが見えない! もし彼女に当たってしまったら……」
杏子「あの馬鹿……くそっ、どうにかならないのかよ!!」
???「とぅっ!!」バッ!
マミ「なに!? 今の声は!」
杏子「あのビルだ!」
???「この世を闇が包もうと! 正義を貫くこの拳! 守って見せよう少女の笑顔! とぅ!」バッ!
杏子「飛んだ!? しかもあの方向は!」
マミ「私のティロ・フィナーレがっ!」
???「ふんっ!!」ガシッ!
???「うぉぉおりゃ!!」ブオン!
杏子「あの銃を振り回してやがる……」
マミ「ティロ・フィナーレが鈍器に……」
グラン・パピヨン「愛と正義の使者、グラン・パピヨン! 今宵も華麗に、参上だっち!」バーン
杏子「おい変態だ。変態が結界に巻き込まれてるー」
今日はこれだけ。
純正統派超大作魔法少女SS(※ >>1談)
>>140
マスコットは私に決まってるのです!(CV.我修院達也)
>>141
熊猫くん「僕達が!」
河童くん「マスコットだ!!」
>>144
バグズ①「マスコットを」
バグズ②「お探しと」
バグズ③「聞いて」
グラン・パピヨン「オラァ!」ブオン!
杏子「めちゃくちゃ強ぇじゃねえか!」
マミ「使い魔がどんどん吹き飛ばされていくわね……私の銃で」
さやか「いやー……なんなのあの人?」
まどか「さやかちゃん!」
杏子「さやか!」
マミ「無事だったのね!?」
さやか「うん。ごめんね、心配かけて」ペコリ
さやか「あの人が大暴れしてる姿を見たら、なんかこっちは逆に落ち着いてきちゃった……」
グラン・パピヨン「いくだら! ゴルァ! ゴルァ! ゴルァ!」ズガン!
さやか「で、なんなのあれ? 魔法少女じゃあないよね?」
マミ「私にもまったくわからないわ」
まどか「でも、おかげで助かったね」
杏子「ホントだ。もう残りは魔女だけか」
グラン・パピヨン「ふんッ! カキーン!」キラッ
さやか「魔女が吹っ飛んだ!」
杏子「星になりやがったぞ! グリーフシードどうすんだこれ?」
グラン・パピヨン「次回、グラン・パピヨン! ガチンコホモホモクラブに、グラン・セーッツ!」ビシィ!
さやか「ポーズまで決めちゃってるよ……」
まどか「グラン・パピヨン……さっきもそう名のってたよね?」
マミ「助けていただいたんだから、お礼をしないといけないわよね……」
杏子「やめといた方が良いんじゃない? 変な電波とか移されっぞ」
マミ「あの……グラン・パピヨン? さん」オズオズ
グラン・パピヨン「おう、無事だっただらか」
マミ「はい、どうもありがとうございました」ペコリ
グラン・パピヨン「ヒーローとして当たり前のことをしただけだっち」
杏子「やばいよコイツ、ヒーローとか言い出しちゃってるよ」ヒソヒソ
さやか「早いとこさよならした方が良いんじゃない?」ヒソヒソ
まどか「そんな言い方、失礼だよ。一応、恩人なんだから」ヒソヒソ
マミ「そ、そうでしたか……それでは私達はこれで……」
グラン・パピヨン「ちょと待つだっち!」ガシ
さやか「マミさんが捕まった!」ヒソヒソ
杏子「仕方ない、あたし達だけでも逃げようぜ」ヒソヒソ
マミ「えーと、どうなさいましたか?」タジタジ
グラン・パピヨン「オレはある男に呼ばれてこの街へとやってきたんだら……」
マミ「そ、そうなんですか……」
グラン・パピヨン「お前らたちは知らないだらか? ウルという男だっち」
4人「え?」
――同時刻・校庭――
ほむら「知り合いを迎えに行くんでしょう? なんでこんなところへ……」
ウル「ああ、これくらいでかい場所じゃないと停められないみたいでさ」
ほむら「停める? そのお友達はヘリにでも乗ってくるっていうの?」
ウル「お、アレだアレ! おーい」フリフリ
ほむら「アレって……え?」ポカーン
シュゴゴゴゴ
ほむら「ちょ、ウル! アレに乗ってるの!? あのUFOに!?」
ウル「うん、たぶん。あの家とよく似てるし」
ゴゴゴゴ……ズゥン
ほむら「着陸したわよ! 中から宇宙人とか出てこない!?」
ウル「大丈夫だっての」
プシュー
ほむら「開いたわ!」チャキ
ウル「いや、構えんなって」
キース「お待たせしましたね、ウル」
ウル「よぉ、久しぶり」
キース「本当に……お久しぶりです。またお会いできて嬉しいですよ」
ほむら「ウル、こちらの方は?」
ウル「ああ、昔の仲間だよ」
キース「はじめまして、お嬢さん。キース・ヴァレンティーナと申します。以後、お見知りおきを」ペコ
ほむら「あ、はい。私は暁美ほむらです、よろしくお願いします」ペコリ
ほむら「じゃなくて、おかしいでしょう。あなたは100年前から……」
ウル「いや、それは……」
キース「100年前……懐かしいですね。僕がまだ400歳くらいの頃。ウルたちと世界を回ったあの時代……」
ほむら「え?」
ウル「見た目はこんなだけどさ、これでも100年前からの仲間なんだよ、これが」
ウル「そういや、今は何歳になるんだっけ?」
キース「そうですね……正確な数字まではわからないのですが、大体500歳程度と思っていただければ」
ほむら「500歳……? え? どういうこと……?」
ウル「こいつな、吸血鬼なんだ」
ほむら「きゅうけつ……き?」ポカン
キース「ええ。ビストリッツにささやかながら城を構えておりますので、お越しの際はぜひお立ち寄りください」
ウル「そうだ、兄貴は元気にしてる?」
キース「兄上ですか? 実は、ウルに会いに行くと言ったら無理やり着いてきまして……」
キース「兄上ー! もう日本へ着きましたよー!」
プシュー
ヒルダ「キースお兄様、ヨアヒムお兄様ならもういないですニャ」
ほむら「今度は女の子? この子も吸血鬼なの!?」
ウル「ん? なーんか見覚えがあるな……」
ヒルダ「なんニャ? 私はおまえなんて知らないニャ! ナンパならお断りニャ!」
キース「ヒルダ、兄上がいないというのは……」
ヒルダ「少し前に『正義を呼ぶ声が聞こえるだっち!』なんて言って飛び降りたニャ」
キース「まったく……」
ウル「おまえの兄貴、頭のほうはやっぱアレなまんまなんだな」
キース「ええ、お恥ずかしい限りです」
ほむら「あの……すいません」オズオズ
キース「おっと、失礼しました。レディーを放って昔話に花を咲かせるなんて……」
キース「どうなさいましたか、暁美さん?」
ほむら「色々と聞きたいことはあるのだけれど……まず、こちらの方はキースさんの妹さん?」
ヒルダ「ニャ?」
キース「ええ。日本へ行くと言ったら、自分も着いていくと聞かないもので……」
ヒルダ「当たり前ニャ! 日本といえば大きなお友達用アニメ伝統の地ニャ! この市場を逃してはいけないのニャ!」
キース「時々、良く分からないことを口走りますが、気にしないで下さい。ヒルダ、お2人に挨拶を」
ヒルダ「ヒルデガルド・ヴァレンティーナだニャ。魔法少女マジカルヒルダちゃんと呼ぶがいいニャ」キラン☆
ほむら「魔法少女? あなたも魔法少女だと言うの?」
ヒルダ「あなたも……だとニャ? まさかヒロインを狙っているのニャ!?」
ヒルダ「ヒロインの座は渡さないニャ! 覚悟するニャ!」
ほむら「え!? なに? なんなの!?」
ギャーギャーワーワー
ウル「おまえんとこの兄弟、こんなんばっかかよ……」
キース「根は良い子なんです……きっと」
ウル「そうだ、ロジャーのじっちゃんは? つれてきてくれたんだよな?」
キース「ええ。少し飛行艇の調整が必要とのことでしたが、もうそろそろ……」
プシュー
キース「出てきたようですね」
ウル「よっ、じっちゃん」
変な生き物「ウル……本当にウルなのですか?」
ウル「おう。久しぶりだな」
変な生き物「生きていたんですね。良かった……本当に良かった!」ガバッ
ウル「うわっ、抱きつくなよ!」
変な生き物「心配したんですよ! あれからずっと探し続けて……」ウルウル
ウル「悪かったな。で、そんなことより頼みたいことが……」
変な生き物「そんなこと!? そんなことって言いましたか!?」クワッ
変な生き物「ずっと心配していたんですよ! あなたが見つからぬ毎日に何度枕を濡らしたことか!」
変な生き物「死んでしまったんじゃないかって不安になりながら、それでもきっとどこかで……」
ウル「だから、謝ってんだろ」ペシッ
変な生き物「痛っ!」
ほむら「ウル……」
ウル「ん? そっちの話はついたのか?」
ほむら「ええ、一応は……はぁ」タメイキ
ヒルダ「正ヒロインの座はヒルダ様のもので決定したニャ!」
ほむら「それで、その変な生き物はいったい……」
変な生き物「む、失敬な娘ですね。では教えて差し上げましょう!」
変な生き物「私の名前は>>154!」
本日これまで。
マスコット? リングの精じゃないんですか?
乙
変な生き物
変な生き物「……なんて名前ではなく、ロジャー・ベーコン」
ロジャー「愛と平和を愛する永遠のスター・チルドレ……」
ウル「いいから、そんなの」ペンッ
ロジャー「痛っ!」
ウル「見てる人に気ぃつかわせちゃうから」
ロジャー「……何の話?」
ほむら「あの、すいませんでした、ロジャーさん」
ロジャー「いえ、気にしないで下さい。ところであなたが例の?」
ほむら「はい、魔法少女……です」
ロジャー「ふむ……それでウル、私に調べてほしいものとは?」
ウル「ああ、そういつが持ってる」
ほむら「これです」スッ
キース「これは……宝石、ですか?」
ヒルダ「そんなグッズじゃ、お子様の購買意欲はそそられないニャ」
ロジャー「ただの宝石、というわけではないのですね?」
ほむら「ええ。これはソウルジェムといって……」
――――
ロジャー「なるほど、この中にあなたの魂が……」
ほむら「はい。そして私以外の魔法少女も同じように……」
キース「許せませんね。少女の魂にこのようなことを!」
ヒルダ「まったくニャ! 魔法少女モノのストーリーじゃないニャ!」
ウル「こいつから肉体に魂を戻す方法、じっちゃんならわかんねえかな?」
ロジャー「まずは調べてみましょう。この飛行艇にも簡易的な設備は積んであります」
ロジャー「暁美さん、来ていただけますか?」
ほむら「はい、お願いします」
――――
キース「それでウル、この100年間、あなたはいったい何を?」
ウル「別に何もしてねえよ。気づいたらここにいたんだ」
キース「見たところあなたは人間のはずなのに、あまり年をとっていないようですが……」
ウル「それね、別に100年間生きてきたわけじゃないの。気付いたらこの時代に居たんだって」
ヒルダ「タイムスリップというやつニャ?」
ウル「そう、それ。あのときの仲間はみんな色んな時代に飛ばされて……」
ウル「おまえらのとこのバカ兄貴は、もとの時代に戻ったみたいだけどな」
キース「ええ、残念なことに。兄上が戻ってからも大変なことばかりですよ」
キース「変な雑誌を作って借金を膨らませたり、その返済のために城の家財道具を売り払ったり……」
ヒルダ「あげくにはブラジルで趣味の悪い寿司屋ニャ! いい加減にするニャ!」
ウル「そういや、あの剣はどうなったの? あいつに曲げられたらしいけど」
キース「あの剣……魔剣ティルビングのことですね!?」
ヒルダ「うわっ、マズいニャ……」コソコソ
キース「直しましたよ! 我が一族の総力を上げて! 100年の時を費やして!」
ウル「うお! なんだ急に……」
キース「曲げた兄上に怒りを覚える日々はもう昔のこと! あの悲劇があったからこそ、ティルビングはより素晴らしい剣として蘇ったのです!」
ウル「お、おい、コイツどうした……って、あの妹、逃げやがった」
キース「ウルにもこの輝きを見せるべく、今日は持ってきているのですよ!」
ウル「お、おう。でもまた今度で良いかな……」
キース「ウル! 僕とあなたの間に遠慮はいりません! さぁ、この美しき刃の煌きを……」
ウル「おまえ、キャラクター違わねえか!?」
キース「さぁ! ほら!」
ピリリリ
ウル「あ、悪い、電話だ。はいはいもしもーし」スタコラ
ウル「おう、俺だ……は? 変態? あぁ……うん、知り合い。今、ほむらと学校にいるから……そんじゃ」プチッ
ヒルダ「誰からニャ?」
ウル「おまえ、いつの間にか逃げやがって……こっちの知り合いからだよ」
ヒルダ「ここへ来るのニャ?」
ウル「ああ。どうやら……」
ウル「仮面つけたムキムキの変態が俺を探してるってさ」
ヒルダ「そ、それは……」
キース「兄上、ですね」
ヒルダ「あ、戻ってきたニャ」
――――
まどか「ウルさーん!」
マミ「こんばんは、ウルさん」
杏子「なにやってんだい? こんなとこで」
さやか「なにこれ? UFO? なんでうちの学校に?」
キース「おや、こんな美しいレディに囲まれているとは」
ヒルダ「サブヒロインがいっぱいニャ……」
グラン・パピヨン「ウルー! 生きていただらかー!」ドタドタ
ウル「気持ちわりぃ! 近寄ってくんな!」ゲシッ
グラン・パピヨン「うぅ……ひどいだら」
マミ「ところで、こちらの方達は?」
ウル「ああ、こいつらは昔の……」
キース「失礼しました、お嬢さん。僕はキース・ヴァレンティーナと申します」ズイッ
キース「愚兄がお世話をかけてしまったようで、真に申し訳ございません」
マミ「あ、ええ、いえ。こちらこそお世話になりまして……」
杏子「愚兄? コイツ、あんたの兄貴なのか?」
キース「ええ。ソレは僕の兄でヨアヒム・ヴァレンティーナ。こちらは妹のヒルデガルド・ヴァレンティーナと申します」
グラン・パピヨン「兄に対する扱いがひどくないだらか……」
まどか「ヨアヒムさん? グラン・パピヨンさんじゃないんですか?」
キース「それは病気のようなものでして……」
グラン・パピヨン「説明しよう! グラン・パピヨンとは世の平和を守るヒーローの名前だっち!」
グラン・パピヨン「しかし普段はこのようにして……」スチャ
ヨアヒム「ヨアヒム・ヴァレンティーナという仮の姿で生きているだっち!」
杏子「仮面つけただけじゃねーか」
さやか「で、ウル、なんでこんなとこに? っていうかあのUFOなに? あとほむらは?」
ウル「そんないっぺんに聞くなよ。それにほむらもそろそろ……」
プシュー
キース「終わったようですね」
ウル「ああ」
ロジャー「まさかこんなことが起きているとは……あ、そこの段差、気をつけてください」
ほむら「ええ。ありがとう、ロジャーさん」
まどか「ほむらちゃん!」
杏子「なんだアイツ!? 宇宙人か!?」
さやか「ほむらを返せ! 変な生き物!」
ロジャー「な、なんなんですか!? 失礼な娘達ですね!」
ロジャー「いいですか? 私のなま……」
ウル「2回もやんなくていいっての」ペシ
ロジャー「あ、痛い!」
ウル「この変な生き物はロジャー・ベーコンっつって、俺の知り合いの魔術師」
杏子「魔術師ぃ?」
マミ「魔法少女とは別物……よね。どう見ても」
ウル「で、どうなの? なんかわかったの?」
ロジャー「ええ、わかりましたよ色々と。ただ、その前に暁美さんから話があるそうです」
ウル「ほむらから?」
杏子「なんだってんだい、いったい?」
ほむら「前に話した、魔法少女の呪いについてよ」
さやか「それって、あのとき教えてくれなかった……」
ほむら「ええ、あの話の続き」
ほむら「教えてあげるわ、魔法少女と……魔女について」
今日はこれだけ。
話が進んでいない気がするのは、きっと気のせい。
そして安価に付き合って頂きありがとうございました。
ほむら「ソウルジェムが穢れきったとき、何が起きるかを知っているかしら?」
マミ「穢れていくことで魔法が使えなくなっていく……はずよね?」
杏子「待てよ、コイツの中にはあたし達の魂が入ってるんだろ」
さやか「もしかして、汚れきったら死んじゃうとか……?」
ほむら「その方が、まだ救いがあったかもしれないわね」
まどか「死ぬよりも、救いのないこと……?」
ヨアヒム「なぁ、いったいなんの話をしているだら?」
ヒルダ「今シリアスな場面ですニャ! お兄様は黙ってるニャ!」ゲシッ
ほむら「ソウルジェムが穢れきったとき、魔法少女は……魔女になるの」
杏子「な、なんだそりゃ……そんなん聞いてねえぞ!」
ほむら「そうでしょうね。インキュベーターは都合の悪いことは聞かれない限り答えないわ」
さやか「私が……魔女に? やっぱりもう人間じゃない……」
マミ「そんな……そんなことなら……」
まどか「え? マミさん?」
マミ「ソウルジェムが魔女を産むなら……みんな死ぬしかないじゃない!」
マミ「あなたも! 私も!」ジャキッ
ヒルダ「ま、待つニャ! 私はそういうのじゃないニャ! だから私は撃っちゃダメニャ!」
キース「あなた以外も撃っちゃいけませんよ! 巴さん、落ち着いてください!」
マミ「でも! いずれ魔女になってしまうくらいならせめて人間のうちに……!」
ウル「その方が良いかどうか、ほむらの話を最後まで聞いてから決めりゃいいんじゃねえか?」ポンポン
マミ「ウルさん……でも私、魔女になんて……」グスン
ウル「ほむら、わざわざコレを話したってことは、どうにかできるってことなんだよな?」
ほむら「ええ。ここからの説明は、ロジャーさんにお願いするわ」
ロジャー「えー、そうですね……まず穢れというものについて説明しましょうか」
ロジャー「ウル、あなたは心当たりがありませんか?」
ウル「コレの穢れに? 知らねえよ、んなもん」
ロジャー「そうですか? では言い方を変えましょう」
ロジャー「人の心を蝕み、時に怪物を生み出す……そんな意志を、あなたは知っているはずです」
ウル「おい、それってまさか……」
ロジャー「そのまさかです。皆さん、ソウルジェムの穢れ……これはマリスと呼ばれるものです」
杏子「マリス? なんだそりゃ?」
ロジャー「分かりやすく言うなら、悪意や敵意といった負の感情、というところですね」
ウル「で、でもさ、マリスってもっと赤くなかった?」
ヨアヒム「そうだら。前に塔から飛んで言ったのも赤色だっただら」
ロジャー「本来は赤く見えるものです、しかし……」
ロジャー「黒く見えるほどに凝縮されたマリスが、肉体という鎧のない魂の周りに充満したとき」
ロジャー「果たしてその魂は、人の姿を保つことができるでしょうか?」
キース「なるほど、そうして魂が侵食されることで……」
ほむら「魔法少女は怪物に……魔女になってしまう」
ロジャー「あなた達の使う魔法とは、本来の世界の理から外れたところにあります」
ロジャー「来るべき未来と、魔法によってずれた未来、その齟齬により生まれたマリスの受け皿が、ソウルジェムなのです」
ウル「で、それを止めるのはどうすればいいの?」
さやか「そうだよ、そのマリスってのをどうにかしなきゃいけないんでしょ?」
ロジャー「もちろん、方法はあります」
マミ「本当に!?」
ロジャー「はい。しかしそれは、マリスを祓うためのものではありません」
杏子「穢れをとらずに、どうするつもりさ」
ロジャー「戻すんです。魂を、あるべき場所に」
さやか「魂を戻すって……もとの体に戻れるってこと!?」
ロジャー「はい。普通の人間に戻るのです」
ウル「そんなこと、できんの?」
ロジャー「ウル、思い出してください、2人で禁断の秘術に臨んだ日のことを」
ウル「……エミグレの秘術」
杏子「ちょっと待てよ、それってあんたが前に言ってた……」
ウル「ああ。じっちゃん、秘術は失敗したはずだぜ」
ロジャー「エミグレの秘術において一番の関門となるのは、失われた魂を呼び戻すことです」
ロジャー「ですが、今回はその魂がすぐそこにあります。秘術を行うというより、加藤特佐に近いですね」
ウル「エミグレの一部を応用するってワケか」
ロジャー「はい。蘇った魂を体にはめ込む、その部分だけを活用します」
ウル「じゃあこいつらは人間に戻れるんだな?」
ロジャー「わかりません。前例のないことですし、飛行艇にある設備だけでは検査も十分ではありません」
ロジャー「しかし、可能性は低くないと言えます」
ほむら「美樹さん、あなたはすぐにでもロジャーさんとウェールズへ向かったほうが良い。もとの体に戻りたいのでしょう?」
ほむら「巴さんと佐倉さんも、人間でありたいなら一緒に行くべきよ」
まどか「ほむらちゃんは行かないの?」
ほむら「私は……まだ魔法少女をやめるわけにはいかない。ワルプルギスの夜を倒すまでは」
杏子「あたしも戻る気はないよ。あたしには住む場所も何もないんだ、今さら人間に戻ってものたれ死ぬだけ……」
マミ「それなら昔みたいに、私の家に来たら?」
杏子「いや、そういう問題じゃなくて……わかれよ!」
マミ「最初から素直に言えばいいのよ、暁美さんだけ戦わせるようなことしたくないって」
杏子「べ、別にそういうんじゃねえよ!」
ヒルダ「ツンデレニャ、これが日本のツンデレというやつニャ」
さやか「私も杏子と同じだよ。もとに戻るのは、そのワルプルギスってのを倒してから!」
マミ「もちろん私もよ。後輩だけを戦わせるわけにはいかないわ」
杏子「だから違うって言ってんだろ!」
まどか「あ、あのっ!」
ほむら「まどか? どうかした?」
まどか「それなら、私も魔法少女になっても大丈夫なんだよね?」
まどか「私、いつもみんなに守られてばっかりで、せめて強い魔女と戦うときくらいは……」
ほむら「ダメよ!」
まどか「へ? な、なんで……」
ロジャー「鹿目さん、と言いましたね。魔術は時に予想も付かないことが起きるものです」
ロジャー「どれだけ理論として成功が保証されても、実践でかならずそうなるとは限りません」
ほむら「もしも人間に戻ることができなかったら……その時のリスクは増やしたくないの」
まどか「そんなぁ……」
さやか「だーいじょうぶ、さやかちゃんに任せておきなって」
杏子「さやかが言っても余計不安になるだけじゃねえか?」
マミ「鹿目さんは守られているだけじゃないわ。素敵なお友達がいるから、私達も戦うことができるの」
ヒルダ「絶対に許さないニャ! お前はメインヒロイン格のピンク色になりそうだから絶対だめニャ!」
まどか「うぅ……みんな、ごめんね」
ほむら「謝らないで。まどかが魔法少女にならないことが、私の願いなのだから」
キース「幼い少女達の美しい友情……素敵な光景ですねえ」
ウル「お前、やっぱそっちなんだな……」ドンビキ
キース「この素晴らしい光景、そんなところからでは見難いでしょう? 出てきたらどうですか?」
ほむら「へ?」
ウル「あ?」
QB「気付いていたのかい? さすが吸血鬼というところだね」トコトコ
本日ここまでです。
強引な設定もハートで受け止めていただけると助かります。
杏子「キュゥべえ……てめえ、なんでそんな大事なことを言わなかった!」
QB「大事なこと? いったい何の話だい?」
マミ「魔法少女が魔女になるということよ! そんなことを、なんで……」
QB「ああ、そのことかい。だって聞かれなかったからね」
さやか「聞かれなかったからって、言わなくていいはずが……」
QB「君たち人間は、この話を聞くといつもそうだ」
QB「魂の在処も、魔女になるということも、そんなに大きな問題かい? わけがわからないよ」
ヒルダ「コイツ……なんかムカつくし、どことなくキモいニャ。マスコット不合格ニャ」
キース「キュゥべえと言いましたね? ひとつ聞いてもよろしいですか?」
QB「なんだい? というか、君たちはあたりまえのように僕が見えるんだね……」
キース「ええ、吸血鬼ですから」
ウル「それ、答えになってんの?」
キース「それはさておき……あなたは魔女を倒すために彼女たちを魔法少女にしたのですよね?」
キース「でしたら、魔女へ変貌することも話しておいた方がリスクは少ないはずですが……」
ほむら「簡単なことよ。コイツの目的は、魔女を滅ぼすことではない」
ほむら「むしろ魔法少女から魔女を生み出すことが、一番の目的」
まどか「魔女を生み出すことが……?」
マミ「それは本当なの、キュゥべえ?」
QB「暁美ほむら、君はいったいどこまで……いや、なぜそこまで知っているんだい?」
ウル「そろそろ話しても良いんじゃねえか? みんなにもさ」
ほむら「そうね……私がどこから来て、何のためにここにいるか、すべて教えるわ」
――――
ほむら「そして私は、この一ヶ月の時間を繰り返している、というわけよ」
さやか「ほむらが、未来から……」
マミ「暁美さん、あなたはいったい何度この時間を……」
ほむら「もう数えるのもやめたわ」
まどか「私のせいで、ほむらちゃんが何度も辛い目に……」
ほむら「いいのよ、まどか。私にとって一番辛いのは、あなたを失うことなのだから」
QB「時間遡行者、というわけかい。どおりで詳しいはずだよ」
ほむら「そうね、今までのことはもちろん、あなたたちインキュベーターが何故魔女を作りたがるかも」
杏子「魔女を産む理由?」
ほむら「ええ。インキュベーターは、この世界を維持するために魔女を生み出している」
さやか「それって、世界を守るためってこと? でも魔女は放っておいたら人が……」
QB「そんな小さな規模じゃあないよ」
QB「この地球だけでなく宇宙規模で考えた含んだ世界。それを維持するためのエネルギーさ」
ほむら「そしてそれは、魔法少女が魔女と化す瞬間に多く生み出される」
QB「そこまで知っていながら、なぜ君は僕たちの邪魔をするんだい?」
QB「魔法少女を人間に戻すなんて、君たちは自分が何をしているのかわかってい……キュップイ」
ウル「うるせえよ、クソ猫」ゲシ
ウル「そんなに大事なら、自分でどうにかしやがれ」グリグリ
ヨアヒム「正義のヒーローは、子どもたちを犠牲にするようなことはしないだっち!」
QB「それができるのなら、最初からそうしているよ。この方法も、けして効率が良いとは言えないからね」
キース「あくまで効率の問題ですか。つくづくあなたとは話が合わないようですね」
QB「それにしても、魔術というものにここまでのことができるとは思わなかったよ」
QB「僕たちの技術を真似た学問だとばかり思っていたけれど、僕たちに理解できない部分が多すぎる」
ロジャー「当然のことです。あなたたちに魔術が理解できるわけもない」
QB「この星が生まれる以前から世界を管理してきた僕たちが、人間の作った学問を理解できないというのかい?」
ロジャー「はい。魔術とは人の欲望を実現するためのものです」
ロジャー「感情というものを持たないあなたに、欲望から生まれた魔術が理解できるはずがない」
QB「そうだね……ただ、魔術というもの自体の有用性は認めなければいけないみたいだ」
QB「それじゃあ、僕はこれで失礼するよ。これ以上長居していたら、また個体を減らされそうだ」トコトコ
ウル「ちっ、やっぱいけすかねえ野郎だな」
キース「皆さんもそろそろ帰りましょう。レディがあまり遅くまで出歩いているものではないですよ」
今日はこれだけ……
温かいお言葉ありがとうございます
まどか「ほんとだ、もうこんな時間」
マミ「そうね、それじゃあそろそろ帰りましょうか」
ウル「だな。じゃあなじっちゃん」
ロジャー「あ、待ってください」
ウル「ん? なに?」
ロジャー「暁美さんから聞きましたよ。住むところがなくて野宿しているそうですね」
ウル「ああ、昔から似たようなことばっかしてるし、気にならねえけどな」
ロジャー「この飛行艇、生活に必要な設備も揃っているんです」
ウル「マジで? それじゃあ……」
ロジャー「あなたもこちらへ来ませんか?」
ウル「ぼくここんちのこになるー」ワーイ
ロジャー「それと、佐倉さん」
杏子「あ? なんだよ?」
ロジャー「あなたもどうですか? 住む家を持っていないと聞いていますよ」
杏子「あたしがココに? 遠慮しと……」
マミ「良いんですか!? ぜひお願いします!」
杏子「お、おい! あたしはこんな変なトコで暮らすなんて……」
マミ「なに言ってるの! 佐倉さんも女の子なんだから、もっとちゃんとした暮らしをしないと!」
ほむら「そうね、私も佐倉さんはここへ移る方が良いと思うわ」
杏子「おいおい、あんたまでマミみたいなこと言い出すのかい?」
ほむら「違うわよ。見滝原で急に何かがあった場合、住んでいる場所が近いに越したことはないでしょう」
さやか「そうだよ、パトロールのたびにこっちにくるのも面倒でしょ」
杏子「それはそうなんだけどさ……でも、こいつらと同じところで暮らすんだろ?」チラ
ヨアヒム「ん?」
ヒルダ「どうしたニャ?」
杏子「これはちょっとなぁ……」
キース「大丈夫です。兄上は頭はアレですが悪い人間ではありません。ヒルダだって実は優しい所もあるんです」ズイッ
キース「だから、さぁ! 佐倉さんもぜひお越しください!」ズズイッ
杏子「あたしの本能は、あんたが一番ヤバそうって感じてるんだよ……」
マミ「それじゃあロジャーさん、佐倉さんをお願いしますね」
ロジャー「大丈夫です。部屋は空いてますからね」
杏子「おいコラ! 勝手に話を進めんな!」
――飛行艇内――
キース「さて、皆さん帰られたようですね」
杏子「けっきょく流されちまった……」
ウル「まぁ諦めろよ。こいつら全員病気だから」
ロジャー「落ち着いたところで、ウルには色々とお話ししてもらいましょうか」
ヨアヒム「そういえばなんでウルがいるんだら? あれから100年も経ってるだっち」
キース「今さらですか」タメイキ
ウル「今さらかよ」タメイキ
ヒルダ「ヨアヒムお兄様だから仕方がないニャ」タメイキ
ヨアヒム「みんなが俺をいじめるだっち……」
ロジャー「それにしても、なぜウルがこの時代に飛ばされたのでしょうか」
キース「それに魔女との戦いに身を置くなんて、本当にあなたといると退屈しませんね」
ウル「それね、俺も本当にわけわかんないの」
ウル「加藤はあの時、帰りたい時代を願えって言ってたけど、俺は100年後なんてこれっぽっちも願ってないわけ」
ヨアヒム「俺はもとの時代に帰りたいって考えて、気付いたら師匠のいるリングに立っていただっち」
杏子「師匠?」
ウル「あ、それ聞かないで。思い出すと気持ち悪くなるから……」
キース「本当に不思議な話ですね。この時代に何か心当たりなどはないのですか?」
ウル「こんな未来のこと、考えたこともねえよ。それに、俺はあの時自分が死んだと思ってたんだ」
ロジャー「……あの時と、同じじゃあないですかね?」
ウル「あの時?」
ロジャー「ええ、戦う理由に悩んでいたあの時と同じ。アリスの愛した世界を守るため」
ロジャー「だから、この世界に新たな危機が訪れた現代にやってきた」
キース「なるほど。ではまた100年後に危機があれば、改めて感動の再開ができますね」
ウル「もうやらねえよ! お前は退屈しのぎがしてえだけだろ!」
ロジャー「まぁ、これ以上考えてもおそらく答えは出ないでしょう。今日のところはもう休みましょう」
キース「そうですね。久しぶりの日本ですし、明日は観光もしたいですから」
ヒルダ「長旅で少し疲れたニャ。夜更かしはお肌に悪いニャ」
ヨアヒム「ヒルダは寝てただけだっち……」
ヒルダ「何か言ったかニャ?」ギロ
ヨアヒム「な、なんでもないだっち」
キース「では佐倉さん、お部屋へ案内しましょう。こちらへ」
杏子「お、おう……」
――翌日夜・校庭――
マミ「みなさん、こんばんは」
さやか「ばんわー」
ウル「お、来たな」
まどか「飛行艇、朝に学校へ来たときはなかったけど、どこに停めてあったんですか?」
ロジャー「雲の上です。この飛行艇ベーコン号は、ホバリングも可能なんです! さらにコップ半分の水で……」
ウル「興味ねえから、そういうの」ペシッ
ロジャー「痛ぁい!」
杏子「朝起きて外見たら空の上さ。さすがにちょっとビビッたよ」
さやか「あ、杏子だ。どう、住み心地は?」
杏子「ああ……マミをぶん殴りたいくらいには快適さ」ズーン
杏子「ヒルダには1日中なんかキラキラしたアニメ見せられるし、キースは妙に優しくて怖いし……」
さやか「そっか……お疲れ様」
杏子「ただ馬鹿なだけな分、ヨアヒムがまともに思えてくるくらいだよ」
ヒルダ「魔法少女のあり方を教えてやったのニャ」
キース「レディに優しくするのは紳士の務めですから」
まどか「あ、ヒルダさん、キースさん、こんばんわ」
キース「こんばんは。今日からは僕達も、パトロールに協力させて頂きますよ」
マミ「良いんですか? 危険も多いですけど……」
ほむら「ヨアヒムさんが強いのはわかったけれど、ヒルダさんは危ないのでは……」
キース「大丈夫です。ヒルダは兄上に勝ったこともありますから」
まどか「ヒルダさんが、ヨアヒムさんに!?」
ヒルダ「おーほっほ! ヨアヒムお兄様は勉強でも喧嘩でも私には勝てないのニャ!」
ほむら「戦えるのなら、グリーフシードの温存にもなるしありがたいわね」
マミ「そうね……じゃあお願いしようかしら」
ヨアヒム「俺様に任せるだっち!」
さやか「ロジャーのおじいちゃんはどうすんの? さすがに戦えないでしょ?」
ロジャー「そうですね。ただ、一度魔女というのは見ておきたいですし……」
ウル「じっちゃんなら大丈夫だろ。たぶん放っといても死なねえって」
――街中――
ネーネーアレナニー ガイジンサンダ デケー
マミ「さすがに、これだけの大所帯だと目立つわね」
杏子「人数よりも、コイツが一番の問題じゃねえかな……」チラ
さやか「なんで……カーネル人形が?」
ヨアヒム「やっぱりヒーローは、黙っていても視線を集めてしまうだらか……」
ナニアレCM? ケンタッキーノヒトダ タベタクナルナル
ウル「ちげーよ、そのでっかい人形のせいだよ。っていうかなんでそんなん持ち歩いてんだよ」
ヨアヒム「なんでって、武器だからに決まってるだら」
ほむら「武器!?」
まどか「そういえば、ほむらちゃんはヨアヒムさんが戦ってるの見てなかったね」
杏子「コイツ、マミのでっかい銃を振り回してたんだよ」
ほむら「え? アレを?」
ヨアヒム「今日、街を歩いていたらこの漢に出会っただっち」
ヨアヒム「長い年月でその身が汚れようと決して微笑を失わない姿、そこに正義の心を感じただら」
杏子「病気だよ病気。さっさと頭のお医者さん行って来いよ」
マミ「正義の味方どころか、ただの泥棒じゃ……っと、ソウルジェムに反応ね」
キース「おや、出番が来ましたか」
ヒルダ「マジカルヒルダちゃんの力を見せ付けてやるニャ!」
ほむら「こっちね、行きましょう」タタッ
杏子「おう。あんたらも着いてこい」ダッ
――結界内――
ウル「消えろ!」ドカッ
ヨアヒム「ふん! せい! おぉりゃっ!」バキッ
ヒルダ「ぴっぷんぽっぷん、くたばるニャー!」ビーム
キース「ふんふふーんふーん」サラサラ
まどか「みんな頑張ってー!」
さやか「私たち、いなくても良いんじゃないかな……」
ほむら「何かあったときまどかを……と、ロジャーさんを守るのが役目よ」
ロジャー「ねえ! 今、私のこと忘れてませんでした!?」
杏子「魔法少女でもないのにビーム出しやがった。なんでもアリかよあいつら」
マミ「コウモリも出てきたわよ。どうなってるのかしら」
ヒルダ「お菓子を貰って来るのニャ!」ドカーン
魔女「……!!」
杏子「お、終わったみたいだな」
まどか「皆さん、お疲れ様でした!」
ウル「おう。楽勝、楽勝」
ヒルダ「お仕置き完了ニャ」
マミ「本当にお強いのね……」
ウル「で、実際に見てどうよ? なんかわかった?」
ロジャー「はい、おそらく魔女の存在は私の予想した通りです。そしてこのグリーフシード」ヒョイ
杏子「さっきのやつが落としてったか」
ロジャー「この中には、まだ魂が残っているようです」
ヒルダ「さっきの怪物は死んでないニャ?」
ロジャー「ええ。魂はこの中で生きています。そしてそれが再びマリスに包まれることで、魔女が復活する怖れもあります」
さやか「ちょ、ちょっと、それじゃあ私達が穢れを浄化してたのって……」
ロジャー「はい、魔女を復活させていた……ということになります」
マミ「そんな……それじゃあ私達がいくら倒しても……」
杏子「魔女の数は減らないってワケかよ! クソッ!」
ロジャー「そうさせないためには、マリスのたまっていない状態で破壊するしかありません。しかし……」
ほむら「そうすると、今度は私達の穢れが祓えないということね」
ロジャー「ええ。魔法少女を永遠に戦い続けさせ、いずれ魔女にさせるためのシステムです」
杏子「それじゃあもしかして、今までの穢れをとった後のグリーフシードは……」
マミ「そういえば、キュゥべえに渡していたわね」
ロジャー「システムに感づかれないよう、回収したものを遠いどこかへばら撒いているのではないでしょうか」
ウル「ったく、胸くそ悪い野郎だぜ!」
ロジャー「でも、相手の出方が分かれば、こちらも対策を立てることができます」
ほむら「そうね。今まではただ戦い続けてきたけれど……今はもう、目指すべきことが見えている」
今日はこれだけです。
戦闘させると、どうしてもシャドハ勢ばかりに走ってしまう……
――数日間・抜粋――
ヨアヒム「うーむ……この錆と汚れに包まれたボディ、長年の雨風に耐え続けた威厳を感じさせる姿……」
杏子「自販機はやめとけな、マジで」
ヨアヒム「しかしこの荘厳な佇まい……欲しいだら」
杏子「捕まるから。それ、ただの強盗だから。ほらさっさと帰るぞ」グイ
ヨアヒム「待ってくれだっち! アレには激動の昭和を生き抜いた魂が……」ズルズル
杏子「正義の心を持った漢を使ってやれよ!」
――――
キース「ダージリンですか、良い香りですね。水や淹れ方もしっかりとしているようです」カチャ
マミ「ええ。キースさんは紅茶にはお詳しいんですか?」
キース「それなりには。何かを学ぶための時間は、余すほどにあるもので」
マミ「分かってくれる方が居ると、出しがいがあります。よかったらこちらも」
キース「クッキー……こちらは巴さんが?」
マミ「趣味なんです。ところで、話というのは……?」
キース「おっと、本題を忘れるところでした。僕が聞きに来たのは、巴さんが今後どうするのかについてです」
――――
ヒルダ「つまり男なんてこうして……」
さやか「ふむふむ……」メモメモ
まどか「さやかちゃん、ヒルダさん、何してるの?」
ヒルダ「さやかに男の落とし方を教えてやってるニャ!」
さやか「ち、違うから! 別に恭介がどうこうとかじゃないから!」
まどか「あはは……頑張ってね、さやかちゃん」
ヒルダ「そういえば、まどかは弟が居るらしいニャ?」
まどか「え? は、はい、いますけど……」
ヒルダ「弟に合わせるニャ! まどかの弟なら可愛い系に違いないニャ!」
まどか「え、えっと……あっ、私これから用事があるんだった!」ダッ
ヒルダ「待つニャ! さやか、捕らえるニャ!」
――飛行艇内――
ほむら「明日、ワルプルギスの夜がこの街にやってくる」
まどか「ニュースでもやってたよ。スーパーセルって言うのが近づいてるって」
さやか「魔法少女4人にウルたちもいるんだし、なんとかなるんじゃない?」
マミ「油断はできないわ。性質からその力まで、他の魔女とは別物と言えるらしいのだから」
ロジャー「暁美さん、あなたはそのワルプルギスの夜と対峙したことがあるんですよね?」
杏子「正直なところ、どうなんだい? あたし達で勝てそうなのか?」
ほむら「それは……まだなんとも言えない。かつて魔法少女4人で挑んだことはあったけれど、相手が本気を出していたかどうか……」
ヨアヒム「この俺様が居れば、怖いものなどないだっち!」
キース「兄上は放っておいて、作戦会議と行きましょう」
ほむら「そうね。まず特徴として、大規模な攻撃と異様な耐久力、そして使い魔の数……」
――――
キース「さて、概ね作戦は決まりましたね」
ほむら「あくまで私が体感した強さでしかないのが問題だけれど」
ウル「ま、なんとかなるって。神様に比べりゃ大したことねえさ」
QB「それはどうかなあ」
ほむら「インキュベーター!」
杏子「てめえ、まだ何かちょっかい出そうってのか!」
キース「……どういうことですか?」
QB「ワルプルギスの夜は、ウルが今まで戦ってきた相手にも引けをとらない、ということさ」
ヨアヒム「そ、そんなに凄いだらか……」
QB「ただ、もっと確実性の高い手段もあるんだ」
ヒルダ「そんなものがあるなら、最初から教えるニャ!」
QB「簡単なことだよ。まどか、キミが魔法少女になれば良い」
まどか「わ、私が?」
QB「そう、キミには誰よりも大きな素質がある。キミさえ魔法少女になれば……」
ウル「黙れよ」ゲシッ
ほむら「インキュベーター、それ以上続けると、また個体を減らすことになるわよ」チャキ
QB「どれだけ作戦を考えるよりも、一番確実な方法だと思うけれど……」
ほむら「彼女を魔法少女にしては何の意味もないわ。さっさと消えなさい」
QB「そうかい? 残念だよ。じゃあまどか、気が変わったらいつでもボクを呼んでよ」トコトコ
さやか「誰が呼ぶもんか! まどかに二度と近づかないで!」ベー
まどか「私が……みんなを……」ボソッ
マミ「鹿目さん、どうかした?」
まどか「あ、いえ……なんでもないです……」
――――
ウル「どうした、帰らねえのか?」
ほむら「ウル……」
キース「レディがあまり遅くまで起きているものではないですよ」
ヨアヒム「決戦に向けて、力を蓄えるだら!」
ほむら「そうね、私ももう帰るわ。ただ、ひとつ聞かせて」
ウル「ん? なに?」
ほむら「ウル、あなたは私達のために戦ってくれている。それは非常にありがたいと思っているわ」
ほむら「でもなぜ、あなたは戦ってくれるの?」
ほむら「魔女やインキュベーターから世界を守るため? それとも魔法少女の運命への同情?」
ウル「いや……」
ウル「宿命(さだめ)……だからさ」
ほむら「……そう」
ウル「ああ」
ほむら「ありがとう。明日も、よろしくね」
ウル「ああ」
――翌日――
杏子「随分とでっけえな、オイ」
⑤
マミ「鹿目さんにロジャーさん、もう避難所には入ったかしら」
④
さやか「避難所には仁美も恭介もいるんだから……!」
③
ウル「なにアレ? どうやって飛んでんの?」
ヒルダ「きっとワイヤーとかで吊ってるニャ」
ヨアヒム「じゃあひっくり返ってるのは……」
キース「裏でワイヤーが絡まったりしてるんですかね?」
②
ほむら「来るわ……」
①
ワルプルギスの夜「キャハハハハ!」
ウル「行くぜ……へっ」バシュゥゥン
ネオ・アモン「グオォォォ!」バサッ
ほむら「あれがウルの中の悪魔……みんな、続いて!」ダッ
今日はここまで。
やっとこさワルプルさん……
ネオ・アモン「オォォォ!」アクマコウセン!
マミ「食らいなさい!」ズドン
ワルプルギス「キャハハハッ!」バシュ
杏子「当たるかよ!」
ほむら「気をつけて! 使い魔が来る!」
使い魔「……」ワラワラ
キース「これはまた……悪趣味な」
さやか「私達の……魔法少女の影?」
ヒルダ「恋の魔法でおしおき……って、ちょっと待つニャ! 多すぎニャ!」
ほむら「今までに見たことのない数だわ……ウル!」
ネオ・アモン「……」シュゥゥン
リベルティス「……」バサッ
ほむら「巴さん、ヒルダさん、行けるわね」
マミ「大丈夫、任せて!」
ヒルダ「こらしめてやるニャ!」
リベルティス「……!」ギャザリング
使い魔「……!?」シュン
ほむら「まとまったところに……これで!」ズドンズドン
マミ「ティロ・フィナーレ」ドン
ヒルダ「光合成の時間だニャ!」ビーム
キース「かなり数は減りましたね。兄上!」
ヨアヒム「任せるだら! ふんっ!」ポイ
杏子「カーネル捨てるのかよ!」
ヨアヒム「俺についてくるだっち! オラオラオラ!」ズドドドド
さやか「使い魔が吹っ飛んでく!」
杏子「道ができた! さやか、行くぞ!」ダッ
――避難所内――
ズドンッ
まどか「この音……」
ロジャー「始まったみたいですね」
まどか「うん……」
ロジャー「不安、ですか? 皆さんのこと」
まどか「ちょっとだけ。ロジャーさんは、不安じゃないんですか?」
ロジャー「ちょっとだけ。でも、きっと彼らならなんとかしてくれます」
ロジャー「だから鹿目さんも、お友達のこと、ウルたちのことを信じて待ちましょう」
まどか「そう……だね。私にはそうするしかできないよね……」
ロジャー「鹿目さん……」
恭介「あ、いた。鹿目さーん!」
まどか「上条君!? それに仁美ちゃんも!」
仁美「探しましたわ。無事でよかったです……」
恭介「ねえ、さやかを見てないかい? 避難所の中を探したけど、どこにもいないんだ」
まどか「さ、さやかちゃん? えっと、その、ミテナイナー」
仁美「外があんな状態なのに、いったいどこにいるのでしょうか……」
ロジャー「別の避難所へ入っているのでは? 避難所はここだけではないのでしょう?」
恭介「うわっ、なにこの変な生き物!」
ロジャー「失礼ですね!」
まどか「こちらはロジャーさん。変な生き物っぽいけど、一応人間だよ」
ロジャー「い、一応……? 一応ね……」
恭介「そ、そっか……僕はもうすこし、さやかを探してみるよ。もしなにかあったとしたら……」タタッ
仁美「あっ、上条君! 待ってください!」タタッ
まどか「2人とも、さやかちゃんのことをあんなに心配してくれてる……あれ、ロジャーさん?」
ロジャー「ちょっと今の右ストレートは効いたね、あははは……」
アルテマバスター
まどか「あ、今の声」
ロジャー「ええ、まだ戦いは続いているようですね」
まどか「……勝てるのかな?」
ロジャー「それは……」
QB「難しいと思うよ、今のままじゃ」トコトコ
まどか「キュゥべえ!?」
ロジャー「出ましたね、インキュベーター!」
QB「そんなに警戒することはないじゃないか」
ロジャー「いいえ、鹿目さんを魔法少女にはさせませんよ!」
QB「君達は勘違いしているようだ。僕は何も、ただまどかを魔法少女にしたいから言っているだけじゃないんだ」
まどか「え?」
QB「僕達としても、この星がなくなってしまうのは本意じゃない。でもワルプルギスの夜にはそれができる力がある」
ロジャー「だから、鹿目さんを魔法少女にするのは地球のためというのですか?」
QB「そういうことになるね。君ほどの魔術師なら気付いているはずだ。ワルプルギスの夜の放つ魔力がどれほどのものか」
ロジャー「それは、まあ……」
QB「まどか、不安なら実際に見てみればいい。彼らの戦う姿を」
まどか「みんなの姿を……?」
QB「そう。それを見て、必要がないと思うのなら魔法少女にならなくても良いんだから」
ロジャー「ダメです、鹿目さん!」
QB「それに魔法少女から人間に戻る方法もあるんだろう? なら心配ないじゃないか」
ロジャー「いけません、耳を貸しては!」
まどか「ごめんね、ロジャーさん。キュゥべえ、みんなはどこに?」
QB「こっちだよ。付いてきて」トコトコ
ロジャー「あぁ、もう……私も行きますー!」トコトコ
――――
杏子「これで!」ザクッ
さやか「どうだ!」ズバッ
キース「はっ!」ズバババッ
ヨアヒム「アルテマ……バスター!!」ズドォン
ワルプルギス「キャハッキャハハハ!」グラァ
ほむら(ワルプルギスの夜を……押している。これなら!)ドーン
ヒルダ「でかいだけで大したことないニャ! ポッピンパー!」キラリン
ネオ・アモン「グアァァァ!」キエロナマゴミ!
杏子「へへっ、もしかして楽勝か?」
キース「そうですね……いや、違う!」
さやか「どうしたの? このまま倒しちゃおうよ!」
キース「周りを見てください!」
マミ「周りって……あら?」
ほむら(私達を囲むように、無数のビルが浮かんでいる……これは)
ほむら「みんな、避けて!」
ワルプルギス「キャハハハハハ!!」ビュン
杏子「避けろったって、この数じゃ……うわっ!」
ヨアヒム「こんなもの押し返してやるだら! うおぉぉぉ……あ」
マミ「な、なんとか魔法で防いで……」ドンッドン
キース「巴さん、危ない!」
ヒルダ「ひ、卑怯だニャ! こんなの聞いてないニャ!」ワタワタ
さやか「慌ててないで早く逃げなきゃ……って、うわぁああ!」
ズガァァン ズガァァン
ほむら「くっ、いくらなんでも多すぎる!」
ワルプルギス「キャハハハ!」ビュンビュン
ほむら「避けきれない! あっ……」
ほむら(ビルがもう目の前に。間に合わない。こうなったらまた時間を戻すしか。でもこんなチャンスはもう)
ネオ・アモン「グオオオオオ!」ドンッ
ほむら「きゃっ! ウル!? 待って……!」
ズガァァン!
――――
QB「さぁ、もうすぐだ」トットコ
まどか「……うん」タッタ
ロジャー「は、走ると腰が……」ゼェハァ
まどか「あ、ほむらちゃん! ウルさ……」
ズガァァン!
まどか「……え?」
ロジャー「ウ、ウルー!!」
QB「やはり、かなわなかったみたいだね」
まどか「そ、そんな……」
QB「でもまどか、君ならみんなを助けられる。みんなを救った上で、ワルプルギスの夜を倒すほどの力を手に入れられる」
まどか「私が……魔法少女になれば良いの?」
――――
ほむら「みんな、あのビルにやられて……」
ほむら「私の魔力も残り少ない。とても1人だけでは……」
ワルプルギス「キャハハハハ!」
ほむら「また、やり直すしかないというの……」
まどか「ほむらちゃん!」
ほむら「まどか!? なんでここに!?」
まどか「助けに来たの! 待ってて!」
ほむら「まどか、まさか……ダメよ!」
まどか「ごめんね、ほむらちゃん。でもきっと、ロジャーさんがいれば……」
ほむら「ワルプルギスの夜を倒すほどの魔法を使えば、浄化する間もなくあなたも魔女に……!」
――――
ガタンゴトン
ウル「ん? ここは……」
ウル「列車か、あの時の」テクテク
ウル「それじゃあ、ここにまた……」
アリス「あっ、ウル! おかえり」
ウル「お、おう。ただいま」
アリス「長かったね」
ウル「まぁね。色々あってさ」
アリス「そう。ね、座ったら?」
ウル「あ、ああ。そうだな。それじゃ」ストン
アリス「え?」
ウル「ん?」
アリス「そっちで良いの? 反対向きだと辛いんじゃない?」
ウル「え? あ、ああ、そうだった! そっち良い?」
アリス「うん。どうぞ」
ウル「あははは、悪いね。反対向きだとどうしても、ね……」ソソクサ
アリス「ふふっ、そうだよね」
アリス「ウル、大変だった?」
ウル「まぁ、ちょっとだけ。でもあいつらも同じくらい大変そうだしさ」
アリス「もう、終わったの?」
ウル「それは……」
アリス「大丈夫だよ、私はいつまでも待ってるから。ね? やり残したこと、あるんでしょ?」
ウル「ははっ、やっぱかなわねえな」スクッ
アリス「行くの?」
ウル「ああ。でも、もうこれで終わらせる。そしたら今度こそ……ずっと一緒にいる」
アリス「うん。行ってらっしゃい」
ウル「おう……アリス」
アリス「なあに?」
ウル「……愛してる」
アリス「私も……愛してるよ」
――――
まどか「ほむらちゃん、ロジャーさん、ごめんなさい。でも私、決めたの!」
ほむら「ダメよ! それだけは!」
ロジャー「早まってはいけません!」
まどか「キュゥべえ、私、魔法少女になる!」
QB「その言葉を待っていたよ、まどか。さぁ」
QB「君は何を願う?」
ウル「消えてなくなれよ、今すぐ」
いつもより少しお早い時間に。
ほんじつこれだけ。
ようやくタイトル回収できた。
そしてこんなシーンでやらかした。
× QB「君は何を願う?」
○ QB「キミは何を願う?」
× ウル「消えてなくなれよ、今すぐ」
○ ウル「消えて無くなれよ、今すぐ」
意味はまったく変わらないけど、一応はタイトルなんで……
ウル「ったく……死ぬかと思ったぜ」ガラガラ
ほむら「ウル……ごめんなさい、私のせいで……」
ウル「いいって、生きてっから」
ロジャー「無事だったんですね!」
ウル「まぁね。こんなん、ちょちょいのちょいよ」
まどか「で、でも、ウルさんとほむらちゃんだけしか……ほかのみんなは!?」
ほむら「そ、それは……」
QB「みんな、この瓦礫の下だよ」
まどか「え?」
ロジャー「では、まさか……」
QB「さっきのウルと同じように、ビルに押しつぶされたんだ。もう助からないだろうね」
まどか「そ、そんな……」
QB「でも、まどかが契約すれば皆の命も救えるかも……」
ウル「言っただろ……」ガシ
QB「何のつもりだい? 事実を伝えただけじゃ……」
ウル「消えて無くなれってよ!」ブオンッ
ロジャー「おぉ、よく飛びましたねぇ」
まどか「で、でも……私が契約しないと皆が……」
ウル「だいじょぶだって、あいつらなら。ホラ、見てみろ」
???「とうー!!」ガシャーン
ほむら「あ、あれは……!」
???「たとえこの身が砕けても、正義を貫くこの拳!」
まどか「ヨアヒムさん!」
???「ヨアヒムなどではなぁーい!」ビシィ
まどか「え?」
ウル「まーた始まったよ……」
グラン・はてな?「愛と正義の使者、グラン・はてな?」
グラン・はてな?「今宵も華麗に参上だっち!」
ほむら「は……はてな?」
杏子「ノイローゼだよ、こいつ……」
まどか「杏子ちゃん!」
ウル「よう、生きてたな」
杏子「ああ。不本意だけど……こいつに助けられてな」タメイキ
グラン・はてな?「ヒーローは負けないだっち!」
ガラガラ
まどか「あ、あそこにも誰か……」
???「ごめんなさい! ごめんなさい! どうしても我慢できなかったんです!」ペコペコ
さやか「……」グター
まどか「さやかちゃん!」
ほむら「……と、誰?」
???「あら、皆さんもご無事だったんですね?」
グラン・はてな?「あぁ……そういえば、しばらくその姿になってなかっただらなぁ……」
杏子「あの服、もしかして……」
さやか「……はっ!」ガバッ
ウル「あ、起きた」
さやか「吸われた! 今、絶対に血ぃ吸われた! 首筋からチューって!」
???「ごめんなさい! お腹が空いてしまって!」ペッコリーン
さやか「へ? あんたもしかして……ヒルダ?」
グラマーヒルダ「あらやだ、私ったら皆さんの前でこんな恥ずかしい……せめてこれで」スチャ
グラマーマスク「わ、私はただのグラマーマスクで……」
さやか「うん、あんたらやっぱり兄妹だよ」
グラマーマスク「あら、こんなところに素敵な棍棒が」ヨイショ
ガシャン
杏子「お、これで全員か?」
マミ「み、みんな、無事!?」ガラッ
まどか「マミさん!」
さやか「無事だったんですね!?」
マミ「ええ、私は大丈夫よ。ただ……」
キース「……」ポケー
ほむら「キースさん? いったい何が……」
マミ「見たところ怪我はないようだけれど、さっきからこの調子で……」
グラン・はてな?「お、お腹でも痛いだら?」
キース「……ハハ……アハハハ……」
マミ「え? キース……さん?」
グラマーマスク「あ、これは……」
キース「アハハハハ! アーッハッハッハ! 100年の努力が一瞬で! アッハッハッハ!」
マミ「え? なに!? なんなの!?」
ほむら「キースさんが持っているのは……」
さやか「ぐにゃぐにゃになってて分かりにくいけど、多分……」
グラン・はてな?「うむ、やっぱり根性のない剣だら」
キース「ふぅ……美樹さん、剣を一本、お貸し頂けますか」
さやか「え、あ、はい。どうぞ……」
キース「ありがとうございます……アハハハハ!」タタッ
杏子「おい、1人で突っ込んでったぞ!」
グラマーマスク「キースお兄様はああなると止められません……」
グラン・はてな?「俺たちも行くだら!」ドスドス
本日はここまで。
ヒルダはフロムの後、お兄様に仮面を返しました。
キース「フフ……アハハハハ……」ズバッ
マミ「ちょ、ちょっと怖いのだけれど……本当に大丈夫なの?」ズドンッ
グラン・はてな?「おぉりゃっ!」ズガン
杏子「あんたさっきより全然強ぇじゃねえか。なんで最初からやんねえんだよ」
グラン・はてな?「ヒーローはここぞというときに変身するものだっち。最初から最終形態じゃつまらないだら?」
杏子「いや、知らないから。まぁ、あたしも本気で行こうか!」ブォン
グラン・はてな?「うおっ!? 杏子が増えただら!」
グラマーマスク「これが本物の忍術というものなんですね!」
杏子「魔法だよ! 馬鹿言ってないで、行くぞ!」ズバババッ
ワルプルギス「キャハッ!」グラッ
さやか「ひるんだ! ここで一気に……ってヒルダ!」
ワルプルギス「キャハハハ!」ビュン
さやか「またビルが! 危ない!」
グラマーマスク「え? あらやだ……」グッ
グラン・はてな?「説明しよう、ヒルダはこうすることによって……」
グラマーマスク「こないでー!」カキーン
グラン・はてな?「こうなるのだ!」
マミ「打ち返した!? ビルを!?」
杏子「もう何でもありだよコイツら」
ほむら「ウル! 私達も!」
ウル「ああ。行くぜ……親父」シュゥゥ
ほむら「これが、ウルの中に宿る古神……」
天凱凰「……!」バシュゥン
ほむら「恐ろしいほどの力……でもどこか神々しい。ただ……」
天凱凰「……ン?」
ほむら「もう少し、こう……隠せないのかしら?」メソラシ
天凱凰「……」バサッ
ほむら「あっ! 待ちなさい!」タタッ
――――
グラン・はてな?「せぇい! おりゃ! ダッシャー!」ガァン
杏子「くそっ、どれだけやったら倒れるんだよ、コイツは!」ズバッ
グラマーマスク「いけない、またお腹が……」グー
さやか「使い魔もまだ沸いてくるし、どうすれば……」ザクッ
マミ「この調子じゃあ、グリーフシードの数も……」ズドン
キース「フフ……フフフ……ふぅ……」サラサラ
カチッ
ズドン! ズドン! ズドン!
ワルプルギス「キャハハハハッ!?」グラッ
杏子「うお! なんだぁ!?」
グラン・はてな?「親方! 空から爆弾が!」
さやか「爆弾!? なんでそんなもんが降るの!」
マミ「上よ!」
グラマーマスク「あそこに飛んでるのは暁美さんと……」
グラン・はてな?「ウルだっち!!」
ほむら「ウル、行くわよ!」
天凱凰「……」コク
ほむら「はぁぁ!」タッ
天凱凰「オォォォォ!」バサッ
――――
グラン・はてな?「ほむらが落っこちただら!」
さやか「ウルは上に飛んでっちゃったよ!?」
杏子「あいつらなら大丈夫だよ! ボケッとしてんなさやか!」ダッ
グラマーマスク「えいやー!」ドスドス
マミ「みんな、最後のひとふん張りよ!」ズドン
キース「アハハハハ! アーッハッハッハッハ!」タタッ
――――
ほむら「ワルプルギスの夜……絶対に、倒し切る!」タタタッ
杏子「さっさとくたばれ!」ザクッ
さやか「恭介も仁美も、私が守るんだから!」ズバッ
マミ「ティロ・フィナーレ!」ドォン
天凱凰「フンッ!」カッ
ほむら(みんなのために……)ドン! ドン!
グラマーマスク「とんでけー!」カキーン!
グラン・はてな?「ヒーローの底力だっちー!!」ズガァン!
キース「アーハッハッハ!」ズバババッ
天凱凰「ハッ!」ズドン!
ほむら(明日のために……)ズドン! ズドン!
ワルプルギス「キャ、キャハッ……」グラングラン
天凱凰「オォォォォ……!」キュインキュイン
ほむら「そしてなにより……」チャキ
まどか「ほむらちゃん! 負けないで!」
天凱凰「ハァァッ!!」ズドォン!!
ほむら「まどかのために!」ドォン! ドォン!
――――
グラン・はてな?「やっただら!?」
桃色コウモリ「ヨアヒムお兄様、その発言はフラグですニャ!」パタパタ
さやか「うわっ! コウモリ!? しかも喋った!?」ビクッ
杏子「煙が……晴れてきたな」
ワルプルギス「キャハハハハ」
さやか「そんな……あれでもまだ……」
マミ「いいえ、よく見て」
杏子「あ?」
ワルプルギス「キャ、ハ……キャハハ……」スゥゥ
桃色コウモリ「ワルプルギスの夜が……」
グラン・はてな?「消えていくだら!」
さやか「ってことは、これで……」
ほむら「ええ。私達の勝ちよ」スタッ
さやか「ほむら!」
グラン・はてな?「無事だっただっち!?」
ほむら「私なら大丈夫よ。それにウルも」
杏子「あいつはどこに……って、あんなとこにいやがった」
マミ「ウルさーん! 怪我はありませんかー!」
ウル「へへっ……」
ウル「ゴメンナサイは?」
本日これまで。
ようやく終わりが見えてきた……
ほむら「ウル……」
ウル「へっ、あんなやつアルバートや加藤に比べりゃ大したことねえや」
まどか「ほむらちゃん、ウルさん……」
ほむら「まどか……良かった、あなたが無事で」
ウル「守ってやれたな、今回はさ」ポンポン
ほむら「ええ……あなたのおかげよ」
ヨアヒム「それにしても、ずいぶん派手に暴れただらなぁ」
さやか「ほんと、ワルプルギスの夜ってのは倒したけど……」
マミ「街はボロボロね。しばらくは大変そうだわ」
桃色コウモリ「こんなんじゃ観光どころじゃないニャ!」
杏子「ま、命があるだけで良いじゃないか。あんなバケモン相手にしてさ」
ロジャー「まったくです。見ているこっちはヒヤヒヤしっぱなしだったんですからね!」
ウル「悪ぃね、じっちゃん。心配かけちゃって」
ロジャー「私以外にも、皆さんを心配している人はいっぱいいますよ。早く戻って安心させてあげましょう」
まどか「あ! そういえばママに何も言わずに出てきてたんだ……」
さやか「恭介も仁美も、私もまどかもいないんじゃ心配してるだろうなぁ」
マミ「一度、避難所へ行きましょうか。街のことはまた後で考えましょう」
ロジャー「そうですね。では、避難所へ戻りましょう。ヨアヒム、キースをお願いします」
ヨアヒム「しょうがないやつだっち……キース、いつまでも笑ってないで歩くだら」
キース「ふふ……うふふ……」
ウル「あー、悪いけど先に行っててくれよ。俺、ちょっと行くトコあるから」
まどか「行くところ……ですか?」
ほむら「こんな時にいったいどこへ……」
ウル「ちょっとね、待たせてるやつがいるからさ」スゥ
キース「あはは……おや? ウル、なんだか透けてますよ?」
桃色コウモリ「キースお兄様が戻ってきましたニャ!」
杏子「お、おい! どうなってんだ!?」
ウル「やり残したこと、済ませちゃったからね」
さやか「ど、どういうこと!? なんで消えそうになってるの!?」
ロジャー「帰るのですね……あるべき場所に」
まどか「そ、そんな……」グスッ
ほむら「ウル……」
ウル「そんな顔すんなよ。もともとここにいるのが、なんかの間違いみたいなもんなんだからさ」
ヨアヒム「いやー、寂しくなるだらなぁ」
キース「どうせならもう少しゆっくりしていけばいいのに、忙しい人ですねぇ」
桃色コウモリ「まったくニャ。やることが終わったら遊びもせずに帰るなんて」
杏子「いや、あんたらはもうちょっと寂しがってやったらどうなんだ?」
ウル「おっ、もう行かなきゃなんないみたいだ」フワ
さやか「ウ、ウルが空に……」
杏子「体もどんどん透けてってるな」
マミ「そんな、せっかく出会えたのにお別れだなんて……」
まどか「ウルさん……」グスッ
ウル「泣くなよ……そうだ、ホラっ」ポイッ
まどか「あ、これ……」
ウル「俺が持つより、まどかが持ってるほうがまだ似合ってるだろ」
キース「ウル、どうかお元気で」
ウル「お前らもな。まぁそうそうくたばらなさそうなのばっかだけど」
ロジャー「あなたには言われたくありませんよ」
ヨアヒム「そのとおりだら!」
ウル「そんじゃ、そろそろ行くわ」スゥ
ほむら「ウルっ!」
ウル「ん?」
ほむら「……ありがとう!」
ウル「ああ……じゃあな」フッ
ロジャー「行って……しまいましたね」
ほむら「ええ」
――――
まどか「さやかちゃーん、おはよー」
さやか「おっはよー、まどか」
まどか(ウルさんがいなくなってから、3ヶ月ほどが経ちました)
さやか「それで恭介ったら……」
まどか(さやかちゃんはあの後すぐにウェールズへ向い、1ヶ月くらいで戻ってきました)
まどか(ロジャーさんの実験は無事に成功して、もう普通の中学生に戻れたそうです)
さやか「あそこにいるのは……マミさーん!」
マミ「あら、おはよう、美樹さん、鹿目さん」
まどか(マミさんはずっと悩んでいたけれど、魔法少女でなくなることを決めました)
まどか(魔法少女として街を守りたいという思いはあったみたいですが、キースさんが説得したそうです。ただ……)
マミ「あ、2人ともちょっと待って。そちらの方、福引券をお持ちですね? していきませんか?」
通行人「ふ、福引?」ビクッ
まどか(世界福引協会のイメージガールという道は、少しどうなのかな?)
さやか「そういえば今日だよね? あいつらが戻ってくるの」
まどか「うん。今夜、また校庭に降りるって」
まどか(ほむらちゃんと杏子ちゃんは、ロジャーさんたちと一緒に世界を回っています)
――飛行艇――
杏子「ギャングって言うからどんなんかと思ったけど、なんだよアレは?」
ヒルダ「ちょっとした知り合いニャ。久しぶりにシカゴに来たから挨拶したのニャ」
杏子「いやいや、さすがに喋る猫はねえだろ」
ほむら「魔法少女に魔女に吸血鬼、おまけに魔術師もいるのだから、今さらでしょう」
杏子「でもあれはちょっとなぁ……」
ほむら「私はあれよりも、ブラジルのほうが驚いたわよ」
杏子「ブラジル? あぁ、あの勘違い忍者村か」
キース「みなさん、そろそろ日本へ着きますよ」
ヨアヒム「久々の再会だっち」
杏子「おう、ロジャーのじいさんは?」
キース「実験室です。キュゥべえも一緒ですよ」
ほむら(私達は魔女を倒し、また魔法少女を救うために世界を回っている)
杏子「またかよ。あいつらも飽きねえな」
ヨアヒム「うむ、俺には何を話しているかさっぱりだら」
ほむら(そして、その目的において最大の障害とも言えるインキュベーターも、私達に同行している)
――2ヶ月前・ウェールズ――
QB「まさか、本当に魔法少女を人間に戻してしまうなんてね」トコトコ
ほむら「今すぐに消えなさい。あなたは私達の明確な敵よ」チャキ
ロジャー「あ、暁美さん、家のなかで銃は……」オロオロ
QB「そんなに敵意を向けないでほしいな。今日はただ取引をしようと……」
ほむら「今さらあなたと結ぶ取引なんてないわ!」
QB「せめて話だけでも聞いてほしいなぁ。それに、僕が用があるのはロジャーだよ」
ロジャー「へ? 私ですか?」ハテ?
QB「そうだよ。君の持つ魔術に関する知識や技術、それを分けてほしいんだ」
ほむら「あなた達が魔術を使うというの?」
QB「うん。僕達は今回の件で、魔術というものの可能性を見せられた。これを僕達の持つ技術と合わせれば……」
ロジャー「世界を維持するためのエネルギー源にもなりえる、ということですか?」
QB「そのとおり。魔法少女というシステムは効率として優れているとは言い難いからね」
ロジャー「それで、自分達では理解のできない魔術というものを、新たなエネルギーを探すために取り込もうと」
QB「キミにとっても、僕達の技術を知ることのできる良い機会だと思うけれど、どうだろう?」
ロジャー「ふむ……一つ、条件を受け入れてくれるのならば」
QB「条件? 可能な限りは対処するよ」
ロジャー「では、今すぐに魔女と魔法少女を、あるべき姿へ還してください」
QB「それは……飲めない条件だね」
ほむら「やはり魔法少女というシステムを捨てる気はないようね……」チャキ
QB「待ってくれ。僕達は単に、その手段を持っていないんだ」
ロジャー「魔法少女を戻す方法を、ということですか?」
QB「今までに必要とされたことのない技術だからね」
ほむら「そんな言い訳が通用すると……」
ロジャー「待ってください、暁美さん。では、条件を変更しましょう」
QB「今度は僕達に可能なものにしてもらえると助かるよ」
ロジャー「今後、一切新たな魔法少女のせず、また私達の行動を邪魔しない。これならどうです?」
QB「キミ達が魔法少女を人間に戻していくのを、黙って見ていろということだね。おやすいご用さ」
ほむら「な……本気なの?」
QB「より効率の良い方法を見つけるためなら、安いものさ」
――夜の校庭――
ゴゴゴゴゴ・・・・・・ズゥン
ほむら「久しぶりの日本ね」スタ
熊猫くん「おかえりなさい!」
河童くん「おかえりー!」
杏子「それ、あいつが置いてったやつか」
さやか「うん。確かにウルが持ってるより私達のほうが合ってるかな」
キース「お2人とも可愛らしくて、とても似合ってますよ」
マミ「キースさんたちも、お久しぶりです」
ヨアヒム「おう、元気にしてただらか」
ヒルダ「3ヶ月ぶりの日本ニャ! ロジャー、また秋葉原にもよっていくニャ!」
ロジャー「ま、またですかぁ……? こちらでは何か異変などはありませんでしたか?」
さやか「うん。あれから使い魔とかも見てないよ」
QB「この街の魔女も魔法少女も、ウェールズへ行く前に対応をしていったからね」
ほむら「世界を回ってみて、この街がどれだけ異常だったか良く分かったわ」
杏子「ああ、あんなに魔女が出るところなんて、どの国にもなかったよ」
ロジャー「まぁまぁ皆さん、立ち話もなんですし、中へ入りませんか?」
マミ「それじゃあ、お邪魔しましょうか」
キース「今日は僕の入れた紅茶を巴さんにも味わってもらいましょう」
さやか「ねぇねぇ杏子、なんかお土産とかないの?」
杏子「なんであたしがそんなもん買わなきゃいけないんだよ」
ヒルダ「ところでまどか、弟にはいつ会わせてくれるニャ?」
まどか「それは、えっと……ティヒヒ」
ほむら(ウル、あなたのおかげで私達は平和を掴むことができそうよ)
ほむら(あなたが愛した人のために世界を救ってきたように……)
ほむら(私も大切な恩人であるあなたの守った世界を、必ず平和なものにしてみせる)
――――
ウル「ハッ!」ガバッ
ウル「いけね、寝過ごすとこだった!」
ウル「あ? なんかポケットに……」ゴソゴソ
ウル「なんだこの紙切れ? 1000円? なんでこんな大金入ってんだ?」
ウル「っていうか、あんた誰?」
野口英世「……」
ウル「って、こんなことしてる場合じゃねえ。もうじき来るな……」
ウル「あの列車か……へへ、なんだか、ワクワクしてきたぜ!!」
――運命の女と出会うまで、あとわずか……――
お
わ
り
というわけで、ここまでです。
読んでいただいた方、感想を下さった方、本当にありがとうございました。
初SSを、大好きなアニメとゲームを題材に書ききれたのも皆様のおかげです。
そしてキースがなんか暴走しっぱなしのキャラになっててすいませんでした。
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