桜木「ぬ?」跡部「あぁん?」(26)

――私立氷帝学園


ワイワイガヤガヤ


跡部「なんだぁ、あの人だかりは……」


忍足「なんでも今年の一年に、ゴッツいのが入ってきたらしくてなぁ……皆そいつ目当てに教室覗いとるっちゅー話や」


跡部「ゴッツい、ねえ……おい樺地、見てこい」


樺地「ウス」

花道(モ、モテん……なぜだ、もうすぐフラレ記録10人突破しちまうぞ)


花道(水戸のやろー、なにが「時代はワイルドだぜ」だ……!赤い髪の坊主頭なんて、どっからどう見てもヤンキーじゃねえか!)


花道(しかも噂が広まっちまって、今では同じ1年坊だけじゃなく上級生までもが教室に見に来る始末!)


花道(て、天才のオレがこんなこと……)


樺地「……すみません……」


花道「くそ、一体どこで間違った?まず最初に「コンニチハ、桜木花道です」と爽やかに挨拶して、それから上着をはだけて鍛えた身体をアピール、そうしてから……」


樺地「……あの……」


花道「……ん、んー?なんだ、カバみてーな面しやがって」


樺地「……跡部様が、お呼びです……」


花道「アトベだぁ?誰だそりゃ、知らん」

樺地「……しかし……」


花道「いいかカバオ、そのアトベとかいう奴に伝えろ。用事があるならテメーが来いってな」


樺地「………………」アトベノホウヲチラリトミル


跡部「構うこたねー、樺地。連れてこい」


樺地「ウス」エリヲツカム


花道「む?」


樺地「………………!」


花道「なんだテメーカバオ、服引っ張んな。破けるだろーが」


樺地「…………失礼します」ズンズン


花道「……なんだありゃあー。どこの動物園から脱走してきやがったんだ……くわあ、ねみい」

跡部「おい樺地。何ノコノコと帰ってきてんだ。気にせず連れてこいっつったろ」


樺地「……上がりませんでした……」


跡部「……何?」


忍足「樺地の馬鹿力でも持ち上がらんとは、あの男……相当みたいやね」


跡部「はッ……上等じゃねーの」

一週間後


女生徒「ゴメンナサイ!私、テニス部の跡部先輩が大好きなの!」


花道「!!!!!」ズゴーン


野間「やった!花道!」プァーッカプァーッカ


大楠「これで15人連続!」ハナフブキ


高宮「中学3年間でどこまで伸ばせるか、キタイだな!」センスパッパッ


水戸「目指せ50人突破!」ハナミチノカタバンバン


花道「……テ、テメーらぁぁぁぁ……!」


五人「や、ヤバイ!」

ゴンゴンゴンゴンゴン

五人「」

花道「はぁーあ、これで15人目……なぁーにがテニス部のアトベ先輩だ、テニス部の……」


花道「ん、アトベ?アトベってどっかで……」


花道「まぁいいか。帰りにラーメンでも食ってこー」


忍足「待ちぃや、そこの赤坊主君」


花道「あぁ!?誰が赤坊主だコラ!」


忍足「おぉ、怖い怖い。まぁ落ち着きい、別に喧嘩売っとるわけやあらへんのやから」


花道「誰だテメー」

忍足「氷帝学園テニス部3年、忍足侑士って言います。よろしゅー」


花道「『テニス』?」


忍足(……?なんや、空気が変わったな……)


花道「」スタスタ


忍足(近づいてくる……なんや機嫌でも損ねたんかいな)


忍足「なんや自分、えらい機嫌悪そうな顔して。どないした」


花道「フンッ」


ゴン


忍足「」


花道「二度と俺様の前でその単語を口にするな、エセ関西弁メガネ!」

向日「侑士がやられたぁ!?」


樺地「ウス」


宍戸「額から煙上げて道路にぶっ倒れてたところを、樺地が通りかかって担いできたらしい」


跡部「……俺様を無視したまでは100歩譲って許してやるが、部員に手を出されちゃあこっちは黙ってられねーな」


宍戸「黙ってらんねーったって、どうすんだよ跡部。うちの1年共に夜道でも襲わせんのか?」

跡部「そんな野蛮な真似はしねーよ。俺達は『テニス』部だ。そうだろ?」


跡部「奴の身に氷帝学園テニス部の恐ろしさを刻みつけてやる!」


宍戸「……なるほど。跡部の考えは分かった。そのうえで、跡部。奴の始末は、俺に任せてくれ」


跡部「宍戸……お前にやれんのか?」


宍戸「やれなきゃ、氷帝レギュラーの名折れだからな」

次の日


花道「えーっとねオレは…カツ丼大盛。それがメシでオカズはね…コロッケとサンマと焼そばとホイコーロー。あとミソ汁のかわりにラーメン。あっ牛乳もねおばちゃん」


おばちゃん「………………!」


インターホン「1年7組の桜木、1年7組の桜木。至急テニスコートに来るように。繰り返す……」


花道「ぬ?」

向日「なるほどな。テニスなんて出来そーもねーヤローに、あえてテニスでボコボコにしてやるってことか」


宍戸「そうすりゃ奴が今後、テニスコートに近づいたりテニス部員にちょっかいかけよーって気にはならねーはずだ」


鳳「さすが宍戸さん!冴えてます!」


宍戸「へっ、あんまり褒めるなよ長太郎……激ダサだぜ」



花道「カツ丼おかわり」

おばちゃん「……………………!」

鳳「……し、宍戸さん」


向日「来ねーな、あいつ」


宍戸「………………」プルプル


跡部「やれやれ、気になって見に来たものの……やっぱりな」


宍戸「あ、跡部……っ!」


跡部「氷帝の正レギュラーが、1年坊一人も誘い出せねえのかよ。こりゃ今年のレギュラーも危ういんじゃねーの、宍戸よぉ」


宍戸「ぐっ……!」

向日「んで、そういう跡部にはなんか案あるのか?」


跡部「案だあ?そんなチャチなもん必要ねえな」


鳳「……?こんなところで、ラケットとボールを取り出して……どうするんですか?」


跡部「こうするんだよ」


三人「!?」

花道「くぁー、食い過ぎてねみぃ……午後の授業フケるか……」


ヒュー


花道「ぬ?んがっ!」ゴンッ


教室「ザワザワ」


花道「~~~~~~っ」


ガラッ


花道「どこのどいつだこの野郎ーッ!」

跡部「ハッ、バカは扱いやすくて助かるな」


花道「ぬっ!」ジゴクミミ


跡部「悔しかったんならよぉ、1年坊。降りてこいよ。ここに」


花道「」プツン


花道「上等だコラァ!」

花道「クソ、あのヤロー、どこに消えやがった!」


跡部「こっちだ赤坊主」


花道「ぬっ!?」カラン


花道(ん、足に何か……)


花道(……なんだこりゃ?妙ちきりんな形してやがる)

宍戸「おい1年坊主」


花道「……誰だ、俺はテメーみて~なロン毛は知らんぞ」


宍戸「はっ……こりゃあ、礼儀も教えてやる必要がありそうだ」


花道「なんだと……?」


宍戸「よく聞け。俺は今から、お前にサーブを打つ。俺から1pでも取れりゃあ、お前の勝ちにしてやるよ。ただし、お前が1pも取れずにゲームを落とせば、これから先、うちの部に一切かかわらねーと約束しろ」


花道「……サーブ?ポイント?なんのこっちゃ、サッパリわからん!」


宍戸「わかんねーでもいいんだよ。お前はただボールを打ち返せずに終わるんだからな!」バシーン


花道「ぬっ!?」ズバーン

ギャラリー「決まったあ!まずは1p!」ヒョーテイ!ヒョーテイ!ヒョーテイ!



宍戸「おいおい、止まってていいのかよ。ずっとそうしてたら、何時まで経ってもゲームが……」



宍戸「終わらねえよ!」バシーン

桜木「フンッ」


ゴンッ


宍戸「」


ギャラリー「」



向日「」


鳳「し、宍戸さぁん!」

花道「……ぬ?」ドーシタ


ギャラリー「ど、どうしたじゃねえよ!なんでお前、ボールがバウンドする前に返すんだよ!」


花道「そんなルールは知らん!それに喧嘩ふっかけてきたのはそっちだろーが」


ギャラリー「お、お前、わざと宍戸さんの顔面狙いやがったな!そうだ!そうに決まってる!」


花道「何言ってんだテメーら、相手を倒せば勝ちだろ?」


ギャラリー「暴力でじゃねえよ!試合で勝て!」


鳳「し、宍戸さん!宍戸さん!しっかりしてください!」


宍戸「」


ギャーギャー ワーワー

跡部「……樺地。お前、あの男が一瞬でネット際に詰めたの、見えたか?」


樺地「……いいえ」


忍足「なるほどこれは、文字どおりトンデモ無い男やわ」


向日「侑士!お前、もう大丈夫なのかよ?」


忍足「心配あらへん。あれくらいのツッコミ、大阪では日常茶飯事やわ」


忍足「……それにしても……」

花道「ふんぬー!離せ!俺はまだそいつにとどめを刺してねえんだ!」


ギャラリー「や、やめろバカ、落ち着け!」


宍戸「」


鳳「シシドサァーン!」



忍足「これから先、楽しくなりそうやないの」


跡部「……馬鹿馬鹿しい。俺は先に戻るぜ。おい樺地」


跡部「宍戸に担架を持ってってやれ」


樺地「ウス」


向日「……ま、こういうのもありっちゃありかもな」




??「……桜木花道……俺より先に下剋上を果たしちまうとは……気にいらねー」





おわり

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